IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オーチス エレベータ カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許-エレベータシステムの洗浄装置 図1
  • 特許-エレベータシステムの洗浄装置 図2
  • 特許-エレベータシステムの洗浄装置 図3
  • 特許-エレベータシステムの洗浄装置 図4
  • 特許-エレベータシステムの洗浄装置 図5
  • 特許-エレベータシステムの洗浄装置 図6
  • 特許-エレベータシステムの洗浄装置 図7
  • 特許-エレベータシステムの洗浄装置 図8
  • 特許-エレベータシステムの洗浄装置 図9
  • 特許-エレベータシステムの洗浄装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】エレベータシステムの洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/12 20060101AFI20250127BHJP
【FI】
B66B7/12 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020167572
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2021059453
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】16/590,704
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Otis Elevator Company
【住所又は居所原語表記】One Carrier Place,Farmington,Connecticut,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 充
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛丈
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-240836(JP,A)
【文献】特開平05-105365(JP,A)
【文献】国際公開第2004/013029(WO,A1)
【文献】実開昭54-092561(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0044267(US,A1)
【文献】中国実用新案第207861661(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータシステムの複数の巻き上げベルト及び/または少なくとも1つの滑車を洗浄する洗浄ヘッドであって、前記少なくとも1つの滑車は、前記巻き上げベルトの各々を受けるための複数の溝を含み、
基板と、
前記基板から外側に突出するよう前記基板の上端に固定された複数のワイパと、を備え、
前記洗浄ヘッドは、前記複数の巻き上げベルトを一度に洗浄し、及び/または前記少なくとも1つの滑車の前記複数の溝を一度に洗浄するために使用することができ
前記基板の前記上端は、前記基板の残りに対して角度Aにおいて湾曲し、
前記ワイパは各々、前記ワイパが前記角度Aにおいて前記基板から外側に突出するように、前記基板の前記上端と前記基板の前記上端上にボルトで留められたそれぞれの固定板との間で挟まれる
前記洗浄ヘッド。
【請求項2】
ワイパの数は、巻き上げベルトの数に対応する、請求項1に記載の洗浄ヘッド。
【請求項3】
各ワイパの幅は、各巻き上げベルトの幅に対応し、前記ワイパの間の間隔は、前記巻き上げベルトの間の間隔に対応する、請求項2に記載の洗浄ヘッド。
【請求項4】
前記複数のワイパは、等しい間隔によって間隔を空けられる、請求項3に記載の洗浄ヘッド。
【請求項5】
前記角度Aは、40~50度である、請求項に記載の洗浄ヘッド。
【請求項6】
前記基板の下端は、少なくとも1つの開スロットを含む、請求項に記載の洗浄ヘッド。
【請求項7】
前記ワイパの各々は、弾性板、及び前記弾性板の周りに巻き付けられた洗浄シートを含む、請求項1に記載の洗浄ヘッド。
【請求項8】
前記少なくとも1つの滑車は、駆動滑車である、請求項1に記載の洗浄ヘッド。
【請求項9】
前記少なくとも1つの滑車は、遊び滑車である、請求項1に記載の洗浄ヘッド。
【請求項10】
エレベータシステムの複数の巻き上げベルト及び/または少なくとも1つの滑車を洗浄する洗浄装置であって、前記少なくとも1つの滑車は、前記巻き上げベルトの各々を受けるための複数の溝を含み、
機械筐体に固定することができる取付板と、
前記取付板に調節可能に固定することができる少なくとも1つのL字形状の第1のブラケットと、
前記第1のブラケットに調節可能に固定することができる少なくとも1つのL字形状の第2のブラケットと、
前記第2のブラケットに固定することができる洗浄ヘッドであって、
基板と、
前記基板から外側に突出するよう前記基板の上端に固定された複数のワイパと、を含む、前記洗浄ヘッドと、を備え、
前記洗浄ヘッドは、前記複数の巻き上げベルトを一度に洗浄し、及び/または前記少なくとも1つの滑車の前記複数の溝を一度に洗浄するよう位置付けられる、
前記洗浄装置。
【請求項11】
前記第1のブラケット及び前記第2のブラケットは、前記複数の巻き上げベルトの間の間隔と位置合わせして置かれ、前記少なくとも1つの第2のブラケットは、前記洗浄装置が前記エレベータシステムに設置されるとき、前記間隔を通じて延在する、請求項10に記載の洗浄装置。
【請求項12】
前記洗浄装置は、前記ワイパが前記巻き上げベルトの内部表面に向かって突出して、その上で適切な圧力を加えるように設置される、請求項11に記載の洗浄装置。
【請求項13】
前記洗浄装置は、前記ワイパが牽引滑車に向かって突出して、前記牽引滑車の各溝の底に適切な圧力を加えるように設置される、請求項11に記載の洗浄装置。
【請求項14】
動作中に前記洗浄ヘッドを支持するよう、前記第2のブラケットとは反対の前記洗浄ヘッドの側面上に固定された支持板を更に備えた、請求項10に記載の洗浄装置。
【請求項15】
前記第1のブラケットは、前記取付板に対する垂直方向での前記第1のブラケットの調節を可能にする、少なくとも1つのボルトを受けるための伸長スロットを含む、請求項10に記載の洗浄装置。
【請求項16】
前記第2のブラケットは、前記第1のブラケットに対する前後方向での前記第2のブラケットの調節を可能にする、少なくとも1つのボルトを受けるための伸長スロットを含む、請求項15に記載の洗浄装置。
【請求項17】
エレベータシステムに洗浄装置を設置する方法であって、
取付板及び少なくとも1つのL字形状の第1のブラケットを機械筐体に固定することと、
少なくとも1つのL字形状の第2のブラケットを前記第1のブラケットに固定することと、
洗浄ヘッドを前記第2のブラケットに固定することであって、前記洗浄ヘッドは、基板、及び前記基板から外側に突出するよう前記基板の上端に固定された複数のワイパを含む、前記固定することと、
前記洗浄ヘッドが複数の巻き上げベルトに適切な圧力を一度に加え、または少なくとも1つの滑車の複数の溝に適切な圧力を一度に加えるように、前記第1のブラケット及び前記第2のブラケットを調節することと、
を備えた、前記方法。
【請求項18】
前記第1のブラケット及び前記第2のブラケットを複数の巻き上げロープの間の間隔と位置合わせすることと、前記間隔を通じて前記少なくとも1つの第2のブラケットを挿入することと、を更に備えた、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、エレベータシステムのベルト及び/または滑車を本来の位置で洗浄する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのエレベータシステムは、1つ以上の巻き上げロープを含むローピングによって昇降路内で吊るされるエレベータかご及びカウンターウエイトを含む。典型的には、ワイヤロープ、ケーブル、またはベルトは、エレベータかご及びカウンターウエイトの重量を支持し、エレベータかごを昇降路内の所望の位置に移動させるための巻き上げロープとして使用される。巻き上げロープは典型的には、所望のローピング配置に従って、いくつかの滑車の周りで経路を定められる。
【0003】
巻き上げロープとして使用されるベルトは典型的には、複数の縦方向に延在するワイヤコード、及びワイヤコードを覆うジャケットを含む。巻き上げロープとしてそのようなベルトを使用するエレベータシステムでは、エレベータ昇降路において見られることがある塵または埃などの異物が、設置または通常運転の間にベルトの表面に付着することがある。そのような異物は、建物の居住者または所有者からの苦情につながる望ましくないノイズを生じさせることがある。更に、通常運転の間、ベルトの表面上のワックスが、ベルトが滑車と接触すると滑車の表面に付着する。これは、ベルトと滑車との間でずれを生じさせ、エレベータかごの正確な移動を損なうことがある。したがって、ベルト及び滑車は、定期的に洗浄される必要がある。
【0004】
エレベータベルトに対する1つの洗浄装置が特許文献1に示されている。この特許出願は、パッドユニットのペアの間でベルトを挟む洗浄装置を開示している。そのような洗浄装置は、重く、設置及び調節するのに多くの時間を必要とする。
【0005】
一方、滑車は現在では、手動で洗浄される。そのような手動洗浄は、大きな労働力及び時間の両方を要し、ベルトが通常は洗浄の間に移動するので、危険な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-117540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記及び他の考慮に鑑みて、エレベータシステムのベルト及び/または滑車を洗浄する効率的な洗浄装置に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、エレベータシステムの複数の巻き上げベルト及び/または少なくとも1つの滑車を洗浄する洗浄ヘッドは、少なくとも1つの滑車が巻き上げベルトの各々を受けるための複数の溝を含み、基板と、基板から外側に突出するよう基板の上端に固定された複数のワイパと、を備え、洗浄ヘッドは、複数の巻き上げベルトを一度に洗浄し、及び/または少なくとも1つの滑車の複数の溝を一度に洗浄するために使用されてもよい。
【0009】
上記説明された特徴のうちの1つ以上に加え、または代替として、ワイパの数が、巻き上げベルトの数に対応する、更なる実施形態が含まれてもよい。
【0010】
上記説明された特徴のうちの1つ以上に加え、または代替として、各ワイパの幅が、各巻き上げベルトの幅に対応し、ワイパの間の間隔が、巻き上げベルトの間の間隔に対応する、更なる実施形態が含まれてもよい。
【0011】
上記説明された特徴のうちの1つ以上に加え、または代替として、基板の上端が、基板の残りに対して角度Aにおいて湾曲し、ワイパが各々、ワイパが角度Aにおいて基板から外側に突出するように、基板の上端と基板の上端上にボルトで留められたそれぞれの固定板との間で挟まれる、更なる実施形態が含まれてもよい。
【0012】
上記説明された特徴のうちの1つ以上に加え、または代替として、角度Aが、約40~50度である、更なる実施形態が含まれてもよい。
【0013】
上記説明された特徴のうちの1つ以上に加え、または代替として、基板の下端が、少なくとも1つの開スロットを含む、更なる実施形態が含まれてもよい。
【0014】
上記説明された特徴のうちの1つ以上に加え、または代替として、ワイパの各々が、弾性板、及び弾性板の周りで覆われた洗浄シートを含む、更なる実施形態が含まれてもよい。
【0015】
上記説明された特徴のうちの1つ以上に加え、または代替として、少なくとも1つの滑車が、駆動滑車である、更なる実施形態が含まれてもよい。
【0016】
上記説明された特徴のうちの1つ以上に加え、または代替として、少なくとも1つの滑車が、遊び滑車である、更なる実施形態が含まれてもよい。
【0017】
別の実施形態によれば、エレベータシステムの複数の巻き上げベルト及び/または少なくとも1つの滑車を洗浄する洗浄装置は、少なくとも1つの滑車が巻き上げベルトの各々を受けるための複数の溝を含み、機械筐体に固定することができる取付板と、取付板に調節可能に固定することができる少なくとも1つのL字形状の第1のブラケットと、第1のブラケットに調節可能に固定することができる少なくとも1つのL字形状の第2のブラケットと、第2のブラケットに固定することができる洗浄ヘッドと、を備える。洗浄ヘッドは、基板、及び基板から外側に突出するよう基板の上端に固定された複数のワイパを含み、洗浄ヘッドは、複数の巻き上げベルトを一度に洗浄し、及び/または少なくとも1つの滑車の複数の溝を一度に洗浄するよう位置付けられる。
【0018】
上記説明された特徴のうちの1つ以上に加え、または代替として、第1のブラケット及び第2のブラケットが、複数の巻き上げベルトの間の間隔と位置合わせして置かれ、少なくとも1つの第2のブラケットが、洗浄装置がエレベータシステムに設置されるとき、当該間隔を通じて延在する、更なる実施形態が含まれてもよい。
【0019】
上記説明された特徴のうちの1つ以上に加え、または代替として、洗浄装置が、ワイパが巻き上げベルトの内部表面に向かって突出して、その上で適切な圧力を加えるように設置される、更なる実施形態が含まれてもよい。
【0020】
上記説明された特徴のうちの1つ以上に加え、または代替として、洗浄装置が、ワイパが牽引滑車に向かって突出して、牽引滑車の各溝の底に適切な圧力を加えるように設置される、更なる実施形態が含まれてもよい。
【0021】
上記説明された特徴のうちの1つ以上に加え、または代替として、動作中に洗浄ヘッドを支持するよう、第2のブラケットとは反対の洗浄ヘッドの側面上に固定された支持板を更に含む、更なる実施形態が含まれてもよい。
【0022】
上記説明された特徴のうちの1つ以上に加え、または代替として、第1のブラケットが、取付板に対する垂直方向での第1のブラケットの調節を可能にする、少なくとも1つのボルトを受けるための伸長スロットを含む、更なる実施形態が含まれてもよい。
【0023】
上記説明された特徴のうちの1つ以上に加え、または代替として、第2のブラケットが、第1のブラケットに対する前後方向での第2のブラケットの調節を可能にする、少なくとも1つのボルトを受けるための伸長スロットを含む、更なる実施形態が含まれてもよい。
【0024】
別の実施形態によれば、エレベータシステムに洗浄装置を設置する方法は、取付板及び少なくとも1つのL字形状の第1のブラケットを機械筐体に固定することと、少なくとも1つのL字形状の第2のブラケットを第1のブラケットに固定することと、洗浄ヘッドを第2のブラケットに固定することであって、洗浄ヘッドは、基板、及び基板から外側に突出するよう基板の上端に固定された複数のワイパを含む、固定することと、洗浄ヘッドが複数の巻き上げベルトに適切な圧力を一度に加え、または少なくとも1つの滑車の複数の溝に適切な圧力を一度に加えるように、第1のブラケット及び第2のブラケットを調節することと、を含む。
【0025】
上記説明された特徴のうちの1つ以上に加え、または代替として、第1のブラケット及び第2のブラケットを複数の巻き上げロープの間の間隔と位置合わせすることと、当該間隔を通じて少なくとも1つの第2のブラケットを挿入することと、を更に含む、更なる実施形態が含まれてもよい。
【0026】
先述した特徴及び要素は、他に明確に示されない限り、排他性なしに様々な組み合わせで組み合わされてもよい。それらの特徴及び要素と共に、その操作は、以下の説明及び添付図面に鑑みてより明らかになるであろう。しかしながら、以下の説明及び図面は、本質的に例示的及び説明的であり、非限定的であることを意図していることを理解されたい。
【0027】
開示の先述の特徴及び他の特徴、並びに利点は、添付図面と併用して以下の詳細な説明から明らかになり、添付図面では、いくつかの図において同様の要素が同様に番号付けされる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】ベルトを洗浄するよう設置された、本発明の洗浄装置を含む例示的なエレベータシステムの部分の概略図である。
図2図1の洗浄装置の斜視図である。
図3図2の洗浄装置の洗浄ヘッドを示す図である。
図4図3の洗浄ヘッドの部分側面図である。
図5】ベルトに接触する、図3の洗浄ヘッドを示す概略図である。
図6】牽引滑車を洗浄するよう設置された、本発明の洗浄装置を含む例示的なエレベータシステムの部分の概略図である。
図7図6の洗浄装置の斜視図である。
図8】牽引滑車に接触する、図3の洗浄ヘッドを示す概略図である。
図9】ベルトを洗浄するよう設置された、本発明の洗浄装置の第2の実施形態を示す図である。
図10】遊び滑車を洗浄するよう設置された、本発明の洗浄装置の第2の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、実施例のエレベータシステム1の選択された部分を概略的に示す。複数のベルト2は、牽引滑車3にわたって延長し、一端はエレベータかご(図示せず)に接続され、他端はカウンターウエイト(図示せず)に接続される。牽引滑車3は、機械筐体5に位置付けることができ、機械室(図示せず)に配置することができる機械4によって駆動される。牽引滑車3とベルト2との間の牽引は、昇降路(図示せず)を通じてかご及びカウンターウエイトを垂直に駆動する。複数のベルト2は、並列に位置合わせされ、等しく間隔を空けられる。牽引滑車3は、その外部表面上に、ベルト2の各々を受けるための複数の溝(図示せず)を含む。溝の底は、ベルト2の各々に対して牽引表面をもたらす。
【0030】
ベルト2の各々は、平坦な矩形断面を有する、ジャケット内に組み込まれた1つまたは複数の縦方向に延在するワイヤコードを含んでもよい。ワイヤコードは各々、複数のスチールワイヤを含んでもよく、ジャケットは、ポリウレタン樹脂などの可塑性のある合成樹脂材料を含んでもよい。しかしながら、ベルト2は、エレベータかご及びカウンターウエイトの重量を支持し、エレベータかごを昇降路内の所望の位置に移動させることが可能である限り、いずれかの他の材料を含んでもよい。
【0031】
図1は更に、本発明の洗浄装置6を示す。また、図2を参照して、洗浄装置6は、取付板9、L字形状の第1のブラケット10のペア、L字形状の第2のブラケット12のペア、及び洗浄ヘッド14を含む。第1のブラケット10は、取付板9の両側面上に設けられ、取付板9及び第1のブラケット10の両方は、ボルト16を介して機械筐体5に固定される。第2のブラケット12は、ボルト17及びナット17Aを介して第1のブラケット10の各々に固定される。洗浄ヘッド14は、第2のブラケット12とは反対の洗浄ヘッド14の側面上に位置付けられた支持板18を介して第2のブラケット12に固定される。支持板18は、ボルト19を介して第2のブラケット12上にボルトで留められ、動作中に洗浄ヘッド14を支持する。この実施形態では、洗浄ヘッド14は、複数のベルト2を一度に洗浄するよう位置付けられる。
【0032】
取付板9は、牽引滑車の軸に並列して横方向に延在する。L字形状の第1のブラケット10は、第1の脚部10a、及び第1の脚部10aから直角に延在する第2の脚部10bを含む。第1の脚部10aの遠位端は、ボルト16を受けるための細長スロット10cを含み、細長スロット10cは、矢印によって示されるように、取付板9に対する垂直方向での第1のブラケット10の調節を可能にする。第1の脚部10aは、取付板9から下方向に垂直に延在し、第2の脚部10bは、牽引滑車3から離れた方向に延在する。
【0033】
L字形状の第2のブラケット12は、洗浄ヘッド14に固定された第1の脚部12a、及び第1の脚部12aから直角に延在する第2の脚部12bを含む。第2の脚部12bは、ボルト17及びナット17Aを介して第1のブラケット10の第2の脚部10bに固定される。第2のブラケット12の第2の脚部12bの遠位端は、ボルト17を受けるための細長スロット(図示せず)を含み、細長スロットは、矢印によって示されるように、第1のブラケット10に対する前後方向(図1における左/右方向)での第2のブラケット12の調節、よって洗浄ヘッド14の調節を可能にする。
【0034】
図3は、洗浄ヘッド14の拡大図であり、図4は、洗浄ヘッド14の部分側面図である。洗浄ヘッド14は、面取りされた下隅を有する矩形板であり、ボルト19を受けるための2つの開スロット20aを含む、基板20を含む。開スロット20aは、洗浄ヘッド14の取り付け及び取り外しを促進し、必要な場合、垂直方向での洗浄ヘッド14の調節をも可能にする。基板20の上端20bは、基板20の残りに対する角度において湾曲する。この実施例では4個である、ベルトの数に対応する複数のワイパ22は各々、ボルト24のペアによって、基板20の上端20bと基板20上で各々が固定されたそれぞれの固定板23との間で挟まれる。ワイパ22は各々、弾性板25及び洗浄シート26を含む。弾性板25の基部は、基板20と固定板23との間で挟まれ、弾性板25の先端は、長さLだけ基板20から突出する。洗浄シート26は、弾性板25の先端の周りに巻き付けられ、弾性板25の基部と共に基板20と固定板23との間で挟まれる。洗浄シート26は、各ベルト2の幅に対応する幅Wを有し、ベルト2の間の距離に対応する間隔により基板20から突出する。洗浄シート26の間隔は、等しく間隔を空けられてもよく、または可変の幅で間隔を空けられてもよい。
【0035】
洗浄シート26は、例えば、ポリエステル不織布から構成される。洗浄シート26の材料は、ベルト2のジャケットまたは滑車3に対する被膜を損傷させない。洗浄油が使用されるケースでは、洗浄シート26は、油を保持する。弾性板25は、例えば、0.75~1ミリメートルの厚みを有するポリプロピレン樹脂から構成されてもよい。弾性板25の弾性は、高頻度で大きいノイズを生じさせないように選択される。弾性板の先端の長さLは、例えば、10ミリメートルである。基板20の上端20bの最適な角度A、よって、基板20の残りに対する弾性板25の最適な角度は、例えば、40~50度である。洗浄シート22の幅Wは、例えば、32キロニュートンまたは43キロニュートンの被覆スチールベルト(CSB)に対して35ミリメートルである。
【0036】
第1のブラケット10及び第2のブラケット12は、ベルト2の間の間隔と位置合わせして置かれる。これは、機械工が、ベルト2の間に第2のブラケット12を挿入し、ベルト2の内部表面に接触し、すなわち、図5に示されるように、牽引滑車3に面したベルトの側面に接触するよう洗浄ヘッド14のワイパ22を置くことを可能にする。ブラケット10、12は、エレベータシステムの設置または通常運転の間にベルトの表面に付着することがある塵または埃などの異物を拭き取るよう、ベルト表面に適切な圧力P1が加えられるように調節される。弾性板25の弾性も、そのような圧力P1を加えることに貢献する。そのような調節の後、牽引滑車3は、時計回り方向または半時計回り方向のいずれかで回転する。
【0037】
ブラケット10、12の上記構成は、図6~8に示されるものなど、牽引滑車3の溝を洗浄するために洗浄装置6が使用されることも可能にする。洗浄装置6は、牽引滑車3の全ての溝を一度に洗浄するために使用されてもよい。牽引滑車3の溝を洗浄するために、ワイパ22が牽引滑車3に向かって突出し、すなわち、ベルトを洗浄するときにワイパ22が突出する方向とは反対の方向に突出するように、洗浄ヘッド14は、第2のブラケット12に固定される。ブラケット10、12は、牽引滑車3上の溝の底に適切な圧力P2が加えられるように調節され、適切な圧力P2は、ベルトと接触すると、ベルト2に対し、溝の底に付着することがあるワックスを拭き取る牽引表面をもたらす。そのような調節の後、牽引滑車3は、時計回り方向または半時計回り方向のいずれかで回転する。
【0038】
再度、図1,2、6、及び7を参照して、ベルト2及び/または滑車3を洗浄するために、洗浄装置6は、メンテナンスの間などにエレベータシステム1に設置されてもよい。洗浄装置6の設置及び調節の後、洗浄ヘッド14がベルト及び/または滑車に反して相対的に移動するように、エレベータシステム1は、通常運転速度よりも遅い検査速度において運転されることがある。この実施形態では、ベルト及び滑車の1つは、一度に洗浄される。しかしながら、機械筐体5の両側などに洗浄装置6を設置し、ベルト2及び滑車3を一度に洗浄することが可能である。
【0039】
洗浄装置6は、取付板9及び第1のブラケット10を機械筐体5に固定し、第2のブラケット12を第1のブラケット10の各々に接続し、支持板18を介して洗浄ヘッド14を第2のブラケット12に取り付けることによって設置されてもよい。洗浄装置6は、洗浄の後にエレベータシステム1から全体的に取り外されてもよい。しかしながら、洗浄ヘッド14のみを洗浄装置6から取り外し、エレベータシステム1に設置された構成要素の残りをそのままにすることも可能である。このケースでは、機械工は、ベルト2または滑車3の洗浄において、洗浄ヘッド14を設置するだけでよい。
【0040】
エレベータシステムのベルト2及び/または遊び滑車28を洗浄する、本発明の洗浄装置106の別の実施形態が図9及び10に示される。図9を参照して、洗浄ヘッド14は、第1の実施形態において洗浄されるベルト2の反対側面であってもよい、遊び滑車28に接触するベルト2の側面を洗浄するよう位置付けられる。遊び滑車28は、取付部材30を介して、昇降路の内部、またはエレベータかごもしくはカウンターウエイト上で構造体29に固定されてもよい。支持板32は、U字形状のブラケット33を介して取付部材30に固定されてもよい。洗浄ヘッド14は、ワイパ22がベルト2の方向に突出して、ベルト2に圧力P1を加えるように支持板32の上端に固定される。
【0041】
図10は、遊び滑車28を洗浄するよう設置された洗浄装置106を示す。支持板32は、上下反転され、洗浄ヘッド14は、ワイパ22が遊び滑車28の方向に突出して、滑車に圧力P2を加えるように支持板32の他の側面に固定される。すなわち、この実施形態では、洗浄ヘッド14の位置及び方位の両方は、ベルトまたは遊び滑車のどの部材が洗浄されることになるかに応じて変化する。
【0042】
本発明によれば、共通の洗浄装置6がベルト2及び滑車3を洗浄するために使用されてもよい。機械工が装置を現場に搬送し、装置を設置することを容易にする洗浄装置6がまさに従来の洗浄装置と比較される。洗浄装置6の動作は、エレベータシステムの運転によって影響されるので、洗浄が安全且つ効率的に行われる。結果として、ベルト2及び滑車3を洗浄するために必要とされる時間は、本発明の洗浄装置6によって著しく短縮される。
【0043】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図していない。例示及び説明の目的で説明が提示されてきたが、網羅的であること、または開示される形式で実施形態に限定されることを意図していない。開示の範囲から逸脱することなく、本明細書で説明されていない多くの修正、変形、代替、置き換え、または同等の配置が当業者にとって明らかである。加えて、様々な実施形態が説明されてきたが、態様は、説明された実施形態の一部のみを含んでもよいことが理解されよう。したがって、開示は、上記説明によって限定されるとして見なされないが、添付の請求項の範囲のみによって限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10