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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】D-アルロースの酵素的生産
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/02 20060101AFI20250127BHJP
   C07H 1/00 20060101ALI20250127BHJP
   C07H 3/02 20060101ALI20250127BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20250127BHJP
   C12N 9/12 20060101ALN20250127BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20250127BHJP
   C12N 9/26 20060101ALN20250127BHJP
   C12N 9/90 20060101ALN20250127BHJP
   C12N 9/92 20060101ALN20250127BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20250127BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20250127BHJP
   C12N 15/56 20060101ALN20250127BHJP
   C12N 15/61 20060101ALN20250127BHJP
【FI】
C12P19/02 ZNA
C07H1/00
C07H3/02
C12N9/10
C12N9/12
C12N9/16 B
C12N9/26 A
C12N9/90
C12N9/92
C12N15/54
C12N15/55
C12N15/56
C12N15/61
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019531780
(86)(22)【出願日】2017-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 US2017066298
(87)【国際公開番号】W WO2018112139
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】62/434,033
(32)【優先日】2016-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518059587
【氏名又は名称】ボヌモーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィチェレキー、ダニエル、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ロジャーズ、エドウィン、オー.
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】中根 知大
【審判官】小暮 道明
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-528925(JP,A)
【文献】特表2019-522477(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002978(WO,A1)
【文献】大腸菌によるD-プシコースの高純度発酵生産法の開発,日本農芸化学会2016年度大会講演要旨集,2016年03月,4F146
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
C12N
C12M
C12Q
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類からアルロースを調製するプロセスであって、
(i)糖類を、少なくとも1つの酵素で触媒して、グルコース1-リン酸(G1P)に変換する、
(ii)生成した前記G1Pを、ホスホグルコムターゼ(PGM)で触媒して、グルコース6-リン酸(G6P)に変換する、
(iii)生成した前記G6Pを、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)で触媒して、フルクトース6-リン酸(F6P)に変換する、
(iv)アルロース6-リン酸3-エピメラーゼ(A6PE)で触媒して、前記F6Pを、アルロース6-リン酸(A6P)に変換する、及び、
(v)アルロース6-リン酸に特異的であるアルロース6-リン酸ホスファターゼ(A6PP)で触媒して、生成した前記A6Pをアルロースに変換する、
ステップを含む、前記プロセス。
【請求項2】
前記糖類を、デンプンもしくはその誘導体、セルロースもしくはその誘導体、及び、スクロースからなる群から選択する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
少なくとも1つの酵素を、アルファ-グルカンホスホリラーゼ(αGP)、マルトースホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、セロデキストリンホスホリラーゼ、セロビオースホスホリラーゼ、及び、セルロースホスホリラーゼからなる群から選択する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記糖類が、アミロース、アミロペクチン、可溶性デンプン、アミロデキストリン、マルトデキストリン、マルトース、及び、グルコースからなる群から選択されるデンプンもしくはその誘導体である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
デンプンを、デンプン誘導体に変換するステップをさらに含み、前記デンプン誘導体を、デンプンの酵素加水分解、または、デンプンの酸加水分解で調製する、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を、前記プロセスに加える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記糖類が、デンプン誘導体であり、前記デンプン誘導体を、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、アルファ-アミラーゼ、または、それらの組み合わせで触媒した、デンプンの酵素加水分解で調製する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項8】
前記A6PEが、配列番号3または6と、少なくとも90%、少なくとも95%、または、少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記A6PEが、触媒作用のための(α/β)-バレルドメイン、前記バレルの7番目のβ-ストランドの末端のSer、前記バレルの8番目のβ-ストランドの末端のSer、活性部位ループのGly、前記バレルの2番目及び3番目のβ-ストランドのHis、前記バレルの2番目及び7番目のβ-ストランドのAsp、及び、前記バレルの2番目のβ-ストランドのHis-疎水性残基Asp-シグネチャーを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記A6PPが、配列番号9と、少なくとも90%、少なくとも95%、または、少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記A6PPが、触媒作用のためのロスマノイドフォールドドメイン、C1キャッピングドメイン、前記ロスマノイドフォールドの1番目のβ-ストランドでのDxDシグネチャー、前記ロスマノイドフォールドの2番目のβ-ストランドの末端のThrまたはSer、C末端が前記ロスマノイドフォールドの3番目のβ-ストランドに向かうα-ヘリックスのN末端のLys、及び、前記ロスマノイドフォールドの4番目のβ-ストランドの末端のGDxxxDシグネチャーを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記プロセスステップを、37℃~85℃の範囲の温度で、5.0~8.0の範囲のpHで、及び/または、8時間~48時間かけて実施をする、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記プロセスステップを、1つのバイオリアクター、または、直列に配置した複数のバイオリアクターにおいて実施をする、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記プロセスステップを、ATP不含、NAD(H)不含で、0mMより多く150mM以下のリン酸塩濃度で実施し、前記リン酸塩を再利用し、及び/または、前記プロセスの少なくとも1つのステップが、エネルギー的に有利な化学反応に関係する、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記プロセスステップが、細胞不含である、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月14日に出願した米国出願第62/434,033号の優先権を主張するものであり、参照により本明細書に援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、糖類D-アルロースの調製に関する。より具体的には、本発明は、糖類(例えば、多糖類、オリゴ糖類、二糖類、スクロース、D-グルコース、及び、D-フルクトース)を酵素的にD-アルロースに変換して、D-アルロースを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
D-アルロース(別名、D-プシコース)(以下、アルロース)は、スクロースの甘味の70%を有するが、カロリーは僅か10%である、という低カロリーの天然甘味料である。このものは、天然に存在する単糖ヘキソースであり、小麦、及び、その他の植物において少量でしか存在しない。アルロースは、2012年に、Food and Drug Administration(FDA)によって食品添加物として承認され、一般に安全と認められるもの(GRAS)に指定されている。しかしながら、アルロースの販売価格の高さが故に、甘味料としての用途は限定されている。アルロースは、低カロリー(スクロースの10%)であり、血糖インデックスが非常に低く1であり、小腸で完全に吸収されるが、代謝を受けることはなく、代わりに、尿や糞便へと分泌されるものであり、アルファ-アミラーゼ、スクラーゼ、及び、マルターゼを阻害することで血糖調整を補助し、そして、食品や飲料においてスクロースと同様の機能性を有するなど、健康面で無数の利点を有する。このように、アルロースには、食品及び飲料業界で様々な用途がある、ことは明らかである。
【0004】
現在のところ、アルロースは、主に、フルクトースの酵素的異性化を通じて製造されている(WO 2014049373)。概して、この方法では、原料コストが高くなり、フルクトースからアルロースへの分離費用も嵩み、そして、産物収率が比較的低いなど、問題がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
当該プロセスの少なくとも1つのステップが、エネルギー的に有利な化学反応に関与しており、高収率でアルロースを製造するための費用効率の高い合成経路を開発する必要がある。さらに、当該プロセスステップが、1つのタンクまたはバイオリアクターで実施することができる生産方法が必要とされている。比較的低濃度のリン酸塩で実施することができるアルロース生産のプロセスであって、リン酸塩を再利用でき、及び/または、当該プロセスが、リン酸塩の供給源としてアデノシン三リン酸(ATP)の使用を必要としない、同プロセスも必要とされている。あらゆる反応ステップにおいて、高価なニコチンアミドアデノシンジヌクレオチド(NAD(H))補酵素の使用を必要としない、アルロース生産経路も必要とされている。
【0006】
発明の概要
本明細書に記載の発明は、アルロースを調製するためのプロセスに関する。様々な態様では、当該プロセスは、アルロース6-リン酸3-エピメラーゼ(A6PE)で触媒して、フルクトース6-リン酸(F6P)を、アルロース6-リン酸(A6P)に変換し、及び、アルロース6-リン酸ホスファターゼ(A6PP)で触媒して、当該A6Pをアルロースに変換する、ことを含む。また、本発明は、本明細書に記載したあらゆるプロセスによって調製したアルロースに関する。
【0007】
本発明の幾つかの態様では、アルロースを調製するためのプロセスは、グルコース6-リン酸(G6P)を、当該F6Pに変換するステップも含み、当該ステップは、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)で触媒する。その他の態様では、アルロース合成のためのプロセスは、グルコース1-リン酸(G1P)を、当該G6Pに変換するステップも含み、この変換ステップは、ホスホグルコムターゼ(PGM)で触媒する。
【0008】
様々な態様では、アルロースを調製するためのプロセスは、少なくとも1つの酵素で触媒して、糖類を当該G1Pに変換し、ホスホグルコムターゼ(PGM)で触媒して、G1PをG6Pに変換し、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)で触媒して、G6PをF6Pに変換し、A6PEで触媒して、F6Pをアルロース6-リン酸(A6P)に変換し、及び、A6PPで触媒して、生成したA6Pをアルロースに変換する、ことを含むことができる。
【0009】
当該プロセスのいずれかで使用する糖類は、デンプンまたはその誘導体、セルロースまたはその誘導体、及び、スクロースからなる群から選択することができる。デンプンまたはその誘導体は、アミロース、アミロペクチン、可溶性デンプン、アミロデキストリン、マルトデキストリン、マルトース、または、グルコースとすることができる。本発明の幾つかの態様では、アルロースを調製するプロセスは、デンプンの酵素的加水分解または酸加水分解によって、デンプンを、デンプン誘導体へと変換することを含む。その他の態様では、デンプン誘導体は、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、アルファ-アミラーゼ、または、これらの酵素の2つ以上の組み合わせで触媒して、デンプンの酵素的加水分解によって調製することができる。アルロースを調製するプロセスは、特定の態様では、4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を添加することも含むことができる。
【0010】
様々な態様では、アルロースを調製するためのプロセスは、少なくとも1つの酵素で触媒して、フルクトースをF6Pに変換すること、A6PEで触媒して、F6Pをアルロース6-リン酸(A6P)に変換すること、A6PPで触媒して、生成した当該A6Pをアルロースに変換すること、を含むことができる。その他の実施形態では、アルロース生産プロセスは、少なくとも1つの酵素で触媒して、スクロースをフルクトースに変換すること、少なくとも1つの酵素で触媒して、フルクトースを当該F6Pに変換すること、A6PEで触媒して、F6Pをアルロース6-リン酸(A6P)に変換すること、及び、A6PPで触媒して、生成した当該A6Pをアルロースに変換すること、を含む。
【0011】
本発明のその他の態様では、アルロースを調製する方法で使用するG6Pは、少なくとも1つの酵素で触媒して、グルコースを当該G6Pに変換することで、生産することができる。次に、グルコースは、少なくとも1つの酵素で触媒して、スクロースをグルコースに変換することで、生産することができる。
【0012】
本発明のその他の態様では、アルロースを調製するためのプロセスのステップは、約0mM~約150mMのリン酸濃度で、ATP不含、NAD(H)不含で行われ、当該リン酸塩は再利用され、及び/または、当該プロセスの少なくとも1つのステップは、エネルギー的に有利な化学反応を含む。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
アルロースを調製するプロセスであって、
エピメラーゼで触媒して、フルクトース6-リン酸(F6P)を、アルロース6-リン酸(A6P)に変換する、及び、
ホスファターゼで触媒して、生成した前記A6Pをアルロースに変換する、
ことを含む、前記プロセス。
[2]
グルコース6-リン酸(G6P)を、前記F6Pに変換するステップをさらに含み、前記ステップを、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)で触媒する、[1]に記載のプロセス。
[3]
グルコース1-リン酸(G1P)を、前記G6Pに変換するステップをさらに含み、前記ステップを、ホスホグルコムターゼ(PGM)で触媒する、[2]に記載のプロセス。
[4]
糖類を、前記G1Pに変換するステップをさらに含み、前記ステップを、少なくとも1つの酵素で触媒し、前記糖類を、デンプンもしくはその誘導体、セルロースもしくはその誘導体、及び、スクロースからなる群から選択する、[3]に記載のプロセス。
[5]
少なくとも1つの酵素を、アルファ-グルカンホスホリラーゼ(αGP)、マルトースホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、セロデキストリンホスホリラーゼ、セロビオースホスホリラーゼ、及び、セルロースホスホリラーゼからなる群から選択する、[4]に記載のプロセス。
[6]
前記糖類が、アミロース、アミロペクチン、可溶性デンプン、アミロデキストリン、マルトデキストリン、マルトース、及び、グルコースからなる群から選択されるデンプンもしくはその誘導体である、[4]に記載のプロセス。
[7]
デンプンを、デンプン誘導体に変換するステップをさらに含み、前記デンプン誘導体を、デンプンの酵素加水分解、または、デンプンの酸加水分解で調製する、[6]に記載のプロセス。
[8]
4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を、前記プロセスに加える、[6]に記載のプロセス。
[9]
前記デンプン誘導体を、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、アルファ-アミラーゼ、または、それらの組み合わせで触媒した、デンプンの酵素加水分解で調製する、[7]に記載のプロセス。
[10]
フルクトースを前記F6Pに変換するステップであって、少なくとも1つの酵素で触媒した前記ステップ、及び、任意に、スクロースを前記フルクトースに変換するステップであって、少なくとも1つの酵素で触媒した前記ステップ、をさらに含む、[1]に記載のプロセス。
[11]
グルコースを前記G6Pに変換するステップであって、少なくとも1つの酵素で触媒した前記ステップ、及び、任意に、スクロースを前記グルコースに変換するステップであって、少なくとも1つの酵素で触媒した前記ステップ、をさらに含む、[2]に記載のプロセス。
[12]
前記エピメラーゼが、アルロース6-リン酸3-エピメラーゼである、[1]~[11]のいずれかに記載のプロセス。
[13]
前記アルロース6-リン酸3-エピメラーゼが、配列番号3または6と、45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または、少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記エピメラーゼが、F6PからA6Pへの変換を触媒する、[12]に記載のプロセス。
[14]
前記アルロース6-リン酸3-エピメラーゼが、触媒作用のための(α/β) -バレルドメイン、前記バレルの7番目のβ-ストランドの末端のSer、前記バレルの8番目のβ-ストランドの末端のSer、活性部位ループのGly、前記バレルの2番目及び3番目のβ-ストランドのHis、前記バレルの2番目及び7番目のβ-ストランドのAsp、及び、前記バレルの2番目のβ-ストランドのHis-疎水性残基Asp-シグネチャーを含む、[12]に記載のプロセス。
[15]
前記ホスファターゼが、アルロース6-リン酸ホスファターゼである、[1]~[11]のいずれかに記載のプロセス。
[16]
前記アルロース6-リン酸ホスファターゼが、配列番号9と、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または、少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記ホスファターゼが、A6Pからアルロースへの変換を触媒する、[15]に記載のプロセス。
[17]
前記アルロース6-リン酸ホスファターゼが、アルロース6-リン酸に特異的である、[15]に記載のプロセス。
[18]
前記アルロース6-リン酸ホスファターゼが、触媒作用のためのロスマノイドフォールドドメイン、C1キャッピングドメイン、前記ロスマノイドフォールドの1番目のβ-ストランドでのDxDシグネチャー、前記ロスマノイドフォールドの2番目のβ-ストランドの末端のThrまたはSer、C末端が前記ロスマノイドフォールドの3番目のβ-ストランドに向かうα-ヘリックスのN末端のLys、及び、前記ロスマノイドフォールドの4番目のβ-ストランドの末端のGDxxxDシグネチャーを含む、[15]に記載のプロセス。
[19]
前記プロセスステップを、約40℃~約70℃の範囲の温度で、約5.0~約8.0の範囲のpHで、及び/または、約8時間~約48時間かけて実施をする、[1]~[11]のいずれかに記載のプロセス。
[20]
前記プロセスステップを、1つのバイオリアクター、または、直列に配置した複数のバイオリアクターにおいて実施をする、[1]~[11]のいずれかに記載のプロセス。
[21]
前記プロセスステップを、ATP不含、NAD(H)不含で、約0mM~約150mMのリン酸塩濃度で実施し、前記リン酸塩を再利用し、及び/または、前記プロセスの少なくとも1つのステップが、エネルギー的に有利な化学反応に関係する、[1]~[11]のいずれかに記載のプロセス。
[22]
[1]~[11]のいずれかに記載のプロセスで製造したアルロース。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面の簡単な記述
これらの図面は、本発明の実施形態の幾つかの特定の態様を例示するものであり、本発明を、限定または定義するために使用すべきではない。
【0014】
図1図1は、フルクトース6-リン酸を、アルロース6-リン酸に、次いで、アルロースに変換する酵素経路を示す概略図である。
【0015】
図2図2は、デンプンまたはその誘導物を、アルロースに変換する酵素経路を示す概略図である。以下の略語を使用している。αGP、アルファ-グルカンホスホリラーゼ、または、デンプンホスホリラーゼ。PGM、ホスホグルコムターゼ。PGI、ホスホグルコイソメラーゼ。IA、イソアミラーゼ。PA、プルラナーゼ。MP、マルトースホスホリラーゼ。PPGK、ポリリン酸グルコキナーゼ。
【0016】
図3図3は、セルロースまたはその誘導物を、アルロースに変換する酵素経路を示す。CDP、セロデキストリンホスホリラーゼ。CBP、セロビオースホスホリラーゼ。PPGK、ポリリン酸グルコキナーゼ。PGM、ホスホグルコムターゼ。PGI、ホスホグルコイソメラーゼ。
【0017】
図4図4は、フルクトースを、アルロースに変換する酵素経路を示す概略図である。PPFK、ポリリン酸フルクトキナーゼ。
【0018】
図5図5は、グルコースを、アルロースに変換する酵素経路を示す概略図である。PPGK、ポリリン酸グルコキナーゼ。PGI、ホスホグルコイソメラーゼ。
【0019】
図6図6は、スクロースまたはその誘導物を、アルロースに変換する酵素経路を示す。SP、スクロースホスホリラーゼ。PPFK、ポリリン酸フルクトキナーゼ。PGM、ホスホグルコムターゼ。PGI、ホスホグルコイソメラーゼ。
【0020】
図7図7は、グルコース1-リン酸をアルロースへ変換するための形成ギブスエネルギーに基づいた中間体間の反応ギブスエネルギーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な記述
本発明は、アルロースを高収率で合成するための酵素的経路またはプロセスを提供し、その一方で、生成物の分離コスト、及び、アルロース生産費用を大幅に減少させる。
【0022】
本発明は、アルロースを調製するプロセスに関し、当該プロセスは、エピメラーゼで触媒して、フルクトース6-リン酸(F6P)を、アルロース6-リン酸(A6P)に変換すること、及び、ホスファターゼ(例えば、アルロース6-リン酸ホスファターゼ、A6PP)で触媒して、生成した当該A6Pをアルロースに変換することを含む。このプロセスの概略を、図1に示している。特定の実施形態では、F6PからA6Pへの変換を触媒するエピメラーゼは、アルロース6-リン酸3-エピメラーゼ(A6PE)である。
【0023】
F6PをA6Pへ変換するエピメラーゼは、本発明のプロセスにおいて使用し得る。また、エピメラーゼは、A6PをF6Pに変換することもできる。本発明の幾つかの態様では、F6PをA6Pへ変換するプロセスでの使用に適したエピメラーゼは、配列番号3または6のアミノ酸配列に対して、ある程度の同一性、すなわち、少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または、少なくとも94%、最も好ましくは少なくとも95%、及び、さらに最も好ましくは少なくとも96、97、98、99、または、100%の同一性を有する。適切なエピメラーゼは、配列番号1、2、4、及び、5のヌクレオチド配列に対して、ある程度の同一性、すなわち、少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、及び、さらに最も好ましくは少なくとも96、97、98、99、または、100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドでコードされる。
【0024】
A6PEの例としては、UNIPROT IDで、D9TQJ4、A0A090IXZ8、及び、P32719と識別されるタンパク質があるが、これらに限定されない。この内、D9TQJ4、及び、A0A090IXZ8は、好熱性生物から得られる。P32719は、中温性生物から得られる。P32719は、A0A090IXZ8と、53%が同一であり、かつ、D9TQJ4と55%が同一であり、そして、各タンパク質は、F6PからA6Pへのエピマー化を触媒する。さらに、A0A090IXZ8は、D9TQJ4と45%が同一である。逆に、A0A101D823、R1AXD6、A0A150LBU8、A0A023CQG9、及び、H1XWY2のUNIPROT IDで識別されるその他のエピメラーゼタンパク質は、D9TQJ4に対して45%以下の同一性しか有しておらず、F6PからA6Pへのエピマー化を触媒しない。
【0025】
本発明の幾つかの態様では、F6PをA6Pに変換するためのプロセスでの使用に適したエピメラーゼとして、二価金属補因子、好ましくは、コバルトを利用するが、これらに限定されない。本発明のさらなる態様では、当該エピメラーゼは、限定をするものではないが、触媒作用のための(α/β)-バレルドメインを含有すること、限定をするものではないが、当該バレルの7番目のβ-ストランドの末端のSer、当該バレルの8番目のβ-ストランドの末端のSer、及び、当該活性部位ループのGlyを含むリン酸結合部位をさらに含有すること、限定をするものではないが、当該バレルの2番目及び3番目のβ-ストランドのHisをさらに含有すること、限定をするものではないが、当該バレルの2番目及び7番目のβ-ストランドのAspをさらに含有して、1,1プロトン移動のための酸/塩基触媒として作用させること、及び、限定をするものではないが、当該バレルの2番目のβ-ストランドのHis-疎水性残基Asp-シグネチャーをさらに含有して、Hisを金属結合に利用し、かつ、Aspを酸/塩基触媒作用に利用すること、を含む。これらの特徴は、当該技術分野において公知であり、そして、例えば、Chan et al.,Structural Basis for Substrate Specificity in Phosphate Binding (beta/alpha)8-Barrels: D-Allulose 6-Phosphate 3-Epimerase from Escherichia coli K-12. Biochemistry. 2008;47 (36);9608-9617で報告されている。好ましくは、本発明のプロセスにおける使用のためのエピメラーゼは、触媒作用のための(α/β)-バレルドメイン、当該バレルの7番目のβ-ストランドの末端のSer、当該バレルの8番目のβ-ストランドの末端のSer、当該活性部位ループのGly、当該バレルの2番目及び3番目のβ-ストランドのHis、当該バレルの2番目及び7番目のβ-ストランドのAsp、当該バレルの2番目のβ-ストランドのHis-疎水性残基Asp-シグネチャーを含有する。
【0026】
本発明のプロセスは、A6Pをアルロース(D-アルロース)へ変換するホスファターゼを使用する。本発明の幾つかの態様では、A6Pをアルロースへ変換するプロセスでの使用に適したホスファターゼは、配列番号9のアミノ酸配列に対して、ある程度の同一性、すなわち、少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、または、少なくとも94%、及び、さらに最も好ましくは少なくとも96、97、98、99、または、100%の同一性を有する。適切なホスファターゼは、配列番号7及び8のヌクレオチド配列に対して、ある程度の同一性、すなわち、少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、及び、さらに最も好ましくは少なくとも96、97、98、99、または、100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドでコードされる。
【0027】
A6PPの例として、UNIPROT IDでA3DC21、Q5LGR4、及び、Q89ZR1と識別されるタンパク質があるが、これらに限定されない。A3DC21は、Q5LGR4と、46%が同一であり、かつ、Q89ZR1と、45%が同一であり、そして、それぞれのタンパク質は、A6Pからアルロースへの特異的脱リン酸化を触媒する。逆に、ハロ酸デヒドロゲナーゼスーパーファミリーに由来するその他のホスファターゼである、UNIPROT IDでH0UQ29、Q67LU4、A0A0K6IPM3、C8WSJ0、A0A151YX61と識別されるタンパク質、及び、その他のタンパク質は、A3DC21に対して45%未満の同一性しか有しておらず、A6Pからアルロースへの特異的脱リン酸化を触媒しない。
【0028】
A6Pからアルロースへ変換するための本発明のプロセスでの使用に適したホスファターゼは、アルロース6-リン酸に特異的である。本明細書で使用する場合、アルロース6-リン酸に特異的とは、グルコース1-リン酸、グルコース6-リン酸、または、フルクトース6-リン酸と比較して、アルロース6-リン酸に対して高い比活性を示す、ことを指す。
【0029】
A6Pからアルロースへ変換するためのホスファターゼは、二価金属補因子、好ましくは、マグネシウムを利用する。本発明のさらなる態様では、当該ホスファターゼは、限定をするものではないが、触媒作用のためのロスマノイドフォールドドメインを含有すること、限定をするものではないが、基質特異性のためのC1キャッピングドメインをさらに含有すること、限定をするものではないが、当該2番目のAspが一般的な酸/塩基触媒であるマグネシウムを配位させるための当該ロスマノイドフォールドの1番目のβ-ストランドでのDxDシグネチャーをさらに含有すること、限定をするものではないが、当該ロスマノイドフォールドの2番目のβ-ストランドの末端に反応中間体の安定性を補助するThrまたはSerをさらに含有すること、限定をするものではないが、C末端が当該ロスマノイドフォールドの3番目のβ-ストランドに向かう当該α-ヘリックスのN末端に反応中間体の安定性を補助するLysをさらに含有すること、及び、限定をするものではないが、マグネシウムを配位させるための当該ロスマノイドフォールドの4番目のβ-ストランドの末端にGDxxxDシグネチャーをさらに含有すること、を含む。これらの特徴は、当該技術分野において公知であり、そして、例えば、Burroughs et al., Evolutionary Genomics of the HAD Superfamily: Understanding the Structural Adaptations and Catalytic Diversity in a Superfamily of Phosphoesterases and Allied Enzymes. J. Mol. Biol. 2006;361;1003-1034.で報告されている。好ましくは、本発明のプロセスで使用するA6Pをアルロースに変換するためのホスファターゼは、触媒作用のためのロスマノイドフォールドドメイン、C1キャッピングドメイン、当該ロスマノイドフォールドの1番目のβ-ストランドでのDxDシグネチャー、当該ロスマノイドフォールドの2番目のβ-ストランドの末端のThrまたはSer、C末端が当該ロスマノイドフォールドの3番目のβ-ストランドに向かうα-ヘリックスのN末端のLys、及び、当該ロスマノイドフォールドの4番目のβ-ストランドの末端のGDxxxDシグネチャーを含む。
【0030】
幾つかの実施形態では、本発明のアルロースを調製するプロセスは、グルコース6-リン酸(G6P)をF6Pへ酵素的に転換するステップを含み、このステップは、ホスホグルコースイソメラーゼ(PGI)で触媒する。その他の実施形態では、アルロースを調製するプロセスは、グルコース1-リン酸(G1P)をG6Pに変換するステップをさらに含んでおり、このステップは、ホスホグルコムターゼ(PGM)で触媒する。なおもさらなる実施形態では、アルロース生産プロセスは、少なくとも1つの酵素で触媒して、糖類をG1Pへ変換するステップも含む。
【0031】
したがって、本発明のアルロースを調製するプロセスは、例えば、以下の(i)1つ以上の酵素を使用して、糖類をグルコース1-リン酸(G1P)へ変換し、(ii)ホスホグルコムターゼ(PGM、EC5.4.2.2)を使用して、G1PをG6Pへ変換し、(iii)ホスホグルコイソメラーゼ(PGI、EC 5.3.1.9)を使用して、G6PをF6Pへ変換し、(iv)A6PEによって、F6PをA6Pへ変換し、及び、(v)A6PPによって、A6Pをアルロースに変換する、ステップを含むことができる。糖類をデンプンとしたプロセスの例を、図2に示す。
【0032】
一般的には、開示したプロセスで使用する酵素単位の比は、1:1:1:1:1(αGP:PGM:PGI:A6PE:A6PP)である。産物収率を最適化するために、これらの比を、あらゆる数の組み合わせで調整することができる。例えば、3:1:1:1:1の比を使用して、リン酸化中間体の濃度を最大化することができ、それにより、下流の反応の活性が高まる。逆に、1:1:1:1:3の比を使用して、αGPのためのリン酸塩の安定供給を維持することができ、それにより、アルファ-1,4-グリコシド結合を、効率的に加リン酸分解性開裂する。例えば、3:1:1:1:3の酵素の比を使用して、反応速度をさらに高めることができる。したがって、後述するその他の任意の酵素も含めて、酵素比を変動させることで、アルロース生産の効率を高めることができる。例えば、特定の酵素は、その他の酵素の量と比べて、約2倍、3倍、4倍、5倍などの量で存在し得る。
【0033】
当該プロセスでの重要な利点の1つは、1つのバイオリアクターまたは反応容器において、プロセスステップを実施できることである。あるいは、それらのステップは、直列に配置した複数のバイオリアクターまたは反応容器でも実施できる。
【0034】
特に、全プロセスステップを、単一のバイオリアクターまたは反応容器で実施する場合に、A6Pの脱リン酸化で生成したリン酸イオンは、次いで、糖類をG1Pへ変換するプロセスステップで再利用することができる。開示したプロセスにおいてリン酸塩を再利用する能力は、非化学量論的な量のリン酸を使用することを可能にし、これにより、反応リン酸塩濃度は低く保たれる。このことは、プロセスの全体的な経路、及び、全体的な速度に影響を及ぼすが、個別の酵素の活性を制限せずに、アルロースを得るプロセスの全体的効率を可能にする。
【0035】
例えば、反応リン酸塩濃度を、約0mM~約300mM、約0mM~約150mM、約1mM~約50mM、好ましくは約5mM~約50mM、または、より好ましくは約10mM~約50mMの範囲とし得る。例えば、反応リン酸塩濃度を、約0.1mM、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、または、約55mMとし得る。
【0036】
したがって、低濃度のリン酸塩は、リン酸塩の全量が少ないが故に、リン酸塩の除去費用が抑制され、その結果、生産費用も抑制される。このことは、高濃度の遊離リン酸塩によるA6PPの阻害も防止し、そして、リン酸塩汚染の可能性も抑制する。
【0037】
さらに、本明細書に開示したプロセスは、リン酸塩供給源として添加するATPを使わずに、すなわち、ATP不含で実施できる。これらのプロセスは、NAD(H)を添加する必要もなく、すなわち、NAD(H)不含で実施することもできる。その他の利点として、アルロースを生産するための開示したプロセスの少なくとも1つのステップが、エネルギー的に有利な化学反応を含む、という事実も含む(図7)。
【0038】
糖類をG1Pへ変換するために使用する酵素の例として、アルファ-グルカンホスホリラーゼ(αGP、EC2.4.1.1、マルトデキストリンホスホリラーゼ、デンプンホスホリラーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼ、及び、その他のα-1,4グリコシド結合分解ホスホリラーゼも含む)、マルトースホスホリラーゼ(MP、EC2.4.1.8)、セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP、EC2.4.1.49)、セロビオースホスホリラーゼ(CBP、EC2.4.1.20)、セルロースホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ(SP、EC2.4.1.7)、及び、それらの組み合わせがある。当該酵素または当該酵素の組み合わせの選択は、当該プロセスで使用する糖類による。
【0039】
G1Pを生成するために使用する糖類を、多糖類、オリゴ糖、及び/または、二糖類とすることができる。例えば、糖類を、デンプン、1つ以上のデンプンの誘導体、セルロース、1つ以上のセルロースの誘導体、スクロース、1つ以上のスクロースの誘導体、または、それらの組み合わせ、とすることができる。
【0040】
デンプンは、自然界で最も広範に使用されているエネルギー貯蔵化合物であり、大部分は、植物の種子に貯蔵されている。天然のデンプンは、直鎖状アミロースと分岐状アミロペクチンとを含む。デンプン誘導体の例として、アミロース、アミロペクチン、可溶性デンプン、アミロデキストリン、マルトデキストリン、マルトース、フルクトース、及び、グルコースがある。セルロース誘導体の例として、前処理したバイオマス、再生した非晶性セルロース、セロデキストリン、セロビオース、フルクトース、及び、グルコースがある。スクロース誘導体として、フルクトース、及び、グルコースがある。
【0041】
デンプンの誘導体は、デンプンの酵素的加水分解、または、デンプンの酸加水分解によって調製することができる。具体的には、デンプンの酵素的加水分解は、α-1,6-グルコシド結合を加水分解するイソアミラーゼ(IA、EC.3.2.1.68)、α-1,6-グルコシド結合を加水分解するプルラナーゼ(PA、EC.3.2.1.41)、短いマルトオリゴ糖のグリコシル転移を触媒して、より長いマルトオリゴ糖をもたらす4-α-グルカノトランスフェラーゼ(4GT、EC.2.4.1.25)、または、α-1,4-グルコシド結合を開裂するアルファ-アミラーゼ(EC.3.2.1.1)によって、触媒または促進することができる。
【0042】
さらに、セルロースの誘導体は、セルラーゼ混合物で触媒するセルロースの酵素的加水分解によって、酸によって、または、バイオマスの前処理によって、調製することができる。
【0043】
特定の実施形態では、糖類をG1Pへ変換するために使用する酵素は、αGPを含有する。このステップでは、当該糖類が、デンプンを含む場合、当該G1Pは、αGPによって、デンプンから生成され、当該糖類が、可溶性デンプン、アミロデキストリン、または、マルトデキストリンを含有する場合、当該G1Pは、αGPによって、可溶性デンプン、アミロデキストリン、または、マルトデキストリンから生成する。
【0044】
当該糖類が、マルトースを含み、かつ、当該酵素が、マルトースホスホリラーゼを含有する場合、当該G1Pは、マルトースホスホリラーゼによって、マルトースから生成する。当該糖類が、スクロースを含み、かつ、当該酵素が、スクロースホスホリラーゼを含有する場合、当該G1Pは、スクロースホスホリラーゼによって、スクロースから生成する。
【0045】
さらに別の実施形態では、当該糖類が、セロビオースを含み、かつ、当該酵素が、セロビオースホスホリラーゼを含有する場合、当該G1Pは、セロビオースホスホリラーゼによって、セロビオースから生成する。
【0046】
追加の実施形態では、当該糖類が、セロデキストリンを含有し、かつ、当該酵素が、セロデキストリンホスホリラーゼを含む場合、当該G1Pは、セロデキストリンホスホリラーゼによって、セロデキストリンから生成する。
【0047】
糖類をG1Pへ変換する別の実施形態では、当該糖類が、セルロースを含み、かつ、当該酵素が、セルロースホスホリラーゼを含有する場合、当該G1Pは、セルロースホスホリラーゼによって、セルロースから生成する。
【0048】
本発明では、アルロースを、フルクトースから生産することもできる。当該プロセスの例を、図4に示す。例えば、このプロセスは、ポリリン酸フルクトキナーゼ(PPFK)で触媒して、フルクトース及びポリリン酸塩からF6Pを生成すること、A6PEで触媒して、F6PをA6Pへ変換すること、及び、A6PPで触媒して、A6Pをアルロースへ変換すること、を含む。このフルクトースは、例えば、スクロースの酵素的変換で生産することができる。
【0049】
その他の実施形態では、アルロースを、スクロースから生産することができる。かようなプロセスの例を、図6に示す。このプロセスは、以下の酵素的ステップ、すなわち、スクロースホスホリラーゼ(SP)で触媒して、スクロース及び遊離リン酸塩からG1Pを生成し、PGMで触媒して、G1PをG6Pへ変換し、PGIで触媒して、G6PをF6Pへ変換し、A6PEで触媒して、F6PをA6Pへ変換し、及び、A6PPで触媒して、A6Pをアルロースへ変換する、ステップを含むインビトロでの合成経路を提供する。
【0050】
A6Pをアルロースへ変換する場合に生成するリン酸イオンは、次いで、スクロースをG1Pへ変換するステップで再利用することができる。加えて、図6に示したように、PPFK及びポリリン酸塩を使用して、SPによるスクロースの加リン酸分解性開裂で生成したフルクトースからF6Pを生産することで、アルロース収率を高めることができる。
【0051】
幾つかの実施形態では、アルロースを調製するプロセスは、以下のステップ、すなわち、酵素的加水分解または酸加水分解によって、多糖類及びオリゴ糖類からグルコースを生成し、少なくとも1つの酵素で触媒して、グルコースをG6Pへ変換し、酵素的加水分解または酸加水分解によって、多糖類及びオリゴ糖類からフルクトースを生成し、少なくとも1つの酵素で触媒して、フルクトースをG6Pへ変換する、ステップを含む。多糖類及びオリゴ糖類の例は、上記した通りである。
【0052】
その他の実施形態では、G6Pは、ポリリン酸グルコキナーゼによって、グルコース及びポリリン酸ナトリウムから生成する。
【0053】
本開示は、デンプン、セルロース、スクロース、及び、それらの誘導物などを構成する多糖類及びオリゴ糖類などの糖類を、アルロースに変換するプロセスを提供する。特定の実施形態では、無細胞酵素カクテルを使用して、デンプン、セルロース、スクロース、及び、それらの誘導物を、アルロースへ変換するために、人工的な(非天然の)ATP不含酵素経路を提供する。
【0054】
上記したように、幾つかの酵素を使用することで、デンプンを加水分解して、G1P収率を高めることができる。そのような酵素として、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、及び、アルファ-アミラーゼがある。トウモロコシデンプンは、αGP作用を妨げる数多くの分岐を含有する。イソアミラーゼを使用することで、デンプンを脱分岐させて、直鎖アミロデキストリンを生成する。イソアミラーゼで前処理したデンプンは、最終産物に高濃度のF6Pを含有させることができる。イソアミラーゼ及びプルラナーゼは、アルファ-1,6-グリコシド結合を開裂して、アルファ-グルカンホスホリラーゼが、より完全にデンプンを分解することを可能にする。アルファ-アミラーゼは、アルファ-1,4-グリコシド結合を開裂するので、アルファ-アミラーゼを使用することで、デンプンを分解して断片にして、より迅速にアルロースへ変換する。
【0055】
図2に示したように、マルトースホスホリラーゼ(MP)を使用して、分解物であるマルトースを加リン酸分解的に開裂してG1P及びグルコースにすることで、アルロース収率を高めることができる。あるいは、4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を使用して、分解物であるグルコース、マルトース、及び、マルトトリオースを、長いマルトオリゴ糖類へと再利用することで、アルロース収率を高めることができ、それにより、αGPによって加リン酸分解的に開裂してG1Pを生成することができる。
【0056】
加えて、セルロースは、最も豊富な生物資源であり、また、植物細胞壁の主要な構成要素である。食品以外のリグノセルロース系バイオマスには、セルロース、ヘミセルロース、及び、リグニン、ならびに、その他の微量成分が含まれている。Avicel(微結晶性セルロース)、再生非晶性セルロース、細菌セルロース、フィルターペーパーなどの純粋なセルロースは、一連の処理を経て調製することができる。部分的に加水分解したセルロース系基質には、重合度が7を超える非水溶性セロデキストリン、重合度が3~6の水溶性セロデキストリン、セロビオース、グルコース、及び、フルクトースが含まれている。
【0057】
特定の実施形態では、セルロース及びその誘導物は、一連のステップを介してアルロースへ変換することができる。そのようなプロセスの例を、図3に示した。このプロセスは、以下のステップ、すなわち、セロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)、及び、セロビオースホスホリラーゼ(CBP)で触媒して、それぞれ、セロデキストリン、及び、セロビオース、及び、遊離リン酸塩からG1Pを生成し、PGMで触媒して、G1PをG6Pへ変換し、PGIで触媒して、G6PをF6Pへ変換し、A6PEで触媒して、F6PをA6Pへ変換し、及び、A6PPで触媒して、A6Pをアルロースへ変換する、ステップを含むインビトロでの合成経路を提供する。このプロセスでは、リン酸イオンを、セロデキストリン、及び、セロビオースを、G1Pへ変換するステップによって、再利用することができる。
【0058】
幾つかの酵素を使用して、固体セルロースを、水溶性セロデキストリン及びセロビオースへ加水分解し得る。そのような酵素として、エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼがあるが、ベータ-グルコシダーゼ(セロビアーゼ)は含まれない。
【0059】
セルロースの加水分解、及び、G1P生成の前に、セルロース及びバイオマスを前処理して、それらの反応性を高め、そして、セルロース鎖の重合度を抑制することができる。セルロース及びバイオマスの前処理プロセスとして、希酸前処理、セルロース溶媒ベースのリグノセルロース分画、アンモニア繊維膨張、アンモニア水浸漬、イオン液体処理、及び、塩酸、硫酸、リン酸、及び、それらの組み合わせを含む濃酸の使用による部分的加水分解がある。
【0060】
幾つかの実施形態では、図3に示したように、ポリリン酸塩及びポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)を本プロセスへ添加することができ、したがって、分解物であるグルコースをG6Pにリン酸化することで、アルロースの収率を高めることができる。
【0061】
その他の実施形態では、アルロースを、グルコースから生産することができる。そのようなプロセスの例を、図5に示した。このプロセスは、ポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)で触媒して、グルコース及びポリリン酸塩からG6Pを生成し、PGIで触媒して、G6PをF6Pへ変換し、酵素で触媒して、F6PをA6Pへ変換し、及び、A6PPで触媒して、A6Pをアルロースへ変換する、ステップを含む。
【0062】
HEPES、PBS、BIS-TRIS、MOPS、DIPSO、Trizmaなど、当該技術分野において公知のあらゆる好適な生理学的緩衝液を、本発明のプロセスで使用することができる。すべての実施形態についての反応緩衝液は、5.0~8.0の範囲のpHを有することができる。より好ましくは、当該反応緩衝液のpHは、約6.0~約7.3の範囲とすることができる。例えば、当該反応緩衝液pHは、6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2、または、7.3とすることができる。
【0063】
当該反応緩衝液は、重要な金属カチオンも含有することができる。金属イオンの例として、Mg2+、Co2+、及び、Zn2+がある。
【0064】
当該プロセスのステップを実施する反応温度を、37~85℃の範囲とすることができる。より好ましくは、それらのステップは、約40℃~約70℃の範囲の温度で実施することができる。この温度を、例えば、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、または、約60℃とすることができる。好ましくは、当該反応温度は、約50℃である。
【0065】
開示したプロセスの反応時間は、必要に応じて調整することができ、そして、約8時間~約48時間の範囲とすることができる。例えば、当該反応時間を、約16時間、約18時間、約20時間、約22時間、約24時間、約26時間、約28時間、約30時間、約32時間、約34時間、約36時間、約38時間、約40時間、約42時間、約44時間、約46時間、または、約48時間とすることができる。より好ましくは、当該反応時間は、約24時間である。
【0066】
本発明のプロセスは、反応全体にわたる非常に有利な平衡定数に起因して、高収率を達成することができる。理論的には、出発材料が完全に中間体に変換されるのであれば、最大で99%の収率を達成することができる。
【0067】
本発明のプロセスは、低廉な出発材料を使用しており、そして、原料及び産物の分離に関連する費用が減少するので、生産費用は抑制される。デンプン、セルロース、スクロース、及び、それらの誘導体の幾つかは、例えば、フルクトースよりも安価な原料である。アルロースをフルクトースから生産する場合、その収率は、本発明における収率よりも小さく、そして、アルロースは、クロマトグラフィーを介して、フルクトースから分離しなくてはならず、これは、製造コストを高騰させる。
【0068】
さらに、本発明にしたがって、A6Pをアルロースへ変換するステップは、原料に関係なく、不可逆的ホスファターゼ反応である。したがって、アルロースは、後続の産物の分離費用を効果的に最小限にしながら、非常に高収率で生産される。
【0069】
細胞ベースの製造プロセスとは対照的に、本発明は、細胞膜の排除に起因する比較的高い反応速度を有しており、細胞内外への基質/産物の輸送を遅くすることが多い、アルロースの細胞不含調製を含む。また、それは、栄養豊富な発酵培地/細胞代謝産物を含まない最終製品を有する。
【0070】
実施例
材料及び方法
化学薬品
【0071】
トウモロコシデンプン、可溶性デンプン、マルトデキストリン、マルトース、グルコース、フィルターペーパーなどのすべての化学物質は、特に断りのない限り、試薬グレード以上のものであり、そして、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO,USA)、または、Fisher Scientific(Pittsburgh,PA,USA)から購入した。制限酵素、T4リガーゼ、及び、Phusion DNAポリメラーゼは、New England Biolabs(Ipswich,MA,USA)から購入した。オリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies(Coralville,IA,USA)、または、Eurofins MWG Operon(Huntsville,AL,USA)のいずれかで合成した。ヌクレオチド配列、配列番号1は、Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum由来の好熱性A6PE(UNIPROT ID D9TQJ4)をコードする。配列番号2は、当該ヌクレオチド配列のコドン最適化バージョンである。配列番号3は、当該酵素のアミノ酸配列である。ヌクレオチド配列、配列番号4は、Bacillus thermoamylovorans由来の好熱性A6PE(UNIPROT ID A0A090IXZ8)をコードする。配列番号5は、当該ヌクレオチド配列のコドン最適化バージョンである。配列番号6は、当該酵素のアミノ酸配列である。ヌクレオチド配列、配列番号7は、Clostridium thermocellum由来の好熱性A6PP(UNIPROT ID A3DC21)をコードする。配列番号8は、当該ヌクレオチド配列のコドン最適化バージョンである。配列番号9は、当該酵素に対応するアミノ酸配列である。酵素精製に使用した再生非晶質セルロースは、その溶解及び再生を通して、Avicel PH105(FMC BioPolymer,Philadelphia,PA,USA)から調製され、Ye et al.,Fusion of a family 9 cellulose-binding module improves catalytic potential of Clostridium thermocellum cellodextrin phosphorylase on insoluble cellulose. Appl.Microbiol.Biotechnol.2011;92:551-560に記載されているようにして調製した。Escherichia coli Sig10(Sigma-Aldrich、St.Louis,MO,USA)を、DNA操作のための宿主細胞として使用し、そして、E.coli BL21(DE3)(Sigma-Aldrich、St.Louis,MO,USA)を、組換えタンパク質発現のための宿主細胞として使用した。100mg/Lのアンピシリン、または、50mg/Lのカナマイシンのいずれかを含むZYM-5052培地を、E.coli細胞増殖、及び、組換えタンパク質発現のために使用した。Trichoderma reesei由来のセルラーゼ(カタログ番号:C2730)、及び、プルラナーゼ(カタログ番号:P1067)は、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO,USA)から購入したものであり、かつ、Novozymes(Franklinton,NC,USA)が製造したものであった。マルトースホスホリラーゼ(カタログ番号:M8284)を、Sigma-Aldrichから購入した。
【0072】
組換え酵素の生産と精製
【0073】
タンパク質発現プラスミドを保有するE.coli BL21(DE3)株を、100mg/Lのアンピシリン、または、50mg/Lのカナマイシンのいずれかを含有する100mLのZYM-5052培地が入った1Lのエルレンマイヤーフラスコでインキュベートした。細胞を、220rpmで、回転式振盪により、37℃で、16~24時間増殖させた。これらの細胞を、12℃で、遠心分離をして回収し、そして、50mMのNaCl、及び、5mMのMgClを含有する20mMのHEPES(pH7.5)(加熱沈殿、及び、セルロース結合モジュール)、または、300mMのNaCl、及び、5mMイミダゾールを含有する20mMのHEPES(pH7.5)(Ni精製)のいずれかで、1回洗浄した。これらの細胞ペレットを、同じ緩衝液で再懸濁し、そして、超音波処理(Fisher Scientific Sonic Dismembrator Model 500;5秒パルスオン、及び、10秒オフ、50%の振幅で、全体で21分間)して溶解した。遠心分離後に、上清に含まれる標的タンパク質を精製した。
【0074】
3つのアプローチを使用して、様々な組換えタンパク質を精製した。Hisタグ付加タンパク質を、Profinity IMAC Ni-Charged Resin(Bio-Rad、Hercules,CA,USA)で精製した。セルロース結合モジュール(CBM)、及び、自己開裂インテインを含有する融合タンパク質を、大きな表面積を有する再生した非晶性セルロースでの高親和性吸着を介して精製した。70~95℃で、5~30分間の加熱沈殿を使用して、超耐熱性酵素を精製した。組換えタンパク質の純度を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって検討した。増殖培地、溶出緩衝液、透析緩衝液、及び、タンパク質貯蔵緩衝液に存在する80μM CoClで、A6PEを精製した。
【0075】
使用した酵素とそれらの活性アッセイ
【0076】
Thermotoga maritima由来のアルファ-グルカンホスホリラーゼ(αGP)(UNIPROT ID G4FEH8)を使用した。1mMのMgCl、5mMのDTT、及び、30mMのマルトデキストリンを含有する50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)で、50℃で、活性をアッセイした。Vivaspin 2濃縮器(10,000分子量カットオフ)(Vivaproducts,Inc.,Littleton,MA,USA)を用いて酵素を濾過して、反応を停止した。グルコース1-リン酸(G1P)を、25U/mLのホスホグルコムターゼを補充したグルコースヘキソキナーゼ/G6PDHアッセイキット(Sigma Aldrich、カタログ番号GAHK20-1KT)を使用して、測定をした。単位(U)は、μmol/分と表示する。
【0077】
Thermococcus kodakaraensis由来のホスホグルコムターゼ(PGM)(UNIPROT ID Q68BJ6)を使用した。5mMのMgCl及び5mMのG1Pを含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)で、50℃で、活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000分子量カットオフ)を用いて酵素を濾過して、反応を停止した。産物であるグルコース6-リン酸(G6P)を、ヘキソキナーゼ/G6PDHアッセイキット(Sigma Aldrich、カタログ番号GAHK20-1KT)を使用して、決定をした。
【0078】
Clostridium thermocellum由来のホスホグルコイソメラーゼ(PGI)(UNIPROT ID A3DBX9)、及び、Thermus thermophilus由来のPGI(UNIPROT ID Q5SLL6)という異なる2つの供給源を使用した。5mMのMgCl、及び、10mMのG6Pを含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)で、50℃で、活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000分子量カットオフ)を用いて酵素を濾過して、反応を停止した。産物であるフルクトース6-リン酸(F6P)を、フルクトース6-リン酸キナーゼ(F6PK)/ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PK)/乳酸脱水素酵素(LD)共役酵素アッセイを使用して決定を行い、同アッセイにおいて、340nmでの吸光度の減少は、F6Pの生成を示す。この200μL反応物は、50mMのHEPES(pH7.2)、5mMのMgCl、10mMのG6P、1.5mMのATP、1.5mMのホスホエノールピルビン酸、200μMのNADH、0.1UのPGI、5UのPK、及び、5UのLDを含んでいた。
【0079】
Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum由来のアルロース6-リン酸3-エピメラーゼ(A6PE)(UNIPROT ID D9TQJ4)、配列番号3、を使用した。5mMのMgCl、80μMのCoCl、1U/mLのA6PP、及び、10mMのF6Pを含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)で、50℃で、活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000分子量カットオフ)を用いて酵素を濾過して、反応を停止した。産物であるアルロース6-リン酸(A6P)を、アルロース6-リン酸ホスファターゼを使用し、かつ、遊離リン酸の放出を検出して、確認した。遊離リン酸の放出を検出するために、0.1M酢酸亜鉛、及び、2mMモリブデン酸アンモニウム(pH5)を含有する500μlの溶液を、50μlの反応物に添加した。これを混合し、続いて、125μlの5%アスコルビン酸(pH5)を加えた。この溶液を混合し、次いで、30℃で、20分間、インキュベートした。850nmでの吸光度を読み取って、遊離リン酸の放出を確認した。
【0080】
Clostridium thermocellum由来のアルロース6-リン酸ホスファターゼ(A6PP)(UNIPROT ID A3DC21)、配列番号9、を使用した。5mMのMgCl、80μMのCoCl、1U/mLのA6PE、及び、10mMのF6Pを含有する50mM HEPES緩衝液(pH7.2)で、50℃で、活性を測定した。Vivaspin 2濃縮器(10,000分子量カットオフ)を用いて酵素を濾過して、反応を停止した。産物であるアルロースを、A6PEについて記載したようにして、遊離リン酸の放出を検出することで確認した。
【0081】
C.thermocellum由来の組換えセロデキストリンホスホリラーゼ、及び、セロビオースホスホリラーゼは、Ye et al.Spontaneous high-yield production of hydrogen from cellulosic materials and water catalyzed by enzyme cocktails.ChemSusChem 2009;2:149-152に記載されている。記載されている通りに、それらの活性を、アッセイした。
【0082】
Thermobifida fusca YX由来の組換えポリリン酸グルコキナーゼは、Liao et al.,One-step purification and immobilization of thermophilic polyphosphate glucokinase from Thermobifida fusca YX:glucose-6-phosphate generation without ATP.Appl.Microbiol.Biotechnol.2012;93:1109-1117に記載されている。記載されている通りに、それらの活性を、アッセイした。
【0083】
Sulfolobus tokodaii由来の組換えイソアミラーゼは、Cheng et al.,Doubling power output of starch biobattery treated by the most thermostable isoamylase from an archaeon Sulfolobus tokodaii.Scientific Reports 2015;5:13184に記載されている。記載されている通りに、それらの活性を、アッセイした。
【0084】
Thermococcus litoralis由来の組換え4-アルファ-グルカノトランスフェラーゼは、Jeon et al.4-α-Glucanotransferase from the Hyperthermophilic Archaeon Thermococcus Litoralis.Eur.J.Biochem.1997;248:171-178に記載されている。記載されている通りに、それらの活性を、アッセイした。
【0085】
Caldithrix abyssi由来のスクロースホスホリラーゼ(UNIPROT H1XT50)を使用した。10mMのスクロース、及び、12mMの有機リン酸塩を含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.5)にて、その活性を測定した。グルコース1-リン酸(G1P)を、25U/mLのホスホグルコムターゼを補充したグルコースヘキソキナーゼ/G6PDHアッセイキットを使用して、アルファ-グルカンホスホリラーゼと同様にして、測定した。
【0086】
以下の各実施例で使用する酵素単位を、必要に応じて増減することで、反応時間を調整できる。例えば、もし24時間ではなく、8時間で実施例9を実施するのであれば、当該酵素の単位を、約3倍にまで引き上げる。反対に、もし24時間ではなく、48時間で実施例9を実施するのであれば、当該酵素単位を、約半分にまで抑制する。これらの例は、酵素単位の量を使用して、一定の生産性を維持しながら、反応時間を加減する方法を例示している。
【0087】
例1
【0088】
デンプンからフルクトース6-リン酸の酵素的生合成の技術的実現可能性を検証するために、3つの酵素、すなわち、T.maritima由来のアルファ-グルカンホスホリラーゼ(UNIPROT ID G4FEH8)、Thermococcus kodakaraensis由来のホスホグルコムターゼ(UNIPROT ID Q68BJ6)、及び、Clostridium thermocellum由来のホスホイソメラーゼ(UNIPROT ID A3DBX9)を、組換え的に発現した。これらの組換えタンパク質を、E.coli BL21(DE3)で過剰に発現させ、上記したようにして精製した。
【0089】
10g/Lの可溶性デンプン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水 pH7.2、5mMのMgCl、0.5mMのZnCl、0.01UのαGP、0.01UのPGM、及び、0.01UのPGIを含有する0.20mLの反応混合物を、50℃で、24時間、インキュベートした。Vivaspin 2濃縮器(10,000分子量カットオフ)を用いて酵素を濾過して、反応を停止した。産物であるフルクトース6-リン酸(F6P)を、上記したようにして、フルクトース6-リン酸キナーゼ(F6PK)/ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PK)/乳酸脱水素酵素(LD)共役酵素アッセイを使用して決定を行い、同アッセイにおいて、340nmでの吸光度の減少は、F6Pの生成を示す。24時間後のF6Pの最終濃度は、3.6g/Lであった。
【0090】
例2
【0091】
実施例1と同じ試験(反応温度を除く)を、40~80℃で実施した。40時間の反応の後に、10g/Lの可溶性デンプンが、40℃で、0.9g/LのF6P、及び、80℃で、3.6g/LのF6Pを生成したことが認められた。これらの結果は、この酵素セットの反応温度を上げると、F6Pの収率を高めることを示唆しているが、高温にしすぎると、酵素活性が損なわれる可能性がある。
【0092】
例3
【0093】
80℃で、約1:1:1のαGP:PGM:PGIの酵素単位比が、迅速にF6Pを生成することが認められた。反応時間が十分に長ければ、酵素比が、最終F6P濃度に大きな影響を与えないことが注目された。しかしながら、酵素比は、反応速度及び系において使用する酵素の総コストに影響を及ぼす。
【0094】
例4
【0095】
10g/Lのマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水 pH7.2、5mMのMgCl、0.5mMのZnCl、0.01UのαGP、0.01UのPGM、及び、0.01UのPGIを含有する0.20mLの反応混合物を、50℃で、24時間、インキュベートした。Vivaspin 2濃縮器(10,000分子量カットオフ)を用いて酵素を濾過して、反応を停止した。産物であるフルクトース6-リン酸(F6P)を、上記したようにして、フルクトース6-リン酸キナーゼ(F6PK)/ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PK)/乳酸脱水素酵素(LD)共役酵素アッセイを使用して決定を行い、同アッセイにおいて、340nmでの吸光度の減少は、F6Pの生成を示す。24時間後のF6Pの最終濃度は、3.6g/Lであった。
【0096】
例5
【0097】
AvicelからのF6P生成について試験するために、Sigmaセルラーゼを使用して、50℃で、セルロースを加水分解した。市販のセルラーゼからベータ-グルコシダーゼを除去するために、10濾紙分解活性/mLのセルラーゼを、氷浴で、10g/LのAvicelに対して、10分間、混合した。4℃での遠心分離の後に、ベータ-グルコシダーゼを含有する上清をデカントした。エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼを含有するセルラーゼと結合したAvicelを、加水分解のために、クエン酸緩衝液(pH4.8)で、50℃で、3日間、再懸濁した。このセルロース加水分解物を、10mMのリン酸塩、5mMのMgCl、及び、0.5mMのZnClを含有する100mMのHEPES緩衝液(pH7.2)に含まれる、5U/mLのセロデキストリンホスホリラーゼ、5U/Lのセロビオースホスホリラーゼ、5U/mLのαGP、5U/mLのPGM、及び、5U/mLのPGIと混合した。この反応を、72時間、60℃で実施し、そして、高濃度のF6Pが認められた(グルコースは少量しかなく、セロビオースは無かった)。上記した共役酵素アッセイを使用して、F6Pを検出した。ヘキソキナーゼ/G6PDHアッセイキットを、上記したように使用して、グルコースを検出した。
【0098】
例6
【0099】
AvicelからのF6P収率を高めるために、Zhang et al.A transition from cellulose swelling to cellulose dissolution by o-phosphoric acid:evidence from enzymatic hydrolysis and supramolecular structure.Biomacromolecules 2006;7:644-648に記載されているようにして、Avicelを、濃リン酸で前処理して、非晶性セルロース(RAC)を生成した。市販のセルラーゼからベータ-グルコシダーゼを除去するために、10濾紙分解活性/mLのセルラーゼを、氷浴で、10g/LのRACに対して、5分間、混合した。4℃での遠心分離の後に、ベータ-グルコシダーゼを含有する上清をデカントした。エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼを含有するセルラーゼと結合したRACを、加水分解のために、クエン酸緩衝液(pH4.8)で、50℃で、12時間、再懸濁した。このRAC加水分解物を、10mMのリン酸塩、5mMのMgCl、及び、0.5mMのZnClを含有する100mMのHEPES緩衝液(pH7.2)に含まれる、5U/mLのセロデキストリンホスホリラーゼ、5U/Lのセロビオースホスホリラーゼ、5U/mLのαGP、5U/mLのPGM、及び、5U/mLのPGIと混合した。この反応を、72時間、60℃で実施した。グルコースをF6Pへ変換する酵素を添加しなかったので、高濃度のF6Pとグルコースとを回収した。上記した共役酵素アッセイを使用して、F6Pを検出した。ヘキソキナーゼ/G6PDHアッセイキットを、上記したように使用して、グルコースを検出した。
【0100】
例7
【0101】
RACからのF6P収率をさらに高めるために、ポリリン酸グルコキナーゼとポリリン酸とを添加した。市販のセルラーゼからベータ-グルコシダーゼを除去するために、10濾紙分解活性/mLのセルラーゼを、氷浴で、10g/LのRACに対して、5分間、混合した。4℃での遠心分離の後に、ベータ-グルコシダーゼを含有する上清をデカントした。エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼを含有するセルラーゼと結合したRACを、加水分解のために、クエン酸緩衝液(pH4.8)で、50℃で、再懸濁し、そして、加水分解のために、クエン酸緩衝液(pH4.8)で、50℃で、12時間、インキュベートした。このRAC加水分解物を、50mMのポリリン酸塩、10mMのリン酸塩、5mMのMgCl、及び、0.5mMのZnClを含有する100mMのHEPES緩衝液(pH7.2)に含まれる、5U/mLのポリリン酸グルコキナーゼ、5U/mLのセロデキストリンホスホリラーゼ、5U/Lのセロビオースホスホリラーゼ、5U/mLのαGP、5U/mLのPGM、及び、5U/mLのPGIと混合した。この反応を、50℃で、72時間、実施した。F6Pは、高濃度で認められたが、グルコースは少量でしか存在していなかった。上記した共役酵素アッセイを使用して、F6Pを検出した。ヘキソキナーゼ/G6PDHアッセイキットを、上記したように使用して、グルコースを検出した。
【0102】
例8
【0103】
F6Pからのアルロースの生成を検証するために、2g/LのF6Pを、5mMのMgCl及び80μMのCoClを含有する50mMのHEPES緩衝液(pH7.2)に含まれる1U/mlのA6PE、及び、1U/mlのA6PPと混合した。その反応物を、50℃で、6時間インキュベートした。F6Pのアルロースへの99%の変換が、Agilent Hi-Plex H-カラム、及び、屈折率検出器を装備しているHPLC(Agilent 1100シリーズ)で認められた。試料を、0.6mL/分で、5mMのHSOに流した。
【0104】
例9
【0105】
マルトデキストリンからのアルロースの生成を検証するために、20g/Lのマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水 pH7.2、5mMのMgCl、80μMのCoCl、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのA6PE、及び、0.05UのA6PPを含有する0.20mLの反応混合物を、50℃で、24時間、インキュベートする。Vivaspin 2濃縮器(10,000分子量カットオフ)を用いて酵素を濾過して、反応を停止する。屈折率検出器とAgilent Hi-Plex H-カラムとを装備したAgilent 1100シリーズHPLCを使用して、アルロースを、検出及び定量する。移動相は、5mMのHSOであり、0.6mL/分で流す。アルロースの様々な濃度のスタンダードを使用して、この収率を定量する。
【0106】
例10
200g/Lのマルトデキストリン、10mMの酢酸緩衝液(pH5.5)、5mMのMgCl、80μMのCoCl、及び、0.1g/Lのイソアミラーゼを含有する反応混合物を、80℃で、24時間、インキュベートする。これを使用して、20g/Lのイソアミラーゼ処理マルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水 pH7.2、5mMのMgCl、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのA6PE、及び、0.05UのA6PPを含有する別の反応混合物を生成し、そして、50℃で、24時間インキュベートする。実施例9に記載のようにして、アルロースの生成を定量する。
【0107】
例11
200g/Lのマルトデキストリン、10mMの酢酸緩衝液(pH4.5)、5mMのMgCl、及び、1:200希釈のNovozymes D6プルラナーゼを含有する反応混合物を、50℃で、4時間、インキュベートする。これを使用して、20g/Lのプルラナーゼで処理したマルトデキストリン、50mMのリン酸緩衝生理食塩水 pH7.2、5mMのMgCl、80μMのCoCl、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのA6PE、及び、0.05UのA6PPを含有する別の反応混合物を生成し、そして、50℃で、24時間インキュベートする。実施例9に記載のようにして、アルロースの生成を定量する。
【0108】
例12
【0109】
マルトデキストリンからのアルロース収率をさらに高めるために、0.05Uの4-グルカントランスフェラーゼ(4GT)を、実施例9に記載の反応に加える。
【0110】
20g/Lのイソアミラーゼで処理したマルトデキストリン(実施例9を参照されたい)、50mMのリン酸緩衝生理食塩水 pH7.2、5mMのMgCl2、80μMのCoCl、0.05UのαGP、0.05UのPGM、0.05UのPGI、0.05UのA6PE、0.05UのA6PP、及び、0.05Uの4GTを含有する0.2mLの反応混合物を、50℃で、24時間インキュベートする。実施例9に記載のようにして、アルロースの生成を定量する。
【0111】
例13
【0112】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の濃度範囲を決定するために、50g/Lのマルトデキストリン、6.25mM、12.5mM、25mM、37.5mM、または、50mMのリン酸緩衝生理食塩水 pH7.2、5mMのMgCl2、0.1UのaGP、0.1UのPGM、及び、0.1UのPGIを含有する0.20mLの反応混合物を、50℃で、6時間、インキュベートする。短い継続時間は、完了に至らなかったことを保証しており、したがって、効率の差異を明確に示すことができる。F6Pの生成を、フルクトース6-リン酸キナーゼ(F6PK)/ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PK)/乳酸脱水素酵素(LD)共役酵素アッセイを使用して決定を行い、同アッセイにおいて、340nmでの吸光度の減少は、F6Pの生成を示す。6.25mM、12.5mM、25mM、37.5mM、または、50mMのいずれかのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)を含む反応では、それぞれ、4.5g/L、5.1g/L、5.6g/L、4.8g/L、または、4.9g/LのF6Pの収率が得られる(表1)。これらの結果は、25mMのPBS pH7.2の濃度が、これらの特定の反応条件に関しては理想的である、ことを示している。pH7.2である6.25mMのPBSの使用でさえ、リン酸塩リサイクルに起因する有意な代謝回転に引き起こす、ことに注目することは重要である。このことは、開示したリン酸塩の再利用法が、低レベルのリン酸塩で、工業レベルの体積あたりの生産性(例えば、200~300g/Lのマルトデキストリン)さえも維持できる、ことを示す。
【表1】
【0113】
例14
【0114】
カスケード反応のpH範囲を決定するために、50g/Lのマルトデキストリン、pH6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2、または、7.3のリン酸緩衝生理食塩水、5mMのMgCl2、0.02UのαGP、0.02UのPGM、及び、0.02UのPGIを含有する0.20mLの反応混合物を、50℃で、16時間、インキュベートする。完了に至らなかったことを保証するために単位を低下することで、効率の差異を明確に示すことができる。F6Pの生成を、実施例12に記載のようにし定量する。pH6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2、または、7.3の50mMのリン酸緩衝生理食塩水を含む反応では、それぞれ、4.0g/L、4.1g/L、4.2g/L、4.1g/L、4.4g/L、4.1g/L、3.8g/L、または、4.0g/LのF6Pの収率が得られる(表2)。これらの結果は、この系が広範なpH領域で作用するが、6.8のpHが、これらの特定の反応条件に関しては理想的である、ことを示している。
【表2】
【0115】
例15
【0116】
スケールアップを調べるために、50g/Lのイソアミラーゼで処理したマルトデキストリン(実施例10を参照されたい)、50mMのリン酸緩衝生理食塩水 pH7.2、5mMのMgCl2、80μMのCoCl、10UのαGP、10UのPGM、10UのPGI、10UのA6PE、及び、10UのA6PPを含有する20mLの反応混合物を、50℃で、24時間インキュベートする。実施例9に記載のようにして、アルロースの生成を定量する。
【0117】
例16
【0118】
マルトデキストリンからのアルロース収率をさらに高めるために、0.05Uのマルトースホスホリラーゼを、実施例9に記載の反応に添加する。
【0119】
例17
【0120】
マルトデキストリンからのアルロース収率をさらに高めるために、0.05Uのポリリン酸グルコキナーゼ、及び、75mMのポリリン酸を、実施例9に記載の反応に添加する。
【0121】
例18
【0122】
フルクトースからアルロースを生産するために、10g/Lのフルクトース、50mMのTris緩衝液 pH 7.0、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、80μMのCoCl、0.05Uのフルクトースポリリン酸キナーゼ、0.05UのA6PE、及び、0.05UのA6PPを含む反応混合物を、50℃で、24時間、インキュベートする。実施例9に記載のようにして、アルロースの生成を定量する。
【0123】
例19
【0124】
グルコースからアルロースを生産するために、10g/Lのグルコース、50mMのTris緩衝液 pH 7.0、75mMのポリリン酸、5mMのMgCl2、80μMのCoCl、0.05Uのグルコースポリリン酸キナーゼ、0.05UのPGI、及び、0.05UのA6PEを含む反応混合物を、50℃で、24時間、インキュベートする。実施例9に記載のようにして、アルロースの生成を定量する。
【0125】
例20
【0126】
スクロースからアルロースを生産するために、10g/Lのスクロース、50mMのTris緩衝生理食塩水 pH 7.0、5mMのMgCl2、80μMのCoCl、0.05Uのスクロースポリリン酸、0.05のPGM、0.05UのPGI、0.05UのA6PE、及び、0.05UのA6PPを含む反応混合物を、50℃で、24時間、インキュベートする。実施例9に記載のようにして、アルロースの生成を定量する。
【0127】
例21
【0128】
スクロースからのアルロースの収率をさらに高めるために、75mMのポリリン酸、及び、0.05のポリリン酸フルクトキナーゼを、実施例20に記載の反応に添加する。実施例9に記載のようにして、アルロースの生成を定量する。
【配列表フリーテキスト】
【0129】
配列番号2:<223>コドン最適化thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum A6PE
配列番号5:<223>コドン最適化Bacillus thermoamylovorans由来の好熱性A6PE
配列番号8:<223>コドン最適化Clostridium thermocellum由来のA6PP
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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