(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】アルミニウムドープバッファ層を有する高電子移動度トランジスタ素子
(51)【国際特許分類】
H10D 30/47 20250101AFI20250127BHJP
【FI】
H01L29/80 H
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021204136
(22)【出願日】2021-12-16
【審査請求日】2024-12-02
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517090646
【氏名又は名称】コーボ ユーエス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100210398
【氏名又は名称】横尾 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・ヒメネス
(72)【発明者】
【氏名】ジンチャオ・シェー
(72)【発明者】
【氏名】ビパン・クマール
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-182247(JP,A)
【文献】特表2016-512927(JP,A)
【文献】特開2019-21704(JP,A)
【文献】特開2016-111288(JP,A)
【文献】国際公開第2019/151441(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0252369(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 29/778
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状でない基板と、
前記
層状でない基板を覆うエピタキシャル層であって、
前記層状でない基板の表面上に直接に配置され、バッファ層内においてアルミニウム-酸素複合体を形成するアルミニウムを含むドーパントを有するバッファ層であって、前記バッファ層内のアルミニウムの濃度が、0.5%~3%である、バッファ層と、
前記バッファ層を覆うチャネル層と、
前記チャネル層を覆うバリア層と、
を備える、エピタキシャル層と、
前記エピタキシャル層の表面に配置されたゲート接点と、
前記エピタキシャル層の前記表面を覆って配置されたソース接点と、
前記エピタキシャル層の前記表面に配置されたドレイン接点であって、前記ソース接点および前記ドレイン接点が、前記ゲート接点から、かつ互いに離間される、ドレイン接点と、
を備える、
高電子移動度トランジスタ(HEMT)素子。
【請求項2】
前記バッファ層が、窒化ガリウムを含む、
請求項1に記載のHEMT素子。
【請求項3】
前記バッファ層内の前記アルミニウムの濃度が、0.5%~0.75%である、
請求項1に記載のHEMT素子。
【請求項4】
前記バッファ層内の前記アルミニウムの濃度が、0.75%~1.25%である、
請求項1に記載のHEMT素子。
【請求項5】
前記バッファ層内の前記アルミニウムの濃度が、1.25%~2%である、
請求項1に記載のHEMT素子。
【請求項6】
前記バッファ層内の前記アルミニウムの濃度が、2%~3%である、
請求項1に記載のHEMT素子。
【請求項7】
前記バッファ層が、前記アルミニウムを含むドーパントを有するドープ領域および非ドープ領域に横方向に分割される、
請求項1に記載のHEMT素子。
【請求項8】
前記ドープ領域内の前記アルミニウムの濃度が、0.5%~0.75%である、
請求項7に記載のHEMT素子。
【請求項9】
前記ドープ領域内の前記アルミニウムの濃度が、0.75%~1.25%である、
請求項7に記載のHEMT素子。
【請求項10】
前記ドープ領域内の前記アルミニウムの濃度が、1.25%~2%である、
請求項7に記載のHEMT素子。
【請求項11】
前記ドープ領域内の前記アルミニウムの濃度が、2%~3%である、
請求項7に記載のHEMT素子。
【請求項12】
層状でない基板と、
前記層状でない基板を覆うエピタキシャル層であって、
アルミニウム-酸素複合体を形成するアルミニウムのドーパント濃度が、0.5%~3%である第1のドープ領域と、前記層状でない基板の表面上に直接に配置され、非アルミニウムドーパントを有する第2のドープ領域と、前記第1のドープ領域を覆うように配置され、非ドープ領域である第3のドープ領域とに横方向に分割される、バッファ層と、
前記バッファ層を覆うチャネル層と、
前記チャネル層を覆うバリア層と、
を備える、エピタキシャル層と、
前記エピタキシャル層の表面に配置されたゲート接点と、
前記エピタキシャル層の前記表面を覆って配置されたソース接点と、
前記エピタキシャル層の前記表面に配置されたドレイン接点であって、前記ソース接点および前記ドレイン接点が、前記ゲート接点から、かつ互いに離間される、ドレイン接点と、
を備える、
高電子移動度トランジスタ(HEMT)素子。
【請求項13】
前記第1のドープ領域内の前記アルミニウムの濃度が、0.5%~0.75%である、
請求項12に記載のHEMT素子。
【請求項14】
前記第1のドープ領域内の前記アルミニウムの濃度が、0.75%~1.25%である、
請求項12に記載のHEMT素子。
【請求項15】
前記第1のドープ領域内の前記アルミニウムの濃度が、1.25%~2%である、
請求項12に記載のHEMT素子。
【請求項16】
前記第1のドープ領域内の前記アルミニウムの濃度が、2%~3%である、
請求項12に記載のHEMT素子。
【請求項17】
前記第2のドープ領域が、炭素でドープされる、
請求項12に記載のHEMT素子。
【請求項18】
前記第2のドープ領域が、鉄でドープされる、
請求項12に記載のHEMT素子。
【請求項19】
前記非ドープ領域が前記チャネル層と隣接し、
前記第1のドープ領域が、前記非ドープ領域と前記第2のドープ領域との間に挟まれる、
請求項12に記載のHEMT素子。
【請求項20】
前記HEMT素子が、無線周波数信号を増幅するように構成された増幅器を備える、
請求項1に記載のHEMT素子。
【請求項21】
前記増幅器が、ドハティ増幅器である、
請求項20に記載のHEMT素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月17日に出願された仮特許出願第63/126,837号の利益を主張するものであり、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、改善された線形性を提供する、バッファ層を有する高電子移動度トランジスタ素子に関する。
【背景技術】
【0003】
無線周波数(RF)スペクトルは、ますます混雑してきている。したがって、混雑したRFスペクトルを共有するには、増幅器の線形性を増加させることが非常に望ましい。増幅器の線形性を低減させる少なくとも1つの問題は、窒化ガリウムバッファのエピタキシャル成長中のシリコンまたは酸素の望ましくない侵入により、通常はn型である、非ドープ窒化ガリウムバッファである。n型窒化ガリウムバッファは、典型的に、非常に劣ったRF性能を有する漏れやすい窒化ガリウム高電子移動度トランジスタ素子をもたらす。漏れを排除し、したがって改善された線形性を提供する、バッファ層を有する高電子移動度トランジスタ素子が必要である。
【発明の概要】
【0004】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)素子が開示される。HEMT素子は、基板と、アルミニウムを含むドーパントを有するバッファ層を含む基板を覆うエピタキシャル層と、を有し、バッファ層内のアルミニウムの濃度は、0.5%~3%である。エピタキシャル層は、バッファ層を覆うチャネル層と、チャネル層を覆うバリア層と、をさらに含む。ゲート接点は、エピタキシャル層の表面に配置される。ソース接点およびドレイン接点もまた、エピタキシャル層の表面に配置され、ソース接点およびドレイン接点は、ゲート接点から、かつ互いに離間される。
【0005】
別の態様では、追加的な利点のために、上述の態様のいずれかが個々にもしくはともに、ならびに/または本明細書で説明される様々な別個の態様および特徴が組み合わされ得る。本明細書でそれとは反対のことが示されない限り、本明細書で開示される様々な特徴および要素のいずれかが、1つ以上の他の開示される特徴および要素と組み合わされ得る。
【0006】
当業者は、以下の「発明を実施するための形態」を添付図面と関連付けて読んだ後に、本開示の範囲を理解し、その追加的な態様を認識するであろう。
【0007】
本明細書に組み込まれ、かつその一部を形成する添付図面は、本開示のいくつかの態様を例示しており、説明とともに、本開示の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示に従って構造化される高電子移動度トランジスタ(HEMT)素子の断面図である。
【
図2】HEMT素子の例示的な実施形態の断面図であり、バッファ層が、非ドープ領域、およびアルミニウムを含むドーパントを有する第1のドープ領域に、横方向に分割される。
【
図3】別の例示的な実施形態の断面図であり、バッファ層が、鉄または炭素などの非アルミニウムドーパントを有する第2のドープ領域を有する。
【
図4】電界効果トランジスタの典型的な半導体構造のバンド図である。
【
図5】鉄トラップを使用した窒化ガリウム(GaN)バッファの典型的な深トラッププロファイルである。
【
図6A】ゲート電圧制御スイッチとして動作させたときの、HEMT素子のドレイン電流ダイナミクスを示す。
【
図6B】バッファ内のトラップが充填されておらず、白丸によって表される、HEMT素子の断面図である。
【
図6C】バッファ内のトラップが充填されており、黒丸によって表される、HEMT素子の断面図である。
【
図7A】2%希釈Alドーパントを有するGaNバッファを使用したHEMT素子の静止ドレイン電流ダイナミクスを示すグラフである。
【
図7B】
図7Aのグラフに示される静止ドレイン電流ダイナミクスを要約する表である。
【
図8A】本開示のHEMT素子のアルミニウムドーパントの代わりに鉄の深トラップを有する、同様に構造化した素子のダイナミクスを示すグラフである。
【
図8B】
図8Aのグラフに示される静止ドレイン電流ダイナミクスを要約する表である。
【
図9】本開示に従って無線周波数信号を増幅するように構成される増幅素子として、一対のHEMT素子が利用される増幅器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に記載する実施形態は、当業者が実施形態を実践することを可能にするための必要な情報を表し、実施形態を実践する最良の形態を示す。添付図面に照らして以下の説明を読むと、当業者は、本開示の概念を理解し、本明細書では詳細に取り上げられていないこれらの概念の応用例を認識するであろう。これらの概念および応用例は、本開示および添付の特許請求の範囲の範疇内にあることが理解されるべきである。
【0010】
本明細書では、様々な要素を説明するために、第1、第2などの用語が使用され得るが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素が第2の要素と称され得、同様に、第2の要素が第1の要素と称され得る。本明細書で使用されるとき、「および/または」という用語は、関連する列記された項目のうちの1つ以上の任意のおよびすべての組み合わせを含む。
【0011】
層、領域、または基板などの要素が、別の要素の「上に」ある、または「上へ」延在していると称される場合、別の要素の直上にあり得るか、もしくは直上に延在し得るか、または介在する要素も存在し得ることが理解されるであろう。対照的に、要素が他の要素の「直上に」ある、または「直上へ」延在していると称される場合、介在する要素は存在しない。同様に、層、領域、または基板などの要素が、別の要素を「覆う」、または別の要素を「覆って」延在していると称される場合、他の要素を直接覆い得るか、もしくは直接覆って延在し得るか、または介在する要素も存在し得ることが理解されるであろう。対照的に、要素が、別の要素を「直接覆う」、または「直接覆って」延在していると称される場合、介在する要素は存在しない。また、要素が別の要素に「接続されている」、または「結合されている」と称される場合、他の要素に直接接続され得るか、もしくは結合され得るか、または介在する要素が存在し得ることも理解されるであろう。対照的に、要素が、別の要素に「直接接続される」、または「直接結合される」と称される場合、介在する要素は存在しない。
【0012】
「下側」もしくは「上側」、または「上部」もしくは「下部」、または「水平」もしくは「垂直」などの相対語は、本明細書では、図に例示されるときに、ある要素、層、または領域と、別の要素、層、または領域との関係を説明するために使用され得る。これらの用語および上で考察される用語は、図に表される配向に加えて、素子の異なる配向を包含することを意図することが理解されるであろう。
【0013】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本開示を限定することを意図しない。本明細書で使用されるとき、別途文脈が明確に指示しない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数形も含むことを意図する。本明細書で使用されるとき、「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、および/または「含んでいる(including)」という用語は、述べられる特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を除外しないことがさらに理解されるであろう。
【0014】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、本明細書および関連する技術の文脈におけるそれらの意味と矛盾しない意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書に明示的に定義されない限り、理想化された意味または過度に形式的な意味に解釈されないことがさらに理解されるであろう。
【0015】
実施形態は、本開示の実施形態の概略図を参照して本明細書で説明される。したがって、層および要素の実際の寸法は、異なる場合があり、製造技術および/または公差の結果として、例示の形状からの変形が予想される。例えば、正方形または長方形として例示される、または説明される領域は、丸み付けされた、または湾曲した特徴を有することができ、直線として示される領域は、いくつかの不規則性を有し得る。したがって、図に例示される領域は、概略的なものであり、それらの形状は、素子の領域の正確な形状を例示することを意図せず、本開示の範囲を限定することを意図しない。追加的に、構造または領域のサイズは、例示的な目的で、他の構造または領域に対して誇張される場合があり、したがって、本主題の一般的な構造体を示すために提供され、尺度通りに描かれている場合、または描かれていない場合がある。図の間の共通の要素は、本明細書で共通の要素番号によって示され得、その後に再度説明されない場合がある。
【0016】
非ドープ窒化ガリウム(GaN)バッファは、エピタキシャル成長中の2つの既知の浅ドナーであるシリコン(Si)または酸素(O)の望ましくない侵入により、通常はn型である。n型GaNバッファは、非常に劣った無線周波数(RF)性能を有する漏れやすいGaN電界効果トランジスタ(FET)素子をもたらす。
【0017】
GaNバッファの漏れを低減させるために、素子の技術者らは、成長中に深トラップを導入する。エピタキシャル成長中にこの目的のために使用される2つの最も一般的な深準位トラップは、炭素および鉄である。例えば、鉄は、比較的速いトラップであるが、成長メモリを示し、すなわち、バッファ内の鉄の組み込みを急に切り替えることができない。これは、必要とされるよりも多くの深準位トラップをバッファに加えなければならないといった、不利益な結果をもたらす。対照的に、炭素は、より遅いトラップである。炭素は、成長メモリを示さないが、バッファ内の炭素混入量は、温度、成長率、およびV/III族の比率を含む成長条件によって制御される。窒化ガリウムバッファの最も高い結晶品質を達成するための最適化された成長窓が相対的に小さいとすれば、所望のレベルへの炭素ドーピングの制御は、非常に困難になる。
【0018】
深準位トラップは、高電子移動度トランジスタ素子のドレインとソース側との間の漏れを抑制するといった正の特性を有し、これは、より高性能なRFデバイスを生成する。深準位トラップは、受信事象および送信事象を受けたときに、遅い脱トラッピングといった負の特性を有し、これは、素子の静止ドレイン電流状態の望ましくないダイナミクスを作り出す。
【0019】
受信および送信の切り替え事象におけるダイナミクスは、素子の動作が進行して定常状態の静止ドレイン電流に到達したときに素子が受ける相互コンダクタンスの動的な変化のため、時間領域二重化の基地局用途の状況において特に不利益である。相互コンダクタンスのこれらの動的な変化は、窒化ガリウム増幅器を線形化するために使用されるデジタル予歪アルゴリズムの適用を複雑にする。これは、線形化が困難であり、したがって情報送信能力が制限された高電子移動度トランジスタ素子をもたらす。
【0020】
最終的に、バッファ層内の深準位トラップの数およびそれらと関連付けられる脱トラッピング時間は、特定の素子をどのように使用することができるかを決定する。送信および受信の切り替えを伴わない用途の場合は、鉄の深準位トラップが、バッファ層に必要とされる絶縁量からバッファ層の成長温度および品質を切り離すので、深準位トラップが好ましい。送信および受信の切り替えを伴う用途の場合は、炭素ドープ層が多数の深準位トラップ(成長時の瞬間的な切り替え)を必要とせず、かつ送信されているベースバンド信号に干渉する脱トラッピングダイナミクス(非常に遅い脱トラッピング時間)をもたらさず、低品質を抑えて、制御可能なバッファ層がより少ないので、炭素ドープバッファ層が好ましい。
【0021】
本開示では、鉄の温度切り離しおよび高い制御性、ならびに炭素の成長の急な切り替えおよび遅い脱トラッピング時間を有する、新しい絶縁バッファが開示される。
【0022】
具体的には、希釈したアルミニウムドーパントを使用したバッファのドーピングを通して生成されるアルミニウム-酸素複合体および他の天然の欠陥を有する、典型的な炭素または鉄の深準位トラップの置換体が作製される。炭素または鉄の代わりにアルミニウムを使用する主な利点は、以下のとおりである。
【0023】
炭素と同様に、アルミニウム-酸素複合体は、非常に遅いトラップであり、これは、脱トラッピングダイナミクスおよび情報ダイナミクスの任意のエイリアシングを防止する。また、炭素と同様に、アルミニウム-酸素複合体のプロファイルは、急激に変化させることができ、それによって、典型的に使用されるよりも多くのトラップを加える必要性を排除する。炭素とは対照的に、アルミニウム-酸素の制御は、他の成長条件を変化させることなく、トリメチルアルミニウムの流れを通して達成することができる。トリメチルアルミニウムの流れによるアルミニウム-酸素の制御は、バッファの成長条件から深準位トラップの侵入を切り離し、したがって、バッファ全体の品質が保持される。
【0024】
簡潔には、炭素および鉄とアルミニウムとの交換は、トラップの数を制御するために成長条件を使用しない、より多くの製造可能な成長プロセスを通して制御される優れた送信/受信切り替え特性を有する、低濃度の深準位トラップ素子を生成する。
【0025】
図1は、本開示に従って構造化される高電子移動度トランジスタ(HEMT)素子10の断面図である。HEMT素子10は、基板12と、基板12を覆うエピタキシャル層14と、有する。エピタキシャル層14は、バッファ層16と、バッファ層16を覆うチャネル層18と、チャネル層18を覆うバリア層20と、を含む。HEMT素子10はまた、エピタキシャル層14の表面24に配置されるゲート接点22も含む。エピタキシャル層14の表面24を覆って配置されるソース接点26と、エピタキシャル層18の表面24に配置されるドレイン接点28と、をさらに含み、ソース接点26およびドレイン接点28は、ゲート接点22から、かつ互いに離間される。例示的な実施形態では、バッファ層16は、アルミニウムを含むドーパント30を有する窒化ガリウムで作製される。例示的な実施形態のいくつかでは、ドーパント30によるバッファ層16内のアルミニウムの濃度は、0.5%~3%である。例示的な実施形態のうちのいくつかの他のものでは、ドーパント30によるバッファ層16内のアルミニウムの濃度は、0.5%~0.75%である。例示的な実施形態のうちのさらに他のものでは、ドーパント30によるバッファ層16内のアルミニウムの濃度は、0.75%~1.25%である。例示的な実施形態のうちのさらに他のものでは、ドーパント30によるバッファ層16内のアルミニウムの濃度は、1.25%~2%である。例示的な実施形態のうちのさらなるものでは、ドーパント30によるバッファ層16内のアルミニウムの濃度は、2%~3%である。
【0026】
いくつかの例示的な実施形態では、
図2に表されるように、バッファ層16は、非ドープ領域32およびアルミニウムを含むドーパント30を有する第1のドープ領域34に横方向に分割される。
図3に表されるように、他の例示的な実施形態では、バッファ層16は、
図3において文字Xで表される、非アルミニウムドーパント38を有する第2のドープ領域36を有する。これらの例示的な実施形態では、非ドープ領域32は、チャネル層18と隣接し、第1のドープ領域34は、非ドープ領域32と第2のドープ領域34との間に挟まれる。いくつかの例示的な実施形態では、非アルミニウムドーパント38は、炭素である。他の例示的な実施形態では、非アルミニウムドーパント38は、鉄である。
【0027】
図4は、電界効果トランジスタの典型的な半導体構造のバンド図である。意図せずに存在するドナー状態のエネルギーに留意されたい。黒色の線は、バッファを絶縁する、意図的に加えられた深トラップを表す。意図的に加えられた深トラップの数は、意図せずに存在するドナー状態の深トラップの数よりも多くなければならない。そうでない場合、バッファは、伝導性となり、RF用途に使用することができない。
【0028】
図5は、実線のプロファイルによって表される、鉄トラップを使用したGaNバッファの典型的な深トラッププロファイルである。成長メモリ効果により、鉄の濃度は、急激に低下し得ない。
図5に破線で示される理想的なトラッププロファイルは、急なプロファイルを有する。このより急なプロファイルは、炭素によって、またはアルミニウム希釈GaNバッファ中に存在するアルミニウム-酸素複合体を使用して達成することができる。しかしながら、炭素を使用することは、とりわけバッファに構築された電界効果トランジスタのブレークダウンに影響を及ぼす、成長条件の変更を必要とする。
【0029】
図6Aは、
図6Bおよび
図6Cに示されるゲート電圧制御スイッチとして動作させたときの、HEMT素子10のドレイン電流ダイナミクスを示す。ゲート電圧が深いピンチオフにあるとき、いかなるドレイン電流もチャネル層18を通って循環していない。バッファ16内のすべてのトラップ(黒色の丸)は、
図6Cに示されるように充填される。
【0030】
図6Aに示されるように、ゲート電圧が状態(1)から状態(2)へと増加すると、ドレインからソースへと流れるドレイン電流が増加する。トラップは、脱トラップに一定の時間がかかるので、定常状態(3)への増加は、瞬間的ではない。デジタル予歪線形化を困難にするのは、この受信-送信の切り替えに関するドレイン電流の動的な変動である。GaNバッファ中の4%希釈Alドーパントなどの、トラップが多すぎる場合は、状態(2)のドレイン電流開始点が非常に低く、素子を線形化することが困難である。
【0031】
図7Aは、48Vのドレイン電圧(VD)において-4V~-10Vのゲート電圧(VG)の5msで受信-送信ダイナミクスを受けたときの、2%希釈Alドーパントを有するGaNバッファを使用したHEMT素子10の静止ドレイン電流ダイナミクスを示すグラフである。
図7Bの表は、
図7Aに表される静止ドレイン電流ダイナミクスを要約する。比較のために、
図8Aは、HEMT素子10のアルミニウムドーパントの代わりに鉄の深トラップを有する、同様に構造化された素子のダイナミクスを示すグラフである。当業者は、アルミニウムドープバッファが、非常に改善されたダイナミクスを示すことを認識するであろう。
図8Bの表は、
図8Aに示される静止ドレイン電流ダイナミクスを要約する。
【0032】
図9は、RF信号を増幅するように構成される増幅素子として、一対のHEMT素子10-1および10-2が利用される増幅器40を示す。この例示的な実施形態では、増幅器は、HEMT素子10-1がキャリア増幅器として作動し、HEMT素子10-2がピーク増幅器として作動する、ドハティ増幅器である。この例示的な実施形態では、一対のHEMT素子10-1および10-2は、入力直交カプラ42と出力直交カプラ44との間に結合される。無線周波数信号入力端子46(RFIN)は、入力直交カプラ42の第1のポートP1に結合され、入力終端インピーダンス48は、直交カプラ42の第2のポートP2に結合される。入力終端インピーダンス50は、出力直交カプラ44の第3のポートP3に結合され、無線周波数信号出力端子52(RFOUT)は、出力直交カプラ44の第4のポートP4に結合される。
【0033】
追加的な利点のために、上述の態様のいずれかが、ならびに/または本明細書で説明される様々な別個の態様および特徴が組み合わされ得ることが想到される。本明細書でそれとは反対のことが示されない限り、本明細書で開示される様々な実施形態のいずれかが、1つ以上の他の開示される実施形態と組み合わされ得る。
【0034】
当業者は、本開示の好適な実施形態に対する改善および修正を認識するであろう。すべてのかかる改善および修正は、本明細書に開示される概念および以下の特許請求の範囲の範囲内であるとみなされる。