(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】立体障害の大きなアミノ酸を含むペプチド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/06 20060101AFI20250127BHJP
C07K 1/04 20060101ALI20250127BHJP
C07K 7/64 20060101ALI20250127BHJP
【FI】
C07K1/06
C07K1/04
C07K7/64
(21)【出願番号】P 2021554957
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 JP2020041279
(87)【国際公開番号】W WO2021090856
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2019202408
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135242
【氏名又は名称】江守 英太
(72)【発明者】
【氏名】野村 研一
(72)【発明者】
【氏名】森田 雄也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 哲
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-509940(JP,A)
【文献】Journal of the American Chemical Society,2008年,Vol.130, No.44,P.14382-14383,DOI 10.1021/ja806063k
【文献】Tetrahedron Letters,1998年,Vol.39, No.3/4,P.241-244,DOI 10.1016/S0040-4039(97)10504-4
【文献】Biopolymers (Peptide Science),2011年,Vol.96, No.5,P.651-668,DOI 10.1002/bip.21620
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基をN末端に有し、該N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む、ペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を製造する方法であって、以下の工程を含む方法:
工程A:N-置換アミノ酸、その塩、もしくはそれらの溶媒和物、またはN-置換アミノ酸残基をN末端に有するペプチド化合物、その塩、もしくはそれらの溶媒和物と、電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-非置換-α,αジ置換アミノ酸、その塩、その脱水体、またはそれらの溶媒和物とを、縮合試薬の存在下または非存在下で反応させて、電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-非置換-α,αジ置換アミノ酸残基をN末端に有し、該N-非置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む、ペプチド化合物、その塩、もしくはそれらの溶媒和物を得る工程、および
工程B:N末端の電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-非置換-α,αジ置換アミノ酸残基のアミノ基に、塩基と置換基導入剤の存在下、置換基を導入して、電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-置換-α,αジ置換アミノ酸残基をN末端に有し、該N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む、ペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程
(ただし、前記電子求引性の保護基は、該保護基が結合しているNH基のpKa(水中)が6~11となる保護基であり、前記塩基の共役酸のpKa(アセトニトリル中)は22~31である)。
【請求項2】
N-置換アミノ酸、またはN-置換アミノ酸残基をN末端に有するペプチド化合物が、固相合成用樹脂に担持されている、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
N-置換アミノ酸、またはN-置換アミノ酸残基をN末端に有するペプチド化合物が、式(2):
【化1】
[式中、
P
2は、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、またはC
7-C
14アラルキルであり、
R
2は、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ハロアルキル、C
1-C
6ヒドロキシアルキル、C
1-C
6アルキルスルホニルC
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルキニル、1つまたは複数のハロゲンによって置換されていてもよいC
1-C
6アルコキシC
1-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルキル、C
3-C
8シクロアルキルC
1-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルコキシC
1-C
6アルキル、またはC
7-C
14アラルキルであり、
R
3は、ヒドロキシ、O-PG
2、任意のアミノ酸残基、または任意のペプチド残基であり、
PG
2は、カルボキシル基の保護基である。]
で表される、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-非置換-α,αジ置換アミノ酸が、式(3):
【化2】
[式中、
PG
1は、電子求引性の保護基であり、
R
1およびQ
1は、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、C
1-C
6アルコキシC
1-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルキルC
1-C
6アルキル、または置換されていてもよいC
7-C
14アラルキルから独立して選択されるか、あるいは
R
1およびQ
1は、それらが結合している炭素原子と一緒になって3~8員脂環式環または4~7員飽和複素環を形成する。]
で表される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程Aで得られるペプチド化合物が、式(4):
【化3】
[式中、
PG
1、R
1、およびQ
1は式(3)のPG
1、R
1、およびQ
1とそれぞれ同義であり、
P
2、R
2、およびR
3は式(2)のP
2、R
2、およびR
3とそれぞれ同義である]
で表される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程Bにおける置換基導入剤がP
1X(式中、P
1は、式(1)のP
1と同義であり、Xは脱離基である)であり、工程Bで得られるペプチド化合物が、式(1):
【化4】
[式中、
P
1は、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、またはC
7-C
14アラルキルであり、
PG
1、R
1、およびQ
1は式(3)のPG
1、R
1、およびQ
1とそれぞれ同義であり、
P
2、R
2、およびR
3は式(2)のP
2、R
2、およびR
3とそれぞれ同義である]
で表される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
式(3)および/または式(4)において、PG
1
が結合しているNH基のpKa(水中)が6~11である、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
以下の工程を含む、式(1):
【化5】
[式中、
PG
1は、アミノ基の保護基であり、
P
1は、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、またはC
7-C
14アラルキルであり、
R
1およびQ
1は、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、C
1-C
6アルコキシC
1-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルキルC
1-C
6アルキル、または置換されていてもよいC
7-C
14アラルキルから独立して選択されるか、あるいは
R
1およびQ
1は、それらが結合している炭素原子と一緒になって3~8員脂環式環または4~7員飽和複素環を形成し、
P
2は、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、またはC
7-C
14アラルキルであり、
R
2は、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ハロアルキル、C
1-C
6ヒドロキシアルキル、C
1-C
6アルキルスルホニルC
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルキニル、1つまたは複数のハロゲンによって置換されていてもよいC
1-C
6アルコキシC
1-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルキル、C
3-C
8シクロアルキルC
1-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルコキシC
1-C
6アルキル、またはC
7-C
14アラルキルであり、
R
3は、ヒドロキシ、O-PG
2、任意のアミノ酸残基、または任意のペプチド残基であり、
PG
2は、カルボキシル基の保護基である。]
で表される2つのアミノ酸残基が連結された構造を含む、ペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を製造する方法:
工程A:式(2):
【化6】
[式中、P
2、R
2、およびR
3は、式(1)のP
2、R
2、およびR
3とそれぞれ同義である]
で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物、および式(3):
【化7】
[式中、PG
1、Q
1、およびR
1は式(1)のPG
1、Q
1、およびR
1とそれぞれ同義である]
で表される化合物、その塩、その脱水体、またはそれらの溶媒和物を縮合試薬と反応させるか、または該式(2)で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物と、該式(3)で表される化合物の脱水体、その塩、またはそれらの溶媒和物とを反応させて、式(4):
【化8】
[式中、PG
1、P
2、Q
1、およびR
1~R
3は、式(1)のPG
1、P
2、Q
1、およびR
1~R
3とそれぞれ同義である]
で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程、および
工程B:式(4)で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物をP
1導入試薬と反応させて、式(1)で表されるペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程
(ただし、前記式(3)および/または式(4)において、PG
1
が結合しているNH基のpKa(水中)は6~11であり、前記P
1
導入試薬は、P
1
X(式中、P
1
は、式(1)のP
1
と同義であり、Xは脱離基である)と塩基の組み合わせであり、前記塩基の共役酸のpKa(アセトニトリル中)は22~31である)。
【請求項9】
R
1およびQ
1は、それらが結合している炭素原子と一緒になってシクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、もしくはテトラヒドロピラン環を形成するか、または
R
1およびQ
1は、メチル、エチル、2-メチルプロピル、アリル、メトキシメチル、シクロヘキシルメチル、置換されていてもよいベンジル、もしくは置換されていてもよいフェネチルから独立して選択される、
請求項
4~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
PG
1が、C
2-C
6ハロアシルである、請求項
4~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
C
2-C
6ハロアシルが、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、ペンタフルオロプロピオニル、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロピオニル、または3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロピオニルである、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
脱水体が、下記式:
【化9】
[式中、Q
1およびR
1は、式(1)のQ
1およびR
1とそれぞれ同義であり、R
4は、C
1-C
5ハロアルキルである。]
で表される、請求項1~
11のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項13】
R
1およびQ
1が、それらが結合している炭素原子と一緒になって3~8員脂環式環を形成する、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
R
4が、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル、または2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルである、請求項
12または
13に記載の方法。
【請求項15】
P
1が、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、アリル、ベンジル、またはフェネチルである、請求項
6~
14のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項16】
P
2が、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、アリル、ベンジル、またはフェネチルである、請求項
3~
15のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項17】
R
3が、固相合成用樹脂に担持された任意のアミノ酸残基または任意のペプチド残基である、請求項
3~
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
固相合成用樹脂が、CTC樹脂、Wang樹脂、またはSASRIN樹脂である、請求項
2~
6および
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
縮合試薬がDICもしくはEDCI・HClのいずれか、またはDICおよびOxymaの組み合わせである、請求項1~
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
塩基が、
【化10】
[式中、
RB
1とRB
4は、それぞれ独立してC
1-C
4アルキルであるか、またはRB
1とRB
4は、RB
1が結合している窒素原子およびRB
4が結合している炭素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
2とRB
3は、それぞれ独立してC
1-C
4アルキルであるか、またはRB
2とRB
3は、RB
2が結合している窒素原子およびRB
3が結合している窒素原子ならびに該窒素原子が結合している炭素原子と一緒になって5~8員環を形成する]、
【化11】
[式中、
RB
6は、水素またはC
1-C
4アルキルであり、
RB
5とRB
7は、それぞれ独立してC
1-C
4アルキルであるか、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合している炭素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
8は、C
1-C
4アルキルであり、かつRB
9はC
1-C
4アルキルまたはフェニルであるか、RB
8とRB
9は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合している炭素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
ここでRB
9がフェニルである場合、2つのB2は、該フェニル基の2つのベンゼン環が縮合してナフタレンを形成してもよい]、
【化12】
[式中、
RB
10は、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
10およびRB
11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
11は、RB
10およびRB
11が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
11およびRB
12は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
12は、RB
11およびRB
12が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
12およびRB
13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
13は、RB
12およびRB
13が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
13およびRB
14は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
14は、RB
13およびRB
14が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
14およびRB
15は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
15は、RB
14およびRB
15が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであり、
RB
16は水素、C
1-C
8アルキル、またはC
6-C
10アリールである。]、および
【化13】
[式中、
RB
17は、独立してC
1-C
4アルキルであるか、またはRB
17およびRB
18は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
18は、RB
17およびRB
18が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
18およびRB
19は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
19は、RB
18およびRB
19が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
19およびRB
20は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
20は、RB
19およびRB
20が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであり、
RB
21は、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
21およびRB
22は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
22は、RB
21およびRB
22が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
22およびRB
23は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
23は、RB
22およびRB
23が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
23およびRB
24は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
24は、RB
23およびRB
24が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
24およびRB
25は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
25は、RB
24およびRB
25が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
25およびRB
26は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
26は、RB
25およびRB
26が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであり、
RB
27は、C
1-C
4アルキル、またはC
6-C
10アリールである。]
からなる群から選ばれる、請求項
1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
塩基が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)、1,8-ビス(テトラメチルグアニジノ)ナフタレン(TMGN)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、2-tert-ブチル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(BTMG)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、tert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P1-tBu)、tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(P1-t-Bu-トリス(テトラメチレン), BTPP)、2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン(BEMP)、tert-オクチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P1-t-Oct)、イミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(HP1(dma))、1-tert-ブチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ
5,4λ
5-カテナジ(ホスファゼン)(P2-t-Bu)、および1-エチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ
5,4λ
5-カテナジ(ホスファゼン)(P2-Et)からなる群より選択される、請求項
1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
工程Bが、DMF、NMP、DMI、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、およびアセトニトリルからなる群から選ばれる溶媒中で行われる、請求項1~
21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1~
22のいずれか一項に記載の方法を含む、N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含むペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を製造する方法。
【請求項24】
請求項1~
23のいずれか一項に記載の方法によって製造されたペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物からN末端の保護基を脱保護する工程、
任意でペプチド鎖を伸長する工程、および
C末端側の基とN末端側の基を環化して環状部を形成する工程を含む、環状ペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物の製造方法であって、
該環状ペプチド化合物が、8~15のアミノ酸残基を含み、少なくとも3つのN置換アミノ酸残基を含み、かつ少なくとも1つのN置換されていないアミノ酸残基を含み、環状部が少なくとも8つのアミノ酸残基を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体障害の大きなアミノ酸を含むペプチド化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の医薬では創薬ターゲットとして使えなかった、いわゆるtough-targetの例として、細胞内の分子等を標的とする創薬、またはタンパク-タンパク相互作用の阻害による創薬などがあげられる。これらが創薬の標的に使われてこなかったのは、医薬の分子が疾病の標的分子に到達できないため、または標的分子の作用部位の形状が従来の医薬では作用しにくい形状であることが挙げられる(非特許文献1)。
【0003】
最近になって、従来の技術ではアクセスすることが困難であった、tough-targetにアクセスする方法として、環状ペプチドが注目されている(非特許文献2)。環状ペプチドの医薬への適応には、標的への結合能の向上だけでなく、ドラッグライク(薬らしさ:好ましくは、膜透過性と代謝安定性の両立を示す。)な環状ペプチドであることや、効率的な環状ペプチドのスクリーニング方法が考察されてきた(非特許文献3、4)。また、ドラッグライクな非天然アミノ酸を含む、非天然型環状ペプチドに必要とされる条件が明らかになり、創薬におけるその重要性とその認知度が高まっている(特許文献1)。非天然アミノ酸は、この非天然型ペプチドの重要な要素であるところ、非天然アミノ酸、例えばN-メチル(もしくは、N-アルキル)アミノ酸を含むペプチド、場合によっては、N-メチル(もしくは、N-アルキル)アミノ酸が連続するユニットを含むペプチドの合成は、その嵩高さによって天然型ペプチドに比べて高難易度であることは広く認知されている(非特許文献5、6)。
【0004】
アミノ酸の側鎖が天然アミノ酸と異なる非天然アミノ酸に視点を移してみると、アミノ酸のα位が二つの置換基で置換されたα,α-ジ置換アミノ酸は、脂溶性の増大、立体障害によるα,α-ジ置換アミノ酸を含むペプチドのコンフォメーション自由度の制限、生体内での安定化に寄与すると報告されており(非特許文献7)、薬効面およびドラッグライクの面の双方に大きく正の影響を及ぼすことが期待できる。
【0005】
これら非天然アミノ酸を含むペプチドの製造法に於いて、ペプチド合成に最も汎用されるFmoc法は、これら非天然アミノ酸の構造的な嵩高さに起因して、不向きであることが知られている(非特許文献8)。
【0006】
これらのことから、α,α-ジ置換アミノ酸のカルボキシル基の、アミノ酸のアミノ基への縮合反応によるペプチド合成、とりわけN-アルキル化α,α-ジ置換アミノ酸のカルボキシル基の、N-アルキル化アミノ酸のアミノ基への縮合反応によるペプチドの合成は、一方または双方のアミノ酸の立体的な嵩高さに起因して困難であることが容易に推測される。
【0007】
N-アルキルアミノ酸を連続的に導入する方法のひとつとして、N-アルキルアミノ酸より立体障害の小さいN-Hアミノ酸を縮合させてペプチドを合成し、得られたペプチド中に複数あるNH基のうち、目的とするNH基を選択的にN-アルキル化する方法が知られている(非特許文献9、10)。しかし、これらの方法は、α-モノ置換アミノ酸とN-アルキルアミノ酸を結合させる方法であり、N-アルキル-α,α-ジ置換アミノ酸とN-アルキルアミノ酸が結合した配列を持つペプチドの実用的な合成法は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol., 2016, 56, 23-40.
【文献】Future Med. Chem. 2009, 1, 1289-1310.
【文献】ACS Chem. Biol., 2013, 8, 488- 499.
【文献】Drug Discovery Today, 2014, 19, 388-399.
【文献】J. Peptide Res., 2005, 65, 153-166.
【文献】Biopolymers, 109; e23110 (DOI:10.1002/bip.23110)
【文献】有機合成化学協会誌 2002, vol.60, No.2, 125-136.
【文献】Chem. Soc. Rev., 2016, 45, 631-654.
【文献】Org. Lett., 2013, 15, 5012-5015.
【文献】J. Am. Chem. Soc., 1997, 119, 2301-2302.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献5には、嵩高いアミノ酸を含むペプチドの製造法として、N-アルキルアミノ酸を含むペプチドの製造方法が例示されている。しかし、この文献はアミノ酸の縮合反応における副反応のメカニズムの考察と縮合試薬について記載するにとどまり、さらに嵩高いα,α-ジ置換アミノ酸の縮合反応については記載されていない。
【0011】
非特許文献6には、N-アルキルアミノ酸の製造方法と、N-アルキルアミノ酸を含むペプチドの製造方法が例示されている。この文献にはアミノ酸の縮合剤に焦点を当てた製造法が例示されているが、さらに嵩高いα,α-ジ置換アミノ酸の縮合反応は記載されていない。
【0012】
非特許文献7には、α,α-ジ置換アミノ酸の製造法と、α,α-ジ置換アミノ酸を含むペプチドの有用性、α,α-ジ置換アミノ酸の例示、およびそれらの製造方法が記載されているが、立体的に嵩高いアミノ酸を含むペプチドの製造についての記載はない。
【0013】
非特許文献8には、合成の困難なペプチドの製造法について例示されている。この文献には、溶解度が低い、あるいは凝集しやすいペプチドの製造について記載されているが、縮合反応を用いて課題を解決する方法についての記載はない。
【0014】
非特許文献9には、温和な条件で除去可能なトリフルオロアセチル基を用いたN-アルキルアミノ酸によるペプチド結合の形成法と、N-アルキルアミノ酸を含むペプチドの製造法が例示されている。しかし、さらに嵩高いα,α-ジ置換アミノ酸との縮合反応についての言及はない。また、トリフルオロアセチル基が結合した窒素原子にのみ選択的にアルキル基を導入できる訳ではなく、トリフルオロアセチル基の酸素原子にもアルキル基が導入された異性体の副生成物が生じることも知られている。
【0015】
非特許文献10には、ノシル基で保護されたアミノ酸の窒素原子にアルキル基を導入して、N-アルキルアミノ酸を含むペプチドを製造する方法が記載されている。しかし、ノシル基の脱保護工程では副反応が起こることから、目的物の製造に問題があることが知られている(非特許文献9)。
【0016】
以上のように、N-アルキル-α,α-ジ置換アミノ酸などのN-置換-α,α-ジ置換アミノ酸とN-アルキルアミノ酸などのN-置換アミノ酸との結合形成反応は困難だが、その有効な解決手段は知られていない。本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、N-置換-α,α-ジ置換アミノ酸残基、および/またはN-置換アミノ酸残基を含むペプチド化合物の製造方法を提供することを課題とする。より具体的には、N-置換アミノ酸にN-置換-α,α-ジ置換アミノ酸を導入する方法を提供することを課題とする。さらにはN-非置換-α,α-ジ置換アミノ酸残基のアミノ基を高選択的にN-官能基化する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、N-置換アミノ酸とN-置換-α,α-ジ置換アミノ酸を連結させる方法を見出した。具体的には、N-置換アミノ酸と比較して立体的に嵩が低く、かつ電子求引性の保護基でアミノ基を保護することによりカルボキシル基の反応性を向上させたN-非置換-α,α-ジ置換アミノ酸を用いることで効率よく目的のアミノ酸を導入できることを見出した。またこれに続くアミノ基の官能基化では、電子求引性の保護基に起因して酸性度が上昇したNH基に対して選択的にN-アルキル化反応などのN-官能基化反応が進行することを見出した。さらには、電子求引性の保護基に起因してNH基の酸性度が上昇していることに着目し、N-官能基化反応に使用する特定の塩基を見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち本発明は、非限定の具体的な一態様において以下を包含する。
〔1〕N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基をN末端に有し、該N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む、ペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を製造する方法であって、以下の工程を含む方法:
工程A:N-置換アミノ酸、その塩、もしくはそれらの溶媒和物、またはN-置換アミノ酸残基をN末端に有するペプチド化合物、その塩、もしくはそれらの溶媒和物と、電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-非置換-α,αジ置換アミノ酸、その塩、その脱水体、またはそれらの溶媒和物とを、縮合試薬の存在下または非存在下で反応させて、電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-非置換-α,αジ置換アミノ酸残基をN末端に有し、該N-非置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む、ペプチド化合物、その塩、もしくはそれらの溶媒和物を得る工程、および
工程B:N末端の電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-非置換-α,αジ置換アミノ酸残基のアミノ基に、塩基と置換基導入剤の存在下、置換基を導入して、電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-置換-α,αジ置換アミノ酸残基をN末端に有し、該N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む、ペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程。
〔2〕電子求引性の保護基が、該保護基が結合しているNH基のpKa(水中)が6~11となる保護基である、〔1〕に記載の方法。
〔3〕塩基の共役酸のpKa(アセトニトリル中)が18~31である、〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕N-置換アミノ酸、またはN-置換アミノ酸残基をN末端に有するペプチド化合物が、固相合成用樹脂に担持されている、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕N-置換アミノ酸、またはN-置換アミノ酸残基をN末端に有するペプチド化合物が、式(2):
[式中、
P
2は、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、またはC
7-C
14アラルキルであり、
R
2は、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ハロアルキル、C
1-C
6ヒドロキシアルキル、C
1-C
6アルキルスルホニルC
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルキニル、1つまたは複数のハロゲンによって置換されていてもよいC
1-C
6アルコキシC
1-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルキル、C
3-C
8シクロアルキルC
1-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルコキシC
1-C
6アルキル、またはC
7-C
14アラルキルであり、
R
3は、ヒドロキシ、O-PG
2、任意のアミノ酸残基、または任意のペプチド残基であり、
PG
2は、カルボキシル基の保護基である。]
で表される、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-非置換-α,αジ置換アミノ酸が、式(3):
[式中、
PG
1は、電子求引性の保護基であり、
R
1およびQ
1は、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、C
1-C
6アルコキシC
1-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルキルC
1-C
6アルキル、または置換されていてもよいC
7-C
14アラルキルから独立して選択されるか、あるいは
R
1およびQ
1は、それらが結合している炭素原子と一緒になって3~8員脂環式環または4~7員飽和複素環を形成する。]
で表される、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕工程Aで得られるペプチド化合物が、式(4):
[式中、
PG
1、R
1、およびQ
1は式(3)のPG
1、R
1、およびQ
1とそれぞれ同義であり、
P
2、R
2、およびR
3は式(2)のP
2、R
2、およびR
3とそれぞれ同義である]
で表される、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕工程Bにおける置換基導入剤がP
1X(式中、P
1は、式(1)のP
1と同義であり、Xは脱離基である)であり、工程Bで得られるペプチド化合物が、式(1):
[式中、
P
1は、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、またはC
7-C
14アラルキルであり、
PG
1、R
1、およびQ
1は式(3)のPG
1、R
1、およびQ
1とそれぞれ同義であり、
P
2、R
2、およびR
3は式(2)のP
2、R
2、およびR
3とそれぞれ同義である]
で表される、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕以下の工程を含む、式(1):
[式中、
PG
1は、アミノ基の保護基であり、
P
1は、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、またはC
7-C
14アラルキルであり、
R
1およびQ
1は、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、C
1-C
6アルコキシC
1-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルキルC
1-C
6アルキル、または置換されていてもよいC
7-C
14アラルキルから独立して選択されるか、あるいは
R
1およびQ
1は、それらが結合している炭素原子と一緒になって3~8員脂環式環または4~7員飽和複素環を形成し、
P
2は、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、またはC
7-C
14アラルキルであり、
R
2は、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ハロアルキル、C
1-C
6ヒドロキシアルキル、C
1-C
6アルキルスルホニルC
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルキニル、1つまたは複数のハロゲンによって置換されていてもよいC
1-C
6アルコキシC
1-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルキル、C
3-C
8シクロアルキルC
1-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルコキシC
1-C
6アルキル、またはC
7-C
14アラルキルであり、
R
3は、ヒドロキシ、O-PG
2、任意のアミノ酸残基、または任意のペプチド残基であり、
PG
2は、カルボキシル基の保護基である。]
で表される2つのアミノ酸残基が連結された構造を含む、ペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を製造する方法:
工程A:式(2):
[式中、P
2、R
2、およびR
3は、式(1)のP
2、R
2、およびR
3とそれぞれ同義である]
で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物、および式(3):
[式中、PG
1、Q
1、およびR
1は式(1)のPG
1、Q
1、およびR
1とそれぞれ同義である]
で表される化合物、その塩、その脱水体、またはそれらの溶媒和物を縮合試薬と反応させるか、または該式(2)で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物と、該式(3)で表される化合物の脱水体、その塩、またはそれらの溶媒和物とを反応させて、式(4):
[式中、PG
1、P
2、Q
1、およびR
1~R
3は、式(1)のPG
1、P
2、Q
1、およびR
1~R
3とそれぞれ同義である]
で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程、および
工程B:式(4)で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物をP
1導入試薬と反応させて、式(1)で表されるペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程。
〔10〕R
1およびQ
1は、それらが結合している炭素原子と一緒になってシクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、もしくはテトラヒドロピラン環を形成するか、または
R
1およびQ
1は、メチル、エチル、2-メチルプロピル、アリル、メトキシメチル、シクロヘキシルメチル、置換されていてもよいベンジル、もしくは置換されていてもよいフェネチルから独立して選択される、
〔6〕~〔9〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕式(3)および/または式(4)において、PG
1が結合しているNH基のpKa(水中)が6~11である、〔6〕~〔10〕のいずれかに記載の方法。
〔12〕PG
1が、C
2-C
6ハロアシルである、〔6〕~〔11〕のいずれかに記載の方法。
〔13〕C
2-C
6ハロアシルが、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、ペンタフルオロプロピオニル、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロピオニル、または3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロピオニルである、〔12〕に記載の方法。
〔14〕脱水体が、下記式:
[式中、Q
1およびR
1は、式(1)のQ
1およびR
1とそれぞれ同義であり、R
4は、C
1-C
5ハロアルキルである。]
で表される、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の方法。
〔15〕R
1およびQ
1が、それらが結合している炭素原子と一緒になって3~8員脂環式環を形成する、〔14〕に記載の方法。
〔16〕R
4が、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル、または2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルである、〔14〕または〔15〕に記載の方法。
〔17〕P
1が、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、アリル、ベンジル、またはフェネチルである、〔8〕~〔16〕のいずれかに記載の方法。
〔18〕P
2が、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、アリル、ベンジル、またはフェネチルである、〔5〕~〔17〕のいずれかに記載の方法。
〔19〕R
3が、固相合成用樹脂に担持された任意のアミノ酸残基または任意のペプチド残基である、〔5〕~〔18〕のいずれかに記載の方法。
〔20〕固相合成用樹脂が、CTC樹脂、Wang樹脂、またはSASRIN樹脂である、〔4〕~〔8〕および〔19〕のいずれかに記載の方法。
〔21〕縮合試薬がDICもしくはEDCI・HClのいずれか、またはDICおよびOxymaの組み合わせである、〔1〕~〔20〕のいずれかに記載の方法。
〔22〕P
1導入試薬が、P
1X(式中、P
1は、式(1)のP
1と同義であり、Xは脱離基である)と塩基の組み合わせである、〔9〕~〔21〕のいずれかに記載の方法。
〔23〕塩基の共役酸のpKa(アセトニトリル中)が18~31である、〔22〕に記載の方法。
〔24〕塩基が、
[式中、
RB
1とRB
4は、それぞれ独立してC
1-C
4アルキルであるか、またはRB
1とRB
4は、RB
1が結合している窒素原子およびRB
4が結合している炭素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
2とRB
3は、それぞれ独立してC
1-C
4アルキルであるか、またはRB
2とRB
3は、RB
2が結合している窒素原子およびRB
3が結合している窒素原子ならびに該窒素原子が結合している炭素原子と一緒になって5~8員環を形成する]、
[式中、
RB
6は、C
1-C
4アルキルであり、
RB
5とRB
7は、それぞれ独立してC
1-C
4アルキルであるか、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合している炭素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
8は、C
1-C
4アルキルであり、かつRB
9はC
1-C
4アルキルまたはフェニルであるか、RB
8とRB
9は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合している炭素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
ここでRB
9がフェニルである場合、2つのB2は、該フェニル基の2つのベンゼン環が縮合してナフタレンを形成してもよい]、
[式中、
RB
10は、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
10およびRB
11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
11は、RB
10およびRB
11が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
11およびRB
12は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
12は、RB
11およびRB
12が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
12およびRB
13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
13は、RB
12およびRB
13が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
13およびRB
14は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
14は、RB
13およびRB
14が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
14およびRB
15は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
15は、RB
14およびRB
15が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであり、
RB
16は水素、C
1-C
8アルキル、またはC
6-C
10アリールである。]、および
[式中、
RB
17は、独立してC
1-C
4アルキルであるか、またはRB
17およびRB
18は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
18は、RB
17およびRB
18が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
18およびRB
19は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
19は、RB
18およびRB
19が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
19およびRB
20は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
20は、RB
19およびRB
20が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであり、
RB
21は、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
21およびRB
22は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
22は、RB
21およびRB
22が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
22およびRB
23は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
23は、RB
22およびRB
23が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
23およびRB
24は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
24は、RB
23およびRB
24が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
24およびRB
25は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
25は、RB
24およびRB
25が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
25およびRB
26は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
26は、RB
25およびRB
26が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであり、
RB
27は、C
1-C
4アルキル、またはC
6-C
10アリールである。]
からなる群から選ばれる、〔3〕~〔8〕および〔22〕~〔23〕のいずれかに記載の方法。
〔25〕塩基が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)、1,8-ビス(テトラメチルグアニジノ)ナフタレン(TMGN)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、2-tert-ブチル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(BTMG)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、tert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P1-tBu)、tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(P1-t-Bu-トリス(テトラメチレン), BTPP)、2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン(BEMP)、tert-オクチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P1-t-Oct)、イミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(HP1(dma))、1-tert-ブチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ
5,4λ
5-カテナジ(ホスファゼン)(P2-t-Bu)、および1-エチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ
5,4λ
5-カテナジ(ホスファゼン)(P2-Et)からなる群より選択される、〔3〕~〔8〕および〔22〕~〔24〕のいずれかに記載の方法。
〔26〕工程Bが、DMF、NMP、DMI、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、およびアセトニトリルからなる群から選ばれる溶媒中で行われる、〔1〕~〔25〕のいずれかに記載の方法。
〔27〕〔1〕~〔26〕のいずれかに記載の方法を含む、N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含むペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を製造する方法。
〔28〕〔1〕~〔27〕のいずれかに記載の方法によって製造されたペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物からN末端の保護基を脱保護する工程、
任意でペプチド鎖を伸長する工程、および
C末端側の基とN末端側の基を環化して環状部を形成する工程を含む、環状ペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物の製造方法であって、
該環状ペプチド化合物が、8~15のアミノ酸残基を含み、少なくとも3つのN置換アミノ酸残基を含み、かつ少なくとも1つのN置換されていないアミノ酸残基を含み、環状部が少なくとも8つのアミノ酸残基を含む、前記方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ペプチド医薬品、ペプチド医薬品の探索、および/または医薬品の原薬供給に有用なN-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含むペプチド化合物を、効率的に製造できる。また、種々の非天然アミノ酸残基が結合したペプチド化合物も製造可能であるため、構造の多様なペプチド化合物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、フォトダイオードアレイ検出器を用い、最大吸収波長で検出した、実施例2-4の反応混合物のLCMS分析(分析条件:SQDFA05)の結果を示した図である。
【
図2】
図2は、フォトダイオードアレイ検出器を用い、最大吸収波長で検出した、比較例1の反応混合物のLCMS分析(分析条件:SQDFA05)の結果を示した図である。
【
図3】
図3は、フォトダイオードアレイ検出器を用い、最大吸収波長で検出した、比較例2-4の反応混合物のLCMS分析(分析条件:SQDFA05)の結果を示した図である。
【
図4】
図4は、フォトダイオードアレイ検出器を用い、最大吸収波長で検出した、比較例2-5の反応混合物のLCMS分析(分析条件:SQDFA05)の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明において使用される略語を以下に記す。
AA:酢酸アンモニウム
CSA:(+)-10-カンファースルホン酸
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン
DCC:N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM:ジクロロメタン
DCE:1,2-ジクロロエタン
DEAD:アゾジカルボン酸ジエチル
DMA:ジメチルアセトアミド
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DIAD:アゾジカルボン酸ジイソプロピル
DIC:N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMAP:N,N-ジメチル-4-アミノピリジン
dtbbpy:4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジル
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
FA:ギ酸
Fmoc:9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
TBME:t-ブチルメチルエーテル
TES:トリエチルシラン
TFA:トリフルオロ酢酸
TFE:2,2,2-トリフルオロエタノール
THF:テトラヒドロフラン
THP:テトラヒドロピラニル基
TMSCl:クロロトリメチルシラン
HFIP:1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアルコール
HOAt:1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール
HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
HOOBt:3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン
IPAC:酢酸イソプロピル
oxyma:シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル
PPTS:p-トルエンスルホン酸ピリジニウム
EDCI・HCl:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
TIPS:トリイソプロピルシラン
TfOH:トリフルオロメタンスルホン酸
HATU:O-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩
DMSO:ジメチルスルホキシド
Fmoc-Cl:カルボノクロリド酸(9H-フルオレン-9-イル)メチル
Fmoc-OSu:炭酸N-スクシンイミジル9-フルオレニルメチル
Ns:o-ニトロベンゼンスルホニル基
Trt:トリフェニルメチル基、またはトリチル基
Tfa:トリフルオロアセチル基
MTBD:7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン
TMGN:1,8-ビス(テトラメチルグアニジノ)ナフタレン
P1-tBu:tert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン
【0022】
(官能基等の定義)
本明細書における「ハロゲン原子」としては、F、Cl、BrまたはIが例示される。
【0023】
本明細書において「アルキル」とは、脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される1価の基であり、骨格中にヘテロ原子(炭素及び水素原子以外の原子をいう。)または不飽和の炭素-炭素結合を含有せず、水素及び炭素原子を含有するヒドロカルビルまたは炭化水素基構造の部分集合を有する。アルキルは直鎖状のものだけでなく、分枝鎖状のものも含む。アルキルとして具体的には、炭素原子数1~20(C1-C20、以下「Cp-Cq」とは炭素原子数がp~q個であることを意味する)のアルキルであり、好ましくはC1-C10アルキル、より好ましくはC1-C6アルキルが挙げられる。アルキルとして、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、イソブチル(2-メチルプロピル)、n-ペンチル、s-ペンチル(1-メチルブチル)、t-ペンチル(1,1-ジメチルプロピル)、ネオペンチル(2,2-ジメチルプロピル)、イソペンチル(3-メチルブチル)、3-ペンチル(1-エチルプロピル)、1,2-ジメチルプロピル、2-メチルブチル、n-ヘキシル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル等が挙げられる。
【0024】
本明細書において「アルケニル」とは、少なくとも1個の二重結合(2個の隣接sp2炭素原子)を有する1価の基である。二重結合および置換分(存在する場合)の配置によって、二重結合の幾何学的形態は、エントゲーゲン(E)またはツザンメン(Z)、シスまたはトランス配置をとることができる。アルケニルは、直鎖状のものだけでなく、分枝鎖状ものも含む。アルケニルとして好ましくはC2-C10アルケニル、より好ましくはC2-C6アルケニルが挙げられ、具体的には、たとえば、ビニル、アリル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル(シス、トランスを含む)、3-ブテニル、ペンテニル、3-メチル-2-ブテニル、ヘキセニルなどが挙げられる。
【0025】
本明細書において「アルキニル」とは、少なくとも1個の三重結合(2個の隣接SP炭素原子)を有する、1価の基である。アルキニルは、直鎖状のものだけでなく、分枝鎖状のものも含む。アルキニルとして好ましくはC2-C10アルキニル、より好ましくはC2-C6アルキニルが挙げられ、具体的には、たとえば、エチニル、1-プロピニル、プロパルギル、3-ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、3-フェニル-2-プロピニル、3-(2'-フルオロフェニル)-2-プロピニル、2-ヒドロキシ-2-プロピニル、3-(3-フルオロフェニル)-2-プロピニル、3-メチル-(5-フェニル)-4-ペンチニルなどが挙げられる。
【0026】
本明細書において「シクロアルキル」とは、飽和または部分的に飽和した環状の1価の脂肪族炭化水素基を意味し、単環、ビシクロ環、スピロ環を含む。シクロアルキルとして好ましくはC3-C8シクロアルキルが挙げられ、具体的には、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、スピロ[3.3]ヘプチルなどが挙げられる。
【0027】
本明細書において「アリール」とは1価の芳香族炭化水素環を意味し、好ましくはC6-C10アリールが挙げられる。アリールとして具体的には、たとえば、フェニル、ナフチル(たとえば、1-ナフチル、2-ナフチル)などが挙げられる。
【0028】
本明細書において「ヘテロシクリル」とは、炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を含有する、非芳香族の環状の1価の基を意味する。ヘテロシクリルは、環中に二重およびまたは三重結合を有していてもよく、環中の炭素原子は酸化されてカルボニルを形成してもよく、単環でも縮合環でもよい。環を構成する原子の数は好ましくは4~10であり(4~10員ヘテロシクリル)、より好ましくは4~7である(4~7員ヘテロシクリル)。ヘテロシクリルとしては具体的には、たとえば、アゼチジニル、オキセタニル、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジル、テトラヒドロピリミジル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、1,2-チアジナン、チアジアゾリジニル、アゼチジニル、オキサゾリドン、ベンゾジオキサニル、ベンゾオキサゾリル、ジオキソラニル、ジオキサニル、テトラヒドロピロロ[1,2-c]イミダゾール、チエタニル、3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、3-オキサ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタニル、スルタム、2-オキサスピロ[3.3]ヘプチルなどが挙げられる。
【0029】
本明細書において「ヘテロアリール」とは、炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を含有する、芳香族性の環状の1価の基を意味する。環は単環でも、他の環との縮合環でもよく、部分的に飽和されていてもよい。環を構成する原子の数は好ましくは5~10(5~10員ヘテロアリール)であり、より好ましくは5~7(5~7員ヘテロアリール)である。ヘテロアリールとして具体的には、たとえば、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾジオキソリル、インドリジニル、イミダゾピリジルなどが挙げられる。
【0030】
本明細書において「アルコキシ」とは、前記定義の「アルキル」が結合したオキシ基を意味し、好ましくはC1-C6アルコキシが挙げられる。アルコキシとして具体的には、たとえば、メトキシ、エトキシ、1-プロポキシ、2-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、ペンチルオキシ、3-メチルブトキシなどが挙げられる。
【0031】
本明細書における「アシル(アルカノイル)」は、水素または前記「アルキル」にカルボニル基が結合した基であることを意味し、好ましくは、C1-C6アシル、より好ましくはC2-C4アシルが挙げられる。アシルとして、具体的には、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブタノイルなどが例示される。
【0032】
本明細書において「シクロアルコキシ」とは、前記定義の「シクロアルキル」が結合したオキシ基を意味し、好ましくはC3-C8シクロアルコキシが挙げられる。シクロアルコキシとして具体的には、たとえば、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペンチルオキシなどが挙げられる。
【0033】
本明細書において「アルキルスルホニル」とは、前記定義の「アルキル」が結合したスルホニル基を意味し、好ましくはC1-C6アルキルスルホニルが挙げられる。アルキルスルホニルとして具体的には、たとえば、メチルスルホニルなどが挙げられる。
【0034】
本明細書における「ヒドロキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つ、または複数の水素が水酸基で置換された基を意味し、C1-C6ヒドロキシアルキルが好ましい。ヒドロキシアルキルとして具体的には、たとえば、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、5-ヒドロキシペンチルなどが挙げられる。
【0035】
本明細書における「ハロアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素がハロゲンで置換された基を意味し、C1-C6ハロアルキルが好ましく、C1-C6フルオロアルキルがより好ましい。ハロアルキルとして具体的には、たとえば、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3-ジフルオロプロピル、4,4-ジフルオロブチル、5,5-ジフルオロペンチルなどが挙げられる。
【0036】
本明細書における「ハロアルコキシ」とは、前記定義の「アルコキシ」の1つまたは複数の水素がハロゲンで置換された基を意味し、C1-C6ハロアルコキシが好ましい。ハロアルコキシとして具体的には、たとえば、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシなどが挙げられる。
【0037】
本明細書における「ハロアシル(ハロアルカノイル)」は、前記「ハロアルキル」にカルボニル基が結合した基であることを意味し、好ましくは、C2-C6ハロアシル、より好ましくはC2-C4ハロアシルが挙げられる。ハロアシルとして、具体的には、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、ペンタフルオロプロピオニル、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロピオニル、3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロピオニルなどが例示される。
【0038】
本明細書における「アルコキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アルコキシ」で置換された基を意味し、C1-C6アルコキシC1-C6アルキルが好ましく、C1-C6アルコキシC1-C2アルキルがより好ましい。アルコキシアルキルとして具体的には、たとえば、メトキシメチル、エトキシメチル、1-プロポキシメチル、2-プロポキシメチル、n-ブトキシメチル、i-ブトキシメチル、s-ブトキシメチル、t-ブトキシメチル、ペンチルオキシメチル、3-メチルブトキシメチル、1-メトキシエチル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチルなどが挙げられる。
【0039】
本明細書における「シクロアルキルアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「シクロアルキル」で置換された基を意味し、C3-C8シクロアルキルC1-C6アルキルが好ましく、C3-C6シクロアルキルC1-C2アルキルがより好ましい。シクロアルキルアルキルとして具体的には、たとえば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチルなどが挙げられる。
【0040】
本明細書における「シクロアルコキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「シクロアルコキシ」で置換された基を意味し、C3-C8シクロアルコキシC1-C6アルキルが好ましく、C3-C6シクロアルコキシC1-C2アルキルがより好ましい。シクロアルコキシアルキルとして具体的には、たとえば、シクロプロポキシメチル、シクロブトキシメチルなどが挙げられる。
【0041】
本明細書における「アルキルスルホニルアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アルキルスルホニル」で置換された基を意味し、C1-C6アルキルスルホニルC1-C6アルキルが好ましく、C1-C6アルキルスルホニルC1-C2アルキルがより好ましい。アルキルスルホニルアルキルとして具体的には、たとえば、メチルスルホニルメチル、2-(メチルスルホニル)エチルなどが挙げられる。
【0042】
本明細書において「アラルキル(アリールアルキル)」とは、前記定義の「アルキル」の少なくとも一つの水素原子が前記定義の「アリール」で置換された基を意味し、C7-C14アラルキルが好ましく、C7-C10アラルキルがより好ましい。アラルキルとして具体的には、たとえば、ベンジル、フェネチル、3-フェニルプロピルなどが挙げられる。
【0043】
本明細書において「ヘテロアラルキル(ヘテロアリールアルキル)」とは、前記定義の「アルキル」の少なくとも一つの水素原子が前記定義の「ヘテロアリール」で置換された基を意味し、5~10員ヘテロアリールC1-C6アルキルが好ましく、5~10員ヘテロアリールC1-C2アルキルがより好ましい。ヘテロアリールアルキルとして具体的には、たとえば、3-チエニルメチル、4-チアゾリルメチル、2-ピリジルメチル、3-ピリジルメチル、4-ピリジルメチル、2-(2-ピリジル)エチル、2-(3-ピリジル)エチル、2-(4-ピリジル)エチル、2-(6-キノリル)エチル、2-(7-キノリル)エチル、2-(6-インドリル)エチル、2-(5-インドリル)エチル、2-(5-ベンゾフラニル)エチルなどが挙げられる。
【0044】
本明細書において「カルボキシル基の保護基」には、アルキルエステル型の保護基、ベンジルエステル型の保護基、置換されたアルキルエステル型の保護基などが挙げられる。カルボキシル基の保護基として具体的には、メチル基、エチル基、t-Bu基、ベンジル基、トリチル基、クミル基、メトキシトリチル基、2-(トリメチルシリル)エチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、アリル基などが例示される。
【0045】
本明細書において「アミノ基の保護基」には、カルバメート型の保護基、アミド型の保護基、イミド型の保護基、スルホンアミド型の保護基などが挙げられる。アミノ基の保護基として具体的には、Fmoc、Boc、Cbz、Alloc、トリフルオロアセチル、ペンタフルオロプロピオニル、フタロイル、トシル、2-ニトロベンゼンスルホニル、4-ニトロベンゼンスルホニル、2,4-ジニトロベンゼンスルホニルなどが例示される。
【0046】
本明細書における「脂環式環」は、非芳香族炭化水素環を意味する。脂環式環は、環中に不飽和結合を有してもよく、2個以上の環を有する多環性の環でもよい。また環を構成する炭素原子は酸化されてカルボニルを形成してもよい。脂環式環として好ましくは3~8員脂環式環が挙げられ、具体的には、たとえば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環などが挙げられる。
【0047】
本明細書における「複素環」は、炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を含有する、非芳香族の複素環を意味する。複素環は、環中に二重およびまたは三重結合を有していてもよく、環中の炭素原子は酸化されてカルボニルを形成してもよく、単環、縮合環、スピロ環でもよい。環を構成する原子の数は限定されないが、好ましくは3~12であり(3~12員複素環)、より好ましくは4~7である(4~7員複素環)。複素環としては具体的には、たとえば、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ホモモルホリン、ヘキサヒドロピラジン、3-オキソピペラジン、2-オキソピロリジン、アゼチジン、2-オキソイミダゾリジン、オキセタン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロピリジン、チオモルホリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イミダゾリジン、イソチアゾリジン、チアジアゾリジン、オキサゾリドン、ベンゾジオキサン、ジオキソラン、ジオキサン、テトラヒドロチオピランなどが挙げられる。
【0048】
本明細書における「飽和複素環」は、炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を含有し、環中に二重結合および/または三重結合を含まない、非芳香族の複素環を意味する。飽和複素環は単環でもよく、他の環、例えば、ベンゼン環などの芳香環と縮合環を形成してもよい。飽和複素環が縮合環を形成する場合、飽和複素環として好ましくは4~7員飽和複素環が挙げられ、具体的には、たとえば、アゼチジン環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ピロリジン環、4-オキソピロリジン環、ピペリジン環、4-オキソピペリジン環、ピペラジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、オキサゾリジン環、イソオキサゾリジン環、チアゾリジン環、イソチアゾリジン環、チアジアゾリジン環、オキサゾリドン環、ジオキソラン環、ジオキサン環、チエタン環、オクタヒドロインドール環、インドリン環などが挙げられる。
【0049】
本明細書において、「ペプチド鎖」とは、1つまたはそれ以上の天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸がアミド結合および/またはエステル結合により連結されているペプチド鎖をいう。ペプチド鎖として好ましくは、1~15のアミノ酸残基を含むペプチド鎖であり、より好ましくは5~12のアミノ酸残基からなるペプチド鎖である。
【0050】
本発明における「ペプチド化合物」は、天然アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸がアミド結合あるいはエステル結合によって連結されるペプチド化合物であれば特に限定されないが、アミノ酸残基数として好ましくは5~30残基、より好ましくは8~15残基、さらに好ましくは9~13残基のペプチド化合物である。固相合成用樹脂に担持されているものもペプチド化合物に含まれる。本発明において合成されるペプチド化合物は、1つのペプチド中に少なくとも3つのN-置換アミノ酸を含むことが好ましく、少なくとも5つ以上のN置換アミノ酸を含むことがより好ましい。これらのN置換アミノ酸は、ペプチド化合物中に連続して存在していても、不連続に存在していてもよい。本明細書において、ペプチド化合物を構成する「アミノ酸」を「アミノ酸残基」、ペプチド化合物の全部または一部を構成する「ペプチド」を「ペプチド残基」ということがある。本発明におけるペプチド化合物は、直鎖状でも環状でもよく、環状ペプチド化合物が好ましい。
【0051】
本発明における「環状ペプチド化合物」は、直鎖ペプチド化合物のN末端側の基とC末端側の基とを環化することにより得ることができる環状のペプチド化合物である。環化は、アミド結合のような炭素-窒素結合による環化、エステル結合やエーテル結合のような炭素-酸素結合による環化、チオエーテル結合のような炭素-硫黄結合による環化、炭素-炭素結合による環化、あるいは複素環構築による環化など、どのような形態であってもよい。これらのうちでは、アミド結合あるいは炭素-炭素結合などの共有結合を介した環化が好ましく、側鎖のカルボン酸基とN末端の主鎖のアミノ基によるアミド結合を介した環化がより好ましい。環化に用いられるカルボン酸基やアミノ基等の位置は、主鎖上のものでも、側鎖上のものでもよく、環化可能な位置にあれば、特に制限されない。
【0052】
本明細書において「1つまたは複数の」とは、1つまたは2つ以上の数を意味する。「1つまたは複数の」が、ある基の置換基に関連する文脈で用いられる場合、この用語は、1つからその基が許容する置換基の最大数までの数を意味する。「1つまたは複数の」として具体的には、たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、および/またはそれより大きい数が挙げられる。
【0053】
本明細書において「固相合成用樹脂」は、固相法によるペプチド化合物の合成に用いることができるものであれば、特に限定されない。このような固相合成用樹脂として、具体的には、例えば、CTC樹脂、Wang樹脂、SASRIN樹脂、トリチルクロリド樹脂(Trt樹脂)、4-メチルトリチルクロリド樹脂(Mtt樹脂)、4-メトキシトリチルクロリド樹脂(Mmt)などの酸性条件で除去可能なものが挙げられる。樹脂は、用いられるアミノ酸側の官能基に合わせて適宜選択することができる。例えば、アミノ酸側の官能基としてカルボン酸(主鎖カルボン酸、もしくは、AspやGluに代表される側鎖カルボン酸)、又は、芳香環上のヒドロキシ基(Tyrに代表されるフェノール基)を用いる場合には、樹脂として、トリチルクロリド樹脂(Trt樹脂)もしくは2-クロロトリチルクロリド樹脂(CTC樹脂)を用いることが好ましい。アミノ酸側の官能基として脂肪族ヒドロキシ基(SerやThrに代表される脂肪族アルコール基)を用いる場合には、樹脂として、トリチルクロリド樹脂(Trt樹脂)、2-クロロトリチルクロリド樹脂(CTC樹脂)もしくは4-メチルトリチルクロリド樹脂(Mtt樹脂)を用いることが好ましい。なお、本明細書中にて、樹脂をレジンと記載する場合もある。固相合成用樹脂は、ペプチド中のC末端のアミノ酸に限定されない任意の位置のアミノ酸と連結することが可能である。C末端のアミノ酸のカルボキシル基が固相合成用樹脂と連結していることが好ましく、そのカルボキシル基は主鎖のカルボキシル基でも側鎖のカルボキシル基でもよい。
【0054】
樹脂を構成するポリマーの種類についても特に限定されない。ポリスチレンで構成される樹脂の場合には、100-200meshもしくは200-400meshのいずれを用いても良い。また、架橋率についても特に限定されないが、1%DVB(ジビニルベンゼン)架橋のものが好ましい。また、樹脂を構成するポリマーの種類として、Tentagel、またはChemmatrixが挙げられる。
【0055】
本明細書に記載の化合物の製造において、定義した基が実施方法の条件下で望まない化学的変換を受けてしまう場合、例えば、官能基の保護、脱保護等の手段を用いることにより、該化合物を製造することができる。ここで保護基の選択および脱着操作は、例えば、「Greene’s,“Protective Groups in Organic Synthesis”(第5版,John Wiley & Sons 2014)」に記載の方法を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜用いればよい。また、必要に応じて置換基導入等の反応工程の順序を変えることもできる。
【0056】
本明細書において、「置換されていてもよい」という修飾語句が付与されている場合、その置換基としては、例えば、アルキル、アルコキシ、フルオロアルキル、フルオロアルコキシ、オキソ、アミノカルボニル、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ハロゲン、ニトロ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルなどが例示される。
【0057】
さらにこれらそれぞれに置換基が付与されていてもよく、それら置換基も制限されず、例えば、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、又はリン原子を含む任意の置換基の中から独立して1つ又は2つ以上自由に選択されてよい。すなわち、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、シクロアルキルなどが例示される。
【0058】
本発明に記載の化合物は、その塩またはそれらの溶媒和物であることができる。本発明に記載の化合物の塩には、例えば、塩酸塩;臭化水素酸塩;ヨウ化水素酸塩;リン酸塩;ホスホン酸塩;硫酸塩;メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などのスルホン酸塩;酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、サリチル酸塩などのカルボン酸塩;または、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩などのアンモニウム塩などが含まれる。これらの塩は、例えば、当該化合物と、酸または塩基とを接触させることにより製造される。本発明に記載の化合物の溶媒和物とは、溶液中で溶質分子が溶媒分子を強く引き付け、一つの分子集団をつくる現象をいい、溶媒が水であれば水和物と言う。本発明に記載の化合物は、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールなど)、ジメチルホルムアミド、またはジグリムなどの有機溶媒、または水などから選択される単独の溶媒との溶媒和物でも、複数の溶媒との溶媒和物でもよい。
【0059】
本明細書における「アミノ酸」には、天然アミノ酸、及び非天然アミノ酸(アミノ酸誘導体ということがある)が含まれる。本明細書における「天然アミノ酸」とは、Gly、Ala、Ser、Thr、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、His、Glu、Asp、Gln、Asn、Cys、Met、Lys、Arg、Proを指す。非天然アミノ酸(アミノ酸誘導体)は特に限定されないが、β-アミノ酸、D型アミノ酸、N置換アミノ酸、α,α-ジ置換アミノ酸、側鎖が天然アミノ酸と異なるアミノ酸、ヒドロキシカルボン酸などが例示される。本明細書におけるアミノ酸としては、任意の立体配置が許容されるが、好ましくはL型アミノ酸である。アミノ酸の側鎖の選択は特に制限を設けないが、水素原子の他にも例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、シクロアルキル基、スピロ結合したシクロアルキル基から自由に選択される。それぞれには置換基が付与されていてもよく、それら置換基も制限されず、例えば、ハロゲン原子、O原子、S原子、N原子、B原子、Si原子、又はP原子を含む任意の置換基の中から独立して1つ又は2つ以上自由に選択されてよい。すなわち、置換されていてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、シクロアルキル基など、または、オキソ、アミノカルボニル、ハロゲン原子などが例示される。非限定の一態様において、本明細書におけるアミノ酸は、同一分子内にカルボキシ基とアミノ基を有する化合物であってよい(この場合であっても、プロリン、ヒドロキシプロリンのようなイミノ酸もアミノ酸に含まれる)。
【0060】
本明細書におけるハロゲン原子を含む置換基としては、ハロゲンを置換基に有するアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基などが例示され、より具体的には、フルオロアルキル、ジフルオロアルキル、トリフルオロアルキルなどが例示される。
【0061】
O原子を含む置換基としては、ヒドロキシ(-OH)、オキシ(-OR)、カルボニル(-C=O-R)、カルボキシ(-CO2H)、オキシカルボニル(-C=O-OR)、カルボニルオキシ(-O-C=O-R)、チオカルボニル(-C=O-SR)、カルボニルチオ(-S-C=O-R)、アミノカルボニル(-C=O-NHR)、カルボニルアミノ(-NH-C=O-R)、オキシカルボニルアミノ(-NH-C=O-OR)、スルホニルアミノ(-NH-SO2-R)、アミノスルホニル(-SO2-NHR)、スルファモイルアミノ(-NH-SO2-NHR)、チオカルボキシル(-C=O-SH)、カルボキシルカルボニル(-C=O-CO2H)などの基が挙げられる。
【0062】
オキシ(-OR)の例としては、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシなどが挙げられる。アルコキシとしては、C1-C4アルコキシ、C1-C2アルコキシが好ましく、なかでもメトキシ、又はエトキシが好ましい。
【0063】
カルボニル(-C=O-R)の例としては、ホルミル(-C=O-H)、アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アラルキルカルボニルなどが挙げられる。
【0064】
オキシカルボニル(-C=O-OR)の例としては、アルキルオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アルキニルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニルなどが挙げられる。
【0065】
カルボニルオキシ(-O-C=O-R)の例としては、アルキルカルボニルオキシ、シクロアルキルカルボニルオキシ、アルケニルカルボニルオキシ、アルキニルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、アラルキルカルボニルオキシなどが挙げられる。
【0066】
チオカルボニル(-C=O-SR)の例としては、アルキルチオカルボニル、シクロアルキルチオカルボニル、アルケニルチオカルボニル、アルキニルチオカルボニル、アリールチオカルボニル、ヘテロアリールチオカルボニル、アラルキルチオカルボニルなどが挙げられる。
【0067】
カルボニルチオ(-S-C=O-R)の例としては、アルキルカルボニルチオ、シクロアルキルカルボニルチオ、アルケニルカルボニルチオ、アルキニルカルボニルチオ、アリールカルボニルチオ、ヘテロアリールカルボニルチオ、アラルキルカルボニルチオなどが挙げられる。
【0068】
アミノカルボニル(-C=O-NHR)の例としては、アルキルアミノカルボニル(例えば、C1-C6又はC1-C4アルキルアミノカルボニル、なかでもエチルアミノカルボニル、メチルアミノカルボニルなどが例示される。)、シクロアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキニルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ヘテロアリールアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニルなどが挙げられる。これらに加えて、-C=O-NHR中のN原子と結合したH原子が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0069】
カルボニルアミノ(-NH-C=O-R)の例としては、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、アルケニルカルボニルアミノ、アルキニルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて-NH-C=O-R中のN原子と結合したH原子が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0070】
オキシカルボニルアミノ(-NH-C=O-OR)の例としては、アルコキシカルボニルアミノ、シクロアルコキシカルボニルアミノ、アルケニルオキシカルボニルアミノ、アルキニルオキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ、アラルキルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて、-NH-C=O-OR中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0071】
スルホニルアミノ(-NH-SO2-R)の例としては、アルキルスルホニルアミノ、シクロアルキルスルホニルアミノ、アルケニルスルホニルアミノ、アルキニルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アラルキルスルホニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて、-NH-SO2-R中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0072】
アミノスルホニル(-SO2-NHR)の例としては、アルキルアミノスルホニル、シクロアルキルアミノスルホニル、アルケニルアミノスルホニル、アルキニルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、ヘテロアリールアミノスルホニル、アラルキルアミノスルホニルなどが挙げられる。これらに加えて、-SO2-NHR中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0073】
スルファモイルアミノ(-NH-SO2-NHR)の例としては、アルキルスルファモイルアミノ、シクロアルキルスルファモイルアミノ、アルケニルスルファモイルアミノ、アルキニルスルファモイルアミノ、アリールスルファモイルアミノ、ヘテロアリールスルファモイルアミノ、アラルキルスルファモイルアミノなどが挙げられる。さらに、-NH-SO2-NHR中のN原子と結合した2つのH原子はアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、およびアラルキルからなる群より独立して選択される置換基で置換されていてもよく、またこれらの2つの置換基は環を形成しても良い。
【0074】
S原子を含む置換基として、チオール(-SH)、チオ(-S-R)、スルフィニル(-S=O-R)、スルホニル(-SO2-R)、スルホ(-SO3H)、ペンタフルオロスルファニル(-SF5)が挙げられる。
【0075】
チオ(-S-R)の例としては、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオなどの中から選択される。
【0076】
スルフィニル(-S=O-R)の例としては、アルキルスルフィニル、シクロアルキルスルフィニル、アルケニルスルフィニル、アルキニルスルフィニル、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アラルキルスルフィニルなどが挙げられる。
【0077】
スルホニル(-SO2-R)の例としては、アルキルスルホニル、シクロアルキルスルホニル、アルケニルスルホニル、アルキニルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アラルキルスルホニルなどが挙げられる。
【0078】
N原子を含む置換基として、アジド(-N3、「アジド基」ともいう)、シアノ(-CN)、1級アミノ(-NH2)、2級アミノ(-NH-R;モノ置換アミノともいう。)、3級アミノ(-NR(R');ジ置換アミノともいう。)、アミジノ(-C(=NH)-NH2)、置換アミジノ(-C(=NR)-NR'R")、グアニジノ(-NH-C(=NH)-NH2)、置換グアニジノ(-NR-C(=NR''')-NR'R")、アミノカルボニルアミノ(-NR-CO-NR'R")、ピリジル、ピペリジノ、モルホリノ、アゼチジニルなどの基が挙げられる。
【0079】
2級アミノ(-NH-R)の例としては、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アラルキルアミノなどが挙げられる。
【0080】
3級アミノ(-NR(R');ジ置換アミノ)の例としては、例えばアルキル(アラルキル)アミノなど、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルなどの中からそれぞれ独立して選択される、任意の2つの置換基を有するアミノ基が挙げられ、これらの任意の2つの置換基は環を形成しても良い。具体的には、ジアルキルアミノ、なかでもC1-C6ジアルキルアミノ、C1-C4ジアルキルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどが例示される。本明細書において「Cp-Cqジアルキルアミノ基」とは、アミノ基にCp-Cqアルキル基が2個置換された基をいい、両Cp-Cqアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。
【0081】
置換アミジノ(-C(=NR)-NR'R'')の例としては、N原子上の3つの置換基R、R'、およびR''が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、例えばアルキル(アラルキル)(アリール)アミジノなどが挙げられる。
【0082】
置換グアニジノ(-NR-C(=NR''')-NR'R'')の例としては、R、R'、R''、およびR'''が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、あるいはこれらが環を形成した基などが挙げられる。
【0083】
アミノカルボニルアミノ(-NR-CO-NR'R'')の例としては、R、R'、およびR''が、水素原子、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、あるいはこれらは環を形成した基などが挙げられる。
【0084】
B原子を含む置換基として、ボリル(-BR(R'))やジオキシボリル(-B(OR)(OR'))などが挙げられる。これらの2つの置換基RおよびR'は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルなどの中からそれぞれ独立して選択されるか、あるいはこれらは環を形成してもよい。具体的には、環状ボリル基が挙げられ、さらに具体的には、ピナコラートボリル基、ネオペンタンジオラートボリル基、カテコラートボリル基などが挙げられる。
【0085】
本明細書におけるN置換アミノ酸の窒素原子上の置換基として具体的には、アルキル、C1-C6アルキル、C1-C4アルキル、メチル、C7-C14アラルキル、ベンジル、フェネチルなどが例示される。
【0086】
アミノ酸の主鎖アミノ基は、非置換(-NH2)でも、置換されていてもよい(即ち、-NHR。ここで、Rは置換基を有していてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、シクロアルキルを示し、またプロリンのようにN原子に結合した炭素鎖とα位の炭素原子とが環を形成していてもよい。)。このような主鎖アミノ基の水素原子が置換されているアミノ酸を、本明細書において「N-置換アミノ酸」と称する場合がある。本明細書における「N-置換アミノ酸」としては、好ましくはN-アルキルアミノ酸、N-C1-C6アルキルアミノ酸、N-C1-C4アルキルアミノ酸、N-メチルアミノ酸、N-C2-C6アルケニルアミノ酸、N-アリルアミノ酸、N-C7-C14アラルキルアミノ酸、N-ベンジルアミノ酸、N-フェネチルアミノ酸が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
本明細書における「アミノ酸」にはそれぞれに対応する全ての同位体を含まれる。「アミノ酸」の同位体は、少なくとも1つの原子が、原子番号(陽子数)が同じで、質量数(陽子と中性子の数の和)が異なる原子で置換されたものである。本明細書の「アミノ酸」に含まれる同位体の例としては、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、フッ素原子、塩素原子などがあり、それぞれ、2H、3H、13C、14C、15N、17O、18O、32P、35S、18F、36Cl等が含まれる。
【0088】
(製造方法)
ある態様において、本発明は、後述の工程Aおよび工程Bを含む、N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基をN末端に有し、該N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む、ペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を製造する方法に関する。
【0089】
(工程A)
工程Aは、N-置換アミノ酸、その塩、もしくはそれらの溶媒和物、またはN-置換アミノ酸残基をN末端に有するペプチド化合物、その塩、もしくはそれらの溶媒和物と、電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-非置換-α,αジ置換アミノ酸、その塩、その脱水体、またはそれらの溶媒和物とを、縮合試薬の存在下または非存在下で反応させて、N-非置換-α,αジ置換アミノ酸残基をN末端に有し、該N-非置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む、ペプチド化合物、その塩、もしくはそれらの溶媒和物を得る工程である。本明細書において、ペプチド化合物がジペプチドを含むとは、該ペプチド化合物を構成するアミノ酸配列中に該ジペプチドを含むことを意味する。
【0090】
ある態様において、工程Aに用いられる「N-置換アミノ酸」は、主鎖のアミノ基が-NHRである任意の天然または非天然アミノ酸であり、ここで、Rは水素以外の任意の基である。Rとして具体的には、例えば、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいシクロアルキルなどが挙げられ、またRはプロリンのようにN原子に結合した炭素鎖とα位の炭素原子とが環を形成していてもよく、該環はさらに任意の置換基で置換されていてもよい。また、N-置換アミノ酸は塩の形態や溶媒和物の形態であってもよい。
【0091】
ある態様において、工程Aに用いられる「N-置換アミノ酸残基をN末端に有するペプチド化合物」は、前記N-置換アミノ酸残基をN末端に有していれば、該ペプチド化合物に含まれる他のアミノ酸の種類および数は限定されない。また、該ペプチド化合物は、塩の形態や溶媒和物の形態であってもよい。
【0092】
工程Aに用いられるN-置換アミノ酸、またはN-置換アミノ酸残基をN末端に有するペプチド化合物は、商業的供給業者から購入するか、あるいは商業的供給業者から購入したもの改変して調製してもよい。
【0093】
このようなN-置換アミノ酸、またはN-置換アミノ酸残基をN末端に有するペプチド化合物として具体的には、下記式(2):
[式中、
P
2は、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、またはC
7-C
14アラルキルであり、
R
2は、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ハロアルキル、C
1-C
6ヒドロキシアルキル、C
1-C
6アルキルスルホニルC
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルキニル、1つまたは複数のハロゲンによって置換されていてもよいC
1-C
6アルコキシC
1-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルキル、C
3-C
8シクロアルキルC
1-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルコキシC
1-C
6アルキル、またはC
7-C
14アラルキルであり、
R
3は、ヒドロキシ、O-PG
2、任意のアミノ酸残基、または任意のペプチド残基であり、
PG
2は、カルボキシル基の保護基である。]
で表される化合物、またはその塩、もしくはそれらの溶媒和物が挙げられる。
【0094】
ある態様において、工程Aに用いられる「電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-非置換-α,αジ置換アミノ酸」は、アミノ酸のα炭素に水素以外の二つの任意の置換基を有し、アミノ酸の主鎖のアミノ基が非置換であり、かつ該アミノ基が電子求引性の保護基で保護されている(すなわち、「保護基-NH-」)、アミノ酸を意味する。該アミノ酸は、塩の形態や溶媒和物の形態であってもよい。α炭素に結合している二つの置換基は、同一でもよく、異なっていてもよい。該置換基として、具体的には、例えば、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいヘテロアラルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルアルキルなどが挙げられる。また、α炭素に結合している二つの置換基はそれらが結合している炭素原子と一緒になって置換されていてもよい脂環式環、または置換されていてもよい複素環を形成していてもよい。
【0095】
工程Aに用いられる電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-非置換-α,αジ置換アミノ酸は、商業的供給業者から購入するか、あるいは商業的供給業者から購入したものを改変することにより調製してもよい。
【0096】
ある態様において、工程Aは、縮合試薬の存在下で反応が行うことができる。一方、工程Aは、例えば、N-非置換-α,αジ置換アミノ酸の脱水体を用いる場合など、縮合反応が進行すれば、縮合試薬の非存在下で反応を行ってもよい。
【0097】
このような電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-非置換-α,αジ置換アミノ酸として具体的には、下記式(3):
[式中、
PG
1は、電子求引性の保護基であり、
R
1およびQ
1は、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、C
1-C
6アルコキシC
1-C
6アルキル、C
3-C
8シクロアルキルC
1-C
6アルキル、または置換されていてもよいC
7-C
14アラルキルから独立して選択されるか、あるいは
R
1およびQ
1は、それらが結合している炭素原子と一緒になって3~8員脂環式環または4~7員飽和複素環を形成する。]
で表される化合物、またはその塩、もしくはそれらの溶媒和物が挙げられる。
【0098】
ある態様において、N-非置換-α,αジ置換アミノ酸に結合した電子求引性の保護基は、該保護基が結合しているNH基のpKa(水中)が6~11となる保護基であり、NH基のpKa(水中)が8~11となる保護基が好ましい。このような保護基として具体的には、C2-C6ハロアシルが挙げられ、より具体的には、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、ペンタフルオロプロピオニル、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロピオニル、または3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロピオニルなどが挙げられる。
【0099】
ある態様において、工程Aによって得られる、N-非置換-α,αジ置換アミノ酸残基をN末端に有し、該N-非置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む、ペプチド化合物として具体的には、下記式(4):
[式中、
PG
1、R
1、およびQ
1は式(3)のPG
1、R
1、およびQ
1とそれぞれ同義であり、
P
2、R
2、およびR
3は式(2)のP
2、R
2、およびR
3とそれぞれ同義である]
で表される化合物、またはその塩、もしくはそれらの溶媒和物が挙げられる。
【0100】
(工程B)
工程Bは、工程Aによって得られたペプチド化合物のN末端にある電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-非置換-α,αジ置換アミノ酸残基のアミノ基に、塩基と置換基導入剤の存在下、置換基を導入して、電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-置換-α,αジ置換アミノ酸残基をN末端に有し、かつ該N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む、ペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程である。
【0101】
本工程で導入される置換基として、具体的には、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいシクロアルキルなどが挙げられる。
【0102】
ある態様において、工程Bに用いられる塩基は、その共役酸のpKa(アセトニトリル中)が23~30であるものが好ましい。このような塩基として具体的には、後述のアミジン骨格を有する塩基、グアニジン骨格を有する塩基、またはホスファゼン骨格を有する塩基などが挙げられる。
【0103】
ある態様において、工程Bに用いられる置換基導入剤は、N末端の電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-非置換-α,αジ置換アミノ酸残基のアミノ基(すなわち「保護基-NH-」)に置換基を導入するために用いられる。置換基導入剤としては、求電子試薬を用いることができる。具体的には導入する置換基と脱離基(例えば、ハロゲン、トリフルオロメタンスルホニル基、メタンスルホニル基、もしくはトシル基などのスルホン酸基、またはリン酸基)とが結合した化合物を用いることができる。
【0104】
ある態様において、工程Bによって得られる電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-置換-α,αジ置換アミノ酸残基をN末端に有し、該N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む、ペプチド化合物として具体的には、下記式(1):
[式中、
P
1は、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、またはC
7-C
14アラルキルであり、
PG
1、R
1、およびQ
1は式(3)のPG
1、R
1、およびQ
1とそれぞれ同義であり、
P
2、R
2、およびR
3は式(2)のP
2、R
2、およびR
3とそれぞれ同義である]
で表される化合物、またはその塩、もしくはそれらの溶媒和物が挙げられる。
【0105】
本発明の方法によって製造される「N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基をN末端に有し、該N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む、ペプチド化合物」は、そのN末端のアミノ基が保護基で保護されているものでも、保護基が除去されて遊離のアミノ基(NHR-)であるものでもよい。N末端のアミノ基が保護基で保護されている場合、該保護基は、工程Aに用いた「電子求引性の保護基でアミノ基が保護されているN-非置換-α,αジ置換アミノ酸」に起因した電子求引性の保護基でも、該電子求引性の保護基が脱保護された後に導入された別の保護基(例えば、Fmoc基)でもよい。本発明は、前記工程Aおよび前記工程Bに加えて、電子求引性の保護基を除去する工程および該保護基とは別の任意の保護基を導入する工程を含むことができる。保護基の脱着には、たとえば、「Greene’s,“Protective Groups in Organic Synthesis”(第5版,John Wiley & Sons 2014)」に記載の方法を用いることができる。
【0106】
ある態様において、本発明は、以下のスキームに示すとおりの工程Aおよび工程Bを含む、式(1)で表される2つのアミノ酸残基が連結された構造を含む、ペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を製造する方法に関する。
【0107】
上記の各式中、PG1は、アミノ基の保護基であり、式(4)において、PG1が結合しているNH基のpKaが11以下となるような保護基が好ましく用いられる。PG1が結合しているNH基のpKaが11以下、好ましくは6~11、より好ましくは8~11の場合、PG1が結合している式(4)のNH基に選択的にP1基を導入することが可能である。pKaは、Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V11.02 ((C) 1994-2019 ACD/Labs)を用いた計算値を用いることができる。たとえば、トリフルオロアセチルが窒素原子に結合した、tert-ブチル(2,2,2-トリフルオロアセチル)アラニナートのNH基のpkaは9.71であり、2-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)プロパン酸tert-ブチルのNH基のpkaは9.21である。また、ペンタフルオロプロピオニルが窒素原子に結合した、2-メチル-2-(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロパンアミド)プロパン酸メチルのNH基のpkaは9.27であり、トリクロロアセチルが窒素原子に結合した、2-メチル-2-(2,2,2-トリクロロアセトアミド)プロパン酸メチルのNH基のpkaは9.72である。その一方で、これらハロアシル基より電子求引力の弱いアセチル基が窒素原子に結合した、2-アセトアミド-2-メチルプロパン酸メチルのNH基のpkaは14.36であり、NH基の酸性度はハロアシル基より弱い。本発明において、PG1は、NH基のプロトンの酸性度が高くなるような電子求引性の保護基が好ましく、このような保護基としてC2-C6ハロアシルが挙げられる。C2-C6ハロアシルとしては、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、ペンタフルオロプロピオニル、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロピオニル、または3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロピオニルなどが好ましい。
【0108】
式(1)中、P1は、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、またはC7-C14アラルキルである。P1が、C1-C6アルキルである場合、C1-C6アルキルとして好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、またはi-プロピルであり、P1が、C
2
-C6アルケニルである場合、C
2
-C6アルケニルとして好ましくは、アリルであり、P1が、C7-C14アラルキルである場合、C7-C14アラルキルとして好ましくは、ベンジルまたはフェネチルである。
【0109】
上記の各式中、R1およびQ1は、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C1-C6アルコキシC1-C6アルキル、C3-C8シクロアルキルC1-C6アルキル、または置換されていてもよいC7-C14アラルキルから独立して選択されるか、あるいは
R1およびQ1は、それらが結合している炭素原子と一緒になって3~8員脂環式環または4~7員飽和複素環を形成する。
【0110】
R1および/またはQ1がC1-C6アルキルである場合、C1-C6アルキルとして好ましくは、メチル、エチル、i-プロピル、2-メチルプロピルである。R1および/またはQ1がC2-C6アルケニルである場合、C2-C6アルケニルとして好ましくはアリルである。R1および/またはQ1がC1-C6アルコキシC1-C6アルキルである場合、C1-C6アルコキシC1-C6アルキルとして好ましくはメトキシメチル、エトキシメチル、1-プロポキシメチル、2-プロポキシメチル、n-ブトキシメチル、i-ブトキシメチル、s-ブトキシメチル、t-ブトキシメチル、ペンチルオキシメチル、3-メチルブトキシメチル、1-メトキシエチル、2-メトキシエチル、または2-エトキシエチルである。R1および/またはQ1がC3-C8シクロアルキルC1-C6アルキルである場合、C3-C8シクロアルキルC1-C6アルキルとして好ましくはシクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、2-シクロプロピルエチル、2-シクロブチルエチル、2-シクロペンチルエチル、2-シクロへキシルエチルである。R1および/またはQ1が置換されていてもよいC7-C14アラルキルである場合、C7-C14アラルキルとして好ましくはベンジルまたはフェネチルであり、C7-C14アラルキルのアリールの置換基として好ましくは、ハロゲン、C1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6ハロアルコキシ、およびシアノからなる群より選択される1つまたは複数の基である。
【0111】
R1およびQ1は、それらが結合している炭素原子と一緒になって3~8員脂環式環または4~7員飽和複素環を形成する場合、3~8員脂環式環として好ましくは、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環であり、4~7員飽和複素環として好ましくはテトラヒドロピラン環である。
【0112】
上記の各式中、P2は、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、またはC7-C14アラルキルである。P2が、C1-C6アルキルである場合、C1-C6アルキルとして好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、またはi-プロピルであり、P2が、C
2
-C6アルケニルである場合、C
2
-C6アルケニルとして好ましくは、アリルであり、P2が、C7-C14アラルキルである場合、C7-C14アラルキルとして好ましくは、ベンジルまたはフェネチルである。
【0113】
上記の各中、R2は、C1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキル、C1-C6ヒドロキシアルキル、C1-C6アルキルスルホニルC1-C6アルキル、C2-C6アルキニル、1つまたは複数のハロゲンによって置換されていてもよいC1-C6アルコキシC1-C6アルキル、C3-C8シクロアルキル、C3-C8シクロアルキルC1-C6アルキル、C3-C8シクロアルコキシC1-C6アルキル、またはC7-C14アラルキルである。
【0114】
R2として好ましくは、C1-C6アルキル、C1-C6フルオロアルキル、C1-C4ヒドロキシアルキル、メチルスルホニルC1-C2アルキル、C2-C3アルキニル、1つまたは複数のフッ素によって置換されていてもよいC1-C4アルコキシC1-C2アルキル、C3-C6シクロアルキル、C3-C6シクロアルキルC1-C2アルキル、C3-C6シクロアルコキシC1-C2アルキル、ベンジル、フェネチルである。
【0115】
R2として具体的には、たとえば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、n-ブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、n-ペンチル、プロパルギル、3,3-ジフルオロブチル、5,5-ジフルオロペンチル、メトキシメチル、1-メトキシエチル、2-メトキシエチル、n-プロポキシメチル、1-ヒドロキシエチル、シクロプロポキシメチル、シクロブトキシメチル、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メチル、2-メチルスルホニルエチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、ベンジル、フェネチルなどが挙げられる。
【0116】
上記の各式中、R3は、ヒドロキシ、O-PG2、任意のアミノ酸残基、または任意のペプチド残基であり、ここでPG2は、カルボキシル基の保護基である。R3がO-PG2である場合、PG2として具体的には、たとえば、t-ブチルなどのアルキルや、トリチル、クミル、アリル、ベンジルなどが挙げられる。R3が任意のアミノ酸残基、または任意のペプチド残基である場合、アミノ酸残基またはペプチド残基は、固相合成用樹脂に担持されていてもよい。ペプチド残基が固相合成用樹脂に担持されている場合、該樹脂はペプチド残基のC末端のアミノ酸残基に担持されていても、それ以外の任意の位置のアミノ酸残基に担持されていてもよい。固相合成用樹脂として、好ましくはCTC樹脂、Wang樹脂、またはSASRIN樹脂が挙げられ、さらに好ましくはCTC樹脂である。またR3が任意のペプチド残基である場合、該ペプチド残基は任意の種類および数のアミノ酸残基によって構成される。ペプチド残基を構成するアミノ酸残基の数として好ましくは2~13であり、より好ましくは2~9である。
【0117】
式(1)中、以下の式:
で表されるアミノ酸残基として具体的には、たとえば、MeAib、MecLeu、Me(Me)Phe、Me(Me)Abu、Me(Me)Leu、Me(Me)Ser(Me)、Me(Me)Phe、Me(Me)Cha、Me(Me)Val、EtAib、nPrAib、AllylAib、BnAibが挙げられる。
【0118】
式(1)中、以下の式:
で表されるアミノ酸残基として具体的には、たとえば、MeAla、MeLeu、MeCha、MeVal、MeAla(cPent)、MeAla(cBu)、MeAla(cPr)、MeChg、MeGly(cPent)、MeGly(cBu)、MeGly(cPr)、MeAbu、MeNva、MeNle、MeNva(5-F2)、MeHle、MeIle、MeSer(nPr)、MeSer(cPr)、MeHnl、MeHnl(7-F2)、MePRA、MeSer(Me)、MeThr、MeSer(cBu)、MeSer(Tfe)、MeThr(Me)、MeHse(Me)、MeMet(O2)、EtVal、nPrValが挙げられる。
【0119】
式(1)中、R3が任意のアミノ酸残基である場合、該アミノ酸残基として具体的には、たとえば、MeSer(tBuOH)、bAla、bMeAla、MeGly、MePhe、MePhe(3-F)、MePhe(4-F)、D-MePhe、2-ACHxC、2-ACPnC、3-CF3-bAla、Asp-mor、Asp-mor(26-bicyc)、Asp-mor(SO2)、Asp-NMe2、Asp-oxz、Asp-pip、Asp-pip(345-F6)、Asp-pip(4-Me)、Asp-pip-tBu、Asp-piz(oxe)、Asp-pyrro、Asp-pyrro(34-F4)、Asp-pyrro(3-Me2)、D-(Propargyl)Gly-(C#CH2)、D-3-Abu、D-3-MeAbu、D-Gly(Allyl)-(C#CH2)、D-Hph-(C#CH2)、D-Leu-(C#CH2)、D-MeAsp-pyrro、D-MeLeu-(C#CH2)、D-Pic(2)-(C#CH2)、D-Pro-(C#CH2)、D-Ser(iPen)-(C#CH2)、D-Ser(NtBu-Aca)-(C#CH2)、EtAsp-pip、MeAsp-aze、MeAsp-mor、MeAsp-mor(26-bicyc)、MeAsp-mor(SO2)、MeAsp-NMe2、MeAsp-oxz、MeAsp-pip、MeAsp-pip(345-F6)、MeAsp-pip(3-F2)、MeAsp-pip(4-F2)、MeAsp-pip(4-Me)、MeAsp-piz(oxe)、MeAsp-pyrro、MeAsp-pyrro(34-F4)、MeAsp-pyrro(3-Me2)、nPrAsp-pipが挙げられる。
【0120】
工程Aは、式(2)で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物と、式(3)で表される化合物、その塩、その脱水体、またはそれらの溶媒和物とを縮合試薬と反応させて、式(4)で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程、あるいは式(2)で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物、および式(3)で表される化合物の脱水体(すなわち、式(3’)で表される化合物)、その塩、またはそれらの溶媒和物とを縮合試薬の非存在下で反応させて、式(4)で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程である。
【0121】
以下の式(2)で表される化合物は、商業的供給業者から購入するか、あるいは必要に応じて、商業的供給業者から購入したものを改変して用いることができる。具体的にはたとえば、式(2)で表される化合物は、商業的供給業者から購入したものにP
2を導入することによって、製造することができる。
式(2)のP
2、R
2、およびR
3は、式(1)のP
2、R
2、およびR
3とそれぞれ同義である。
【0122】
以下の式(3)で表される化合物は、商業的供給業者から購入するか、あるいは必要に応じて、商業的供給業者から購入したものを改変して用いることができる。具体的にはたとえば、式(3)で表される化合物は、商業的供給業者から購入したものに、溶媒中、塩基とPG
1導入試薬を用いてPG
1を導入することによって、製造することができる。PG
1導入試薬として具体的には、たとえば、トリフルオロ酢酸エチル、ペンタフルオロプロピオン酸エチル、またはトリクロロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物、トリクロロ酢酸無水物などが挙げられ、塩基として具体的には、たとえば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどが挙げられる。PG
1の導入の際に用いられる溶媒として具体的には、トリフルオロ酢酸エチル、ペンタフルオロプロピオン酸エチル、またはトリクロロ酢酸エチルを導入試薬として用いた場合には、たとえば、メタノール、エタノールなどが挙げられる。また、トリフルオロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物、トリクロロ酢酸無水物を導入試薬として用いた場合には、たとえば、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ピリジンなどが挙げられる。
式中、PG
1、Q
1、およびR
1は式(1)のPG
1、Q
1、およびR
1とそれぞれ同義である。
【0123】
工程Aは、文献既知の反応条件を適用して行うことができる。例えば、メルク株式会社が平成14年5月1日に発行した固相合成ハンドブックなどに記載されている方法が例示され、これらを反応条件に応じて適宜用いればよい。工程Aで用いられる縮合試薬として、DCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)、DIC(N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド)、EDCI・HCl(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)に代表されるカルボジイミド系縮合剤、カルボジイミド系縮合剤とHOAt、HOBt、oxymaに代表される添加剤の組み合わせ、HATU(O-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩)、HBTU(O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩)、HCTU(O-(6-クロロ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩)、COMU((1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸塩)に代表されるウロニウム塩系縮合剤、PyAOP((7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩)、PyBOP(1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリ(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩)、PyOxim([エチルシアノ(ヒドロキシイミノ)アセタト-O2]トリ-1-ピロリジニルホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩)に代表されるホスホニウム塩系縮合剤、1-クロロ-N,N-2-トリメチル-1-プロペニルアミン(Ghosez試薬)、TCFH(クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロリン酸塩)、PyCIU(N,N,N’,N’-ビス(テトラメチレン)クロロホルムアミジニウムヘキサフルオロリン酸塩)、BTFFH(フルオロ-N,N,N’,N’-ビス(テトラメチレン)ホルムアミジニウムヘキサフルオロリン酸塩)、TFFH(フルオロ-N,N,N’,N’-テトラメチルアミジニウムヘキサフルオロリン酸塩)に代表されるホルムアミジニウム塩系縮合剤などを用いることができる。好ましくは、DICもしくはEDCI・HClのいずれか、またはDICおよびOxymaの組み合わせである。
【0124】
また、PG
1がC
2-C
6ハロアシルである場合、式(3)で表される化合物から調製した、この化合物の脱水体である式(3’)で表されるオキサゾロンを工程Aに用いることもできる。オキサゾロン環を構成する酸素原子および酸素原子と窒素原子の間の炭素原子はPG
1のC
2-C
6ハロアシルのカルボニル基に由来し、R
4はPG
1のC
2-C
6ハロアシルのハロアルキル基に由来する、C
1-C
5ハロアルキルである。オキサゾロンを調製するための反応剤として具体的には、たとえば、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、塩化チオニルなどが挙げられる。
【0125】
式(3’)で表される化合物において、R1およびQ1は式(3)のR1およびQ1と同義である。R1およびQ1は、それらが結合している炭素原子と一緒になって3~8員脂環式環を形成していてもよく、このような該3~8員脂環式環として具体的には、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環などが挙げられる。
【0126】
式(3’)で表される化合物において、R4はC1-C5ハロアルキルであり、C1-C5ハロアルキルとして具体的には、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル、または2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルなどが挙げられる。これらのうちでは、トリフルオロメチルが好ましい。
【0127】
工程Bは、式(4)で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物をP1導入試薬と反応させて、式(1)で表されるペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程である。
【0128】
本発明では、P1導入試薬としてP1X(式中、P1は、式(1)のP1と同義であり、Xは脱離基である)と塩基の組み合わせを用いることができる。工程Bでは、式(4)で表される化合物に、好適なpKaの塩基の存在下でP1Xを作用させることで、PG1が結合した窒素原子に選択的にP1を導入することができる。
【0129】
P1Xとして、具体的には、ヨウ化アルキル、臭化アルキル、トリフルオロメタンスルホン酸アルキル、p-トルエンスルホン酸アルキル、ヨウ化アルケニル、臭化アルケニル、トリフルオロメタンスルホン酸アルケニル、p-トルエンスルホン酸アルケニル、ヨウ化アラルキル、臭化アラルキル、トリフルオロメタンスルホン酸アラルキル、p-トルエンスルホン酸アラルキルなどが挙げられる。P1導入試薬がメチル化試薬である場合、メチル化試薬として具体的には、たとえば、ヨウ化メチル、ジメチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸メチルなどが挙げられる、P1導入試薬がエチル化試薬である場合、エチル化試薬として具体的には、たとえば、ヨウ化エチル、臭化エチル、ジエチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸エチル、p-トルエンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸エチルなどが挙げられる。P1導入試薬がアリル化試薬である場合、アリル化試薬として具体的には、たとえば、塩化アリル、臭化アリルなどが挙げられる。P1導入試薬がベンジル化試薬である場合、ベンジル化試薬として具体的には、たとえば、塩化ベンジル、臭化ベンジルなどが挙げられる。P1導入試薬がフェネチル化試薬である場合、フェネチル化試薬として具体的には、たとえば、(2-ヨードエチル)ベンゼン、(2-ブロモエチル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0130】
P1導入試薬としてP1Xと塩基の組み合わせを用いる場合、塩基は、目的とする窒素原子にP1を導入するのに適した塩基性度をもつものを用いることができる。塩基の塩基性度は、塩基の共役酸のpKaで表される。塩基の共役酸のpKaを塩基のpKaとよぶことがある。
具体的には、P1が結合しているNH基の水素を脱水素化するに足る、pKaを持つ塩基を用いることができる。
【0131】
塩基の共役酸のpKaは、Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V11.02 ((c) 1994-2019 ACD/Labs)を用いた計算値、Chem. Eur. J. 2002, 8, 1682‐1693、J. Org. Chem.2005, 70, 3, 1019-1028、Eur. J. Org. Chem., 2019, 40, 6735-6748、またはSigma-Aldrich社のカタログ記載の値などを適宜参照することができる。
【0132】
pKaは溶媒により異なる。DBU、DBN、TMGN、MTBD、BTMGの共役酸の水中でのpKaは、それぞれ13.28、13.42、12.26、14.37、13.81である。((Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V11.02 ((c) 1994-2019 ACD/Labs)を用いた計算値))
【0133】
一方、DBU、TMGN、MTBD、P1-tBu、BTPP、BEMPの共役酸のアセトニトリル中でのpKaは、24.32、25.1、25.43、26.9、28.4,27.6である(Chem. Eur. J. 2002, 8, 1682‐1693、Sigma-Aldrich社のカタログ記載値)。DBNの共役酸のアセトニトリル中でのpKaは、23.89である(Eur. J. Org. Chem., 2019, 40, 6735-6748)。
【0134】
【0135】
塩基の共役酸の水中でのpKa値(Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V11.02 ((C) 1994-2019 ACD/Labsによる計算値)と、アセトニトリル中でのpKa値は、アセトニトリル中でのpKa値のほうがおおよそ10~14大きい。
【0136】
本発明では、PG1が結合しているNH基のpKa(水中)が11以下となるような保護基が好ましく用いられる。PG1が結合しているNH基のpKa(水中)は、好ましくは6~11であり、より好ましくは8~11である。
【0137】
NH基のプロトンを脱プロトン化するのに必要な塩基の共役酸のpKaは、NH基のpKaと比較して、少なくとも2以上、好ましくは2~3、さらに好ましく2~6離れていることが必要である。
【0138】
したがって、PG1が結合したNH基のpKaが6~11である場合、用いる塩基の共役酸のpKaは、(1)NH基のpKaより大きく、(2)さらにpKaは少なくとも2以上、好ましくは6以上離れていて、(3)さらに水中でのpKaのアセトニトリル中でのpKaの換算値分(10~14)大きな値のpKaを持つ塩基が好ましい。具体的な塩基の共役酸のpKa値(アセトニトリル中)として、18~31、22~29、22~30、22~31、23~29、23~30、23~31であれば本反応の塩基として用いることができる。用いる塩基の共役酸のpKa(アセトニトリル中)の範囲として好ましくは、22~31である。
【0139】
また、PG1が結合したNH基のpKa(アセトニトリル中)が8~11である場合、用いる塩基の共役酸のpKa(アセトニトリル中)が20~31、20~30、20~29、21~31、21~30、21~29、22~31、22~30、22~29、23~31、23~30、23~29であれば本反応の塩基として用いることができる。用いる塩基の共役酸のpKa(アセトニトリル中)の範囲として好ましくは、23~30である。
【0140】
ある態様において、前記塩基はアミジン骨格を有する下記式B1で表される。
[式中、
RB
1とRB
4は、それぞれ独立してC
1-C
4アルキルであるか、またはRB
1とRB
4は、RB
1が結合している窒素原子およびRB
4が結合している炭素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
2とRB
3は、それぞれ独立してC
1-C
4アルキルであるか、またはRB
2とRB
3は、RB
2が結合している窒素原子およびRB
3が結合している窒素原子ならびに該窒素原子が結合している炭素原子と一緒になって5~8員環を形成する]
【0141】
RB1~RB4が、C1-C4アルキルである場合、該C1-C4アルキルとして好ましくはメチル、エチルが挙げられる。
RB1とRB4が5~8員環を形成する場合、該5~8員環として好ましくは、ピロリジン環、ピペリジン環、アゼパン環などが挙げられる。
RB2とRB3が5~8員環を形成する場合、該5~8員環として好ましくは、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン環などが挙げられる。
【0142】
式B1で表される塩基として具体的には、たとえば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)などが挙げられる。
【0143】
ある態様において、前記塩基はグアニジン骨格を有する下記式B2で表される。
[式中、
RB
6は、水素またはC
1-C
4アルキルであり、
RB
5とRB
7は、それぞれ独立してC
1-C
4アルキルであるか、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合している炭素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
8は、C
1-C
4アルキルであり、かつRB
9はC
1-C
4アルキルまたはフェニルであるか、RB
8とRB
9は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合している炭素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
ここでRB
9がフェニルである場合、2つのB2は、該フェニル基の2つのベンゼン環が縮合してナフタレンを形成してもよい。]
【0144】
RB5~RB8が、C1-C4アルキルである場合、該C1-C4アルキルとして好ましくはメチルであり、RB9が、C1-C4アルキルである場合、該C1-C4アルキルとして好ましくはt-ブチルである。
RB5とRB7が5~8員環を形成する場合、該5~8員環として好ましくは、イミダゾリジン環、ヘキサヒドロピリミジン環、1,3-ジアゼパン環などが挙げられる。
RB8とRB9が5~8員環を形成する場合、該5~8員環として好ましくは、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン環などが挙げられる。
【0145】
式B2で表される塩基として具体的には、たとえば、1,8-ビス(テトラメチルグアニジノ)ナフタレン(TMGN)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、2-tert-ブチル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(BTMG)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)などが挙げられる。
【0146】
ある態様において、前記塩基はホスファゼン骨格を有する下記式B3で表される。
[式中、
RB
10は、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
10およびRB
11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
11は、RB
10およびRB
11が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
11およびRB
12は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
12は、RB
11およびRB
12が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
12およびRB
13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
13は、RB
12およびRB
13が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
13およびRB
14は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
14は、RB
13およびRB
14が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
14およびRB
15は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
15は、RB
14およびRB
15が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであり、
RB
16は水素、C
1-C
8アルキル、またはC
6-C
10アリールである。]
【0147】
RB10~RB15が、C1-C4アルキルである場合、該C1-C4アルキルとして好ましくはメチル、エチルであり、RB16が、C1-C8アルキルである場合、該C1-C8アルキルとして好ましくはt-ブチル、t-オクチルである。
RB10とRB11、RB12とRB13、および/またはRB14とRB15が5~8員環を形成する場合、該5~8員環として好ましくは、ピロリジン環、ピペリジン環、アゼパン環などが挙げられる。
RB11とRB12、および/またはRB13とRB14が5~8員環を形成する場合、該5~8員環は、RB11、RB12、RB13、およびRB14が結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子以外にヘテロ原子を含まない、5~8員の飽和環であることが好ましい。
【0148】
式B3で表される塩基として具体的には、たとえば、tert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P1-tBu)、tert-オクチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P1-t-Oct)、tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(P1-t-Bu-トリス(テトラメチレン), BTPP)、2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン(BEMP)、イミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(HP1(dma))などが挙げられる。
【0149】
ある態様において、前記塩基は窒素原子を介した2つのリン原子を含むホスファゼン骨格を有する下記B4で表される。
[式中、
RB
17は、独立してC
1-C
4アルキルであるか、またはRB
17およびRB
18は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
18は、RB
17およびRB
18が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
18およびRB
19は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
19は、RB
18およびRB
19が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
19およびRB
20は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
20は、RB
19およびRB
20が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであり、
RB
21は、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
21およびRB
22は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
22は、RB
21およびRB
22が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
22およびRB
23は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
23は、RB
22およびRB
23が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
23およびRB
24は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
24は、RB
23およびRB
24が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
24およびRB
25は、それらが結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
25は、RB
24およびRB
25が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであるか、またはRB
25およびRB
26は、それらが結合している窒素原子と一緒になって5~8員環を形成し、
RB
26は、RB
25およびRB
26が5~8員環を形成する場合を除き、C
1-C
4アルキルであり、
RB
27は、C
1-C
4アルキル、またはC
6-C
10アリールである。]
【0150】
RB17~RB26が、C1-C4アルキルである場合、該C1-C4アルキルとして好ましくはメチル、エチルであり、RB27が、C1-C4アルキルである場合、該C1-C4アルキルとして好ましくはt-ブチルである。
RB17とRB18、RB19とRB20、RB21とRB22、RB23とRB24、RB25とRB26が5~8員環を形成する場合、該5~8員環として好ましくは、ピロリジン環、ピペリジン環、アゼパン環などが挙げられる。
RB17とRB18が共にC1-C4アルキルである場合、RB19とRB20も共にC1-C4アルキルであることが好ましく、RB17とRB18が5~8員環を形成する、RB19とRB20も5~8員環を形成することが好ましい。
RB21とRB22が共にC1-C4アルキルである場合、RB23とRB24およびRB25とRB26も共にC1-C4アルキルであることが好ましく、RB21とRB22が5~8員環を形成する、RB23とRB24およびRB25とRB26も5~8員環を形成することが好ましい。
RB18とRB19、および/またはRB22とRB23が5~8員環を形成する場合、該5~8員環は、RB11、RB12、RB13、およびRB14が結合している各窒素原子および該各窒素原子が結合しているリン原子以外にヘテロ原子を含まない、5~8員の飽和環であることが好ましい。
【0151】
式B4で表される塩基として具体的には、たとえば、1-tert-ブチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ
5,4λ
5-カテナジ(ホスファゼン)(P2-t-Bu)、1-エチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ
5、4λ
5-カテナジ(ホスファゼン)(P2-Et)などが挙げられる。
【0152】
本発明において、P1導入試薬としてP1Xと塩基の組み合わせを用いる場合、反応に用いる溶媒としては、DMFやNMPに代表されるアミド系溶媒、DMIに代表されるウレア系溶媒、テトラヒドロフランや2-メチルテトラヒドロフランに代表されるエーテル系溶媒、およびアセトニトリルが挙げられ、これらのうちではアミド系溶媒が好ましい。
【0153】
P1導入試薬としてP1Xと塩基を用いる場合、PG1で保護されたアミノ基のpKa(水中)が6~11であり、塩基の共役酸のpKa(アセトニトリル中)が23~30となるPG1と塩基の組み合わせが好ましい。また、PG1で保護されたアミノ基のpKa(水中)が8~11であり、塩基の共役酸のpKa(アセトニトリル中)が23~27となるPG1と塩基の組み合わせがより好ましい。PG1、P1X、および塩基の組み合わせとしては、PG1がトリフルオロアセチルであり、P1Xがヨウ化メチル、ジメチル硫酸、ヨウ化エチル、臭化アリル、ヨウ化n-プロピル、臭化ベンジルであり、塩基がP1-tBu、TMGN、またはMTBDであることが好ましい。具体的なPG1と塩基の組み合わせとしては、トリフルオロアセチルとTMGN、トリフルオロアセチルとP1-tBu、トリフルオロアセチルとMTBDなどが挙げられる。
【0154】
ある態様において、本発明は、N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基をN末端に有し、該N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む、ペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を製造する前記方法を含む、N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む、ペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物を製造する方法に関する。当該方法は、本明細書に記載された方法により製造されたN-置換-α,αジ置換アミノ酸残基をN末端に有し、該N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含むペプチド化合物のN末端および/またはC末端に、1または複数のアミノ酸残基および/またはペプチド残基をさらに縮合させる工程を含むことができる。この方法により製造されたペプチド化合物は、N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む任意のペプチド化合物であり、これには、該ジペプチド残基のN末端側およびC末端側に任意の数および種類のアミノ酸が連結されたペプチド化合物が含まれる。
【0155】
ある態様において、本発明は、本発明の方法により製造された式(1)で表されるペプチド化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物からN末端の保護基(例えば、PG1)を脱保護する工程、任意にペプチド鎖を伸長する工程、およびC末端側の基とN末端側の基を環化して環状部を形成する工程をさらに含む、環状ペプチド化合物の製造方法にも関する。
環状ペプチド化合物は、8~15のアミノ酸残基、好ましくは10~13のアミノ酸残基を含み、少なくとも3個、好ましくは少なくとも3個~(環状ペプチド化合物を構成するアミノ酸残基数-1)個のN置換アミノ酸残基を含み、かつ少なくとも1個、好ましくは少なくとも3個のN置換されていないアミノ酸残基を含み、環状部が少なくとも8個のアミノ酸残基、好ましくは少なくとも10個のアミノ酸残基を含む。
【0156】
式(1)で表されるペプチド化合物からPG1を脱保護する工程には、たとえば、「Greene’s,“Protective Groups in Organic Synthesis”(第5版,John Wiley & Sons 2014)」に記載の方法を用いることができる。
【0157】
ペプチド鎖を伸長する工程、および環状部を形成する工程には、たとえばWO2013/100132もしくはWO2018/225864に記載の方法など公知の方法を用いることができる。固相合成によってペプチド鎖を伸長した場合には、伸長工程と環状部を形成する工程の前に、樹脂からの切り出し工程を含んでもよい。
【0158】
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0159】
本発明の内容を以下の実施例、比較例及び参照例でさらに説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。全ての出発物質および試薬は商業的供給業者から入手、もしくは公知の方法を用いて合成した。LCMSの分析条件は表2に記載した。
【0160】
【0161】
実施例1:本実施例中で使用するアミノ酸やレジンに担持されたペプチド等の調製
実施例1-1:ペプチド合成機によるペプチド合成に用いるFmoc-アミノ酸
本明細書内に記載するペプチド合成において、ペプチド合成機による合成には表3~表5に記載するFmoc-アミノ酸を用いた。
表3、および表5記載のFmoc-アミノ酸は商業的供給業者から購入した。
表4記載のFmoc-アミノ酸は以下に示すスキームのとおり合成した。
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
実施例1-1-1:化合物AA2-001、(2S)-4-[3-クロロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)ブタン酸、(Fmoc-Hph(4-CF3-3-Cl)-OH)の合成
【0166】
(4S)-4-[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]-5-オキソ-5-フェニルメトキシペンタン酸(Boc-Glu-OBn、CAS番号30924-93-7)(200g,592.82mmol)、N-ヒドロキシフタルイミド(106g,649.78mmol,1.10等量)、DMAP(3.6g,29.47mmol,0.05等量)のTHF(2L)溶液に、窒素雰囲気下、0℃にてDIC(138mL,1.54等量)を滴下にて加えた。反応液を25℃で16時間撹拌し、固形物をろ過にて取り除き、ろ液を減圧下溶媒留去した。残渣をトルエンで希釈し、生じた固体をろ過にて取り除き、ろ液を減圧下溶媒留去した。残渣を再結晶(アセトン/ヘプタン)にて精製し、化合物AA2-001-a(1-O-ベンジル 5-O-(1,3-ジオキソイソインドル-2-イル) (2S)-2-[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]ペンタンジオエート)を得た。(230g,80%)
LCMS(ESI)m/z=505.2(M+Na)+
保持時間:0.992分(分析条件SMDmethod_16)
【0167】
臭化ニッケル三水和物(NiBr2・3H2O)(4g,0.07等量)および4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジル(dtbbpy)(3.9g,14.55mmol,0.07等量)をDMA(500mL)に加え、窒素雰囲気下、50℃で2時間撹拌しNi溶液を調製した。
【0168】
化合物AA2-001-a(100g,207.3mmol)、亜鉛粉末(70g,5等量)および4-ブロモ-2-クロロ-1-(トリフルオロメチル)ベンゼン(160g,617mmol,3等量)のDMA(500mL)混合液に、先に調整したNi溶液を添加し、25℃で16時間撹拌した。反応液にEDTA・2Na水溶液(10%)を加え、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル)で精製し、化合物AA2-001-bを得た。(75g,77%)
LCMS(ESI)m/z=494(M+Na)+
保持時間:2.863分(分析条件SMDmethod_17)
【0169】
化合物AA2-001-b(75g,158.93mmol)のトルエン溶液(900mL)を0℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)(42mL,3.00等量)を滴下にて加えた。室温で1時間撹拌後、水(75mL)を加えた。この混合液を水で抽出し、合わせた水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒留去した。残渣にアセトニトリル/水(900/900mL)を加え、水酸化ナトリウム水溶液(48%)でpHを7に調整した。この溶液にFmoc-OSu(51.2g,151.93mmol,0.95等量)を加え、pH7.8から8.0を維持しながら室温で16時間撹拌した。反応液をろ過し、ろ液を6mol/L塩酸水でpHを2に調整した。析出した固体を集め、50℃で乾燥して化合物AA2-001((2S)-4-[3-クロロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)ブタン酸、Fmoc-Hph(4-CF3-3-Cl)-OH)を得た。(70g,87%)
LCMS(ESI)m/z=525.8(M+Na)+
保持時間:2.180分(分析条件SMDmethod_21)
1H―NMR(300MHz,DMSO-d6)δ12.70(s,1H),7.91(d,J=7.5Hz,2H),7.79-7.59(m,5H),7.45-7.28(m,5H),4.40-4.19(m,3H),3.96-3.88(m,1H),2.82-2.60(m,2H),2.11-1.77(m,2H)
【0170】
実施例1-1-2:化合物AA2-002、(2S)-3-シクロブチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]プロパン酸(Fmoc-MeAla(cBu)-OH)の合成
【0171】
化合物AA2-002-a((2S)-3-シクロブチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ]プロパン酸、Fmoc-Ala(cBu)-OH)(3.36g,9.19mmol)のDCM(46mL)溶液に、窒素雰囲気下にてパラホルムアルデヒド(0.828g,27.6mmol)、無水硫酸マグネシウム(2.77g,22.99mmol)、三フッ化ほう素ジエチルエーテル錯体(BF3・OEt2)(1.398mL,11.03mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液に飽和塩化ナトリウム水溶液を水で半分の濃度に希釈した水溶液を加え、さらにDCMを加えて希釈した。分離した有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、濾過をした。得られた有機層を減圧下溶媒留去して化合物AA2-002-bを粗生成物として得た(3.63g)。
LCMS(ESI)m/z=378(M+H)+
保持時間:1.01分(分析条件SQDFA05)
【0172】
得られた化合物AA2-002-b(3.47g)のDCM(30.6mL)溶液に、窒素雰囲気下、トリエチルシラン(4.39mL,27.6mmol)、水(0.166g,9.19mmol)、三フッ化ほう素ジエチルエーテル錯体(BF3・OEt2)(3.50mL,27.6mmol)を加え、2時間撹拌した。反応液に飽和塩化ナトリウム水溶液を水で半分の濃度に希釈した水溶液を加えて室温にて15分間撹拌した。得られた混合物から分離した有機層を減圧下溶媒留去した。得られた残渣を逆相カラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸‐水/0.1%ギ酸‐アセトニトリル)にて精製することで化合物AA2-002((2S)-3-シクロブチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]プロパン酸、Fmoc-MeAla(cBu)-OH)を得た。(3.18g,2工程91%)
LCMS(ESI)m/z=380(M+H)+
保持時間:0.94分(分析条件SQDFA05)
【0173】
実施例1-1-3:化合物AA2-003、(2S)-2-シクロペンチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]酢酸(Fmoc-MeGly(cPent)-OH)の合成
【0174】
化合物AA2-003-a((2S)-2-シクロペンチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ]酢酸、Fmoc-Gly(cPent)-OH)(30.0g,82mmol)、パラホルムアルデヒド(7.39g,246mmol)およびCSA(0.954g,4.10mmol)のトルエン(160mL)混合液に、トリフルオロ酢酸(TFA)(9.0mL)を加えた後、60℃で4時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、固体をろ過により除去した。ろ液を酢酸エチル(220mL)で希釈後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和塩化ナトリウム水溶液で順に洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後に減圧濃縮し、化合物AA2-003-bを粗生成物として得た。これ以上の精製は実施せずに次の反応を行った。
LCMS(ESI)m/z=378(M+H)+
保持時間:1.01分(分析条件SQDFA05)
【0175】
得られた化合物AA2-003-b(31g,82mmol)とトリエチルシラン(TES)(65.5mL,410mmol)をジクロロエタン(DCE)(90mL)の混合液にトリフルオロ酢酸(TFA)(76mL,984mmol)を加えて60℃で16時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後に減圧濃縮し、得られた固体をn-ヘキサン/酢酸エチル(95/5)で洗浄し、減圧乾燥することで化合物AA2-003((2S)-2-シクロペンチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]酢酸、Fmoc-MeGly(cPent)-OH)を得た(29.1g,93%)。
LCMS(ESI)m/z=380(M+H)+
保持時間:0.92分(分析条件SQDFA05)
【0176】
実施例1-1-4:化合物AA2-004、(2S)-2-シクロブチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]酢酸(Fmoc-MeGly(cBu)-OH)の合成
【0177】
化合物AA2-004-a(2S)-2-シクロブチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ]酢酸、Fmoc-Gly(cBu)-OH)(2.5g,7.11mmol)を出発原料とし、化合物AA2-002-bの合成と同様の手法にて化合物AA2-004-bを粗生成物として得た。
LCMS(ESI)m/z=364(M+H)+
保持時間:0.97分(分析条件SQDFA05)
【0178】
上記により得られた化合物AA2-004-bの全量を用いて、化合物AA2-002の合成と同様の手法にて反応後、逆相カラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸水溶液/0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)にて精製することで化合物AA2-004((2S)-2-シクロブチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]酢酸、Fmoc-MeGly(cBu)-OH)を得た。(2.32g,2工程89%)
LCMS(ESI)m/z=366(M+H)+
保持時間:0.88分(分析条件SQDFA05)
【0179】
実施例1-1-5:化合物AA2-005、(2S)-3-シクロペンチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]プロパン酸(Fmoc-MeAla(cPent)-OH)の合成
【0180】
化合物AA2-005-a((2S)-3-シクロペンチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ]プロパン酸、Fmoc-Ala(cPent)-OH)(10g,26.4mmol)を出発原料とし、化合物AA2-002-bの合成と同様の手法にて化合物AA2-005-b(10.5g)を粗生成物として得た。
LCMS(ESI)m/z=392(M+H)+
保持時間:1.05分(分析条件SQDFA05)
【0181】
得られた化合物AA2-005-b(10.5g)を用いて、化合物AA2-002の合成と同様の手法にて反応後、逆相カラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸水溶液/0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)にて精製することで化合物AA2-005((2S)-3-シクロペンチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]プロパン酸、Fmoc-MeAla(cPent)-OH)を得た。(10.11g,2工程96%)
LCMS(ESI)m/z=394(M+H)+
保持時間:0.98分(分析条件SQDFA05)
【0182】
実施例1-2:本実施例中で使用するレジンに担持されたアミノ酸およびペプチド等の調製
実施例1-2-1:化合物1-2-1、(3S)-3-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-4-オキソ-4-ピロリジン-1-イルブタン酸-2-クロロトリチルレジン(Fmoc-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)の合成
【0183】
本明細書では、ポリマーやレジンと化合物が結合した場合、ポリマーやレジン部位を○にて表記する場合がある。また、レジン部位の反応点を明確にさせる目的で、○に接続させて反応部位の化学構造を表記させる場合がある。例えば、上記の構造(Fmoc-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-1))では、レジンの2-クロロトリチル基がAspの側鎖カルボン酸とエステル結合を介して結合している。なお、pyrroとはピロリジンを意味し、上記の構造ではC末端のカルボン酸基がピロリジンとアミド結合を形成している。
【0184】
窒素雰囲気下、0℃にてDMF(600mL)にEDCI・HCl(67.1g,350mmol)、HOBt(43.4g,321mmol)、Fmoc-Asp(OtBu)-OH(120g,292mmol)を順に加え、0℃で1時間撹拌した。この反応液にピロリジン(26.3mL,321mmol)をゆっくり加え、0℃で1時間半撹拌した。反応液に酢酸エチル(10v)と0.5mol/L塩酸水(2v)を0℃で加え、有機層を分離した。得られた有機層を0.5mol/L塩酸水、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液/水(1/1(v/v))、飽和塩化ナトリウム水溶液/水(1/1(v/v))で順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒留去して化合物1-2-1-aを粗生成物として得た。(137.1g,quant.)
LCMS(ESI)m/z=465(M+H)+
保持時間:1.05分(分析条件SQD化合物AA05)
【0185】
氷冷下にて、化合物1-2-1-a(137g,395mmol)のDCM(137mL)溶液にTFA(271mL)を内温が10℃を超えないようにゆっくり加えた。室温で1時間撹拌後、ジイソプロピルエーテル(3.4L)を4回に分けて加え、析出した固体をろ取し、乾燥して化合物1-2-1-b((3S)-3-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-4-オキソ-4-ピロリジン-1-イルブタン酸,Fmoc-Asp-pyrro)を得た。(108.4g,90%)
LCMS(ESI)m/z=409(M+H)+
保持時間:0.83分(分析条件SQD化合物AA05)
【0186】
Fmocアミノ酸のレジンへの担持反応は、WO2013/100132もしくはWO2018/225864に記載の方法に従って行った。フィルター付きの反応容器に2-クロロトリチルクロライドレジン(1.60mmol/g、100-200mesh、1%DVB、48.7g)と脱水ジクロロメタン(500mL)を入れ、室温にて20分間振とうした。窒素圧をかけてジクロロメタンを除いた後、化合物1-2-1-b(15.91g) と脱水ジクロロメタン(350mL)に脱水メタノール(12.63mL)及びジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(32.6mL)を加えた混合液を反応容器に添加し、60分間振とうした。窒素圧をかけて反応液を除いた後、脱水ジクロロメタン(350mL)に脱水メタノール(97.3mL)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(32.6mL)を加えた混合液を反応容器に添加し、1時間30分振とうした。窒素圧をかけて反応液を除いた後、ジクロロメタン(350mL)を入れ5分間振とうした後に窒素圧をかけて反応液を除いた。このジクロロメタンでのレジンの洗浄を5回繰り返し、得られたレジンを減圧下で一晩乾燥させ、(3S)-3-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-4-オキソ-4-ピロリジン-1-イルブタン酸-2-クロロトリチルレジン(Fmoc-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro、化合物1-2-1、59.79g)を得た。
【0187】
担持率の確認のため、得られた化合物1-2-1(12.6mg)を反応容器に入れ、DMF(2mL)を加えて、室温にて1時間振とうした。その後、DBU(40μL)を加えて30℃で30分間振とうした。その後、反応混合液にDMF(8mL)を加え、その溶液1mLをDMF(11.5mL)で希釈した。得られた希釈溶液の吸光度(294nm)を測定(Shimadzu、UV-1600PC(セル長1.0cm)を用いて測定)した。樹脂に担持されているFmocアミノ酸のFmocに由来するジベンゾフルベンを測定することで、化合物1-2-1 の担持量を0.464mmol/gと算出した。
なお、同様に合成した担持量が異なる別ロットについてもペプチド合成や検討等に使用した。
【0188】
実施例1-2-2:Fmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)の調製
【0189】
本実施例中にて使用するFmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)の調製は、ペプチド合成機(Multipep RS; Intavis社製)を用いて、Fmoc法により行った。操作の詳細な手順については合成機に付属のマニュアルに従った。
【0190】
実施例1-2-1にて調製したFmoc-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-1、0.464mmol/g)(1カラムあたり100mg)と、Fmoc-MeVal-OH(0.6mol/L)と1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt,0.375mol/L)のNMP溶液、およびジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(10%v/v)を合成機にセットした。
【0191】
合成を始めるにあたって、セットしたFmoc-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-1、0.464mmol/g)(1カラムあたり100mg)に対し、ジクロロメタン(DCM)を1カラムあたり1mLを加えて30分程度静置し、レジンを膨潤させた。続いてレジンをDMFにて洗浄した。
【0192】
脱Fmoc工程
1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)のDMF溶液(2%v/v)を1カラムあたり0.7mLを加えて5~10分間静置し、脱Fmocを行った。続いて、レジンをDMF(1カラムあたり0.7mL、4回繰り返す)にて洗浄した。
【0193】
伸長工程
脱Fmoc工程を経たレジンに対し、セットしたFmoc-アミノ酸溶液(1カラムあたり0.30mL)とDIC/DMF溶液(1カラムあたり0.36mL)とを混合した溶液を加え、40度にて静置した。反応完結後、レジンをDMF(1カラムあたり0.7mL、4回繰り返す)にて洗浄した。
【0194】
上記工程にて、Fmoc-MeValを伸長した。伸長後は脱Fmoc工程を行わずに、さらにDCMにて洗浄し、乾燥させた後、以後の検討に用いた。
なお、化合物1-2-2が得られたことを確認する目的で、得られたレジンの一部に対し、TFE/DCM溶液(1/1(v/v))にてペプチドの切り出しをおこなった。切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、目的ペプチドFmoc-MeVal-Asp-pyrro(化合物1-2-2*)の生成が確認された。なお、本実施例において、化合物番号に*を付した場合には、反応の確認のためにレジンからペプチドを切り出して確認した化合物を示す。化合物1-2-2*は、化合物1-2-2に含まれるペプチドのカルボン酸と、レジンの2-クロロトリチル基との結合を切断したペプチド化合物を示す。
【0195】
LCMS (ESI) m/z = 522.32 (M+H)+
保持時間:0.76分(分析条件SQDFA05)
【0196】
実施例1-2-3:Fmoc-MePhe-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-3)の調製
【0197】
実施例1-2-2と同様に、Fmoc-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-1、0.464mmol/g)に対してFmoc-MePhe-OHを伸長することによって調製した。
【0198】
なお、化合物1-2-3が得られたことを確認する目的で、得られたレジンの一部に対し、TFE/DCM溶液(1/1(v/v)にてペプチドの切り出しをおこなった。切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、目的ペプチドFmoc-MePhe-Asp-pyrro(化合物1-2-3*)の生成が確認された。
【0199】
LCMS (ESI) m/z = 570.31 (M+H)+
保持時間:0.80分(分析条件SQDFA05)
【0200】
実施例1-2-4:(3R)-3-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]ブタン酸-2-クロロトリチルレジン(Fmoc-D-3-MeAbu-O-Trt(2-Cl)resin、化合物1-2-4)の合成
【0201】
商業的供給業者より購入した(3R)-3-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]ブタン酸(Fmoc-D-3-MeAbu-OH)(11.5g,33.9mmol)と2-クロロトリチルクロライドレジン(1.69mmol/g、100-200mesh、1%DVB、50g、84.5mmol)を用い、化合物1-2-1の合成と同様の手法にて、(3R)-3-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]ブタン酸-2-クロロトリチルレジン(Fmoc-D-3-MeAbu-O-Trt(2-Cl)resin、化合物1-2-4)を得た。(58.95g,担持量0.343mmol/g)
なお、同様に合成した担持量が異なる別ロットにおいても本実施例におけるペプチド合成に使用した。
【0202】
実施例1-3:ペプチド合成に用いるFmoc以外の保護基で保護されたアミノ酸、およびその脱水体
本明細書内に記載するペプチド合成において用いる、Fmoc以外の保護基で保護されたアミノ酸、およびその脱水体は以下のとおり合成した。
【0203】
実施例1-3-1:2-メチル-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロパン酸 (Tfa-Aib-OH)(化合物1-3-1)の調製
【0204】
2-アミノ-2-メチルプロパン酸(25.0g)に対し、メタノール(242mL)、DIPEA(63.5mL,1.5等量)、トリフルオロ酢酸エチル((CAS番号383-63-1)、 37.6mL,1.3等量)を加え、混合物を50度にて18時間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し、得られた残渣に対して1N塩酸水溶液と酢酸エチルを加え、有機層と水層を分離した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥させ、溶媒を減圧留去し、18.2gの粗生成物を得た。
【0205】
粗生成物(16.0g)をTBME(80mL)に溶解した後、撹拌しながらヘプタン(320mL)を1時間以上かけて滴下した。混合物を氷冷下、さらに1時間撹拌した後、濾過をした。得られた粉末をTBME/ヘプタン溶液(1/4,32mL)で洗浄した後、減圧乾燥し、2-メチル-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロパン酸(Tfa-Aib-OH)(化合物1-3-1)を13.5g得た。
LCMS (ESI) m/z = 197.93 (M-H)-
保持時間:0.40分(分析条件SQDFA05)
【0206】
実施例1-3-2.Tfa-(Me)Abu-OH((S)-2-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ブタン酸、化合物1-3-2-b)の合成
【0207】
化合物1-3-2-a((S)-2-アミノ-2-メチルブタン酸、イソバリン、H-(Me)Abu-OH)(15.0g,128mmol)のメタノール(150mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(82.7g,640mmol)、トリフルオロ酢酸エチル(54.6g,384mmol)を加えた後、50℃で16時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、減圧濃縮し、得られた残渣をTBMEに溶解した後、1N塩酸水溶液で2回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後に減圧濃縮し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をTBME/ヘキサン(1:7)から再結晶することで、化合物1-3-2-b((S)-2-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ブタン酸)(12g,44%)を得た。
LCMS(ESI)m/z=214.0(M+H)+
保持時間:0.32分(分析条件SQDFA05)
【0208】
実施例1-3-3.Tfa-(Me)Leu-OH((S)-2,4-ジメチル-2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ペンタン酸、化合物1-3-3-b)の合成
【0209】
化合物1-3-3-a(2-メチルロイシン、(S)-2-アミノ-2,4-ジメチルペンタン酸、H-(Me)Leu-OH)(15.0g,103mmol)のメタノール(50mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(40.1g,310mmol)、トリフルオロ酢酸エチル(44.0g,310mmol)を加えた後、50℃で16時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、減圧濃縮し、得られた残渣をTBMEに溶解した後、1N塩酸水溶液で2回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後に減圧濃縮し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をTBME/ヘキサン(1:7)から再結晶することで、化合物1-3-3-b((S)-2,4-ジメチル-2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ペンタン酸)(10g,40%)を得た。
LCMS(ESI)m/z=242.1(M+H)+
保持時間:0.66分(分析条件SQDFA05)
【0210】
実施例1-3-4.Tfa-(Me)Ser(Me)-OH((S)-3-メトキシ-2-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)プロパン酸、化合物1-3-4-b)の合成
【0211】
化合物1-3-4-a(3-メトキシ-2-メチル-L-アラニン、(S)-2-アミノ-3-メトキシ-2-メチルプロパン酸、H-(Me)Ser(Me)-OH)(1.5g,11mmol)のメタノール(19mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(5.9mL,34mmol)、トリフルオロ酢酸エチル(4.0mL)を加えた後、50℃で21時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、減圧濃縮し、得られた残渣をTBME(45mL)に溶解した後、1N塩酸水溶液(45mL)で2回、飽和塩化ナトリウム水溶液(45mL)で1回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後に減圧濃縮し、粗生成物を得た。得られた粗生成物を逆相カラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸‐水/0.1%ギ酸‐アセトニトリル)にて精製することで、化合物1-3-4-b((S)-3-メトキシ-2-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)プロパン酸)(2.07g,72%)を得た。
LCMS(ESI)m/z=228.2(M-H)-
保持時間:0.41分(分析条件SQDFA05)
【0212】
実施例1-3-5.Tfa-(Me)Phe-OH((S)-2-メチル-3-フェニル-2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)プロパン酸、化合物1-3-5-b)の合成
【0213】
化合物1-3-5-a((2S)-2-アミノ-2-メチル-3-フェニルプロパン酸、H-(Me)Phe-OH)(10.0g,55.8mmol)のメタノール(500mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(21.63g,167.4mmol)、トリフルオロ酢酸エチル(23.78g,167.4mmol)を加えた後、50℃で16時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、減圧濃縮し、得られた残渣をTBMEに溶解した後、1N塩酸水溶液で2回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後に減圧濃縮し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をTBME/ヘキサン(1:15)から再結晶することで、化合物1-3-5-b((S)-2-メチル-3-フェニル-2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)プロパン酸)(8g,52%)を得た。
LCMS(ESI)m/z=274.0(M-H)-
保持時間:0.68分(分析条件SQDFA05)
【0214】
実施例1-3-6.Tfa-(Me)Cha-OH((S)-3-シクロヘキシル-2-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)プロパン酸、化合物1-3-6-c)の合成
【0215】
化合物1-3-6a(2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-3-シクロヘキシル-2-メチルプロパン酸、Fmoc-(Me)Cha-OH)のジクロロメタン(18.4mL)溶液に4-(3-フェニルプロピル)ピペリジン(4.7mL,22mmol)を加え、窒素雰囲気下室温で16時間撹拌した。反応液に水(8mL)を加えて生成物を抽出し、水層を逆相カラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸‐水/0.1%ギ酸‐アセトニトリル)にて精製した。また、有機相に水(5mL)と2N塩酸(5mL)を加え、残る粗生成物を水層に抽出した後、水層を逆相カラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸‐水/0.1%ギ酸‐アセトニトリル)にて精製した。カラム精製物を合わせることで化合物1-3-6-b((S)-2-アミノ-3-シクロヘキシル-2-メチルプロパン酸、H-(Me)Cha-OH)(1.1g,81%)とし、次の反応に用いた。
LCMS(ESI)m/z=186.1(M+H)+
保持時間:0.32分(分析条件SQDFA05)
【0216】
化合物1-3-6-b((S)-2-アミノ-3-シクロヘキシル-2-メチルプロパン酸、H-(Me)Cha-OH)(1.1g,6.0mmol)のメタノール(20mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(3.1mL,18mmol)、トリフルオロ酢酸エチル(2.1mL)を加えた後、50℃で2時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、ジイソプロピルエチルアミン(3.1mL,18mmol)、トリフルオロ酢酸エチル(2.1mL)を加えた後、50度で20時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をTBME(30mL)に溶解した後、1N塩酸水溶液(30mL)で2回、飽和塩化ナトリウム水溶液(40mL)で1回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後に減圧濃縮し、粗生成物を得た。得られた粗生成物を逆相カラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸‐水/0.1%ギ酸‐アセトニトリル)にて精製することで、化合物1-3-6-c((S)-3-シクロヘキシル-2-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)プロパン酸)(1.22g,72%)を得た。
LCMS(ESI)m/z=280.2(M-H)-
保持時間:0.75分(分析条件SQDFA05)
【0217】
実施例1-3-7.Tfa-(Me)Val-OH((S)-2,3-ジメチル-2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ブタン酸、化合物1-3-7-b)の合成
【0218】
化合物1-3-7-a((S)-2-アミノ-2,3-ジメチルブタン酸、H-(Me)Val-OH)(2.0g,15mmol)のメタノール(25mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(8.0mL,46mmol)、トリフルオロ酢酸エチル(5.5mL)を加えた後、50度で3時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、ジイソプロピルエチルアミン(4.0mL,23mmol)トリフルオロ酢酸エチル(2.7mL)を加えた後、50度で16時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をTBME(40mL)に溶解した後、1N塩酸水溶液(40mL)および飽和塩化ナトリウム水溶液(40mL)で順に洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後に減圧濃縮し、粗生成物を得た。得られた粗生成物を逆相カラムクロマトグラフィー(0.1%ギ酸‐水/0.1%ギ酸‐アセトニトリル)にて精製することで、化合物1-3-7-b((S)-2,3-ジメチル-2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ブタン酸)(1.17g,34%)を得た。
LCMS(ESI)m/z=226.1(M-H)-
保持時間:0.54分(分析条件SQDFA05)
【0219】
実施例1-3-8.Tfa-cLeu-OH(1-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)シクロペンタン-1-カルボン酸、化合物1-3-8-b)の合成
【0220】
化合物1-3-8-a(1-アミノシクロペンタンカルボン酸、H-cLeu-OH)(25g,194mmol)のメタノール(100mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(37.5g,290mmol)、トリフルオロ酢酸エチル(41.3g,290mmol)を加えた後、50度で2日間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、ジイソプロピルエチルアミン(4.0mL,23mmol)、トリフルオロ酢酸エチル(2.7mL)を加えた後、50度で16時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をTBMEに溶解した後、1N塩酸水溶液および飽和塩化ナトリウム水溶液で順に洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後に減圧濃縮し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をTBME/ヘキサン(3:20)から再結晶することで、化合物1-3-8-b(1-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)シクロペンタン-1-カルボン酸)(20g,46%)を得た。
LCMS(ESI)m/z=224.0(M-H)-
保持時間:0.49分(分析条件SQDFA05)
【0221】
実施例1-3-9.2-(トリフルオロメチル)-3-オキサ-1-アザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オン(化合物1-3-9)の合成
【0222】
化合物1-3-8-b(Tfa-cLeu-OH、1-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)シクロペンタン-1-カルボン酸)(25g,111mmol)のジクロロメタン(225mL)溶液に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(27.7g,144mmolを加え、室温で2日間撹拌した。反応後、反応液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル)にて精製することで、化合物1-3-9(2-(トリフルオロメチル)-3-オキサ-1-アザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オン)(11.9g,52%)を得た。
LCMS(ESI)m/z=208.1(M+H)+
保持時間:0.86分(分析条件SQDAA05)
【0223】
実施例2:固相合成中のペプチドにてN末端がN-置換されたアミノ酸残基に対して、N末端がTfa保護されたN-無置換-α,α-ジ置換アミノ酸を伸長し、固相上でのN-官能基化を経てN-置換-α,α-ジ置換アミノ酸残基の導入を試みた実験
【0224】
実施例2-1:Fmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)の脱Fmoc後、Tfa-Aib-OHの伸長
実施例2-1-1:Fmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)の脱Fmoc後、DICを用いたTfa-Aib-OHの伸長
フィルター付きの反応容器に、実施例1-2-2にて調製したFmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)(0.473mmol/g,100mg)をいれ、ジクロロメタン(1mL)を加えて室温にて1時間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7mL)で3回洗浄した。続いて、レジンに2%DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:0.7mL)を加えて室温にて5分間振とうし、脱Fmocをおこなった。脱Fmoc溶液を除去した後、レジンをDMF(0.7mL)で4回洗浄した。
得られたレジンに対し、Tfa-Aib-OHの伸長反応を実施した。
【0225】
伸長反応は0.6M Tfa-Aib-OH/NMP溶液(0.3mL)と10%DIC/DMF溶液(0.36mL)とを混合した溶液をレジンに加え、40度にて20時間振とうすることで実施した。
【0226】
伸長反応の液相をフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7mL)で4回、ジクロロメタン(0.7mL)で4回洗浄し、化合物2-1(Tfa-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)のロット1(以下では化合物2-1-1と記載)を得た。
【0227】
反応の進行を確認するため、得られたレジン(化合物2-1-1)をTFE/DCM溶液(1/1(v/v))にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-Aib-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-1*)の生成を確認した。他のペプチド成分は検出されなかった。このレジン(化合物2-1-1)は、実施例2-3にて使用した。
【0228】
LCMS (ESI) m/z = 481.21 (M+H)+
保持時間:0.53分(分析条件SQDFA05)
【0229】
実施例2-1-2:Fmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)の脱Fmoc後、DICを用い、oxymaを添加剤として加えたTfa-Aib-OHの伸長
フィルター付きの反応容器に、実施例1-2-2にて調製したFmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)(0.473mmol/g,100mg)をいれ、伸長試薬以外は実施例2-1-1と同様の方法にてTfa-Aibの伸長をおこなった。伸長試薬は、0.6M Tfa-Aib-OH/0.375M oxyma/NMP溶液(0.3mL)と10%DIC/DMF溶液(0.36mL)とを混合した溶液を使用した。実施例2-1-1と同様にレジンからペプチドを切り出し、LCMSにて分析した結果、目的ペプチドTfa-Aib-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-1*)87.50%(UVarea)に加えて、未反応のH-MeVal-Asp-pyrroが2.2%(UVarea)、および2つの同定されないピーク(それぞれ8.85,1.43%(UVarea))が確認された。このレジン(化合物2-1のロット2、以下では化合物2-1-2と記載)は、比較例1にて使用した。
【0230】
実施例2-1-3:Fmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)の脱Fmoc後、EDCI・HClを用いたTfa-Aib-OHの伸長
フィルター付きの反応容器に、実施例1-2-2にて調製したFmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)(0.473mmol/g,100mg)をいれ、伸長試薬以外は実施例2-1-1と同様の方法にてTfa-Aibの伸長をおこなった。伸長試薬は、0.6M Tfa-Aib-OH/NMP溶液(0.3mL)とEDCI・HCl(48mg、0.250mmol)/DMF溶液(0.36mL)とを混合した溶液を使用した。実施例2-1-1と同様にレジンからペプチドを切り出し、LCMSにて分析した結果、目的ペプチドTfa-Aib-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-1*)93.1%(UVarea)に加えて、未反応のH-MeVal-Asp-pyrroが3.0%(UVarea)、同定されない3.9%(UVarea)のピークが確認された。このレジン(化合物2-1のロット3、以下では化合物2-1-3と記載)は、実施例2-2および実施例2-3にて使用した。
【0231】
実施例2-2:Tfa-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-1)のTfaアミド部位に対する求核置換反応(メチル化剤としてヨウ化メチル、塩基としてDBU)によるN-メチル化
フィルター付きの反応容器に、実施例2-1にて調製したTfa-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-1-3)(25mg)にジクロロメタン(1mL)を加えて室温にて15分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをNMP(0.7mL)で4回洗浄した。
【0232】
得られたレジンに対し、DBU(23μL)/NMP(0.35mL)溶液を加え、続いてヨウ化メチル(63μL)/NMP(0.35mL)溶液を加え、40度で30分間振とうした。液相をフィルターで除去した後、NMP(0.7mL)にて4回、ジクロロメタンにて4回洗浄した。得られたレジンを少量サンプリングし、TFE/DCM溶液(1/1(v/v))にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析した。
【0233】
1回目のメチル化を行ったレジンに対し、反応転換率の向上の目的で、再度、同様の操作を実施した。2回目のメチル化は40度で20時間振とうして実施した。レジン洗浄することで、化合物2-2を得た。得られたレジンを少量サンプリングし、TFE/DCM溶液(1/1(v/v))にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的物(化合物2-2*)と未反応物(化合物2-1*)を確認した。結果は、表6に示す通りだった。
【0234】
【0235】
LCMS (ESI) m/z = 495.23 (M+H)+
保持時間:0.57分(分析条件SQDFA05)
【0236】
この結果から、メチル化剤としてヨウ化メチルを、塩基としてDBU(共役酸のアセトニトリル中でのpKa=24.34(J. Org. Chem. 2005, 70, 1019-1028))を用いた求核置換反応にて、Tfa保護されたN末端選択的にN-メチル化が進行することが分かった。試薬を入れ替えて反応を繰り返すことで、反応の転換率を向上させられることが示された。
【0237】
実施例2-3:Tfa-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-1)のTfaアミド部位に対する求核置換反応(メチル化剤としてヨウ化メチル、種々の塩基)によるN-メチル化
フィルター付きの反応容器に、実施例2-1にて調製したTfa-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-1-1または2-1-3)(25mg)にジクロロメタン(1mL)を加えて室温にて15分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7mL)で4回洗浄した。
【0238】
得られたレジンに対し、塩基(添加量は表7中に記載)/DMF(0.35mL)溶液を加え、続いてヨウ化メチル(63μL)/DMF(0.35mL)溶液を加え、40度で15時間振とうした。液相をフィルターで除去した後、DMF(0.7mL)にて4回、ジクロロメタンにて4回洗浄し、化合物2-2を得た。得られたレジンを少量サンプリングし、TFE/DCM溶液(1/1(v/v))にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析した。
切り出して反応確認をした結果は、表7に示す通りだった。P1-tBuを塩基として使用した場合には、過剰にメチル化された生成物(化合物2-3*)の生成も僅かに認められた。
【0239】
【0240】
LCMS (ESI) m/z = 509.25 (M+H)+
保持時間:0.59分(分析条件SQDFA05)
【0241】
この結果から、塩基としてDBUよりも強い塩基性を有するMTBD(共役酸のアセトニトリル中でのpKa=25.43(Chem. Eur. J. 2002, 8, 1682-1693))、TMGN(共役酸のアセトニトリル中でのpKa=25.1(Chem. Eur. J. 2002, 8, 1682-1693))、P1-tBu(共役酸のアセトニトリル中でのpKa=26.9(アルドリッチ社 ホスファゼン塩基に関するウェブサイトhttps://www.sigmaaldrich.com/chemistry/chemical-synthesis/technology-spotlights/phosphazenes.html(2019年10月10日に閲覧)))を用いた求核置換反応にて、目的のN-メチル化が進行することが示された。なお、P1-tBuを用いた場合には、該当箇所であるTfaアミド部位とは別の2級アミド部位(Aspのアミノ基とMeValのカルボキシル基から構成されるアミド部位)にて過剰にメチル化された生成物が僅かに(3.8%)確認された。この結果より、Tfaアミド部位で選択的にN-メチル化するためには、共役酸のpKaの値が27以下である塩基を用いることがより好ましいことが推察される。
【0242】
実施例2-4:N-アルキル化後のTfa-MeAib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-2)のTfa保護の脱保護
窒素雰囲気下、水素化ホウ素ナトリウム(0.5g)にトリグリム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)(6.6mL)を加え、室温にて10分間撹拌し、2.0M水素化ホウ素ナトリウム/トリグリム溶液を得た。
【0243】
フィルター付きの反応容器に、実施例2-3、表7のrun3にて調製した、TMGNを塩基としてN-メチル化したレジン(化合物2-2)を加え、ジクロロメタン(1mL)を加えて室温にて30分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをTHF(0.7mL)で4回洗浄した。
【0244】
得られたレジンに対しTHF(125μL)、メタノール(63μL)、先に調製した2.0M 水素化ホウ素ナトリウム/トリグリム溶液(63μL)を加え、室温で30分間振とうした。液相をフィルターで除去した後、メタノール(0.7mL)にて4回(各洗浄時間は1分間)、続いてジクロロメタン(0.7mL)にて4回洗浄し、化合物2-4を得た。得られたレジンを少量サンプリングし、TFE/DCM溶液(1/1(v/v))にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析した。
【0245】
Tfa保護された原料ペプチドTfa-MeAib-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-2*)は完全に消費され、目的ペプチドH-MeAib-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-4*)が観測された。LCチャートは
図1のとおりで、高純度での合成が可能であることが確認された。
【0246】
目的ペプチドH-MeAib-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-4*)
LCMS (ESI) m/z = 399.23 (M+H)+
保持時間:0.35分(分析条件SQDFA05)
【0247】
以上のとおり、本発明によって、嵩高いN-アルキルアミノ酸に続いてN-メチル-α,α-ジアルキルアミノ酸を高純度で導入できることが示された。またこれに続く脱Tfa工程も良好に進行することが確認できており、引き続きN末端から従来のペプチド伸長等を実施することが可能である。
【0248】
実施例2-5.固相上にて、嵩高いN-メチルアミノ酸(MeVal)に続き、種々のN-メチル-α,α-ジアルキルアミノ酸を導入した実験
以下の一般式に従い、種々のTfa-アミノ酸を用いて化合物2-5-1-1~化合物2-5-7-1および化合物2-5-1-2~化合物2-5-7-2を合成した。
【0249】
【0250】
実施例2-5-1.Tfa-Me(Me)Abu-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-5-1-2)の合成
実施例2-5-1-1.Fmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)の脱Fmoc後、Tfa-(Me)Abu-OHの伸長
フィルター付きの反応容器に、実施例1-2-2と同様の手法により調製したFmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)(0.552 mmol/g, 100 mg)をいれ、ジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて45分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7 mL)で3回洗浄した。続いて、レジンに2% DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:0.7 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、脱Fmocをおこなった。脱Fmoc溶液を除去した後、レジンをDMF(0.7 mL)で4回洗浄した。
【0251】
得られたレジンに対し、Tfa-(Me)Abu-OH(化合物1-3-2-b)の伸長反応を実施した。
【0252】
伸長反応は0.6 M Tfa-(Me)Abu-OH(化合物1-3-2-b)/NMP溶液(0.3 mL)と10% DIC/DMF溶液(0.36 mL)とを混合した溶液をレジンに加え、60度にて48時間振とうすることで実施した。
【0253】
伸長反応の液相をフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7 mL)で4回、ジクロロメタン(0.7 mL)で4回洗浄し、化合物2-5-1-1(Tfa-(Me)Abu-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を得た。
【0254】
反応の進行を確認するため、得られたレジン(化合物2-5-1-1)を一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-(Me)Abu-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-5-1-1*)の生成を確認した。他のペプチド成分は検出されなかった。伸長後はDCMにて洗浄し、乾燥させた後、以後の検討に用いた。
LCMS(ESI)m/z=495.4(M+H)+
保持時間:0.56分(分析条件SQDFA05)
【0255】
実施例2-5-1-2.Tfa-(Me)Abu-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-5-1-1)のTfaアミド部位に対する求核置換反応によるN-メチル化
フィルター付きの反応容器に、実施例2-5-1-1にて調製したTfa-(Me)Abu-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-5-1-1)(45 mg)をいれ、ジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて45分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7 mL)で4回洗浄した。
【0256】
得られたレジンに対し、TMGN(27mg)/DMF(0.175 mL)溶液を加え、続いてヨウ化メチル(31 μL)/DMF (0.175 mL)溶液を加え、40度で1時間振とうした。液相をフィルターで除去した後、DMF (0.7 mL)にて2回洗浄した。得られたレジンを少量サンプリングし、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析した。
【0257】
1回目のメチル化を行ったレジンに対し、反応転換率の向上の目的で、同様の操作をさらに3回実施した。2回目のメチル化は40度で1.5時間振とうして実施した。3回目と4回目のメチル化は40度で1時間振とうして実施した。4回のメチル化後、レジンをDMFで4回、さらにDCMで4回洗浄することで、化合物2-5-1-2を得た。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-Me(Me)Abu-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-5-1-2*)94.0%(UVarea)に加えてTfaアミド部位のO-メチル化体(化合物2-5-1-2a*)6.0%(UVarea)を確認した。
【0258】
LCMS(ESI)m/z=509.5(M+H)+
保持時間:0.60分(分析条件SQDFA05)
【0259】
LCMS(ESI)m/z=509.5(M+H)+
保持時間:0.69分(分析条件SQDFA05)
【0260】
実施例2-5-2.Tfa-Me(Me)Leu-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-5-2-2)の合成
実施例2-5-2-1.Fmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)の脱Fmoc後、Tfa-(Me)Leu-OHの伸長
実施例2-5-1-1に示した手法により、化合物1-2-2(0.552mmol/g,100mg),0.6M Tfa-(Me)Leu-OH(化合物1-3-3-b)/DMF溶液(0.3mL)を用いて化合物2-5-2-1(Tfa-(Me)Leu-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-(Me)Leu-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-5-2-1*)(84.5% UVarea)に加えてMeVal-Asp-pyrroの過剰伸長体(化合物2-5-2-1a*)6.8%(UVarea)を主な不純物として確認した(脱Fmoc後の変換効率は>99%)。
【0261】
LCMS(ESI)m/z=523.5(M+H)+
保持時間:0.67分(分析条件SQDFA05)
【0262】
LCMS(ESI)m/z=804.7(M+H)+
保持時間:0.73分(分析条件SQDFA05)
【0263】
実施例2-5-2-2.Tfa-(Me)Leu-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-5-2-1)のTfaアミド部位に対する求核置換反応によるN-メチル化
実施例2-5-1-2に示した手法により、化合物2-5-2-1(45mg)を用いて化合物2-5-2-2(Tfa-Me(Me)Leu-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-Me(Me)Leu-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-5-2-2*)(68.5% UVarea)に加えてTfaアミド部位のO-メチル化体(化合物2-5-2-2a*)17.0%(UVarea)、出発原料である化合物2-5-2-1*(14.5% UVarea)を確認した。
【0264】
LCMS(ESI)m/z=537.5(M+H)+
保持時間:0.70分(分析条件SQDFA05)
【0265】
LCMS(ESI)m/z=537.5(M+H)+
保持時間:0.81分(分析条件SQDFA05)
【0266】
実施例2-5-3.Tfa-Me(Me)Ser(Me)-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-5-3-2)の合成
実施例2-5-3-1.Fmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)の脱Fmoc後、Tfa-(Me)Ser(Me)-OHの伸長
実施例2-5-1-1に示した手法により、化合物1-2-2(0.552mmol/g,100mg),0.6M Tfa-(Me)Ser(Me)-OH(化合物1-3-4-b)/DMF溶液(0.3mL)を用いて化合物2-5-3-1(Tfa-(Me)Ser(Me)-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-(Me)Ser(Me)-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-5-3-1*)の生成を確認した。他のペプチド成分は検出されなかった。
【0267】
LCMS(ESI)m/z=511.4(M+H)+
保持時間:0.55分(分析条件SQDFA05)
【0268】
実施例2-5-3-2.Tfa-(Me)Ser(Me)-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-5-3-1)のTfaアミド部位に対する求核置換反応によるN-メチル化
実施例2-5-1-2に示した手法により、化合物2-5-3-1(45mg)を用いて化合物2-5-3-2(Tfa-Me(Me)Ser(Me)-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-Me(Me)Ser(Me)-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-5-3-2*)の生成を確認した(94.0% UVarea)。
【0269】
LCMS(ESI)m/z=525.5(M+H)+
保持時間:0.61分(分析条件SQDFA05)
【0270】
実施例2-5-4.Tfa-Me(Me)Phe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-5-4-2)の合成
実施例2-5-4-1.Fmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)の脱Fmoc後、Tfa-(Me)Phe-OHの伸長
実施例2-5-1-1と同様の手法により、反応時間を72時間とすることで化合物1-2-2(0.552mmol/g,100mg),0.6M Tfa-(Me)Phe-OH(化合物1-3-5-b)/DMF溶液(0.3mL)を用いて化合物2-5-4-1(Tfa-(Me)Phe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-(Me)Phe-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-5-4-1*)の生成を確認した(81.4% UVarea)。脱Fmoc後の変換効率は>99%であり、主な不純物としてMeVal-Asp-pyrroの過剰伸長体(化合物2-5-4-1a*)4.1%(UVarea)の他、構造不明のピークが検出された。
【0271】
LCMS(ESI)m/z=557.5(M+H)+
保持時間:0.68分(分析条件SQDFA05)
【0272】
LCMS(ESI)m/z=838.7(M+H)+
保持時間:0.73分(分析条件SQDFA05)
【0273】
実施例2-5-4-2.Tfa-(Me)Phe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-5-4-1)のTfaアミド部位に対する求核置換反応によるN-メチル化
実施例2-5-1-2に示した手法により、化合物2-5-4-1(45mg)を用いて化合物2-5-4-2(Tfa-Me(Me)Phe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。この時2回目のN-メチル化も1時間で実施した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-Me(Me)Phe-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-5-4-2*)(79.7% UVarea)の生成を確認した他、MeVal-Asp-pyrroの過剰伸長体(化合物2-5-4-2a*)とTfaアミド部位のO-メチル化体(化合物2-5-4-2b*)(あわせて11.8% UVarea)を不純物として検出した(出発原料の変換効率は100%)。
【0274】
LCMS(ESI)m/z=571.5(M+H)+
保持時間:0.74分(分析条件SQDFA05)
【0275】
LCMS(ESI)m/z=852.7(M+H)+
保持時間:0.79分(分析条件SQDFA05)
【0276】
LCMS(ESI)m/z=571.5(M+H)+
保持時間:0.79分(分析条件SQDFA05)
【0277】
実施例2-5-5.Tfa-Me(Me)Cha-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-5-5-2)の合成
実施例2-5-5-1.Fmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)の脱Fmoc後、Tfa-(Me)Cha-OHの伸長
実施例2-5-1-1と同様の手法により、反応時間を72時間とすることで化合物1-2-2(0.552mmol/g,100mg),0.6M Tfa-(Me)Cha-OH(化合物1-3-6-c)/DMF溶液(0.3mL)を用いて化合物2-5-5-1(Tfa-(Me)Cha-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-(Me)Cha-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-5-5-1*)の生成を確認した(81.1% UVarea)。主な不純物としてMeVal-Asp-pyrroの過剰伸長体(化合物2-5-5-1a*)を含む複数の構造不明のピークが検出された(脱Fmoc後の変換効率は100%)。
【0278】
LCMS(ESI)m/z=563.6(M+H)+
保持時間:0.76分(分析条件SQDFA05)
【0279】
LCMS(ESI)m/z=844.8(M+H)+
保持時間:0.80分(分析条件SQDFA05)
【0280】
実施例2-5-5-2.Tfa-(Me)Phe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-5-5-1)のTfaアミド部位に対する求核置換反応によるN-メチル化
実施例2-5-1-2に示した手法により、化合物2-5-5-1(45mg)を用いて化合物2-5-5-2(Tfa-Me(Me)Cha-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。この時2回目のN-メチル化も1時間で実施した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-Me(Me)Cha-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-5-5-2*)(74.4% UVarea)に加えてTfaアミド部位のO-メチル化体(化合物2-5-5-2a*)12.1%(UVarea)、出発原料である化合物2-5-5-1*(13.5% UVarea)を確認した。
【0281】
LCMS(ESI)m/z=577.5(M+H)+
保持時間:0.80分(分析条件SQDFA05)
【0282】
LCMS(ESI)m/z=577.5(M+H)+
保持時間:0.92分(分析条件SQDFA05)
【0283】
実施例2-5-6.Tfa-Me(Me)Val-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-5-6-2)の合成
実施例2-5-6-1.Fmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)の脱Fmoc後、Tfa-(Me)Val-OHの伸長
実施例2-5-1-1と同様の手法により、反応時間を72時間とすることで化合物1-2-2(0.552mmol/g,100mg),0.6M Tfa-(Me)Val-OH(化合物1-3-7-b)/DMF溶液(0.3mL)を用いて化合物2-5-6-1(Tfa-(Me)Val-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-(Me)Val-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-5-6-1*)の生成を確認した(66.6% UVarea)。不純物としてMeVal-Asp-pyrroの過剰伸長体(化合物2-5-6-1a*)を含む複数の構造不明のピークが検出された(脱Fmoc後の変換効率は98%)。
【0284】
LCMS(ESI)m/z=509.5(M+H)+
保持時間:0.59分(分析条件SQDFA05)
【0285】
LCMS(ESI)m/z=790.7(M+H)+
保持時間:0.67分(分析条件SQDFA05)
【0286】
実施例2-5-6-2.Tfa-(Me)Val-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-5-6-1)のTfaアミド部位に対する求核置換反応によるN-メチル化
実施例2-5-1-2に示した手法に基づき、反応温度を60度とし、化合物2-5-6-1(40mg)を用いて化合物2-5-6-2(Tfa-Me(Me)Val-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。この時2回目のN-メチル化も1時間で実施した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-Me(Me)Val-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-5-6-2*)(21.2% UVarea)に加えてTfaアミド部位のO-メチル化体(化合物2-5-6-2a*)17.1%(UVarea)、出発原料である化合物2-5-6-1*(39.6% UVarea)を確認した。また、複数の構造不明ピークを検出した。
【0287】
LCMS(ESI)m/z=523.5(M+H)+
保持時間:0.65分(分析条件SQDFA05)
【0288】
LCMS(ESI)m/z=523.5(M+H)+
保持時間:0.77分(分析条件SQDFA05)
【0289】
実施例2-5-7.Tfa-MecLeu-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-5-7-2)の合成
実施例2-5-7-1.Fmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)の脱Fmoc後、Tfa-cLeu-OHの伸長
実施例2-5-1-1に示した手法により、化合物1-2-2(0.552mmol/g,100mg),0.6M Tfa-cLeu-OH(化合物1-3-8-b)/DMF溶液(0.3mL)を用いて化合物2-5-7-1(Tfa-cLeu-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-cLeu-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-5-7-1*)の生成を確認した。他のペプチド成分は検出されなかった。
【0290】
LCMS(ESI)m/z=507.4(M+H)+
保持時間:0.56分(分析条件SQDFA05)
【0291】
実施例2-5-7-2.Tfa-cLeu-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-5-7-1)のTfaアミド部位に対する求核置換反応によるN-メチル化
実施例2-5-1-2に示した手法により、化合物2-5-7-1(45mg)を用いて化合物2-5-7-2(Tfa-MecLeu-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-MecLeu-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-5-7-2*)(92.1% UVarea)の生成を確認した他、Tfaアミド部位のO-メチル化体(化合物2-5-7-2a*)7.9%(UVarea)を不純物として検出した(出発原料の変換効率は100%)。
【0292】
LCMS(ESI)m/z=521.4(M+H)+
保持時間:0.61分(分析条件SQDFA05)
【0293】
LCMS(ESI)m/z=521.4(M+H)+
保持時間:0.70分(分析条件SQDFA05)
【0294】
以上、実施例2-5の結果より、本発明の手法によって、固相合成において嵩高いN-メチルアミノ酸に続き、MeAib以外の種々のN-メチル-α,α-ジアルキルアミノ酸の導入が実用的なレベルにて可能であることが示された。
【0295】
実施例2-6.固相上にて、嵩高いN-メチルアミノ酸(MeVal)に続き、種々のN-置換-α,α―ジアルキルアミノ酸を導入した実験
以下の一般式に従い、種々のTfa-アミノ酸を用いて化合物2-6-1~化合物2-6-4を合成した。
【0296】
【0297】
実施例2-6-1.Tfa-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-1)のTfaアミド部位のN-エチル化
フィルター付きの反応容器に、実施例2-1-1と同様の手法により調製したTfa-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-1)(0.552 mmol/g, 50 mg)をいれ、ジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて45分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7 mL)で4回洗浄した。
【0298】
得られたレジンに対し、TMGN (29mg)/DMF (0.175 mL)溶液を加え、続いてヨウ化エチル(44 μL)/DMF (0.175 mL)溶液を加え、60度で1時間振とうした。液相をフィルターで除去した後、DMF (0.7 mL)にて2回洗浄した。得られたレジンを少量サンプリングし、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析した。
【0299】
1回目のエチル化を行ったレジンに対し、反応転換率の向上の目的で、同様の操作をさらに4回実施した。5回目のエチル化後、レジンをDMFで4回、さらにDCMで4回洗浄することで、化合物2-6-1(Tfa-EtAib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を得た。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-EtAib-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-6-1*)(26.1% UVarea)に加えてTfaアミド部位のO-エチル化体(化合物2-6-1a*)15.4%(UVarea)、出発原料化合物2-1*(54.8% UVarea)等を確認した。
【0300】
LCMS(ESI)m/z=509.4(M+H)+
保持時間:0.60分(分析条件SQDFA05)
【0301】
LCMS(ESI)m/z=509.4(M+H)+
保持時間:0.67分(分析条件SQDFA05)
【0302】
実施例2-6-2.Tfa-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-1)のTfaアミド部位のN-n-プロピル化
実施例2-6-1に示した手法により、化合物2-1(0.552mmol/g,50mg),n-プロピルヨージド(54 μL×5)を用いて化合物2-6-2(Tfa-nPrAib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-nPrAib-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-6-2*)(10.0% UVarea)に加えてTfaアミド部位のO-n-プロピル化体(化合物2-6-2a*)6.3% (UVarea)、出発原料化合物2-1*(82.7% UVarea)等を確認した。
【0303】
LCMS(ESI)m/z=523.5(M+H)+
保持時間:0.66分(分析条件SQDFA05)
【0304】
LCMS(ESI)m/z=523.5(M+H)+
保持時間:0.73分(分析条件SQDFA05)
【0305】
実施例2-6-3.Tfa-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-1)のTfaアミド部位のN-アリル化
実施例2-6-1に示した手法により、化合物2-1(0.552mmol/g,50mg),アリルブロミド(48 μL×5)を用いて化合物2-6-3(Tfa-AllylAib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-AllylAib-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-6-3*)(20.3% UVarea)に加えてTfaアミド部位のO-アリル化体(化合物2-6-3a*)6.9%(UVarea)、出発原料化合物2-1*(72.8% UVarea)を確認した。
【0306】
LCMS(ESI)m/z=521.4(M+H)+
保持時間:0.64分(分析条件SQDFA05)
【0307】
LCMS(ESI)m/z=521.5(M+H)+
保持時間:0.71分(分析条件SQDFA05)
【0308】
実施例2-6-4.Tfa-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-1)のTfaアミド部位のN-ベンジル化
実施例2-6-1に示した手法により、化合物2-1(0.552mmol/g,50mg),ベンジルブロミド(66 μL×5)を用いて化合物2-6-4(Tfa-BnAib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-BnAib-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-6-4*)(6.2% UVarea)に加えてTfaアミド部位のO-ベンジル化体(化合物2-6-4a*)7.7%(UVarea)、出発原料化合物2-1*(79.5% UVarea)を確認した。
【0309】
LCMS(ESI)m/z=571.5(M+H)+
保持時間:0.72分(分析条件SQDFA05)
【0310】
LCMS(ESI)m/z=571.5(M+H)+
保持時間:0.79分(分析条件SQDFA05)
【0311】
以上、実施例2-6の結果より、本発明の手法によって、固相合成において嵩高いN-メチルアミノ酸に続き、N-メチル-α,α-ジアルキルアミノ酸に限らず、N-置換-α,α-ジアルキルアミノ酸の導入が実用的なレベルにて可能であることが示された。
【0312】
実施例2-7.固相上にて、嵩高いN-アルキルアミノ酸(EtVal/nPrVal)に続き、N-メチル-α,α-ジアルキルアミノ酸(MecLeu)を導入した実験
以下の一般式に従い、化合物2-7-1~化合物2-7-2、化合物2-7-3-1~化合物2-7-3-4および化合物2-7-4-1~化合物2-7-4-4を合成した。
【0313】
【0314】
実施例2-7-1.Fmoc-Val-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-7-1)の調製
フィルター付きの反応容器に、実施例1-2-1と同様の手法により調製したFmoc-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-1)(0.552 mmol/g, 100 mg)をいれ、ジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて45分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7 mL)で3回洗浄した。続いて、レジンに2% DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:0.7 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、脱Fmocをおこなった。脱Fmoc溶液を除去した後、レジンをDMF(0.7 mL)で4回洗浄した。
【0315】
得られたレジンに対し、Fmoc-Val-OHの伸長反応を実施した。
伸長反応はFmoc-Val-OH(0.6 mol/L)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt, 0.375 mol/L)のNMP溶液(0.3mL)と10% DIC/DMF溶液(0.36 mL)とを混合した溶液をレジンに加え、40度にて3時間振とうすることで実施した。
【0316】
伸長反応の液相をフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7 mL)で4回、ジクロロメタン(0.7 mL)で4回洗浄し、化合物2-7-1(Fmoc-Val-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を得た。
【0317】
反応の進行を確認するため、得られたレジン(化合物2-7-1)の一部(~5 mg)を取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドFmoc-Val-Asp-pyrro(化合物2-7-1*)の生成を確認した(97.3% UVarea)。またValの過剰伸長体(化合物2-7-1a*)2.7%(UVarea)も同時に検出された。伸長後はDCMにて洗浄し、乾燥させた後、以後の検討に用いた。
【0318】
LCMS(ESI)m/z=508.4(M+H)+
保持時間:0.72分(分析条件SQDFA05)
【0319】
LCMS(ESI)m/z=607.5(M+H)+
保持時間:0.74分(分析条件SQDFA05)
【0320】
実施例2-7-2.Fmoc-Val-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-7-1)の脱FmocおよびN末端のNs化
フィルター付きの反応容器に、実施例2-7-1にて調製したFmoc-Val-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-7-1)(0.552 mmol/g, 1カラムにつき100 mg)をいれ、ジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて45分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7 mL)で2回洗浄した。続いて、レジンに2% DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:0.7 mL)を加えて室温にて10分間振とうし、脱Fmocをおこなった。脱Fmoc溶液を除去した後、レジンをDMF(0.7 mL)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt, 0.157 mol/L)とDIPEA(0.157 mol/L)のDMF溶液(0.7mL)、DMF(0.7mL)で順に洗浄し、続いてTHF(0.7 mL)で3回洗浄した。
【0321】
得られたレジンに対し、2,4,6-トリメチルピリジン(0.074 mL, 0.552 mmol)のTHF溶液(0.35 mL)および2-ニトロベンゼンスルホニルクロリド(0.049 g, 0.221 mmol)のTHF溶液(0.35 mL)を加え、40度にて3時間振とうした。
【0322】
液相をフィルターで除去した後、レジンをTHF(1 mL)で5回、ジクロロメタン(1 mL)で5回洗浄し、化合物2-7-2(Ns-Val-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を得た。
【0323】
伸長の進行を確認するため、得られたレジンの一部(~5 mg)を取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、目的ペプチドNs-Val-Asp-pyrro(化合物2-7-2*)が94.3%(UVarea)生成していることが確認された。Ns化後はDCMにて洗浄し、乾燥させた後、以後の検討に用いた。
【0324】
LCMS(ESI)m/z=471.3(M+H)+
保持時間:0.55分(分析条件SQDFA05)
【0325】
実施例2-7-3-1.Ns-Val-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-7-2)のNsアミド部位に対する光延反応によるN-エチル化
フィルター付きの反応容器に、実施例2-7-2にて調製したNs-Val-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-7-2)(0.552 mmol/g, 100 mg)をいれ、ジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて45分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをTHF(1 mL)で2回洗浄した。
【0326】
別途1.5mLバイアルにトリフェニルホスフィン(72.0 mg, 0.276 mmol)のTHF(0.35mL)溶液とDIAD(54 μL、0.276 mmol)のTHF(0.35mL)溶液を加えて軽く振り混ぜ、室温にて15分間静置後、エタノール(32 μL、0.552 mmol)を加えて混和した後5分間静置した。得られた溶液を膨潤させたレジンに加え、35度にて1時間振とうした。液相をフィルターで除去した後、レジンをTHF(0.7 mL)で4回、ジクロロメタン(0.7 mL)で4回洗浄し、化合物2-7-3-1(Ns-EtVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を得た。
【0327】
得られたレジンの一部(~5 mg)をTFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドからの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、目的ペプチドNs-EtVal-Asp-pyrro(化合物2-7-3-1*)の生成を確認した(化合物2-7-2からの変換率は100%)。得られたレジンは乾燥させた後、以後の検討に用いた。
【0328】
LCMS(ESI)m/z=499.4(M+H)+
保持時間:0.64分(分析条件SQDFA05)
【0329】
実施例2-7-3-2.Ns-EtVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-7-3-1)の脱Ns化
フィルター付きの反応容器に、実施例2-7-3-1にて調製したNs-Val-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-7-3-1)(0.552 mmol/g, 100 mg)をいれ、ジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて45分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをNMP(0.7 mL)で2回洗浄した。
【0330】
得られたレジンに対し、DBU(42 μL、0.276 mmol)/NMP溶液(0.35 mL)と1-ドデカンチオール(126 μL、0.552 mmol)/NMP溶液(0.35 mL)を加え、60度にて4時間振とうした。液相をフィルターで除去した後、NMP(0.7 mL)にて2回洗浄した。得られたレジンの一部を取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析した。
【0331】
1回目の脱Ns化を行ったレジンに対し、反応転換率の向上の目的で、再度、同様の操作を実施した。2回目の脱Ns化は60度で12時間振とうした。2回目の脱Ns化後、レジンをNMPで4回、さらにDCMで4回洗浄することで、化合物2-7-3-2(H-EtVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を得た。得られたレジンの一部を取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドH-EtVal-Asp-pyrro(化合物2-7-3-2*)84.6%(UVarea)に加えてに加え、Ns保護のニトロ基に対して1-ドデカンチオールがイプソ置換したと推定される不純物(化合物2-7-3-2a*)(12.6% UVarea)を検出した。
【0332】
LCMS(ESI)m/z=314.3(M+H)+
保持時間:0.26分(分析条件SQDFA05)
【0333】
【化1】
LCMS(ESI)m/z=654.5(M+H)+
保持時間:1.25分(分析条件SQDFA05)
【0334】
実施例2-7-3-3.H-EtVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-7-3-2)に対するTfa-cLeu-OHの伸長反応は、レジンに2-(トリフルオロメチル)-3-オキサ-1-アザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オン(化合物1-3-9)を用いたTfa-cLeuの伸長
フィルター付きの反応容器に、実施例2-7-3-2にて調製したH-EtVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-7-3-2)(0.552 mmol/g, 100 mg)をいれ、ジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて45分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7 mL)で3回洗浄した。Tfa-cLeu-OHの伸長反応は、レジンに2-(トリフルオロメチル)-3-オキサ-1-アザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オン(化合物1-3-9)(0.582g,2.81mmol)をニートで加え、60度で48時間振盪することで実施した。反応の進行を確認するため、24時間後に少量の得られたレジンをサンプリングし、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドの生成を確認した。伸長反応後の液相をフィルターで除去した後、レジンをDMF(1 mL)で4回、ジクロロメタン(1 mL)で4回洗浄し、化合物2-7-3-3(Tfa-cLeu-EtVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を得た。
【0335】
反応の進行を確認するため、得られたレジン(化合物2-7-3-3)の一部を取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-cLeu-EtVal-Asp-pyrro(化合物2-7-3-3*)(55.5% UVarea)の生成を確認した他、EtVal-Asp-pyrroの過剰伸長体(化合物2-7-3-3a*)(18.0% UVarea)、Ns保護のニトロ基に対して1-ドデカンチオールがイプソ置換したと推定される不純物(化合物2-7-3-2a*)(11.8% UVarea)等を検出した。また、Tfa-cLeu-OHがレジンに担持されたようなピークも検出した。伸長後はDCMにて洗浄し、乾燥させた後、以後の検討に用いた。
【0336】
LCMS(ESI)m/z=521.5(M+H)+
保持時間:0.60分(分析条件SQDFA05)
【0337】
LCMS(ESI)m/z=816.7(M+H)+
保持時間:0.69分(分析条件SQDFA05)
【0338】
実施例2-7-3-4.Tfa-cLeu-EtVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-7-3-3)のTfaアミド部位に対する求核置換反応によるN-メチル化
フィルター付きの反応容器に、実施例2-7-3-3にて調製したTfa-cLeu-EtVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-7-3-3)(66 mg)をいれ、ジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて1時間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7 mL)で4回洗浄した。
【0339】
得られたレジンに対し、TMGN (59mg)/DMF (0.35 mL)溶液を加え、続いてヨウ化メチル(69 μL)/DMF (0.35 mL)溶液を加え、40度で1時間振とうした。液相をフィルターで除去した後、DMF(0.7 mL)にて2回洗浄した。得られたレジンの一部を取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析した。
【0340】
1回目のメチル化を行ったレジンに対し、反応転換率の向上の目的で、同様の操作をさらに2回実施した。3回のメチル化後、レジンをDMFで4回、さらにDCMで4回洗浄することで、化合物2-7-3-4(Tfa-MecLeu-EtVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を得た。得られたレジンの一部を取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-MecLeu-EtVal-Asp-pyrro(化合物2-7-3-4*)(53.2% UVarea)に加えてEtVal-Asp-pyrroが過剰伸長した後にMe化された化合物(化合物2-7-3-4a*)(29.8% UVarea)、Ns保護のニトロ基に対して1-ドデカンチオールがイプソ置換したと推定される不純物(化合物2-7-3-2a*)(11.9% UVarea)等を確認した。また、Tfa-cLeu-OHがレジンに担持され、Me化されたようなピークも検出した。
【0341】
LCMS(ESI)m/z=535.4(M+H)+
保持時間:0.66分(分析条件SQDFA05)
【0342】
LCMS(ESI)m/z=830.7(M+H)+
保持時間:0.75分(分析条件SQDFA05)
【0343】
実施例2-7-4-1.Ns-Val-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-7-2)のNsアミド部位に対する光延反応によるN-n-プロピル化
実施例2-7-3-1に示した手法により、化合物2-7-2(0.552mmol/g,100mg)および1-プロパノール(41 μL、0.552 mmol)を用いて化合物2-7-4-1(Ns-nPrVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドNs-nPrVal-Asp-pyrro(化合物2-7-4-1*)94.7%(UVarea)の生成を確認した(化合物2-7-2からの変換率は100%)。
【0344】
LCMS(ESI)m/z=513.4(M+H)+
保持時間:0.69分(分析条件SQDFA05)
【0345】
実施例2-7-4-2.Ns-nPrVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-7-4-1)の脱Ns化
実施例2-7-3-2に示した手法により、化合物2-7-4-1(0.552mmol/g,100mg)を用いて化合物2-7-4-2(H-nPrVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドH-nPrVal-Asp-pyrro(化合物2-7-4-2*)81.1%(UVarea)に加えてに加え、Ns保護のニトロ基に対して1-ドデカンチオールがイプソ置換したと推定される不純物(化合物2-7-4-2a*)(15.1% UVarea)を検出した。
【0346】
LCMS(ESI)m/z=328.3(M+H)+
保持時間:0.28分(分析条件SQDFA05)
【0347】
【化2】
LCMS(ESI)m/z=668.6(M+H)+
保持時間:1.28分(分析条件SQDFA05)
【0348】
実施例2-7-4-3.H-nPrVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-7-4-2)に対する2-(トリフルオロメチル)-3-オキサ-1-アザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オン(化合物1-3-9)を用いたTfa-cLeuの伸長
実施例2-7-3-3に示した手法により、化合物2-7-4-2(0.552mmol/g,100mg)を用いて化合物2-7-4-3(Tfa-cLeu-nPrVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-cLeu-nPrVal-Asp-pyrro(化合物2-7-4-3*)(53.1% UVarea)の生成を確認した他、nPrVal-Asp-pyrroの過剰伸長体(化合物2-7-4-3a*)(31.0% UVarea)、Ns保護のニトロ基に対して1-ドデカンチオールがイプソ置換したと推定される不純物(化合物2-7-4-2a*)(13.3% UVarea)等を検出した。また、Tfa-cLeu-OHがレジンに担持されたようなピークも検出した。
【0349】
LCMS(ESI)m/z=535.5(M+H)+
保持時間:0.65分(分析条件SQDFA05)
【0350】
LCMS(ESI)m/z=844.8(M+H)+
保持時間:0.77分(分析条件SQDFA05)
【0351】
実施例2-7-4-4.Tfa-cLeu-nPrVal-Asp(OTrt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-7-4-3)のTfaアミド部位に対する求核置換反応によるN-メチル化
実施例2-7-3-4に示した手法により、化合物2-7-4-3(0.552mmol/g,60mg)を用いて化合物2-7-4-4(Tfa-MecLeu-nPrVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro)を同様に合成した。得られたレジンを一部取り出し、TFE/DCM/DIPEA溶液(1:1:0.015)にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的ペプチドTfa-MecLeu-nPrVal-Asp-pyrro(化合物2-7-4-4*)(46.1% UVarea)に加えてnPrVal-Asp-pyrroが過剰伸長した後にMe化された化合物(化合物2-7-4-4a*)(38.3% UVarea)、Ns保護のニトロ基に対して1-ドデカンチオールがイプソ置換したと推定される不純物(化合物2-7-4-2a*)(12.6% UVarea)等を確認した。また、Tfa-cLeu-OHがレジンに担持され、Me化されたようなピークも検出した。
【0352】
LCMS(ESI)m/z=549.5(M+H)+
保持時間:0.71分(分析条件SQDFA05)
【0353】
LCMS(ESI)m/z=858.7(M+H)+
保持時間:0.83分(分析条件SQDFA05)
【0354】
以上、実施例2-7の結果より、本発明の手法によって、固相合成において嵩高いN-アルキルアミノ酸に続き、N-メチル-α,α-ジアルキルアミノ酸の導入が実用的なレベルにて可能であることが示された。
【0355】
実施例3:本発明の手法にてMeAibを導入し、ペプチド合成を行った例
WO2013/100132もしくはWO2018/225864に記載のFmoc法によるペプチド合成法に従い、下記の基本ルートでペプチドの伸長を行った。すなわち、
1)Asp側鎖のカルボン酸もしくはペプチド主鎖カルボン酸を2-クロロトリチルレジンに担持させたものの、アミノ酸のN末からのFmoc法によるペプチド伸長反応、
2)2-クロロトリチルレジンからのペプチドの切り出し過程、
3)切り出し過程によって2-クロロトリチルレジンから外れて生じたAsp側鎖のカルボン酸もしくはペプチド主鎖カルボン酸と、ペプチド鎖N末端(三角ユニット)のアミノ基との縮合によるアミド環化、
4)必要に応じたペプチド鎖に含む側鎖官能基の保護基の脱保護、
5)preparativeHPLCによる化合物の精製、の5段階の工程である。本実施例において、特に記述がない限り、この基本ルートをもとにペプチド化合物の合成をおこなった。
【0356】
実施例3-1:(5S,8S,11S,15R,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8,11-ジ((S)-sec-ブチル)-29-(3-クロロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-35-(シクロヘキシルメチル)-18-イソプロピル-5,6,12,15,16,19,21,21,22,33,36-ウンデカメチルテトラコサヒドロ-2H-アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37(14H)-ウンデカオン(化合物3-1)の合成
【0357】
化合物3-1の合成は、化合物1-2-4より以下のスキームに従って行った。
【0358】
(3R)-3-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]ブタン酸-2-クロロトリチルレジン(Fmoc-D-3-MeAbu-O-Trt(2-Cl)resin)(化合物1-2-4、100mg,0.343mmol/g,0.0343mmol)を原料として用い、フィルター付きの反応容器にて実施例1-2-2に記載したペプチド伸長法でFmoc-MeVal-OHの伸長に続き、実施例2-1-1と同様の操作にてTfa-Aib-OH(2-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)プロパン酸)(化合物1-3-1)の伸長を行い、化合物3-1-aを得た。
【0359】
得られた化合物3-1-aをDCM(1mL)で膨潤させたのちDMF(1mL)で4回洗浄した。ホスファゼン塩基P1-tBu(38μL,0.150mmol)のDMF溶液(180μL)とヨウ化メチル(62μL,1mmol)のDMF溶液(180μL)を加え、密閉下40℃で30分振とうした。反応液を除いたのち、レジンをDMF(1mL)で4回洗浄し、さらにDCM(1mL)で4回洗浄し、化合物3-1-bを得た。得られたレジンの一部をTFE/DCM(1/1(v/v))で切り出してLCMSで分析を行い、化合物3-1-b*の生成を確認した。
【0360】
LCMS(ESI)m/z=424(M-H)-
保持時間:0.57分(分析条件SQDFA05)
【0361】
水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)(758mg,20mmol)をフラスコに入れポンプアップしたのち窒素雰囲気下とし、トリグリム(10mL)に溶解して溶液Aとした。上記で得られた化合物3-1-bをDCM(1mL)で膨潤させたのち、THF(0.7mL)で4回洗浄した。レジンにTHF(0.5mL)、メタノール(0.25mL)、溶液A(0.25mL)を加えて開放系にて室温にて40分振とうした。反応液を除いたのち、メタノール(0.7mL)を加えて1分後に廃液する洗浄操作を4回繰り返し、さらにDCM(0.7mL)で同様に4回洗浄し、化合物3-1-cを得た。得られたレジンの一部をTFE/DCM(1/1(v/v))で切り出してLCMSで分析を行い、化合物3-1-c*の生成を確認した。
【0362】
LCMS(ESI)m/z=330(M+H)+
保持時間:0.33分(分析条件SQDFA05)
【0363】
化合物3-1-cを調製した後のペプチド伸長及び環化、精製の工程は以下の合成法に従っておこなった。
【0364】
実施例1-2-2同様に、化合物3-1-c(1カラムあたり100mg)と、各種Fmoc-アミノ酸(Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Hph(4-CF3-3-Cl)-OH(化合物AA2-001)、Fmoc-MeGly-OH、Fmoc-MeCha-OH、Fmoc-Aze(2)-OH、Fmoc-MeAla-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-MeLeu-OH)(0.3-0.6mol/L)とHOAtもしくはoxymaもしくはHOOBt(0.375mol/L)のNMP溶液(溶液1)と、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(10%v/v,溶液2)をペプチド合成機にセットした。
【0365】
溶液1と溶液2は合成機のmixing vialで混合した後にレジンに添加され、レジン上のアミノ基とFmocアミノ酸の縮合反応を行った。
【0366】
Fmoc脱保護溶液としてジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2%v/v)を用いて合成を行った。レジンはDMFにて洗浄した後、Fmoc脱保護に次いでFmocアミノ酸の縮合反応を1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことでレジン表面上にペプチドを伸長させた。ペプチド伸長完了後、レジンのN末端のFmoc基の除去をペプチド合成機上にて行った後、レジンをDMFにて洗浄した。
【0367】
得られた固相上に担持された鎖状ペプチドに対し、DCMを加えレジンを再膨潤させた後、レジンに2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)/DCM(1/1(v/v),2mL)を加えて室温にて2時間振とうした。続いてチューブ内の溶液を合成用カラムでろ過することによりレジンを除き、残ったレジンをさらに2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)/DCM(1/1(v/v),1mL)にて2回洗浄した。得られた全ての切り出し溶液を混合し、減圧下濃縮した。
【0368】
切り出し後に減圧下濃縮した残渣をDMF/DCM(1/1(v/v),8mL)に溶解した。0.5MのO-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N,N-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)/DMF溶液(用いたレジン上のモル数(ローディング量(mmol/g)に使用したレジン量(通常は0.10g)をかけたもの)に対して1.5等量となる容量)と、DIPEA(用いたレジン上のモル数に対して1.8等量)を加え、室温にて2時間振とうした。その後、減圧下溶媒を留去した。目的の環状ペプチドの生成はLCMS測定によって確認した。
【0369】
その後、減圧下、溶媒を留去した後、DMFもしくはDMSOを加え、不溶物をフィルターろ過にて取り除いた後、preparative-HPLCで精製し、化合物3-1((5S,8S,11S,15R,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8,11-ジ((S)-sec-ブチル)-29-(3-クロロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-35-(シクロヘキシルメチル)-18-イソプロピル-5,6,12,15,16,19,21,21,22,33,36-ウンデカメチルテトラコサヒドロ-2H-アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37(14H)-ウンデカオン)(4.1mg,9%)を得た。
LCMSの分析結果は表12に記載した。
【0370】
実施例3-2:実施例3-1と同様にペプチド合成を行った例
実施例3-1にて示した手法により、化合物3-2~化合物3-9についても同様に合成した。なお、化合物3-1~化合物3-9(構造式は表13に記載)に記載の環状ペプチドを構成する各アミノ酸残基の正式名称、構造、および略称の関係は上述の表3~5および以下の表11から把握される。
LCMSの分析結果は表12に記載した。
【0371】
【0372】
【0373】
【0374】
比較例1:Tfa-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-1)のTfaアミド部位に対する光延反応によるN-メチル化
本発明との比較例として、トリフルオロアセタミド部位での選択的なN-メチル化法として、光延反応を行う既知の手法(Org. Lett. 2013, 15, 5012-5015)を試みた。
【0375】
フィルター付きの反応容器に、実施例2-1-2にて調製したTfa-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物2-1-2)(0.473mmol/g,100mg)にジクロロメタン(1mL)を加えて室温にて15分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをTHF(0.7mL)で4回洗浄した。
【0376】
得られたレジンに対し、トリフェニルホスフィン(66.0mg)/THF(0.7mL)溶液、メタノール(20μL)、DIAD(49μL)を加え、40度にて30分間振とうした。液相をフィルターで除去した後、再度、トリフェニルホスフィン(66.0mg)/THF(0.7mL)溶液、メタノール(20μL)、DIAD(49μL)を加え、40度にて1時間振とうした。液相をフィルターで除去した後、レジンをTHF(0.7mL)で4回、ジクロロメタン(0.7mL)で4回洗浄した。
【0377】
得られたレジンをTFE/DCM溶液(1/1(v/v))にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、目的ペプチドTfa-MeAib-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-2*)の生成に加え、Tfaアミド部位のO-メチル化した生成物(化合物C1-1)、そこから加水分解が進行したH-Aib-MeVal-Asp-pyrro(化合物C1-2)が検出された。LCチャートは
図2のとおりである。
【0378】
目的ペプチドTfa-MeAib-MeVal-Asp-pyrro(化合物2-2*)
LCMS (ESI) m/z = 495.26 (M+H)+
保持時間:0.58分(分析条件SQDFA05)
【0379】
Tfaアミド部位にてO-メチル化した生成物(化合物C1-1)
LCMS (ESI) m/z = 495.26 (M+H)+
保持時間:0.64分(分析条件SQDFA05)
【0380】
化合物C1-1から加水分解が進行したH-Aib-MeVal-Asp-pyrro(化合物C1-2)
LCMS (ESI) m/z = 385.26 (M+H)+
保持時間:0.35分(分析条件SQDFA05)
【0381】
この結果より、文献(Org. Lett. 2013, 15, 5012-5015)とは異なり、N末端がα,α-ジアルキルアミノ酸の場合、N-メチル化に加えてO-メチル化も同時に大幅に進行してしまい、収率と純度の低下を招くことが確認された。この結果は、実施例2-2および実施例2-3で示されたN-選択的なメチル化の結果とは対照的である。
【0382】
比較例2:従来の固相合成法でのN-メチルアミノ酸に続くFmoc-Aib-OH伸長後、Fmoc保護からNs保護への掛け替え、N末端のレジン上でのN-メチル化、および脱Nsを行うことで、MeAibの導入を試みた実験
本発明との比較例として、文献記載と同様の方法(Nature Protocols 2012, 7, 3, 432-444)にて、固相合成法でのN-メチルアミノ酸に続くFmoc-Aib-OH伸長後に、Fmoc保護からNs保護への掛け替え、N末端のレジン上でのN-メチル化、および脱Nsを行うことで、MeAibの導入を試みた。
【0383】
比較例2-1:Fmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)に対する、Fmoc-Aib-OHの固相での伸長反応
フィルター付きの反応容器に、実施例1-2-2にて調製したFmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)(0.464mmol/g,100mg)にジクロロメタン(1mL)を加えて室温にて30分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをDMF(1mL)で2回洗浄した。続いて、レジンに2%DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:0.7mL)を加えて室温にて10分間振とうし、脱Fmocをおこなった。脱Fmoc溶液を除去した後、レジンをDMF(0.7mL)で4回洗浄した。
【0384】
得られたレジンに対し、Fmoc-Aib-OHの伸長反応を実施した。
伸長反応は0.6M Fmoc-Aib-OH/0.375M oxyma/NMP溶液(0.3mL)と10%DIC/DMF溶液(0.36mL)とを混合した溶液をレジンに加え、50度にて15時間振とうすることで実施した。
本伸長反応をさらに2回繰り返した。(2回目伸長条件:50度24時間、3回目伸長条件:50度20時間)
【0385】
伸長反応の液相をフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7mL)で4回、ジクロロメタン(0.7mL)で4回洗浄した。
【0386】
伸長の進行を確認するため、得られたレジンの一部(~5mg)を取り出し、未反応点に対し、Fmoc-Gly-OHにてキャッピングを行った。
キャッピングは、0.6M Fmoc-Gly-OH/0.375M HOAt/NMP溶液(0.3mL)と10%DIC/DMF溶液(0.36mL)とを混合した溶液をレジンに加え、40度にて45分間振とうすることで実施した。
伸長反応の液相をフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7mL)で4回、ジクロロメタン(0.7mL)で4回洗浄した。
【0387】
TFE/DCM溶液(1/1(v/v))にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、目的ペプチドFmoc-Aib-MeVal-Asp-pyrro(化合物C2-1*)が60.4%生成していることが確認できた。
【0388】
LCMS (ESI) m/z = 605.52 (M-H)-
保持時間:2.16分(分析条件SQDFA05long)
【0389】
なお、得られたレジンの未反応点は商業的供給業者から購入したZ-Gly-OH(N-α-カルボベンゾキシグリシン、CAS:1138-80-3)にてキャッピングを行った。
【0390】
キャッピングは、0.6M Z-Gly-OH/0.375M HOAt/NMP溶液(0.3mL)と10%DIC/DMF溶液(0.36mL)とを混合した溶液をレジンに加え、40度にて2時間振とうすることで実施した。
【0391】
キャッピング反応の液相をフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7mL)で4回、ジクロロメタン(0.7mL)で4回洗浄し、化合物C2-1を得た。
【0392】
比較例2-2:Fmoc-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物C2-1)の、脱FmocおよびN末端のNs化
フィルター付きの反応容器に、比較例2-1にて調製したFmoc-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物C2-1)(0.464mmol/g,100mg)を入れ、ジクロロメタン(1mL)を加えて室温にて30分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをDMF(1mL)で2回洗浄した。続いて、レジンに2%DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:0.7mL)を加えて室温にて10分間振とうし、脱Fmocをおこなった。脱Fmoc溶液を除去した後、レジンをDMF(1mL)で3回、続いてTHF(1mL)で4回洗浄した。
【0393】
得られたレジンに対し、2,4,6-トリメチルピリジン(0.062mL,0.464mmol)のTHF溶液(0.35mL)および2-ニトロベンゼンスルホニルクロリド(0.041g,0.186mmol)のTHF溶液(0.35mL)を加え、40度にて2時間振とうした。
【0394】
液相をフィルターで除去した後、レジンをTHF(1mL)で3回、ジクロロメタン(1mL)で4回洗浄した。
【0395】
上記の2-ニトロベンゼンスルホニルクロリドによるNs化をさらに2度繰り返した(2回目:40度、16時間振とう、3回目:40度21時間振とう)。
【0396】
伸長の進行を確認するため、得られたレジンの一部(~5mg)を取り出し、TFE/DCM溶液(1/1(v/v))にてペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、目的ペプチドNs-Aib-MeVal-Asp-pyrro(化合物C2-2*)が64.9%生成していることが確認された。
【0397】
得られたレジンの未反応点をZ-Gly-OHにてキャッピングを行った。
キャッピングは、0.6M Z-Gly-OH/NMP溶液(0.3mL)と10%DIC/DMF溶液(0.36mL)とを混合した溶液をレジンに加え、40度にて2時間振とうすることで実施した。
【0398】
伸長反応の液相をフィルターで除去した後、レジンをDMF(0.7mL)で4回、ジクロロメタン(0.7mL)で4回洗浄し、Ns-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物C2-2)を得た。
【0399】
LCMS (ESI) m/z = 568.45 (M-H)-
保持時間:0.59分(分析条件SQDFA05)
【0400】
比較例2-3:Ns-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物C2-2)のNsアミド部位に対する光延反応によるN-メチル化
フィルター付きの反応容器に、比較例2-2にて調製したNs-Aib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物C2-2)(0.464mmol/g,100mg)にジクロロメタン(1mL)を加えて室温にて20分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをTHF(1mL)で4回洗浄した。
【0401】
得られたレジンに対し、トリフェニルホスフィン(61.0mg,0.232mmol)とメタノール(19μL、0.464mmol)のTHF(0.7mL)溶液を加え、続いてDIAD(45μL、0.232mmol)を加え、40度にて30分間振とうした。液相をフィルターで除去した後、レジンをTHF(1mL)で4回、ジクロロメタン(1mL)で4回洗浄した。
【0402】
得られたレジンの一部(~5mg)をTFE/DCM溶液(1/1(v/v))にてペプチドからの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、目的ペプチドNs-MeAib-MeVal-Asp-pyrro(化合物C2-3*)の生成を確認した(化合物C2-2からの変換率は96%)。残りのNs-MeAib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物C2-3)は、次工程に使用した。
LCMS (ESI) m/z = 582.47 (M-H)-
保持時間:0.63分(分析条件SQDFA05)
【0403】
比較例2-4:Ns-MeAib-MeVal-Asp-pyrroレジン(化合物C2-3)の脱Ns化
フィルター付きの反応容器に、比較例2-3にて調製したNs-MeAib-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物C2-3)(0.464mmol/g,50mg)にジクロロメタン(0.5mL)を加えて室温にて20分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをNMP(0.5mL)で4回洗浄した。
【0404】
得られたレジンに対し、DBU(17μL、0.115mmol)/NMP溶液(0.35mL)と2-メルカプトエタノール(16μL、0.230mmol)/NMP溶液(0.30mL)を加え、室温にて1時間振とうした。液相をフィルターで除去した後、レジンをNMP(0.5mL)で4回、ジクロロメタン(0.5mL)で4回洗浄した。
【0405】
得られたレジンの一部(~5mg)をTFE/DCM溶液(1/1(v/v))にてレジンからの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、
図3の通り、脱Ns化が進行した目的ペプチドH-MeAib-MeVal-Asp-pyrro(化合物C2-4*)の生成を確認した。
【0406】
LCMS (ESI) m/z = 399.29 (M+H)+
保持時間:0.34分(分析条件SQDFA05)
【0407】
比較例2-5:Ns-MeAib-MePhe-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrroの脱Ns化
【0408】
フィルター付きの反応容器に、実施例1-2-3で調製した化合物1-2-3(100mg)に対し、比較例2-1~比較例2-3と同様の操作にて調製したNs-MeAib-MePhe-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物C2-5-1)(0.464mmol/g,50mg)にジクロロメタン(0.5mL)を加えて室温にて20分間振とうし、レジンの膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、レジンをNMP(0.5mL)で4回洗浄した。
【0409】
得られたレジンに対し、DBU(17μL、0.115mmol)/NMP溶液(0.35mL)と2-メルカプトエタノール(16μL、0.230mmol)/NMP溶液(0.30mL)を加え、室温にて1時間振とうした。液相をフィルターで除去した後、レジンをNMP(0.5mL)で4回、ジクロロメタン(0.5mL)で4回洗浄した。
【0410】
得られたレジンの一部(~5mg)をTFE/DCM溶液(1/1(v/v))にてレジンからの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、
図4の通り、脱Ns化が進行した目的ペプチドH-MeAib-MePhe-Asp-pyrro(化合物C2-5-2*)の生成に加え、Ns保護のニトロ基に対して2-メルカプトエタノールがイプソ置換したと推定される不純物(化合物C2-5-3*)が検出された。
【0411】
LCMS (ESI) m/z = 447.31 (M+H)+
保持時間:0.39分(分析条件SQDFA05)
【0412】
LCMS (ESI) m/z = 661.74 (M-H)-
保持時間:0.65分(分析条件SQDFA05)
【0413】
これら比較例2の結果から、嵩高いN-メチルアミノ酸のN末端に対して、嵩高いN-メチル-α,α-ジアルキルアミノ酸(この例では、MeAib)が導入できる一方、Fmoc-Aibの伸長、Ns基への保護基の掛け替えを含めた一連の工程を通して低純度、低収率となることが確認された。また、脱Nsの段階でNs保護基上での副反応により、純度低下を引き起こすことが判明した。文献記載の既知の条件では、嵩高いN-メチルアミノ酸のN末端に対して、嵩高いN-メチル-α,α-ジアルキルアミノ酸を高純度、高収率で導入することは困難であることが確認された。
【0414】
参照例:従来の固相合成法でのN-メチルアミノ酸に続くFmoc-MeAib-OH伸長の試み
参照例1:Fmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)に対する、Fmoc-MeAib-OHの固相での伸長反応
【0415】
フィルター付きの反応容器に、実施例1-2-2にて調製したFmoc-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-2)(0.464mmol/g,100mg)を入れ、比較例2-1と同様の操作にて、Fmoc-MeAib-OHの伸長を試みた。
【0416】
伸長反応は0.6M Fmoc-MeAib-OH/0.375M oxyma/NMP溶液(0.3mL)と10%DIC/DMF溶液(0.36mL)とを混合した溶液をレジンに加え、40度にて21時間振とうし、反応液を排出した後、同じ操作をもう一度繰り返した(40度にて21.5時間)。
【0417】
伸長反応後、比較例2-1と同様の操作にて、適宜レジンの洗浄、未反応点のFmoc-Gly-OHでのキャッピング、レジンからのペプチドの切り出しをおこない、切り出した溶液をLCMSにて分析したが、目的ペプチドFmoc-MeAib-MeVal-Asp-pyrro(化合物R1*)は検出されなかった。
【0418】
参照例2:Fmoc-MePhe-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-3)に対する、Fmoc-MeAib-OHの固相での伸長反応
【0419】
フィルター付きの反応容器に、実施例1-2-3にて調製したFmoc-MePhe-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pyrro(化合物1-2-3)(0.464mmol/g,100mg)を入れ、参照例1と同様の操作にて、Fmoc-MeAibの伸長を試みた。伸長反応は、40度15時間にて実施した。
【0420】
その後、参照例1と同様の操作にて、適宜レジンの洗浄、未反応点のFmoc-Gly-OHでのキャッピング、レジンからのペプチドの切り出しをおこない、切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、目的ペプチドFmoc-MeAib-MePhe-Asp-pyrro(化合物R2*)の生成は3.1%に留まった。
LCMS (ESI) m/z = 669.43 (M+H)+
保持時間:0.88分(分析条件SQDFA05)
【0421】
以上、参照例の結果より、従来の固相合成法(Fmoc法)でのN-メチルアミノ酸(すなわち、N-置換アミノ酸)に続くFmoc-MeAib-OH(すなわち、N-置換-α,αジ置換アミノ酸)の伸長は非常に難易度が高く、目的とするペプチドが得られないケースもあることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0422】
本発明により、固相法を用いたペプチド化合物の製造において、N-置換-α,αジ置換アミノ酸残基とN-置換アミノ酸残基とが連結したジペプチド残基を含む、ペプチド化合物を効率的に製造できることが見出された。本発明は、ペプチド合成の分野において有用である。