(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】光線方向制御素子、光線方向制御素子の製造方法及び撮像素子
(51)【国際特許分類】
H10F 39/12 20250101AFI20250127BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20250127BHJP
H04N 23/54 20230101ALI20250127BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20250127BHJP
H04N 25/00 20230101ALI20250127BHJP
【FI】
H10F39/12 D
G02B5/00 B
H04N23/54
H04N23/55
H04N25/00
(21)【出願番号】P 2020154516
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2019236033
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520272868
【氏名又は名称】武漢天馬微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】塩田 国弘
(72)【発明者】
【氏名】住吉 研
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 浩史
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-139207(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159737(WO,A1)
【文献】特開2016-062092(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0139765(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0250482(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10F 39/12
G02B 5/00
H04N 23/54
H04N 23/55
H04N 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体の主面の上に配列された複数の透光層と、
前記複数の透光層の間に配置された光吸収層と、
前記基体の前記主面の上に設けられ、前記複数の透光層が配置された領域の外周に配置された、複数の傾斜防止層と、を備え、
前記傾斜防止層のそれぞれは、最外周に配置されている前記透光層のそれぞれに1対1で対向している、
光線方向制御素子。
【請求項2】
前記複数の傾斜防止層は、互いに接続されている、
請求項1に記載の光線方向制御素子。
【請求項3】
前記複数の傾斜防止層は、前記複数の透光層が配置された領域を囲む、
請求項1又は2に記載の光線方向制御素子。
【請求項4】
前記傾斜防止層の幅が前記透光層の幅よりも広い、
請求項1から3のいずれか1項に記載の光線方向制御素子。
【請求項5】
前記透光層が柱形状である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の光線方向制御素子。
【請求項6】
前記基体が透光性を有する基板である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の光線方向制御素子。
【請求項7】
前記基体が撮像素子である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の光線方向制御素子。
【請求項8】
前記透光層と前記傾斜防止層との間と前記複数の傾斜防止層の間に、前記光吸収層が配置されている、
請求項1から7のいずれか1項に記載の光線方向制御素子。
【請求項9】
基体の主面に感光性を有する透光性材料を積層する工程と、
前記透光性材料から、配列された複数の透光層と、前記複数の透光層が配置される領域の外周に配置される複数の傾斜防止層とを形成する工程と、
前記複数の透光層の間に光吸収層を形成する工程と、を含み、
前記傾斜防止層のそれぞれは、最外周に配置されている前記透光層のそれぞれに1対1で対向している、
光線方向制御素子の製造方法。
【請求項10】
前記複数の透光層の間に光吸収層を形成する工程では、前記透光層と前記傾斜防止層との間と前記複数の傾斜防止層の間に、光吸収層を形成する、
請求項9に記載の光線方向制御素子の製造方法。
【請求項11】
基板と、
前記基板の主面の上に配列され、撮像対象からの光を受光する複数の受光部と、
前記複数の受光部のそれぞれの上に配置された透光層と、
前記透光層の間に配置された光吸収層と、
前記基板の前記主面の上に設けられ、前記透光層が配置された領域の外周に配置された、複数の傾斜防止層と、を備え、
前記傾斜防止層のそれぞれは、最外周に配置されている前記透光層のそれぞれに1対1で対向している、
撮像素子。
【請求項12】
前記透光層が前記受光部の一部と重なる位置に配置されている、
請求項
11に記載の撮像素子。
【請求項13】
前記透光層と前記傾斜防止層との間と前記複数の傾斜防止層の間に、前記光吸収層が配置されている、
請求項11又は12に記載の撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光線方向制御素子、光線方向制御素子の製造方法及び撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
透過する光の方向を制御する光線方向制御素子が、知られている。例えば、特許文献1は、基板と、基板の上に所定のパターンで形成された複数の透光性カラムと、透光性カラムの間に配置された光吸収材料とを備える、コリメートスクリーンを開示している。特許文献1のコリメートスクリーンでは、光吸収材料が入射角度の大きな入射光を吸収するので、コリメートスクリーンから出射される出射光の出射角度を所定の範囲内に制御できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2007/0139765号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、高アスペクト比を有する透光性カラムを所定のパターンで形成した後、透光性カラムの間に光吸収材料を充填している。透光性カラムを基板の上に形成する場合、透光性カラムのアスペクト比が高いので、所定のパターンの外周部に形成された透光性カラムが所定のパターンの外側に向けて傾くことがある。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、透光層の傾斜を抑制された光線方向制御素子、光線方向制御素子の製造方法及び撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の観点に係る光線方向制御素子は、
基体と、
前記基体の主面の上に配列された複数の透光層と、
前記複数の透光層の間に配置された光吸収層と、
前記基体の前記主面の上に設けられ、前記複数の透光層が配置された領域の外周に配置された、複数の傾斜防止層と、を備え、
前記傾斜防止層のそれぞれは、最外周に配置されている前記透光層のそれぞれに1対1で対向している。
【0007】
第2の観点に係る光線方向制御素子の製造方法は、
基体の主面に感光性を有する透光性材料を積層する工程と、
前記透光性材料から、配列された複数の透光層と、前記複数の透光層が配置される領域の外周に配置される複数の傾斜防止層とを形成する工程と、
前記複数の透光層の間に光吸収層を形成する工程と、を含み、
前記傾斜防止層のそれぞれは、最外周に配置されている前記透光層のそれぞれに1対1で対向している。
【0008】
第3の観点に係る撮像素子は、
基板と、
前記基板の主面の上に配列され、撮像対象からの光を受光する複数の受光部と、
前記複数の受光部のそれぞれの上に配置された透光層と、
前記透光層の間に配置された光吸収層と、
前記基板の前記主面の上に設けられ、前記透光層が配置された領域の外周に配置された、複数の傾斜防止層と、を備え、
前記傾斜防止層のそれぞれは、最外周に配置されている前記透光層のそれぞれに1対1で対向している。
【発明の効果】
【0009】
傾斜防止層が透光層を配置された領域の外周に配置されるので、透光層の傾斜を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る光線方向制御素子の上面を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す光線方向制御素子をA-Aで矢視した断面図である。
【
図3】実施形態1に係る透過する光の角度分布を説明するための模式図である。
【
図4】実施形態1に係る光線方向制御素子の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態1に係る積層された感光性を有する透光性材料を示す模式図である。
【
図6】実施形態1に係る形成された透光層と傾斜防止層を示す模式図である。
【
図7】実施形態2に係る光線方向制御素子の上面を示す模式図である。
【
図8】実施形態3に係る光線方向制御素子の上面を示す模式図である。
【
図9】実施形態4に係る光線方向制御素子の上面を示す模式図である。
【
図10】実施形態5に係る光線方向制御素子の上面を示す模式図である。
【
図11】実施形態6に係る光線方向制御素子を示す模式図である。
【
図12】変形例に係る傾斜防止層を示す模式図である。
【
図13】変形例に係る傾斜防止層を示す模式図である。
【
図14】変形例に係る光線方向制御素子を示す模式図である。
【
図15】実施例1に係る中央部の透光層を示す写真である。
【
図16】実施例1に係る+X方向端部の透光層を示す写真である。
【
図17】実施例1に係る-X方向端部の透光層を示す写真である。
【
図18】比較例に係る中央部の透光層を示す写真である。
【
図19】比較例に係る+X方向端部の透光層を示す写真である。
【
図20】比較例に係る-X方向端部の透光層を示す写真である。
【
図21】実施例2に係る+X方向端部の透光層を示す写真である。
【
図22】実施例3に係る+X方向端部の透光層を示す写真である。
【
図23】実施例4に係る透光層と傾斜防止層とを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る光線方向制御素子について、図面を参照して説明する。
【0012】
<実施形態1>
図1~
図6を参照して、本実施形態に係る光線方向制御素子100を説明する。光線方向制御素子100は、
図1、
図2に示すように、基体10と透光層20と光吸収層30と傾斜防止層40とを備える。本実施形態では、基体10は透光性を有する基板である。透光層20は、基体10の主面12の上に、所定のパターンで配列される。光吸収層30は透光層20の間に配置される。傾斜防止層40は透光層20の所定のパターンの外周に配置される。なお、理解を容易にするため、本明細書では、
図1における光線方向制御素子100の右方向(紙面の右方向)を+X方向、上方向(紙面の上方向)を+Y方向、+X方向と+Y方向に垂直な方向(紙面の手前方向)を+Z方向として説明する。
【0013】
光線方向制御素子100は、表示装置(例えば液晶ディスプレイ)の表示面、撮像素子の受光面等に設けられる。光線方向制御素子100は、透過する光(すなわち、光線方向制御素子100からの出射光)の角度分布を制御する。具体的には、
図3に示すように、光線方向制御素子100への入射光のうちの入射角度θ1が大きい入射光L1は、光吸収層30により吸収される。一方、光線方向制御素子100への入射光のうちの入射角度θ2が小さい入射光L2は、光吸収層30により吸収されず、光線方向制御素子100(透光層20)を透過する。これにより、光線方向制御素子100を透過する光の角度分布が制御される。透過する光の角度分布は、透光層20の高さHと幅D1と屈折率とにより、制御できる。
【0014】
図1に戻り、光線方向制御素子100の基体10は可視光を透過する。基体10は、例えば、平板状のガラス基板である。透光層20と光吸収層30と傾斜防止層40が、
図2に示すように、基体10の主面12の上に形成される。
【0015】
光線方向制御素子100の透光層20は可視光を透過する。透光層20は、
図1、
図2に示すように、基体10の主面12の上に感光性を有する透光性材料から柱形状に形成される。柱形状の透光層20のアスペクト比(高さH/幅D1)は、1以上であることが好ましく、8以上であることがさらに好ましい。また、透光層20は、基体10の主面12の上に、所定のパターンに配列される。本実施形態では、透光層20は、化学増幅型フォトレジスト:SU-8(商品名、日本化薬株式会社)から四角柱に形成され、マトリクス状に配列されている。
【0016】
光線方向制御素子100の光吸収層30は、基体10の主面12の上に形成される。また、光吸収層30は、
図1、
図2に示すように、透光層20の間に配置される。本実施形態では、光吸収層30と透光層20は交互に配列されている。光吸収層30は、例えば黒色の硬化性樹脂から、透光層20と同じ高さに形成される。
【0017】
光線方向制御素子100の傾斜防止層40は、透光層20が所定のパターンの外側に向けて傾斜することを抑制する。傾斜防止層40は、基体10の主面12の上に形成され、透光層20が配置される領域Tの外周に配置される。本明細書では、領域Tの外周とは、領域Tの外側の周りを意味する。
本実施形態では、傾斜防止層40は、感光性を有する透光性材料(SU-8)から透光層20と同じ高さに形成される。また、傾斜防止層40は、
図1に示すように、透光層20が配置される領域Tの外周に枠状に形成されている。傾斜防止層40と領域Tとの間隔Mは、例えば150μmである。
【0018】
傾斜防止層40の幅D2は、透光層20の幅D1よりも広いことが好ましい。これにより、傾斜防止層40は、透光層20の傾斜をより抑制できる。本明細書では、透光層20の幅D1は、傾斜防止層40に対向する面20aと、傾斜防止層40に対向する面20aと反対側の面20bとの間の幅(距離)を指す。また、傾斜防止層40の幅D2は、透光層20に対向する面40aと、透光層20に対向する面40aと反対側の面40bとの間の幅(距離)を指す。
【0019】
次に、
図4を参照して、光線方向制御素子100の製造方法を説明する。
図4は、光線方向制御素子100の製造方法を示すフローチャートである。光線方向制御素子100の製造方法は、基体10の主面12に感光性を有する透光性材料22(以下、透光性材料22と記載)を積層する工程(ステップS10)と、透光性材料22から、配列された複数の透光層20と、複数の透光層20が配置される領域Tの外周に配置される傾斜防止層40とを形成する工程(ステップS20)と、複数の透光層20の間に光吸収層30を形成する工程(ステップS30)とを含む。
【0020】
ステップS10では、まず、基体10と、透光層20と傾斜防止層40とを形成する透光性材料22とを準備する。本実施形態では、基体10として平板状のガラス基板を準備し、透光性材料22としてSU-8を準備する。次に、
図5に示すように、基体10の主面12に透光性材料22を積層する。透光性材料22は、スピンコート、スクリーン印刷、スプレイ塗布、ワイヤコータ等により、主面12に積層される。透光性材料22の厚さ、すなわち透光層20の高さHは、例えば10μm~600μmである。
【0021】
ステップS20は、
図4に示すように、積層された透光性材料22をプリベークする工程(ステップS22)と、透光性材料22を透光層20と傾斜防止層40の所定のパターンに露光する工程(ステップS24)と、露光された透光性材料22を現像する工程(ステップS26)と、現像された透光性材料22をポストベークする工程(ステップS28)とを含む。
【0022】
ステップS22では、積層された透光性材料22に含まれる溶媒を除くために、積層された透光性材料22をプリベークする(加熱する)。加熱温度は、例えば95℃である。
【0023】
ステップS24では、透光層20と傾斜防止層40の開口パターンを有するマスクを用いて、透光性材料22を、透光層20と傾斜防止層40の所定のパターンに露光する。露光光は、例えば波長365nmの紫外光である。
【0024】
ステップS26では、露光された透光性材料22を現像液によって現像する。現像の方式は、シャワー方式であっても、ディップ(浸漬)方式であってもよい。基体10を揺動することにより、透光性材料22の現像性が向上する。現像の後、リンス液によって、現像された透光性材料22をリンス処理する。リンス処理の方式は、現像の方式と同様である。
【0025】
ステップS28では、透光性材料22の架橋を促進するために、ポストベークする(加熱する)。加熱温度は、例えば150℃である。
以上により、
図6に示すように、所定のパターンに配列された複数の透光層20と、透光層20が配置される領域Tの外周に配置された傾斜防止層40とが、形成される。本実施形態では、傾斜防止層40が透光層20と共に形成されるので、透光層20の傾斜を抑制できる。
【0026】
ステップS30では、黒色の硬化性樹脂を透光層20の間に充填した後、黒色の硬化性樹脂を硬化させて、透光層20の間に光吸収層30を形成する。以上により、光線方向制御素子100を製造できる。
【0027】
以上のように、傾斜防止層40が透光層20を配置された領域Tの外周に配置されるので、光線方向制御素子100は透光層20の傾斜を抑制できる。また、光線方向制御素子100の製造方法は、透光層20と共に、透光層20が配置される領域Tの外周に配置される傾斜防止層40を形成するので、透光層20の傾斜を抑制できる。
【0028】
<実施形態2>
実施形態1の傾斜防止層40は枠状に形成されているが、傾斜防止層40の形状は任意である。
【0029】
本実施形態の光線方向制御素子100は、
図7に示すように、複数に分割された傾斜防止層41~48を有する。傾斜防止層41~48は、それぞれ、矩形状に形成される。傾斜防止層41~48は、領域Tの外周に領域Tを囲んで配置されている。その他の構成は、実施形態1の光線方向制御素子100の構成と同様である。
【0030】
本実施形態の光線方向制御素子100においても、傾斜防止層41~48が、透光層20を配置された領域Tの外周に配置されているので、透光層20の傾斜を抑制できる。また、光線方向制御素子100の製造において、現像液の循環を容易にし、現像性を向上できる。さらに、透光層20の基体10への密着性を向上できる。
【0031】
<実施形態3>
実施形態1では、1つの枠状の傾斜防止層40が領域Tの外周に配置に配置されているが、複数の傾斜防止層50が透光層20に対向して配置されてもよい。
【0032】
本実施形態の光線方向制御素子100は、
図8に示すように、複数の傾斜防止層50を有する。複数の傾斜防止層50は、透光層20を配置される領域Tの外周に配置され、領域Tを囲む。傾斜防止層50のそれぞれは、領域T内の最外周に配置されている透光層20のそれぞれに対向している。その他の構成は、実施形態1の光線方向制御素子100の構成と同様である。なお、本実施形態においても、傾斜防止層50の幅(透光層20に対向する面50aと透光層20に対向する面50aと反対側の面50bとの間の幅)D2は、透光層20の幅D1よりも広いことが好ましい。
【0033】
本実施形態の光線方向制御素子100においても、傾斜防止層50が、透光層20を配置された領域Tの外周に配置されているので、透光層20の傾斜を抑制できる。
【0034】
<実施形態4>
実施形態3では、複数の傾斜防止層50が透光層20に対向して配置されているが、透光層20を配置される領域Tが多角形状である場合、傾斜防止層52が領域Tの角部62に対向する位置に配置されてもよい。
【0035】
本実施形態の光線方向制御素子100では、
図9に示すように、複数の透光層20が矩形形状の領域T内にマトリクス状に配列されている。また、傾斜防止層50のそれぞれが、実施形態3の傾斜防止層50と同様に、領域T内の最外周に配置されている透光層20のそれぞれに対向して配置されている。さらに、傾斜防止層52が、領域Tの外周の領域Tの角部62に対向する位置に配置されている。その他の構成は、実施形態3の光線方向制御素子100の構成と同様である。
【0036】
本実施形態においても、傾斜防止層50が、透光層20を配置された領域Tの外周に配置されているので、透光層20の傾斜を抑制できる。また、傾斜防止層52が、領域Tの角部62に対向しているので、領域Tの角部62の近傍に配置されている透光層20の傾斜を、更に抑制できる。
【0037】
<実施形態5>
実施形態3では、複数の傾斜防止層50が透光層20に対向して配置されているが、傾斜防止層50は互いに接続されてもよい。
【0038】
本実施形態の光線方向制御素子100では、傾斜防止層50のそれぞれが、実施形態3の傾斜防止層50と同様に、領域T内の最外周に配置されている透光層20のそれぞれに対向して配置されている。さらに、傾斜防止層50が、
図10に示すように、透光層20と反対側の端部で、互いに接続されている。その他の構成は、実施形態3の光線方向制御素子100の構成と同様である。
【0039】
本実施形態においても、傾斜防止層50が、透光層20を配置された領域Tの外周に配置されているので、透光層20の傾斜を抑制できる。さらに、傾斜防止層50が互いに接続されているので、傾斜防止層50の傾斜を抑制できる。
【0040】
<実施形態6>
実施形態1~5の光線方向制御素子100では、基体10は透光性を有する基板であるが、基体10は透光性を有する基板に限られない。
【0041】
本実施形態では、基体10は撮像素子である。撮像素子は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。基体10は、
図11に示すように、基板10aと複数の受光部14とを有している。複数の受光部14は、主面12に配列され、撮像対象からの光を受光する。
【0042】
本実施形態では、透光層20は基体10の受光部14の上に位置する。また、光吸収層30は透光層20の間に位置する。本実施形態の光線方向制御素子100のその他の構成は、実施形態1の光線方向制御素子100と同様である。
【0043】
本実施形態では、光吸収層30が余分な角度から受光部14に入射する光を除くので、明瞭な画像を撮像できる。また、本実施形態においても、傾斜防止層40が透光層20を配置された領域Tの外周に配置されているので、透光層20の傾斜を抑制できる。本実施形態の光線方向制御素子100は、例えば、基板10aと、基板10aの主面12の上に配列され、撮像対象からの光を受光する複数の受光部14と、受光部14の上に配置された透光層20と、透光層20の間に配置された光吸収層30と、透光層20が配置された領域Tの外周に配置された傾斜防止層40とを備える、撮像素子とも表される。
【0044】
<変形例>
以上、実施形態を説明したが、本開示は、要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0045】
実施形態1~5の基体10は平板状のガラス基板であるが、基体10は透光性を有する樹脂から形成されてもよい。
【0046】
実施形態1~5の透光層20はマトリクス状に配列されているが、透光層20の配列は任意である。透光層20は、例えば千鳥状に配列されてもよい。また、実施形態6では、透光層20は受光部14の配列に対応して配列される。さらに、実施形態1~6では、透光層20の形状は四角柱であるが、透光層20の形状は任意である。透光層20の形状は、例えば円柱であってもよい。
【0047】
透光層20を配置される領域Tの形状は、任意である。実施形態1、2の領域Tは矩形形状であるが、領域Tは多角形状、円形等であってもよい。
【0048】
透光層20と傾斜防止層40とを形成する透光性材料22は、SU-8に限られず、感光性と透光性を有する材料であればよい。透光性材料22の露光は、透光性材料22とマスクの間にギャップを設けたプロキシミティ露光であっても、透光性材料22とマスクとが接したコンタクト露光であってもよい。
【0049】
透光性材料22を透光層20と傾斜防止層40の所定のパターンに露光する工程(ステップS24)では、透光性材料22を露光した後、PEB(Post Exposure Bake)処理を実施してもよい。
【0050】
傾斜防止層40、41~48、50、52は、領域Tの外周に領域Tを囲んで配置されているが、傾斜防止層は領域Tの外周に配置されていればよい。
図12に示すように、2つの対向する傾斜防止層54、55が、領域Tの外周に領域Tを挟んで配置されてもよい。
【0051】
実施形態4の傾斜防止層52は、矩形形状の領域Tの角部62に対向して配置されている。領域Tが多角形状を有する場合、傾斜防止層52は多角形状の角部に対向して配置されてもよい。また、実施形態4の傾斜防止層50、52は、
図13に示すように、互いに接続されてもよい。
【0052】
光吸収層を形成する黒色の硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂であっても、UV(Ultraviolet)硬化性樹脂であってもよい。
【0053】
実施形態6の透光層20は受光部14の上に直接形成されているが、他の部材が透光層20と受光部14との間に設けられていてもよい。例えば、受光部14を保護する保護層が受光部14の上に直接設けられ、透光層20が保護層の上に設けられてもよい。さらに、撮像素子はCCDイメージセンサに限られない。撮像素子は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであってもよい。
【0054】
実施形態6の透光層20は、受光部14の少なくとも一部の上に配置されていればよい。透光層20は、
図14に示すように、受光部14の一部の上に配置されてもよい。また、平面視において、透光層20は受光部14の一部と重なる位置に配置されてもよい。
【0055】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。
【実施例】
【0056】
以下の実施例により、本開示をさらに具体的に説明するが、本開示は実施例によって限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
本実施例では、基体10を平板状のガラス基板として、実施形態1の透光層20と傾斜防止層40を基体10の主面12に形成した。本実施例では、透光層20が配置される領域Tの大きさを30mm×30mmと、透光層20の形状を正四角柱とした。透光層20の幅D1を50μmと、透光層20の高さHを400μmと、透光層20の配列ピッチを100μmとした。また、傾斜防止層40の幅D2を250μmと、傾斜防止層40の高さを400μmと、傾斜防止層40と領域Tとの間隔Mを150μmとした。
光線方向制御素子100の製造方法におけるステップS10とステップS20(ステップS22~ステップS28)に従って、透光層20と傾斜防止層40とを形成した。
【0058】
さらに、傾斜防止層40を備えない比較例として、本実施例と同様の透光層20のみを基体10の主面12に形成した。
【0059】
図15と
図16と
図17は、それぞれ、本実施例において形成された領域Tにおける中央部の透光層20と+X方向端部の透光層20と-X方向端部の透光層20を示す。また、
図18と
図19と
図20は、それぞれ、比較例において形成された領域Tにおける中央部の透光層20と+X方向端部の透光層20と-X方向端部の透光層20を示す。なお、
図15~
図20における透光層20の一部の欠けは、写真撮影用サンプルを作製するための破断において生じた欠けである。
【0060】
図15~
図17に示すように、本実施例において形成された透光層20は傾斜していない。一方、
図19、
図20に示すように、比較例において形成された透光層20は、-X方向端部と+X方向端部において、領域Tの外側に向けて傾斜している。
【0061】
以上のように、傾斜防止層40が透光層20を配置された領域Tの外周に配置されているので、透光層20の傾斜を抑制できる。
【0062】
<実施例2、実施例3>
実施例1と同様に、実施形態1の透光層20と傾斜防止層40を基体10の主面12に形成した。透光層20の高さHと傾斜防止層40の高さとを350μmとし、傾斜防止層40の幅D2を250μm(実施例2)、450μm(実施例3)とした。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0063】
図21は実施例2の+X方向端部の透光層20を示し、
図22は実施例3の+X方向端部の透光層20を示す。
図21、
図22に示すように、実施例2、3において形成された透光層20は傾斜していない。したがって、傾斜防止層40を領域Tの外周に配置することにより、透光層20の傾斜を抑制できる。
【0064】
<実施例4>
本実施例では、基体10を平板状のガラス基板として、実施形態4の透光層20と傾斜防止層50、52を基体10の主面12に形成した。本実施例では、透光層20が配置される領域Tの大きさを30mm×30mmと、透光層20の形状を正四角柱とした。透光層20の幅D1を50μmと、透光層20の高さHを400μmと、透光層20の配列ピッチを100μmとした。また、傾斜防止層50、52の幅D2を250μmと、傾斜防止層50、52の高さを400μmと、傾斜防止層50と領域Tとの間隔Mを50μmとした。光線方向制御素子100の製造方法におけるステップS10とステップS20に従って、透光層20と傾斜防止層50、52とを形成した。
【0065】
図23は、本実施例における透光層20と傾斜防止層50、52とを示す。
図23に示すように、透光層20は傾斜していない。
【0066】
以上のように、領域Tの外周に配置に配置された傾斜防止層50のそれぞれが、領域T内の最外周に配置されている透光層20のそれぞれに対向しているので、透光層20の傾斜を抑制できる。また、傾斜防止層52が領域Tの角部62に対向しているので、角部62の近傍に配置されている透光層20の傾斜を、更に抑制できる。
【符号の説明】
【0067】
10 基体、10a 基板、12 主面、14 受光部、20 透光層、20a 傾斜防止層に対向する面、20b 傾斜防止層に対向する面と反対側の面、22 感光性を有する透光性材料、30 光吸収層、40,41,42,43,44,45,46,47,48,50,52,54,55 傾斜防止層、40a,50a 透光層に対向する面、40b,50b 透光層に対向する面と反対側の面、62 角部、100 光線方向制御素子、D1,D2 幅、H 高さ、M 間隔、T 領域、L1,L2 入射光、θ1,θ2 入射角度