IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニプロ株式会社の特許一覧 ▶ 原田電子工業株式会社の特許一覧

特許7625202生体用電極パッド付き収納ケースおよび生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置
<>
  • 特許-生体用電極パッド付き収納ケースおよび生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置 図1
  • 特許-生体用電極パッド付き収納ケースおよび生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置 図2
  • 特許-生体用電極パッド付き収納ケースおよび生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置 図3
  • 特許-生体用電極パッド付き収納ケースおよび生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置 図4
  • 特許-生体用電極パッド付き収納ケースおよび生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置 図5
  • 特許-生体用電極パッド付き収納ケースおよび生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置 図6
  • 特許-生体用電極パッド付き収納ケースおよび生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置 図7
  • 特許-生体用電極パッド付き収納ケースおよび生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置 図8
  • 特許-生体用電極パッド付き収納ケースおよび生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置 図9
  • 特許-生体用電極パッド付き収納ケースおよび生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置 図10
  • 特許-生体用電極パッド付き収納ケースおよび生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】生体用電極パッド付き収納ケースおよび生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/257 20210101AFI20250127BHJP
   A61B 5/332 20210101ALI20250127BHJP
   A61B 5/30 20210101ALI20250127BHJP
   A61B 5/276 20210101ALI20250127BHJP
   A61B 5/271 20210101ALI20250127BHJP
【FI】
A61B5/257
A61B5/332
A61B5/30
A61B5/276 200
A61B5/271
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021527656
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2020024659
(87)【国際公開番号】W WO2020262403
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019120222
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592059448
【氏名又は名称】原田電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】佐野 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 証英
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-037693(JP,A)
【文献】特表2016-504159(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043595(WO,A1)
【文献】特開2016-007447(JP,A)
【文献】特開2016-016110(JP,A)
【文献】特開2017-080439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25-5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の皮膚に装着される裏面に複数の電極が設けられた可撓性の装着シートからなる生体用電極パッドが取り付けられており、該生体用電極パッドで検出された電気的な生体信号を処理する生体信号処理回路ユニットを収納する生体用電極パッド付き収納ケースであって、
前記生体信号処理回路ユニットの収納領域を外部から仕切られた内部に有するケース本体が、前記装着シートと別部材とされて、該装着シートの表面側に配置されて裏面側に露出することなく該装着シートへ取り付けられていると共に、
該ケース本体には前記収納領域が開閉可能に設けられており、
該収納領域において前記生体信号処理回路ユニットが、該ケース本体に対して着脱可能とされて、該ケース本体から取り出せるようになっており、
前記ケース本体には、前記電極と前記生体信号処理回路ユニットとを電気的に接続する接続部材が、該ケース本体のケース底壁部を貫通して設けられている生体用電極パッド付き収納ケース。
【請求項2】
前記ケース本体が、前記収納領域を閉じた状態で水密構造とされている請求項1に記載の生体用電極パッド付き収納ケース。
【請求項3】
生体の皮膚に装着される裏面に複数の電極が設けられた可撓性の装着シートからなる生体用電極パッドが取り付けられており、該生体用電極パッドで検出された電気的な生体信号を処理する生体信号処理回路ユニットを収納する生体用電極パッド付き収納ケースであって、
前記装着シートが水蒸気透過性とされていると共に、
前記生体信号処理回路ユニットを収納するケース本体が、該装着シートの表面側に配置されており、
該ケース本体と該装着シートとが重ね合された対向面間には、外部空間につながる通気用隙間が設けられている生体用電極パッド付き収納ケース。
【請求項4】
前記ケース本体と前記装着シートとを相互に固定する複数の脚部が設けられており、それら複数の脚部間において前記通気用隙間が形成されている請求項に記載の生体用電極パッド付き収納ケース。
【請求項5】
前記装着シートが面方向に伸縮可能な弾性を有していると共に、前記電極へ導通された通電路の少なくとも一部が、該装着シートの面上において伸縮可能部分をもって形成されている請求項1~の何れか一項に記載の生体用電極パッド付き収納ケース。
【請求項6】
前記生体信号処理回路ユニットの収納領域を有する前記ケース本体が、前記装着シートに対して着脱可能に取り付けられている請求項1~の何れか一項に記載の生体用電極パッド付き収納ケース。
【請求項7】
生体の皮膚に装着されてその皮膚から電気的な生体信号を検出するために用いられる生体用電極パッドが付いた収納ケースであって、電源として電池を有してその生体用電極パッドが検出した生体信号の処理を行う生体信号処理回路ユニットを内部に水密かつ着脱可能に収納するための収納ケースにおいて、
前記生体用電極パッドが、
弾性的に伸縮可能かつ電気的に絶縁性を有するとともに、裏面側に生体の皮膚に装着されるのに適した粘着面を有する水蒸気透過性の装着シートと、
前記装着シートの裏面側に互いに間隔を空けて位置してその裏面側に露出する複数の電極と、
前記装着シートの裏面側の中央部に位置して電気的に絶縁被覆されるとともにその装着シートの開口から表面側に露出する複数の接続部と、
前記装着シートの裏面側に位置して電気的に絶縁被覆されるとともに少なくとも一部に伸縮可能部分を有して前記複数の電極と前記複数の接続部とをそれぞれ電気的に接続する電極接続配線と、
を具え、
前記収納ケースが、
前記生体用電極パッドの前記装着シートの表面側の中央部に複数の脚部を固定されるとともにそれらの脚部間でその装着シートの表面に対し部分的に隙間を形成するレセプタクルケースと、
前記レセプタクルケースに水密かつ着脱可能に嵌着されるカバーケースと、
前記装着シートの中央部の開口からその装着シートの表面側に露出する前記複数の接続部の各々と前記収納ケース内の前記生体信号処理回路ユニットとに弾性的に当接してそれらを電気的に接続するために前記レセプタクルケースの前記脚部内の開口および前記装着シートの中央部の開口を貫通してそれらの開口内に位置する弾性接続部材と、
を具える生体用電極パッド付き収納ケース。
【請求項8】
前記複数の電極は、不電極と複数の検出用電極とを含むことを特徴とする、請求項に記載の生体用電極パッド付き収納ケース。
【請求項9】
樹脂基板と、その樹脂基板の下面上に配置された前記複数の電極と、その樹脂基板の上面上に配置された前記複数の接続部と、その樹脂基板の上面上に配置されるとともに端部が前記樹脂基板を貫通して前記複数の電極と前記複数の接続部とをそれぞれ電気的に接続する電極接続配線とが、フレキシブル配線板を構成していることを特徴とする、請求項又はに記載の生体用電極パッド付き収納ケース。
【請求項10】
前記レセプタクルケースの前記複数の脚部が、そのレセプタクルケースに固定された基部と、その基部に着脱可能に嵌着されるとともに前記生体用電極パッドの前記装着シートの表面側の中央部に固定された先端部と、を有していることを特徴とする、請求項の何れか一項に記載の生体用電極パッド付き収納ケース。
【請求項11】
前記レセプタクルケースと前記カバーケースとの少なくとも一方が軟質樹脂で形成されていることを特徴とする、請求項10の何れか一項に記載の生体用電極パッド付き収納ケース。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載の生体用電極パッド付き収納ケースを用いた生体信号処理装置において、
前記生体用電極パッド付き収納ケースの内部に前記生体信号処理回路ユニットを収納した生体信号処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体用電極パッドが皮膚から検出した心電信号や筋電信号等の電気的な生体信号の記録や出力等の処理を行う生体信号処理回路ユニットを収納するための生体用電極パッド付き収納ケースおよび、生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体の皮膚に装着されてその皮膚から電気的な生体信号を検出する生体用電極パッドとしては従来、例えば非特許文献1記載のフクダ電子株式会社製イベント専用防水型電極パッド(TEC-07DEW)が知られている。この生体用電極パッドは、携帯型ホルター心電計に接続されてホルター心電図によるイベント検査のために用いられる。具体的には、中央部が少し幅広になった横長の長円状をなす装着シートを有しており、粘着面とされた該装着シートの下面には、その長手方向で中央の一つの不関電極を挟んで両端部に二つの検出用電極が配置されている。それらの電極からは、それぞれ装着シートの中央部の側端付近まで導電金属製の電極接続パターンが直線的に延出されており、更に、それらの電極接続パターンには、先端部にコネクタを持つ複合リード線の基端部から出た三本のリード線がそれぞれ接続されている。
【0003】
また、上述の如き生体用電極パッドが検出した生体信号の記録や出力等の処理を行う生体信号処理装置としては従来、例えば非特許文献2記載のフクダ電子株式会社製携帯型ホルター心電計(FM-190)が知られている。このホルター心電計は、携帯ケースに収納されるとともに、上記生体用電極パッドの複合リード線のコネクタを接続される。そして、かかるホルター心電計は、複合リード線および電極接続パターンを介して、三つの電極(上記の不関電極及び検出用電極)に電気的に接続され、その携帯ケースはホルター心電図の検査対象の患者等の生体の腕部にベルトで装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】http://www.fukuda.co.jp/medical/products/holter _ecg/pdf/holter_ecg.pdf :フクダ電子株式会社平成30年2月15日ダウンロード「ホルター心電図検査関連用品」中第61頁「ホルター心電図検査機器接続ガイド」および第65頁「ホルター心電図検査用誘導コード・中継・電極コード」
【文献】http://www.fukuda.co.jp/medical/products/holter _ecg/fm_190.html:フクダ電子株式会社平成30年2月19日ダウンロード「デジタルホルタ記録計FM-190」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の如き従来の生体用電極パッド付き収納ケースや生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置は、装着性などに関して未だ幾つかの改良の余地があった。本願発明は、装着性や装着感の向上という共通する課題に関して、少なくとも一つの改良を施した新規な構造の生体用電極パッド付き収納ケースおよび生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置を提供することを目的とする。
【0006】
具体的に、例えば、上記従来のシート状の生体用電極パッドでは、生体信号を検出できる範囲が狭いため充分な生体情報を得ることが困難であった。このため、装着シートを拡張して生体信号を検出できる範囲を広げることを検討したが、このようにすると、装着シートの両端部から中央部の側端付近まで直線的に延出された電極接続パターンで装着シートの伸縮が制約されて、生体用電極パッドが体動による体肢の変形に追従しきれず皮膚から剥がれ易くなり、また電極接続パターンが体動による体肢の変形に追従する伸縮で過度の部分的変形を生じて断線し易くなるという新たな問題が生じることが判明した。
【0007】
また、検査対象の患者等の生体の腕部にベルトで装着される携帯ケースに収納される上記従来の携帯型ホルター心電計は、上記生体用電極パッドに複合リード線を介して接続されるため、腕の動きや体のねじり等の体動によってリード線に張力が加わって生体用電極パッドが皮膚から剥がれ易いという問題があった。
【0008】
そこで本発明者は、先に特願2018-061754号にて、弾性的に伸縮可能かつ電気的に絶縁性を有するとともに、裏面側に生体の皮膚に装着されるのに適した粘着面を有する装着シートと、前記装着シートの裏面側に互いに間隔を空けて位置してその裏面側に露出する複数の電極と、前記装着シートの裏面側の中央部に位置して電気的に絶縁被覆されるとともにその装着シートの開口から表面側に露出する複数の接続部と、前記装着シートの裏面側に位置して電気的に絶縁被覆されるとともに蛇腹状に湾曲して延在して前記複数の電極と前記複数の接続部とをそれぞれ電気的に接続する電極接続配線と、を具える生体用電極パッドを提案した。
【0009】
また本発明者は、その生体用電極パッドの、生体の皮膚に装着されるのに適した粘着面と複数の電極とを裏面側に有する装着シートの表面側の中央部に固定されるケースと、前記ケース内に収容されるとともに、前記ケースおよび前記装着シートの中央部を貫通する接続部材を介して前記生体用電極パッドの裏面側の複数の電極の各々と電気的に接続されて、前記複数の電極により検出された生体信号の処理および処理結果の出力を行う生体信号処理回路基板と、前記ケース内に収容されて前記生体信号処理回路基板に電源を供給する電池と、を具える生体信号処理装置を上記生体用電極パッドと組み合わせて提案した。
【0010】
この生体信号処理装置と生体用電極パッドとの組み合わせについて本発明者がさらに研究を進めたところ、生体信号処理回路基板に対しケースおよび生体用電極パッドを着脱して、ケースおよび生体用電極パッドを殺菌・洗浄したり破損時に交換したりすることができると好適であるということが判明した。
【0011】
また、上記生体信号処理装置と生体用電極パッドとの組み合わせでは、生体信号処理回路基板を収容するケースを生体用電極パッドの表面に隙間なく貼り付け固定しているが、そのケースと生体用電極パッドの表面との間に通気のための隙間を空けると、水蒸気透過性シートを生体用電極パッドに用いて長時間装着の際の皮膚の蒸れを防止できるので好適であるということが判明した。
【0012】
また、良好な装着性や装着感を実現するためには、収納ケースの装着部分についても、生体用電極パッドにおいて皮膚に接触する裏面はできるだけ軟質であることが望ましいこともわかった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0014】
第一の態様は、生体の皮膚に装着される裏面に複数の電極が設けられた可撓性の装着シートからなる生体用電極パッドが取り付けられており、該生体用電極パッドで検出された電気的な生体信号を処理する生体信号処理回路ユニットを収納する生体用電極パッド付き収納ケースであって、前記生体信号処理回路ユニットの収納領域を外部から仕切られた内部に有するケース本体が、前記装着シートと別部材とされて、該装着シートの表面側に配置されて裏面側に露出することなく該装着シートへ取り付けられていると共に、該ケース本体には前記収納領域が開閉可能に設けられており、該収納領域において前記生体信号処理回路ユニットが、該ケース本体に対して着脱可能とされて、該ケース本体から取り出せるようになっており、前記ケース本体には、前記電極と前記生体信号処理回路ユニットとを電気的に接続する接続部材が、該ケース本体のケース底壁部を貫通して設けられているものである。
【0015】
第二の態様は、前記第一の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースにおいて、前記ケース本体が、前記収納領域を閉じた状態で水密構造とされているものである。
【0016】
【0017】
第三の態様は、生体の皮膚に装着される裏面に複数の電極が設けられた可撓性の装着シートからなる生体用電極パッドが取り付けられており、該生体用電極パッドで検出された電気的な生体信号を処理する生体信号処理回路ユニットを収納する生体用電極パッド付き収納ケースであって、前記装着シートが水蒸気透過性とされていると共に、前記生体信号処理回路ユニットを収納するケース本体が、該装着シートの表面側に配置されており、該ケース本体と該装着シートとが重ね合された対向面間には、外部空間につながる通気用隙間が設けられているものである。
【0018】
の態様は、前記第の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースにおいて、前記ケース本体と前記装着シートとを相互に固定する複数の脚部が設けられており、それら複数の脚部間において前記通気用隙間が形成されているものである。
【0019】
の態様は、前記第一~の何れかの態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースにおいて、前記装着シートが面方向に伸縮可能な弾性を有していると共に、前記電極へ導通された通電路の少なくとも一部が、該装着シートの面上において伸縮可能部分をもって形成されているものである。
【0020】
の態様は、前記第一~の何れかの態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースにおいて、前記生体信号処理回路ユニットの収納領域を有する前記ケース本体が、前記装着シートに対して着脱可能に取り付けられているものである。
【0021】
の態様は、生体の皮膚に装着されてその皮膚から電気的な生体信号を検出するために用いられる生体用電極パッドが付いた収納ケースであって、電源として電池を有してその生体用電極パッドが検出した生体信号の処理を行う生体信号処理回路ユニットを内部に水密かつ着脱可能に収納するための収納ケースにおいて、
前記生体用電極パッドが、
弾性的に伸縮可能かつ電気的に絶縁性を有するとともに、裏面側に生体の皮膚に装着されるのに適した粘着面を有する水蒸気透過性の装着シートと、
前記装着シートの裏面側に互いに間隔を空けて位置してその裏面側に露出する複数の電極と、
前記装着シートの裏面側の中央部に位置して電気的に絶縁被覆されるとともにその装着シートの開口から表面側に露出する複数の接続部と、
前記装着シートの裏面側に位置して電気的に絶縁被覆されるとともに少なくとも一部に伸縮可能部分を有して前記複数の電極と前記複数の接続部とをそれぞれ電気的に接続する電極接続配線と、
を具え、
前記収納ケースが、
前記生体用電極パッドの前記装着シートの表面側の中央部に複数の脚部を固定されるとともにそれらの脚部間でその装着シートの表面に対し部分的に隙間を形成するレセプタクルケースと、
前記レセプタクルケースに水密かつ着脱可能に嵌着されるカバーケースと、
前記装着シートの中央部の開口からその装着シートの表面側に露出する前記複数の接続部の各々と前記収納ケース内の前記生体信号処理回路ユニットとに弾性的に当接してそれらを電気的に接続するために前記レセプタクルケースの前記脚部内の開口および前記装着シートの中央部の開口を貫通してそれらの開口内に位置する弾性接続部材と、
を具えるものである。
【0022】
の態様は、前記第の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースにおいて、前記複数の電極は、不関電極と複数の検出用電極とを含むものである。
【0023】
の態様は、前記第又は第の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースにおいて、樹脂基板と、その樹脂基板の下面上に配置された前記複数の電極と、その樹脂基板の上面上に配置された前記複数の接続部と、その樹脂基板の上面上に配置されるとともに端部が前記樹脂基板を貫通して前記複数の電極と前記複数の接続部とをそれぞれ電気的に接続する電極接続配線とが、フレキシブル配線板を構成しているものである。
【0024】
の態様は、前記第の何れかの態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースにおいて、前記レセプタクルケースの前記複数の脚部が、そのレセプタクルケースに固定された基部と、その基部に着脱可能に嵌着されるとともに前記生体用電極パッドの前記装着シートの表面側の中央部に固定された先端部と、を有しているものである。
【0025】
十一の態様は、前記第の何れかの態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースにおいて、前記レセプタクルケースと前記カバーケースとの少なくとも一方が軟質樹脂で形成されているものである。
【0026】
十二の態様は、前記第一~十一の何れかの態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースを用いた生体信号処理装置において、前記生体用電極パッド付き収納ケースの内部に前記生体信号処理回路ユニットを収納した生体信号処理装置である。
【発明の効果】
【0027】
前記第一の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースでは、装着シートよりも柔軟性が劣りやすいケース本体が、可撓性の装着シートの表面側に配置される。これにより、ケース本体が直接に皮膚へ触れることが防止されて、装着時の違和感が抑えられることで装着性や装着感の向上が図られ得る。
【0028】
また、電気回路を備える生体信号処理回路ユニットが取外し可能とされていることから、一般に耐水性のない生体信号処理回路ユニットを取り外した状態で、装着シートや収納ケース(ケース本体を含む)を洗浄や殺菌等することが容易となる。これにより、装着状態での清潔性などが維持されることで装着性や装着感の向上が図られ得る。更に、生体信号処理回路ユニットを取り外すことで、装着シートや収納ケースを交換して、生体信号処理回路ユニットを再利用することも可能になる。
さらに、装着シートの裏面側の電極をケース本体内の生体信号処理回路ユニットへ通電させる接続部材を簡単な構造や短い経路で設けることが可能になる。特にケース本体において装着シートに重ね合わされる底壁部分を貫通して接続部材を設けることで、接続部材の外部への直接の露出を回避することもできる。
【0029】
前記第二の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースでは、ケース本体が水密構造とされることで、例えば収納領域において通電部材などの水気等を嫌う部位が存在していても、ケース本体を閉じた状態で洗浄や殺菌等の処理を容易に行うことができる。また、仮に生体信号処理回路ユニットがケース本体内に装着されたままでも、収納領域の水密性が確保されることで、生体への装着時に意図せずに水等がかかった際の不具合の発生が防止され得るし、生体に装着したままでのシャワーや入浴を許容することも可能になり、高度な水密性を実現することで、生体信号処理回路ユニットを装着したままでの消毒や殺菌などを可能とすることもできる。更に、生体信号処理回路ユニットを水密構造の収納領域へ装着することで、生体信号処理回路ユニットの保護にも優れ、生体信号処理回路ユニットの再利用にも一層適することとなる。
【0030】
【0031】
の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースでは、水蒸気透過性とされた装着シートによって、装着面である生体の皮膚の蒸れなどが軽減乃至は回避され得る。また、装着シートよりも柔軟性が劣りやすいケース本体が、可撓性の装着シートの表面側に配置されることから、ケース本体の皮膚への直接の接触による装着時の違和感が抑えられる。加えて、装着シートにおけるケース本体の取付領域においても、装着シートの水蒸気透過性が通気用隙間を通じて維持され得て、装着性や装着感の更なる向上が図られ得る。
【0032】
の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースでは、ケース本体の装着シートに対する固定の強度や安定性を複数の脚部によって確保しつつ、通気用隙間を効率的に形成することが可能になる。
【0033】
の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースでは、通電路に伸縮可能部分を設けたことにより、装着シートの本来の柔軟性や伸縮性についての通電路による阻害が抑えられて、装着性や装着感の向上が図られ得る。なお、伸縮可能部分は、例えば後述するように湾曲変形によって伸縮許容される通電路長さ方向における蛇行形状や葛折れ状又は屈曲状などによって実現され得るが、その他、例えばゴムやエラストマーへカーボンブラックやカーボン,金属などの粉末状やフィラー状等からなる導電材を配合したりイオン導電性高分子などによって通電路自体に伸縮性を与えても良い。
【0034】
の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースでは、ケース本体を取り外すことにより、例えばケース本体に収納された生体信号処理回路ユニットと共に装着シートから分離させることもできる。それ故、ケース本体だけの修理や交換が可能になると共に、生体信号処理回路ユニットと共にケース本体を再利用することも可能になる。
【0035】
前記第の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースは、装着シートの裏面側の粘着面を、被験者の皮膚の生体信号検出位置に重ね合わせるようにして装着される。かかる装着状態下、その装着シートの裏面側に互いに間隔を空けて位置して当該裏面側に露出する複数の電極が、被検者の皮膚から電気的な生体信号を検出する。検出された生体信号は、装着シートの裏面側に位置して電気的に絶縁被覆された電極接続配線を通じて、装着シートの裏面側の中央部に位置して電気的に絶縁被覆された複数の接続部に伝達される。一方、レセプタクルケースの開口および装着シートの中央部の開口を貫通する弾性接続部材が設けられており、当該弾性接続部材によって、装着シートの表面側に露出する上記接続部と、収納ケース内に収納される生体信号処理回路ユニットとが電気的に接続される。かかる生体信号処理回路ユニットは、電池から電源供給されて作動して、前記複数の電極によって被験者の皮膚から検出された生体信号の処理および、その処理結果の記録媒体での記録や無線での送信等の出力などを行うことを可能にする。
【0036】
また、装着シートが、弾性的に伸縮可能かつ電気的に絶縁性を有していることから、体動による体肢の変形に追従して伸縮して皮膚との密着状態を維持し得る。また、複数の電極と複数の接続部とをそれぞれ電気的に接続する電極接続配線が、少なくとも一部に伸縮可能部分を有していることから、体動による体肢の変形に追従する装着シートの弾性的変形に伴って、電極接続配線の伸縮があっても過度の部分的変形による断線を生じにくくなっている。更に、装着シートが、水蒸気透過性を有しているとともに、レセプタクルケースが、生体用電極パッドの装着シートの表面側の中央部に複数の脚部を固定されるとともにそれらの脚部間でその装着シートの表面に対し部分的に隙間を形成して通気性を確保していることから、皮膚への装着シートの長時間の装着でも皮膚の蒸れを防止することができる。
【0037】
従って、第の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースによれば、カバーケースをレセプタクルケースに対して着脱して生体信号処理回路ユニットに対して生体用電極パッド付き収納ケースを着脱することで、収納ケースおよび生体用電極パッドを容易に殺菌・洗浄したり破損時に交換したりすることができる。しかも、装着シートを従来よりも拡張して生体信号を検出できる範囲を広げても、体動による体肢の変形にかかわらず、複数の電極による皮膚からの生体信号の検出を長時間に亘って安定して持続させることができ、その際の皮膚への装着シートの装着感も良好にすることができる。
【0038】
そして、第の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースを用いた、前記第十二の態様に係る生体信号処理装置によれば、収納ケースの内部に生体信号処理回路ユニットを水密かつ着脱可能に収納しているので、上述した生体用電極パッド付き収納ケースの作用効果を奏しつつ、その収納ケース内の生体信号処理回路ユニットで、生体用電極パッドの電極により被験者の皮膚から検出された生体信号の処理および、その処理結果の記録媒体での記録や無線での送信等の出力などを行うことができる。
【0039】
なお、第の態様等に係る発明の生体用電極パッド付き収納ケースにおいては、前記レセプタクルケースの前記複数の脚部が、そのレセプタクルケースに固定された基部と、その基部に着脱可能に嵌着されるとともに前記生体用電極パッドの前記装着シートの表面側の中央部に固定された先端部と、を有する態様が好適に採用され得る。このような好適な態様によれば、レセプタクルケースと生体用電極パッドとを、脚部の基部と先端部との間で容易に分離させ、必要に応じてそれらの一方だけを殺菌・洗浄したり破損時に交換したりすることができるので好ましい。
【0040】
また、第の態様等に係る発明の生体用電極パッド付き収納ケースにおいては、前記レセプタクルケースと前記カバーケースとの少なくとも一方を軟質樹脂で形成する態様が好適に採用され得る。このような好適な態様によれば、レセプタクルケースへのカバーケースの水密かつ着脱可能な嵌着が容易になるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の生体用電極パッド付き収納ケースの一実施形態およびその収納ケースを用いた本発明の生体信号処理装置の一実施形態のホルター心電計を生体用電極パッドの表面側から見た状態で示す斜視図である。
図2】上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースおよびその収納ケースを用いた上記実施形態のホルター心電計を生体用電極パッドの裏面側から見た状態で示す下面図である。
図3】上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースおよびその収納ケースを用いた上記実施形態のホルター心電計を生体用電極パッドの表面側から見た状態で示す分解斜視図である。
図4】上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースを生体用電極パッドの表面側から見た状態で一部切り欠いて示す斜視図である。
図5】上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースおよびその収納ケースを用いた上記実施形態のホルター心電計の生体用電極パッドのフレキシブル配線板の構成を示す平面図である。
図6】上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースおよびその収納ケースを用いた上記実施形態のホルター心電計のフレキシブル配線板の構成を示す底面図である。
図7】上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースおよびその収納ケースを用いた上記実施形態のホルター心電計の一部を示す拡大断面図である。
図8】本発明の生体用電極パッド付き収納ケースの他の一実施形態およびその収納ケースを用いた上記実施形態のホルター心電計を生体用電極パッドの表面側から見た状態で示す斜視図である。
図9】上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースおよびその収納ケースを用いた上記実施形態のホルター心電計を生体用電極パッドの表面側から見た状態で示す分解斜視図である。
図10】上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースを生体用電極パッドの表面側から見た状態で一部切り欠いて示す斜視図である。
図11】上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースを生体用電極パッドの表面側から見て生体用電極パッドを収納ケースから取り外した状態で一部切り欠いて示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、本発明の生体用電極パッド付き収納ケースの一実施形態およびその収納ケースを用いた本発明の生体信号処理装置の一実施形態のホルター心電計を生体用電極パッドの表面側から見た状態で示す斜視図である。図2は、上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースおよびその収納ケースを用いた上記実施形態のホルター心電計を生体用電極パッドの裏面側から見た状態で示す下面図である。図3は、上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースおよびその収納ケースを用いた上記実施形態のホルター心電計を生体用電極パッドの表面側から見た状態で示す分解斜視図である。そして、図4は、上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースを生体用電極パッドの表面側から見た状態で一部切り欠いて示す斜視図である。
【0043】
また、図5は、上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースおよびその収納ケースを用いた上記実施形態のホルター心電計の生体用電極パッドのフレキシブル配線板の構成を示す平面図である。図6は、上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースおよびその収納ケースを用いた上記実施形態のホルター心電計のフレキシブル配線板の構成を示す底面図である。そして、図7は、上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースおよびその収納ケースを用いた上記実施形態のホルター心電計の一部を示す拡大断面図である。
【0044】
上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケース1は、生体の皮膚に装着されてその皮膚から電気的な生体信号としての心電信号を検出するために用いられる生体用電極パッド2が付属している収納ケースである。
【0045】
当該生体用電極パッド付き収納ケース1は、内部に生体信号処理回路ユニットとしての心電信号処理回路ユニット3を水密かつ着脱可能に収納するためのものである。当該心電信号処理回路ユニット3は、電源として有するボタン電池等の電池からの給電により作動する、通常のCPUおよびメモリ等を持つ心電信号処理回路を有する。当該心電信号処理回路は、生体用電極パッド2が検出した心電信号を、例えば24時間等の一定時間に亘って入力および記録し得る。また、当該心電信号処理回路は、その記録した心電信号を外部からの命令信号に応じて有線あるいは無線で、あるいはその心電信号を記録したカード形記録媒体の抜き出し等によって出力することができる。
【0046】
この実施形態の生体用電極パッド付き収納ケース1における生体用電極パッド2は、弾性的に伸縮可能かつ電気的に絶縁性を有するとともに、裏面側に生体の皮膚に装着されるのに適した粘着面4cを有する水蒸気透過性の装着シート4を含む。
【0047】
当該装着シート4の裏面側には、互いに間隔を空けて位置して、当該裏面側に露出する複数の電極が配されている。すなわち図示例では、裏面側に露出する複数の電極として、装着シート4の長手方向両端部の2つの検出用電極5と、中央部の4つの不関電極6とを、備えている。
【0048】
また、装着シート4は、その裏面側の中央部に位置して、電気的に絶縁被覆されるとともにその装着シート4の開口から表面側に露出する複数(図示例では4つ)の接続部7を備えている。また、装着シート4は、その裏面側に位置して、電気的に絶縁被覆されるとともに一部に蛇行形状の伸縮可能部分8aを有する2本の検出用電極接続配線8を備えている。これら2本の検出用電極接続配線8は、装着シート4の両端部に位置する2つの検出用電極5を、4つの接続部7のうちの対角線上の2つの接続部7に対して、それぞれ電気的に接続している。更に、装着シート4は、4つの不関電極6のうちで、装着シート4の幅方向に並ぶ2つの不関電極6同士をそれぞれ電気的に接続する2本の不関電極接続配線9を備えている。各不関電極接続配線9で接続された各2つの不関電極6は、4つの接続部7のうちで検出用電極接続配線8が接続されていない2つの接続部7に対してそれぞれ電気的に接続されている。
【0049】
具体的には、この生体用電極パッド2は、弾性的に伸縮可能かつ電気的な絶縁性を備える樹脂基板10を有している。そして、樹脂基板10の下面上には、両端部(図2の左右方向となる長手方向の両端部をいう)の2つの検出用電極5および中央部の4つの不関電極6が、皮膚との接触で酸化しづらい例えば銀-塩化銀(Ag/Agcl)層によって形成されている。また、樹脂基板10の上面上には、検出用電極接続配線8および不関電極接続配線9が、これも銀-塩化銀層あるいは銅層によって形成されている。そして、これら検出用電極5、不関電極6、検出用電極接続配線8、不関電極接続配線9および樹脂基板10は、フレキシブル配線板11を構成している。
【0050】
樹脂基板10は、例えばポリイミドシートやポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等で形成することができる。また、銀-塩化銀層は、例えば既知の銀-塩化銀ペーストをプリンタ等で塗布して乾燥硬化させることで、所定位置に所定形状で形成することができる。銅層は、例えばプリント配線板の製造に用いられるメッキ法やエッチング法等を用いることで、所定位置に所定形状で形成することができる。
【0051】
2本の検出用電極接続配線8の先端には、それぞれ貫通部8bが形成されている。これらの貫通部8bは、樹脂基板10に形成された貫通孔を通ってそれらの貫通部8bの下の2つの検出用電極5に電気的に接続されている。
【0052】
また、2本の不関電極接続配線9の先端には、それぞれ貫通部9aが形成されている。これらの貫通部9aは、樹脂基板10に形成された貫通孔を通ってその貫通部9aの下の不関電極6に電気的に接続されている。
【0053】
さらに、2本の不関電極接続配線9が接続された上記残り2つの接続部7(検出用電極接続配線8が接続されていない2つの接続部7)は、樹脂基板10に形成された貫通孔を通ってそれらの接続部7の下の不関電極6にそれぞれ電気的に接続されている。これにより、2本の不関電極接続配線9で、装着シート4の幅方向(図2の上下方向となる短手方向)に並ぶ2つの不関電極6同士も電気的に接続されている。
【0054】
収納ケース1は、装着シート4に近い下部側に位置するレセプタクルケース1aと、装着シート4に遠い上部側に位置するカバーケース1bとを、含んで構成されている。
【0055】
レセプタクルケース1aは、生体用電極パッド2の装着シート4の表面側の中央部に対して、複数(図示例では4つ)の脚部1cを水密に固着されている。また、それらの脚部1c間では、装着シート4の表面に対して、レセプタクルケース1aとの対向面間(重ね合わせ面間)において部分的に隙間が形成されている。
【0056】
カバーケース1bは、図4に示すように、レセプタクルケース1aの外方向(装着シート4から離れる方向)から重ね合わされることにより、レセプタクルケース1aとカバーケース1bとの両方の外周壁部において水密かつ着脱可能に嵌着されて組み付けられている。
【0057】
装着シート4の中央部には、4つの開口4aが形成されている。これら4つの開口4aを通じて、前記4つの接続部7が、装着シート4の表面側にそれぞれ露出している。また、レセプタクルケース1aの4つの脚部1cは、装着シート4の4つの開口4aにそれぞれ対応する位置に設けられており、装着シート4の表面側から開口4aを脚部1cが覆うように配置されている。更に、各脚部1cには、中央部分を貫通して開口1dが形成されていると共に、当該開口1dに対して導電性を有する弾性材からなる弾性接続部材12が、嵌着状態で組み付けられている。
【0058】
かかる4つの脚部1cに設けられた4つの弾性接続部材12は、下面が装着シート4の4つの開口4a内に露出されている。また、かかる4つの弾性接続部材12の各上面は、レセプタクルケース1aに設けられた4つの開口1dを通じて、レセプタクルケース1aの底面に露出されている。
【0059】
そして、各弾性接続部材12の下面に対して、装着シート4の開口4aを通じて、装着シート4の裏面側から、接続部7が重ね合わされて当接されている。一方、各弾性接続部材12の上面には、収納ケース1の収納領域へ収容されて装着された心電信号処理回路ユニット3において下面に形成された4つの電極3aの各一つが、重ね合わされて当接されている。
【0060】
すなわち、4つの弾性接続部材12は、レセプタクルケース1aの脚部1cの開口1dおよび装着シート4の中央部の開口4a内にそれらを貫通して位置している。そして、これら4つの弾性接続部材12は、接続部7と収納ケース1内の心電信号処理回路ユニット3の下面の4つの電極3aとに弾性的に当接して、それら4組の接続部7と電極3aとの組をそれぞれ電気的に接続状態に維持している。
【0061】
レセプタクルケース1aとカバーケース1bとは、それらの少なくとも一方すなわちここでは両方が例えばポリエチレンやポリプロピレン等の軟質樹脂からなり、その軟質樹脂の弾性変形により、図7に断面を示すように、互いに水密かつ着脱可能に嵌合することができる。弾性接続部材12は、例えばゴム状弾性体からなり、図7に断面を示すように、図示例では脚部1cの開口1d内に突出する内周フランジ1eと密に嵌合する外周環状溝部12aを有して、その開口1d内に水密に嵌着されていても良く、あるいはレセプタクルケース1aの射出成形金型のその開口1d内の位置に配置しておいてレセプタクルケース1aと一体にインサート成形しても良い。また弾性接続部材12は、例えば金属製のコイル状あるいは板状バネ部材としても良い。弾性接続部材12の配設部位におけるケース本体(レセプタクルケース1aとカバーケース1b)の内部の収納領域における水密性は、例えば装着シート4の開口4aを、両側から、レセプタクルケース1aの脚部1cと樹脂基板10とによって覆蓋シールすることによっても確保され得る。
【0062】
なお、装着シート4の裏面側には、フレキシブル配線板11を収容するように装着シート4の長手方向に延在する浅い凹部4bが形成されており、その凹部4bを囲むように装着シート4の裏面には粘着面4cが設けられている。
【0063】
上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケース1にあっては、生体用電極パッド2の装着シート4をその裏面側の粘着面4cで被験者の皮膚の心電信号検出位置に装着する。かかる装着状態下では、装着シート4の裏面側に互いに間隔を空けて位置してその裏面側に露出する複数の電極(両端部の2つの検出用電極5と中央部の4つの不関電極6)が、被検者の皮膚から心電信号を検出する。検出された心電信号は、装着シート4の裏面側に位置して電気的に絶縁被覆された電極接続配線8,9を経て、装着シート4の裏面側の中央部に位置して電気的に絶縁被覆された4つの接続部7に伝達される。更に、レセプタクルケース1aの脚部1cの開口1dおよび装着シート4の中央部の開口4aを貫通する弾性接続部材12が、装着シート4の表面側に露出するそれらの接続部7と、収納ケース1内に収納される心電信号処理回路ユニット3とに弾性的に当接してそれらを電気的に接続している。それ故、かかる弾性接続部材12を通じて、検出された心電信号が、接続部7から心電信号処理回路ユニット3へ伝達される。その結果、心電信号処理回路ユニット3が、電池からの電源供給で、それら検出用電極5と不関電極6とにより被験者の皮膚から検出された心電信号の処理および、その処理結果のメモリ等の記録媒体での記録や無線での送信、カード形記録媒体の抜き出し等での出力を行うことを可能とされる。
【0064】
また、装着シート4が、弾性的に伸縮可能でありかつ電気的な絶縁性を有していることから体動による体肢の変形に追従して伸縮して皮膚との密着状態を維持し得る。
【0065】
また、2つの検出用電極5と2つの接続部7とをそれぞれ電気的に接続する検出用電極接続配線8が、一部に伸縮可能部分8aを有していることから、体動による体肢の変形に追従する検出用電極接続配線8の伸縮があっても、過度の部分的変形による断線を生じにくくなっていると共に、当該検出用電極接続配線8による装着シート4の過度な変形制限も回避されている。
【0066】
そして、装着シート4が水蒸気透過性を有しているとともに、レセプタクルケース1aが装着シート4の表面側の中央部に4つの脚部1cを固定されるとともにそれらの脚部1c間でその装着シート4の表面に対し部分的に隙間を形成して通気性を確保していることから、皮膚への装着シート4の長時間の装着でも皮膚の蒸れを防止することができる。
【0067】
従って、この実施形態の生体用電極パッド付き収納ケース1によれば、カバーケース1bをレセプタクルケース1aに対して着脱して心電信号処理回路ユニット3に対して生体用電極パッド付き収納ケース1を着脱することで、収納ケース1および生体用電極パッド2を容易に殺菌・洗浄したり破損時に交換したりすることができる。しかも、装着シート4を従来よりも拡張して心電信号を検出できる範囲を広げても、体動による体肢の変形にかかわらず、2つの検出用電極5と4つの不関電極6とによる皮膚からの心電信号の検出を長時間に亘って持続させることができ、その際の皮膚への装着シート4の装着感も良好にすることができる。
【0068】
さらに、この実施形態の生体用電極パッド付き収納ケース1によれば、レセプタクルケース1aとカバーケース1bとの少なくとも一方、好ましくは両方を軟質樹脂で形成するので、レセプタクルケース1aへのカバーケース1bの水密かつ着脱可能な嵌着を容易に行うことができる。なお、レセプタクルケース1aを軟質樹脂とすることで、装着シート4に対するレセプタクルケース1aによる変形拘束を軽減して、装用感の更なる向上を図ることも可能になる。
【0069】
そして、その生体用電極パッド付き収納ケース1を用いたこの実施形態のホルター心電計によれば、収納ケース1の内部に心電信号処理回路ユニット3を水密かつ着脱可能に収納しているので、上述した生体用電極パッド付き収納ケース1の作用効果を奏しつつ、その収納ケース1内の心電信号処理回路ユニット3で、生体用電極パッド2の2つの検出用電極5と4つの不関電極6とにより被験者の皮膚から検出された心電信号の処理および、その処理結果の記録媒体での記録や無線での送信等の出力を、不用意な被水による作動ミス等を回避してより安定して行うことができる。
【0070】
なお、本実施形態では、図5中左上および右下の2つの接続部7と収納ケース1内の心電信号処理回路ユニット3の下面の一方の対角線上の2つの電極3aとが接続されるとともに、図5中右上および左下の2つの接続部7と収納ケース1内の心電信号処理回路ユニット3の下面の他方の対角線上の2つの電極3aとが接続されている。それ故、仮に、収納ケース1内の心電信号処理回路ユニット3が回転配置され得るとしても、その回転位置に関わらず、その下面の上記一方の対角線上の2つの電極3aには常に2つの検出用電極5が接続され、また、その下面の上記他方の対角線上の2つの電極3aには常に4つの不関電極6が接続されて、電極の誤接続が防止される。なお、このことから、不関電極6が接続される心電信号処理回路ユニット3の下面の電極3aは、上記他方の対角線上の2つのうちの何れか一方だけでも良い。また、接続部7と電極3aは、それぞれ、正方形の4角部に位置設定されることが望ましい。
【0071】
図8は、本発明の生体用電極パッド付き収納ケースの他の一実施形態およびその収納ケースを用いた上記実施形態のホルター心電計を生体用電極パッドの表面側から見た状態で示す斜視図である。図9は、上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースおよびその収納ケースを用いた上記実施形態のホルター心電計を生体用電極パッドの表面側から見た状態で示す分解斜視図である。図10は、上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースを生体用電極パッドの表面側から見た状態で一部切り欠いて示す斜視図である。そして図11は、上記実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースを生体用電極パッドの表面側から見て生体用電極パッドを収納ケースから取り外した状態で一部切り欠いて示す斜視図である。なお、図10では収納ケース1側だけが切り欠かれて断面とされており、図11では装着シート4側と収納ケース1側との何れもが切り欠かれて断面とされている。
【0072】
この実施形態の生体用電極パッド付き収納ケースおよびそれを用いたこの実施形態のホルター心電計は、レセプタクルケース1aの脚部1cの構成が先の実施形態と相違することが主な相違点であるので、ここではその相違点を主に説明する。なお、図中、先の実施形態におけると同様の部分はそれと同一の符号にて示す。
【0073】
すなわち、この実施形態の生体用電極パッド付き収納ケース1も、図8および図9に示すように、生体用電極パッド2の装着シート4の表面側の略中央部に、レセプタクルケース1aが装着されている。レセプタクルケース1aは、複数すなわち図示例では4つの脚部1cにおいて、それぞれ装着シート4に対して水密に固着されている。また、それらの脚部1c間には、装着シート4の表面上において、レセプタクルケース1aとの対向面間で部分的に広がって、隣り合う脚部1c間を通じて外部空間へ開放された隙間が形成されている。更に、本実施形態の生体用電極パッド付き収納ケース1は、レセプタクルケース1aに水密かつ着脱可能に嵌着されて収納ケースを構成するカバーケース1bを具える。また、図10および図11に示すように、本実施形態の生体用電極パッド付き収納ケース1も、レセプタクルケース1aの脚部1cの開口1dおよび装着シート4の中央部の開口4a内にそれらを貫通して位置する4つの弾性接続部材12を具えている。かかる4つの弾性接続部材12は、前記実施形態と同様に、装着シート4の中央部の4つの開口4aからその装着シート4の表面側にそれぞれ露出する4つの接続部7と、収納ケース1内の心電信号処理回路ユニット3の下面の4つの電極3aとに、それぞれ弾性的に当接して、各組の接続部7と電極3aとを電気的に接続している。
【0074】
しかしながら、この実施形態におけるレセプタクルケース1aの4つの脚部1cは、それぞれ、装着シート4に対して、特別な嵌着固定構造をもって取り付けられている。具体的には、かかる嵌着固定構造を、図10に嵌合状態で示すとともに図11に分離状態で示す。
【0075】
すなわち、かかる嵌着固定構造は、レセプタクルケース1aに一体的に形成された基部1fと、装着シート4の中央部の表面に固着された先端部1gとを含んで構成されている。
【0076】
当該先端部1gは、装着シート4の表面に密着して重ね合わされて固着されたシート状のベース部を有しており、該ベース部の中央に設けられた貫通孔を通じて、接続部7の上面が露出されている。また、かかるベース部の外周縁付近には、上面側(収納ケース1側)に向かって突出する係合突起が全周に亘って連続して環状に形成されることによって環状凸部とされている。
【0077】
一方、前記基部1fは、レセプタクルケース1aの底壁から下方(装着シート4側)に向かって突設された脚部1cを利用して構成されている。即ち、当該脚部1cの突出先端面の外周縁付近に、下方に向かって開口する係合溝が、全周に亘って連続して環状に形成されて環状凹部とされている。また、基部1fにおいて環状凹部で囲まれた部分が、装着シート4側に向かって突出しており、装着シート4側の先端部1gにおいて環状凸部で囲まれた領域へ入り込むようにして組み付けられるようになっている。また、この基部1fの中央部分には、脚部1cに形成された開口1dが貫通しており、当該開口1dに組み付けられた弾性接続部材12の下面が、基部1fの下面(突出先端面)に突出状態で露出されている。
【0078】
要するに、基部1fにおける環状凹部は、装着シート4側の先端部1gにおける環状凸部に対応する位置に形成されている。また、先端部1gの環状凸部の先端には、周方向の全周に亘って略球状の係合頭部が形成されていると共に、基部1fの環状凹部の底部には、対応する略球状の係合底部が、周方向の全周に亘って形成されている。そして、基部1fが先端部1gへ嵌め入れられることにより、当該係合頭部が当該係合底部へ係合乃至は係止されるようになっている。
【0079】
これにより、レセプタクルケース1aと一体的に形成された基部1fと装着シート4の中央部の表面に固着された先端部1gとにおいて、その基部1fの環状凹部と先端部1gの環状凸部とが嵌合することで、基部1fと先端部1gとが着脱可能に水密に嵌合している。そして、これら基部1fと先端部1gとに貫通形成された開口1d内に、その開口1dを貫通して弾性接続部材12が位置して、当該弾性接続部材12へ接続部7が当接状態で導通されている。
【0080】
この実施形態の生体用電極パッド付き収納ケース1の他の構成については、検出用電極接続配線8の伸縮可能部分8aの蛇行方向が先の実施形態と逆になっている以外は、先の実施形態と同様にされている。
【0081】
従って、この実施形態の生体用電極パッド付き収納ケース1およびそれを用いたこの実施形態のホルター心電計によれば、先の実施形態の生体用電極パッド付き収納ケース1およびホルター心電計と同様の作用効果を奏することができる。それに加えて、レセプタクルケース1aと生体用電極パッド2とを脚部1cの基部1fと先端部1gとの間で容易に分離させることができるので、必要に応じてそれらの一方だけを殺菌・洗浄したり破損時に交換したりすることができる。
【0082】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えばこの発明の生体用電極パッドにおいては、測定対象や用途などに応じて、電極の数や配置、形状などを適宜に変更することができる。具体的には、例えば不関電極6を省略して検出用電極5の数を3つ以上にしてもよく、その場合に中央部の不関電極6を検出用電極5に変更してもよい。また、それら複数の電極は同一方向に並べて配置していなくてもよい。
【0083】
さらに、この発明の生体用電極パッド付き収納ケースの生体用電極パッドは、心電信号の検出に代えてあるいは加えて筋電信号を検出するのに用いることもできる。そしてこの発明の生体用電極パッド付き収納ケースに収納する生体信号処理回路ユニットおよびこの発明の生体信号処理装置は、心電信号に代えてあるいは加えて筋電信号を記録して出力するものでもよい。
【0084】
また、本発明において心電信号処理回路ユニット3に給電する電源は、例えば電池を心電信号処理回路ユニット3の基板に対して交換不能または交換可能に取り付けても良いし、心電信号処理回路ユニット3とは別に収納ケース内に収納することもできるし、心電信号処理回路ユニット3の収納ケースとは別途に好適には水密ケースに密封して装備することも可能である。
【0085】
また、心電信号処理回路ユニット3は、生体用電極パッド2による検出信号を無線または有線で直接に外部へ出力するだけの装置であっても良く、検出信号を心電信号処理回路ユニット3とは別の外部記憶装置に記憶させておくことも可能である。
【0086】
また、電極に接続される各種配線は、装着シート4の表裏のいずれの面に設けることも可能であるし、具体的な配線構造は限定されるものでない。例えば、かかる配線の少なくとも一部を装着シート4に固定されないリード線などによって構成することも可能である。
【0087】
また、前述の「課題を解決するための手段」欄における各態様の記載から明らかなように、本発明の幾つかの態様において、伸縮可能部分を備えた電極接続配線や、水密性を有するケース構造、弾性接続部材を用いたケース内外の導電部材、水蒸気透過性を有する装着シート、装着パッドと収納ケース(ケース本体)との間の隙間などは、各態様に記載されていない限り本発明を構成するのに必須ではない。そして、前述の「発明の効果」欄における各態様の記載から明らかなように、各態様に記載の発明は、当該各態様に記載されていない構成を備えずとも、生体用電極パッド付き収納ケースや生体信号処理装置の装着性乃至は装着感の向上などといった効果を発揮し得る。
【0088】
また、装着パッドと収納ケース(ケース本体)との間の隙間は、前記実施形態のように直接に外部空間に開放されている他、例えばケース本体に設けた溝や穴、通気路などを通じて外部空間に開放されていても良い。
【0089】
また、生体信号処理回路ユニットを収納する収納ケース(ケース本体)の構造も前述の如き上下の2分割構造に限定されるものでない。例えば、周壁において部分的に開口する側方開口部を通じて、略プレート形状とされた生体信号処理回路ユニットを側方から差し入れるように収納可能にすることも可能である。なお、前記実施形態のように上下の2分割構造を採用すると、レセプタクルケースの底面に露出して設けられた弾性接続部材に対して、生体信号処理回路ユニットの電気接点を、カバーケースのレセプタクルケースへの係止固定力を利用して上方から生体信号処理回路ユニットを押し付ける力によって安定して接続状態に保持することが可能になる等といった利点がある。
【0090】
尤も、前述のように本発明の特定の態様では、かかる弾性接続部材は必須ではなく、例えば生体信号処理回路ユニットが固定的に収納ケース内に装着されていても良い。また、弾性接続部材による電気接点も前記実施形態によって限定されるものでなく、例えば、生体信号処理回路ユニットの一方の端縁部が差し入れられるスリット状の開口部を備えたコネクタが収納ケース内に設けられていて、当該スリット状の開口部内に設けられた弾性接点(弾性接続部材)が、当該開口部へ差し入れられる生体信号処理回路ユニットの基板等の端縁部の表面に露出された接点に対して押し当てられて導通されるような構造など、各種の電気接点が採用可能である。
【0091】
また、前記図8~11に示された生体用電極パッド付き収納ケースの実施形態では、レセプタクルケース1aとカバーケース1bからなる収納ケース1(ケース本体)の全体が、装着シート4に対して着脱可能に取り付けられている。そして、収納ケース1内に心電信号処理回路ユニット3を収納ケース1内へ収納状態で装着したままで収納ケース1と共に、或いは心電信号処理回路ユニット3を取り外した収納ケース1の全体を、装着シート4から取り外すことができる。それ故、装着シート4や収納ケース1について各単体状態での洗浄や殺菌を効率的に行うことが可能になると共に、何れか一方だけを交換して他方を再利用するような修理等にも容易に対応可能になる。また、心電信号処理回路ユニット3を収納ケース1と合わせて再利用することも可能になる。
【0092】
かくして、前記実施形態からも理解できるように、本発明の全てではない幾つかの特定の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースでは、カバーケースをレセプタクルケースに対して着脱して生体信号処理回路ユニットに対して生体用電極パッド付き収納ケースを着脱することで、収納ケースおよび生体用電極パッドを容易に殺菌・洗浄したり破損時に交換したりすることができ、しかも、装着シートを従来よりも拡張して生体信号を検出できる範囲を広げても、体動による体肢の変形にかかわらず、複数の電極による皮膚からの生体信号の検出を長時間に亘って持続させることができ、その際の皮膚への装着シートの装着感も良好にすることができる。
【0093】
そして、本発明の全てではない幾つかの特定の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースを用いた生体信号処理装置によれば、収納ケースの内部に生体信号処理回路ユニットを水密かつ着脱可能に収納しているので、上述した生体用電極パッド付き収納ケースの作用効果を奏しつつ、その収納ケース内の生体信号処理回路ユニットで、生体用電極パッドの電極により被験者の皮膚から検出された生体信号の処理および、その処理結果の記録媒体での記録や無線での送信等の出力を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明が適用される生体用電極パッド付き収納ケースおよび生体用電極パッド付き収納ケースを備えた生体信号処理装置は、工業生産されるものである。また、使用においても、医療および医療外の分野(例えば心電波形や心拍数、筋電波形等のデータを用いた体力測定や運動強度、生活環境などの情報処理や判定等)で利用され得るものである。従って、本発明は産業上の利用可能性を有する。
なお、本発明は、もともと以下(i)~(xiii)に記載の各発明を何れも含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) 生体の皮膚に装着される裏面に複数の電極が設けられた可撓性の装着シートからなる生体用電極パッドが取り付けられており、該生体用電極パッドで検出された電気的な生体信号を処理する生体信号処理回路ユニットを収納する生体用電極パッド付き収納ケースであって、前記生体信号処理回路ユニットの収納領域を有するケース本体が、前記装着シートの表面側に配置されて該装着シートへ取り付けられていると共に、該ケース本体には前記収納領域が開閉可能に設けられており、該収納領域に対して前記生体信号処理回路ユニットが着脱可能とされた生体用電極パッド付き収納ケース、
(ii) 前記ケース本体が、前記収納領域を閉じた状態で水密構造とされている(i)に記載の生体用電極パッド付き収納ケース、
(iii) 前記ケース本体には、前記電極と前記生体信号処理回路ユニットとを電気的に接続する接続部材がケース壁部を貫通して設けられている(i)又は(ii)に記載の生体用電極パッド付き収納ケース、
(iv) 生体の皮膚に装着される裏面に複数の電極が設けられた可撓性の装着シートからなる生体用電極パッドが取り付けられており、該生体用電極パッドで検出された電気的な生体信号を処理する生体信号処理回路ユニットを収納する生体用電極パッド付き収納ケースであって、前記装着シートが水蒸気透過性とされていると共に、前記生体信号処理回路ユニットを収納するケース本体が、該装着シートの表面側に配置されており、該ケース本体と該装着シートとの間には、外部空間につながる通気用隙間が設けられている生体用電極パッド付き収納ケース、
(v) 前記ケース本体と前記装着シートとを相互に固定する複数の脚部が設けられており、それら複数の脚部間において前記通気用隙間が形成されている(iv)に記載の生体用電極パッド付き収納ケース、
(vi) 前記装着シートが面方向に伸縮可能な弾性を有していると共に、前記電極へ導通された通電路の少なくとも一部が、該装着シートの面上において伸縮可能部分をもって形成されている(i)~(v)の何れか一項に記載の生体用電極パッド付き収納ケース、
(vii) 前記生体信号処理回路ユニットの収納領域を有する前記ケース本体が、前記装着シートに対して着脱可能に取り付けられている(i)~(vi)の何れか一項に記載の生体用電極パッド付き収納ケース、
(viii) 生体の皮膚に装着されてその皮膚から電気的な生体信号を検出するために用いられる生体用電極パッドが付いた収納ケースであって、電源として電池を有してその生体用電極パッドが検出した生体信号の処理を行う生体信号処理回路ユニットを内部に水密かつ着脱可能に収納するための収納ケースにおいて、前記生体用電極パッドが、弾性的に伸縮可能かつ電気的に絶縁性を有するとともに、裏面側に生体の皮膚に装着されるのに適した粘着面を有する水蒸気透過性の装着シートと、前記装着シートの裏面側に互いに間隔を空けて位置してその裏面側に露出する複数の電極と、前記装着シートの裏面側の中央部に位置して電気的に絶縁被覆されるとともにその装着シートの開口から表面側に露出する複数の接続部と、前記装着シートの裏面側に位置して電気的に絶縁被覆されるとともに少なくとも一部に伸縮可能部分を有して前記複数の電極と前記複数の接続部とをそれぞれ電気的に接続する電極接続配線と、を具え、前記収納ケースが、前記生体用電極パッドの前記装着シートの表面側の中央部に複数の脚部を固定されるとともにそれらの脚部間でその装着シートの表面に対し部分的に隙間を形成するレセプタクルケースと、前記レセプタクルケースに水密かつ着脱可能に嵌着されるカバーケースと、前記装着シートの中央部の開口からその装着シートの表面側に露出する前記複数の接続部の各々と前記収納ケース内の前記生体信号処理回路ユニットとに弾性的に当接してそれらを電気的に接続するために前記レセプタクルケースの前記脚部内の開口および前記装着シートの中央部の開口を貫通してそれらの開口内に位置する弾性接続部材と、を具える生体用電極パッド付き収納ケース、
(ix) 前記複数の電極は、不関電極と複数の検出用電極とを含むことを特徴とする、(viii)に記載の生体用電極パッド付き収納ケース、
(x) 樹脂基板と、その樹脂基板の下面上に配置された前記複数の電極と、その樹脂基板の上面上に配置された前記複数の接続部と、その樹脂基板の上面上に配置されるとともに端部が前記樹脂基板を貫通して前記複数の電極と前記複数の接続部とをそれぞれ電気的に接続する電極接続配線とが、フレキシブル配線板を構成していることを特徴とする、(viii)又は(ix)に記載の生体用電極パッド付き収納ケース、
(xi) 前記レセプタクルケースの前記複数の脚部が、そのレセプタクルケースに固定された基部と、その基部に着脱可能に嵌着されるとともに前記生体用電極パッドの前記装着シートの表面側の中央部に固定された先端部と、を有していることを特徴とする、(viii)~(x)の何れか一項に記載の生体用電極パッド付き収納ケース、
(xii) 前記レセプタクルケースと前記カバーケースとの少なくとも一方が軟質樹脂で形成されていることを特徴とする、(viii)~(xi)の何れか一項に記載の生体用電極パッド付き収納ケース、
(xiii) (i)~(xii)の何れか一項に記載の生体用電極パッド付き収納ケースを用いた生体信号処理装置において、前記生体用電極パッド付き収納ケースの内部に前記生体信号処理回路ユニットを収納した生体信号処理装置、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、装着シートよりも柔軟性が劣りやすいケース本体が、可撓性の装着シートの表面側に配置される。これにより、ケース本体が直接に皮膚へ触れることが防止されて、装着時の違和感が抑えられることで装着性や装着感の向上が図られ得る。また、電気回路を備える生体信号処理回路ユニットが取外し可能とされていることから、一般に耐水性のない生体信号処理回路ユニットを取り外した状態で、装着シートや収納ケース(ケース本体を含む)を洗浄や殺菌等することが容易となる。これにより、装着状態での清潔性などが維持されることで装着性や装着感の向上が図られ得る。更に、生体信号処理回路ユニットを取り外すことで、装着シートや収納ケースを交換して、生体信号処理回路ユニットを再利用することも可能になる。
上記(ii)に記載の発明では、ケース本体が水密構造とされることで、例えば収納領域において通電部材などの水気等を嫌う部位が存在していても、ケース本体を閉じた状態で洗浄や殺菌等の処理を容易に行うことができる。また、仮に生体信号処理回路ユニットがケース本体内に装着されたままでも、収納領域の水密性が確保されることで、生体への装着時に意図せずに水等がかかった際の不具合の発生が防止され得るし、生体に装着したままでのシャワーや入浴を許容することも可能になり、高度な水密性を実現することで、生体信号処理回路ユニットを装着したままでの消毒や殺菌などを可能とすることもできる。更に、生体信号処理回路ユニットを水密構造の収納領域へ装着することで、生体信号処理回路ユニットの保護にも優れ、生体信号処理回路ユニットの再利用にも一層適することとなる。
上記(iii)に記載の発明では、装着シートの裏面側の電極をケース本体内の生体信号処理回路ユニットへ通電させる接続部材を簡単な構造や短い経路で設けることが可能になる。特にケース本体において装着シートに重ね合わされる底壁部分を貫通して接続部材を設けることで、接続部材の外部への直接の露出を回避することもできる。また、例えば接続部材をケース本体へインサート成形したり、接続部材の配設位置へシール材を設けることなどによって、ケース本体の水密性を達成しつつ、接続部材を設けることも容易に実現可能となる。
上記(iv)に記載の発明では、水蒸気透過性とされた装着シートによって、装着面である生体の皮膚の蒸れなどが軽減乃至は回避され得る。また、装着シートよりも柔軟性が劣りやすいケース本体が、可撓性の装着シートの表面側に配置されることから、ケース本体の皮膚への直接の接触による装着時の違和感が抑えられる。加えて、装着シートにおけるケース本体の取付領域においても、装着シートの水蒸気透過性が通気用隙間を通じて維持され得て、装着性や装着感の更なる向上が図られ得る。
上記(v)に記載の発明では、ケース本体の装着シートに対する固定の強度や安定性を複数の脚部によって確保しつつ、通気用隙間を効率的に形成することが可能になる。
上記(vi)に記載の発明では、通電路に伸縮可能部分を設けたことにより、装着シートの本来の柔軟性や伸縮性についての通電路による阻害が抑えられて、装着性や装着感の向上が図られ得る。なお、伸縮可能部分は、例えば後述するように湾曲変形によって伸縮許容される通電路長さ方向における蛇行形状や葛折れ状又は屈曲状などによって実現され得るが、その他、例えばゴムやエラストマーへカーボンブラックやカーボン,金属などの粉末状やフィラー状等からなる導電材を配合したりイオン導電性高分子などによって通電路自体に伸縮性を与えても良い。
上記(vii)に記載の発明では、ケース本体を取り外すことにより、例えばケース本体に収納された生体信号処理回路ユニットと共に装着シートから分離させることもできる。それ故、ケース本体だけの修理や交換が可能になると共に、生体信号処理回路ユニットと共にケース本体を再利用することも可能になる。
上記(viii)に記載の発明では、装着シートの裏面側の粘着面を、被験者の皮膚の生体信号検出位置に重ね合わせるようにして装着される。かかる装着状態下、その装着シートの裏面側に互いに間隔を空けて位置して当該裏面側に露出する複数の電極が、被検者の皮膚から電気的な生体信号を検出する。検出された生体信号は、装着シートの裏面側に位置して電気的に絶縁被覆された電極接続配線を通じて、装着シートの裏面側の中央部に位置して電気的に絶縁被覆された複数の接続部に伝達される。一方、レセプタクルケースの開口および装着シートの中央部の開口を貫通する弾性接続部材が設けられており、当該弾性接続部材によって、装着シートの表面側に露出する上記接続部と、収納ケース内に収納される生体信号処理回路ユニットとが電気的に接続される。かかる生体信号処理回路ユニットは、電池から電源供給されて作動して、前記複数の電極によって被験者の皮膚から検出された生体信号の処理および、その処理結果の記録媒体での記録や無線での送信等の出力などを行うことを可能にする。また、装着シートが、弾性的に伸縮可能かつ電気的に絶縁性を有していることから、体動による体肢の変形に追従して伸縮して皮膚との密着状態を維持し得る。また、複数の電極と複数の接続部とをそれぞれ電気的に接続する電極接続配線が、少なくとも一部に伸縮可能部分を有していることから、体動による体肢の変形に追従する装着シートの弾性的変形に伴って、電極接続配線の伸縮があっても過度の部分的変形による断線を生じにくくなっている。更に、装着シートが、水蒸気透過性を有しているとともに、レセプタクルケースが、生体用電極パッドの装着シートの表面側の中央部に複数の脚部を固定されるとともにそれらの脚部間でその装着シートの表面に対し部分的に隙間を形成して通気性を確保していることから、皮膚への装着シートの長時間の装着でも皮膚の蒸れを防止することができる。従って、(viii)の態様に係る生体用電極パッド付き収納ケースによれば、カバーケースをレセプタクルケースに対して着脱して生体信号処理回路ユニットに対して生体用電極パッド付き収納ケースを着脱することで、収納ケースおよび生体用電極パッドを容易に殺菌・洗浄したり破損時に交換したりすることができる。しかも、装着シートを従来よりも拡張して生体信号を検出できる範囲を広げても、体動による体肢の変形にかかわらず、複数の電極による皮膚からの生体信号の検出を長時間に亘って安定して持続させることができ、その際の皮膚への装着シートの装着感も良好にすることができる。
上記(xi)に記載の発明では、レセプタクルケースと生体用電極パッドとを、脚部の基部と先端部との間で容易に分離させ、必要に応じてそれらの一方だけを殺菌・洗浄したり破損時に交換したりすることができる。
上記(xii)に記載の発明では、レセプタクルケースへのカバーケースの水密かつ着脱可能な嵌着が容易になる。
上記(viii)の様態に係る生体用電極パッド付き収納ケースを用いた、上記(xiii)に記載の発明では、収納ケースの内部に生体信号処理回路ユニットを水密かつ着脱可能に収納しているので、上述した生体用電極パッド付き収納ケースの作用効果を奏しつつ、その収納ケース内の生体信号処理回路ユニットで、生体用電極パッドの電極により被験者の皮膚から検出された生体信号の処理および、その処理結果の記録媒体での記録や無線での送信等の出力などを行うことができる。
【符号の説明】
【0095】
1 収納ケース
1a レセプタクルケース
1b カバーケース
1c 脚部
1d 開口
1e 内周フランジ
1f 基部
1g 先端部
2 生体用電極パッド
3 心電信号処理回路ユニット
3a 電極
4 装着シート
4a 開口
4b 凹部
4c 粘着面
5 検出用電極
6 不関電極
7 接続部
8 検出用電極接続配線
8a 伸縮可能部分
8b 貫通部
9 不関電極接続配線
9a 貫通部
10 樹脂基板
11 フレキシブル配線板
12 弾性接続部材
12a 外周環状溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11