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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】マークバンド装着装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/06 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
H02G1/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024008046
(22)【出願日】2024-01-23
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000220882
【氏名又は名称】株式会社エネゲート
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】矢井田 育輝
(72)【発明者】
【氏名】玉泉 賢一
(72)【発明者】
【氏名】濱野 義治
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-176375(JP,A)
【文献】特開昭57-69615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮拡径可能な分割リングの形態を有する複数のマークバンドを支持軸に挿入して構成されるマークバンドセットと、
前記マークバンドセットを基台上に保持するマークバンドセット保持部と、
前記マークバンドセット保持部で保持された前記マークバンドセットの前記マークバンドを前記支持軸の一端部側に押圧して、所定数の前記マークバンドを前記支持軸の一端部から押し出す第1押圧部材と、
自然状態の前記マークバンドの内径よりも小径になった先端部と、前記先端部と円滑に繋がり、自然状態の前記マークバンドの内径よりも大径の拡径部とを有し、前記第1押圧部材により前記支持軸の一端部から押し出された前記マークバンドを前記先端部で受け取る中空軸状のマークバンド受取ピンと、
前記マークバンド受取ピンの前記先端部で受け取られた前記マークバンドを押圧し、前記拡径部に移送して拡径させると共に、前記マークバンドを装着すべき電線の端部が、前記拡径部の後端部の側から前記拡径部の内周部に挿入された状態で、前記拡径部に移送された前記マークバンドを押圧し、前記拡径部の後端部から押し出して、前記電線の外周部に嵌着させる第2押圧部材と、
を備えたマークバンド装着装置。
【請求項2】
前記マークバンド受取ピンは、前記第1押圧部材により前記支持軸の一端部から押し出された前記マークバンドを前記先端部で受け取る第1位置と、前記先端部が前記第2押圧部材と対向する第2位置との間で移動可能であり、
前記第2位置に移動した前記マークバンド受取ピンと前記第2押圧部材とは、前記マークバンド受取ピンの軸線方向に相対移動可能であり、前記両者の相対移動により、前記第2押圧部材よる前記マークバンドの前記押圧が行われる、請求項1に記載のマークバンド装着装置。
【請求項3】
前記マークバンド受取ピンは、前記マークバンド受取ピンの軸線方向と、上下方向又は回転方向と、に可動な可動台に取り付けられており、
前記可動台は、前記マークバンド受取ピンが前記第1位置に位置する状態から、少なくとも上下方向又は回転方向に作動することにより、前記マークバンド受取ピンを前記第2位置に移動させ、
前記第2押圧部材は、前記第2位置に移動した前記マークバンド受取ピンの先端部と対向する位置に固定的に配置され、
前記可動台は、前記マークバンド受取ピンが前記第2位置に位置する状態から、さらに前記マークバンド受取ピンの軸線方向に作動して、前記マークバンド受取ピンを前記第2押圧部材の側に移動させることにより、前記第2押圧部材よる前記マークバンドの前記押圧が行われる、請求項2に記載のマークバンド装着装置。
【請求項4】
前記マークバンドを装着すべき電線の端部を、前記マークバンド受取ピンの前記拡径部の後端部の側から前記拡径部の内周部に案内するためのガイド部材が前記可動台に取り付けられており、
前記ガイド部材の内周部には、前記ガイド部材の先端から後端に向かって漸次に拡径した円錐状のガイド面が設けられ、前記ガイド面の先端部は、前記マークバンド受取ピンの前記拡径部の後端部と対向し、
前記ガイド部材は、前記ガイド面の軸線に沿って分割された分割体で構成され、前記分割体は、前記ガイド面を開く方向に可動である、請求項3に記載のマークバンド装着装置。
【請求項5】
前記電線の端部を前記マークバンド受取ピンの前記拡径部の後端部の内周部に挿入するための電線挿入部をさらに備えており、
前記電線挿入部は、前記電線の端部を把持し、前記マークバンド受取ピンの軸線方向に移動させて、前記ガイド部材の前記ガイド面の後端部から前記ガイド面に挿入し、さらに前記ガイド面の先端部を介して前記拡径部の後端部の内周部に挿入する、請求項4に記載のマークバンド装着装置。
【請求項6】
前記基台が位置決めテーブルであり、
前記マークバンドセットと、前記マークバンドセット保持部と、前記第1押圧部材とを含む構造体を単位ユニットとして、複数の前記単位ユニットが、前記位置決めテーブルに所定間隔で配置され、
前記位置決めテーブルは、複数の前記単位ユニットの中から選択された一の前記単位ユニットが、前記マークバンド受取ピンの先端部と対向する位置に来るように駆動制御される、請求項1から5の何れか1項に記載のマークバンド装着装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線にマークバンドを装着するためのマークバンド装着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、配電盤や制御盤等の多数の配線を必要とする電気機器に使用される電線では、電線の誤接続をなくし、また、保守点検作業を容易にするために、各電線の接続端子側の端部にマークバンドと呼ばれる識別用の環体を装着している。マークバンドとして、特許文献1の第1図に記載されているような環体が用いられることがある。このマークバンドは、スリットが設けられた合成樹脂製の分割リングの形態を有し、電線を識別するために、数字、文字、記号、色彩等の識別表示が付されている。マークバンドを電線に装着するにあたっては、スリットを押し広げて、スリット部分から電線に嵌着する。
【0003】
上記のようなマークバンドを人手により電線に装着する際の作業性を高めるため、特許文献2、3に記載されているような、マークバンドのセット品が市販されている。図12a及び図12bに示すように、このマークバンドセット品は、合成樹脂製の複数のマークバンド1を合成樹脂製の支持軸2に挿入して構成される。支持軸2の外周には、支持軸2の軸線方向に沿って凸状の線状ガイド2aが設けられている。また、支持軸2の先端部には、マークバンド1を装着する電線3の外周に倣って接触可能な形状を有すると共に、先端に向かって漸次に開拡した形状を有する接触部2bが設けられている。マークバンド1は、そのスリット1a部分が線状ガイド2aに宛がわれた状態で支持軸2に挿入される。図13に示すように、マークバンド1を電線3に装着するにあたっては、マークバンドセット品を手に持ち、支持軸2の先端部の接触部2bを電線3の外周に接触させた状態で、マークバンド1を指で支持軸2の先端側に押しゆく。そうすると、マークバンド2は線状ガイド2bに案内されて接触部2bに進み、接触部2bを通過する際にスリット1aが押し広げられて拡径し、スリット1a部分から電線3の外周に嵌まり込む。これにより、マークバンド1が電線3に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭55-169013号公報
【文献】実公昭36-29945号公報
【文献】特公昭58-42924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記のようなマークバンドを人手によらず効率的に電線に装着することができるマークバンド装着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、縮拡径可能な分割リングの形態を有する複数のマークバンドを支持軸に挿入して構成されるマークバンドセットと、前記マークバンドセットを基台上に保持するマークバンドセット保持部と、前記マークバンドセット保持部で保持された前記マークバンドセットの前記マークバンドを前記支持軸の一端部側に押圧して、所定数の前記マークバンドを前記支持軸の一端部から押し出す第1押圧部材と、自然状態の前記マークバンドの内径よりも小径になった先端部と、前記先端部と円滑に繋がり、自然状態の前記マークバンドの内径よりも大径の拡径部とを有し、前記第1押圧部材により前記支持軸の一端部から押し出された前記マークバンドを前記先端部で受け取る中空軸状のマークバンド受取ピンと、前記マークバンド受取ピンの前記先端部で受取られた前記マークバンドを押圧し、前記拡径部に移送して拡径させると共に、前記マークバンドを装着すべき電線の端部が、前記拡径部の後端部の側から前記拡径部の内周部に挿入された状態で、前記拡径部に移送された前記マークバンドを押圧し、前記拡径部の後端部から押し出して、前記電線の外周部に嵌着させる第2押圧部材と、を備えたマークバンド装着装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マークバンドを人手によらず効率的に電線に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】端部に圧着端子を取り付けた電線の例を示す概略図である。
図2】マークバンドと圧着端子を取り付ける前の電線を示す概略図である。
図3】実施形態に係るマークバンド装着装置を上方から見た概略図である。
図4a】インデックステーブルの回転駆動制御により、選択された単位ユニットが第1位置P1に位置するマークバンド受取ピンと対向する位置まで移動した状態を上方から見た概略図である。
図4b】第1押圧部材により、複数のマークバンドが支持軸の後端部側に押圧され、1つのマークバンドが支持軸の後端部から押し出されて、マークバンド受取ピンの先端部に受け取られた状態を上方から見た概略図である。
図5】選択された単位ユニットUが、第1位置P1に位置するマークバンド受取ピンと対向する位置まで移動した状態を側方から見た概略図である。
図6】可動台の作動により、マークバンド受取ピンが第2押圧部材と対向する第2位置P2まで移動した状態を側方から見た概略図である。
図7】マークバンド受取ピンと電線の端部が、図6に示す状態から、それぞれ第2押圧部材の側に所定距離だけ移動した状態を側方から見た概略図である。
図8a】マークバンド受取が、図6に示す第2位置P2に位置する状態を上方から見た概略図である。
図8b】マークバンド受取ピンが、図6に示す第2位置P2から第2押圧部材の側に所定距離だけ移動して、図7に示す位置に達した状態を上方から見た概略図である。
図9a】マークバンドが第2押圧部材に押圧されて、マークバンド受取ピンの拡径部の後端部まで移動した状態を上方から見た概略図である。
図9b】ロボットハンドの作動により、電線の端部がマークバンド受取ピンの側に所定距離だけ移動し、ガイド部材を介してマークバンド受取ピンの拡径部の後端部の内周部に挿入された状態を上方から見た概略図である。
図10】電線の端部がマークバンド受取ピンの拡径部の後端部の内周部に挿入され、ガイド部材のガイド面が開かれた状態を上方から見た概略図である。
図11】マークバンド受取ピンおよびガイド部材がさらに第2押圧部材の側に所定距離だけ移動し、マークバンドがマークバンド受取ピンの後端部から押し出されて、電線の端部の外周部に嵌着した状態を上方から見た概略図である。
図12a】複数のマークバンドを支持軸に挿入して構成される市販のマークバンドセット品を示す概略図である。
図12b】支持軸の横断面とマークバンドの端面を示す概略図である。
図13】市販のマークバンドセット品を用いて、マークバンドを電線に装着する作業を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、一端部に接続端子、例えば圧着端子4を取り付けた電線3を示している。この例の電線3では、圧着端子4に隣接してマークバンド1が装着され、さらに、マークバンド1に隣接してマークチューブ5が装着されている。例えば、マークバンド1は、当該電線3を接続する交流回路の相や直流回路の極性等に応じて予め定められた色彩を有するカラーバンドである。また、マークチューブ5は、当該電線3を接続する機器、線番号、端子番号等の情報を、その外周面に数字、文字、記号、2次元バーコード等で表示したものである。図示は省略するが、電線3の他端部も同様の構成になっている。
【0011】
マークバンド1は、図12a及び図12bに示すマークバンド1と同じ形態の環体である。すなわち、マークバンド1は、スリット1aが設けられた合成樹脂製の分割リングの形態を有し、スリット1aを押し広げる方向に外力が加わると拡径し、この外力がなくなると縮径して自然状態に戻る。自然状態におけるマークバンド1の内径は、装着すべき電線3の外径(絶縁被覆を含む)よりも小さい。この実施形態では、交流回路の相や直流回路の極性等に応じて予め色決めされた4色(例えば、青、赤、黒、黄)のマークバンド1を用意し、各色について、同一色の複数のマークバンド1を支持軸2に挿入してマークバンドセットAを構成した。このマークバンドセットAは、特別に設計し製作したものであってもよいが、この実施形態では、図12a及び図12bに示すような市販のマークバンドセット品をマークバンドセットAとして使用する。
【0012】
図2は、マークバンド1と圧着端子4を取り付ける前の電線3を示している。電線3の端部は、圧着端子4を接続するために、最端部3aの絶縁被覆が除去されている。そして、絶縁被覆が除去された最端部3aから電線3の中央側に所定のスペースを空けてマークチューブ5が装着されている。この実施形態に係るマークバンド装着装置は、図2に示す態様で供給される電線3の端部(最端部3aとマークチューブ5との間の部位)にマークバンド1を自動で装着する。
【0013】
図3は、この実施形態に係るマークバンド装着装置を上方から見た概略図である。
【0014】
この実施形態のマークバンド装着装置は、同一色の複数のマークバンド1を支持軸2に挿入して構成されるマークバンドセットAと、基台としての位置決めテーブル、例えばインデックステーブル(回転テーブル)6と、マークバンドセットAをインデックステーブル6の上面側で保持するマークバンドセット保持部7(7a、7b)と、マークバンド受取ピン8と、第1押圧部材9と、後述する第2押圧部材10(図3は第2押圧部材10の図示を省略)とを主要な要素として構成される。インデックステーブル6は、図示されていない制御部により一方向又は双方向(図3に示す例では反時計方向)に回転駆動制御される。
【0015】
この実施形態では、マークバンドセットA、マークバンドセット保持部7(7a、7b)および第1押圧部材9を含む構造体を単位ユニットUとして、12個の同一構造の単位ユニットU1~U12を、それぞれインデックステーブル6の半径方向に向けて、インデックステーブル6の上面に円周方向等間隔で配置している。12個の単位ユニットU1~U12は、例えば、単位ユニットU1~U3におけるマークバンドセットAのマークバンド1は青色、U4~U6におけるマークバンドセットAのマークバンド1は赤色、U7~U9におけるマークバンドセットAのマークバンド1は黒色、U9~U12におけるマークバンドセットAのマークバンド1は黄色である。
【0016】
マークバンド受取ピン8は、後述する可動台12(図3は可動台12の図示を省略)に取り付けられ、常時は、その軸線をインデックステーブル6の半径方向に向けた状態で、インデックステーブル6の外周側、かつ、インデックステーブル6の上面よりも所定寸法だけ上方の所定位置に位置する。この実施形態では、このマークバンド受取ピン8の位置を第1位置P1という。インデックステーブル6の制御部(図示省略)は、単位ユニットU1~U12の中から、電線3に装着すべき所定色のマークバンド1(マークバンドセットA)を保持した一の単位ユニットUを選択し、当該単位ユニットUが、第1位置P1に位置するマークバンド受取ピン8と対向する位置に来るように、インデックステーブル6を回転駆動制御する。
【0017】
図4aは、インデックステーブル6の回転駆動制御により、上記の選択された単位ユニットUが、第1位置P1に位置するマークバンド受取ピン8と対向する位置まで移動した状態を上方から見た概略図である。マークバンドセット保持部7(7a、7b)は、インデックステーブル6の上面の所定位置に固定された台座11に取り付けられ、支持軸2の先端側で接触部2bの部位を両側から把持するように保持する第1保持部7aと、支持軸2の後端側でマークバンド1の外周部を両側から把持するように保持する第2保持部7bとを備えている。第1保持部7aは、支持軸2を移動不能な状態で保持し、第2保持部7bは、マークバンド1を支持軸2の軸線方向に移動可能な状態で保持する。マークバンドセット保持部7(7a、7b)で保持されたマークバンドセットAの支持棒2の軸線は、第1位置P1に位置するマークバンド受取ピン8の軸線と同軸(略同軸を含む)になる。
【0018】
第1押圧部材9は、マークバンド1の端面に当接可能な形態を有し、マークバンドセットAの支持軸2に沿ってスライド移動可能な状態で台座11に取り付けられ、図示されていないリニアアクチュエータ等の駆動手段によってスライド駆動される。第1押圧部材9は、マークバンドセットAにおける複数のマークバンド1よりも支持軸2の先端側に位置し、支持軸2の後端側にスライド駆動されることにより、図4(b)に示すように、複数のマークバンド1を支持軸2の後端部側に押圧して、所定数、例えば1つのマークバンド1を支持軸2の後端部から押し出す。
【0019】
マークバンド受取ピン8は、中空軸状に形成され、自然状態のマークバンド1の内径よりも小径になった先細り円錐筒状の先端部8aと、先端部8aと円滑に繋がり、自然状態のマークバンド1の内径よりも大径になった円筒状の拡径部8bとを有する。第1押圧部材9により、支持軸2の後端部から押し出されたマークバンド1は、マークバンド受取ピン8の先細り円錐筒状の先端部8aに受け取られる。
【0020】
図5は、上記の選択された単位ユニットUが、第1位置P1に位置するマークバンド受取ピン8と対向する位置まで移動した状態を側方から見た概略図である(図4bに示す状態)。マークバンド受取ピン8は、可動台12に固定され、常時は第1位置P1に位置する。可動台12は、マークバンド受取ピン8が取り付けられ、マークバンド受取ピン8の軸線方向に沿って可動な上部可動部12aと、上下方向に可動な下部可動部12bと、上部可動部12aと下部可動部12bを上記各方向にそれぞれ作動させる駆動部(図示省略)とで構成される。また、この実施形態では、後述するガイド部材13が上部可動部12aに取り付けられている。ガイド部材13は、マークバンド1を装着すべき電線3の端部をマークバンド受取ピン8の拡径部8bの後端部の内周部に案内する役割を持つ。
【0021】
第1位置P1に位置するマークバンド受取ピン8の下方側に、取付部材14に取り付けられた第2押圧部材10が固定的に配置されている。マークバンド1が図4(b)に示す態様で支持軸2の後端部から押し出され、第1位置P1に位置するマークバンド受取ピン8の先端部8aに受け取られると、上部可動部12aが、インデックステーブル6から遠ざかるように、マークバンド受取ピン8の軸線方向に作動し、さらに下部可動部12bが下方向に作動する。この可動台12の作動により、マークバンド1を受け取ったマークバンド受取ピン8およびガイド部材13は上記の軸線方向と下方向に移動し、図6に示すように、マークバンド受取ピン8は、第2押圧部材10との干渉を避けるようにして、その先端部8aが第2押圧部材10と対向する所定位置まで移動する。この実施形態では、このマークバンド受取ピン8の位置を第2位置P2という。第2位置P2に移動したマークバンド受取ピン8およびガイド部材13の後方には、電線挿入部、例えばロボットハンド15に保持された電線3が待機する。ロボットハンド15は、電線3の端部を把持し、電線3の端部を、マークバンド受取ピン8の軸線方向に移動させる機能を有する。
【0022】
図6に示す状態から、上部可動部12aがマークバンド受取ピン8の軸線方向に作動して、マークバンド受取ピン8およびガイド部材13を第2押圧部材10の側に所定距離だけ移動させ、さらにロボットハンド15が作動して、電線3の端部をマークバンド受取ピン8の側に所定距離だけ移動させる。図7は、マークバンド受取ピン8およびガイド部材13と電線3の端部が、それぞれ上記の所定距離だけ移動した状態を示している。
【0023】
図8aは、マークバンド受取ピン8およびガイド部材13が、図6に示す第2位置P2に位置する状態(上方から見た状態)を示し、図8bは、マークバンド受取ピン8およびガイド部材13が、図6に示す第2位置P2から第2押圧部材10の側に上記の所定距離だけ移動して、図7に示す位置に達した状態(上方から見た状態)を示している。第2押圧部材10は、マークバンド1の端面に当接可能な形態を有し、マークバンド受取ピン8およびガイド部材13が図8aに示す第2位置P2から第2押圧部材10の側に移動すると、マークバンド受取ピン8の先端部8aに受け取られたマークバンド1が第2押圧部材10に押圧されて、拡径部8bに移送されてゆく。拡径部8bに移送されたマークバンド1は、拡径部8bで拡径されて、電線3(絶縁被覆を含む)の外径よりも大径になる。図8bに示すように、マークバンド受取ピン8およびガイド部材13は、マークバンド1が第2押圧部材10に押圧され、拡径部8bの後端部まで移動した時点で一旦停止する。
【0024】
図9aは、マークバンド1が第2押圧部材10に押圧されて、拡径部8bの後端部まで移動した状態(図7及び図8bに示す状態}を示し、図9bは、ロボットハンド15の作動により、電線3の端部がマークバンド受取ピン8の側に所定距離だけ移動し、ガイド部材13を介してマークバンド受取ピン8の拡径部8bの後端部の内周部に挿入された状態を示している。ガイド部材13は、マークバンド受取ピン8の拡径部8bの後端部と対向するように配置され、ガイド部材13の内周部には、ガイド部材13の先端から後端に向かって漸次に拡径した円錐状のガイド面13aが設けられている。ガイド面13aの先端部と後端部はそれぞれ開口し、ガイド面13aの先端部は、電線3の外径(絶縁被覆を含む)に適合する内径を有すると共に、マークバンド受取ピン8の拡径部8bの後端部と対向する。ロボットハンド15の作動により、マークバンド受取ピン8の側に移動する電線3の端部は、ガイド部材13のガイド面13aの後端部からガイド面13aに内部に入り、ガイド面13aに案内されながら、ガイド面13aの先端部を通って拡径部8bの後端部の内周部に挿入される。図9bに示すように、ロボットハンド15は、電線3の端部が拡径部8bの後端部の内周部に所定寸法だけ挿入された時点で一旦停止する。
【0025】
図10に示すように、ガイド部材13は、ガイド面13aの軸線に沿って分割された左右の分割体13b、13cで構成されており、分割体13b、13cの少なくとも一方はガイド面13aを開くように左右方向に可動である。電線3の端部が拡径部8bの後端部の内周部に所定寸法だけ挿入され、ロボットハンド15の作動が停止すると、分割体13b、13cが作動して、ガイド面13aが左右方向に開かれる。
【0026】
その後、上部可動部12aがマークバンド受取ピン8の軸線方向に作動し、図11に示すように、マークバンド受取ピン8およびガイド部材13がさらに第2押圧部材10の側(同図で左側)に所定距離だけ移動する。これにより、拡径部8bの後端部に移動したマークバンド1が第2押圧部材10に押圧され、拡径部8bの後端部から押し出されて、電線3の端部の外周部に乗り移る。そして、電線3の端部の外周部に乗り移ったマークバンド1は、弾性復元力により縮径して、電線3の端部の外周部に嵌着する。
【0027】
以上により、電線3の一端部へのマークバンド1の装着が完了する。マークバンド1が一端部に装着された電線3は、ロボットハンド15の作動により、マークバンド受取ピン8の拡径部8bの後端部の内周部から抜き出されて、所定箇所に移動する。電線3の他端部へのマークバンド1の装着も以上と同じ態様で行われる。このようにして、両端部にマークバンド1が装着された電線3は、圧着端子4を圧着(接続)する工程に送られる。
【0028】
上記の実施形態では、第2押圧部材10が固定的に配置され、マークバンド受取ピン8がその軸線方向に沿って第2押圧部材10の側に移動することにより、第2押圧部材10によるマークバンド1の押圧が行われるが、第2押圧部材10がマークバンド受取ピン8の軸線方向に沿ってマークバンド受取ピン8の側に移動することにより、あるいは、マークバンド受取ピン8と第2押圧部材10の双方がマークバンド受取ピン8の軸線方向に沿って互いの側に移動することにより、第2押圧部材10によるマークバンド1の押圧が行われる構成としてもよい。
【0029】
また、第1押圧部材9により支持軸2の後端部から押し出されたマークバンド1を受け取る第1位置P1と、第2押圧部材10と対向する第2位置P2との間で、マークバンド受取ピン8を移動させる際、上記の実施形態では、可動台12をマークバンド受取ピン8の軸線方向と上下方向に作動させるが、例えば、第2押圧部材10がインデックステーブル6の外周部分の真下又は真上に配置されているような場合、可動台12を上下方向に作動させることにより、マークバンド受取ピン8を、第2押圧部材10と干渉させることなく、第1位置P1と第2位置P2との間で移動させることができる。また、例えば、第2押圧部材10が第1位置P1に位置するマークバンド受取ピン8の軸線方向と水平方向に直交する位置に配置されている場合、可動台12をマークバンド受取ピン8の軸線方向と回転方向に可動に構成し、可動台12を回転方向に90度作動させることにより、マークバンド受取ピン8を、第1位置P1と第2位置P2(第2押圧部材10と対向する)との間で移動させることができる。
【0030】
また、上記の実施形態では、位置決めテーブルとしてインデックステーブル(回転テーブル)6を用いているが、インデックステーブル6に代えて、1軸(X軸)又は2軸(X軸及びY軸)方向に位置決め可能な位置決めテーブルを用いてもよい。この場合、複数の単位ユニットU(U1~U12)を、それぞれ位置決めテーブルのY軸方向に向けて、位置決めテーブルの上面にX軸方向所定間隔で配置し、選択された一の単位ユニットUのマークバンドセットAの前記支持軸2が、第1位置P1に位置するマークバンド受取ピン8の先端部8aと対向する位置に来るように位置決めテーブルをX軸方向に駆動制御する。例えば、第2押圧部材10を、第1位置P1に位置するマークバンド受取ピン8の軸線方向と水平方向に直交する位置に配置すると共に、可動台12をマークバンド受取ピン8の軸線方向と回転方向に可動に構成し、可動台12を回転方向に90度作動させることにより、マークバンド受取ピン8を、第1位置P1と第2位置P2との間で移動させることができる。
【0031】
また、ロボットハンド15の作動により、電線3の端部をマークバンド受取ピン8の拡径部8bの後端部の内周部に挿入する動作は、マークバンド受取ピン8が第2位置P2に移動した時点(図6に示す状態)で行われるようにしてもよい。この場合、図6に示す状態でロボットハンド15を作動させ、電線3の端部をマークバンド受取ピン8の拡径部8bの後端部の内周部に挿入した後、可動台12の作動により、マークバンド受取ピン8およびガイド部材13を第2押圧部材10の側に移動させ、同時に、ロボットハンド15の作動により、電線3の端部をマークバンド受取ピン8およびガイド部材13の移動に追随して(同期して)、第2押圧部材10の側に移動させる。これにより、図7に示す状態に至る。
【符号の説明】
【0032】
1 マークバンド
1a スリット
2 支持軸
3 電線
6 インデックステーブル
7(7a、7b) マークバンドセット保持部
8 マークバンド受取ピン
8a 先端部
8b 拡径部
9 第1押圧部材
10 第2押圧部材
12(12a、12b) 可動台
13 ガイド部材
13a ガイド面
15 電線挿入部(ロボットハンド)
U(U1~U12) 単位ユニット
P1 第1位置
P2 第2位置
【要約】      (修正有)
【課題】マークバンドを人手によらず効率的に電線に装着するマークバンド装着装置を提供する。
【解決手段】マークバンド装着装置は、複数のマークバンド1を支持軸2に挿入して構成されるマークバンドセットA、マークバンドセットをインデックステーブル6上に保持するマークバンドセット保持部7、マークバンドセットのマークバンドを支持軸の後端部に押圧してマークバンドを支持軸の一端部から押し出す第1押圧部材9、第1押圧部材により支持軸の後端部から押し出されたマークバンドを先端部で受け取る中空軸状のマークバンド受取ピン8及びマークバンド受取ピンの先端部8aで受け取られたマークバンドを押圧し、拡径部8bに移送して拡径させると共に、電線の端部が拡径部の後端部の側から拡径部の内周部に挿入された状態で、拡径部に移送されたマークバンドを押圧し、電線の外周部に嵌着させる、取付部材14に取り付けられた第2押圧部材10を備える。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10
図11
図12a
図12b
図13