(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】CD19及びCD20を標的とする組み合わされたキメラ抗原受容体並びにその適用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20250124BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250124BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250124BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20250124BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20250124BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250124BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250124BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250124BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250124BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20250124BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/28
C07K16/46
C12N5/10
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K35/17
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2022506548
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(86)【国際出願番号】 CN2020109645
(87)【国際公開番号】W WO2021184673
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-08-15
(31)【優先権主張番号】202010188038.1
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522043220
【氏名又は名称】アベルゼータ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,イーホン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヤンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ユーティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヂュー,シギュイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,シン
(72)【発明者】
【氏名】フアン,ジャーチー
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0368098(US,A1)
【文献】特表2018-508215(JP,A)
【文献】特表2019-537433(JP,A)
【文献】Cancer Immunology Research,2016年,Vol.4, No.6,pp.498-508
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)であって、その構造が以下の式
IIで表され、
L-V
L1
-V
H1
-I-V
H2
-V
L2
-H-TM-C-CD3ζ (II)
式中、
各「-」は独立して、リンカーペプチド又はペプチド結合であり、
Lは任意のシグナルペプチド配列であり、
V
L1
は抗CD20抗体軽鎖可変領域であり、
V
H1
は抗CD20抗体重鎖可変領域であり、
Iは可動性リンカーであり、
V
H2
は抗CD19抗体重鎖可変領域であり、
V
L2
は抗CD19抗体軽鎖可変領域であり、
Hは任意のヒンジ領域であり、
TMは膜貫通ドメインであり、
Cは共刺激シグナル伝達分子であり、
CD3ζは、CD3ζに由来する細胞質シグナル伝達配列であ
る、キメラ抗原受容体。
【請求項2】
前記V
H1のアミノ酸配列が配列番号3に示され、前記V
L1のアミノ酸配列が配列番号4に示される、請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
請求項1に記載のキメラ抗原受容体を発現する細胞。
【請求項4】
前記細胞がCAR-T細胞及び/又はCAR-NK細胞である、
請求項3に記載の細胞。
【請求項5】
請求項3に記載の細胞を含む、疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項6】
前記疾患が癌又は腫瘍である、
請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)であって
(i)それぞれ配列番号4及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(V
L1)及び重鎖可変領域(V
H1)を含
み、V
L
1がV
H
1のN末端に位置する抗CD20抗原結合領域;
(ii)それぞれ配列番号5及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(V
L2)及び重鎖可変領域(V
H2)を含
み、V
H
2がV
L
2のN末端に位置する抗CD19抗原結合領域;
(iii)配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する膜貫通ドメイン;
(iv)配列番号12に記載のアミノ酸配列を有する共刺激シグナル伝達領域;及び
(v)配列番号14に記載のアミノ酸配列を有する細胞質シグナル伝達ドメイン
を含む、二重特異性CAR。
【請求項8】
前記抗CD20抗原結合領域がCD20に特異的に結合する単鎖可変フラグメント(scFv)であり、前記抗CD19抗原結合領域がCD19に特異的に結合するscFvである、
請求項7に記載の二重特異性CAR。
【請求項9】
(a)配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するシグナルペプチド;及び
(b)配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するヒンジ領域
をさらに含む、
請求項7に記載の二重特異性CAR。
【請求項10】
N末端からC末端の方向に、前記シグナルペプチド、V
L1、V
H1、V
H2、V
L2、前記ヒンジ領域、前記膜貫通ドメイン、前記共刺激シグナル伝達領域、及び前記細胞質シグナル伝達ドメインを含む、
請求項9に記載の二重特異性CAR。
【請求項11】
請求項7に記載の二重特異性CARを発現する免疫細胞。
【請求項12】
T細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞である、
請求項11に記載の免疫細胞。
【請求項13】
請求項11に記載の免疫細胞を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学の分野に関し、より詳細には、CD19及びCD20を標的とする組み合わされたキメラ抗原受容体並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
血液系の悪性腫瘍はヒト悪性腫瘍の約10%を占め、血液系の悪性腫瘍の95%はBリンパ球に由来する。伝統的な化学療法及び放射線療法は、血液系の悪性腫瘍の治療において重要な役割を果たす。一部の患者は有意な効果を有するが、ほとんどの患者にとって治癒することは困難である。新規かつ効果的な治療は、この分野で関心の的のトピックとなっている。
【0003】
養子T細胞療法は、悪性腫瘍の臨床治療においてその強力な有効性及び明るい見通しを示している。現在、養子T細胞療法は血液腫瘍を治療するための最も有望な方法の1つとして見なされている。CD19は、ほとんどのB細胞悪性腫瘍の表面に高度に発現される。キメラ抗原受容体(CAR)-改変T細胞を独立して使用して、CD19発現B細胞の再発性難治性悪性腫瘍を標的とする複数の施設が、前例のない成功を達成した。現在、FDAによって承認された2つのCAR-T製品の両方は、CD19抗原を標的とし、慢性リンパ性白血病適等の適応症も拡大している。抗CD19CAR-Tの有効性は顕著であるが、多くの研究は、CD19キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法に多くの問題も存在することを示している。治療結果が悪く、再発しやすい一部の患者が依然として存在する。この理由には、腫瘍細胞が抗原エスケープを起こしやすいことが含まれる。例えば、CD19 CAR-細胞療法の最近の実験は、患者の90%が完全寛解を達成したが、これらの患者の11%が最終的に再発し、再発患者は主にCD19陰性腫瘍を有する患者であったことを示した。特に、再発性難治性急性B細胞リンパ腫(R/R B-ALL)の治療においてCART19を使用して、ペンシルベニア大学医学大学院で行われた臨床試験では、患者の最大94%が完全寛解を達成した。この臨床試験の初期の奏効率は高かったが、完全寛解を達成した治療の1ヶ月後にほぼ40%の患者が再発し、再発患者の60%超がCD19陰性腫瘍細胞エスケープを有していた。抗原エスケープは、NY-ESO1を発現する養子移入特異性T細胞受容体及びメラノーマを治療する癌ワクチンで見出されている。自然突然変異及び選択的拡大が抗原エスケープの主な理由である。
【0004】
したがって、腫瘍を効果的に治療し、抗原エスケープを防止する方法を発展させる当技術分野における緊急の必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、腫瘍を効果的に治療し、抗原エスケープを防止する方法を提供することである。
【0006】
本発明の目的は、CD19及びCD20を標的とする組み合わされたキメラ抗原受容体及びその調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的には、CD19及びCD20を標的とする組み合わされたキメラ抗原受容体の配列、並びにその改変T細胞(CART-19/20)の調製方法及び活性同定を提供することが本発明の目的である。本発明は、CD19及びCD20陽性B細胞リンパ腫の治療に使用するためのキメラ抗原受容体構造を提供する。
【0008】
本開示は、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。二重特異性CARは、(i)それぞれ配列番号4及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL1)及び重鎖可変領域(VH1)を含む抗CD20抗原結合領域と、(ii)それぞれ配列番号5及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL2)及び重鎖可変領域(VH2)を含む抗CD19抗原結合領域と、とを含む。
【0009】
特定の実施形態では、VL1はVH1のN末端に位置する。特定の実施形態では、VH2はVL2のN末端に位置する。
【0010】
抗CD20抗原結合領域は、CD20に特異的に結合する単鎖可変フラグメント(scFv)であり得る。抗CD19抗原結合領域は、CD19に特異的に結合するscFvであり得る。特定の実施形態では、CD20に特異的に結合するscFvは、CD19に特異的に結合するscFvのN末端に位置する。
【0011】
二重特異性CARは、(a)リーダー配列、(b)ヒンジ領域、(c)膜貫通ドメイン、(d)少なくとも1つの共刺激シグナル伝達領域、(e)細胞質シグナル伝達ドメイン、又は(f)それらの組合わせを更に含み得る。
【0012】
共刺激シグナル伝達領域は、4-1BB(CD137)、CD28、OX40、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、CD70、CD134、PD1、Dap10、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、NKG2D、GITR、TLR2、又はそれらの組合わせに由来し得る。
【0013】
細胞質シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来し得る。
【0014】
ヒンジ領域は、Ig4、CD8、CD28、CD137、又はそれらの組合わせに由来し得る。
【0015】
膜貫通ドメインは、CD8、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、又はそれらの組合わせに由来し得る。
【0016】
特定の実施形態では、二重特異性CARは、配列番号16に記載のアミノ酸配列を有し得る。
【0017】
本開示は、本発明の二重特異性CARを発現する免疫細胞を提供する。免疫細胞は、T細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞であり得る。免疫細胞は、同種又は自己由来であり得る。
【0018】
本発明の二重特異性CARをコードする核酸も本開示に包含される。
【0019】
本開示は更に、本発明の核酸を含むベクターを提供する。
【0020】
本開示は、癌を治療する方法を提供する。方法は、免疫細胞を、それを必要とする対象に投与することを含み得る。
【0021】
癌は血液癌であり得る。癌は、B細胞悪性腫瘍であり得る。癌は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、及び/又は多発性骨髄腫であり得る。癌は、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、又はそれらの組合わせであり得る。
【0022】
本発明の第1の態様では、キメラ抗原受容体(CAR)を提供し、キメラ抗原受容体の構造は以下の式Iで示され、
L-scFv1-I-scFv2-H-TM-C-CD3ζ(I)
式中、
各「-」は独立して、リンカーペプチド又はペプチド結合であり、
Lは任意のシグナルペプチド配列であり、
Iは可動性リンカーであり、
Hは任意のヒンジ領域であり、
TMは膜貫通ドメインであり、
Cは共刺激シグナル伝達分子であり、
CD3ζは、CD3ζに由来する細胞質シグナル伝達配列であり、
scFv1及びscFv2のうち1つはCD19を標的とする抗原結合ドメインであり、他方はCD20を標的とする抗原結合ドメインである。
【0023】
別の好ましい実施形態では、scFv1は、CD20を標的とする抗原結合ドメインであり、scFv2は、CD19を標的とする抗原結合ドメインである。
【0024】
別の好ましい実施形態では、CD20を標的とする抗原結合ドメインの構造は、以下の式A又は式Bに示され、
VH1-VL1(A);VL1-VH1(B)
VH1は抗CD20抗体重鎖可変領域であり、VL1は抗CD20抗体軽鎖可変領域であり、「-」はリンカーペプチド又はペプチド結合である。
【0025】
別の好ましい実施形態では、CD20を標的とする抗原結合ドメインの構造は、式Bに示される。
【0026】
別の好ましい実施形態では、VH1のアミノ酸配列は配列番号1に示され、VL1のアミノ酸配列は配列番号2に示されるか、又は
VH1のアミノ酸配列は配列番号3に示され、VL1のアミノ酸配列は配列番号4に示される。
【0027】
別の好ましい実施形態では、VH1及びVL1は、可動性リンカー(又はリンカーペプチド)と連結され、可動性リンカー(又はリンカーペプチド)は、配列番号7(GGGGS)に示されるような1~4、好ましくは2~4、より好ましくは3~4の連続した配列である。
【0028】
別の好ましい実施形態では、VL1及びVH1は、配列番号19に示されるような可動性リンカーと連結される。
【0029】
別の好ましい実施形態では、CD19を標的とする抗原結合ドメインの構造は、以下の式C又は式Dに示され、
VL2-VH2(C);VH2-VL2(D)
式中、VL2は抗CD19抗体軽鎖可変領域であり、VH2は抗CD19抗体重鎖可変領域であり、「-」はリンカーペプチド又はペプチド結合である。
【0030】
別の好ましい実施形態では、CD19を標的とする抗原結合ドメインの構造は、式Dに示される。
【0031】
別の好ましい実施形態では、VL2のアミノ酸配列は配列番号5に示され、VH2のアミノ酸配列は配列番号6に示される。
【0032】
別の好ましい実施形態では、VH2及びVL2は、可動性リンカー(又はリンカーペプチド)と連結され、可動性リンカー(又はリンカーペプチド)は、配列番号7(GGGGS)に示されるような1~4、好ましくは2~4、より好ましくは3~4の連続した配列である。
【0033】
別の好ましい実施形態では、VH2及びVL1は、配列番号20に示されるように可動性リンカーと連結される。
【0034】
別の好ましい実施形態では、scFv1及び/又はscFv2は、マウス由来、ヒト化、ヒト化及びマウス由来のキメラ、又は完全ヒト化一本鎖抗体可変領域フラグメントである。
【0035】
別の好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体の構造は、以下の式IIに示され、
L-VL1-VH1-I-VH2-VL2-H-TM-C-CD3ζ(II)
式中、各要素は上記の通りである。
【0036】
別の好ましい実施形態では、可動性リンカーIの配列は、配列番号7(GGGGS)に示されるような2~6、好ましくは3~4の連続した配列を含む。
【0037】
別の好ましい実施形態では、可動性リンカーIの配列は、配列番号7に示される通りである。
【0038】
別の好ましい実施形態では、Lは、CD8、CD28、GM-CSF、CD4、CD137、及びそれらの組合わせからなる群から選択されるタンパク質のシグナルペプチドである。
【0039】
別の好ましい実施形態では、Lは、CD8に由来するシグナルペプチドである。
【0040】
別の好ましい実施形態では、Lのアミノ酸配列は配列番号8に示される。
【0041】
別の好ましい実施形態では、Hは、CD8、CD28、CD137、Ig4、及びそれらの組合わせからなる群から選択されるタンパク質のヒンジ領域である。
【0042】
別の好ましい実施形態では、Hは、Ig4に由来するヒンジ領域である。
【0043】
別の好ましい実施形態では、Hのアミノ酸配列は配列番号9に示される。
【0044】
別の好ましい実施形態では、TMは、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、及びそれらの組合わせからなる群から選択されるタンパク質の膜貫通領域である。
【0045】
別の好ましい実施形態では、TMは、CD8又はCD28に由来する膜貫通領域である。
【0046】
別の好ましい実施形態では、TMの配列は配列番号10又は11に示される。
【0047】
別の好ましい実施形態では、Cは、OX40、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD70、CD134、4-1BB(CD137)、PD1、Dap10、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、NKG2D、GITR、TLR2、及びそれらの組合わせからなる群から選択されるタンパク質の共刺激シグナル伝達分子である。
【0048】
別の好ましい実施形態では、Cは、4-1BB又はCD28に由来する共刺激シグナル伝達分子である。
【0049】
別の好ましい実施形態では、Cのアミノ酸配列は配列番号12又は13に示される。
【0050】
別の好ましい実施形態では、CD3ζのアミノ酸配列は配列番号14に示される。
【0051】
別の好ましい実施形態では、CARのアミノ酸配列は配列番号15又は16に示される。
【0052】
特定の実施形態では、抗CD20抗原結合領域が、配列番号3又は配列番号1に記載のアミノ酸配列と、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約99%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、あるいは約100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0053】
特定の実施形態では、抗CD20抗原結合領域が、配列番号4又は配列番号2に記載のアミノ酸配列と、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約99%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、あるいは約100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0054】
特定の実施形態では、抗CD19抗原結合領域が、配列番号6に記載のアミノ酸配列と、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約99%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、あるいは約100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0055】
特定の実施形態では、抗CD19抗原結合領域が、配列番号5に記載のアミノ酸配列と、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約99%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、あるいは約100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0056】
抗CD20抗原結合領域の重鎖可変領域は、オファツムマブ抗体の重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)(配列番号3の30~35位、50~66位、99~111位にそれぞれ記載のCDR1、CDR2及びCDR3)、又はLeu16抗体の重鎖可変領域のCDR(配列番号1の31~35位、50~66位、99~111位にそれぞれ記載のCDR1、CDR2及びCDR3)と、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約99%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、あるいは約100%同一である、1つ、2つ、又は3つのCDRを含み得る。
【0057】
抗CD20抗原結合領域の軽鎖可変領域は、オファツムマブ抗体の軽鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)(配列番号4の24~34位、50~56位、89~97位にそれぞれ記載のCDR1、CDR2及びCDR3)、又はLeu16抗体の軽鎖可変領域のCDR(配列番号2の24~33位、49~55位、88~96位にそれぞれ記載のCDR1、CDR2及びCDR3)と、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約99%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、あるいは約100%同一である、1つ、2つ、又は3つのCDRを含み得る。
【0058】
抗CD20抗原結合領域の重鎖可変領域は、オファツムマブ抗体の重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)(配列番号40、配列番号41、配列番号42にそれぞれ記載のCDR1、CDR2及びCDR3)、又はLeu16抗体の重鎖可変領域のCDR(配列番号47、配列番号49、配列番号51にそれぞれ記載のCDR1、CDR2及びCDR3)と、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約99%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、あるいは約100%同一である、1つ、2つ、又は3つのCDRを含み得る。
【0059】
抗CD20抗原結合領域の軽鎖可変領域は、オファツムマブ抗体の軽鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)(配列番号43、配列番号44、配列番号45にそれぞれ記載のCDR1、CDR2及びCDR3)、又はLeu16抗体の軽鎖可変領域のCDR(配列番号54、配列番号56、配列番号58にそれぞれ記載のCDR1、CDR2及びCDR3)と、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約99%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、あるいは約100%同一である、1つ、2つ、又は3つのCDRを含み得る。
【0060】
特定の実施形態では、抗CD20抗原結合領域の重鎖可変領域が、オファツムマブ抗体の重鎖可変領域のCDRと同一の3つのCDR(配列番号3の30~35位、50~66位、99~111位に記載のCDR1、CDR2及びCDR3)を含み、抗CD20抗原結合領域の軽鎖可変領域が、オファツムマブ抗体の軽鎖可変領域のCDRと同一の3つのCDR(配列番号4の24~34位、50~56位、89~97位のそれぞれに記載のCDR1、CDR2及びCDR3)を含む。
【0061】
特定の実施形態では、抗CD20抗原結合領域の重鎖可変領域が、オファツムマブ抗体の重鎖可変領域のCDRと同一の3つのCDR(配列番号40、配列番号41、配列番号42のそれぞれに記載のCDR1、CDR2及びCDR3)を含み、抗CD20抗原結合領域の軽鎖可変領域が、オファツムマブ抗体の軽鎖可変領域のCDRと同一の3つのCDR(配列番号43、配列番号44、配列番号45にそれぞれ記載のCDR1、CDR2及びCDR3)を含む。
【0062】
特定の実施形態では、抗CD20抗原結合領域の重鎖可変領域が、Leu16抗体の重鎖可変領域のCDRと同一の3つのCDR(配列番号1の31~35位、50~66位、99~111位のそれぞれに記載のCDR1、CDR2及びCDR3)を含み、抗CD20抗原結合領域の軽鎖可変領域が、Leu16抗体の軽鎖可変領域のCDRと同一の3つのCDR(配列番号2の24~33位、49~55位、88~96位のそれぞれに記載のCDR1、CDR2及びCDR3)を含む。
【0063】
特定の実施形態では、抗CD20抗原結合領域の重鎖可変領域が、Leu16抗体の重鎖可変領域のCDRと同一の3つのCDR(配列番号47、配列番号49、配列番号51のそれぞれに記載のCDR1、CDR2及びCDR3)を含み、抗CD20抗原結合領域の軽鎖可変領域が、Leu16抗体の軽鎖可変領域のCDRと同一の3つのCDR(配列番号54、配列番号56、配列番号58のそれぞれに記載のCDR1、CDR2及びCDR3)を含む。
【0064】
抗CD19抗原結合領域の重鎖可変領域は、FMC63抗体の重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)(配列番6の31~35位、50~65位、98~109位のそれぞれに記載のCDR1、CDR2及びCDR3)と、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約99%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、あるいは約100%同一である、1つ、2つ、又は3つのCDRを含み得る。
【0065】
抗CD19抗原結合領域の軽鎖可変領域は、FMC63抗体の軽鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)(配列番号5の24~34位、50~56位、89~97位のそれぞれに記載のCDR1、CDR2及びCDR3)と、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約99%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、あるいは約100%同一である、1つ、2つ、又は3つのCDRを含み得る。
【0066】
抗CD19抗原結合領域の重鎖可変領域は、FMC63抗体の重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)(配列番号60、配列番号61、配列番号62のそれぞれに記載のCDR1、CDR2及びCDR3)と、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約99%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、あるいは約100%同一である、1つ、2つ、又は3つのCDRを含み得る。
【0067】
抗CD19抗原結合領域の軽鎖可変領域は、FMC63抗体の軽鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)(配列番号63、配列番号64、配列番号39のそれぞれに記載のCDR1、CDR2及びCDR3)と、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約99%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、あるいは約100%同一である、1つ、2つ、又は3つのCDRを含み得る。
【0068】
特定の実施形態では、抗CD19抗原結合領域の重鎖可変領域が、FMC63抗体の重鎖可変領域のCDRと同一の3つのCDR(配列番号6の31~35位、50~65位、98~109位のそれぞれに記載のCDR1、CDR2及びCDR3)を含み、抗CD19抗原結合領域の軽鎖可変領域が、FMC63抗体の軽鎖可変領域のCDRと同一の3つのCDR(配列番号5の24~34位、50~56位、89~97位のそれぞれに記載のCDR1、CDR2及びCDR3)を含む。
【0069】
特定の実施形態では、抗CD19抗原結合領域の重鎖可変領域が、FMC63抗体の重鎖可変領域のCDRと同一の3つのCDR(配列番号60、配列番号61、配列番号62のそれぞれに記載のCDR1、CDR2及びCDR3)を含み、抗CD19抗原結合領域の軽鎖可変領域が、FMC63抗体の軽鎖可変領域のCDRと同一の3つのCDR(配列番号63、配列番号64、配列番号39のそれぞれに記載のCDR1、CDR2及びCDR3)を含む。
【0070】
本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様のキメラ抗原受容体をコードする核酸分子を提供する。
【0071】
別の好ましい実施形態では、核酸分子が単離される。
【0072】
別の好ましい実施形態では、核酸分子のヌクレオチド配列は、配列番号17又は18に示される。
【0073】
本発明の第3の態様では、本発明の第2の態様の核酸分子を含むベクターを提供する。
【0074】
別の好ましい実施形態では、ベクターはDNA及びRNAを含む。
【0075】
別の好ましい実施形態では、ベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、トランスポゾン、及びそれらの組合わせからなる群から選択される。
【0076】
別の好ましい実施形態では、ベクターはDNAウイルス及びレトロウイルスベクターを含む。
【0077】
別の好ましい実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、及びそれらの組合わせからなる群から選択される。
【0078】
別の好ましい実施形態では、ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0079】
本発明の第4の態様では、本発明の第3の態様のベクターを含むか、又は本発明の第2の態様の外因性核酸分子がそのゲノムに組み込まれているか、又は本発明の第1の態様のキメラ抗原受容体を発現する、宿主細胞を提供する。
【0080】
別の好ましい実施形態では、細胞は単離された細胞である。
【0081】
別の好ましい実施形態では、細胞は遺伝子操作された細胞である。
【0082】
別の好ましい実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。
【0083】
別の好ましい実施形態では、細胞はCAR-T細胞及び/又はCAR-NK細胞である。
【0084】
別の好ましい実施形態では、細胞はCD19及びCD20の両方を標的とする。
【0085】
本発明の第5の態様では、本発明の第1の態様のキメラ抗原受容体を発現するCAR-T細胞を調製するための方法を提供し、該方法は、本発明の第2の態様の核酸分子又は本発明の第3の態様のベクターを、T細胞に形質導入し、それによりCAR-T細胞を得る工程を含む。
【0086】
別の好ましい実施形態では、方法は、得られたCAR-T細胞の機能及び有効性を検出する工程を更に含む。
【0087】
本発明の第6の態様では、本発明の第1の態様のキメラ抗原受容体、本発明の第2の態様の核酸分子、本発明の第3の態様のベクター、又は本発明の第4の態様の宿主細胞、及び薬学的に許容可能な担体、希釈剤若しくは賦形剤を含む製剤を提供する。
【0088】
別の好ましい実施形態では、製剤は液体製剤である。
【0089】
別の好ましい実施形態では、製剤の調合は注射剤である。
【0090】
別の好ましい実施形態では、製剤は、本発明の第4の態様の宿主細胞を含み、宿主細胞の濃度は、1×103~1×108細胞/ml、好ましくは1×104~1×107細胞/mlである。
【0091】
本発明の第7の態様では、腫瘍又は癌を予防及び/又は治療するための薬品又は製剤を調製するための、本発明の第1の態様のキメラ抗原受容体、本発明の第2の態様の核酸分子、本発明の第3の態様のベクター、又は本発明の第4の態様の宿主細胞の使用を提供する。
【0092】
別の好ましい実施形態では、腫瘍は、血液腫瘍、固形腫瘍、及びそれらの組合わせからなる群から選択され、好ましくは、腫瘍は血液腫瘍である。
【0093】
別の好ましい実施形態では、血液腫瘍は、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、及びそれらの組合わせからなる群から選択される。
【0094】
別の好ましい実施形態では、固形腫瘍は、胃癌、胃癌の腹膜転移、肝臓癌、白血病、腎臓癌、肺癌、小腸癌、骨癌、前立腺癌、結腸直腸癌、乳癌、大腸癌、子宮頸癌、卵巣癌、リンパ腫、上咽頭癌、副腎腫瘍、膀胱腫瘍、非小細胞肺癌(NSCLC)、神経膠腫、子宮内膜癌、及びそれらの組合わせからなる群から選択される。
【0095】
本発明の第8の態様では、本発明の第4の態様の細胞を調製するためのキットを提供し、該キットは、容器、及び容器内に配置された、本発明の第2の態様の核酸分子又は本発明の第3の態様のベクターを含む。
【0096】
本発明の第9の態様では、癌又は腫瘍の予防及び/又は治療のための、本発明の第4の態様の細胞、又は本発明の第6の態様の製剤の使用を提供する。
【0097】
本発明の第10の態様では、適切な量の本発明の第4の態様の細胞又は本発明の第6の態様の製剤を、治療を必要とする対象に投与することを含む、疾患を治療する方法を提供する。
【0098】
別の好ましい実施形態では、疾患は癌又は腫瘍である。
【0099】
上記の本発明の様々な技術的特徴及び(実施例のような)以下に具体的に説明される様々な技術的特徴は、本発明の範囲内で互いに組み合わされて、新たな又は好ましい技術的解決策を構成することができ、紙面の制限のために1つずつ説明する必要はないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【
図1】
図1は、CD19及びCD20を標的とする組み合わされたキメラ抗原受容体の構造を示す。CARの構造は、リーダー配列、抗原認識配列、ヒンジ領域、膜貫通領域、共刺激因子シグナル領域、及びCD3ζシグナル伝達領域を含む。
【
図2A】
図2Aは、T細胞膜の表面上のCD137の発現レベルを示す。
【
図2B】
図2Bは、培養上清中のIFNγの分泌レベルを示す。具体的には、7日間培養した1×10
5のCAR-T19/20細胞を採取し、CD19陽性K562-CD19+腫瘍細胞株、CD20陽性K562-CD20+腫瘍細胞株、CD19及びCD20二重陽性K562-CD19+CD20+腫瘍細胞株、CD19及びCD20を天然に発現するRAJI腫瘍細胞株、並びにCD19及びCD20二重陰性K562腫瘍細胞株と共に、又は腫瘍細胞なしで、200μlのGT-551培地中で、1:1の比で18時間、それぞれ培養した。次いで、T細胞膜の表面上のCD137の発現レベル及び培養上清中のIFNγの分泌レベルをそれぞれ検出した。
【
図3A】
図3Aは、主に共培養後の上清中のLDHの分泌レベルを検出することによる、CAR-T19/20細胞の殺腫瘍活性の検出を示す。具体的には、1×10
4細胞のCD19陽性K562-CD19+腫瘍細胞株、CD20陽性K562-CD20+腫瘍細胞株、CD19及びCD20二重陽性K562-CD19+CD20+腫瘍細胞株、CD19及びCD20を天然に発現するRAJI若しくはRAMOS腫瘍細胞株、又はCD19及びCD20二重陰性K562腫瘍細胞株を、100μlのGT-551培地中で、図に示す比率で8時間、それぞれ対応するT細胞と共培養した。次いで、LDHの分泌レベルを検出し、この図は、対応する共培養試料におけるLDH放出の百分率の統計分析結果を示す。
【
図3B】
図3Bは、主にT細胞膜の表面上のCD107aの発現レベルを検出することによる、CAR-T19/20細胞の殺腫瘍活性の検出を示す。具体的には、1×10
5のCAR-T19/20細胞を採取し、CD19陽性K562-CD19+腫瘍細胞株、CD20陽性K562-CD20+腫瘍細胞株、CD19及びCD20二重陽性K562-CD19+CD20+腫瘍細胞株、CD19及びCD20を天然に発現するRAJI若しくはRAMOS腫瘍細胞株、並びにCD19及びCD20二重陰性K562腫瘍細胞株と共に、又は腫瘍細胞なしで、200μlのGT-551培地中で、1:2の比で4時間培養した。次いで、T細胞膜の表面上のCD137の発現レベルをそれぞれ検出した。
【
図4A】
図4Aは、21日間以内にCAR-T19/20細胞を注射したマウスの平均体重変化及び平均蛍光強度変化を示し、7日ごとに記録される。
【
図4C】
図4Cは、CAR-T19/20細胞を注射したマウスの、注射後0日目(D0)、7日目(D7)、14日目(D14)及び21日目(D21)のインビボイメージングを示す。
【
図5A】
図5Aは、二重特異性TN-OF-19 CAR-T細胞が、インビボでCD19特異性CAR-T細胞よりも良好に腫瘍細胞を阻害又は死滅させることができることを示す。
【
図5B】
図5Bは、4つのCAR-T細胞群及びNT群における蛍光強度のIVISイメージングを示す。
【
図6】
図6は、CD19若しくはCD20又は両方を有する細胞に結合するが、両方の抗原を欠く細胞には結合されないキメラ抗体を示し、二重特異性結合ドメインが結合のために1つのみの同族抗原を必要とし、新しい特異性認識部位は形成されなかったことを示している。
【
図7】
図7は、6つの異なるscFv及び異なるヒンジ/TM/シグナル伝達ドメインを有する16のCD20特異性CARの構造を示す。
【
図8A】
図8Aは、CAR-T20.1、CAR-T20.5、CAR-T20.6、CAR-T20.7、CAR-T20.8、CAR-T20.9及びCAR-T20.10をスクリーニングするためのIFNγ放出アッセイの結果を示し、これらのCAR-Tの中で、CAR-T20.9(Leu16)及びCAR-T20.10(Leu16)のみが、より高い陽性IFNγ放出を示した。
【
図8B】
図8Bは、CAR-T20.1、CAR-T20.9、CAR-T20.10、CAR-T20.11、CAR-T20.12、CAR-T20.13、CAR-T20.14、CAR-T20.15及びCAR-T20.16をスクリーニングするためのIFNγ放出アッセイの結果を示す。これらのCAR-Tの中で、CAR-T20.10(Leu16)及びCAR-T20.14(OF)が、より高い陽性IFNγ放出を示した。
【
図8C】
図8Cは、CAR-T20.9、CAR-T20.12、CAR-T20.14、CAR-T20.17、CAR-T20.18、及びCAR-T20.19をスクリーニングするためのIFNγ放出アッセイの結果を示す。これらのCAR-Tの中で、CAR-T20.14(OF)及びCAR-T20.19(OF)は、より高い陽性IFNγ放出を示した。
【
図9A】
図9Aは、LDH放出アッセイによって細胞傷害性について試験した、CAR-T20.17(Leu16の第3世代)、CAR-T20.18(Leu16の第2世代)、CAR-T20.19(OFの第2世代)細胞の結果を示す。
【
図9B】
図9Bは、NSGマウス研究における腫瘍成長のインビボ阻害を示す。動物に注射した腫瘍細胞は、ルシフェラーゼを発現するRajiである。
【
図10】
図10は、CAR039r/r NHL研究設計及びフローチャートを示す。
【
図12】
図12は、C-CAR039治療前後の患者の例を示す。
【
図13】
図13は、患者の血液におけるC-CAR039の増殖及び拡大を示す。結果は、C-CAR008細胞が注射後に効果的に増殖したことを示した。
【
図14】
図14は、C-CAR066-NHL試験設計を示す。
【
図15】
図15は、C-CAR066による治療の前後の患者のPET-CTの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0101】
広範かつ集中的な研究の後、本発明者等は、予想外にも、CD19及びCD20を同時に標的とするCAR-T細胞を得た。具体的には、本発明は、CD19及びCD20を同時に標的とするキメラ抗原受容体であって、シグナルペプチド、抗CD20scFv、抗CD19scFv、ヒンジ領域、膜貫通領域、及び細胞内T細胞シグナル伝達領域を含む、キメラ抗原受容体を提供する。更に、抗CD20scFv及び抗CD19scFvは、多数のスクリーニングによって得られ、多重反復構造を有するペプチドフラグメント(G4S)と連結された。本発明のCAR-T細胞は、CD19抗原及びCD20抗原の両方を同時に認識することができ、単一標的CAR-T細胞の治療中に、抗原発現の下方制御又は欠失によって引き起こされる免疫エスケープのリスクを低下させる。単一抗原を標的とするCAR-T細胞及び他の二重標的CAR-T細胞(CD19及びCD20を標的とする)と比較して、2つの標的を同時に認識する本発明のCAR-T細胞は、腫瘍細胞に対するより強力な殺傷能力、より少ない細胞傷害性、より低い副作用、より広い治療範囲、より低い再発率及びより良好な有効性を有する。本発明は、これに基づき完成された。
【0102】
用語
本開示をより理解しやすくするために、いくつかの用語が最初に定義される。本出願で使用される場合、本明細書で特に明記されない限り、以下の各用語は以下に示される意味を有するものとする。他の定義は、本出願を通して記載される。
【0103】
「約」という用語は、当業者によって決定される特定の値又は組成物について許容可能な誤差範囲内の値又は組成物を指すことができ、これは値又は組成物がどのように測定又は決定されるかに部分的に依存するであろう。
【0104】
「投与する」という用語は、注射又は注入等による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄、又は他の非経口投与を含む、当業者に既知の様々な方法及び送達システムのうちのいずれか1つを使用する、対象への本発明の生成物の物理的導入を指す。
【0105】
「抗体」(Ab)という用語は、抗原に特異的に結合し、ジスルフィド結合によって連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン、又はその抗原結合部分を含み得るが、これらに限定されない。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つの定常ドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、定常ドメインCLを含む。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に更に細分され得、これらはフレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域内に散在される。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRを含み、これらはアミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の順序、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4で配置される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。
【0106】
CD20
抗CD19CAR-Tの有効性は顕著であるが、多くの研究は、CD19キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法に今なお多くの問題が存在することを示している。治療結果が悪く、再発しやすい一部の患者が依然として存在する。これには、腫瘍細胞が抗原エスケープを起こしやすいことが含まれる。
【0107】
CD19CAR-T抗原のエスケープを防止するために、本発明者等は、CD19及びCD20の両方を標的とする組み合わされた二重特異性CAR(すなわち、BICAR)を設計して、CD19抗原がエスケープし、腫瘍細胞で発現されない場合に、CD20が認識されて、インビボで腫瘍細胞を取り除くことができる。
【0108】
CD20は、抗CD19CAR-T治療後の一部のCD19陰性患者を含む、B細胞急性リンパ性白血病を有するほとんどの患者において発現される。CD20は、グリコシル化タンパク質であり、最初に同定されたB細胞膜マーカである。CD20はB1としても知られており、MS4A遺伝子によってコードされる。CD20分子は4つの膜貫通疎水性領域を有し、そのN末端及びC末端は細胞質側に位置し、細胞の外側に2つの閉ループを形成し、それぞれ大ループ及び小ループと呼ばれる。CD20は、正常及び癌性B細胞の95%超で特異的に発現される。これらの細胞はプレB細胞段階及びその後の発達段階にあり、CD20は、細胞が形質細胞に分化するまで発現を停止する。本発明は、B細胞悪性腫瘍の免疫療法のために別の標的としてCD20を使用する。
【0109】
CD19及びCD20を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体
細胞免疫療法は、新しく非常に効果的な腫瘍治療モデルであり、癌の新しい種類の自己免疫治療である。細胞免疫療法は、バイオテクノロジー及び生物学的薬剤を使用して患者から採取された免疫細胞をインビトロで培養及び増幅し、次いで細胞を患者に注入し戻して、身体の自己免疫機能を刺激及び増強し、それによって腫瘍を治療する目的を達成する方法である。当業者は、有効性を高め、副作用を低減するための新しい細胞免疫療法を開発することに取り組んできた。
【0110】
本発明は、初代ヒトT細胞に効果的に組み込むことができ、T細胞が活性化された時にCD19及びCD20を同時に標的化することができる、合理的かつ最適化された単鎖設計及びシステム、すなわち、組み合わされた二重特異性CARを提案する。本発明のCAR-T細胞は、2つの抗原(CD19及びCD20)を認識することができる。本発明は、抗原エスケープを防止するための非常に有効な潜在的方法を提供する。
【0111】
本発明は、CD19及びCD20を同時に標的とするCARを使用する。単一の抗原を標的とするCARと比較して、親和性が増強され、T細胞の活性が増加し、標的は相加効果又は相乗効果を有する。加えて、腫瘍細胞におけるCD19及びCD20の不均一な発現レベルのために、二重標的CAR-T療法はより広い範囲を有する。腫瘍細胞の表面上のCD19及びCD20を同時に標的とするCAR-Tは、単一表面抗原の下方制御又は欠失によって引き起こされる抗原エスケープの可能性を低減することができる。
【0112】
二重特異性は、同じCARが2つの異なる抗原に特異的に結合し、免疫認識することができ、CARが抗原のいずれか1つに結合することによって免疫応答を生成することができることを意味する。
【0113】
本発明のCD19及びCD20二重特異性CARは、単一の構造を有し、抗CD19scFv及び抗CD20scFvを含む。ここで、CARはCD19scFv及びCD20scFvを含み、CD19scFv及びCD20scFvのアミノ酸配列、配列決定及びヒンジは、その機能に影響を及ぼす主な因子である。
【0114】
具体的には、本発明のキメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む。細胞外ドメインは、標的特異的結合エレメント(抗原結合ドメインとしても知られる)を含む。細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達領域及びζ鎖を含む。共刺激シグナル伝達領域は、共刺激分子を含む細胞内ドメインの一部を指す。共刺激分子は、抗原受容体又はそのリガンドではなく、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要な細胞表面分子である。
【0115】
リンカーは、CARの細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間、又はCARの細胞質ドメインと膜貫通ドメインとの間に組み込まれ得る。本明細書で使用される場合、「リンカー」という用語は、一般に、ポリペプチド鎖において膜貫通ドメインを細胞外ドメイン又は細胞質ドメインに連結させる役割を果たす任意のオリゴペプチド又はポリペプチドを指す。リンカーは、0~300のアミノ酸、好ましくは2~100のアミノ酸、最も好ましくは3~50のアミノ酸を含み得る。
【0116】
本発明の好ましい実施形態では、本発明で提供されるCARの細胞外ドメインは、CD19及びCD20を標的とする抗原結合ドメインを含む。本発明のCARがT細胞で発現される場合、抗原結合特異性に基づいて抗原認識が行われ得る。CARがその会合した抗原に結合すると、CARは腫瘍細胞に影響を及ぼし、腫瘍細胞が成長することができず、死に至るか、又は他の方法で影響を受け、患者の腫瘍負荷を縮小又は排除する。抗原結合ドメインは、好ましくは、共刺激分子及びζ鎖のうち1つ以上からの細胞内ドメインに融合される。好ましくは、抗原結合ドメインは、4-1BBシグナル伝達ドメイン及びCD3ζシグナル伝達ドメインの組合わせの細胞内ドメインと融合される。
【0117】
本明細書で使用される場合、「抗原結合ドメイン」及び「単鎖抗体フラグメント」は、抗原結合活性を有する、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、又は単一Fvフラグメントを指す。Fv抗体は、抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含むが、定常領域を含まない。Fv抗体は、全ての抗原結合部位を有する最小の抗体フラグメントを有する。一般に、Fv抗体はまた、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを含み、抗原結合に必要な構造を形成することができる。抗原結合ドメインは、通常、scFv(単鎖可変フラグメント)である。scFvの大きさは、典型的には完全抗体の1/6である。単鎖抗体は、好ましくは、ヌクレオチド鎖によってコードされるアミノ酸鎖配列である。本発明の好ましい実施形態として、scFvは、CD19及びCD20を特異的に認識する抗体を含む。
【0118】
ヒンジ領域及び膜貫通領域(膜貫通ドメイン)に関して、CARは、CARの細胞外ドメインに融合された膜貫通ドメインを含むように設計され得る。一実施形態では、CAR中のドメインの1つと天然に会合する膜貫通ドメインが使用される。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、そのようなドメインが同じ又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合することを回避し、それによって受容体複合体の他のメンバとの相互作用を最小限に抑えるために、アミノ酸置換によって選択又は修飾され得る。
【0119】
本発明のCARにおける細胞内ドメインは、4-1BBのシグナル伝達ドメイン及びCD3ζのシグナル伝達ドメインを含む。
【0120】
好ましくは、本発明のCAR構造は、同様に、シグナルペプチド配列(リーダー配列としても知られる)、抗原認識配列(抗原結合ドメイン)、ヒンジ領域、膜貫通領域、共刺激因子シグナル領域、及びCD3ゼータシグナル伝達領域(ζ鎖部分)を含む。接続の順序を
図1に示す。
【0121】
別の好ましい実施形態では、本発明のCARはTN-LEU-19である。CD20を標的とする抗原結合ドメインは、Leu16抗体由来の単鎖可変領域の重鎖配列(配列番号1)及び軽鎖(VL)配列(配列番号2)を含む。
【0122】
Leu16抗体由来の単鎖可変領域の重鎖配列(VH):
EVQLQQSGAELVKPGASVKMSCKASGYTFTSYNMHWVKQTPGQGLEWIGAIYPGNGDTSYNQKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSADYYCARSNYYGSSYWFFDVWGAGTTVTVSS(配列番号1)
LEU-VH-CDR1:配列番号1、位置31~35;
LEU-VH-CDR2:配列番号1、位置50~66;
LEU-VH-CDR3:配列番号1、位置99~111。
【0123】
Leu16抗体由来の単鎖可変領域の軽鎖配列(VL):
DIVLTQSPAILSASPGEKVTMTC
RASSSVNYMDWYQKKPGSSPKPWIY
ATSNLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISRVEAEDAATYYC
QQWSFNPPTFGGGTKLEIK(配列番号2)
LEU-VL-CDR1:配列番号2、位置24~33;
LEU-VL-CDR2:配列番号2、位置49~55;
LEU-VL-CDR3:配列番号2、位置88~96。
【表1】
【表2】
【0124】
別の好ましい実施形態では、本発明のCARはTN-OF-19である。CD20を標的とする抗原結合ドメインは、オファツムマブ抗体由来の単鎖可変領域の重鎖配列(配列番号3)及び軽鎖配列(配列番号4)を含む。
【0125】
オファツムマブ抗体に由来する単鎖可変領域の重鎖配列(VH):
EVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFNDYAMHWVRQAPGKGLEWVSTISWNSGSIGYADSVKGRFTISRDNAKKSLYLQMNSLRAEDTALYYCAKDIQYGNYYYGMDVWGQGTTVTVSS(配列番号3)
OF-VH-CDR1:配列番号3、位置30~35。OF-VH-CDR1の配列は、NDYAMH(配列番号40)である。
【0126】
OF-VH-CDR2:配列番号3、位置50~66。OF-VH-CDR2の配列は、TISWNSGSIGYADSVKG(配列番号41)である。
【0127】
OF-VH-CDR3:配列番号3、位置99~111。OF-VH-CDR3の配列は、DIQYGNYYYGMDV(配列番号42)である。
【0128】
オファツムマブ抗体に由来する単鎖可変領域の軽鎖配列(VL):
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPITFGQGTRLEIK(配列番号4)
OF-VL-CDR1:配列番号4、位置24~34。OF-VL-CDR1の配列は、RASQSVSSYLA(配列番号43)である。
【0129】
OF-VL-CDR2:配列番号4、位置50~56。OF-VL-CDR2の配列は、DASNRAT(配列番号44)である。
【0130】
OF-VL-CDR3:配列番号4、位置89~97。OF-VL-CDR3の配列は、QQRSNWPIT(配列番号45)である。
【0131】
別の好ましい実施形態では、本発明のCARにおけるCD19を標的とする抗原結合ドメインは、FMC63抗体に由来する単鎖可変領域の軽鎖(VL)配列(配列番号5)及び重鎖配列(配列番号6)を含む。
【0132】
FMC63抗体に由来する単鎖可変領域の軽鎖(VL)のアミノ酸配列:
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEIT(配列番号5)
FMC63-VL-CDR1:配列番号5、位置24~34。FMC63-VL-CDR1の配列は、RASQDISKYLN(配列番号63)である。
【0133】
FMC63-VL-CDR2:配列番号5、位置50~56。FMC63-VL-CDR2の配列は、HTSRLHS(配列番号64)である。
【0134】
FMC63-VL-CDR3:配列番号5、位置89~97。FMC63-VL-CDR3の配列は、QQGNTLPYT(配列番号39)である。
【0135】
FMC63抗体に由来する単鎖可変領域の軽鎖(VL)のヌクレオチド配列:
gacatccaga tgacacagac tacatcctcc ctgtctgcct ctctgggaga cagagtcacc 60
atcagttgca gggcaagtca ggacattagt aaatatttaa attggtatca gcagaaacca 120
gatggaactg ttaaactcct gatctaccat acatcaagat tacactcagg agtcccatca 180
aggttcagtg gcagtgggtc tggaacagat tattctctca ccattagcaa cctggagcaa 240
gaagatattg ccacttactt ttgccaacag ggtaatacgc ttccgtacac gttcggaggg 300
gggaccaagc tggagatcac a 321(配列番号21)
【0136】
FMC63抗体に由来する単鎖可変領域(VH)の重鎖のアミノ酸配列:
EVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号6)
FMC63-VH-CDR1:配列番号6、位置31~35。FMC63-VH-CDR1の配列は、DYGVS(配列番号60)である。
【0137】
FMC63-VH-CDR2:配列番号6、位置50~65。FMC63-VH-CDR2の配列は、VIWGSETTYYNSALKS(配列番号61)である。
【0138】
FMC63-VH-CDR3:配列番号6、位置98~109。FMC63-VH-CDR3の配列は、HYYYGGSYAMDY(配列番号62)である。
【0139】
FMC63抗体に由来する単鎖可変領域の重鎖(VH)のヌクレオチド配列:
gaggtgaaac tgcaggagtc aggacctggc ctggtggcgc cctcacagag cctgtccgtc 60
acatgcactg tctcaggggt ctcattaccc gactatggtg taagctggat tcgccagcct 120
ccacgaaagg gtctggagtg gctgggagta atatggggta gtgaaaccac atactataat 180
tcagctctca aatccagact gaccatcatc aaggacaact ccaagagcca agttttctta 240
aaaatgaaca gtctgcaaac tgatgacaca gccatttact actgtgccaa acattattac 300
tacggtggta gctatgctat ggactactgg ggccaaggaa cctcagtcac cgtctcctca 360
(配列番号22)
【0140】
具体的には、本発明のCARにおける他のエレメントの配列は以下の通りである。
【0141】
リーダー配列は、CD8抗原のリーダー配列である。
【0142】
MALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号8)
【0143】
単鎖可変領域の重鎖と軽鎖との間のリンカー配列(すなわち、可動性リンカーI)は以下の通りである。
【0144】
CD20 scfvのVLとVHとの間のリンカーのアミノ酸配列:
GSTSGGGSGGGSGGGGSS(配列番号19)
CD19 scFvのVHとVLとの間のリンカーのアミノ酸配列:
GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号20)
【0145】
ヒンジ領域は、IgG4ヒンジの短い形態の配列から選択される。
【0146】
ESKYGPPCPPCP(配列番号:9)
【0147】
膜貫通領域は、CD8(CD8TM)又はCD28(CD28TM)抗原の膜貫通領域配列である。
【0148】
CD8TM:IYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC(配列番号10)
CD28TM:MFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号11)
【0149】
共刺激因子シグナル領域は、4-1BB又はCD28細胞質シグナル伝達モチーフの配列に由来する。
【0150】
4-1BB:KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(配列番号12)
CD28:RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号13)
【0151】
CD3ζのシグナル伝達領域は、TCR複合体中のCD3ζの免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)の配列に由来する。
【0152】
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号14)
【0153】
好ましい実施形態では、本発明で構築される2つのCARの完全な核酸配列及びアミノ酸配列は以下の通りである。
【0154】
TN-OF-19の完全な核酸配列は以下の通りである。
【0155】
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGGAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCTACTTAGCCTGGTACCAACAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGATGCATCCAACAGGGCCACTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTAGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTACTGTCAGCAGCGTAGCAACTGGCCGATCACCTTCGGCCAAGGGACACGACTGGAGATTAAAGGCAGTACTAGCGGTGGTGGCTCCGGGGGCGGTTCCGGTGGGGGCGGCAGCAGCGAAGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGCAGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTTAATGATTATGCCATGCACTGGGTCCGGCAAGCTCCAGGGAAGGGCCTGGAGTGGGTCTCAACTATTAGTTGGAATAGTGGTTCCATAGGCTATGCGGACTCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAAGTCCCTGTATCTGCAAATGAACAGTCTGAGAGCTGAGGACACGGCCTTGTATTACTGTGCAAAAGATATACAGTACGGCAACTACTACTACGGTATGGACGTCTGGGGCCAAGGGACCACGGTCACCGTCTCCTCAGGAGGTGGTGGATCCGAGGTGAAGCTGCAGGAAAGCGGCCCTGGCCTGGTGGCCCCCAGCCAGAGCCTGAGCGTGACCTGCACCGTGAGCGGCGTGAGCCTGCCCGACTACGGCGTGAGCTGGATCCGGCAGCCCCCCAGGAAGGGCCTGGAATGGCTGGGCGTGATCTGGGGCAGCGAGACCACCTACTACAACAGCGCCCTGAAGAGCCGGCTGACCATCATCAAGGACAACAGCAAGAGCCAGGTGTTCCTGAAGATGAACAGCCTGCAGACCGACGACACCGCCATCTACTACTGCGCCAAGCACTACTACTACGGCGGCAGCTACGCCATGGACTACTGGGGCCAGGGCACCAGCGTGACCGTGAGCAGCGGCAGCACCTCCGGCAGCGGCAAGCCTGGCAGCGGCGAGGGCAGCACCAAGGGCGACATCCAGATGACCCAGACCACCTCCAGCCTGAGCGCCAGCCTGGGCGACCGGGTGACCATCAGCTGCCGGGCCAGCCAGGACATCAGCAAGTACCTGAACTGGTATCAGCAGAAGCCCGACGGCACCGTCAAGCTGCTGATCTACCACACCAGCCGGCTGCACAGCGGCGTGCCCAGCCGGTTTAGCGGCAGCGGCTCCGGCACCGACTACAGCCTGACCATCTCCAACCTGGAACAGGAAGATATCGCCACCTACTTTTGCCAGCAGGGCAACACACTGCCCTACACCTTTGGCGGCGGAACAAAGCTGGAAATCACCGAGAGCAAGTACGGACCGCCCTGCCCCCCTTGCCCTATGTTCTGGGTGCTGGTGGTGGTCGGAGGCGTGCTGGCCTGCTACAGCCTGCTGGTCACCGTGGCCTTCATCATCTTTTGGGTGAAACGGGGCAGAAAGAAACTCCTGTATATATTCAAACAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTGCGGGTGAAGTTCAGCAGAAGCGCCGACGCCCCTGCCTACCAGCAGGGCCAGAATCAGCTGTACAACGAGCTGAACCTGGGCAGAAGGGAAGAGTACGACGTCCTGGATAAGCGGAGAGGCCGGGACCCTGAGATGGGCGGCAAGCCTCGGCGGAAGAACCCCCAGGAAGGCCTGTATAACGAACTGCAGAAAGACAAGATGGCCGAGGCCTACAGCGAGATCGGCATGAAGGGCGAGCGGAGGCGGGGCAAGGGCCACGACGGCCTGTATCAGGGCCTGTCCACCGCCACCAAGGATACCTACGACGCCCTGCACATGCAGGCCCTGCCCCCAAGG(配列番号18)
【0156】
TN-OF-19の完全なアミノ酸配列は以下の通りである。
【0157】
MALPVTALLLPLALLLHAARPEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPITFGQGTRLEIKGSTSGGGSGGGSGGGGSSEVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFNDYAMHWVRQAPGKGLEWVSTISWNSGSIGYADSVKGRFTISRDNAKKSLYLQMNSLRAEDTALYYCAKDIQYGNYYYGMDVWGQGTTVTVSSGGGGSEVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSSGSTSGSGKPGSGEGSTKGDIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEITESKYGPPCPPCPMFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号16)
【0158】
TN-LEU-19の完全な核酸配列は以下の通りである。
【0159】
ATGGAGACAGACACACTCCTGCTATGGGTGCTGCTGCTCTGGGTTCCAGGTTCCACAGGTGACATTGTGCTGACCCAATCTCCAGCTATCCTGTCTGCATCTCCAGGGGAGAAGGTCACAATGACTTGCAGGGCCAGCTCAAGTGTAAATTACATGGACTGGTACCAGAAGAAGCCAGGATCCTCCCCCAAACCCTGGATTTATGCCACATCCAACCTGGCTTCTGGAGTCCCTGCTCGCTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACCTCTTACTCTCTCACAATCAGCAGAGTGGAGGCTGAAGATGCTGCCACTTATTACTGCCAGCAGTGGAGTTTTAATCCACCCACGTTCGGAGGGGGGACCAAGCTGGAAATAAAAGGCAGTACTAGCGGTGGTGGCTCCGGGGGCGGTTCCGGTGGGGGCGGCAGCAGCGAGGTGCAGCTGCAGCAGTCTGGGGCTGAGCTGGTGAAGCCTGGGGCCTCAGTGAAGATGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACATTTACCAGTTACAATATGCACTGGGTAAAGCAGACACCTGGACAGGGCCTGGAATGGATTGGAGCTATTTATCCAGGAAATGGTGATACTTCCTACAATCAGAAGTTCAAAGGCAAGGCCACATTGACTGCAGACAAATCCTCCAGCACAGCCTACATGCAGCTCAGCAGCCTGACATCTGAGGACTCTGCGGACTATTACTGTGCAAGATCTAATTATTACGGTAGTAGCTACTGGTTCTTCGATGTCTGGGGCGCAGGGACCACGGTCACCGTCTCCTCAGGAGGTGGTGGATCCGAGGTGAAGCTGCAGGAAAGCGGCCCTGGCCTGGTGGCCCCCAGCCAGAGCCTGAGCGTGACCTGCACCGTGAGCGGCGTGAGCCTGCCCGACTACGGCGTGAGCTGGATCCGGCAGCCCCCCAGGAAGGGCCTGGAATGGCTGGGCGTGATCTGGGGCAGCGAGACCACCTACTACAACAGCGCCCTGAAGAGCCGGCTGACCATCATCAAGGACAACAGCAAGAGCCAGGTGTTCCTGAAGATGAACAGCCTGCAGACCGACGACACCGCCATCTACTACTGCGCCAAGCACTACTACTACGGCGGCAGCTACGCCATGGACTACTGGGGCCAGGGCACCAGCGTGACCGTGAGCAGCGGCAGCACCTCCGGCAGCGGCAAGCCTGGCAGCGGCGAGGGCAGCACCAAGGGCGACATCCAGATGACCCAGACCACCTCCAGCCTGAGCGCCAGCCTGGGCGACCGGGTGACCATCAGCTGCCGGGCCAGCCAGGACATCAGCAAGTACCTGAACTGGTATCAGCAGAAGCCCGACGGCACCGTCAAGCTGCTGATCTACCACACCAGCCGGCTGCACAGCGGCGTGCCCAGCCGGTTTAGCGGCAGCGGCTCCGGCACCGACTACAGCCTGACCATCTCCAACCTGGAACAGGAAGATATCGCCACCTACTTTTGCCAGCAGGGCAACACACTGCCCTACACCTTTGGCGGCGGAACAAAGCTGGAAATCACCGAGAGCAAGTACGGACCGCCCTGCCCCCCTTGCCCTATGTTCTGGGTGCTGGTGGTGGTCGGAGGCGTGCTGGCCTGCTACAGCCTGCTGGTCACCGTGGCCTTCATCATCTTTTGGGTGAAACGGGGCAGAAAGAAACTCCTGTATATATTCAAACAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTGCGGGTGAAGTTCAGCAGAAGCGCCGACGCCCCTGCCTACCAGCAGGGCCAGAATCAGCTGTACAACGAGCTGAACCTGGGCAGAAGGGAAGAGTACGACGTCCTGGATAAGCGGAGAGGCCGGGACCCTGAGATGGGCGGCAAGCCTCGGCGGAAGAACCCCCAGGAAGGCCTGTATAACGAACTGCAGAAAGACAAGATGGCCGAGGCCTACAGCGAGATCGGCATGAAGGGCGAGCGGAGGCGGGGCAAGGGCCACGACGGCCTGTATCAGGGCCTGTCCACCGCCACCAAGGATACCTACGACGCCCTGCACATGCAGGCCCTGCCCCCAAGG(配列番号17)
【0160】
TN-LEU-19の完全アミノ酸配列は以下の通りである。
【0161】
METDTLLLWVLLLWVPGSTGDIVLTQSPAILSASPGEKVTMTCRASSSVNYMDWYQKKPGSSPKPWIYATSNLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISRVEAEDAATYYCQQWSFNPPTFGGGTKLEIKGSTSGGGSGGGSGGGGSSEVQLQQSGAELVKPGASVKMSCKASGYTFTSYNMHWVKQTPGQGLEWIGAIYPGNGDTSYNQKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSADYYCARSNYYGSSYWFFDVWGAGTTVTVSSGGGGSEVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSSGSTSGSGKPGSGEGSTKGDIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEITESKYGPPCPPCPMFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号15)
【0162】
本発明のBICARの設計は、以下の利点を有する。
【0163】
第1に、CD19及びCD20は、ほとんどの悪性B細胞腫瘍で発現される。第2に、一般に、T細胞認識能を高めるためにCAR構造を拡大する場合、有害な標的化の増加、細胞傷害性の増加、及び副作用の増加等の問題に遭遇することが多い。しかし、CD19及びCD20の両方は同じ腫瘍毒性曲線を有するB細胞においてのみ発現されるため、これはCD19及びCD20には当てはまらない。最後に、B細胞におけるCD19及びCD20の発現は、B細胞の生存を促進することができる。また、治療中の両抗原の喪失は、非常に低い確率の事象である。したがって、CD19及びCD20を標的とすることにより、悪性B細胞の抗原エスケープの効果的な防止をもたらすことが期待される。
【0164】
CD19又はCD20の単一CARと比較して、BICARは以下の利点を有する。
【0165】
第1に、2つの独立したCARを発現させる場合と比較して、単一のT細胞においてBICARを発現する場合、DNAフットプリントが有意に減少する(DNA長が40%減少する)。構造の大きさ及び長さは、ウイルスベクターのパッケージング及び形質導入効率に有意に影響を及ぼし得、したがって臨床的有効性に直接影響を及ぼす。第2に、2つの異なる単一CARの混合物と比較して、BICARは、治療コストを有意に削減でき(BICARは、更なる負担を加えることなく、現在のT細胞製造プロセスと完全に適合する)、臨床的治癒率を増加させることができる。最後に、CD19及びCD20は多数の臨床研究で検証されており、比較的安全である。
【0166】
本発明では、CD19マウス由来モノクローナル抗体FMC63の配列、並びにCD20マウス由来モノクローナル抗体leu-16及びオファツムマブの配列に基づいて、CD19及びCD20を標的とする2種類のキメラ抗原受容体構造(TN-LEU-19、TH-OF-19)を構築した。我々は、初代T細胞におけるこれらの2つのキメラ抗原受容体の発現レベル、インビトロ活性化能、及び腫瘍細胞殺傷有効性の分析及び同定を完了した。最後に、TN-LEU-19又はTH-OF-19キメラ抗原受容体で改変されたT細胞は、CD19及びCD20陽性抗原を保有する悪性腫瘍をインビトロで殺傷し、インビボで除去する強力な能力を有し、オファツムマブはleu16よりも良好であることが見出された。これは、CD19及びCD20陽性白血病及びリンパ腫の治療におけるCAR-Tの臨床適用のための新しい有効な方法及び調製を提供する。
【0167】
本発明は、単一特異性及び二重特異性CARを設計及び最適化した。これらのCARは、CD19又はCD20を発現するB細胞悪性腫瘍に対して強力な殺傷能力を有する。BICARは、単一のT細胞生成物がB細胞白血病及びリンパ腫に関連する2つの臨床的に検証された抗原を標的とすることを可能にし、最終的に単一の抗原の喪失又はエスケープに起因する腫瘍再発のリスクを低下させる。本発明は、新しいBICARの設計で更に使用することができ、したがって抗原の適用性を高め、癌に対するT細胞療法の有効性を高める。
【0168】
キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)
本明細書で使用される場合、「CAR-T細胞」、「CAR-T」、「CART」、「本発明のCAR-T細胞」という用語は全て、本発明の第4の態様のCD19及びCD20の両方を標的とするCAR-T細胞を指す。具体的には、CAR-T細胞のCAR構造は、抗CD19 scFv、抗CD20 scFv、ヒンジ領域、膜貫通領域、及び細胞内T細胞シグナル伝達領域を順に含み、抗CD20 scFv及び抗CD19 scFvは、複数の反復構造を有するペプチド(G4S)と連結される。単一の抗原を標的とするCAR-Tと比較して、2つの標的を同時に認識するCAR-T細胞はより致死的であり、治療の範囲がより広範囲である。
【0169】
ベクター
所望の分子をコードする核酸配列は、当技術分野で既知の組換え方法を使用して、例えば、遺伝子を発現する細胞からライブラリをスクリーニングすることによって、遺伝子含むことが知られているベクターから遺伝子を誘導することによって、又は標準的な技術を使用して、遺伝子を含む細胞及び組織から直接単離することによって得ることができる。あるいは、目的の遺伝子を合成的に作製することができる。
【0170】
また、本発明は、本発明の発現カセットが挿入されたベクターを提供する。レンチウイルス等のレトロウイルスに由来するベクターは、導入遺伝子の長期的で安定した組込み及び娘細胞におけるその増殖を可能にするため、長期の遺伝子移入を達成するための適切なツールである。レンチウイルスベクターは、肝細胞等の非増殖性細胞を形質導入することができるという点で、マウス白血病ウイルス等のオンコ-レトロウイルスに由来するベクターを超える利点を有する。レンチウイルスベクターはまた、免疫原性が低いという利点を有する。
【0171】
要約すると、本発明の発現カセット又は核酸配列は、典型的かつ作動可能的にプロモータに連結され、発現ベクターに組み込まれる。ベクターは、真核生物における複製及び組込みに適し得る。典型的なクローニングベクターは、転写及び翻訳ターミネータ、開始配列、並びに所望の核酸配列の発現の調節に有用なプロモータを含む。
【0172】
本発明の発現構築物はまた、標準的な遺伝子送達プロトコルを使用して、核酸免疫及び遺伝子療法に使用され得る。遺伝子送達のための方法は当技術分野で公知である。例えば、明細書全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,399,346号、同第5,580,859号、同第5,589,466号を参照されたい。別の実施形態では、本発明は遺伝子療法ベクターを提供する。
【0173】
核酸は、多数の種類のベクターにクローニングされ得る。例えば、核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス及びコスミドを含むがこれらに限定されないベクターにクローニングされ得る。特定の目的のベクターは、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及び配列決定ベクターを含む。
【0174】
更に、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。ウイルスベクター技術は当技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)、並びに他のウイルス学及び分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが含まれるが、これらに限定されない。一般に、適切なベクターは、少なくとも1つの生物において機能的な複製起点、プロモータ配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1つ以上の選択マーカを含む(例えば、国際公開第01/96584号、国際公開第01/29058号、及び米国特許第6,326,193号)。
【0175】
哺乳動物細胞への遺伝子移入のために、多数のウイルスベースのシステムが開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムのための便利なプラットフォームを提供する。当該分野で既知の技術を使用して、選択された遺伝子をベクターに挿入し、レトロウイルス粒子にパッケージングすることができる。次いで、組換えウイルスを単離し、インビボ又はエクスビボのいずれかで対象の細胞に送達することができる。多数のレトロウイルスシステムが当技術分野で既知である。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。多数のアデノウイルスベクターが当技術分野で既知である。一実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。
【0176】
更なるプロモータ要素、例えばエンハンサは、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは、開始部位の10bp上流の領域30-1に位置するが、多くのプロモータは、開始部位の下流にも機能的要素を含有することが最近示されている。プロモータエレメント間の間隔は柔軟であることが多く、その結果、エレメントが他方に対して反転又は移動する場合、プロモータ機能が保存される。チミジンキナーゼ(tk)プロモータでは、活性が低下し始める前に、プロモータエレメント間の間隔が50bpまで増加され得る。プロモータに応じて、個々のエレメントは、転写を活性化するために協調的又は独立して機能することができるとみられる。
【0177】
適切なプロモータの一例は、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ配列である。このプロモータ配列は、それに作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動することができる強力な構成的プロモータ配列である。適切なプロモータの別の例は、伸長成長因子-1α(EF-1α)である。しかし、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモータ、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)末端反復配列(LTR)プロモータ、MoMuLVプロモータ、トリ白血病ウイルスプロモータ、エプスタイン・バーウイルス前初期プロモータ、ラウス肉腫ウイルスプロモータ、並びにアクチンプロモータ、ミオシンプロモータ、ヘモグロビンプロモータ、及びクレアチンキナーゼプロモータ等であるがこれらに限定されないヒト遺伝子プロモータを含むがこれらに限定されない、他の構成的プロモータ配列も使用され得る。更に、本発明は構成的プロモータの使用に限定されるべきではなく、誘導性プロモータも本発明の一部として企図される。誘導性プロモータの使用は、そのような発現が望まれる場合に作動可能に連結されるポリヌクレオチド配列の発現をオンにすることができるか、又は発現が望まれない場合に発現をオフにすることができる分子スイッチを提供する。誘導性プロモータの例としては、メタロチオネインプロモータ、グルココルチコイドプロモータ、プロゲステロンプロモータ、及びテトラサイクリンプロモータが挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
CARポリペプチド又はその一部の発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターはまた、選択マーカ遺伝子若しくはレポーター遺伝子のいずれか又は両方を含有して、ウイルスベクターを介して遺伝子導入されること、又は感染されることが求められる細胞の集団からの発現細胞の同定及び選択を容易にすることができる。他の態様では、選択マーカは、別個のDNA片に担持され得、同時遺伝子導入手順で使用され得る。選択マーカ及びレポーター遺伝子の両方を、適切な制御配列に隣接させて、宿主細胞における発現を可能にすることができる。有用な選択マーカとしては、例えば、neo等の抗生物質耐性遺伝子が挙げられる。
【0179】
レポーター遺伝子は、潜在的に遺伝子導入された細胞を同定し、制御配列の機能性を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物若しくは組織に存在しないか、又は発現されない遺伝子であり、ポリペプチドをコードし、その発現が何らかの容易に検出可能な特性、例えば酵素活性によって明らかにされる遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後の適切な時点でアッセイされる。適切なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼ、又は緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子を含み得る(例えば、Ui-Tei et al.,2000 FEBS Letters 479:79-82)。適切な発現システムは周知であり、既知の技術を使用して調製され得るか、又は商業的に入手され得る。一般に、レポーター遺伝子の最高レベルの発現を示す最小5’フランキング領域を有する構築物がプロモータとして同定される。そのようなプロモータ領域は、レポーター遺伝子に連結されてもよく、プロモータ駆動転写を調節する能力について薬剤を評価するために使用され得る。
【0180】
遺伝子を細胞に導入及び発現させる方法は、当技術分野で既知である。発現ベクターに関連して、ベクターは、当技術分野における任意の方法によって宿主細胞、例えば哺乳動物、細菌、酵母、又は昆虫細胞に容易に導入され得る。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、又は生物学的手段によって宿主細胞に移入され得る。
【0181】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法は、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等を含む。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を製造する方法は、当技術分野で周知である。例えば、Sambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)を参照されたい。宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための好ましい方法は、リン酸カルシウム法である。
【0182】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法は、DNA及びRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス等に由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号及び同第5,585,362号を参照されたい。
【0183】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段は、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び脂質ベースのシステム、例えば、水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む。インビトロ及びインビボで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0184】
非ウイルス送達システムが利用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。宿主細胞への核酸の導入(インビトロ、エクスビボ又はインビボ)のために、脂質製剤の使用が企図される。別の態様では、核酸は脂質と会合していてもよい。脂質と会合した核酸は、リポソームの水性内部にカプセル化されていてもよく、リポソームの脂質二重層内に散在していてもよく、リポソーム及びオリゴヌクレオチドの両方と会合した連結分子を介してリポソームに付着していてもよく、リポソームに封入されていてもよく、リポソームと複合体を形成していてもよく、脂質を含有する溶液中に分散されていてもよく、脂質と混合されていてもよく、脂質と組み合わされていてもよく、脂質中に懸濁液として含まれていてもよく、ミセルを含有若しくはミセルと複合体を形成していてもよく、又は他の方法で脂質と会合していてもよい。脂質、脂質/DNA又は脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液中のいずれかの特定の構造に限定されない。例えば、それらは、二重層構造、ミセルとして、又は「崩壊した」構造で存在し得る。それらはまた、溶液中に単に散在してもよく、場合によっては大きさ又は形状が均一でない凝集体を形成する。脂質は、天然に存在するか、又は合成脂質でもよい脂肪物質である。例えば、脂質は、細胞質に天然に存在する脂肪滴、並びに脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒド等の長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体を含有する化合物のクラスを含む。
【0185】
本発明の好ましい実施形態では、ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0186】
調製
本発明は、本発明の第4の態様のCAR-T細胞、及び薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含む製剤を提供する。一実施形態では、製剤は液体製剤である。好ましくは、製剤は注射剤である。好ましくは、製剤中のCAR-T細胞の濃度は1×103~1×108細胞/mlであり、より好ましくは1×104~1×107細胞/mlである。
【0187】
一実施形態では、製剤は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水等の緩衝液;グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン、マンニトール等の炭水化物;タンパク質;グリシン等のポリペプチド又はアミノ酸;酸化防止剤;EDTA又はグルタチオン等のキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);及び防腐剤を含み得る。本発明の製剤は、好ましくは静脈内投与用に製剤化される。
【0188】
治療用途
本発明は、本発明の発現カセットをコードするレンチウイルスベクター(LV)で形質導入された細胞(例えば、T細胞)を使用する治療用途を含む。形質導入されたT細胞は、腫瘍細胞マーカCD19及びCD20を標的とし、T細胞を相乗的に活性化し、T細胞免疫応答を引き起こし、それによって腫瘍細胞に対する殺傷有効性を有意に高めることができる。
【0189】
したがって、本発明はまた、哺乳動物における標的細胞集団又は組織に対するT細胞媒介性免疫応答を刺激するための方法であって、本発明のCAR-T細胞を哺乳動物に投与する工程を含む方法を提供する。
【0190】
一実施形態では、本発明は、自己由来の患者(又は異種ドナー)からのT細胞を単離し、活性化し、遺伝子改変して、CAR-T細胞を生成し、次いで同じ患者に注射する、細胞療法のクラスを含む。この方法では、移植片対宿主病の確率は極めて低く、抗原は非MHC拘束的にT細胞によって認識される。更に、1つのCAR-Tは、抗原を発現する全ての癌を治療することができる。抗体療法とは異なり、CAR-T細胞はインビボで複製することができ、長期持続性がもたらされて、持続的な腫瘍制御を導くことができる。
【0191】
一実施形態では、本発明のCAR-T細胞は、強いインビボT細胞増殖を経ることができ、長期間持続することができる。更に、CAR媒介性免疫応答は、CAR改変T細胞がCAR中の抗原結合部分に特異的な免疫応答を誘導する養子免疫療法手法の一部であり得る。例えば、抗CD19CD20 CAR-T細胞は、CD19及びCD20を発現する細胞に対して特異的に免疫応答を誘発する。
【0192】
本明細書に開示されるデータは、CD19CD20 scFv、ヒンジ及び膜貫通ドメイン、並びに4-1BB及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含むレンチウイルスベクターを具体的に開示しているが、本発明は、本明細書の他の箇所に記載されるように、構築物の各成分について任意の数の変異を含むと解釈されるべきである。
【0193】
治療され得る癌は、血管新生されない又は大部分が血管新生されない腫瘍、及び血管新生される腫瘍を含む。癌は、非固形腫瘍(例えば白血病及びリンパ腫である血液腫瘍等)又は固形腫瘍を含み得る。本発明のCARで治療される癌の種類には、癌腫、芽細胞腫及び肉腫、並びに特定の白血病又はリンパ性悪性腫瘍、良性及び悪性腫瘍、並びに悪性腫瘍、例えば肉腫、癌腫及び黒色腫が含まれるが、これらに限定されない。成人腫瘍/癌及び小児腫瘍/癌も含まれる。
【0194】
血液癌は、血液又は骨髄の癌である。血液(又は血行性)の癌の例には、急性白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病及び骨髄芽球、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性及び赤白血病)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病及び慢性リンパ性白血病)を含む白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(緩徐進行型及び高悪性度型)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、ヘアリー細胞白血病及び骨髄形成異常症が含まれる。
【0195】
固形腫瘍は、通常嚢胞又は液体領域を含まない組織の異常な塊である。固形腫瘍は良性又は悪性であり得る。様々な種類の固形腫瘍が、それらを形成する細胞の種類に対して命名される(肉腫、癌腫、及びリンパ腫等)。肉腫及び癌腫等の固形腫瘍の例としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、中皮腫、悪性リンパ腫、膵臓癌及び卵巣癌が挙げられる。
【0196】
本発明のCAR改変T細胞はまた、哺乳動物におけるエクスビボ免疫化及び/又はインビボ療法のためのワクチンの一種として役立ち得る。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0197】
エクスビボ免疫化に関して、以下の少なくとも1つが、哺乳動物に細胞を投与する前にインビトロで行われる。i)細胞を増殖させること、ii)CARをコードする核酸を細胞に導入すること、及び/又はiii)細胞の凍結保存。
【0198】
エクスビボ手順は当技術分野で周知であり、以下でより完全に考察される。簡潔には、細胞を哺乳動物(好ましくはヒト)から単離し、本明細書に開示されるCARを発現するベクターで遺伝子改変する(すなわち、インビトロで形質導入又は遺伝子導入する)。CAR改変細胞は、治療上の利益を提供するために哺乳動物レシピエントに投与され得る。哺乳動物レシピエントはヒトであり得、CAR改変細胞はレシピエントに対して自己由来であり得る。あるいは、細胞は、レシピエントに対して同種、同系又は異種であり得る。
【0199】
エクスビボ免疫化に関して細胞ベースのワクチンを使用することに加えて、本発明はまた、患者において抗原に対する免疫応答を誘発するためのインビボ免疫化のための組成物及び方法を提供する。
【0200】
本発明は、腫瘍を治療するための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明のCAR改変T細胞を投与することを含む方法を提供する。
【0201】
本発明のCAR改変T細胞は、単独で、あるいは希釈剤及び/又はIL-2、IL-17若しくは他のサイトカイン若しくは細胞集団等の他の成分と組み合わせて医薬組成物として投与され得る。簡潔には、本発明の医薬組成物は、1つ以上の薬学的又は生理学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて、本明細書に記載の標的細胞集団を含み得る。このような組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水等の緩衝液;グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン、マンニトール等の炭水化物;タンパク質;グリシン等のポリペプチド又はアミノ酸;酸化防止剤;EDTA又はグルタチオン等のキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);及び防腐剤を含み得る。本発明の組成物は、好ましくは静脈内投与用に製剤化される。
【0202】
本発明の医薬組成物は、治療(又は予防)される疾患に適切な方法で投与され得る。投与の量及び頻度は、患者の状態、並びに患者の疾患の種類及び重症度等の要因によって決定されるが、適切な用量は臨床試験によって決定され得る。
【0203】
「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」又は「治療量」が示される場合、投与される本発明の組成物の正確な量は、年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染又は転移の程度、及び患者(対象)の状態の個人差を考慮して医師によって決定され得る。本明細書に記載されるT細胞を含む医薬組成物は、104~109細胞/kg体重、好ましくは105~106細胞/kg体重の用量で投与され得、それらの範囲内の全ての整数値を含むことが一般に示され得る。T細胞組成物はまた、これらの用量で複数回投与され得る。細胞は、免疫療法において一般に知られている注入技術を使用することによって投与することができる(例えば、Rosenberg et al,New Eng.J.of Med.319:1676,1988を参照されたい)。特定の患者に対する最適な用量及び治療レジメンは、疾患の徴候について患者をモニタリングし、それに応じて治療を調整することによって、医学の当業者によって容易に決定され得る。
【0204】
主題組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、注入、埋込又は移植を含む任意の好都合な様式で行われ得る。本明細書に記載の組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、リンパ節内、髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射、又は腹腔内で患者に投与され得る。一実施形態では、本発明のT細胞組成物は、皮内又は皮下注射によって患者に投与される。別の実施形態では、本発明のT細胞組成物は、好ましくはi.v.注射によって投与される。T細胞の組成物は、腫瘍、リンパ節、又は感染部位に直接注射され得る。
【0205】
本発明の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法、又はT細胞が治療レベルまで増殖される当技術分野で既知の他の方法を使用して、活性化及び増殖された細胞が、(例えば、前に、同時に、又は後に)抗ウイルス療法、シドホビル及びインターロイキン-2、シタラビン(ARA-Cとしても知られる)又はMS患者のためのナタリズマブ治療又は乾癬患者のためのエファリズマブ治療又はPML患者のための他の治療等の薬剤による治療を含むが、これらに限定されない任意の数の関連する治療様式と併せて患者に投与される。更なる実施形態では、本発明のT細胞は、化学療法、放射線照射、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレート、及びFK506等の免疫抑制剤、抗体、又は他の免疫療法剤と組み合わせて使用され得る。更なる実施形態では、本発明の細胞組成物は、(例えば、前に、同時に、又は後に)骨髄移植、又はフルダラビン、外照射療法(XRT)、シクロホスファミド等の化学療法剤の使用と併せて患者に投与される。例えば、一実施形態では、対象は、高用量化学療法による標準的な治療を受け、その後、末梢血幹細胞移植を受ける場合がある。特定の実施形態では、移植後、対象は、本発明の増殖免疫細胞の注入を受ける。更なる実施形態では、増殖細胞は、手術の前又は後に投与される。
【0206】
患者に投与される上記治療の用量は、治療されている状態及び治療のレシピエントの正確な性質によって変化するであろう。患者投与のための用量のスケーリングは、当技術分野で認められている慣例に従って行うことができる。一般に、1×106~1×1010の本発明の改変T細胞(例えば、CAR-T-19/20細胞)を、例えば、静脈内注入による各治療又は各治療過程の手段によって患者に適用することができる。
【0207】
本発明の利点は以下の通りである。
【0208】
(1)本発明のキメラ抗原受容体に関して、細胞外抗原結合ドメインは、特異性抗CD20 scFv及び抗CD19 scFvであり、特定の抗CD20 scFv及び抗CD19 scFvを特定のヒンジ領域及び細胞内ドメインに組み合わせることによって形成されたCARは、低い細胞傷害性及び低い副作用で腫瘍細胞を殺傷する大きな能力を示す。
【0209】
(2)本発明によって提供されるキメラ抗原受容体は、T細胞がCAR遺伝子を有するレンチウイルスに感染した後、CARタンパク質の安定な発現及び膜局在化を達成することができる。
【0210】
(3)本発明のCAR改変T細胞は、インビボでのより長い生存時間及び強力な抗腫瘍有効性を有し、IgG4ヒンジ-CH2-CH3リンカー領域を有する最適化されたCARは、Fc受容体の結合及びその後のADCC作用(抗体依存性細胞障害)を回避することができる。
【0211】
(4)2つの独立したCARと比較して、本発明の二重特異性キメラ抗原受容体は、抗CD20 scFv及び抗CD19 scFvの両方を含み、DNAフットプリントが有意に減少し(DNA長が40%減少する)、構造の大きさが小さく、ウイルスベクターのパッケージング及び形質導入有効性に有益であり、したがって臨床的有効性が直接改善する。更に、本発明の二重特異性CARは、コストがより低く、治癒率がより高く、より安全である。
【0212】
(5)本発明のTN-LEU-19又はTH-OF-19キメラ抗原受容体で改変されたT細胞は、CD19及びCD20陽性抗原を保有する悪性腫瘍をインビトロで殺傷し、インビボで除去する非常に強力な能力を有し、オファツムマブがより強力である。これは、CD19及びCD20陽性白血病及びリンパ腫の治療におけるCAR-Tの臨床適用のための新しい有効な方法及び調製を提供する。
【0213】
(6)本発明のCAR-T細胞は、大部分の悪性B細胞腫瘍に対して殺傷効果を有し、より広い治療範囲及びより大きな適用率を有し、腫瘍細胞のエスケープをより効果的に防止することができる。
【0214】
本発明を、具体例を参照して以下に更に説明する。これらの実施例は例示のみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。以下の実施例に記載される特定の条件のない実験方法は、一般に、従来の条件下で、又は製造業者の指示に従って行われる。百分率及び部分は、特に明記しない限り重量によるものである。
【0215】
[実施例1]
レンチウイルス発現ベクターの構築
全長DNAを合成し、クローニングして、プラスミドコードを構築した。pWPTレンチウイルスベクターをクローニングベクターとして選択し、クローニング部位はBamH I及びSal I部位であった。ここで、本発明で設計された2つのCARの構造を
図1に示す。TN-LEU-19のアミノ酸配列を配列番号15に示し、TN-OF-19のアミノ酸配列を配列番号16に示す(L-(OF)VL-(OF)VH-I-(FMC63)VH-(FMC63)VL-H-TM-C-CD3ζの構造を有する)。
【0216】
[実施例2]
二重特異性CARのインビトロ活性化能の検出
PBMCを、密度勾配遠心分離によって健康なドナーの静脈血から単離した。0日目に、CD3モノクローナル抗体(OKT3)及びレトロネクチン(TAKARA)で予めコーティングした細胞培養フラスコ中でPBMCを活性化した。培地は、1%ヒトアルブミン及び300U/mL組換えヒトインターロイキン2(IL-2)を含有するGT-551細胞培養培地であった。3日目に、活性化PBMCに精製TN-LEU-19又はTN-OF-19レンチウイルス溶液を形質導入した。6日目から、TN-OF-19及びTN-LEU-19のCAR-T細胞を対応する活性アッセイのために採取することができる。プロテインL法を使用して、7日間培養したCAR-T細胞におけるT細胞膜の表面上のCAR遺伝子コードタンパク質の発現レベルを決定した。
【0217】
T細胞活性化マーカCD137及びIFNγ放出を、7日間培養したCD19/20二重特異性CAR-T細胞を使用して検出した。1×105のCAR-T細胞を、CD19、CD20陽性K562-CD19+、K562-CD20+、K562-CD19+CD20+及びRaji(天然にCD19及びCD20を発現する)腫瘍細胞株、並びにCD19CD20陰性K562腫瘍細胞株、又は腫瘍細胞なしで、200μlのGT-551培地中で、1:1の比で18時間、それぞれ共培養した。次いで、T細胞の表面上のCD137の発現レベル及び培養上清中のIFNγの分泌レベルをそれぞれ検出した。
【0218】
結果を
図2A及び
図2Bに示す。2つのCART細胞の表面上のCD137の発現を検出し、培養上清中のIFNγの発現を検出した。ここで、TN-OF-19細胞は、TN-LEU-19よりも高いCD137活性化レベル及びIFNγ放出レベルを有する。
【0219】
[実施例3]
インビトロでのCD19/20二重特異性CAR-T細胞の細胞傷害性の検出
実施例2で調製したCAR-T細胞を、LDH放出アッセイによって細胞傷害性について試験した。標的細胞は、K562、K562-CD19+、K562-CD20+、K562-CD19+CD20+、及びRaji細胞であり、エフェクター細胞はNT、TN-LEU-19、及びTN-OF-19細胞である。エフェクター細胞数:標的細胞数=5:1、10:1、20:1、40:1とするエフェクター-標的比を設定した。結果を
図3Aに示す。TN-LEU-19CAR-T細胞及びTN-OF-19CAR-T細胞の両方は、CD19/20陽性腫瘍細胞においてアポトーシスを良好に誘導し、LDHを放出することができる。
【0220】
CAR-T19/20細胞によって誘導される腫瘍細胞殺傷中のCD107a(T細胞脱顆粒のマーカ)放出レベルをフローサイトメトリによって分析した。1×10
5細胞の有効細胞CAR-T19/20(TN-OF-19及びTN-LEU-19)を、2×10
5の標的腫瘍細胞とそれぞれ共培養した。標的細胞は、それぞれK562-CD19+、K562-CD20+、K562-CD19+CD20+、及びK562細胞、Raji細胞、Romas細胞(CD19+CD20+)である。結果を
図3Bに示す。両方のCART細胞は、腫瘍細胞殺傷中にCD107aの放出を良好に誘導することができる。ここで、TN-OF-19細胞は、TN-LEU-19細胞よりも細胞傷害性のマーカとしてのCD107aの放出がわずかに高い。
【0221】
[実施例4]
マウスにおける移植腫瘍細胞に対するCAR-T19/20の阻害効果
動物に注射した腫瘍細胞は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を有するRaji細胞(ルシフェラーゼ発現Raji)であった。この実験では、腫瘍細胞Rajiを注射し、マウスにおいて1週間成長させ、次いでエフェクターT細胞を注射した。エフェクターT細胞を3つの群:NT、TN-LEU-19、及びTN-OF-19に分けた。増殖したエフェクターT細胞を尾静脈を通してNSGマウスに注射し、次いでマウスの蛍光強度(IVIS蛍光イメージングによる)及びマウスの体重を7日ごとに記録した。実験を21日目に中止し、統計結果を分析した。
【0222】
結果を
図4に示す。
図4Aは、3群のマウスへのエフェクターT細胞の注射後のマウスの体重変化を示す。CART-TN-OF-19及びCART-TN-LEU-19の2種類のCART細胞と比較して、NTのマウスは体重の有意な減少を示し、両方のCART細胞群のマウスは体重がわずかに増加した。
図4Bは、3群のマウスの平均蛍光強度を示す。結果は、NT群のマウスの平均蛍光強度が有意に増加したが、2つのCART細胞群のマウスの蛍光強度の平均は減少したことを示し、TN-OF-19及びTN-LEU-19CART細胞の両方が、NTと比較して腫瘍の成長を阻害することができることを示している。ここで、TN-OF-19細胞は、14日後にTN-LEU-19細胞よりも腫瘍成長に対するより良好な阻害を有し、TN-LEU-19群の腫瘍成長曲線は有意に再発した。
図4Cは、2つのCART細胞群及びNT群における蛍光強度のIVISイメージングを示す。TN-OF-19CAR-T細胞は、インビボでTN-LEU-19細胞よりも良好に腫瘍細胞を阻害又は殺傷することができる。
【0223】
[実施例5]
インビボでのTN-OF-19CAR-T細胞及びCD19特異性CAR-T細胞の阻害効果の比較
1×10
6のホタルルシフェラーゼ発現Raji細胞を、尾静脈注射によって6~8週齢のNPGマウス(NOD-Cg.PrkdcSCID IL-2Rgcnull/vst)に投与した。7日後、腫瘍生着を、D-ルシフェリンのi.p.注射及び180秒間のBruker In Vivo Xtremeイメージングシステム(Bruker,Xtreme BI)での10~15分後のイメージングによって測定した。マウスを、腫瘍負荷に基づいて試験群(n=6/群)に等しく分配した。TN-OF-19(L)、TN-OF-19(M)、TN-OF-19(H)群を、尾静脈注射によって、1×10
6、2.5×10
6、及び5×10
6のCAR+T細胞で別々に処置した。1×10
6の形質導入されていないT細胞(N.T.)及び同じドナー由来の単一標的CD19特異的CAR-T細胞を対照として用いた。腫瘍成長を、注射後7、10、21日目のマウス全身平均放射輝度に基づいて評価した。
図5Aは、二重特異性TN-OF-19 CAR-T細胞が、インビボでCD19特異性CAR-T細胞よりも良好に腫瘍細胞を阻害又は死滅させることができることを示す。特に処置の初期段階において、二重特異性TN-OF-19 CAR-Tは、有意により速い阻害効果を示す。
図5Bは、4つのCAR-T細胞群及びNT群における蛍光強度のIVISイメージングを示す。
【0224】
[実施例6]
TN-OF 19CARにおけるCD20/CD19二重特異性scFVの抗原特異性
TN-OF 19CARにおける二重特異性scFvの親和性及び特異性を調べるために、インフレームでCD20 scFv(オファツムマブmAbに由来する)及びCD19 scFv(FMC63mAbに由来する)を、ウサギIgG1のFc領域と連結させることによって、キメラウサギモノクローナル抗体を作製した。CD19及びCD20 scFvを、G4Sリンカーによって交互に連結した。分子の順序はOF VL-VH-G4S-FMC63 VH-VLであり、これはTN-OF-19のscFvと同じである。一過性遺伝子導入後に293T細胞でキメラ抗体を発現させた。染色の特異性に対するこのキメラ抗体の検証をフローサイトメトリによって行った。簡潔には、3つの安定細胞株(A549-CD19、A549-CD20、A549-CD19-CD20)を標的として使用し、CD19-CD20-A549細胞及びCD19+CD20+Raji細胞を対照として使用した。全ての細胞を洗浄し、再懸濁し、2%血清で30分間ブロッキングした。5×10
5の細胞をFACSバイアルに移し、洗浄し、組換え抗体(最終濃度20μg/mL)で4℃で1時間染色した。洗浄後、二次抗体(ヤギ抗ウサギIgG)を4℃、暗所で30分間添加した。最後に、細胞を洗浄し、FACS分析のために200μLのFACS緩衝液に再懸濁した。
図6は、CD19若しくはCD20又は両方を有する細胞に結合するが、両方の抗原を欠く細胞には結合されないキメラ抗体を示し、二重特異性結合ドメインが結合のために1つのみの同族抗原を必要とし、新しい特異性認識部位は形成されなかったことを示している。
【0225】
[実施例7]
CD20特異性CARの(CD20/19二重特異性CARを作製するための)スクリーニング及び機能の検証
CD20/CD19二重特異性CARの構築前に、我々は、CD20特異性scFV候補をスクリーニングし、絞り込むための広範な研究を行った。
図7は、6つの異なるscFv及び異なるヒンジ/TM/シグナル伝達ドメインを有する16のCD20特異性CARの構造を示す。全長DNAを合成し、クローニングして、プラスミドコードの構築を達成し、我々は、これらのCARの抗腫瘍活性を様々なCD20発現標的細胞で試験した。
【0226】
図8Aは、CAR-T20.1、CAR-T20.5、CAR-T20.6、CAR-T20.7、CAR-T20.8、CAR-T20.9及びCAR-T20.10をスクリーニングするためのIFNγ放出アッセイの結果を示し、これらのCAR-Tの中で、CAR-T20.9(Leu16)及びCAR-T20.10(Leu16)のみが、より高い陽性IFNγ放出を示した。
【0227】
図8Bは、CAR-T20.1、CAR-T20.9、CAR-T20.10、CAR-T20.11、CAR-T20.12、CAR-T20.13、CAR-T20.14、CAR-T20.15及びCAR-T20.16をスクリーニングするためのIFNγ放出アッセイの結果を示す。これらのCAR-Tの中で、CAR-T20.10(Leu16)及びCAR-T20.14(OF)が、より高い陽性IFNγ放出を示した。
【0228】
図8Cは、CAR-T20.9、CAR-T20.12、CAR-T20.14、CAR-T20.17、CAR-T20.18、及びCAR-T20.19をスクリーニングするためのIFNγ放出アッセイの結果を示す。これらのCAR-Tの中で、CAR-T20.14(OF)及びCAR-T20.19(OF)は、より高い陽性IFNγ放出を示した。
【0229】
図9Aは、LDH放出アッセイによって細胞傷害性について試験した、CAR-T20.17(Leu16の第3世代)、CAR-T20.18(Leu16の第2世代)、CAR-T20.19(OFの第2世代)細胞の結果を示す。標的細胞は、CD20陽性細胞株Raji及びRamos、並びにCD20陰性Molt4である。3つ全てのCD20 CAR-T細胞は、CD20陽性腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導し、LDHを放出することができ、CAR-T20.17、CAR-T20.18、及びCAR-T20.19が、標的細胞CD20陽性Raji及びRomas細胞に対して強力な殺傷効果を有したことを示している。
【0230】
図9Bは、NSGマウス研究における腫瘍成長のインビボ阻害を示す。動物に注射した腫瘍細胞は、ルシフェラーゼを発現するRajiである。この実験では、腫瘍細胞Rajiを注射し、マウスにおいて1週間成長させ、次いで、エフェクターT細胞を尾静脈を通して注射し、次いで、マウスの蛍光強度(IVIS蛍光イメージングによる)及びマウスの体重を7日ごとに記録した。実験を21日目に中止し、統計結果を分析した。結果は、CAR-T20.19(OF)細胞が、14日後に、CAR-T20.17(Leu16)及びCAR-T201.8(Leu16)細胞よりも腫瘍成長に対する良好な阻害を有することを示す。
【0231】
実施例7(
図7~9)の要約では、多数の実験及び比較を通して、20.1、20.2、20.4、20.5、20.6、20.7、20.8及び20.15は基本的に無効であり、20.11、20.12及び20.13は特定の効果を有するが、それらの効果は20.9、20.10、20.14、20.16、20.17、20.18及び20.19の効果よりも小さく、20.19(OF)の効果が最良であることが見出された。上記の構造に基づいて、CD20 scFv(OF)及びCD19 scFv(FMC63)を、新しい二重特異性キメラ抗原受容体TN-OF-19においてタンデムに使用し、更なる分析のための最良の候補と見なした。
【0232】
実施例7に関与するCD20特異性CARのアミノ酸配列を表1に示す。
【表3】
【0233】
[実施例8]
TN-OF-19 CAR-T細胞の第I相臨床試験
第I相試験を、Shanghai Tongji Hospitalにおいて、r/r NHL患者で実施して、C-CAR039(すなわち、TN-OF-19CAR-T細胞、NCT04317885)の安全性及び有効性を評価した。T細胞を採取するためのアフェレーシスの後、C-CAR039を製造し、標準的な3日間のシクロホスファミド/フルダラビン移植前処置後に単回静脈内投与として注入した。C-CAR039を、18日間の静脈間(vein to vein)時間中央値を有する、無血清、半自動化デジタル閉鎖システムで製造した。製造成功率は100%であった。2020年8月3日現在、16名の患者に、1.0×10
6~5.0×10
6のCAR-T細胞/kgの用量範囲でC-CAR039を注入した。14名の患者は、少なくとも1ヶ月の評価可能な安全性データを有し、13名の患者(DLBCL患者11名、FL患者2名)は、1ヶ月以上の有効性データを有していた。
図10は、CAR039r/r NHL研究設計及びフローチャートを示す。
【0234】
投与された患者の年齢の中央値は58.5歳(範囲:28~71歳)であった。前治療のライン数中央値は2であった(範囲:2~5回の前治療)。3名(21%)の患者が以前に自家幹細胞移植(ASCT)を受けていた。
【表4】
【表5】
【0235】
C-CAR039治療は、グレード3以上のCRSがなく、神経細胞毒性事象もなく、良好に許容された。可逆的グレード1~2のCRSが患者のうち9名(82%)で観察された。移植前処置による血球減少症は一般的であり、可逆的であった。
【0236】
1ヶ月の評価では、12/13の患者が臨床的改善を示し(ORR=92%)、DLBCL患者の11/11が治療に応答した(ORR=100%)。追跡期間中央値は70日(範囲:35~257日)であった。最良総合効果(BOR)には、10例の完全奏効(CR)及び2例の部分応答(PR)が含まれる。
【0237】
【0238】
図12は、C-CAR039治療前後の患者の例を示す。
【0239】
[実施例9]
C-CAR039のPKプロファイル
末梢血におけるC-CAR039の増殖及び拡大は、腫瘍退縮と正の相関があった。C-CAR039 AUC(0~28日)及びCmaxと臨床応答との間の相関の正の初期傾向が観察される。
【0240】
図13は、患者の血液におけるC-CAR039の増殖及び拡大を示す。結果は、C-CAR008細胞が注射後に効果的に増殖したことを示した。
【表6】
【0241】
末梢血におけるC-CAR039の増殖及び拡大は、腫瘍退縮と正の相関があった。C-CAR039 AUC(0~28日)及びCmaxと臨床応答との間の相関の正の初期傾向が観察される。
【表7】
【表8】
【0242】
C-CAR039は、r/r NHL患者の初期臨床試験において有望な有効性及び好ましい安全性プロファイルを示す。初期の臨床的有効性シグナルは有望であり、抗CD19CAR-T療法と好都合に比較される。これらの所見は、安全性、有効性及び奏効期間を確認するために、より長い追跡期間でより多くの患者において評価する必要がある。
【0243】
[実施例10]
C-CAR066(すなわち、CAR-T20.19(OF))の第I相臨床試験
CD19標的化エピトープの喪失による再発は、CD19 CAR-T療法の治療上の課題を提示する。これらの患者は、一般に予後不良である。CD20は、B細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)のための証明された治療標的であり、以前に承認され、広く使用されているモノクローナル抗体療法によって支持されている。C-CAR066は、新規な第2世代キメラ抗原受容体T(CAR-T)療法である。前臨床研究は、C-CAR066(オファツムマブのscFVに由来する)が、Leu16、リツキシマブ、及びオビヌツズマブのscFVに由来するCAR-Tと比較して優れた抗腫瘍活性を有することを示唆する。
【0244】
NCT04036019は、抗CD19 CAR-T療法で以前に治療されたr/r B細胞リンパ腫を有する対象におけるC-CAR066の安全性及び有効性を評価するための単一群、単施設、非ランダム化第I相臨床試験である。この試験の主な目的は、治療下で発現する有害事象の発生率及び重症度を評価することである。第2の目的は、全奏効率(ORR)、PFS、及びOSを決定することを含む。C-CAR066は、無血清半自動化デジタル閉鎖系で製造される。C-CAR066は、標準的な3日間のシクロホスファミド/フルダラビン移植前処置後に、単回静脈内用量として患者に投与される。
【0245】
図14は、C-CAR066-NHL試験設計を示す。
【0246】
2020年8月3日現在、7名の患者(全てDLBCL)が登録され、2.0×10
6~5.0×10
6のCAR-T細胞の用量範囲を有するC-CAR039が注入された。製造成功率は100%であった。全ての患者が抗CD19 CAR-T治療後に再発し、患者のうちの1名のみが抗CD19 CAR-T療法後にCRを達成した。
【表9】
【0247】
C-CAR066治療は、6名の患者において可逆的なグレード1~2のCRS、別の患者においてグレード3のCRSで良好に許容され、神経細胞毒性事象はなかった。6/7の患者が臨床的改善を示した(最良総合効果率、ORR=85.7%)。最良総合効果には、3CR及び3PRが含まれる。全ての患者がC-CAR066処置に応答し、異なる程度の腫瘍退縮(45~100%)を示した。
【表10】
【0248】
6/7の患者が臨床的改善を示した(最良総合効果率、ORR=85.7%)。最良総合効果には、3CR及び3PRが含まれる。全ての患者がC-CAR066処置に応答し、異なる程度の腫瘍退縮(45~100%)を示した。
【表11】
【0249】
図15は、C-CAR066による治療の前後の患者のPET-CTの一例を示す。
【0250】
C-CAR066は好ましい安全性プロファイルを有し、CD19 CAR-T療法後のr/r NHL患者において有望な初期有効性を示す。これは、C-CAR066が抗CD-19 CAR-T療法と比較して異なる作用機序を有することを示す。CD20及びCD19腫瘍抗原の両方を標的化することにより、B細胞悪性腫瘍患者においてCD19又はCD20のいずれかを単独で標的化するよりも優れた臨床的利益を導くことができる。
【0251】
本出願で言及される全ての文献は、あたかもそれぞれが個別に参照により組み込まれるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。更に、本発明の上記の教示を読んだ後、当業者は様々な変更又は修正を行うことができ、その同等物は添付の特許請求の範囲に定義される特許請求の範囲に含まれることも理解されるべきである。
【配列表】