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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/63 20210101AFI20250124BHJP
   C25B 13/02 20060101ALI20250124BHJP
   C25B 13/04 20210101ALI20250124BHJP
   C25B 13/07 20210101ALI20250124BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20250124BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20250124BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20250124BHJP
   H01M 8/1213 20160101ALI20250124BHJP
   H01M 8/1226 20160101ALI20250124BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20250124BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20250124BHJP
【FI】
C25B9/63
C25B13/02 301
C25B13/04 301
C25B13/07
C25B1/23
C25B9/00 Z
C25B15/08 302
H01M8/1213
H01M8/1226
H01M8/12 101
C25B9/00 A
C25B1/042
H01M8/12 102A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024505990
(86)(22)【出願日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2023005285
(87)【国際公開番号】W WO2023171276
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2024-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2022035314
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】千葉 春香
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 玄太
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-251246(JP,A)
【文献】特開2020-149970(JP,A)
【文献】特開2020-149971(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181922(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-15/08
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層、第2電極層、及び前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置される電解質層を有するセル本体部と、
前記セル本体部を支持する第1主面、前記第1主面に繋がる側面、前記第1主面の反対側に設けられ前記側面に繋がる第2主面、及び複数の供給孔を有する板状の金属支持体と、
セラミック材料によって構成され、前記金属支持体の前記側面の少なくとも一部を覆う被覆層と、
を備え、
前記被覆層は、前記電解質層に接続され、
前記複数の供給孔は、前記金属支持体の前記第1主面及び前記第2主面に開口し、かつ、前記金属支持体の前記側面に開口しておらず、
前記金属支持体の前記側面の延在方向に垂直な断面において、前記被覆層は、非連続である、
電気化学セル
【請求項2】
第1電極層、第2電極層、及び前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置される電解質層を有するセル本体部と、
前記セル本体部を支持する第1主面、前記第1主面に繋がる側面、前記第1主面の反対側に設けられ前記側面に繋がる第2主面、及び複数の供給孔を有する板状の金属支持体と、
セラミック材料によって構成され、前記金属支持体の前記側面の少なくとも一部を覆う被覆層と、
金属支持体の前記第2主面に接合され、前記金属支持体との間に流路を形成する流路部材と、
を備え、
前記被覆層は、前記電解質層に接続され、
前記複数の供給孔は、前記金属支持体の前記第1主面及び前記第2主面に開口し、かつ、前記金属支持体の前記側面に開口しておらず、
前記流路部材の側面の少なくとも一部は、前記被覆層によって覆われている、
電気化学セル
【請求項3】
前記被覆層は、前記電解質層と一体的に形成され、
前記セラミック材料は、前記電解質層の構成材料と同じである、
請求項1又は2に記載の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学セル(電解セル、燃料電池など)において、金属支持体によってセル本体部を支持する構造が知られている。例えば、特許文献1には、第1電極層、電解質層、及び第2電極層がこの順で金属支持体の主面上に積層されたセル本体部を備える電気化学セルが開示されている。金属支持体は、第1電極層へ気体を供給するための供給孔を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-155337号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属支持体は機械的強度に優れている一方で保温性が低いため、セル本体部の温度を適切な温度範囲に維持しにくくなってしまう。
【0005】
本発明の課題は、保温性を向上可能な電気化学セルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面に係る電気化学セルは、セル本体部と、板状の金属支持体と、被覆層とを備える。セル本体部は、第1電極層、第2電極層、及び電解質層を有する。電解質層は、第1電極層と第2電極層との間に配置される。金属支持体は、セル本体部を支持する第1主面、及び複数の供給孔を有する。被覆層は、セラミック材料によって構成され、金属支持体の側面の少なくとも一部を覆う。
【0007】
本発明の第2側面に係る電気化学セルは、上記第1側面に係り、被覆層は、電解質層に接続される。
【0008】
本発明の第3側面に係る電気化学セルは、上記第2側面に係り、被覆層は、電解質層と一体的に形成され、セラミック材料は、電解質層の構成材料と同じである。
【0009】
本発明の第4側面に係る電気化学セルは、上記第2又は第3側面に係り、金属支持体の側面に垂直な断面において、被覆層は、非連続である。
【0010】
本発明の第5側面に係る電気化学セルは、上記第1側面に係り、被覆層は、電解質層から離れている。
【0011】
本発明の第6側面に係る電気化学セルは、上記第1乃至第5側面のいずれかに係り、金属支持体の第2主面に接合され、金属支持体との間に流路を形成する流路部材を備え、流路部材の側面の少なくとも一部は、被覆層によって覆われている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、保温性を向上可能な電気化学セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る電解セルの構成を示す断面図である。
図2図2は、実施形態に係る金属支持体の側面に垂直な拡大断面である。
図3図3は、変形例1に係る電解セルの構成を示す断面図である。
図4図4は、変形例2に係る電解セルの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(電解セル1)
図1は、実施形態に係る電解セル1の構成を示す断面図である。電解セル1は、本発明に係る「電気化学セル」の一例である。
【0015】
電解セル1は、セル本体部10、金属支持体20、流路部材30、及び被覆層40を備える。
【0016】
[セル本体部10]
セル本体部10は、水素極層6(カソード)、電解質層7、反応防止層8、及び酸素極層9(アノード)を有する。水素極層6、電解質層7、反応防止層8、及び酸素極層9は、この順で金属支持体20側から積層されている。水素極層6、電解質層7、及び酸素極層9は必須の構成であり、反応防止層8は任意の構成である。
【0017】
[水素極層6]
水素極層6は、金属支持体20と電解質層7との間に配置される。水素極層6は、金属支持体20によって支持される。詳細には、水素極層6は、金属支持体20の第1主面20S上に配置される。水素極層6は、金属支持体20の第1主面20Sのうち複数の供給孔21が設けられた領域を覆う。水素極層6は、各供給孔21内に入り込んでいてよい。水素極層6は、本発明に係る「第1電極層」の一例である。
【0018】
水素極層6には、各供給孔21を介して原料ガスが供給される。原料ガスは、CO及びHOを含む。原料ガスは、本発明に係る「気体」の一例である。水素極層6は、下記(1)式に示す共電解の電気化学反応に従って、原料ガスから、H、CO、及びO2-を生成する。
・水素極層6:CO+HO+4e→CO+H+2O2-・・・(1)
【0019】
水素極層6は、電子伝導性を有する多孔質材料によって構成される。水素極層6は、酸化物イオン伝導性を有していてよい。水素極層6は、例えば、8mol%イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)、カルシア安定化ジルコニア(CSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、ガドリニウムドープセリア(GDC)、サマリウムドープセリア(SDC)、(La,Sr)(Cr,Mn)O、(La,Sr)TiO、Sr(Fe,Mo)、(La,Sr)VO、(La,Sr)FeO、及びこれらのうち2つ以上を組み合わせた混合材料、或いは、これらのうち1つ以上とNiOとの複合物によって構成することができる。
【0020】
水素極層6の気孔率は特に制限されないが、例えば5%以上70%以下とすることができる。水素極層6の厚さは特に制限されないが、例えば1μm以上100μm以下とすることができる。
【0021】
水素極層6の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法(溶射法、エアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法など)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などを用いることができる。
【0022】
[電解質層7]
電解質層7は、水素極層6及び酸素極層9の間に配置される。電解質層7は、水素極層6の全体を覆う。電解質層7の外縁は、金属支持体20の第1主面20Sに接合される。これによって、水素極層6側と酸素極層9側との間の気密性を確保できるため、金属支持体20と電解質層7との間を別途封止する必要がない。
【0023】
電解質層7は、水素極層6において生成されたO2-を酸素極層9に伝達させる。電解質層7は、酸化物イオン伝導性を有する緻密質材料によって構成される。電解質層7は、例えば、8YSZ、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリニウムドープセリア)などによって構成することができる。
【0024】
電解質層7は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質層7は、例えば、YSZ(8YSZ)、GDC、ScSZ、SDC、LSGM(ランタンガレート)などによって構成することができる。
【0025】
電解質層7の気孔率は特に制限されないが、例えば0.1%以上7%以下とすることができる。電解質層7の厚さは特に制限されないが、例えば1μm以上100μm以下とすることができる。
【0026】
電解質層7の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などを用いることができる。
【0027】
[反応防止層8]
反応防止層8は、電解質層7及び酸素極層9の間に配置される。反応防止層8は、電解質層7を介して水素極層6の反対側に配置される。
【0028】
反応防止層8は、電解質層7と酸素極層9とが反応して電気抵抗の大きい反応層が形成されることを抑制する。反応防止層8は、酸化物イオン伝導性材料によって構成される。反応防止層8は、GDC、SDCなどによって構成することができる。
【0029】
反応防止層8の気孔率は特に制限されないが、例えば0.1%以上50%以下とすることができる。反応防止層8の厚さは特に制限されないが、例えば1μm以上50μm以下とすることができる。
【0030】
反応防止層8の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などを用いることができる。
【0031】
[酸素極層9]
酸素極層9は、電解質層7を基準として水素極層6の反対側に配置される。本実施形態では、電解セル1が反応防止層8を備えているため、酸素極層9は反応防止層8上に配置される。電解セル1が反応防止層8を備えていない場合、酸素極層9は電解質層7上に配置される。酸素極層9は、本発明に係る「第2電極層」の一例である。
【0032】
酸素極層9は、下記(2)式の化学反応に従って、水素極層6から電解質層7を介して伝達されるO2-からOを生成する。
・酸素極層9:2O2-→O+4e・・・(2)
【0033】
酸素極層9は、酸化物イオン伝導性及び電子伝導性を有する多孔質材料によって構成される。酸素極層9は、例えば(La,Sr)(Co,Fe)O、(La,Sr)FeO、La(Ni,Fe)O、(La,Sr)CoO、及び(Sm,Sr)CoOのうち1つ以上と酸化物イオン伝導材料(GDCなど)との複合物によって構成することができる。
【0034】
酸素極層9の気孔率は特に制限されないが、例えば20%以上60%以下とすることができる。酸素極層9の厚さは特に制限されないが、例えば1μm以上100μm以下とすることができる。
【0035】
酸素極層9の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などを用いることができる。
【0036】
[金属支持体20]
金属支持体20は、セル本体部10を支持する。金属支持体20は、板状に形成される。金属支持体20は、平板状であってもよいし、曲板状であってもよい。金属支持体20は電解セル1の強度を保つことができればよく、その厚みは特に制限されないが、例えば0.1mm以上2.0mm以下とすることができる。
【0037】
金属支持体20は、複数の供給孔21、第1主面20S、第2主面20T、及び側面20Rを有する。
【0038】
各供給孔21は、第1主面20Sから第2主面20Tまで金属支持体20を貫通する。各供給孔21は、第1主面20S及び第2主面20Tに開口する。各供給孔21は、第1主面20Sのうち水素極層6に接合される領域に形成される。供給孔21は、金属支持体20と流路部材30との間に形成される流路30aに繋がる。
【0039】
各供給孔21は、機械加工(例えば、パンチング加工)、レーザ加工、或いは、化学加工(例えば、エッチング加工)などによって形成することができる。或いは、金属支持体20が多孔質金属によって構成される場合、各供給孔21は多孔質金属内の気孔であってよい。従って、各供給孔21は、第1主面20S及び第2主面20Tに垂直に形成されていなくてよい。
【0040】
第1主面20Sには、セル本体部10が接合される。第2主面20Tには、流路部材30が接合される。第1主面20Sは、第2主面20Tの反対側に設けられる。側面20Rは、第1主面20S及び第2主面20Tそれぞれに繋がる。側面20Rは、第1主面20S及び第2主面20Tそれぞれに対して垂直であってよいが、第1主面20S及び第2主面20Tそれぞれに対して傾斜していてもよい。側面20Rは、平面状であってよいが、部分的又は全体的に湾曲或いは屈曲していてもよいし、表面に凹凸が形成されていてもよい。
【0041】
金属支持体20は、金属材料によって構成される。例えば、金属支持体20は、Cr(クロム)を含有する合金材料によって構成される。このような金属材料としては、Fe-Cr系合金鋼(ステンレス鋼など)やNi-Cr系合金鋼などが挙げられる。金属支持体20におけるCrの含有率は特に制限されないが、4質量%以上30質量%以下とすることができる。
【0042】
金属支持体20は、Ti(チタン)やZr(ジルコニウム)を含有していてもよい。金属支持体20におけるTiの含有率は特に制限されないが、0.01mol%以上1.0mol%以下とすることができる。金属支持体20におけるZrの含有率は特に制限されないが、0.01mol%以上0.4mol%以下とすることができる。金属支持体20は、TiをTiO(チタニア)として含有していてもよいし、ZrをZrO(ジルコニア)として含有していてもよい。
【0043】
金属支持体20は、金属支持体20の構成元素が酸化することによって形成される酸化皮膜を表面に有していてよい。酸化皮膜としては、例えば酸化クロム膜が代表的である。酸化皮膜は、金属支持体20の表面を部分的又は全体的に覆う。また、酸化皮膜は、各供給孔21の内壁面を部分的又は全体的に覆っていてもよい。
【0044】
[流路部材30]
流路部材30は、金属支持体20の第2主面20Tに接合される。流路部材30は、金属支持体20との間に流路30aを形成する。流路30aには、原料ガスが供給される。流路30aに供給された原料ガスは、金属支持体20の各供給孔21を介して、セル本体部10の水素極層6に供給される。
【0045】
流路部材30は、例えば、合金材料によって構成することができる。流路部材30は、金属支持体20と同様の材料によって形成されていてよい。この場合、流路部材30は、金属支持体20と実質的に一体であってよい。
【0046】
流路部材30は、側面30Rを有する。流路部材30の側面30Rは、金属支持体20の側面20Rに繋がる。流路部材30の側面30Rは、金属支持体20の側面20Rに対して傾斜していてよい。
【0047】
流路部材30は、枠体31及びインターコネクタ32を有する。枠体31は、流路30aの側方を取り囲む環状部材である。枠体31は、金属支持体20の第2主面20Tに接合される。インターコネクタ32は、電解セル1を外部電源又は他の電解セルと電気的に直列に接続する板状部材である。インターコネクタ32は、枠体31に接合される。
【0048】
このように、本実施形態に係る流路部材30では、枠体31及びインターコネクタ32が別部材となっているが、枠体31及びインターコネクタ32は一体であってよい。
【0049】
[被覆層40]
被覆層40は、セラミック材料によって構成される。被覆層40は、金属支持体20の側面20Rを覆う。これによって、金属支持体20からの放熱を抑制できるため、電解セル1の保温性を向上させることができる。その結果、セル本体部10や原料ガスの温度を適切な温度範囲に維持しやすくなる。
【0050】
被覆層40は、金属支持体20の側面20Rを全体的に覆っていることが好ましいが、金属支持体20の側面20Rを部分的に覆っていてもよい。
【0051】
被覆層40を構成するセラミック材料としては、電解質層7、反応防止層8、酸素極層9それぞれの構成材料のほか、LaおよびSrを含有するペロブスカイト形複合酸化物、Mn,Co,Ni,Fe,Cu等の遷移金属から構成されるスピネル型複合酸化物、ガラス材料などを用いることができる。被覆層40は、これらの材料が2層以上積層された積層体となっていてもよい。被覆層40は、金属支持体20の表面に形成される酸化皮膜(例えば、酸化クロム膜)とは異なる材料によって構成される。すなわち、金属支持体20の構成元素の酸化物は、被覆層40を構成するセラミック材料から除外される。
【0052】
本実施形態に係る被覆層40は、電解質層7の外縁に接合されている。これによって、被覆層40と電解質層7との隙間を介して金属支持体20から放熱することを抑制できるため、電解セル1の保温性をより向上させることができる。
【0053】
また、被覆層40を構成するセラミック材料が電解質層7の構成材料と同じである場合には、被覆層40を電解質層7と一体的に形成することができる。この場合、電解質層7を形成するときに被覆層40を併せて形成できるため、電解セル1の製造工程を簡素化できる。なお、被覆層40を電解質層7と一体的に形成した場合、電解質層7と被覆層40との間に界面は存在しない。
【0054】
ここで、図2は、実施形態に係る金属支持体20の側面20Rに垂直な断面の拡大図である。図2に示すように、被覆層40は、貫通孔41を有する。そのため、被覆層40は、断面視において非連続である。これによって、被覆層40が電解質層7に接合されていても、被覆層40の伸縮が電解質層7に伝わることを抑制できる。従って、被覆層40に引っ張られたり押されたりして電解質層7に損傷(例えば、クラックなど)が生じることを抑制できる。
【0055】
図2では、被覆層40が2つの貫通孔41を有しているが、貫通孔41の数は特に制限されない。また、被覆層40の平面視における貫通孔41の形状は特に限られないが、側面20Rの延在方向(図2の紙面に垂直な方向)に沿ってスリット状に延びていることが好ましい。これによって、被覆層40の伸縮を効率的に吸収できるため、電解質層7に損傷が生じることをより抑制できる。
【0056】
被覆層40の気孔率は特に制限されないが、例えば0.1%以上70%以下とすることができる。被覆層40の厚さは特に制限されないが、例えば0.1μm以上100μm以下とすることができる。また、被覆層40の被覆率は特に制限されないが、例えば20%以上100%以下 とすることができる。
【0057】
被覆層40の形成方法は特に制限されないが、金属支持体20の側面20Rにセラミック材料を含むスラリーを塗布することによって簡便に形成できる。
【0058】
(実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0059】
[変形例1]
上記実施形態において、被覆層40は電解質層7に接合されることとしたが、図3に示すように、被覆層40は電解質層7から離れていてもよい。この場合、被覆層40の伸縮が電解質層7に伝わることを確実に抑制できるため、電解セル1の保温性向上と電解質層7の損傷抑制とを両立させることができる。
【0060】
[変形例2]
上記実施形態において、被覆層40は、金属支持体20の側面20Rを覆うこととしたが、図4に示すように、流路部材30の側面30Rの少なくとも一部を更に覆っていることが好ましい。これによって、流路部材30からの放熱も抑制できるため、電解セル1の保温性を更に向上させることができる。
【0061】
[変形例3]
上記実施形態において、水素極層6はカソードとして機能し、酸素極層9はアノードとして機能することとしたが、水素極層6がアノードとして機能し、酸素極層9がカソードとして機能してもよい。この場合、水素極層6と酸素極層9の構成材料を入れ替えるとともに、水素極層6の外表面に原料ガスを流す。
【0062】
[変形例4]
上記実施形態では、電気化学セルの一例として電解セル1について説明したが、電気化学セルは電解セルに限られない。電気化学セルとは、電気エネルギーを化学エネルギーに変えるため、全体的な酸化還元反応から起電力が生じるように一対の電極が配置された素子と、化学エネルギーを電気エネルギーに変えるための素子との総称である。従って、電気化学セルには、例えば、酸化物イオン或いはプロトンをキャリアとする燃料電池が含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 セル
6 水素極層
7 電解質層
8 反応防止層
9 酸素極層
10 セル本体部
20 金属支持体
21 供給孔
20S 第1主面
20T 第2主面
20R 側面
30 流路部材
30a 流路
30R 側面
31 枠体
32 インターコネクタ
40 被覆層
41 貫通孔
図1
図2
図3
図4