IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェイテクト ユーロップの特許一覧

特許76254172つの冗長電源装置を有するステアリングシステムの制御方法
<>
  • 特許-2つの冗長電源装置を有するステアリングシステムの制御方法 図1
  • 特許-2つの冗長電源装置を有するステアリングシステムの制御方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】2つの冗長電源装置を有するステアリングシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20250127BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20250127BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20250127BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20250127BHJP
   B62D 103/00 20060101ALN20250127BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B62D119:00
B62D101:00
B62D103:00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020573330
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 FR2019051700
(87)【国際公開番号】W WO2020012108
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】18/56327
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カサール ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】コルレ ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ダラーラ ジョヴァンニ
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/060042(WO,A1)
【文献】特開2005-329784(JP,A)
【文献】特開2007-125915(JP,A)
【文献】特開2008-174191(JP,A)
【文献】特開2010-187480(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0178833(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置され、ステアリングボックス(2)にアシスト力を供給する2つの電気モータ(12、12’)を備えた自動車のステアリングシステムにおいて、前記2つの電気モータ(12、12’)をそれぞれ第1チャンネル及び第2チャンネルとして制御する制御方法であって、
自動車の動的な状況ないし動作条件が変動して第1チャンネル及び第2チャンネルの電源電圧に相違が生じたときに、第1チャンネル及び第2チャンネルのうちで電気モータの電源電圧が最小値のチャンネルを評価する評価ステップと、
求められる総要求アシスト力の初期部分を供給するマスタチャンネル機能部と、実際に供給される力の初期部分(32)と総要求力(30)との間の差に対応するアシスト力の可変の相補部分を供給するスレーブチャンネル機能部とを定義する定義ステップと、
マスタチャンネル機能部を第1チャンネル及び第2チャンネルのうちで電気モータの電源電圧が最小値のチャンネルと組み合わせ、スレーブチャンネル機能部を第1チャンネル及び第2チャンネルのうちで電気モータの電源電圧が最大値のチャンネルと組み合わせる組み合わせステップと、
を有することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリングシステムの制御方法、及びその制御方法を実施する手段を有するステアリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、一般に、車輪を旋回させるのに必要な力の一部を得るために、運転者の意図センサ(intention sensor)によって測定される、運転者から加えられるトルクによって決まる必要な総要求アシスト力に対応してアシスト力を車両のステアリングに供給する電気機械(motorization)を備えるステアリングシステムを有する。以下、運転者によってステアリングホイールに加えられるトルクをステアリングホイールトルクと称する。
【0003】
ステアリングシステムに用いられている電気機械は、一般に「ブラシレス」タイプの電気機械である。これらの電気機械は、特に動的応答が速く、高効率、低摩耗、低騒音である。さらに、これらの電気機械は、所定の電源電圧と温度での無負荷速度とブロックロータの動作トルクとを特徴とし、それらの間で電気機械の可能な動作ポイントが定められることが知られている。電源電圧が低下すると無負荷速度が低下し、その結果、電気機械の動作ポイントが変化する。
【0004】
「ブラシレス」タイプの電気機械は、第1動作モードである「モータモード」を有し、電気機械は、所定の電源電圧と温度で、電気機械の回転速度が無負荷速度よりも低速である場合に、ラックタイプのステアリング部材に駆動力を与える。
【0005】
「ブラシレス」タイプの電気機械は、第2動作モードである「発電機」モードを有し、電気機械は、所定の電源電圧と温度で、電気機械の回転速度が無負荷速度よりも高速である場合に、電気機械がラックタイプのステアリング部材に制動トルクつまり制動力を加える。
【0006】
さらに、自動車の製造業者は、現在、自動車の自動駐車機能、渋滞中の走行機能、先行する自動車への追従機能、さらには完全な自動運転の機能など、いくつかの走行モードを多少とも自動化可能にする自動運転機能を開発している。これらの種々の機能では、車輪を旋回させるためにステアリングシステムを使用し、ドライバーはそのことには力を使わない。
【0007】
したがって、ステアリングシステムの操作の安全性は、マニュアルの運転アシスト機能と自動運転機能の両方に重要である。
【0008】
ステアリングシステムの安全性及び有用性の要件を満たすために、2つの電気機械を並列に配置することが慣例として実施され、それぞれ、ステアリングに求められる総アシスト力の一部に利用できるそれ自体の電源を有する電気機械を備える。特に、電気機械装置は、完全な冗長化が行われ、並列に配置される2つの独立した同等のチャンネルを有し、それぞれ、それ自体の電源を備えた電気機械と、車両からの信号の受信、システムの制御、及び電気機械の制御などの異なる機能部(function)を有する。したがって、電気機械は、独立して動作してもよいし、及び/または同時に動作してもよい。
【0009】
電気機械が同時に動作する場合、通常の動作モードにおいて2つのアシストチャンネルはそれぞれ同じアシスト力を確実に供給し、2つのチャンネルは、同一の作動軸すなわち電気機械の回転軸に接続される。すなわち、各チャンネルは、求められる総要求アシスト力の一部を供給する。通常の運転モードでは、電気機械装置の冗長性が保証される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、独立した2つの電源ネットワークを備えた車両では、それぞれの動作条件が変動して、アシスト力の供給に関して能力が相違する2つのチャンネルの電源供給に影響することがあり得る。この相違により、一方のチャンネルが他方に対して動作を妨害することがある。より具体的には、電源電圧が最も低いチャンネルの無負荷速度が低下する。
【0011】
このように、電源電圧が最も低いチャンネルの電気機械に課される回転速度が、電源電圧が最も高いチャンネルの電気機械によって、前記電気機械の無負荷速度よりも速くなることがあり、その結果、前記電気機械による制動トルクの発生を引き起こす。そして、前記電気機械が発電機モードで動作する。
【0012】
この制動トルクは、ステアリングホイールの回転速度とともに大きくなり、ステアリングホイールに好ましくない、不安定でさえある感覚を生じさせ、電気機械の全体的な効率を低下させる。そして、2つのチャンネルは動作モードが低下する。
【0013】
このタイプの低下した動作モードでは、電力供給が最も小さいチャンネルの電気機械を外すことが知られている。そして、電力供給が最も大きいチャンネルの電気機械が、最大で求められる総要求アシスト力に対応するアシストを単独で供給する。このとき、運転者の感覚は、このチャンネル単独で得られる全電力に左右される。チャンネルのそれぞれで、全体での最大要求の50%の最大電力が得られると仮定すると、運転者が望ましくない感覚を持ち得る状況は走行中には極めて稀である(駐車の操作中、それが非常に動的な操作中であっても力不足が感じられるであろう)。しかしながら、この解決策は、電気機械装置の冗長性の損失につながる。
【0014】
また、低下した動作モードにおいて、2つのチャンネルの電力供給を均等にするように、影響を受けないチャンネル、すなわち電源電圧が高い方のチャンネルの電源電圧を低下させることも知られている。この解決策では電気機械装置の冗長性を維持できるが、電気機械の無負荷速度、ひいては電気機械により車両のステアリングに与えられる最大アシスト力が低下する。求められる総要求アシスト力が得られないことがある。
【0015】
本発明は、特に、これらの従来技術の欠点を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、本発明は、
並列に配置された第1チャンネルと第2チャンネルを備え、求められる総要求アシスト力に対応して供給される2つのアシスト力の合計を得るために、それぞれが車両のステアリングにアシスト力を供給する電気機械を有する自動車のステアリングシステムを制御する制御方法であって、
電気機械の電源電圧が最小値のチャンネルを評価する評価ステップと、
総要求アシスト力の初期部分を供給するマスタチャンネル機能部と、実際に供給される力の初期部分と総要求力との間の差に対応するアシスト力の可変の相補部分を供給するスレーブチャンネル機能部とを定義する定義ステップと、
マスタチャンネル機能部を電気機械の電源電圧が最小値のチャンネルと組み合わせ、スレーブチャンネル機能部を電気機械の電源電圧が最大値のチャンネルと組み合わせる組み合わせステップと、
を有することを特徴とする制御方法を提供する。
【0017】
評価ステップでは、第1チャンネルと第2チャンネルのうち、電気機械の電源電圧の最小値のチャンネルがどちらであるかを決定できる。したがって、第1チャンネルまたは第2チャンネルのどちらが最低無負荷速度を有するか、言い換えると、第1チャンネルまたは第2チャンネルのどちらが発電機モードに容易に切り替わるかを知ることができる。
【0018】
また、マスタチャンネル機能部は、第1チャンネルによって、各々第2チャンネルによって実行でき、スレーブチャンネル機能部は、第2チャンネルによって、各々第1チャンネルによって実行できる。
【0019】
組み合わせステップにより、マスタチャンネル機能部を担うチャンネルと、スレーブチャンネル機能部を担うチャンネルとを決定できる。
【0020】
第1チャンネルと第2チャンネルは、同時に動作することで、電気機械装置の冗長化を可能にする。より具体的には、第1チャンネルまたは各々第2チャンネルは、総要求アシスト力の初期部分を供給するマスタチャンネル機能部を実行し、第2チャンネルまたは各々第1チャンネルは、第1チャンネルまたは各々第2チャンネルによって実際に供給される力の推定値または測定値に基づいて、総要求アシスト力に到達するためのアシスト力の可変の相補部分を供給する。第1チャンネル及び第2チャンネルの電気機械は、それぞれが総要求力の異なる部分または同一の部分を供給するが、同じ回転速度で動作する。
【0021】
このようにして、第1チャンネルまたは第2チャンネルの電気機械の電源が故障した場合は、故障した電源を有するチャンネルがマスタチャンネルとなる。したがって、故障した電源を有するチャンネルは、総要求力の初期部分を供給する。この初期部分は、課される速度がマスタチャンネルの無負荷速度よりも低速である場合に完全に供給されるか、または課される速度がマスタチャンネルの無負荷速度よりも高速である場合に制動力から差し引かれる初期部分に対応し得る。課される速度がマスタチャンネルの無負荷速度よりも低速である場合、求められる総要求アシスト力の全てを供給するように、第2チャンネルによって供給される相補部分が初期部分を補完するか、または、課される速度がマスタチャンネルの無負荷速度よりも高速である場合、制動力を補正することにより、求められる総要求アシスト力の全てを供給するように、第2チャンネルが初期部分を補完する。
【0022】
したがって、あるチャンネルへの電源供給に不具合がある場合に、冗長性が確保され、求められる総要求アシスト力の大部分が供給される。
【0023】
本発明に係る制御方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を追加的に含んでもよく、それらを互いに組み合わせてもよい。
【0024】
総要求力の初期部分は、この総要求力の一部に対応することが望ましい。
【0025】
特に、総要求力の初期部分は、この総要求力の全体に対応していてもよい。このようにすると、初期部分の算出が簡略化される。
【0026】
本発明の1つの特徴によれば、評価ステップは、発電機モードのいずれかの電気機械の経路に対応する制動トルクを検出することによって実行される。
【0027】
本発明の1つの特徴によれば、評価ステップは、各チャンネルの電源電圧の値を比較することによって実行される。
【0028】
この比較により、2つのチャンネル間の電圧の偏差を求めることができる。
【0029】
本発明の1つの特徴によれば、評価ステップは、偏差閾値を決定する段階を有する。
【0030】
マスタチャンネル機能部とスレーブチャンネル機能部の置換を制限するために、偏差閾値により、2つのチャンネル間の許容し得る偏差を決定できる。偏差閾値は、車両が走行するパラメータにもよるが、予め定められた固定値または可変値である。
【0031】
本発明の1つの特徴によれば、各チャンネルの電気機械の電源電圧の値が、各チャンネルによって実際に供給される力の信号を用いて決定される。
【0032】
本発明の1つの特徴によれば、各チャンネルは、総要求力の最大50%に等しいアシスト力を供給する。
【0033】
また、本発明は、本発明に係るステアリングシステムを制御するための方法を実行する手段を有するステアリングシステムを対象とする。
【0034】
特に、このステアリングシステムは、それぞれが車両のステアリングにアシスト力を供給する2つの電気機械を有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明に係る制御方法を実行する自動車のステアリングを示す図である。
図2図2は、この制御方法の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、添付図面に関して例示される以下の説明によって、より良く理解され、他の特徴及び効果がより明確になるであろう。
【0037】
図1は、車両に横方向に配置されたラックタイプの制御部材を有するステアリングボックス2を示し、その両端がタイロッド4によって前輪のハブ6に連結され、ハブ6を旋回させて車両の操舵を確実に行う。
【0038】
ボックス2に接続され、運転者によって操作されるステアリングホイール8を備えたステアリングコラムは、運転者によってこのコラムに加えられる力のセンサを有し、このセンサは運転者の意図を測るための装置10を構成する。
【0039】
第1チャンネル12と第2チャンネル12’を形成する2つの電気機械12,12’は、手動運転の場合にはアシストとなり、車両の自動運転の場合には自動操舵を実行するように、運転者によってステアリングホイール8に与えられる力に全ての力を加えるため、それぞれ、独立してステアリングボックス2にアシスト力を加える電源と制御手段を有する。
【0040】
電気機械12、12’は、それぞれ、以下に示すように、力を供給する電気モータを備えるか、またはその代わりに、回転または並進の形でステアリングボックス2にトルクまたは力を加える他の任意の電磁手段を有する。そして、電気機械12、12’の作用は、トルクまたは力のいずれとも呼ばれる。
【0041】
制御コンピュータ16は、特に外部14から受信する異なるパラメータに応じて、電源電圧の値が最も低いチャンネルを評価し、マスタチャンネル及びスレーブチャンネル機能部を定義し、そして各モータ12,12’の個々のトルク設定点D1,D2を設定するために、運転者の意図センサ10及び電気機械12,12’と、それらの電源とに接続される。
【0042】
図2は、運転者によってステアリングコラムに加えられる力センサを含む、運転者の意図を測定するための装置10を示し、装置10は、各電気モータ12,12’によって実際に加えられるアシスト力の測定機能部20に情報を送る。加えられるアシスト力は、特に、これら2つの電気機械を有する電気機械グループ22から受信した情報を形成する電気機械12,12’のそれぞれによって実際に供給されるトルクであってもよい。
【0043】
加えられるアシスト力の測定機能部20は、電気機械グループ22の各チャンネルによって実際に供給される力31の信号を受信し、情報を総要求アシスト力算出機能部24に送り、そこに供給される情報の全部または一部に基づいて算出が実行される。
【0044】
総要求アシスト力量算出機能部24は、第1信号30を形成する総要求アシスト力を、2つの電気機械12,12’によって構成される冗長要素制御機能部26に送り、マスタチャンネル機能部を担うチャンネルとスレーブチャンネル機能部を担うチャンネルを決定し、電気機械グループ22に含まれる電気機械のそれぞれが目的とするアシスト力目標値を、個別のトルク設定信号D1,D2のそれぞれに供給することで算出する。
【0045】
各電気機械12,12’の制御システムは、そのために目的とする個別のトルク設定点信号D1,D2を受信し、この設定点に対応するモータトルクを供給するように、その電気モータの電力供給を制御する。
【0046】
そして、各モータ12,12’は、個別の設定点D1,D2に対応するトルクを供給するために、電気モータの能力を推定または測定する機能部28に情報を送る。この推定または測定機能部28は、第2信号32を形成するこの推定値または測定値を冗長要素制御機能部26に供給する。
【0047】
このようにして、冗長要素を制御する機能部26は、アシスト力目標算出機能部24によって設定される総要求アシスト力30の両方を有し、これらの電気機械12の各々から要求される個別のトルク設定点信号D1,D2を調整するために、その要求されるトルクを供給するために各電気機械12の能力を表す第2信号32の推定値または測定値を考慮する。
【0048】
特に、冗長要素を制御する機能部26は、総要求アシスト力30に対応する供給トルクの合計を得るために、2つの電気機械12,12’の間で個々のトルク設定点D1,D2を割り振るために、その状態の変動に応じて、各電気機械12,12’の動作の特性をリアルタイムで取り入れる。
【0049】
冗長要素を制御する機能部26は、複数の外部パラメータ14を受信して、特に電圧、電流、及びネットワークによって供給可能な電力を含む、車両40の電気的ネットワークの状況を推定または測定する機能部からの情報を有する個々のトルク設定点D1,D2を算出する。
【0050】
このようにして、冗長要素を制御する機能部26は、電力供給ネットワークに不均衡がある場合に、これらの電気機械12,12’のそれぞれの電力供給が異なり得る可能性をリアルタイムで認識し、マスタチャンネル機能部を担うチャンネルとスレーブチャンネル機能部を担うチャンネルとを確立し、電気機械が供給し得るトルクに対応する個々のトルク設定点D1,D2を設定する。
【0051】
ステアリングの操作を促進するためにステアリング設定点42を設定する機能部は、車両または外部ソースから、冗長要素を制御する機能部26に第1パラメータを供給する。
【0052】
車両の動的な状況を測定する機能部44、例えば、車両の速度、車両の横方向、縦方向または垂直方向の加速度、または車両のドリフト角を測定する機能部は、冗長要素を制御する機能部26に第2パラメータを供給する。
【0053】
本発明に係る制御方法の工程は以下の通りである。
【0054】
冗長要素の機能部26は、評価ステップ中に、発電機モードの一つの電気機械の経路に対応する制動トルクを検出することによって、及び/又は予め定められた偏差閾値で各チャンネルの電源電圧の値を比較することによって、電気機械の電源電圧が最小値のチャンネルを決定する。
【0055】
各電気機械の電源電圧の値の偏差が所定の偏差閾値よりも小さい場合、例えば、車両におけるそれぞれの始動後に、これらの2つの電気機械を同じように使用するために、電気機械によって発揮される機能を定期的に反転させることが望ましく、そうすることで摩耗を均等にすることができる。
【0056】
各電気機械の電源電圧の値の偏差が所定の偏差閾値よりも大きい場合、冗長要素の機能部26は、マスタチャンネル機能部を電気機械の電源電圧が最小値のチャンネルと組み合わせ、スレーブチャンネル機能部を電気機械の電源電圧が最大値のチャンネルと組み合わせる。
【0057】
次に、例えば、電気機械の電源電圧が最小値のチャンネルを第1チャンネル12とする。
【0058】
したがって、この例では、マスタチャンネル機能部は第1チャンネルによって実行され、スレーブチャンネル機能部は第2チャンネルによって実行される。
【0059】
以降の説明では、参照符号は実施例に関連して記す。
【0060】
冗長要素の機能部26は、総要求アシスト力30の初期部分に対応するマスタチャンネル12の個別トルク設定点D1と、実際に供給された力の初期部分と要求された力の合計との間の差に対応するアシスト力の相補部分に対応するスレーブチャンネル12’の個別トルク設定点D2とを決定する。
【0061】
マスタチャンネル12に課せられる回転速度が無負荷速度よりも小さい場合、マスタチャンネル12は、総要求の所定割合に対応する初期部分D1を供給する。特に、この初期部分D1は、総要求アシスト力の大部分を構成し得る。スレーブチャンネル12’の相補部分D2は、その要求されたトルクを供給するためにマスタチャンネル12の能力を含む第2信号32を考慮して設定される。この場合、電気機械装置の冗長性が確保され、総要求力が供給される。
【0062】
マスタチャンネル12に課せられた回転速度が無負荷速度よりも大きい場合、マスタチャンネル12は発電機モードである。発電機モードのマスタチャネルは初期部分D1と制動トルクを供給する。スレーブチャンネル12’の相補部分D2は、要求されたトルク及び生成された制動トルクを供給するためにマスタチャンネル12の能力を考慮して設定される。この場合、電気機械装置の冗長性が確保され、供給される力は、制動トルクから差し引かれる総要求力に等しい。
【0063】
2つの電気機械12,12’は、互いに補完し合って動作するので、その間の同期を必要としない、同じでない力が要求される。
【0064】
一般に、この方法は、2つのチャンネルの電源電圧が実質的に等しい場合、1つの電気機械のみで、または互いに補完し合って動作する2つの電気機械12,12’で動作し得る。
【0065】
単一の電気機械での動作の場合、マスタチャンネル12の個々のトルク設定点D1は、総要求力に等しく、スレーブチャンネル12’は、マスタチャンネル12によるトルク供給が不十分な場合に自動的に検出されるアシスト力の可変の相補部分を即座に供給するように、設定点D2が低い値またはゼロの値で制御されたまま不変である。
【0066】
2つの電気機械が補完し合う動作は、例えば高速操作の場合に、運転者によって求められる大きな力を供給するために使用できる。このようなまれな運転状況で、電気機械の制御に例えば知覚できる小さな振動を与えるような不備があっても、車両の快適性には影響しない。
図1
図2