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特許7624921ハイドロフルオロオレフィン及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】ハイドロフルオロオレフィン及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 21/18 20060101AFI20250124BHJP
   C07C 211/24 20060101ALI20250124BHJP
   C07D 265/30 20060101ALI20250124BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
C07C21/18 CSP
C07C211/24
C07D265/30
C11D7/50
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021534927
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 IB2019061118
(87)【国際公開番号】W WO2020128964
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】62/782,476
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】スミス,シーン エム.
(72)【発明者】
【氏名】コステッロ,ミカエル ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ブリンスキ,ミカエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】レン,フイ
(72)【発明者】
【氏名】コウグリン,フォレスト エー.
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-513348(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122803(WO,A1)
【文献】特開2021-175708(JP,A)
【文献】特表2021-534175(JP,A)
【文献】特表2011-510119(JP,A)
【文献】特表2018-525327(JP,A)
【文献】国際公開第2018/175367(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/116159(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
C11D7/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(II):
(CFH)CF=CHX (II)
[式中、Rは、1~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、又は環状ペルフルオロアルキル基であり、任意に、窒素又は酸素から選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含み、
nは0又は1であり、
XはCl又はBrであり、
但し、RがCFである場合、nは1である]
によって表されるハイドロフルオロオレフィン化合物であって、
前記一般式(II)において、XがClであり、且つ、n=0である場合、前記ハイドロフルオロオレフィン化合物は、一般式(IIA):
CF=CHCl (IIA)
[式中、Rは、2~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、又は環状ペルフルオロアルキル基であり、且つ、窒素又は酸素から選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含む]を有する、ハイドロフルオロオレフィン化合物。
【請求項2】
以下の一般式(IIC):
CF=CHBr (IIC)
[式中、Rは、2~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、又は環状ペルフルオロアルキル基であり、任意に、窒素又は酸素から選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含む]
を有する、請求項1に記載のハイドロフルオロオレフィン化合物。
【請求項3】
以下の一般式(IID):
CF=CHBr (IID)
[式中、Rは、2~3個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基である]
を有する、請求項1に記載のハイドロフルオロオレフィン化合物。
【請求項4】
組成物であって、
以下の一般式(I):
(H)-R-(CFH)-CF=CHX (I)
[式中、Rは1~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、又は環状ペルフルオロアルキル基であり、任意に、窒素又は酸素から選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含み、
nは0又は1であり、
mは0又は1であり、
m+n=0又は1であり、
XはCl又はBrであり、
但し、
XがClであり、かつRがCFである場合、mは1であり、
XがBrであり、かつRがCFである場合、mは1であり、
が環状である場合、m+n=0である]
によって表されるハイドロフルオロオレフィンであって、
前記一般式(I)において、n=1且つm=0である場合、X=Brであり、前記ハイドロフルオロオレフィン化合物は、一般式(IB):
CFH-CF=CHBr (IB)
を有する、ハイドロフルオロオレフィン化合物と、
汚染物質とを含み、
前記ハイドロフルオロオレフィンが、前記組成物中に、前記組成物の総重量に基づいて少なくとも25重量%の量で存在する、組成物。
【請求項5】
前記汚染物質が長鎖炭化水素アルカンを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
基材から汚染物質を除去するための方法であって、
前記基材を、以下の一般式(I):
(H)-R-(CFH)-CF=CHX (I)
[式中、Rは、1~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、又は環状ペルフルオロアルキル基であり、任意に、窒素又は酸素から選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含み、
nは0又は1であり、
mは0又は1であり、
m+n=0又は1であり、
XはCl又はBrであり、
但し、
XがClであり、かつRがCFである場合、mは1であり、
XがBrであり、かつRがCFである場合、mは1であり、
が環状である場合、m+n=0である]
によって表されるハイドロフルオロオレフィンであって、
前記一般式(I)において、n=1且つm=0である場合、X=Brであり、前記ハイドロフルオロオレフィン化合物は、一般式(IB):
CFH-CF=CHBr (IB)
を有する、ハイドロフルオロオレフィン化合物と接触させる工程を含み、
前記汚染物質が長鎖炭化水素アルカンを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、臭素化又は塩素化ハイドロフルオロオレフィン並びにその作製方法及び使用方法に関し、これらを含む作動流体に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なハイドロフルオロオレフィン化合物が、例えば、Md.J.Alam et al.,International Journal of Refrigeration 2018,90,174-180、並びに米国特許出願公開第2017/0369668号及び米国特許第8,642,819号に記載されている。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態では、組成物が提供される。組成物は、
以下の構造式(I):
(H)-R-(CFH)-CF=CHX (I)
[式中、Rは1~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、又は環状ペルフルオロアルキル基であり、任意に、窒素又は酸素から選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含み、nは0又は1であり、mは0又は1であり、m+n=0又は1であり、XはCl又はBrであり、
但し、XがClであり、かつRがCFである場合、mは1であり、XがBrであり、かつRがCFである場合、mは1であり、Rが環状である場合、m+n=0である]によって表されるハイドロフルオロオレフィンを含む。組成物は、汚染物質を更に含む。ハイドロフルオロオレフィンは、組成物中に、組成物の総重量に基づいて少なくとも25重量%の量で存在する。
【0004】
いくつかの実施形態では、ハイドロフルオロオレフィン化合物が提供される。組成物は、以下の一般式(II):
(CFH)CF=CHX (II)
[式中、Rは、1~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、又は環状ペルフルオロアルキル基であり、任意に、窒素又は酸素から選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含み、nは0又は1であり、XはCl又はBrであり、但し、RがCFである場合、nは1である]によって表されるハイドロフルオロオレフィンを含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、基材から汚染物質を除去するための方法が提供される。方法は、基材を、以下の構造式(I):
(H)-R-(CFH)-CF=CHX (I)
[Rは、1~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、又は環状ペルフルオロアルキル基であり、任意に、窒素又は酸素から選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含み、nは0又は1であり、mは0又は1であり、m+n=0又は1であり、XはCl又はBrであり、但し、XがClであり、かつRがCFである場合、mは1であり、XがBrであり、かつRがCFである場合、mは1であり、Rが環状である場合、m+n=0である]によって表されるハイドロフルオロオレフィンと接触させることを含む。汚染物質は長鎖炭化水素アルカンを含む。
【0006】
上記の本開示の概要は、本開示の各実施形態を説明することを意図したものではない。本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明にも記載される。本開示の他の特徴、目的及び利点は、本明細書及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0007】
絶えず増加する信頼性への要請、継続的な小型化、及びクリーンでない方法において製造された電子部品の不具合数の増加の全てが相まって、電子機器製造において、洗浄溶媒の使用がますます注目されている。産業用並びに消費者用電子製品の急速な需要の増加によって、電子産業は急成長してきた。洗浄溶媒は、このような産業用及び消費者用電子製品の生産に使用される一般的な製造用グリース及び油(例えば式C2n+2を有する炭化水素)を高い信頼性で溶解するように、特別に設計される。フッ素化洗浄溶媒は高レベルの炭化水素溶解度を示すが、部分的には、低い燃焼性、高い密度、低い粘度、低い表面張力、及び使用後の部品からの素早い蒸発をもたらす高い蒸気圧により、このような用途に好適である。更に、炭化水素溶媒とははっきりと対照的に、フッ素化洗浄溶媒は、洗浄後の部品に残る残留物の量を最小限に抑える。
【0008】
現在、このようなグリース及び油(すなわち、長鎖炭化水素)又は他の有機物を溶解させ、表面から除去するために使用される流体は、例えば、トランス-ジ-クロロ-エチレン、1,1,1-トリクロロエタン(trichloroethane、TCA)、トリクロロエチレン、及びジクロロメタンを含む流体ブレンドを含有する。このような流体ブレンドに関して、このアプローチに対する1つの欠点は、洗浄流体の寿命にわたって組成比が変化する傾向である。この組成比の変化は、ひいては安全性の懸念を生じ、洗浄流体の性能も損なう。そのため、毒性がなく、不燃性であり、かつ炭化水素溶解度が高い単一組成の洗浄流体は、電子機器の洗浄産業にとって有意に有益であろう。更に、現在用いられている材料のうちのいくつかは、オゾン層破壊物質としてモントリオール議定書によって規制されているか、又は毒性の懸念を有する。
【0009】
環境に配慮した低毒性の化学化合物に対する需要の増加の観点で、強力な洗浄能力に加えて、環境への影響が小さく毒性が低い、新しい長鎖炭化水素アルカン洗浄流体が必要とされている。更に、このような洗浄流体は、理想的には、(ブレンドとは反対の)単一分子として機能し、広い沸点範囲を有するべきである。最後に、このような洗浄流体は、費用対効果の高い方法を使用して製造できるべきである。
【0010】
概して、本開示は、洗浄流体(又は洗浄流体の成分)として有用な、新たな分類の化合物を提供する。この化合物は、既存の洗浄流体に、同様又はより良好な洗浄特性及び物理的特性をもたらすが、概ね大気寿命及び地球温暖化係数はより低く、より許容される環境プロファイルをもたらす、臭素化又は塩素化ハイドロフルオロオレフィン(hydrofluoroolefin、HFO)である。更に、本開示の臭素化又は塩素化ハイドロフルオロオレフィンは、(ブレンドとは反対の)単一分子として機能することができ、広い沸点範囲(例えば、摂氏30~150度)を有することができ、高い費用対効果で製造することができる。
【0011】
本明細書で使用する場合、「連結されたヘテロ原子」は、炭素鎖(直鎖若しくは分枝鎖又は環内)の少なくとも2個の炭素原子に結合して炭素-ヘテロ原子-炭素リンケージを形成する、炭素以外の原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)を意味する。
【0012】
本明細書で使用する場合、「ハロゲン化」(例えば、「ハロゲン化HFO」の場合などの化合物又は分子に関して)は、少なくとも1個の炭素に結合したハロゲン原子が存在することを意味する。
【0013】
本明細書で使用する場合、「フルオロ」(例えば、「フルオロアルキレン」若しくは「フルオロアルキル」若しくは「フルオロカーボン」の場合などの、基若しくは部分に関して)又は「フッ素化」は、(i)部分的にフッ素化されており、炭素に結合した少なくとも1個の水素原子が存在すること、又は(ii)ペルフルオロ化されていることを意味する。
【0014】
本明細書で使用する場合、「ペルフルオロ」(例えば、「ペルフルオロアルキレン」若しくは「ペルフルオロアルキル」若しくは「ペルフルオロカーボン」の場合などの、基若しくは部分に関して)又は「ペルフルオロ化」は、完全にフッ素化されており、別段の指示をされている場合を除き、フッ素で置き換えることが可能な、炭素に結合した水素原子が存在しないことを意味する。
【0015】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容が明確に別段の規定をしない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の実施形態で使用する場合、用語「又は」は、その内容が明確に別段の規定をしない限り、一般に「及び/又は」を含めた意味で用いる。
【0016】
本明細書で使用する場合、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4及び5を含む)。
【0017】
別段の指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用される量又は成分、特性の測定値などを表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解されるものとする。したがって、反対の指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態のリストにおいて述べる数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして通常の丸め技法を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは請求項記載の実施形態の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0018】
いくつかの実施形態では、本開示は、以下の構造式(I):
(H)-R-(CFH)-CF=CHX (I)
[式中、Rは、1~6、1~5、1~4、1~3、又は1~2個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、又は環状ペルフルオロアルキル基であり、任意に、窒素又は酸素から選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含み、
nは0又は1であり、
mは0又は1であり、
m+n=0又は1であり、
XはCl又はBrであり、
但し、
XがClであり、かつRがCFである場合、mは1であり、
XがBrであり、かつRがCFである場合、mは1であり、
が環状である場合、m+n=0である]によって表されるハイドロフルオロオレフィンを対象とする。
【0019】
いくつかの実施形態では、構造式(I)のうちの特定のハイドロフルオロオレフィンは、以下の構造式:
CFHCFCFCF=CHCl (IA)
又は
CFH(CFCF=CHBr (IB)
[式中、nは0又は2である]を有するハイドロフルオロオレフィンを含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、本開示は、以下の構造式(II):
(CFH)CF=CHX (II)
[式中、Rは、1~6、1~5、1~4、1~3、又は1~2個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、又は環状ペルフルオロアルキル基であり、任意に、窒素又は酸素から選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含み、
nは0又は1であり、
XはCl又はBrであり、
但し、
がCFである場合、nは1である]によって表されるハイドロフルオロオレフィンを対象とする。
【0021】
いくつかの実施形態では、構造式(II)のうちの特定のハイドロフルオロオレフィンは、以下の構造式:
CF=CHCl (IIA)
[式中、Rは、2~6、2~5、2~4、又は2~3個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、又は環状ペルフルオロアルキル基であり、任意に、窒素又は酸素から選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含む]
CF=CHCl (IIB)
[式中、Rは、2~3個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基である]
CF=CHBr (IIC)
[式中、Rは、2~6、2~5、2~4、又は2~3個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、又は環状ペルフルオロアルキル基であり、任意に、窒素又は酸素から選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含む]、又は
CF=CHBr (IID)
[式中、Rは、2~3個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基である]を有するハイドロフルオロオレフィンを含み得る。
【0022】
本開示の目的で、ハイドロフルオロオレフィン化合物のいずれかは、一般式又は化学構造のいずれかに示されているものとは関係なく、E異性体、Z異性体、又はE異性体とZ異性体との混合物を含んでもよいことを理解されたい。
【0023】
いくつかの実施形態では、上述の連結されたヘテロ原子のいずれかは、Oが2個の炭素原子に結合した第二級Oヘテロ原子であってもよい。いくつかの実施形態では、上述の連結されたヘテロ原子のいずれかは、Nが3個のペルフルオロ化炭素原子に結合した第三級Nヘテロ原子であってもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、上記ハイドロフルオロオレフィンのいずれかは、洗浄溶媒として使用するのに非常に好適となる、優れた炭化水素溶解度を有してもよい。この点に関して、いくつかの実施形態では、上記ハイドロフルオロオレフィンのいずれかは、以下のように定義される溶解度係数:
溶解度係数(Solubility Factor、SF)=((LSH/14)-1)-3.5((T-70)/70)+0.643
[式中、LSHは、本開示の実施例の最大可溶性炭化水素試験に従って決定され、Tは(摂氏度における)流体の標準沸点である]を有し得る。いくつかの実施形態では、ハイドロフルオロオレフィンのLSHは、非負整数で増加し、14~25、17~23、又は17~21であり得る。いくつかの実施形態では、上記ハイドロフルオロオレフィンのいずれかは、0より大きい、0.1より大きい、0.2、0.5、1.0、1.1、又は1.2より大きい溶解度係数(SF)を有し得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物のフッ素含有量は、化合物をASTM D-3278-96 e-1試験法(「Flash Point of Liquids by Small Scale Closed Cup Apparatus」)による不燃性とするのに十分であり得る。
【0026】
様々な実施形態では、一般式(I)の化合物の代表例として、以下が挙げられる。
【化1】
【化2】
【0027】
様々な実施形態では、一般式(II)の化合物の代表例として、以下が挙げられる。
【化3】
【化4】
【0028】
いくつかの実施形態では、本開示のハイドロフルオロオレフィンは、広い動作温度範囲にわたって有用であり得る。この点に関して、いくつかの実施形態では、本開示のハイドロフルオロオレフィンは、摂氏30、40、又は50度以上、かつ摂氏150、140、130、120、110、100、90、又は80度以下の沸点を有し得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、本開示のハイドロフルオロオレフィンは、疎水性であり、比較的化学反応性に乏しく、熱的に安定であり得る。ハイドロフルオロオレフィン化合物は、環境への影響が少ない場合がある。この点に関して、本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物は、200未満、150、100、50、又は10未満の地球温暖化係数(global warming potential、GWP)を有し得る。本明細書で使用する場合、GWPは、化合物の構造に基づく化合物の地球温暖化係数の相対的尺度である。化合物のGWPは、1990年に気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)によって規定され、2007年に改訂されており、特定の積分期間(integration time horizon、ITH)にわたる、1キログラムのCO放出による温暖化に対する、1キログラムの化合物放出による温暖化として計算される。
【数1】
【0030】
この式中、aは大気中の化合物の単位質量増加当たりの放射強制力(その化合物のIR吸光度に起因する大気を通る放射束の変化)であり、Cは化合物の大気濃度であり、τは化合物の大気寿命であり、tは時間であり、iは対象化合物である。?通例許容されるITHは、短期間の効果(20年間)と長期間の効果(500年間以上)との間の折衷点を表す100年間である。大気中の有機化合物iの濃度は、擬一次速度論(すなわち、指数関数的減衰)に従うと仮定される。同じ時間間隔のCOの濃度は、大気からのCOの交換及び除去に関する、より複雑なモデルを組み込む(Bern炭素循環モデル)。
【0031】
いくつかの実施形態では、本開示の臭素化又は塩素化ハイドロフルオロオレフィン化合物は、最初に、NaBH又はLiAlHなどの好適な還元剤により、ペルフルオロ化酸フッ化物を還元してアルコールを得ることによって、合成することができる。アルコールは、ラジカル開始剤の存在下で、ペルフルオロ化オレフィンにメタノールを付加することによって調製することもできる(このような開始剤の例としては、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(tert-amylperoxy-2-ethylhexanoate、TAPEH、Arkema(Crosby,TX)からLUPEROX 575として入手可能)、ラウリルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシド、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、及びこれらの混合物が挙げられる。その後のトリフラート又はノナフラートへの変換は、塩基(例えば、NaOH、KOH、NaCO、又はKCO)の存在下で、CFSOF又はCFCFCFCFSOFとの反応によって起こる。次いで、得られたトリフラート又はノナフラートを、それぞれ、極性非プロトン性溶媒(例えば、DMF、NMP、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン、ジグリム、又はテトラグリム)中で、LiCl又はLiBrによる置換によって、それぞれの塩化物又は臭化物に変換することができる。次いで、得られた塩化物又は臭化物を、脱フッ化水素化を促進するため、触媒量の相間移動触媒、例えばテトラブチルアンモニウムクロリドと共に水性塩基(例えば、50%KOH又はNaOH)に供して、所望のハイドロクロロ(ブロモ)フルオロオレフィンを得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示は更に、上記ハイドロフルオロオレフィン化合物を主要成分として含む作動流体を対象とする。例えば、作動流体は、上記ハイドロフルオロオレフィン化合物を、作動流体の総重量に基づいて、少なくとも25重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%又は少なくとも99重量%含んでもよい。作動流体は、ハイドロフルオロオレフィン化合物に加えて、次の成分:アルコール、エーテル、アルカン、アルケン、ハロアルケン、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロ化第三級アミン、ペルフルオロエーテル、シクロアルカン、エステル、ケトン、オキシラン、芳香族、シロキサン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロエーテル、又はこれらの混合物のうちの1種以上を、作動流体の総重量に基づいて合計で最大75重量%、最大50重量%、最大30重量%、最大20重量%、最大10重量%、又は最大5重量%含んでもよい。このような追加成分は、組成物の特性を、特定の用途向けに改変又は強化するために選択できる。
【0033】
いくつかの実施形態では、本開示は、1種以上の本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む洗浄組成物に関する。使用時に、洗浄組成物は、基材の表面から汚染物質を除去する(例えば、溶解する)働きをすることができる。例えば、軽質炭化水素汚染物質などの物質;鉱油及びグリースなどの高分子量炭化水素汚染物質;ペルフルオロポリエーテル、ブロモトリフルオロエチレンオリゴマー(ジャイロスコープ流体)、及びクロロトリフルオロエチレンオリゴマー(油圧油、潤滑剤)などのフルオロカーボン汚染物質;シリコーン油及びグリース;はんだフラックス;微粒子;水;並びに、精密、電子、金属、及び医療機器の洗浄で遭遇するその他の汚染物質を除去することができる。いくつかの実施形態では、本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物は、長鎖炭化水素アルカン汚染物質を除去するのに特に好適であり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、本開示の洗浄組成物は、1種以上の共溶媒を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ハイドロフルオロオレフィン化合物は洗浄組成物中に、ハイドロフルオロオレフィン化合物と共溶媒との総重量に基づいて、50重量%より大きい、60重量%より大きい、70重量%より大きい、80重量%より大きい、90重量%より大きい、又は95重量%より大きい量で存在し得る。
【0035】
例示的な実施形態において、共溶媒としては、アルコール、エーテル、アルカン、アルケン、ハロアルケン、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロ化第三級アミン、ペルフルオロエーテル、シクロアルカン、エステル、ケトン、オキシラン、芳香族、ハロ芳香族、シロキサン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロエーテル、又はこれらの混合物を挙げることができる。洗浄組成物に使用できる共溶媒の代表例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブチルアルコール、メチルt-ブチルエーテル、メチルt-アミルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、シクロヘキサン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-デカン、テルペン(例えば、a-ピネン、カンフェン、及びリモネン)、トランス-1,2-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、メチルシクロペンタン、デカリン、デカン酸メチル、酢酸t-ブチル、酢酸エチル、フタル酸ジエチル、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、ナフタレン、トルエン、p-クロロベンゾトリフルオリド、トリフルオロトルエン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロ-N-メチルモルホリン、ペルフルオロ-2-ブチルオキサシクロペンタン、塩化メチレン、クロロシクロヘキサン、1-クロロブタン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ジクロロエタン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロ-3,3-ジクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロ-1,3-ジクロロプロパン、2,3-ジヒドロペルフルオロペンタン、1,1,1,2,2,4-ヘキサフルオロブタン、1-トリフルオロメチル-1,2,2-トリフルオロシクロブタン、3-メチル-1,1,2,2-テトラフルオロシクロブタン、1-ヒドロペンタデカフルオロヘプタン、又はこれらの混合物を挙げることができる。このような共溶媒は、例えば、特定の用途向けに洗浄組成物の溶解特性を改変又は強化するように選択でき、得られる組成物が引火点を持たないような比(共溶媒とハイドロフルオロオレフィン化合物との比)で利用することができる。
【0036】
様々な実施形態では、洗浄組成物は、1種以上の界面活性剤を含んでもよい。好適な界面活性剤としては、フッ素化オレフィンに十分に可溶性であり、汚染物質を溶解、分散又は排除することによって、汚染物質の除去を促進する界面活性剤が挙げられる。1つの有用な分類の界面活性剤は、約14未満の親水性-親油性バランス(hydrophilic-lipophilic balance、HLB)値を有する非イオン性界面活性剤である。例としては、エトキシ化アルコール、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化脂肪酸、アルキルアリー(alkylary)スルホネート、グリセロールエステル、エトキシ化フルオロアルコール、及びフッ素化スルホンアミドが挙げられる。ある界面活性剤が油性汚染物質の除去を促進するために洗浄組成物に添加され、別の界面活性剤が水溶性汚染物質の除去を促進するために添加された、相補的特性を有する界面活性剤の混合物を使用してもよい。界面活性剤は、使用する場合、汚染物質の除去を促進するのに十分な量で添加することができる。典型的には、界面活性剤は、界面活性剤とハイドロフルオロオレフィン化合物との総重量に基づいて、0.1~5.0重量%の量、又は約0.2~2.0重量%の量で添加される。
【0037】
いくつかの実施形態では、特定の用途に望ましい場合、洗浄組成物は、1種以上の溶解又は分散された気体、液体又は固体添加剤(例えば、二酸化炭素ガス、安定剤、酸化防止剤、又は活性炭)を更に含むことができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示は更に、洗浄後の状態の上記洗浄組成物を対象とする。この点に関して、本開示は、1種以上の溶解若しくは分散した(又は他の方法で中に含有される)汚染物質、例えば、上述の汚染物質のいずれかなどを含む、上記洗浄組成物のいずれかを対象とする。様々な実施形態では、溶解又は分散した汚染物質は、1種以上の長鎖炭化水素アルカンを含み得る。溶解又は分散した汚染物質は、ハイドロフルオロオレフィン化合物と汚染物質との総重量に基づいて、0.0001重量%~0.1重量%、0.1~10重量%、若しくは10~20重量%の量、又は少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、若しくは少なくとも20重量%の量で、洗浄後の洗浄組成物中に存在し得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示の洗浄組成物は、気体状態若しくは液体状態のいずれか(又は両方)で使用することができ、基材と「接触させる」ための公知技法又は将来の技法のいずれかを利用することができる。例えば、液体洗浄組成物を基材上に噴霧若しくははけ塗りすることができ、気体洗浄組成物を基材に吹き付けることができ、又は基材を気体若しくは液体組成物のいずれかにさらすことができる。高温、超音波エネルギー及び/又は撹拌を使用して、洗浄を推進することができる。様々な異なる溶媒洗浄技法が、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、B.N.EllisによってCleaning and Contamination of Electronics Components and Assemblies,Electrochemical Publications Limited,Ayr,Scotland,182-94(1986)に記載されている。
【0040】
有機基材及び無機基材の両方を本開示の方法によって洗浄することができる。基材の代表例としては、金属、セラミック、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、天然繊維(及び天然繊維に由来する布地)、例えば、綿、絹、毛皮、スエード、革、リネン及びウール、合成繊維(及び布地)、例えば、ポリエステル、レーヨン、アクリル、ナイロン又はこれらの混紡、天然繊維と合成繊維との混紡を含む布地、並びに先述の材料の複合材が挙げられる。いくつかの実施形態では、この方法は、電子部品(例えば回路基板)、光媒体若しくは磁気媒体、又は医療機器の精密洗浄に使用され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示は、基材を洗浄するための方法に関する。洗浄方法は、汚染された基材を上述の洗浄組成物と接触させることによって、行うことができる。
【0042】
実施形態のリスト
1.組成物であって、
以下の構造式(I):
(H)-R-(CFH)-CF=CHX (I)
[式中、Rは1~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、又は環状ペルフルオロアルキル基であり、任意に、窒素又は酸素から選択される少なくとも1個の連結されたヘテロ原子を含み、
nは0又は1であり、
mは0又は1であり、
m+n=0又は1であり、
XはCl又はBrであり、
但し、
XがClであり、かつRがCF3である場合、mは1であり、
XがBrであり、かつRがCFである場合、mは1であり、
が環状である場合、m+n=0である]によって表されるハイドロフルオロオレフィンと、
汚染物質とを含み、
ハイドロフルオロオレフィンが、組成物中に、組成物の総重量に基づいて少なくとも25重量%の量で存在する、組成物。
2.汚染物質が長鎖炭化水素アルカンを含む、実施形態1に記載の組成物。
3.ハイドロフルオロオレフィン化合物が、以下の一般式(IA):
CFHCFCFCF=CHCl (IA)
を有する、実施形態1又は2に記載の組成物。
4.ハイドロフルオロオレフィン化合物が、以下の一般式(IB):
CFH(CFCF=CHBr (IB)
[式中、nは0又は2である]を有する、実施形態1又は2に記載の組成物。
5.ハイドロフルオロオレフィン化合物が、0より大きい溶解度係数を有する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の組成物。
【実施例
【0043】
本開示の目的及び利点を、以下の例示的な実施例によって更に例示する。別途断りのない限り、実施例及び明細書のその他の部分における、全ての部、百分率、比などは重量によるものであり、実施例で使用した全ての試薬は、一般的な化学物質供給業者、例えば、Sigma-Aldrich Corp.(Saint Louis,MO,US)などから入手したもの、若しくは入手可能なものであるか、又は通常の方法によって合成することができる。
【0044】
以下の省略形を本明細書で使用する:mL=ミリリットル、L=リットル、mol=モル、mmol=ミリモル、min=分、hr=時間、d=日、g=グラム、Å=オングストローム、μm=マイクロメートル(10-6m)、℃=摂氏度、bp=沸点、mp=融点。「RT」又は「室温」は、およそ20~25℃の周囲温度を指し、平均は23℃である。
【0045】
【表1】
【0046】
試験方法
最大可溶性炭化水素(Largest Soluble Hydrocarbon、LSH):各ハイドロフルオロオレフィン化合物のLSHは、室温(25℃)及び50℃において、化合物を様々な分子量の炭化水素(C2n+2、式中、n=9~24)と、約1:1~1:2のハイドロフルオロオレフィン:炭化水素の重量比で混合することによって決定した。LSH値は、肉眼にヘイズを呈することなくハイドロフルオロオレフィンと相溶性であった、最大の炭化水素についての式C2n+2におけるnの値として報告される。本明細書では、nの値が大きいほど、ハイドロフルオロオレフィンの炭化水素を洗浄する能力が高いことを示すものとして解釈する。
【0047】
大気寿命:実施例1~3のハイドロブロモフルオロオレフィンの大気寿命は、ヒドロキシル基との反応速度から決定した。クロロメタン及びエタンなどの基準化合物に対する、気体状ハイドロブロモフルオロオレフィンとヒドロキシル基との擬一次反応速度を、一連の実験において測定した。測定は、研磨した半導体グレードの石英ウィンドウを備える、5.7Lの加熱したFTIRガスセル中で実行した。480Wの水銀-キセノンバルブを備えるOriel Instruments UV Lamp,Model 66921を使用して、水蒸気の存在下でオゾンを光分解してヒドロキシル基を発生させた。ハイドロブロモフルオロオレフィン及び基準化合物の濃度を、反応時間の関数として、Midac CorporationからのI-Series FTIRを使用して測定した。大気寿命を、基準化合物に対するハイドロブロモフルオロオレフィンの反応速度と、報告される基準化合物の寿命とから、以下に示すように計算した
【数2】
(式中、τは、ハイドロブロモフルオロオレフィンの大気寿命であり、τは、基準化合物の大気寿命であり、k及びkはそれぞれ、ヒドロキシル基と、ハイドロブロモフルオロオレフィン及び基準化合物との反応の速度定数である)。
【0048】
試料調製
実施例1:1-ブロモ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン
【化5】
磁気撹拌装置、熱電対、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える2L三口丸フラスコに、ペンタフルオロ-1-プロパノール(175g、1.17mol)、PBSF(360g、1.19mol)、及び水(400mL)を投入した。試薬の添加中に、温度上昇は観察されなかった。次いで、滴下漏斗に水酸化ナトリウム(200gの50%水中溶液)を投入した。次いで、50%水酸化ナトリウム溶液を、内部の反応温度を50℃未満に保つ速度で、撹拌混合物に滴加した。水酸化ナトリウムが全て添加されると、白色に曇った混合物が観察された。加熱せずに16時間撹拌した後、得られた反応混合物を、水(300mL)の添加によって希釈した。界面に白色固体を有する、2つの層が観察された。底層を固体と共に濾過して、いくつかの水層を含むが大部分がフルオロケミカル層からなる濾液を得た。次いで、濾液を水(300mL)で洗浄し、フルオロケミカル相を収集して、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(299g、57%収率)を得た。GC-FID分析によって、99%純度であることが確認された。生成物を4Åモレキュラーシーブによって貯蔵し、更に精製することなく次の工程に使用した。
【0049】
磁気撹拌バー、温度プローブ、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える500mL三口丸底フラスコに、ジグリム(200mL)を投入した。次いで、臭化リチウム(75.2g、866mmol)を少しずつ添加し、54℃までの温度上昇が観察された。温度が35℃まで低下したら、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(200.1g、440mmol)を、40℃を超える反応温度が回避される速度で、滴下漏斗を介して添加した。添加が完了した後、得られた反応混合物を60℃に加熱し、続いて2日間撹拌した。次いで、反応混合物を撹拌しながら室温に冷却し、続いて、水(200mL)を添加した。フルオラス層を収集し、水(2×100mL)で再び洗浄して、所望の3-ブロモ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロ-プロパン(75.5g、75質量%、60%収率)を得た。単離された材料を、更に精製することなく次の工程に使用した。
【0050】
水冷還流凝縮器、磁気撹拌バー、及びゴムセプタムを備える二口丸底フラスコに、粉末水酸化カリウム(37.6gの85重量%KOH粉末、570mmol)及び水(70mL)を添加した。水の添加後、温度は65℃に達した。溶液を撹拌しながら35℃に放冷した後、テトラブチルアンモニウムクロリド(5.0g、18.0mmol)を添加した。次いで、3-ブロモ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(78重量%純度で95.1g、348mmol)を、35℃の撹拌混合溶液に、シリンジを介して15分かけて滴加した。次いで、得られた琥珀色混合物を、同じ温度で1時間撹拌した。フルオロケミカル相のGC-FID分析は、出発材料のおよそ92%が変換されたことを示した。反応物を35℃で一晩撹拌した。次いで、得られた反応混合物を室温に放冷し、続いて100mLの水を添加した。フルオラス相を分離してGC-FIDによって分析し、混合物が、98%の所望の1-ブロモ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンを含有していることが示された。同心円管蒸留(34℃、740mm/Hg)によって、無色液体として、所望の1-ブロモ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(42.4g、62%収率)を得た。GC-MS分析によって、精製された組成物の識別情報を確認した。
【0051】
実施例2:1-ブロモ-2,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-1-エン
【化6】
磁気撹拌バー、温度プローブ、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える2L三口丸フラスコに、ヘプタフルオロ-1-ブタノール(198.7g、993.4mmol)、PBSF(300.1g、993.4mmol)、及び水(400mL)を投入した。試薬の添加中に、温度上昇は観察されなかった。次いで、滴下漏斗に水酸化カリウム(167.2gの50%水中溶液)を投入した。次いで、水酸化カリウム溶液を、内部の反応温度を43℃未満に保つ速度で、撹拌混合物に滴加した。水酸化カリウムが全て添加されると、白色に曇った混合物が観察された。加熱せずに16時間撹拌した後、得られた反応混合物を、水(300mL)の添加によって希釈した。界面に白色固体を有する、2つの層が観察された。底層を固体と共に濾過して、いくつかの水層を含むが大部分がフルオロケミカル層からなる濾液を得た。次いで、濾液を水(300mL)で洗浄し、フルオロケミカル相を収集して、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(415g、93質量%,81%収率)を得た。所望の生成物の質量%純度を、GC-FID分析によって決定した。生成物を4Åモレキュラーシーブによって貯蔵し、更に精製することなく次の工程に使用した。
【0052】
磁気撹拌バー、温度プローブ、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える500mL三口丸底フラスコに、ジグリム(200mL)を投入した。次いで、臭化リチウム(70.2g、808mmol)を少しずつ添加し、50℃への温度上昇が観察された。温度が35℃まで低下したら、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(197.1g、415mmol)を、40℃を超える反応温度が回避される速度で、滴下漏斗を介して添加した。添加が完了した後、得られた反応混合物を、撹拌しながら60℃に加熱した。16時間後、次いで、反応混合物を撹拌しながら室温に冷却し、続いて、水(200mL)を添加した。フルオラス層を収集し、水(2×100mL)で再び洗浄して、所望の4-ブロモ-1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロブタン(93.7g、81質量%、71%収率)を得た。単離された材料を、更に精製することなく次の工程に使用した。
【0053】
水冷還流凝縮器、磁気撹拌バー、及びゴムセプタムを備える二口丸底フラスコに、粉末水酸化カリウム(54.6gの85重量%KOH粉末、827mmol)及び水(70mL)を添加した。水の添加後、温度は65℃超に達した。溶液を撹拌しながら30℃に放冷した後、テトラブチルアンモニウムクロリド(5.0g、18mmol)を添加した。次いで、得られた混合物を35℃にゆっくりと加熱し、続いて、4-ブロモ-1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロ-ブタン(81重量%純度で134.3g、414mmol)を、シリンジを介して15分かけて滴加した。次いで、得られた琥珀色混合物を、同じ温度で1時間撹拌した。フルオロケミカル相のGC-FID分析は、出発材料のおよそ92%が変換されたことを示した。35℃で一晩撹拌した後、得られた反応混合物を室温に放冷し、続いて100mLの水を添加した。フルオラス相を分離してGC-FIDによって分析し、混合物が、88%の所望の1-ブロモ-2,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-1-エンを含有していることが示された。同心円管蒸留(57℃、740mm/Hg)によって、無色液体として、所望の1-ブロモ-2,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-1-エン(85.1g、85%収率)を得た。GC-MS分析によって、精製された組成物の識別情報を確認した。
【0054】
実施例3:1-ブロモ-2,3,3-トリフルオロプロパ-1-エン
【化7】
磁気撹拌装置、熱電対、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える2L三口丸底フラスコに、2,2,3,3-テトラフルオロプロパン-1-オール(200g、1.51mol)、PBSF(457.2g、1.51mol)、及び水(400mL)を投入した。試薬の添加中に、温度上昇は観察されなかった。次いで、滴下漏斗に水酸化カリウム(238gの50%水中溶液、2.12mol)を投入した。次いで、50%水酸化カリウム溶液を、内部の反応温度を43℃未満に保つ速度で、撹拌混合物に滴加した。水酸化カリウムが全て添加されると、白色に曇った混合物が観察された。加熱せずに16時間撹拌した後、得られた反応混合物を、水(300mL)の添加によって希釈した。界面に白色固体を有する、2つの層が観察された。底層を固体と共に濾過して、いくつかの水層を含むが大部分がフルオロケミカル層からなる濾液を得た。次いで、濾液を水(300mL)で洗浄し、フルオロケミカル相を収集して、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(446g、87質量%、62%収率)を得た。生成物の質量%純度は、GC-FID分析によって確認した。生成物を4Åモレキュラーシーブによって貯蔵し、更に精製することなく次の工程に使用した。
【0055】
磁気撹拌バー、温度プローブ、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える500mL三口丸底フラスコに、ジグリム(200mL)を投入した。次いで、臭化リチウム(76.3g、879mmol)を少しずつ添加し、54℃への温度上昇が観察された。温度が35℃まで低下したら、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(190g、86質量%、395mmol)を、40℃を超える反応温度が回避される速度で、滴下漏斗を介して添加した。添加が完了した後、得られた反応混合物を、撹拌しながら60℃に加熱した。16時間後、次いで、反応混合物を撹拌しながら室温に冷却し、続いて、水(200mL)を添加した。フルオラス層を収集し、水(2×100mL)で再び洗浄して、所望の3-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(72.4g、71質量%、69%収率)を得た。単離された材料を、更に精製することなく次の工程に使用した。
【0056】
水冷還流凝縮器、磁気撹拌バー、及びゴムセプタムを備える二口丸底フラスコに、粉末水酸化カリウム(22.2gの85重量%KOH粉末、336mmol)及び水(55mL)を添加した。水の添加後、温度は65℃超に達した。溶液を撹拌しながら26℃に放冷した後、テトラブチルアンモニウムクロリド(2.1g、7.6mmol)を添加した。次いで、得られた混合物を35℃にゆっくりと加熱し、続いて、3-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(65重量%純度で54g、180mmol)を、シリンジを介して5分かけて滴加した。次いで、得られた琥珀色混合物を、同じ温度で16時間撹拌した。次いで、得られた反応混合物を室温に放冷し、続いて100mLの水を添加した。フルオロケミカル相を分離してGC-FIDによって分析し、混合物が、54%の所望の1-ブロモ-2,3,3-トリフルオロプロパ-1-エンを含有していることが示された。同心円管蒸留(75℃、740mm/Hg)によって、無色液体として、所望の1-ブロモ-2,3,3-トリフルオロプロパ-1-エン(25.1g、58%収率)を得た。GC-MS分析によって、精製された組成物の識別情報を確認した。
【0057】
実施例4:1-ブロモ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロペンタ-1-エン
【化8】
磁気撹拌装置、熱電対、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える2L三口丸底フラスコに、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンタン-1-オール(200g、862mmol)、PBSF(270g、894mmol)、及び水(400mL)を投入した。試薬の添加中に、温度上昇は観察されなかった。次いで、滴下漏斗に水酸化ナトリウム(94.2gの50%水中溶液、1.18mol)を投入した。次いで、50%水酸化ナトリウム溶液を、内部の反応温度を50℃未満に保つ速度で、撹拌混合物に滴加した。水酸化ナトリウムが全て添加されると、白色に曇った混合物が観察された。加熱せずに16時間撹拌した後、得られた反応混合物を、水(300mL)の添加によって希釈した。界面に白色固体を有する、2つの層が観察された。底層を固体と共に濾過して、いくつかの水層を含むが大部分がフルオロケミカル層からなる濾液を得た。次いで、濾液を水(300mL)で洗浄し、フルオロケミカル相を収集して、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(304.9g、85質量%,58%収率)を得た。生成物の質量%純度は、GC-FID分析によって確認した。生成物を4Åモレキュラーシーブによって貯蔵し、更に精製することなく次の工程に使用した。
【0058】
磁気撹拌バー、温度プローブ、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える500mL三口丸底フラスコに、ジグリム(150mL)を投入した。次いで、臭化リチウム(60.5g、697mmol)を少しずつ添加し、55℃までの温度上昇が観察された。温度が35℃まで低下したら、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(188g、366mmol)を、40℃を超える反応温度が回避される速度で、滴下漏斗を介して添加した。添加が完了した後、得られた反応混合物を、撹拌しながら58℃に加熱した。16時間後、次いで、反応混合物を撹拌しながら室温に冷却し、続いて、水(200mL)を添加した。フルオラス層を収集し、水(2×100mL)で再び洗浄して、所望の5-ブロモ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンタン(105g、80質量%、78%収率)を得た。単離された材料を、更に精製することなく次の工程に使用した。
【0059】
水冷還流凝縮器、磁気撹拌バー、及びゴムセプタムを備える二口丸底フラスコに、粉末水酸化カリウム(45.0gの85重量%KOH粉末、682mmol)及び水(50mL)を添加した。水の添加後、温度は65℃超に達した。溶液を撹拌しながら30℃に放冷した後、テトラブチルアンモニウムクロリド(4.5g、16mmol)を添加した。次いで、得られた混合物を35℃にゆっくりと加熱し、続いて、5-ブロモ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンタン(80重量%純度で100g、271mmol)を、シリンジを介して5分かけて滴加した。次いで、得られた琥珀色混合物を60℃に加熱し、同じ温度で16時間撹拌した。次いで、得られた反応混合物を室温に放冷し、続いて100mLの水を添加した。フルオロケミカル相を分離してGC-FIDによって分析し、5-ブロモ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンタン出発材料の99%超が変換され、混合物が95%の所望の1-ブロモ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロペンタ-1-エンを含有していることが示された。同心円管蒸留(110℃、740mm/Hg)によって、無色液体として、所望の1-ブロモ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロペンタ-1-エン(41.4g、70%収率)を得た。GC-MS分析によって、精製された組成物の識別情報を確認した。
【0060】
実施例5:1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5,5-ペンタ-1-エン
【化9】
機械的撹拌装置、熱電対、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える5L三口丸底フラスコに、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンタン-1-オール(500g、2.0mol)、PBSF(604g、2.0mol)、及び2500gの水を投入した。337gの50%KOHを、温度を35℃未満に保つ速度で、滴下漏斗を介してゆっくりと添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を分液漏斗に加えた。下相は依然として、13.3%の未反応2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンタン-1-オール及び4.0%PBSFを含有していた。反応混合物を、上記を備える2L丸底フラスコに投入し、500mLの水、110gのPBSF、及び81gの50%KOHを添加した。混合物を2時間撹拌し、濾過し、相分離させ、水洗して、625gの2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル1,1,2,2,3,3,4,4,5-ノナフルオロペンタン-1-スルホネートを、ガスクロマトグラフィーによる99%の純度で得た。
【0061】
磁気撹拌装置、水凝縮器、Nバブラー、熱電対、及び滴下漏斗を備える1L丸底フラスコに、1600gのジメチルホルムアミド及び塩化リチウム(25.7g、0.61mol)を投入した。発熱が観察された。フラスコを室温に冷却し、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル1,1,2,2,3,3,4,4,5-ノナフルオロペンタン-1-スルホネート(215g、0.40mol)を添加し、フラスコを室温で48時間撹拌した。1Lの水を添加し、混合物を水蒸気蒸留して、105.2gの5-クロロ-1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロ-ペンタンを、ガスクロマトグラフィーによる98.8%の純度で得た。GC-MSによって構造を確認した。
【0062】
磁気撹拌装置、水凝縮器、Nバブラー、熱電対、及び加熱マントルを備える200mL丸底フラスコに、23.2gの90%KOH及び25gの水を投入した。フラスコを室温に冷却した。2.5gのテトラブチルアンモニウムクロリド及び5-クロロ-1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロ-ペンタン(50g、0.19mol)を添加し、フラスコの周囲の氷浴によって、温度を35℃未満に保った。混合物を1時間撹拌し、相分離させて、41gの1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5,5-ペンタ-1-エンを96.8%の純度で得た。1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5,5-ペンタ-1-エンを、上記のように調製した他のバッチと組み合わせ、F-NMRによって決定されるように、99.9%の純度に分画した。沸点は約64℃であった。
【0063】
実施例6:1-クロロ-2,3,3,4,4,4-ブタ-1-エン
【化10】
機械的撹拌装置、熱電対、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える3L三口丸底フラスコに、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブタン-1-オール(350g、1.75mol)、PBSF(528g、1.75mol)、及び700gの水を投入した。300gの50%KOHを、温度を35℃未満に保つ速度で、滴下漏斗を介してゆっくりと添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を分液漏斗に加えた。下相を水洗して、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(502g、GCによる69%純度)を得た。材料を200mlの水及び50gの50%KOHで再処理し、2時間撹拌した。相分離及び水洗浄によって、461gの2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネートを得た。ガスクロマトグラフィーによる純度は95.5%であった。
【0064】
オーバーヘッド撹拌装置、水凝縮器、Nバブラー、熱電対、及び滴下漏斗を備える3L丸底フラスコに、1800mLのジメチルホルムアミド及び塩化リチウム(126.6g、2.98mol)を投入した。発熱が観察された。フラスコを室温に冷却し、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(430g、0.89mol)を添加し、フラスコを50℃に加熱し、16時間保持した。1Lの水を添加し、混合物を水蒸気蒸留して、174.6gの4-クロロ-1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロ-ブタンを、ガスクロマトグラフによる99.0%純度で得た。GC-MSによって構造を確認した。
【0065】
磁気撹拌装置、水凝縮器、Nバブラー、熱電対、及び滴下漏斗を備える1L丸底フラスコに、メタノール(198g、6.2mol)中に溶解させたナトリウムメトキシド(50.4g、0.93mol)を投入した。4-クロロ-1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロ-ブタン(170g、0.78mol)を添加し、混合物を50℃に加熱した。24時間後、出発材料の38%が残存していた。追加で同一のメタノール中のナトリウムメトキシドの投入を加え、50℃で更に2時間保持した。フラスコを室温に冷却し、水を添加した。下相を分離し、分画して、98.5%超の純度で、約37℃の沸点を有する27.4gの1-クロロ-2,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-ブタ-1-エンを得た。GC/MS及びF-NMRによって構造を確認した。
【0066】
実施例7:1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-3-(トリフルオロメトキシ)プロパ-1-エン
【化11】
ドライアイス浴、窒素バブラー、SWAGELOK継ぎ手を有するPFTE配管、冷却器に接続された凝縮器、磁気撹拌バー、及び熱電対を備える500mL丸底フラスコに、水素化ホウ素ナトリウム(37g、977.993mmol)及びジエチレングリコールジメチルエーテル(187.4g、1397mmol)を投入した。次いで、フラスコを-40℃に冷却し、凝縮器を-15℃に設定し、ペルフルオロメトキシプロピオニルフルオリド(214.9g、907.7mmol)を、SWAGELOK継ぎ手を有するPTFE管を使用して、4時間にわたってゆっくりと反転シリンダから供給した。添加中、反応物を-15℃未満に保った。添加が完了した時点でドライアイス浴を取り外し、反応物を16時間撹拌した。反応物をメタノール(98g、3058.52mmol)で、2時間にわたってクエンチした。オフガス発生が止まるまで、反応器を更に30分間撹拌した。次いで、反応材料を、オーバーヘッド撹拌装置を備える1000mL丸底フラスコに移した。反応物を撹拌しながら、200mLの水をフラスコに添加し、続いて、リン酸(260g、928.631mmol、35質量%)を滴下漏斗から45分間かけて添加した。反応物を50℃に加熱し、30分間撹拌し、次いで、ドライアイスで冷却し、相分離させ、下相を水で3回洗浄した。48GC-FID面積%で、216gの材料、2,2,3,3-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメトキシ)プロパン-1-オールを回収した。回収した材料を更に4回洗浄した。76GC-FID面積%で、124gの2,2,3,3-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメトキシ)プロパン-1-オール(124g、573.94mmol、63.23%収率)を回収した。
【0067】
クライゼンアダプタ、水凝縮器、滴下漏斗、熱電対、及びオーバーヘッド撹拌装置を備える500mL丸底フラスコに、2,2,3,3-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメトキシ)プロパン-1-オール(50g、175.89mmol、76質量%)、ノナフルオロブタンスルホニル(1.05当量、184.68mmol)、水(70.2g、3900mmol)を投入した。水酸化カリウム(29g、516.889mmol)を30.2gの水に溶解させることによって、およそ50重量%のKOH溶液を調製した。得られた溶液を滴下漏斗を介して滴加した。添加中、ドライアイス水浴を使用して、反応温度を35℃未満に保った。添加後、反応物を室温で16時間撹拌した。反応物の試料を水洗し、GC分析によって、未変換アルコールが12GC-FID面積%であることが判明した。更に15.8gのPBSFを添加し、反応物を2時間撹拌した。最終的なGC分析は、2GC-FID面積%の未変換アルコールを示した。珪藻土による濾過によって固体を除去した後、[2,2,3,3-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメトキシ)プロピル]1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(42g、69.137mmol、39.308%収率)を、GCによる82%の純度で回収した。回収した材料をモレキュラーシーブによって乾燥させた。
【0068】
磁気撹拌プレート、水凝縮器、熱電対、及び滴下漏斗を備える250mL丸底フラスコに、塩化リチウム(9.62g、227mmol)及びN,N-ジメチルホルムアミド(24.1g、330mmol)を投入し、これを懸濁液となるまで撹拌した。更に20mLのジメチルホルムアミド(dimethyl formamide、DMF)を添加して、塩化リチウムの分解を支援した。[2,2,3,3-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメトキシ)プロピル]1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(34.5g、56.8mmol、82%)を、滴下漏斗を介して投入した。最初は添加をゆっくりと進めたが、発熱反応が起こらなかったため、添加速度を上昇させた。反応物を放置して撹拌し、4時間後、少量の試料を水洗し、濾過し、GCによって分析した。7GC-FID面積%のノナフラート以外の反応物は変換されていたため、反応物を更に16時間撹拌した。反応物を水でクエンチし、分液漏斗に移し、下相を収集した。合計10gの3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)プロパン(10g、35.394mmol)を、83GC-FID面積%で回収した。
【0069】
熱電対、磁気撹拌装置、水凝縮器、及び滴下漏斗を備える50mL丸底フラスコに、3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)プロパン(10.5g、44.8mmol、100質量%)、及びテトラブチルアンモニウムクロリド(0.5g、2mmol、100質量%)を投入した。滴下漏斗を使用して、水酸化カリウム(12.11g、107.9mmol、50質量%)を、20分にわたってゆっくりと反応物に投入し、その間に、反応物は黄色/橙色に変化した。添加が完了した後、わずかな発熱が見られた(33.3℃)。40分時点で試料を採取し、GCによって分析した。結果は、オレフィンへの部分的な変換を示した。反応物を16時間撹拌し、その後、反応物を水でクエンチし、相分離させ、水洗した。材料を、0.2μmシリンジフィルターを通過させ、GCによって分析した。GCは、出発材料が完全に変換されたこと、及び所望の材料が83GC-FID面積%であることを示した。次いで、材料を蒸留により精製し、GCによって分析し、場合により99.6GC-FID面積%の所望の材料という結果であった。4.6gの粗製材料のGC-MSデータによって、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-3-(トリフルオロメトキシ)プロパ-1-エン(2.6g、12mmol)の形成が確認された。
【0070】
実施例8:4-(2-クロロ-1-フルオロ-ビニル)-2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-モルホリン
【化12】
オーバーヘッド撹拌器、熱電対、冷水凝縮器、乾燥Nライン及び滴下漏斗を備える3L三口丸底フラスコに、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(800g、3.60mol)及び水素化ホウ素ナトリウム(87.0g、2.30mol)を投入した。混合物を30分間撹拌して、水素化ホウ素ナトリウムの大部分を溶解させた。ドライアイス-水浴を加えて、反応混合物を冷却した。反応温度が10℃に低下した時点で、米国特許第2,713,593号及びR.E.Banks,Preparation,Properties and Industrial Applications of Organofluorine Compounds,pages 19-43,Halsted Press,New York(1982)に本質的に記載されているタイプのシモンズECFセルを介して、4-モルホリンエタノールの電気化学的フッ素化によって調製した2,2-ジフルオロ-2-(2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロモルホリン-4-イル)アセチルフルオリド(699.4g、2.14mol)を、反応温度を65℃未満に保つ速度で、滴下漏斗を介して添加した。2,2-ジフルオロ-2-(2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロモルホリン-4-イル)アセチルフルオリドの添加が完了したら、反応混合物を80℃に加熱し、一晩撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、メタノール(155.8g、4.86mol)をゆっくりと添加することによってクエンチした。次いで、オフガス発生が停止するまで、反応混合物を50℃に加熱した。次いで、1000mLの35%HPOを添加した。反応混合物を50℃に加熱し、形成された塩を溶解させた。反応混合物を分液漏斗内で分離させ、下のフルオロケミカル相を水洗した。697gの粗生成物を得た。GC-MSデータは、粗生成物が、74%の所望の2,2-ジフルオロ-2-(2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロモルホリン-4-イル)エタノールを含有していたことを示している。得られた粗生成物を、ポリリン酸から蒸留した。
【0071】
磁気撹拌装置、熱電対、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える3L三口丸フラスコに、2,2-ジフルオロ-2-(2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロモルホリン-4-イル)エタノール(434.0g、1.40mol)、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホニルフルオリド(442.3g、1.46mol)、及び水(560g、31.09mol)を投入したが、明らかな発熱は観察されなかった。次いで、50%KOH(300.3g、2.68mol)水溶液を、内部の反応温度を35℃未満に保つ速度で、滴下漏斗を介して添加した。KOHが全て添加されると、反応混合物を35℃で3日間撹拌した。反応混合物を分液漏斗に移し、得られたフルオロケミカル相を分離し、水で2回洗浄して、779gの粗生成物を得た。GC-MSデータは、96%の所望の[2,2-ジフルオロ-2-(2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロモルホリン-4-イル)エチル]1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネートを示している。
【0072】
磁気撹拌器、熱電対、冷水浴、冷水凝縮器、乾燥Nライン、及び滴下漏斗を備える2000mL三口丸底フラスコ内で、塩化リチウム(55.6g、1.31mol)及びDMF(600g、8.21mol)を混合した。発熱が収まったら、[2,2-ジフルオロ-2-(2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロモルホリン-4-イル)エチル]1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(738g、1.24mol)を、反応温度を40℃未満に保ちながら、滴下漏斗を介して添加した。添加が完了したら、混合物を60℃で一晩撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、蒸留した。406gの粗生成物を得た。GC/MSデータは、97%の所望の4-(2-クロロ-1,1-ジフルオロ-エチル)-2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-モルホリンを含有していたことを示している。
【0073】
磁気撹拌装置、熱電対、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える1000mL三口丸底フラスコに、KOH(85%、314g、4.76mol)及び水(318g、17.65mol)を添加した。発熱が収まったら、テトラブチルアンモニウムクロリド(7.4g、0.03mol)を添加した。次いで、4-(2-クロロ-1,1-ジフルオロ-エチル)-2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-モルホリン(278g、0.84mol)を、反応温度を20℃未満に保ちながら、滴下漏斗を介して添加した。4-(2-クロロ-1,1-ジフルオロ-エチル)-2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-モルホリンの添加が完了したら、反応混合物を2日間、60℃に加熱した。粗生成物を水蒸気蒸留して、74gの生成物を得たが、GC-MSデータは、生成物が93%の所望の4-[(E/Z)-2-クロロ-1-フルオロ-ビニル]-2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-モルホリンを含有していたことを示している。
【0074】
実施例9:3-クロロ-1,1,2-トリフルオロ-N-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-N-(トリフルオロメチル)プロパ-2-エン-1-アミン
【化13】
オーバーヘッド撹拌器、熱電対、冷水凝縮器、乾燥Nライン及び滴下漏斗を備える3L三口丸底フラスコに、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(201g、0.90mol)及び水素化ホウ素ナトリウム(33g、0.87mol)を投入した。発熱が観察された。混合物を30分間撹拌して、水素化ホウ素ナトリウムの大部分を溶解させた。ドライアイス-水浴を加えて、反応混合物を冷却した。反応温度が10℃に低下した時点で、米国特許第2,713,593号及びR.E.Banks,Preparation,Properties and Industrial Applications of Organofluorine Compounds,pages 19-43,Halsted Press,New York(1982)に本質的に記載されているタイプのシモンズECFセルを介して、メチル3-[エチル(メチル)アミノ]プロパノエートの電気化学的フッ素化によって調製した2,2,3,3-テトラフルオロ-3-[1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル(トリフルオロメチル)アミノ]プロパノイルフルオリド(290g、0.83mol)を、反応温度を65℃未満に保つ速度で、滴下漏斗を介して添加した。2,2,3,3-テトラフルオロ-3-[1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル(トリフルオロメチル)アミノ]プロパノイルフルオリドの添加が完了したら、反応混合物を80℃に加熱し、一晩撹拌した。メタノール(61.96g、1.93mol)をゆっくりと添加することによって、反応混合物をクエンチした。オフガス発生がもはや見られなくなるまで、反応混合物を50℃に加熱した。450mlの35%HPOを添加し、反応混合物を50℃に加熱して、形成された塩を溶解させた。反応混合物を分液漏斗に移し、下相を分離し、水洗した。GC-MSによって確認された、183gの粗生成物を得た。
【0075】
磁気撹拌器、熱電対、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える1000mL三口丸底フラスコ内で、2,2,3,3-テトラフルオロ-3-[1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル(トリフルオロメチル)アミノ]プロパン-1-オール(150g、0.45mol)、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホニルフルオリド(138g、0.46mmol)、水(300g、16.65mol)を組み合わせた。KOH(55.5g、0.50mol、50wtt%)を、フラスコ内の温度を35℃以下に維持する速度で、滴下漏斗を介して滴加した。16時間撹拌した後、反応混合物を濾過し、分液漏斗に移した。ガスクロマトグラフィーは、約50%の変換を示した。フルオロケミカル相を600mLのParr反応器に移し、追加のKOHを投入し、室温で16時間撹拌して、完全に変換させた。反応混合物を相分離させ、濾過した。161gの粗生成物を得た。粗生成物のGC-MSデータは、89%の所望の[2,2,3,3-テトラフルオロ-3-[1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル(トリフルオロメチル)アミノ]プロピル]1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネートを含有していたことを示している。
【0076】
磁気撹拌装置、熱電対、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える2L三口丸底フラスコ内で、塩化リチウム(66g、1.56mol)及びDMF(825ml)を混合した。[2,2,3,3-テトラフルオロ-3-[1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル(トリフルオロメチル)アミノ]プロピル]1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(161g、0.26mol)を添加し、混合物を57℃で2日間撹拌した。粗生成物を、ディーンスタークトラップによって蒸留した。40gの粗生成物を得た。GCデータは、粗生成物が、80%の所望の3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロ-N-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-N-(トリフルオロメチル)プロパン-1-アミンを含有していたことを示している。
【0077】
磁気撹拌装置、熱電対、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える100mL三口丸底フラスコに、KOH(85%、12.7g、0.19mol)及び水(12.7g、0.71mol)を混合した。発熱が観察された。発熱が収まったら、テトラブチルアンモニウムクロリド(0.9g、0.004mol)を添加した。次いで、3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロ-N-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-N-(トリフルオロメチル)プロパン-1-アミン(33.7g、0.096mol)を、反応温度を20℃未満に保ちながら、滴下漏斗を介して、反応フラスコにゆっくりと添加した。1回、3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロ-N-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-N-(トリフルオロメチル)プロパン-1-アミンの添加が完了した。反応混合物を60℃に加熱し、16時間保持した。19gの粗生成物を、水蒸気蒸留によって得た。GC-GCデータは、粗生成物が、92%の所望の(E/Z)-3-クロロ-1,1,2-トリフルオロ-N-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-N-(トリフルオロメチル)プロパ-2ーエン-1-アミンを含有していたことを示している。
【0078】
実施例10:1-クロロ-2,3,4,4,4-ペンタフルオロ-ブタ-1-エン
【化14】
機械的撹拌装置、熱電対、冷水凝縮器、及び滴下漏斗を備える5L三口丸底フラスコに、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブタン-1-オール(469g、2.58mol)、PBSF(783g、2.59mol)、及び2500gの水を投入した。475gの50%KOHを、温度を35℃未満に保つ速度で、滴下漏斗を介してゆっくりと添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を分液漏斗に加えた。下相を水洗し、相分離させて、911gの2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネートを、93.5%のGC純度で得た。次いで、50℃、20torrにおける回転蒸発によって低沸点材料を除去し、97.0%の純度を得た。
【0079】
オーバーヘッド撹拌装置、水凝縮器、Nバブラー、熱電対、及び滴下漏斗を備える5L丸底フラスコに、2325gのジメチルホルムアミド及び塩化リチウム(186.3g、4.4mol)を投入した。発熱が観察された。フラスコを室温に冷却し、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(816g、1.76mol)を添加した。次いで、フラスコを50℃に加熱し、その温度で16時間保持した。フラスコに水を加え、内容物を水蒸気蒸留した。下のフルオロケミカル相を相分離し、水洗した。バッチを繰り返し、フルオロケミカル相同士を組み合わせて、611gの4-クロロ-1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロ-ブタンを得た。構造をGC-MSによって確認した。
【0080】
磁気撹拌装置、水凝縮器、Nバブラー、熱電対、及び加熱マントルを備える1L丸底フラスコに、323gの25重量%メタノール中ナトリウムメトキシドを投入した。4-クロロ-1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロ-ブタン(200g、1.0mol)を添加し、温度は64℃に上昇した。フラスコを50℃に冷却して1時間保持し、次いで、室温に冷却して16時間保持した。ガスクロマトグラフィーは、約20%の未変換出発材料があることを示した。更に0.5当量の25重量%のメタノール中ナトリウムメトキシドを添加し、混合物を50℃に加熱した。約4%の未変換出発材料が残存した。250mLの水をフラスコに添加し、混合物を水蒸気蒸留して、134gの1-クロロ-2,3,4,4,4-ペンタフルオロ-ブタ-1-エンを、ガスクロマトグラフィーによる53.6%純度でもたらした。材料を分画して、95.0%超の純度で26.1gを得た。GC-MS及びF-NMRによって、構造及び純度を決定した。沸点はおよそ63℃であった。
【0081】
実施例11:1-クロロ-2,3-ジフルオロ-3-(トリフルオロメトキシ)プロパ-1-エン
【化15】
600mLのParr反応器に、メタノール(162g、5055.93mmol)及びtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(6.7g、31mmol)を投入した。次いで、反応器を密封し、70℃に加熱した。トリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(190g、1.14mol)を、シリンダーからゆっくりと添加した。124gのトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテルを添加した後、添加を停止し、反応器を70℃で16時間保持した。反応器をドライアイス-アセトン浴で冷却し、新たな7.5gの開始剤を添加した。次いで、反応器を75℃に加熱し、更に66gのトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテルを投入した。反応器を75℃で16時間保持し、室温に冷却し、残留圧力を排気した。反応器の内容物を水洗し、下相を分離して、230gの材料を得た。GC-MSによって、主ピークが2,2,3-トリフルオロ-3-(トリフルオロメトキシ)プロパン-1-オールであることを確認した。
【0082】
水凝縮器、磁気撹拌装置、ドライアイス浴、及び滴下漏斗を備える1000mL丸底フラスコに、2,2,3-トリフルオロ-3-(トリフルオロメトキシ)プロパン-1-オール(228g、1151.2mmol)、ノナフルオロブタンスルホニルフルオリド(384g、1271.15mmol)、及び水(233g、12933.8mmol)を投入した。次いで、フラスコをドライアイス浴に入れ、滴下漏斗を使用して、260gの50%水酸化カリウムを反応フラスコに滴加した。速度を調整し、反応温度を35℃未満に保った。添加が終了した後、ドライアイス浴を取り外し、加熱マントルを加えた。反応物を30℃で16時間撹拌した。次いで、フラスコを冷却し、内容物を、ドライアイス上の1000mL丸底フラスコに真空濾過した。次いで、回収した材料を水洗し、337gの材料を回収した。GC分析は、90%の[2,2,3-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメトキシ)プロピル]1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネートを示した。
【0083】
クライゼンアダプタ、熱電対、電磁撹拌プレート、水凝縮器、及び滴下漏斗を備える1000mL丸底フラスコに、塩化リチウム(77.7g、1830mmol)及びN,N-ジメチルホルムアミド(256.3g、3506mmol)を投入した。反応フラスコを室温に冷却した。初期の発熱後、[2,2,3-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメトキシ)プロピル]1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート(298g、620.83mmol)を滴下漏斗に加え、温度を45℃未満に保ちながら反応フラスコに滴加した。反応物を室温に冷却し、16時間撹拌した。反応物を水でクエンチし、下相のGC分析によって、75%の3-クロロ-1,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)プロパンが示された。材料を水蒸気蒸留して、120gの3-クロロ-1,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)プロパンを、94.0%の純度で得た。
【0084】
250mL丸底フラスコに、水(30g、1665.30mmol)及び水酸化カリウム(30g、534.713mmol)を投入した。KOHが溶解し、フラスコを60℃まで冷却した後、テトラブチルアンモニウムクロリド(0.8g、3mmol、100質量%)を添加した。ポット温度を50℃に保持しながら、3-クロロ-1,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)プロパン(53g、244.79mmol)を添加した。添加後、反応物から熱を除去し、フラスコを室温に冷却した。反応物を水でクエンチし、生成物を水蒸気蒸留によって回収して、45gの3-クロロ-1,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)プロパ-3-エンを、94.6%純度で得た。生成物は、E異性体とZ異性体との混合物である。GC-MS及びF-NMRによって、構造及び純度を決定した。
【0085】
結果
表2に、実施例1~11の最大可溶性炭化水素(LSH)試験の結果をまとめる。使用した最大の炭化水素はC-23(C2348)であったため、「>23」のLSHは、ヒドロフルオロオレフィンがヘイズを呈することなく、C2348と混和性であったことを示す。表2に提示した結果は、本発明のハイドロフルオロオレフィンが、洗浄用途に非常に好適な流体であることを示す。
【0086】
【表2】
【0087】
実施例1~3の大気寿命を、上記のようにヒドロキシル基との反応速度から決定し、表3に報告する。
【0088】
【表3】
【0089】
当業者には、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することのない、本開示に対する様々な改変及び変更が明らかとなるであろう。本開示は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって不当に制限されることは意図していないこと、並びにそのような実施例及び実施形態は、以下のような本明細書に記載の特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図した本開示の範囲内の例示としてのみ提示されることを理解されたい。本開示に引用される参照文献は全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。