(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】胃腸疾患の治療のためのJAK1経路阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20250124BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P1/04
(21)【出願番号】P 2021535585
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 US2019067418
(87)【国際公開番号】W WO2020132210
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-16
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505193450
【氏名又は名称】インサイト・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INCYTE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】イェレスワラム,クリシュナスワミー
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ホリス,グレゴリー エフ
【審査官】宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-522214(JP,A)
【文献】国際公開第2018/112245(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/091544(WO,A1)
【文献】MARJORIE ARGOLLO; ET AL,NOVEL THERAPEUTIC TARGETS FOR INFLAMMATORY BOWEL DISEASE,JOURNAL OF AUTOIMMUNITY,2017年07月12日,VOL:85,PAGE(S):103-116,http://dx.doi.org/10.1016/j.jaut.2017.07.004
【文献】WILLIAM J. SANDBORN; ET AL,TOFACITINIB, AN ORAL JANUS KINASE INHIBITOR, IN ACTIVE ULCERATIVE COLITIS,THE NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE,米国,MASSACHUSETTS MEDICAL SOCIETY,2012年07月31日,VOL:367, NR:7,PAGE(S):616-624,http://dx.doi.org/10.1056/NEJMoa1112168
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00ー31/80
A61P 1/00ー 1/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における潰瘍性大腸炎を治療するための医薬であって、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を含む医薬であり、
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を投与した後の前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの最大便濃度
が25nM超であり、
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を投与した後の前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの最大総血漿濃度
が150nM未満である、
前記医薬。
【請求項2】
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩が
、50mg
~100mgの1日用量で投与される、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩が
、25mg
~75mgの1日用量で投与される、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩が
、25mgの1日用量で投与される、請求項1に記載の医薬。
【請求項5】
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩が
、50mgの1日用量で投与される、請求項1に記載の医薬。
【請求項6】
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩が
、100mgの1日用量で投与される、請求項1記載の医薬。
【請求項7】
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩が
、25mgの用量で1日1回投与される、請求項1に記載の医薬。
【請求項8】
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩が
、50mgの総1日投与のために
、25mgの用量で1日2回投与される、請求項1記載の
医薬。
【請求項9】
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩が
、50mgの用量で1日1回投与される、請求項1に記載の医薬。
【請求項10】
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩が
、100mgの総1日投与のために
、50mgの用量で1日2回投与される、請求項1に記載の医薬。
【請求項11】
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩が
、100mgの用量で1日1回投与される、請求項1に記載の医薬。
【請求項12】
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩が、前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を各々含む1つ以上の持続放出剤形として投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項13】
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルが、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルアジピン酸塩である、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項14】
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの最大便濃度が、前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの投与後
に50nM超である、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項15】
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの最大総血漿濃度が、前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの投与後
に141nM未満である、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項16】
対象における潰瘍性大腸炎を治療するための医薬であって、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を含む医薬であり、
{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩が、遊離塩基ベース
で25mg
~100mgの1日1回用量で投与され、
前記用量が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-[7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を各々含む1つ以上の持続放出剤形を含む、
前記医薬。
【請求項17】
前記{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-[7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルが、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルアジピン酸塩である、請求項16に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、JAK1経路阻害剤、及び胃腸疾患または障害を治療する際のそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
潰瘍性大腸炎(UC)は、世界中の炎症性腸疾患の最も一般的な形態である。それは、典型的には直腸に及びかつ近位に広がって結腸にも及ぶ、粘膜の慢性、特発性、再発性の疾患であり、びまん性易出血性及び出血を伴うびらんをもたらす。疾患程度及び症状重症度の間にいくらかの相関があるが、疾患の経過は多くの患者において軽度である(Solberg et al.,Scand.J.Gastroenterol.2009;44:431-440)。ほとんどの患者において、疾患は、症状のフレアアップ及び寛解の期間によって特徴付けられ、患者はまた、経時的に疾患延長を経験し得る。
【0003】
UCを有する患者は、典型的には、しばしば痙攣性腹痛及びテネスムスに関連する、直腸出血及び下痢の再発エピソードを経験する。特徴的な臨床像は、下痢、直腸出血、粘液の排出、テネスムス、便意切迫、及び腹痛を含む。患者はまた、特により重度の症例では、疲労、発熱、体重減少、及び脱水を経験する場合もある。死亡率は一般にUCでは増加しないが、疾患は生命を脅かす劇症大腸炎として存在し得る。ほとんどの患者は、疾患寛解の期間によって分離された疾患活動性の増大の期間を伴う慢性断続的な経過に従う。初期診断後、およそ半数の患者が任意の単一の時点で活動性疾患を有し、およそ90%が間欠的なフレアによって特徴付けられる疾患経過を有するであろう。
【0004】
発展途上国におけるUCの発生率は、20世紀半ばから着実に増加している。UCの年間発症率は10万人あたり1.2~20.3症例であり、最も高い発症率は北欧及び北米の集団において見られる(Loftus et al.Gastroenterology 2004;126:1504-1517)。UCの典型的な発症は、15~30歳の間に生じる(Andres et al.,Gastroenterol.Clin.North Am.1999;28:255-281)。男性及び女性は、同等の割合で罹患するようである。西洋化された環境及びライフスタイルは、炎症性腸疾患に対するリスク因子として認識される。
【0005】
UCに対する現在の療法は、メサラミン、グルココルチコイド、チオプリン、ならびにTNFα及びα4β7インテグリンの阻害剤を含む。多くの患者は、これらの療法に対する応答を有しないか、または持続的でない応答を有する。
【0006】
これらの治療オプションにもかかわらず、UC患者の顕著な割合は、難治性、重度の劇症疾患のため、またはいくつかの場合では、がん予防のために結腸切除術を依然として必要とする。UCを有する患者は、しばしば直腸切除及び肛門温存大腸切除術によって治癒すると見なされるが、生活の質は不良であり、手術は、女性の妊孕力の低下及び回腸嚢炎の発症を含む、短期及び長期の合併症に関連し得る。
【0007】
現在、現在の薬理学的療法は、UCに対する治療法を提供することができない。主な治療目標は、寛解を誘導し、次いで、その状態を維持することである。
【0008】
したがって、潰瘍性大腸炎などの胃腸疾患または障害の治療のために新しい療法を開発する必要がある。本出願は、この必要性及び他のものに対処する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】25mgの単回用量での化合物1の投与後の個々の最大便濃度の平均値に対する平均血漿濃度-時間プロファイルを示す。
【
図2】25mgの単回用量での化合物1の投与後の便濃度の個々の血漿濃度-時間プロファイルを示す。
【
図3】1時間のインキュベート後の健常対象及び潰瘍性大腸炎対象からの結腸における[
14C]化合物1濃度を示す。
【
図4】実施例3に記載されるような、患者における化合物1治療群(PD評価可能対象)によるIL-6及びTPO誘導性STAT3リン酸化の変化を示す。
【
図5】実施例3に記載されるような、患者におけるSTAT3のリン酸化のIL-6刺激性阻害と有効性の尺度(ベースラインからの、医師による静的全体評価(sPGA)ならびに乾癬面積及び重症度指標(PASI)の変化)との間の相関関係を示す。
【
図6A】実施例3に記載されるような、個体における15日目のサイクル1上のIL-6誘導性STAT3リン酸化の変化を示す。
【
図6B】実施例3に記載されるような、個体における15日目のサイクル1上のTPO誘導性STAT3リン酸化の変化を示す。
【
図7】1日2回の化合物1治療(30mg/kg)が、自発性大腸炎のIL-10ノックアウトマウスモデルにおいて、症状(
図7A)、肉眼的組織異常(
図7B)、及び組織病理学的証拠(
図7C~7D)を低減することを示す。データは、平均値+標準誤差、1治療群あたりn=9~10を表す。*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図8】1日2回の化合物1治療(30mg/kg)が、オキサゾロン誘導性大腸炎のマウスモデルにおいて、症状(
図8A)、組織損傷(
図8B)、及び炎症性腫脹(
図8C)を低減することを示す。データは、平均値+標準誤差、1治療群あたりn=8を表す。大腸炎疾患及び肉眼的評価のためのDunn検定を伴う非パラメトリック両側Kruskal-Wallis。結腸重量分析のためのHolm-Sidak検定を伴うパラメトリック両側ANOVA *p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001。
【
図9】経口的(
図9A)、または結腸内注射を介して(
図9B)投与された1日2回の化合物1治療が、マウスにおけるTNBS誘導性大腸炎モデルにおいて、疾患重症度を有意に低減したことを示す。データは、平均値+標準誤差、1治療群あたりn=3~8を表す。*p<0.05、**p<0.01。
【
図10】30mg/kgでの化合物1を用いた1日2回の治療の結果が、自発性大腸炎のIL-10ノックアウト(KO)マウスモデルにおいて疾患発症を阻害したことを示す。データは、平均値+SEM、1治療群あたりn=9~10を表し、p値はKaplan-Meier生存曲線分析を使用して計算された。SEM、平均値の標準誤差。
【
図11】経口的(
図11A)、または結腸内注射を介して(
図11B)のいずれかの化合物1を用いた1日2回の治療が、マウスにおけるTNBS誘導性大腸炎モデルにおいて、疾患重症度を有意に低減したことを示す。高用量経口(
図11C)及び低用量結腸内(
図11D)は、IC
50適用範囲を上回る持続的な薬物曝露を達成した。データは、平均値+SEM、1治療群あたりn=8を表す。IBD、炎症性腸疾患;SEM、平均値の標準誤差。*p<0.05、**p<0.01。
【
図12A】自発性大腸炎マウスモデルにおける化合物1の経口投与後のIL-10 KOマウス結腸における差異的発現遺伝子の火山プロットを示す。
【
図12B】自発性大腸炎マウスモデルにおけるビヒクル群と比較して、化合物1治療マウスにおける統計学的に有意な差異的発現遺伝子を示す。
【
図13A】炎症性腸疾患(IBD)のオキサゾロン誘導性マウスモデルにおける全身的かつ局在化された結腸内化合物1送達の結果を示す。1日2回の化合物1治療は、経口的(
図13A、13C)、または結腸内(
図13B、13D)投与され、マウスにおけるオキサゾロン誘導性大腸炎モデルにおいて、有意に大便硬さを改善し、便潜血スコアを低減した。データは、平均値+SEM、1治療群あたりn=8を表す。SEM:平均値の標準誤差。**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図13B】炎症性腸疾患(IBD)のオキサゾロン誘導性マウスモデルにおける全身的かつ局在化された結腸内化合物1送達の結果を示す。1日2回の化合物1治療は、経口的(
図13A、13C)、または結腸内(
図13B、13D)投与され、マウスにおけるオキサゾロン誘導性大腸炎モデルにおいて、有意に大便硬さを改善し、便潜血スコアを低減した。データは、平均値+SEM、1治療群あたりn=8を表す。SEM:平均値の標準誤差。**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図13C】炎症性腸疾患(IBD)のオキサゾロン誘導性マウスモデルにおける全身的かつ局在化された結腸内化合物1送達の結果を示す。1日2回の化合物1治療は、経口的(
図13A、13C)、または結腸内(
図13B、13D)投与され、マウスにおけるオキサゾロン誘導性大腸炎モデルにおいて、有意に大便硬さを改善し、便潜血スコアを低減した。データは、平均値+SEM、1治療群あたりn=8を表す。SEM:平均値の標準誤差。**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図13D】炎症性腸疾患(IBD)のオキサゾロン誘導性マウスモデルにおける全身的かつ局在化された結腸内化合物1送達の結果を示す。1日2回の化合物1治療は、経口的(
図13A、13C)、または結腸内(
図13B、13D)投与され、マウスにおけるオキサゾロン誘導性大腸炎モデルにおいて、有意に大便硬さを改善し、便潜血スコアを低減した。データは、平均値+SEM、1治療群あたりn=8を表す。SEM:平均値の標準誤差。**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図14A】ビヒクルと比較して、経口または直接結腸に投与された化合物1から生じる結腸短縮の代表的な画像を示す。経口(
図14B)及び結腸内(
図14D)化合物1治療は、オキサゾロン誘導性マウス大腸炎モデルにおけるそれぞれのビヒクル治療対照(
図14A、14C)と比較して、結腸短縮を有意に改善した。結腸長データ(
図14E)は、平均値+SEM、1治療群あたりn=8としてグラフ化される。SEM:平均値の標準誤差。****p<0.0001。
【
図14B】ビヒクルと比較して、経口または直接結腸に投与された化合物1から生じる結腸短縮の代表的な画像を示す。経口(
図14B)及び結腸内(
図14D)化合物1治療は、オキサゾロン誘導性マウス大腸炎モデルにおけるそれぞれのビヒクル治療対照(
図14A、14C)と比較して、結腸短縮を有意に改善した。結腸長データ(
図14E)は、平均値+SEM、1治療群あたりn=8としてグラフ化される。SEM:平均値の標準誤差。****p<0.0001。
【
図14C】ビヒクルと比較して、経口または直接結腸に投与された化合物1から生じる結腸短縮の代表的な画像を示す。経口(
図14B)及び結腸内(
図14D)化合物1治療は、オキサゾロン誘導性マウス大腸炎モデルにおけるそれぞれのビヒクル治療対照(
図14A、14C)と比較して、結腸短縮を有意に改善した。結腸長データ(
図14E)は、平均値+SEM、1治療群あたりn=8としてグラフ化される。SEM:平均値の標準誤差。****p<0.0001。
【
図14D】ビヒクルと比較して、経口または直接結腸に投与された化合物1から生じる結腸短縮の代表的な画像を示す。経口(
図14B)及び結腸内(
図14D)化合物1治療は、オキサゾロン誘導性マウス大腸炎モデルにおけるそれぞれのビヒクル治療対照(
図14A、14C)と比較して、結腸短縮を有意に改善した。結腸長データ(
図14E)は、平均値+SEM、1治療群あたりn=8としてグラフ化される。SEM:平均値の標準誤差。****p<0.0001。
【
図14E】ビヒクルと比較して、経口または直接結腸に投与された化合物1から生じる結腸短縮の代表的な画像を示す。経口(
図14B)及び結腸内(
図14D)化合物1治療は、オキサゾロン誘導性マウス大腸炎モデルにおけるそれぞれのビヒクル治療対照(
図14A、14C)と比較して、結腸短縮を有意に改善した。結腸長データ(
図14E)は、平均値+SEM、1治療群あたりn=8としてグラフ化される。SEM:平均値の標準誤差。****p<0.0001。
【
図15】全身的化合物1送達が、IL-10 KOマウスにおける結腸形態に対する有意な保護効果と関連付けられることを示す。
図15Aは代表的な結腸を示し、
図15Bはヘマトキシリン/エオシン染色結腸切片を示す。
図15Bにおける白い矢印は、単核細胞浸潤の面積を示す。20倍拡大率、バー=100μm。
【発明の概要】
【0010】
胃腸疾患または障害の治療を必要とする対象における、それを行うための方法は、本明細書に提供され、治療有効量のJAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を該対象に投与することを含む。
【0011】
胃腸疾患または障害の治療を必要とする対象におけるそのためのJAK1経路阻害剤が、本明細書に提供される。
【0012】
胃腸疾患または障害の治療を必要とする対象における、それを行うことにおける使用のための薬剤の製造のためのJAK1経路阻害剤の使用が、本明細書に提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、とりわけ、胃腸疾患または障害の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供し、治療有効量のJAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を該対象に投与することを含む。
【0014】
本明細書に記載される方法は、JAK1経路阻害剤、特にJAK1選択的阻害剤を利用する。JAK1選択的阻害剤は、他のJanusキナーゼよりも優先的にJAK1活性を阻害する化合物である。JAK1は、調節不全の際に疾患状態をもたらすか、または疾患状態に寄与することができる、いくつかのサイトカイン及び増殖因子シグナル伝達経路において中心的な役割を果たす。JAK1は、潰瘍性大腸炎(UC)を含む多くの炎症性障害に関連するいくつかの炎症性サイトカインのシグナル伝達を媒介するために他のJAKと協働することが示されている。複数のUC関連サイトカイン経路を標的とすることによるJAK/STATシグナル伝達の阻害は、主要免疫細胞の炎症、細胞活性化、及び増殖を同時に低減する可能性を有し、したがって、UCの治療のための有望な治療戦略を表す。UCの治療のためのトファシチニブは、最近FDAによって承認された。しかしながら、全身作用性の汎JAK阻害剤として、トファシチニブ療法は、免疫抑制の増加したリスクを伴うようである(Sandborn et al.,N. Engl.J.Med.2017;376:1723-1736)。
【0015】
JAK1経路阻害剤、具体的には化合物1(すなわち、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、表1を参照されたい)は、持続放出形態で、かつ全身的療法のために使用されるものよりも低い用量で投与される際に、全身的曝露を最小化しながら結腸曝露を最大化する(例えば、実施例1を参照されたい)。結果として、JAK1経路阻害剤の有効性は、全身的というよりむしろ、主に局所的なJAK1阻害を通じて媒介されるように予想される。
【0016】
さらに、胃腸疾患を有する患者は、JAK1阻害、特に選択的JAK1経路阻害から利益を得る場合がある。JAK1の選択的阻害剤は、他のJAKキナーゼを阻害することの不必要かつ潜在的に望ましくない作用を回避する一方で有効であり得る。
【0017】
したがって、対象における胃腸関連疾患または障害を治療するための方法が提供され、該方法は、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含み、JAK1経路阻害剤を投与した後のJAK1経路阻害剤の最大便濃度は約25nM以上であり、JAK1経路阻害剤を投与した後の最大総血漿濃度(Cmax)は約450nM未満である。
【0018】
最大便濃度は、JAK1経路阻害剤の投与後の期間(例えば、JAK1経路阻害剤の投与後0~約48時間)にわたって、例えば、タンデム質量分析法(LC-MS/MS)分析と共に液体クロマトグラフィーを使用して便濃度を測定することによって決定され得る。化合物1の便濃度を測定することは、本明細書の実施例Cに記載される方法によって行われ得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤の最大便濃度は、JAK1経路阻害剤の投与後に、約25nM、約30nM、約35nM、約40nM、約45nM、約50nM、約55nM、約60nM、約65nM、約70nM、約75nM、約80nM、約85nM、約90nM、約95nM、または約100nM以上である。いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤の最大便濃度は、JAK1経路阻害剤の投与後に約50nM以上である。いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤の最大便濃度は、JAK1経路阻害剤の投与後に約25nM~100nMである。
【0020】
最大総血漿濃度(すなわち、Cmax)は、JAK1経路阻害剤の投与後の期間(例えば、JAK1経路阻害剤の投与後0~約48時間)にわたって、例えば、タンデム質量分析法(LC-MS/MS)分析と共に液体クロマトグラフィーを使用して血漿濃度を測定することによって決定され得る。化合物1の血漿濃度を測定することは、本明細書の実施例Cに記載される方法によって行われ得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤の最大総血漿濃度は、JAK1経路阻害剤の投与後に、約450nM、約425nM、約400nM、約375nM、約350nM、約325nM、約300nM、約275nM、約250nM、約225nM、約200nM、約175nM、約150nM、約125nM、約100nM、約75nM、または約50nM以下である。いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤の最大総血漿濃度は、JAK1経路阻害剤の投与後に、約150nM以下である。いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤の最大総血漿濃度は、JAK1経路阻害剤の投与後に、約141nM以下である。いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤の最大総血漿濃度は、JAK1経路阻害剤の投与後に、約100nM以下である。いくつかの実施形態では、最大総血漿濃度は、約25nM~100nMである。
【0022】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤の最大非結合型血漿濃度は、JAK1経路阻害剤の投与後に約150nM以下である。最大非結合型血漿濃度は、JAK1経路阻害剤の最大総血漿濃度(例えば、実施例Cを参照されたい)及びインビトロタンパク質結合に由来でき、平衡透析によって決定され得る。いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤の最大非結合型血漿濃度は、JAK1経路阻害剤の投与後に、約150nM、約125nM、約100nM、約75nM、約50nM、または約25nM以下である。いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤の最大非結合型血漿濃度は、JAK1経路阻害剤の投与後に約100nM以下である。
【0023】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤の最大非結合型血漿濃度は、JAK1経路阻害剤の投与後に約50nM以下である。
【0024】
いくつかの実施形態では、最大便濃度に対する最大非結合型血漿濃度の比は、約6、約5、約4、約3、約2、または約1以下である。いくつかの実施形態では、最大便濃度に対する最大非結合型血漿濃度の比は、約2以下である。いくつかの実施形態では、最大便濃度に対する最大非結合型血漿濃度の比は、約1~約6である。
【0025】
本明細書に提供される方法のいくつかの実施形態では、胃腸関連疾患または障害は、潰瘍性大腸炎、クローン病、及びセリアック病から選択される。
【0026】
いくつかの実施形態では、胃腸疾患は、再発性、難治性、または再発性かつ難治性の潰瘍性大腸炎である。いくつかの実施形態では、対象は、潰瘍性大腸炎のための以前に投与された治療に応答できなかった。他の実施形態では、対象は、潰瘍性大腸炎のための以前に投与された治療に対して不耐性である。いくつかの実施形態では、以前に投与された治療は、(a)経口コルチコステロイド、(b)AZAもしくは6-MP、または(c)インフリキシマブもしくはアダリムマブなどの生物学的療法から選択される。
【0027】
I.JAK1経路阻害剤
本明細書に記載される方法は、JAK1経路阻害剤を利用する。いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤は、JAK2、JAK3、及びTYK2(すなわち、JAK1選択的阻害剤)よりもJAK1に対して選択的である。例えば、本明細書に記載される化合物、またはその薬学的に許容される塩は、JAK2、JAK3、及びTYK2のうちの1つ以上よりもJAK1を優先的に阻害する。いくつかの実施形態では、化合物は、JAK2よりも優先的にJAK1を阻害する(例えば、1超のJAK2/JAK1 IC50比を有する)。いくつかの実施形態では、化合物または塩は、JAK2よりもJAK1に対して約10倍より選択的である。いくつかの実施形態では、化合物または塩は、1mMのATPでIC50を測定することによって計算されるように、JAK2よりもJAK1に対して約3倍、約5倍、約10倍、約15倍、または約20倍より選択的である(例えば、実施例Aを参照されたい)。
【0028】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤は、表1の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。表1における化合物は、選択的JAK1阻害剤(すなわち、JAK2、JAK3、及びTYK2よりも選択的である、JAK1経路阻害剤)である。1mM ATPで実施例Aの方法によって得られたIC
50値が、表1に示される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【0029】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である。
【0030】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルアジピン酸塩である。
【0031】
{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル及びそのアジピン酸塩の合成ならびに調製は、例えば、2011年3月9日出願に出願された米国特許公開第2011/0224190号、2012年9月6日に出願された米国特許公開第2013/0060026号、及び2014年3月5日出願された米国特許公開第2014/0256941号に見いだされ得、これらの各々はその全体の参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、またはその薬学的に許容される塩である。
【0033】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドリン酸塩である。
【0034】
4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド及びそのリン酸塩の合成ならびに調製は、例えば、2014年5月16日に出願された米国特許公開第2014/0343030号に見いだされ得、これはその全体の参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤は、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である。
【0036】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤は、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル一水和物である。
【0037】
((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリルの合成、ならびにその無水形態及び一水和物形態の特徴付けは、2013年10月31日に出願された米国特許公開第2014/0121198号、及び2015年4月29日に出願された米国特許公開第2015/0344497号に記載され、これらの各々はその全体の参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
いくつかの実施形態では、表1の化合物は、2011年3月9日に出願された米国特許公開第2011/0224190号、2014年5月16日に出願された米国特許公開第2014/0343030号、2013年10月31日に出願された米国特許公開第2014/0121198号、2010年5月21日に出願された米国特許公開第2010/0298334号、2010年8月31日に出願された米国特許公開第2011/0059951号、2011年11月18日に出願された米国特許公開第2012/0149681号、2011年11月18日に出願された米国特許公開第2012/0149682号、2012年6月19日に出願された米国特許公開第2013/0018034号、2012年8月17日に出願された米国特許公開第2013/0045963号、及び2013年5月17日に出願された米国特許公開第2014/0005166号に記載され、これらの各々はその全体の参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤は、2011年3月9日に出願された米国特許公開第2011/0224190号、2014年5月16日に出願された米国特許公開第2014/0343030号、2013年10月31日に出願された米国特許公開第2014/0121198号、2010年5月21日に出願された米国特許公開第2010/0298334号、2010年8月31日に出願された米国特許公開第2011/0059951号、2011年11月18日に出願された米国特許公開第2012/0149681号、2011年11月18日に出願された米国特許公開第2012/0149682号、2012年6月19日に出願された米国特許公開第2013/0018034号、2012年8月17日に出願された米国特許公開第2013/0045963号、及び2013年5月17日に出願された米国特許公開第2014/0005166号の化合物またはその薬学的に許容される塩から選択され、これらの各々はその全体の参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤は、式Iの化合物
【化1】
またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
Xは、NまたはCHであり、
Lは、C(=O)またはC(=O)NHであり、
Aは、各々、1つまたは2つの独立して選択されるR
1基で任意選択で置換されるフェニル、ピリジニル、またはピリミジニルであり、
各R
1は、独立して、フルオロ、またはトリフルオロメチルである。
【0041】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である。
【0042】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、4-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-[4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン-1-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩である。
【0043】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、[3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(1-{[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]カルボニル}ピペリジン-4-イル)アゼチジン-3-イル]アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である。
【0044】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤は式IIの化合物
【化2】
またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
R
2は、C
1-6アルキル、C
1-6ハロアルキル、C
3-6シクロアルキル、またはC
3-6シクロアルキル-C
1-3アルキルであり、該C
1-6アルキル、C
3-6シクロアルキル、及びC
3-6シクロアルキル-C
1-3アルキルは、各々、フルオロ、-CF
3、及びメチルから独立して選択された1つ、2つ、または3つの置換基で任意選択で置換され、
R
3は、Hまたはメチルであり、
R
4は、H、F、またはClであり、
R
5は、HまたはFであり、
R
6は、HまたはFであり、
R
7は、HまたはFであり、
R
8は、Hまたはメチルであり、
R
9は、Hまたはメチルであり、
R
10は、Hまたはメチルであり、
R
11は、Hまたはメチルである。
【0045】
いくつかの実施形態では、式IIの化合物は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、またはその薬学的に許容される塩である。
【0046】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤は、式IIIの化合物
【化3】
またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
Cy
4は、CN、OH、F、Cl、C
1-3アルキル、C
1-3ハロアルキル、シアノ-C
1-3アルキル、HO-C
1-3アルキル、アミノ、C
1-3アルキルアミノ、及びジ(C
1-3アルキル)アミノから独立して選択された1つまたは2つの基で任意選択で置換されるテトラヒドロ-2H-ピラン環であり、該C
1-3アルキル及びジ(C
1-3アルキル)アミノは、F、Cl、C
1-3アルキルアミノスルホニル、及びC
1-3アルキルスルホニルから独立して選択される1つ、2つ、または3つの置換基で任意選択で置換され、
R
12は、-CH
2-OH、-CH(CH
3)-OH、または-CH
2-NHSO
2CH
3である。
【0047】
いくつかの実施形態では、式IIIの化合物は、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である。
【0048】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤は、遊離塩基ベースで約1mg~約100mg、約3mg~約100mg、約5mg~約100mg、約10mg~約100mg、約10mg~約75mg、または約25mg~約75mgの1日量で投与される。
【0049】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤は、遊離塩基ベースで約1mg~約100mg、約3mg~約100mg、約5mg~約100mg、約10mg~約100mg、約10mg~約75mg、または約25mg~約75mgの1日量で投与される。
【0050】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤は、遊離塩基ベースで約10mg~約100mgの1日量で投与される。したがって、いくつかの実施形態では、選択的JAK1経路阻害剤は、遊離塩基ベースで約1mg、約3mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、または約100mgの1日量で投与される。
【0051】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約50mg~約100mgの1日用量で投与される。
【0052】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約25mg~約50mgの1日用量で投与される。
【0053】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約25mg~約75mgの1日用量で投与される。
【0054】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約1mgの1日用量で投与される。
【0055】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約2mgの1日用量で投与される。
【0056】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約2.5mgの1日用量で投与される。
【0057】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約3mgの1日用量で投与される。
【0058】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約5mgの1日用量で投与される。
【0059】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約10mgの1日用量で投与される。
【0060】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約15mgの1日用量で投与される。
【0061】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約25mgの1日用量で投与される。
【0062】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約30mgの1日用量で投与される。
【0063】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約50mgの1日用量で投与される。
【0064】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約100mgの1日用量で投与される。
【0065】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約25mgの用量で1日1回投与される。
【0066】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約1mg/kg~約50mg/kgの1日用量で(例えば、1日1回または2回用量として)投与される。
【0067】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約3mg/kg~約30mg/kgの1日用量で(例えば、1日1回または2回用量として)投与される。
【0068】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約6mg/kgの総1日投与のために、約3mg/kgの1日2回(BID)用量として投与される。
【0069】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約6mg/kgの総1日投与のために、約3mg/kgの1日2回(BID)結腸内用量として投与される。
【0070】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約60mg/kgの総1日投与のために、約30mg/kgの1日2回(BID)用量として投与される。
【0071】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約60mg/kgの総1日投与のために、約30mg/kgの1日2回(BID)経口用量として投与される。
【0072】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約50mgの総1日投与のために、約25mgの用量で1日2回投与される。
【0073】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約50mgの用量で1日1回投与される。
【0074】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約100mgの総1日投与のために、約50mgの用量で1日2回投与される。
【0075】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、約100mgの用量で1日1回投与される。
【0076】
いくつかの実施形態では、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を各々含む1つ以上の持続放出剤形として投与される。
【0077】
対象における胃腸疾患を治療するための方法は、本明細書に提供され、約25mg~100mgのJAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の1日用量を対象に投与することを含み、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩は、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を含む1つ以上の持続放出剤形として投与される。
【0078】
本明細書に記載される実施形態は、実施形態が多項従属請求項であるかのように、任意の好適な組み合わせにおいて組み合わされるように意図される(例えば、選択的JAK1経路阻害剤及びその用量に関連する実施形態、最大血漿濃度(総または非結合)に関連する実施形態、本明細書に開示される化合物の任意の塩形態に関連する実施形態、胃腸関連疾患の個々のタイプに関連する実施形態、ならびに組成物及び/または投与に関連する実施形態は、任意の組み合わせにおいて組み合わされ得る)。
【0079】
炎症性腸障害、潰瘍性大腸炎、自発性大腸炎、クローン病、及びセリアック病からなる群から選択される胃腸疾患を治療するための方法もまた、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、胃腸疾患は、潰瘍性大腸炎、クローン病、及びセリアック病からなる群から選択される。
【0080】
いくつかの実施形態では、胃腸疾患は、炎症性腸障害、及び自発性大腸炎からなる群から選択される。
【0081】
いくつかの実施形態では、胃腸疾患は、自発性大腸炎である。
【0082】
例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、及びセリアック病からなる群から選択される胃腸疾患の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法が本明細書に提供され、方法は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含み、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を投与した後の{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-{3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの最大便濃度は、約25nM超であり、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を投与した後の{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-{3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニルの最大総血漿濃度は、約150nM未満である。
【0083】
対象における潰瘍性大腸炎、クローン病、及びセリアック病からなる群から選択される胃腸疾患を治療するための方法もまた本明細書に提供され、方法は、遊離塩基ベースで約25mg~約100mgの{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩の1日1回用量を対象に投与することを含み、用量は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-[7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を各々含む1つ以上の持続放出剤形を含む。
【0084】
対象における潰瘍性大腸炎、クローン病、及びセリアック病からなる群から選択される胃腸疾患を治療するための方法もまた本明細書に提供され、方法は、遊離塩基ベースで約25mgの{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩の1日2回用量を対象に投与することを含み、用量は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-[7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を各々含む1つ以上の持続放出剤形を含む。
【0085】
対象における潰瘍性大腸炎、クローン病、及びセリアック病からなる群から選択される胃腸疾患を治療するための方法もまた本明細書に提供され、方法は、遊離塩基ベースで約50mgの{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩の1日2回用量を対象に投与することを含み、用量は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-[7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を各々含む1つ以上の持続放出剤形を含む。
【0086】
{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩の持続放出剤形(表1、化合物1)は、2014年8月6日に出願された米国公開第2015-0065484号に見いだされ得、これはその全体の参照により本明細書に組み込まれる。以下の実施例Bも参照されたい。
【0087】
全ての可能な組み合わせは、簡潔さのためだけに本明細書に別個に列挙されない。
【0088】
本明細書に記載される化合物は、非対称であり得る(例えば、1つ以上の立体中心を有する)。エナンチオマー及びジアステレオマーなどの全ての立体異性体が、別段示されない限り意図される。非対称的に置換された炭素原子を含有する化合物は、光学的に活性な、またはラセミ形態で単離され得る。光学的に不活性な出発材料から光学的に活性な形態を調製する仕方に関する方法は、ラセミ混合物の分割または立体選択的合成などによって当該技術分野で既知である。オレフィン、C=N二重結合などの多くの幾何異性体もまた、本明細書に記載される化合物に存在し得、全てのかかる安定な異性体は、本発明において企図される。本発明の化合物のシス及びトランスの幾何異性体は、記載され、異性体の混合物として、または分離された異性体形態として単離され得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、化合物は、(R)配置を有する。いくつかの実施形態では、化合物は、(S)配置を有する。
【0090】
化合物のラセミ混合物の分割は、当該技術分野で既知の多数の方法のいずれかによって行われ得る。例示的な方法は、光学的に活性な塩形成有機酸であるキラル分割酸を使用する分画再結晶化を含む。分画再結晶化方法のための好適な分割剤は、例えば、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸、またはβ-カンファースルホン酸などの様々な光学的に活性なカンファースルホン酸のD及びL形態などの光学的に活性な酸である。分画結晶化方法に好適な他の分割剤は、α-メチルベンジルアミンの立体異性体的に純粋な形態(例えば、S及びR形態、またはジアステレオマー的に純粋な形態)、2-フェニルグリシノール、ノルエフェドリン、エフェドリン、N-メチルフェドリン、シクロヘキシルエチルアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサンなどを含む。
【0091】
ラセミ混合物の分割はまた、光学的に活性な分割剤(例えば、ジニトロベンゾイルフェニルグリシン)を充填したカラム上での溶出によって行われ得る。好適な溶出溶媒組成物は、当業者によって決定され得る。
【0092】
本明細書に記載される化合物はまた、互変異性形態を含む。互変異性形態は、プロトンの同時移動を一緒に伴う、隣接する二重結合との単結合の交換から生じる。互変異性形態は、同じ実験式及び総電荷を有する異性体的プロトン化状態であるプロトトロピー互変異性体を含む。プロトトロピー互変異性体の例は、ケトン-エノール対、アミド-イミド酸対、ラクタム-ラクチム対、エナミン-イミン対、ならびにプロトンが複素環系の2つ以上の位置を占めることができる環状形態、例えば、1H-及び3H-イミダゾール、1H-、2H-及び4H-1,2,4-トリアゾール、1H-及び2H-イソインドール、ならびに1H-及び2H-ピラゾールを含む。互変異性形態は、平衡であり得るか、または適切な置換によって1つの形態に立体的に固定され得る。
【0093】
本明細書に記載される化合物はまた、本開示の同位体標識された化合物を含み得る。「同位体的」または「放射性標識された」化合物は、1つ以上の原子が、自然界において典型的に見いだされる(すなわち、天然に生じる)原子質量もしくは質量数とは異なる原子質量もしくは質量数を有する原子によって置き換えられるか、または置換される、本開示の化合物である。本開示の化合物に組み込まれ得る好適な放射性核種は、2H(重水素についてはDとも記述される)、3H(トリチウムについてはTとも記述される)、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、18F、35S、36Cl、82Br、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I及び131Iを含むがこれらに限定されない。例えば、本開示の化合物における1つ以上の水素原子は、重水素原子によって置き換えられ得る(例えば、式(I)、(II)、もしくは(III)のC1-6アルキル基または表1の化合物の1つ以上の水素原子は、-CH3に置換されている-CD3などの、重水素原子で任意選択で置換され得る)。
【0094】
本明細書で使用される「化合物」という用語は、名称が特定の立体異性体を示さない限り、示される構造の全ての立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び同位体を含むように意味される。1つの特定の互変異性形態として名称または構造によって特定される本明細書の化合物は、別段指定されない限り、他の互変異性形態を含むように意図される。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物、またはその塩は、実質的に単離される。「実質的に単離される」によって、化合物が形成または検出された環境から少なくとも部分的または実質的に分離されることが、意味される。部分的な分離は、例えば、本明細書に記載される化合物が濃縮された組成物を含むことができる。実質的な分離は、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、もしくは少なくとも約99重量%の本明細書に記載される化合物、またはその塩を含むことができる。化合物及びそれらの塩を単離するための方法は、当該技術分野において慣用である。
【0096】
全ての化合物及びその薬学的に許容される塩は、水及び溶媒などの他の物質と一緒に見いだされ得る(例えば、水和物及び溶媒和物)か、または単離され得る。固体状態にあるとき、本明細書に記載される化合物及びその塩は、様々な形態で生じ得、例えば、水和物を含む溶媒和物の形態をとることができる。化合物は、多形または溶媒和物などの任意の固体状態の形態であり得るため、別段明確に示されない限り、本明細書における化合物及びそれらの塩への参照は、化合物の任意の固体状態の形態を包含するものとして理解されるべきである。
【0097】
「薬学的に許容される」という語句は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、合理的な利益/リスクの比に釣り合う、そのような化合物、材料、組成物、及び/または剤形を指すために本明細書で用いられる。
【0098】
本発明はまた、本明細書に記載される化合物の薬学的に許容される塩を含む。「薬学的に許容される塩」という用語は、開示される化合物の誘導体を指し、親化合物は、既存の酸または塩基部分をその塩形態に変換することによって修飾される。薬学的に許容される塩の例は、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩などを含むが、これらに限定されない。本発明の薬学的に許容される塩は、例えば、非毒性の無機または有機酸から形成される親化合物の非毒性塩を含む。本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成され得る。一般に、かかる塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、水中もしくは有機溶媒中、または2つの混合物中の適切な塩基または酸の化学量論的量と反応させることによって調製され得、一般に、エーテル、酢酸エチル、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、またはブタノール)またはアセトニトリル(MeCN)のような非水性培体が好まれる。好適な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th Ed.,(Mack Publishing Company,Easton,1985),p.1418、Berge et al.,J.Pharm.Sci.,1977,66(1),1-19、及びStahl et al.,Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties, Selection, and Use,(Wiley, 2002)に見いだされる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物は、N-オキシド形態を含む。
【0099】
「個体」、「患者」、及び「対象」という用語は、交換可能に使用され、哺乳動物、好ましくはマウス、ラット、他の齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類、及び最も好ましくはヒトを含む、任意の動物を指す。
【0100】
「治療有効量」という語句は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医によって求められている組織、系、動物、個体、またはヒトにおいて生物学的または医薬的応答を誘発する、活性化合物または薬学的薬剤の量を指す。
【0101】
「治療する」または「治療」という用語は、(1)疾患を阻害すること、例えば、疾患、状態もしくは障害の病理または症状を経験あるいは示している個体において、疾患、状態または障害を阻害すること(すなわち、病理及び/または症状のさらなる発症を停止させること)、及び(2)疾患を改善すること、例えば、疾患の重症度を減少させることなどの、疾患、状態もしくは障害の病理または症状を経験しているかまたは示している個体において、疾患、状態または障害を改善すること(すなわち、病理及び/または症状を好転させること)のうちの1つ以上を指す。一実施形態では、治療することまたは治療は、疾患を予防するか、または疾患を発症するリスクを低減すること、例えば、疾患、状態もしくは障害の素因があり得るが、疾患の病理もしくは症状をまだ経験していないか、または示していない個体において、疾患、状態もしくは障害を発症するリスクを予防または低減することを含む。
【0102】
「例えば」及び「などの」という用語、ならびにそれらの文法的等価物については、別段明示的に記載されない限り、「かつ限定なく」という語句が続くものと理解される。
【0103】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別段明確に指示しない限り、複数の参照対象を含む。
【0104】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、「およそ」(例えば、示された値のプラスまたはマイナス約10%)を意味する。
【0105】
併用療法
本明細書に記載される方法は、1つ以上の追加の治療剤を投与することをさらに含むことができる。これらの治療剤は、抗炎症剤、ステロイド、免疫抑制剤、または治療用抗体を含む。
【0106】
例えば、本明細書に記載される方法は、経口メサラミン(5-ASA)、経口コルチコステロイド、アザチオプリン(AZA)、6-メルカプトプリン(6-MP)、及びメトトレキサート、インフリキシマブ、ベドリズマブ、粘膜アドレシン細胞接着分子(MADCAM1)阻害剤、及び便移植などの現在のUC療法と組み合わせて使用され得る。
【0107】
例えば、経口5-ASA(メサラミン、例えば、約1600mg/日~約2400mg/日)またはスルファサラジン(最大、例えば、約1000mg/日~4000mg/日)は、本明細書に記載される方法のうちのいずれかのためのJAK1経路阻害剤と共に投与され得る。
【0108】
別の例として、経口コルチコステロイド(例えば、約0.5mg/日~約60mg/日のプレドニゾンまたは経口コルチコステロイド当量の)は、本明細書に記載される方法のうちのいずれかのためのJAK1経路阻害剤と共に投与され得る。
【0109】
別の例として、約50mg/日~約225mg/日のアザチオプリン、最大、例えば、約30mg/日~約112.5mg/日の6-メルカプトプリン、または最大、例えば、約25mgのメトトレキサートもまた、本明細書に記載される方法のうちのいずれかのためのJAK1経路阻害剤と共に投与され得る。いくつかの実施形態では、アザチオプリンは、本明細書に記載される方法のうちのいずれかのためのJAK1経路阻害剤と共に、約50mg/日~約100mg/日で投与される。他の実施形態では、6-メルカプトプリンは、本明細書に記載される方法のうちのいずれかのためのJAK1経路阻害剤と共に、約30mg/日~約50mg/日で投与される。
【0110】
別の例として、一連の、誘導及び維持のための2~10mg/kg、例えば、5mg/kgのインフリキシマブは、本明細書に記載される方法のうちのいずれかのためのJAK1経路阻害剤と共に投与され得る。いくつかの実施形態では、インフリキシマブは、5mg/kgで、0、2、及び6週間で、次いで、その後8週間毎に投与される。
【0111】
別の例として、約200~約400mg、例えば、300mgの用量のベドリズマブは、本明細書に記載される方法のうちのいずれかのためのJAK1経路阻害剤と共に投与され得る。いくつかの実施形態では、ベドリズマブは、0、2、及び6週間で投与され、次いで、その後8週間毎に投与される。
【0112】
2つ以上の医薬品が対象に投与される場合、それらは、同時に、順次に、または組み合わせて(例えば、3つ以上の薬剤について)投与され得る。
【0113】
組成物
化合物は、薬学的組成物の形態で投与され得る。これらの組成物は、薬学的分野において周知の様式で調製され得、局所的または全身的治療が示されるかどうかに、かつ治療される領域に応じて、多様な経路によって投与され得る。投与は、局所(経皮的、表皮的、点眼的を含み、かつ鼻腔内、膣内、及び直腸送達を含む粘膜に対する)、肺(例えば、噴霧器によることを含む粉末もしくはエアロゾルの吸入または吹送による、気管内または鼻腔内)、経口または非経口であり得る。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内もしくは筋肉内の注射もしくは注入、または頭蓋内、例えば、髄腔内もしくは脳室内投与を含む。非経口投与は、単回ボーラス投薬の形態にあり得るか、または例えば、連続灌流ポンプによるものであり得る。局所投与のための薬学的組成物及び製剤は、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、液滴、坐剤、スプレー、液体及び粉末を含み得る。従来の薬学的担体、水性、粉末または油性の基剤、増粘剤などは、必要または望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、投与は、経口である。いくつかの実施形態では、投与は、結腸内である。
【0114】
薬学的組成物は、活性成分として、化合物またはその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体(賦形剤)と組み合わせて含有できる。いくつかの実施形態では、組成物は、局所投与に好適である。組成物を作製する際に、活性成分は、典型的に賦形剤と混合され、賦形剤によって希釈されるか、または例えば、カプセル、小袋、紙、もしくは他の容器の形態でかかる担体に封入される。賦形剤が希釈剤として機能する際、それは、活性成分のためのビヒクル、担体もしくは媒体として作用する固体、半固体、または液体の材料であり得る。したがって、組成物は、錠剤、丸剤、粉末、舐剤、小袋、カシェー、エリキシル、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、エアロゾル(固体としてまたは液体媒体中)、例えば、最大10重量%の活性化合物を含有する軟膏、軟質及び硬質ゼラチンカプセル、坐薬、無菌注入溶液、ならびに無菌パッケージ化粉末の形態にあり得る。
【0115】
製剤を調製する際、活性化合物は、他の成分と組み合わせる前に適切な粒径を提供するために粉砕され得る。活性化合物が実質的に不溶性である場合、それは、200メッシュ未満の粒径に粉砕され得る。活性化合物が実質的に水溶性である場合、粒径は、例えば、約40メッシュの製剤中の実質的に均一な分布を提供するために、粉砕によって調整され得る。
【0116】
化合物は、錠剤形成及び他の製剤タイプに適切な粒径を得るために、湿式粉砕などの既知の粉砕手順を使用して粉砕され得る。本発明の化合物の細分化された(ナノ粒子)調製物は、当該技術分野において既知のプロセスによって調製され得、例えば、WO2002/000196を参照されたい。
【0117】
好適な賦形剤のいくつかの例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ及びメチルセルロースを含む。製剤は、追加的に、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油などの潤滑剤、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、メチル安息香酸塩及びプロピルヒドロキシ安息香酸塩などの保存剤、ならびに甘味剤及び香味料を含むことができる。本発明の組成物は、当該技術分野において既知の手順を用いることによる患者への投与後に、活性成分の迅速、持続、または遅延放出を提供するように製剤化され得る。
【0118】
薬学的組成物を製剤化するために使用される構成要素は、高純度のものであり、潜在的に有害な汚染物質を実質的に含まない(例えば、少なくともNational Foodグレード、一般には少なくとも分析グレード、及びより典型的には少なくとも医薬品グレード)。特にヒトの消費のために、組成物は、好ましくは、米国食品医薬品局の適用規制に定義される、適正製造規範規則の下で製造または製剤化される。例えば、好適な製剤は、滅菌であり得、及び/または実質的に等張であり得、及び/または米国食品医薬品局の全ての適正製造規範規制に完全に準拠し得る。
【0119】
活性化合物は、広い投与量範囲にわたって有効であり得、一般に治療有効量で投与される。しかしながら、実際に投与される化合物の量は、通常、治療される状態、選択された投与経路、投与される実際の化合物、個々の患者の年齢、体重、及び応答、患者の症状の重症度などを含む関連状況に従って、医師によって決定されることが理解されよう。
【0120】
本発明の化合物の治療投与量は、例えば、治療が行われる特定の使用、化合物の投与の様式、患者の健康及び状態、ならびに処方医師の判断に従って変化できる。薬学的組成物中の本発明の化合物の割合または濃度は、投与量、化学的特徴(例えば、疎水性)、及び投与経路を含むいくつか因子に応じて変化できる。
【0121】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主たる活性成分は、本発明の化合物の均質な混合物を含有する固体の事前製剤組成物を形成するために薬学的賦形剤と混合される。これらの事前製剤組成物を均質なものとして参照する際、活性成分は、典型的には、組成物が錠剤、丸剤及びカプセルなどの等しく有効な単位剤形に容易に細分化され得るように、組成物全体にわたって均一に分散される。次いで、この固体の事前製剤は、例えば、約0.1~約1000mgの本発明の活性成分を含有する、上記のタイプの単位剤形に細分化される。
【0122】
本発明の錠剤または丸剤は、長期作用の利点をもたらす剤形を提供するために、コーティングまたは他の方法で配合され得る。例えば、錠剤または丸剤は、内側投薬量及び外側投薬量構成要素を含むことができ、後者は、前者を覆う外被の形態にある。2つの構成要素は、胃において崩壊に抵抗するように機能して、内側構成要素を無傷で十二指腸を通過させるか、または放出を遅延させることができる、腸溶性層によって分離され得る。多様な材料が、かかる腸溶性層またはコーティングのために使用され得、かかる材料は、いくつかのポリマー酸、ならびにポリマー酸とシェラック、セチルアルコール及び酢酸セルロースなどの材料との混合物を含む。
【0123】
本発明の化合物及び組成物が経口または注射による投与のために組み込まれ得る液体形態は、エリキシル剤及び類似の薬学的ビヒクルと同様に、水溶液、好適に香味付けされたシロップ、水性または油性懸濁液、ならびに綿実油、ゴマ油、ココナッツ油、またはピーナッツ油などの食用油との香味付けされた乳濁液を含む。
【0124】
患者に投与される化合物または組成物の量は、投与されるもの、予防または療法などの投与の目的、患者の状態、投与の様式などに応じて変化するであろう。治療用途では、組成物は、疾患及びその合併症の症状を治癒するか、または少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で、すでに疾患に罹患している患者に投与され得る。有効用量は、疾患の重症度、患者の年齢、体重、及び一般状態などの因子に応じて、担当臨床医の判断と同様に、治療されている疾患状態に依存するであろう。
【0125】
患者に投与される組成物は、上記の薬学的組成物の形態にあり得る。これらの組成物は、従来の滅菌技法によって滅菌され得るか、または滅菌濾過され得る。水溶液は、そのままでの使用のためにパッケージ化または凍結乾燥され得、凍結乾燥された調製物は、投与前に滅菌水性担体と組み合わされる。化合物調製物のpHは、典型的には、3~11、より好ましくは5~9、最も好ましくは7~8となるであろう。前述の賦形剤、担体または安定剤のいくつかの使用は薬学的塩の形成を生じることが、理解されるであろう。
【0126】
キット
本出願はまた、有用な薬学的キットを含み、治療有効量の化合物を含む薬学的組成物を含有する1つ以上の容器、またはそれらの実施形態のうちのいずれかを含む。かかるキットは、当業者に容易に明らかとなるように、例えば、1つ以上の薬学的に許容される担体を含む容器、追加の容器などの様々な従来の薬学的キット構成要素のうちの1つ以上をさらに含むことができる。投与される構成要素の量を示す、挿入物としてもしくはラベルとしてのいずれかの説明書、投与についてのガイドライン、及び/または構成要素を混合するためのガイドラインもまた、キットに含まれ得る。
【実施例】
【0127】
本発明は、特定の実施例を用いてより詳細に記載されるであろう。以下の実施例は例示の目的のために提供され、いかなる様式でも本発明を限定することは意図されていない。当業者は、本質的に同じ結果をもたらすように変更または修正され得る、様々な重要でないパラメータを容易に認識するであろう。
【0128】
実施例A:インビトロJAKキナーゼアッセイ
サイトカイン関連疾患または障害の治療のために使用され得るJAK1経路阻害剤は、Park et al.,Analytical Biochemistry 1999,269,94-104に記載される以下のインビトロアッセイに従うJAK標的の阻害活性について試験される。N末端Hisタグを有するヒトJAK1(a.a.837-1142)、JAK2(a.a.828-1132)及びJAK3(a.a.781-1124)の触媒ドメインは、昆虫細胞中でバキュロウイルスを使用して発現され、精製される。JAK1、JAK2、またはJAK3の触媒活性を、ビオチン化ペプチドのリン酸化を測定することによってアッセイした。リン酸化したペプチドを、均質時間分解蛍光(HTRF)によって検出した。化合物のIC50は、100mMのNaCl、5mMのDTT、及び0.1mg/mL(0.01%)のBSAを有する50mMのTris(pH7.8)緩衝液中で酵素、ATP及び500nMのペプチドを含有する40μLの反応物における各キナーゼについて測定される。1mMのIC50測定について、反応物中のATP濃度は、1mMである。反応を、室温で1時間行い、次いで、アッセイ緩衝液(Perkin Elmer、Boston、MA)中の20μLの45mMのEDTA、300nMのSA-APC、6nMのEu-Py20で中止させた。ユーロピウム標識された抗体への結合は40分間起こり、HTRFシグナルは融合プレート読み取り機(Perkin Elmer,Boston,MA)上で測定された。表1中の化合物を、このアッセイにおいて試験し、表1におけるIC50値を有するように示した。
【0129】
実施例B:化合物1の持続放出製剤の調製
化合物1を含む持続放出錠剤を、賦形剤を以下の表に示される量にある賦形剤と共に調製した。プロトコルAをSR1錠剤に対して使用し、プロトコルBをSR2剤に対して使用し、プロトコルCをSR3錠剤及び25mgのSR錠剤に対して使用し、プロトコルDをSR4剤に対して使用した。これらの手順は、米国特許公開第2015/0065484号に開示され、化合物1の持続放出剤形に関する。
【0130】
プロトコルA:
ステップ1.化合物1のアジピン酸塩、微結晶セルロース、ヒプロメロース(Methocel K100 LV及びMethocel K4M)、及びラクトース一水和物を個別にスクリーニングする。
ステップ2.ステップ1からのスクリーニングした材料を好適なブレンダーに移し、混合する。
ステップ3.ステップ2からのブレンドを好適な造粒機に移し、混合する。
ステップ4.混合しながら精製水を添加する。
ステップ5.ステップ4からの顆粒を好適な乾燥機に移し、LODが3%未満になるまで乾燥させる。
ステップ6.ステップ5からの顆粒をスクリーニングする。
ステップ7.スクリーニングしたステアリン酸マグネシウムを、好適なブレンダー中でステップ6の顆粒と混合する。
ステップ8.好適な回転錠剤プレス上でステップ7の最終ブレンドを圧縮する。
【0131】
プロトコルB:
ステップ1.式Iの化合物のアジピン酸塩、微結晶セルロース、ヒプロメロース及びアルファ化デンプンを個別にスクリーニングする。
ステップ2.ステップ1からのスクリーニングした材料を好適なブレンダーに移し、混合する。
ステップ3.ステップ2からのブレンドを好適な造粒機に移し、混合する。
ステップ4.混合しながら精製水を添加する。
ステップ5.ステップ4からの顆粒を好適な乾燥機に移し、LODが3%未満になるまで乾燥させる。
ステップ6.ステップ5からの顆粒をスクリーニングする。
ステップ7.polyox、ブチル化ヒドロキシトルエン及びコロイド状二酸化ケイ素を個別にスクリーニングした。
ステップ8.ステップ6からの顆粒及びステップ7からの材料を好適なブレンダーに移し、混合する。
ステップ9.ステップ8の材料にスクリーニングしたステアリン酸マグネシウムを添加し、ブレンドを続ける。
ステップ10.好適な回転錠剤プレス上でステップ9の最終ブレンドを圧縮する。
【0132】
プロトコルC:
ステップ1.好適なスクリーンを通じて、ラクトース一水和物、式Iの化合物のアジピン酸塩、微結晶セルロース、及びヒプロメロースを個別にスクリーニングする。
ステップ2.ステップ1からのスクリーニングした材料を好適なブレンダーに移し、混合する。
ステップ3.ステップ2からのブレンドを好適な造粒機に移し、混合する。
ステップ4.混合しながら精製水を添加する。
ステップ5.好適なスクリーンを通じて湿潤顆粒をスクリーニングする。
ステップ6.ステップ5から顆粒を好適な乾燥機に移し、LODが3%未満になるまで乾燥させる。
ステップ7.ステップ6から顆粒を粉砕する。
ステップ8.スクリーニングしたステアリン酸マグネシウムを、好適なブレンダー中でステップ7の顆粒と混合する。
ステップ9.好適な回転錠剤プレス上でステップ8の最終ブレンドを圧縮する。
【0133】
プロトコルD:
ステップ1.好適なスクリーンを通じて、アルファ化デンプン、式Iの化合物のアジピン酸塩、ヒプロメロース、及び必要とされる微結晶セルロースの一部を個別にスクリーニングする。
ステップ2.ステップ1からのスクリーニングした材料を好適なブレンダーに移し、混合する。
ステップ3.ステップ2からのブレンドを好適な造粒機に移し、混合する。
ステップ4.混合しながら精製水を添加する。
ステップ5.好適なスクリーンを通じて湿潤顆粒をスクリーニングする。
ステップ6.ステップ5から顆粒を好適な乾燥機に移し、LODが3%未満になるまで乾燥させる。
ステップ7.ステップ6から顆粒を粉砕する。
ステップ8.微結晶セルロースの残りの部分及び重炭酸ナトリウムの半分をスクリーニングする。
ステップ9.ステップ7からの粉砕された顆粒、及びステップ8からのスクリーニングされた材料を好適なブレンダーに移し、混合する。
ステップ10.重炭酸ナトリウムの残りの部分をスクリーニングし、ステップ9のブレンドと混合する。
ステップ11.ステアリン酸マグネシウムをスクリーニングし、ステップ10のブレンドと混合する。
ステップ12.好適な回転錠剤プレス上でステップ11の最終ブレンドを圧縮する。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0134】
実施例C:血漿及び便中の化合物1生体分析
2つの異なるアッセイは、JAK1阻害の機能的活性を理解するために使用され得る。第1のものは標準的な細胞ベースのアッセイであり、その他のものは全血を使用している。前者は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を使用して実施され、簡潔には、細胞は、JAK1活性を増加させるためにIL-6で刺激され、リン酸化したSTAT3を介して測定される。増加濃度の化合物1が添加されるにつれて、リン酸化したSTAT3の対応する減少が観察される。このアッセイは、血清タンパク質、例えば、便試料を欠く試料中の化合物1のJAK1活性及び/または阻害活性を評価するのに適切である。
【0135】
血清豊富な培地、例えば、血漿または全血における化合物1の阻害活性を評価するために、アッセイは全血を使用して実施され、簡潔には、全血試料がIL-6で刺激され、リン酸化したSTAT3のレベルが決定される。このアッセイは、インビトロ(ヒト血液試料が化合物1でスパイクされる)またはエクスビボ(全血試料が化合物1を投与されたヒト対象から回収される)のいずれかで実施され得る。
【0136】
I.ヒト血漿中の化合物1
ヒト血漿中の化合物1を分析するために使用される方法が、検証されている。簡潔には、50μLのヒト血漿試料が、96ウェルプレートに配置される。50μLの内部標準物(50:50のアセトニトリル:水に溶解した)のアリコートが添加された後、100μLの0.1MのNaHCO3のアリコートが添加される。次いで、800μLのメチル-t-ブチルエーテル(MtBE)が添加され、試料は、覆われ、ボルテックスされる。遠心分離後、700μLのMtBE層は、清潔な96ウェルプレートに移される。次いで、試料は、窒素下でおよそ50℃で乾燥される。次いで、250μLの再構成溶液(アセトニトリル:水、50:50、v/v)のアリコートが、各試料に添加される。プレートは、オートサンプラートレイに配置され、分析のためにLC-MS/MSに注入される。LC-MS/MS分析は、HPLCポンプ及びオートサンプラーを組み合わせたAB Sciex 4000またはSciex 6500 QTRAP質量分析器を用いて実施される。クロマトグラフィー分離は、イソクラティック溶出を用いて、Waters T3(50mm×2.1mm)HPLCカラム上で達成される。質量分析器は、正のESIモードで操作される。多重反応モニタリング(MRM)遷移は、化合物1についてm/z 554.1→186.0、かつ内部標準についてm/z 558.1→190.0である。ピーク面積積分は分析ソフトウェアを使用して実行され、濃度はWatson LIMSにおいて計算される。濃度は、以下の式に従って、加重線形回帰を伴う5nM~5000nMの範囲の10の濃度レベルを使用して計算される:
y=ax+b(加重因子=1/x2)
式中、x=nMでの化合物1濃度、y=ピーク面積比、a=傾き、及びb=切片。
【0137】
定量の下限は5nMであり、較正曲線は、ヒト血漿中の化合物1について5nM~5000nMの範囲である。
【0138】
II.ヒト便中の化合物I
ヒト便中の化合物1を分析するために使用される方法は、適格な方法である。ヒト便試料は、臨床部位で1:1ホモジネート[1部の水(mL):1部の便(g)]で回収される。試料分析の前に、追加の水を試料ホモジネートに添加して、較正標準及びQC試料として1:19での便対水の最終比を達成する。最終ホモジネートは、加工され、較正標準及びQC試料と共に分析される。
【0139】
ヒトホモジネート分析のために、簡潔には、100μLの便ホモジネート(ブランク、QC及び研究試料)は、試験管に配置される。20μLの内部標準物のアリコートが添加及び混合された後、200μLの0.1MのNaHCO3のアリコートは添加及びボルテックスされる。次いで、2mLのMtBEは添加され、試料はボルテックスされる。遠心分離後、MtBE層は、清潔な試験管に移される。次いで、試料を窒素下で約40℃で乾燥させた。次いで、1mLの再構成溶液(アセトニトリル:水、50:50、v/v)のアリコートを、各試料に添加し、ボルテックスした。次いで、10μLの試料を、清潔な試験管において3mLの再構成溶液で希釈した。試料はオートサンプラーバイアルに移され、10μLが分析のためにLC-MS/MSに注入される。LC-MS/MS分析は、HPLCポンプ及びオートサンプラーを組み合わせたAB Sciex API 4000またはAPI 4000 QTrap質量分析器を用いて実施される。クロマトグラフィー分離は、勾配溶出を用いた、Agilent Eclipse Plus C8 50×4.6mm、5μm HPLCカラム上で達成される。質量分析器は、正のESIモードで操作される。MRM遷移は、化合物1についてm/z 554.3→186.2、内部標準についてm/z 558.4→190.2である。ピーク面積積分は分析ソフトウェアを使用して実行され、濃度はWatson LIMSにおいて計算される。ヒト便ホモジネートの濃度は、以下の式に従って、加重線形回帰を有する1μg/g~300μg/g(1.8μM~542μM)の範囲の8つの濃度レベルを使用して計算される:
y=ax+b(加重因子=1/x2)
式中、x=ヒト便ホモジネート中のμg/gでの化合物1濃度、y=ピーク面積比、a=傾き、及びb=切片。
【0140】
実施例1:潰瘍性大腸炎の治療のための、選択的JAK1阻害剤である化合物Iについての投薬戦略
化合物1は、腫瘍疾患及び自己免疫疾患のために現在開発中のJAK1阻害剤である。臨床及びエクスビボ研究を、潰瘍性大腸炎(UC)について重要である結腸消失を理解するために実施した。
【0141】
方法:血漿及び便中の化合物1濃度(結腸代用物)を、単一の持続放出25mg経口投薬後に決定した(例えば、実施例B、25mgのSR組成物を参照されたい)。単回100mg投薬後の血漿中の化合物1濃度もまた、別個の研究で決定された(例えば、血漿中の化合物1の濃度を測定するための実施例Cを参照されたい)。エクスビボ研究:健常及びUC対象(2/群)からの結腸組織試料を、垂直Ussing拡散チャンバ上にマウントした。[14C]化合物1を、100及び1000nMでチャンバの上側に適用し、1時間インキュベートした。試料を、化合物1濃度の決定のために、ドナー及びレシーバー側から回収した。結腸組織を、定量的オートラジオグラフィーのために瞬間凍結した。
【0142】
結果:化合物1は持続放出製剤として送達され、用量の27.1%は便中の変化しない化合物1として除去される(例えば、便中の化合物1の濃度を測定するための実施例Cを参照されたい)。化合物1の単回25mg投薬後、12名の患者のうちの8名は、JAK1阻害に対するインビトロIC
50を超える最大便濃度(すなわち、58nM)を有した(
図1及び2)。最大便PK平均値(SD)、GM=93.4nM(41.4nM)、85.5nM、ここで、PKは薬物動態であり、SDは標準偏差であり、GMは幾何平均である。最大便濃度を、観察された便データから直接採取し、例えば、便中の濃度を0~24時間から回収した。
【0143】
全身濃度は、いずれかの用量について全血中のJAK1阻害に対するIC
50を下回り、平均値(SD)C
max=25mgについて18.9(7.46)nM、かつ100mgについて84.4(45.8)nMであった(
図1及び下の表)。
【表7】
【0144】
標準的な非コンパートメント薬物動態方法を、化合物1血漿濃度を分析するために使用した。Cmax(最大血漿濃度)及びTmax(最大血漿濃度が生じる時間)を、観察された血漿濃度データから直接採取した。終末相消失速度定数(λz)を終末消失相における濃度データの対数直線回帰を使用して推定し、t1/2をln(2)/λzとして推定した。AUCallは、増加する濃度について線形台形規則かつ減少する濃度について対数台形規則を使用して計算される時間0から最後の観察までの血漿濃度-時間曲線下の面積として定義される。AUC0-infをAUC0-t+Ct/λzとして計算し、AUC0-tは、時間0から最後の測定可能な濃度までの血漿濃度-時間曲線下の面積として定義され(また、線形アップ/対数ダウン台形ルールを使用して計算された)、Ctは、最後の測定可能な濃度である。Cl/Fは、見かけのクリアランスであり、用量/AUC0-infとして計算される。Vz/Fは、用量/(λz*AUC0-inf)として計算された終末相に基づいた分布の見かけの体積である。
【0145】
エクスビボでは、化合物1関連放射能は、レシーバー側から検出されなかった。化合物1は、濃度依存的様式で粘膜層、かつより小さな程度で粘膜下層に浸透した(実施例2を参照されたい)。
【0146】
要約:約25mg~約100mgのBID(1日2回)または約25mg~約200mgのQD(1日1回)の用量範囲は、全身的曝露に対する可能性を最小化する一方で結腸曝露を最大化するための、UC患者における研究のために推奨される。
【0147】
実施例2:マイクロオートラジオグラフィー(MARG)及び定量的オートラジオルミノグラフィー(QARL)による、健常な潰瘍性大腸炎対象からの結腸における[14C]化合物1の組織浸透及び分布分析
I.目的
本研究の目的は、定量的オートラジオルミノグラフィー(QARL)及びマイクロオートラジオグラフィー(MARG)を使用して、健常な結腸及び潰瘍性大腸炎(UC)ヒト対象から回収された結腸試料中の[14C]化合物1関連放射能の組織分布を決定することであった。
【0148】
II.材料及び方法
A.試料提出
2名の健常対象及びUC対象からの2つの結腸試料の小片(合計8つの試料)は、Analytical Biological Services Inc.(Wilmington,DE)によって提供され、使用まで-70℃で保存した。
【0149】
B.投薬製剤
投薬製剤、すなわち、100nM及び1000nMを、研究における全ての組織について実験の日に調製した。[14C]化合物1(1.06mg)をジメチルスルホキシド(DMSO;1.514mL)に溶解して、1mMのストック液(0.7mg/mL)を生成した。ストック液(20μL)を、クレブス-リンガー重炭酸塩(KRB)緩衝液(20mL)で希釈して、1000nMの最終濃度に達した。1000nMの投薬製剤(2mL)を、KRB緩衝液(18mL)で希釈して、100nMの最終濃度に達した。両方の投薬製剤のpHは、およそ5.5であった。
【0150】
投薬製剤をインキュベーションの前に分析して、放射能濃度及び均質性を決定した。100μLのアリコートを、製剤容器の上部、中間部、及び下部から採取し、各々を、放射能分析のために秤量し、DMSOで10mLに希釈した。各10mL希釈の3反復アリコートを、液体シンチレーション計数(LSC)によって分析した。
【0151】
C.インキュベーション及び試料回収
腸組織透過研究を、健常組織のために垂直Ussing拡散チャンバシステム(Harvard Apparatus,Holliston,MA)を使用して実行した。凍結された組織を、周囲温度に解凍し、投薬製剤のために使用される予め温められたKRB緩衝液ですすいだ後、装置上に穏やかに配置した。透過を、粘膜側に添加されたKRB緩衝液中で試験物を用いて37℃で1時間粘膜から漿膜まで実施した。ブランクのKRB緩衝液を含有するUssingチャンバのレシーバー側を、曝気装置による気泡で撹拌した。試料の限定された利用能により、UC組織を、両端が切開されたポリプロピレンチューブの一端上にマウントし(粘膜側を上に)、漿膜側を撹拌バーを有するバイアル中でブランクのKRB緩衝液に配置した。試験物を含有するKRBをチューブに添加し、したがって、組織の粘膜側をインキュベーション中に試験物に曝露した。37℃での1時間インキュベート後、試料(100~500μL)を、ドナー及びレシーバー側の両方から採取し、次いで、透過を評価するために1.5mLチューブに移した。組織試料を、チャンバ(健康組織)またはチューブ(UC組織)から穏やかに除去し、液体窒素で冷却したイソペンタン中におよそ30秒間瞬間凍結した。個々の凍結された健常かつUC結腸試料をクライオゲル培地に埋め込み、より大きな健常組織試料を、一次試料及び二次試料用に1/2に分割した。
【0152】
D.試料分析
[14C]ドナー及びレシーバー側の両方における化合物1濃度を、LSCによって分析した。定量の下限(LLOQ)を、バックグラウンド(21dpm)の2倍として決定した。
【0153】
組織試料を、各切片に表される粘膜層から漿膜層までの、組織が断面で切片化されることを可能にするであろう様式で切片化するようにマウントした。
【0154】
試料を、40μmで(QARLについて)、かつ6~8μmで(MARGについて)およそ-20℃で低温切片化し、解凍マウント、続いてスライドウォーマー上で熱固定することによってガラス顕微鏡スライド上に回収した。およそ3つの組織切片を、QARLについて各試料から得た。QARL切片化後、およそ10組の3つの切片/スライドを、MARGについて得た。
【0155】
E.QARL
40μmの切片を有するスライドを、ダンボール裏材上にマウントし、プラスチックラップで覆い、[14C]スパイク血液較正基準(0.00030μCi/g~7.72μCi/gの範囲の3反復の10の濃度)と共にリン造影スクリーンに共曝露した。造影プレート、切片、及び較正基準を、室温で4日間の曝露のために、銅ライニングされた鉛の保管庫中の光密閉曝露カセットに配置した。造影プレートを、Typhoon FLA 9500画像取得システム(GE Healthcare,Sunnyvale,CA)を使用してスキャンし、結果として生じた画像を専用のQPSコンピュータサーバー上に保存した。[14C]スパイクされた血液較正標準によって生成された画像を使用して、画像分析ソフトウェア(マイクロコンピュータ造影デバイス(MCID Image Analysis System,Interfocus Imaging,Cambridge,Linton,UK))を使用して、画像較正曲線を作成した。
【0156】
F.MARG
全ての組織切片を、暗所で写真用乳剤で事前コーティングされ、スライドウォーマー上で熱固定された、下塗りされた(subbed)ガラス顕微鏡スライド上に解凍マウントした。次いで、スライドを、乾燥剤を含む黒いスライドボックスに配置した。スライドボックスを、黒色の電気テープでテーピングし、4℃で鉛ライニングされた容器に配置した。スライドを、写真用乳剤に72時間、1週間、10日、2週間、4週間、6週間、及び8週間曝露した。スライドを、Kodak D19 Replacement現像液及びKodak定着液を用いて現像した。スライドを、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。代表的な結果の検査及びデジタル顕微鏡写真を、Olympus BX51顕微鏡上に搭載されたデジタルカメラを使用して得た。放射能の位置は、放射性試験物に曝露された乳剤から生成された銀沈殿物の小さな黒色の粒としてスライド上で可視化される。観察及び結論は、全ての試料の評価に基づいている。定量的組織濃度に関する結論は、MARG画像を使用して出され得ない。
【0157】
G.データ分析
画像分析較正のために決定された全ての応答曲線を、加重一次多項線形方程式(1/MDC/mm2)を使用して生成した。当てはまりの良さの数的推定値を相対誤差によって与え、各較正標準の相対誤差に対する絶対値は、受け入れられる0.250以下であった。
【0158】
標準曲線計算:
応答(MDC/mm
2)=a
1×濃度(μCi/gでの密度標準)+a
0
ここで、
密度標準=μCi/gでの濃度
MDC/mm2=分子動的計数/組織の面積 a
1=傾き
a
0=y切片
各標準に対する相対誤差を、以下に従って標準曲線を使用して計算した。
【数1】
【0159】
LLOQを、各パネルの平均バックグラウンドの3倍として決定した。10の標的領域をサンプリングして、各パネルについての平均値を決定した。
【0160】
健常組織についてのLLOQ=3×(0.00111)=0.0033μCi/g UC組織についてのLLOQ=3×(0.00106)=0.0032μCi/g
【0161】
組織濃度データを、プロファイル画像分析サンプリング技法を使用して得た。
【0162】
プロファイル造影は、MCID「プロファイル」機能を使用することによって提供されるリボンタイプサンプリング面積を使用して、各セクションの画像全体にわたって一定間隔(50μmの)で濃度データを収集することを伴った。濃度データは、切片を通じて連続的に得られ、各試料の標識された層に対応した。
【0163】
III.結果
A.投薬製剤分析
投薬製剤中の放射能の濃度は、投薬当日の投与前アリコートについて4.53及び48.7nCi/mL(80.7及び868nM)の平均であった。各々が3反復で分析された、製剤の3反復アリコートの分析のための変動係数は、それぞれ1.5%及び0.7%であり、製剤が均質であることを示した(表、以下)。
【表8】
【0164】
投与前及び投与後の製剤の放射線純度は96%超であった。
【0165】
B.透過研究
健常及びUC対象からの1時間インキュベーション後の結腸における[
14C]化合物1の透過結果が、以下の表に列挙される(表中、INCB039110は、化合物1である)。
【表9】
【0166】
群2の対象2の組織の内側は、組織を有するポリプロピレンチューブの一端をしっかりと覆おうとしている間に破損し、UC状態からの延長性の喪失による場合がある。群4の対象2の透過結果は1時間のインキュベーション中の漏れにより決定されなかったが、この組織試料をQARL及びMARGのために使用した。基底外側部側(レシーバー区画)における全ての[14C]化合物1濃度は、LLOQ未満であった。
【0167】
C.オートラジオグラフィー分析
QARL
試料層を通じた個々の試料濃度プロファイルデータの要約が、
図3にプロットされ、以下の表に列挙される(表中、INCB039110は、化合物1である)。
【表10】
【0168】
回収されたピークは、結腸組織層の変動性を表した。[14C]化合物1は、主に粘膜層に分布したが、粘膜下層を通じて検出された(7つの組織のうち5つ)。
【0169】
MARG
MARG反応は、スライドの第1のセット(72時間の試料)において観察されず、その後のスライドは、4~8週間に定常に達した反応を展開した。薬物由来の放射能の相対濃度は、試料、薬物濃度、ならびに健常状態及びUC状態の間の組織層にわたって一貫していた。最も高い濃度は、全ての試料にわたって絨毛及び関連するクリプトに存在し、その後に粘膜下層が続いた。放射能は、筋肉層においてほとんどまたは全く観察されなかった。筋肉層の外側は、バックグラウンドにあった。
【0170】
実施例3:IL-6媒介性STAT3リン酸化及びJAK1
インターロイキン-6(IL-6)は、共通のgp130受容体及び特異的なIL-6Rα共受容体を通じてシグナル伝達して、Janusキナーゼ(JAK)シグナル伝達及び転写活性化因子(STAT)シグナル伝達経路を活性化する(Heinrich et al.The Biochemical journal.2003;374:1-20)。潰瘍性大腸炎生検は、腸の炎症領域内での優位なサイトカインとしてIL-6を特定しており、その濃度は、Mayo内視鏡スコアと相関する(参照:Bernado et al.,2012)。異常な炎症性IL-6/STAT3経路活性化は、関節リウマチ患者(RA)からの末梢血単核細胞(PBMC)において記載されており(Isomaki, P et al.Rheumatology,Volume 54,Issue 6,1 June 2015,1103-1113)、抗IL-6療法は、顕著な臨床有効性を実証する(Expert Rev Clin Immunol.2017 Jun;13(6):535-551、J Dermatolog Treat.2018 Sep;29(6):569-578)。プラーク乾癬(Ps)の病因は、IL-23媒介性Tヘルパー17(Th17)/IL-17炎症(参照)によって促進される。IL-6は、IL-23受容体のSTAT3依存的誘導を促進する際に重要な役割を果たし、次に、Th17細胞に完全なエフェクター機能を付与するために不可欠である(Zhou et al.Nat.Immunol.2007;8:967-974、Hirota et al.J.Exp.Med.2007;204:41-47、Calautti et al.Int J Mol Sci.2018 Jan;19(1):171)。JAK/STAT経路を通じたシグナル伝達の阻害は、サイトカイン促進細胞ベースのアッセイにおいて間接的に測定され得る。リン酸化したSTATの評価は、しばしば組換えヒトIL-6を用いて、JAK1の刺激に応答して測定される。
【0171】
化合物1の全身的効果は、自己免疫疾患RA及びPsにおいて研究されている。JAK1阻害のマーカーであるIL-6、及びJAK2阻害のマーカーであるTPOを用いた刺激後のSTAT3のリン酸化の阻害を、両方の研究において測定した。Psを有する患者において、100mgのQD、200mgのQD、200mgのBID、及び600mgのQDの用量が、研究された。エクスビボでのIL-6刺激に応答して、pSTAT3の化合物1濃度依存性阻害が存在した。しかしながら、TPOに応答して、100mgのQD、200mgのQD、及び200mgのBIDの用量でのpSTAT3の顕著な阻害はなかった(
図4)。また、28日目にベースラインsPGAからの主要有効性測定値平均変化における用量依存的応答があった(以下の表を参照されたい)。
【表11】
【0172】
200mgのBID(p=0.053)及び600mgのQD(p=0.003)の用量は、ベースラインからの臨床的に有意義な変化を実証したが、一方で、100mgまたは200mgのQDの用量は、そうでなく、プラセボとは統計学的には異ならなかった(それぞれ、p=0.270、p=0.118)。エクスビボIL-6刺激性STAT3の阻害の薬物動態マーカーと有効性エンドポイントとの間に良好な相関がある(
図5)。好中球減少は認められず、JAK2の顕著な阻害(TPO刺激性pSTAT3阻害から決定される)が100mgのQD、200mgのQD、及び200mgのBIDの用量では認められなかったという観察と一致し、好中球減少及び他の血球減少は、骨髄抑制を誘発するJAK2阻害の特異的な結果であると考えられている(Bissonnette R et al J Dermatolog Treat,2016 27(4)332-338、Mascarenhas et al.Haematolgica 2017 102(2):327-335.)。
【0173】
RA患者では、100mgのQD及びBID、200mgのBID、300mgのQD、400mgのBID、ならびに600mgのQDの用量が研究され、再びIL-6誘導性pSTAT3の用量依存的阻害の一般的な傾向が観察された(
図6A及び6B)。増加するTPO誘導性pSTAT3阻害の一般的な傾向もまた、観察された。しかしながら、最大の阻害は、200mgのBID投薬後に観察されたようである。また注目すべきは、100mgのQD用量は、プラセボよりも小さなTPO誘導性pSTAT3阻害を有したことである。本研究では、減少したANCのいくつかの症例があったが、用量依存的傾向は観察されなかった。有効性に関して、用量依存的傾向は、84日目の訪問(主要エンドポイント訪問)での600mgのQD治療群について、化合物1とプラセボとの間のACR20、ACR50、及びACR70応答における統計学的有意差以外、用量範囲にわたって明らかでなかった。
【0174】
総合的に考えると、RA及びPs患者からの臨床データは、100mgのQD用量が、集積した安全性、有効性、及びバイオマーカーデータに基づいて最小限の全身的効果を有することを示唆する。50mgのBID後の毎日の曝露は、化合物1が用量に関して超線形PKを示すことを考慮すると、100mgのQD未満であるように予想される。
【0175】
実施例4:中等度から重度の潰瘍性大腸炎における化合物1の安全性及び有効性を評価するためのオープンラベル延長を伴う第2相、二重盲検、用量範囲、プラセボ対照研究
I.目的
本研究は、中等度から重度の活動性UCを有する参加者における経口化合物1の安全性及び有効性を評価する。化合物1は、SR製剤中で投与されるであろう。ヒトにおける化合物1の経口生物学的利用能は中程度であり、投与された用量の約30%は、便中の親化合物として無傷で排泄される。STAT3のIL-6刺激性リン酸化の抑制は、JAK1阻害の尺度である。50mgのBID化合物1の用量は、PBMC(58nM)中のSTAT3のIL-6刺激性リン酸化の抑制に対するインビトロIC50値を超過する便濃度(約200nM)をもたらすことが予想される。しかしながら、この用量に関連する対応する血漿濃度は低く、エクスビボ全血IC50値の141nMをはるかに下回るCmax値(51nM)を有することが予想される。結果として、化合物1の有効性は、全身的というよりむしろ、主に局所的なJAK1阻害を通じて媒介されることが予想される。
【0176】
選択的かつ局所的に作用するJAK1阻害剤として、化合物1は、貧血または好中球減少の関連リスクを有しない他のJAK阻害剤と共に見られる抗炎症特性を保有し得る。選択された用量範囲における化合物1の好ましい安全性プロファイルを考慮すると、免疫抑制性UC療法(AZA、6-MP、及びメトトレキサート)の同時使用が許容されることになる。
【0177】
II.全体設計
およそ206名の参加者は、全体としてパートA(n=30)及びパートB(n=176)に12週間登録されることになる。パートA及びパートBは、両方とも無作為化、二重盲検、プラセボ対照、及び平行設計である。
【0178】
パートAでは、30名の参加者は無作為に割り当てられて、50mgのBIDまたはプラセボを2:1の分配比で受けることになる。パートA参加者は、4週目に一晩の診療所内訪問を完了することになる。この訪問では、便薬物濃度分析のための24時間の大便試料及び血漿薬物濃度のPK分析のための連続血液試料が得られることになる。ベースライン及び12週目に内視鏡検査を受けることに加えて、パートA参加者(のみ)は、4週目に内視鏡検査を受けることになる。パートAは、2:1比で50mgのBIDでのメカニズムの証明を確立するように意図され、パートBは、QDまたはBIDのいずれかを与えられた25~100mgの総1日用量の用量の範囲の臨床有効性を評価するように意図される。パートBにおいて使用される用量レジメンは、パートAの後に選択されることになる。パートAまたはパートBのいずれか、及び12週目での内視鏡検査を含む全ての関連する研究手順を完了した参加者は、研究の対応する40週間のOLE期間に入る資格がある。
【0179】
パートBでは、176名の参加者は、化合物1錠剤の3用量レベルまたはプラセボのうちの1つに1:1:1:1比で無作為化されることになる。プラセボに加えて、パートBに含まれる用量は、25mgのBID、50mgのBID、及び100mgのQDである。パートBの用量レジメンは、パートAの結論で確認されることになる(QDまたはBIDを投与された25~100mgの総1日用量範囲内)。パートB参加者は、ベースライン及び12週目に内視鏡検査を受けることになる。加えて、合計24名のパートB参加者(各治療群から6名)は、4週目に一晩の診療所内訪問を完了することになる。この訪問では、便薬物濃度のための24時間の大便採取及びPK分析のための連続血液試料が得られることになる。
【0180】
パートA及びパートBの両方におけるUCのバックグラウンド安定療法は、12週目の評価が完了するまで、スクリーニング及び二重盲検治療期間中に変更されてはならない。
【0181】
この期間中にUCの新しい療法の開始を必要とする参加者は、内視鏡検査を受け、治験責任医師の裁量で与えられる適切な標準的なケア治療を受けて研究を中止するべきである。12週目の内視鏡検査後、1日あたりのコルチコステロイド用量は、治験責任医師の裁量で増加または減少し得る。パートA及びパートBからの12週目のデータの分析に加えて、本研究について計画された3つの追加の中間分析がある:
1.第1の中間分析は、パートAに無作為化された15名の参加者が利用可能な4週目のデータを有する際に実行されることになる。非盲検化PK/PDチームは、全身的曝露を評価し、化合物1がJAK/STATシグナル伝達経路に対する影響を有するかどうかを確認するために予備的バイオマーカー分析を実行することになる。
2.第2の中間分析は、これらの15名の参加者が12週目に達する際に実行されることになる。PK/PD結果を考慮することに加えて、このセクションにおいて実証された有効性の不十分な証拠がある場合、研究は終了され得る。
3.第3の中間分析は、パートBに無作為化された88名の参加者が利用可能な12週目のデータを有する後に実行されることになる。研究は、有効性の不十分な証拠がある場合に終了され得る。
【0182】
パートAの結論で、SRC(研究依頼者の研究チームのメンバーで構成される)は、パートBに進むか、または研究を終了するかどうかを決定するために、パートAの最終的な分析を実施して、非盲検化ベースで全ての安全性及びPDデータを見直すことになる。パートBについての用量レジメンの選択は、データのこの分析によって通知されることになる。パートB用量レジメンは、25~100mgの総1日用量を用いるQDまたはBIDのいずれかとなる。加えて、パートA及びパートBのOLE期間における用量レジメンは、パートA結果に基づいて研究依頼者の研究チームによって修正され得る)。パートA OLEにおける用量は、50mgのBIDである。パートB OLE期間における用量は、同じ用量範囲(25mg~100mgの総1日用量)内で後に修正され得る。
【0183】
88名の参加者がパートBの12週目を完了する際に、DMCは、研究を継続するよう推奨し得る(現在の安全性分析の結果に関する詳細は次のスケジュールされた分析の前に明らかにされないことになる)か、または(有効性の欠如または任意の安全性所見に基づいて)研究を中止することを推奨し得る。DMCはまた、パートBに対するOLE用量の修正に関して推奨し得る。
【0184】
二重盲検期間の最終分析は、全てのパートB参加者が12週目を完了した際に実施されることになる。
【0185】
最終研究分析は、全ての参加者が30日間のフォローアップ期間を含む研究のOLE期間を完了した後に生じることになる。
III.研究治療
【表12】
【0186】
IV.有効性評価
Mayoスコアに基づく有効性エンドポイントの定義は、以下に定義され、プロトコル全体を通して使用されることになる。
A.Mayoスコアに基づく有効性エンドポイントの定義のリスト
【表13】
【0187】
B.内視鏡検査
内視鏡検査(好ましくは結腸内視鏡検査)は、ベースライン及び12週目で必要とされる。加えて、内視鏡検査(施設の裁量での結腸内視鏡検査または柔軟なS状結腸内視鏡検査)は、4週目に、全てのパートA参加者のみに対して必要とされる。この手順は、任意の易出血性が少なくとも2のスコアをもたらすmMESを含む3構成要素Mayoスコアを確立するために実行されることになる(Food and Drug Administration.Guidance for Industry:Ulcerative Colitis:Clinical Trial Endpoints.2016. https://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM515143.pdf)。内視鏡検査と予定された訪問との間の時間の持続期間は、14日を超えるべきでない。内視鏡検査はまた、ピンチ生検が粘膜組織におけるPD効果を評価することを可能にする。
【0188】
訓練を受けた内視鏡医が、内視鏡検査を実行すべきである。可能であれば、同じ内視鏡医が全ての訪問時に内視鏡検査を実行すべきである。全ての結果は、研究マニュアルに記載されるように一元的に読み取られ、判定される。
【0189】
内視鏡検査中に得られた生検標本の組織学的評価はまた、別個の手順書に記載されるように、訓練を受けた病理学者によって見直され得る。
【0190】
C.炎症性腸疾患アンケート(IBDQ)
IBDQは、UCを含む炎症性腸疾患を有する参加者における疾患特異的な生活の質を測定するための、心理測定的に検証された患者報告アウトカム手段である。IBDQは、32項目を含み、4次元に群化され、以下のようにスコア化される:
・排便症状:10~70。
・全身症状:5~35。
・感情機能:12~84。
・社会機能:5~35。
【0191】
合計IBDQスコアは、32~224の範囲である。総スコア及び各ドメインについて、より高いスコアはより良い生活の質を示す。少なくとも170のスコアは臨床的寛解に対応し、少なくとも16ポイントの増加は臨床的に有意義な改善を示すと見なされる。
【0192】
IBDQは、ベースライン及び各指定された研究訪問時に評価されることになる。
【0193】
D.3構成要素Mayoスコア
3構成要素Mayoスコアは、本研究におけるUCの疾患活動性を測定するために使用されることになる。3構成要素Mayoスコア(PGAを有しないMayoスコアは、0~9ポイントの範囲である)は、以下の3つのサブスコアからなり、各々は0~3から格付けされ、より高いスコアはより重度の疾患を示す。
・大便頻度(0~3)
・直腸出血(0~3)
・mMES(0~3)
【0194】
3構成要素Mayoスコアは、ベースライン及び各指定された研究訪問時に、中央判定者によって評価されるような内視鏡検査結果を組み込むことに基づいて決定されることになる。中央内視鏡検査結果が欠落した場合、治験責任医師によって決定されるような内視鏡サブスコアが、計算に使用されることになる。
【0195】
3構成要素Mayoスコアは、訪問前の最新の3日間の利用可能なデータからの大便頻度及び直腸出血データを使用して計算される。以下の期間から回収されたデータは、この計算には含まれないことになる:
・便秘または下痢に対する薬物療法がおこなわれた日
・大便頻度または血液含有量に影響する手順または手順の準備(例えば、浣腸、他の下剤、清澄流動食)の日。
・腸運動抑制剤(例えば、ロペラミド)の使用後48時間。
・内視鏡検査後48時間。
【0196】
E.医師による全体評価
PGAは、3構成要素Mayoスコアとは別に計算されることになる。PGAは、以下の3つの基準を認める:
・参加者の腹部不快感の毎日の記憶、及び
・参加者の一般的な健康状態、及び
・身体所見及び参加者のパフォーマンス状態などの、参加者のその他の観察結果。
PGA基準は、以下のようにスコア化されることになる:
・0=正常
・1=軽度疾患
・2=中等度疾患
・3=重度疾患
PGAは、ベースライン及び各指定された研究訪問時に評価されることになる。
【0197】
V.薬物動態評価
A.血液及び大便試料回収
PK訪問(2週目及び12週目)では、参加者は、研究施設に到着する前に研究薬物の服用を控えなければならない。投与前PK試料は、回収されるべきである。投与前PK試料の回収後、化合物1が投与され、その後の定期試料が参加者から回収されることになる。PK分析のための血液回収、研究薬物の最終用量、及び採血の前の最後の2回の食事(例えば、前夜の夕食及びその朝の朝食)の日時が、記録されることになる。
【0198】
4週目に、パートAにおける全ての参加者及びパートB参加者のサブセット(n=約24)は、一晩の入院クリニック訪問を完了することになる。この訪問では、参加者は、大便中の化合物1便濃度を決定するために24時間の大便試料を回収し、血漿薬物濃度の分析のための連続血液試料が得られることになる(例えば、実施例Cを参照されたい)。内視鏡検査(結腸内視鏡検査または軟性S状結腸内視鏡検査)は、参加者がCRUから退院し中央判定者によって評価される前に実行されることになる。
【表14】
【0199】
【0200】
実施例5.自発性大腸炎の前臨床マウスモデル
インターロイキン-10(IL-10)ノックアウト(KO)マウスモデルは、IL-10 KOマウス、BALB/cAnNTac-Il10em7Tacが大腸炎を自発的に発症するため、潰瘍性大腸炎及びクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)の多因子性質を反映する。IL-10 KOマウスにおける大腸炎は、CD4+Tヘルパー1様T細胞の異常な応答、ならびにJanusキナーゼ/シグナル伝達及び転写活性化因子(JAK/STAT)経路を通じてシグナル伝達する炎症促進性サイトカインの過剰な分泌から生じる。化合物1は、JAK2、JAK3及びTYK2に対して22~500倍超の選択性を有する強力なJAK1阻害剤であり、現在、中等度から重度の潰瘍性大腸炎の臨床試験における単剤療法として調査されている。
【0201】
BALB/c株バックグラウンド上の雌IL-10ホモ接合体ノックアウトマウスが、Taconic(USA)によって提供された。6週齢から、化合物1及びビヒクル(10mL/kg)を、1日2回、経口経管栄養によって投与した。下痢を、0~3の評価尺度上で定量化した(0=正常、1=軟らかいが依然として形を成す、2=非常に軟らかい、3=下痢)。マウスを、CO2窒息によって安楽死させ、結腸の長さ及び重量を測定した。組織病理を、以下の基準に基づいて0~10の尺度上でスコア化した。リンパ球は、粘膜及び粘膜固有層/粘膜下層に位置する腸関連リンパ系組織、粘膜びらん/潰瘍、及び全層性炎症に浸潤する。体重、大便硬さ、便潜血、及び直腸出血を、スコア化した。直腸脱の発生率を記録した。
【0202】
顕著な改善が、
図7Aに示されるような総疾患負荷、及び
図7Bに示されるような重度疾患のマーカーとしての直腸脱の発症に関して観察された。エクスビボにおいて、化合物1で治療したマウスの結腸組織を、
図7C~7Dに示されるような低減した組織病理によって特徴付けた。30mg/kgでの化合物1の経口1日2回の投与は、大腸炎の発症を有意に(p<0.001)遅らせ、疾患関連重量減少を調節した。累積臨床疾患スコアは、ビヒクル対照と比較して、化合物1で治療された動物において有意に(p<0.0001)低減した。直腸脱の発生率もまた、有意に(p<0.01)低かった。化合物1の投与は、結腸構造病理において有意な(p<0.01)低減をもたらした。リンパ球浸潤及び全層性炎症もまた、ビヒクル対照に対して化合物1で治療されたマウスにおいて有意に(p<0.01)減少した。
図10に示されるように、化合物1が、顕著により遅い疾患発症によって証明されるように、IL-10 KOマウスモデルにおける自発性大腸炎を改善すること、ならびに化合物1治療が、
図12A~12Bに示されるように、ビヒクル対照と比較して、IL-10 KOマウスの結腸における差次的遺伝子発現プロファイルをもたらすこともまた、見いだされた。
図15A~15Bに示されるように、全身的化合物1送達は、IL-10 KOマウスにおける結腸形態に対する顕著な保護効果と関連付けられた。
【0203】
これらのデータは、化合物1が、IBD(例えば、自発性大腸炎)の治療のための治療剤として有用であり得ることを示唆する。
【0204】
実施例6.マウスモデルにおいて実験的に誘導された炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎及びクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)は、免疫系と消化管の組織との間の複雑な相互作用から生じる特発性慢性及び再発性炎症性状態の一群である。Janusキナーゼ/シグナル伝達及び転写活性化因子経路を通じたIBDシグナルの病因における複数のサイトカイン及び増殖因子。
【0205】
IBDの前臨床モデルを、以下に記載されるように、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)または4-エトキシメチレン-2-フェニル-2-オキサゾリン-5-オン(オキサゾロン)の結腸内注射によってBALB/cマウスにおいて確立して、免疫応答を誘発した。体重、大便硬さ、及び便血を、スコア化した。追加の読み出された情報は、結腸重量対長さ比及び組織学的評価を含んだ。血液を、薬物動態分析のために回収した。
【0206】
マウスオキサゾロン誘導性大腸炎モデル
雄のBALB/cマウスを、商業的に購入した(Charles River Laboratories)。0日目に、マウスを、オキサゾロン(150μL、アセトン/オリーブオイル、4:1 v/v中3%)をそれらの予め剃られた吻側背部に塗布することによって感作させた。動物を、5日目にオキサゾロンで再感作させた。マウスを、直腸内オキサゾロン負荷の前に絶食させた。遠位大腸炎を、オキサゾロン溶液(0.1mLの40%エタノール中1mg)の結腸内滴下によって誘導し、その後、動物を、溶液が結腸に残ることを確実にするために、30秒間垂直位置に維持した。偽対照マウスは、0.1mLの40%エタノールを単独で受けた。化合物1及びビヒクル(10mL/kg)を、1日2回、経口経管栄養によって投与した。下痢を、0~3の評価尺度上で定量化した(0=正常、1=軟らかいが依然として形を成す、2=非常に軟らかい、3=下痢)。便潜血を、S-Y潜血用紙(Shih-Yung Medical Instruments,Taiwan)を使用して0~3の尺度上で検出した(0=陰性、1=陽性、2=可視血痕、3=直腸出血)。8日目に、マウスを、CO
2窒息によって安楽死させ、結腸の長さ及び重量を測定した。さらに、腹腔が開かれた際、結腸と他の臓器との間の接着が、各結腸の除去及び秤量後の結腸潰瘍の存在として認められた。肉眼的スコア化を、表Aに示されるように、0~12の尺度上で実行した。正規化された結腸重量は、偽対照マウスに対する組織の増加を表す。
【表16】
【0207】
エタノールビヒクル中のオキサゾロンの直腸内投与は、直接的な組織損傷を誘発し、遠位結腸における粘膜炎症、上皮微小潰瘍及び組織病理学的変化をもたらす免疫応答を誘導することは、ヒト潰瘍性大腸炎を暗示する(例えば、Kojima et al,J.Pharmacol.Sci.2004,96(3):307-313を参照されたい)。後者の炎症相は、IL-4、IL-5及びIL-13分泌などのTh2サイトカインの産生によって促進される(例えば、Randhawa et al,J.Physiol.Pharmacol.2014,18(4):279-288を参照されたい)。
【0208】
毎日の化合物1治療(30mg/kg BID)は、
図8Aに示されるように下痢及び直腸出血からの回復を加速し、
図8Bに示されるように肉眼組織病理を改善し、
図8Cに示されるように炎症性腫脹の代替の読み出された情報として正規化された結腸重量を低減するのに有効であった。これらのデータは、トファシチニブがオキサゾロン誘導性大腸炎を阻害することを実証する公開された結果と一致し(例えば、Beattie et al,J.Inflamm.(Lond).2017,44:28を参照されたい)、抗炎症有効性の顕著な割合がJAK1阻害によって促進されることを示唆する。加えて、1日2回の化合物1治療(経口または結腸内)は、ビヒクル治療対照と比較して、顕著に大便硬さを改善し、便潜血スコアを低減し(
図13A~13Dを参照されたい)、化合物1治療は、それぞれのビヒクル治療対照と比較して、結腸短縮を顕著に改善した(
図14A~14Eを参照されたい)。
【0209】
TNBS誘導性大腸炎モデル
雄のBALB/cマウスを購入し(Charles River Laboratories)、遠位大腸炎をTNBS(2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸溶液、0.1mLの50%エタノール中1mg)の結腸内滴下によって誘導した。化合物1治療を、経口経管栄養(PO)による30mg/kg、または結腸内注射(IC)による3mg/kgで1日2回(BID)投与した。下痢を、TNBS感作後3~5日目に、0~3の評価尺度上で定量化した(0=正常、1=軟らかいが依然として形を成す、2=非常に軟らかい、3=下痢)。
【0210】
図9Aに示されるような、ビヒクル治療された動物と比較した経口化合物1治療の顕著な下痢症状。このデータは、
図8Aに示されるオキサゾロン誘導性モデルデータと一致する。結腸に直接送達される低用量化合物1治療はまた、
図9Bに示されるように、疾患回復を増強する際に非常に有効であった。例えば、オキサゾロンモデルにおいて、30mg/kgでの化合物1のPO BIDは、結腸短縮(
図14A~14B及び14Eを参照されたい)及び重量増加の有意な(p<0.05)低減を示した。3mg/kgでの化合物1のIC BIDはまた、結腸短縮を有意に(p<0.05)低減した(
図14C~14Eを参照されたい)。
【0211】
30mg/kgまたは3mg/kgでの化合物1の結腸内用量の1日2回の経口投薬(PO)は、対照と比較して、大便硬さを有意に(p<0.05)改善した。加えて、便血スコアの有意な(p<0.05)減少は、3mg/kgのIC BIDで達成された。さらに、投与の両方の経路(経口、IC)は、大便硬さ及び便血スコアの有意な(p<0.05)改善をもたらした。3mg/kgでの化合物1のIC BIDは、総結腸肉眼的損傷を改善した。化合物1の結腸内投薬は、JAK1 IC50未満の全身的薬物曝露を維持したが、実験用IBDの同等の阻害を達成した。まとめると、これらのデータは、化合物1が、IBDの治療のための治療剤として有用であり得ることを示唆する。
【0212】
ハプテン化剤(TNBS)の直腸内投与は、結腸タンパク質を宿主免疫系に対して免疫原性にし、それによって、CD4+T細胞、好中球、及びマクロファージでの粘膜固有層の浸潤に特徴付けられるTヘルパー(Th)1媒介性免疫応答を開始する。化合物1を、30mg/kgで経口投与するか、または3mg/kgで結腸に直接投与して、局在化されたJAK1阻害が有効であるかどうかを決定した。オキサゾロンモデルと一致して、経口化合物1は、
図11Aに示されるように、ビヒクル治療動物と比較して疾患スコア回復を加速させた。結腸に直接投与された低用量化合物1は、
図11Bに示されるように、回復をより迅速に誘導し、より大きな治療応答を媒介するようであった。
【0213】
さらなる研究では、循環及び組織薬物濃度の定量化は、局所的対全身的JAK1標的阻害を明確に区別した。経口投薬は、
図11Cに示されるように、結腸濃度と同様であるおよそ11μMのピーク循環薬物レベルをもたらした。対照的に、局在化された化合物1送達は、
図11Dに示されるように、およそ0.04μMの最小のピーク全身濃度によって特徴付けられたが、結腸組織中の0.45μM以上の持続的曝露を持続した。したがって、炎症の胃腸組織内でのJAK1阻害剤の戦略的標的化または放出は、改善された利益-リスクプロファイルを潜在的に達成できる。
【0214】
腸炎症の部位に直接投与される低用量化合物1はTNBS誘導性大腸炎において非常に有効であり、化合物1血漿濃度が最小であったため、この治療応答は全身的JAK1阻害とは独立していた。このデータは、局在化されたJAK阻害が、治療応答を達成するのに十分であり得、それによって全身的免疫抑制の必要性を回避するという理論的根拠を強く支持する。理論に束縛されるものではないが、これらのデータは、JAK1が病原体を活発にする支配的なメカニズムであることも示唆していると考えられる。
【0215】
本明細書に記載されるものに加えて、本発明の様々な修正は、前述の記載から当業者に明らかとなるであろう。かかる修正はまた、添付の特許請求の範囲の範囲内に該当するように意図される。本出願に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物を含む各参考文献は、その全体の参照により本明細書に組み込まれる。
本願は下記の態様も包含する。
[態様1]
対象における胃腸疾患または障害を治療するための方法であって、JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含み、前記JAK1経路阻害剤を投与した後の前記JAK1経路阻害剤の最大便濃度が約25nM超であり、前記JAK1経路阻害剤を投与した後の最大総血漿濃度が約150nM未満である、前記方法。
[態様2]
前記JAK1経路阻害剤が、JAK2、JAK3、及びTyk2よりもJAK1に対して選択的である、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記胃腸疾患または障害が、潰瘍性大腸炎(UC)である、態様1または2に記載の方法。
[態様4]
前記胃腸疾患または障害が、クローン病である、態様1または2に記載の方法。
[態様5]
前記胃腸疾患または障害が、セリアック病である、態様1または2に記載の方法。
[態様6]
前記胃腸疾患または障害が、自発性大腸炎である、態様1または2に記載の方法。
[態様7]
前記JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、約50mg~約100mgの1日用量で投与される、態様1に記載の方法。
[態様8]
前記JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、約25mg~約75mgの1日用量で投与される、態様1に記載の方法。
[態様9]
前記JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、約25mgの1日用量で投与される、態様1に記載の方法。
[態様10]
前記JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、約50mgの1日用量で投与される、態様1に記載の方法。
[態様11]
前記JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、約100mgの1日用量で投与される、態様1に記載の方法。
[態様12]
前記JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、約25mgの用量で1日1回投与される、態様1に記載の方法。
[態様13]
前記JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、約50mgの総1日投与のために、約25mgの用量で1日2回投与される、態様1に記載の方法。
[態様14]
前記JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、約50mgの用量で1日1回投与される、態様1に記載の方法。
[態様15]
前記JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、約100mgの総1日投与のために、約50mgの用量で1日2回投与される、態様1に記載の方法。
[態様16]
前記JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、約100mgの用量で1日1回投与される、態様1に記載の方法。
[態様17]
前記JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、前記JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を各々含む1つ以上の持続放出剤形として投与される、態様1~16のいずれか一つに記載の方法。
[態様18]
前記JAK1経路阻害剤が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である、態様1~17のいずれか一つに記載の方法。
[態様19]
前記JAK1経路阻害剤が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルアジピン酸塩である、態様1~17のいずれか一つに記載の方法。
[態様20]
前記JAK1経路阻害剤の最大便濃度が、前記JAK1経路阻害剤の投与後に約50nM超である、態様1~19のいずれか一つに記載の方法。
[態様21]
前記JAK1経路阻害剤の最大総血漿濃度が、前記JAK1経路阻害剤の投与後に約150nM未満である、態様1~20のいずれか一つに記載の方法。
[態様22]
前記JAK1経路阻害剤の最大総血漿濃度が、前記JAK1経路阻害剤の投与後に約141nM未満である、態様1~21のいずれか一つに記載の方法。
[態様23]
対象における胃腸疾患を治療するための方法であって、約25mg~100mgのJAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩の1日用量を前記対象に投与することを含み、前記JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、前記JAK1経路阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を含む1つ以上の持続放出剤形として投与される、前記方法。
[態様24]
潰瘍性大腸炎、クローン病及びセリアック病からなる群から選択される胃腸疾患の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法であって、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含み、
{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を投与した後の{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの最大便濃度が、約25nM超であり、
{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を投与した後の{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルの最大総血漿濃度が、約150nM未満である、前記方法。
[態様25]
対象における潰瘍性大腸炎、クローン病、及びセリアック病からなる群から選択される胃腸疾患を治療するための方法であって、遊離塩基ベースで約25mg~約100mgの{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩の1日1回用量を前記対象に投与することを含み、前記用量が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-[7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩を各々含む1つ以上の持続放出剤形を含む、前記方法。