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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】変圧器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/30 20060101AFI20250124BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20250124BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20250124BHJP
   H01F 27/245 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
H01F27/30 130
H01F27/255
H01F27/06
H01F27/245 155
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022008280
(22)【出願日】2022-01-21
(65)【公開番号】P2023107142
(43)【公開日】2023-08-02
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】御子柴 諒介
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅也
(72)【発明者】
【氏名】篠原 誠
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/132450(WO,A1)
【文献】特開2019-36567(JP,A)
【文献】国際公開第2008/152710(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/30
H01F 27/255
H01F 27/06
H01F 27/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファス薄帯で構成された鉄心脚に巻かれたコイルを外側から挟み込むコイル押え金具を備えた変圧器であって、
前記コイル押え金具は、
前記コイルに接するコイル押え金具母材と、
前記コイル押え金具母材の外側に配置された補強部材と、を備え、
前記コイル押え金具母材は、所定の箇所に孔部を有し、
前記補強部材は、
前記コイル押え金具母材の前記孔部を介して前記コイル押え金具母材の内側から接合部材により接続されることにより前記コイル押え金具母材に固定され、
前記コイル押え金具母材は、
上方及び下方に設けられた段差部と、
上方及び下方の前記段差部の間に設けられた平坦部と、を有し、
前記コイル押え金具母材の前記孔部は、
前記段差部に設けられた位置決め用孔部と、前記平坦部に設けられた接続用孔部とから成り、
前記補強部材は、
上方及び下方に設けられた係合部を、有し、
前記補強部材の前記係合部が前記コイル押え金具母材の前記段差部に前記位置決め用孔部を介して差し込まれて位置決めされた状態で、前記コイル押え金具母材の前記接続用孔部が前記コイル押え金具母材の内側から前記接続部材により接続されることを特徴とする変圧器。
【請求項2】
前記コイル押え金具母材は、接続用切欠き部を更に有し、
前記接続用切欠き部を介して前記補強部材が前記コイル押え金具母材に固定されることを特徴とする請求項1に記載の変圧器。
【請求項3】
前記補強部材は、コの字又はU字の形状を有することを特徴とする請求項1に記載の変圧器。
【請求項4】
2個以上の前記補強部材を前記コイル押え金具母材の前記孔部を介して前記コイル押え金具母材の内側から前記接合部材によりそれぞれ接続することにより、2個以上の前記補強部材を横並びに前記コイル押え金具母材に配置して固定することを特徴とする請求項1に記載の変圧器。
【請求項5】
2個以上の前記補強部材の内、隣接する前記補強部材は溶材により互いに接続されることを特徴とする請求項に記載の変圧器。
【請求項6】
前記補強部材は、
表面に凹凸部を有することを特徴とする請求項1に記載の変圧器。
【請求項7】
前記補強部材は、
表面に複数の切欠き部を有することを特徴とする請求項1に記載の変圧器。
【請求項8】
アモルファス薄帯で構成された鉄心脚に巻かれたコイルを外側から挟み込むコイル押え金具を備えた変圧器であって、
前記コイル押え金具は、
前記コイルに接するコイル押え金具母材と、
前記コイル押え金具母材の外側に配置された補強部材と、を備え、
前記コイル押え金具母材は、所定の箇所に孔部を有し、
前記補強部材は、
前記コイル押え金具母材の前記孔部を介して前記コイル押え金具母材の内側から接合部材により接続されることにより前記コイル押え金具母材に固定され、
前記コイル押え金具母材は、接続用切欠き部を更に有し、
前記接続用切欠き部を介して前記補強部材が前記コイル押え金具母材に固定されることを特徴とする変圧器。
【請求項9】
アモルファス薄帯で構成された鉄心脚に巻かれたコイルを外側から挟み込むコイル押え金具を備えた変圧器であって、
前記コイル押え金具は、
前記コイルに接するコイル押え金具母材と、
前記コイル押え金具母材の外側に配置された補強部材と、を備え、
前記コイル押え金具母材は、所定の箇所に孔部を有し、
前記補強部材は、
前記コイル押え金具母材の前記孔部を介して前記コイル押え金具母材の内側から接合部材により接続されることにより前記コイル押え金具母材に固定され、
2個以上の前記補強部材を前記コイル押え金具母材の前記孔部を介して前記コイル押え金具母材の内側から前記接合部材によりそれぞれ接続することにより、2個以上の前記補強部材を横並びに前記コイル押え金具母材に配置して固定し、
2個以上の前記補強部材の内、隣接する前記補強部材は溶材により互いに接続されることを特徴とする変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
アモルファス変圧器の中身の構造は、アモルファス薄帯で構成された鉄心脚に巻かれたコイルを外側から挟み込むコイル押え金具と、コイル押え金具と接続する上部及び下部の締金具で構成された箱型構造である。
【0003】
特許文献1には、コイル押え金具の強度を確保しつつ、締金具による絶縁油の滞留のない油入変圧器の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-138931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アモルファス油入変圧器では、小型化を図るために、高い短絡電磁機械力によるコイルの変形を抑えることのできる締付金具が必要となる場合がある。
【0006】
特に、コイルを挟み込むコイル押え金具には直接機械力が伝わるため、前記の機械力以上の強度を有した構造とする必要がある。
【0007】
しかしながら、コイル押え金具の強度を向上するためにステー(補強部材)の追加及び部材板厚の増加を行うと、外形寸法が大型化し総質量が増加してしまう。
【0008】
本発明の目的は、省スペースで軽量なコイル押え金具を用いることにより、短絡電磁機械力によるコイルの変形を抑制することが可能な変圧器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の変圧器は、アモルファス薄帯で構成された鉄心脚に巻かれたコイルを外側から挟み込むコイル押え金具を備えた変圧器であって、前記コイル押え金具は、前記コイルに接するコイル押え金具母材と、前記コイル押え金具母材の外側に配置された補強部材と、を備え、前記コイル押え金具母材は、所定の箇所に孔部を有し、前記補強部材は、前記コイル押え金具母材の前記孔部を介して前記コイル押え金具母材の内側から接合部材により接続されることにより前記コイル押え金具母材に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、省スペースで軽量なコイル押え金具を用いることにより、短絡電磁機械力によるコイルの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1のアモルファス変圧器の外観を示す概略説明図である。
図2】実施例1のコイル押え金具の構造を示す概略説明図である。
図3】実施例1のコイル押え金具の構造を示す概略説明図である。
図4】実施例1のコイル押え金具の構造を示す概略説明図である。
図5】実施例1のコイル押え金具の構造を示す断面図である。
図6】実施例1のコイル押え金具が配置されているアモルファス変圧器の中身構造を示す概略説明図である。
図7】実施例2の圧出しを施したステーを備えたコイル押え金具が配置されているアモルファス変圧器の中身構造を示す概略説明図である。
図8】実施例3の切欠きを施したステーを備えたコイル押え金具が配置されているアモルファス変圧器の中身構造を示す概略説明図である。
図9】関連する変圧器の中身構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に、図9を参照して、関連する変圧器の中身構造について説明する。
図7に示すように、関連するアモルファス油入変圧器の中身の構造は、アモルファス薄帯で構成された鉄心脚702に巻かれたコイル703を外側から挟み込むコイル押え金具701と、上部締付金具704及び下部締付金具705が接続用ボルト706を用いて接続された箱型構造である。
【0013】
しかし、関連するアモルファス油入変圧器においては、小型化を図るために、高い短絡電磁機械力によるコイルの変形を抑えることのできる締付金具が必要となる場合がある。
【0014】
特に、コイル703を挟み込むコイル押え金具701には直接機械力が伝わるため、機械力以上の強度を有した構造とする必要がある。
【0015】
しかしながら、コイル押え金具710の強度を向上するためにステー(補強部材)の追加及び部材板厚の増加を行うと、外形寸法が大型化し総質量が増加してしまう。
【0016】
本発明の実施例では、省スペースで軽量なコイル押え金具を用いることにより、短絡電磁機械力によるコイルの変形を抑制することが可能な変圧器を提供する。
【0017】
以下、図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1図6を参照して、実施例1のアモルファス変圧器について説明する。
【0019】
図1は、アモルファス変圧器101の外観を示す。
図6に示すように、アモルファス油入変圧器101の中身の構造は、アモルファス薄帯で構成された鉄心脚402に巻かれたコイル403を外側から挟み込むコイル押え金具401と、上部締付金具404及び下部締付金具405が接続用ボルト406を用いて接続された箱型構造である。
【0020】
図2図3に示すように、コイル押え金具401は、コイル403に接するコイル押え金具母材201、301と、コイル押え金具母材201、301の外側に配置された補強部材(ステー)302を備える。コイル押え金具母材201、301は、所定の箇所に孔部202、204を有する。
【0021】
補強部材302は、コイル押え金具母材201、301の孔部202、204を介してコイル押え金具母材201、301の内側(コイル側)から接合部材(図示せず)により接続されることによりコイル押え金具母材201、301に固定される。
【0022】
図3に示すように、コイル押え金具母材301は、上方及び下方に設けられた段差部304と、上方及び下方の段差部304の間に設けられた平坦部305を有する。
【0023】
図2図3に示すように、コイル押え金具母材201、301に設けられた孔部202は、平坦部305に設けられた接続用孔部である。一方、コイル押え金具母材201、301に設けられた孔部204は、段差部304に設けられた位置決め用孔部である。補強部材302は、上方及び下方に設けられた係合部306を有する。
【0024】
上記構造により、図2図3図4に示すように、補強部材302の係合部306がコイル押え金具母材301の段差部304に位置決め用孔部204を介して差し込まれて位置決めされる。この位置決めされた状態で、コイル押え金具母材301の接続用孔部202がコイル押え金具母材301の内側から接続部材により接続される。
【0025】
また、コイル押え金具母材301は、接続用切欠き部203を有する。この接続用切欠き部203を介して補強部材302がコイル押え金具母材301に固定される。尚、補強部材302は、コの字又はU字の形状を有する。
【0026】
図2図3図4に示すように、2個以上の補強部材302をコイル押え金具母材301の孔部202、204を介してコイル押え金具母材301の内側(コイル側)から接合部材(図示せず)によりそれぞれ接合する。
【0027】
例えば、補強部材302は、コイル押え金具母材301の孔部202、204を介してコイル押え金具母材301の内側から栓溶接することにより、孔部202、204が接合部材で埋めらる。このようにして、補強部材302とコイル押え金具母材301を接合する。ここで、接合部材は、例えば、導電部材、溶剤等である。
【0028】
また、図4に示すように、2個以上の補強部材302の内、隣接する補強部材302を溶接することにより溶材を介して互いに接続しても良い。ここで、隣接する補強部材302は、外側から線溶接により接続される。線溶接を行うことにより、コイル押え金具303の強度をより高くすることができる。
【0029】
図3図4に示すように、補強部材302はU字構造を有し、2個以上の補強部材302を横並びにコイル押え金具母材301へ配置し、孔部202、204及び接続用切欠き部203を介して、補強部材302をコイル押え金具母材301によりそれぞれ接続する。このようにして、2個以上(図4では3個)の補強部材302を横並びにコイル押え金具母材301に配置して固定することによりコイル押え金具303が構成される。図5に完成したコイル押え金具303の断面構造を示す。
【0030】
実施例1によれば、省スペースで軽量なコイル押え金具401、303を用いることにより、短絡電磁機械力によるコイル403の変形を抑制することができる。
【0031】
また、コイル押え金具401、303のコイル押え金具母材301に外側に配置された補強部材302はコの字の形状である。このため、煙突効果により変圧器タンク内の上下温度差による絶縁油の循環を促し変圧器の冷却効率が向上し変圧器の小型化及び軽量化が可能となる。
【実施例2】
【0032】
図7を参照して、実施例2のアモルファス油入変圧器について説明する。
図7に示すように、アモルファス油入変圧器101の中身の構造は、アモルファス薄帯で構成された鉄心脚502に巻かれたコイル503を外側から挟み込むコイル押え金具501と、上部締付金具504、下部締付金具505が接続用ボルト506を用いて接続された箱型構造である。
【0033】
図2図3に示すように、コイル押え金具501は、コイル押え金具母材201、301に孔部203、204及び接続用切欠き部203を備えている。補強部材(ステー)302はU字構造とし2個以上を、横並びにコイル押え金具母材301へ配置し、孔部202、204及び接続用切欠き部203を介して、補強部材をコイル押え金具母材201、301の内側から接合部材(図示せず)を介して接合した構造である。その他の具体的構成等は実施例1のアモルファス油入変圧器と同じなのでその説明は省略する。
【0034】
実施例2のアモルファス油入変圧器が実施例1のアモルファス油入変圧器と異なる点は、補強部材(ステー)302が、その表面に凹凸部507を有することである。凹凸部507は、補強部材302に対してプレス加工により圧出しが施されて形成される。
【0035】
実施例2によれば、省スペースで軽量なコイル押え金具501を用いることにより、短絡電磁機械力によるコイル503の変形を抑制することができる。さらに、補強部材302の表面に凹凸部507を設けることにより、コイル押え金具501の強度をより高くすることができる。
【実施例3】
【0036】
図8を参照して、実施例3のアモルファス油入変圧器について説明する。
図8に示すように、アモルファス油入変圧器101の中身の構造は、アモルファス薄帯で構成された鉄心脚602に巻かれたコイル603を外側から挟み込むコイル押え金具601と、上部締付金具604、下部締付金具605が接続用ボルト606を用いて接続された箱型構造である。
【0037】
図2図3に示すように、コイル押え金具601は、コイル押え金具母材201、301に孔部202、204及び接続用切欠き部203を備えている。補強部材(ステー)302はU字構造とし2個以上を、横並びにコイル押え金具母材301へ配置し、孔部202、204及び接続用切欠き部203を介して、補強部材をコイル押え金具母材201、301の内側から接合部材(図示せず)を介して接合した構造である。その他の具体的構成等は実施例1のアモルファス油入変圧器と同じなのでその説明は省略する。
【0038】
実施例3のアモルファス油入変圧器が実施例1のアモルファス油入変圧器と異なる点は、補強部材(ステー)302が表面に複数の切欠き部(貫通孔)607を有することである。切欠き部607は、補強部材302に対してプレス加工により切欠きが施されて形成される。
【0039】
実施例3によれば、省スペースで軽量なコイル押え金具601を用いることにより、短絡電磁機械力によるコイル603の変形を抑制することができる。さらに、補強部材302の表面に複数の切欠き部607を設けることにより、コイル押え金具601の強度を一定の強度に維持しつつ、コイル押え金具601を軽量化することができる。
【0040】
上記実施例は、アモルファス薄帯で構成された鉄心脚に巻かれたコイルを外側から挟み込むコイル押え金具を備えた油入変圧器であって、コイル押え金具はコイルに接するコイル押え金具母材とコイル押え金具母材の外側に配置された補強部材(ステー)を備え、補強部材(ステー)をコイル押え金具母材の孔部を介して内側から接続することで当該孔部が埋められる構造である。
【0041】
上記実施例によれば、省スペースで軽量なコイル押え金具を用いることにより、短絡電磁機械力によるコイルの変形を抑制することができる。
【0042】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置換ることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成や材質の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
101 アモルファス油入変圧器
201 コイル押え金具母材
301 コイル押え金具母材
202 孔部
204 孔部
203 接続用切欠き部
302 補強部材(ステー)
303 コイル押え金具
401 コイル押え金具
501 コイル押え金具
507 凹凸部
601 コイル押え金具
607 切欠き部
701 コイル押え金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9