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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/08 20060101AFI20250127BHJP
   A47K 10/20 20060101ALI20250127BHJP
   A47K 10/42 20060101ALI20250127BHJP
   B65D 77/02 20060101ALI20250127BHJP
【FI】
B65D83/08 G
A47K10/20 Z
A47K10/42 B
B65D77/02 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021060758
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156860
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏彦
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-001796(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110835(WO,A1)
【文献】特開2016-124598(JP,A)
【文献】国際公開第2020/262236(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/08
A47K 10/20
A47K 10/42
B65D 77/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生薄葉紙の束が柔軟な樹脂製の包装フィルムによって包装されている包装体であり、
包装体の上面に易裂開線を環状に配して形成された取出口形成部を有し、
取出口形成部は、
奥行方向中央部において幅方向に延在する幅狭部と、この幅狭部の端部に連続して幅方向外方に向かって幅狭部より離れるにつれて漸次広くなる拡幅部と、この拡幅部に連続して幅方向外方に向かって凸に膨出する湾曲凸部と、を有する形状をなし、
その幅方向の長さが前記束の上面の幅方向の長さの70%以上であり、奥行方向の最大長さが前記束の上面の奥行方向の長さの10~40%であり、前記幅狭部の幅方向の長さが前記束の上面の幅方向の長さの50~70%であり、前記幅狭部の奥行方向の長さが前記束の上面の奥行方向の長さの0.5~10%であり、
拡幅部の縁となる易裂開線が幅方向に対して前記束の幅方向外方に向かって漸次角度が大きくなるように配され、かつ、拡幅部の縁となる易裂開線の両端を結ぶ線と幅方向との間の角度であるテーパー角が25~60度である、
ことを特徴とする包装体。
【請求項2】
湾曲凸部の奥行方向の長さが25~45mm、幅方向の膨出長が2.5~12.5mmである、請求項1記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーパータオルなどの衛生薄葉紙を折り畳み積み重ねた束を柔軟な包装フィルムで包装した包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペーパータオルやフェイシャルティシューなどの衛生薄葉紙の包装形態として、1枚又は複数プライを折り畳み積み重ね、最上位のシートを摘まんで引き出すと次のシートの一部が引き出されるいわゆるポップアップ式の束としたものを、樹脂製の柔軟な包装フィルムによって包装する形態が知られている。
【0003】
旧来、このような衛生薄葉紙の包装体は、取出口形成用のミシン目を簡易な直線状のミシン目とし、上面にスリット状の取出口が形成されるようにしたものが一般的であった。しかし、スリット状の取出口は、スリット長を長くすると、内部に残存するシート枚数が少なくなった際にシートが内部に落ち込んでしまう問題があり、また、スリット長を短くすると、開封後の最初に一枚のシートをフィルム外へ引き出し難く、また、使用初期や使用末期に引き出し抵抗が高くなりすぎて、シート引き出し時に包装フィルムごと、持ち上がってしまいポップアップできなくなることがあるという問題があった。
【0004】
そこで、このスリット状の取出口の問題を改善すべく、ダイカット等の型抜き技術により取出口を形成するためのミシン目を長手方向に延在する細長環状に配し、楕円形状のように取出口の開口を奥行方向に幅のある広いものとすることが行われている(下記、特許文献1及び2)。また、より取出性を改善すべく、取出口を幅方向の端部を拡幅した瓢箪形状とすることも行われている。
【0005】
しかし、従来の略楕円形状や略瓢箪形状の取出口は、柔らかさやしなやかさが重視され、洟をかむ用途や食事の際の口周りの清拭などフェイシャル用途が主であるフェイシャルティシュペーパーのような衛生薄葉紙を主たる対象として設計されており、顔以外の肌の清拭や、物品の清拭用途にも使用しやすいように「厚手でしっかりとした、破れにくい品質」のティシュペーパーや、フェイシャルティシュペーパーと比較してより剛性の高い、主に手洗い後の手拭きに使用されるペーパータオルのような衛生薄葉紙には必ずしも適してはいなかった。
【0006】
このような衛生薄葉紙の取り出し性を良好にするには取出口を奥行方向により幅広に形成することが考えられるが、剛性の高い衛生薄葉紙は、紙質の相違から柔らかさやしなやかさに優れるフェイシャルティシュペーパーと同様に設計することが難しく、単に取出口の奥行方向を幅広にすると、ポップアップ時に次の衛生薄葉紙が引きあがらず落ち込むポップアップ不良や、包装体上面に起立しないで倒伏してしまう起立不良といった引き出し性における問題が非常に生じやすくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-052559号公報
【文献】特開2018-058654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、上記の問題に鑑みて、衛生薄葉紙、特にペーパータオルのような硬い衛生薄葉紙における引き出し性に優れる包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は次のとおりである。
その第一の手段は、
衛生薄葉紙の束が柔軟な樹脂製の包装フィルムによって包装されているフィルム包装ティシューであり、
上面に易裂開線を環状に配して形成された取出口形成部を有し、
取出口形成部は、
奥行方向中央部において幅方向に延在する幅狭部と、この幅狭部の端部に連続して幅方向外方に向かって幅狭部より離れるにつれて漸次広くなる拡幅部と、この拡幅部に連続して幅方向外方に向かって凸に膨出する湾曲凸部と、を有する形状をなし、
その幅方向の長さが上面の幅方向の長さの70%以上であり、奥行方向の最大長さが上面の奥行方向の長さの10~40%であり、前記幅狭部の幅方向の長さが上面の幅方向の長さの50~70%であり、前記幅狭部の奥行方向の長さが上面の奥行方向の長さの0.5~10%である、
ことを特徴とするフィルム包装ティシューである。
【0010】
第二の手段は、
湾曲凸部の奥行方向の長さが25~45mm、幅方向の膨出長が2.5~12.5mmである、上記第一の手段に係るフィルム包装ティシューである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、衛生薄葉紙、特にペーパータオルのような硬い衛生薄葉紙の引き出し性に優れる包装体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る包装体を説明するための斜視図である。
図2】衛生薄葉紙の束を説明するための斜視図である。
図3】取出口形成部を説明するための上面図である。
図4】本発明に係る包装体の使用態様を説明するための斜視図である。
図5】変形カット部を有する取出口形成部を説明するための一部拡大図である。
図6】変形カット部を有する他の取出口形成部を説明するための一部拡大図である。
図7】凸カット部を有する取出口形成部を説明するための一部拡大図である。
図8】凸カット部の他の形態を説明するための一部拡大図である。
図9】凸カット部を有する取出口形成部の包装体の使用態様を説明するための斜視図である。
図10】ハーフカット部を有する取出口形成部を説明するための一部拡大図である。
図11】ハーフカット部を説明するための正面図及び断面図である。
図12】取出口形成部の別の形態例を説明するための図である。
図13】取出口形成時の裂けを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図1図12と、比較形態を示す図13を参照しながら説明する。なお、本発明及び本明細書における上下方向、左右方向等の方向については、包装体の向きによって変更されるものであり、空間の絶対的な方向を意味するものではない。また、剛性とは、紙のコシ、剛度、こわさと言われることがある。
【0014】
本発明に係る包装体1は、ペーパータオル等の衛生薄葉紙2を折り畳み重ねた略直方体形状をなす束3を、柔軟性のある包装フィルム4によって包装したものであり、上面4Cに取出口形成部5を有している。この包装体1は、束3の形状に概ね近くなるように、上面4Cと、上面4Cに対面する下面4Dと、上面4C及び下面4Dの間に位置する長側面4B及び短側面4Aとを有する略六面体形状をなしている。
【0015】
図1図4には、ガセット包装の実施形態を示している。この実施形態のガセット包装は、マチ付きのピロー包装であり、被包装物である束3を包装フィルム4で長手方向両端に開口が形成されるように筒型に巻き込むようにして包み、その巻き込み方向において重畳する部分4Xを束3底面位置等で融着処理や接着剤によって接着し、さらに束3の短手側面3Aを越えて延び出る部分の端縁を、マチを形成しつつ上下方向から融着処理や接着剤によって接着して、短側面4Aを封止面としたものである。このガセット包装では、この短側面4Aである封止面が束3の短手側面3Aに対面し、マチである長側面4Bが束3の折返面である長手側面3Bに対面する。但し、本発明においては、包装体1の包装形態は限定されるものではない。マチを有さない単なるピロー包装でもよく、短側面がフラップを重ねて融着されて構成される、キャラメル包装とも称されるオーバーラップ包装など適宜の他の包装形態とすることができる。
【0016】
本発明に係る包装体1に内包される衛生薄葉紙2の束3は、いわゆるポップアップ式の束である。この束3は、特に図2に示すように、方形の衛生薄葉紙2が二つ折りされ、その折り返した内側2Aに上下に位置する他の衛生薄葉紙2の折り返した片2Bが位置するようにして、複数の衛生薄葉紙2が折り畳み積層されており、各衛生薄葉紙2の折り返し縁2Cが並ぶ一対の長手側面3Bと、折り返し縁2Cが並ばない一対の短手側面3Aとを有し、さらに短手側面3Aと長手側面3Bとに連接する一対の平面(上下面)3Cを有する略直方体形状をなす。
【0017】
束3を構成する衛生薄葉紙2の組数は、限定されないが、1プライ又は複数プライを1組として30~240組とすることができる。束3の大きさも、限定されないが、衛生薄葉紙200組を束としたもので、高さ30~100mm×長手方向(幅)150~250mm×短手方向(奥行)100~130mmであるのが望ましい。また、束の高さが、束上面の奥行方向の長さよりも短いほうが、本発明のポップアップ不良の改善効果がより高まるものとなる。
【0018】
包装体1内における束3の充填率は、本発明の効果を妨げない範囲であれば、限定されないが、束と包装フィルムの隙間が、0~30mmの範囲にあるのが望ましい。束3が、包装フィルムによって上下方向において、やや圧縮された状態で包装されていてもよい。
【0019】
束3を構成する各衛生薄葉紙2は、シートが1枚の単層構造のもの又は複数枚重ねられた積層構造のものである。プライ数は限定されないが、1枚(1プライ)又は2枚重ね(2プライ)と言われるものが望ましい。1プライ当たりの坪量は、限定されないが10~40g/mであるのが望ましい。1組あたりの質量は1.0~2.5gであるのが望ましい。前記坪量のシートを1プライ又は2プライとした衛生薄葉紙は、特に、手洗い後の手拭きに適するペーパータオルに好適である。さらに、この衛生薄葉紙の1組あたりの紙厚は100~500μmであるのが望ましい。このようなプライ数、坪量、紙厚の衛生薄葉紙は、本発明の構成である幅狭部、拡幅部、湾曲凸部を有する特徴的な取出口形成部の形状による、ポップアップ時に次の衛生薄葉紙が引きあがらず落ち込むポップアップ不良や、包装体上面に起立しないで倒伏してしまう起立不良の改善効果が高い。
【0020】
なお、坪量は、JIS P 8124(1998)の測定方法による。1プライあたりの坪量の測定は、坪量=1組当たりのシート重量/(シート面積×プライ数)により算出することができる。また、紙厚は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(株式会社尾崎製作所製)及びその相当機を用いて複数プライの状態で測定した値である。
【0021】
また、本発明に係る衛生薄葉紙2は、乾燥されたドライタイプのものであり、薬液が含浸されている所謂ウェットタイプのものではない。したがって、衛生薄葉紙2により形成される上記の束3は多くの空気を含むものである。このドライタイプの衛生薄葉紙2においても、グリセリンに代表されるポリオール等の吸湿によって水分を高める保湿成分等の薬液が付与されている薬液付与タイプのものがあるが、このような衛生薄葉紙であってもよい。
【0022】
衛生薄葉紙2を構成する原料パルプは限定されない。NBKP等の針葉樹由来のパルプとLBKP等の広葉樹由来のパルプとを配合したものが挙げられる。また、古紙パルプが配合されていてもよいし、古紙パルプのみからなるものであってもよい。本発明では、ペーパータオル等のコシの強く剛性の高い衛生薄葉紙において特に優れた効果を発現するため、特に針葉樹由来のパルプが50%超であるのがよい。
【0023】
衛生薄葉紙2の乾燥引張強度は、限定されないが、縦方向が1000~3000cN/25mm、横方向が250~1500cN/25mmであるものは、特に本発明に適する。乾燥引張強度の測定方法は、JIS P8113(1998)に準ずる方法で実施する。測定装置としては、ミネベア株式会社製「万能引張圧縮試験機 TG-200N」及びその相当機が挙げられる。
【0024】
本発明に係る包装体1の取出口形成部5は、包装フィルム4の束3の最上位の衛生薄葉紙2に対面する上面4Cに易裂開線50を環状に配して形成される。なお、本明細書における環状とは、円形状や楕円形状に限定される意味ではなく、閉じた領域が形成される形状という意味である。このような取出口形成部5は、易裂開線50を裂開し、その易裂開線50で囲まれる範囲を分離除去することにより、包装体1の上面4Cに衛生薄葉紙2を引き出すための開口部である取出口6が形成される。本発明に係る包装体1では、束3がポップアップ式となっているため、形成された取出口から束3の最上位の衛生薄葉紙2を一枚引き出すと、その直近下方に位置する次の衛生薄葉紙の一部が取出口より露出されるようになる。また、この取出口形成部5は、易裂開線50を環状に配していることから、易裂開線50で囲まれる範囲を分離除去して形成される取出口6は、直線のみのスリット形状ではなく、奥行方向にある程度の幅を有するものとなる。このような取出口形成部5は、易裂開線50で囲まれる範囲を一方端部5Aから他方端部5Bに向かって連続的に引っ張るように切剥がすことで、その取出口形成部5内の範囲のフィルムを分離除去できるため開封時の操作性に優れる。なお、本明細書では、図面上左側に位置する端部を一方端部5Aと、右側に位置する端部を他方端部5Bとして説明するが、説明の便宜のために定めただけであり、これらは入れ替えることができる。
【0025】
ここで、本発明に係る包装体1の取出口形成部5は、特徴的に、上面4Cの奥行方向中央部において幅方向に延在する幅狭部51と、この幅狭部51の端部に連続して束3の幅方向外方に向かって幅狭部51より離れるにつれて漸次広くなる拡幅部52と、この拡幅部52に連続して束3の幅方向外方に向かって凸に膨出する湾曲凸部53と、を有しており、そして、特に、取出口形成部5全体の幅方向の長さL1が束3の上面の幅方向の長さL2の70%以上であり、取出口形成部5全体の奥行方向の最大長さL3が束3の上面の奥行方向の長さL4の10~40%であり、幅狭部の幅方向の長さL5が束3の上面の幅方向の長さL2の50~70%であり、かつ、幅狭部の奥行方向の長さL6が束3の上面の奥行方向の長さL4の0.5~10%となっている。
【0026】
この取出口形成部5により形成される取出口6は、上記幅狭部51から拡幅部52にかかる縁の近傍が上下方向に動きやすい略台形上の自由な縁片51Aとなるため、束3から一組の衛生薄葉紙2を引き出す際には、その縁片51Aが引き出される方向にやや捲れるように変形し、特に図4に示されるように、次の露出する一組の衛生薄葉紙2に対しては凭れて支持するようになる。そして上記範囲の本発明に係る取出口形成部5では、特に、奥行き方向に非常に狭い幅狭部51から奥行方向に非常に広い湾曲凸部53に連続する拡幅部52を有する形状のため、形成される取出口6には、幅狭部51の縁近傍に形成される自由な縁片51Aが非常に広く大きいものとなる。したがって、衛生薄葉紙2の引き出し時には幅狭部51の間が広く開くことが可能となり、束3から比較的剛性の高い衛生薄葉紙2を引き出す際にスムーズに取り出すことができる。さらに剛性の高い衛生薄葉紙2に対しても縁片51Aがしっかりと凭れて落ち込み防止効果を高める。このような幅狭部51に係る部分が広く開くため、特に、ガセット包装やピロー包装のような、短側面4Aと上面4Cとの境界に明確な折り線が形成され難く、包装体1の上面位置における包装フィルムが変形しやすい包装形態であったり、内包される衛生薄葉紙が上記の坪量及び紙厚のペーパータオル等の剛性の高い衛生薄葉紙2であり引き出し時に包装体1の上面位置を変形させやすいものであったりしても、衛生薄葉紙2の引き出し時に上面全体が歪みがたく平面に維持されやすく、衛生薄葉紙2を一枚ずつ取り出す際に特に安定して取り出しやすくなる。
【0027】
また、本発明に係る構成の取出口形成部5は、奥行き方向に広い湾曲凸部53となっているため、湾曲凸部53の縁の長さが長くなるとともに、取出口形成部5の拡幅部52から湾曲凸部53との間は、取出口6とした際に深い窪み部6Hが形成される形状となっている。したがって、束3から引き出された衛生薄葉紙に続く、取出口6から一部が露出する次の衛生薄葉紙の根本部分2Rが、湾曲凸部53の縁6Eに沿ってゆるやかに巻かれるように変形する。剛性の高い衛生薄葉紙2では、コシ折れしがたいため、緩やかな巻きによって起立性が高まる。さらに、取出口6から一部が露出する次の衛生薄葉紙の根本部分2Rが深い窪み部6Hに嵌るようにもなるため、より起立性が高まるようになる。このように、本発明に係る取出口形成部5では、衛生薄葉紙の剛性が高いと生じやすいとされる衛生薄葉紙の包装フィルム内部の落ち込みによるポップアップ不良が、上記の作用によって生じ難いものとなる。なお、この作用効果は、特に上記の好適な坪量、紙厚の衛生薄葉紙、さらには後述の好適な包装フィルムとの組み合わせにおいて効果的である。
【0028】
拡幅部52は、特に、拡幅部52の縁となる易裂開線50が幅方向に対して束3の幅方向外方に向かって漸次角度が大きくなるように配されているのが望ましい。また、拡幅部52の縁となる易裂開線50の両端を結ぶ線と幅方向との間の角度であるテーパー角∠αは25~60度であるのが望ましい。
【0029】
さらに、拡幅部52から湾曲凸部53にかけては、易裂開線50が曲線に形成され滑らかにつながっているのが望ましい。このように易裂開線50が配されていると、拡幅部52から湾曲凸部53に向かって易裂開線50がスムーズに裂開しやすくなる。
【0030】
なお、湾曲凸部53の奥行方向の長さL3は、具体的には25~45mm、幅方向の膨出長L7が2.5~12.5mmであるのが望ましい。
【0031】
他方で、包装体1の外装を構成する柔軟性のある樹脂製の包装フィルム4の具体例としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム、塩化ビニリデンフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体の単層フィルム、または、それらのフィルムを含む適宜積層されたラミネートフィルムや、それらのフィルムにアルミ蒸着などの表面処理を施したガスバリアフィルムが例示できる。また、サトウキビ、芋(デンプン)、トウモロコシといった植物原料に由来するバイオマスフィルムを用いることもできる。このようなバイオマスフィルムの使用は、環境保護の観点から望ましい。
【0032】
特にポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルムが好適である。また、包装フィルム4は、意匠性や手触り性に優れる梨地フィルムであってもよい。フィルムの融点は150℃以下であるのがよい。なお、包装フィルムの融点が低いほうが低温で熱融着処理できるが、実質的な下限値は80℃である。ポリプロピレンフィルムとしては無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)、ポリエチレンフィルムとしては、直鎖低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)、低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)、中密度ポリエチレンフィルム(MDPE)が挙げられる。
【0033】
さらに、香り付きのティシュペーパーなど香りのあるものを包装するのであれば、保香性に優れるエチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが望ましい。エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの一方面または両面に、ポリエチレン樹脂製フィルムやポリプロピレン樹脂製フィルムを積層して熱融着性が高められた複層の樹脂フィルムであってもよい。
【0034】
ここで、包装フィルム4の厚さは、適宜に選択すればよいが、好ましくはJIS P 8118(1998)に準拠して測定される厚みが25~75μmであるのが望ましい。厚みが25~75μmあれば、特に、効果的に本発明の作用効果を発現させることができる。厚みは、測定試料をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G-1A型」(株式会社尾崎製作所製)及びその相当機を用いて測定する。
【0035】
また、包装体1は、包装フィルム4のソフトネスが、衛生薄葉紙2のソフトネスよりも小さいのが望ましい。包装フィルムのソフトネスが、衛生薄葉紙2のソフトネスよりも小さいと、特に、効果的に本発明の作用効果を発現させることができる。
【0036】
本発明に係る取出口形成部5を構成する易裂開線50としは、ミシン目、アンカット部(非カット部)を設けたスリットカット等とすることができる。但しこれに限定されない。カット部50Cと非カット部50Uとが交互に配されたミシン目とするのならば、その種類は限定されない。カット部50Cが直線である通常のミシン目、カット部が孔であるマイクロミシン目、カット部の形状がY字型、略L字型、<字型等のジッパーミシン目が例示できる。スリットカットは、フィルムをスリット状にカットした部分であるが、非カット部を有することで、非カット部とカット部とが交互に並ぶものとなる。なお、非カット部を有するスリットカットを単にスリットカットと称する場合がある。ミシン目と非カット部を有するスリットカットは、区別されないこともあるが、本発明においては、スリットカットは、カット部が2ピッチ未満、つまり同じ長さのカット部が二回連続しない場合にスリットカットと称している。一般的には、スリットカットは、ミシン目よりもカット部の長さが長く形成される。
【0037】
ミシン目や非カット部を有するスリットカットのカットタイ比は、用いるフィルムの破断のしやすさにより適宜の間隔に定めるが、カット部の長さとしては、0.8mm以上20.0mm以下、非カット部(タイ部又はアンカット部)の長さとしては、0.3mm以上5.0mm以下の範囲から適宜に設計するのがよい。
【0038】
ここで、図13(a)に示すように、ダイカット等の型抜き技術によりミシン目150を環状に配して形成した取出口形成部105では、図13(b)のように長手方向Xの一方端部105Aから他方端部105Bに向かってこの環状ミシン目内範囲105Zを切剥がすことで簡易に取出口を形成できる利点がある一方、このような開封操作をすると他方端部105Bでは最後に切り離される他方端のミシン目150eに近づくにつれて、ミシン目150が裂開していく方向が、環状ミシン目内範囲105Zが引っ張られる方向に対して直交する方向に近くなっていくため、図13(c)に示すように、この端部、特に他方端部105Bの端のミシン目150eの近傍においてミシン目150の裂開がスムーズに連続的に行われず、図13(d)に示すように取出口106の端部に意図しない裂け105Pが発生することが考えられる。そして、取出口形成部105の幅方向の端部が奥行方向Yに拡幅されるにつれて、切剥がし方向に対して直交する方向に近くなるミシン目の範囲がより長くなるため、この裂けが発生しやすくなると考えられる。
【0039】
このような裂けのおそれを低減すべく、本発明に係る取出口形成部5においては、取出口形成部5の幅方向の少なくとも一方の端部(図示例では他方端部5B)の縁となる部分50Pは、特に図5及び図6に示すように、端カット部50eを有して一方端部又は両端部端がく字型にカットされている部分を有する変形カット部50Dと、非カット部50Uとが交互に配された特徴的なミシン目50Pとすることができる。特に、湾曲凸部53の縁を構成する部分の80%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の範囲を、前記変形カット部50Dと非カット部50Uとが交互に配された部分50Pとするのが望ましい。、湾曲凸部53の全範囲が変形カット部50Dと非カット部50Uとが交互に配された易裂開線で構成されていてもよい。
【0040】
変形カット部50Dは、より具体的には、特に図5及び図6に示されるように、直線状又は、略直線の緩やかな湾曲線上の主カット部50mの一方端又は両端に、所定角度を有して端カット部50eが連続的に配され、一方端部又は両端部端がく字型にカットされている部分を有する形状となっているものである。この変形カット部50Dは、図5において示すように、一方端部のみく字型に形成されている変形カット部50Dや、両端部ともにく字型に形成されている変形カット部50Dがあってもよい。図6(c)において示すように、一方の端カット部50eの端が束3の上面の幅方向外方側に向かい、他方の端カット部50eの端が束3の上面の幅方向中央側に向かう変形カット部50Dがあってもよい。
【0041】
さらに、変形カット部50Dと非カット部50Uとが交互に配された部分50Pにおける変形カット部50Dの配列形態としては、図5及び図6(a)に示す形態のように、端カット部50eの端が、束3の上面の幅方向外方側に向かうもののみが配列されていてもよいし、図6(b)に示す形態のように、束3の上面の幅方向中央側に向かうもののみが配列されていてもよい。さらに、端カット部50eの端が、束3の上面の幅方向外方側に向かうものと、束3の上面の幅方向中央側に向かうものとが混在していてもよい。さらに、図6(c)に示されるように、束3の上面の奥行方向の両端に位置する端カット部50eの端のみが上面の幅方向外方側に向かい、他の端カットの端は上面の幅方向中央側に向かっているものであってもよい。
【0042】
易裂開線50で囲まれる範囲の一方端部5Aから他方端部5Bに向かって連続的に引っ張る一般的な開封操作をすると、端部(図示例では他方端部5B)の変形カット部50Dと非カット部50Uとが交互に配された部分50Pでは、隣接する変形カット部50Dの隣りあう端カット部50eが共に、束3の上面の幅方向外方側に向かっている場合、又は、束3の上面の幅方向中央側に向かっている場合には、隣接する端カット部50eの延存方向が近づく方向で交差する方向となっているため、これらの間の非カット部50Uが容易に切断されやすい。また、隣接する変形カット部50Dのとなりあう端カット部50eの一方が束3の上面の幅方向外方側に向かい、他方が束3の上面の幅方向中央側に向かっている場合には、易裂開線50で囲まれる範囲の一方端部5Aから他方端部5Bに向かって連続的に引っ張る一般的な開封操作をすると、これらの間の非カット部50Uは、切断直前でねじりが発生するためフィルムの裂けや伸びが発生せずに容易に切断されやすくなる。隣接する変形カット部50Dのとなりあう端部の一方に端カット部50eがあり、他方に端カット部50eがない場合も同様に、易裂開線50で囲まれる範囲の一方端部5Aから他方端部5Bに向かって連続的に引っ張る一般的な開封操作をすると、これらの間の非カット部50Uは、切断直前でねじりが発生するためフィルムの裂けや伸びが発生せずに切断されやすくなる。このようにして、幅方向の端部(図示例では他方端部5B)に、変形カット部50Dと非カット部50Uとが交互に配された部分50Pを形成することで、開封時の裂けの発生のおそれが小さくなる。
【0043】
また、本発明に係る取出口形成部5では、変形カット部50Dと非カット部50Uとが交互に配された部分50Pでは、変形カット部50Dの端の位置が端カット部50eによって主カット部50mの延在方向から幅方向内側又は幅方向外側にややずれた位置となるため、取出口6が形成されると非カット部50Uであった部分がやや凸となり鋸歯状の縁となる。このため束3から一組の衛生薄葉紙2を引き出す際には、取り出された衛生薄葉紙に続く、取出口から一部露出する次の一組の衛生薄葉紙2の根本部分2Rに対して、この鋸歯状の縁が衛生薄葉紙2の幅方向の縁を挟持し、落ち込みの防止性を高める。
【0044】
ここで、特に好ましいのは、図5に示すように幅狭部51の奥行方向の中央Cの幅方向延長線上に変形カット部50Dが位置しており、その変形カット部が両端部に幅方向外方に向かう端カット部50eを有する変形カット部50Dあるとともに、さらに、その変形カット部50Dより奥行方向外方に位置する変形カット部が、幅狭部51の奥行方向の中央より奥行外方に位置する端部のみに幅方向外方に向かう端カット部を有する変形カット部50Dとなっている形態である。この図5に示される取出口形成部5では、易裂開線50で囲まれる範囲の一方端部5Aから他方端部5Bに向かって連続的に引っ張る一般的な開封操作において、変形カット部50Dの端カット部を有さない端よりも、引張方向において先行するより幅方向外側の位置に、隣接する変形カット部50D,50Dの端カット部50eが、存在していることになるため、係る開封操作時にその間の非カット部50Uが裂開するときに、微小な包装フィルムの裂けが発生しても、その直後に裂けが既に裂開している端カット部50eに連続しやすく、それ以上に裂けが進み難くなる。
【0045】
取出口形成部5の端部に変形カット部50Dを設ける場合、非カット部50Uとの長さの比は、必ずしも限定されないが、変形カット部50Dの長さL8は、限定されないが5mm以上20mm以下、好ましくは7mm以上13mm以下が望ましい。また、変形カット部50Dの端カット部50eの長さL9は、0.2mm以上3.0mm以下mm、好ましくは0.5mm以上2.5mm以下であるのが望ましい。さらに、変形カット部50Dの間の非カット部50Uの長さL11は0.2mm以上3.0mm以下、好ましくは0.3mm以上2.0mm以下であるのが望ましい。この範囲では、変形カット部50Dの間において裂けが極めて発生し難く非カット部50Uが切断されて、連続的にスムーズに裂開がより進みやすくなる。
【0046】
また、変形カット部50Dにおけるく字型部分における主カット部50mと端カット部50eとの間の角度∠βは、90°以上であればよい。好ましくは100°以上、より好ましくは120°以上である。また、主カット部50mから端カット部50eにかけては角取されているのが望ましく、その場合く字型部分の曲率については限定されないが、R0.1~R2.0がよく、より好ましくは、R0.2~1.2であり、特に好ましくは、R0.4~1.1である。この曲率であれば、主カット部50mから端カット部50eにスムーズに変形カット部の開きが進みやすい。
【0047】
他方で、本発明に係る取出口形成部5においては、開封時の裂けのおそれを低減すべく、取出口形成部5の幅方向の少なくとも一方の端部(図示例では他方端部5B)の縁となる部分50Pは、特に図7及び図8に示すように、易裂開線50が、幅方向外側が先細となる凸形状の凸カット部50Tと、この凸カット部の基端部間を繋ぐ非カット部50Uとが交互に配されて構成されている部分50Pとすることができる。特に、湾曲凸部53の縁を構成する部分の80%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の範囲が、凸カット部50Tと非カット部50Uとが交互に配される部分50Pとなっているのがよい。湾曲凸部53の全範囲が凸カット部50Tと非カット部50Uとが交互に配された易裂開線で構成されていてもよい。なお、図示はしないが、凸カット部は、複数の凸形状が基端部で繋がり連続する形状であってもよい。凸形状の連続数は必ずしも限定されないが、2~5程度であるのが望ましい。なお、この凸カット部と非カット部とが交互に配された部分50Pは、凸形状一つのみの凸カット部と凸形状が連続する形状の凸カット部とが混在していてもよい。
【0048】
凸カット部50Tの形状は、幅方向外側が先細となっている形状であればよく、図7に示すような一つの頂点を有するV字型のほか、図8(a)に示すようなU字型、図8(b)に示すが台形型の形状とすることができる。また、幅方向外側が先細とは、凸カット部50Tの先端部が奥行方向Y及び幅方向中央側に向いていないという意味である。好ましくは、凸カット部50Tの先端部は、奥行方向Yに対する角度∠γが15°以上、好ましくは30°以上、より好ましくは45°以上であるのがよい。また、凸カット部50Tの先端部の開き角度∠Δは、180°未満であれば必ずしも限定されないが、好ましくは15~120°、より好ましくは20~90°、さらにより好ましくは30~60°である。
【0049】
一方端部5Aから他方端部5Bに向かって易裂開線50を裂開して連続的に引っ張るように切剥がす開封操作した場合、この凸カット部50Tを有する他方端部5Bの縁においては、凸カット部50Tの基端間にある非カット部50Uよりも、引張方向において先行するより幅方向外側の位置に、既に切断されている凸カット部50Tが、存在していることになるため、係る開封操作時に凸カット部50Tの基端間にある非カット部50Uが裂開するときに、微小な包装フィルムの裂けが発生しても、その直後に裂けが既に裂開している凸カット部50Tに連続してそれ以上に裂けが進まないようになる。このように、幅方向の端部(図示例では他方端部5B)に、凸カット部50Tと、この凸カット部の基端部間を繋ぐ非カット部50Uとが交互に配されている部分50Pを形成することで、格段に裂けの発生の恐れが小さくなる。
【0050】
また、図9に示されるように、幅方向外側が先細の凸カット部50Tと、凸カット部50Tの基端部間を繋ぐ非カット部50Uとが交互に配されて構成されている部分50Pは、取出口6が形成されると複数の凸片6Tが並ぶギザギザの鋸歯状の縁となる。束3から一組の衛生薄葉紙2を引き出す際には、これら凸片6Tは、衛生薄葉紙の引き出し方向に捲れるため、衛生薄葉紙が湾曲凸部53であった部分等の取出口6の縁6Eに沿って巻き込まれるようにして、起立性の高い形状に変形することを妨げない。また、スムーズに衛生薄葉紙を引き出すことができる。その一方で、取り出された衛生薄葉紙に続く、取出口から一部露出する次の一組の衛生薄葉紙2の根本部分2Rに対しては返しとして機能し、落ち込みの防止に寄与する。さらに、衛生薄葉紙2の幅方向の縁が、凸片間に挟持されて、さらに落ち込みの防止性が高まる。
【0051】
凸カット部50Tの基端側から先端までの高さL12は、0.1mm以上あるのが望ましい。上限値は必ずしも限定されないが10mmを超えない範囲とするのが望ましい。凸カット部の好ましい高さは、0.5~7mm、より好ましくは、1~5mmである。凸カット部の高さが1.0mm未満の高さ低いものはマイクロウェーブカット等とも称され技術により形成することができる。このような高さの低い凸カット部50Tとすると、凸カット部50Tと、凸カット部の基端部間を繋ぐ非カット部50Uとが交互に配されて構成されている部分により形成される取出口6の鋸歯状の縁の凹凸が目立たない意匠性を有するものとなる。
【0052】
凸カット部50Tの両端基端間の長さL13や、隣接する凸カット部50Tの基端間にある非カット部50Uの長さL14の比は、必ずしも限定されないが、凸カット部50Tの両端基端間の長さL13としては、5mm以上20mm以下、好ましくは、7mm以上13mm以下であり、非カット部50Uの長さL14としては、0.3mm以上3mm以下、好ましくは0.7mm以上1.3mm以下の範囲とするのがよい。この範囲であれば意図しない裂けが発生せず、スムーズに連続的な裂開が進みやすい。
【0053】
他方で、本発明に係る取出口形成部5においては、開封時の裂けのおそれを低減すべく、取出口形成部5の幅方向の少なくとも一方の端部(図示例では他方端部5B)の縁となる部分50Pは、特に図10及び図11に示すように、カット部50Cとハーフカット部50Hとが交互に配されて構成されている部分50Pとすることができる。特に、湾曲凸部53の縁を構成する部分の80%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の範囲が、カット部50Cとハーフカット部50Hとが交互に配される部分50Pとなっているのがよい。湾曲凸部53の全範囲がカット部50Cとハーフカット部50Hとが交互に配された易裂開線で構成されていてもよい。
【0054】
カット部50Cとハーフカット部50Hは、図11(a)に平面図、図11(b)のそのb-b断面を示すように、カット部50Cは、包装フィルム4の厚み方向Zにおいて、束3に対面しない側の面である表面側41から束3に対面する側の面である裏面側42に至るまで完全に切断されている部分であり、ハーフカット部50Hは、完全には切断されておらず、前記表面側41から裏面側42に至るまで厚み方向Zの所定の深さ範囲L15まで切り込まれている部分である。このように、カット部50Cとハーフカット部50Hとが交互に配されている部分は、カット部50Cと切込みが全くない非カット部50Uとが交互に並ぶ部分と比べて、易裂開線を裂開する際に、裂開が連続的にスムーズに進みやすくなる。これは、包装フィルム4が裂けるのに必要な力の差が、カット部50Cと非カット部50Uとの差よりも、カット部50Cとハーフカット部50Hとの差のほうがより小さいため、カット部50Cからハーフカット部50H、ハーフカット部50Hからカット部50Cに裂開が連続的にスムーズに進みやいためである。したがって、この取出口形成部5は、一方端部5Aから他方端部5Bに向かって連続的に引っ張る開封時の操作を行っても、最後に切り離される他方端部5Bにおいて意図せず包装フィルム4が裂けるおそれが小さい。
【0055】
ここで、ハーフカット部50Hは、包装フィルムの厚さL16の20%以上の深さまで切込まれているのが望ましい。20%以上切り込まれていれば、開封操作によって取出口を形成する際において十分にカット部50Cとハーフカット部50Hとの間の連続的なスムーズな裂けを発生させることができる。切込みの深さの上限値は、限定されないが、80%以下、より好適には60%以下とすると意図しない裂開が発生しがたくなる。
【0056】
取出口形成部5の端部のカット部50Cとハーフカット部50Hとの長さの比は、必ずしも限定されないが、カット部50Cの長さとしては、5mm以上20mm以下、好ましくは、7mm以上13mm以下、ハーフカット部50Hの長さとしては、0.3mm以上3mm以下、好ましくは0.7mm以上1.3mm以下の範囲とするのがよい。この範囲であればカット部50Cからハーフカット部50H、ハーフカット部50Hからカット部50Cにスムーズに連続的な裂開が進むとともに、意図しない裂開は生じ難い。
【0057】
なお、本発明に係る取出口形成部の縁を構成する易裂開線50においては、変形カット部50D間や凸カット部間、さらに端部以外のミシン目におけるカット部の間をハーフカット部としてもよい。
【0058】
他方で、取出口形成部の縁を構成する易裂開線50において、変形カット部50Dと非カット部50Uとが交互に配される部分50Pは、取出口形成部5の両端部にあってもよく、また、一方端部のみにあってもよい。凸カット部50Tと非カット部50Uとが交互に配される部分50Pも、取出口形成部5の両端部にあってもよく、また、一方端部のみにあってもよい。カット部50Cとハーフカット部50Hとが交互に配されて構成されている部分50Pも取出口形成部5の両端部にあってもよく、また、一方端部のみにあってもよい。ここで、このような端部50P,50P,50Pを一方の端部みに形成するのであれば、反対の端部は、例えば、図12(a)に示すように、奥行き方向の一方側の拡幅部52Aの途中から湾曲凸部53Aの外方側端53tを超える位置までの範囲L10を連続するカット部とすることができる。このようにすると、図12(b)に示すように、取出口形成部5の一方端部5Aに一方の奥行側から外方側端を含む範囲に自由片5Tが形成され、その自由片5Tを摘まんで捲りやすくなり、開封操作がより行いやすくなる。
【0059】
また、本発明に係る幅狭部51の縁の部分は、一方端部5Aから他方端部5Bに向かう開封操作時の引っ張り方向と、延存方向が一致するため、ハーフカット部ではなくアンカット部を有するミシン目で構成するのが望ましい。幅狭部51の縁が意図せず裂開し難くなるため望ましい。
【0060】
なお、易裂開線50は、ミシン目と非カット部を有するスリットカットは、カット部50Cとハーフカット部50Hとが交互に配される部分も含めて、例えば、ダイカットにより一回的に形成することができる。
【実施例
【0061】
次いで、本発明の実施例1~5、比較例1を作製し、衛生薄葉紙の落ち込みと開封取出口の裂けについて試験を行った。実施例1~実施例5に係る包装体の取出口形成部の形状は、図1~5に示す幅狭部、拡幅部、湾曲凸部を有する略瓢箪型形状のものである。比較例1に係る包装体の取出口形成部は、単なる直線状のミシン目としたものである。
【0062】
各例に係る包装体の内包される束は、1プライのペーパータオル(商品名ラクらクックキッチンペーパー、坪量20g/m、紙厚220μm)を100組ポップアップ式に折り畳み重ねたものである。また、各例に係る包装形態は、ガセット包装であり、包装フィルムの延伸方向が取出口形成部の幅方向に直交する方向となっているものである。
【0063】
「落ち込み回数」の試験は、取出口形成部に係る易裂開線を裂開して、取出口を形成し、その取出口から束を構成するペーパータオルを最後の一枚まで順に引き出す操作を行い、実際に落ち込みが生じた回数をカウントした。
【0064】
「開封性」は、各例に係る試料を被験者に、一方端部を摘まんで他方端に向かって引っ張るようにして開封する操作をさせ、取出口の他方端部に裂けが発生するか否かを評価することとした。N=10として、裂けが発生した例は「あり」、発生しない例は「なし」と評価した。
【0065】
各例における取出口形成部の寸法や束上面の奥行方向長さや幅方向の長さに対する割合、及び試験の結果等は、下記表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1より、落ち込みに関しては、取出口形成部が1本のミシン目で取出口がスリットとなる比較例1は、12回の落ち込み回数が確認された。これに対して、実施例1~実施例5では、落ち込み回数が0回で落ち込みが確認できなかった。つまり、特に、幅狭部、拡幅部及び湾曲凸部を有する取出口形成部の形状による取出口は、落ち込み防止性に優れることが示された。
【0068】
また、端部(湾曲凸部)の縁を構成する部分をカット部とハーフカット部とを交互に配したものとした実施例1~実施例4は、取出口の奥行方向最大長さ、つまり端部である湾曲凸部の奥行方向の長さが、35mmと長く、束上面の奥行方向の30%もの範囲となっており裂けやすい構成であるにもかかわらず、開封操作時において、取出口の端部の裂けが確認されたものがなかった。
【0069】
実施例5は、実施例1における湾曲凸部のカット部間をハーフカット部ではなく従来一般的な非カット部としたものであるが、この実施例5では、開封操作時において、取出口の端部に裂けのあるものが一部確認された。実施例1~4のような非常に長さのある湾曲凸部の縁を構成するような易裂開線の場合には、その部分をカット部とハーフカット部とを交互に配するなどすると、開封操作性が高まることも確認された。
【0070】
以上のことから、本発明に係る包装体は、開封時に取出口の幅方向の縁が裂け難く開封性に優れる、フィルム包装の包装体となっている。
【符号の説明】
【0071】
1…包装体、2…衛生薄葉紙、2A…折り返した内側、2B…折り返した片、2C…折り返し縁、2R…取出口から露出する衛生薄葉紙の根本部分、3…衛生薄葉紙の束、3A…短手側面、3B…長手側面、3C…束の上下面、4…包装フィルム、4A…短側面、4B…長側面、4C…上面、4D…下面、4X…包装フィルムの重畳部分、5…取出口形成部、5A,5B…長手方向端部、5T…自由片、6…取出口、6E…取出口の縁、6T…凸片,6H…取出口の窪み部。
41…包装フィルムの表面側、42…包装フィルムの裏面側、50…易裂開線、50D,50D,50D,50D…変形カット部、50m…主カット部、50e…端カット部、R…く字型部分の曲率、50C…カット部、50U…非カット部(タイ部)、50T…凸カット部、50P…取出口形成部の端部の縁、50P…変形カット部と非カット部が交互に配されている部分、50P…凸カット部と非カット部が交互に配されている部分、50P…カット部とハーフカット部が交互に配されている部分、51…幅狭部、51A…略台形状の縁片、52…拡幅部、53…湾曲凸部、∠α…拡幅部のテーパー角、∠β…く字型部分の開き角度、∠γ…奥行方向に対する凸カット部の向きの角度、∠Δ…凸カット部の先端部角度。
L1…取出口形成部5の幅方向(長手方向)長さ、L2…束上面の幅方向(長手方向)の長さ、L3…取出口形成部5の奥行方向(短手方向)の最大長さ、L4…束上面の奥行方向(短手方向)の長さ、L5…幅狭部の幅方向(長手方向)の長さ、L6…幅狭部の奥行方向(短手方向)の長さ、L7…湾曲凸部の幅方向の膨出長、
L8…変形カット部の長さ、L9…端カット部の長さ、L10…奥行き方向の一方側の拡幅部の途中から湾曲凸部の外方側端を超える位置までの範囲、L11…変形カット部間の非カット部の長さ。
L12…凸カット部の高さ、L13…凸カット部の基端間の長さ、L14…凸カット部間の非カット部の長さ。
L15…ハーフカット部の深さ、L16…包装フィルムの厚み、
105…取出口形成部、105A…取出口形成部の一方端部、105B…取出口形成部の他方端部、105P…フィルムの裂け、150…ミシン目、150e…幅方向端のミシン目、X…長手方向(幅方向)、Y…長手方向に直交する方向(奥行方向)、Z…包装フィルムの厚み方向、C…幅狭部の奥行方向の中央。
図1
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図3
図4
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図10
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図12
図13