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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20250127BHJP
【FI】
F16K31/04 K
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2024516148
(86)(22)【出願日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2023012083
(87)【国際公開番号】W WO2023203967
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2022070399
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 竜也
(72)【発明者】
【氏名】荒井 裕介
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-012633(JP,A)
【文献】特開2013-096388(JP,A)
【文献】特開平08-004931(JP,A)
【文献】特開昭63-034385(JP,A)
【文献】特開2008-101765(JP,A)
【文献】特開平05-256544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁口および前記弁口を囲む弁座を有する弁本体と、前記弁口と向かい合う弁体と、弁軸と、ステッピングモーターと、前記ステッピングモーターを制御する制御装置と、を有する電動弁であって、
前記弁軸と前記弁本体または前記弁体とが送りねじ機構を構成し、
前記弁軸が、前記ステッピングモーターのマグネットローターに同軸に固定され、
前記弁軸の端部が、前記弁体と接続され、
前記マグネットローターが閉弁方向に回転すると前記弁体が前記弁口に向かって移動され、
前記弁体が前記弁座に接すると前記弁座が前記弁体の前記弁口に向かう移動を規制し、
前記制御装置が、初期化動作モードにおいて、前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記マグネットローターを前記閉弁方向に回転させ、前記マグネットローターの前記閉弁方向への回転が規制されたときの前記マグネットローターの位置を基準位置として取得し、
前記制御装置が、通常動作モードにおいて、前記基準位置に基づいて前記マグネットローターの位置を制御し、前記マグネットローターの位置を前記ステッピングモーターに入力したパルスの数によって管理し、
前記マグネットローターが前記基準位置にあるときに前記ステッピングモーターに最大数のパルスが入力されると、前記マグネットローターが前記基準位置から全開位置まで回転し、
前記制御装置によって受信される弁体移動命令が、前記マグネットローターの目標位置に対応する弁開度を含み、前記弁開度0[%]が前記基準位置に対応し、前記弁開度100[%]が前記全開位置に対応し、
前記制御装置が、
前記弁体移動命令を外部装置から受信し、
前記弁開度が0[%]以上でかつ100[%]以下のとき、前記マグネットローターの位置が前記弁開度に対応する前記目標位置になるように前記マグネットローターを回転させ、
前記弁開度が0[%]より小さいときまたは100[%]より大きいとき、不正な前記弁開度を受信したことを示す命令実行結果を前記外部装置に送信する、電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の電動弁の一例を開示している。このような電動弁は、エアコンなどが有する冷凍サイクルに組み込まれる。電動弁は、弁本体と、弁体と、弁体を移動させるためのステッピングモーターと、を有している。ステッピングモーターは、マグネットローターとステーターとを有している。ステッピングモーターにパルスが入力されるとマグネットローターが回転する。マグネットローターの回転に応じて弁体が移動し、弁本体の弁口を流れる流体(冷媒)の流量が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-179133公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電動弁において、マグネットローターは、閉弁方向に回転すると下方に移動し、ばね部材を介して弁体を弁口に向けて押す。弁体が下方に移動し、弁体が弁本体の弁座に接すると当該弁体の下方への移動が規制されるが、ばね部材が縮むためマグネットローターの閉弁方向への回転が継続される。そのため、マグネットローターにストッパを設けて、ストッパによってマグネットローターの閉弁方向の回転が規制されたときのマグネットローターの位置を基準位置としている。
【0005】
このようなストッパは、流体を制御するという電動弁本来の機能には関係がなく、ストッパは比較的大きい形状を有することから、電動弁の小型化を阻害しかつ電動弁の製造コストを押し上げる。また、弁体の移動が止まるタイミングに対してマグネットローターの回転が止まるタイミングがずれているため、複雑な弁体の位置制御が必要になる。
【0006】
そこで、本発明は、マグネットローターに設けるストッパを省略できるとともに、弁体の移動が止まったときにマグネットローターの回転を止めることができる電動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電動弁は、弁口および前記弁口を囲む弁座を有する弁本体と、前記弁口と向かい合う弁体と、弁軸と、ステッピングモーターと、を有する電動弁であって、前記弁軸と前記弁本体または前記弁体とが送りねじ機構を構成し、前記弁軸が、前記ステッピングモーターのマグネットローターに同軸に固定され、前記弁軸の端部が、前記弁体と接続され、前記マグネットローターが閉弁方向に回転すると前記弁体が前記弁口に向かって移動され、前記弁体が前記弁座に接すると前記弁座が前記弁体の前記弁口に向かう移動を規制することを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記弁軸と前記弁本体とが前記送りねじ機構を構成し、前記弁軸に雄ねじが形成され、前記弁本体に前記雄ねじが螺合される雌ねじが形成され、前記雄ねじと前記雌ねじとが前記送りねじ機構を構成する、ことが好ましい。
【0009】
本発明において、前記弁軸と前記弁体とが前記送りねじ機構を構成し、前記弁軸に雄ねじが形成され、前記弁体に前記雄ねじが螺合される雌ねじが形成され、前記雄ねじと前記雌ねじとが前記送りねじ機構を構成する、ことが好ましい。
【0010】
本発明において、前記弁軸と前記弁本体とが送りねじ機構を構成し、前記弁軸に雌ねじが形成され、前記弁本体に前記雌ねじが螺合される雄ねじが形成され、前記雄ねじと前記雌ねじとが前記送りねじ機構を構成する、ことが好ましい。
【0011】
本発明において、前記弁軸と前記弁体とが送りねじ機構を構成し、前記弁軸に雌ねじが形成され、前記弁体に前記雌ねじが螺合される雄ねじが形成され、前記雄ねじと前記雌ねじとが前記送りねじ機構を構成する、ことが好ましい。
【0012】
本発明において、前記弁本体が、前記弁口と同軸に配置された弁軸孔を有し、前記雌ねじが、前記弁軸孔の内周面に形成され、前記弁軸の前記端部が、前記弁体と一体的に接続される、ことが好ましい。
【0013】
本発明において、前記弁本体が、前記弁口と同軸に配置された弁軸孔を有し、前記雌ねじが、前記弁軸孔の内周面に形成され、前記弁軸の前記端部が、前記弁体に接し、前記マグネットローターが前記閉弁方向に回転すると前記弁軸が前記弁体を前記弁口に向かって押す、ことが好ましい。
【0014】
本発明において、前記弁本体が、前記弁軸を回転可能に支持する軸受を有し、前記軸受が、前記弁口と同軸に配置され、前記弁体が、弁軸孔を有し、前記雌ねじが、前記弁軸孔の内周面に形成される、ことが好ましい。
【0015】
本発明において、前記電動弁が、前記ステッピングモーターを制御する制御装置を有し、前記制御装置が、初期化動作モードにおいて、前記マグネットローターを前記閉弁方向に回転させ、前記マグネットローターの前記閉弁方向への回転が規制されたときの前記マグネットローターの位置を基準位置として取得し、通常動作モードにおいて、前記基準位置に基づいて前記マグネットローターの位置を制御する、ことが好ましい。
【0016】
本発明において、前記制御装置が、前記マグネットローターの回転に応じた信号を出力する磁気センサーを有し、前記磁気センサーによって出力された信号に基づいて前記マグネットローターの前記閉弁方向への回転が規制されたことを検出する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、弁軸と弁本体または弁体とが送りねじ機構を構成する。弁軸が、ステッピングモーターのマグネットローターに同軸に固定され、弁軸の端部が、弁体と接続される。マグネットローターが閉弁方向に回転すると弁体が弁口に向かって移動される。そして、弁体が弁座に接すると弁座が弁体の弁口に向かう移動を規制する。このようにしたことから、弁軸と弁本体とで構成される送りねじ機構によって弁軸および弁体が移動される。または、弁軸と弁体とで構成される送りねじ機構によって弁体が移動される。マグネットローターが閉弁方向に回転すると弁軸も閉弁方向に回転される。そして、弁体が弁座に接すると弁座が弁体の弁口に向かう移動を規制し、弁体の移動が止まる。これにより、送りねじ機構も止まり、弁軸の閉弁方向への回転が規制され、マグネットローターの回転が止まる。そのため、マグネットローターに設けるストッパを省略できるとともに、弁体の移動が止まったときにマグネットローターの回転を止めることができる。
【0018】
また、本発明によれば、制御装置が、初期化動作モードにおいて、マグネットローターを閉弁方向に回転させ、マグネットローターの閉弁方向への回転が規制されたときのマグネットローターの位置を基準位置として取得する。そして、制御装置が、通常動作モードにおいて、基準位置に基づいてマグネットローターの位置を制御する。このようにすることで、制御装置が、マグネットローターを閉弁方向に回転させて、マグネットローターが基準位置に到達すると、マグネットローターの回転を止めることができる。そのため、マグネットローターが基準位置を超えて閉弁方向に回転することを抑制でき、弁座の摩耗や電力消費を抑制できる。また、制御装置が、マグネットローターを開弁方向に回転させて、マグネットローターが所定の全開位置に到達すると、マグネットローターの回転を止めることができる。そのため、マグネットローターが全開位置を超えて開弁方向に回転することを抑制でき、送りねじ機構の雄ねじと雌ねじとが外れることを抑制できる。これにより、マグネットローターの開弁方向の回転を規制するストッパや、雄ねじと雌ねじとの螺合を復帰させるためのコイルばねを省略できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施例に係る電動弁の断面図である。
図2】電動弁のステーターユニットの断面図である。
図3】電動弁の弁体が弁座に接しているときの弁体およびその近傍の断面図である。
図4】電動弁の弁体が弁座から離れているときの弁体およびその近傍の断面図である。
図5】電動弁における弁開度と流量との関係を示すグラフである。
図6】電動弁の機能ブロック図である。
図7図1の電動弁の変形例の構成を示す断面図である。
図8】本発明の第2実施例に係る電動弁の断面図である。
図9】本発明の第3実施例に係る電動弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例に係る電動弁1について、図1図7を参照して説明する。電動弁1は、例えば、空気調和機の冷凍サイクルに組み込まれ、空気調和機の制御ユニット400からの命令に応じて動作する。制御ユニット400は、電動弁1の外部にある外部装置である。
【0021】
図1は、本発明の第1実施例に係る電動弁の断面図である。図2は、電動弁のステーターユニットの断面図である。図3図4は、電動弁の弁体およびその近傍の断面図である。図3は、弁体が弁座に接している状態を示す。図4は、弁体が弁座から離れている状態を示す。図1図3図4において、電動弁の弁軸および弁体を正面から見た状態で示す。図5は、電動弁における弁開度と流量との関係を示すグラフである。図6は、電動弁の機能ブロック図である。図7は、図1の電動弁の変形例の構成を示す断面図である。
【0022】
図1図2に示すように、電動弁1は、弁本体10と、キャン20と、駆動機構30と、弁体40と、制御装置80と、を有している。
【0023】
弁本体10は、アルミニウム合金などの金属製である。弁本体10は、本体部材11と、流路ブロック12と、支持部材13と、を有している。
【0024】
本体部材11は、円筒形状を有している。本体部材11は、弁室14と、弁口15と、弁座16と、を有している。弁口15は、弁室14に開口している。弁座16は、円環形状の内向きのテーパー面である。弁座16は、弁室14において弁口15を囲んでいる。弁座16の内周縁16aは、弁口15の上端15aに接続されている。本体部材11は、第1取付孔11aを有している。第1取付孔11aは、本体部材11の上面11bに配置されている。
【0025】
流路ブロック12は、直方体形状を有している。流路ブロック12は、第2取付孔12aを有している。第2取付孔12aは、流路ブロック12の上面12bに配置されている。本体部材11は、第2取付孔12aに配置されている。本体部材11は、ねじ構造により流路ブロック12に取り付けられている。本体部材11の上面11bと流路ブロック12の上面12bとは、同一平面上にある。本体部材11および流路ブロック12には、流路17と、流路18と、が設けられている。流路17は、弁室14に接続されている。流路18は、弁口15を介して弁室14に接続されている。なお、電動弁1において、流路ブロック12を省略して、本体部材11が直方体形状を有していてもよい。
【0026】
支持部材13は、円筒形状を有している。支持部材13は、第1取付孔11aに配置されている。支持部材13は、ねじ構造により本体部材11に取り付けられている。支持部材13の上部は、本体部材11の上面11bから上方に突出している。支持部材13は、上下方向(軸線L方向)に貫通する弁軸孔13aを有している。弁軸孔13aは、弁口15と上下方向に向かい合っている。弁軸孔13aは、弁口15と同軸に配置されている。支持部材13は、雌ねじ13cを有している。雌ねじ13cは、弁軸孔13aの内周面に配置されている。
【0027】
キャン20は、ステンレスなどの金属製である。キャン20は、円筒形状を有している。キャン20は、下端が開口しかつ上端が塞がれている。キャン20の下端は、円環板形状の接続部材25を介して支持部材13の上部に固定されている。
【0028】
なお、図7に示す電動弁1Aのように、支持部材13Aが、圧入構造により本体部材11Aに取り付けられていてもよい。電動弁1Aにおいて、本体部材11Aの上部が、流路ブロック12の上面12bから上方に突出しており、キャン20の下端が、本体部材11Aの上部に固定されている。
【0029】
駆動機構30は、弁体40を上下方向に移動させる。駆動機構30は、マグネットローター31と、弁軸34と、ステーターユニット50と、を有している。
【0030】
マグネットローター31は、円筒形状を有している。マグネットローター31は、上端が開口しかつ下端が塞がれている。マグネットローター31の外径は、キャン20の内径より小さい。マグネットローター31は、複数のN極および複数のS極を有している。複数のN極および複数のS極は、マグネットローター31の外周面に配置されている。複数のN極および複数のS極は、上下方向に延在している。複数のN極および複数のS極は、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。マグネットローター31は、例えば、N極を12個有し、S極を12個有している。
【0031】
弁軸34は、円柱形状を有している。弁軸34の上端(一端)は、マグネットローター31の下端に同軸に固定されている。弁軸34は、雄ねじ34cを有している。雄ねじ34cは、弁軸34の外周面に配置されている。弁軸34は弁軸孔13aに配置され、雄ねじ34cが雌ねじ13cに螺合される。雌ねじ13cと雄ねじ34cとは、送りねじ機構33を構成している。弁軸34が回転すると、弁軸34が回転方向に応じて上下方向に移動する。
【0032】
弁体40は、弁室14に配置されている。弁体40は、弁口15と上下方向に向かい合っている。弁体40は、弁軸34の下端(他端)に接続されている。弁軸34と弁体40とは、例えば、円柱形状のワークピースを切削加工して、一体的に形成される。
【0033】
弁体40は、制御部45と、着座部47と、を有している。制御部45は、弁口15に向かうにしたがって徐々に径が小さくなるテーパー形状(円錐台形状)を有している。着座部47は、弁口15に向かうにしたがって徐々に径が小さくなるテーパー形状を有している。制御部45のテーパー角度は、着座部47のテーパー角度より小さい。制御部45の上端は、着座部47の下端に接続されている。制御部45の外周面は、制御面46である。着座部47の外周面は、着座面48である。制御面46および着座面48は、外向きのテーパー面である。
【0034】
弁体40は、駆動機構30によって上下方向に移動される。弁体40の移動によって弁口15が開閉される。図3に示すように、着座面48が弁座16の内周縁16aに接すると弁口15が閉じる。図4に示すように、着座面48が弁座16の内周縁16aから離れると弁口15が開く。着座面48が内周縁16aから離れると、内周縁16aと弁体40との間に円環形状の隙間(絞り流路)が形成される。絞り流路の面積は、弁口15を流れる流体の流量と密接な関係を有する。
【0035】
図5のグラフは、電動弁1における弁開度と流量との関係を示している。弁開度は、弁体40の弁座16に対する位置(弁体40が弁座16に接する位置からの移動量)をパーセンテージで示している。弁体40の位置は、マグネットローター31の位置と対応している。電動弁1において、着座面48が弁座16の内周縁16aに接しているときのマグネットローター31の位置を基準位置Rxとし、マグネットローター31が基準位置Rxにあるときの弁開度を0%としている。基準位置Rxから所定の回転角度離れたマグネットローター31の位置を全開位置Rzとし、マグネットローター31が全開位置Rzにあるときの弁開度を100%としている。流量は、弁口15を流れる流体の流量をパーセンテージで示している。マグネットローター31が基準位置Rxにあるときの流量を0%とし、全開位置Rzにあるときの流量を100%としている。
【0036】
マグネットローター31が開弁方向に回転されると、送りねじ機構33によって弁軸34および弁体40が上方に移動する。マグネットローター31が閉弁方向に回転されると、送りねじ機構33によって弁軸34および弁体40が下方に移動する。弁体40が下方に移動して着座面48が弁座16の内周縁16aに接すると、弁体40および弁軸34の下方への移動が規制される。弁軸34の下方への移動が規制されると、雄ねじ34cと雌ねじ13cとが締め付けられ、送りねじ機構が止まる。これにより、送りねじ機構33によって弁軸34およびマグネットローター31の閉弁方向の回転が規制される。
【0037】
ステーターユニット50は、ステーター60と、ハウジング70と、を有している。
【0038】
ステーター60は、円筒形状を有している。ステーター60は、A相ステーター61と、B相ステーター62と、合成樹脂製のモールド63と、を有している。
【0039】
A相ステーター61は、内周側に複数のクローポール型の極歯61a、61bを有している。極歯61aの先端は下方に向いており、極歯61bの先端は上方に向いている。極歯61aと極歯61bとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。A相ステーター61は、例えば、極歯61aを12個有し、極歯61bを12個有している。互いに隣り合う極歯61aと極歯61bとの間の角度は、15度である。A相ステーター61のコイル61cが通電されると、極歯61aと極歯61bとは互いに異なる極性となる。
【0040】
B相ステーター62は、内周側に複数のクローポール型の極歯62a、62bを有している。極歯62aの先端は下方に向いており、極歯62bの先端は上方に向いている。極歯62aと極歯62bとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。B相ステーター62は、例えば、極歯62aを12個有し、極歯62bを12個有している。互いに隣り合う極歯62aと極歯62bとの間の角度は、15度である。B相ステーター62のコイル62cが通電されると、極歯62aと極歯62bとは互いに異なる極性となる。
【0041】
A相ステーター61とB相ステーター62とは、同軸に配置されている。A相ステーター61とB相ステーター62とは、互いに接している。軸線L方向から見たときに互いに隣り合うA相ステーター61の極歯61aとB相ステーター62の極歯62aとの間の角度は、7.5度である。
【0042】
モールド63は、A相ステーター61およびB相ステーター62の内側に充填されている。また、モールド63は、極歯61a、61bおよび極歯62a、62bとともにステーター内周面60aを構成している。ステーター内周面60aの径は、キャン20の外周面の径と同じである。モールド63は、端子支持部64を有している。
【0043】
端子支持部64は、A相ステーター61およびB相ステーター62から横方向(軸線Lと直交する方向)に延びている。端子支持部64は、複数の端子65を支持している。複数の端子65は、端子支持部64の先端から横方向に突出している。複数の端子65は、A相ステーター61のコイル61cおよびB相ステーター62のコイル62cと接続されている。
【0044】
電動弁1において、本体部材11(弁口15、弁座16)、支持部材13(弁軸孔13a)、キャン20、マグネットローター31、弁軸34、弁体40(制御部45、着座部47)、ステーター60(A相ステーター61、B相ステーター62)は、それぞれの中心軸が軸線Lに一致する。
【0045】
ステーター60の内側には、キャン20が配置される。キャン20の内側には、マグネットローター31が配置される。マグネットローター31とステーター60とは、ステッピングモーター66を構成する。
【0046】
電動弁1において、着座面48が弁座16の内周縁16aに接しているとき、マグネットローター31は基準位置Rxにある。そして、マグネットローター31が基準位置Rxにあるときにステッピングモーター66に最大数zのパルスが入力されると、マグネットローター31が基準位置Rxから全開位置Rzに移動する。最大数zはあらかじめ設定されており、本実施例において最大数zは500である。ステッピングモーター66のステップ角度は3.75度である。本明細書において、「ステッピングモーター66にパルスが入力されること」は、「ステッピングモーター66のステーター60にパルスに応じた駆動電流が供給されること」と同義である。
【0047】
電動弁1において、マグネットローター31の位置は、ステッピングモーター66に入力されたパルスの数と対応している。具体的には、基準位置Rxから全開位置Rzまでの回転角度を最大数zで分割して得たそれぞれの位置に0~zの番号を割り当てる。本実施例において、各位置は、位置「0」~「500」として示される。
【0048】
ハウジング70は、合成樹脂製である。ハウジング70は、ステーター60と制御装置80とを収容している。ハウジング70は、周壁部71と、上壁部72と、コネクタ73と、を有している。
【0049】
周壁部71は、円筒形状を有している。周壁部71には、ステーター60が埋め込まれている。周壁部71の内周面71aの径は、ステーター内周面60aの径と同じである。内周面71aは、ステーター内周面60aに段差なく連なっている。上壁部72は、ドーム形状を有している。上壁部72は、周壁部71の上端に接続されている。コネクタ73は、ハウジング70の上部に配置されている。周壁部71の内周面71a、上壁部72の内面72aおよびステーター内周面60aは、ステーターユニット50の内側空間74を画定している。内側空間74にはキャン20が配置される。
【0050】
ハウジング70は、基板空間75を有している。基板空間75は、内側空間74と隣り合っている。内側空間74と基板空間75との間に隔壁76が配置されている。隔壁76は、内側空間74と基板空間75とを区画している。ハウジング70は、基板空間75に通じる開口70aを有しており、開口70aは蓋部材77によって塞がれている。
【0051】
制御装置80は、ハウジング70の基板空間75に配置されている。制御装置80は、メイン基板90と、サブ基板100と、磁気センサー110と、マイクロコンピューター120と、を有している。
【0052】
メイン基板90は、電子部品が実装されるプリント基板である。メイン基板90は、基板空間75に収容されている。メイン基板90は、上下方向に平行に配置されている。メイン基板90には、マイクロコンピューター120が実装されている。メイン基板90には、ステーター60の複数の端子65が接続されている。
【0053】
サブ基板100は、電子部品が実装されるプリント基板である。サブ基板100は、基板空間75に収容されている。サブ基板100は、メイン基板90に対して直角に配置されている。サブ基板100の第1端部100aは、メイン基板90の近傍に配置されている。サブ基板100の第2端部100bは、隔壁76の近傍に配置されている。サブ基板100は、基板間コネクタを介してメイン基板90に接続されている。
【0054】
磁気センサー110は、例えば、ホールICである。磁気センサー110は、サブ基板100の第2端部100bに配置されている。磁気センサー110は、キャン20および隔壁76を介してマグネットローター31と横方向に並んでいる。磁気センサー110は、マグネットローター31が生じる磁界の向きに応じた信号(オン信号、オフ信号)を出力する。なお、電動弁1がマグネットローター31とともに回転する永久磁石を有し、磁気センサー110が永久磁石が生じる磁界の向きに応じた信号を出力してもよい。
【0055】
マイクロコンピューター120は、例えば、中央演算装置、不揮発性メモリ、作業用メモリ、通信モジュール、モータードライバなどを1つのパッケージに集積した組み込み機器用のマイクロコンピューターである。マイクロコンピューター120は、電動弁1の制御を司る。なお、不揮発性メモリ、作業用メモリ、通信モジュールおよびモータードライバは、マイクロコンピューター120に外部接続される個別の電子部品であってもよい。
【0056】
図6に示すように、制御装置80は、記憶部210と、通信部220と、回転制御部230と、を有している。不揮発性メモリは、記憶部210を構成する。中央演算装置は、不揮発性メモリに格納されたプログラムを実行し、通信部220および回転制御部230として機能する。作業用メモリは、回転制御部230で用いられる変数を格納する。通信モジュールは、コネクタ73に接続された図示しないケーブルを介して空気調和機の制御ユニット400と接続される。モータードライバは、ステッピングモーター66と接続されている。具体的には、モータードライバは、A相ステーター61のコイル61cおよびB相ステーター62のコイル62cと接続されている。モータードライバは、パルスに応じた駆動電流をコイル61cおよびコイル62cに供給する。
【0057】
記憶部210は、例えば、電動弁1の電源が遮断される直前のマグネットローター31の現在位置Rcが格納される。なお、現在位置Rcは、電動弁1が動作しているときは作業用メモリに格納される。
【0058】
通信部220は、通信モジュールを通じて制御ユニット400と通信する。通信部220は、各種命令を制御ユニット400から受信して回転制御部230に転送する。通信部220は、電動弁1の状態を回転制御部230から取得して制御ユニット400に送信する。
【0059】
通信部220は、制御ユニット400から弁体移動命令を受信する。弁体移動命令は、マグネットローター31の目標位置Rtに関する情報を含む。当該情報は、目標とする弁開度を示す。なお、当該情報は、マグネットローター31の現在位置Rcからの相対的な回転角度(ステッピングモーター66に入力するパルスの数およびマグネットローター31の回転方向など)を示してもよい。当該情報に基づき、回転制御部230がマグネットローター31の目標位置Rtを取得する。
【0060】
電動弁1において、弁開度0[%]~100[%]は、マグネットローター31の位置「0」~「500」に対応している。位置「0」は基準位置Rxであり、位置「500」は全開位置Rzである。例えば、弁体移動命令が含む弁開度が0%のとき、目標位置Rtは位置「0」である。弁体移動命令が含む弁開度が25%のとき、目標位置Rtは位置「125」である。弁体移動命令が含む弁開度が50%のとき、目標位置Rtは位置「250」である。弁体移動命令が含む弁開度が75%のとき、目標位置Rtは位置「375」である。弁体移動命令が含む弁開度が100%のとき、目標位置Rtは位置「500」である。
【0061】
回転制御部230は、通信部220が弁体移動命令を受信すると、弁体移動命令が含む弁開度に対応するマグネットローター31の位置を目標位置Rtとして取得する。回転制御部230は、例えば、弁開度が20[%]のとき、目標位置Rtとして位置「100」を取得し、弁開度が80[%]のとき、目標位置Rtとして位置「400」を取得し、弁開度が100[%]のとき、目標位置Rtとして位置「500」を取得する。
【0062】
回転制御部230は、マグネットローター31の目標位置Rtを示す番号が現在位置Rcを示す番号より大きいとき、目標位置Rtを示す番号から現在位置Rcを示す番号を減算して得た数のパルスをステッピングモーター66に入力して、マグネットローター31を開弁方向に回転させる。
【0063】
回転制御部230は、マグネットローター31の目標位置Rtを示す番号が現在位置Rcを示す番号より小さいとき、現在位置Rcを示す番号から目標位置Rtを示す番号を減算して得た数のパルスをステッピングモーター66に入力して、マグネットローター31を閉弁方向に回転させる。
【0064】
また、回転制御部230は、磁気センサー110が出力した信号に基づいてマグネットローター31の回転角度を取得し、マグネットローター31の状態(回転状態、非回転状態)を判定する。マグネットローター31が回転すると、磁気センサー110がオン信号とオフ信号とを交互に出力する。マグネットローター31が回転しないと、磁気センサー110がオン信号またはオフ信号を継続して出力する。制御装置80は、オン信号とオフ信号とが切り替わった回数に基づいてマグネットローター31の回転角度を検出する。制御装置80は、信号の変化(オン信号とオフ信号との切り替わり)があるとき、マグネットローター31が回転している状態である「回転状態」と判定する。制御装置80は、信号の変化がないとき、マグネットローター31が回転していない状態である「非回転状態」と判定する。回転制御部230は、マグネットローター31を閉弁方向に回転させている場合に非回転状態と判定したとき、マグネットローター31の閉弁方向への回転が規制されたことを検出する。
【0065】
また、回転制御部230は、弁体移動命令の成否判定を行う。具体的には、回転制御部230は、ステッピングモーター66に入力したパルスの数とステップ角度とを乗算して得たマグネットローター31の回転角度(計算回転角度)を、磁気センサー110の信号に基づいて取得したマグネットローター31の回転角度(測定回転角度)と比較する。これら回転角度が一致した場合、回転制御部230は、通信部220を介して弁体移動命令が成功したことを示す情報を命令実行結果として制御ユニット400に送信する。これら回転角度が一致しない場合、回転制御部230は、通信部220を介して弁体移動命令が失敗したことを示す情報を命令実行結果として制御ユニット400に送信する。
【0066】
次に、電動弁1の動作の一例について説明する。
【0067】
電動弁1の制御装置80は、電源が投入されると起動モードになる。
【0068】
起動モードにおいて、記憶部210にマグネットローター31の現在位置Rcが格納されているとき、制御装置80は、記憶部210から現在位置Rcを読み出して作業メモリに格納したあと、通常動作モードに移行する。通常動作モードにおいて、制御装置80は、制御ユニット400からの命令を待つ。
【0069】
起動モードにおいて、記憶部210に現在位置Rcが格納されていないとき、制御装置80は、初期化動作モードに移行する。または、通常動作モードにおいて、制御ユニット400から初期化命令を受信したとき、制御装置80は、初期化動作モードに移行する。
【0070】
初期化動作モードにおいて、制御装置80は、ステッピングモーター66にパルスを入力してマグネットローター31を閉弁方向に回転させる。制御装置80は、磁気センサー110の信号の変化があるとき回転状態と判定する。制御装置80は、磁気センサーの信号の信号の変化がないとき非回転状態と判定する。そして、制御装置80は、非回転状態と判定したとき、マグネットローター31の閉弁方向の回転が規制されたことを検出する。そして、制御装置80は、基準位置Rxである位置「0」を現在位置Rcとして作業メモリに格納し、通常動作モードに移行する。
【0071】
通常動作モードにおいて、制御装置80は、制御ユニット400から弁体移動命令を受信したとき、弁体移動命令が含む弁開度になるようにマグネットローター31を回転させ、弁体40を移動させる。
【0072】
例えば、現在位置Rcが位置「0」であり、弁体移動命令が含む弁開度が80%だったとき、制御装置80は、目標位置Rtとして位置「400」を取得する。制御装置80は、ステッピングモーター66に400個(400=400-0)のパルスを入力して、マグネットローター31を開弁方向に回転させる。これにより、送りねじ機構33によって弁軸34およびマグネットローター31が上方に移動し、弁体40が弁座16から離れて位置「400」(弁開度80%)に対応する弁体位置に位置付けられる。制御装置80は、ステッピングモーター66へのパルスの入力が終了すると、現在位置Rcとして、位置「400」を作業用メモリに格納する。また、制御装置80は、弁体移動命令の成否判定を行い、命令実行結果を制御ユニット400に送信する。そして、制御装置80は、制御ユニット400からの次の命令を待つ。
【0073】
例えば、現在位置Rcが位置「400」であり、弁体移動命令が含む弁開度が30%だったとき、制御装置80は、目標位置Rtとして位置「150」を取得する。制御装置80は、ステッピングモーター66に250個(250=400-150)のパルスを入力して、マグネットローター31を閉弁方向に回転させる。これにより、送りねじ機構33によって弁軸34およびマグネットローター31が下方に移動し、弁体40が弁座16に近づいて位置「150」(弁開度30%)に対応する弁体位置に位置付けられる。制御装置80は、ステッピングモーター66へのパルスの入力が終了すると、現在位置Rcとして、位置「150」を作業用メモリに格納する。また、制御装置80は、弁体移動命令の成否判定を行い、命令実行結果を制御ユニット400に送信する。そして、制御装置80は、制御ユニット400からの次の命令を待つ。
【0074】
例えば、現在位置Rcが位置「150」であり、弁体移動命令が含む弁開度が100%だったとき、制御装置80は、目標位置Rtとして位置「500」を取得する。制御装置80は、ステッピングモーター66に350個(350=500-150)のパルスを入力して、マグネットローター31を開弁方向に回転させる。これにより、送りねじ機構33によって弁軸34およびマグネットローター31が上方に移動し、弁体40が弁座16から離れて位置「500」(弁開度100%)に対応する弁体位置に位置付けられる。制御装置80は、ステッピングモーター66へのパルスの入力が終了すると、現在位置Rcとして、位置「500」を作業用メモリに格納する。また、制御装置80は、弁体移動命令の成否判定を行い、命令実行結果を制御ユニット400に送信する。そして、制御装置80は、制御ユニット400からの次の命令を待つ。
【0075】
例えば、現在位置Rcが位置「500」であり、弁体移動命令が含む弁開度が0%だったとき、制御装置80は、目標位置Rtとして位置「0」を取得する。制御装置80は、ステッピングモーター66に500個(500=500-0)のパルスを入力して、マグネットローター31を閉弁方向に回転させる。これにより、送りねじ機構33によって弁軸34およびマグネットローター31が下方に移動し、弁体40が弁座16に接して位置「0」(弁開度0%)に対応する弁体位置に位置付けられる。制御装置80は、ステッピングモーター66へのパルスの入力が終了すると、現在位置Rcとして、位置「0」を作業用メモリに格納する。また、制御装置80は、弁体移動命令の成否判定を行い、命令実行結果を制御ユニット400に送信する。そして、制御装置80は、制御ユニット400からの次の命令を待つ。
【0076】
弁体移動命令が含む弁開度が0%未満(すなわち負の値)だったとき、または、100%超だったとき、制御装置80は、不正な弁開度を受信した旨の命令実行結果を制御ユニット400に送信する。そして、制御装置80は、制御ユニット400からの次の命令を待つ。
【0077】
制御装置80は、電源遮断命令を制御ユニット400から受信すると、作業メモリにある現在位置Rcを記憶部210に格納して、電源遮断に備える。
【0078】
電動弁1は、弁口15および弁口15を囲む弁座16を有する弁本体10と、弁口15と向かい合う弁体40と、弁軸34と、ステッピングモーター66と、を有する。弁軸34に雄ねじ34cが形成される。弁本体10が、弁口15と同軸に配置された弁軸孔13aを有する。弁軸孔13aの内周面に、雄ねじ34cが螺合される雌ねじ13cが形成される。雄ねじ34cと雌ねじ13cとが送りねじ機構33を構成する。弁軸34の上端が、ステッピングモーター66のマグネットローター31に同軸に固定される。弁軸34の下端(端部)が、弁体40と一体的に接続される。マグネットローター31が閉弁方向に回転すると弁体40が弁口15に向かって移動される。弁体40が弁座16に接すると弁座16が弁体40の弁口15に向かう移動を規制する。
【0079】
このようにしたことから、送りねじ機構33によって弁軸34および弁体40が移動される。マグネットローター31が閉弁方向に回転すると弁軸34も閉弁方向に回転される。そして、弁体40が弁座16に接すると弁体40の弁口15に向かう移動が規制され、弁体40および弁軸34の移動が止まる。雄ねじ34cと雌ねじ13cとが締め付けられ、送りねじ機構33が止まる。これにより、送りねじ機構33によって弁軸34の閉弁方向への回転が規制され、マグネットローター31の回転が止まる。そのため、マグネットローター31に設けるストッパを省略できるとともに、弁体40の移動が止まったときにマグネットローター31の回転を止めることができる。
【0080】
また、電動弁1は、ステッピングモーター66を制御する制御装置80を有する。制御装置80が、初期化動作モードにおいて、マグネットローター31を閉弁方向に回転させ、マグネットローター31の閉弁方向への回転が規制されたときのマグネットローター31の位置を基準位置Rxとして取得する。制御装置80が、通常動作モードにおいて、基準位置Rxに基づいてマグネットローター31の位置を制御する。制御装置80は、通常動作モードにおいて、基準位置Rxを超えてマグネットローター31を閉弁方向に回転させず、全開位置Rzを超えてマグネットローター31を開弁方向に回転させない。制御装置80は、基準位置Rxからの回転角度(ステッピングモーター66に入力したパルスの数)によってマグネットローター31の位置を管理する。
【0081】
このようにしたことから、制御装置80が、マグネットローター31を閉弁方向に回転させて、マグネットローター31が基準位置Rxに到達すると、マグネットローター31の回転を止めることができる。そのため、マグネットローター31が基準位置Rxを超えて閉弁方向に回転することを抑制でき、弁座16の摩耗や電力消費を抑制できる。また、制御装置80が、マグネットローター31を開弁方向に回転させて、マグネットローター31が全開位置Rzに到達すると、マグネットローター31の回転を止めることができる。そのため、マグネットローター31が全開位置Rzを超えて開弁方向に回転することを抑制でき、雄ねじ34cと雌ねじ13cとが外れることを抑制できる。これにより、マグネットローター31の開弁方向の回転を規制するストッパや、雄ねじ34cと雌ねじ13cとの螺合を復帰させるためのコイルばねを省略できる。
【0082】
また、制御装置80が、マグネットローター31の回転に応じた信号を出力する磁気センサー110を有する。制御装置80が、磁気センサー110によって出力された信号に基づいてマグネットローター31の閉弁方向への回転が規制されたことを検出する。このようにすることで、比較的簡易な構成でマグネットローター31の閉弁方向への回転が規制されいるか否かを検出できる。なお、制御装置80は、マグネットローター31の回転が規制されたときにステーター60に生じる逆起電圧に基づいてマグネットローター31の閉弁方向への回転が規制されたことを検出してもよい。
【0083】
(第2実施例)
以下、本発明の第2実施例に係る電動弁2について、図8を参照して説明する。図8は、本発明の第2実施例に係る電動弁の断面図である。
【0084】
図8に示すように、電動弁2は、弁本体10Bと、キャン20と、駆動機構30Bと、弁体40Bと、制御装置80と、を有している。以下の説明において、電動弁1と同一(実質的に同一を含む)の構成には電動弁1と同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0085】
弁本体10Bは、アルミニウム合金などの金属製である。弁本体10Bは、本体部材11と、流路ブロック12と、支持部材13Bと、を有している。
【0086】
支持部材13Bは、第1支持部131と、第2支持部132と、を有している。第1支持部131は、円筒形状を有している。第1支持部131は、第1取付孔11aに配置されている。第1支持部131は、ねじ構造により本体部材11に取り付けられている。第2支持部132は、第1支持部131の上部に固定されている。第2支持部132は、上下方向に貫通する弁軸孔132aを有している。弁軸孔132aは、弁体40Bの上端面40b(一端面)と上下方向に向かい合っている。弁軸孔132aは、弁口15と同軸に配置されている。第2支持部132は、雌ねじ132cを有している。雌ねじ132cは、弁軸孔132aの内周面に配置されている。
【0087】
駆動機構30Bは、弁体40Bを上下方向に移動させる。駆動機構30Bは、マグネットローター31Bと、弁軸34Bと、ステーターユニット50と、を有している。
【0088】
マグネットローター31Bは、円筒形状を有している。マグネットローター31Bの内側には、壁部31dが配置されている。壁部31dは、マグネットローター31Bの上下方向中央に配置されている。マグネットローター31Bとステーター60とは、ステッピングモーター66Bを構成する。
【0089】
弁軸34Bは、円柱形状を有している。弁軸34Bの上端は、マグネットローター31Bの壁部31dに同軸に固定されている。弁軸34Bは、雄ねじ34cを有している。雄ねじ34cは、弁軸34Bの外周面に配置されている。弁軸34Bは弁軸孔132aに配置され、雄ねじ34cが雌ねじ132cに螺合される。雌ねじ132cと雄ねじ34cとは、送りねじ機構33Bを構成している。弁軸34Bが回転すると、弁軸34Bが回転方向に応じて上下方向に移動する。
【0090】
弁体40Bは、円柱形状を有している。弁体40Bは、第1支持部131に上下方向に移動可能に支持されている。弁体40Bの上部は第1支持部131の内側に配置され、弁体40Bの下部は弁室14に配置されている。弁体40Bは、弁口15と上下方向に向かい合っている。弁体40Bの下部には、制御部45および着座部47が形成されている。弁体40Bは、弁軸34Bの下端に接続されている。具体的には、弁体40Bの上端面40bに、弁軸34Bの下端が接している。弁体40Bの上端には、径方向外方に突出するフランジ形状のばね受け部49が形成されている。ばね受け部49と第1支持部131との間に開弁ばね37が配置されている。開弁ばね37は、圧縮コイルばねであり、弁体40Bを上方に押している。
【0091】
マグネットローター31Bが開弁方向に回転されると、送りねじ機構33Bによって弁軸34Bが上方に移動し、弁体40Bが開弁ばね37に押されて上方に移動する。マグネットローター31Bが閉弁方向に回転されると、送りねじ機構33Bによって弁軸34Bが下方に移動し、弁体40Bが弁軸34Bに押されて下方に移動する。弁体40Bが下方に移動して着座面48が弁座16の内周縁16aに接すると、弁体40Bおよび弁軸34Bの下方への移動が規制される。これにより、送りねじ機構33Bによって弁軸34Bおよびマグネットローター31Bの閉弁方向の回転が規制される。
【0092】
電動弁2は、弁口15および弁口15を囲む弁座16を有する弁本体10Bと、弁口15と向かい合う弁体40Bと、弁軸34Bと、ステッピングモーター66Bと、を有する。弁軸34Bに雄ねじ34cが形成される。弁本体10Bが、弁口15と同軸に配置された弁軸孔132aを有する。弁軸孔132aの内周面に、雄ねじ34cが螺合される雌ねじ132cが形成される。雄ねじ34cと雌ねじ132cとが送りねじ機構33Bを構成する。弁軸34Bの上端が、ステッピングモーター66Bのマグネットローター31Bに同軸に固定される。弁軸34Bの下端(端部)が、弁体40Bに接し、弁体40Bと接続される。マグネットローター31Bが閉弁方向に回転すると、弁軸34Bが弁体40Bを弁口15に向かって押し、弁体40Bが弁口15に向かって移動される。弁体40Bが弁座16に接すると弁座16が弁体40Bの弁口15に向かう移動を規制する。
【0093】
このようにしたことから、送りねじ機構33Bによって弁軸34Bおよび弁体40Bが移動される。マグネットローター31Bが閉弁方向に回転すると弁軸34Bも閉弁方向に回転される。そして、弁体40Bが弁座16に接すると弁体40Bの弁口15に向かう移動が規制され、弁体40Bおよび弁軸34Bの移動が止まる。雄ねじ34cと雌ねじ132cとが締め付けられ、送りねじ機構33Bが止まる。これにより、送りねじ機構33Bによって弁軸34Bの閉弁方向への回転が規制され、マグネットローター31Bの回転が止まる。そのため、マグネットローター31Bに設けるストッパを省略できるとともに、弁体40Bの移動が止まったときにマグネットローター31Bの回転を止めることができる。
【0094】
電動弁2は、電動弁1と同一(実質的に同一を含む)の効果を奏する。
【0095】
(第3実施例)
以下、本発明の第3実施例に係る電動弁3について、図9を参照して説明する。図9は、本発明の第3実施例に係る電動弁の断面図である。
【0096】
図9に示すように、電動弁3は、弁本体10Cと、キャン20と、駆動機構30Cと、弁体40Cと、制御装置80と、を有している。以下の説明において、電動弁1と同一(実質的に同一を含む)の構成には電動弁1と同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0097】
弁本体10Cは、アルミニウム合金などの金属製である。弁本体10Cは、本体部材11と、流路ブロック12と、支持部材13C、軸受19Cと、を有している。
【0098】
支持部材13Cは、円筒形状を有している。支持部材13Cは、第1取付孔11aに配置されている。支持部材13Cは、ねじ構造により本体部材11に取り付けられている。支持部材13Cの上部は、本体部材11の上面11bから上方に突出している。
【0099】
軸受19Cは、ボールベアリングである。軸受19Cは、支持部材13Cの上部に同軸に固定されている。軸受19Cは、弁口15と同軸に配置されている。軸受19Cは、弁軸34Cを回転可能に支持する。
【0100】
駆動機構30Cは、弁体40Cを上下方向に移動させる。駆動機構30Cは、マグネットローター31Cと、弁軸34Cと、ステーターユニット50と、を有している。
【0101】
マグネットローター31Cは、円筒形状を有している。マグネットローター31Cの内側には、壁部31eが配置されている。壁部31eは、マグネットローター31Cの下端近くに配置されている。マグネットローター31Cとステーター60とは、ステッピングモーター66Cを構成する。
【0102】
弁軸34Cは、円柱形状を有している。弁軸34Cの上端は、連結部材34eを介してマグネットローター31Cの壁部31eに同軸に固定されている。弁軸34Cは、雄ねじ34cを有している。雄ねじ34cは、弁軸34Cの外周面に配置されている。
【0103】
弁体40Cは、円柱形状を有している。弁体40Cは、支持部材13Cに上下方向に移動可能に支持されている。弁体40Cは、中心軸周りの回転が規制されている。弁体40Cの上部は支持部材13Cの内側に配置され、弁体40Cの下部は弁室14に配置されている。弁体40Cは、弁口15と上下方向に向かい合っている。弁体40Cは、弁軸孔40aを有している。弁軸孔40aは、弁体40Cの上端面40bに配置されている。弁体40Cは、雌ねじ40cを有している。雌ねじ40cは、弁軸孔40aの内周面に配置されている。弁体40Cの下部には、制御部45および着座部47が形成されている。弁体40Cは、弁軸34Cの下端に接続されている。具体的には、弁軸34Cは弁軸孔40aに配置され、雄ねじ34cが雌ねじ40cに螺合される。雌ねじ40cと雄ねじ34cとは、送りねじ機構33Cを構成している。送りねじ機構33Cは、弁軸34Cと弁体40Cとを接続する。弁軸34Cが回転すると、弁体40Cが弁軸34Cの回転方向に応じて上下方向に移動する。弁軸34Cは、上下方向に移動しない。
【0104】
マグネットローター31Cが開弁方向に回転されると弁軸34Cも開弁方向に回転され、送りねじ機構33Cによって弁体40Cが上方に移動する。マグネットローター31Cが閉弁方向に回転されると弁軸34Cも閉弁方向に回転され、送りねじ機構33Cによって弁体40Cが下方に移動する。弁体40Cが下方に移動して着座面48が弁座16の内周縁16aに接すると、弁体40Cの下方への移動が規制される。これにより、送りねじ機構33Cによって弁軸34Cおよびマグネットローター31Cの閉弁方向の回転が規制される。
【0105】
電動弁3は、弁口15および弁口15を囲む弁座16を有する弁本体10Cと、弁口15と向かい合う弁体40Cと、弁軸34Cと、ステッピングモーター66Cと、を有する。弁本体10Cが、弁軸34Cを回転可能に支持する軸受19Cを有する。軸受19Cが、弁口15と同軸に配置される。弁軸34Cに雄ねじ34cが形成される。弁体40Cが、弁軸孔40aを有する。弁軸孔40aの内周面に、雄ねじ34cが螺合される雌ねじ40cが形成される。雄ねじ34cと雌ねじ40cとが送りねじ機構33Cを構成する。弁軸34Cの上端が、ステッピングモーター66Cのマグネットローター31Cに同軸に固定される。弁軸34Cの下端(端部)が、弁体40Cと接続される。マグネットローター31Cが閉弁方向に回転すると弁体40Cが弁口15に向かって移動される。弁体40Cが弁座16に接すると弁座16が弁体40Cの弁口15に向かう移動を規制する。
【0106】
このようにしたことから、送りねじ機構33Cによって弁体40Cが移動される。マグネットローター31Cが閉弁方向に回転すると弁軸34Cも閉弁方向に回転される。そして、弁体40Cが弁座16に接すると弁体40Cの弁口15に向かう移動が規制され、弁体40Cの移動が止まる。雄ねじ34cと雌ねじ40cとが締め付けられ、送りねじ機構33Cが止まる。これにより、送りねじ機構33Cによって弁軸34Cの閉弁方向への回転が規制され、マグネットローター31Cの回転が止まる。そのため、マグネットローター31Cに設けるストッパを省略できるとともに、弁体40Cの移動が止まったときにマグネットローター31Cの回転を止めることができる。
【0107】
電動弁3は、電動弁1と同一(実質的に同一を含む)の効果を奏する。
【0108】
上述した電動弁1~3では、弁軸に雄ねじが形成され、弁本体または弁体に雄ねじが螺合される雌ねじが形成され、雄ねじと雌ねじとが送りねじ機構を構成する。本発明に係る電動弁において、弁軸に雌ねじが形成され、弁本体または弁体に雌ねじが螺合される雄ねじが形成され、雄ねじと雌ねじとが送りねじ機構を構成してもよい。すなわち、本発明に係る電動弁は、弁軸と弁本体または弁体とが送りねじ機構を構成するものであればよい。
【0109】
本明細書において、「円筒」や「円柱」等の形状を示す各用語は、実質的にその用語の形状を有する部材や部材の部分にも用いられている。例えば、「円筒形状の部材」は、円筒形状の部材と実質的に円筒形状の部材とを含む。
【0110】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
(第1実施例)
1、1A…電動弁、10…弁本体、11、11A…本体部材、11a…第1取付孔、11b…上面、12…流路ブロック、12a…第2取付孔、12b…上面、13、13A…支持部材、13a…弁軸孔、13c…雌ねじ、14…弁室、15…弁口、15a…上端、16…弁座、16a…内周縁、17…流路、18…流路、20…キャン、25…接続部材、30…駆動機構、31…マグネットローター、31d…壁部、31e…壁部、33…送りねじ機構、34…弁軸、34c…雄ねじ、34e…連結部材、40…弁体、45…制御部、46…制御面、47…着座部、48…着座面、50…ステーターユニット、60…ステーター、60a…ステーター内周面、61…A相ステーター、61a…極歯、61b…極歯、61c…コイル、62…B相ステーター、62a…極歯、62b…極歯、62c…コイル、63…モールド、64…端子支持部、65…端子、66…ステッピングモーター、70…ハウジング、70a…開口、71…周壁部、71a…内周面、72…上壁部、72a…内面、73…コネクタ、74…内側空間、75…基板空間、76…隔壁、77…蓋部材、80…制御装置、90…メイン基板、100…サブ基板、100a…第1端部、100b…第2端部、110…磁気センサー、120…マイクロコンピューター、210…記憶部、220…通信部、230…回転制御部、400…制御ユニット、L…軸線
(第2実施例)
2…電動弁、10B…弁本体、13B…支持部材、30B…駆動機構、31B…マグネットローター、33B…送りねじ機構、34B…弁軸、37…開弁ばね、40B…弁体、40b…上端面、49…ばね受け部、66B…ステッピングモーター、131…第1支持部、132…第2支持部、132a…弁軸孔、132c…雌ねじ
(第3実施例)
3…電動弁、10C…弁本体、13C…支持部材、19C…軸受、30C…駆動機構、31C…マグネットローター、33C…送りねじ機構、34C…弁軸、40C…弁体、40a…弁軸孔、40b…上端面、40c…雌ねじ、66C…ステッピングモーター

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図9