(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】4-1BBL(CD137L)及び/またはCD40Lをコードする組み換えMVAの腫瘍内及び/または静脈内投与によって、がんを治療する療法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20250127BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20250127BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20250127BHJP
A61K 39/21 20060101ALI20250127BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250127BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250127BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250127BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250127BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250127BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20250127BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250127BHJP
【FI】
A61K35/76
A61K38/17
A61K39/00 H
A61K39/21
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K45/00
A61K48/00
A61P35/00
A61P43/00 121
C12N7/01 ZNA
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2021527213
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2019081942
(87)【国際公開番号】W WO2020104531
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-10-18
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】ECACC 00083008
(73)【特許権者】
【識別番号】509296443
【氏名又は名称】バヴァリアン・ノルディック・アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ラウターバッハ・ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】ヒンターベルガー・マリア
(72)【発明者】
【氏名】メディナ・エチェベルス・ホセ
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/037124(WO,A1)
【文献】4-1BB ligand enhances tumor-specific immunity of poxvirus vaccines,Vaccine,2006年,Vol. 24, No. 23,p. 4975-4986,doi: 10.1016/j.vaccine.2006.03.042
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/76
A61P 35/00
A61K 45/00
A61P 43/00
A61K 39/395
C12N 7/01
C12N 15/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、(a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、(b)4-1BBLをコードする第2の核酸とを含み、対象に腫瘍内投与される、前記組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)、および
- 任意選択的に担体および/または薬学的に許容可能な希釈剤、
を含み、対象に腫瘍内投与される、医薬組成物。
【請求項2】
-
組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、(a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、(b)4-1BBLをコードする第2の核酸とを含み、対象に腫瘍内投与される、前記組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)、
- 少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニスト
、および
― 任意選択的
に担体および/または薬学的に許容可能な希釈剤との組み合わせ、
を含み、対象に腫瘍内投与される、医薬組成物。
【請求項3】
前記組み換え改変ワクシニアアンカラウイルス(MVA)が、
(c)CD40Lをコードする第3の核酸
をさらに含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
TAAをコードする第1の核酸が、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質をコードする、請求項1~3のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ERVタンパク質が、ヒト内在性レトロウイルスK(HERV-K)ファミリーに由来し、HERV-K-env及びHERV-K-gagから選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記TAAが、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER-2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質1(TRP2)、Brachyury、FOLR1、PRAME、HERV-K-env、HERV-K-gag、内在性レトロウイルス(ERV)抗原Gp70、p15、MEL及びこれらを組み合わせたものからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記組み換えMVAを得るために使用されるMVAが、European Collection of Cell Cultures(ECACC)に、番号V00083008で寄託されたMVA-BNである、請求項1~6のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは前記免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのアンタゴニストまたはアゴニストから選択されている、請求項
2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
腫瘍内投与により対象における腫瘍を治療するための医薬の製造に使用するためのものである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項10】
組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、(a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、(b)4-1BBLをコードする第2の核酸とを含み、対象に腫瘍内投与される、前記組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)の、腫瘍内投与により、がん性腫瘍において炎症応答を増強するため、腫瘍サイズを縮小させるためおよび/またはがん性腫瘍を有する対象において生存率を上昇させるための医薬の製造に
おける使用。
【請求項11】
前記組み換え改変ワクシニアアンカラウイルス(MVA)が、
(c)CD40Lをコードする第3の核酸
をさらに含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
TAAをコードする第1の核酸が、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質をコードする、請求項10または11に記載の使用。
【請求項13】
前記ERVタンパク質が、ヒト内在性レトロウイルスK(HERV-K)ファミリーに由来し、HERV-K-env及びHERV-K-gagから選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記TAAが、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER-2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質1(TRP2)、Brachyury、FOLR1、PRAME、HERV-K-env、HERV-K-gag、内在性レトロウイルス(ERV)抗原Gp70、p15、MEL及びこれらを組み合わせたものからなる群から選択される、請求項10~13のいずれか1つに記載の使用。
【請求項15】
前記組み換えMVAを得るために使用されるMVAが、European Collection of Cell Cultures(ECACC)に、番号V00083008で寄託されたMVA-BNである、請求項10~14のいずれか1つに記載の使用。
【請求項16】
腫瘍内投与により、がん性腫瘍において炎症応答を増強するため、腫瘍サイズを縮小させるためおよび/またはがん性腫瘍を有する対象において生存率を上昇させるための医薬の製造に使用するための、請求項
1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項17】
腫瘍内投与により、がん性腫瘍において炎症応答を増強するため、腫瘍サイズを縮小させるためおよび/またはがん性腫瘍を有する対象において生存率を上昇させるための医薬の製造に使用するための、請求項
2に記載の医薬組成物の使用。
【請求項18】
- 組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、(a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、(b)4-1BBLをコードする第2の核酸と、(c)CD40Lをコードする第3の核酸とを含み、対象に腫瘍内投与される、前記組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)、および
- 任意選択的に担体および/または薬学的に許容可能な希釈剤、
を含み、対象に腫瘍内投与される、医薬組成物。
【請求項19】
- 組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、(a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、(b)4-1BBLをコードする第2の核酸と、(c)CD40Lをコードする第3の核酸とを含み、対象に腫瘍内投与され、TAAをコードする第1の核酸が、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質をコードする、前記組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)、
- 少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニスト
、および
- 任意選択的
に担体および/または薬学的に許容可能な希釈剤
、
の組み合わせを含み、対象に腫瘍内投与される、医薬組成物。
【請求項20】
前記ERVタンパク質が、ヒト内在性レトロウイルスK(HERV-K)ファミリーに由来し、HERV-K-env及びHERV-K gagから選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記TAAが、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER-2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質1(TRP2)、Brachyury、FOLR1、PRAME、HERV-K-env、HERV-K-gag、内在性レトロウイルス(ERV)抗原Gp70、p15、MEL及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項19または20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記組み換えMVAを得るために使用されるMVAが、European Collection of Cell Cultures(ECACC)に、番号V00083008で寄託されたMVA-BNである、請求項19~21のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは前記免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのアンタゴニストまたはアゴニストから選択される、請求項19
~22のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項24】
腫瘍内投与により対象における腫瘍を治療するための医薬の製造に使用するためのものである、請求項19
~23のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項25】
組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、(a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、(b)4-1BBLをコードする第2の核酸と、(c)CD40Lをコードする第3の核酸とを含み、対象に腫瘍内投与され、TAAをコードする第1の核酸が、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質をコードする、前記組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)の、腫瘍内投与により、がん性腫瘍において炎症応答を増強するため、腫瘍サイズを縮小させるためおよび/またはがん性腫瘍を有する対象において生存率を上昇させるための医薬の製造における
使用。
【請求項26】
前記ERVタンパク質が、ヒト内在性レトロウイルスK(HERV-K)ファミリーに由来し、HERV-K-env及びHERV-K gagから選択される、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記TAAが、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER-2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質1(TRP2)、Brachyury、FOLR1、PRAME、HERV-K-env、HERV-K-gag、内在性レトロウイルス(ERV)抗原Gp70、p15、MEL及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25または26に記載の使用。
【請求項28】
前記組み換えMVAを得るために使用されるMVAが、European Collection of Cell Cultures(ECACC)に、番号V00083008で寄託されたMVA-BNである、請求項25~27のいずれか1つに記載の使用。
【請求項29】
腫瘍内投与により、がん性腫瘍において炎症応答を増強するため、腫瘍サイズを縮小させるためおよび/またはがん性腫瘍を有する対象において生存率を上昇させるための医薬の製造における、請求項18に記載の医薬組成物の使用。
【請求項30】
腫瘍内投与により、がん性腫瘍において炎症応答を増強するため、腫瘍サイズを縮小させるためおよび/またはがん性腫瘍を有する対象において生存率を上昇させるための医薬の製造における、請求項19に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんを治療する療法に関するものであり、その治療は、4-1BBL(CD137L)をコードする核酸を含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスを静脈内投与または腫瘍内投与することを含む。組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルス(組み換えMVA」または「rMVA」ともいう)は、本明細書で使用する場合、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むMVAを指す。より具体的な態様では、本発明は、TAAをコードする核酸と、4-1BBLをコードする核酸とを含む組み換えMVAの静脈内投与または腫瘍内投与を含む。追加の態様では、本発明は、TAAをコードする核酸と、CD40Lをコードする核酸とを含む組み換えMVAの静脈内投与または腫瘍内投与を含む。追加の態様では、本発明は、TAA、4-1BBL(CD137L)及びCD40Lをコードする核酸を含む組み換えMVAの静脈内投与及び/または腫瘍内投与を含む。
【背景技術】
【0002】
組み換えポックスウイルスは、感染性生物に対する免疫療法ワクチンとして、さらに最近では、腫瘍に対する免疫療法ワクチンとして使用されてきた(Mastrangelo et al.(2000)J Clin Invest.105(8):1031-1034)。
【0003】
感染症及びがんに対する免疫療法ワクチンとして有用であることが証明されているポックスウイルス株の1つは、改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルス(単に「MVA」と称する場合もある)である。MVAは、ニワトリ胚線維芽細胞で、ワクシニアウイルスのアンカラ株(CVA)を516代連続継代することによって作られた(論評については、Mayr et al.(1975)Infection 3:6-14を参照されたい)。これらの長期継代により、得られたMVAウイルスのゲノムは、その欠失ゲノム配列が約31キロベースであったので、トリ細胞での複製に関して、宿主細胞が非常に限られているものとして説明された(Meyer et al.(1991)J.Gen. Virol.72:1031-1038)。様々な動物モデルにおいて、この得られたMVAが、際立って非病原性であることが示された(Mayr & Danner(1978)Dev. Biol.Stand.41:225-34)。より安全な製品(ワクチンまたは医薬など)の開発用に、安全性プロファイルが向上されたMVA株が説明されてきている(国際公開第WO2002042480号を参照されたい。例えば、米国特許第6,761,893号及び同第6,913,752号も参照されたいが、これらの特許はいずれも、参照により、本明細書に援用される)。このようなバリアントは、非ヒト細胞及び非ヒト細胞株、特にニワトリ胚線維芽細胞(CEF)においては、増殖的に複製できるが、ヒト細胞株(特にHeLa細胞株、HaCat細胞株及び143B細胞株を含む)においては複製能力がない。このような株は、例えば、著しく免疫力が低下しており、複製型ウイルスに対する感受性が高いトランスジェニックマウスモデルAGR129のような特定のマウス株においても、インビボでの増殖的複製が不可能である(米国特許第6,761,893号を参照されたい)。このようなMVAバリアント及びその誘導体(組み換え体を含む)は、「MVA-BN」と称され、説明されている(国際公開第WO2002/042480号を参照されたい。例えば、米国特許第6,761,893号及び同第6,913,752号も参照されたい)。
【0004】
腫瘍関連抗原(TAA)をコードするポックスウイルスベクターを用いると、がん患者の腫瘍サイズを縮小させ、全生存率を向上させる成果が見られることが示されている(例えば、WO2014/062778を参照されたい)。がん患者に、HER2、CEA、MUC1及び/またはBrachyuryのようなTAAをコードするポックスウイルスベクターを投与すると、そのがんと闘うために、その患者で、活発かつ特異的なT細胞応答が生じることが示されている(上記文献を参照されたい。Guardino et al.((2009)Cancer Res.69(24),doi 10.1158/0008-5472.SABCS-09-5089)、Heery et al.(2015)JAMA Oncol.1:1087-95も参照されたい)。
【0005】
多くのがん細胞及び腫瘍細胞上で発現することが見出されたTAAの一種は、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質である。ERVは、以前は外来性であったレトロウイルスの残骸であって、宿主の生殖系列に侵入して、それ以降、遺伝的集団にわたり垂直伝搬されてきたものである(Bannert et al.(2018)Frontiers in Microbiology,Volume 9,Article 178を参照されたい)。ERVに誘導される遺伝子組み換えイベント、及び正常細胞遺伝子の調節障害には、腫瘍の形成に寄与する作用があることが立証されている(上記文献を参照されたい)。さらに、特定のERVタンパク質に発がん特性がある証拠がある(上記文献を参照されたい)。ERVは、例えば乳房、卵巣、メラノーマ、前立腺、膵臓及びリンパ腫を含む多種多様ながんで発現することが見出されている。(例えば、Bannert et al.(2018)Front. Microbiol.9:178、Cegolon et al.(2013)BMC Cancer 13:4、Wang-Johanning et al.(2003)Oncogene 22:1528-35、Wang-Johanning et al.(2007)Int.J.Cancer 120:81-90、Wang-Johanning et al.(2008)Cancer Res.68:5869-77、Wang-Johanning et al.(2018)Cancer Res.78(13 Suppl.),AACR Annual Meeting April 2018,Abstract 1257、Contreras-Galindo et al.(2008)J.Virol.82:9329-36、Schiavetti et al.(2002)Cancer Res.62:5510-16、Maliniemi et al.(2013)PLoS One 8:e76281、Fava et al.(2017)Genes Dev.31:34-45、Muster et al.(2003)Cancer Res.63:8735-41、Buscher et al.(2005)Cancer Res.65:4172-80、Serafino et al.(2009)Expt’l. Cell Res.315:849-62、Iramaneerat et al.(2011)Int.J.Gynecol. Cancer 21:51-7、Ishida et al.(2006)Cancer Sci.97:1139-46、Goering et al.(2011)Carcinogenesis 32:1484-92、Agoni et al.(2013)Front. Oncol.9:180、Li et al.(2017)J.Mol.Diagn.19:4-23を参照されたい。)
【0006】
MVAのようなポックスウイルスは、CD40リガンド(CD40L)のようなCD40アゴニスト(WO2014/037124を参照されたい)、または4-1BBリガンド(4-1BBL)のような4-1BBアゴニスト(Spencer et al.(2014)PLoS One 9:e105520)と組み合わせると、TAAによるその効果に加えて、有効性が増強されることが示されている。
【0007】
CD40/CD40Lは、腫瘍壊死因子受容体/腫瘍壊死因子(「TNFR/TNF」)スーパーファミリーのメンバーである。CD40が、B細胞、マクロファージ及びDCを含む多くの種類の細胞上で構成的に発現するのに対して、そのリガンドであるCD40Lは、主に活性化CD4+ T細胞上に発現する(Lee et al.(2002)J.Immunol.171(11):5707-5717、Ma and Clark(2009)Semin. Immunol.21(5):265-272)。感染または免疫後の早い段階における、DCとCD4+ T細胞との同族相互作用により、DCに、CD8+ T細胞応答をプライミングすることが「許諾」される(Ridge et al.(1998)Nature 393:474-478)。DCへの許諾により、共刺激分子がアップレギュレートされ、DCの生存率が上昇し、クロスプレゼンテーション能が向上する。このプロセスは主に、CD40/CD40L相互作用によって媒介されるが(Bennet et al.(1998)Nature 393:478-480、Schoenberger et al.(1998)Nature 393:480-483)、CD40/CD40Lに依存しない機序も存在する(CD70、LT.ベータ.R)。興味深いことに、DC上に発現したCD40Lと、CD8+ T細胞上に発現したCD40との直接的な相互作用も示唆されており、ヘルパーに依存しないCTL応答が生じることに対する考え得る説明が提示されている(Johnson et al.(2009)Immunity 30:218-227)。
【0008】
4-1BB/4-1BBLは、TNFR/TNFスーパーファミリーのメンバーである。4-1BBLは、活性化B細胞、単球及びDCで発現する共刺激リガンドである。4-1BBは、ナチュラルキラー(NK)細胞及びナチュラルキラーT(NKT)細胞、Treg、ならびにDC、単球及び好中球を含むいくつかの自然免疫細胞集団によって構成的に発現される。興味深いことに、4-1BBは、活性化T細胞上で発現するが、休止T細胞では発現しない(Wang et al.(2009)Immunol. Rev.229:192-215)。4-1BBの結合により、インターフェロンγ(IFN-γ)及びインターロイキン2(IL-2)の増殖及び産生が誘導されるとともに、Bcl-xLのような抗アポトーシス分子のアップレギュレーションを通じて、T細胞の生存が増強される(Snell et al.(2011)Immunol. Rev.244:197-217)。重要なことに、4-1BBが刺激されると、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の増強を通じて、NK細胞の増殖、IFN-γの産生及び細胞溶解活性が増強される(Kohrt et al.(2011)Blood 117:2423-32)。
【0009】
4-1BB/4-1BBLの免疫軸は現在、様々な免疫療法策によって探求されている。例として、自家キメラ抗原受容体(CAR)T細胞の移植では、大細胞型B細胞リンパ腫において臨床効果が見られ、2017年にFDAから認可された。腫瘍特異的抗体に由来する細胞外ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメインCD3ζ、及び共刺激モチーフ4-1BBを組み合わせたCARを患者の自家T細胞に導入する。4-1BBの付加は、CAR T細胞のインビボ持続性及び抗腫瘍傷害性に不可欠である(Song et al.(2011)Cancer Res.71:4617e27)。現在、4-1BBを標的とする抗体について研究されている。
【0010】
いくつかの研究で、4-1BB/4-1BBL経路を標的とするアゴニスト抗体は、単独療法として使用すると、抗腫瘍活性を見せることが示されている(Palazon et al.(2012)Cancer Discovery 2:608-23)。4-1BBを標的とするアゴニスト抗体(BMSのウレルマブ、Pfizerのウトミルマブ)は現在、臨床開発段階にある。近年、4-1BBLを他の療法と組み合わせた研究は、成果が様々である。例えば、MC38(マウス腺癌)腫瘍を以前から有するが、B16メラノーマ腫瘍を有さないマウスに、CTLA-4に対する抗体及び抗4-1BBを投与したところ、CD8+ T細胞依存性の有意な腫瘍退縮が観察されたとともに、これらの腫瘍に対する免疫が長期に持続した。別の例では、抗4-1BB(Bristol-Myers Squibb(BMS)-469492)で処置したところ、M109腫瘍の退縮は中程度にしか見られなかったが、EMT6腫瘍の成長は有意に遅延された。
【0011】
腫瘍微小環境は、浸潤免疫細胞から、がん細胞、細胞外マトリックス、内皮細胞、及び腫瘍の進行に影響を及ぼすその他の関与細胞まで、様々な種類の細胞で構成されている。この複雑に絡み合った平衡状態は、患者ごとに変化するのみならず、同じ対象の病変内で変化する(Jimenez-Sanchez et al.(2017)Cell 170(5):927-938)。腫瘍浸潤リンパ球(TIL)及びプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現に基づき、腫瘍を層別化したことにより、がんに対する客観的奏効を得るための炎症環境の重要性が浮かび上がっている(Teng et al.(2015)Cancer Res.75(11):2139-45)。Cancer Genome Atlas(TCGA)の遺伝子発現プロファイルのがん種横断的解析により、腫瘍炎症シグネチャーが、免疫療法に対する客観的奏効と相関することが裏付けられている(Danaher et al.(2018)J.Immunother. Cancer 6(1):63)。
【0012】
近年、がん療法でのワクチン投与経路を改善する試みは、皮下注射から静脈内投与経路に拡大されてきている。例えば、異種抗原をコードするMVAワクチンの静脈内投与により、その抗原に対する強力な特異的免疫応答を誘導できたことが示された(WO2014/037124を参照されたい)。さらに、そのMVAワクチンにCD40Lを含めた場合に、免疫応答が増強した。
【0013】
細菌由来の物質(コーリートキシン)を腫瘍病変に接種すると、治癒応答が得られることが長きにわたり伝えられ、抗腫瘍応答を促す際の局所感染の役割が浮き彫りになっている(Coley(1906)Proc.R.Soc.Med.3(Surg Sect):1-48)。病原体関連分子パターン(PAMP)、細菌産物及びウイルスを腫瘍病変に局所投与すると、i)I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン及び腫瘍壊死因子α(TNF-α)のような炎症誘発性サイトカインの分泌、ii)アラーミン及び熱ショックタンパク質のような危険シグナル、ならびにiii)腫瘍抗原の放出を含むイベントのカスケードをその投与後に起こす抗微生物プログラムが誘導される(Aznar et al.(2017)J.Immunol.198:31-39)。未処置の腫瘍病変で退縮が評価されてきたが((2018)Cancer Discov. 8(6):67)、免疫療法剤を腫瘍に局所投与すると、全身性免疫応答が誘導される。
【0014】
ここ数年、MVAワクチンの腫瘍内投与について報告されている。GM-CSFを発現するMVAの腫瘍内注射、及びDNAワクチンによる免疫により、HPV16 E7腫瘍を有するマウスの生存期間が長くなったことが見出された(Nemeckova et al.(2007)Neoplasma 54:4)。MVAの腫瘍内注射に関する他の研究では、膵臓腫瘍の成長阻害を示すことはできなかった(White et al.(2018)PLoS One 13(2):e0193131)。熱不活化MVAの腫瘍内注射により、危険シグナルであるI型インターフェロンの産生と、樹状細胞による抗原クロスプレゼンテーションに依存する抗腫瘍免疫応答が誘導された(Dai et al.(2017)Sci.Immunol.2(11):eaal1713)。
【0015】
能動免疫療法及びがんワクチンを含むさらなるがん治療に対するアンメットメディカルニーズがかなり存在するのは明らかである。加えて、患者の免疫応答の複数の領域で、免疫応答の増強を誘導できる療法に対するニーズが存在する。多くの態様では、本開示の実施形態は、現在利用可能であるがん治療を増加及び改善させるワクチン、療法及び併用療法を提供することによって、これらのニーズに対応する。
【発明の概要】
【0016】
本発明の様々な実施形態では、腫瘍関連抗原(TAA)と4-1BBリガンド(本明細書では、41BBL、4-1BBLまたはCD137Lともいう)とをコードする組み換えMVAは、腫瘍内投与または静脈内投与すると、がん患者の治療の効果を高め、及び/またはその治療を増強することが示された。より具体的には、本開示の様々な実施形態では、組み換えMVAを単独で投与した場合と比べて、腫瘍における炎症が増大し、腫瘍における制御性T細胞(Treg)が減少し、腫瘍におけるT細胞の疲弊が低減され、腫瘍特異的T細胞とNK細胞活性化が増加し、腫瘍体積の縮小が増大し、及び/またはがんである対象の生存率が上昇したことが確認された。
【0017】
本発明の様々な実施形態では、腫瘍関連抗原(TAA)とCD40リガンド(CD40L)とをコードする組み換えMVAは、腫瘍内投与または静脈内投与すると、がん患者の治療を増強することが確認された。より具体的には、本開示の様々な実施形態では、組み換えMVAを単独で投与した場合と比べて、腫瘍における炎症が増大し、腫瘍における制御性T細胞(Treg)が減少し、腫瘍におけるT細胞の疲弊が低減され、腫瘍特異的T細胞とNK細胞活性化が増加し、腫瘍体積の縮小が増大し、及び/またはがんである対象の生存率が上昇したことが確認された。
【0018】
追加の実施形態では、本発明は、4-1BBL(CD137L)をコードする核酸と、CD40Lをコードする核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスであって、静脈内投与及び/または腫瘍内投与すると、がん患者の治療を増強するMVAウイルスを含む。
【0019】
したがって、一実施形態では、本発明は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に腫瘍内投与することを含み、その組み換えMVAを腫瘍内投与すると、TAA及び抗原4-1BBLをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスを非腫瘍内注射する場合と比べて、その対象のそのがん性腫瘍における炎症応答が増強され、腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する方法を含む。
【0020】
追加の実施形態では、本発明は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に腫瘍内投与することを含み、その組み換えMVAを腫瘍内投与すると、TAA及び抗原CD40Lをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスを非腫瘍内注射する場合と比べて、その対象のそのがん性腫瘍における炎症応答が増強され、腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する方法を含む。
【0021】
追加の実施形態では、本発明は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸と、4-1BBL(CD137L)をコードする第3の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に腫瘍内投与及び/または静脈内投与することを含み、その組み換えMVAを投与すると、TAA、抗原CD40L及び抗原4-1BBLをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスを、異なる注射経路によって注射する(すなわち、非腫瘍内注射または非静脈内注射する)場合と比べて、その対象のそのがん性腫瘍における炎症応答が増強され、腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する方法を含む。
【0022】
追加の実施形態では、本発明は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に静脈内投与することを含み、その組み換えMVAを静脈内投与すると、TAA及び抗原4-1BBLをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスを非静脈内注射する場合と比べて、ナチュラルキラー(NK)細胞応答が増強され、そのTAAに特異的なCD8 T細胞応答が増強される方法を含む。
【0023】
追加の実施形態では、本発明は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に静脈内投与することを含み、その組み換えMVAを静脈内投与すると、TAA及び抗原CD40Lをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスを非静脈内注射する場合と比べて、ナチュラルキラー(NK)細胞応答が増強され、そのTAAに特異的なCD8 T細胞応答が増強される方法を含む。
【0024】
追加の実施形態では、本発明は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸と、4-1BBLをコードする第3の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に静脈内投与及び/または腫瘍内投与することを含み、その組み換えMVAを静脈内投与及び/または腫瘍内投与すると、TAAをコードする第1の核酸と、抗原CD40Lをコードする第2の核酸と、抗原4-1BBLをコードする第3の核酸とを含む組み換えMVAウイルスを非静脈内注射または非腫瘍内注射する場合と比べて、ナチュラルキラー(NK)細胞応答が増強され、そのTAAに特異的なCD8 T細胞応答が増強される方法を含む。
【0025】
さらに別の実施形態では、本発明は、対象のがん性腫瘍における炎症応答の増強を誘導する方法であって、その方法が、第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、抗原4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に腫瘍内投与することを含み、その組み換えMVAを腫瘍内投与すると、異種の腫瘍関連抗原及び抗原4-1BBLをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射によって生じる炎症応答と比べて、その腫瘍における炎症応答が増強される方法を含む。
【0026】
さらに別の実施形態では、本発明は、対象のがん性腫瘍における炎症応答の増強を誘導する方法であって、その方法が、第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、抗原CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に腫瘍内投与することを含み、その組み換えMVAを腫瘍内投与すると、異種の腫瘍関連抗原及び抗原CD40Lをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射によって生じる炎症応答と比べて、その腫瘍における炎症応答が増強される方法を含む。
【0027】
さらに別の実施形態では、本発明は、対象のがん性腫瘍における炎症応答の増強を誘導する方法であって、その方法が、第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、抗原CD40Lをコードする第2の核酸と、抗原4-1BBLをコードする第3の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に腫瘍内投与及び/または静脈内投与することを含み、その組み換えMVAを腫瘍内投与及び/または静脈内投与すると、異種の腫瘍関連抗原をコードする第1の核酸と、抗原CD40Lをコードする第2の核酸と、抗原4-1BBLをコードする第3の核酸とを含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射または非静脈内注射によって生じる炎症応答と比べて、その腫瘍における炎症応答が増強される方法を含む。
【0028】
様々な追加の実施形態では、本発明は、がんである対象を治療するための組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、b)4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAを提供する。
【0029】
様々な追加の実施形態では、本発明は、がんである対象を治療するための組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、b)CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAを含む。
【0030】
様々な追加の実施形態では、本発明は、がんである対象を治療するための組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、b)CD40Lをコードする第2の核酸と、c)4-1BBLをコードする第3の核酸とを含む組み換えMVAを含む。
【0031】
さらに別の実施形態では、抗原4-1BBLをコードする組み換えMVAは、チェックポイント阻害剤アンタゴニストの投与と組み合わせて、患者に腫瘍内投与すると、がん患者の治療を増強し、より具体的には、腫瘍体積の縮小を増大させ、及び/またはそのがん患者の生存率を上昇させる。
【0032】
さらに別の実施形態では、抗原CD40Lをコードする組み換えMVAは、チェックポイント阻害剤アンタゴニストの投与と組み合わせて、患者に腫瘍内投与すると、がん患者の治療を増強し、より具体的には、腫瘍体積の縮小を増大させ、及び/またはそのがん患者の生存率を上昇させる。
【0033】
さらに別の実施形態では、抗原CD40L及び4-1BBLをコードする組み換えMVAは、チェックポイント阻害剤アンタゴニストの投与と組み合わせて、患者に腫瘍内及び/または静脈内投与すると、がん患者の治療を増強し、より具体的には、腫瘍体積の縮小を増大させ、及び/またはそのがん患者の生存率を上昇させる。
【0034】
別の実施形態では、本発明の組み換えMVAは、その抗体の投与と同時またはその抗体の投与の後に投与する。より好ましい実施形態では、その組み換えMVAは、その抗体の後に投与する。
【0035】
別の実施形態では、本発明の組み換えMVAは、同じ投与経路(複数可)によって、その抗体の投与と同時またはその抗体の投与の後に投与する。別の実施形態では、その組み換えMVAは、1つもしくは複数の異なる投与経路によって、またはその抗体の投与の後に投与する。
【0036】
さらに別の実施形態では、本発明は、がん患者における抗体療法を増強する方法であって、その方法が、本発明の併用医薬をがん患者に投与することを含み、その併用医薬を投与すると、その抗体療法を単独で投与する場合と比べて、その抗体療法によって誘導される抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)が増強される方法を含む。
【0037】
好ましい実施形態では、その第1の核酸は、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質であるTAAをコードする。より好ましい実施形態では、そのERVタンパク質は、ヒト内在性レトロウイルスタンパク質K(HERV-K)ファミリーに由来する。より好ましい実施形態では、そのERVタンパク質は、HERV-Kエンベロープ及びHERV-K gagタンパク質から選択されている。
【0038】
好ましい実施形態では、その第1の核酸は、内在性レトロウイルス(ERV)ペプチドであるTAAをコードする。より好ましい実施形態では、そのERVペプチドは、ヒト内在性レトロウイルスタンパク質K(HERV-K)ファミリーに由来する。より好ましい実施形態では、そのERVペプチドは、HERV-Kエンベロープタンパク質(HERV-K-MEL)の偽遺伝子から選択されている。
【0039】
他の好ましい実施形態では、その第1の核酸は、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER-2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質1(TRP2)、Brachyury、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、葉酸受容体1(FOLR1)及びこれらを組み合わせたものからなる群から選択したTAAをコードする。
【0040】
1つ以上の好ましい実施形態では、その組み換えMVAは、MVA-BNまたはその誘導体である。
【0041】
様々な追加の実施形態では、本明細書に記載されている組み換えMVA及び方法は、免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストのいずれかと組み合わせて、がんである対象に投与する。さらなる実施形態では、本明細書に記載されている組み換えMVA及び方法は、TAAに特異的な抗体と組み合わせて、がんである対象に投与して、がんである対象を治療する。より好ましい実施形態では、本明細書に記載されている組み換えMVA及び方法は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSから選択した免疫チェックポイント分子のアンタゴニストまたはアゴニストと組み合わせて投与する。最も好ましい実施形態では、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストは、抗体を含む。最も好ましい実施形態では、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストは、PD-1抗体またはPD-L1抗体を含む。
【0042】
本発明のさらなる目的及び利点は、一部が下記の説明に示されており、一部は、その説明から明らかとなるか、または本発明を実施することにより認識し得る。本発明の目的及び利点は、添付の請求項で特に指摘されている要素及び組み合わせによって認識及び実現されることになる。
【0043】
添付の図面は、本明細書に援用され、本明細書の一部を成すが、本発明の1つ以上の実施形態を例示するとともに、その明細と併せて、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】MVA-OVA-4-1BBLに感染した腫瘍細胞によって、CD8 T細胞を4-1BBLの媒介により共刺激すると、DCの必要性なしに、サイトカインの産生に影響が及ぶことを示している。これに対して、MVA-OVA-CD40Lでは、DCの存在下でのみ、サイトカインの産生が増強される。実施例2に記載されているように、C57BL/6マウス由来の骨髄細胞を組み換えFlt3Lの存在下で14日間培養した後、樹状細胞(DC)を作製した。B16.F10細胞に、MVA-OVA、MVA-OVA-CD40LまたはMVA-OVA-4-1BBLを感染させ、感染した腫瘍細胞を回収し、指示されている場合には、DCの存在下で共培養した。ナイーブOVA(257-264)特異的CD8+ T細胞をOT-Iマウスから磁気精製し、上記の共培養物に加えた。細胞を培養し、Luminexによってサイトカイン濃度を解析するために、その上清を採取した。IL-6(
図1A)、GM-CSF(
図1B)、IL-2(
図1C)及びIFN-γ(
図1D)の上清濃度が示されている。データは、平均±標準誤差として示されている。
【
図2】MVA-OVA-4-1BBLに感染した腫瘍細胞は直接、すなわち、DCの必要性なしに、抗原特異的CD8 T細胞の、活性化エフェクターT細胞への分化を促すが、MVA-OVA-CD40Lに感染した腫瘍細胞の、CD40Lの媒介による共刺激は、DCの存在に依存することを示している。実施例3に記載されているように、C57BL/6マウス由来の骨髄細胞を組み換えFlt3Lの存在下で14日間培養した後、樹状細胞(DC)を作製した。B16.F10(メラノーマモデル)細胞に、MVA-OVA、MVA-OVA-CD40LまたはMVA-OVA-4-1BBLを感染させた。その翌日、感染した腫瘍細胞を回収し、(指示されている場合に)DCの存在下で共培養した。ナイーブOVA(257-264)特異的CD8+ T細胞をOT-Iマウスから磁気精製し、その共培養物を1:5の比率で加えた。細胞を37℃、5%CO2で48時間培養した。続いて、細胞を染色し、フローサイトメトリーによって解析した。
図2Aは、OT-I CD8+ T細胞(図では「CD8+」として示されている)上のT-betのGMFIを示しており、
図2Bは、OT-I CD8+ T細胞のCD44+ グランザイムB+ IFNγ+ TNFα+のパーセンテージを示している。データは、平均±標準誤差として示されている。
【
図3】CD40Lまたは4-1BBLのいずれかをコードするMVAに感染させると、腫瘍細胞株及びマクロファージにおける腫瘍細胞死が誘導されることを示している。実施例4に記載されているように、腫瘍細胞株B16.OVA(
図3A及び3B)、MC38(
図3C)ならびにB16.F10(
図3D)にベクターを、示されているMOIで、20時間感染させた。細胞の生存率について、フローサイトメトリーによって解析した。
図3A、3C、3D及び3Eは、死細胞のパーセンテージ(「Live/Dead+」)を示している。
図3B:
図3Aの上清中のHMGB1をELISAによって定量した。
図3E:骨髄由来マクロファージ(BMDM)を、示されているMOIで、20時間感染させた。細胞の生存率について、フローサイトメトリーによって解析した。データは、平均±標準誤差として示されている。
【
図4】rMVA-4-1BBLがインビボで、NK細胞の活性化を誘導することを示している。実施例5に記載されているように、生理食塩水、または5×10
7 TCID50の「rMVA」(=MVA-OVA)、「rMVA-4-1BBL」(=MVA-OVA-4-1BBL)もしくは5×10
7 TCID50のrMVAを200μgの抗4-1BBL抗体(クローンTKS-1)と組み合わせたもののいずれかで、C57BL/6マウス(n=5匹/群)を静脈内免疫した。24時間後、マウスを殺処分し、フローサイトメトリー解析のために、脾臓を処理した。CD69(A)及びCD70(B)の幾何平均蛍光強度(GMFI)が示されている。データは、平均±標準誤差として示されている。
【
図5】rMVA-4-1BBLによる免疫静脈内によって、インビボにおいて、血清IFN-γの分泌が促進されることを示している。実施例6に記載されているように、生理食塩水、または5×10
7 TCID50の「rMVA」(=MVA-OVA)、「rMVA-4-1BBL」(=MVA-OVA-4-1BBL)もしくは5×10
7 TCID50のrMVAを200μgの抗4-1BBL抗体(クローンTKS-1)と組み合わせたもののいずれかで、C57BL/6マウス(n=5匹/群)を静脈内免疫した。
図5A:6時間後に、マウスから採血を行い、血清を全血から単離し、血清中のIFN-γ濃度をLuminexによって求めた。
図5B:3時間後、21時間後及び45時間後に、マウスに、ブレフェルジンAを静脈内注射して、タンパク質の分泌を停止した。免疫から6時間後、24時間後及び48時間に、マウスを殺処分し、脾細胞をフローサイトメトリーによって解析した。データは、平均±標準誤差として示されている。
【
図6】B16.OVA腫瘍担持マウスにおいて、「rMVA-4-1BBL」(=MVA-OVA-4-1BBL)で静脈内免疫すると、血清IFN-γの分泌が促進されることを示している。実施例7に記載されているように、B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目に、PBS、または5×10
7 TCID50のrMVA(=MVA-OVA)もしくはrMVA-4-1BBLをi.v.(静脈内)投与した。6時間後に、マウスから採血を行い、血清を全血から単離し、血清中のIFN-γ濃度をLuminexによって求めた。データは、平均±標準誤差として示されている。
【
図7】「rMVA-4-1BBL」(=MVA-OVA-4-1BBL)で静脈内プライム免疫及び静脈内ブースト免疫を行った後、抗原特異的CD8+ T細胞及びベクター特異的CD8+ T細胞が増加することを示している。実施例8に記載されているように、C57BL/6マウス(n=4匹/群)に、生理食塩水、または5×10
7 TCID50の「rMVA」(=MVA-OVA)、rMVA-4-1BBLもしくは5×10
7 TCID50のrMVAを200μgの抗4-1BBL抗体(クローンTKS-1)と組み合わせたもののいずれかで、静脈内プライム免疫を0日目に行い、ブースト免疫を41日目に行った。プライム免疫から6日目、21日目、35日目、48日目及び64日目に、マウスから採血を行い、末梢血のフローサイトメトリー解析を行った。
図7Aは、末梢血白血球(PBL)のうちの抗原(OVA)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示しており、
図7Bは、PBLのうちのベクター(B8R)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示している。プライム免疫から70日目に、マウスを殺処分した。脾臓を摘出し、フローサイトメトリー解析を行った。
図7Cは、生細胞のうちの抗原(OVA)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示しており、
図7Dは、生細胞のうちのベクター(B8R)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示している。データは、平均±標準誤差として示されている。
【
図8】4-1BBLをコードするMVAウイルスを静脈内注射すると、4-1BBLをコードしない組み換えMVAと比べて、抗腫瘍作用が増大することを示している。実施例9に記載されているように、B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目(黒い点線)に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-OVA(図では「rMVA」)もしくはMVA-OVA-4-1BBL(図では「rMVA-4-1BBL」)を静脈内投与した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
【
図9】4-1BBLまたはCD40LをコードするMVAウイルスを腫瘍内注射したところ、抗腫瘍作用が増強されたことを示している。実施例10に記載されているように、B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=4~5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目(黒い点線)、12日目及び15日目(灰色の破線)に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-OVA(図では「rMVA」として示されている)、MVA-OVA-CD40L(図では「rMVA-CD40L」として示されている)もしくはMVA-OVA-4-1BBL(図では「rMVA-4-1BBL」として示されている)を腫瘍内投与した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
【
図10】確立された大腸癌に対して、CD40LをコードするMVAウイルスを腫瘍内注射することによる抗腫瘍作用を示している。実施例11に記載されているように、MC38腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から14日目(黒い点線)、19日目及び22日目(黒い破線)に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-TAA(図では「rMVA」として示されている)もしくはMVA-TAA-CD40L(図では「rMVA-CD40L」として示されている)を腫瘍内(i.t.)投与した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。これらの実験では、組み換えMVAによってコードされるTAAには、抗原AH1A5、p15E及びTRP2が含まれていた。
【
図11】チェックポイントの遮断と、腫瘍標的化抗体が、rMVA-4-1BBL(本明細書では「MVA-OVA-4-1BBL」ともいう)の腫瘍内(i.t.)投与と相乗効果を発揮することを示している。実施例12に記載されているように、B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、指示されている場合(チェック印)には、200μgのIgG2a、抗TRP-1または抗PD-1抗体を腹腔内投与した。腫瘍の接種から13日目(黒い点線)、18日目及び21日目(灰色の破線)に、マウスをPBS、または5×10
7 TCID50のMVA-OVA-4-1BBLのいずれかで腫瘍内(i.t.)免疫した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
【
図12】MVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射すると、抗CD137抗体による治療よりも優れた抗腫瘍作用が得られることを示している。実施例13に記載されているように、C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.OVA細胞をs.c.(皮下)投与した。7日後、腫瘍の測定値が5×5mmを上回ったら、マウスを群分けし、PBS、5×10
7 TCID50のMVA-OVA-4-1BBLまたは10μgの抗4-1BB(3H3)抗体のいずれかを腫瘍内注射した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
図12Aには、腫瘍平均体積が示されている。
図12B:プライミングから12日目に、末梢血リンパ球をOVAデキストラマーで染色し、FACSによって解析した。CD8+ T細胞のうちのOVAデキストラマー+ CD44+ T細胞のパーセンテージが示されている。
【
図13】内在性レトロウイルス抗原Gp70をコードするMVAウイルスの静脈内注射の抗腫瘍作用を示している。実施例14に記載されているように、Balb/cマウスに、5×10
5個のCT26.wt細胞をs.c.(皮下)投与した。腫瘍の測定値が5×5mmを上回ったら、CT26.wt腫瘍担持マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から12日目に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA、rMVA-Gp70もしくはrMVA-Gp70-CD40Lをi.v.(静脈内)投与した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。示されているのは、腫瘍平均直径(
図13A)及び腫瘍平均体積(
図13B)である。
図13C:免疫から7日後に、血液細胞を再刺激したものであり、刺激後の血液中のCD8+ CD44+ IFN-γ+ 細胞のパーセンテージが示されている。
【
図14】内在性レトロウイルス抗原Gp70及びCD40LをコードするMVAウイルスの静脈内注射の抗腫瘍作用を示している。実施例15に記載されているように、C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.F10細胞をs.c.(皮下)投与した。7日後、腫瘍の測定値が5×5mmを上回ったら、B16.F10腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA、rMVA-Gp70もしくはrMVA-Gp70-CD40Lをi.v.(静脈内)投与した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。示されているのは、腫瘍平均体積(
図14A)と、免疫から7日後に、p15eペプチドで刺激した後の血液中のCD8+ CD44+ IFN-γ+ 細胞のパーセンテージである(
図14B)。
【
図15】IT免疫に対するサイトカイン/ケモカインMVA-BN骨格応答は、4-1BBLのアジュバント作用によって増大し得る。本明細書では、「アジュバント作用」とは、組み換えMVAの特定のコードタンパク質または成分によって、その組み換えMVAの他のコードタンパク質(複数可)または成分(複数可)がもたらす免疫応答が増大することであるように意図されている。この図においては、5×10
5個のB16.OVA細胞をC57BL/6マウスに皮下(s.c.)移植した(実施例23を参照されたい)。10日目に、マウスをPBS、または2×10
8 TCID50のMVA-BN、MVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内(i.t.)免疫した(n=6匹のマウス/群)。6時間後、腫瘍を摘出し、腫瘍溶解液を処理した。サイトカイン/ケモカインプロファイルをLuminexによって解析した。
図15には、免疫マウスにおいて、サイトカイン/ケモカインがアップレギュレートしたことが示されている。
【
図16】MVA-OVA-4-1BBLによって、腫瘍内(i.t.)免疫に対するサイトカイン/ケモカインの炎症誘発性応答が増大する。5×10
5個のB16.OVA細胞をC57BL/6マウスに皮下(s.c.)移植した(実施例23及び24を参照されたい)。10日目に、マウスをPBS、または2×10
8 TCID50のMVA-BN、MVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内(i.t.)免疫した(n=6匹のマウス/群)。6時間後、腫瘍を摘出し、腫瘍溶解液を処理した。サイトカイン/ケモカインプロファイルをLuminexによって解析した。
図16は、MVA-OVA-4-1BBLで免疫したマウスにおいて、MVA-BNの場合と比べてアップレギュレートするサイトカイン/ケモカインを示している。
【
図17】MVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した後の腫瘍微小環境(TME)及び腫瘍流入リンパ節(TdLN)のT細胞の定量解析及び定性解析である。C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。9~13日後、腫瘍の測定値が5×5mmを上回ったら、マウスを群分けし、PBS、2×10
8 TCID50のMVA-OVAまたはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかを腫瘍内注射した(実施例25を参照されたい)。免疫から1日後、3日後及び7日後に、マウスを殺処分し、腫瘍及び腫瘍流入リンパ節(TdLN)をコラゲナーゼ/DNaseで消化し、フローサイトメトリーによって解析した。腫瘍1mg当たり及びTdLN当たりのCD45+ 細胞、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞及びOVA特異的CD8+ T細胞の数が示されている。
【
図18】MVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した後のTME及び流入LNのT細胞の定量解析及び定性解析である。C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。9~13日後、腫瘍の測定値が5.5×5.5mmを上回ったら、マウスを群分けし、PBD、または2×10
8 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかを腫瘍内注射した(実施例26を参照されたい)。免疫から1日後、3日後及び7日後に、マウスを殺処分し、腫瘍及びTdLN(腫瘍流入リンパ節)をコラゲナーゼ/DNaseで消化し、フローサイトメトリーによって解析した。
図18A:腫瘍(左パネル)及びTdLN(右パネル)におけるOVA特異的CD8+ T細胞のうちのKi67+ 細胞のパーセンテージが示されている。
図18B:i.t.免疫から7日後の腫瘍におけるOVA特異的CD8+ T細胞のうちのPD1のGMFIが示されている。
図18C:i.t.免疫から7日後の腫瘍におけるOVA特異的Teff/Tregの比率が示されている。
【
図19】MVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した後のTME及び腫瘍流入リンパ節(TdLN)のNK細胞の定量解析及び定性解析である。C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。9~13日後、腫瘍の測定値が5.5×5.5mmを上回ったら、マウスを群分けし、PBS、または2×10
8 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかを腫瘍内注射した(実施例27を参照されたい)。免疫から1日後、3日後及び7日後に、マウスを殺処分し、腫瘍及び腫瘍流入リンパ節(TdLN)をコラゲナーゼ/DNaseで消化し、フローサイトメトリーによって解析した。腫瘍1mg当たり及びTdLN当たりのNK細胞数、ならびに腫瘍及びTdLN内のNK細胞のCD69、グランザイムB及びKi67表面マーカーのGMFIが示されている。
【
図20】MVA-OVA-4-1BBLに媒介される抗腫瘍作用のCD8 T細胞依存性である。C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBSまたは2×10
8 TCID
50のMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した(実施例28を参照されたい)。この1回目の注射から5日目及び8日目に、これらの腫瘍内(i.t.)注射を繰り返した(縦の破線)。加えて、1回目の免疫の1日前、1日後、4日後、7日後、11日後に、コントロール抗体であるIgG2bアイソタイプ(左及び中央のパネル)、または抗CD8抗体(2.43、右パネル)を腹腔内(i.p.)注射した(100μg/マウス)。腫瘍の成長を等間隔で測定したものであり、腫瘍平均直径が示されている。
【
図21-1】MVA-OVA及びMVA-OVA-4-1BBLの媒介による抗腫瘍作用のBatf3+ DC依存性である。C57BL/6マウスまたはBatf3-/- マウスに、5×10
5個のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後(縦の破線)、マウスを群分けし、PBS、または2×10
8 TCID50のMVA、MVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した(実施例29を参照されたい)。1回目の腫瘍内注射から5日目及び8日目に、このi.t.注射を繰り返した(縦の破線)。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
図21A:腫瘍平均直径が示されている。
図21B:1回目の免疫から11日後、血液を採取し、抗原特異的T細胞(すなわちOVA
257-264特異的T細胞)の存在について解析した。CD8+ T細胞におけるOVA特異的T細胞のパーセンテージが示されている。
【
図21-2】MVA-OVA及びMVA-OVA-4-1BBLの媒介による抗腫瘍作用のBatf3+ DC依存性である。C57BL/6マウスまたはBatf3-/- マウスに、5×10
5個のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後(縦の破線)、マウスを群分けし、PBS、または2×10
8 TCID50のMVA、MVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した(実施例29を参照されたい)。1回目の腫瘍内注射から5日目及び8日目に、このi.t.注射を繰り返した(縦の破線)。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
図21A:腫瘍平均直径が示されている。
図21B:1回目の免疫から11日後、血液を採取し、抗原特異的T細胞(すなわちOVA
257-264特異的T細胞)の存在について解析した。CD8+ T細胞におけるOVA特異的T細胞のパーセンテージが示されている。
【
図22-1】B16.OVAメラノーマ担持マウスにおける、MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与におけるNK細胞の役割である。C57BL/6マウスまたはIL15Rα-/-マウスに、5×10
5個のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBS、または2×10
8 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した(実施例30を参照されたい)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。腫瘍平均直径(
図22A)及び生存率(%)(
図22B)が示されている。1回目の免疫から11日後に、血液を採取し、抗原特異的T細胞の存在について解析した(
図22C)。CD8+ T細胞におけるOVA
257-264デキストラマー+(SIINFEKL+)CD44+ T細胞のパーセンテージが示されている。
【
図22-2】B16.OVAメラノーマ担持マウスにおける、MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与におけるNK細胞の役割である。C57BL/6マウスまたはIL15Rα-/-マウスに、5×10
5個のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBS、または2×10
8 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した(実施例30を参照されたい)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。腫瘍平均直径(
図22A)及び生存率(%)(
図22B)が示されている。1回目の免疫から11日後に、血液を採取し、抗原特異的T細胞の存在について解析した(
図22C)。CD8+ T細胞におけるOVA
257-264デキストラマー+(SIINFEKL+)CD44+ T細胞のパーセンテージが示されている。
【
図23】MVA-OVA-4-1BBLによるIT免疫に応じた、NK細胞依存性サイトカイン/ケモカインプロファイルを示している。5×10
5個のB16.OVA細胞をC57BL/6マウス及びIL15Rα-/-マウスに皮下(s.c.)移植した(実施例31を参照されたい)。7日目に、マウスをPBS、または2×10
8 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内(i.t.)免疫した(n=2~3匹のマウス/群)。6時間後、腫瘍を摘出し、腫瘍溶解液を処理した。サイトカイン/ケモカインプロファイルをLuminexによって解析した。
図23には、MVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内(i.t.)免疫した後、IL15Rαの非存在下で減少するサイトカイン/ケモカインが示されている。
【
図24-1】B16.F10メラノーマ担持マウスにおいて、MVA-gp70-CD40Lによる腫瘍内免疫の抗腫瘍効果をMVA-gp70-4-1BBLの場合と比較したものを示している。C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.F10細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-4-1BBLもしくはMVA-CD40Lを腫瘍内注射した(実施例32を参照されたい)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
図24Aは、腫瘍平均直径を示しており、
図24Bは、MVA-gp70-4-1BBLで処置したマウスの白斑の外観を示している。1回目の免疫から11日後、血液を採取し、抗原特異的T細胞の存在について解析した。p15Eで再刺激後のCD8+ T細胞におけるIFNγ産生CD44+ T細胞のパーセンテージが、
図24Cに示されている。
【
図24-2】B16.F10メラノーマ担持マウスにおいて、MVA-gp70-CD40Lによる腫瘍内免疫の抗腫瘍効果をMVA-gp70-4-1BBLの場合と比較したものを示している。C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.F10細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-4-1BBLもしくはMVA-CD40Lを腫瘍内注射した(実施例32を参照されたい)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
図24Aは、腫瘍平均直径を示しており、
図24Bは、MVA-gp70-4-1BBLで処置したマウスの白斑の外観を示している。1回目の免疫から11日後、血液を採取し、抗原特異的T細胞の存在について解析した。p15Eで再刺激後のCD8+ T細胞におけるIFNγ産生CD44+ T細胞のパーセンテージが、
図24Cに示されている。
【
図25-1】B16.F10メラノーマ担持マウスにおけるMVA-gp70-4-1BBL-CD40Lの腫瘍内投与の抗腫瘍効果である。C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.F10細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-gp70-4-1BBL-CD40L、MVA-4-1BBL、MVA-CD40LもしくはMVA-4-1BBL-CD40Lを腫瘍内注射した(実施例33を参照されたい)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。腫瘍平均直径が
図25Aに示されている。1回目の免疫から11日後、血液を採取し、p15eペプチドで再刺激した。CD8+ T細胞におけるIFNγ+ CD44+ T細胞のパーセンテージが
図25Bに示されている。
【
図25-2】B16.F10メラノーマ担持マウスにおけるMVA-gp70-4-1BBL-CD40Lの腫瘍内投与の抗腫瘍効果である。C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.F10細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-gp70-4-1BBL-CD40L、MVA-4-1BBL、MVA-CD40LもしくはMVA-4-1BBL-CD40Lを腫瘍内注射した(実施例33を参照されたい)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。腫瘍平均直径が
図25Aに示されている。1回目の免疫から11日後、血液を採取し、p15eペプチドで再刺激した。CD8+ T細胞におけるIFNγ+ CD44+ T細胞のパーセンテージが
図25Bに示されている。
【
図26-1】CT26腫瘍担持マウスにおける、CD40Lまたは4-1BBLでアジュバント添加を行ったMVA-gp70の抗腫瘍効果である。Balb/cマウスに、5×10
5個のCt26wt細胞を皮下(s.c.)投与した。13日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-gp70-4-1BBL-CD40L、MVA-4-1BBL、MVA-CD40L及びMVA-4-1BBL-CD40Lを腫瘍内注射した(実施例34を参照されたい)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
図26Aは、腫瘍平均直径を示しており、
図26Bは、生存率(%)を示している。
図26C:1回目の免疫から11日後、血液を採取し、AH1ペプチドで再刺激したものである。CD8+ T細胞におけるIFNγ+ CD44+ T細胞のパーセンテージが示されている。
【
図26-2】CT26腫瘍担持マウスにおける、CD40Lまたは4-1BBLでアジュバント添加を行ったMVA-gp70の抗腫瘍効果である。Balb/cマウスに、5×10
5個のCt26wt細胞を皮下(s.c.)投与した。13日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-gp70-4-1BBL-CD40L、MVA-4-1BBL、MVA-CD40L及びMVA-4-1BBL-CD40Lを腫瘍内注射した(実施例34を参照されたい)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
図26Aは、腫瘍平均直径を示しており、
図26Bは、生存率(%)を示している。
図26C:1回目の免疫から11日後、血液を採取し、AH1ペプチドで再刺激したものである。CD8+ T細胞におけるIFNγ+ CD44+ T細胞のパーセンテージが示されている。
【
図27】4-1BBL及び/またはCD40Lをさらに含むMVA-gp70を腫瘍内注射した後の腫瘍微小環境(TME)及び腫瘍流入リンパ節(TdLN)のT細胞の定量解析及び定性解析である。C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.F10細胞を皮下(s.c.)投与した。9日後、腫瘍の測定値が5×5mmを上回ったら、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40LもしくはMVA-gp70-4-1BBL-CD40Lのいずれかを腫瘍内注射した(実施例35を参照されたい)。免疫から3日後、マウスを殺処分し、腫瘍及び腫瘍流入リンパ節(TdLN)を採取し、コラゲナーゼ/DNaseで消化し、フローサイトメトリーによって解析した。
図27は、腫瘍1mg当たり及びTdLN当たりのCD8
+ T細胞、p15E特異的CD8
+ T細胞及びKi67
+ p15E特異的CD8
+ T細胞の数を示している。データは、平均±標準誤差を示している。
【
図28】4-1BBL及び/またはCD40Lをさらに発現するMVA-gp70を腫瘍内注射した後の腫瘍微小環境(TME)及び腫瘍流入リンパ節(TdLN)のT細胞の定量解析及び定性解析を示している。C57BL/6マウスに5×10
5個のB16.F10細胞を皮下(s.c.)投与した(実施例36を参照されたい)。9日後、腫瘍の測定値が5.5×5.5mmを上回ったら、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-Gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L及びMVA-gp70-4-1BBL-CD40Lのいずれかを腫瘍内注射した免疫から3日後、マウスを殺処分し、腫瘍及びTdLNを採取し、コラゲナーゼ/DNaseで消化し、得られた個々の細胞をフローサイトメトリーによって解析した。腫瘍1mg当たり及びTdLN当たりのNK細胞、Ki67
+ NK細胞及びグランザイムB
+ NK細胞の数が示されている。データは、平均±標準誤差として示されている。
【
図29-1】CT26.WT腫瘍担持マウスにおける、4-1BBL及び/またはCD40Lでアジュバント添加を行ったMVA-gp70の静脈内投与の抗腫瘍効果である。Balb/cマウスに、5×10
5個のCT26.WT細胞を皮下(s.c.)投与した。12日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID
50のMVA-Gp70、MVA-Gp70-4-1BBL、MVA-Gp70-CD40L、MVA-Gp70-4-1BBL-CD40L及びMVA-4-1BBL-CD40Lを静脈内注射した(実施例37を参照されたい)。
図29Aは、腫瘍平均直径を示しており、
図29Bは、生存率(%)を示している。1回目の免疫から7日後に、血液を採取し、AH1ペプチドで再刺激した。
図29Cは、CD8
+ T細胞におけるIFNγ
+ CD44
+ T細胞のパーセンテージを平均±標準誤差として示している。
【
図29-2】CT26.WT腫瘍担持マウスにおける、4-1BBL及び/またはCD40Lでアジュバント添加を行ったMVA-gp70の静脈内投与の抗腫瘍効果である。Balb/cマウスに、5×10
5個のCT26.WT細胞を皮下(s.c.)投与した。12日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID
50のMVA-Gp70、MVA-Gp70-4-1BBL、MVA-Gp70-CD40L、MVA-Gp70-4-1BBL-CD40L及びMVA-4-1BBL-CD40Lを静脈内注射した(実施例37を参照されたい)。
図29Aは、腫瘍平均直径を示しており、
図29Bは、生存率(%)を示している。1回目の免疫から7日後に、血液を採取し、AH1ペプチドで再刺激した。
図29Cは、CD8
+ T細胞におけるIFNγ
+ CD44
+ T細胞のパーセンテージを平均±標準誤差として示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
上記の概要及び下記の詳細な説明のいずれも、例示及び説明のためのものに過ぎず、特許請求されているような本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【0046】
本願で説明及び例示されているように、本発明の組み換えMVA及び方法は、がん患者の免疫応答の複数局面を増強する。様々な態様において、本発明により、腫瘍関連抗原(TAA)及び抗原4-1BBLを含む組み換えMVAを、がんである対象に腫瘍内投与または静脈内投与すると、その対象において抗腫瘍作用が増大することが示されている。本明細書でさらに詳細に説明されているように、この抗腫瘍作用の増大には、腫瘍体積の縮小の増大、全生存率の上昇、TAAに対するCD8 T細胞応答の増強、及び炎症応答の増強(NK細胞活性の増大、サイトカインの産生の増加など)が含まれる。
【0047】
本願で説明及び例示されているように、本発明の組み換えMVA及び方法は、がん患者の免疫応答の複数局面を増強する。様々な態様において、本発明により、腫瘍関連抗原(TAA)及び抗原CD40Lを含む組み換えMVAを、がんである対象に腫瘍内投与または静脈内投与すると、その対象において抗腫瘍作用が増大することが示されている。本明細書でさらに詳細に説明されているように、この抗腫瘍作用の増大には、腫瘍体積の縮小の増大、全生存率の上昇、TAAに対するCD8 T細胞応答の増強、及び炎症応答の増強(NK細胞活性の増大、サイトカインの産生の増加など)が含まれる。
【0048】
追加の態様では、本発明の様々な実施形態によって、腫瘍関連抗原(TAA)及び抗原4-1BBLを含む組み換えMVAを、少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニスト/アゴニストと組み合わせて腫瘍内投与すると、がんである対象において、腫瘍の縮小が増大し、全生存率が上昇することが示されている。
【0049】
さらなる態様では、本発明の様々な実施形態によって、腫瘍関連抗原(TAA)及び抗原4-1BBLを含む組み換えMVAを、腫瘍特異的抗体と組み合わせて腫瘍内投与すると、がんである対象において、腫瘍の縮小が増大し、全生存率が上昇することが示されている。
【0050】
以前に、組み換えMVAウイルスで抗原4-1BBLをコードさせたことはあるが、4-1BBLをコードするMVAの免疫原性上の効果は不明であった(例えば、Spencer et al.(2014)PLoS One 9(8):e105520を参照されたい)。Spencerの文献では、MVAベクターまたはアデノウイルスベクターのいずれかで、4-1BBLとトランスジェニック抗原を共発現させることにより、マウスCD8 T細胞の応答が増大したが、ヒト以外の霊長類動物において、4-1BBLをコードするアデノウイルスベクターを筋肉内投与した後には、IFN-γ応答の増大はまったく見られなかった(上記文献、2ページ、6ページ)。さらに、がんを治療し、腫瘍及び/または腫瘍細胞を破壊することの一環として、4-1BBLをコードするMVAを用いる免疫原性上の効果は未知であった。
【0051】
本開示の様々な実施形態により、4-1BBLとTAAをコードするMVA(本明細書では、MVA-TAA-4-1BBLという)は、ヒトのような対象のがんを治療するのに有効であり得ることが示されている。本明細書に示され、説明されているように、MVA-TAA-4-1BBLを投与すると、がんである対象の免疫応答の複数局面を増強でき、腫瘍細胞を効果的に低減及び殺傷することができる。本開示の様々な実施形態の抗腫瘍作用の増強のうちの1つ以上が、以下で概説されている。
【0052】
4-1BBLをコードする組み換えMVAの静脈内投与により、抗腫瘍作用が増強される。少なくとも1つの態様では、本発明は、TAA及び抗原4-1BBLをコードする組み換えMVA(rMVA-TAA-4-1BBL)であって、静脈内投与するものであり、静脈内投与すると、4-1BBLをコードしない組み換えMVAを静脈内投与する場合と比べて、または4-1BBLをコードする組み換えMVAを非静脈内投与する場合(例えば、4-1BBLをコードする組み換えMVAを皮下投与する場合)と比べて、抗腫瘍作用が増強される組み換えMVAを含む。これらの抗腫瘍作用の増強には、NK細胞応答の増強(
図4に示されている)、IFN-γの分泌増加によって示されるような、炎症応答の増強(
図5及び6に示されている)、抗原及びベクターに特異的なCD8 T細胞の増加の増大(
図7に示されている)、ならびに腫瘍の縮小の増大(
図8に示されている)が含まれる。
【0053】
4-1BBLをコードする組み換えMVAを腫瘍内投与すると、その腫瘍における炎症が増強される。本発明の別の態様では、腫瘍細胞をMVA-OVA-4-1BBLには感染させたが、MVA-OVA-CD40Lに感染させないと、抗原をクロスプレゼンテーションするDCの非存在下で、抗原特異的CD8+ T細胞が活性化されて、T細胞由来のサイトカイン(GM-CSF、IL-2及びIFN-γなど)が産生されることが確認された(
図1A~1D)。活性化されると、ナイーブT細胞によって産生される成長因子であって、樹状細胞及び骨髄系細胞サブセットの成熟を誘導するGM-CSF(Min et al.(2010)J.Immunol.184:4625-4629)のケースでは、これは予想外であった。抗原をクロスプレゼンテーションするDCの存在下では、rMVA-CD40Lに感染させた腫瘍細胞によって刺激された抗原特異的CD8+ T細胞は、IFN-γを産生したが、rMVA-4-1BBLの場合のようなIL-2またはGM-CSFを産生しなかった(
図1A~1D)。興味深いことに、DCによって産生される重要なサイトカインであるIL-6が大量に検出された(
図1A)。
【0054】
有益な一態様では、腫瘍における炎症が増強されると、腫瘍部位で、多数のTIL(腫瘍浸潤リンパ球)に、腫瘍細胞を殺傷させることができる(例えば、Lanitis et al.(2017)Annals Oncol.28(suppl 12):xii18-xii32を参照されたい)。これらの炎症性腫瘍は、「ホット」腫瘍としても知られており、TIL、サイトカイン及びその他の炎症分子の数の増加に鑑みると、腫瘍細胞の破壊性が増強可能になる。
【0055】
4-1BBLをコードする組み換えMVAを腫瘍内投与すると、腫瘍体積が縮小し、全生存率が上昇する。一態様では、本発明は、抗原4-1BBLをコードする組み換えMVA(MVA-4-1BBL)であって、腫瘍内投与するものであり、その腫瘍内投与によって、4-1BBLをコードしない組み換えMVAを腫瘍内投与する場合と比べて、がんである対象における抗腫瘍作用が増強される組み換えMVAを含む。
【0056】
以前に、組み換えMVAウイルスが腫瘍内投与されたことはあるが(例えば、White et al.(2018)PLoS One 13:e0193131及びNemeckova et al.(2007)Neoplasma 54:326-33を参照されたい)、それらの研究は、結果が様々である。例えば、Nemeckovaの研究では、GM-CSFを発現するワクシニアウイルスMVAの腫瘍内注射と、DNAワクチンによる免疫により、HPV16誘発性腫瘍を有するマウスの生存期間が長くなったことが見出された(Nemeckovaの文献のアブストラクトを参照されたい)。また、Whiteらの研究では、MVAの腫瘍内注射後、膵臓腫瘍の成長阻害を示すことはできなかった(Whiteの文献のアブストラクトを参照されたい)。
【0057】
本開示の一環で、TAAと4-1BBLとをコードする1つ以上の核酸を含む組み換えMVAを対象に腫瘍内投与した。
図9に示されているように、MVA-TAA-4-1BBLを腫瘍内注射したところ、組み換えMVA TAAの場合と比べて、腫瘍体積が有意に縮小したことが示された。
【0058】
4-1BBLをコードする組み換えMVAを、免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストと組み合わせて腫瘍内投与すると、抗腫瘍作用が増大する。様々な実施形態では、本発明は、MVA-TAA-4-1BBLを、免疫チェックポイントアンタゴニストまたは免疫チェックポイントアゴニストと組み合わせて投与することを含む。好ましくは、MVA-TAA-4-1BBLの投与は、静脈内投与または腫瘍内投与である。本発明のMVAを免疫チェックポイントアンタゴニストまたは免疫チェックポイントアゴニストと組み合わせることは有益である。この併用により、より有効ながん治療が得られるからである。例えば、本発明の併用剤及び/または併用療法は、がん患者の免疫応答の複数局面を増強する。少なくとも1つの態様では、その併用剤は、自然免疫応答及び適応免疫応答の両方を相乗的に増強し、免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストと組み合わせると、がん患者の腫瘍体積を縮小し、生存率を上昇させる。
【0059】
本願で得られたデータによって、MVA-TAA-4-1BBLを免疫チェックポイントアンタゴニストまたは免疫チェックポイントアゴニストと組み合わせると、抗腫瘍作用が増大することが示されている。さらにいえば、
図11に示されているように、MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与をPD-1抗体の腹腔内投与と組み合わせたところ、PD-1単独の場合と比べて、腫瘍体積が縮小した。
【0060】
4-1BBLをコードする組み換えMVAの腫瘍内投与を、腫瘍関連抗原(TAA)に特異的な抗体と組み合わせて投与すると、抗腫瘍作用が増大する。様々な実施形態では、本発明は、MVA-TAA-4-1BBLを、TAAに特異的な抗体と組み合わせて投与することを含む。好ましくは、MVA-TAA-4-1BBLの投与は、静脈内投与または腫瘍内投与である。本発明のMVAを、TAA特異的抗体と組み合わせることは有益であり、これらは協働して、より有効ながん治療をもたらすことができる。
【0061】
例示的な一態様では、MVA-TAA-4-1BBLの投与によって誘導される、NK細胞応答の増強は、TAA特異的抗体と相乗的に作用して、対象の抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を増強する。がんである対象におけるADCCがこのように増強されると、腫瘍細胞の殺傷及び腫瘍の破壊が増加する。
【0062】
本願で得られたデータによって、MVA-TAA-4-1BBLをTAA特異的抗体と組み合わせると、抗腫瘍作用が増大することが示されている。さらにいえば、
図11に示されているように、MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与をTRP-1抗体の腹腔内投与と組み合わせたところ、TRP-1抗体単独の場合と比べて、腫瘍体積が縮小した。
【0063】
本発明に従って、プライム免疫及びブースト免疫の一環として、MVA-TAA-4-1BBLを投与すると、抗原及びベクターに特異的なCD8+ T細胞の増加が増大する。別の態様では、本発明は、同種及び/または異種でのプライム-ブーストレジメンの一環として、MVA-TAA-4-1BBLを投与する方法を提供する。好ましくは、MVA-TAA-4-1BBLの投与は、静脈内投与または腫瘍内投与である。
図7に示されているように、抗原及びベクターに特異的なCD8+ T細胞の増加は、MVA-TAA-4-1BBLの静脈内投与によるプライミング及びブースティングの際に増大した。
【0064】
定義
本明細書で使用する場合、「a」、「an」及び「the」の付された単数形には、文脈上明らかに別段に示されていない限り、複数の言及物が含まれる。したがって、例えば、「核酸」という場合には、その核酸が1つ以上含まれ、「その方法」という場合には、当業者に知られている同等の工程及び方法であって、修正可能であるか、または本明細書に記載されている方法と置き換え可能である工程及び方法への言及が含まれる。
【0065】
別段に示されていない限り、一連の要素の前に付された「少なくとも」という用語は、その一連の要素の1つ1つを指すと理解されたい。当業者は、慣用的に過ぎない実験を用いて、本明細書に記載されている発明の具体的実施形態の均等物を数多く認識するか、または確認できるであろう。このような均等物は、本発明に含まれるように意図されている。
【0066】
本明細書及び下記の請求項の全体を通じて、「含む(comprise)」という単語、ならびに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」のような変形語は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、示されている整数もしくは工程、または整数群もしくは工程群を含むことを示唆しているが、いずれかの他の整数もしくは工程、または整数群もしくは工程群を除外しないことを理解されたい。本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」という用語は、「含む(containing)」もしくは「含む(including)」という用語、または場合によっては、本明細書で使用する場合、「有する」という用語に置き換えることができる。あまり好ましくはないが、上記の用語(含む(comprising)、含む(containing)、含む(including)、有する)のいずれも、本明細書において、本発明の態様または実施形態の関連で使用する場合にはいずれも、「~からなる」という用語に置き換えることができる。本明細書で使用される場合、「からなる」は、特許請求の要素で指定されていない任意の要素、ステップ、または成分を除外する。本明細書で使用する場合、「~から本質的になる」という場合には、その請求項の基本的かつ新規な特徴に重大な影響を及ぼさない材料または工程は除外されない。
【0067】
本明細書で使用する場合、示されている複数の要素間に置かれた「及び/または」という接続語は、個々の選択肢、及び選択肢を組み合わせたものの両方を含むものとして理解する。例えば、2つの要素が、「及び/または」によって接続されている場合、第1の選択肢は、その第2の要素を含まずに、その第1の要素を適用可能であることを指す。第2の選択肢は、その第1の要素を含まずに、その第2の要素を適用可能であることを指す。第3の選択肢は、その第1の要素及び第2の要素を併せて適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つが、その意味の範囲内に入り、すなわち、本明細書で使用する場合の「及び/または」という用語の要件を満たすと理解されたい。その選択肢のうちの2つ以上を同時に適用することも、その意味の範囲内に入り、すなわち、「及び/または」という用語の要件を満たすと理解されたい。
【0068】
本明細書に記載されているような「変異」または「改変」タンパク質または抗原は、本明細書では、欠失、付加、挿入及び/または置換のようないずれかの改変を核酸またはアミノ酸に加えたものとして定義する。
【0069】
本明細書に記載されている核酸配列に関する「配列相同性パーセント(%)または配列同一性パーセント(%)」は、候補配列と参照配列をアラインメントし、必要に応じて、配列同一性パーセントが最大になるように、ギャップを導入した後、いずれの保存的置換も配列同一性としてみなさない場合に、候補配列内のヌクレオチドのうち、参照配列(すなわち、由来元の核酸配列)内のヌクレオチドと同一であるヌクレオチドのパーセンテージとして定義する。ヌクレオチドの配列同一性パーセントまたは配列相同性パーセントを求めるためのアラインメントは、例えば、BLAST、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)というソフトウェアのような公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを用いて、当該技術分野の技術の範囲内である様々な方法で行うことができる。当業者は、比較する配列の完全長にわたって、アラインメントを最大限にするのに必要ないずれかのアルゴリズムを含め、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを定めることができる。
【0070】
例えば、核酸配列の適切なアラインメントは、Smith and Waterman,(1981),Advances in Applied Mathematics 2:482-489の局所相同性アルゴリズムによって得られる。このアルゴリズムは、Dayhoff(Atlas of Protein Sequences and Structure,M.O.Dayhoff ed.,5 suppl.3:353-358,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USA)によって開発され、Gribskov((1986),Nucl.Acids Res.14(6):6745-6763)によって標準化されたスコアリングマトリックスを用いることによって、アミノ酸配列に適用できる。配列の同一性パーセントを求めるための、このアルゴリズムの例示的なインプリメンテーションは、Genetics Computer Group(Madison,Wisconsin,USA)によって、「BestFit」というユーティリティアプリケーション内に供給されている。この方法のためのデフォルトパラメーターは、Wisconsin Sequence Analysis Package programs Manual,Version 8(1995)(Genetics Computer Group(Madison,Wisconsin,USA)から入手可能)に記述されている。本発明の関連において、同一性パーセントを求めるための好ましい方法は、University of Edinburghが著作権を有し、Collins及びSturrokが開発し、IntelliGenetics,Inc.(Mountain View,California,USA)が流通させているプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。この一連のパッケージから、Smith-Watermanのアルゴリズムを用いることができ、その際、デフォルトパラメーターをスコア表に使用する(例えば、ギャップオープンペナルティー:12、ギャップエクステンションペナルティー:1、ギャップ:6)。生成されたデータから、「マッチ」値に「配列同一性」が反映される。配列間の同一性パーセントまたは類似性パーセントを算出するための他の好適なプログラムは概して、当該技術分野において知られており、例えば、別のアラインメントプログラムは、デフォルトパラメーターで使用するBLASTである。例えば、BLASTN及びBLASTPは、genetic code=standard、filter=none、strand=both、cutoff=60、expect=10、Matrix=BLOSUM62、Descriptions=50 sequences、sort by=HIGH SCORE、Databases=non-redundant、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIRというデフォルトパラメーターを用いて使用できる。これらのプログラムの詳細は、blast.ncbi.nlm.nih.gov/というインターネットアドレスで見ることができる。
【0071】
「プライム-ブーストワクチン接種」または「プライム-ブーストレジメン」という用語は、所定の抗原を標的とするワクチンの1回目のプライミング注射を行ってから、間隔を空けて、同じワクチンのブースティング注射を1回以上行うことを用いるワクチン接種策またはワクチン接種レジメンを指す。プライム-ブーストワクチン接種は、同種であっても異種であってもよい。同種でのプライム-ブーストワクチン接種では、プライミング注射と1回以上のブースティング注射の両方に、同じ抗原及び同じベクターを含むワクチンを使用する。異種でのプライム-ブーストワクチン接種では、プライミング注射と1回以上のブースティング注射の両方で、同じ抗原を含むが、プライミング注射と1回以上のブースティング注射で、異なるベクターを含むワクチンを使用する。例えば、同種でのプライム-ブーストワクチン接種では、プライミング注射で、1つ以上の抗原を発現する核酸を含む組み換えポックスウイルスを使用し、1回以上のブースティング注射で、1つ以上の抗原を発現する同じ組み換えポックスウイルスを使用してよい。これに対して、異種でのプライム-ブーストワクチン接種では、プライミング注射で、1つ以上の抗原を発現する核酸を含む組み換えポックスウイルスを使用し、1回以上のブースティング注射で、1つ以上の抗原を発現する異なる組み換えポックスウイルスを使用してよい。
【0072】
「組み換え」という用語は、天然では見られないか、または天然では見られない構成で、別のポリヌクレオチドに連結されている、半合成または合成の供給源のポリヌクレオチド、ウイルスまたはベクターを意味する。「組み換えMVA」または「rMVA」とは、本明細書で使用する場合、概して、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む改変ワクシニアアンカラ(MVA)が意図されている。
【0073】
本明細書で使用する場合、腫瘍体積を縮小することまたは腫瘍体積の縮小は、腫瘍の体積及び/またはサイズの縮小として特徴付けることができるが、当該技術分野において理解されている臨床試験エンドポイントの観点で特徴付けることもできる。腫瘍の体積及び/またはサイズの縮小と関連するいくつかの例示的な臨床試験エンドポイントとしては、奏効率(RR)、客観的奏効率(ORR)などを挙げることができるが、これらに限らない。
【0074】
本明細書で使用する場合、生存率の上昇は、がん患者の生存率の上昇として特徴付けることができるが、当該技術分野において理解される臨床試験エンドポイントの観点で特徴付けることもできる。生存率の上昇と関連付けられた例示的ないくつかの臨床試験エンドポイントとしては、全生存率(OS)、無増悪生存率(PFS)などが挙げられるが、これらに限らない。
【0075】
本明細書で使用する場合、「導入遺伝子」または「異種」遺伝子は、野生型ポックスウイルスゲノム(例えば、ワクシニア、鶏ポックスまたはMVA)に存在しない核酸配列またはアミノ酸配列であると理解されたい。「導入遺伝子」または「異種遺伝子」とは、ワクシニアウイルスのようなポックスウイルスに存在するときには、その組み換えポックスウイルスを宿主細胞に投与後、その遺伝子が、対応する異種遺伝子産物として、すなわち「異種抗原」及び\または「異種タンパク質」として発現するような方法で、そのポックスウイルスゲノムに導入されたものであると当業者は理解する。発現は通常、そのポックスウイルス感染細胞内での発現を可能にする調節エレメントに、その異種遺伝子を機能的に連結することによって行われる。好ましくは、その調節エレメントは、天然または合成のポックスウイルスプロモーターを含む。
【0076】
「ベクター」とは、異種のポリヌクレオチドを含むことができる組み換えDNAプラスミド、組み換えRNAプラスミド、または組み換えウイルスを指す。その異種のポリヌクレオチドは、予防目的または療法目的の、対象とする配列を含んでよく、任意に、発現カセットの形態であってよい。本明細書で使用する場合、ベクターは、最終標的の細胞または対象において複製できる必要はない。この用語には、クローニングベクター及びウイルスベクターが含まれる。
【0077】
併用剤及び方法
様々な実施形態では、本発明は、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAであって、腫瘍内投与すると、TAAをコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内投与によって誘導される炎症応答及びT細胞応答と比べて、炎症応答及びT細胞応答の増強の両方が誘導される組み換えMVAを含む。
【0078】
様々な追加の実施形態では、本発明は、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸であって、腫瘍内投与すると、TAAをコードする第1の核酸を含む組み換えMVAウイルスの腫瘍内投与によって誘導される腫瘍内炎症応答及びT細胞応答と比べて、腫瘍内炎症応答の増強及びT細胞応答の増強の両方が誘導される核酸を含む。
【0079】
腫瘍における炎症応答の増強本開示の様々な態様では、TAAと4-1BBLとをコードする組み換えMVAを腫瘍内投与すると、組み換えMVAを単独で投与した場合と比べて、腫瘍における炎症応答の増強が誘導されることが確認された。少なくとも1つの態様では、本開示による、腫瘍における「炎症応答の増強」は、腫瘍及び/または腫瘍細胞における1)IFN-γの発現の増加、及び/または2)グランザイムB(GraB)の発現の増加のうちの1つ以上によって特徴付けられる。したがって、本開示に従って、腫瘍及び/または腫瘍細胞において炎症応答が増強されたか否かは、当該技術分野において知られているように、ケモカイン及びサイトカインの分泌を含め、炎症応答の増大を示す1つ以上の分子の発現が増加したか判断するために測定することによって判断できる。例示的な炎症応答マーカーには、NK細胞の出現頻度及び/または活性を測定するのに有用であるマーカーのうちの1つ以上が含まれ、IFN-γ及び/またはグランザイムB(GraB)のうちの1つ以上が含まれる。これらの分子及びその測定は、当該技術分野において理解されている実証済みのアッセイであり、既知の技法に従って行うことができる。例えば、Borregoらの文献((1999)Immunology 7(1):159-165)を参照されたい。
【0080】
NK細胞応答の増強本開示の様々な追加の態様では、TAAと4-1BBLとをコードする組み換えMVAを腫瘍内投与または静脈内投与すると、組み換えMVAを単独で投与する場合と比べて、腫瘍または腫瘍環境におけるNK細胞応答の増強が誘導されることが確認された。一態様では、本開示による「NK細胞応答の増強」は、1)NK細胞出現頻度の上昇、2)NK細胞の活性化の増大、及び/または3)NK細胞の増殖の増加のうちの1つ以上によって特徴付けられる。したがって、本開示に従って、NK細胞応答が増強されたか否かは、NK細胞出現頻度の上昇、NK細胞の活性化の増大、及び/またはNK細胞の増殖の増加を示す1つ以上の分子の発現を測定することによって判断できる。NK細胞の出現頻度及び/または活性を測定するのに有用である例示的なマーカーには、NKp46、IFN-γ、CD69、CD70、NKG2D、FasL、グランザイムB、CD56及び/またはBcl-XLのうちの1つ以上が含まれる。NK細胞の活性化を測定するのに有用である例示的なマーカーには、IFN-γ、CD69、CD70、NKG2D、FasL、グランザイムB及び/またはBcl-XLのうちの1つ以上が含まれる。NK細胞の増殖を測定するのに有用である例示的なマーカーには、Ki67が含まれる。これらの分子及びその測定は、当該技術分野において理解されている実証済みのアッセイであり、既知の技法に従って行うことができる(例えば、Borrego et al.(1999)Immunology 7(1):159-165を参照されたい)。加えて、それらの分子を測定するためのアッセイは、本開示の実施例5及び6に見ることができる。少なくとも一態様では、1)NK細胞出現頻度の上昇は、CD3-NKp46+細胞が、治療前/ベースラインと比べて、少なくとも2倍増加することとして定義でき、2)NK細胞の活性化の増大は、IFN-γ、CD69、CD70、NKG2D、FasL、グランザイムB及び/またはBcl-XLの発現が、治療前/ベースラインの発現と比べて、少なくとも2倍増加することとして定義でき、及び/または3)NK細胞の増殖の増加は、Ki67の発現が、治療前/ベースラインの発現と比べて、少なくとも1.5倍増加することとして定義する。
【0081】
T細胞応答の増強本願によれば、「T細胞応答の増強」は、1)CD8 T細胞の出現頻度の上昇、2)CD8 T細胞の活性化の増大、及び/または3)CD8 T細胞の増殖の増加のうちの1つ以上によって特徴付けられる。したがって、本願に従って、T細胞応答が増強されたか否かは、1)CD8 T細胞出現頻度の上昇、2)CD8 T細胞活性化の増大、及び/または3)CD8 T細胞の増殖の増加を示す1つ以上の分子の発現を測定することによって判断できる。CD8 T細胞の出現頻度、活性化及び増殖を測定するのに有用である例示的なマーカーにはそれぞれ、CD3、CD8、IFN-γ、TNF-α、IL-2、CD69及び/またはCD44、ならびにKi67が含まれる。抗原特異的T細胞の出現頻度は、MHCマルチマー(ペンタマー、もしくは本願によって示されているようデキストラマーなど)によって測定することができる。このような測定及びアッセイ、ならびに本発明の方法及び組成物を評価するのに用いるのに適する他の測定及びアッセイは、当該技術分野において、確立及び理解されている。
【0082】
一態様では、CD8 T細胞出現頻度の上昇は、IFN-γ及び/またはデキストラマー+CD8 T細胞が、治療前/ベースラインと比べて、少なくとも2倍増加することによって特徴付けられる。CD8 T細胞の活性化の増大は、CD69及び/またはCD44の発現が、治療前/ベースラインの発現と比べて、少なくとも2倍増大することとして特徴付けられる。CD8 T細胞の増殖の増加は、Ki67の発現が、治療前/ベースラインの発現と比べて、少なくとも2倍増加することとして特徴付けられる。
【0083】
代替的な態様では、T細胞応答の増強は、エフェクターサイトカインの発現の増加、及び/または細胞傷害性エフェクター機能の増加によって特徴付けられる。エフェクターサイトカインの発現の増加は、治療前/ベースラインと比べた場合の、IFN-γ、TNF-α及び/またはIL-2のうちの1つ以上の発現によって測定できる。細胞傷害性エフェクター機能の増加は、CD107a、グランザイムB及び/またはパーフォリンのうちの1つ以上の発現、及び/または標的細胞の抗原特異的な殺傷によって測定できる。
【0084】
本明細書に記載されているアッセイ、サイトカイン、マーカー及び分子、ならびにその測定は、当該技術分野において確立及び理解されており、既知の技法に従って行うことができる。加えて、T細胞応答を測定するためのアッセイは、T細胞応答を解析した実施例に見ることができ、その実施例としては、実施例2、3、8、13及び14が挙げられるが、これらに限らない。
【0085】
本発明によって認識された、T細胞応答の増強は、NK細胞応答の増強及び炎症応答の増強と組み合わさると特に有益である。T細胞の増強により、がん患者において、初期の自然免疫応答を回避し、及び/または初期の自然免疫応答に耐えた腫瘍細胞が効果的に標的とされ、殺傷されるからである。
【0086】
さらに追加の実施形態では、本明細書に記載されている併用剤及び方法は、ヒトがん患者の治療に用いるものである。好ましい実施形態では、そのがん患者は、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌、尿路上皮、子宮頸部または結腸直腸癌からなる群から選択したがんに罹患しており、及び/またはそのがんと診断されている。さらに追加の実施形態では、本明細書に記載されている併用剤及び方法は、乳癌、結腸直腸癌またはメラノーマ、好ましくはメラノーマ、より好ましくは結腸直腸癌、最も好ましくは結腸直腸癌に罹患しており、及び/またはそのがんと診断されているヒトがん患者の治療に用いるものである。
【0087】
特定の例示的な腫瘍関連抗原
特定の実施形態では、免疫応答は、対象において、細胞関連ポリペプチド抗原に対して起きるものである。特定のこのような実施形態では、細胞関連ポリペプチド抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)である。
【0088】
「ポリペプチド」という用語は、2つ以上のアミノ酸が、ペプチド結合または改変ペプチド結合によって互いに連結したポリマーを指す。そのアミノ酸は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、または天然アミノ酸の化学的類似体であってよい。この用語は、タンパク質、すなわち、少なくとも1つのポリペプチドを含む機能性生体分子も指し、少なくとも2つのポリペプチドを含むときには、それらのポリペプチドは、複合体を形成するか、共有結合されているか、または非共有結合されていてよい。タンパク質におけるポリペプチド(複数可)は、糖化及び/または脂質化されていることができ、及び/または補欠分子族を含むことができる。
【0089】
内在性レトロウイルスタンパク質(ERV)
好ましくは、本発明のTAAは、内在性レトロウイルスタンパク質(ERV)に含まれる。より好ましくは、そのERVは、ヒトHERV-Kタンパク質ファミリーのERVである。最も好ましくは、そのHERV-Kタンパク質は、HERV-Kエンベロープ(env)タンパク質、HERV-K群特異抗原(gag)タンパク質及びHERV-K「メラノーマリスクマーカー」(mel)タンパク質から選択されている(例えば、Cegolon et al.(2013)BMC Cancer 13:4を参照されたい)。
【0090】
ERVは、ヒトゲノムの8%を占め、数百年前における生殖細胞系列への感染に由来する。ヒトゲノムに挿入されたこれらのエレメントの大半は、大きく変異しているので、転写または翻訳は行われない。しかしながら、わりと最近獲得したほんの一部のERVは依然として機能しており、翻訳されて、場合によっては、ウイルス粒子を産生さえする。ERVの転写は非常に限られている。その座位は通常、高度にメチル化されており、その結果、体細胞では翻訳されないからである(Kassiotis(2016)Nat.Rev.Immunol.16: 207-19)。細胞ストレス(化学物質、UV照射、ホルモン、サイトカイン)のような一部の状況下でのみ、ERVは再活性化し得る。重要なことに、ERVは、多種多様ながんでも発現するが、正常組織では発現しない(Cegolon et al.(2013)BMC Cancer 13:4、Wang-Johanning et al.(2003)Oncogene 22:1528-35)。この非常に限られた発現パターンにより、ERVは、免疫寛容機序に暴露されないか、またはまれにしか暴露されないようになり、おそらく、その結果、コンピテントなERV特異的T細胞レパートリーが得られる。このように、ERVは、MVAで腫瘍抗原(「TAA」)として用いることができる。
【0091】
様々な追加の実施形態では、そのTAAには、HER2、PSA、PAP、CEA、MUC-1、FOLR1、PRAME、サバイビン、TRP1、TRP2もしくはBrachyuryが単独で含まれるか、またはこれらを組み合わせたものが含まれるが、これらに限らない。このような例示的な組み合わせとしては、例えばMVAにおけるCEA及びMUC-1(CV301としても知られる)を挙げてよい。他の例示的な組み合わせとしては、PAP及びPSAを挙げてよい。
【0092】
さらなる実施形態では、追加のTAAとしては、5αレダクターゼ、α-フェトプロテイン、AM-1、APC、April、BAGE、β-カテニン、Bcl12、bcr-abl、CA-125、CASP-8/FLICE、カテプシン、CD19、CD20、CD21、CD23、CD22、CD33、CD35、CD44、CD45、CD46、CD5、CD52、CD55、CD59、CDC27、CDK4、CEA、c-myc、Cox-2、DCC、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、FGF8b、FGF8a、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、GAGEファミリー、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、GD2/GD3/GM2、GnRH、GnTV、GP1、gp100/Pmel17、gp-100-in4、gp15、gp75/TRP1、hCG、ヘパラナーゼ、Her2/neu、HMTV、Hsp70、hTERT、IGFR1、IL-13R、iNOS、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、MAGE-ファミリー、マンマグロビン、MAP17、メラン-A/MART-1、メソセリン、MIC A/B、MT-MMP、ムチン、NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、PDGF、uPA、PRAME、プロバシン、プロジェニポイエチン、PSA、PSM、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、TGF-α、TGF-β、サイモシン-β-15、TNF-α、TRP1、TRP2、チロシナーゼ、VEGF、ZAG、p16INK4及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼを挙げてよいが、これらに限らない。
【0093】
好ましいPSA抗原は、155位におけるイソロイシンのロイシンへのアミノ酸変化を含む(米国特許第7,247,615号(参照により、本明細書に援用される)を参照されたい)。
【0094】
本発明の1つ以上の好ましい実施形態では、その異種TAAは、HER2及び/またはBrachyuryから選択されている。
【0095】
そのTAAを含むMVAの投与後に、本発明の少なくとも1つの目的または所望の結果(例えば免疫応答の刺激など)が達成されるならば、いずれのTAAを用いてもよい。本明細書で言及されているTAAを含むTAAの例示的な配列は、当該技術分野において知られており、本発明の組成物及び方法で用いるのに適する。本発明の組成物及び方法で用いるTAAの配列は、当該技術分野において知られているかまたは本明細書に開示されている配列と同一であってよく、あるいは、当該技術分野において知られているかまたは本明細書に開示されているヌクレオチド配列またはアミノ酸配列のいずれかとの配列同一性が100%未満(少なくとも90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%またはそれを超える値など)であってもよい。すなわち、本発明の少なくとも1つの目的または所望の結果が達成されるならば、本発明の組成物または方法で用いるTAAの配列は、当該技術分野において知られており、及び/または本明細書に開示されている参照配列と、ヌクレオチドまたはアミノ酸が20個未満、または19個未満、18個未満、15個未満、14個未満、13個未満、12個未満、11個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満もしくは1個未満異なっていてよい。当業者は、本発明のMVAまたは方法で用いる際のTAAの適合性を確保するために、TAAを評価する技法及びアッセイに精通している。
【0096】
改変腫瘍関連抗原
特定の実施形態では、細胞関連ポリペプチド抗原は、ポリペプチド抗原に由来するエピトープが、APCの表面上のクラスI MHC分子と会合した状態で提示されると、そのエピトープをその表面上に提示する細胞に対して、CTL応答が誘導されるように改変されている。特定のこのような実施形態では、少なくとも1つの第1の外来THエピトープは、提示されるときには、APCの表面上のクラスII MHC分子と会合している。特定のこのような実施形態では、細胞関連抗原は、腫瘍関連抗原である。
【0097】
エピトープを提示できる例示的なAPCとしては、樹状細胞及びマクロファージが挙げられる。追加の例示的なAPCとしては、1)クラスI MHC分子に結合したCTLエピトープ、及び2)クラスII MHC分子に結合したTHエピトープを同時に提示できるいずれかの飲作用APCまたは食作用APCが挙げられる。
【0098】
特定の実施形態では、HERV-K env、HERV-K gag、HERV-K mel、CEA、MUC-1、PAP、PSA、PRAME、FOLR1、HER2、サバイビン、TRP1、TRP2またはBrachyuryなど(これらに限らない)のTAAのうちの1つ以上に対する改変は、本明細書に記載されているTAAのうちのその1つ以上と主に反応するポリクローナル抗体が、対象への投与後に誘発されるように行われている。このような抗体は、腫瘍細胞を攻撃及び排除することができるとともに、転移性細胞が発現して転移に至るのを防ぐことができる。この抗腫瘍作用のエフェクター機構は、補体依存性及び抗体依存性の細胞傷害によって媒介されることになる。加えて、誘導された抗体は、成長因子依存性のオリゴ二量化と、受容体のインターナリゼーションの阻害を通じて、がん細胞の成長を阻害することもできる。特定の実施形態では、このような改変TAAは、腫瘍細胞によって提示される既知のTAAエピトープ及び/または推定TAAエピトープに対するCTL応答を誘導できる。
【0099】
特定の実施形態では、改変TAAポリペプチド抗原は、その細胞関連ポリペプチド抗原のCTLエピトープと、バリエーションを含み、そのバリエーションは、CTLエピトープまたは外来のTHエピトープを少なくとも1つ含む。特定のこのような改変TAAは、1つの非限定的な例では、CTLエピトープを少なくとも1つ含む1つ以上のポリペプチド抗原HER2と、外来のTHエピトープのCTLエピトープを少なくとも1つ含むバリエーションを含むことができ、このTAAの作製方法は、米国特許第7,005,498号、ならびに米国特許出願公開第2004/0141958号及び同第2006/0008465号に記載されている。
【0100】
特定のこのような改変TAAは、1つの非限定的な例では、CTLエピトープを少なくとも1つ含む1つ以上のポリペプチド抗原MUC-1と、外来のエピトープのCTLエピトープを少なくとも1つ含むバリエーションを含むことができ、このTAAの作製方法は、米国特許出願公開第2014/0363495号に記載されている。
【0101】
追加のプロミスキャスなT細胞エピトープは、様々なHLA-DRによってコードされる大部分のHLA-DR分子と結合できるペプチドを含む。例えば、WO98/23635(Frazer IHら。The University of Queenslandに譲渡)、Southwood et al.(1998)J.Immunol.160:3363 3373、Sinigaglia et al.(1988)Nature 336:778 780、Rammensee et al.(1995)Immunogenetics 41:178 228、Chicz et al.(1993)J.Exp. Med.178:27 47、Hammer et al.(1993)Cell 74:197 203及びFalk et al.(1994)Immunogenetics 39:230 242を参照されたい。この最後の参照文献では、HLA-DQリガンド及びHLA-DPリガンドについても論じられている。これらの参照文献に列挙されているすべてのエピトープは、本明細書に記載されているような天然エピトープの候補として関連がある。これらのエピトープ候補と共通のモチーフを共有するエピトープであるからである。
【0102】
特定の他の実施形態では、そのプロミスキャスなT細胞エピトープは、ハプロタイプの大部分と結合できる人工のT細胞エピトープである。特定のこのような実施形態では、人工のT細胞エピトープは、WO95/07707及び対応する論文Alexander et al.(1994)Immunity 1:751 761に記載されているようなpan DRエピトープペプチド(「PADRE」)である。
【0103】
4-1BBL(本明細書では、「41BBL」または「4-1BBリガンド」ともいう)
本開示によって例示されているように、組み換えMVA及び関連する方法の一部として、4-1BBLを含めると、がんである対象において、腫瘍内投与または静脈内投与の際に、抗腫瘍作用の増大及び増強が誘導される。したがって、様々な実施形態では、TAAをコードすることに加えて、抗原4-1BBLをコードする組み換えMVAが存在する。
【0104】
4-1BB/4-1BBLは、TNFR/TNFスーパーファミリーのメンバーである。4-1BBLは、活性化B細胞、単球及びDCで発現する共刺激リガンドである。4-1BBは、ナチュラルキラー(NK)細胞及びナチュラルキラーT(NKT)細胞、Treg、ならびにDC、単球及び好中球を含むいくつかの自然免疫細胞集団によって構成的に発現される。興味深いことに、4-1BBは、活性化T細胞上で発現するが、休止T細胞では発現しない(Wang et al.(2009)Immunol. Rev.229:192-215)。4-1BBの結合により、インターフェロンγ(IFN-γ)及びインターロイキン2(IL-2)の増殖及び産生が誘導されるとともに、Bcl-xLのような抗アポトーシス分子のアップレギュレーションを通じて、T細胞の生存が増強される(Snell et al.(2011)Immunol. Rev.244:197-217)。重要なことに、4-1BBが刺激されると、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の増強を通じて、NK細胞の増殖、IFN-γの産生及び細胞溶解活性が増強される(Kohrt et al.(2011)Blood 117:2423-32)。
【0105】
1つ以上の好ましい実施形態では、4-1BBLは、本発明のMVAによってコードされる。1つ以上の他の好ましい実施形態では、4-1BBLは、ヒト4-1BBLである。さらに好ましい実施形態では、その4-1BBLは、配列番号3との同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である配列、すなわち、配列番号3に示されているアミノ酸配列と異なるアミノ酸が10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満または1個未満である配列を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む。さらに好ましい実施形態では、その4-1BBLは、配列番号3を含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む。追加の実施形態では、4-1BBLをコードする核酸は、配列番号4との同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列、すなわち、その配列において、配列番号4に示されている核酸配列と異なる核酸が20個未満、10個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満または1個未満である核酸配列を含む。より好ましい実施形態では、その4-1BBLは、配列番号4を含む核酸を含む。
【0106】
CD40L
本開示によって示されているように、CD40Lを併用剤及び関連方法の一部として含めることにより、腫瘍体積の縮小がさらに増大し、無増悪生存期間が長くなり、本発明によって実現する生存率が上昇する。したがって、様々な実施形態では、本発明の併用治療は、CD40Lをがん患者に投与することをさらに含む。好ましい実施形態では、そのCD40Lは、本明細書に記載されているような組み換えMVAの一部としてコードされる。
【0107】
CD40は、B細胞、マクロファージ及び樹状細胞を含む多くの種類の細胞上に構成的に発現するが、そのリガンドCD40Lは、主に活性化ヘルパーT細胞上に発現する。感染または免疫後の早い段階における、樹状細胞とヘルパーT細胞との同族相互作用により、樹状細胞に、CTL応答をプライミングすることが「許諾」される。樹状細胞への許諾により、共刺激分子がアップレギュレートされ、生存率が上昇し、クロスプレゼンテーション能が向上する。このプロセスは主に、CD40/CD40L相互作用によって媒介される。しかしながら、CD40Lでは、多様な刺激を誘導する、膜結合型の構成から、可溶性(単量体または三量体)の構成まで、様々な構成が説明されており、APCの活性化、増殖及び分化を誘導または抑制する。
【0108】
1つ以上の好ましい実施形態では、CD40Lは、本発明のMVAによってコードされる。1つ以上の他の好ましい実施形態では、CD40Lは、ヒトCD40Lである。さらに好ましい実施形態では、そのCD40Lは、配列番号1との同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である配列、すなわち、配列番号1に示されているアミノ酸配列と異なるアミノ酸が10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満または1個未満である配列を有するアミノ酸をコードする核酸を含む。さらに好ましい実施形態では、そのCD40Lは、配列番号1を含むアミノ酸をコードする核酸を含む。追加の実施形態では、CD40Lをコードする核酸は、配列番号2との同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列、すなわち、その配列において、配列番号2に示されている核酸配列と異なる核酸が20個未満、10個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満または1個未満である核酸配列を含む。より好ましい実施形態では、そのCD40Lは、配列番号2を含む核酸を含む。
【0109】
免疫チェックポイント分子アンタゴニスト
本明細書に記載されているように、少なくとも一態様では、本発明は、免疫チェックポイントアンタゴニストを使用することを含む。このような免疫チェックポイントアンタゴニストは、免疫チェックポイント分子の機能に干渉し、及び/またはその機能をブロックするように機能する。いくつかの好ましい免疫チェックポイントアンタゴニストとしては、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム死リガンド1(PD-L1)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、ならびにT細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン3(TIM-3)が挙げられる。
【0110】
加えて、例示的な免疫チェックポイントアンタゴニストとしては、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM-3、Igドメイン及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、ならびにT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)を挙げることができるが、これらに限らない。
【0111】
このような免疫チェックポイント分子アンタゴニストとしては、免疫チェックポイント分子に特異的に結合して、その免疫チェックポイント分子の生物学的な活性及び機能を阻害及び/またはブロックする抗体を挙げることができる。
【0112】
他の免疫チェックポイント分子アンタゴニストとしては、免疫チェックポイント分子の発現に干渉するアンチセンス核酸RNA、及び免疫チェックポイント分子の発現に干渉する低分子干渉RNAを挙げることができる。
【0113】
加えて、アンタゴニストは、免疫チェックポイントの機能を阻害またはブロックする低分子の形態であることができる。これらの低分子のいくつかの非限定的な例としては、NP12(Aurigene)、Tsinghua Univによる(D)PPA-1、高親和性PD-1(Stanford)、BMS-202及びBMS-8(Bristol Myers Squibb(BMS))、CA170/CA327(Curis/Aurigene)、ならびにCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3及びTIM-3の低分子阻害剤が挙げられる。
【0114】
加えて、アンタゴニストは、免疫チェックポイント分子の機能を阻害またはブロックするAnticalin(登録商標)の形態であることができる。例えば、Rotheらの文献((2018)BioDrugs 32(3):233-243)を参照されたい。
【0115】
加えて、アンタゴニストは、Affimer(登録商標)の形態であることができることが想定されている。Affimerは、免疫チェックポイント分子の機能を阻害またはブロックするFc融合タンパク質である。免疫チェックポイントアンタゴニストとして機能できる他の融合タンパク質は、免疫チェックポイント融合タンパク質(例えば抗PD-1タンパク質AMP-224)、及びUS2017/0189476に記載されているような抗PD-L1タンパク質である。
【0116】
免疫チェックポイント分子アンタゴニスト候補は、当該技術分野において知られている様々な技法及び/または本願で開示されている様々な技法によって、インビトロまたはマウスモデルで、機能(免疫チェックポイント分子の機能に干渉する能力など)に関してスクリーニングできる。
【0117】
ICOSアゴニスト本発明は、ICOSアゴニストをさらに含む。ICOSアゴニストは、ICOSを活性化する。ICOSは、活性化T細胞上に発現する正の共刺激分子であり、そのリガンドに結合すると、活性化T細胞の増殖を促す(Dong(2001)Nature 409:97-101)。
【0118】
一実施形態では、そのアゴニストは、ICOSの天然のリガンドであるICOS-Lである。そのアゴニストは、結合特性及び活性化特性を保持する変異形態のICOS-Lであることができる。変異形態のICOS-Lは、インビトロで、ICOSを刺激する活性についてスクリーニングできる。
【0119】
免疫チェックポイントアンタゴニストまたは免疫チェックポイントアゴニストの抗体。好ましい実施形態では、免疫チェックポイント分子アンタゴニスト及び/または免疫チェックポイント分子アゴニストはそれぞれ、抗体を含む。本明細書に記載されているように、様々な実施形態では、その抗体は、合成のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることができ、当該技術分野において周知の技法によって作製できる。このような抗体は、その抗体の抗原結合部位を介して、その免疫チェックポイント分子に、(非特異的結合とは対照的に)特異的に結合する。免疫原と免疫反応する抗体を作製する際には、免疫チェックポイントのペプチド、断片、バリアント、融合タンパク質などをその免疫原として用いることができる。より具体的には、そのポリペプチド、断片、バリアント、融合タンパク質などは、抗体の形成を誘発する抗原決定基、すなわちエピトープを含む。
【0120】
より好ましい実施形態では、本発明の抗体は、ヒトがん患者の治療用として、主権国家の政府から認可されている抗体、または認可プロセスにある抗体である。すでに認可済みであるか、または認可プロセスにあるこれらの抗体のいくつかの非限定的な例としては、CTLA-4(イピリムマブ(登録商標)及びトレメリムマブ)、PD-1(ペムブロリズマブ、ランブロリズマブ、アンプリミューン-224(AMP-224))、アンプリミューン-514(AMP-514)、ニボルマブ、MK-3475(Merck)、BI754091(Boehringer Ingelheim))、PD-L1(アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MPDL3280A(Roche)、MED14736(AZN)、MSB0010718C(Merck))、LAG-3(IMP321、BMS-986016、BI754111(Boehringer Ingelheim)、LAG525(Novartis)、MK-4289(Merck)、TSR-033(Tesaro))が挙げられる。
【0121】
例示的な一態様では、免疫チェックポイント分子CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOS、ならびにCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのアミノ酸配列ベースのペプチドを用いて、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3またはICOSに特異的に結合する抗体を調製できる。「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、その断片(F(ab’)2断片及びFab断片、一本鎖可変断片(scFv)、単一ドメイン抗体断片(VHHまたはナノボディ)、二価抗体断片(ダイアボディ)など)、ならびに組み換え及び合成によって作製したいずれかの結合パートナーが含まれるように意図されている。
【0122】
腫瘍関連抗原(TAA)に特異的な抗体本発明の様々な実施形態では、本明細書に記載されている組み換えMVA及び方法は、TAAに特異的な抗体と組み合わせるか、またはその抗体と組み合わせて投与する。より具体的な実施形態では、本明細書に記載されている組み換えMVA及び方法は、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的な抗体と組み合わせるか、またはその抗体と組み合わせて投与する。当該技術分野では、多くのがんにおいて、1つ以上の抗原が、その腫瘍細胞膜上に発現または過剰発現すると理解されている。例えば、Durig et al.(2002)Leukemia 16:30-5、Mocellin et al.(2013)Biochim. Biophys. Acta 1836:187-96、Arteaga(2011)Nat.Rev.Clin.Oncol.,doi:10.1038/nrclinonc.2011.177、Finn(2017)Cancer Immunol. Res.5:347-54、Ginaldi et al.(1998)J.Clin.Pathol.51:364-9を参照されたい。抗原が腫瘍細胞上に発現または過剰発現しているか判断するアッセイは、特定の抗原に対する抗体の作製方法とともに、当該技術分野において容易に理解される(上記文献を参照されたい)。
【0123】
より具体的な実施形態では、本発明の併用医薬及び関連する方法は、抗体を含み、その抗体は、a)腫瘍の細胞膜上に発現する抗原に特異的であり、b)Fcドメインを含む。少なくとも1つの態様では、その抗体の特徴(例えばa)及びb))によって、その抗体が、NK細胞、マクロファージ、好塩基球、好中球、好酸球、単球、マスト細胞及び/または樹状細胞のようなエフェクター細胞に結合し、その細胞と相互作用できるようになるとともに、その抗体が、腫瘍細胞上に発現する腫瘍抗原に結合できるようになる。好ましい実施形態では、その抗体は、Fcドメインを含む。追加の好ましい実施形態では、その抗体は、NK細胞に結合して、その細胞と相互作用することができる。
【0124】
腫瘍細胞上に発現する抗原に対するいくつかの例示的な抗体であって、本開示によって想定されている抗体としては、抗CD20(例えば、リツキシマブ、オファツムマブ、トシツモマブ)、抗CD52(例えばアレムツズマブCampath(登録商標))、抗EGFR(例えば、セツキシマブErbitux(登録商標)、パニツムマブ)、抗CD2(例えばシプリズマブ)、抗CD37(例えばBI836826)、抗CD123(例えばJNJ-56022473)、抗CD30(例えばXmAb2513)、抗CD38(例えばダラツムマブDarzalex(登録商標))、抗PDL1(例えば、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ)、抗GD2(例えば、3F8、ch14.18、KW-2871、ジヌツキシマブ)、抗CEA、抗MUC1、抗FLT3、抗CD19、抗CD40、抗SLAMF7、抗CCR4、抗B7-H3、抗ICAM1、抗CSF1R、抗CA125(例えばオレゴボマブ)、抗FRα(例えばMOv18-IgG1、ミルベツキシマブソラブタンシン(IMGN853)、MORAb-202)、抗メソセリン(例えばMORAb-009)、抗TRP2、ならびに抗HER2(例えば、トラスツズマブ、ハジュマ、ABP980及び/またはペルツズマブ)が挙げられるが、これらに限らない。
【0125】
より好ましい実施形態では、本発明の一部として含まれる抗体には、患者に投与すると、腫瘍細胞上の対応する抗原に結合して、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を誘導する抗体が含まれる。さらに好ましい実施形態では、その抗体は、がんの治療用として認可済みまたは認可前の状態である抗体を含む。
【0126】
さらに好ましい実施形態では、その抗体は、抗HER2抗体、抗EGFR抗体及び/または抗CD20抗体である。
【0127】
最も好ましい実施形態では、抗HER2抗体は、ペルツズマブ、トラスツズマブ、ハジュマ、ABP980及びアド-トラスツズマブエムタンシンから選択されている。
【0128】
最も好ましい実施形態では、抗EGFR抗体はセツキシマブであり、抗CD20はリツキシマブである。
【0129】
本明細書に記載されているように、様々な実施形態では、その抗体は、合成のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることができ、当該技術分野において周知の技法によって作製できる。このような抗体は、その抗体の抗原結合部位を介して、TAAに(非特異的結合とは対照的に)特異的に結合する。免疫原と免疫反応する抗体を作製する際には、TAAのペプチド、断片、バリアント、融合タンパク質などをその免疫原として用いることができる。より具体的には、そのポリペプチド、断片、バリアント、融合タンパク質などは、抗体の形成を誘発する抗原決定基、すなわちエピトープを含む。
【0130】
抗体
本発明の様々な実施形態では、本明細書に記載されている組み換えMVA及び方法は、1)免疫チェックポイントアンタゴニストもしくは免疫チェックポイントアゴニストである抗体、または2)TAA特異的抗体のいずれかと組み合わせ、及び/またはその抗体と組み合わせて投与する。
【0131】
その抗体は、合成のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることができ、当該技術分野において周知の技法によって作製できることが想定されている。このような抗体は、その抗体の抗原結合部位を介して、免疫チェックポイント分子またはTAAに(非特異的結合とは対照的に)特異的に結合する。免疫原と免疫反応する抗体を作製する際には、免疫チェックポイント及び/またはTAAのペプチド、断片、バリアント、融合タンパク質などをその免疫原として用いることができる。より具体的には、そのポリペプチド、断片、バリアント、融合タンパク質などは、抗体の形成を誘発する抗原決定基、すなわちエピトープを含む。
【0132】
これらの抗原決定基、すなわちエピトープは、線状エピトープまたは立体構造(不連続)エピトープのいずれであることもできる。線状エピトープは、ポリペプチドのうちの単一のアミノ酸セクションで構成され、立体構造エピトープ、すなわち不連続エピトープは、ポリペプチド鎖の異なる領域に由来する複数のアミノ酸セクションであって、タンパク質フォールディングにより、近接するようになるアミノ酸セクションで構成される(Janeway,Jr.and Travers,Immuno Biology 3:9(Garland Publishing Inc.,2nd ed.1996))。折り畳まれたタンパク質は、複雑な表面を有するので、利用可能なエピトープの数は非常に多い。しかしながら、タンパク質の立体構造及び立体障害性により、それらのエピトープに実際に結合する抗体の数は、利用可能なエピトープの数よりも少ない(Janeway,Jr.and Travers,Immuno Biology 2:14(Garland Publishing Inc.,2nd ed.1996))。エピトープは、当該技術分野において知られている方法のいずれかによって特定できる。
【0133】
TAA、またはCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3もしくはICOSのような免疫チェックポイント分子に特異的に結合し、その機能をブロックする抗体(「アンタゴニスト抗体」)またはその機能を増強/活性化する抗体(「アゴニスト抗体」)が、scFV断片を含め、本発明に含まれる。このような抗体は、従来の手段によって作製できる。
【0134】
一実施形態では、本発明には、TAAまたは免疫チェックポイント分子に対するモノクローナル抗体であって、そのTAAまたは免疫チェックポイント分子の機能をブロックする抗体(「アンタゴニスト抗体」)、またはその機能を増強/活性化する抗体(「アゴニスト抗体」)が含まれる。
【0135】
抗体は、その標的に、高いアビディティかつ高い特異性で結合できる。それらの抗体は、その抗体結合部位が、2つのタンパク質(例えば、PD-1とその標的リガンド)間の相互作用部位に近接すると、それらのタンパク質間の相互作用を立体的に阻害できる比較的大きい分子(約150kDa)である。本発明にはさらに、免疫チェックポイント分子リガンド結合部位のすぐ近くにあるエピトープに結合する抗体が含まれる。
【0136】
様々な実施形態では、本発明には、分子間相互作用(例えばタンパク質間相互作用)に干渉する抗体、及び分子内相互作用(例えば、分子内の立体構造の変化)を妨げる抗体が含まれる。抗体は、免疫チェックポイント分子の生物学的な活性をブロックするか、または増強/活性化する能力についてスクリーニングできる。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体のいずれも、従来の技法によって調製できる。
【0137】
例示的な一態様では、TAAまたは免疫チェックポイント分子CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOS、ならびにTAAまたはCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのアミノ酸配列ベースのペプチドを用いて、TAA、またはCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3もしくはICOSに特異的に結合する抗体を調製できる。「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、その断片(F(ab’)2断片及びFab断片、一本鎖可変断片(scFv)、単一ドメイン抗体断片(VHHまたはナノボディ)、二価抗体断片(ダイアボディ)など)、ならびに組み換え及び合成によって作製したいずれかの結合パートナーが含まれるように意図されている。別の例示的な態様では、抗体は、免疫チェックポイント分子に、Kd約107M-1以上で結合する場合には、免疫チェックポイント分子に特異的に結合するものと定義する。結合パートナーまたは抗体の親和性は、従来の技法、例えばScatchardらが説明した技法((1949)Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660)を用いて、容易に求めることができる。
【0138】
ポリクローナル抗体は、様々な供給源、例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ニワトリ、ウサギ、マウスまたはラットから、当該技術分野において周知である手順を用いて、容易に作製できる。概して、精製したTTAもしくはCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOS、またはCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのアミノ酸配列ベースのペプチドであって、適切にコンジュゲートされているペプチドを宿主動物に、典型的には非経口注射によって投与する。ブースター免疫後、少量の血清試料を採取し、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのポリペプチドに対する反応性について試験する。このような測定に有用である各種アッセイの例としては、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane(eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988に記載されているアッセイ、ならびに、向流免疫電気泳動(CIEP)、ラジオイムノアッセイ、放射性免疫沈降法、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ドットプロットアッセイ及びサンドイッチアッセイのような手順が挙げられる。米国特許第4,376,110号及び同第4,486,530号を参照されたい。
【0139】
モノクローナル抗体は、周知の手順を用いて、容易に調製できる。例えば、米国特許再発行特許第32,011号、米国特許第4,902,614号、同第4,543,439号、同第4,411,993号、Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,Kennett,McKeam,and Bechtol(eds.)(1980)に記載されている手順を参照されたい。
【0140】
例えば、マウスのような宿主動物に、単離及び精製した免疫チェックポイント分子を少なくとも1回、好ましくは、約3週間の間隔で少なくとも2回、腹腔内注射できる。続いて、従来のドットプロット法または抗体捕捉(ABC)によって、マウス血清をアッセイして、融合するにはどのマウスが最良かを判断する。約2~3週間後、そのマウスに、免疫チェックポイント分子の静脈内ブーストを行う。その後、マウスを殺処分し、確立されたプロトコールに従って、脾臓細胞を市販のミエローマ細胞(Ag8.653(ATCC)など)と融合する。簡潔に述べると、ミエローマ細胞を培地中で数回洗浄し、1つのミエローマ細胞に対して約3個の脾臓細胞という比率で、マウス脾臓細胞に融合する。融合剤は、当該技術分野において用いられているいずれかの好適な融合剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)であることができる。融合細胞を選択的に成長させる培地を含むプレートに、融合細胞を播種する。続いて、融合細胞を約8日間成長させることができる。得られたハイブリドーマの上清を回収し、最初にヤギ抗マウスIgでコーティングしたプレートに加える。洗浄後、標識免疫チェックポイント分子ポリペプチドのような標識を各ウェルに加えてから、インキュベートする。その後、陽性のウェルを検出することができる。陽性のクローンをバルク培養で成長させることができ、その後、上清をプロテインAカラム(Pharmacia)で精製する。
【0141】
本発明のモノクローナル抗体は、Alting-Meesらの文献((1990)Strategies in Mol.Biol.3:1-9,“Monoclonal Antibody Expression Libraries:A Rapid Alternative to Hybridomas”)に記載されているような代替的な技法を用いて作製でき、この文献は、参照により、本明細書に援用される。同様に、結合パートナーは、特異的結合抗体をコードする遺伝子の可変領域を導入するための組み換えDNA技法を用いて構築できる。このような技法は、Larrick et al.((1989)Biotechnology 7:394)に記載されている。
【0142】
従来の技法によって作製できる、このような抗体の抗原結合断片も、本発明に含まれる。このような断片の例としては、Fab断片及びF(ab’)2断片が挙げられるが、これらに限らない。遺伝子操作技法によって作製される抗体断片及び誘導体も提供する。
【0143】
本発明のモノクローナル抗体には、キメラ抗体、例えば、ヒト化型のマウスモノクローナル抗体が含まれる。このようなヒト化抗体は、既知の技法によって調製でき、その抗体をヒトに投与したときに、免疫原性が低下するという利点をもたらすことができる。一実施形態では、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス抗体の可変領域(またはその抗原結合部位のみ)と、ヒト抗体に由来する定常領域を含む。あるいは、ヒト化抗体断片は、マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位と、ヒト抗体に由来する可変領域断片(抗原結合部位が欠損している)を含むことができる。キメラ抗体、及びさらに操作されたモノクローナル抗体の作製手順としては、Riechmannらの文献((1988)Nature 332:323)、Liuらの文献((1987)Proc.Nat’l. Acad.Sci.84:3439)、Larrickらの文献((1989)Bio/Technology 7:934)、ならびにWinter及びHarrisの文献((1993)TIPS 14:139)に記載されている手順が挙げられる。抗体をトランスジェニックに作製する手順は、GB2,272,440、ならびに米国特許第5,569,825号及び同第5,545,806号に見ることができ、これらの特許はいずれも、参照により、本明細書に援用される。
【0144】
遺伝子操作法によって作製した抗体(ヒト部分及び非ヒト部分の両方を含むキメラモノクローナル抗体及びヒト化モノクローナル抗体など)であって、標準的な組み換えDNA技法を用いて作製できる抗体を使用できる。このようなキメラモノクローナル抗体及びヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野において知られている標準的なDNA技法を用いる遺伝子操作によって、例えば、Robinsonらの国際公開第WO87/02671号、Akiraらの欧州特許出願公開第0184187号、Taniguchi,M.の欧州特許出願公開第0171496号、Morrisonらの欧州特許出願公開第0173494号、Neubergerらの国際公開第WO86/01533号、Cabillyらの米国特許第4,816,567号、Cabillyらの欧州特許出願公開第0125023号、Better et al.,(1988)Science 240:1041-1043、Liu et al.(1987)Proc.Nat’l. Acad.Sci.84:3439-3443、Liu et al.(1987)J.Immunol.139:3521-3526、Sun et al.(1987)Proc.Nat’l. Acad.Sci.84:214-218、Nishimura et al.(1987)Cancer Res.47:999-1005、Wood et al.(1985)Nature 314:446-449、Shaw et al.(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553-1559)、Morrison(1985)Science 229:1202-1207、Oi et al.(1986)BioTechniques 4:214、Winterの米国特許第5,225,539号、Jones et al.(1986)Nature 321:552 525、Verhoeyan et al.(1988)Science 239:1534及びBeidler et al.(1988)J.Immunol.141:4053-4060に記載されている方法を用いて作製できる。
【0145】
合成及び半合成の抗体に関しては、そのような用語は、抗体断片、アイソタイプスイッチ抗体、ヒト化抗体(例えば、マウス-ヒト抗体、ヒト-マウス抗体)、ハイブリッド、複数の特異性を有する抗体、及び完全合成の抗体様分子(ただし、これらに限らない)を網羅するように意図されている。
【0146】
治療用途では、患者の、抗体に対する免疫応答を最小限にするために、ヒトの定常領域及び可変領域を有する「ヒト」モノクローナル抗体が好ましい場合が多い。このような抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含むトランスジェニック動物を免疫することよって作製できる。Jakobovits et al. Ann NY Acad Sci 764:525-535(1995)を参照されたい。
【0147】
TAAまたは免疫チェックポイント分子に対するヒトモノクローナル抗体は、対象のリンパ球に由来するmRNAから調製した、免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のcDNAを用いて、FabファージディスプレイライブラリーまたはscFvファージディスプレイライブラリーのようなコンビナトリアルな免疫グロブリンライブラリーを構築することによって調製することもできる。例えば、McCaffertyらの国際公開第WO92/01047号、Marks et al.(1991)J.Mol.Biol.222:581-597、及びGriffths et al.(1993)EMBO J.12:725-734を参照されたい。加えて、抗体可変領域のコンビナトリアルなライブラリーは、既知のヒト抗体を変異させることによって作製できる。例えば、ランダムに改変された変異誘発済みオリゴヌクレオチドを例えば用いることによって、免疫チェックポイント分子と結合することが知られているヒト抗体の可変領域を変異させて、変異可変領域のライブラリーを作製することができ、続いて、その免疫チェックポイント分子に結合するように、そのライブラリーをスクリーニングできる。免疫グロブリンの重鎖及び/または軽鎖のCDR領域内でランダム変異誘発を誘導する方法、ランダム化した重鎖及び軽鎖を掛け合わせて、対を形成する方法、ならびにスクリーニング方法は、例えば、Barbasらの国際公開第WO96/07754号、Barbas et al.(1992)Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:4457-4461に見ることができる。
【0148】
免疫グロブリンライブラリーは、ディスプレイパッケージの集団、好ましくは、繊維状ファージに由来するディスプレイパッケージの集団によって発現させて、抗体ディスプレイライブラリーを形成することができる。抗体ディスプレイライブラリーを作製する際に用いるのに特に適する方法及び試薬の例は、例えば、Ladnerらの米国特許第5,223,409号、Kangらの国際公開第WO92/18619号、Dowerらの国際公開第WO91/17271号、Winterらの国際公開第WO92/20791号、Marklandらの国際公開第WO92/15679号、Breitlingらの国際公開第WO93/01288号、McCaffertyらの国際公開第WO92/01047号、Garrardらの国際公開第WO92/09690号、Ladnerらの国際公開第WO90/02809号、Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370 1372、Hay et al.(1992)Hum Antibod Hybridomas 3:81-85、Huse et al.(1989)Science 246:1275-1281、Griffths et al.(1993)supra、Hawkins et al.(1992)J.Mol.Biol.226:889-896、Clackson et al.(1991)Nature 352:624-628、Gram et al.(1992)Proc.Nat’l. Acad.Sci.89:3576-3580、Garrad et al.(1991)Bio/Technology 9:1373-1377、Hoogenboom et al.(1991)Nucl.Acid Res.19:4133-4137及びBarbas et al.(1991)Proc.Nat’l. Acad.Sci.88:7978-7982に見ることができる。ディスプレイパッケージ(例えば繊維状ファージ)の表面に提示させたら、その抗体ライブラリーをスクリーニングして、TAAまたは免疫チェックポイント分子と結合する抗体を発現するパッケージを特定及び単離する。
【0149】
組み換えMVA
本発明のより好ましい実施形態では、本発明で開示されている1つ以上のタンパク質及びヌクレオチドは、組み換えMVAに含まれている。本開示によって説明及び例示されているように、様々な態様において、本開示の組み換えMVAの静脈内投与により、がん患者における免疫応答の増強が誘導される。したがって、1つ以上の好ましい実施形態では、本発明は、本明細書に記載されているTAAのうちの1つ以上をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAを含む。
【0150】
本発明を実施する際に有用であるとともに、ブダペスト条約の規定下で寄託されているMVAウイルス株の例は、European Collection of Animal Cell Cultures(ECACC),Vaccine Research and Production Laboratory,Public Health Laboratory Service,Centre for Applied Microbiology and Research(Porton Down,Salisbury,Wiltshire SP4 0JG,United Kingdom)に、寄託番号ECACC94012707で、1994年1月27日に寄託されたMVA572株、及びECACC00120707で、2000年12月7日に寄託されたMVA575株であり、2000年8月30日に、European Collection of Cell Cultures(ECACC)に、V00083008という番号で寄託されたMVA-BN株及びその誘導体が、追加の例示的な株である。
【0151】
MVA-BNの「誘導体」とは、本明細書に記載されているようなMVA-BNと本質的に同じ複製特性を示すが、そのゲノムの部分の1つ以上が異なるウイルスを指す。MVA-BN及びその誘導体は、複製能力がなく、複製能力がないとは、インビボ及びインビトロで、増殖的に複製できないことを意味する。より具体的には、インビトロのMVA-BNまたはその誘導体は、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)で増殖的に複製できるが、ヒトケラチノサイト細胞株HaCat(Boukamp et al.(1988)J.Cell Biol.106:761-771)、ヒト骨肉腫細胞株143B(ECACC受託番号91112502)、ヒト胎児腎細胞株293(ECACC受託番号85120602)及びヒト子宮頸癌細胞株HeLa(ATCC受託番号CCL-2)では増殖的に複製できないものとして説明されている。加えて、MVA-BNまたはその誘導体は、Hela細胞及びHaCaT細胞株において、ウイルス増幅率が、MVA-575の少なくとも2分の1、より好ましくは3分の1である。MVA-BN及びその誘導体のこれらの特性に関する試験及びアッセイは、WO02/42480(米国特許出願公開第2003/0206926号)及びWO03/048184(米国特許出願公開第2006/0159699号)に記載されている。
【0152】
上の段落に記載されているように、インビトロで、ヒト細胞株において「増殖的に複製できない」または「増殖的複製能がない」という用語は、例えば、WO02/42480で説明されており、この特許には、上述のような所望の特性を有するMVAを得る方法も教示されている。この用語は、WO02/42480または米国特許第6,761,893号に記載されているアッセイを使用して、感染後4日でインビトロでウイルス増幅率が1未満であるウイルスに当てはまる。
【0153】
「生殖複製の失敗」という用語は、感染後4日で1未満という、前段落に記載されているような、インビトロでのヒト細胞株におけるウイルス増幅率を有するウイルスを指す。WO02/42480または米国特許第6,761,893号に記載されているアッセイは、ウイルス増幅率の決定に適用可能である。
【0154】
前の段落で説明したように、インビトロでのヒト細胞株におけるウイルスの増幅または複製は、通常、「増幅率」と呼ばれる、感染細胞から産生されたウイルス(出力)と、最初の位置で細胞に感染するために最初に使用された量(入力)との比率として表される。増幅率「1」は、感染細胞から産生されるウイルスの量が、細胞に感染するために最初に使用された量と同じである増幅状態を定義し、すなわち、感染細胞とはウイルスの感染及び再生を許容するということである。これに対して、増幅率が1未満であること、すなわち、侵入量よりも産生量が少ないことにより、増殖的に複製されていないこと、すなわち、ウイルスの減弱が示される。
【0155】
本明細書では、「アジュバント作用」とは、組み換えMVAの特定のコードタンパク質または成分によって、その組み換えMVAの他のコードタンパク質(複数可)または成分(複数可)がもたらす免疫応答が増大することであるように意図されている。
【0156】
発現カセット/制御配列様々な態様では、本明細書に記載されている1つ以上の核酸は、1つ以上の発現カセット内に組み込まれており、このカセットでは、その1つ以上の核酸が、発現制御配列に機能的に連結されている。「機能的に連結された」とは、記載されている構成要素が、意図した形式で機能可能になる関係にあること、例えば、プロモーターに、核酸を転写させて発現させるような関係にあることを意味する。コード配列に機能的に連結された発現制御配列は、そのコード配列の発現が、その発現制御配列と適合する条件下で行われるように連結されている。発現制御配列としては、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質をコードするオープンリーディングフレームの初めにある開始コドン、イントロンのスプライシングシグナル、及びフレーム内終止コドンが挙げられるが、これらに限らない。好適なプロモーターとしては、SV40初期プロモーター、RSVプロモーター、レトロウイルスLTR、アデノウイルス主要後期プロモーター、ヒトCMV前初期Iプロモーター、ならびに各種ポックスウイルスプロモーター(30Kプロモーター、I3プロモーター、PrSプロモーター、PrS5Eプロモーター、Pr7.5K、PrHybプロモーター、Pr13.5ロングプロモーター、40Kプロモーター、MVA-40Kプロモーター、FPV 40Kプロモーター、30kプロモーター、PrSynIImプロモーター、PrLE1プロモーター及びPR1238プロモーターといったワクシニアウイルスまたはMVA由来のプロモーター及びFPV由来のプロモーターが挙げられるが、これらに限らない)が挙げられるが、これらに限らない。追加のプロモーターは、WO2010/060632、WO2010/102822、WO2013/189611、WO2014/063832及びWO2017/021776にさらに記載されており、これらの特許は、参照により、本明細書に全体が援用される。
【0157】
追加の発現制御配列としては、リーダー配列、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、ならびに所望の宿主系において、所望の組み換えタンパク質(例えば、HER2、Brachyury及び/またはCD40L)をコードする核酸配列の適切な転写及びその後に行われる翻訳に必要ないずれかの他の配列が挙げられるが、これらに限らない。本発明のポックスウイルスベクターは、所望の宿主系において、核酸配列を含む発現ベクターの移入及びその後に行われる複製に必要な追加のエレメントも含んでよい。当業者はさらに、このようなベクターが、従来の方法(Ausubel et al.(1987)in“Current Protocols in Molecular Biology,”John Wiley and Sons,New York,N.Y.)を用いて容易に構築されるとともに、市販されていることを理解するであろう。
【0158】
本発明の併用剤の投与方法及び投与レジメン
1つ以上の態様では、本発明の併用剤は、同種及び/または異種でのプライム-ブーストレジメンの一部として投与できる。
図7に示されているデータによって部分的に示されているように、同種でのプライムブーストレジメンは、対象の特異的なCD8 T細胞応答及びCD4 T細胞応答を増大させる。したがって、1つ以上の実施形態では、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させるための併用剤及び/または方法であって、そのがん患者に、本開示の併用剤を投与することを含み、その併用剤を同種または異種でのプライム-ブーストレジメンの一部として投与する併用剤及び/または方法が存在する。
【0159】
導入遺伝子を含む組み換えMVAウイルスの作製
本発明で提供する組み換えMVAウイルスは、当該技術分野において知られている常法によって作製できる。組み換えポックスウイルスを得るか、または外来のコード配列をポックスウイルスゲノムに挿入するための方法は、当業者に周知である。例えば、DNAのクローニング、DNAの単離、RNAの単離、ウエスタンブロット解析、RT-PCR及びPCR増幅技法のような標準的な分子生物学的技法の方法は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(2nd ed.,J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))に記載されており、ウイルスの取扱い及び操作の技法は、Virology Methods Manual(Mahy et al.(eds.),Academic Press(1996))に記載されている。同様に、MVAの取扱い、操作及び遺伝子組み換えの技法及びノウハウは、Molecular Virology:A Practical Approach(Davison & Elliott(eds.),The Practical Approach Series,IRL Press at Oxford University Press,Oxford,UK(1993)(例えば、“Chapter 9:Expression of genes by Vaccinia virus vectors”を参照されたい)及びCurrent Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Son,Inc.(1998)(例えば、Chapter 16,Section IV:“Expression of proteins in mammalian cells using vaccinia viral vector”を参照されたい))に記載されている。
【0160】
本発明で開示されている様々な組み換えMVAウイルスの作製には、様々な方法を適用可能である場合がある。ウイルスに挿入されるDNA配列は、ポックスウイルスのDNAのセクションに相同なDNAが挿入されているE.coliプラスミド構築物に配置されてもよい。これとは別に、挿入するDNA配列は、プロモーターにライゲーションできる。このプロモーター-遺伝子連結体をプラスミドコンストラクト内に配置して、そのプロモーター-遺伝子連結体の両端が、非必須の座位を含むポックスウイルスDNA領域に隣接するDNA配列と相同なDNAと隣接するようにできる。得られたプラスミドコンストラクトは、E.coli菌内で増殖させることによって増幅して、単離することができる。挿入されるDNA遺伝子配列を含む単離されたプラスミドを、培養物がMVAウイルスに感染すると同時に、例えば、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)の細胞培養物にトランスフェクトしてもよい。プラスミド内の相同MVAウイルスDNAとウイルスゲノムとの間の組換えは、それぞれ、外来DNA配列の存在によって修飾されたポックスウイルスを生成し得る。
【0161】
好ましい実施形態によれば、細胞の好適な細胞培養物、例えばCEF細胞にMVAウイルスを感染させることができる。続いて、感染した細胞に、本開示で提供される1つ以上の核酸などの外来または異種の遺伝子(複数可)を含む第1のプラスミドベクターをトランスフェクトしてもよい(好ましくは、ポックスウイルス発現制御エレメントの転写制御下で)。上で説明したように、そのプラスミドベクターは、そのMVAウイルスゲノムの所定部分への外来配列の挿入を誘導できる配列も含む。任意に、そのプラスミドベクターは、ポックスウイルスプロモーターに機能的に連結されたマーカー遺伝子及び/または選択遺伝子を含むカセットも含む。好適なマーカー遺伝子または選択遺伝子は、例えば、緑色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、ネオマイシン-ホスホリボシルトランスフェラーゼまたはその他のマーカーをコードする遺伝子である。選択カセットまたはマーカーカセットの使用により、作製した組み換えポックスウイルスの特定及び単離が簡略になる。ただし、組み換えポックスウイルスは、PCR技術によっても識別され得る。その後、上記のようにして得た組み換えポックスウイルスを、さらなる細胞に感染させて、その細胞に、第2の外来遺伝子または異種の遺伝子を1つまたは複数含む第2のベクターをトランスフェクションすることができる。念のため、この遺伝子は、そのポックスウイルスゲノムの異なる挿入部位に導入するべきであり、その第2のベクターにおいても、そのポックスウイルスと相同な配列であって、そのポックスウイルスのゲノムへの1つまたは複数の第2の外来遺伝子の組み込みを誘導する配列が異なる。相同組み換えが行われた後、外来遺伝子または異種遺伝子を2つ以上含む組み換えウイルスを単離できる。追加の外来遺伝子をその組み換えウイルスに導入するには、前の感染工程で単離した組み換えウイルスを用いることによって、かつトランスフェクション用のさらなる外来遺伝子を1つまたは複数含むさらなるベクターを用いることによって、感染及びトランスフェクションの工程を繰り返すことができる。
【0162】
あるいは、上記のような、感染及びトランスフェクションの工程は、置き換えることが可能であり、すなわち、まず、外来遺伝子を含むプラスミドベクターによって、好適な細胞にトランスフェクションしてから、その細胞にポックスウイルスを感染させることができる。さらなる代替策として、各外来遺伝子を異なるウイルスに導入し、得られたすべての組み換えウイルスを細胞に共感染させ、すべての外来遺伝子を含む組み換え体についてスクリーニングすることも可能である。第3の代替策は、DNAゲノムと外来配列をインビトロでライゲーションし、ヘルパーウイルスを用いて、組み換えワクシニアウイルスDNAゲノムを再構築することである。第4の代替策は、E.coliまたは別の細菌種において、細菌人工染色体(BAC)としてクローニングしたMVAウイルスゲノムと、そのMVAウイルスゲノム内の所望の組み込み部位に隣接する配列と相同なDNA配列に挟まれた線状外来配列との間で相同組み換えを起こすことである。
【0163】
本開示の核酸の1つ以上は、MVAウイルスまたはMVAウイルスベクターの好適ないずれかの部分に挿入し得る。そのMVAウイルスの好適な部分は、MVAゲノムの非必須部分である。そのMVAゲノムの非必須部分は、そのMVAゲノムの遺伝子間領域または既知の欠失部位1~6であってよい。この代わりに、またはこれに加えて、その組み換えMVAの非必須部分は、MVAゲノムのコード領域のうち、ウイルスの成長には必須ではないコード領域であることができる。しかしながら、その挿入部位は、MVAゲノム内のこれらの好ましい挿入部位に限定されない。ニワトリ胚線維芽細胞(CEF細胞)のような少なくとも1つの細胞培養系において増幅及び増殖できる組み換え体を得ることが可能な限りは、そのウイルスゲノムのいずれの位置にも、本発明の核酸(例えば、HER2、Brachyury、HERV-K-env、HERV-K-gag、PRAME、FOLR1、CD40L及び/または4-1BBL)、ならびに本明細書に記載されているようないずれかの付随のプロモーターを挿入し得ることは、本発明の範囲内であるからである。
【0164】
好ましくは、本発明の核酸は、そのMVAウイルスの遺伝子間領域(IGR)の1つ以上に挿入してよい。「遺伝子間領域」という用語は好ましくは、そのMVAウイルスゲノムの隣接する2つのオープンリーディングフレーム(ORF)の間、好ましくは、そのMVAウイルスゲノムの2つの必須ORFの間に位置するウイルスゲノム部分を指す。MVAにおいては、特定の実施形態では、IGRは、IGR07/08、IGR44/45、IGR64/65、IGR88/89、IGR136/137及びIGR148/149から選択する。
【0165】
これに加えてまたはこの代わりに、MVAウイルスでは、ヌクレオチド配列は、そのMVAゲノムの既知の欠失部位、すなわち、欠失部位I、II、III、IV、VまたはVIのうちの1つ以上に挿入し得る。「既知の欠失部位」という用語は、CEF細胞での連続継代を通じて欠失したMVAゲノム部分を指し、この部分は、516代目の継代時に、そのMVAの由来元である親ウイルス、特には、例えばMeisinger-Henschelらの文献((2007)J.Gen. Virol.88:3249-3259)に記載されているような親漿尿膜ワクシニアウイルスアンカラ(CVA)のゲノムと比べて特徴付けられたものである。
【0166】
ワクチン
特定の実施形態では、本開示の組み換えMVAは、ワクチンの一部として配合できる。ワクチンの調製の際には、そのMVAウイルスを生理学的に許容可能な形態に変換できる。
【0167】
例示的な調製法は、以下のとおりである。精製ウイルスを5×108 TCID50/mlの力価で、10mMのTris、140mMのNaCl(pH7.4)に配合した状態で、-80℃で保存する。ワクチン注射剤の調製の際には、例えば、1×108~1×109個のウイルス粒子をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で、2%のペプトン及び1%のヒトアルブミンの存在下で、アンプル、好ましくはガラスアンプル内で凍結乾燥できる。あるいは、ワクチン注射剤は、ウイルスを調合物中で段階凍結乾燥することによって調製できる。特定の実施形態では、その調合物は、マンニトール、デキストラン、糖、グリシン、ラクトース、ポリビニルピロリドンのような追加の添加剤、またはインビボ投与に適する抗酸化剤、不活性ガス、安定剤、もしくは組み換えタンパク質(例えばヒト血清アルブミン)を含む(ただし、これらに限らない)その他の添加剤を含む。続いて、そのアンプルを密閉し、好適な温度、例えば4℃~室温で、数カ月保存することができる。しかしながら、必要がない限りは、そのアンプルは、好ましくは-20℃未満、最も好ましくは約-80℃の温度で保存する。
【0168】
ワクチン接種または療法を伴う様々な実施形態では、その凍結乾燥体は、0.1~0.5mlの水溶液、好ましくは、生理食塩水、または10mMのトリス、140mMのNaCl(pH7.7)のようなトリス緩衝液に溶解する。本開示の組み換えMVA、ワクチンまたは医薬組成物は、溶液において、104 ~1010 TCID50/ml、105~5×109 TCID50/ml、106~5×109 TCID50/mlまたは107~5×109 TCID50/mlの濃度範囲で配合できることが想定されている。ヒトに対して好ましい用量には、106~1010 TCID50が含まれ、106 TCID50、107 TCID50、108 TCID50、5×108 TCID50、109 TCID50、5×109 TCID50または1010 TCID50という用量が含まれる。投与用量及び投与数の最適化は、当業者の技術及び知見の範囲内である。
【0169】
1つ以上の好ましい実施形態では、本明細書に定められているように、本発明の組み換えMVAは、がん患者に静脈内投与する。他の実施形態では、本発明の組み換えMVAは、がん患者に腫瘍内投与する。他の実施形態では、本発明の組み換えMVAは、がん患者に静脈内投与及び腫瘍内投与の両方を同時または異なる時点に行う。
【0170】
追加の実施形態では、本発明の免疫チェックポイントアンタゴニストもしくは免疫チェックポイントアゴニスト、または好ましくは抗体は、全身投与または局所投与、すなわち、腹腔内経路、非経口経路、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、鼻腔内経路、皮内経路または熟練施術者に知られているいずれかの他の投与経路によって投与できる。
【0171】
キット、組成物及び使用方法
様々な実施形態では、本発明には、a)本明細書に記載されている核酸を含む組み換えMVA、及び/またはb)本明細書に記載されている1つ以上の抗体を含むキット、併用医薬、医薬組成物及び/または免疫原性併用剤が含まれる。
【0172】
そのキット及び/または組成物は、本開示の組み換えポックスウイルスの入った1つまたは複数の容器またはバイアル、本開示の抗体の入った1つ以上の容器またはバイアルを、その組み換えMVA及び抗体の投与に関する説明とともに含むことができることが想定されている。より具体的な実施形態では、そのキットは、最初のプライミング投与で、その組み換えMVA及び抗体を投与してから、その後に、その組み換えMVA及び抗体のブースティング投与を1回以上行うことについての説明を含むことができることが想定されている。
【0173】
本発明で提供するキット及び/または組成物は概して、薬学的に許容可能であり及び/または認可された担体、添加剤、抗生物質、保存剤、希釈剤及び/または安定剤を1つ以上含んでよい。このような補助物質は、水、生理食塩水、グリセロール、エタノール、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝物質などであることができる。好適な担体は典型的には、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質集合体などのようなゆっくり代謝される大きな分子である。
【0174】
特定の例示的な実施形態
実施形態1は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に腫瘍内投与することを含み、その組み換えMVAを腫瘍内投与すると、TAA及び抗原4-1BBLをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスを非腫瘍内注射する場合と比べて、その対象のそのがん性腫瘍における炎症応答が増強され、腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する方法である。
【0175】
実施形態2は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に静脈内投与することを含み、その組み換えMVAを静脈内投与すると、TAA及び抗原4-1BBLをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスを非静脈内注射する場合と比べて、ナチュラルキラー(NK)細胞応答が増強され、そのTAAに特異的なCD8 T細胞応答が増強される方法である。
【0176】
実施形態3は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に投与することを含み、その組み換えMVAを投与すると、組み換えMVA及び抗原4-1BBLを単独で投与する場合と比べて、その対象の腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する方法である。
【0177】
実施形態4は、対象のがん性腫瘍における炎症応答の増強を誘導する方法であって、その方法が、第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、抗原4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に腫瘍内投与することを含み、その組み換えMVAを腫瘍内投与すると、異種の腫瘍関連抗原及び抗原4-1BBLをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射によって生じる炎症応答と比べて、その腫瘍における炎症応答が増強される方法である。このような炎症応答の増強は、本明細書の別の箇所で論じられており、その増強としては例えば、NK細胞及びT細胞の誘導を挙げることができる。
【0178】
実施形態5は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、その方法が、内在性レトロウイルス抗原(ERV)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に投与することを含み、その組み換えMVAを投与すると、組み換えMVA及び抗原4-1BBLを単独で投与する場合と比べて、その対象の腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する方法である。
【0179】
実施形態6は、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法であって、その対象がヒトである方法である。
【0180】
実施形態7は、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法であって、そのTAAが、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質である方法である。
【0181】
実施形態8は、実施形態7に記載の方法であって、そのERVが、腫瘍細胞で発現するERVタンパク質である方法である。
【0182】
実施形態9は、実施形態7~8のいずれか1つに記載の方法であって、そのERVが、ヒト内在性レトロウイルスタンパク質K(HERV-K)ファミリーに由来する方法である。
【0183】
実施形態10は、実施形態9に記載の方法であって、そのHERV-Kタンパク質が、HERV-Kエンベロープタンパク質、HERV-K gagタンパク質及びHERV-K melタンパク質から選択されている方法である。
【0184】
実施形態11は、実施形態9に記載の方法であって、そのHERV-Kタンパク質が、HERV-Kエンベロープタンパク質、HERV-K gagタンパク質、HERV-K melタンパク質及びそれらの免疫原性断片から選択されている方法である。
【0185】
実施形態12は、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法であって、そのTAAが、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER-2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質1(TRP2)、Brachyury、FOLR1、PRAME、p15及びこれらを組み合わせたものからなる群から選択されている方法である。
【0186】
実施形態13は、実施形態1~6及び12のいずれか1つに記載の方法であって、そのTAAが、がん胎児性抗原(CEA)及びムチン1細胞表面関連(MUC-1)からなる群から選択されている方法である。
【0187】
実施形態14は、実施形態1~6、及び12のいずれか1つに記載の方法であって、そのTAAが、PAPまたはPSAからなる群から選択されている方法である。
【0188】
実施形態15は、実施形態1~6、12及び14のいずれか1つに記載の方法であって、そのTAAが、PSAである方法である。
【0189】
実施形態16は、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法であって、そのTAAが、5-α-レダクターゼ、α-フェトプロテイン(AFP)、AM-1、APC、April、Bメラノーマ抗原遺伝子(BAGE)、β-カテニン、Bcl12、bcr-abl、Brachyury、CA-125、カスパーゼ-8(CASP-8、FLICEとしても知られている)、カテプシン、CD19、CD20、CD21/補体受容体2(CR2)、CD22/BL-CAM、CD23/FcεRII、CD33、CD35/補体受容体1(CR1)、CD44/PGP-1、CD45/白血球共通抗原(「LCA」)、CD46/メンブレンコファクタープロテイン(MCP)、CD52/CAMPATH-1、CD55/崩壊促進因子(DAF)、CD59/プロテクチン、CDC27、CDK4、がん胎児性抗原(CEA)、c-myc、シクロオキシゲナーゼ-2(cox-2)、結腸直腸癌欠失遺伝子(「DCC」)、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、線維芽細胞成長因子-8a(FGF8a)、線維芽細胞成長因子-8b(FGF8b)、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、Gメラノーマ抗原遺伝子ファミリー(GAGE-ファミリー)、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、ガングリオシド2(GD2)/ガングリオシド3(GD3)/ガングリオシド-モノシアル酸-2(「GM2」)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、UDP-GlcNAc:R1Man(α1-6)R2[GlcNAc→Man(α1-6)]β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(GnT V)、GP1、gp100/Pme117、gp-100-in4、gp15、gp75/チロシン関連タンパク質-1(gp75/TRP-1)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヘパラナーゼ、HER2、ヒト乳房腫瘍ウイルス(HMTV)、70キロダルトンの熱ショックタンパク質(「HSP70」)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、インスリン様成長因子受容体-1(IGFR-1)、インターロイキン-13受容体(IL-13R)、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、メラノーマ抗原コード遺伝子1(MAGE-1)、メラノーマ抗原コード遺伝子2(MAGE-2)、メラノーマ抗原コード遺伝子3(MAGE-3)、メラノーマ抗原コード遺伝子4(MAGE-4)、マンマグロビン、MAP17、メラン-A/T細胞によって認識されるメラノーマ抗原-1(MART-1)、メソセリン、MIC A/B、MT-MMP、ムチン、精巣特異抗原NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、血小板由来成長因子(PDGF)、μPA、PRAME、プロバシン、プロジェニポイエチン、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、トランスフォーミング成長因子-α(TGF-α)、トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)、サイモシン-β-15、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、TP1、TRP-2、チロシナーゼ、血管内皮増殖因子(VEGF)、ZAG、p16INK4及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)からなる群、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER-2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質1(TRP2)、Brachyuryからなる群、ならびにこれらを組み合わせたものから選択されている方法である。
【0190】
実施形態17は、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法であって、その組み換えMVAが、抗原CD40Lをコードする第3の核酸をさらに含む方法である。
【0191】
実施形態18は、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法であって、少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストをその対象に投与することをさらに含む方法である。
【0192】
実施形態19は、実施形態18に記載の方法であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSから選択されている方法である。
【0193】
実施形態20は、実施形態18~19のいずれか1つに記載の方法であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストが、PD-1及び/またはPD-L1である方法である。
【0194】
実施形態21は、実施形態20に記載の方法であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストが、LAG-3をさらに含む方法である。
【0195】
実施形態22は、実施形態18~21のいずれか1つに記載の方法であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストが、抗体を含む方法である。
【0196】
実施形態23は、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法であって、第2のTAAに特異的な抗体をその対象に投与することをさらに含む方法である。
【0197】
実施形態24は、実施形態23に記載の方法であって、その第2のTAAに特異的な抗体が、腫瘍の細胞膜上に発現する抗原に特異的である方法である。
【0198】
実施形態25は、実施形態23に記載の方法であって、その第2のTAAに特異的な抗体が、a)腫瘍の細胞膜上に発現する抗原に特異的であり、b)Fcドメインを含む方法である。
【0199】
実施形態26は、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法で用いる医薬組成物である。
【0200】
実施形態27は、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法で用いるワクチンである。
【0201】
実施形態28は、がんである対象を治療するための組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、b)4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAである。
【0202】
実施形態29は、実施形態28に記載の組み換えMVAであって、そのTAAが、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質である組み換えMVAである。
【0203】
実施形態30は、実施形態29に記載の組み換えMVAであって、そのERVタンパク質が、ヒト内在性レトロウイルスタンパク質K(HERV-K)ファミリーに由来する。
【0204】
実施形態31は、実施形態30に記載の組み換えMVAであって、そのレトロウイルスタンパク質Kが、HERV-Kエンベロープタンパク質、HERV-K gagタンパク質及びHERV-K melタンパク質から選択されている組み換えMVAである。
【0205】
実施形態32は、実施形態28~31のいずれか1つに記載の組み換えMVAであって、CD40Lをコードする第3の核酸をさらに含む組み換えMVAである。
【0206】
実施形態33は、a)実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVAと、b)少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストとを含む併用医薬である。
【0207】
実施形態34は、実施形態33に記載の併用医薬であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSから選択されている併用医薬である。
【0208】
実施形態35は、実施形態34に記載の併用医薬であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストが、PD-1及び/またはPD-L1である併用医薬である。
【0209】
実施形態36は、実施形態35に記載の併用医薬であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストが、LAG-3をさらに含む併用医薬である。
【0210】
実施形態37は、実施形態33~36のいずれか1つに記載の併用医薬であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストが、抗体を含む併用医薬である。
【0211】
実施形態38は、a)実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVAと、b)第2のTAAに特異的な抗体とを含む併用医薬である。
【0212】
実施形態39は、実施形態38に記載の併用医薬であって、その第2のTAAに特異的な抗体が、腫瘍の細胞膜上に発現する抗原に特異的である併用医薬である。
【0213】
実施形態40は、実施形態39に記載の併用医薬であって、その第2のTAAに特異的な抗体が、a)腫瘍の細胞膜上に発現する抗原に特異的であり、b)Fcドメインを含む併用医薬である。
【0214】
実施形態41は、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の併用医薬であって、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させるのに用いるものである。
【0215】
実施形態42は、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の併用医薬であって、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法で用いるものであり、その方法が、実施形態28~32に記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、または実施形態33~40のいずれか1つに記載の併用医薬をその対象に腫瘍内投与することを含み、その腫瘍内投与により、TAA及び抗原4-1BBLをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスを非腫瘍内注射する場合と比べて、その対象のそのがん性腫瘍における炎症応答が増強され、腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇するものである。
【0216】
実施形態43は、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の併用医薬であって、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法で用いるものであり、その方法が、実施形態28~32に記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、または実施形態33~40のいずれか1つに記載の併用医薬をその対象に静脈内投与することを含み、その静脈内投与により、TAA及び抗原4-1BBLをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスを非静脈内投与する場合と比べて、その対象の腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇するものである。
【0217】
実施形態44は、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の併用医薬であって、がんである対象のがん性腫瘍における炎症応答の増強を誘導する方法で用いるものであり、その方法が、実施形態28~32に記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、または実施形態33~40のいずれか1つに記載の併用医薬をその対象に腫瘍内投与することを含み、その腫瘍内投与により、TAA及び抗原4-1BBLをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスを非腫瘍内注射する場合と比べて、その対象のがん性腫瘍における炎症応答が増強されるものである。
【0218】
実施形態45は、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の併用医薬であって、対象のがんを治療する方法で用いるものである。
【0219】
実施形態46は、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の併用医薬であって、がんを治療する方法で用いるものであり、そのがんが、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌、尿路上皮、子宮頸部または結腸直腸癌からなる群から選択されているものである。
【0220】
実施形態47は、実施形態44に記載の組み換えMVAであって、その炎症応答の増強が、その腫瘍に局在化する組み換えMVAである。
【0221】
実施形態48は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に腫瘍内投与することを含み、その組み換えMVAを腫瘍内投与すると、TAA及びCD40Lをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスを非腫瘍内注射する場合と比べて、その対象のそのがん性腫瘍における炎症応答が増強され、腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する方法である。
【0222】
実施形態49は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に静脈内投与することを含み、その組み換えMVAを静脈内投与すると、TAA及び抗原CD40Lをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスを非静脈内注射する場合と比べて、ナチュラルキラー(NK)細胞応答が増強され、そのTAAに特異的なCD8 T細胞応答が増強される方法である。
【0223】
実施形態50は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に投与することを含み、その組み換えMVAを投与すると、組み換えMVA及び抗原CD40Lを単独で投与する場合と比べて、その対象の腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する方法である。
【0224】
実施形態51は、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の併用医薬であって、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法で用いるものであり、その方法が、実施形態28~32に記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、または実施形態33~40のいずれか1つに記載の併用医薬をその対象に静脈内投与及び/または腫瘍内投与することを含み、前記静脈内投与及び/または腫瘍内投与により、1)TAAをコードする第1の核酸と、抗原4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAウイルス、2)TAAをコードする第1の核酸と、抗原CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAウイルス、または3)TAAをコードする第1の核酸と、抗原4-1BBLをコードする第2の核酸と、抗原CD40Lをコードする第3の核酸とを含む組み換えMVAウイルスの群から選択したいずれかのMVAを非静脈内または非腫瘍内投与する場合と比べて、その対象の腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇するものである。
【0225】
実施形態52は、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の併用医薬であって、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法で用いるものであり、その方法が、実施形態28~32に記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、または実施形態33~40のいずれか1つに記載の併用医薬をその対象に静脈内投与及び腫瘍内投与することを含み、前記静脈内投与及び腫瘍内投与により、1)TAAをコードする第1の核酸と、抗原4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAウイルス、2)TAAをコードする第1の核酸と、抗原CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAウイルス、または3)TAAをコードする第1の核酸と、抗原4-1BBLをコードする第2の核酸と、抗原CD40Lをコードする第3の核酸とを含む組み換えMVAウイルスの群から選択したいずれかのMVAを非静脈内投与または非腫瘍内投与する場合と比べて、その対象の腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇するものである。前記静脈内投与及び腫瘍内投与は、当業者には明らかなように、同時または異なる時点に行うことができる。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、前記方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に腫瘍内投与することを含み、前記組み換えMVAを腫瘍内投与すると、TAA及び抗原4-1BBLをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスを非腫瘍内注射する場合と比べて、前記がん性腫瘍における炎症応答が増強され、前記対象の腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する前記方法。
2.がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、前記方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に静脈内投与することを含み、前記組み換えMVAを静脈内投与すると、TAA及び抗原4-1BBLをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスを非静脈内注射する場合と比べて、ナチュラルキラー(NK)細胞応答が増強され、前記TAAに特異的なCD8 T細胞応答が増強される前記方法。
3.がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、前記方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を含む前記対象に投与することを含み、前記組み換えMVAを投与すると、組み換えMVA及び抗原4-1BBLを単独で投与する場合と比べて、前記対象の腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する前記方法。
4.対象のがん性腫瘍における炎症応答の増強を誘導する方法であって、前記方法が、第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、抗原4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に腫瘍内投与することを含み、前記組み換えMVAを腫瘍内投与すると、異種の腫瘍関連抗原及び抗原4-1BBLをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射によって生じる炎症応答と比べて、前記腫瘍における炎症応答が増強される前記方法。
5.前記対象が、ヒトである、上記1に記載の方法。
6.前記TAAが、腫瘍細胞で発現する内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質である、上記1に記載の方法。
7.前記ERVタンパク質が、ヒト内在性レトロウイルスK(HERV-K)ファミリーに由来し、HERV-Kエンベロープタンパク質及びHERV-K gagタンパク質から選択されている、上記6に記載の方法。
8.前記TAAが、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER-2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質1(TRP2)、Brachyury、PRAME、FOLR1、HERV-K-env、HERV-K-gag、p15、MEL及びこれらを組み合わせたものからなる群から選択されている、上記1に記載の方法。
9.がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、前記方法が、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に投与することを含み、前記組み換えMVAを投与すると、組み換えMVA及び抗原4-1BBLを単独で投与する場合と比べて、前記対象の腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する前記方法。
10.前記ERVタンパク質が、ヒト内在性レトロウイルスタンパク質K(HERV-K)ファミリー由来である、上記9に記載の方法。
11.前記レトロウイルスタンパク質Kが、HERV-Kエンベロープタンパク質及びHERV-K-gagタンパク質から選択されている、上記10に記載の方法。
12.前記組み換えMVAが、抗原CD40Lをコードする第3の核酸をさらに含む、上記1に記載の方法。
13.少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストを前記対象に投与することをさらに含む、上記1に記載の方法。
14.前記免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは前記免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのアンタゴニストまたはアゴニストから選択される、上記13に記載の方法。
15.前記免疫チェックポイント分子アンタゴニストが、抗体である、上記14に記載の方法。
16.がんの治療で用いる組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、b)4-1BBLをコードする第2の核酸とを含み、前記組み換えMVAを腫瘍内投与すると、前記組み換えMVAを非腫瘍内注射する場合と比べて、そのヒト患者のがん性腫瘍における炎症応答が増強され、前記がん性腫瘍のサイズが縮小し、及び/または全生存率が上昇する前記組み換えMVA。
17.c)CD40Lをコードする第3の核酸をさらに含む、上記16に記載の用途用の組み換えMVA。
18.前記TAAが、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質である、上記16に記載の用途用の組み換えMVA。
19.前記ERVタンパク質が、ヒト内在性レトロウイルスK(HERV-K)ファミリーに由来し、HERV-K-env及びHERV-K-gagから選択されている、上記18に記載の用途用の組み換えMVA。
20.前記TAAが、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER-2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質1(TRP2)、Brachyury、FOLR1、PRAME、HERV-K-env、HERV-K-gag、p15、MEL及びこれらを組み合わせたものからなる群から選択されている、上記16に記載の用途用の組み換えMVA。
21.がんである対象を治療するための組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、(a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、(b)4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む前記組み換えMVA。
22.前記TAAが、ヒト内在性レトロウイルスK(HERV-K)ファミリーのERVタンパク質である、上記21に記載の組み換えMVA。
23.前記ERVタンパク質が、HERV-K envタンパク質及びHERV-K gagタンパク質から選択されている、上記22に記載の組み換えMVA。
24.c)CD40Lをコードする第3の核酸をさらに含む、上記23に記載の組み換えMVA。
25.(a)上記24に記載の組み換えMVAと、(b)少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストとを含む併用医薬。
26.前記免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは前記免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのアンタゴニストまたはアゴニストから選択されている、上記25に記載の併用医薬。
27.がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、前記方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸と、CD40Lをコードする第3の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に投与することを含み、前記組み換えMVAを投与すると、組み換えMVA、抗原4-1BBL及び抗原CD40Lを単独で投与する場合と比べて、前記対象の腫瘍の縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する前記方法。
28.対象のがん性腫瘍における炎症応答の増強を誘導する方法であって、前記方法が、第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、抗原4-1BBLをコードする第2の核酸と、抗原CD40Lをコードする第3の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に腫瘍内投与することを含み、前記組み換えMVAを腫瘍内投与すると、異種の腫瘍関連抗原をコードする第1の核酸と、抗原4-1BBLをコードする第2の核酸と、抗原CD40Lをコードする第3の核酸とを含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射によって生じる炎症応答と比べて、前記腫瘍における炎症応答が増強される前記方法。
29.前記組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に静脈内投与することを含む、上記27に記載の方法。
30.前記組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に腫瘍内投与することを含む、上記27に記載の方法。
31.前記組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に静脈内投与及び腫瘍内投与することを含む、上記27に記載の方法。
32.前記静脈内投与と前記腫瘍内投与とを異なる時点に行う、上記31に記載の方法。
【実施例】
【0226】
下記の実施例には、本発明が例示されているが、実施例は、いかなる場合も、請求項の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0227】
実施例1:組み換えMVA-TAA-4-1BBL及びMVA-TAA-CD40Lの構築
本発明の要素を実現させる組み換えMVAウイルスの作製は、示されている導入遺伝子を、それらのプロモーターとともにベクターMVA-BNに挿入することによって行った。導入遺伝子及び選択カセットと、MVA-BN内の標的座位と相同な配列とを含む組み換えプラスミドを用いて、導入遺伝子を挿入した。MVA-BNに感染させたCEF細胞に、その組み換えプラスミドをトランスフェクションすることによって、そのウイルスゲノムとその組み換えプラスミドとの間の相同組み換えを生じさせた。続いて、その選択カセットを挟み込んでいるloxP部位を特異的に標的とし、それにより、その介在配列を切除するCRE-リコンビナーゼを発現するプラスミドの助けにより、第2の工程中に、その選択カセットを欠失させた。
【0228】
MVA-OVA及びMVA-OVA-4-1BBLの構築の際には、組み換えプラスミドには、導入遺伝子OVAまたはOVA及び4-1BBL(それぞれ、その前にはプロモーター配列を配置した)と、そのウイルスゲノムに相同組み換えが生じるように、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を含めた。
【0229】
MVA-OVA-CD40Lの構築の際には、組み換えプラスミドには、導入遺伝子OVA及びCD40L(それぞれ、その前にはプロモーター配列を配置した)と、そのウイルスゲノムに相同組み換えが生じるように、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を含めた。
【0230】
MVA-gp70-4-1BBLの構築の際には、組み換えプラスミドには、2つの導入遺伝子gp70及び4-1BBL(それぞれ、その前にはプロモーター配列を配置した)と、そのウイルスゲノムに相同組み換えが生じるように、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を含めた。同様に、MVA-gp70-CD40Lの構築の際には、組み換えプラスミドには、2つの導入遺伝子gp70及びCD40L(それぞれ、その前にはプロモーター配列を配置した)を含め、MVA-gp70-4-1-BBL-CD40Lの構築が所望されるときには、その組み換えプラスミドに適切な変更を加える。
【0231】
MVA-HERV-Kの構築の際には、組み換えプラスミドに、導入遺伝子HERV-Kを含め、MVA-HERV-K-4-1BBLの構築の際には、組み換えプラスミドに、導入遺伝子HERV-K及び4-1BBLを含め、MVA-HERV-K-4-1BBL-CD40Lの構築の際には、組み換えプラスミドに、導入遺伝子HERV-K、4-1BBL及びCD40Lを含めた。各導入遺伝子または導入遺伝子群の前に、プロモーター配列を配置するとともに、そのウイルスゲノムに相同組み換えが生じるように、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を配置した。
【0232】
上記のmBN MVAの作製の際には、CEF細胞培養物にそれぞれ、MVA-BNを接種し、それぞれ、対応する組み換えプラスミドをトランスフェクションした。次に、選択圧をかける薬剤を含む培地中のCEF培養物に、これらの細胞培養物から得た試料を接種し、蛍光を発現しているウイルスクローンをプラーク精製によって単離した。蛍光タンパク質を含む選択カセットをこれらのウイルスクローンから欠失させるのには、第2の工程において、CREを介した組み換え(各コンストラクトにおいて、その選択カセットを挟み込んでいる2つのloxP部位を伴う)を介在させた。その第2の組み換え工程後、MVA-BNの標的座位内にプロモーターが挿入された状態で、導入遺伝子配列のみ(例えば、OVA、4-1BBL、gp70、HERV-K及び/またはCD40L)が保持された。選択カセットが欠失したプラーク精製済みウイルスのストックを調製した。
【0233】
記載されているコンストラクトを接種した細胞で、その所定の導入遺伝子の発現を証明する。
【0234】
本明細書に記載されているコンストラクトの作製は、細菌人工染色体(BAC)でクローン型のMVA-BNを用いることによって行った。組み換えプラスミドには、それぞれプロモーターの下流に、記載されている導入遺伝子配列を含めた。MVAにも存在することにより、組み込み部位の特異的な標的化を可能にする配列をそれらのプラスミドに含めた。簡潔に述べると、BAC DNAをBHK-21細胞にトランスフェクションし、それらの細胞に、ヘルパーウイルスとしてのショープ線維腫ウイルスを重感染させることによって、感染性ウイルスをBACから再構築した。CEF細胞培養液で3代追加継代した後、ヘルパーウイルスを含まない状態のコンストラクトを得た。例示的なMVA作製法は、Baurらの文献((2010)Virol.84:8743-52,“Immediate-early expression of recombinant antigen by modified vaccinia virus Ankara breaks the immunodominance of strong vector-specific B8R antigen in acute and memory CD8 T-cell responses”)にも見られる。
【0235】
実施例2:MVA-OVA-4-1BBLに感染した腫瘍細胞によって、CD8 T細胞を4-1BBLの媒介により共刺激すると、DCの必要性なしに、サイトカインの産生に影響が及ぶ
C57BL/6マウス由来の骨髄細胞を組み換えFlt3Lの存在下で14日間培養した後、樹状細胞(DC)を作製した。B16.F10(メラノーマモデル)細胞に、MVA-OVA、MVA-OVA-CD40LまたはMVA-OVA-4-1BBLをMOI10で感染させ、一晩、37℃、5%CO2で培養した。その翌日、感染した腫瘍細胞を回収し、指示されている場合には、1:1の比率のDCの存在下で4時間、37℃、5%CO2で共培養した。ナイーブOVA(257-264)特異的CD8+ T細胞をOT-Iマウスから磁気精製し、上記の共培養物に1:5の比率で加えた。細胞を37℃、5%CO2で48時間培養した。続いて、Luminexによってサイトカイン濃度を解析するために、培養上清を採取した。結果は、
図1に、IL-6(
図1A)、GM-CSF(
図1B)、IL-2(
図1C)及びIFN-γ(
図1D)の上清濃度として示されている。データは、平均±標準誤差として示されている。
【0236】
以前報告された内容と一致して、MVA-OVA-CD40Lは、DCの活性化と、その抗原提示能に大きな影響を及ぼした。すなわち、MVA-OVA-CD40Lに感染したFLDCによって、大量のIL-6が産生された(
図1A)。重要なことに、OVA特異的T細胞応答は、DCの存在下の場合のみ誘導でき、MVA-CD40Lに感染させたB16.F10細胞自体によって直接は誘導できなかった(
図1B及び1C)。これらの結果から、MVA-OVA-CD40Lの効果を得るには、DCが明らかに必要であることが示されている。これに対して、MVA-OVA-4-1BBLによっては、DCにおけるIL-6の産生は誘導されなかったが、MVA-OVA-4-1BBLに感染したB16.F10細胞では、T細胞活性化サイトカインIFN-γ、IL-2及びGM-CSFの分泌が、DCに依存せずに誘導された(
図1A~1D)。
【0237】
実施例3:MVA-OVA-4-1BBLに感染した腫瘍細胞は直接(すなわち、DCの必要性なしに)、抗原特異的CD8 T細胞の、活性化エフェクターT細胞への分化を促す
C57BL/6マウス由来の骨髄細胞を組み換えFlt3Lの存在下で14日間培養した後、樹状細胞(DC)を作製した。B16.F10(メラノーマモデル)細胞に、MVA-OVA、MVA-OVA-CD40LまたはMVA-OVA-4-1BBLをMOI10で感染させ、一晩、37℃、5%CO2で培養した。その翌日、感染した腫瘍細胞を回収し、指示されている場合には、1:1の比率のDCの存在下で4時間、37℃、5%CO2で共培養した。その一方で、ナイーブOVA(257-264)特異的CD8+ T細胞をOT-Iマウスから磁気精製し、上記の共培養物に1:5の比率で加えた。細胞を37℃、5%CO2で48時間培養した。続いて、細胞を染色し、フローサイトメトリーによって解析した。結果は、
図2に、OT-I CD8+ T細胞上のT-betのGMFI(
図2A)、及びOT-I CD8+ T細胞のCD44+ グランザイムB+ IFN-γ+ TNFα+のパーセンテージ(
図2B)として示されている。データは、平均±標準誤差として示されている。
【0238】
その結果から、クロスプレゼンテーションするDCの非存在下では、グランザイムB+及びIFNγ+の細胞傷害性エフェクターT細胞の誘導は、4-1BBLに依存していたことが示されている(
図2B)。
図1に示されている結果と併せると、これらの知見により、MVAによってコードされる4-1BBLは、MVAによってコードされるCD40L(DCの活性化を介して作用する)とは対照的に、DCに依存せずに、T細胞に直接作用することが示されている。
【0239】
実施例4:CD40Lまたは4-1BBLのいずれかをコードするMVAに感染させると、腫瘍細胞株及びマクロファージにおける腫瘍細胞死が誘導される
腫瘍細胞株B16.OVA(
図3A及び3B)、MC38(
図3C)ならびにB16.F10(
図3D)を、示されているMOIで、20時間感染させた。続いて、細胞の生存率について、フローサイトメトリーによって解析した。
図3Aの試料における血清HMGB1をELISAによって定量した(
図3B)。骨髄由来マクロファージ(BMDM)を、示されているMOIで、20時間感染させた。続いて、細胞の生存率について、フローサイトメトリーによって解析した。結果は、
図3A~3Eに示されている。データは、平均±標準誤差として示されている。
【0240】
図3A及び3Bに示されているように、MVA-OVAまたはMVA-OVA-CD40Lに感染させたところ、PBSで処置した腫瘍細胞と比べて、細胞死が中程度に誘導された。興味深いことに、MVA-OVA-4-1BBLへの感染により、感染から18時間後、腫瘍細胞死が有意に増強された。
【0241】
我々は、これらの結果を非抗原性細胞株でさらに確認するために、MVA、MVA-CD40L及びMVA-4-1BBL(いずれも、TAAをコードさせなかった)に感染させたMC38腫瘍細胞(
図3C)及びB16.F10腫瘍細胞(
図3D)を用いて、同様のアッセイを行った。一貫して、上記の腫瘍細胞株において、上記のMVAへの感染により、細胞死が誘導され、骨髄由来マクロファージ(BMDM)が効率的に死滅した(
図3E)。勘案すると、これらのデータから、MVAへの感染により、腫瘍細胞及びマクロファージが死滅し、この死滅は、CD40Lまたは4-1BBLを組み換えMVAによって発現させると増加することが示された。
【0242】
腫瘍溶解性ウイルスを腫瘍細胞に感染させると、いわゆる免疫原性細胞死(ICD)が誘導される(Workenhe et al.(2014)Mol.Ther.22:251-56)。ICDは、免疫系に対してアラーミンとして作用して、抗原提示を増強させることによって、抗腫瘍免疫を誘導するカルレティキュリン、ATPまたはHMGB1のような細胞内タンパク質の放出を含む。我々は、分泌HMGB1によって、MVAに感染させると、ICDが誘導されるかを調べた。我々は、予想外にも、MVA-OVA-4-1BBL及びMVA-OVA-CD40Lでは、MVA-OVAと比べて、HMGB1の有意な増加が誘導されたことを見出した(
図3B)。
【0243】
実施例5:4-1BBLをコードするMVAは、インビボで、NK細胞の活性化を誘導する
生理食塩水、または5×10
7 TCID50のMVA-OVA(
図4では「rMVA」)、5×10
7 TCID50のMVA-OVA-4-1BBL(
図4では「rMVA-4-1BBL」)もしくは5×10
7 TCID50のMVA-OVAを200μgの抗4-1BBL抗体(クローンTKS-1)と組み合わせたもののいずれかで、C57BL/6マウス(n=5匹/群)を静脈内免疫した。24時間後、マウスを殺処分し、フローサイトメトリー解析のために、脾臓を処理した。結果は、
図4A及び
図4Bに示されている。CD69(
図4A)及びCD70(
図4B)の幾何平均蛍光強度(GMFI)が示されている。データは、平均±標準誤差として示されており、2回の独立した実験を表すものである。
【0244】
その結果から、4-1BBLをMVA-OVAに加えることによって、4-1BBLをコードしないMVA-OVAをIV投与した場合と比べて、NK細胞応答の質が増強され、NK細胞活性化マーカーであるCD69及びCD70の両方が、MVA-OVAの場合と比べて、著しくアップレギュレートしたことが示されている(
図4A及びB)。4-1BBLブロッキング抗体を同時注射したところ、MVA-OVAによって誘導される、NK細胞の活性化は、4-1BBLにまったく依存していないが、過剰な4-1BBLシグナルをMVA-OVA-4-1BBLによって送達すると増強できたことが示された。
【0245】
実施例6:4-1BBLをコードするMVAで静脈内免疫すると、インビボにおいて、血清IFN-γの分泌が促進される
生理食塩水、または5×10
7 TCID50の「rMVA」(=MVA-OVA)、5×10
7 TCID50の「rMVA-4-1BBL」(=MVA-OVA-4-1BBL)もしくは5×10
7 TCID50のMVA-OVAを200μgの抗4-1BBL抗体(クローンTKS-1)と組み合わせたもののいずれかで、C57BL/6マウス(n=5匹/群)を静脈内免疫した。結果は、
図5A及び5Bに示されている。データは、平均±標準誤差として示されている。
図5A:6時間後に、マウスから採血を行い、血清を全血から単離し、血清中のIFN-γ濃度をLuminexによって求めた。
図5B:3時間後、21時間後及び45時間後に、マウスにブレフェルジンAを静脈内注射して、タンパク質の分泌を停止した。免疫から6時間後、24時間後、及び48時間後にマウスを殺処分し、脾細胞をフローサイトメトリーによって解析した。
【0246】
4-1BBによって媒介された、NK細胞の活性化は、NKエフェクターサイトカインIFNγrの血清レベルの上昇と整合していた(
図5A)。NK細胞は、活性化すると、大量のIFN-γを産生することが知られている。血清中のIFN-γレベルの上昇が、NK細胞に由来したものであり得るかを判断するために、示されている組み換えMVAベクターを静脈内注射した後、様々な時点に、IFN-γを産生するNK細胞の割合を求めた。注射から6時間後、測定されたIFN-γ血清中レベルが高かった時に、IFN-γ+ NK細胞のパーセンテージが最も高くなり、その後、ゆっくり低下した(
図5B)。MVA-OVA-4-1BBLを用いたときに、IFN-γ陽性NK細胞の出現頻度が最も高いことが観察された。勘案すると、これらのデータから、rMVA-4-1BBLの静脈内免疫により、NK細胞が強力に活性化され、NK細胞エフェクターサイトカインIFN-γの産生が増加することが示されている。
【0247】
実施例7:B16.OVA腫瘍担持マウスにおいて、rMVA-4-1BBLで静脈内免疫すると、血清IFN-γの分泌が促進される
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-OVA(図では「rMVA」)もしくはMVA-OVA-4-1BBL(図では「rMVA-4-1BBL」)をi.v.(静脈内)投与した。6時間後に、マウスから採血を行い、血清を全血から単離し、血清中のIFN-γ濃度をLuminexによって求めた。結果は、
図6に示されている。データは、平均±標準誤差として示されている。
【0248】
図6に示されているデータから、NK細胞に対して、他の実験で報告されている作用と同様の作用をメラノーマ腫瘍モデルでも得ることができたことが示されている。免疫から6時間後、MVA-OVA-4-1BBLで免疫した腫瘍担持マウスの方が、血清IFN-γレベルの上昇が大きかったことから、NK細胞の顕著な活性化が示された(
図6)。
【0249】
実施例8:rMVA-4-1BBLでの静脈内プライム免疫及び静脈内ブースト免疫によって、抗原特異的CD8+ T細胞及びベクター特異的CD8+ T細胞の増加が増強される
図7A~7Dに、rMVA-4-1BBLでの静脈内プライム免疫後及び静脈内ブースト免疫後の抗原特異的及びベクター特異的が示されている。C57BL/6マウス(n=4匹/群)に、生理食塩水、または5×10
7 TCID50のrMVA(=MVA-OVA)、5×10
7 TCID50のrMVA-4-1BBL(=MVA-OVA-4-1BBL)もしくは5×10
7 TCID50のrMVAを200μgの抗4-1BBL抗体(クローンTKS-1)と組み合わせたもののいずれかで、静脈内プライム免疫を0日目に行い、41日目にブースト免疫を行った。プライム免疫後、6日目、21日目、35日目、48日目及び64日目に、マウスから採血を行い、末梢血のフローサイトメトリー解析を行った。プライム免疫後、70日目に、マウスを殺処分した。脾臓を摘出し、フローサイトメトリー解析を行った。
【0250】
結果は、
図7A~7Dに示されている。
図7Aは、末梢血白血球(PBL)のうちの抗原(OVA)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示しており、
図7Bは、PBLのうちのベクター(B8R)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示している。
図7Cは、生細胞のうちの抗原(OVA)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示している。
図7Dは、生細胞のうちのベクター(B8R)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示している。データは、平均±標準誤差として示されている。
【0251】
その結果から、1回目の免疫後、7日目に、B8特異的CD8 T細胞及びOVA特異的CD8 T細胞が最大数に達し、2回目の免疫後、41日目にさらに増加したことが示されている(
図7A及びB)。41日目の時点に、抗原特異的T細胞応答という点で、rMVA-4-1BBLの効果は、B8及びOVAのいずれでも、rMVAと比べて明らかであった。興味深いことに、4-1BBLブロッキング抗体を同時注射したところ、rMVAによって誘導されるT細胞応答は、4-1BBLにまったく依存していないが、過剰な4-1BBLシグナルをMVA-OVA-4-1BBLによって送達すると増強できたことが示された(
図7A及びB)。これらの結果と一致して、rMVA-4-1BBLでのプライム/ブースト免疫により、脾臓においても、1回目の免疫から70日後に、OVA特異的T細胞応答及びB8特異的T細胞応答が改善した(
図7C及びD)。
【0252】
実施例9:TAAと4-1BBLとをコードするMVAウイルスの静脈内注射による、抗腫瘍作用の増大
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目(黒い点線)に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-OVAもしくは5×10
7 TCID50のMVA-OVA-4-1BBLをi.v.(静脈内)投与した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
図8に示されているように、4-1BBLをコードするMVAウイルスを静脈内投与したところ、腫瘍の成長遅延が長期化することにより、MVAまたはコントロール(PBS)と比べて、腫瘍体積が縮小した。
【0253】
実施例10:4-1BBLまたはCD40LをコードするMVAウイルスの腫瘍内注射による、抗腫瘍作用の増強
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=4~5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目(黒い点線)、12日目及び15日目(灰色の破線)に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-OVA(図では「rMVA」)、MVA-OVA-CD40L(図では「rMVA-CD40L」)もしくはMVA-OVA-4-1BBL(図では「rMVA-4-1BBL」)を腫瘍内(i.t.)投与した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
図9A~9Dに示されているように、TAAと、4-1BBLまたはCD40LのいずれかとをコードするMVAウイルスの腫瘍内注射によって、抗腫瘍作用の増強が得られた。より具体的には、
図9Dに示されているように、4-1BBLをコードするMVAウイルスでは、腫瘍の成長の縮小が有意に増大した。本発明は、いずれの特定の作用機序または作用経路にも制約されないが、4-1BBLとCD40Lの間で観察された違いに関する仮説の1つは、4-1BBLが、NK細胞及びT細胞を活性化しようとする一方で、CD40Lが、DCを活性化させようとする点である。B16メラノーマ腫瘍の方が、T細胞浸潤性が高い(Mosely et al.(2016)Cancer Immunol. Res.5(1):29-41)ので、4-1BBLをコードするMVAは、この条件においては、CD40LをコードするMVAよりも有効である。
【0254】
4-1BBL及びCD40Lが、腫瘍の成長または直径にその作用を及ぼす正確な機序または経路にかかわらず、
図9に示されているデータにより、4-1BBLをコードするMVAを腫瘍内注射することにより、腫瘍の成長制御性が長期化し、場合によっては、腫瘍が完全に拒絶されたことが示された。
【0255】
実施例11:確立された大腸癌に対して、TAA及びCD40LをコードするMVAウイルスの腫瘍内注射することによる、抗腫瘍作用の増強
MC38腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から14日目(黒い点線)、19日目及び22日目(黒い破線)に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-TAA(図では「rMVA」)もしくはMVA-TAA-CD40L(図では「rMVA-CD40L」)を腫瘍内(i.t.)投与した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。結果は、
図10A、10B、10Cに、確立された非抗原性MC38大腸癌について示されている。この実験において、MVAによって発現されるTAAには、抗原AH1A5、p15E及びTRP2が含まれていた。
【0256】
これらの結果から、MC38大腸癌モデルにおいて、1つ以上のTAAに加えて、CD40LをコードするMVAを腫瘍内注射すると、腫瘍の成長を有意に遅延できることが示されている。
【0257】
実施例12:免疫チェックポイントの遮断及び腫瘍抗原に特異的抗体は、MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与と相乗効果を発揮する
B16.OVAメラノーマ細胞(5×10
5個)をC57BL/6マウスに皮下注射した。腫瘍の直径が約5mmに達したら、マウスを群分けし(n=5匹/群)、指示されている場合(チェック印)には、200μgのIgG2a、抗TRP-1または抗PD-1を腹腔内(i.p.)投与した。腫瘍の接種から13日目(黒い点線)、18日目及び21日目(灰色の破線)に、マウスをPBS、または5×10
7 TCID50のMVA-OVA-4-1BBLのいずれかで腫瘍内(i.t.)免疫した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。結果は、
図11に示されている。腫瘍関連抗原(TAA)Trp1(抗Trp1)に特異的な抗体をMVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与と組み合わせたところ、抗PD-1単独の場合と比べて、腫瘍体積の縮小が増大した(
図11、中央の行)。免疫チェックポイント分子PD-1に対する抗体をMVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与と組み合わせたところ、抗PD-1単独の場合と比べて、腫瘍体積の縮小が増大した(
図11、下の行)。
【0258】
これらの実験から、抗PD-1抗体及び抗TRP-1抗体が、単剤として、腫瘍の成長の制御を増強した一方で、いずれかの抗体とMVA-OVA-4-1BBLを組み合わせたところ、MVA-OVA-4-1BBLによってもたらされる治療効果が向上したことが示されている。この実施例では、腫瘍内MVA 4-1BBLと、チェックポイントの遮断またはTAA標的化抗体のいずれかとの併用療法は、いずれの単独療法よりも、治療活性が大きかった。このデータから、相乗作用を得るために、ADCCを誘導する可能性のある腫瘍特異的抗体と、4-1BBLを発現するMVAの腫瘍内注射を組み合わせてもよいことも示されている。
【0259】
実施例13:MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内注射は、抗CD137アゴニスト抗体による治療よりも抗腫瘍作用が優れている
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目、12日目及び15日目(黒い破線)に、PBS、5×107 TCID50のMVA-OVA-4-1BBL、または10μgの抗4-1BB(3H3、BioXcell)のいずれかを腫瘍内注射した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
【0260】
図12Aには、MVA-OVA-4-1BBLの抗腫瘍作用が、抗4-1BBLアゴニスト抗体(3H3)よりも優れていることが示されている。
図12Bには、MVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内免疫した場合のみに、血液中のOVA特異的T細胞応答が誘導され、抗4-1BBLアゴニスト抗体では、血液中のOVA特異的T細胞がまったく誘導されなかったことが示されている。
【0261】
したがって、これらのデータから、MVA-OVA-4-1BBLでの腫瘍内処置は、腫瘍特異的T細胞応答及び腫瘍の成長制御の両方の点で、抗CD137アゴニスト抗体よりも強力であることが示されている。
【0262】
実施例14:CT26腫瘍モデルにおいて、CD40Lをコードするとともに、内在性レトロウイルス(ERV)抗原Gp70をコードするMVAを静脈内注射すると、抗腫瘍作用が増大する
CT26腫瘍担持Balb/cマウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍をそのマウスに導入してから12日目(黒い点線)に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-BN、MVA-Gp70もしくはMVA-Gp70-CD40Lを静脈内(i.v.)投与した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
図13A及び13Bに示されているように、内在性レトロウイルス抗原Gp70をコードするMVAウイルスを静脈内投与したところ、MVAまたはコントロール(PBS)の場合と比べて、腫瘍体積が縮小した。加えて、MVA-Gp70-CD40LによってCD40Lをコードさせたところ、その抗腫瘍作用がさらに向上した。
【0263】
図13Cには、MVA-Gp70またはMVA-Gp70-CD40Lの静脈内注射により、血液中でGp70特異的CD8 T細胞が誘導されたことが示されている。
【0264】
したがって、これらの実験では、MVAは、マウスタンパク質gp70(マウス白血病ウイルスのエンベロープタンパク質)であるモデルERVをコードするように構築した(「MVA-gp70」)。共刺激分子CD40Lをさらに含むMVAも作製した(「MVA-gp70-CD40L」)。CT26.wt大腸癌モデルを用いて、これらの新規コンストラクトの潜在的な抗腫瘍作用を試験した。CT26.wt細胞は、高レベルのgp70を発現することが示されている(例えば、Scrimieri(2013)Oncoimmunol.2:e26889を参照されたい)。CT26.wt腫瘍担持マウスを作製し、腫瘍が少なくとも5mm×5mmになったら、上記のように、静脈内免疫した。MVA単独での免疫では、腫瘍の成長遅延の誘導は、中程度であった。これに対して、MVA-gp70で免疫したところ、5個中3個の腫瘍が完全に拒絶された(
図13A及びB)。MVA-Gp70-CD40Lで免疫したところ、さらに顕著な結果が得られ、5個中4個の腫瘍が拒絶された(
図13A及びB)。
【0265】
免疫後、これらの抗腫瘍応答が、gp70特異的T細胞の誘導と相関するか判断するために、H-2Kd拘束性gp70エピトープAH1を用いて、血液の再刺激を行った。その結果(
図13C)から、MVA-Gp70で処置したマウス及びMVA-Gp70-CD40Lで処置したマウスにおいて、gp70特異的CD8 T細胞応答が強力に誘導されたことが示されている(
図13C)。
【0266】
実施例15:B16.F10腫瘍モデルにおいて、CD40Lをコードするとともに、内在性レトロウイルス抗原Gp70をコードするMVAを静脈内注射すると、抗腫瘍作用が増大する
腫瘍の接種から7日目(黒い点線)、腫瘍測定値が約5×5mmとなったら、B16.F10腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-BN、MVA-Gp70もしくはMVA-Gp70-CD40Lを静脈内(i.v.)投与した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
図14Aに示されているように、内在性レトロウイルス抗原Gp70とCD40LとをコードするMVAウイルスを静脈内投与したところ、MVAまたはコントロール(PBS)の場合と比べて、腫瘍体積が縮小した。
【0267】
図14Bには、MVA-Gp70またはMVA-Gp70-CD40Lの静脈内注射により、血液中でGp70特異的CD8 T細胞が誘導されたことが示されている。
【0268】
したがって、これらの実験で、MVA-Gp70及びMVA-Gp70-CD40Lによる治療の有効性が、追加の独立した腫瘍モデルにおいて示された。B16.F10は、C57BL/6由来のメラノーマ細胞株であり、高レベルのGp70を発現する(Scrimieri(2013)Oncoimmunol 2:e26889)。MVA単独(「MVA-BN」)で処置したところ、B16.F10腫瘍の成長がある程度遅延し、アジュバント非添加のMVA-Gp70の作用に匹敵していた(
図14A)。しかしながら、MVA-Gp70-CD40Lでは、コントロールであるMVA骨格単独の場合よりも抗腫瘍作用が強かった(
図14A)。追加の実験により、Gp70抗原をコードするMVAを投与した群ではいずれも、H-2Kb拘束性gp70エピトープp15eに特異的なCD8 T細胞応答が見られたが、MVAによってCD40Lもコードさせた場合には、末梢T細胞応答の大幅な増加は観察されなかったことが示された(
図14B)。
【0269】
実施例16:gp70及び4-1BBLをコードするMVAウイルスの静脈内注射による、抗腫瘍作用の増大[仮想実施例]
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目(黒い点線)に、PBS、または5×107 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-gp70-4-1BBLを静脈内投与する。腫瘍の成長を等間隔で測定する。ヒト内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質のマウスホモログは、正常なマウス組織でも高度には発現せず、マウス腫瘍組織でも顕著には発現しないので、ヒトERVの有効性は、マウスモデルでは効果的には研究できない。Gp70は、充分に研究されてきたマウスERVタンパク質である(例えば、Bronte et al.(2003)J Immunol.171(12):6396-6405、Bashratyan et al.(2017)Eur. J.Immunol.47:575-584及びNilsson et al.(1999)Virus Genes 18:115-120を参照されたい)。したがって、gp70特異的ながんワクチンのマウスにおける試験では、ヒトにおけるERV特異的ながんワクチンの有効性に関する強力な予測値が得られる可能性が非常に高い。
【0270】
実施例17:gp70と、4-1BBLまたはCD40LのいずれかとをコードするMVAウイルスの腫瘍内注射による、抗腫瘍作用の増強[仮想実施例]
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=4~5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目(黒い点線)、12日目及び15日目(灰色の破線)に、PBS、または5×107 TCID50のMVA-OVA、MVA-OVA-CD40LもしくはMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内(i.t.)投与する。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
【0271】
実施例18:rMVA-HERV-K-4-1BBLを投与すると、感染した腫瘍細胞の直接抗原提示によって、サイトカインの産生に影響が及ぶ[仮想実施例]
C57BL/6マウス由来の骨髄細胞を組み換えFlt3Lの存在下で14日間培養した後、樹状細胞(DC)を作製する。B16.F10細胞に、MVA-HERV-K、MVA-HERV-K-CD40L、MVA-HERV-K-4-1BBLまたはMVA-HERV-K-4-1BBL-CD40LをMOI10で感染させ、一晩置く。その翌日、感染した腫瘍細胞を回収し、指示されている場合には、1:1の比率のDCの存在下で4時間、37℃、5%CO2で共培養する。HERV-K特異的CD8+ T細胞をHERV-K免疫マウスから磁気精製し、上記の共培養物に1:5の比率で加える。細胞を37℃、5%CO2で48時間培養する。続いて、Luminexによってサイトカイン濃度を解析するために、培養上清を採取する。サイトカインレベルの測定には、(A)IL-6、(B)GM-CSF、(C)IL-2及び(D)IFNγを含める。データは、平均±標準誤差として示す。
【0272】
実施例19:rMVA-HERV-K-4-1BBLを投与すると、感染した腫瘍細胞の直接抗原提示によって、抗原特異的CD8+ T細胞が活性化エフェクターT細胞に誘導される[仮想実施例]
C57BL/6マウス由来の骨髄細胞を組み換えFlt3Lの存在下で14日間培養した後、樹状細胞(DC)を作製する。B16.F10細胞に、MVA-HERV-K、MVA-HERV-K-CD40L、MVA-HERV-K-4-1BBLまたはMVA-HERV-K-4-1BBL-CD40LをMOI10でを感染させ、一晩置く。その翌日、感染した腫瘍細胞を回収し、指示されている場合には、1:1の比率のDCの存在下で4時間、37℃、5%CO2で共培養する。その一方で、HERV-K特異的CD8+ T細胞をHERV-K免疫マウスから磁気精製し、上記の共培養物に1:5の比率で加える。細胞を37℃、5%CO2で48時間培養する。続いて、細胞を染色し、フローサイトメトリーによって解析する。サイトカイン解析は、(A)OT-I CD8+ T細胞上のT-betのGMFI、及び(B)OT-I CD8+ T細胞のCD44+ グランザイムB+ IFNγ+ TNFα+のパーセンテージについて行う。データは、平均±標準誤差として示す。
【0273】
実施例20:CD40Lまたは4-1BBLのいずれかをコードするrMVA-HERV-Kに感染させると、腫瘍細胞株及びマクロファージにおいて腫瘍細胞死が誘導される[仮想実施例]
腫瘍細胞株B16.OVA(A及びB)、MC38(C)、ならびにB16.F10(D)を、示されているMOIで、20時間感染させる。続いて、細胞の生存率について、フローサイトメトリーによって解析する。(A)の試料における血清HMGB1をELISAによって定量する。骨髄由来マクロファージ(BMDM)を、示されているMOIで、20時間感染させる。続いて、細胞の生存率について、フローサイトメトリーによって解析する。データは、平均±標準誤差として示す。
【0274】
実施例21:4-1BBLをコードする組み換えMVAを腫瘍内投与すると、腫瘍において、Treg細胞が減少し、T細胞疲弊が軽減される[仮想実施例]
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目(黒い点線)に、PBS、または5×107 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内(i.t.)投与する。5日後、マウスを殺処分し、脾臓及び腫瘍を摘出し、染色して、蛍光色素コンジュゲート抗体によって、Tregの浸潤とT細胞疲弊を評価する。(A)は、腫瘍内浸潤しているCD45+ 白血球のうちのCD4+ FoxP3+ T細胞のパーセンテージであり、(B)は、腫瘍内浸潤しているCD8 T細胞上のPD-1の幾何平均蛍光強度、(C)は、腫瘍内浸潤しているCD8 T細胞上のLag-3の幾何平均蛍光強度である。データは、平均±標準誤差として示す。
【0275】
実施例22:免疫チェックポイントの遮断と、腫瘍抗原特異的抗体は、rMVA gp-70-4-1BBLの腫瘍内投与と相乗効果を発揮する[仮想実施例]
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、指示されている場合(チェック印)には、200μgのIgG2a、抗TRP-1または抗PD-1を投与する。腫瘍の接種から13日目(黒い点線)、18日目及び21日目(灰色の破線)に、マウスをPBS、または5×107 TCID50のMVA-gp70-4-1BBLのいずれかで腫瘍内免疫する。腫瘍の成長を等間隔で測定する。
【0276】
実施例23:IT免疫に対するサイトカイン/ケモカインMVA-BN骨格応答は、4-1BBLアジュバント作用によって増大できる
組み換えMVAが、腫瘍微小環境(TME)内の炎症を誘導する可能性を評価するために、B16.OVA腫瘍由来の組織において、サイトカイン及びケモカインを解析した。まず、5×105個のB16.OVA細胞をC57BL/6マウスに皮下(s.c.)移植した。10日目に、マウスをPBS、または2×108 TCID50のMVA-BN、MVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内(i.t.)免疫した(n=5~6匹のマウス/群)。
【0277】
注射から6時間後、サイトカイン及びケモカインの発現を測定した(
図15)。PBSで処置した組織におけるサイトカイン/ケモカインの発現は、腫瘍への針の挿入及び生理食塩水のせん断圧力によって誘導される基底の炎症プロファイルを表す。IL-6、IFN-α、IL-15及びTNF-αを含むサイトカイン、ならびにCXCL1、CCL2及びMIP2などのケモカインがアップレギュレートした(
図15)。ヒトにおいて、NF-κβの活性化により誘導され、IL-8の産生を刺激するIL-25(IL-17Eとしても知られる)も検出された(Lee et al.(2001)J.Biol.Chem.276:1660-64)。興味深いことに、MVA-OVA-4-1BBLを注射した腫瘍では、MVA-BNを注射した腫瘍、またはMVA-OVAを注射した腫瘍病変と比べて、IL-6、IFN-αまたはIL-15/IL15Rαのような炎症誘発性サイトカインの有意な増加が見られた。
【0278】
実施例24:MVA-OVA-4-1BBLによって、腫瘍内(i.t.)免疫に対する、サイトカイン/ケモカインの炎症誘発性応答が増大する
実施例23に記載されているようにして、マウス及び腫瘍を処置した。印象的なことに、IFN-γ及びGM-CSFを含むいくつかの炎症誘発性サイトカインは、MVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内免疫した後のみに産生された(
図16)。IL-18、CCL5、CCL3及びIL-22を含む他の炎症誘発性サイトカインの産生は、MVA-OVAまたはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかで腫瘍内(i.t.)免疫した場合に増強されたが、MVA-BNまたはPBS単独では増強されなかった。
【0279】
勘案すると、このデータによって、MVAで腫瘍内(i.t.)免疫すると、腫瘍微小環境(TME)において炎症性サイトカイン/ケモカインシフトを誘導することによって、炎症応答を増強できることが示されている。MVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内免疫した際に、MVAまたはMVA-OVAと比べて、作用の増大が観察された。このことから、4-1BBLを追加すると、組み換えMVAに対して「アジュバント作用」が発揮されると言うことができる。
【0280】
実施例25:MVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した後のTME及び流入LNのT細胞の定量解析及び定性解析
MVA-OVA及びMVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内(i.t.)注射後に、炎症によって誘導される細胞プロセスをさらに深く理解するために、腫瘍内(i.t.)注射後の様々な時点における自然免疫浸潤及び適応免疫浸潤の詳細な解析を行った。B16.OVA腫瘍担持マウスに、PBS、または2×108 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかを腫瘍内(i.t.)注射した。プライム免疫から1日後、3日後及び7日後に、マウスを殺処分した。腫瘍及び腫瘍流入リンパ節(TdLN)を取り出し、コラゲナーゼ及びDNaseで処理し、単一細胞をフローサイトメトリーによって解析した。免疫細胞集団を解析して、それらのサイズ、増殖挙動及び機能状態を求めた。
【0281】
結果から、B16.OVA腫瘍にMVA-OVAまたはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかを注射したところ、腫瘍内(i.t.)免疫から7日後に、CD45
+白血球の腫瘍内浸潤が誘導されたことが示された(
図17、一番上の行、左側のヒストグラム)。興味深いことに、特に、4-1BBLを発現するMVAの注射後、i.t.(腫瘍内)免疫から3日後にすでに、TdLNにおけるCD45
+白血球数の増加が観察された(
図17、一番上の行、右側のヒストグラム)。TdLNにおいて、この差は、腫瘍内(i.t.)免疫から7日後にさらに拡大したことから、TdLNでは、MVAでの免疫により媒介される抗腫瘍作用が、免疫から3日目に迅速に開始されることが示唆された。
【0282】
ワクチン接種ベースの抗腫瘍療法の一局面は、腫瘍特異的CD8
+ T細胞及び腫瘍特異的CD4
+ T細胞の増加及び再活性化と、腫瘍におけるそれらの富化である。免疫から1週間後に、腫瘍内で、CD4
+ T細胞及びCD8
+ T細胞の両方が増加した(CD4+細胞は、
図17の2行目、左側のヒストグラム、CD8+細胞は、
図17の3行目、左側のヒストグラム)。MVA-OVA-4-1BBLでi.t.免疫後、CD4+ T細胞は、腫瘍内では7日目までに増加し、TdLNでは、増加が3日目に開始され、7日目にピークに達した。CD8
+ T細胞は主に、腫瘍内で、7日目までに、CD45
+ 細胞の増加に寄与した。MVA-OVA-4-1BBLを注射したところ、MVA-OVAを注射した場合と比べて、CD8
+ T細胞集団が、腫瘍(7日目)及びdLN(3日目及び7日目)の両方でさらに増加した。
【0283】
OVA特異的CD8
+ T細胞を定量したところ、特に、MVA-OVA-4-1BBLで処置した群において、腫瘍内(i.t.)免疫から7日後に、腫瘍微小環境内で増加したことが明らかになった(
図17、左下)。印象的なことに、TdLNにおけるOVA特異的CD8
+ T細胞の増加は、免疫から3日目にピークに達し、その増加は、MVA-OVA-4-1BBL処置群の方が大きかった(
図17、右下)。勘案すると、これらのデータによって、MVA-OVA、特にMVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内免疫すると、適応免疫応答の発生が増強され、腫瘍流入リンパ節では、治療から3日後に開始され、腫瘍微小環境では、7日目までに、抗原特異的CD8
+ T細胞が有意に増加することが示されている。
【0284】
実施例26:MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内注射による、抗原特異的CD8+ T細胞の誘導
MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内注射によって誘導された、腫瘍流入リンパ節(TdLN)内のOVA特異的CD8
+ T細胞は、高い増殖能を示した。Ki67(細胞増殖の指標)を発現するOVA特異的CD8
+ T細胞のパーセンテージは、TdLNにおいて、MVA-OVAで処置後、PBSの場合よりも高かったとともに、MVA-OVA-4-1BBLで免疫したマウスで、さらに上昇した(
図18A)。さらに、MVA-OVAでの免疫後及びMVA-OVA-4-1BBLでの免疫後、7日目までに、腫瘍内のOVA特異的CD8 T細胞によって、疲弊マーカーPD-1がダウンレギュレートされたことから、機能性の回復が示唆された(
図18B)。
【0285】
Treg細胞(「制御性T細胞」ともいう)は、抗腫瘍免疫応答の強力な阻害因子である(例えば、Tanaka et al.(2017)Cell Res.27:109-118を参照されたい)。MVA-OVAの腫瘍内注射により、腫瘍内で、OVA特異的Teff/Tregの比率(すなわち、Treg細胞に対する「Teff」細胞、すなわち、「エフェクターT細胞」の比率)が上昇し、MVA-OVA-4-1BBLで処置してから7日目に、さらなる上昇が見られた(
図18C)。したがって、MVA-OVA、特にMVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内処置したところ、抗腫瘍免疫応答にとって有益であるCD8+ Tエフェクター細胞に有利に働くように、腫瘍内Tregの出現頻度が低下した。
【0286】
実施例27:MVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した後のTME及び流入LNのNK細胞の定量解析及び定性解析
MVA-OVAでi.t.免疫後、NK細胞を定量したところ、腫瘍内免疫から1日後、腫瘍内のNK細胞の減少が見られた(
図19、一番上の行、左側のヒストグラム)。これらの変化は、MVA-OVA-4-1BBLを使用した場合に、より顕著であった。同時に、MVA-OVAでの免疫及びMVA-OVA-4-1BBLでの免疫のいずれでも、免疫から3日後及び7日後に、腫瘍流入リンパ節(TdLN)内のNK細胞が増加したが(
図19、一番上の行、右側のヒストグラム)、MVA-OVA-4-1BBLによって、TdLNにおけるNK細胞の最も大きい増加が誘導された。
【0287】
CD69は、NK細胞の早期活性化のマーカーである。MVA-OVA及びMVA-OVA-4-1BBLというウイルスベクターのいずれでも、腫瘍及び流入リンパ節(TdLN、
図19、2行目)において、活性化マーカーCD69が即時にアップレギュレートした。さらに、i.t.免疫により、様々な時点に、腫瘍及びTdLNのいずれでも、NK細胞においてグランザイムBが誘導され、このことは、細胞傷害性NK細胞の機能増強を示している(
図19、3行目)。
【0288】
そして、NK細胞の増殖能を、Ki67の発現によって解析した。MVA-OVAまたはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかで腫瘍内処置したマウスの腫瘍及びTdLNにおいて、3日目に、NK細胞上のKi67発現が有意に増加した(
図19、一番下の行)。
【0289】
これらの結果から、4-1BBLアジュバント添加MVA-OVA(すなわちMVA-OVA-4-1BBL)によって、腫瘍内注射後に、MVA-OVAと比べて、NK細胞上のCD69、グランザイムB及びKi67表面マーカーの発現がさらに増加したことが示されている。これらの実験では、腫瘍内免疫療法後、抗腫瘍T細胞応答及び抗腫瘍NK細胞応答を生じさせる際の流入リンパ節(TdLN)の顕著な役割も明らかなる。
【0290】
本発明は、いずれの特定の作用機序にも制約されないが、3日目に、TdLN内のT細胞が増加し、7日目に、T細胞の腫瘍内浸潤が遅延すること(
図17を参照されたい)から、腫瘍特異的T細胞をTdLNでプライミング及び増殖させた後に、腫瘍に移動させて、腫瘍細胞を殺傷するというシナリオが支持される。ウイルスベクターの腫瘍内注射により、TdLNにおいて、NK細胞が直接活性化されることによって、さらに、DCの活性化が誘導される可能性もある。
【0291】
実施例28:腫瘍内MVAがん療法におけるCD8 T細胞の役割
腫瘍及びTdLNにおけるT細胞応答の解析(例えば
図17)により、腫瘍内(i.t.)処置後、両方の部位で腫瘍特異的T細胞の増加が見られた。実験を行って、MVA-OVA-4-1BBLの媒介する抗腫瘍作用にT細胞が寄与することについて調べた。これらの実験では、C57BL/6マウスに、B16.OVAメラノーマ細胞(5×10
5細胞)を注射し、数回の処置のうちの1回の後、腫瘍の成長をモニタリングした。処置には、100μgのCD8-T細胞枯渇抗体(「αCD8」、クローン2.43)またはアイソタイプコントロール抗体の存在下または非存在下で、PBSまたはMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内(i.t.)注射することが含まれていた。腫瘍の直径が5mmに達したら、MVA-OVA-4-1BBLの(i.t.)注射を行い、その注射を1週間以内に2回繰り返した。MVA-OVA-4-BBLの1回目の注射を行う1日前に、マウスに、抗CD8抗体またはIgG2b抗体のいずれかをi.p.注射し、その後、2週間以内に、この処置を4回繰り返した。
図20に示されているデータによって、有効なMVA腫瘍療法には、CD8 T細胞が不可欠であったことが示されている。勘案すると、これらのデータによって、腫瘍の成長を制御するには、腫瘍及びTdLN内の腫瘍特異的CD8 T細胞が、MVAの誘導によって活性化及び増加することが重要な事象であることが示されている。
【0292】
実施例29:MVA-OVA及びMVA-OVA-4-1BBLの媒介による抗腫瘍作用のBatf3+ DC依存性
我々は、MVA-OVA-4-1BBLによって誘導される抗腫瘍免疫応答に寄与する根底の細胞体及び分子体を解明するために、様々な関与免疫細胞の役割を調べた。強力に貪食を行って、適応免疫系の細胞に、抗原及び共刺激シグナルを提示する能力を持つ樹状細胞(DC)は、抗腫瘍免疫における重大な因子とみなされている。CD8α+ DC(「cDC1」としても知られる)を含め、様々なサブタイプのDCが、腫瘍に対する強力な免疫応答の活性化に関与している。このDCサブセットには、免疫応答の際に抗原をクロスプレゼンテーションする特有の能力があり、CD8α+ DCは、感染(Hochrein et al.(2001)J.Immunol.166:5448-55、Martinez-Lopez et al.(2014)Eur. J.Immunol.45:119-29)及びがん(Broz et al.(2014)Cancer Cell 26:638-52)に応答して、IL-12を産生する主要な細胞である。CD8α+ DCは、腫瘍関連抗原のクロスプレゼンテーションによって、抗腫瘍CD8+ T細胞を強力に誘導する細胞でもある(Sanchez-Paulete et al.,(2015)Cancer Discovery 6:71-79、Salmon et al.(2016)Immunity 44:924-38)。CD8α+ DCの発現は重大なことに、転写因子Batf3に依存する(Hildner et al.(2008)Science 322:1097-1100)。
【0293】
我々は、腫瘍内MVAがん療法における、このDCサブセットの重要性を評価するために、野生型のB16.OVA腫瘍担持マウスと、Batf3欠損(Batf3-/-)B16.OVA腫瘍担持マウスを使用した。
図21Aには、B16.OVA腫瘍は、クロスプレゼンテーションするDCの非存在下(Batf3-/-)の方が、著しく速く成長したことが示されており、これにより、腫瘍に対する免疫応答の誘導における、この抗原提示細胞(APC)サブセットの重要な役割が示されている。以前の実験と一致して、野生型マウスでは、MVA-OVAの腫瘍内注射により、腫瘍の成長が遅延し、症例の1つでは、腫瘍が完全に消失した。マウスにMVA-OVA-4-1BBLを注射したところ、この作用は向上し、MVA-OVA-4-1BBLで処置した5匹のマウスのうち3匹において、腫瘍が拒絶された(
図21A)。興味深いことに、クロスプレゼンテーションするDCの非存在下(Batf3-/-)でも、腫瘍内MVA免疫療法は、野生型群と比べて、まったく損なわれなかった(
図21A)。しかしながら、Batf3-DCは、4-1BBLによって誘導される抗腫瘍応答に関与すると見られる(
図21A、下図)。
【0294】
1回目の免疫から11日後に、末梢血中のCD8
+ Tリンパ球集団のフローサイトメトリー解析を行ったところ(
図21B)、MVA-OVA-4-1BBLで免疫したBatf3
-/-腫瘍担持マウスでは、OVA特異的CD8
+ T細胞の出現頻度は、野生型の対応マウスと比べて、少ししか低下しなかったことが示された。本発明は、いずれの特定の作用機序にも制約されたり、依存したりすることもないが、これらのデータによって、Batf3依存性DCが、MVAを用いる腫瘍内がん療法において、余剰的な役割を果たすことが示唆されている。
【0295】
実施例30:MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与におけるNK細胞の役割
NK細胞は、4-1BBを発現することが知られており、NK細胞上の4-1BBの結合により、これらの細胞の増殖及び細胞傷害性が増大することが示されている(Muntasell et al.(2017)Curr.Opin. Immunol.45:73-81)。我々は、以前の実験(
図19を参照されたい)で、MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内注射により、増殖の増強に付随して、NK細胞上で、活性化マーカーのCD69、及び細胞傷害性マーカーのグランザイムBが著しくアップレギュレートしたことを見出した。
【0296】
我々は、4-1BBLにより誘導される抗腫瘍免疫応答におけるNK細胞の役割を調べるために、IL15Rα
-/-マウスを使用した。IL-15受容体αサブユニット(IL-15Rα)は、NK細胞の発生に不可欠なことが示されている多機能サイトカインであるIL-15の高親和性結合を媒介する(Lodolce et al.(1998)Immunity 9:669-76)。野生型のB16.OVA腫瘍担持マウスと、IL15Rα欠損(IL15Rα
-/-)B16.OVA腫瘍担持マウスを作製し、MVA-OVAまたはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかで腫瘍内免疫した。MVA-OVAで処置したマウスでは、IL-15Rαの有無にかかわらず、同程度の治療効果が見られた(
図22A)。興味深いことに、MVA-OVA-4-1BBLを用いた場合に野生型マウスで観察された利点(5匹のマウスのうちの3匹で、腫瘍が拒絶された)は、MVA-OVA-4-1BBLで処置したIL15Rα欠損腫瘍担持マウスでは完全に喪失した(腫瘍が拒絶されたのは、5匹のマウスのうちの1匹であった。
図22Aを参照されたい)。これらの結果は、腫瘍接種後のマウスの生存率にも表れている(
図22B)。
【0297】
IL15Rαの欠損は、マウスにおいて、NK細胞の発生に影響を及ぼすのみならず、T細胞のホメオスタシス及びLNへの移動も低減させ、CD8メモリーT細胞を選択的に減少させることが知られている(Lodolce et al.(1998)Immunity 9:669-76)。したがって、我々は、上記の処置に対するT細胞応答も調べた。我々の以前のデータと一致して、野生型マウスにおいて、MVA-OVAで腫瘍内(i.t.)免疫したところ、OVA特異的CD8 T細胞が誘導され、この誘導が、MVA-OVA-4-1BBLによってさらに増大したことを我々は観察した(
図22C)。しかしながら、IL15Rα
-/-マウスにおけるOVA特異的T細胞応答は、野生型マウスで見られた応答と同程度であった。
【0298】
本発明は、いずれの特定の作用機序または作用経路にも制約されないが、これらの知見から、IL15Rα-/-腫瘍担持マウスが、腫瘍特異的T細胞応答を誘導できることが示されており、したがって、4-1BBLにより増強される、NK細胞の活性化及び機能が、MVA-OVA-4-1BBLによる腫瘍内処置の治療効果に寄与するという考えが裏付けけられている。
【0299】
実施例31:MVA-OVA-4-1BBLによる腫瘍内免疫に応じたNK細胞依存性サイトカイン/ケモカインプロファイル
NK細胞上の4-1BBL-4-1BB相互作用によって選択的に誘導されたサイトカインを特定するために、PBS、または5×107 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内処置した野生型B16.OVA腫瘍担持マウスまたはIL15Rα-/-B16.OVA腫瘍担持マウスから得た腫瘍組織において、サイトカイン及びケモカインを解析した。
【0300】
以前の実験では、組み換えMVAの腫瘍内注射から6時間後に、多数のサイトカイン及びケモカインが増加したことが示された(
図15及び16)。これらの実験では、MVA-OVA-4-1BBLを腫瘍に注射した場合、4-1BBLで刺激すると、NK細胞によって産生されることが知られているIFN-γ、CCL3及びCCL5のような炎症誘発性のサイトカインまたはケモカインの産生が、MVA-OVAを注射した場合よりも有意に増加した(
図23)。4-1BBLによって誘導されるこの増加は、IL15Rα
-/-マウスでは完全に消失したことから、rMVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内注射によって、腫瘍微小環境では、注射から6時間後に、NK細胞に起因する別のサイトカインプロファイル及びケモカインプロファイルが誘導されることが示された。
【0301】
実施例32:MVA-gp70-CD40Lによる腫瘍内免疫の抗腫瘍効果のMVA-gp70-4-1BBLとの比較
Gp70は、ストローマ細胞及び免疫細胞の組成の点で、いずれも別個の腫瘍微小環境(TME)を示す多くの同系腫瘍モデル(B16.F10、CT26、MC38、4T1、EL4など)で発現する自己腫瘍抗原である。我々は、この実施例で、B16.F10腫瘍担持マウスの腫瘍内免疫において、CD40Lまたは4-1BBLのいずれかに加えて、腫瘍抗原gp70をコードするMVAの効能を試験した。
【0302】
B16.F10メラノーマ細胞をC57BL/6マウスに皮下注射した。腫瘍のサイズが約50mm
3に達したら、マウスをPBS、MVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-4-1BBLまたはMVA-CD40Lで腫瘍内免疫した。結果は、
図24に示されている。
【0303】
MVA-gp70で免疫したところ、腫瘍の一過性かつ中度な成長制御が誘導された。この抗腫瘍作用は、ウイルスにCD40Lを発現させると増強できた。しかしながら、MVA-gp70-4-1BBLで腫瘍内免疫した場合に、最も強力な治療効果が得られ、処置した5匹のうち2匹において、腫瘍が完全に消失した(
図24A)。
【0304】
印象的なことに、MVA-gp70-4-1BBLで処置した後に腫瘍が治癒したマウスでは、腫瘍が見られた斑の色素が喪失した(
図24B)。この脱色素は、自己免疫病態の白斑を示すものであり、自己反応性T細胞による、メラニン細胞の破壊の結果である。このメラニン細胞破壊により、組み換えMVAによる免疫系の活性化が、そのMVAによってコードされるTAA(この実施例ではgp70)に限らないことが示唆されている。むしろ、他の抗原に対する免疫系の活性化のこのような拡大(エピトープ拡大として知られる現象)により、治療転帰を向上させ得るさらに広範な免疫応答が得られる。
【0305】
免疫によって誘導される抗原特異的T細胞応答を評価するために、1回目の免疫から11日後、血液を採取し、抗原特異的T細胞の存在について解析した。MVA-gp70及びMVA-gp70-CD40L、ならびにMVA-CD40L及びMVA-4-1BBLのいずれで免疫した場合も、測定可能なp15E特異的T細胞応答が誘導され、その範囲は1~2%であった(
図24C)。重要なことに、この応答は、MVA-gp70-4-1BBLを投与したマウスにおいて、大幅に(5倍超)増大した。p15Eペプチドによる再刺激に対するこの抗原特異的T細胞応答は、異なる治療群における治療効果と相関した。
【0306】
実施例33:MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lによる腫瘍内免疫の抗腫瘍効果
4-1BBL及びCD40Lとともに、腫瘍抗原gp70を発現する組み換えMVAを作製し、B16メラノーマモデルにおいて、腫瘍内試験を行った。B16.F10メラノーマ細胞をC57BL/6マウスに皮下注射した。腫瘍が約50mm3に達したら、マウスをPBS、MVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-gp70-4-1BBL-CD40L、またはgp70を発現しない対応するMVAコンストラクトで腫瘍内免疫した。
【0307】
MVA-gp70で免疫したところ、腫瘍の一過性かつ有意な成長制御が誘導された(
図25A)。この抗腫瘍作用は、CD40Lまたは4-1BBLをウイルスに発現させると増強できた。しかしながら、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lで腫瘍内免疫した場合に、最も強力な治療効果が得られ、5匹の処置マウスのうち4匹において、腫瘍が完全に消失した(
図25A)。印象的なことに、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lで処置した4匹の治癒マウスのうちの3匹で、腫瘍のあった場所の色素の喪失が見られ、上記の実施例32で論じたように、この喪失は、自己免疫病態の白斑を示すものである。
【0308】
加えて、1回目の免疫から11日後に、gp70特異的T細胞応答を血液中で測定した。MVA-gp70及びMVA-gp70-CD40L、ならびにMVA-CD40L及びMVA-4-1BBLで免疫した場合に、測定可能な腫瘍特異的T細胞応答が誘導され、その範囲は1~2%であった。この応答は、MVA-gp70-4-1BBLを投与したマウスにおいて、大幅に(5倍超)増大し(
図25B)。
【0309】
勘案すると、B16.F10メラノーマモデルでは、MVA-gp70に対して、CD40Lまたは4-1BBLのいずれかでアジュバント添加を行った時に、抗腫瘍効果を増強できたが、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lで、4-1BBL及びCD40Lを併せて発現させたところ、さらに強力な作用が観察された。
【0310】
実施例34:CT26.WT腫瘍における、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lによる腫瘍内免疫療法
続いて、T細胞及び骨髄系細胞が豊富であり、免疫原性があるとみなされたことが説明されたCT26大腸癌モデルを用いて、コンストラクトを試験した(例えば、Mosely et al.(2016)Cancer Immunol. Res.5:29-41を参照されたい)。Balb/cマウスに、CT26.wt大腸癌細胞を皮下(s.c.)注射した。腫瘍が約60mm3に達したら、マウスをPBS、MVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-gp70-4-1BBL-CD40LまたはMVA-4-1BBL-CD40Lで腫瘍内免疫した。
【0311】
MVA-gp70でi.t.免疫した場合に、腫瘍の一過性かつ有意な成長制御が誘導された。MVAにCD40Lを発現させたところ、この抗腫瘍作用は増強されなかったが、印象的なことに、MVA-gp70-4-1BBLで免疫した場合に、最も強力な治療効果が得られ、すべての処置マウスで、腫瘍が完全に消失した(
図26A)。しかしながら、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lによる処置では、治療効果の向上は見られなかった。留意すべきことに、gp70をコードせず、共刺激分子のみをコードするウイルスでも、腫瘍の有意な成長遅延が見られたが、MVA-gp70-4-1BBLに匹敵する結果を得ることはできなかった。これらの知見は、処置マウスの全生存率に表れた(
図26B)。
【0312】
MVA-gp70及びMVA-gp70-CD40Lで処置したマウスの血液において、H2-Ld CD8+ T細胞エピトープAH-1に対するGp70特異的T細胞応答が容易に検出された(
図26C)。この応答は、MVA-gp70-4-1BBLを投与したマウスで、大幅に(10倍超)増大し、このことは、
図26A及び26Bに示されている治療効果と相関した。MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lでの処置により、血液におけるAH-1特異的T細胞応答も増強された(
図26C)。
【0313】
実施例35:MVA-gp70-4-1BBL-CD40LをB16.F10腫瘍担持マウスにIT注射した後の腫瘍微小環境及び腫瘍流入LNの網羅的解析
上記のデータによって、B16.F10腫瘍担持マウスをMVA-gp70-4-1BBL-CD40Lで腫瘍内処置した場合に、処置マウスの80%で腫瘍が拒絶されたことが示された(
図26を参照されたい)。この腫瘍モデルの腫瘍微小環境(TME)及びTdLNを調べるために、B16.F10腫瘍担持マウスに、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40LもしくはMVA-gp70-4-1BBL-CD40Lのいずれかを腫瘍内(i.t.)投与した。プライム免疫から3日後に、マウスを殺処分した。3日目の時点に、自然免疫系成分及び適応免疫系成分の両方で変化が見られた、OVA系での以前の実験に基づき、3日目を選択した(
図17を参照されたい)。腫瘍及びTdLNを取り出し、フローサイトメトリーを用いて単一細胞を解析する目的で、コラゲナーゼ/DNaseで消化した。免疫細胞集団の存在量、ならびにそれらの増殖挙動及び機能状態を評価した。
【0314】
4-1BBLアジュバント添加MVA及びCD40Lアジュバント添加MVAを腫瘍内注射した場合には、ペンタマー染色によって測定したところ、3日目時点で、腫瘍内のCD8 T細胞またはp15E特異的T細胞の数について、優れた結果は得られなかった。しかしながら、TdLNでは、MVA-gp70及びMVA-gp70-CD40Lによって、CD8 T細胞が増加し、4-1BBLを加えた場合に、さらに大きい作用が得られた(
図27、右上)。4-1BBLを加えることによって得られた増加は、TdLN内のp15E特異的CD8 T細胞でさらに顕著であったため、MVA-gp70-4-1BBLまたはMVA-gp70-4-1BBL-CD40Lのいずれかでi.t.免疫することにより、腫瘍特異的なCD8 T細胞が増加した(
図27、右中央)。p15E特異的CD8 T細胞の数は、これらの細胞の増殖状態とも相関した。例えば、4-1BBLとともに、gp70と、任意にCD40LをMVAに加えたところ、TdLNにおいて、最も多いKi67+ gp70-p15E CD8 T細胞が誘導された(
図27、右下)。
【0315】
これらのデータにより、MVA-gp70で腫瘍内(i.t.)免疫すると、処置から3日目に、腫瘍及び腫瘍流入リンパ節において、適応免疫応答の発生が増強される一方で、4-1BBLまたは4-1BBLと、CD40Lのアジュバント作用により、TdLNにおいて、p15E特異的CD8 T細胞応答が特異的に増大したことが示されている。
【0316】
実施例36:MVAを腫瘍内注射した後の腫瘍及びTdLNにおけるNK細胞の誘導
MVA-OVAの腫瘍内(i.t.)注射により、1日目及び3日目にそれぞれ、NK細胞が活性化及び増加した(
図19)。続いて、我々は、様々なMVAコンストラクトを注射してから3日目に、NK細胞の浸潤、活性化及び増加を調べた。組み換えMVAでi.t.免疫した後に、NK細胞を定量したところ、腫瘍(
図28、左上)及びTdLN(
図28、右上)に浸潤しているNK細胞の増加が見られた。MVAに4-1BBLをコードさせた場合(例えば、MVA-gp70-4-1BBL及びMVA-gp70-4-1BBL-CD40L)に、浸潤が増加した。MVA-gp70の腫瘍内(i.t.)注射により、腫瘍(
図28、左中央を参照されたい)及びTdLN(
図28、右中央)において、NK細胞(Ki67+)の増殖が誘導され、4-1BBLまたは4-1BBL及びCD40Lでアジュバント添加を行うことにより、TdLNにおいて、この作用が増強された。
【0317】
グランザイムBは、NK細胞の細胞傷害性のマーカーである(例えば、Ida et al.(2005)Mod. Rheumatol.15:315-22を参照されたい)。組み換えMVAを腫瘍内注射した後の腫瘍及びTdLNにおいて、グランザイムB+ NK細胞が誘導された(
図28、左下)。この実施例でも、4-1BBLまたは4-1BBL-CD40Lを組み換えMVAに加えた場合に、TdLN内の細胞傷害性NK細胞の数が中度に増加した(
図28、右下)。
【0318】
勘案すると、これらのデータにより、腫瘍内(i.t.)免疫療法後のNK細胞及びTAA特異的T細胞の増加及び機能における、MVAコード4-1BBL-CD40Lの重要な役割が明らかになっている。すなわち、gp70及び4-1BBLまたはgp70、4-1BBL及びCD40Lをコードする組み換えMVAを用いた腫瘍内処置により、gp70のような内在性レトロウイルス自己抗原に対するT細胞応答を増強することができる。
【0319】
実施例37:CT26.WT腫瘍担持マウスにおける、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lによる静脈内免疫療法
上述の実験では、共刺激分子4-1BBL及びCD40Lとともに、腫瘍抗原gp70をコードする新規MVAコンストラクトは、腫瘍内に適用したところ、非常に強力であったことが示された(
図25及び26)。加えて、Lauterbachら((2013)Front. Immunol.4:251)は、CD40LをコードするMVAが、静脈内投与したときに、自然免疫応答及び適応免疫応答を増強することを見出した。我々は、この実施例では、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lによる静脈内(i.v.)免疫も、腫瘍の成長を制御できるかを問うた。
【0320】
CT26.WT大腸癌細胞をBalb/cマウスに皮下注射した。腫瘍が約60mm3に達したら、マウスをPBS、またはMVA-Gp70、MVA-Gp70-4-1BBL、MVA-Gp70-CD40L、MVA-gp70-4-1BBL-CD40L及びMVA-4-1BBL-CD40L(gp70不含)で静脈内免疫した。MVA-gp70でi.v.免疫したところ、5匹のうちの2匹で腫瘍が消失した(
図29A)。4-1BBLまたはCD40Lのいずれかを含むgp70発現ウイルスで処置したマウスでは、抗腫瘍応答が著しく向上し、4-1BBLの場合には5匹中3匹、CD40Lの場合には5匹中4匹のマウスが治癒した。重要なことに、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lでi.v.処置した場合には、すべての処置マウスで、腫瘍の成長制御が長期化し、5匹のマウスのうちの3匹で、腫瘍が拒絶された(
図29A)。留意すべきことに、共刺激分子を含むに過ぎず、gp70は含まない組み換えMVAでも、腫瘍の成長が有意に遅延したが、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40LまたはMVA-gp70-4-1BBL-CD40Lの場合に観察されたのと同様には腫瘍拒絶は見られなかった(
図29A)。これらの知見は、処置マウスの全生存率に表れた(
図29B)。
【0321】
PBLのペプチド再刺激による、血液中の腫瘍指向性CD8 T細胞応答の解析によって、すべてのMVA処置群において、AH1特異的CD8 T細胞が有意に誘導され、これにより、CD40Lの存在下(すなわち、MVA-gp70-CD40L及びMVA-gp70-4-1BBL-CD40L)で、この誘導がさらに増大し得ることが明らかになった(
図29C)。
【0322】
実施例38:HERV-K抗原を含む組み換えMVA
ヒト内在性レトロウイルスKスーパーファミリータンパク質(HERV-K)、特にERV-K-env及びERV-K-gagであるTAAを含む、MVAベースのベクター(「MVA-mBN489」、「MVA-HERV-Prame-FOLR1-4-1-BBL-CD40L」ともいう)を設計する。このMVAは、ヒトFOLR1及びPRAMEをコードするように、かつh4-1BBLを発現するか、hCD40Lを発現するか、またはh4-1BBL及びhCD40Lの両方を発現するようにも設計する。
【0323】
実施例39:Brachyury抗原をコードするMVAによる腫瘍内免疫
高度に弱毒化された非複製型ワクシニアウイルスMVA-BN-Brachyuryは、様々ながんに対する特異的かつ活発な免疫応答を誘導する4つのヒト導入遺伝子からなるように設計されている。そのベクターは、ヒトTAAであるBrachyuryと、3つのヒト共刺激分子、すなわち、B7.1(CD80としても知られる)、細胞間接着分子-1(ICAM-1、CD54としても知られる)及び白血球機能関連抗原-3(LFA-3、CD58としても知られる)を共発現する。その3つの共刺激分子(すなわち、TRIad of COstimulatory Molecules(TRICOM(商標))は、そのヒトTAA Brachyuryに対する免疫応答を最大限に高める目的で含まれている。
【0324】
Brachyuryは、T-boxファミリー内の転写因子であり、EMT(がんの進行と関連するプロセス)の動因である。Brachyuryは、正常組織と比べて、がん細胞で過剰発現し、いくつかの治療法に対する、がん細胞の耐性、及び転移能と関連付けられている。Brachyuryを発現することが知られているがんとしては、肺、乳房、卵巣、脊索腫、前立腺、結腸直腸及び膵臓腺癌が挙げられる。
【0325】
BrachyuryをコードするMVAの安全性及び潜在的な治療効果を示すために、インビトロ試験及び臨床試験が行われた。例えば、Hamilton et al.(2013)Oncotarget 4:1777-90(“Immunological targeting of tumor cells undergoing an epithelial-mesenchymal transition via a recombinant brachyury-yeast vaccine”)、Heery et al.(2015a)J.Immunother. Cancer 3:132(“Phase I,dose escalation,clinical trial of MVA-brachyury-TRICOM vaccine demonstrating safety and brachyury-specific T cell responses”)、Heery et al.(2015b)Cancer Immunol. Res.3:1248-56(“Phase I trial of a yeast-based therapeutic cancer vaccine(GI-6301)targeting the transcription factor brachyury”))を参照されたい。
【0326】
第1相臨床開発段階での静脈内経路の使用の裏付けとして、NHP(カニクイザル)において、GLP準拠の反復投与毒性試験を実施して、MVA-BN-Brachyury(MVA-mBN240B)の潜在的ないずれかの毒性を評価する。その毒性試験には、NHPにおけるMVA-BN-Brachyuryの空間的分布及び時間分布を評価する生体内分布パートが含まれる。
【0327】
MVA-BN-Brachyuryは、例えば放射線及び/またはチェックポイント阻害剤のような別の治療と任意に組み合わせて、MVAを腫瘍内注射することによってがん患者を治療する第III相試験で使用する。
【0328】
本明細書に記載されている方法または組成物の正確な詳細は、記載されている発明の趣旨から逸脱せずに変更または修正してよいことは明らかであろう。我々は、後述の請求項の範囲及び趣旨の範囲内である上記のような修正形態または変更形態のすべてを特許請求する。
【0329】
配列表
付随の配列表に列挙されている核酸配列及びアミノ酸配列は、米国特許法施行規則1.822に定義されているように、ヌクレオチド塩基については標準的な略記、アミノ酸については、1文字表記または3文字表記のいずれかを用いて示されている。各核酸配列の1本の鎖のみが示されているが、示されている鎖に言及することによっていずれも、その相補鎖が含まれるものとして理解されたい。
【0330】
配列表内の配列:
配列番号1:NCBI RefSeq NP_000065.1のhCD40Lのアミノ酸配列(261アミノ酸)
配列番号2:NCBI RefSeq NP_000065.1のhCD40L(792ヌクレオチド)
配列番号3:NCBI RefSeq NP_003802.1のh4-1BBL(254アミノ酸)
配列番号4:NCBI RefSeq NP_003802.1のh4-1BBL
【0331】
配列番号1
NCBI RefSeq NP_000065.1のhCD40L(261アミノ酸)
MIETYNQTSPRSAATGLPISMKIFMYLLTVFLITQMIGSALFAVYLHRRLDKIEDERNLHEDFVFMKTIQRCNTGERSLSLLNCEEIKSQFEGFVKDIMLNKEETKKENSFEMQKGDQNPQIAAHVISEASSKTTSVLQWAEKGYYTMSNNLVTLENGKQLTVKRQGLYYIYAQVTFCSNREASSQAPFIASLCLKSPGRFERILLRAANTHSSAKPCGQQSIHLGGVFELQPGASVFVNVTDPSQVSHGTGFTSFGLLKL
【0332】
配列番号2
NCBI RefSeq NP_000065.1のhCD40L(792ヌクレオチド)
nt配列:
atgatcgagacatacaaccagacaagccctagaagcgccgccacaggactgcctatcagcatgaagatcttcatgtacctgctgaccgtgttcctgatcacccagatgatcggcagcgccctgtttgccgtgtacctgcacagacggctggacaagatcgaggacgagagaaacctgcacgaggacttcgtgttcatgaagaccatccagcggtgcaacaccggcgagagaagtctgagcctgctgaactgcgaggaaatcaagagccagttcgagggcttcgtgaaggacatcatgctgaacaaagaggaaacgaagaaagagaactccttcgagatgcagaagggcgaccagaatcctcagatcgccgctcacgtgatcagcgaggccagcagcaagacaacaagcgtgctgcagtgggccgagaagggctactacaccatgagcaacaacctggtcaccctggagaacggcaagcagctgacagtgaagcggcagggcctgtactacatctacgcccaagtgaccttctgcagcaacagagaggccagctctcaggctcctttcatcgccagcctgtgcctgaagtctcctggcagattcgagcggattctgctgagagccgccaacacacacagcagcgccaaaccttgtggccagcagtctattcacctcggcggagtgtttgagctgcagcctggcgcaagcgtgttcgtgaatgtgacagaccctagccaggtgtcccacggcaccggctttacatctttcggactgctgaagctgtgatgatag
【配列表】