(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】配線保護構造、および空気調和機の室内ユニット
(51)【国際特許分類】
F24F 13/20 20060101AFI20250127BHJP
【FI】
F24F1/0007 401E
F24F1/0007 401C
(21)【出願番号】P 2022509881
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013338
(87)【国際公開番号】W WO2021192094
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-06-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 哲朗
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-030025(JP,A)
【文献】特開2001-221189(JP,A)
【文献】特開2019-124352(JP,A)
【文献】特開平03-021544(JP,A)
【文献】特開2005-210528(JP,A)
【文献】特開2003-232297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0007
F24F 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の中心軸を中心として回動する回動機構と、前記回動機構に対して変動しない非回動機構
と、前記回動機構と前記非回動機構との間を繋ぐ配線を
内部に通す保護部材と、を備え、前記配線を保護する配線保護構造であって、
前記非回動機構は、熱交換器を収容する筐体と、前記熱交換器で熱交換された空気の気流が通過する流路を構成する第1筒部材と、を備え、
前記回動機構は、前記気流を室内空間に吹き出す吹出口と前記吹出口から吹き出される前記気流の傾きを調整する風向板とを有し、前記吹出口の中心軸を中心として前記筐体に対して回動する回動ユニットを備え、
前記回動ユニットは、前記第1筒部材に対して回動する第2筒部材を有し、
前記第2筒部材は、前記気流が通過する流路を前記第1筒部材とともに構成し、前記気流が通過する方向の先端側に前記吹出口を有し、
前記第1筒部材と前記第2筒部材は、前記第2筒部材が前記第1筒部材に対して回動可能に保持部材で接続され、前記第1筒部材の外周面側および前記第2筒部材の外周面側は、円筒状の吹出口カバーで覆われ、
前記回動ユニットは、前記吹出口カバーの内部で前記吹出口カバーに対して回動し、
前記保護部材は、前記配線の差渡し寸法よりも大寸の差渡し寸法に設定された前記配線の配線空間を規定する配線部と、前記配線部の折返し位置を前記回動機構の回動方向に変位可能に前記配線部を折り返す折返し部と、を備え、
前記回動ユニットと前記保持部材との間を繋ぐ前記配線を保護し、
前記折返し部は、前記所定の中心軸に対する周方向および半径方向のいずれとも交差する方向に屈曲するように構成されている
配線保護構造。
【請求項2】
前記回動機構は、前記配線部を保持するとともに前記配線部の折返し位置を規定する可動側ガイド部材を備え、
前記非回動機構は、前記配線部を保持するとともに前記配線部の折返し位置を規定する固定側ガイド部材を備え、
前記固定側ガイド部材は、前記回動機構の回動可能域において少なくとも一部が前記可動側ガイド部材と対向可能に配置されている
請求項1に記載の配線保護構造。
【請求項3】
前記配線部は、一端から他端まで連続し、
前記可動側ガイド部材は、前記配線部の前記一端を固定し、
前記固定側ガイド部材は、前記配線部の前記他端を固定する
請求項2に記載の配線保護構造。
【請求項4】
前記折返し部は、前記配線部の前記一端よりも手前の位置と前記他端よりも手前の位置との間で前記配線部の折返し位置を変位させる
請求項3に記載の配線保護構造。
【請求項5】
前記可動側ガイド部材および前記固定側ガイド部材は、前記配線部と前記回動方向に係合する突起をそれぞれ有する
請求項2に記載の配線保護構造。
【請求項6】
前記保護部材は、線材を螺旋状に連続させたコイルスプリングである
請求項1から5のいずれか一項に記載の配線保護構造。
【請求項7】
前記保護部材は、同一形状の要素部品が前記回動方向に沿って複数連結されて構成されている
請求項1から5のいずれか一項に記載の配線保護構造。
【請求項8】
前記要素部品は、連結されて隣り合う前記要素部品と相対的に回動可能に構成され、隣り合う前記要素部品との相対的な回動を所定範囲に制限する規制部を有する
請求項7に記載の配線保護構造。
【請求項9】
前
記配線を保護する請求項1から8のいずれか一項に記載の配線保護構
造を備え
、
前記回動ユニットは、前記風向板の角度を変更する駆動機構を有し、
前記筐体は、前記駆動機構を制御する制御部を有し、
前記配線は、前記駆動機構と前記制御部とを接続する
空気調和機の室内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回動機構と回動機構に対して変動しない非回動機構との間を繋ぐ配線を保護する構造(配線保護構造)、および該配線保護構造を備えた空気調和機の室内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気調和機の室内ユニットは、空気の吸込口と、空気の吹出口と、吹出口の外郭を覆う吹出口カバーと、熱交換器と、吸込口から熱交換器を経て吹出口に至る気流を発生させるファンと、熱交換器を収容する筐体とを備えている。吹出口には、熱交換器で温調されて空調対象の室内空間に吹き出される気流(以下、吹出風という)を偏向させるルーバーが設けられている。室内空間に吹出風を行き渡らせ、室内温度を効率よく調整するため、ルーバーは、複数枚の風向板を有して構成される。これらの風向板は、駆動機構で回動軸まわりに回動して偏向可能とされる。
【0003】
風向板の偏向に加えて、風向板およびその回動軸を吹出口の中心軸を中心に周方向へ回動させて変位させることで、室内空間により満遍なく吹出風を行き渡らせ、室内温度をさらに効率よく調整することが可能である。例えば、吹出口および風向板を含む回動ユニットを室内ユニットの筐体や吹出口カバーに対して回動可能とした場合、風向板の駆動機構に接続される配線は、回動ユニットと吹出口カバーとの間の空間に配され、筐体と回動ユニットとの間を繋ぐ。配線は、例えばモータのリード線、制御基板の信号線や電源線などであり、その本数は問わない。
【0004】
その一方で、回動ユニットは吹出口カバーに対して回動する回動機構であり、吹出口カバーは筐体に取り付けられて変動しない部材(回動機構に対する非回動機構の一構成部材)である。このため、回動ユニットの回動時に回動ユニットと吹出口カバーとの間で配線が暴れ、本来の配線位置から外れてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、回動機構と非回動機構の間での配線暴れを抑制し、これらの部材間を繋ぐ配線の保護を図る配線保護構造、および該配線保護構造を備えた空気調和機の室内ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る空気調和機の室内ユニットにおける配線保護構造は、所定の中心軸を中心として回動する回動機構と、前記回動機構に対して変動しない非回動機構と、前記回動機構と前記非回動機構との間を繋ぐ配線を内部に通す保護部材と、を備え、前記配線を保護する。前記非回動機構は、熱交換器を収容する筐体と、前記熱交換器で熱交換された空気の気流が通過する流路を構成する第1筒部材と、を備える。前記回動機構は、前記気流を室内空間に吹き出す吹出口と前記吹出口から吹き出される前記気流の傾きを調整する風向板とを有し、前記吹出口の中心軸を中心として前記筐体に対して回動する回動ユニットを備える。前記回動ユニットは、前記第1筒部材に対して回動する第2筒部材を有する。前記第2筒部材は、前記気流が通過する流路を前記第1筒部材とともに構成し、前記気流が通過する方向の先端側に前記吹出口を有する。前記第1筒部材と前記第2筒部材は、前記第2筒部材が前記第1筒部材に対して回動可能に保持部材で接続され、前記第1筒部材の外周面側および前記第2筒部材の外周面側は、円筒状の吹出口カバーで覆われる。前記回動ユニットは、前記吹出口カバーの内部で前記吹出口カバーに対して回動する。前記保護部材は、配線部と折返し部とを備え、前記回動ユニットと前記保持部材との間を繋ぐ前記配線を保護する。前記配線部は、前記配線の差渡し寸法よりも大寸の差渡し寸法に設定された前記配線の配線空間を規定する。前記折返し部は、前記配線部の折返し位置を前記回動機構の回動方向に変位可能に前記配線部を折り返す。前記折返し部は、前記所定の中心軸に対する周方向および半径方向のいずれとも交差する方向に屈曲するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る室内ユニットの概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1におけるII-II線に沿う室内ユニットの概略的な断面図である。
【
図3】
図3は、
図1におけるIII-III線に沿う室内ユニットの概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、吹出口カバーを取り外した室内ユニットの概略的な斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の一部を拡大して配線保護構造を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、配線保護構造における保護部材の一例であるコイルスプリング(つるまきばね)の概略的な斜視図である。
【
図7】
図7は、ガイド部材の可動側ガイド部材の概略的な斜視図である。
【
図8】
図8は、ガイド部材の固定側ガイド部材の概略的な斜視図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る配線保護構造を概略的に示す図である。
【
図10】
図10は、配線保護構造における保護部材の一例であるチェーンの要素部品(コマ)の概略的な斜視図である。
【
図11】
図11は、配線保護構造における保護部材の一例であるチェーンの要素部品(コマ)の概略的な平面図である。
【
図12】
図12は、複数のコマが連結されて一連のチェーンが構成された状態を示す概略的な平面図である。
【
図13】
図13は、連結された二つのコマの回動角度が最小である態様を概略的に示す平面図である。
【
図14】
図14は、連結された二つのコマの回動角度が最大である態様を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る室内ユニット1の概略的な斜視図である。この室内ユニット1は、冷媒を圧縮する圧縮機および室外熱交換器などを含む室外ユニットと冷媒配管にて接続される。室内ユニット1、室外ユニットおよび冷媒配管などにより、冷凍サイクルを備えた空気調和機が構成される。空気調和機は、例えば冷房運転と暖房運転を切り替えることが可能である。ただし、空気調和機は、冷房運転または暖房運転のみ実行可能であってもよい。
【0010】
本実施形態においては、
図1に示すようにX方向、Y方向およびZ方向を定義する。これらX方向、Y方向およびZ方向は互いに直交する。Z方向は、鉛直方向と平行である。以下の説明においては、Z方向を上方、その反対方向を下方と呼び、Y方向を前方と呼ぶことがある。
【0011】
室内ユニット1は、筐体2と、先端に吹出口3を有する吹出口ユニット4とを備えている。筐体2は、前面板20と、前面板20の上方に配置された前面カバー21と、前面板20および前面カバー21に対向する背面板22と、互いに対向する一対の側面板23,24と、底面板25と、底面板25に対向する上面板26とを備えている。室内ユニット1は、一台のみで設置されてもよいし、例えば建物の柱や壁面に沿って配置されたフレームに背面板22を連結することで、Z方向に複数段に積み重なった状態で設置されてもよい。また、複数の室内ユニット1がX方向に並べられてもよいし、互いに離れた位置に設置されてもよい。
【0012】
前面板20、前面カバー21および背面板22は、X方向およびZ方向によって規定されるX-Z平面と平行である。側面板23,24は、Y方向およびZ方向によって規定されるY-Z平面と平行である。底面板25および上面板26は、X方向およびY方向によって規定されるX-Y平面と平行である。
図1に示す例において、筐体2は、X方向およびZ方向における幅よりもY方向における幅が十分に小さい扁平な直方体状である。ただし、筐体2の形状はこの例に限られない。
【0013】
前面カバー21は、Z方向において前面板20と上面板26の間に配置されている。前面カバー21は、ねじ211によって前面板20に取り付けられている。また、例えば前面カバー21の裏面に一対の爪部が設けられており、これら爪部が側面板23,24に設けられた取付孔に引っ掛けられている。このような構造においては、ねじ211を外すことにより前面カバー21が筐体2の他の部分に対して着脱可能となる。なお、前面カバー21を着脱可能とするための構造は、ここで例示したものに限られない。
【0014】
吹出口ユニット4は、吹出口3に向けて先細る円筒状のカバー(以下、吹出口カバーという)40を備えている。吹出口カバー40は、後述する第1筒部材92および第2筒部材31の外周面側を覆い、吹出口3を含む吹出口ユニット4の構成部材(後述する整流板94、第1筒部材92、および第2筒部材31など)を保護するとともに、外観のデザイン性を向上させる。吹出口カバー40は、少なくともねじ41によって前面板20に取り付けられている。これにより、吹出口カバー40は、筐体2とともに、後述する回動ユニット30(回動機構)に対して変動しない非回動機構を構成する。
図1に示す例においては、吹出口カバー40の外周面に凹部42が設けられ、この凹部42の筐体2側の端面が有する貫通孔にねじ41が通されている。吹出口カバー40の外郭線は、湾曲線状をなしている。
【0015】
吹出口ユニット4は、吹出口3に設けられたルーバー5をさらに備えている。
図1に示す例において、ルーバー5は、回動可能な三つの風向板51,52,53によって構成されている。風向板の数は三つに限定されず、ルーバー5は二つ以下または四つ以上の風向板によって構成されてもよい。風向板51,52,53は、吹出口3から吹き出される気流の傾きを調整する。
【0016】
図2から
図4には、室内ユニット1の概略的な構成を示す。
図2は、
図1におけるII-II線に沿う断面図であり、
図3は、
図1におけるIII-III線に沿う断面図である。
図4は、吹出口カバー40を取り外した室内ユニット1の概略的な斜視図である。
図2および
図3に示すように、筐体2の内部には熱交換器6が配置されている。熱交換器6は、X方向に延びる複数の伝熱管60と、伝熱管60に連結された複数のフィン61とを備えている。複数のフィン61は、
図2に示すようにZ方向に長尺な形状を有し、X方向に間隔を空けて並んでいる。
【0017】
背面板22には、室外ユニットと接続するための冷媒配管の接続口62,63と、熱交換器6と対向する吸込口27とが設けられている。例えば、接続口62には各伝熱管60で構成される流路の入口が接続され、接続口63には当該流路の出口が接続される。
【0018】
熱交換器6の下方には、熱交換器6で生じる結露水を受けるためのドレンパン64が配置されている。ドレンパン64に溜まった結露水は、図示しない配管を通じて筐体2の外部に排出される。
【0019】
熱交換器6の上方には、X-Z平面と平行な取付板70が配置されている。取付板70は、前面カバー21および背面板22と対向している。取付板70の下端には、X-Y平面と平行な仕切板71が接続されている。仕切板71と熱交換器6の間には、断熱材65が配置されている。取付板70と仕切板71は、1枚の板材をL字型に曲げることにより一体的に形成されてもよいし、別々の板材であってもよい。取付板70、仕切板71、前面カバー21および上面板26により、制御部8を収容するための空間S1が形成されている。
【0020】
制御部8は、制御基板80や各種の電子部品81を含む。制御基板80は、取付板70に取り付けられている。各電子部品81は、前面カバー21と対向する制御基板80の一面に実装されている。制御部8には、室内ユニット1の外部に設置されたリモートコントローラ、室外ユニット、他の室内ユニットなどと通信するための通信線や、電源線が接続されている。これら通信線および電源線は、例えば背面板22に設けられた挿通口を通じて室内ユニット1の外部に延出している。
【0021】
前面板20は、Y方向において熱交換器6と重なる開口29を有している。吹出口カバー40の内側には、開口29を通じて熱交換器6と対向するファン9が配置されている。ファン9は、熱交換器6で熱交換により温調された空気の気流を発生させる。ファン9は、例えば軸流ファンであり、ファンモータ90と、ファンモータ90によって軸AXを中心に回転する複数の羽根91とを備えている。本実施形態において、軸AXはY方向と平行である。
【0022】
ファン9は、軸AXと同軸の第1筒部材92の内部に配置されている。第1筒部材92は、筐体2に固定され、筐体2の外側かつ吹出口カバー40の内側において開口29を囲っている。第1筒部材92の外周面の少なくとも一部は、断熱材93によって覆われている。
【0023】
ルーバー5は、軸AXと同軸の第2筒部材31の端部に配置されている。ルーバー5の風向板51,52,53は、例えばモータ34を含む駆動機構(以下、ルーバー駆動機構という)33によって回動される。
【0024】
第2筒部材31の外周面31aの少なくとも一部は、断熱材32によって覆われている。吹出口3は、第2筒部材31の先端側の開口に相当する。
図2および
図3に示す例において、吹出口3の中心は軸AX上にある(吹出口3の中心軸と軸AXが一致している)。
【0025】
図3および
図4に示すように、第2筒部材31の外周面31aには、ルーバー駆動機構33が設けられている。ルーバー駆動機構33は、モータ34の駆動力により風向板51,52,53の角度を変更するためのギアなどを含み、風向板51,52,53を所定の傾きに回動させる。モータ34は、所定の配線(モータ用リード線)で制御基板80と接続されている。
【0026】
ルーバー5、第2筒部材31、断熱材32、ルーバー駆動機構33およびモータ34は、回動ユニット30を構成する。回動ユニット30は、保持部材10により軸AXを中心として回動可能に保持されている。本実施形態において、軸AXは、回動ユニット30が回動する際の中心軸となっている。回動ユニット30は、軸AXを中心に180°の範囲内を回動可能域として回動する。回動可能域は、風向板51,52,52の回動軸が水平(X-Y平面と平行)となるように回動ユニット30が位置した状態(
図4に示す状態。以下、基準状態という)から、軸AXを中心に180°の範囲内である。すなわち、基準状態から天地が逆転する範囲内で回動ユニット30は回動する。ただし、回動可能域はこの範囲に限定されない。
【0027】
具体的には、保持部材10は、第2筒部材31を第1筒部材92に対して回動可能に、両者を接続している。保持部材10は、モータ11を含む。モータ11は、例えば第2筒部材31の端部に設けられたギアを、回転軸のギアに噛み合わせて軸AXを中心とした円周方向に送る。これにより、第2筒部材31が第1筒部材92に対して回動する。第2筒部材31は、手動で回動可能であってもよい。この場合、例えば軸AXを中心とする円周方向に等間隔で三つの歯車を配置してギアに噛合させることで、第2筒部材31を第1筒部材92に対して回動可能に支持すればよい。回動ユニット30を回動させる際には、突起311をつまんで、軸AXを中心として周方向へ所望量だけ回動ユニット30を回動させる。突起311は、第2筒部材31の吹出口3の周縁に設けられて回動ユニット30を回動させる力が作用される入力部であり、取っ手として機能する。
【0028】
第1筒部材92および第2筒部材31は、風路ADを構成する。風路ADは、熱交換器6で熱交換(温調)された空気がファン9の回転により気流となって通過する流路である。風路ADの中心軸は、軸AXと一致している。風路ADにおいて、ファン9とルーバー5の間には整流板94が配置されている。整流板94は、第1筒部材92によって支持され、ファン9によって発生した直後の乱れた気流を軸AXと略平行に整える。整流板94は、例えば六角形の多数の開口が配列されたハニカム構造を有しているが、この例に限られない。第1筒部材92、第2筒部材31、および整流板94は、吹出口ユニット4の構成部材に含まれる。
【0029】
ファン9が回転すると、吸込口27、熱交換器6、整流板94および吹出口3を順に通る気流が発生する。冷房運転時には熱交換器6が蒸発器として機能し、吸込口27から吸い込まれた空気が冷やされる。暖房運転時には熱交換器6が凝縮器として機能し、吸込口27から吸い込まれた空気が暖められる。温調された気流は、整流板94で整流され、ルーバー5の風向板51,52,53の角度に応じた方向へ吹出口3から室内空間に吹き出される。
【0030】
制御部8は、外部から入力される情報や室内ユニット1が備える温度センサによって検出される吸込温度および吹出温度等に基づいてファン9の回転数を制御する。また、制御部8は、外部から入力される風向きの設定情報に基づいて保持部材10やルーバー5を制御する。保持部材10により回動ユニット30を回動させ、かつルーバー5の風向板51,52,53の角度を変更することで、様々な方向への送風が可能となる。
【0031】
続いて、回動ユニット30と保持部材10との間を繋ぐ配線を保護する配線保護構造について説明する。室内ユニット1において、回動ユニット30は、軸AXを中心として回動する回動機構である。保持部材10は、第1筒部材92を介して筐体2に固定されており、回動ユニット30に対して変動しない非回動機構の構成部材の一つである。モータ34と制御基板80とを接続するリード線1a(
図6参照)は、回動ユニット30と保持部材10との間を繋ぐ配線である。
【0032】
図5には、
図4の一部を拡大して配線保護構造100を概略的に示す。配線保護構造100は、リード線1aを内部に通して保護する保護部材101と、保護部材101を保持するガイド部材102とを備えている。
保護部材101は、リード線1aの配線経路に沿って一端から他端まで連続する部材であり、配線部1bと折返し部1cを有している。
図6には、保護部材101を概略的に示す。
図6に示す例では、保護部材101はコイルスプリング(つるまきばね)103とされている。コイルスプリング103は、線材、例えば金属線300を巻回して形成されて一端103aから他端103bまで螺旋状に連続し、屈曲や伸縮などの弾性変形が可能とされている。金属線300は、螺旋状に巻回された内部空間内に配線されたリード線1aを回動ユニット30の回動時に保護可能な強度(剛性)と耐久性を有する。かかる強度(剛性)と耐久性を有していれば、コイルスプリング103の線材は、樹脂製などであってもよい。
【0033】
配線部1bは、保護部材101において配線が通る空間(配線空間)を規定する部分である。コイルスプリング103では、金属線300が螺旋状に巻回されて一連の内部空間を形成する部分、端的には螺旋状に巻回された金属線300が配線部1bに相当する。リード線1aは、配線部1b、つまり螺旋状に巻回された金属線300が規定する内部空間(配線空間)を通して配線される。したがって、コイルスプリング103が弾性変形すると、これに応じて配線部1bに配線されたリード線1aも同等の形態に変化する。具体的には、リード線1aの折返し位置が変化する。
【0034】
配線部1bは、リード線1aの差渡し寸法(一例として外径)よりも大寸の差渡し寸法(一例として内径)で内部空間を規定する。換言すれば、コイルスプリング103は、配線部1bを通るリード線1aと、配線部1bに相当する螺旋状に巻回する金属線300との間に所定の空隙(遊び)を有している。したがって、配線部1bの配線空間に配線されたリード線1aは、金属線300と密着することなく、配線空間内で相対的に変位可能な状態となっている。
【0035】
折返し部1cは、コイルスプリング103において配線部1bが屈曲して折り返される部分である。リード線1aは、折返し部1cで折り返されて配線部1bの内部空間に配線される。折返し部1cは、配線部1bの折返し位置を回動ユニット30の回動方向に変位可能に配線部1bを折り返す。回動ユニット30の回動方向は、吹出口カバー40に対して回動ユニット30が回動する方向であり、軸AXを中心とした円周方向に相当する方向である(以下、単に回動方向という)。
【0036】
本実施形態では、金属線300が弾性変形することで、折返し部1cは配線部1bの折返し位置を回動方向に変位させる。折返し部1cは、コイルスプリング103(端的には配線部1b)の一端103aよりも手前の位置と、他端103bの手前よりも手前の位置との間で、配線部1bの折り返し位置を変位させる。換言すれば、配線部1bは、回動ユニット30の回動距離(回動可能域)の起点で一端103aが折返し部1cよりも回動方向の手前に位置し、該回動距離の終点で他端103bが折返し部1cよりも回動方向の手前に位置する長さを有している。
【0037】
ガイド部材102は、配線部1bを保持するとともに、折返し部1cの変位方向、換言すれば配線部1bの折返し位置を規定する。すなわち、配線部1bは、ガイド部材102が存在する範囲内でその姿勢が保持され、折返し位置が規定される。折返し部1cの変位方向は、回動方向とほぼ一致している。本実施形態において、ガイド部材102は、回動ユニット30と保持部材10にそれぞれ対をなして備えられている。
【0038】
図5に示すように、一方のガイド部材102は、回動ユニット30に備えられた回動側のガイド部材(以下、可動側ガイド部材2aという)である。可動側ガイド部材2aは、配線部1bの一端103aを固定する。これに対し、他方のガイド部材102は、保持部材10に備えられて可動側ガイド部材2aに対して変動しない非回動側のガイド部材(以下、固定側ガイド部材2bという)である。換言すれば、固定側ガイド部材2bは保持部材10の一部に備えられ、保持部材10は固定側ガイド部材2bを兼ねて構成されている。固定側ガイド部材2bは、配線部1bの他端103bを固定する。
【0039】
図7には、可動側ガイド部材2aの概略的な構成を示す。
図2、
図5および
図7に示すように、可動側ガイド部材2aは、回動方向に沿った円弧状の部材であり、第2筒部材31の外周を覆う断熱材32の外周側に設けられている。
図4および
図5に示す例では、可動側ガイド部材2aは第2筒部材31のほぼ上半分に亘って配置されている。可動側ガイド部材2aは、保持面21aおよび保持壁22a,23aに沿って配線部1b(端的には、コイルスプリング103)を保持する。保持面21aは、螺旋状に巻回する金属線300の螺旋の曲率とほぼ同等の曲率で凹状に湾曲する湾曲面とされている。保持壁22aは、保持面21aの内周縁から起立し、保持壁23aは、保持面21aの外周縁から起立して保持壁22aと対向している。保持壁22a,23aの周面は、平坦面であるが、螺旋状に巻回する金属線300の螺旋の曲率とほぼ同等の曲率で凹状に湾曲していてもよい。可動側ガイド部材2aにおいて、保持面21aと保持壁22a,23aで囲まれた空間は、配線部1bの保持空間を規定する。保持空間の一部(固定側ガイド部材2bとの対向部であり、以下、開放部24aという)は、開放されている。
【0040】
可動側ガイド部材2aの両端には、第2筒部材31との固定部25a,26aが設けられている。固定部25aは、可動側ガイド部材2aの一端を第2筒部材31に固定し、固定部26aは、可動側ガイド部材2aの他端を第2筒部材31に固定している。また、固定部25aは、配線部1bの一端103aを固定している。配線部1bの他端103bは、開放部24aから可動側ガイド部材2aの外に延出している。
【0041】
保持面21a、保持壁22a,23aには、周方向の数箇所に所定間隔で複数のリブ27aが設けられている。リブ27aは、回動方向と交差する方向に、保持面21a、保持壁22a,23aからそれぞれ起立して連続する突起(条)である。リブ27aは、螺旋状に巻回する金属線300と係合可能とされている。したがって、回動ユニット30の回動時、リブ27aは金属線300と順次係合し、可動側ガイド部材2aにおける配線部1b(端的には、コイルスプリング103)の滑り止めとしての機能を果たす。
図4および
図5に示す例において、保持面21aは一部に開口28aを有しているが、開口28aは省略可能である。
【0042】
図8には、固定側ガイド部材2bの概略的な構成を示す。上述したように、本実施形態において、固定側ガイド部材2bは保持部材10の一部に備えられ、保持部材10は固定側ガイド部材2bを兼ねて構成されている。
図2、
図5および
図8に示すように、保持部材10は、回動方向に沿った円環状の部材である。
【0043】
固定側ガイド部材2bは、保持部材10の前面側のほぼ上半分に亘って設けられている。これにより、
図4および
図5に示すような基準状態において、固定側ガイド部材2bは、前方からみて可動側ガイド部材2aと一部がラップする。すなわち、回動方向への回動ユニット30の回動可能域において、固定側ガイド部材2bは、少なくとも一部が可動側ガイド部材2aと対向可能に配置されている。
図8に示す例において、固定側ガイド部材2bは、二つの構造体に分割されているが、連続する一つの構造体であってもよいし、三つ以上の構造体に分割されていてもよい。
【0044】
固定側ガイド部材2bは、保持面21bおよび保持壁22b,23bに沿って配線部1b(端的には、コイルスプリング103)を保持する。保持面21bは、平坦面であるが、螺旋状に巻回する金属線300の螺旋の曲率とほぼ同等の曲率で凹状に湾曲する湾曲面であってもよい。保持壁22bは、保持面21bの内周縁から起立し、保持壁23bは、保持面21bの外周縁から起立して保持壁22bと対向している。保持壁22b,23bの周面は、平坦面であるが、螺旋状に巻回する金属線300の螺旋の曲率とほぼ同等の曲率で凹状に湾曲していてもよい。固定側ガイド部材2bにおいて、保持面21bと保持壁22b,23bで囲まれた空間は、配線部1bの保持空間を規定する。保持空間の一部(可動側ガイド部材2aとの対向部であり、以下、開放部24bという)は、開放されている。
【0045】
固定側ガイド部材2bは、一端側に固定部25bを有している。固定部25bは、配線部1bの他端103bを固定している。配線部1bの一端103aは、開放部24bから固定側ガイド部材2bの外に延出している。
【0046】
保持面21b、保持壁22b,23bには、周方向の数箇所に所定間隔で複数のリブ26bが設けられている。リブ26bは、回動方向と交差する方向に、保持面21b、保持壁22b,23bからそれぞれ起立して連続する突起(条)である。リブ26bは、螺旋状に巻回する金属線300と係合可能とされている。したがって、回動ユニット30の回動時、リブ26bは金属線300と係合し、可動側ガイド部材2aにおける配線部1b(端的には、コイルスプリング103)の滑り止めとしての機能を果たす。
【0047】
このように本実施形態によれば、コイルスプリング103は、一端103aが可動側ガイド部材2aに固定され、他端103bが固定側ガイド部材2bに固定されている。したがって、回動ユニット30が回動すると、コイルスプリング103は、回動ユニット30の回動に応じて弾性変形する。このとき、配線部1bがガイド部材102(可動側ガイド部材2aおよび固定側ガイド部材2b)で保持されつつ、自在に屈曲および伸縮し、折返し部1cが回動方向に沿って変位する。
【0048】
配線部1bの屈曲や伸縮、折返し部1cの変位に応じて、リード線1aも配線部1bと同等の形態に変化し、折返し部1cの位置で折り返される。すなわち、回動ユニット30が回動した場合であっても、リード線1aは、配線部1b、つまり螺旋状に巻回された金属線300によって規定される内部空間に配線され、該内部空間から外れることがない。このため、回動ユニット30が回動した際、回動ユニット30と保持部材10との間でリード線1aの位置が不定となることを抑止できる。
【0049】
また、回動方向に沿って変位する折返し部1cの位置でリード線1aが折り返されるため、リード線1aの折返し位置、つまり屈曲位置を順次変動させることができる。したがって、リード線1aの屈曲位置を特定箇所に集中させずに済み、リード線1aが断線するような不具合を抑制できる。
【0050】
すなわち、回動ユニット30と保持部材10との間を繋ぐリード線1aが両者の間で回動ユニット30の回動時に暴れることを抑制し、リード線1aを所望の範囲内に所望の形態で配線することができる。このため、リード線1aの保護を適切に図ることができる。
【0051】
加えて、可動側ガイド部材2aにはリブ27aが設けられ、固定側ガイド部材2bにはリブ26bが設けられている。したがって、回動ユニット30が回動した際、配線部1bが屈曲や伸縮した場合であっても、リブ27a,26bを金属線300と順次係合させることができる。これにより、ガイド部材102(可動側ガイド部材2aおよび固定側ガイド部材2b)において配線部1bの滑り止めを図ることができ、配線部1bをガイド部材2a,2bで確実に保持できる。このため、例えば回動ユニット30が回動した際、コイルスプリング103のガイド部材2a,2bからの脱落を抑制できる。
【0052】
さらに、コイルスプリング103およびガイド部材2a,2bで配線保護構造100を構成することで、配線保護構造100を部品点数の少ない簡素な構成とすることができ、コストも抑制できる。
【0053】
上述したように、本実施形態の配線保護構造100では保護部材101をコイルスプリング103としているが、保護部材101はコイルスプリング103に限定されない。以下、保護部材101の別形態を第2の実施形
態として説明する。
【0054】
[第2の実施形態]
図9には、第2の実施形態に係る配線保護構造200を概略的に示す。第2の実施形態において、配線保護構造200以外の室内ユニットの基本的な構成は、第1の実施形態(
図1から
図8)と同様である。したがって、第1の実施形態と同一もしくは類似の構成については、図面上で同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
図9に示すように、本実施形態の配線保護構造200において、保護部材101はチェーン104とされている。詳細は後述するが、チェーン104の可動域が限定されているため、配線保護構造200では、ガイド部材102(
図7および
図8)に相当する部材は省略されている。ただし、配線保護構造200は、チェーン104を保持してその折返し位置を規定する所定の部材を備えていてもよい。
【0056】
チェーン104は、複数の要素部品(以下、コマという)400が連結されて構成されている。
図9に示す例では、これらのコマ400は同一形状とされている。ただし、形状が異なる数種類のコマを連結してチェーンが構成されていてもよい。本実施形態において、コマ400は樹脂製とするが、金属製などであってもよい。いずれであっても、コマ400は、後述するように内部空間(配線部1bの一部)に配線されたリード線1aを回動ユニット30の回動時に保護可能な強度(剛性)と耐久性を有する素材で形成される。
【0057】
図10および
図11には、コマ400の概略的な構成を示す。
図10は斜視図、
図11は平面図である。
図10および
図11に示すように、コマ400は、七つの板状の片部401~407を有して構成されている。
【0058】
第1片部401および第2片部402は、コマ400における回動方向に沿った内周面(曲面)をそれぞれ規定する。第1片部401と第2片部402とは、肉厚(後述する段差部401a,402aの高さ)分だけ異なる曲率の湾曲片とされている。第3片部403および第4片部404は、コマ400における回動方向に沿った外周面(曲面)をそれぞれ規定する。第3片部403と第4片部404とは、肉厚(後述する段差部403a,404aの高さ)分だけ異なる曲率の湾曲片とされている。第3片部403および第4片部404の曲率は、第1片部401および第2片部402の曲率よりも小さい。
【0059】
第1片部401と第3片部403は、一定の間隔で対向している。第1片部401は、第3片部403との対向間隔を肉厚分だけ狭める段差部401aを有している。第3片部403は、第1片部401との対向間隔を肉厚分だけ狭める段差部403aを有している。第2片部402と第4片部404は、第1片部401と第3片部403の対向間隔よりも狭い一定の間隔で対向している。第2片部402は、肉厚分だけ嵩上げして段差部401aと連続する段差部402aを有している。第4片部404は、肉厚分だけ嵩上げして段差部403aと連続する段差部404aを有している。第1片部401と第2片部402は、段差部401a,402aを介して連続している。第3片部403と第4片部404は、段差部403a,404aを介して連続している。
【0060】
第5片部405および第6片部406は、コマ400におけるY方向(軸AXの伸長方向)の一方側の面(平坦面)をそれぞれ規定する。第5片部405は、第1片部401と第3片部403の間に架け渡されている。第6片部406は、第2片部402と第4片部404の間に架け渡されている。第7片部407は、コマ400におけるY方向の他方側の面(平坦面)を規定する。第7片部407は、第1片部401と第2片部402との連続部分と、第3片部403と第4片部404との連続部分との間に架け渡されている。第5片部405および第6片部406と第7片部407とは、一定の間隔で対向する。
【0061】
第1片部401は貫通孔401bを有し、第3片部403は貫通孔401bと同一径の貫通孔403bを有している。
図11に示すように、貫通孔401b,403bは、中心同士を結ぶ直線L1が中心点Cを通るようにそれぞれ配置されている。中心点Cは、軸AX上の任意の点である。第2片部402は軸402bを有し、第4片部404は軸402bと同一径の軸404bを有している。
図11に示すように、軸402b,404bは、中心同士を結ぶ直線L2が中心点Cを通るようにそれぞれ配置されている。また、軸402b,404bは、貫通孔401b,403bに挿通されて回動可能に支持されるように、貫通孔401b,403bの孔径よりもわずかに小さな軸径とされている。軸402b,404bの長さ(高さ)は、各片部402,404のほぼ肉厚分であり、段差部401a,403aの段差(高さ)とほぼ一致している。
【0062】
第1片部401は、段差部401aとは反対側の端部の一隅に湾曲部401cを有している。第3片部403は、段差部403aとは反対側の端部の一隅に湾曲部403cを有している。湾曲部401c,403cは、同一の曲率で、貫通孔401b,403bの周縁に沿って湾曲している。第2片部402は、段差部402aとは反対側の端部に湾曲部402cを有している。第4片部404は、段差部404aとは反対側の端部に湾曲部404cを有している。湾曲部402c,404cは、同一の曲率で、軸402b,404bの周面に沿って湾曲している。
【0063】
このような構成をなすコマ400は、隣り合うもの同士が順に軸402bを貫通孔401bに挿通させるとともに、軸404bを貫通孔403bに挿通させて、
図12に示すように連結される。複数のコマ400が連結されることで、一連のチェーン104が構成される。チェーン104を構成するコマ400ごとに貫通孔401b,403bの中心同士を結ぶ各直線L1、および軸402b,404bの中心同士を結ぶ各直線L2は、すべて中心点Cで交差する。これにより、チェーン104は、回動方向に沿った円弧状に一端104aから他端104bまで連続して構成される。チェーン104の一端104aは第2筒部材31に固定され、他端104bは保持部材10に固定されている。固定方法は、ねじ止め、ブラケットなどの固定具を介した固定など任意の方法で構わない。
【0064】
複数のコマ400が連結されることで、各コマ400の七つの片部401~407で規定される内部空間が連続して形成される。チェーン104では、複数のコマ400が連結されて一連の内部空間を形成する部分、端的には連結された複数のコマ400が配線部1bに相当する。リード線1aは、配線部1b、つまり連結された複数のコマ400(換言すればチェーン104)の内部空間(配線空間)を通して配線される。
【0065】
図13および
図14には、コマ400の連結態様を示す。図示例では、一方のコマ400aの貫通孔403b(401b)に他方のコマ400bの軸404b(402b)が挿通されている。これにより、コマ400a,400bは、軸404b(402b)を中心として相対的に回動する。
図13は、連結された二つのコマ400a,400bの回動角度が最小である態様を概略的に示す図である。
図14は、連結された二つのコマ400a,400bの回動角度が最大である態様を概略的に示す図である。一例として、回動角度は、連結された二つのコマ400a,400bにおいて、一方のコマ400aに対して他方のコマ400bが傾斜する角度(
図14に示すような角度θ)である。
【0066】
すなわち、二つのコマ400a,400bは、
図13に示す回動角度最小位置と
図14に示す回動角度最大位置との間で相対的に回動する。換言すれば、二つのコマ400a,400bの回動可能域は、
図13に示す最小回動角度(θがほぼ0°)から
図14に示す最大可動角度(θがほぼ90°)の間とされている。湾曲部403c(401c)を有しているため、二つのコマ400a,400bは、コマ400aの端部403d(401d)とコマ400bの段差部404a(402a)とを干渉させずに回動可能域で回動する。また、湾曲部404c(402c)を有しているため、二つのコマ400a,400bは、コマ400aの段差部403a(401a)とコマ400bの第4片部404(第2片部402)とを干渉させずに回動可能域で回動する。
【0067】
図13に示す態様では、コマ400aの端部403d(401d)とコマ400bの段差部404a(402a)とが干渉し、それ以上のコマ400a,400bの回動を阻害する。端部403d(401d)は、第3片部403(第1片部401)において段差部403a(401a)とは反対側に位置し、湾曲部403c(401a)を有する端部である。
【0068】
これに対し、
図14に示す態様では、コマ400aの側部403e(401e)とコマ400bの段差部404a(402a)とが干渉し、それ以上のコマ400a,400bの回動を阻害する。側部403e(401e)は、第3片部403(第1片部401)の二つの側部のうち、湾曲部403c(401a)と連続する側部である。
【0069】
すなわち、端部403d(401d)、側部403e(401e)、および段差部404a(402a)は、隣り合うコマ400a,400bの相対的な回動を回動可能域に制限する規制部である。
【0070】
このように本実施形態によれば、連結されて隣り合う二つのコマ400a,400bが軸404b(402b)を中心として相対的に回動するため、コマ400a,400bの内部空間(配線部1bの一部)は、これらの回動可能域の範囲で形態が変化する。すなわち、複数のコマ400が連結されて構成されるチェーン104の配線部1bは、隣り合うコマ400同士の回動可能域が順に連続する範囲で形態が変化する。このため、回動ユニット30が回動すると、チェーン104の折返し部1cが回動方向に沿って変位する。換言すれば、配線部1bの折返し位置が回動方向に沿って変化する。このとき、配線部1bの折返し位置、つまり折返し部1cの変位に対応して、リード線1aも配線部1b(端的には、チェーン104)と同等の形態に変化し、折返し部1cの位置で折り返される。
【0071】
したがって、回動ユニット30が回動した場合であっても、リード線1aは配線部1b、つまり連結された複数のコマ400の内部空間に配線されるため、該内部空間から外れることがない。このため、回動ユニット30が回動した際、回動ユニット30と保持部材10との間でリード線1aの位置が不定となることを抑止できる。
【0072】
その際、配線部1bは、隣り合うコマ400同士の回動可能域が順に連続する範囲内で変形可能とされている。したがって、配線部1b、端的にはチェーン104の変形可能域をかかる範囲内に制限できる。これにより、リード線1aの暴れ(反発)をチェーン104の変形可能域内に止めることができる。すなわち、回動ユニット30と保持部材10との間を繋ぐリード線1aが両者の間で回動ユニット30の回動時に暴れることを抑制し、リード線1aを所望の範囲内に所望の形態で配線することができる。このため、リード線1aの保護を適切に図ることができる。
【0073】
加えて、チェーン104は、同一形状の複数のコマ400を連結させて構成されている。このため、例えば異なる数種類のコマを連結してチェーンが構成されている場合と比べ、金型費用などを低減させることができ、チェーン104の製造コストも抑制できる。
【0074】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1…室内ユニット、1a…リード線、1b…配線部、1c…折返し部、2…筐体、2a…ガイド部材(可動側ガイド部材)、2b…ガイド部材(固定側ガイド部材)、3…吹出口、4…吹出口ユニット、5…ルーバー、6…熱交換器、8…制御部、9…ファン、10…保持部材、21a,21b…保持面、22a,22b,23a,23b…保持壁、24a,24b…開放部、25a,25b,26a…固定部、26b,27a…リブ、28a…開口、30…回動ユニット、31…第2筒部材、32…断熱材、33…ルーバー駆動機構、34…モータ、40…吹出口カバー、51,52,53…風向板、90…ファンモータ、91…羽根、92…第1筒部材、94…整流板、100,200…配線保護構造、101…保護部材、102…ガイド部材、103…コイルスプリング(つるまきばね)、104…チェーン、300…金属線、400,400a,400b…コマ、AD…風路、AX…軸、C…中心点、L1,L2…中心同士を結ぶ直線、θ…傾斜角度。