(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】桟橋構築方法、及び橋梁改築方法
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20250127BHJP
【FI】
E01D21/00 B
E01D21/00 A
(21)【出願番号】P 2020179473
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2019198797
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】508036743
【氏名又は名称】株式会社横河ブリッジ
(73)【特許権者】
【識別番号】592090555
【氏名又は名称】パシフィックコンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】八朝 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】西内 美宣
(72)【発明者】
【氏名】渕上 隆也
(72)【発明者】
【氏名】白水 晃生
(72)【発明者】
【氏名】中澤 治郎
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-167715(JP,A)
【文献】特開平05-295709(JP,A)
【文献】特開2007-321474(JP,A)
【文献】特開2010-209542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川を横断する
既設橋の改築に利用される桟橋を構築する桟橋構築方法であって、
前記既設橋の下部工に対して前記河川の流水方向に間隔をあけると共に、前記流水方向に前記下部工と並ぶ位置に、前記河川の計画高水位以上の高さとなる桟橋下部工を構築する桟橋下部工構築工程と、
前記桟橋下部工の上に橋軸方向に沿って架設桁を設置して前記桟橋を構築する桟橋架設工程と、を備え、
前記桟橋架設工程では、前記既設橋に設置され該既設橋の既設上部工の撤去に利用された前記架設桁を、前記流水方向に横移動させたうえで、前記桟橋下部工の上に前記架設桁を設置する、
ことを特徴とする桟橋構築方法。
【請求項2】
桟橋を利用して、河川を横断する橋梁を改築する橋梁改築方法であって、
架設桁を既設橋に設置し、前記架設桁を利用して前記既設橋の既設上部工を撤去する既設上部工撤去工程と、
前記既設橋の既設下部工に対して前記河川の流水方向に間隔をあけると共に、前記流水方向に前記既設下部工と並ぶ位置に、前記河川の計画高水位以上の高さとなる桟橋下部工を構築する桟橋下部工構築工程と、
前記既設上部工の撤去に利用された前記架設桁を前記既設橋から前記桟橋下部工に向かって前記流水方向に横移動させ、前記桟橋下部工の上に橋軸方向に沿って前記架設桁を設置して前記桟橋を構築する桟橋架設工程と、
前記桟橋を利用して前記既設下部工の少なくとも一部を撤去する既設下部工撤去工程と、
前記桟橋を利用して撤去された前記既設下部工に代えて新設下部工を構築する新設下部工構築工程と、を備えたことを特徴とする橋梁改築方法。
【請求項3】
前記新設下部工の上に前記橋軸方向に沿って新設上部工を構築する新設上部工構築工程を、更に備えたことを特徴とする請求項2に記載の橋梁改築方法。
【請求項4】
桟橋を利用して、河川を横断する橋梁を改築する橋梁改築方法であって、
架設桁を既設橋に設置し、前記架設桁を利用して前記既設橋の既設上部工の少なくとも一部を撤去する既設上部工撤去工程と、
前記既設橋の既設下部工に対して前記河川の流水方向に間隔をあけると共に、前記流水方向に前記既設下部工と並ぶ位置に、前記河川の計画高水位以上の高さとなる桟橋下部工を構築する桟橋下部工構築工程と、
前記既設上部工の撤去に利用された前記架設桁を前記既設橋から前記桟橋下部工に向かって前記流水方向に横移動させ、前記桟橋下部工の上に橋軸方向に沿って前記架設桁を設置して前記桟橋を構築する桟橋架設工程と、
前記桟橋を利用して前記既設上部工を撤去した位置において前記既設下部工の上に前記橋軸方向に沿って新設上部工を構築する新設上部工構築工程と、を備えたことを特徴とする橋梁改築方法。
【請求項5】
前記桟橋架設工程の後に、前記桟橋を利用して前記既設下部工の少なくとも一部を補強する下部工改良工程を更に備え、
前記新設上部工構築工程では、前記桟橋を利用して前記既設上部工を撤去した位置において前記既設下部工の上に前記橋軸方向に沿って前記新設上部工が構築されることを特徴とする請求項4に記載の橋梁改築方法。
【請求項6】
前記新設上部工構築工程では、前記架設桁が、前記桟橋下部工から
新設下部工又は既設下部工に向かって前記流水方向に横移動され、前記新設上部工構築工程における前記新設上部工として利用されることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載の橋梁改築方法。
【請求項7】
前記新設上部工構築工程では、前記新設上部工が、前記桟橋の前記架設桁の上に設置され、前記新設上部工を前記架設桁から
新設下部工又は既設下部工に向かって前記流水方向に横移動し、
前記新設上部工が前記新設上部工構築工程における前記新設上部工として利用されることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載の橋梁改築方法。
【請求項8】
前記既設橋の交通を開放しながら、前記既設下部工に対して前記桟橋とは反対側となる前記河川の前記流水方向に間隔をあけた位置において、前記既設上部工の少なくとも一部に対応する区間で暫定的に利用される暫定下部工を構築する暫定下部工構築工程と、
前記既設橋の交通を開放しながら、前記暫定下部工の上に暫定的に利用される暫定上部工を構築する暫定上部工構築工程と、
前記暫定上部工を通る仮設道路を形成し、前記仮設道路の交通を開放すると共に前記既設橋の交通を閉鎖する仮設道路開放工程と、を更に備え、
前記既設上部工撤去工程は、前記仮設道路開放工程の後に実施されることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載の橋梁改築方法。
【請求項9】
前記新設上部工構築工程では、前記既設橋と前記仮設道路との交通を閉鎖し、前記暫定上部工が
新設下部工又は既設下部工に向かって前記流水方向に横移動され、
前記既設上部工を撤去した位置において、前記橋軸方向に沿って設置されて前記新設上部工として利用されることを特徴とする請求項8に記載の橋梁改築方法。
【請求項10】
前記河川の出水期であっても、前記桟橋を撤去することなく該桟橋を継続して利用する、ことを特徴とする請求項2ないし9のいずれか1項に記載の橋梁改築方法。
【請求項11】
前記桟橋を構成する前記架設桁は、3以上の前記桟橋下部工に支持される連続桁である、ことを特徴とする請求項2ないし10のいずれか1項に記載の橋梁改築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桟橋、桟橋構築方法、橋梁改築方法および橋梁構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川等に橋梁を架設するために、出水期を除く時期において河川等の水面近くに作業用の桟橋が構築されることがある。このような桟橋を構築する方法として、下部工構成物を具備するユニット構造物を上部工構成物に連結し、そのユニット構造物を介して支持杭を打設する桟橋架設工法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、桟橋は非出水期の水位に合わせて構築されているため、橋梁の工期中に出水期を迎える場合、洪水時の流水に著しい支障を与えないように桟橋を一時的に撤去しなければならなかった。したがって、出水期間中においては、橋梁の施工が滞るため、工期が長くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、河川の出水期においても橋梁の施工を継続することができる桟橋、桟橋構築方法、橋梁改築方法および橋梁構築方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、河川を横断する橋梁の施工に利用される桟橋であって、前記橋梁の下部工に対して前記河川の流水方向に間隔をあけると共に前記橋梁の橋軸方向に前記下部工と同程度の間隔をあけた位置において、前記河川の計画高水位以上の高さに構築される桟橋下部工と、前記桟橋下部工の上に前記橋軸方向に沿って設置される架設桁と、を備えた。
【0007】
本発明は、河川を横断する橋梁の施工に利用される桟橋を構築する桟橋構築方法であって、前記橋梁の下部工に対して前記河川の流水方向に間隔をあけると共に前記橋梁の橋軸方向に前記下部工と同程度の間隔をあけた位置において、前記河川の計画高水位以上の高さとなる桟橋下部工を構築する桟橋下部工構築工程と、前記桟橋下部工の上に前記橋軸方向に沿って架設桁を設置して前記桟橋を構築する桟橋架設工程と、を備えた。
【0008】
本発明は、桟橋を利用した河川を横断する橋梁を改築する橋梁改築方法であって、架設桁を既設橋に設置し、前記架設桁を利用して前記既設橋の既設上部工を撤去する既設上部工撤去工程と、前記既設橋の既設下部工に対して前記河川の流水方向に間隔をあけると共に前記橋梁の橋軸方向に前記既設下部工と同程度の間隔をあけた位置において、前記河川の計画高水位以上の高さとなる桟橋下部工を構築する桟橋下部工構築工程と、前記既設上部工の撤去に利用された前記架設桁を前記既設橋から前記桟橋下部工に向かって前記流水方向に横移動させ、前記桟橋下部工の上に前記橋軸方向に沿って前記架設桁を設置して前記桟橋を構築する桟橋架設工程と、前記桟橋を利用して前記既設下部工の少なくとも一部を撤去する既設下部工撤去工程と、前記桟橋を利用して撤去された前記既設下部工に代えて新設下部工を構築する新設下部工構築工程と、を備えた。
【0009】
この場合、前記新設下部工の構築に利用された前記架設桁を前記桟橋下部工から前記新設下部工に向かって前記流水方向に横移動させ、前記新設下部工の上に前記橋軸方向に沿って前記架設桁を設置して新設上部工として利用する新設上部工構築工程を更に備えてもよい。
【0010】
本発明は、桟橋を利用した河川を横断する橋梁を構築する橋梁構築方法であって、前記橋梁の下部工に対して前記河川の流水方向に間隔をあけると共に前記橋梁の橋軸方向に前記下部工と同程度の間隔をあけた位置において、前記河川の計画高水位以上の高さとなる桟橋下部工を構築する桟橋下部工構築工程と、前記桟橋下部工の上に前記橋軸方向に沿って架設桁を設置して前記桟橋を構築する桟橋架設工程と、前記桟橋を利用して新設下部工を構築する新設下部工構築工程と、を備えた。
【0011】
この場合、前記新設下部工の構築に利用された前記架設桁を前記桟橋下部工から前記新設下部工に向かって前記流水方向に横移動させ、前記新設下部工の上に前記橋軸方向に沿って前記架設桁を設置して新設上部工として利用する新設上部工構築工程を更に備えてもよい。
【0012】
本発明は、桟橋を利用した河川を横断する橋梁を改築する橋梁改築方法であって、架設桁を既設橋に設置し、前記架設桁を利用して前記既設橋の既設上部工の少なくとも一部を撤去する既設上部工撤去工程と、前記既設橋の既設下部工に対して前記河川の流水方向に間隔をあけると共に前記橋梁の橋軸方向に前記既設下部工と同程度の間隔をあけた位置において、前記河川の計画高水位以上の高さとなる桟橋下部工を構築する桟橋下部工構築工程と、前記既設上部工の撤去に利用された前記架設桁を前記既設橋から前記桟橋下部工に向かって前記流水方向に横移動させ、前記桟橋下部工の上に前記橋軸方向に沿って前記架設桁を設置して前記桟橋を構築する桟橋架設工程と、前記桟橋を利用して前記既設上部工を撤去した位置において前記既設下部工の上に前記橋軸方向に沿って新設上部工を構築する新設上部工構築工程と、を備えた。
【0013】
この場合、前記桟橋架設工程の後に、前記桟橋を利用して前記既設下部工の少なくとも一部を補強する、または撤去して新設下部工を構築する下部工改良工程を更に備え、前記新設上部工構築工程では、前記桟橋を利用して前記既設上部工を撤去した位置において前記既設下部工または前記新設下部工の上に前記橋軸方向に沿って前記新設上部工が構築されてもよい。
【0014】
本発明は、桟橋を利用した河川を横断する橋梁を改築する橋梁改築方法であって、既設橋の既設下部工に対して前記河川の流水方向に間隔をあけると共に前記橋梁の橋軸方向に前記既設下部工と同程度の間隔をあけた位置において、前記河川の計画高水位以上の高さとなる桟橋下部工を構築する桟橋下部工構築工程と、前記桟橋下部工の上に前記橋軸方向に沿って架設桁を設置して前記桟橋を構築する桟橋架設工程と、前記桟橋を利用して前記既設橋の既設上部工の少なくとも一部を撤去する既設上部工撤去工程と、前記桟橋を利用して前記既設上部工を撤去した位置において前記既設下部工の上に前記橋軸方向に沿って新設上部工を構築する新設上部工構築工程と、を備えた。
【0015】
この場合、前記既設上部工撤去工程の後に、前記桟橋を利用して前記既設下部工の少なくとも一部を補強する、または撤去して新設下部工を構築する下部工改良工程を更に備え、前記新設上部工構築工程では、前記桟橋を利用して前記既設上部工を撤去した位置において前記既設下部工または前記新設下部工の上に前記橋軸方向に沿って前記新設上部工が構築されてもよい。
【0016】
この場合、前記既設橋の交通を開放しながら、前記既設下部工に対して前記桟橋とは反対側となる前記河川の流水方向に間隔をあけた位置において、前記既設上部工の少なくとも一部に対応する区間で暫定的に利用される暫定下部工を構築する暫定下部工構築工程と、前記既設橋の交通を開放しながら、前記暫定下部工の上に暫定的に利用される暫定上部工を構築する暫定上部工構築工程と、前記暫定上部工を通る仮設道路を形成し、前記仮設道路の交通を開放すると共に前記既設橋の交通を閉鎖する仮設道路開放工程と、を更に備え、前記既設上部工撤去工程は、前記仮設道路開放工程の後に実施されてもよい。
【0017】
この場合、前記新設上部工構築工程では、前記架設桁が、前記桟橋下部工から前記既設下部工または前記新設下部工に向かって前記流水方向に横移動され、前記既設下部工または前記新設下部工の上に設置されて前記新設上部工として利用されてもよい。
【0018】
この場合、前記新設上部工構築工程では、前記新設上部工が、前記桟橋の前記架設桁の上に設置され、前記架設桁から前記既設下部工または前記新設下部工に向かって前記流水方向に横移動され、前記既設下部工または前記新設下部工の上に設置されてもよい。
【0019】
この場合、前記新設上部工構築工程では、前記既設橋と前記仮設道路との交通を閉鎖し、前記暫定上部工が、前記既設下部工または前記新設下部工に向かって前記流水方向に横移動され、前記既設上部工を撤去した位置において前記既設下部工または前記新設下部工の上に前記橋軸方向に沿って設置されて前記新設上部工として利用されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、河川の出水期においても橋梁の施工を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る橋梁改築方法によって改築される既設橋を示す側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態(および第2実施形態)に係る橋梁改築方法を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る橋梁改築方法の鋼管矢板先行打設工程および桟橋杭先行打設工程を説明する断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る橋梁改築方法の鋼管矢板先行打設工程および桟橋杭先行打設工程を説明する平面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る橋梁改築方法の既設上部工撤去工程を説明する側面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る橋梁改築方法の既設上部工撤去工程および桟橋下部工構築工程を説明する断面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る橋梁改築方法の桟橋架設工程を説明する断面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る橋梁改築方法の既設下部工撤去工程(本設鋼管矢板の打設)を説明する断面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る橋梁改築方法の既設下部工撤去工程(既設下部工の撤去)を説明する断面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る橋梁改築方法の新設下部工構築工程を説明する断面図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る橋梁改築方法の新設上部工構築工程および桟橋撤去工程を説明する断面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る橋梁改築方法の新設上部工構築工程を説明する断面図である。
【
図13】本発明の第1実施形態に係る橋梁構築方法を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の第1実施形態に係る橋梁構築方法の新設下部工構築工程および新設上部工構築工程を説明する断面図である。
【
図15】本発明の第1実施形態の変形例に係る橋梁改築方法および橋梁改築方法の新設上部工構築工程を説明する側面図である。
【
図16】本発明の第3実施形態に係る橋梁改築方法を示すフローチャートである。
【
図17】本発明の第3実施形態に係る橋梁改築方法を説明するステップ図である。
【
図18】本発明の第3実施形態に係る橋梁改築方法において、暫定上部工と連絡区間とで形成される仮設道路を示す平面図である。
【
図19】本発明の第3実施形態に係る橋梁改築方法において、回転スライド工法を説明するステップ図である。
【
図20】本発明の第1実施形態(および第2実施形態)の変形例に係る橋梁改築方法を示すフローチャートである。
【
図21】本発明の第1実施形態(および第2実施形態)の他の変形例に係る橋梁改築方法を示すフローチャートである。
【
図22】本発明の第2実施形態の他の変形例に係る橋梁改築方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書では、橋梁と平行な方向(橋梁が横断する(架け渡される)方向)を「橋軸方向」と呼び、河川9の流れに沿った方向を「流水方向」と呼ぶこととする。図面に示す「U」は「上」を示し、「Lo」は「下」を示し、「X」は橋軸方向を示し、「Y」は流水方向を示している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0023】
[第1実施形態:橋梁改築方法]
図1ないし
図11を参照して、第1実施形態に係る橋梁改築方法について説明する。
図1は橋梁改築方法によって改築される既設橋1を示す側面図である。
図2は橋梁改築方法を示すフローチャートである。
図3は橋梁改築方法の鋼管矢板先行打設工程S1および桟橋杭先行打設工程S2を説明する断面図である。
図4は橋梁改築方法の鋼管矢板先行打設工程S1および桟橋杭先行打設工程S2を説明する平面図である。
図5は橋梁改築方法の既設上部工撤去工程S3を説明する側面図である。
図6は橋梁改築方法の既設上部工撤去工程S3および桟橋下部工構築工程S4を説明する断面図である。
図7は橋梁改築方法の桟橋架設工程S5を説明する断面図である。
図8は橋梁改築方法の既設下部工撤去工程S6(本設鋼管矢板40の打設)を説明する断面図である。
図9は橋梁改築方法の既設下部工撤去工程S6(既設下部工10の撤去)を説明する断面図である。
図10は橋梁改築方法の新設下部工構築工程S7を説明する断面図である。
図11は橋梁改築方法の新設上部工構築工程S8および桟橋撤去工程S9を説明する断面図である。
【0024】
橋梁改築方法は、桟橋3を利用した河川9を横断する橋梁を改築するための方法である。具体的には、橋梁改築方法は、既設橋1(
図1参照)を撤去し、新設橋2に架け替える方法(工法)である。ここで、新設橋2に架け替える方法には、平面から見て、既設橋1とは別の場所に架け替える方法と、略同じ場所に架け替える方法がある。前者の場合、道路や線路を線状につなげるために、これまでの道路等の平面線形を変える必要があると共に、これに応じた用地買収を行う必要がある。後者の場合、既設橋1を撤去し、新設下部工20を構築したうえで新設橋2を架け替える必要があるため、一般的に時間(工期)がかかるとされている。以下説明する橋梁改築工法は、後者の方法の一例である。なお、橋梁改築方法では、既設橋1の全部(橋軸方向の全長)が架け替えられることもあるし、既設橋1の一部(橋軸方向の一部区間)のみが架け替えられることもある。また、本明細書では、既設橋1と新設橋2とをまとめて表現する場合は単に「橋梁」と呼ぶ。
【0025】
図1に示すように、既設橋1は、3つの既設下部工10(2つの橋台と1つの橋脚)と、3つの既設下部工10に架け渡された既設上部工13と、を有している。既設下部工10は、地中に埋設された既設ケーソン11と、既設ケーソン11の上に立設された既設躯体12と、を有している。既設上部工13は、車両等の荷重となるものを支える床版(図示せず)と、床版が受けた荷重を既設下部工10に伝える複数の主桁14と、複数の主桁14を連結して荷重を分散する横桁15と、複数の主桁14から上方に延設されたトラス16と、を有している。なお、橋梁は、平面から見て、流水方向と流水方向に直交する方向とに対して角度をもって河川9に架設されている(
図4参照)。つまり、橋梁は、河川9を斜めに横断している。また、詳細は後述するが、新設橋2は、既設橋1と同様に、3つの新設下部工20と新設上部工23とを有している。
【0026】
なお、橋梁形式は、トラスに限らず、例えば、アーチ、箱桁または鈑桁等であってもよい。また、橋梁に用いる材料は、例えば、鋼でもよいしコンクリートでもよい。さらに、橋梁は、例えば、道路橋、鉄道橋またはこれらの併用橋でもよい。また、本明細書では、既設下部工10と新設下部工20とをまとめて表現する場合は単に「下部工」と呼び、既設上部工13と新設上部工23とをまとめて表現する場合は単に「上部工」と呼ぶ。また、「上部工」とは床版や各桁14,15等を含む構造物を指し、「下部工」とは上部工を支持する橋台や橋脚等の構造物を指す。また、本明細書では、3つの下部工を有する橋梁を例示しているが、これに限らず、2つ以上の下部工が設けられていればよい。また、本明細書では、説明の便宜上、主に1つの下部工(橋脚)に着目して説明する。
【0027】
図2に示すように、橋梁改築方法は、鋼管矢板先行打設工程S1と、桟橋杭先行打設工程S2と、既設上部工撤去工程S3と、桟橋下部工構築工程S4と、桟橋架設工程S5と、既設下部工撤去工程S6と、新設下部工構築工程S7と、新設上部工構築工程S8と、桟橋撤去工程S9と、を備えている。
【0028】
<鋼管矢板先行打設工程、桟橋杭先行打設工程>
図3および
図4に示すように、鋼管矢板先行打設工程S1では、クローラクレーンや杭打機等の重機90が既設橋1の床版上に配置され、重機90(杭打機)を利用して複数(例えば、
図4に実線で示す8本)の本設鋼管矢板40が既設橋1の既設下部工10の流水方向の両側に打設される。桟橋杭先行打設工程S2では、重機90(杭打機)を利用して複数(例えば、
図4では8本)の桟橋杭31が既設下部工10の流水方向の一方(上流側)に打設される。複数の桟橋杭31は、既設下部工10の流水方向に略並ぶ位置(領域)において、流水方向に4つ並べた列が橋軸方向に2本並んで格子状に配設されている(
図4参照)。
【0029】
<既設上部工撤去工程>
次に、既設上部工撤去工程S3では、架設桁33が既設橋1(既設上部工13)上に設置される(S3-1)。具体的には、既設橋1の床版を撤去し、主桁14や横桁15等を表出させる。続いて、
図5および
図6に示すように、複数の送り出し設備91が橋軸方向に並設された複数の横桁15(既設上部工13)の上に配置され、ジャッキアップされた架設桁33が送り出し設備91に載せられる。送り出し設備91は、架設桁33に駆動力を作用させ、架設桁33を橋軸方向の一方から他方に向かって送り出す。架設桁33は、隣り合う2つの既設下部工10の支間長以上の長さに形成されている。このため、架設桁33は隣り合う2つの既設下部工10の間に架設される。架設桁33の橋軸方向の他端(送り出し方向の先端)には、橋軸方向の他方に向かって延びる手延べ桁33Aが固定されている。手延べ桁33Aを含めた架設桁33は、少なくとも橋梁の2径間分の長さ以上で、かつ既設下部工撤去あるいは新設下部工構築を行うために必要な長さに形成されており、河川9に架設される連続桁として機能する。なお、手延べ桁33Aを除く架設桁33が少なくとも橋梁の2径間分の長さ以上で、かつ既設下部工撤去あるいは新設下部工構築を行うために必要な長さに形成されてもよい。ただし、手延べ桁33Aを含めた架設桁33は、1径間しかない橋の場合は、橋梁の1径間以上の長さとなる。なお、径間とは、上部工を支持する下部工10と下部工10との間を意味し、例えば、
図1の橋梁は2径間である。
【0030】
また、既設上部工撤去工程S3では、架設桁33を利用して既設橋1の既設上部工13が撤去される(S3-2)。具体的には、まず、架設桁33上に橋軸方向に沿って軌条設備92が設置され、軌条設備92上にはトラベラクレーン93(ジブクレーン)や運搬台車94が走行可能に設置される。続いて、主桁14およびトラス16(既設上部工13)は、複数の吊込設備95(
図5参照)によって架設桁33に吊り込まれた後、橋軸方向に複数に切断(分割)される。複数に分割された既設上部工13は、トラベラクレーン93によって運搬台車94に積み込まれ、運搬台車94によって橋梁の外へ運び出される。以上によって、既設上部工13が撤去される。
【0031】
<桟橋下部工構築工程>
次に、桟橋下部工構築工程S4では、河川9を横断する橋梁の施工に利用される桟橋3の桟橋下部工30を構築する。具体的には、
図6に示すように、桟橋杭先行打設工程S2において打設した複数の桟橋杭31の上部を囲むように包囲部材32Aが取り付けられ(
図4参照)、複数の桟橋杭31の上端に桟橋支持台32Bが設置される。複数の桟橋杭31が包囲部材32Aと桟橋支持台32Bとで連結されることで桟橋下部工30が構築される。なお、包囲部材32Aや桟橋支持台32Bは、トラベラクレーン93または台船に載せたクレーン(図示せず)等を利用して複数の桟橋杭31に取り付けられる。
【0032】
桟橋下部工30は、既設下部工10に対して流水方向の一方に間隔をあけると共に橋軸方向に既設下部工10と同程度の間隔をあけた位置に構築される(
図4も参照)。桟橋下部工30は、既設下部工10と流水方向に並ぶように設けられる。また、桟橋下部工30は、河川9の計画高水位(以下、HWL(High Water Level)ともいう。)以上の高さに構築される。さらに、桟橋下部工30は、既設下部工10と同程度の高さに構築される。すなわち、桟橋下部工30は既設下部工10と略同一の高さに形成され、桟橋下部工30と既設下部工10との上端は略一致している。なお、桟橋下部工30が既設下部工10に対して流水方向に間隔をあけるとは、桟橋下部工30が空間(隙間)を挟んで既設下部工10から離隔しているという意味であり、その間隔は、施工(作業)し易い程度の間隔であって、例えばトラベラクレーン93のジブ(腕)が届く範囲内(例えば5m以下)で設定することができる。また、桟橋下部工30が橋軸方向に既設下部工10と同程度の間隔をあけた位置に構築されるとは、既設下部工10の支間長と一致することのみを指すのではなく、現場の条件に応じて橋軸方向に若干ずらすことを許容する意味である。また、桟橋下部工30が既設下部工10と同程度の高さであるとは、桟橋下部工30と既設下部工10との上端が一致することのみを指すのではなく、後述する桟橋架設工程S5において架設桁33を桟橋下部工30に横移動することを阻害しない程度の誤差(段差)を許容するという意味である。また、河川9の計画高水位とは、計画高水流量が河川改修後の河道断面を流下するときの水位を意味する。ここで、計画高水流量は、河道を建設する場合に基本となる流量で、基本高水を河道と各種洪水調節施設に合理的に配分した結果として求められる河道を流れる流量を意味する。つまり、基本高水流量から各種洪水調節施設での洪水調節量を差し引いた流量である。なお、こうした計画高水流量は河川9の出水期に現れる。
【0033】
<桟橋架設工程>
次に、桟橋架設工程S5では、桟橋下部工30の上に橋軸方向に沿って架設桁33を設置して桟橋3を構築する。具体的には、
図7に示すように、既設下部工10の上部に、桟橋下部工30に向かって延びた仮設梁41が取り付けられる。なお、架設桁33上に設置されたトラベラクレーン93や運搬台車94は撤去され、軌条設備92は撤去されずに残されるが、軌条設備92は撤去されて後工程で再構築されてもよい。また、クローラクレーンを載せるための設備を移動可能な作業構台として架設桁33上に組むこともできる。
【0034】
続いて、複数の横取り設備96が仮設梁41や桟橋下部工30(桟橋支持台32B)の上に流水方向に間隔をあけて配置され、ジャッキアップされた架設桁33が横取り設備96に載せられる。横取り設備96は、例えば、レールクランプジャッキやエンドレス送り装置等を含んでいる。横取り設備96(エンドレス送り装置等)は、既設上部工13の撤去に利用された架設桁33を既設橋1から桟橋下部工30に向かって流水方向に横移動させる(
図7の白抜き矢印参照)。架設桁33が桟橋下部工30の上に橋軸方向に沿って設置されることで桟橋3が構築される。桟橋3の構築後、軌条設備92上にはトラベラクレーン93や杭打機等が設置され、仮設梁41や横取り設備96は撤去される(
図8参照)。なお、上記した桟橋杭先行打設工程S2、桟橋下部工構築工程S4および桟橋架設工程S5が、桟橋3を構築するための桟橋構築方法の一例である。
【0035】
<既設下部工撤去工程>
既設下部工撤去工程S6では、桟橋3を利用して既設下部工10の一部が撤去される。具体的には、
図4および
図8に示すように、既設下部工10の一部の撤去に先立ち、杭打機を用いて、複数の本設鋼管矢板40が既設下部工10の橋軸方向の両側に打設される(S6-1)。すなわち、既設下部工撤去工程S6では、鋼管矢板先行打設工程S1において本設鋼管矢板40を打設できなかった位置に複数(例えば、
図4に二点鎖線で示す18本)の本設鋼管矢板40が打設される。複数(例えば、
図4では合計28本)の本設鋼管矢板40は、既設下部工10の周囲を囲むように打設されて止水壁40Aを構成する。なお、止水壁40Aは、既設下部工10の周囲への水の流入を防ぐ止水(締切)機能を有すると共に土圧に抵抗する土留め機能を有している。また、止水壁40Aは、新設下部工20の基礎構造としての機能も有している。
【0036】
続いて、
図9に示すように、トラベラクレーン93等を利用して複数の本設鋼管矢板40の周囲に作業構台42が設置され、作業構台42上に配置された重機97を利用して既設下部工10の一部が撤去される(S6-2)。詳細には、既設躯体12と既設ケーソン11の上部とが撤去される。
【0037】
<新設下部工構築工程>
新設下部工構築工程S7では、桟橋3を利用して撤去された既設下部工10に代えて新設下部工20が構築される。具体的には、
図10に示すように、新設下部工20は新設フーチング21と新設躯体22とを有しており、新設フーチング21は既設ケーソン11の上部を撤去した部分に構築され、新設躯体22は新設フーチング21の上に立設(構築)される。続いて、作業構台42が撤去され、複数の本設鋼管矢板40が河川9の底付近で切断される。
【0038】
<新設上部工構築工程>
図11に示すように、新設上部工構築工程S8では、新設下部工20の上に橋軸方向に沿って新設上部工23が設置される。具体的には、送り出し設備91(
図11では図示せず(
図5を参照))が新設下部工20の上に設置され、地上で構築された新設上部工23が送り出し設備91に載せられる。送り出し設備91は、新設上部工23を橋軸方向一方から他方に向かって送り出す。新設上部工23は、隣り合う2つの新設下部工20の支間長以上の長さに形成されている。このため、新設上部工23は、隣り合う2つの新設下部工20の間に架設される。なお、新設上部工23は、河川9を横断可能な長さに形成されてもよい。また、新設上部工構築工程S8では、新設上部工23が送り出し設備91を利用して新設下部工20上に設置されていたが、これに限らず、例えば、河川9に浮かべた台船(図示せず)にジャッキ設備を有する構台(図示せず)が載せられ、その構台に載せられた新設上部工23がジャッキ設備を用いて下降され、新設下部工20上に設置されてもよい。また、必要に応じて、新設上部工23にトラスやアーチ等が構築されてもよい。
【0039】
<桟橋撤去工程>
図11に示すように、桟橋撤去工程S9では桟橋3が撤去される。具体的には、架設桁33がジャッキアップされ、送り出し設備91が桟橋下部工30の上に設置され、送り出し設備91に載せられた架設桁33が橋軸方向一方に引き戻される。また、台船を利用して、桟橋支持台32Bや包囲部材32Aが撤去され、複数の桟橋杭31が河川9の底付近で切断される。
【0040】
以上によって、橋梁改築方法の全工程が終了し、既設橋1から新設橋2への架け替えが完了する。
【0041】
以上説明した第1実施形態に係る橋梁改築方法(桟橋構築方法)によれば、桟橋下部工30の高さが河川9のHWL以上に設定されているため、河川9の出水期における桟橋3(架設桁33)の撤去を不要とすることができる。これにより、出水期であっても桟橋3を利用して橋梁の施工(架け替え作業)を継続することができる。その結果、一年を通して橋梁の施工(通年施工)が可能になり、橋梁改築に係る工期を短縮することができる。また、桟橋下部工30と新設下部工20とが流水方向に沿って一列に並んで配置されるため、桟橋下部工30が河川9の水流を阻害することを抑制することができる。また、新設橋2に架け替えた後に桟橋下部工30を完全に撤去せずに残しておくことも可能になり、さらに工期を短縮することができると共に、橋梁改築に係るコストを削減することもできる。また、一般的な桟橋(図示せず)は、複数の単純桁をつなげて構築することが多く、連続桁に比べて耐震性に劣っていた。これに対し、第1実施形態に係る橋梁改築方法(桟橋構築方法)によれば、手延べ桁33Aを含む架設桁33が河川9を横断可能な連続桁であるため、この架設桁33を利用した桟橋3の耐震性を向上させることができる。
【0042】
また、第1実施形態に係る橋梁改築方法によれば、既設橋1に設置済みの架設桁33を桟橋下部工30の上に横移動(横取り)させることで、桟橋3を構築することができる。これにより、既設橋1から橋軸方向に引き戻した架設桁33を、桟橋下部工30上に向けて橋軸方向に押し出す場合に比べて、短時間で桟橋3を構築することができる。また、第1実施形態に係る橋梁改築方法によれば、既設橋1と略同一位置に新設橋2を構築することができる。これにより、既設橋1と新設橋2との平面線形が大きく変更されることを防止することができる。また、新設橋2への架け替えにあたり新たに用地買収したりする手間とコストを削減することができる。
【0043】
[第2実施形態:橋梁改築方法]
次に、
図2および
図12を参照して、第2実施形態に係る橋梁改築方法について説明する。
図12は第2実施形態に係る橋梁改築方法の新設上部工構築工程S81を説明する断面図である。なお、以下の説明では、第1実施形態に係る橋梁改築方法と同一の構成には同一の符号を付し、第1実施形態に係る橋梁改築方法と同様の説明は省略する。
【0044】
第2実施形態に係る橋梁改築方法では、
図2に破線で示すように、新設上部工構築工程S81が、第1実施形態に係る橋梁改築方法の新設上部工構築工程S8と異なっている。
【0045】
図12に示すように、新設上部工構築工程S81では、桟橋下部工30の上部に新設下部工20に向かって延びた仮設梁41が取り付けられる。なお、架設桁33上に設置されたトラベラクレーン93や軌条設備92は撤去される。
【0046】
続いて、複数の横取り設備96が仮設梁41や新設下部工20の上に流水方向に間隔をあけて配置され、ジャッキアップされた架設桁33が横取り設備96に載せられる。横取り設備96は、新設下部工20の構築に利用された架設桁33を桟橋下部工30から新設下部工20に向かって流水方向に横移動させる(
図12の白抜き矢印参照)。架設桁33が新設下部工20の上に橋軸方向に沿って設置され、新設上部工23として利用される(
図11参照)。なお、架設桁33の横移動後、仮設梁41や横取り設備96は撤去される。また、この後に実施される桟橋撤去工程S9では、桟橋下部工30のみが解体される。
【0047】
以上説明した第2実施形態に係る橋梁改築方法によれば、桟橋3を構成していた架設桁33を新設下部工20の上に横移動(横取り)させることで、新設橋2を構築することができる。つまり、桟橋3の架設桁33を新設上部工23として流用することができる。これにより、架設桁33の撤去と新設上部工23の設置とを1つの工程で行うことができ、工期の短縮を図ることができる。
【0048】
なお、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法(桟橋構築方法)では、桟橋杭先行打設工程S2が、鋼管矢板先行打設工程S1の後に実施されていたが、鋼管矢板先行打設工程S1の前に実施されてもよい。また、桟橋杭先行打設工程S2が桟橋下部工構築工程S4に先立って実施され、桟橋杭31が先行して打設されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、桟橋杭先行打設工程S2を省略し、桟橋下部工構築工程S4に桟橋杭31を打設する工程が含まれてもよい。また、鋼管矢板先行打設工程S1が新設下部工構築工程S7に先立って実施され、本設鋼管矢板40の一部が先行して打設されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、鋼管矢板先行打設工程S1を省略し、新設下部工構築工程S7に全ての本設鋼管矢板40を打設する工程が含まれてもよい。他にも、例えば、桟橋下部工構築工程S4に全ての本設鋼管矢板40を打設する工程が含まれてもよい。
【0049】
また、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法では、既設下部工撤去工程S6において既設下部工10の一部が撤去されていたが、これに限らず、既設下部工10の全部が撤去されてもよい。この場合、例えば、新設下部工20は、新たにケーソン(図示せず)を埋設し、ケーソンの上に新設躯体22が立設されてもよい。
【0050】
また、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法では、桟橋下部工構築工程S4が既設上部工撤去工程S3の後に実施されていたが、本発明はこれに限定されない。桟橋下部工構築工程S4は、既設上部工撤去工程S3と同時期に実施されてもよいし、既設上部工撤去工程S3よりも前に実施されてもよい。また、桟橋撤去工程S9が新設上部工構築工程S8の後に実施されていたが、これに限らず、桟橋撤去工程S9は、新設上部工構築工程S8と同時期、または新設上部工構築工程S8よりも前に実施されてもよい。
【0051】
また、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法では、桟橋撤去工程S9において桟橋3の桟橋杭31が切断されていたが、これに限らず、引き抜かれて撤去されてもよい。また、河川9の水流を阻害しない等、一定の条件を満たす場合には、桟橋杭31や本設鋼管矢板40は撤去されなくてもよい。
【0052】
また、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法(桟橋構築方法)では、桟橋3(桟橋杭31等)が流水方向の上流側に設けられていたが、流水方向の下流側に設けられてもよい。また、橋梁は、平面から見て河川9を斜めに横断していたが、流水方向に略直交する方向に横断していてもよい(図示せず)。
【0053】
また、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法で例示した橋梁の下部工は、ケーソン11を有する所謂ケーソン基礎(新設下部工20は所謂鋼管矢板基礎)であったが、基礎構造はこれに限らず、例えば、杭基礎(図示せず)であってもよい。つまり、橋梁の下部工は、地中埋設の基礎構造物であれば如何なるものでもよい。
【0054】
なお、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法は一態様を示すものであって、その順序は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更されてもよい。
【0055】
[第1実施形態:橋梁構築方法]
次に、
図13および
図14を参照して、第1実施形態に係る橋梁構築方法について説明する。
図13は橋梁構築方法を示すフローチャートである。
図14は橋梁構築方法の新設下部工構築工程S71および新設上部工構築工程S8を説明する断面図である。なお、以下の説明では、第1実施形態に係る橋梁改築方法と同一の構成には同一の符号を付し、第1実施形態に係る橋梁改築方法と同様の説明は省略する。また、以下の説明では、第1実施形態に係る橋梁改築方法を説明した図面を適宜参照する。
【0056】
橋梁構築方法は、桟橋3を利用した河川9を横断する橋梁を新規に構築するための方法である。
図13に示すように、第1実施形態に係る橋梁構築方法は、桟橋下部工構築工程S41と、桟橋架設工程S51と、新設下部工構築工程S71と、新設上部工構築工程S8と、桟橋撤去工程S9と、を備えている。すなわち、第1実施形態に係る橋梁構築方法では、既設橋1を撤去(解体)する必要が無いため、第1実施形態に係る橋梁改築方法における鋼管矢板先行打設工程S1、桟橋杭先行打設工程S2、既設上部工撤去工程S3および既設下部工撤去工程S6が省略されている。
【0057】
<桟橋下部工構築工程>
桟橋下部工構築工程S41では、例えば、杭打機等の重機を載せた台船を利用して複数の桟橋杭31が打設され、複数の桟橋杭31の上部に包囲部材32Aおよび桟橋支持台32Bを設置することで桟橋下部工30が構築される(
図6参照)。桟橋下部工30は、(これから構築する)新設橋2の新設下部工24に対して流水方向の一方に間隔をあけると共に橋軸方向に新設下部工24と同程度の間隔をあけた位置に構築される。桟橋下部工30は、新設下部工24と流水方向に並ぶように設けられる。また、桟橋下部工30は、HWL以上の高さに構築される。第1実施形態に係る橋梁構築方法では、架設桁33を横移動させないため、桟橋下部工30の上端は、HWL以上であればよく、新設下部工24の上端よりも下方(または上方)に位置していてもよい。ここでは、桟橋下部工30は、新設下部工24と同程度の高さに構築されている。なお、桟橋下部工30が新設下部工24に対して流水方向に間隔をあけるとは、桟橋下部工30が空間を挟んで新設下部工24から離隔する意味であり、その間隔は、施工(作業)し易い程度の間隔(例えば5m以下)である。また、桟橋下部工30が橋軸方向に新設下部工24と同程度の間隔をあけた位置に構築されるとは、新設下部工24の支間長と一致することのみを指すのではなく、現場の条件に応じて橋軸方向に若干ずらすことを許容する意味である。また、桟橋下部工30が新設下部工24と同程度の高さであるとは、桟橋下部工30と新設下部工24との上端が一致することのみを指すのではなく、後の工程での作業性を損なわない程度の誤差(段差)を許容するという意味である。
【0058】
<桟橋架設工程>
桟橋架設工程S51では、複数の送り出し設備91(
図5参照)が桟橋下部工30上に配置され、ジャッキアップされた架設桁33が送り出し設備91に載せられて橋軸方向一方から他方に向かって送り出される。以上によって、桟橋下部工30の上に橋軸方向に沿って架設桁33が設置され、桟橋3が構築される。架設桁33上には、軌条設備92が設置され、軌条設備92上にはトラベラクレーン93等が走行可能に設置される(
図14参照)。なお、上記した桟橋下部工構築工程S41および桟橋架設工程S51が、桟橋3を構築するための桟橋構築方法の一例である。
【0059】
<新設下部工構築工程>
新設下部工構築工程S71では、桟橋3を利用して新設下部工24が構築される。具体的には、
図14に示すように、複数の本設鋼管矢板40を打設することで止水壁40Aが構成され(S71-1)、トラベラクレーン93等を利用して複数の本設鋼管矢板40の周囲に作業構台42が設置される。続いて、作業構台42上に配置された重機97を利用して止水壁40Aの内側に新設躯体22が構築される(S71-2)。新設下部工24は、複数の本設鋼管矢板40と新設躯体22とを含む鋼管矢板基礎である。なお、新設下部工24の構築後、作業構台42が撤去される。
【0060】
次に、新設上部工構築工程S8では新設下部工24の上に橋軸方向に沿って新設上部工23が設置され、桟橋撤去工程S9では桟橋3が撤去される。以上によって、橋梁構築方法の全工程が終了し、新設橋2が構築される。
【0061】
以上説明した第1実施形態に係る橋梁構築方法によれば、通年にわたって桟橋3を利用した新設橋2の施工が可能になる等、第1実施形態に係る橋梁改築方法と同様の効果を得ることができる。
【0062】
[第2実施形態:橋梁構築方法]
次に、第2実施形態に係る橋梁改築方法について説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態に係る橋梁構築方法と同一の構成には同一の符号を付し、第1実施形態に係る橋梁構築方法や第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法と同様の説明は省略する。また、以下の説明では、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法を説明した図面を適宜参照する。
【0063】
第2実施形態に係る橋梁構築方法では、第2実施形態に係る橋梁改築方法と同様の新設上部工構築工程S81(
図2に示す破線部参照)を備えている。すなわち、新設下部工24の構築に利用された架設桁33が、桟橋下部工30から新設下部工24に向かって横移動され、新設下部工24の上に設置されて新設上部工23として利用される(
図12参照)。なお、第2実施形態に係る橋梁構築方法では、架設桁33を横移動させるため、桟橋下部工構築工程S4では、桟橋下部工30がHWL以上かつ新設下部工24と同程度の高さに構築される。また、桟橋下部工30が新設下部工24と同程度の高さであるとは、桟橋下部工30と新設下部工24との上端が一致することのみを指すのではなく、新設上部工構築工程S81において架設桁33を新設下部工24に横移動することを阻害しない程度の誤差(段差)を許容するという意味である。
【0064】
以上説明した第2実施形態に係る橋梁構築方法では、第2実施形態に係る橋梁改築方法と同様に、桟橋3の架設桁33を新設上部工23として流用することで、工期の短縮を図ることができる。
【0065】
なお、第1~第2実施形態に係る橋梁構築方法で例示した橋梁の下部工は、所謂鋼管矢板基礎であったが、これに限らず、例えば、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法で例示した橋梁の下部工と同様に所謂ケーソン基礎であってもよいし、杭基礎(図示せず)であってもよい。
【0066】
また、第1~第2実施形態に係る橋梁構築方法は一態様を示すものであって、その順序は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更されてもよい。
【0067】
なお、第1実施形態に係る橋梁改築方法および第1実施形態に係る橋梁構築方法では、新設上部工構築工程S8の完了後、桟橋撤去工程S9にて桟橋3(桟橋下部工30)が撤去されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、他の新設上部工構築工程として、
図15に示すように、桟橋3として利用された架設桁33が、桟橋下部工30から新設下部工20,24の上に横移動され、新設上部工23の送り出し方向の先端に連結されることで手延べ桁として利用されてもよい(変形例)。なお、架設桁33を横移動させる手順は、第2実施形態に係る橋梁改築方法等の新設上部工構築工程S81と同様である。架設桁33(手延べ桁)が連結された新設上部工23は、上記した新設上部工構築工程S8と同様の手順によって橋軸方向一方から他方に向かって送り出され、新設下部工20の上に設置される。この構成によれば、新設上部工23の設置と架設桁33の撤去とを同時期に行うことができ、工期を短縮することができる。
【0068】
[第3実施形態:橋梁改築方法]
ところで、道路橋や鉄道橋等の既設橋1は大量の交通を確保し、人の移動や流通産業を支えているため、既設橋1の改築に伴って長期にわたり通行止めとすることは好ましくない。上記した第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法では、既設橋1を撤去および再構築する期間において通行止めにすることを避けることができなかった。そこで、第3実施形態に係る橋梁改築方法では、既設橋1を撤去および再構築する期間における交通を確保することを可能にしている。
【0069】
図16ないし
図19を参照して、第3実施形態に係る橋梁改築方法について説明する。
図16は第3実施形態に係る橋梁改築方法を示すフローチャートである。
図17は第3実施形態に係る橋梁改築方法を説明するステップ図である。
図18は暫定上部工51と連絡区間52とで形成される仮設道路を示す平面図である。
図19は回転スライド工法を説明するステップ図である。なお、以下の説明では、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法と同一の構成には同一の符号を付し、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法と同様の説明は省略する。
【0070】
図16に示すように、第3実施形態に係る橋梁改築方法は、上記した工程S1~S9(新設上部工構築工程S8を除く。)に加えて、暫定下部工構築工程S10と、暫定上部工構築工程S11と、仮設道路開放工程S12と、暫定構造撤去工程S13と、を備えている。また、この橋梁改築方法では、新設上部工構築工程S8,81とは異なる新設上部工構築工程S82を備えている。
【0071】
<暫定下部工構築工程>
図17の(A)に示すように、暫定下部工構築工程S10では、既設下部工10に対して(後工程で構築する)桟橋3とは反対側(
図17では下流側)となる河川9の流水方向に間隔をあけた位置において、撤去される既設上部工13に対応する区間で暫定的に利用される暫定下部工50が構築される。例えば、暫定下部工50は、杭を用いたパイルベント基礎等を採用することができ、台船(図示せず)に搭載された重機90を用いて構築される。暫定下部工50を構築している期間中であっても、既設上部工13上には車両等が通行している。つまり、暫定下部工構築工程S10は、既設橋1の交通を開放しながら実施される。
【0072】
<暫定上部工構築工程>
図17の(B)に示すように、暫定上部工構築工程S11では、暫定下部工50の上に暫定的に利用される暫定上部工51が橋軸方向に沿って構築(設置)される。暫定上部工51が暫定下部工50の上に設置されることで、暫定的な橋(暫定構造)が形成される。暫定上部工51の設置方法は、新設上部工構築工程S8における新設上部工23の構築方法と同様であって、例えば、暫定上部工51は、送り出し設備91を利用して暫定下部工50の上に送り出されてもよいし、台船に搭載されたジャッキ設備を用いて暫定下部工50の上に設置されてもよい。暫定上部工51を構築している期間中であっても、既設上部工13上には車両等が通行している。つまり、暫定上部工構築工程S11は、既設橋1の交通を開放しながら実施される。
【0073】
<仮設道路開放工程>
仮設道路開放工程S12では、暫定上部工51を通る仮設道路を形成する。具体的には、
図18に示すように、暫定上部工51と一般部53(既設橋に接続する道路)とを結ぶ連絡区間52を設け、この連絡区間52と暫定上部工51とによって仮設道路を形成する。仮設道路開放工程S12では、仮設道路が形成された後、仮設道路の交通を開放すると共に既設橋1の交通を閉鎖する。なお、仮設道路の開放と既設橋1の閉鎖とは、どちらを先行して行ってもよいし、同時期に並行して行ってもよい。
【0074】
<既設上部工撤去工程など>
仮設道路開放工程S12の後に、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法と同様となる既設上部工撤去工程S3が実施される。正確には、仮設道路開放工程S12の後に、鋼管矢板先行打設工程S1、桟橋杭先行打設工程S2、既設上部工撤去工程S3、桟橋下部工構築工程S4、桟橋架設工程S5、既設下部工撤去工程S6および新設下部工構築工程S7が実施される。
図17の(C)に示すように、桟橋3は、新設下部工20を挟んで暫定構造(暫定下部工50、暫定上部工51)の反対側(
図17では上流側)に構築される。なお、桟橋杭先行打設工程S2および桟橋下部工構築工程S4は、例えば、台船等を用いて、暫定下部工構築工程S10、暫定上部工構築工程S11または仮設道路開放工程S12の前に実施されてもよいし、これらと同時期に実施されてもよい。
【0075】
<新設上部工構築工程>
新設上部工構築工程S82では、既設橋1(既設上部工13)と仮設道路との交通を閉鎖する(既設橋1は既に閉鎖されている)。続いて、
図17の(C)に示すように、暫定上部工51は暫定下部工50の上でジャッキアップされ、暫定下部工50および新設下部工20に移設軌道RLが架け渡される。暫定上部工51は、水平ジャッキ等を利用して移設軌道RLに沿って暫定下部工50から新設下部工20に横移動される。
図17の(D)に示すように、暫定上部工51は、新設下部工20の上に設置されて新設上部工23として利用される。なお、暫定上部工51が新設下部工20の上に移動された後、移設軌道RLは取り除かれる。また、新設上部工構築工程S82では、新設上部工23の交通を開放する。
【0076】
ところで、
図19の(A)に示すように、連絡区間52を含む暫定上部工51の橋軸方向の端部(以下、「端部暫定上部工51E」という。)は、既設橋1の橋軸方向に対して傾斜する方向(または略直角方向)に沿って並設された暫定下部工50の上に設置されることがある。つまり、端部暫定上部工51Eは、橋軸方向に対して傾斜する方向(または略直角方向)に配置されることがある。そこで、新設上部工構築工程S82では、端部暫定上部工51Eが、回転を伴うスライドを行う工法(本明細書では「回転スライド工法」という。)によって新設下部工20に設置される。回転スライド工法では、
図19の(B)に示すように、端部暫定上部工51Eは必要に応じて一般部53の側にスライドされる。次に、
図19の(C)に示すように、端部暫定上部工51Eは、一般部53の側を中心に回転(
図19の(C)では反時計回りに回転)させることで、新設下部工20の上に設置される。なお、回転を伴うスライドを実施する際には、暫定下部工50と新設下部工20との間に移設軌道RLが架設され、端部暫定上部工51Eは移設軌道RL上をスライドする。また、上記した回転スライド工法は一例であって、その工法は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更されてもよい。
【0077】
<桟橋撤去工程、暫定構造撤去工程>
新設上部工23の交通を開放した状態で、桟橋撤去工程S9では桟橋3が撤去され、暫定構造撤去工程S13では暫定下部工50が撤去される(
図17の(D)参照)。なお、暫定下部工50は、桟橋下部工30の桟橋杭31と同様に、河川9の底付近で切断される。また、桟橋撤去工程S9と暫定構造撤去工程S13とは、どちらを先行して行ってもよいし、同時期に並行して行ってもよい。
【0078】
以上によって、橋梁改築方法の全工程が終了し、既設橋1から新設橋2への架け替えが完了する。
【0079】
以上説明した第3実施形態に係る橋梁改築方法によれば、既設橋1を撤去および再構築する期間における交通を確保することができ、現況交通に与える影響を軽減することができる。
【0080】
[変形例]
以下、第1~第3実施形態に係る橋梁改築方法の各種変形例について説明する。なお、以下の説明では、第1~第3実施形態に係る橋梁改築方法と同一の構成には同一の符号を付し、第1~第3実施形態に係る橋梁改築方法と同様の説明は省略する。また、本明細書において説明した各種の変形例は、技術的思想の趣旨を逸脱せず、矛盾しない範囲において組み合わせることも可能である。
【0081】
なお、第1~第3実施形態に係る橋梁改築方法では、既設上部工撤去工程S3において、既設橋1の既設上部工13の全部が撤去されていたが、本発明はこれに限定されない。既設上部工撤去工程S3では、架設桁33が既設橋1(既設上部工13上)に設置され、架設桁33を利用して既設橋1の既設上部工13の一部が撤去されてもよい。すなわち、既設上部工13の少なくとも一部が撤去および再構築される対象区間とされていればよい。この場合、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法の新設上部工構築工程S8,S81では、桟橋3を利用して既設上部工13を撤去した位置(対象区間)において新設下部工20の上に橋軸方向に沿って新設上部工23が構築される。また、第3実施形態に係る橋梁改築方法の暫定下部工構築工程S10では、既設上部工13の少なくとも一部に対応する区間で暫定的に利用される暫定下部工50が構築される。当然のことながら、暫定上部工51も既設上部工13の少なくとも一部に対応する区間に構築される。さらに、新設上部工構築工程S82では、横移動された暫定上部工51が、既設上部工13を撤去した位置において新設下部工20の上に設置されて新設上部工23として利用される。
【0082】
また、第3実施形態に係る橋梁改築方法において、対象区間が既設上部工13の一部である場合、連絡区間52は暫定上部工51と対象区間を除く既設上部工13とを結ぶように設けられてもよい。また、対象区間が既設上部工13の一部である場合、仮設道路の形成作業が対象区間の交通に影響を与えるため、対象区間の交通を閉鎖した後に仮設道路を形成し、対象区間の交通を閉鎖したまま仮設道路の交通を開放するとよい。
【0083】
また、第1~第3実施形態に係る橋梁改築方法では、既設下部工撤去工程S6において、桟橋3を利用して既設下部工10の一部または全部が撤去され、新設下部工構築工程S7において、桟橋3を利用して撤去された既設下部工10に代えて新設下部工20が再構築されていたが、本発明はこれに限定されない。
図20に示すように、既設下部工撤去工程S6および新設下部工構築工程S7に代えて、桟橋架設工程S5の後(桟橋3の構築後)に、桟橋3を利用して既設下部工10の少なくとも一部を補強する下部工改良工程S15が実施されてもよい。既設下部工10は、例えば、鋼板巻き立て、鉄筋コンクリート巻き立て、またはグランドアンカー等、種々の工法によって補強することができる。なお、
図20では、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法の変形例を示しているが、下部工改良工程S15は第3実施形態に係る橋梁改築方法に適用することもできる(図示せず)。
【0084】
また、下部工改良工程S15を実施する場合、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法の新設上部工構築工程S8,S81では、桟橋3を利用して既設上部工13を撤去した位置(対象区間)において(補強された)既設下部工10の上に橋軸方向に沿って新設上部工23が構築される。第3実施形態に係る橋梁改築方法の新設上部工構築工程S82では、横移動された暫定上部工51が、既設上部工13を撤去した位置(対象区間)において(補強された)既設下部工10の上に橋軸方向に沿って設置されて新設上部工23として利用される。なお、下部工改良工程S15は、既設下部工撤去工程S6と新設下部工構築工程S7とを含む工程として捉えてもよく、桟橋3を利用して既設下部工10の少なくとも一部を撤去して新設下部工20を構築することが含まれてもよい。
【0085】
また、既設下部工10の補強、撤去、再構築を必要としない場合、換言すれば、既設上部工13を架け替えるだけの場合には、既設下部工撤去工程S6、新設下部工構築工程S7および下部工改良工程S15は省略されてもよい(図示せず)。すなわち、既設上部工13の対象区間を撤去し、桟橋3を構築した後、既設上部工13を撤去した位置(対象区間)において既設下部工10の上に新設上部工23を構築する新設上部工構築工程S8,S81,S82が実施されればよい。
【0086】
また、第1~第3実施形態に係る橋梁改築方法では、既設上部工13の一部または全部を撤去するために、既設上部工撤去工程S3において、架設桁33が既設上部工13の上に設置されていたが、本発明はこれに限定されない。
図21に示すように、他の変形例に係る橋梁改築方法では、第1~第2実施形態に係る橋梁構築方法と同様の桟橋下部工構築工程S41と桟橋架設工程S51とを備え、桟橋下部工構築工程S41と桟橋架設工程S51とが、既設上部工撤去工程S31に先立って実施されてもよい。この場合、既設上部工撤去工程S3では、架設桁33が既設上部工13上に設置されない。桟橋架設工程S51では、ジャッキアップされた架設桁33が送り出し設備91に載せられて橋軸方向一方から他方に向かって送り出されることで、桟橋下部工30の上に橋軸方向に沿って架設桁33が設置され、桟橋3が構築される。なお、桟橋架設工程S51において、桟橋下部工30の上に架設桁33を設置する他の方法としては、既設橋1(既設上部工13)の上で地組みされた架設桁33が、既設橋1から桟橋下部工30に向かって流水方向に横移動されることで、桟橋下部工30の上に設置されてもよい(図示せず)。また、桟橋架設工程S51において、桟橋下部工30の上に架設桁33を設置する他の方法としては、既設橋1以外の場所で地組みされた架設桁33が、クローラクレーン等の重機90によって移動されることで、桟橋下部工30の上に設置されてもよい(図示せず)。
【0087】
図21に示す他の変形例に係る橋梁改築方法では、桟橋3の構築後、桟橋3を利用して既設橋1の既設上部工13の少なくとも一部を撤去する既設上部工撤去工程S31が実施される。具体的には、桟橋3上に軌条設備92やトラベラクレーン93が設置され、トラベラクレーン93等を用いて既設上部工13が撤去される(図示せず)。あるいは、桟橋3上に載せたクローラクレーン等の重機によって既設上部工13を撤去してもよい(図示せず)。既設上部工撤去工程S31の後に、既設下部工撤去工程S6、新設下部工構築工程S7および新設上部工構築工程S8,S81が実施される。なお、
図21では、第1~第2実施形態に係る橋梁改築方法の他の変形例を示したが、この他の変形例の特徴は第3実施形態に係る橋梁改築方法に適用することもできる(図示せず)。また、既設下部工10を補強する場合には、既設下部工撤去工程S6および新設下部工構築工程S7に代えて、下部工改良工程S15が実施される(図示せず)。また、既設下部工10の補強、撤去、再構築を必要としない場合には、既設下部工撤去工程S6、新設下部工構築工程S7および下部工改良工程S15は省略される(図示せず)。なお、既設上部工13は、橋軸方向に送り出されることで撤去されてもよい(図示せず)。
【0088】
また、第2実施形態に係る橋梁改築方法の新設上部工構築工程S81では、架設桁33が、桟橋下部工30から既設下部工10または新設下部工20に向かって流水方向に横移動され、既設下部工10または新設下部工20の上に設置されて新設上部工23として利用されていたが、本発明はこれに限定されない。
図22に示すように、他の新設上部工構築工程S83では、新設上部工23が、桟橋3の架設桁33の上に設置され、架設桁33から新設下部工20(または既設下部工10)に向かって流水方向に横移動され、新設下部工20(または既設下部工10)の上に設置されてもよい。
【0089】
また、第3実施形態に係る橋梁改築方法では、新設上部工構築工程S82において、暫定上部工51が、横移動されて新設上部工23として利用されていたが、本発明はこれに限定されない。他の新設上部工構築工程S82として、桟橋3上に軌条設備92やトラベラクレーン93が設置され、トラベラクレーン93を用いて新設上部工23を構築してもよいし(図示せず)、桟橋3上に直接載せられたクローラクレーン等の重機を用いて、予め地組みされた新設上部工23を構築してもよい。新設上部工構築工程S82に代えて、第1実施形態に係る橋梁改築方法の新設上部工構築工程S8、または第2実施形態に係る橋梁改築方法の新設上部工構築工程S81、若しくは上記した新設上部工構築工程S83を実施してもよい(図示せず)。さらに、第3実施形態に係る橋梁改築方法では、新設上部工構築工程S82に代えて、
図15を用いて説明したように、桟橋3として利用された架設桁33が、桟橋下部工30から新設下部工20の上に横移動され、新設上部工23の送り出し方向の先端に連結されることで手延べ桁として利用されてもよい。
【0090】
また、第1~第3実施形態に係る橋梁改築方法および第1~第2実施形態に係る橋梁構築方法では、止水壁40Aを構築するために複数の本設鋼管矢板40を打設したが、これに代えて、複数の鋼矢板、鋼管杭、鋼製パネル等(いずれも図示せず)を打設してもよい。
【0091】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る桟橋構築方法、橋梁改築方法および橋梁構築方法における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0092】
1 既設橋(橋梁)
2 新設橋(橋梁)
3 桟橋
9 河川
10 既設下部工
13 既設上部工
20,24 新設下部工
23 新設上部工
30 桟橋下部工
33 架設桁
50 暫定下部工
51 暫定上部工
S3,S31 既設上部工撤去工程
S4,S41 桟橋下部工構築工程
S5,S51 桟橋架設工程
S6 既設下部工撤去工程
S7,S71 新設下部工構築工程
S8,S81,S82,S83 新設上部工構築工程
S10 暫定下部工構築工程
S11 暫定上部工構築工程
S12 仮設道路開放工程
S15 下部工改良工程