(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用プリドープシート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 11/52 20130101AFI20250127BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20250127BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20250127BHJP
H01M 50/431 20210101ALI20250127BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20250127BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20250127BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20250127BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20250127BHJP
H01G 11/50 20130101ALI20250127BHJP
【FI】
H01G11/52
H01G11/84
H01G11/06
H01M50/431
H01M50/403 D
H01M50/449
H01M50/403 Z
H01M50/451
H01M10/058
H01G11/50
(21)【出願番号】P 2021558217
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2020038618
(87)【国際公開番号】W WO2021100360
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2019209067
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000215800
【氏名又は名称】テイカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 慎
(72)【発明者】
【氏名】柿本 裕太
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-170661(JP,A)
【文献】特開2016-012620(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110246699(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107195463(CN,A)
【文献】国際公開第2014/007018(WO,A1)
【文献】特開平10-302839(JP,A)
【文献】特表2014-506381(JP,A)
【文献】特開2019-087590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/52
H01G 11/84
H01G 11/06
H01M 50/431
H01M 50/403
H01M 50/449
H01M 50/451
H01M 10/058
H01G 11/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属複合酸化物を含むプリドープ剤を含む蓄電デバイス用プリドープシートであって、
前記リチウム金属複合酸化物が、リチウム(Li)と、Fe、Al、Mn及びCoからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(Me)を含み、
前記リチウム金属複合酸化物が逆蛍石型構造を有し、
前記リチウム金属複合酸化物におけるLi/Me(モル比)が3.0<Li/Me≦7.5を満たし、
前記プリドープ剤の含有量(X)が0.3<X<6.0mg/cm
2を満たすことを特徴とする蓄電デバイス用プリドープシート。
【請求項2】
X線回折測定において、前記リチウム金属複合酸化物が、2θ(回折角)=23.7±0.5°、33.6±0.7°、36.5 ±0.7°及び56.7±0.5°の回折ピーク強度をいずれも有する請求項1に記載のプリドープシート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプリドープシートを含む蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のプリドープシートを含む蓄電デバイス。
【請求項5】
リチウム金属複合酸化物を含むプリドープ剤を含む蓄電デバイス用プリドープシートの製造方法であって、
多孔質シート基材の表面に前記プリドープ剤と有機溶媒とを含む塗料を塗工することを特徴とする請求項1又は2に記載のプリドープシートの製造方法。
【請求項6】
リチウム金属複合酸化物を含むプリドープ剤を含む蓄電デバイス用プリドープシートの製造方法であって、
樹脂に前記プリドープ剤を混練して成形することを特徴とする請求項1又は2に記載のプリドープシートの製造方法。
【請求項7】
リチウム金属複合酸化物を含むプリドープ剤を含む蓄電デバイス用プリドープシートの製造方法であって、
離型フィルム基材の表面に前記プリドープ剤と有機溶媒とを含む塗料を塗工することを特徴とする請求項1又は2に記載のプリドープシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタなどの蓄電デバイスに用いられるプリドープシートに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタなどの蓄電デバイスにおいて、負極にリチウムイオンをプリドープして負極の電位を下げることにより、蓄電デバイスの高体積エネルギー密度化を可能にすることが知られている。近年、集電体に複数の貫通孔を有する金属箔を用い、正極と負極とが多数積層した電極において金属リチウム箔を配置することにより電解液を介してリチウムイオンを負極にプリドープする方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、複数の貫通孔を備える電極集電体と、前記電極集電体に設けられる電極合材層と、を備える電極と、前記電極集電体に接続され、前記電極合材層にイオンを供給するイオン供給源とを有し、前記電極集電体には、所定の貫通孔開口率を備える第1領域と、前記第1領域よりも貫通孔開口率の大きな第2領域とが設けられ、前記第1領域は前記電極集電体の縁部であり、前記第2領域は前記電極集電体の中央部であることを特徴とする蓄電デバイスが記載されている。そして、前記蓄電デバイス内にはリチウム極が組み込まれ、前記リチウム極にはイオン供給源としての金属リチウム箔が圧着されたリチウム極集電体を有しており、電解液を注入することによりリチウム極から負極に対してリチウムイオンをプリドープすることが記載されている。これによれば、電解液の浸透状態を調整することができ、電極に対して均一にイオンをドーピングすることが可能になるとされている。しかしながら、特許文献1に記載のプリドープ方法では、集電体に複数の貫通孔を有する金属箔と金属リチウム箔とを使用するため製造コストが高くなり、さらに蓄電デバイスの体積エネルギー密度が低下してしまうという問題もあった。
【0004】
一方、金属リチウム箔を用いないプリドープ方法も提案されており、例えば、特許文献2には、LiaTiOb(1.5≦a≦4.5、2.7≦b≦4.8)で表される化合物を主成分とすることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ用プリドープ剤が記載されている。これによれば、特定の組成を有するチタン酸リチウムを主成分としているので、通常の充電操作(エージング)でプリドープに必要なリチウムイオンを発生させることができ、従前のような金属リチウム箔を用いることなくプリドープを行うことができるとされている。しかしながら、特許文献2に記載のプリドープ剤は、正極材料に配合することを前提とするものであり、このようなプリドープ方法では、正極強度が低下するとともに、正極の膜厚が増大して抵抗が大きくなり蓄電デバイスの性能が低下するという問題があった。また特許文献2には、特定の金属元素(Me)とリチウム金属のモル比Li/Meが特定範囲を満たすリチウム金属複合酸化物であって、当該リチウム金属複合酸化物が逆蛍石型構造を有し、当該リチウム金属複合酸化物を含むプリドープ剤の含有量が特定範囲を満たすことの記載も示唆もなく、電極強度を維持しつつレート性に優れた蓄電デバイスを提供することのできるプリドープ方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5220510号
【文献】特開2019-87590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、電極にプリドープ剤を配合することなく効果的にプリドープを行うことができ、電極強度を維持しつつレート性に優れた蓄電デバイスとして好適に用いることのできる、逆蛍石型構造を有するリチウム金属複合酸化物を含む蓄電デバイス用プリドープシートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、リチウム金属複合酸化物を含むプリドープ剤を含む蓄電デバイス用プリドープシートであって、前記リチウム金属複合酸化物が、リチウム(Li)と、Fe、Al、Mn及びCoからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(Me)を含み、前記リチウム金属複合酸化物が逆蛍石型構造を有し、前記リチウム金属複合酸化物におけるLi/Me(モル比)が3.0<Li/Me≦7.5を満たし、前記プリドープ剤の含有量(X)が0.3<X<6.0mg/cm2を満たすことを特徴とする蓄電デバイス用プリドープシートを提供することによって解決される。
【0008】
このとき、X線回折測定において、前記リチウム金属複合酸化物が、2θ(回折角)=23.7±0.5°、33.6±0.7°、36.5 ±0.7°及び56.7±0.5°の回折ピーク強度をいずれも有することが好適である。
【0009】
前記プリドープシートを含む蓄電デバイス用セパレータが好適な実施態様であり、前記プリドープシートを含む蓄電デバイスも好適な実施態様である。
【0010】
上記課題は、リチウム金属複合酸化物を含むプリドープ剤を含む蓄電デバイス用プリドープシートの製造方法であって、多孔質シート基材の表面に前記プリドープ剤と有機溶媒とを含む塗料を塗工することを特徴とするプリドープシートの製造方法を提供することによっても解決される。
【0011】
また、上記課題は、リチウム金属複合酸化物を含むプリドープ剤を含む蓄電デバイス用プリドープシートの製造方法であって、樹脂に前記プリドープ剤を混練して成形することを特徴とするプリドープシートの製造方法を提供することによっても解決される。
【0012】
また、上記課題は、リチウム金属複合酸化物を含むプリドープ剤を含む蓄電デバイス用プリドープシートの製造方法であって、離型フィルム基材の表面に前記プリドープ剤と有機溶媒とを含む塗料を塗工することを特徴とするプリドープシートの製造方法を提供することによっても解決される。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、逆蛍石型構造を有するリチウム金属複合酸化物を含む蓄電デバイス用プリドープシートを提供することができる。本発明のプリドープシートを用いることにより、電極にプリドープ剤を配合することなく効果的にプリドープを行うことができるため、電極強度を維持しつつレート性に優れた蓄電デバイスが好適に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例における90°曲げ試験の様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の蓄電デバイス用プリドープシート(以下、「プリドープシート」と略記することがある)は、リチウム金属複合酸化物を含むプリドープ剤を含むものであり、前記リチウム金属複合酸化物が、リチウム(Li)と、Fe、Al、Mn及びCoからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(Me)を含み、前記リチウム金属複合酸化物が逆蛍石型構造を有し、前記リチウム金属複合酸化物におけるLi/Me(モル比)が3.0<Li/Me≦7.5を満たし、前記プリドープ剤の含有量(X)が0.3<X<6.0mg/cm2を満たすことを特徴とする。
【0016】
本発明者らが鋭意検討を行った結果、特定の金属元素(Me)を含み、当該金属元素(Me)とリチウム金属のモル比Li/Meが特定範囲を満たすリチウム金属複合酸化物であって、当該リチウム金属複合酸化物が逆蛍石型構造を有し、当該リチウム金属複合酸化物を含むプリドープ剤の含有量が特定範囲を満たすことにより、電極強度を維持しつつレート性に優れる蓄電デバイス用プリドープシートが得られることが明らかとなった。プリドープ剤を利用する場合、予め電極にプリドープ剤を配合して初回充電の電圧をかけることによりリチウムイオンをプリドープする技術が知られているが、本発明は、このような技術常識を覆して電極に配合することなく効果的にプリドープを行うことが可能となる。その結果、電極にプリドープ剤を配合する場合と比べても電極強度を維持しつつレート性に優れた蓄電デバイスを提供することができる。
【0017】
後述する実施例と比較例との対比から明らかなように、Li/Me(モル比)が3.0<Li/Me≦7.5を満たさないプリドープ剤を使用して得られる比較例1及び2のプリドープシートでは、90°曲げ試験の結果、プリドープ剤が塗工された表面の剥がれや粉落ちの発生が確認された。金属元素(Me)としてチタン(Ti)を用いた比較例5では、90°曲げ試験の結果、当該表面の剥がれや粉落ちが発生しなかったものの、フルセル(コインセル)の作製において、1Cの設計容量実現率が低下しておりプリドープが不十分となり、また、1Cに対する10Cの容量維持率も低下していた(比較例16)。また、正極にプリドープ剤を混合した比較例6~14では、90°曲げ試験の結果、ほとんどの例で当該表面の剥がれや粉落ちが発生しており(比較例7~14)、当該表面の剥がれや粉落ちが発生しなかった比較例6の場合でも、フルセル(コインセル)の作製において、1Cの設計容量実現率が低下しておりプリドープがうまく進行しておらず、また、1Cに対する10Cの容量維持率も低下していた(比較例17)。これに対し、Li/Me(モル比)が3.0<Li/Me≦7.5を満たすプリドープ剤を使用して得られる実施例1~12のプリドープシートでは、90°曲げ試験の結果、当該表面の剥がれや粉落ちは発生しておらず、フルセル(コインセル)の作製においては、1Cの設計容量実現率が高いためプリドープが十分に進行し、1Cに対する10Cの容量維持率も高いことが確認された。したがって、上記構成を採用する意義が大きく、本発明のプリドープシートにより、電極にプリドープ剤を混合することなく効果的にプリドープを行うことができるため、電極強度を維持しつつレート性に優れた蓄電デバイスを提供することができる。
【0018】
本発明で用いられるリチウム金属複合酸化物は、リチウム(Li)と、Fe、Al、Mn及びCoからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(Me)を含み、Li/Me(モル比)が3.0<Li/Me≦7.5を満たし、かつ逆蛍石型構造を有するものである。前記金属元素(Me)がFe、Al、Mn及びCoからなる群から選択される少なくとも1種であることにより、リチウム(Li)と前記金属元素(Me)とを含むリチウム金属複合酸化物が逆蛍石型構造を有することになる。本発明で用いられるリチウム金属複合酸化物は、このように逆蛍石型構造を有するため、リチウムイオンが脱離しやすくなり、そして脱離後は結晶構造が崩壊してリチウムイオンの再挿入が生じないため、プリドープ効果が高くなると考えられる。一方、前記金属元素(Me)が、Fe、Al、Mn及びCo以外の場合、プリドープが不十分となるおそれがある。前記金属元素(Me)は、Fe、Al及びMnからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Fe及びMnからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0019】
本発明で用いられるリチウム金属複合酸化物は、X線回折測定において、2θ(回折角)=23.7±0.5°、33.6±0.7°、36.5 ±0.7°及び56.7±0.5°の回折ピーク強度をいずれも有することが好ましい。前記回折ピーク強度のいずれか1つを有さない場合、リチウム金属複合酸化物が逆蛍石型構造を有さず、プリドープが不十分となり、さらに1Cに対する10Cの容量維持率も低下するおそれがある。
【0020】
本発明において、前記リチウム金属複合酸化物におけるLi/Me(モル比)が3.0<Li/Me≦7.5を満たすことが特に重要である。本発明者らの検討により、逆蛍石型構造を有するリチウム金属複合酸化物の中でも、Li/Me(モル比)が特定範囲にあることで、電極強度を維持しつつレート性に優れた蓄電デバイスとして好適に用いられるプリドープシートを提供できることが明らかとなった。Li/Me(モル比)が3.0以下の場合、プリドープシートの強度が低下し、膜厚が増大するおそれがあり、3.2以上であることが好ましく、3.5以上であることがより好ましく、3.8以上であることが更に好ましく、4.2以上であることが特に好ましく、4.5以上であることが最も好ましい。一方、Li/Me(モル比)が7.5を超える場合も、プリドープシートの強度が低下し、得られる蓄電デバイスのレート性が低下するおそれがあり、7.3以下であることが好ましく、6.8以下であることがより好ましく、6.5以下であることが更に好ましく、6.2以下であることが特に好ましい。
【0021】
本発明のプリドープシートは、プリドープ剤の含有量(X)が0.3<X<6.0mg/cm2を満たすことが必要である。プリドープ剤の含有量(X)が0.3mg/cm2以下の場合、プリドープが不十分となり設計容量実現率が低下するおそれがあり、0.35mg/cm2以上であることが好ましく、0.4mg/cm2以上であることがより好ましい。一方、プリドープ剤の含有量(X)が6.0mg/cm2以上の場合、電極強度が低下するとともに、容量維持率が低下するおそれがあり、5.5mg/cm2以下であることが好ましく、4.8mg/cm2以下であることがより好ましく、3.5mg/cm2以下であることが更に好ましく、2.8mg/cm2以下であることが特に好ましく、1.5mg/cm2以下であることが最も好ましい。
【0022】
本発明で用いられるプリドープ剤の製造方法としては特に限定されない。リチウム原料とFe原料、Al原料、Mn原料及びCo原料からなる群から選択される少なくとも1種の金属原料とを混合し(以下、「混合工程」と略記することがある)、無酸素雰囲気中、焼成することによって(以下、「焼成工程」と略記することがある)、リチウム金属複合酸化物を含むプリドープ剤を得ることができる。
【0023】
前記リチウム原料としては特に限定されず、水酸化リチウム、炭酸リチウム、酢酸リチウム、硝酸リチウム、酸化リチウムなどが好適に使用される。これらは水和物であっても無水物であっても構わない。中でも、水酸化リチウムがより好適に使用される。
【0024】
前記Fe原料、Al原料、Mn原料及びCo原料からなる群から選択される少なくとも1種の金属原料としては特に限定されないが、具体的には下記で例示されるものが好適に使用される。これらは水和物であっても無水物であっても構わない。前記Fe原料としては、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化鉄(II、III)、酸化水酸化鉄(III)、硫酸第一鉄(II)、硫酸第二鉄(III)、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)などが挙げられる。前記Al原料としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムなどが挙げられる。前記Mn原料としては、酸化マンガン、水酸化マンガン、炭酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガンなどが挙げられる。前記Co原料としては、酸化コバルト、水酸化コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルトなどが挙げられる。
【0025】
前記混合工程において、炭素原料を一定量配合させることが好適な実施態様である。炭素原料としては特に限定されず、ポリビニルアルコール、活性炭、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンなどが好適に使用される。前記炭素原料の配合量は、前記リチウム原料及び前記金属原料の合計100重量部に対して1~70重量部であることが好ましい。前記炭素原料の配合量が1重量部未満の場合、リチウムとFe、Al、Mn及びCoからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素との反応が不均一となり、得られるリチウム金属複合酸化物が逆蛍石型構造を有さず、プリドープが不十分となり、さらに1Cに対する10Cの容量維持率も低下するおそれがある。前記炭素原料の配合量は5重量部以上であることがより好ましく、10重量部以上であることが更に好ましい。一方、前記炭素原料の配合量が70重量部を超える場合、製造コストが高くなるため好ましくない。前記炭素原料の配合量は60重量部以下であることがより好ましく、50重量部以下であることが更に好ましい。
【0026】
前記混合工程では、前記リチウム原料及び前記金属原料が混合され、好適には前記炭素原料を含めて混合される。乾式法により混合してもよいし、湿式法により混合しても構わないが、混合する際に粉砕することが好ましい。粉砕する際には、ボールミル、遊星ミル、ライカイ機、ジェットミル、ピンミルなどの粉砕装置が好適に使用される。
【0027】
前記焼成工程では、無酸素雰囲気中、例えば、不活性ガス雰囲気、水素ガス雰囲気、水素-不活性ガス雰囲気中で焼成することが好ましく、不活性ガスとして窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトンなどが好適に使用される。また、前記焼成工程における焼成温度は650~1000℃であることが好ましい。焼成温度が650℃未満の場合、未反応の原料が残存し、得られるリチウム金属複合酸化物が逆蛍石型構造を有さず、プリドープが不十分となり、さらに1Cに対する10Cの容量維持率も低下するおそれがある。焼成温度は750℃以上であることがより好ましく、850℃以上であることが更に好ましい。焼成温度が1000℃を超える場合、得られるリチウム金属複合酸化物の粉砕が困難となり、粉砕後の粒子が粗大になり、プリドープシートの製造が困難となるおそれがある。焼成温度は980℃以下であることがより好ましい。
【0028】
前記焼成工程における焼成時間としては、2~80時間であることが好ましい。焼成時間が2時間未満の場合、未反応の原料が残存し、得られるリチウム金属複合酸化物が逆蛍石型構造を有さず、プリドープが不十分となり、さらに1Cに対する10Cの容量維持率も低下するおそれがある。焼成時間は10時間以上であることがより好ましく、24時間以上であることが更に好ましく、48時間以上であることが特に好ましい。一方、焼成時間が80時間を超える場合、生産性が低下するおそれがある。焼成時間は75時間以下であることがより好ましい。
【0029】
上述のようにして得られるリチウム金属複合酸化物をプリドープ剤として用い、シート状にすることによってプリドープシートを得ることができる。本発明のプリドープシートの製造方法としては特に限定されないが、(1)多孔質シート基材の表面に前記プリドープ剤と有機溶媒とを含む塗料を塗工することによってプリドープシートを製造する(以下、「製造方法1」と略記することがある)ことが好適な実施態様であり、(2)樹脂に前記プリドープ剤を混練して成形することによってプリドープシートを製造する(以下、「製造方法2」と略記することがある)ことも好適な実施態様である。さらに(3)離型フィルム基材の表面に前記プリドープ剤と有機溶媒とを含む塗料を塗工することによってプリドープシートを製造する(以下、「製造方法3」と略記することがある)ことも好適な実施態様である。
【0030】
前記製造方法1で用いられる多孔質シート基材としては、前記プリドープ剤と有機溶媒とを含む塗料を塗工してシート状に形成できる基材であれば特に限定されないが、フィルム、織布、不織布が好適に用いられる。材質としてはポリプロピレン、ポリブテン、ポリヘキセン、ポリフッ化エチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、アセタール化ポリビニルアルコール、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-メチルブテン共重合体、エチレン-メチルペンテン共重合体、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体などが挙げられる。
【0031】
用いられる有機溶媒としては特に限定されず、N-メチル-2-ピロリドン等が好適に使用され、前記塗料の粘度調整を行うことができる。また、前記塗料には、前記プリドープ剤と有機溶媒以外に、導電助剤として天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人工黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀など)粉あるいは繊維、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種またはこれら混合物として含む実施態様が挙げられる。また、前記塗料に、結着剤としてポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシドなどを1種またはこれら混合物として含む実施態様も挙げられる。前記塗料の塗工では、バーコーター、ナイフコーター、ロールコーターなどを用いて塗工量を好適に調整することができる。このようにして、本発明のプリドープシートを好適に得ることができる。多孔質シート基材への塗工パターンについては特に限定されず、シート全面への塗工であっても良いが、ストライプ、枠状、円板状、格子状、ドット状のいずれかの部分的重ね合わせも好適に用いられる。重ね合せ間隔は一定であることが好ましいが、一定でなくともよい。
【0032】
前記製造方法2で用いられる樹脂としては特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロンなどのポリアミド等の樹脂が好適に採用される。これら樹脂は単量体であっても共重合体であってもよい。前記樹脂と前記プリドープ剤とを混練し、ドクターブレード法、プレス、延伸によってシート状に成形することで本発明のプリドープシートを好適に得ることができる。
【0033】
前記製造方法3で用いられる離型フィルム基材としては、前記プリドープ剤と有機溶媒とを含む塗料を塗工してシート状に形成できる基材であれば特に限定されないが、シリコーンタイプ離型フィルム、非シリコーンタイプ離型フィルムが好適に用いられる。材質としてはポリプロピレン、ポリブテン、ポリヘキセン、ポリフッ化エチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、アセタール化ポリビニルアルコール、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-メチルブテン共重合体、エチレン-メチルペンテン共重合体、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0034】
用いられる有機溶媒としては特に限定されず、N-メチル-2-ピロリドン等が好適に使用され、前記塗料の粘度調整を行うことができる。また、前記塗料には、前記プリドープ剤と有機溶媒以外に、導電助剤として天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人工黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀など)粉あるいは繊維、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種またはこれら混合物として含む実施態様が挙げられる。また、前記塗料に、結着剤としてポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、シリコーンゴムなどを1種またはこれら混合物として含む実施態様も挙げられる。前記塗料の塗工では、バーコーター、ナイフコーター、ロールコーターなどを用いて塗工量を好適に調整することができる。このようにして、本発明のプリドープシートを好適に得ることができる。離型フィルム基材への塗工パターンについては特に限定されず、シート全面への塗工であっても良いが、ストライプ、枠状、円板状、格子状、ドット状のいずれかの部分的重ね合わせも好適に用いられる。重ね合せ間隔は一定であることが好ましいが、一定でなくともよい。
【0035】
このようにして得られるプリドープシートは、効果的にプリドープを行う観点から、正極に接するようにプリドープシートが配置されてなることが好ましい。このとき、正極の表面に接するようにプリドープシートが配置されていてもよいし、正極の背面に接するようにプリドープシートが配置されていてもよい。また、正極と負極の間にプリドープシートが配置されてなることも好ましく、特に、初回充電の電圧をかけてプリドープ処理を行った後は、プリドープシートが絶縁体となり得るためセパレータとして機能することが本発明者らにより明らかとなった。かかる観点から、プリドープシートを含む蓄電デバイス用セパレータが好適な実施態様である。
【0036】
上述のように、本発明のプリドープシートは、電極にプリドープ剤を配合することなく効果的にプリドープを行うことができ、電極にプリドープ剤を配合する場合と比べても電極強度を維持しつつレート性に優れた効果を奏する。したがって、プリドープシートを含む蓄電デバイスが好適な実施態様である。蓄電デバイスとしては特に限定されず、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ及び電気二重層キャパシタからなる群から選択される少なくとも1種の蓄電デバイスが好適である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
[プリドープ剤の作製]
プリドープ剤として用いるリチウム金属複合酸化物の作製例を、試料1~7及び比較試料1、2に示す。なお、各試料の取り扱いは、大気中の湿度の影響が少ない環境下で行った。
[X線回折測定]
逆蛍石型構造の材料には共通して、2θ(回折角)=23.7±0.5°、33.6±0.7°、36.5±0.7°、56.7±0.5°にそれぞれ明瞭なピークが出現する。得られた試料1~7、比較試料1、2に対して、それぞれX線回折測定を行った。X線回折測定はPhilips株式会社製XRD装置「X‘pert-PRO」を用い、CuのKα線で、作製した各試料を測定し、該当する位置にピークが存在する場合に限り、そのピーク位置を表1に示した。
【0039】
(試料1:Li/Fe=4.9)
酸化鉄(アルドリッチ製、Fe3O4)と水酸化リチウム一水和物(富士フィルム和光純薬株式会社製)をモル比換算でLi:Fe=5.0:1になるように秤量し、さらに総量に対して同重量のポリビニルアルコール(アルドリッチ製)を遊星ボールミルに投入し、9時間粉砕及び混合を行った。混合物を取り出し、箱形電気炉にて2L/minの窒素雰囲気下、950℃で72時間焼成した。焼成物をハンマーミルで粉砕した後、目開き100μmのふるいにて粗粒を取り除くことで、金属種がFeのリチウム金属複合酸化物(Li/Fe=4.9)を含むプリドープ剤である試料1を得た。
【0040】
[ICP測定]
0.05gの上記試料1(プリドープ剤)に対して10mLの硫酸(富士フィルム和光純薬株式会社製、98% 精密分析用)を加え、200℃のヒーターで加熱しつつ水を滴下することで、完全に溶解させた。得られたプリドープ剤硫酸溶液中のリチウム、及び金属種の濃度を、約1~2ppmになるように計算し、水で希釈することで測定用溶液を調製した。ICP発光分光分析装置(SPECTRO ARCOS EOP)を用いて、調製した溶液を測定した。ICPの測定結果から、試料1に含まれるLiの含有量は22wt%で、Li/Feは4.9であった。測定結果を表1に示す。
【0041】
(試料2:Li/Fe=7.2)
酸化鉄と水酸化リチウム一水和物をモル比換算でLi:Fe=7.4:1にする以外は試料1と同様にして、金属種がFeのリチウム金属複合酸化物(Li/Fe=7.2)を含むプリドープ剤として試料2を得た。得られた試料2の硫酸溶液濃度を試料1と同じ濃度に希釈してICP測定したところ、試料2のプリドープ剤に含まれるLiの含有量は28wt%で、Li/Feは7.2であった。測定結果を表1に示す。
【0042】
(試料3:Li/Fe=7.8)
酸化鉄と水酸化リチウム一水和物をモル比換算でLi:Fe=8.0:1にする以外は試料1と同様にして、金属種がFeのリチウム金属複合酸化物(Li/Fe=7.8)を含むプリドープ剤として試料3を得た。得られた試料3の硫酸溶液濃度を試料1と同じ濃度に希釈してICP測定したところ、試料3のプリドープ剤に含まれるLiの含有量は29wt%で、Li/Feは7.8であった。測定結果を表1に示す。
【0043】
(試料4:Li/Fe=2.2)
酸化鉄と水酸化リチウム一水和物をモル比換算でLi:Fe=2.4:1にする以外は試料1と同様にして、金属種がFeのリチウム金属複合酸化物(Li/Fe=2.2)を含むプリドープ剤として試料4を得た。得られた試料4の硫酸溶液濃度を試料1と同じ濃度に希釈してICP測定したところ、試料4のプリドープ剤に含まれるLiの含有量は9wt%で、Li/Feは2.2であった。測定結果を表1に示す。
【0044】
(試料5:Li/Mn=5.9)
酸化鉄の代わりに酸化マンガン(アルドリッチ製、MnO2)を使用し、酸化マンガンと水酸化リチウム一水和物をモル比換算でLi:Mn=6:1にする以外は試料1と同様にして、金属種がMnのリチウム金属複合酸化物(Li/Mn=5.9)を含むプリドープ剤として試料5を得た。得られた試料5の硫酸溶液濃度を試料1と同じ濃度に希釈してICP測定したところ、試料5のプリドープ剤に含まれるLiの含有量は24wt%で、Li/Mnは5.9であった。測定結果を表1に示す。
【0045】
(試料6:Li/Co=5.8)
酸化鉄の代わりに酸化コバルト(アルドリッチ製、CoO)を使用し、酸化コバルトと水酸化リチウム一水和物をモル比換算でLi:Co=6.0:1にする以外は試料1と同様にして、金属種がCoのリチウム金属複合酸化物(Li/Co=5.8)を含むプリドープ剤として試料6を得た。得られた試料6の硫酸溶液濃度を試料1と同じ濃度に希釈してICP測定したところ、試料6のプリドープ剤に含まれるLiの含有量は24wt%で、Li/Coは5.8であった。測定結果を表1に示す。
【0046】
(試料7:Li/Al=4.9)
酸化鉄の代わりに酸化アルミニウム(アルドリッチ製、Al2O3)を使用し、酸化アルミニウムと水酸化リチウム一水和物をモル比換算でLi:Al=5.0:1にする以外は試料1と同様にして、金属種がAlのリチウム金属複合酸化物(Li/Al=4.9)を含むプリドープ剤として試料7を得た。得られた試料7の硫酸溶液濃度を試料1と同じ濃度に希釈してICP測定したところ、試料7のプリドープ剤に含まれるLiの含有量は18wt%で、Li/Alは4.9であった。測定結果を表1に示す。
【0047】
(比較試料1)
酸化鉄(アルドリッチ製、Fe3O4)と水酸化リチウム一水和物(富士フィルム和光純薬株式会社製)をモル比換算でLi:Fe=5.0:1になるように秤量し、遊星ボールミルに投入し、9時間粉砕及び混合を行うことで、比較試料1を得た。得られた比較試料1の硫酸溶液濃度を試料1と同じ濃度に希釈してICP測定したところ、比較試料1のプリドープ剤に含まれるLiの含有量は12wt%で、Li/Feは5.0であった。測定結果を表1に示す。
【0048】
(比較試料2)
酸化鉄の代わりにアナタ-ゼ型酸化チタン(アルドリッチ製、TiO2)を使用し、アナタ-ゼ型酸化チタンと水酸化リチウム一水和物をモル比換算でLi:Ti=4.0:1にする以外は試料1と同様にして、比較試料2を得た。得られた比較試料2の硫酸溶液濃度を試料1と同じ濃度に希釈してICP測定したところ、比較試料2のプリドープ剤に含まれるLiの含有量は20wt%で、Li/Tiは4.0であった。測定結果を表1に示す。
【0049】
[プリドープシートの作製と評価]
(実施例1)
プリドープ剤として試料1、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカ株式会社製、デンカブラック)を用い、これらに結着剤であるポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製、KFポリマー#9130)を加え、自転・公転ミキサーを用いて混練し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)で粘度を調整することで塗料を得た。なお、プリドープ剤/導電助剤/結着剤の質量比は85/5/10とした。続いて、作製した塗料を、多孔質シート基材であるセルロース系不織布(ニッポン高度紙工業株式会社製、TF40)にバーコーターを用いて塗工し、φ16のサイズに打ち抜くことでプリドープシートを得た。
【0050】
[プリドープ剤量及び電気容量(Li量)の評価]
得られたプリドープシートの重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.5mg/cm2であり、そのプリドープシート上に存在するLiの量を下記により計算したところ、0.9mAh分のLiの存在を確認した。計算方法を下記に示す。
電極重量-基材重量=固形分重量
固形分重量×プリドープ剤%=プリドープ剤重量
プリドープ剤重量×リチウム含有率(ICPから測定)=リチウム重量
リチウム重量÷リチウム分子量=リチウムモル数
ここでファラデー定数から、
96485C/mol=26.801mAh/mmol
リチウムモル数×26.801mAh/mmol=電気容量mAh(Li量)
【0051】
[90°曲げ試験]
約5cm×10cm幅にカットしたプリドープシートを、塗工面が上を向くように両端を手で持ち、直径1cmの円柱状の鉄製の棒に押し当てた。棒に触れている部分を頂点として、プリドープシート又は電極を90°まで曲げ、塗工面の剥がれを目視で確認した(
図1参照)。また試験中、下に白紙を敷いておくことで粉落ちの確認を行った。剥がれ又は粉落ちの発生が確認されたものをB、確認されなかったものをAとして表2に記載した。上記実施例1で得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0052】
(実施例2)
実施例1において、試料1の代わりにプリドープ剤として試料2を使用した以外は実施例1と同様にして、プリドープシートを得た。得られたプリドープシートの重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.5mg/cm2であり、プリドープシート上に存在するLiの量を計算したところ、1.1mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0053】
(実施例3)
実施例1において、使用するバーコーターを変更することで多孔質シート基材への塗料の塗工量を変更した以外は実施例1と同様にして、プリドープシートを得た。得られたプリドープシートの重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.7mg/cm2であり、プリドープシート上に存在するLiの量を計算したところ、1.2mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0054】
(実施例4)
実施例1において、使用するバーコーターを変更することで多孔質シート基材への塗料の塗工量を変更した以外は実施例1と同様にして、プリドープシートを得た。得られたプリドープシートの重量から、プリドープ剤量(塗工量)は2.7mg/cm2であり、プリドープシート上に存在するLiの量を計算したところ、4.6mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0055】
(実施例5)
実施例1において、使用するバーコーターを変更することで多孔質シート基材への塗料の塗工量を変更した以外は実施例1と同様にして、プリドープシートを得た。得られたプリドープシートの重量から、プリドープ剤量(塗工量)は4.7mg/cm2であり、プリドープシート上に存在するLiの量を計算したところ、8.1mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0056】
(実施例6)
実施例1において、使用するバーコーターを変更することで多孔質シート基材への塗料の塗工量を変更した以外は実施例1と同様にして、プリドープシートを得た。得られたプリドープシートの重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.4mg/cm2であり、プリドープシート上に存在するLiの量を計算したところ、0.7mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0057】
(実施例7)
実施例1において、使用する多孔質シート基材をポリエステル系不織布(日本バイリーン)に変更した以外は実施例1と同様にして、プリドープシートを得た。得られたプリドープシートの重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.5mg/cm2であり、プリドープシート上に存在するLiの量を計算したところ、0.8mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0058】
(実施例8)
実施例1において、使用する多孔質シート基材をポリオレフィンフィルム(旭化成製、ハイポアセパレータ)に変更した以外は実施例1と同様にして、プリドープシートを得た。得られたプリドープシートの重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.5mg/cm2であり、プリドープシート上に存在するLiの量を計算したところ、0.8mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0059】
(実施例9)
実施例1において、試料1の代わりにプリドープ剤として試料5を使用した以外は実施例1と同様にして、プリドープシートを得た。得られたプリドープシートの重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.5mg/cm2であり、プリドープシート上に存在するLiの量を計算したところ、1.0mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0060】
(実施例10)
実施例1において、試料1の代わりにプリドープ剤として試料6を使用した以外は実施例1と同様にして、プリドープシートを得た。得られたプリドープシートの重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.5mg/cm2であり、プリドープシート上に存在するLiの量を計算したところ、0.9mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0061】
(実施例11)
実施例1において、試料1の代わりにプリドープ剤として試料7を使用した以外は実施例1と同様にして、プリドープシートを得た。得られたプリドープシートの重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.6mg/cm2であり、プリドープシート上に存在するLiの量を計算したところ、1.3mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0062】
(実施例12)
粒状ポリエチレン(NUC製、EVA COPOLYMER)の5wt%トルエン溶液5gに対して、試料1を1g添加した後、自転・公転ミキサーを用いて40℃で、混練した。得られた混合物をガラス板状にドクターブレード法を用いて塗工し、ドライヤーの熱風により乾燥した後、端から剥がすことでフィルム状のプリドープシートを得た。プリドープ剤量(塗工量)及びLiの量は、得られたフィルムをそのままICPで測定することによって計算し、プリドープ剤量は0.6mg/cm2であり、1.0mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0063】
(実施例13)
プリドープ剤として試料1、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカ株式会社製、デンカブラック)を用い、これらに結着剤であるポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製、KFポリマー#9130)を加え、自転・公転ミキサーを用いて混練し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)で粘度を調整することで塗料を得た。なお、プリドープ剤/導電助剤/結着剤の質量比は95/2/3とした。続いて、作製した塗料を、離型フィルム基材であるシリコーンタイプ離型フィルム(東山フィルム株式会社製、HY-S30-2)にバーコーターを用いて塗工し、φ16のサイズに打ち抜くことでプリドープシートを得た。プリドープ剤量(塗工量)及びLiの量は、得られたフィルムをそのままICPで測定することによって計算し、プリドープ剤量は0.5mg/cm2であり、0.9mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0064】
(実施例14)
実施例13において塗料の塗付量を変更した以外は実施例13と同様にしてプリドープシートを得た。プリドープ剤量(塗工量)及びLiの量は、得られたフィルムをそのままICPで測定することによって計算し、プリドープ剤量は2.7mg/cm2であり、4.6mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0065】
(実施例15)
実施例13において塗料の塗付量を変更した以外は実施例13と同様にしてプリドープシートを得た。プリドープ剤量(塗工量)及びLiの量は、得られたフィルムをそのままICPで測定することによって計算し、プリドープ剤量は4.7mg/cm2であり、8.1mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0066】
(比較例1)
実施例1において、試料1の代わりにプリドープ剤として試料4を使用し、使用するバーコーターを変更することで多孔質シート基材への塗料の塗工量を変更した以外は実施例1と同様にして、プリドープシートを得た。得られたプリドープシートの重量から、プリドープ剤量(塗工量)は6.6mg/cm2であり、プリドープシート上に存在するLiの量を計算したところ、4.6mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、塗工表面の剥がれの発生を確認した。結果を表2に示す。
【0067】
(比較例2)
実施例1において、試料1の代わりにプリドープ剤として試料3を使用し、使用するバーコーターを変更することで多孔質シート基材への塗料の塗工量を変更した以外は実施例1と同様にして、プリドープシートを得た。得られたプリドープシートの重量から、プリドープ剤量(塗工量)は2.0mg/cm2であり、プリドープシート上に存在するLiの量を計算したところ、4.6mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、塗工表面の剥がれ及び粉落ちの発生を確認した。結果を表2に示す。
【0068】
(比較例3)
実施例1において、使用するバーコーターを変更することで多孔質シート基材への塗料の塗工量を変更した以外は実施例1と同様にして、プリドープシートを得た。得られたプリドープシートの重量からプリドープ剤量(塗工量)は6.0mg/cm2であり、プリドープシート上に存在するLiの量を計算したところ、10.2mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、粉落ちが発生した。結果を表2に示す。
【0069】
(比較例4)
実施例1において、試料1の代わりにプリドープ剤として比較試料1を使用し、使用するバーコーターを変更することで多孔質シート基材への塗料の塗工量を変更した以外は実施例1と同様にして、プリドープシートを得た。得られたプリドープシートの重量から、プリドープ剤量(塗工量)は2.6mg/cm2であり、プリドープシート上に存在するLiの量を計算したところ、1.2mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0070】
(比較例5)
実施例1において、試料1の代わりにプリドープ剤として比較試料2を使用し、使用するバーコーターを変更することで多孔質シート基材への塗料の塗工量を変更した以外は実施例1と同様にして、プリドープシートを得た。得られたプリドープシートの重量から、プリドープ剤量(塗工量)は1.4mg/cm2であり、プリドープシート上に存在するLiの量を計算したところ、1.1mAh分のLiの存在を確認した。得られたプリドープシートに対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表2に示す。
【0071】
[プリドープ剤混合正極の作製と評価]
(比較例6)
プリドープ剤として試料1、正極活物質として活性炭(株式会社クラレ製、YP50F)、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカ株式会社製、デンカブラック)を用い、これらに結着剤であるポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製、KFポリマー#9130)に加え、自転・公転ミキサーを用いて混練し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)で粘度を調整することで正極用塗料を得た。なお、プリドープ剤/正極活物質/導電助剤/結着剤の質量比は7/70/9/14とした。続いて、作製した正極用塗料を集電体であるエッチングアルミ箔(日本蓄電器工業株式会社製、JCC-20CB)に片面塗工し、130℃で30分乾燥したのち、0.01mmのスリットでロールプレスすることによってプリドープ剤混合正極を作製した。このとき、活性炭の理論容量を40mAh/gで計算し、φ15のパンチで打ち抜いた際に0.2mAh分の活性炭が塗工されるように塗工膜厚を調整した。得られたプリドープ剤混合正極の重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.2mg/cm2であり、0.4mAh分のLiが存在すると見積もられた。プリドープ剤混合正極に対して90°曲げ試験を行ったところ、剥がれ及び粉落ちは発生しなかった。結果を表3に示す。
【0072】
(比較例7)
比較例6において、プリドープ剤/正極活物質/導電助剤/結着剤の質量比が8/69/9/14となるようにした以外は比較例6と同様にして、プリドープ剤混合正極を得た。得られたプリドープ剤混合正極の重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.3mg/cm2であり、0.5mAh分のLiが存在すると見積もられた。プリドープ剤混合正極に対して90°曲げ試験を行ったところ、塗工表面の剥がれの発生を確認した。結果を表3に示す。
【0073】
(比較例8)
比較例6において、プリドープ剤/正極活物質/導電助剤/結着剤の質量比が11/66/9/14となるようにした以外は比較例6と同様にして、プリドープ剤混合正極を得た。得られたプリドープ剤混合正極の重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.4mg/cm2であり、0.7mAh分のLiが存在すると見積もられた。プリドープ剤混合正極に対して90°曲げ試験を行ったところ、塗工表面の剥がれ及び粉落ちの発生を確認した。結果を表3に示す。
【0074】
(比較例9)
比較例6において、プリドープ剤/正極活物質/導電助剤/結着剤の質量比が17/60/9/14となるようにした以外は比較例6と同様にして、プリドープ剤混合正極を得た。得られたプリドープ剤混合正極の重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.7mg/cm2であり、1.2mAh分のLiが存在すると見積もられた。得られたプリドープ剤混合正極はプレスを行った時点で表面の剥がれが発生したため、90°曲げ試験を行わなかった。結果を表3に示す。
【0075】
(比較例10)
比較例6において、試料1の代わりにプリドープ剤として試料3を使用した以外は比較例6と同様にして、プリドープ剤混合正極を得た。得られたプリドープ剤混合正極の重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.2mg/cm2であり、0.5mAh分のLiが存在すると見積もられた。プリドープ剤混合正極に対して90°曲げ試験を行ったところ、塗工表面の剥がれの発生を確認した。結果を表3に示す。
【0076】
(比較例11)
プリドープ剤として試料1、正極活物質として活性炭(株式会社クラレ製、YP50F)、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカ株式会社製、デンカブラック)を用い、これらを増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬株式会社製、H-1496B)の1質量%水溶液に加えて、自転・公転ミキサーを用いて混練して混練物を得た。次に作製した混練物に結着剤であるスチレンブタジエンゴム(JSR株式会社製)を加えることによって正極用塗料を作製し、水で粘度調整を行った。なお、プリドープ剤/正極活物質/導電助剤/増粘剤/結着剤の質量比は9/73/9/4/5とした。得られた正極用塗料をAl集電体に塗工するとAlが腐食し水素ガスが発生した。乾燥して得られたプリドープ剤混合正極は、発生した気泡の影響で電極表面に凹凸が発生していた。得られたプリドープ剤混合正極の重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.6mg/cm2であり、0.4mAh分のLiが存在すると見積もられた。また、プレスを掛けると塗工表面の剥がれが発生したため、90°曲げ試験は行わなかった。
【0077】
(比較例12)
比較例7において、試料1の代わりにプリドープ剤として試料5を使用した以外は比較例7と同様にして、プリドープ剤混合正極を得た。得られたプリドープ剤混合正極の重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.3mg/cm2であり、0.4mAh分のLiが存在すると見積もられた。プリドープ剤混合正極に対して90°曲げ試験を行ったところ、塗工表面の剥がれの発生を確認した。結果を表3に示す。
【0078】
(比較例13)
比較例7において、試料1の代わりにプリドープ剤として試料6を使用した以外は比較例7と同様にして、プリドープ剤混合正極を得た。得られたプリドープ剤混合正極の重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.3mg/cm2であり、0.4mAh分のLiが存在すると見積もられた。プリドープ剤混合正極に対して90°曲げ試験を行ったところ、塗工表面の剥がれの発生を確認した。結果を表3に示す。
【0079】
(比較例14)
比較例7において、試料1の代わりにプリドープ剤として試料7を使用した以外は比較例7と同様にして、プリドープ剤混合正極を得た。得られたプリドープ剤混合正極の重量から、プリドープ剤量(塗工量)は0.3mg/cm2であり、0.3mAh分のLiが存在すると見積もられた。プリドープ剤混合正極に対して90°曲げ試験を行ったところ、塗工表面の剥がれの発生を確認した。結果を表3に示す。
【0080】
[フルセル(コインセル)の作製と評価]
(実施例16)
実施例3で作製したプリドープシートをセパレータとして用いてフルセルを作製し、充放電試験を行った。作製方法と評価方法を以下に示す。
【0081】
(1)負極の作製
まず、負極活物質として黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製、CGB-20)、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカ株式会社製、デンカブラック)を用い、これらを増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬株式会社製、H-1496B)の1質量%水溶液に加えて、自転・公転ミキサーを用いて混練して混練物を得て、水で粘度を調整した。次に作製した混練物に結着剤であるスチレンブタジエンゴム(JSR製)を加え、さらに自転・公転ミキサーを用いて混練することによって負極用塗料を作製した。なお、負極活物質/導電助剤/増粘剤/結着剤の質量比は95/1/1/3とした。最後に、作製した負極用塗料を集電体である銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製)に片面塗工し、100℃で30分乾燥したのち、0.01mmのスリットでロールプレスすることによって負極を作製した。
【0082】
(2)正極の作製
正極活物質として活性炭(株式会社クラレ製、YP-50F)、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカ株式会社製、デンカブラック)を用い、これらに結着剤であるポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製、KFポリマー#9130)に加え、自転・公転ミキサーを用いて混練し、N-メチル-2-ピロリドンで粘度を調整することで正極用塗料を作製した。なお、正極活物質/導電助剤/結着剤の質量比は77/9/14とした。続いて、作製した正極用塗料を集電体であるエッチングアルミ箔(日本蓄電器工業株式会社製、JCC-20CB)に片面塗工し、130℃で30分乾燥したのち、0.01mmのスリットでロールプレスすることによって正極を作製した。このとき、活性炭の理論容量を40mAh/gで計算し、φ15のパンチで打ち抜いた際に0.2mAh分の活性炭が塗工されるように塗工膜厚を調整した。
【0083】
(3)セル設計
上記で作製した正極の容量が0.2mAhであることから、N(負極活物質)/P(正極活物質)の容量の比率が10に近づくような負極、すなわち2.0mAhの黒鉛が塗工された負極を使用した。
【0084】
(4)セル作製
実施例3で作製したプリドープシートをφ16のサイズに打ち抜いて、プリドープ剤の塗工面を正極表面に対向するように配置し、そのセパレータの上から負極を設置した。それに対して、PC(プロピレンカーボネート)溶媒1Lに、電解質としてLiBF4を1モル添加した(1.0M LiBF4/PC)電解液を用いることで2032型のコインセルを作製した。なお、このときの正極とセパレータとの総膜厚は129μmであった。
【0085】
(5)充放電試験
作製したコインセルを用いてプリドープ操作を行った。具体的には、活性炭基準で0.1Cのレートで4.5Vまで充電し、その後定電圧操作によって24時間電位を保持させた。その後2.2Vまで1Cで放電した後、3.8-2.2V間、1Cで3サイクル作動させた後、10Cで3サイクルの充放電を行った。充放電試験の結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.19mAh、10Cで0.15mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで95%、10Cで75%であった。結果を表4に示す。なお、各充放電間には3分の休息を行った。測定は北斗電工株式会社製HJ1001SD8を用いて行った。
【0086】
(実施例17)
実施例16において、実施例5で作製したプリドープシートをセパレータとして用いた以外は実施例16と同様にして、コインセルの作製及び充放電試験を行った。なお、このときの正極とセパレータとの総膜厚は140μmであった。その結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.22mAh、10Cで0.14mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで110%、10Cで70%であった。結果を表4に示す。
【0087】
(実施例18)
実施例16において、実施例6で作製したプリドープシートをセパレータとして用いた以外は実施例16と同様にして、コインセルの作製及び充放電試験を行った。なお、このときの正極とセパレータとの総膜厚は123μmであった。その結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.15mAh、10Cで0.12mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで75%、10Cで60%であった。結果を表4に示す。
【0088】
(実施例19)
実施例16において、正極とセパレータの間に実施例12で作製したプリドープシートを設置し、セパレータとしてセルロース系不織布(ニッポン高度紙工業株式会社製、TF40)を用いた以外は実施例16と同様にして、コインセルの作製及び充放電試験を行った。なお、このときの正極とセパレータとプリドープシートの総膜厚は128μmであった。その結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.19mAh、10Cで0.12mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで95%、10Cで60%であった。結果を表4に示す。
【0089】
(実施例20)
実施例16において、正極の背面に実施例3で作製したプリドープシートを設置し、セパレータとしてセルロース系不織布(ニッポン高度紙工業株式会社製、TF40)を用いた以外は実施例16と同様にして、コインセルの作製及び充放電試験を行った。なお、このときのプリドープシートと正極とセパレータとの総膜厚は149μmであった。その結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.20mAh、10Cで0.16mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで100%、10Cで80%であった。結果を表4に示す。
【0090】
(実施例21)
実施例16において、実施例9で作製したプリドープシートを用いた以外は実施例16と同様にして、コインセルの作製及び充放電試験を行った。なお、このときの正極とセパレータとの総膜厚は127μmであった。その結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.19mAh、10Cで0.15mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで95%、10Cで75%であった。結果を表4に示す。
【0091】
(実施例22)
実施例16において、正極表面に実施例13で作製したプリドープシートを設置し、ロールプレス機を用いてプリドープ層のみを正極表面に転写した以外は実施例16と同様にして、コインセルの作製及び充放電試験を行った。なお、このときの正極とセパレータとプリドープシートの総膜厚は126μmであった。その結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.19mAh、10Cで0.17mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで95%、10Cで85%であった。結果を表4に示す。
【0092】
(実施例23)
実施例16において、正極表面に実施例14で作製したプリドープシートを設置し、ロールプレス機を用いてプリドープ層のみを正極表面に転写した以外は実施例16と同様にして、コインセルの作製及び充放電試験を行った。なお、このときの正極とセパレータとプリドープシートの総膜厚は133μmであった。その結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.20mAh、10Cで0.15mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで100%、10Cで75%であった。結果を表4に示す。
【0093】
(実施例24)
実施例16において、正極表面に実施例15で作製したプリドープシートを設置し、ロールプレス機を用いてプリドープ層のみを正極表面に転写した以外は実施例16と同様にして、コインセルの作製及び充放電試験を行った。なお、このときの正極とセパレータとプリドープシートの総膜厚は133μmであった。その結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.20mAh、10Cで0.13mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで100%、10Cで65%であった。結果を表4に示す。
【0094】
(比較例15)
実施例16において、比較例4で作製したプリドープシートを用いた以外は実施例16と同様にして、コインセルの作製及び充放電試験を行った。なお、このときの正極とセパレータとの総膜厚は135μmであった。その結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.05mAh、10Cで0.02mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで25%、10Cで10%であった。結果を表4に示す。
【0095】
(比較例16)
実施例16において、比較例5で作製したプリドープシートを用いた以外は実施例16と同様にして、コインセルの作製及び充放電試験を行った。なお、このときの正極とセパレータとの総膜厚は128μmであった。その結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.04mAh、10Cで0.02mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで20%、10Cで10%であった。結果を表4に示す。
【0096】
(比較例17)
実施例16において、正極に比較例6で作製したプリドープ剤混合正極、セパレータとしてセルロース系不織布(ニッポン高度紙工業株式会社製、TF40)を用いた以外は実施例16と同様にして、コインセルの作製及び充放電試験を行った。なお、このときの正極とセパレータとの総膜厚は122μmであった。その結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.08mAh、10Cで0.04mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで40%、10Cで20%であった。結果を表4に示す。
【0097】
(比較例18)
実施例16において、正極に比較例7で作製したプリドープ剤混合正極、セパレータとしてセルロース系不織布(ニッポン高度紙工業株式会社製、TF40)を用いた以外は実施例16と同様にして、コインセルの作製及び充放電試験を行った。なお、このときの正極とセパレータとの総膜厚は124μmであった。その結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.09mAh、10Cで0.04mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで45%、10Cで20%であった。結果を表4に示す。
【0098】
(比較例19)
実施例16において、正極に比較例8で作製したプリドープ剤混合正極、セパレータとしてセルロース系不織布(ニッポン高度紙工業株式会社製、TF40)を用いた以外は実施例16と同様にして、コインセルの作製及び充放電試験を行った。なお、このときの正極とセパレータとの総膜厚は128μmであった。その結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.10mAh、10Cで0.05mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで50%、10Cで25%であった。結果を表4に示す。
【0099】
(比較例20)
実施例16において、正極に比較例9で作製したプリドープ剤混合正極、セパレータとしてセルロース系不織布(ニッポン高度紙工業株式会社製、TF40)を用いた以外は実施例16と同様にして、コインセルの作製及び充放電試験を行った。なお、このときの正極とセパレータとの総膜厚は137μmであった。その結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.18mAh、10Cで0.07mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで90%、10Cで35%であった。結果を表4に示す。
【0100】
(比較例21)
実施例16において、セパレータとしてセルロース系不織布(ニッポン高度紙工業株式会社製、TF40)を用いた以外は実施例16と同様にして、コインセルの作製及び充放電試験を行った。なお、このときの正極とセパレータとの総膜厚は114μmであった。その結果、3サイクル目の放電容量が、1Cで0.05mAh、10Cで0.02mAhであった。設計容量が0.2mAhであったことから、設計容量の実現率は、1Cで25%、10Cで10%であった。結果を表4に示す。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【符号の説明】
【0105】
1 プリドープシート又は電極
2 鉄製の棒(直径1.0cm)