(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】低温冷却機用途で使用するための伝熱流体
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20250124BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
C09K5/04 D ZAB
F25B1/00 396Z
(21)【出願番号】P 2022525159
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(86)【国際出願番号】 US2020057446
(87)【国際公開番号】W WO2021086804
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-08-15
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハリソン ケー.ムシミ
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド ウー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル アール.フレイザー
(72)【発明者】
【氏名】ルーク デイビッド シモーニ
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-520224(JP,A)
【文献】特表2007-517974(JP,A)
【文献】特表2012-515320(JP,A)
【文献】特開平11-279097(JP,A)
【文献】特開2019-023558(JP,A)
【文献】特表2013-535529(JP,A)
【文献】特表2003-526906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00- 5/20
F25B 1/00- 7/00
C10M101/00-177/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(i)60~80重量パーセントのメチルペルフルオロヘプテンエーテルと、
(ii)
40~20重量パーセントのHFE-7200と、
を含む、組成物。
【請求項2】
冷却を生じさせるためのプロセスであって、請求項1に記載の組成物を凝縮させることと、その後、冷却される物体の近傍で前記組成物を蒸発させることと、を含む、プロセス。
【請求項3】
冷却を生じさせるための方法であって、冷却される物体の近傍で請求項1に記載の組成物を含む伝熱流体を循環させることを含み、前記伝熱流体は、前記冷却される物体の近傍から熱を除去したり、熱を加えたり、又は温度を維持したりする作動流体である、方法。
【請求項4】
冷却流体分配ユニット、冷蔵システム、又はヒートポンプシステムにおいて、伝熱流体を代替する方法であって、前記伝熱流体の代替品として、請求項1に記載の組成物を提供することを含む、方法。
【請求項5】
前記代替組成物は、前記伝熱流体と比較して、前記冷蔵又はヒートポンプシステムの動作温度範囲を増加させる、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物を含む、冷蔵システム。
【請求項7】
前記組成物は、-135℃~110℃の温度で作動流体としての使用に好適である、
請求項6に記載の冷蔵システム。
【請求項8】
前記システムは、前記組成物を含む冷却機を備える、
請求項7に記載の冷蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、冷蔵及び伝熱用途で使用するための組成物(例えば、伝熱流体)に関する。本発明の組成物は、冷却及び加熱を生じさせる方法、並びに冷媒を代替する方法、並びに冷蔵、空調、及びヒートポンプ装置において有用である。
【背景技術】
【0002】
今日の半導体製造プロセス、パワーエレクトロニクス、パワーアビオニクス、及びコンピューティングデータセンターの多くは、長期間にわたって最適な性能を維持するために、高度な伝熱流体を望む。ペルフルオロカーボン(PFC)は、優れた安全及び健康特性、誘電特性、及び広い動作温度範囲のそれらの組み合わせにより、伝熱用途で首尾よく使用されてきた。しかしながら、PFCの大気寿命は、数百年から10,000年超の範囲であり、強力な温室効果ガスであり、例示的なGWPが8,600を超える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本出願は、とりわけ、
(i)アルキルペルフルオロアルケンエーテル及び第1のハイドロフルオロエーテルから選択される化合物と、
(ii)第2のハイドロフルオロエーテル、ペルフルオロカーボン、及びペルフルオロポリエーテルから選択される化合物と、を含む、組成物を提供する。
【0004】
本出願は、本明細書で提供される組成物を凝縮させることと、その後、冷却される物体の近傍で当該組成物を蒸発させることと、を含む、冷却を生じさせるためのプロセスを更に提供する。
【0005】
本出願は、本明細書で提供される組成物を伝熱流体として使用する方法であって、伝熱流体は、冷却又は加熱される物体の近傍から熱を除去したり、熱を加えたり、又は温度を維持したりする作動流体である、方法を更に提供する。
【0006】
本出願は、冷却流体分配ユニット、冷蔵システム、又はヒートポンプシステムにおいて、伝熱流体を代替する方法であって、当該伝熱流体の代替品として、本明細書で提供される組成物を提供することを含む、方法を更に提供する。
【0007】
本出願は、本明細書で提供される組成物を含む、冷蔵システム(例えば、超低温冷蔵又は冷却機システム)を更に提供する。
【0008】
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本発明で使用するための方法及び材料が本明細書に記載されており、また、当該技術分野において既知の他の好適な方法及び材料を使用してもよい。材料、方法、及び実施例は、単なる例示であり、限定することを意図するものではない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、シーケンス、データベースエントリ、及び他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾が生じた場合には、定義を含め、本明細書が優先される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】混合物の組成範囲全体にわたる、70重量%のMPHE/30重量%のHFE-7200のブレンドの計算された固液平衡を示す。
【
図2】純粋なMPHEと、70重量%のMPHE/30重量%のHFE-7200のブレンドとの絶対粘度の比較を示す。
【
図3】組成範囲全体にわたる、MPHE及びVertrel(商標)XFのブレンドの計算された固液平衡を示す。
【
図4】組成範囲全体にわたる、MPHE及びDR CFX70のブレンドの計算された固液平衡を示す。
【
図5】混合物の組成範囲全体にわたる、HFE-7500/HFE-7000のブレンドの計算された固液平衡を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
最近の環境問題及び政府の規制は、地球温暖化の緩和に焦点を当てている(世界的な規則、EU/カナダでのFガス規制、及び米国でのSNAP規制)。世界市場の需要に応じて、メチルペルフルオロヘプテンエーテル(MPHE)が開発され、GPW(100年ITH)は2.5と低く、ODPはゼロであると示される。MPHEは、PFCと同様であるが、有意に低いGPWを有するアプリケーションプロファイルを示す。
【0011】
冷却機伝熱流体(heat transfer fluid、HFT)又は循環流体は、冷却機の冷蔵回路を介して、熱を除去したり、熱を加えたり、又は温度を維持したりし得る。最近の高度な冷却機開発は、自動車、エネルギー、化学処理、及び半導体製造産業におけるツーリングを処理するための超低温での動作に移行している。超低温冷却機の場合、動作温度は、例えば、-80℃~+60℃であり得る。また、そのような超低温システムでは、-95℃を下回る温度で(例えば、-80°の温度を一定に維持するために)、伝熱、誘電、及び流体の特性を維持しながら、伝熱流体が圧送可能(例えば、約10cSt以下の粘度)である必要もあり得る。
【0012】
MPHEの外挿された凍結点が-94℃で推定されるが、実験データは、MPHEの第1の「固体」が-87°で現れることを示している。追加のデータはまた、MPHEが「凍結」され、冷却機冷媒温度設定点が-85℃を下回るときのその伝熱特性を低減することを示し、したがって、単相冷却機伝熱流体として使用不可能である。3M(商標)Novec(商標)HFE-7200(沸点:76℃)などの代替伝熱流体は、冷却機が広い温度範囲(≧70℃)にわたって動作すると予想されるため、低沸点による過剰な流体損失をもたらし得る。
【0013】
例示的な超低温冷蔵回路では、冷却機の冷蔵サイクルは、蒸発器/熱交換器に入る低圧液体で始まる。蒸発器では、伝熱流体からの熱は、冷媒を沸騰させ、冷媒を低圧液体から低圧気体に変化させ、低圧気体は、圧縮機に入り、高圧気体に圧縮される。高圧気体は、凝縮器に入り、周囲空気又は冷却水が熱を除去して、高圧気体を高圧液体に冷却する。高圧液体は膨張バルブに移動し、伝熱流体温度が設定温度よりも高くなると、膨張バルブを開放して、より低い温度で冷媒を熱交換器に導入する。これにより、伝熱流体は所望の温度に冷却される。超低温冷蔵回路は、例えば、以下の用途において有用であり得る。
・半導体製造-エッチング、リソグラフィ、洗浄、ダイシング、コーティング、及び/又は試験設備の温度を維持する際に使用する。
・医療用途-医療用撮像器具(例えば、X線イメージング、磁気共鳴イメージング(MRI)など)、及び/又は血液若しくは他の生物学的サンプル若しくは組織の保存設備の温度を維持する際に使用する。
・機械ツーリング用途-ワイヤ切断、プラズマ溶接、レーザー加工などの温度を維持する際に使用する。
・分析設備用途-電子顕微鏡(例えば、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡など)、ガスクロマトグラフ(GC)、X線分析器具などの温度を維持する際に使用する。
【0014】
本出願は、広い温度範囲にわたって伝熱流体として有用であり得、本明細書に記載の超低温冷蔵用途において特に有用であり得る、新しい組成物を提供する。
【0015】
定義及び略語
本明細書で使用するとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、これらの要素に必ずしも限定されるものではなく、そのようなプロセス、方法、物品、又は装置に対して明示的に記載されていない、又はこれらに固有のものではない、他の要素も含む場合がある。更に、明示的にこれに反する記載がない限り、「又は」は、包括的な「又は」を指し、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下、すなわち、Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)のいずれか1つにより満たされる。
【0016】
本明細書で使用するとき、「から本質的になる」は、これらの追加的に含まれる材料、工程、特徴、成分、又は要素が、特許請求される発明の基本的及び新規の特徴(複数可)、特に本発明のプロセスのいずれかの所望の結果を達成するための作用機序に実質的に影響を及ぼさないことを条件に、文字どおり開示されているものに加えて、材料、工程、特徴、成分、又は要素を含む、組成物、方法を定義するために使用される。「から本質的になる(consists essentially of)」又は「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、「含む」と「からなる」との間の中間の立場をとる。
【0017】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載された要素及び成分を説明するために用いられる。これは、単に便宜上なされるものであり、本発明の範囲の全般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0018】
本明細書で使用するとき、「約」という用語は、実験誤差による変動(例えば、示された値のプラスマイナス約10%)を考慮することを意味する。本明細書で報告される全ての測定値は、特に明記しない限り、「約」という用語が明示的に使用されているか否かに関わらず、「約」という用語によって修飾されているものと理解される。
【0019】
量、濃度、又は他の値若しくはパラメータが、ある範囲、好ましい範囲、又は好ましい上方値及び/若しくは好ましい下方値のリストのいずれかとして与えられている場合に、これらは、範囲が別個に開示されているかに関わらず、任意の範囲上限値又は好ましい上方値及び任意の範囲下限値又は好ましい下方値の任意の対から形成される全ての範囲を、具体的に開示するものとして、理解されるものとする。本明細書に数値範囲が記述されている場合、特に指示しない限り、この範囲は、その端点を包含し、かつその範囲内の全ての整数及び分数を包含することが意図される。
【0020】
地球温暖化係数(global warming potential、GWP)は、1キログラムの二酸化炭素の排出と比較して、1キログラムの特定の温室効果ガスの大気排出に起因する相対的な地球温暖化への寄与を推定するための指数である。GWPは、様々な対象期間について計算することができ、所与のガスの大気寿命の影響を示す。100年間を対象期間とするGWPが、通常は参照される値である。
【0021】
本明細書で使用するとき、「オゾン層破壊係数(ODP)」という用語は、「The Scientific Assessment of Ozone Depletion,2002,A report of the World Meteorological Association’s Global Ozone Research and Monitoring Project」のセクション1.4.4、ページ1.28~1.31で定義されている(このセクションの最初の段落を参照)。ODPは、フルオロトリクロロメタン(CFC-11)に対して質量対質量基準で、化合物から予想される成層圏オゾン層破壊の度合いを表す。
【0022】
冷蔵容量(冷却容量と称されることもある)は、循環する冷媒又は作動流体の単位質量当たりの、蒸発器中の冷媒又は作動流体のエンタルピーの変化を定義する用語である。体積冷却容量は、蒸発器を出る冷媒蒸気の単位体積当たりの、蒸発器中の冷媒又は作動流体によって除去された熱の量を指す。冷蔵容量は、冷媒、作動流体、又は熱伝達組成物の冷却を生じさせる能力の尺度である。したがって、作動流体の体積冷却容量が高いほど、所与の圧縮機で達成可能な最大体積流量で蒸発器において得ることができる冷却速度が大きくなる。冷却速度は、蒸発器内の冷媒によって除去される単位時間当たりの熱を指す。
【0023】
同様に、体積加熱容量は、圧縮機に入る冷媒又は作動流体蒸気の単位体積当たりの、凝縮器中の冷媒又は作動流体によって供給される熱の量を定義する用語である。冷媒又は作動流体の体積加熱容量が高いほど、所定の圧縮機で達成可能な最大体積流量で凝縮器において得られる加熱速度が大きくなる。
【0024】
性能係数(coefficient of performance、COP)は、圧縮機を動作させるのに必要なエネルギーで割った、蒸発器で除去された熱の量である。COPが高いほど、エネルギー効率が高くなる。COPは、エネルギー効率比(energy efficiency ratio、EER)、すなわち特定の組の内部温度及び外部温度での冷蔵又は空調設備についての効率評定に直接的に関連する。
【0025】
本明細書で使用するとき、伝熱媒体は、熱源からヒートシンクまで熱を運ぶために使用される組成物を含む。例えば、冷却される物体から冷却機蒸発器への、又は冷却機凝縮器から冷却塔への、若しくは熱が周囲に放出され得る他の構成への熱。
【0026】
本明細書で使用するとき、作動流体又は冷媒は、あるサイクルで熱を伝達するように機能する化合物又は化合物の混合物(例えば、本明細書で提供される組成物)を含み、作動流体は、繰り返しサイクルで液体から気体に、そして液体に戻るという相変化を経る。
【0027】
過冷却は、液体が、その液体の所定の圧力での飽和点を下回る温度に低下することである。飽和点は、蒸気組成物が完全に液体に凝縮される温度である(泡立ち点とも称される)。しかし、過冷却は、所与の圧力において、液体をより低温の液体に冷却し続ける。液体を、飽和温度を下回る温度に冷却することで、正味冷蔵容量が上昇し得る。それにより、過冷却によりシステムの冷蔵能力及びエネルギー効率が向上する。過冷却量は、飽和温度未満の冷却の量(度単位)、又は液体組成物がその飽和温度をどれだけ下回って冷却されるかである。
【0028】
「過熱」という用語は、蒸気組成物が、蒸気組成物の飽和蒸気温度をどれだけ上回って加熱されるかを定義する。飽和蒸気温度は、蒸気組成物が冷却される場合に、最初に液滴が形成される温度であり、「露点」とも称される。
【0029】
本明細書で使用するとき、「実質的に含まない」という用語は、約1%未満、例えば、約0.5%未満、約0.25%未満、約0.1%未満、約0.01%未満、約0.001%未満、約0.0001%未満、約0.00001%未満などを指す。
【0030】
化学物質、略語、及び頭字語
CAP:冷却(又は加熱)容量
COP:性能係数
cSt(又はCSt):センチストークス
DR CFX70:テトラデカフルオロヘプテン(沸点:71.5℃;MW:350g/mol)
FC77又はFluorinert(商標)Electronic Liquid FC-77:熱的に安定した、完全にフッ素化された液体(主に8つの炭素の化合物、3Mから市販)。
GWP:地球温暖化係数
HFE:ハイドロフルオロエーテル
HFE-7000:1-メトキシヘプタフルオロプロパン
HFE-7100:メチルノナフルオロブチルエーテル及びメチルノンフルオロイソブチルエーテルの混合物
HFE-7200又はHFE-569mccc:1-エトキシペルフルオロブタン及び1-エトキシペルフルオロ-イソブタンの混合物
HFE-7500:2-(トリフルオロメチル)-3-エトキシドデカフルオロヘキサン
HFT:伝熱流体
HT110又はGalden(登録商標)HT-110:1-プロペン1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-酸化重合
MPHE:メチルペルフルオロヘプテンエーテル
ODP:オゾン層破壊係数
PFC:ペルフルオロカーボン
PFPE:ペルフルオロポリエーテル
Vertrel(商標)XF又はHFC-43-10mee:1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン
重量%:重量パーセント
【0031】
組成物
本出願は、
(i)アルキルペルフルオロアルケンエーテル及び第1のハイドロフルオロエーテルから選択される化合物と、
(ii)第2のハイドロフルオロエーテル、ペルフルオロカーボン、及びペルフルオロポリエーテルから選択される化合物と、を含む、組成物を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態では、組成物は、約10cSt以下、例えば、約9cSt以下、約8cSt以下、約7cSt以下、約6cSt以下、約5cSt以下、約4cSt以下、約3cSt以下、約2cSt以下、又は約1cSt以下の最大動粘度を示す。いくつかの実施形態では、組成物は、約6cSt以下の最大動粘度を示す。
【0033】
いくつかの実施形態では、組成物は、約-90℃~約-100℃の温度で、約10cSt以下、例えば、約-90℃~約-100℃の温度で、約8cSt以下、約6cSt以下、約4cSt以下、約2cSt以下、又は約1cSt以下の最大動粘度を示す。いくつかの実施形態では、組成物は、約-90℃~約-100℃の温度で、約6cSt以下の最大動粘度を示す。
【0034】
いくつかの実施形態では、組成物は、約0.1cSt~約10cSt、例えば、約0.1cSt~約8cSt、約0.1cSt~約6cSt、約0.1cSt~約4cSt、約0.1cSt~約2cSt、約0.1cSt~約1cSt、約1cSt~約10cSt、約1cSt~約8cSt、約1cSt~約6cSt、約1cSt~約4cSt、約1cSt~約2cSt、約2cSt~約10cSt、約2cSt~約8cSt、約2cSt~約6cSt、約2cSt~約4cSt、約4cSt~約10cSt、約4cSt~約8cSt、約4cSt~約6cSt、約6cSt~約10cSt、約6cSt~約8cSt、又は約8cSt~約10cStの最大動粘度を示す。
【0035】
いくつかの実施形態では、組成物は、約-90℃~約-100℃の温度で、約0.1cSt~約10cSt、例えば、約-90℃~約-100℃の温度で、約0.1cSt~約8cSt、約0.1cSt~約6cSt、約0.1cSt~約4cSt、約0.1cSt~約2cSt、約0.1cSt~約1cSt、約1cSt~約10cSt、約1cSt~約8cSt、約1cSt~約6cSt、約1cSt~約4cSt、約1cSt~約2cSt、約2cSt~約10cSt、約2cSt~約8cSt、約2cSt~約6cSt、約2cSt~約4cSt、約4cSt~約10cSt、約4cSt~約8cSt、約4cSt~約6cSt、約6cSt~約10cSt、約6cSt~約8cSt、又は約8cSt~約10cStの最大動粘度を示す。
【0036】
いくつかの実施形態では、組成物は、不燃性である。
【0037】
いくつかの実施形態では、組成物は、約15~約95重量パーセントのアルキルペルフルオロアルケンエーテル、例えば、約15~約90重量パーセント、約15~約80重量パーセント、約15~約70重量パーセント、約15~約60重量パーセント、約15~約50重量パーセント、約15~約40重量パーセント、約15~約30重量パーセント、約15~約20重量パーセント、約20~約95重量パーセント、約20~約90重量パーセント、約20~約80重量パーセント、約20~約70重量パーセント、約20~約60重量パーセント、約20~約50重量パーセント、約20~約40重量パーセント、約20~約30重量パーセント、約30~約95重量パーセント、約30~約90重量パーセント、約30~約80重量パーセント、約30~約70重量パーセント、約30~約60重量パーセント、約30~約50重量パーセント、約30~約40重量パーセント、約40~約95重量パーセント、約40~約90重量パーセント、約40~約80重量パーセント、約40~約70重量パーセント、約40~約60重量パーセント、約40~約50重量パーセント、約50~約95重量パーセント、約50~約90重量パーセント、約50~約80重量パーセント、約50~約70重量パーセント、約50~約60重量パーセント、約60~約95重量パーセント、約60~約90重量パーセント、約60~約80重量パーセント、約60~約70重量パーセント、約70~約95重量パーセント、約70~約90重量パーセント、約70~約80重量パーセント、約80~約95重量パーセント、約80~約90重量パーセント、又は約90~約95重量パーセントのアルキルペルフルオロアルケンエーテルを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約60~約90重量パーセントのアルキルペルフルオロアルケンエーテルを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約60~約80重量パーセントのアルキルペルフルオロアルケンエーテルを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約65~約75重量パーセントのアルキルペルフルオロアルケンエーテルを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約70重量パーセントのアルキルペルフルオロアルケンエーテルを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約5~約15重量パーセントのアルキルペルフルオロアルケンエーテルを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約10重量パーセントのアルキルペルフルオロアルケンエーテルを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、アルキルペルフルオロアルケンエーテルは、メチルペルフルオロヘプテンエーテルである。いくつかの実施形態では、メチルペルフルオロヘプテンエーテルは、2つ以上の構造及び/又は立体異性体の混合物を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、メチルペルフルオロヘプテンエーテルは、約48~約52重量パーセントの5-メトキシペルフルオロ-3-ヘプテン、約18~約22重量パーセントの3-メトキシペルフルオロ-3-ヘプテン、約18~約22重量パーセントの4-メトキシペルフルオロ-2-ヘプテン、及び約6~約10重量パーセントの4-メトキシペルフルオロ-3-ヘプテンの混合物を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、メチルペルフルオロヘプテンエーテルは、約50重量パーセントの5-メトキシペルフルオロ-3-ヘプテン、約20重量パーセントの3-メトキシペルフルオロ-3-ヘプテン、約20重量パーセントの4-メトキシペルフルオロ-2-ヘプテン、及び約8重量パーセントの4-メトキシペルフルオロ-3-ヘプテンの混合物を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、メチルペルフルオロヘプテンエーテルは、約48~約52重量パーセントの5-メトキシ(E)-ペルフルオロ-3-ヘプテン、約12~約16重量%の3-メトキシ(E)-ペルフルオロ-3-ヘプテン、約4~約8重量パーセントの3-メトキシ(Z)-ペルフルオロ-3-ヘプテン、約18~約22重量パーセントの4-メトキシ(E)-ペルフルオロ-2-ヘプテン、約1~約3重量パーセントの4-メトキシ(Z)-ペルフルオロ-3-ヘプテン、及び約4~約8重量パーセントの4-メトキシ(E)-ペルフルオロ-3-ヘプテンの混合物を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、メチルペルフルオロヘプテンエーテルは、約50重量パーセントの5-メトキシ(E)-ペルフルオロ-3-ヘプテン、約14重量%の3-メトキシ(E)-ペルフルオロ-3-ヘプテン、約6重量パーセントの3-メトキシ(Z)-ペルフルオロ-3-ヘプテン、約20重量パーセントの4-メトキシ(E)-ペルフルオロ-2-ヘプテン、約2重量パーセントの4-メトキシ(Z)-ペルフルオロ-3-ヘプテン、及び約6重量パーセントの4-メトキシ(E)-ペルフルオロ-3-ヘプテンの混合物を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、組成物は、
(i)アルキルペルフルオロアルケンエーテルと、
(ii)第2のハイドロフルオロエーテル、ペルフルオロカーボン、及びペルフルオロポリエーテルから選択される化合物と、を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、組成物は、アルキルペルフルオロアルケンエーテルと、第2のハイドロフルオロエーテルと、を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、メチルペルフルオロヘプテンエーテルと、第2のハイドロフルオロエーテルと、を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、組成物は、約5~約85重量パーセントの第2のハイドロフルオロエーテル、例えば、約5~約80重量パーセント、約5~約70重量パーセント、約5~約60重量パーセント、約5~約50重量パーセント、約5~約40重量パーセント、約5~約30重量パーセント、約5~約20重量パーセント、約5~約10重量パーセント、約10~約85重量パーセント、約10~約80重量パーセント、約10~約70重量パーセント、約10~約60重量パーセント、約10~約50重量パーセント、約10~約40重量パーセント、約10~約30重量パーセント、約10~約20重量パーセント、約20~約85重量パーセント、約20~約80重量パーセント、約20~約70重量パーセント、約20~約60重量パーセント、約20~約50重量パーセント、約20~約40重量パーセント、約20~約30重量パーセント、約30~約85重量パーセント、約30~約80重量パーセント、約30~約70重量パーセント、約30~約60重量パーセント、約30~約50重量パーセント、約30~約40重量パーセント、約40~約85重量パーセント、約40~約80重量パーセント、約40~約70重量パーセント、約40~約60重量パーセント、約40~約50重量パーセント、約50~約85重量パーセント、約50~約80重量パーセント、約50~約70重量パーセント、約50~約60重量パーセント、約60~約85重量パーセント、約60~約80重量パーセント、約60~約70重量パーセント、約70~約85重量パーセント、約70~約80重量パーセント、又は約80~約85重量パーセントの第2のハイドロフルオロエーテルを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、組成物は、約10~約40重量パーセントの第2のハイドロフルオロエーテルを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約20~約40重量パーセントの第2のハイドロフルオロエーテルを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約25~約35重量パーセントの第2のハイドロフルオロエーテルを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約30重量パーセントの第2のハイドロフルオロエーテルを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、第2のハイドロフルオロエーテルは、HFE-7000、HFE-7100、HFE-7200、及びHFE-7500から選択される。いくつかの実施形態では、第2のハイドロフルオロエーテルは、HFE-7000である。いくつかの実施形態では、第2のハイドロフルオロエーテルは、HFE-7100である。いくつかの実施形態では、第2のハイドロフルオロエーテルは、HFE-7200である。いくつかの実施形態では、第2のハイドロフルオロエーテルは、HFE-7500である。
【0048】
いくつかの実施形態では、組成物は、メチルペルフルオロヘプテンエーテルと、HFE-7200と、を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約60~約80重量パーセントのメチルペルフルオロヘプテンエーテルと、約40~約20重量パーセントのHFE-7200と、を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約65~約75重量パーセントのメチルペルフルオロヘプテンエーテルと、約35~約25重量パーセントのHFE-7200と、を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約70重量パーセントのメチルペルフルオロヘプテンエーテルと、約30重量パーセントのHFE-7200と、を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、組成物は、アルキルペルフルオロアルケンエーテルと、ペルフルオロカーボンと、を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、メチルペルフルオロヘプテンエーテルと、ペルフルオロカーボンと、を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、組成物は、約15~約5重量パーセントのペルフルオロカーボン、例えば、約15~約10又は約10~約5重量パーセントのペルフルオロカーボンを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約10重量パーセントのペルフルオロカーボンを含む。いくつかの実施形態では、ペルフルオロカーボンは、FC77である。
【0051】
本明細書で使用するとき、「FC77」は、Fluorinert(商標)Electronic Liquid FC-77を指し、これは、3Mから市販されており、当事者によって容易に理解されるであろう。FC77の物理的特性を以下に提供する。追加情報は、例えば、3Mの製品情報シートに見出すことができ、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
【0053】
いくつかの実施形態では、組成物は、約85~約95重量パーセントのメチルペルフルオロヘプテンエーテルと、約15~約5重量パーセントのFC77と、を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約90重量パーセントのメチルペルフルオロヘプテンエーテルと、約10重量パーセントのFC77と、を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、組成物は、アルキルペルフルオロアルケンエーテルと、ペルフルオロポリエーテルと、を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、メチルペルフルオロヘプテンエーテルと、ペルフルオロポリエーテルと、を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、組成物は、約15~約5重量%のペルフルオロポリエーテル、例えば、約15~約10又は約10~約5重量%のペルフルオロポリエーテルを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約10重量パーセントのペルフルオロポリエーテルを含む。いくつかの実施形態では、ペルフルオロポリエーテルは、HT110である。
【0056】
本明細書で使用するとき、「HT110」は、Galden(登録商標)HT-110(1-プロペン1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-酸化重合)を指し、これは、Solvayから市販されており、当事者によって容易に理解されるであろう。HT110の物理的特性を以下に提供する。
【0057】
【0058】
いくつかの実施形態では、組成物は、約85~約95重量パーセントのメチルペルフルオロヘプテンエーテルと、約15~約5重量パーセントのHT110と、を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約90重量パーセントのメチルペルフルオロヘプテンエーテルと、約10重量パーセントのHT110と、を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、組成物は、
(i)第1のハイドロフルオロエーテルと、
(ii)第2のハイドロフルオロエーテルと、を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、組成物は、約70~約90重量%の第1のハイドロフルオロエーテル、例えば、約70~約85、約70~約80、約70~約75、約75~約90、約75~約85、約75~約80、約80~約90、約80~約85、又は約85~約90重量%の第1のハイドロフルオロエーテルを含む。いくつかの実施形態では、第1のハイドロフルオロエーテルは、HFE-7500である。
【0061】
いくつかの実施形態では、組成物は、約30~約10重量パーセントの第2のハイドロフルオロエーテル、例えば、約30~約15、約30~約20、約30~約25、約25~約10、約25~約15,約25~約20、約20~約10、約20~約15、又は約15~約10重量パーセントの第2のハイドロフルオロエーテルを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、組成物は、約70~約90重量パーセントの第1のハイドロフルオロエーテルと、約30~約10重量パーセントの第2のハイドロフルオロエーテルと、を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約80重量パーセントの第1のハイドロフルオロエーテルと、約20重量パーセントの第2のハイドロフルオロエーテルと、を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、組成物は、約70~約90重量パーセントのHFE-7500と、約30~約10重量パーセントの第2のハイドロフルオロエーテルと、を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約80重量パーセントのHFE-7500と、約20重量パーセントの第2のハイドロフルオロエーテルと、を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、第2のハイドロフルオロエーテルは、HFE-7000、HFE-7100、及びHFE-7200から選択される。いくつかの実施形態では、第2のハイドロフルオロエーテルは、HFE-7000である。いくつかの実施形態では、第2のハイドロフルオロエーテルは、HFE-7100である。いくつかの実施形態では、第2のハイドロフルオロエーテルは、HFE-7200である。
【0065】
使用方法
本明細書で提供される組成物は、熱源からヒートシンクに熱を運ぶために使用される作動流体として作用することができる。そのような熱伝達組成物はまた、流体が相転移するサイクルにおける冷媒、すなわち、液体から気体に、若しくはその逆に相転移するサイクルにおける冷媒としても、又は単相作動流体として(例えば、冷却機伝熱流体(HFT)又は循環流体として)も、有用であり得る。伝熱システムの例としては、空調機、冷凍庫、冷蔵庫、ヒートポンプ、冷水機、満液式蒸発器冷却機、直接膨張冷却機、ウォークインクーラ、高温ヒートポンプ、移動式冷蔵庫、移動式空調ユニット、浸漬冷却システム、データセンタ冷却システム、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な伝熱システムは、単相伝熱に有用な構成要素を含み得ることが理解される。したがって、本出願は、本明細書で提供される組成物を含む、本明細書に記載される伝熱システム(例えば、伝熱装置)を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、伝熱システム内の作動流体又は伝熱流体(例えば、冷蔵又は加熱用途のための作動流体)として有用である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、高温ヒートポンプ(例えば、約50℃超の温度で動作する熱交換器を含むヒートポンプ)を備える、装置又はシステムにおいて有用である。いくつかの実施形態では、高温ヒートポンプは、遠心圧縮機を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、冷却機装置を備える、装置又はシステムにおいて有用である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、遠心冷却機装置を備える、装置又はシステムにおいて有用である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、遠心高温ヒートポンプにおいて有用である。
【0066】
いくつかの実施形態では、提供される組成物は、伝熱流体(例えば、冷却機伝熱流体又は循環流体)として有用であり得る。本明細書で使用するとき、伝熱流体(HFT)、又は循環流体は、冷却される物体(例えば、冷却機の冷蔵回路)の近傍で熱を除去したり、熱を加えたり、又は温度を維持したりし得る作動流体である。例示的な伝熱システムでは、圧送システムは、冷却伝熱流体を冷却機からプロセス(又は例えば、半導体製造ツール)に循環させる。伝熱流体は、プロセスから熱を除去し、温められた伝熱流体は、熱交換器を介して冷却機のタンクに戻る。伝熱流体を熱交換器で再冷却し、再び熱を取得するプロセス側に戻して循環させる。プロセスは温度制御を必要とし、循環流体はプロセス温度範囲全体にわたって単相に留まる必要がある。単相伝熱流体を使用するシステムでは、流体の特性(例えば、粘度、沸点など)を比較的一定に保つ必要がある。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、伝熱流体として有用であり、組成物は、伝熱システムの動作温度範囲(例えば、約-140℃~約120℃)にわたって単相(例えば、液体)を維持する。
【0067】
機械的な蒸気-圧縮冷蔵、空調、及びヒートポンプシステムは、蒸発器、圧縮機、凝縮器、及び膨張装置を含む。冷蔵サイクルは、1つの工程において冷却効果をもたらし、また、異なる工程において加熱効果をもたらす、多重工程において冷媒を再使用する。多相サイクル(例えば、凝縮/蒸発)は、以下のように説明することができる:液体冷媒が、膨張装置を通って蒸発器に入り、液体冷媒が、低温で、環境から熱を奪うことによって蒸発器内で沸騰して、気体を形成し、冷却を生じさせる。多くの場合、空気又は伝熱流体は、蒸発器の上を、又は周囲を流れ、蒸発器内の冷媒の蒸発によって生じる冷却効果を、冷却される物体まで伝達する。低圧の気体は、圧縮機に入り、そこで気体は圧縮され、その圧力及び温度が上昇する。次いで、高圧の(圧縮された)気体状の冷媒は、凝縮器に入り、そこで冷媒は凝縮され、その熱を環境に放出する。冷媒は膨張装置に戻り、それを通じて液体は凝縮器におけるより高圧レベルから蒸発器における低圧レベルに膨張し、このようにして、サイクルを繰り返す。
【0068】
冷却される又は加熱される物体は、冷却又は加熱を提供することが望ましい任意の空間、場所、対象物、又は物体として定義され得る。例としては、共同住宅、総合大学の寮、タウンハウス、若しくは他の長屋若しくは一戸建て住宅、病院、オフィスビル、スーパーマーケット、単科大学若しくは総合大学の教室若しくは管理棟、及び自動車若しくはトラックのパッセンジャコンパートメントなどの、部屋、アパート、又は建物などの、空調、冷却、又は加熱を必要とする(開放された若しくは閉鎖された)空間が挙げられる。更に、冷却される物体としては、とりわけ、コンピュータ設備、中央処理ユニット(central processing unit、cpu)、データセンタ、サーババンク、及びパーソナルコンピュータなどの電子機器を挙げることができる。
【0069】
「近傍」とは、蒸発器の上を移動する空気が、冷却される物体内又は周囲を移動するように、冷媒を含有するシステムの蒸発器が、冷却される物体内又は物体に近接してのいずれかに位置していることを意味する。加熱を生じさせるためのプロセスでは、「近傍」とは、蒸発器を介して移動する空気が、加熱される物体内又は周囲を移動するように、冷媒を含有するシステムの凝縮器が、加熱される物体内又は物体に近接してのいずれかに位置していることを意味する。いくつかの実施形態では、伝熱に関して、「近傍」とは、例えば、冷却される物体が、熱伝達組成物に直接浸漬されるか、又は熱伝達組成物を含有する管が、その内に、内部で周囲を、及び電子設備から出て走ることを意味し得る。
【0070】
例示的な冷蔵システムとしては、商業用、工業用、又は住宅用冷蔵庫及び冷凍庫、製氷機、内蔵型クーラ及び冷凍庫、自動販売機、満液式蒸発器冷却機、直接膨張冷却機、冷水機、遠心冷却機、ウォークイン及びリーチインクーラ及び冷凍庫を含む設備、並びに組み合わせシステムが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、スーパーマーケットの冷蔵システムにおいて使用され得る。更に、固定型用途は、1つの位置において、冷却を生じさせるために一次冷媒を使用し、二次伝熱流体を介して、これを遠隔の場所に移動させる、二次ループシステムを利用し得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、単相冷却機システム(例えば、単相伝熱組成物を使用して動作することができる冷却機)において有用である。いくつかの実施形態では、単相冷却機システムは、単相半導体冷却機を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、冷却及び加熱用途のための広範囲の温度にわたって有用である。例えば、本明細書で提供される組成物は、約-140℃~約120℃、例えば、約-140℃~約110℃、約-140℃~約100℃、約-140℃~約50℃、約-140℃~約25℃、約-140℃~約0℃、約-140℃~約-25℃、約-140℃~約-50℃、約-140℃~約-100℃、約-140℃~約-120℃、約-120℃~約120℃、約-120℃~約110℃、約-120℃~約100℃、約-120℃~約50℃、約-120℃~約25℃、約-120℃~約0℃、約-120℃~約-25℃、約-120℃~約-50℃、約-120℃~約-100℃、約-100℃~約120℃、約-100℃~約110℃、約-100℃~約100℃、約-100℃~約50℃、約-100℃~約25℃、約-100℃~約0℃、約-100℃~約-25℃、約-100℃~約-50℃、約-75℃~約120℃、約-75℃~約110℃、約-75℃~約100℃、約-75℃~約50℃、約-75℃~約25℃、約-75℃~約0℃、約-75℃~約-25℃、約-50℃~約120℃、約-50℃~約110℃、約-50℃~約100℃、約-50℃~約50℃、約-50℃~約25℃、約-50℃~約0℃、約-25℃~約120℃、約-25℃~約110℃,約-25℃~約100℃、約-25℃~約50℃、約-25℃~約25℃、約0℃~約120℃、約0℃~約110℃、約0℃~約100℃、約0℃~約50℃、約0℃~約25℃、約25℃~約120℃、約25℃~約110℃、約25℃~約100℃、約25℃~約50℃、約50℃~約120℃、約50℃~約110℃、約50℃~約100℃、約100℃~約120℃、約100℃~約110℃、又は約110℃~約120℃の温度で作動流体として好適であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、-135℃~約110℃の温度で作動流体として好適であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、-95℃~約100℃の温度で作動流体として好適であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、-70℃~約60℃の温度で作動流体として好適であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、冷蔵、空調、若しくはヒートポンプシステム又は装置を含む移動式伝熱システムにおいて有用である。いくつかの実施形態では、組成物は、冷蔵、空調、若しくはヒートポンプシステム又は装置を含む固定式伝熱システムにおいて有用である。
【0073】
本明細書で使用するとき、移動式冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムとは、道路、鉄道、海上、又は航空の輸送ユニットに組み込まれる、任意の冷蔵、空調、又はヒートポンプ装置を指す。移動式空調又はヒートポンプシステムは、自動車、トラック、列車、又は他の輸送システムに使用され得る。移動式冷蔵庫としては、トラック、飛行機、又は列車の輸送用冷蔵庫を挙げ得る。加えて、「複合一貫輸送」システムとして知られている、任意の移動式キャリアに依存しないシステムに冷蔵を提供することが意図される装置が、本発明に含まれる。かかる複合一貫輸送システムとしては、「コンテナ」(海上/陸上複合輸送)、並びに「スワップボディ」(道路及び鉄道複合輸送)が挙げられる。
【0074】
本明細書で使用するとき、固定式空調又はヒートポンプシステムは、動作中に適所に固定されるシステムである。固定式空調又はヒートポンプシステムは、任意の様々な建物に付随し得るか、又は取り付けられ得る。これらの固定式の用途は、これらに限定されないが、冷却機、住宅用高温ヒートポンプを含むヒートポンプ、住宅用、商業用、若しくは工業用空調システムを含み、並びに窓、ダクト無しダクト付きのパッケージ型端末、屋上システムなどの建物に接続されるそれらの外部を含む、固定式空調及びヒートポンプであり得る。
【0075】
固定式伝熱は、浸漬冷却システム、浸水冷却システム、相転移冷却システム、データセンタ冷却システム、又は単に液体冷却システムなどの電子機器を冷却するためのシステムを指し得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、本組成物を伝熱流体として使用するための方法が提供される。本方法は、当該組成物を熱源からヒートシンクに輸送することを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、冷却を生じさせるための方法であって、冷却される物体の近傍で本化合物又は組成物のいずれかを蒸発させることと、その後、当該組成物を凝縮することと、を含む、方法が提供される。
【0078】
いくつかの実施形態では、加熱を生じさせるための方法であって、加熱される物体の近傍で本組成物のいずれかを凝縮することと、その後、当該組成物を蒸発させることと、を含む、方法が提供される。
【0079】
いくつかの実施形態では、組成物は、伝熱において使用するためのものであり、作動流体は、伝熱成分である。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、冷蔵又は空調において使用するためのものである。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、本明細書で提供される可燃性冷媒の可燃性を低減又は排除するのに有用であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される本出願は、可燃性冷媒の可燃性を低減するための方法であって、本明細書に開示される組成物を含む組成物を可燃性冷媒に添加することを含む、方法である。
【0082】
本明細書で提供される組成物は、現在使用されている(「現用」)冷媒又は油の代替品として有用であり得る。本明細書で使用するとき、「現用冷媒」又は「現用油」という用語は、伝熱システムがそれに対して動作するように設計された冷媒若しくは油、又は伝熱システム内に存在する冷媒若しくは油を意味するものとして理解されたい。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロポリエーテル、シリコーンオイル、炭化水素油、及びエチレングリコール水溶液から選択される現用冷媒の代替品として有用であり得る。いくつかの実施形態では、代替組成物(すなわち、本明細書で提供される組成物)は、伝熱流体と比較して、冷蔵又はヒートポンプシステムの動作温度範囲を増加させる(例えば、本明細書に記載されるように、動作温度を約-140℃~約120℃の温度まで上昇させる)。
【0083】
多くの場合、異なる冷媒用に、例えば、システム変更が最小乃至全くない状態で設計された元の冷蔵設備において使用することができる場合に、代替冷媒は、最も有用である。多くの用途では、本開示の組成物のいくつかの実施形態は、冷媒として有用であり、代替品が求められる冷媒と、少なくとも同等の冷却性能(冷却容量を意味する)を提供する。
【0084】
いくつかの実施形態では、高温ヒートポンプは、約50℃超の温度で動作する凝縮器を備える。いくつかの実施形態では、高温ヒートポンプは、約100℃超の温度で動作する凝縮器を備える。いくつかの実施形態では、高温ヒートポンプは、約120℃超の温度で動作する凝縮器を備える。いくつかの実施形態では、高温ヒートポンプは、約150℃超の温度で動作する凝縮器を備える。
【0085】
いくつかの実施形態では、本出願は、現用冷媒を含む伝熱システム又は装置のエネルギー効率を向上させるための方法であって、現用冷媒を、本明細書で提供される代替冷媒組成物で実質的に代替し、それによって伝熱システムの効率を改善することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、伝熱システムは、本明細書で提供される冷却機システム又は冷却機装置である。
【0086】
いくつかの実施形態では、空のシステムに本発明の組成物を充填することにより、又は現用冷媒を本発明の組成物で実質的に代替することにより、当該現用冷媒を用いて動作するように設計された伝熱システムを動作させるための方法又は熱を伝達するための方法が提供される。
【0087】
本明細書で使用するとき、「実質的に代替する」という用語は、現用冷媒をシステムから排出させるか又は現用冷媒をシステムから圧送した後、システムに本発明の組成物を充填することを意味するものとして理解されたい。システムは、充填する前に1回以上の量の代替冷媒でフラッシングすることができる。いくつかの実施形態では、システムが本発明の組成物で充填された後に幾分の少量の現用冷媒がシステム内に存在してもよい点は理解されたい。
【0088】
別の実施形態では、現用冷媒及び潤滑剤を含有する伝熱システムを再充填するための方法であって、潤滑剤の相当部分を当該システム内に保持しつつ現用冷媒を伝熱システムから実質的に除去することと、本組成物の1つを伝熱システムに導入することと、を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、システム内の潤滑剤は、部分的に代替される。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、冷却機内の冷媒の充填に使用してよい。例えば、現用冷媒を使用する冷却機の性能が、冷媒の漏出により低下した場合、本来の仕様に性能を戻すために、本明細書に開示される組成物を添加することができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物のいずれかを含有する熱交換システムであって、空調装置、冷凍庫、冷蔵庫、ヒートポンプ、冷水機、満液式蒸発冷却機、直接膨張式冷却機、ウォークインクーラ、ヒートポンプ、移動式冷蔵庫、移動式空調ユニット、及びこれらの組み合わせを有するシステムからなる群から選択される、熱交換システムが提供される。更に、本明細書で提供される組成物は、これらの組成物が一次冷媒として機能することで二次伝熱流体の冷却を提供し、それによりこの二次伝熱流体が遠隔の場所を冷却する、二次ループシステムにおいて有用であり得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、向流モード又は向流傾向を有する横流(cross-current)モードで熱交換器が動作している場合、本明細書に記載のシステムは、より効率的に動作し得る。向流傾向とは、熱交換器が向流モードに可能な限り近づくほど、伝熱がより効率的になることを意味する。したがって、空調熱交換器、特に蒸発器は、向流傾向のいくつかの態様を提供するように設計される。
【0092】
いくつかの実施形態では、本出願は、空調又はヒートポンプシステムを提供し、当該システムは、向流モード又は向流傾向を有する横流モードで動作する、1つ以上の熱交換器(蒸発器、凝縮器のいずれか又は両方)を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、冷蔵システムが本明細書で提供され、当該システムは、向流モード又は向流傾向を有する横流モードで動作する、1つ以上の熱交換器(蒸発器、凝縮器のいずれか又は両方)を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムは、固定式冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムである。いくつかの実施形態では、冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムは、移動式冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムである。
【0095】
更に、いくつかの実施形態では、開示される組成物は、水、塩水溶液(例えば、塩化カルシウム)、グリコール、二酸化炭素、又はフッ素化炭化水素流体(HFC、HCFC、ハイドロフルオロオレフィン(hydrofluoroolefin、「HFO」)、ハイドロクロロフルオロオレフィン(hydrochlorofluoroolefin、「HCFO」)、クロロフルオロオレフィン(chlorofluoroolefin、「CFO」)若しくはペルフルオロカーボン(「perfluorocarbon、PFC」)を意味する)を含み得る二次伝熱流体の使用によって、遠隔の場所に冷却を提供する二次ループシステムにおいて一次冷媒として機能し得る。この場合、二次伝熱流体は、蒸発器に隣接しており、冷却される第2の遠隔物体に移動させる前に冷却されることから、冷却される物体である。いくつかの実施形態では、開示される組成物は、二次伝熱流体として機能するので、遠隔の場所に冷却(又は加熱)を伝達又は提供することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、潤滑剤、染料(紫外線染料を含む)、可溶化剤、相溶化剤、安定剤、トレーサ、摩耗防止剤、極圧添加剤、腐食及び酸化防止剤、重合阻害剤、金属表面エネルギー低減剤(metal surface energy reducer)、金属表面不活性化剤、フリーラジカル捕捉剤、泡制御剤、粘度指数改善剤、流動点降下剤、洗剤、粘度調節剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の非冷媒成分(本明細書では添加剤とも称される)を更に含む。実際に、これらの任意選択的な非冷媒成分の多くは、1つ以上のこれらの分類に適合し、それら自体が1つ以上の性能特徴の達成に役立つ品質を有し得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、1つ以上の非冷媒成分は、組成物全体に対して少ない量で存在する。いくつかの実施形態では、開示される組成物における量の添加剤(複数可)の濃度は、全組成物の、約0.1重量パーセント未満から約5重量パーセントと同程度までである。本発明のいくつかの実施形態では、添加剤は、全組成物の約0.1重量%~約5重量%又は約0.1重量%~約3.5重量%の量で開示された組成物中に存在する。開示される組成物に対して選択される添加剤成分(複数可)は、有用性及び/又は個々の設備構成要素、若しくはシステムの要件に基づいて選択される。
【0098】
一実施形態では、潤滑剤は、鉱油、アルキルベンゼン、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、シリコーン、ケイ酸エステル、リン酸エステル、パラフィン、ナフテン、ポリアルファ-オレフィン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0099】
本明細書に開示される潤滑剤は、市販の潤滑剤であってよい。例えば、潤滑剤は、BVM100NとしてBVA Oilにより販売されているパラフィン鉱油、商標名Suniso(登録商標)1GS、Suniso(登録商標)3GS及びSuniso(登録商標)5GSでCrompton Co.により販売されているナフテン系鉱油、商標名Sontex(登録商標)372LTでPennzoilにより販売されているナフテン系鉱油、商標名Calumet(登録商標)RO-30でCalumet Lubricantsにより販売されているナフテン系鉱油、商標名Zerol(登録商標)75、Zerol(登録商標)150及びZerol(登録商標)500でShrieve Chemicalsにより販売されている直鎖アルキルベンゼン、HAB22としてNippon Oilにより販売されている分枝鎖アルキルベンゼン、商標名Castrol(登録商標)100でCastrol,United Kingdomにより販売されているポリオールエステル(POE)、Dow(Dow Chemical,Midland,Michigan)のRL-488Aなどのポリアルキレングリコール(PAG)、並びにこれらの混合物であってもよい。
【0100】
本明細書に開示される組成物の重量比にも関わらず、いくつかの伝熱システムでは、本組成物が使用されている間、そのような伝熱システムの1つ以上の設備構成要素から追加の潤滑剤が得られることがあることが理解される。例えば、いくつかの冷蔵、空調、及びヒートポンプシステムでは、圧縮機及び/又は圧縮機潤滑サンプ内に潤滑剤を充填することがある。このような潤滑剤は、任意の潤滑添加剤に加えて、このようなシステムの冷媒中に存在する。使用中、圧縮機内にあるとき、冷媒は、ある量の設備潤滑剤を捕捉して、冷媒-潤滑剤組成物を出発比率から変更することがある。
【0101】
本発明の組成物で使用される非冷媒成分は、少なくとも1つの染料を含んでいてよい。染料は、少なくとも1つの紫外線(ultra-violet、UV)染料であってもよい。本明細書で使用するとき、「紫外線」染料は、電磁スペクトルの紫外線又は「近」紫外線領域内で光を吸収する紫外線蛍光性組成物又はリン光性組成物として定義される。10ナノメートル~約775ナノメートルの範囲内の波長を有する、少なくともいくらかの放射線を発する紫外線照射下において、紫外線蛍光染料によって生じた蛍光が検出され得る。
【0102】
紫外線染料は、装置(例えば、冷蔵ユニット、空調機、又はヒートポンプ)内での漏出点又は漏出点近傍において染料の蛍光を観察することができることから、組成物の漏出を検出するにあたって有用な成分である。紫外線発光(例えば、染料からの蛍光)は、紫外光下で観察され得る。したがって、このような紫外線染料を含有する組成物が装置内の所与の点から漏出した場合、蛍光は、漏出点又は漏出点の近傍で検出され得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、紫外線染料は、蛍光染料であってもよい。いくつかの実施形態では、蛍光染料は、ナフタルイミド、ペリレン、クマリン、アントラセン、フェナントラセン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン、フルオレセイン及び当該染料の誘導体、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0104】
本発明の組成物で使用され得る別の非冷媒成分は、本開示の組成物中において1つ以上の染料の溶解度を改善するために選択される少なくとも1つの可溶化剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、染料の可溶化剤に対する重量比は、約99:1~約1:1の範囲である。可溶化剤としては、炭化水素、炭化水素エーテル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル(例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル)、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン(例えば、塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルム、又はこれらの混合物)、エステル、ラクトン、芳香族エーテル、フルオロエーテル、及び1,1,1-トリフルオロアルカン、並びにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物が挙げられる。
【0105】
いくつかの実施形態では、非冷媒成分は、1つ以上の潤滑剤と開示する組成物との相溶性を改善するために少なくとも1つの相溶化剤を含む。相溶化剤は、炭化水素、炭化水素エーテル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル(例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル)、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン(例えば、塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルム又はこれらの混合物)、エステル、ラクトン、芳香族エーテル、フルオロエーテル、1,1,1-トリフルオロアルカン、及びこれらの混合物(本段落で開示される相溶化剤のうちのいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択されてもよい。
【0106】
可溶化剤及び/又は相溶化剤は、ジメチルエーテル(dimethyl ether、DME)など、炭素、水素及び酸素のみを含むエーテルからなる炭化水素エーテル、並びにこれらの混合物(本段落で開示される炭化水素エーテルのうちのいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択されてもよい。
【0107】
相溶化剤は、3~15個の炭素原子を含有する直鎖又は環式脂肪族又は芳香族炭化水素相溶化剤であり得る。相溶化剤は、とりわけ、少なくとも、プロピレン及びプロパンを含むプロパン、n-ブタン及びイソブテンを含むブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン及びシクロペンタンを含むペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、並びにデカンからなる群から選択され得る少なくとも1つの炭化水素であり得る。市販の炭化水素相溶化剤としては、これらに限定されるものではないが、Exxon Chemical(USA)から商標名Isopar(登録商標)Hで販売されているもの、ウンデカン(C11)とドデカン(C12)の混合物(高純度C11~C12イソパラフィン)、Aromatic150(C9~C11芳香族)(Aromatic200(C9~C15芳香族)及びNaptha140(C5~C11パラフィン、ナフテン及び芳香族炭化水素の混合物)及びこれらの混合物(本段落で開示されている炭化水素のうちのいずれかの混合物を意味する)が挙げられる。
【0108】
相溶化剤は、代替的に、少なくとも1つのポリマー相溶化剤であってもよい。ポリマー相溶化剤は、フッ素化及び非フッ素化アクリレートのランダムコポリマーであり得、ポリマーは、式CH2=C(R1)CO2R2、CH2=C(R3)C6H4R4、及びCH2=C(R5)C6H4XR6で表される少なくとも1つのモノマーの繰り返し単位を含み、式中、Xは、酸素又は硫黄であり、R1、R3、及びR5は、H及びC1~C4のアルキル基からなる群から独立して選択され、R2、R4、及びR6は、C及びFを含有する炭素鎖系基からなる群から独立して選択され、チオエーテル、スルホキシド、又はスルホン基、及びこれらの混合物の形態で、H、Cl、エーテル酸素、若しくは硫黄を更に含有し得る。そのようなポリマー相溶化剤の例としては、商標名Zonyl(登録商標)PHSでE.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE,19898,USA)から市販されているものが挙げられる。Zonyl(登録商標)PHSは、40重量パーセントのCH2=C(CH3)CO2CH2CH2(CF2CF2)mF(Zonyl(登録商標)フルオロメタクリレート又はZFMとも称される)[式中、mは、1~12、主に2~8]、及び60重量パーセントのラウリルメタクリレート(CH2=C(CH3)CO2(CH2)11CH3、LMAとも称される)を重合することによって作製されたランダムコポリマーである。
【0109】
いくつかの実施形態では、相溶剤成分は、潤滑剤の金属への粘着性を低下させる方法で、熱交換器内で見出される金属銅、アルミニウム、鋼、又は他の金属及びその合金の表面エネルギーを低下させる添加剤約0.01~30重量%(相溶剤の総量に基づいて)を含有する。金属表面エネルギー低減添加剤の例としては、DuPontから商標名Zonyl(登録商標)FSA、Zonyl(登録商標)FSP、及びZonyl(登録商標)FSJとして市販されているものが挙げられる。
【0110】
本発明の組成物で使用され得る別の非冷媒成分は、金属表面不活性化剤であってもよい。金属表面不活性化剤は、アレオキサリル(areoxalyl)ビス(ベンジリデン)ヒドラジド(CAS登録番号6629-10-3)、N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイルヒドラジン(CAS登録番号32687-78-8)、2,2,’-オキサミドビス-エチル-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート(CAS登録番号70331-94-1)、N,N’-(ジサリシクリデン(disalicyclidene))-1,2-ジアミノプロパン(CAS登録番号94-91-7)、及びエチレンジアミン四酢酸(CAS登録番号60-00-4)及びその塩、並びにこれらの混合物(本段落に開示される金属表面不活性化剤のうちのいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択される。
【0111】
本発明の組成物で使用される非冷媒成分は、代替的に、ヒンダードフェノール、チオホスフェート、ブチル化トリフェニルホスホロチオネート、オルガノホスフェート、オルガノホスファイト、アリールアルキルエーテル、テルペン、テルペノイド、エポキシド、フッ素化エポキシド、オキセタン、アスコルビン酸、チオール、ラクトン、チオエーテル、アミン、ニトロメタン、アルキルシラン、ベンゾフェノン誘導体、アリールスルフィド、ジビニルテレフタル酸、ジフェニルテレフタル酸、ヒドラゾン(例えば、アセトアルデヒドジメチルヒドラゾン)、イオン性液体、及びこれらの混合物からなる群から選択される安定剤であり得る。テルペン又はテルペノイド安定剤は、ファルネセンを含んでもよい。ホスファイト安定剤は、ジフェニルホスファイトを含んでもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、安定剤は、以下からなる群から選択される:トコフェロール、ヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、モノチオホスフェート、及びジチオホスフェート(Ciba Specialty Chemicals(Basel,Switzerland)(以後、「Ciba」)から商標名Irgalube(登録商標)63として市販);ジアルキルチオリン酸エステル(Cibaからそれぞれ商標名Irgalube(登録商標)353及びIrgalube(登録商標)350として市販);ブチル化トリフェニルホスホロチオネート(Cibaから商標名Irgalube(登録商標)232として市販);アミンホスフェート(Cibaから商標名Irgalube(登録商標)349として市販);ヒンダードホスファイト(CibaからIrgafos(登録商標)168として市販)、及びトリス-(ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Cibaから商標名Irgafos(登録商標)OPHとして市販);(Di-n-オクチルホスファイト);及びイソデシルジフェニルホスファイト(Cibaから商標名Irgafos(登録商標)DDPPとして市販);トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、及びトリ(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどのトリアルキルホスフェート;トリフェニルホスフェート、リン酸トリクレジル及びトリキシレニルホスフェートを含むトリアリールホスフェート、並びにイソプロピルフェニルホスフェート(IPPP)及びビス(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート(TBPP)を含む混合アルキルアリールホスフェート;ブチル化トリフェニルホスフェート(例えば、Syn-O-Ad(登録商標)8784を含む、商標名Syn-O-Ad(登録商標)として市販されているもの);tert-ブチル化トリフェニルホスフェート(例えば、商標名Durad(登録商標)620として市販されているもの);イソプロピル化トリフェニルホスフェート(例えば、商標名Durad(登録商標)220及びDurad(登録商標)110で市販されているもの);アニソール;1,4-ジメトキシベンゼン;1,4-ジエトキシベンゼン;1,3,5-トリメトキシベンゼン;ミルセン、アロオシメン、リモネン(特にd-リモネン);レチナール;ピネン(α又はβ);メントール;ゲラニオール;ファルネソール;フィトール;ビタミンA;テルピネン;δ-3-カレン;テルピノレン;フェランドレン;フェンチェン;ジペンテン;リコペンなどのカラテノイド(caratenoids)、βカロテン、及びゼアキサンチンなどのキサントフィル;ヘパキサンチン及びイソトレチノインなどのレチノイド;ボルナン;1,2-プロピレンオキシド;1,2-ブチレンオキシド;n-ブチルグリシジルエーテル;トリフルオロメチルオキシラン;1,1-ビス(トリフルオロメチル)オキシラン;3-エチル-3-ヒドロキシメチル-オキセタン、例えば、OXT-101(東亜合成);3-エチル-3-((フェノキシ)メチル)-オキセタン、例えば、OXT-211(東亜合成);3-エチル-3-((2-エチル-ヘキシルオキシ)メチル)-オキセタン、例えば、OXT-212(東亜合成);アスコルビン酸;メタンチオール(メチルメルカプタン);エタンチオール(エチルメルカプタン);コエンザイムA;ジメルカプトコハク酸(DMSA);グレープフルーツメルカプタン((R)-2-(4-メチルシクロヘキサ-3-エニル)プロパン-2-チオール));システイン((R)-2-アミノ-3-スルファニル-プロパン酸);リポアミド(1,2-ジチオラン-3-ペンタンアミド);5,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-3-[2,3(又は3,4-)-ジメチルフェニル]-2(3H)-ベンゾフラノン(Cibaから商標名Irganox(登録商標)HP-136として市販);ベンジルフェニルスルフィド;ジフェニルスルフィド;ジイソプロピルアミン;ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート(Cibaから商標名Irganox(登録商標)PS802(Ciba)として市販);ジドデシル3,3’-チオプロピオネート(Cibaから商標名Irganox(登録商標)PS800として市販);ジ-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(Cibaから商標名Tinuvin(登録商標)770として市販);ポリ-(N-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシ-ピペリジルスクシネート(Cibaから商標名Tinuvin(登録商標)622LDとして市販);メチルビスタローアミン;ビスタローアミン;フェノール-α-ナフチルアミン;ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン(DMAMS);トリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS);ビニルトリエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;2,5-ジフルオロベンゾフェノン;2’,5’-ジヒドロキシアセトフェノン;2-アミノベンゾフェノン;2-クロロベンゾフェノン;ベンジルフェニルスルフィド;ジフェニルスルフィド;ジベンジルスルフィド;イオン性液体;並びにこれらの混合物及びこれらの組み合わせ。
【0113】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、イオン性液体安定剤を更に含む。イオン性液体安定剤は、室温(約25℃)で液体である有機塩からなる群から選択され得、これらの塩は、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、及びトリアゾリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択されるカチオン、並びに[BF4]-、[PF6]-、[SbF6]-、[CF3SO3]-、[HCF2CF2SO3]-、[CF3HFCCF2SO3]-、[HCClFCF2SO3]-、[(CF3SO2)2N]-、[(CF3CF2SO2)2N]-、[(CF3SO2)3C]-、[CF3CO2]-、及びF-、及びこれらの混合物からなる群から選択されるアニオンを含有する。いくつかの実施形態では、イオン性液体安定剤は、emim BF4(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート);bmim BF4(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラボレート);emim PF6(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート);及びbmim PF6(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート)(これらは全てFluka(Sigma-Aldrich)から入手可能である)からなる群から選択される。
【0114】
いくつかの実施形態では、安定剤は、ヒンダードフェノールであり得、これは、例えば、アルキル化モノフェノール、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール;2,4-ジメチル-6-tertブチルフェノール;トコフェロールなど、ヒドロキノン及びアルキル化ヒドロキノン、例えば、t-ブチルヒドロキノン、ヒドロキノンの他の誘導体など、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、例えば、4,4’-チオ-ビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-チオビス(3-メチル-6-tertブチルフェノール);2,2’-チオビス(4メチル-6-tert-ブチルフェノール);など、アルキリデン-ビスフェノール、例えば、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);2,2-、又は4,4-ビフェノールジオール誘導体;2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tertブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tertブチルフェノール);4,4-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール);2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール、2,2-又は4,4-ビフェニルジオール、例えば、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール);ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、又は2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、ヘテロ原子を含むビスフェノール、例えば、2,6-ジ-tert-アルファ-ジメチルアミノ-p-クレゾール、4,4-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾールなど、アシルアミノフェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4(N,N’-ジメチルアミノメチルフェノール);スルフィド、例えば、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、並びにこれらの混合物(本段落に開示されるフェノールのうちのいずれかの混合物を意味する)など、1つ以上の置換又は環状、直鎖又は分岐鎖脂肪族置換基を含むフェノールなどの任意の置換フェノール化合物である。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、トレーサを更に含む。トレーサは、同一の分類の化合物又は異なる分類の化合物の2つ以上のトレーサ化合物であってもよい。いくつかの実施形態では、トレーサは、全組成物の重量に基づいて、約50重量百万分率(ppm)~約1000ppmの合計濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、トレーサは、約50ppm~約500ppmの合計濃度で存在する。代替的に、トレーサは、約100ppm~約300ppmの合計濃度で存在する。
【0116】
トレーサは、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、重水素化ハイドロフルオロカーボン、ペルフルオロカーボン(例えば、追加のペルフルオロカーボン)、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド及びケトン、亜酸化窒素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、トレーサは、トリフルオロメタン(HFC-23)、フルオロエタン(HFC-161)、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ca)、1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236cb)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)、1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(HFC-254cb)、1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HFC-254eb)、1,1,1-トリフルオロプロパン(HFC-263fb)、2,2-ジフルオロプロパン(HFC-272ca)、2-フルオロプロパン(HFC-281ea)、1-フルオロプロパン(HFC-281fa)、1,1,1,2,2,3,3,4-ノナフルオロブタン(HFC-329p)、1,1,1-トリフルオロ-2-メチルプロパン(HFC-329mmz)、1,1,1,2,2,4,4,4-オクタフルオロブタン(HFC-338mf)、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン(HFC-338pcc)、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロブタン(HFC-347s)、ヘキサフルオロエタン(ペルフルオロエタン、PFC-116)、ペルフルオロ-シクロプロパン(PFC-C216)、ペルフルオロプロパン(PFC-218)、ペルフルオロ-シクロブタン(PFC-C318)、ペルフルオロブタン(PFC-31-10mc)、ペルフルオロ-2-メチルプロパン(CF3CF(CF3)2)、ペルフルオロ-1,3-ジメチルシクロブタン(PFC-C51-12mycm)、トランス-ペルフルオロ-2,3-ジメチルシクロブタン(PFC-C51-12mym、トランス)、シス-ペルフルオロ-2,3-ジメチルシクロブタン(PFC-C51-12mym、シス)、ペルフルオロメチルシクロペンタン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、ペルフルオロジメチルシクロヘキサン(オルト、メタ、又はパラ)、ペルフルオロエチルシクロヘキサン、ペルフルオロインダン、ペルフルオロトリメチルシクロヘキサン及びその異性体、ペルフルオロイソプロピルシクロヘキサン、シス-ペルフルオロデカリン、トランス-ペルフルオロデカリン、シス-又はトランス-ペルフルオロメチルデカリン、並びにこれらの混合物からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、トレーサは、2つ以上のハイドロフルオロカーボン、又は1つ以上のペルフルオロカーボンと組み合わされた1つのハイドロフルオロカーボンを含有するブレンドである。
【0117】
組成物の何らかの希釈、混入、又は他の変更の検出を可能にするために、所定の量でトレーサが本発明の組成物に添加されてもよい。
【0118】
本発明の組成物で使用され得る添加剤は、代替的に、米国特許出願公開第2007/0284555号(その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に説明されているようにペルフルオロポリエーテルであってもよい。
【0119】
非冷媒成分に好適であると上で記載した特定の添加剤は、冷媒として可能性があるものとして特定されていることが理解されるであろう。しかしながら、本発明によれば、これらの添加剤が使用される場合、本発明の冷媒混合物の新規及び基本的特徴に影響を及ぼす量では存在しない。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される冷媒組成物は、当該技術分野において標準であるように、所望の量の個々の成分を組み合わせるための任意の好便な方法によって調製されてもよい。好ましい方法は、所望の成分量を計量し、その後、適切な槽内で成分を組み合わせることである。所望の場合、撹拌を使用してもよい。
【実施例】
【0121】
本発明を、具体的な実施例によって、より詳細に説明する。以下の実施例は、例示目的のために提供され、いかなる意味でも、本発明を限定することを意図するものではない。当業者は、本質的に同じ結果を得るために変更又は修正することができる様々な重要でないパラメータを、容易に認識するであろう。
【0122】
実施例1.MPHE及びNovec(商標)HFE-7200のブレンドの固液平衡
凍結点測定
TA Instrument RDA IIIレオメーター及び50mm平行プレートを使用して、MPHE及びNovec(商標)HFE-7200ブレンドの粘度の変化を1Hzの周波数で、25℃~-150℃で測定した。測定中、ブレンドの周囲で窒素パージを維持した。MPHE/HFE-7200(70重量%/30重量%)のブレンドについて、温度の関数としての液体粘度プロファイルを
図2に示す。
【0123】
沸点範囲
熱電対温度計プローブを更に備えた、上部に凝縮器を有する3つ口丸底フラスコを有する沸点測定装置を使用して、表1に記載の混合物の大気圧沸点を測定した。約14gのMPHEを沸点測定装置に充填し、大気圧沸点まで加熱した。HFE-7200の小さな測定された増分を添加し、温度を記録した。MPHE/HFE-7200ブレンドの沸点の代表的なリストを以下の表1に示す。
【0124】
【0125】
図1は、混合物の組成範囲全体にわたる、MPHE/HFE-7200ブレンドの固液平衡の代表的なコンピュータシミュレーションを示す。
図1に示すように、70重量%のMPHE(沸点:110℃)及び30重量%のHFE-7200(沸点:76℃)では、混合物の最初の固体は、-95℃で現れると予想され、最後の液体は、-116℃で固体になり、平均凍結点が約-106℃であると予想される。70/30混合物の沸点は、88.3℃であり、混合物の動作温度は、単相伝熱流体用途のために-95℃~69℃であると予想される。
【0126】
実施例2.MPHE及び低沸点フッ素化流体のブレンドの固液平衡の比較例
図3は、MPHE及びより低沸点のフッ素化流体(Vertrel(商標)XF(沸点:55℃))のブレンドの組成範囲全体にわたって実施された固液平衡のコンピュータシミュレーションの結果を示す。二成分混合物の最初の固体は、-91.5℃で現れると予想され、最後の液体は、-92.5℃で固体になり、平均凍結点が約-92℃であると予想される。MPHE/XF混合物の沸点は、74.3℃であり、予想される動作温度範囲は、-91.5℃~54℃である。
【0127】
図4は、MPHE及びより低沸点のフッ素化流体(DR CFX70(沸点:71.5℃))のブレンドの組成範囲全体にわたって実施された固液平衡のコンピュータシミュレーションの結果を示す。
図3に示すように、この二成分混合物は、任意の組成比で純粋なMPHEと比較して、動作温度限界を拡張しなかった。
【0128】
実施例3.HFE-7000及びHFE-7500のブレンドの固液平衡
凍結点及び沸騰測定は、実施例1に記載の全般的手順に従って実施した。
図5は、混合物の組成範囲全体にわたる、HFE-7000/HFE-7500ブレンドの固液平衡の代表的なコンピュータシミュレーションを示す。HFE-7000/HFE-7500ブレンドの沸点及び凍結点の代表的なリストを以下の表2に示す。
【0129】
【0130】
実施例4.液相密度及び動粘度の分析
表3は、MPHE及びHFE-7200(70重量%/30重量%)のブレンドの計算された液相密度及び動粘度を示し、表4は、純粋なMPHEについて計算された温度の関数としての動粘度を示す。密度及び動粘度は、コンピュータシミュレーションを使用して決定した。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
実施例5.流体凍結点の比較
TA Instrument RDA IIIレオメーター及び50mm平行プレートを使用して、サンプルの粘度の変化を1Hzの周波数で、25℃~-150℃で測定した。測定中、ブレンドの周囲で窒素パージを維持した。伝熱流体の凍結点を、温度の関数としての粘度プロファイルに基づいて外挿した。
【0136】
表5は、純粋なMPHE、純粋なHFE-7200、70重量%のMPHE/30重量%のHFE-7200のブレンド、及び75重量%のHFE-7500/25重量%のHFE-7000のブレンドの計算された流体凍結点の比較を示す。
【0137】
【0138】
他の実施形態
1.いくつかの実施形態では、本出願は、組成物であって、
(i)アルキルペルフルオロアルケンエーテル及び第1のハイドロフルオロエーテルから選択される化合物と、
(ii)第2のハイドロフルオロエーテル、ペルフルオロカーボン、及びペルフルオロポリエーテルから選択される化合物と、を含む、組成物を提供する。
2.組成物であって、
(i)アルキルペルフルオロアルケンエーテルと、
(ii)第2のハイドロフルオロエーテル、ペルフルオロカーボン、及びペルフルオロポリエーテルから選択される化合物と、を含む、実施形態1に記載の組成物。
3.アルキルペルフルオロアルケンエーテルは、メチルペルフルオロヘプテンエーテルである、実施形態1又は2に記載の組成物。
4.メチルペルフルオロヘプテンエーテルは、約50重量パーセントの5-メトキシペルフルオロ-3-ヘプテン、約20重量パーセントの3-メトキシペルフルオロ-3-ヘプテン、約20重量パーセントの4-メトキシペルフルオロ-2-ヘプテン、及び約8重量パーセントの4-メトキシペルフルオロ-3-ヘプテンの混合物を含む、実施形態3に記載の組成物。
5.組成物は、約60~約80重量パーセントのメチルペルフルオロヘプテンエーテルを含む、実施形態3に記載の組成物。
6.組成物は、メチルペルフルオロヘプテンエーテルと、第2のハイドロフルオロエーテルと、を含む、実施形態3~5のいずれか1つに記載の組成物。
7.第2のハイドロフルオロエーテルは、HFE-7000、HFE-7100、HFE-7200、及びHFE-7500から選択される、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
8.第2のハイドロフルオロエーテルは、HFE-7200である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
9.組成物は、約40~約20重量パーセントのHFE-7200を含む、実施形態8に記載の組成物。
10.組成物は、メチルペルフルオロヘプテンエーテルと、HFE-7200と、を含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組成物。
11.組成物は、約60~約80重量パーセントのメチルペルフルオロヘプテンエーテルと、約40~約20重量パーセントのHFE-7200と、を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の組成物。
12.組成物は、約70重量パーセントのメチルペルフルオロヘプテンエーテルと、約30重量パーセントのHFE-7200と、を含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物。
13.組成物は、メチルペルフルオロヘプテンエーテルと、ペルフルオロカーボンと、を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の組成物。
14.ペルフルオロカーボンは、FC77である、実施形態1~5及び13のいずれか1つに記載の組成物。
15.組成物は、約85~約95重量パーセントのメチルペルフルオロヘプテンエーテルと、約15~約5重量パーセントのFC77と、を含む、実施形態1~5、13、及び14のいずれか1つに記載の組成物。
16.組成物は、メチルペルフルオロヘプテンエーテルと、ペルフルオロポリエーテルと、を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の組成物。
17.ペルフルオロポリエーテルは、HT110である、実施形態1~5及び16のいずれか1つに記載の組成物。
18.組成物は、約85~約95重量パーセントのメチルペルフルオロヘプテンエーテルと、約15~約5重量パーセントのHT110と、を含む、実施形態1~5、16、及び17のいずれか1つに記載の組成物。
19.組成物であって、
(i)第1のハイドロフルオロエーテルと、
(ii)第2のハイドロフルオロエーテルと、を含む、実施形態1に記載の組成物。
20.第1のハイドロフルオロエーテルは、HFE-7500である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の組成物。
21.第2のハイドロフルオロエーテルは、HFE-7000、HFE-7100、及びHFE-7200から選択される、実施形態1、19、及び20のいずれか1つに記載の組成物。
22.組成物は、約70~約90重量パーセントのHFE-7500と、約30~約10重量パーセントの第2のハイドロフルオロエーテルと、を含む、実施形態1、及び19~21のいずれか1つに記載の組成物。
23.組成物は、約10cSt以下の最大動粘度を示す、実施形態1~22のいずれか1つに記載の組成物。
24.組成物は、約-90℃~約-100℃の温度で、約6cSt以下の最大動粘度を示す、実施形態1~23のいずれか1つに記載の組成物。
25.組成物は、不燃性である、実施形態1~24のいずれか1つに記載の組成物。
26.いくつかの実施形態では、本出願は、冷却を生じさせるためのプロセスであって、実施形態1~25のいずれか1つに記載の組成物を凝縮させることと、その後、冷却される物体の近傍で当該組成物を蒸発させることと、を含む、プロセスを更に提供する。
27.冷却を生じさせるための方法であって、冷却される物体の近傍で実施形態1~25のいずれか1つに記載の組成物を含む伝熱流体を循環させることを含み、伝熱流体は、冷却される物体の近傍から熱を除去したり、熱を加えたり、又は温度を維持したりする作動流体である、方法。
28.いくつかの実施形態では、本出願は、冷却流体分配ユニット、冷蔵システム、又はヒートポンプシステムにおいて、伝熱流体を代替する方法であって、当該伝熱流体の代替品として、実施形態1~25のいずれか1つに記載の組成物を提供することを含む、方法を更に提供する。
29.伝熱流体は、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロポリエーテル、シリコーンオイル、炭化水素油、及びエチレングリコール水溶液から選択される、実施形態28に記載の方法。
30.代替組成物は、伝熱流体と比較して、冷蔵又はヒートポンプシステムの動作温度範囲を増加させる、実施形態28又は29に記載の方法。
31.いくつかの実施形態では、本出願は、実施形態1~25のいずれか1つに記載の組成物を含む、冷蔵システムを更に提供する。
32.組成物は、システム内の作動流体としての使用に好適である、実施形態31に記載の冷蔵システム。
33.組成物は、約-135℃~約110℃の温度で作動流体としての使用に好適である、実施形態31又は32に記載の冷蔵システム。
34.組成物は、約-95℃~約100℃の温度で作動流体としての使用に好適である、実施形態31~33のいずれか1つに記載の冷蔵システム。
35.組成物は、約-70℃~約60℃の温度で作動流体としての使用に好適である、実施形態31~34のいずれか1つに記載の冷蔵システム。
36.システムは、組成物を含む冷却機を備える、実施形態31~35のいずれか1つに記載の冷蔵システム。
37.冷却機は、単相冷却機である、実施形態31~36のいずれか1つに記載の冷蔵システム。
38.冷却機は、単相半導体冷却機である、実施形態31~37のいずれか1つに記載の冷蔵システム。
【0139】
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を例示することを意図するものであり、限定するものではないことを理解すべきである。他の態様、利点、及び変更は、以下の特許請求の範囲内である。本発明の任意の特定の態様及び/又は実施形態に関して本明細書に記載される特徴のいずれも、本明細書に記載される本発明の任意の他の態様及び/又は実施形態の他の特徴のいずれかのうちの1つ以上と組み合わせることができ、組み合わせの適合性を確実にするために適宜変更することができることが、本発明に関連する当業者により理解されるべきである。そのような組み合わせは、本開示により企図される本発明の一部であるとみなされる。