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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】改変細胞外エンベロープウイルス
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20250127BHJP
   A61K 35/768 20150101ALI20250127BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20250127BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250127BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250127BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20250127BHJP
   C12N 15/39 20060101ALN20250127BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
A61K35/768
A61K38/19
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
C12N15/12
C12N15/39
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022522646
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 US2020056107
(87)【国際公開番号】W WO2021076982
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】62/916,035
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521244488
【氏名又は名称】カリヴィル イムノセラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ソーン, スティーブン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】バード, ダニエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ミンルイ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】JOURNAL OF VIROLOGY,1993年,Vol.67, No.6,pp.3319-3325
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/01
A61K 35/768
A61K 38/19
A61K 39/395
A61P 35/00
C12N 15/12
C12N 15/39
CAplus/REGISTRY(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH5において正に荷電するアミノ酸残基にある、少なくとも2つの変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、腫瘍溶解性ウイルスであって、前記A34Rタンパク質が、野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の中の配列と比較して変異しており、前記少なくとも2つの変異が、野生型ワクシニアウイルスA34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119およびLys151に対応する位置にあり、それぞれ、Lys119GluおよびLys151Gluである、腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項2】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、前記少なくとも2つの変異を含まないがその他の点では同一の腫瘍溶解性ウイルスと比較して、細胞内成熟ウイルス形態よりも多量の細胞外エンベロープウイルス形態を生成させる、請求項1に記載の腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項3】
外来性核酸をさらに含み、前記外来性核酸が、CXCR4、CCR2、ヒアルロニダーゼ、SOCS3、PH-20、HMGB1、PIAS3、IL15、IL15-Rα、LIGHT、ITAC、フラクタルカイン、CCL5、N1L、免疫チェックポイントモジュレーター、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つをコードし得る、請求項1または請求項2に記載の腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項4】
ウイルス遺伝子A52Rの変異または欠失をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項5】
ポックスウイルスである、請求項1~のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項6】
前記ポックスウイルスが、ワクシニアウイルスである、請求項に記載の腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項7】
癌の処置のための、請求項1~のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性ウイルスを含む組成物。
【請求項8】
治療有効量の前記組成物が対象に投与されるものである、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
腫瘍内注入、静脈内注入、またはそれらの組み合わせにより投与されるものである、請求項またはに記載の組成物。
【請求項10】
さらなる療法と組み合わせて投与されるものであり、前記さらなる療法が、化学療法、放射線療法、追加のウイルスによる腫瘍溶解性ウイルス療法、免疫調節タンパク質による処置、CAR T細胞療法、抗癌剤、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記さらなる療法が、抗CD33抗体またはその抗原結合フラグメント、抗CD11b抗体またはその抗原結合フラグメント、COX2阻害剤、サイトカイン、ケモカイン、抗CTLA4抗体またはその抗原結合フラグメント、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、およびTLRアゴニストからなる群から選択される前記免疫調節剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2019年10月16日に出願された米国仮出願第62/916,035号(参照により、その全体が本明細書に援用される)に対する優先権を主張する。
参照による援用
【0002】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、特許出願、およびNCBIアクセッション番号は、個々の刊行物、特許、または特許出願が、それぞれ具体的および個別に参照により援用されるべきものと示されている場合、およびその全体が記載されている場合と同程度に、参照により本明細書に援用される。本明細書に記載されている用語と、援用される参考文献で規定されている用語に矛盾がある場合、本開示の定義が優先する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
要旨
一実施形態は、少なくとも2つの変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを提供し、ここで、前記少なくとも2つの変異は、野生型ワクシニアウイルスA43Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119およびLys151に対応する位置にある。いくつかの実施形態において、前記位置Lys119に対応する位置にある前記変異は、Lys119Gluである。いくつかの実施形態において、前記位置Lys151に対応する位置にある前記変異は、Lys151Gluである。いくつかの実施形態において、前記野生型ワクシニアウイルスA43Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119およびLys151に対応する位置にある前記少なくとも2つの変異は、それぞれ、Lys119GluおよびLys151Gluである。
【0004】
一実施形態は、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の中のpH5において正に荷電するアミノ酸残基にある、少なくとも2つの天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを提供する。
【0005】
別の実施形態は、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置110位置にない少なくとも2つの天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを提供する。
【0006】
別の実施形態は、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の中のアスパラギン酸残基の位置にない少なくとも2つの天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを提供する。
【0007】
別の実施形態は、独立して、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の中のアラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリン残基にある、少なくとも2つの天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを提供する。
【0008】
別の実施形態は、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys151以外の位置のリジン残基における天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを提供する。
【0009】
別の実施形態は、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119における天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを提供する。
【0010】
別の実施形態は、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の中のpH5において正に荷電するアミノ酸残基にある、少なくとも2つの天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを提供し、ここで、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、前記少なくとも2つの天然に存在しない変異を含まないがその他の点では同一の腫瘍溶解性ウイルスと比較して、ウイルスプラーク形成アッセイにおいて、増大した数のコメットテイル型プラークを生成させる。
【0011】
別の実施形態は、少なくとも2つの天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを提供し、ここで、前記天然に存在しない変異のいずれかが前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の中の位置110にある場合、コードされているアミノ酸は、アスパラギン残基ではない。
【0012】
別の実施形態は、腫瘍溶解性ポックスウイルスの野生型株と比較して、中和抗体に対して増大した耐性を示す改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを提供し、ここで、前記増大した耐性は、抗L1 NR-45114抗体または抗VIG抗体による処理に続くウイルスプラークアッセイにおける、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスまたは前記野生型株によって生成されるプラークの数によって測定され、またここで、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、少なくとも約55,000プラーク形成単位/mLを生成させる。
【0013】
別の実施形態は、中和抗体による処理に続くウイルスプラークアッセイにおいて、少なくとも約55,000プラーク形成単位/mLを生成させる改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを提供する。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記中和抗体は、抗L1 NR-45114抗体または抗VIG抗体である。いくつかの実施形態において、前記A34Rタンパク質またはそのフラグメントは、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys151における変異をさらに含む。いくつかの実施形態において、pH5において正に荷電する前記アミノ酸残基は、リジン残基である。いくつかの実施形態において、前記核酸は前記ウイルス遺伝子VACWR157の中の前記コード配列に対して、少なくとも約80%相同であるヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含む。いくつかの実施形態において、前記核酸は、配列番号3として規定されるヌクレオチド配列に対して、少なくとも約80%相同であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、前記2つの天然に存在しない変異の少なくとも1つは、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119にある。いくつかの実施形態において、前記天然に存在しない変異は、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119にある。いくつかの実施形態において、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119における前記変異は、Lys119Gluである。いくつかの実施形態において、前記2つの天然に存在しない変異の少なくとも1つは、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys151にある。いくつかの実施形態において、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys151における前記変異は、Lys151Gluである。
【0015】
一実施形態は、変異Lys119GluおよびLys151Gluを含むA34Rタンパク質を発現する改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを提供する。
【0016】
いくつかの実施形態において、配列番号3の位置305-307は、ヌクレオチドGAAまたはGAGを含む。いくつかの実施形態において、配列番号3の位置451-453は、ヌクレオチドGAAまたはGAGを含む。いくつかの実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、前記少なくとも2つの天然に存在しない変異を含まないがその他の点では同一の腫瘍溶解性ウイルスと比較して、細胞内成熟ウイルス形態よりも多量の細胞外エンベロープウイルス形態を生成させる。いくつかの実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、前記天然に存在しない変異を含まないがその他の点では同一の腫瘍溶解性ウイルスと比較して、細胞内成熟ウイルス形態よりも大量の細胞外エンベロープウイルス形態を生成させる。いくつかの実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、治療的タンパク質または診断的タンパク質の少なくとも1つをコードする外来性核酸をさらにコードする。いくつかの実施形態において、前記外来性核酸は、ケモカイン受容体、膜結合タンパク質、ヒアルロナンを分解する能力がある微生物タンパク質、微生物タンパク質、SOCS3、PH-20、HMGB1、PIAS3、IL15、IL15-Rα、LIGHT、ITAC、フラクタルカイン、CCL5、N1L、免疫チェックポイントモジュレーター、代謝調節タンパク質、またはそれらの任意の組み合わせ、例えば、上記のものの任意の組み合わせ(例えば、代謝調節タンパク質とサイトカイン)を含む融合タンパク質の少なくとも1つをコードし得る。いくつかの実施形態において、ケモカイン受容体をコードする前記外来性核酸、ここで、前記ケモカイン受容体は、CXCR4およびCCR2の少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、前記膜結合タンパク質をコードする前記外来性核酸。いくつかの実施形態において、前記膜結合タンパク質は、膜結合型ヒアルロニダーゼ(membraned associated ヒアルロニダーゼ)を含む。いくつかの実施形態において、前記膜結合型ヒアルロニダーゼは、PH-20を含む。いくつかの実施形態において、前記PH-20は、GPIアンカー型である。いくつかの実施形態において、ヒアルロナンを分解する能力がある前記微生物タンパク質をコードする前記外来性核酸、ここで、前記微生物タンパク質は、分泌型ヒアルロニダーゼを含む。いくつかの実施形態において、前記分泌型ヒアルロニダーゼは、HysA、lin、sko、およびrv、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、前記微生物タンパク質をコードする前記外来性核酸。いくつかの実施形態において、前記微生物タンパク質は、HysAを含む。いくつかの実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、前記ウイルスの前記ゲノム中の改変をさらに含み、ここで、前記改変は、前記B5R遺伝子の変異または欠失を含む。いくつかの実施形態において、前記ウイルスの前記ゲノム中の前記改変、ここで、前記改変は、前記B5R遺伝子のSCR領域中の変異または欠失を含み、ここで、前記SCR領域は、SCR1、SCR3、SCR4、またはそれらの任意の組み合わせを含み、またここで、前記SCR領域は、SCR2を含まない。いくつかの実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、チミジンキナーゼ(TK)、B8R、B18R、B15R、K7R、C6L、K4L、F8L、F9L、F10L、F17R、E1L、E4L、E6R、E8R、E10R、E11L、O2L、I1L、I2L、I3L、I5L、I7L、I8R、G1L、G3L、G4L、G5.5R、G7L、G9R、L1R、L3L、L4R、L5R、J1R、J4R、J6R、H1L、H2R、H3L、H4L、H5R、H6R、D1R、D2L、D3R、D6R、D7R、D8L、D11L、D12L、D13L、A2.5L、A3L、A4L、A5R、A6L、A7L、A9L、A10L、A13L、A14L、A15L、A16L、A17L、A18R、A21L、A24R、A25L、A26L、A27L、A28L、A29L、A30L、A31R、A34R、A42R、A45R、A46R、A52R、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるウイルス遺伝子の変異または欠失をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、ウイルス遺伝子A52Rの前記変異または欠失を含む。いくつかの実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、(i)ケモカイン受容体をコードする前記外来性核酸(ここで、前記ケモカイン受容体は、CXCR4およびCCR2の少なくとも1つを含む);(ii)PIAS3をコードする前記外来性核酸;(iii)前記チミジンキナーゼ遺伝子の変異または欠失;(iv)前記A52R遺伝子の前記変異または欠失を含む。いくつかの実施形態において、前記ウイルスは、全身送達に適している。いくつかの実施形態において、前記ウイルスは、免疫回避の能力がある。いくつかの実施形態において、前記全身送達は、経口投与、非経口投与、鼻腔内投与、舌下投与、直腸投与、経皮投与、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、前記非経口投与は、静脈内注入を含む。いくつかの実施形態において、前記ウイルスは、腫瘍内送達に適している。いくつかの実施形態において、前記ポックスウイルスは、ワクシニアウイルスである。
【0017】
一実施形態は、(i)腫瘍溶解性ポックスウイルスDNAバックボーンベクターを得ること(前記腫瘍溶解性ポックスウイルスDNAバックボーンベクターは、先行する請求項のいずれか1つに記載の1つまたはそれを超える改変を含む);(ii)前記腫瘍溶解性ウイルスDNAベクターをさらに改変して操作されたDNAベクターを生成させること;(iii)哺乳動物細胞を前記操作されたDNAベクターでトランスフェクトすること;(iv)前記哺乳動物細胞を、ウイルス複製に適した条件下で培養すること;および(v)前記ウイルス粒子を回収すること、を含む、腫瘍溶解性ポックスウイルスを操作するためのプロセスを提供する。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記哺乳動物細胞は、HeLa細胞、293細胞、A549細胞、またはベロ細胞を含む。
【0019】
一実施形態は、前記腫瘍溶解性ポックスウイルス、容器;および病的血管新生に関連する障害を処置するために、前記腫瘍溶解性ウイルスを対象に投与するための指示、を含むキットを提供する。
【0020】
一実施形態は、腫瘍を処置する方法を提供し、前記方法は、治療有効量の前記腫瘍溶解性ポックスウイルス(oncolytic poxvirus according)を対象に投与することを含む。
【0021】
一実施形態は、腫瘍を処置する方法を提供し、前記方法は、前記野生型A34タンパク質(配列番号4)の位置119および151における変異を含むA34Rタンパク質を発現する改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを感染させた患者由来の白血球細胞を含む組成物を対象に投与することを含み、ここで、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、腫瘍微小環境においてウイルス粒子の集団を生成させる。いくつかの実施形態において、前記患者由来の白血球細胞は、マクロファージを含む。いくつかの実施形態において、前記患者由来の白血球細胞は、腫瘍標的化T細胞を含む。いくつかの実施形態において、前記ウイルス粒子の集団の少なくとも約10%~少なくとも約90%は、ウイルスプラークアッセイで測定したとき、EEV粒子である。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記腫瘍微小環境から前記EEV粒子を回収し、前記EEV粒子を前記対象に静脈内投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、改変腫瘍溶解性ワクシニアウイルスである。
【0022】
一実施形態は、宿主細胞の培養物に、少なくとも約10%~少なくとも約90%のEEV粒子を含む改変腫瘍溶解性ポックスウイルスの集団を感染させることを含むプロセスを提供し、ここで、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、前記野生型A34タンパク質(配列番号4)の位置119および151における変異を含むA34Rタンパク質を発現する。いくつかの実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、改変腫瘍溶解性ワクシニアウイルスである。
【0023】
一実施形態は、癌を処置する方法を提供し、前記方法は、少なくとも2つの変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む改変腫瘍溶解性ウイルスを患者に投与することを含み、ここで、前記少なくとも2つの変異は、野生型ワクシニアウイルスA43Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119およびLys151に対応する位置にある。いくつかの実施形態において、野生型ワクシニアウイルスA43Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119およびLys151に対応する位置にある前記少なくとも2つの変異は、それぞれ、Lys119GluおよびLys151Gluである。
【0024】
一実施形態は、腫瘍を処置する方法を提供し、前記方法は、少なくとも2つの変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む改変腫瘍溶解性ウイルスを患者に投与することを含み、ここで、前記少なくとも2つの変異は、野生型ワクシニアウイルスA43Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119およびLys151に対応する位置にある。いくつかの実施形態において、野生型ワクシニアウイルスA43Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119およびLys151に対応する位置にある前記少なくとも2つの変異は、それぞれ、Lys119GluおよびLys151Gluである。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記投与は、腫瘍内注入、静脈内注入、またはそれらの組み合わせによる。いくつかの実施形態において、前記投与は、腫瘍内注入、静脈内注入、またはそれらの組み合わせによる。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記方法は、前記腫瘍溶解性ポックスウイルスと組み合わせて、さらなる療法を施すことをさらに含み、ここで、前記さらなる療法は、化学療法、放射線療法、追加のウイルスによる腫瘍溶解性ウイルス療法、免疫調節タンパク質による処置、CAR T細胞療法、抗癌剤、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記さらなる療法は、抗CD33抗体またはその抗原結合フラグメント、抗CD11b抗体またはその抗原結合フラグメント、COX2阻害剤、サイトカイン、ケモカイン、抗CTLA4抗体またはその抗原結合フラグメント、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、およびTLRアゴニストからなる群から選択される前記免疫調節剤を含む。
【0028】
図面の簡単な説明
本開示の新たな特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明を参照することによって、本開示の特徴および利点のより一層の理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、組換えウイルスライブラリーを作成するためのDNAを生成するための、例示的なアセンブリースキームを示す。
【0030】
図2図2は、異なるワクシニアウイルス株によって形成されたウイルスプラークコメットテイルの比較を示す。
【0031】
図3-1】図3A~3Bは、異なるワクシニアウイルス株を使用して実施された中和アッセイの結果を示す(図3Aは、抗L1 NR-45114抗体による処置の後の結果を示し、図3Bは、抗L1R抗体および抗VIG抗体による処置の後の結果を示す)。
図3-2】同上。
【0032】
図4図4は、異なるワクシニアウイルス株による感染の後の、細胞生存率の結果を示す(上のパネル:MC38細胞;下のパネル:HCT116細胞)。
【0033】
図5図5は、異なるワクシニアウイルス株についての、癌細胞におけるウイルス複製アッセイの結果を示す(上のパネル:HCT116細胞;下のパネル:MC38細胞)。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
本明細書において、本開示の好ましい実施形態が示され、および記載されているが、そのような実施形態は例示の目的で示されているに過ぎないことが、当業者には明らかであろう。多数の変形、変更、および弛緩が、本開示を逸脱することなく、当業者によって直ちに見いだされるであろう。本開示の実施において、本明細書に記載されている本開示の実施形態に対する種々の代替が採用され得ることを理解すべきである。以下の特許請求の範囲が本開示の範囲を規定し、その特許請求の範囲内の方法および構造ならびにそれらの等価物が、特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
ある特定の定義
【0035】
本明細書で使用されている用語は、特定のケースを説明することを目的としているに過ぎず、限定を意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、明らかに文脈に反しない限り、複数形も含み得る。さらに、用語「含む(contains)」、「含む(containing)」、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、またはそれらの変形が、詳細な説明および/または特許請求の範囲のいずれかで使用される場合、これらの用語は、用語「含む(comprising)」と同様な様式で包含的であることが意図されている。
【0036】
用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、当業者によって決定される特定の値について許容できる誤差範囲内であることを意味し得、その値がどのようにして測定または決定されるか(例えば、測定システムの制約)に部分的に依存するであろう。例えば、「約(about)」は、与えられた値のプラクティスに従って、1標準偏差の範囲内、または1標準偏差超の範囲内を意味し得る。本出願および特許請求の範囲において特定の値が説明されている場合、別段の記載がない限り、用語「約(about)」は、その特定の値について許容される誤差範囲、例えば、用語「約(about)」によって修飾されている値の±10%を意味するとみなすべきである。
【0037】
用語「個体」、「患者」、または「対象」は、互換的に使用され得る。これらの用語は、いずれも、医療従事者(例えば、医師、正看護師、診療看護師、医療補助者、用務員、またはホスピス従業員)の監視(例えば、絶え間ない、または断続的な)によって特徴付けられる状況を必要とせず、またはそのような状況に限定されない。いくつかの実施形態において、患者、対象、または個体は、医療従事者の監視下にあってもよい。
【0038】
特定のウイルスに関して、用語「異種核酸配列」、もしくは「外来性核酸配列」、または「導入遺伝子」は、本明細書で使用される場合、その特定のウイルスとは異なる起源に由来する核酸配列を指し得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「変異」は、欠失、異種核酸の挿入、逆位、または置換を指し得る(当該技術分野で一般に理解されているオープンリーディングフレームアブレーティング変異が含まれる)。
【0040】
用語「遺伝子」は、本明細書で使用される場合、個々のタンパク質またはRNAをコードする核酸のセグメント(「コード配列」または「コード領域」とも呼ばれる)を(必要に応じて、前記コード配列の上流または下流に位置し得る関連する制御領域(例えば、プロモーター、オペレーター、ターミネーターなど)と合わせて)指し得る。
【0041】
用語「変異ウイルス」および「改変ウイルス」は、本明細書において互換的に使用される場合、ゲノム中に1つまたはそれを超える変異(それらに限定されないが、欠失、異種核酸の挿入、逆位、置換、またはそれらの組み合わせを含む)を含むウイルスを指し得る。
【0042】
用語「天然に存在する」は、本明細書においてウイルスに関連して使用される場合、前記ウイルスが天然に見いだすことができること、すなわち、そのウイルスが、天然の供給源から単離することができ、また意図的に改変されていないこと(例えば、野生型ウイルス)を指し得る。
【0043】
用語「天然に存在しない」は、本明細書においてウイルス核酸配列における、またはウイルスタンパク質のアミノ酸配列における1つまたはそれを超える変異に関連して使用される場合、前記1つまたはそれを超える変異を含むウイルス株が、天然に見いだすことができないこと、すなわち、そのウイルス株が、天然の供給源から単離することができず、その代わりに、意図的に改変されていることを指し得る。
【0044】
本明細書において言及される用語「阻害」、「低減させる」、もしくは「予防」、またはこれらの用語の任意の変形は、所望の結果を実現するための、任意の測定可能な減少、または完全な阻害を含み得る。
【0045】
「プロモーター」は、本明細書で使用される場合、制御配列(転写の開始および速度を制御する核酸配列の領域である)であり得る。ある特定の実施形態において、プロモーターは、調節タンパク質および分子がRNAポリメラーゼおよび他の転写因子を結合し得る遺伝因子を含み得る。用語「作動可能に配置された」、「作動可能に連結された」、「制御下」、および「転写調節下」は、プロモーターが、核酸配列に関して、その配列の転写開始および/または発現を制御するための、正しい機能的位置および/または方向にあることを意味し得る。ある特定の実施形態において、プロモーターは、「エンハンサー」(核酸配列の転写活性化に関与するシス作用性制御配列を指す)と共に使用してもよく、「エンハンサー」と共に使用しなくてもよい。
【0046】
用語「相同性」は、本明細書で使用される場合、2つまたはそれを超えるヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の、最適な比較の目的でその配列をアライン(例えば、第1の配列の配列中にギャップが挿入され得る)することによって決定され得る「相同性」または「パーセント相同性」の計算値であり得る。次いで、その対応する位置のヌクレオチドが比較され得、その2つの配列の間のパーセント同一性は、それらの配列に共通する、一致する位置の数の関数であり得る(すなわち、%相同性=一致する位置の数/位置の総数×100)。例えば、第1の配列におけるある位置は、第2の配列における対応する位置と同じヌクレオチドによって占められていることがあり得、その場合、これらの分子は、その位置において一致している。2つの配列の間のパーセント相同性は、その2つの配列の最適なアラインメントのために挿入する必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮した、それらの配列に共通する一致する位置の数の関数であり得る。いくつかの実施形態において、比較の目的でアラインされた配列の長さは、参照配列の長さの、少なくとも約30%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または95%であり得る。BLAST(登録商標)サーチによって、2つの配列の間の相同性が決定され得る。相同性は、2つの配列の全長の間、または2つの配列の全長の部分の間であり得る。前記2つの配列は、遺伝子、ヌクレオチド配列、タンパク質配列、ペプチド配列、アミノ酸配列、またはそれらのフラグメントであり得る。前記2つの配列の実際の比較は、よく知られている方法によって、例えば、数学的アルゴリズムを使用して実現され得る。このような数学的アルゴリズムの非限定的な例は、Karlin,S.およびAltschul,S.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90-5873-5877(1993)に記載されているであろう。このようなアルゴリズムは、Altschul,S.ら、Nucleic Acids Res.,25:3389-3402(1997)に記載されているように、NBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)の中に組み込まれ得る。BLASTおよびGapped BLASTを利用する場合、各プログラム(例えば、NBLAST)の任意の適切なパラメーターが使用され得る。例えば、配列比較のためのパラメーターは、スコア=100、ワード長=12に設定してもよく、変更してもよい(例えば、W=5またはW=20)。他の例としては、MyersおよびMillerのアルゴリズムCABIOS(1989)、ADVANCE、ADAM、BLAT、およびFASTAがあげられる。別の実施形態において、2つのアミノ酸配列の間のパーセント同一性は、例えば、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム(Accelrys、Cambridge、UK)を使用して求めることができる。
【0047】
用語「対象」は、それらに限定されないが、霊長類(例えば、ヒト)、cow、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、rat、またはマウスを含む、動物を指し得る。用語「対象」および「患者」は、本明細書において、例えば、哺乳動物対象(例えばヒト対象)について、互換的に使用される。
【0048】
用語「処置する」、「処置する」、および「処置」は、障害、疾患、または症状;または前記障害、疾患、または症状に関連する1つまたはそれを超える徴候を軽減または消失させること;または前記障害、疾患、または症状自体の原因(単数または複数)を軽減または根絶させることを含むことが意図され得る。処置の望ましい効果は、それらに限定されないが、疾患の発症または再発を予防すること、徴候を軽減させること、前記疾患の直接的または間接的な病理学的結果を減少させること、転移を予防すること、疾患の進行速度を低下させること、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後の改善を含み得る。
【0049】
用語「治療有効量」は、投与した場合に、処置中の障害、疾患、または症状の1つまたはそれを超える徴候の発生を予防するために、またはある程度軽減させるために十分であり得る化合物の量を指し得る。用語「治療有効量」は、また、研究者、獣医、医師、または臨床家に求められている、細胞、組織、系、動物、またはヒトの生物学的または医学的応答を引き出すために十分な化合物の量も指し得る。
【0050】
用語「薬学的に許容される担体」、「薬学的に許容される賦形剤」、「生理学的に許容される担体」、または「生理学的に許容される賦形剤」は、薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクル(例えば、液体または固体フィラー、希釈剤、賦形剤、溶媒、またはカプセル化材料など)を指し得る。あるコンポーネントは、医薬製剤の他の成分と適合性であるという点で、「薬学的に許容される」であり得る。また、合理的なベネフィット/リスク比に見合う毒性、刺激性、アレルギー反応、免疫原性、または他の問題もしくは併発障害を超えることなく、ヒトおよび動物の組織または器官と接触させて使用するのにも好適であり得る。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition;Lippincott Williams&Wilkins:Philadelphia,PA,2005;Handbook of Pharmaceutical Excipients,5th Edition;Roweら編、The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2005;およびHandbook of Pharmaceutical Additives,3rd Edition;AshおよびAsh編、Gower Publishing Company:2007;Pharmaceutical Preformulation and Formulation,Gibson編、CRC Press LLC:Boca Raton,FL,2004)を参照のこと。
【0051】
用語「医薬組成物」は、本明細書に開示されている化合物と、他の化学成分(例えば希釈剤または担体)との混合物を指し得る。前記医薬組成物は、前記化合物の生物への投与を容易にし得る。化合物を投与する多数の技術(それらに限定されないが、経口、注射、エアロゾル、非経口、および局所投与が含まれる)が、当該技術分野に存在する。医薬組成物は、また、化合物を、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの無機酸または有機酸と反応させることによって得ることもできる。
【0052】
「抗癌剤」は、本明細書で使用される場合、例えば、癌細胞を死滅させることによって(癌細胞におけるアポトーシスを含む)、癌細胞の増殖速度を低下させることによって、転移の頻度または数を低減させることによって、腫瘍サイズを縮小させることによって、腫瘍増殖を阻害することによって、腫瘍または癌細胞への血液供給を減少させることによって、腫瘍または癌細胞に対する免疫応答を促進することによって、癌の進行を阻止または阻害することによって、または癌を有する対象の寿命を延ばすことによって、対象における癌に対してネガティブな影響を与えることが可能な薬剤または療法を指し得る。抗癌剤の非限定的な例としては、生物学的薬剤(生物学的療法)、化学療法剤、および放射線療法剤があげられ得る。
【0053】
用語「腫瘍溶解性」は、本明細書で使用される場合、癌または腫瘍細胞を、薬剤(例えば、腫瘍溶解性ウイルスなど、腫瘍溶解性ポックスウイルスなど、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスなど)によって、例えば、前記細胞の直接的溶解によって、前記細胞に対する免疫応答を刺激すること、アポトーシス、毒性タンパク質の発現、オートファジー、およびタンパク質合成の停止、抗腫瘍免疫の誘導、またはそれらの任意の組み合わせによって、死滅させることを指し得る。薬剤(例えば、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスなど)を感染させた前記癌または腫瘍細胞の直接的溶解は、前記細胞内において前記ウイルスが複製した結果であり得る。ある特定の例において、用語「腫瘍溶解性」は、癌または腫瘍細胞を、前記細胞を溶解させずに死滅させることを指し得る。
【0054】
用語「腫瘍溶解性ウイルス」は、本明細書で使用される場合、腫瘍細胞に選択的に感染して死滅させるウイルスを指し得る。ある特定の非限定的な状況下で、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞を選択的に死滅させることだけではなく、宿主の抗腫瘍免疫応答を刺激することにも依存する二重のメカニズムによって、抗腫瘍応答を誘導し得ることが理解される。
【0055】
いくつかの実施形態において、前記腫瘍溶解性ウイルスは、それらに限定されないが、(i)癌細胞内で選択的に自然に複製し、かつヒトにおいて非病原性であるウイルス(多くの場合、生得的な抗ウイルスシグナリング経路に対する感受性が高いこと、または発癌シグナリング経路に対する依存性による);および(ii)使用のために遺伝的に操作されたウイルス、を含み得る。いくつかの実施形態において、腫瘍溶解性ウイルスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)を含み得る。いくつかの実施形態において、腫瘍溶解性ウイルスは、ポックスウイルスを含み得る。いくつかの実施形態において、ポックスウイルスは、レポリポックスウイルスまたはワクシニアウイルスを含み得る。いくつかの実施形態において、ワクシニアウイルスは、ワクシニアウイルスのAnkara株、Western Reserve株(WR)、またはCopenhagen株を含み得る。いくつかの実施形態において、ワクシニアウイルスは、Lister、Wyeth、New York City Board of Health、Tian Tan、Tash Kent、またはUSSR株を含み得る。いくつかの実施形態において、レポリポックスウイルスは、ミクソーマウイルスを含み得る。いくつかの実施形態において、腫瘍溶解性ウイルスは、改変され得る。
【0056】
用語「改変腫瘍溶解性ウイルス」は、本明細書で使用される場合、その構成要素に改変、例えば、それらに限定されないが、(例えばウイルス遺伝子の変異または欠失、外来性核酸の導入、ウイルス核酸またはウイルスタンパク質の化学修飾、およびウイルスカプシドへの外来性タンパク質または改変ウイルスタンパク質の導入のような)前記ウイルスの天然ゲノム(「バックボーン」)における改変を含む、腫瘍溶解性ウイルスを指し得る。一般に、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞に対する治療効果を改善するために、改変され(「操作され」としても知られる)得る。ある特定の実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ウイルスは、改変ポックスウイルスであり得る。ある特定の実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ウイルスは、改変ポックスウイルスであり得る。
【0057】
用語「全身送達」と「全身投与」は、本明細書において互換的に使用され、いくつかのケースにおいて、循環系の中への、医療用薬物、腫瘍溶解性ウイルス、または他の物質の投与経路を指し得る。前記全身投与は、経口投与、非経口投与、鼻腔内投与、舌下投与、直腸投与、経皮投与、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
細胞外エンベロープウイルス形態の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス
【0058】
ポックスウイルス(ワクシニアウイルスなど)は、IMV(細胞内成熟ウイルス(Intracellular Mature Virus);これは、抗原性は高いが安定であり、ポックスウイルスの宿主間伝播のために重要であり得る)、およびEEV(細胞外エンベロープウイルス(Extracellular Enveloped Virus);これは、宿主の外部では不安定であり得るが、このウイルスを包み隠す宿主細胞由来のアウターエンベロープのおかげで、宿主内における伝播の増進が可能であり得る;そうであるから、このEEV形態は、前記ワクシニアウイルスの(例えば、宿主内における前記腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの)全身的伝播のために有用であり得る)を含む、いくつかの形態で存在し得る。
【0059】
異なるワクシニア株は、感受性細胞に感染した後、IMV粒子とEEV粒子を異なる比率で産生することが知られており、Western Reserve(WR)株は、低EEV生成株であり、ワクシニアのInternational Health Department(IHD)-J株(IHD-J)は、高EEV産生株である。IHD-Jに存在するが、WRには存在しないワクシニア遺伝子の点変異の一例は、ワクシニアウイルス遺伝子VACWR157によってコードされている、前記A34Rタンパク質(K151E)に存在する。この変異を含む、WRに由来する株(WI株、これは、IHD-J由来の前記A34R遺伝子が、前記WR A34R遺伝子の部位に組換えられたWRウイルスである)は、EEV産生が増加することが示されている(Blasco,R.ら、1993、J Virol.Jun;67(6):3319-25を参照のこと)。
【0060】
本開示のいくつかの実施形態において、前記ウイルスの細胞外エンベロープウイルス(EEV)形態の細胞内成熟ウイルス(IMV)形態に対する比率を増大させる改変(ウイルス糖タンパク質(例えば、A34Rタンパク質;UniProt Accession No.P24761に示されている野生型配列;配列番号4)における天然に存在しない変異など)を含み得る改変腫瘍溶解性ポックスウイルス(例えば、改変腫瘍溶解性ワクシニアウイルス株)が提供される。例えば、前記ウイルス糖タンパク質(例えば、A34Rタンパク質)に前記天然に存在しない変異を含む前記改変腫瘍溶解性ワクシニアウイルス株は、IMV粒子と比較して、多量のEEV粒子を放出し得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、ウイルス糖タンパク質(A34Rなど)中に2つまたはそれを超える天然に存在しない変異を含み得る改変腫瘍溶解性ワクシニアウイルス株が提供される。前記変異A34Rタンパク質(本明細書において「WO34」とも呼ばれる)についての例示的なアミノ酸配列を配列番号5に示す。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記2つまたはそれを超える天然に存在しない変異は、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)またはそのフラグメントの中の正に荷電したアミノ酸残基(例えば、リジン)におけるものであり得、ここで、前記正に荷電したアミノ酸残基は、pH5において正に荷電する。いくつかの実施形態において、前記2つまたはそれを超える天然に存在しない変異の少なくとも1つは、野生型A34Rタンパク質(配列番号4)またはそのフラグメントの中の位置110におけるものであり得る。いくつかの例において、前記2つまたはそれを超える変異の少なくとも1つが野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置110にある場合、その位置にある前記変異したアミノ酸は、アスパラギンではない。
【0063】
いくつかの実施形態において、前記2つまたはそれを超える天然に存在しない変異は、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)またはそのフラグメントの中のアスパラギン酸残基におけるものではない。いくつかの実施形態において、前記2つまたはそれを超える天然に存在しない変異は、独立して、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)またはそのフラグメントの中の、アラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリン残基におけるものであり得る。いくつかの実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスによって発現される前記A34Rタンパク質またはそのフラグメントは、リジン残基における天然に存在しない変異を含み得、ここで、前記リジン残基は、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)(またはそのフラグメント)の位置Lys151以外の位置のものであり得る。いくつかの実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスによって発現される前記A34Rタンパク質またはそのフラグメントは、位置Lys119における天然に存在しない変異を含み得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記2つまたはそれを超える天然に存在しない変異は、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)またはそのフラグメントの残基119および151におけるものであり得る。いくつかの実施形態において、位置119における前記変異は、Lys119Glu(K119E)であり得る。いくつかの実施形態において、位置151における前記変異は、Lys151Glu(K151E)であり得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、ヘマグルチニン(haemaglutinin)、ノイラミニダーゼ、Spike(S)糖タンパク質、E1、E2、gp120、gp160、gp41、gp1、gp2、E(ダイマー)、E1、またはE2などのウイルスタンパク質中に変異を含み得る改変腫瘍溶解性ポックスウイルス株が提供される。
【0066】
いくつかのケースにおいて、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスのA34Rタンパク質中の前記2つまたはそれを超える天然に存在しない変異は、前記ウイルスの細胞外エンベロープウイルス(EEV)形態の細胞内成熟ウイルス(IMV)に対する比率の増大をもたらし得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスのA34Rタンパク質中の前記2つまたはそれを超える天然に存在しない変異は、前記A34Rタンパク質中に前記2つまたはそれを超える天然に存在しない変異を含まないがその他の点では同一のポックスウイルス株と比較して、前記ウイルスのEEV形態のIMV形態に対する比率の増大をもたらし得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される、前記A34タンパク質中に少なくとも2つの天然に存在しない変異を含む改変ポックスウイルス株は、組織培養中により低レベルのEEV粒子を放出するポックスウイルス株(例えば、前記A34Rタンパク質中に少なくとも2つの天然に存在しない変異を含まないワクシニアウイルス株)によって形成される、組織培養中の大きくて丸いプラークと比較して、(組織培養中のより多くのコメット形成によって測定されるように)より高レベルのEEV粒子を放出する。
【0069】
前記A34Rタンパク質中に少なくとも2つの天然に存在しない変異を含む、本開示の改変ポックスウイルスによって放出される前記EEV粒子は、いくつかの実施形態において、抗体(中和抗体)による中和および補体毒性に対して抵抗性であるのに対し、前記IMV粒子は抵抗性ではない。そうであるから、前記EEV粒子は、in vitroおよびin vivoにおいて、長期にわたって伝播を媒介し得る。
【0070】
前記EEV粒子は、また、IMV粒子と比較して、(より低い粒子/PFU比によって判定されるように)より高い感染特異性も有し得る。したがって、より高レベルのEEV粒子を放出する前記改変ポックスウイルス株は、治療用途について改善されたウイルスであり得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、ある特定の宿主細胞由来タンパク質は、EEVプレパレーション(EEV preparations)と共局在し得るが、IMVと共局在せず、また細胞由来タンパク質の量は、前記宿主細胞株と前記ウイルス株に依存し得る。例えば、研究によって、WR EEVは、VV IHD-J株と比較して、より多くの細胞由来タンパク質を含むことが示されている(van Eijl H,Hollinshead M,Smith GL.The vaccinia virus A36R protein is a type lb membrane protein present on intracellular but not extracellular enveloped virus particles.Virology 2000;271:26-36を参照のこと)。いくつかのケースにおいて、宿主細胞由来のタンパク質は、EEV粒子の生物学的効果を改変し得る。一例として、前記宿主膜タンパク質CD55を、前記A34Rタンパク質中に少なくとも2つの天然に存在しない変異を含む前記WRワクシニアウイルス株によって放出される前記EEV粒子の表面に組み込むことによって、補体毒性に対して抵抗性になり得る。
【0072】
ワクシニアウイルスのWestern Reserve(WR)株に関し、ウイルス粒子の約1%は、通常EEVであり、前記生産者細胞の腫瘍崩壊前に培養上清中に放出される。いくつかの研究によって、ワクシニアのIHD-J株から、50倍多くのEEV粒子が放出されることが示されている(Blasco R,Sisler JR,Moss B.、Dissociation of progeny vaccinia virus from the cell membrane is regulated by a viral envelope glycoprotein:effect of a point mutation in the lectin homology domain of the A34R gene.J Virol 1993;67:3319-25を参照のこと;また、Mcintosh AA,Smith GL.、Vaccinia virus glycoprotein A34R is required for infectivity of extracellular enveloped virus.J Virol 1996;70:272-81も参照のこと)。
【0073】
本開示の改変ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス)株は、いくつかの例において、少なくとも2つの天然に存在しない変異(例えば、K151EおよびK119E)を含むA34Rタンパク質を含まないがその他の点では同一のポックスウイルス株と比較して、約10倍~約200倍高いレベルのEEV粒子を放出し得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、本開示の改変ポックスウイルス株は、少なくとも2つの天然に存在しない変異(例えば、K151EおよびK119E)を含むA34Rタンパク質を含まないがその他の点では同一のポックスウイルス株と比較して、約10倍~約15倍、約15倍~約20倍、約20倍~約25倍、約25倍~約30倍、約30倍~約35倍、約35倍~約40倍、約40倍~約45倍、約45倍~約50倍、約50倍~約55倍、約55倍~約60倍、約60倍~約65倍、約65倍~約70倍、約75倍~約80倍、約85倍~約90倍、約95倍~約100倍、約100倍~約120倍、約120倍~約140倍、約140倍~約160倍、約160倍~約180倍、約180倍~約200倍多くのEEV粒子を放出し得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、本開示の改変ワクシニアウイルス株は、前記A34Rタンパク質が前記変異K119EおよびK151Eを含むWR株であり得、また、前記変異K119EおよびK151Eを含むA34Rタンパク質を含まないがその他の点では同一のWRワクシニアウイルス株と比較して、約10倍~約15倍、約15倍~約20倍、約20倍~約25倍、約25倍~約30倍、約30倍~約35倍、約35倍~約40倍、約40倍~約45倍、約45倍~約50倍、約50倍~約55倍、約55倍~約60倍、約60倍~約65倍、約65倍~約70倍、約75倍~約80倍、約85倍~約90倍、約95倍~約100倍、約100倍~約120倍、約120倍~約140倍、約140倍~約160倍、約160倍~約180倍、約180倍~約200倍多くのEEV粒子を放出し得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、本開示の改変ワクシニアウイルス株は、前記A34Rタンパク質が前記変異K119EおよびK151E(WO34)を含むWR株であり得、また、WIワクシニアウイルス株と比較して、約10倍~約15倍、約15倍~約20倍、約20倍~約25倍、約25倍~約30倍、約30倍~約35倍、約35倍~約40倍、約40倍~約45倍、約45倍~約50倍、約50倍~約55倍、約55倍~約60倍、約60倍~約65倍、約65倍~約70倍、約75倍~約80倍、約85倍~約90倍、約95倍~約100倍、約100倍~約120倍、約120倍~約140倍、約140倍~約160倍、約160倍~約180倍、約180倍~約200倍多くのEEV粒子を放出し得る。
【0077】
いくつかのケースにおいて、本開示の改変ポックスウイルスによる、IMV粒子と比較した、EEV粒子放出の増加は、ウイルスプラークアッセイを行うことによって決定することができ、ここで、前記A34Rタンパク質中に前記2つまたはそれを超える変異を含まないがその他の点では同一のポックスウイルスと比較して、前記A34Rタンパク質中に前記2つまたはそれを超える天然に存在しない変異を含むポックスウイルスにおいて、増大した数のコメットテイル形成が観察され得る。
【0078】
いくつかのケースにおいて、IMV粒子と比較した、EEV粒子放出の増加は、中和アッセイを行うことによって決定することができ、ここで、本開示の改変ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス株)を感染させ、中和抗体(例えば、抗L1 NR-45114抗体またはVIG抗体など)に曝露した細胞は、ウイルスプラークアッセイで試験することができ、また、ウイルスプラーク形成(例えば、PFU/mLによる)は、適切な対照ウイルス(例えば、前記A34Rタンパク質中に少なくとも2つの天然に存在しない変異を含まないワクシニアウイルス株)と比較することができる。いくつかのケースにおいて、抗L1は、IMV感染を中和およびブロックし得る。いくつかのケースにおいて、VIG抗体は、VV感染をブロックし得る。
【0079】
いくつかのケースにおいて、IMV粒子と比較した、EEV粒子放出の増加は、コメットテイル形成の増加を観察することによって決定することができる。いくつかのケースにおいて、コメットテイル形成の増加を観察することは、蒔かれた既知量のウイルスから生成される、プレート上のコメットテイルの外観をしたコロニーの数をカウントし、蒔かれた別の同等量のウイルスによる、プレート上のコロニー数と比較することを含み得る。いくつかのケースにおいて、コメット形成の増加は、ウイルス株の、IMV形態と比較したEEV量の増加を示し得る。
【0080】
いくつかのケースにおいて、本開示の改変ポックスウイルス株は、ホスホリパーゼ、キナーゼ、リンタンパク質、ポリメラーゼ、膜タンパク質、ウイルス粒子コアタンパク質、グルタレドキシン、DNA結合タンパク質、RNA結合タンパク質、IMVタンパク質、プロテイナーゼ、ヘリカーゼ、メタロプロテイナーゼ、ウイルス粒子構造タンパク質、ミリスチルタンパク質、ホスファターゼ、ヘパリン結合タンパク質、糖タンパク質、ATPアーゼ、キャッピング酵素、転写因子、前駆タンパク質、サブユニットタンパク質、DNAヘリカーゼ、パルミチルタンパク質、または受容体をコードする前記ウイルスゲノムの領域内に、1つまたはそれを超える追加の変異を含み得る。
【0081】
いくつかのケースにおいて、1つまたはそれを超える追加の変異は、ポックスウイルス遺伝子、例えば、ポックスウイルスのTK(チミジンキナーゼ)、B8R、B18R、B15R、K7R、C6L、K4L、F8L、F9L、F10L、F17R、E1L、E4L、E6R、E8R、E10R、E11L、O2L、I1L、I2L、I3L、I5L、I7L、I8R、G1L、G3L、G4L、G5.5R、G7L、G9R、L1R、L3L、L4R、L5R、J1R、J4R、J6R、H1L、H2R、H3L、H4L、H5R、H6R、D1R、D2L、D3R、D6R、D7R、D8L、D11L、D12L、D13L、A2.5L、A3L、A4L、A5R、A6L、A7L、A9L、A10L、A13L、A14L、A15L、A16L、A17L、A18R、A21L、A24R、A25L、A26L、A27L、A28L、A29L、A30L、A31R、A34R、A42R、A45R、A46R、A52R遺伝子など、におけるものであり得る。また、本明細書において、いくつかの実施形態において、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス(例えば、前記ウイルスの前記EEV形態を増加させる天然に存在しない変異を含み得、さらに、非ウイルスタンパク質(例えば、治療的タンパク質または診断的タンパク質など)をコードし得る外来性核酸を含み得るワクシニアウイルス株)も提供される。前記外来性核酸によってコードされるタンパク質の非限定的な例としては、SOC3、PH-20、HMGB1、PIAS3、IL15、IL15-Rα、LIGHT、ITAC、フラクタルカイン、CXCR4、CCR2、CCL5、N1L、免疫チェックポイントモジュレーター(例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体)、GM-CSF、IL-12、IL-2、INS、EPO、env、F8、GCG、IFNG、IGHG1、F9、GH1、IL-2、CSF2、TNFRSF1B、ALB、PLAU、IFNB1、CSF3、IFNA2、FSHB、A型ボツリヌス毒素、アレファセプト、パンクレリパーゼ、アンチトロンビンアルファ、アルシツモマブ、抗アカゲザル(rh)免疫グロブリンG、抗胸腺細胞グロブリン、アレムツズマブ、アブシキシマブ、アルグルコシダーゼアルファ、アバタセプト、ペガデマーゼ、アプシチド、ヒト血清アルブミン、ラスブリカーゼ、ベバシズマブ、B型ボツリヌス毒素、ビバリルジン、絨毛性性腺刺激ホルモンα、ペグフィルグラスチム、コラゲナーゼClostridium histiolyticum、フィルグラスチム、CroFab(crotalidae polyvalent immune Fab)、サルグラモスチム、ドルナーゼアルファ、デニロイキンジフチトクス、ジゴキシン免疫Fab、エポエチンアルファ、ダルベポエチンアルファ、エクリズマブ、エンフビルチド、エキセナチド、エファリズマブ、パリフェルミン、凝固第IX因子、抗血友病因子、サイロトロピンアルファ、フォリトロピンベータ、組換えヒト凝固因子VIIa、ゲムツズマブオゾガマイシン、ガルスルファーゼ、ペグビソマント、イミグルセラーゼ、ソマトロピン、グルカゴン、アガルシダーゼベータ、アルグルセラーゼ、ヒアルロニダーゼ、ヒストレリン、C型肝炎抗原、HIV抗原、B型肝炎表面抗原、HPVワクチン、ヒアルロニダーゼ、インターフェロンアルファ-2b、インターフェロンガンマ-1b、インスリン、ラロニダーゼ、イブリツモマブチウキセタン、インスリン、インフリキシマブ、インターフェロンベータ-1b、オプレルベキン、イデュルスルファーゼ、パニツムマブ、ヒト免疫グロブリン、セツキシマブ、アダリムマブ、ペグアスパルガーゼ、ダクリズマブ、アスパラギナーゼ、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンアルファ-n3、ルトロピンアルファ、レピルジン、ラクターゼ、ムロモナブ、メカセルミン、ナタリズマブ、ノフェツモバブ(nofetumomab)、ネシリチド、オクトレオチド、ospAリポタンパク質、テネクテプラーゼ、プラムリンチド、パパイン、ウロキナーゼ、アニストレプラーゼ、ドロトレコギンアルファ、レテプラーゼ、ベカプレルミン、パリビズマブ、アルテプラーゼ、ラニビズマブ、組換えヒト骨形成因子7(recombinant human bone morphogenic preotein 7)(rhBMP7)、組換え精製タンパク質誘導体(DPPD)、ストレプトキナーゼ、カルシトニン、セルモレリン、セクレチン、α1プロテイナーゼ阻害剤、サツモマブペンデチド、テクネチウムファノレソマブ、テリパラチド、トリプシン、エタネルセプト、およびそれらの機能ドメインもしくはフラグメントもしくはバリアント、またはそれらの任意の組み合わせがあげられ得る。
【0082】
ヒアルロナン(HA)は、ECMの重要な構造要素であり、また、反復する二糖単位からなる高分子量の直鎖グリコサミノグリカンである。ヒアルロナン(HA)は、結合組織、上皮組織、および神経組織にわたって幅広く分布し得、その発現レベルは、多くの種類の腫瘍において著しく上昇し得る。ヒアルロニダーゼは、HAの分解を触媒する酵素のファミリーである。これまでにヒトにおいて同定されている機能性のヒアルロニダーゼは、少なくとも5つ存在し(すなわち、HYAL1、HYAL2、HYAL3、HYAL4、およびHYAL5(PH-20またはSPAM1としても知られる))、これらのうち、比較的中性のpHで機能することがこれまでに知られているものは、PH-20ただ1つである。本開示のいくつかの実施形態において、ヒアルロニダーゼを他の腫瘍標的化治療剤(例えば、導入遺伝子(本明細書において、外来性核酸ともいう))と組み合わせることによって、少なくとも前記ECMを減少させ、かつ前記腫瘍内および前記腫瘍間の前記治療剤の移送を促進することによって、前記改変腫瘍溶解性ウイルスの前記治療効果が促進され得る。
【0083】
本明細書のいくつかの実施形態は、ヒアルロナンを分解する能力がある膜結合タンパク質(例えばヒアルロニダーゼなど)をコードする外来性核酸を含み得る改変腫瘍溶解性ウイルスを開示する。用語「ヒアルロニダーゼ」は、本明細書で使用される場合、腫瘍中のHAの分解を触媒する任意の酵素またはそのフラグメント(それらに限定されないが、PH-20および他の種由来のホモログ、ならびに類似の酵素機能を有する他の操作された/設計のタンパク質を含む)を指し得ることに留意すべきである。本明細書で使用される場合、ヒアルロニダーゼは、ヒアルロナン分解酵素のクラスを指し得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ウイルスは、キメラタンパク質であるケモカイン受容体をコードし得る外来性核酸を含む。その細胞外ドメインの少なくとも一部は、前記ウイルスの前記腫瘍標的化送達を促進し得るケモカイン受容体由来であってもよく、また、その細胞内ドメインの少なくとも一部は、前記腫瘍特異的複製を促進、免疫抑制活性を阻害、またはいくつかの他の有益な効果を伝達するケモカイン受容体由来であってもよく、または、この逆であってもよい。例えば、前記改変腫瘍溶解性ウイルスは、CCR5の細胞内GTPアーゼドメイン、およびCXCR4またはCCR2の細胞外ケモカイン結合ドメインを有するタンパク質をコードする核酸を含み得る。あるケースにおいて、異なる機能性を有するドメインを組み合わせることによって、前記改変腫瘍溶解性ウイルスの治療能力のさらなる改善が実現され得る。本開示の一実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ウイルスは、少なくとも1つのケモカイン受容体をコードし得る外来性核酸を含み得る。いくつかのケースにおいて、2つまたはそれを超える異なるケモカイン受容体(これらは、前記ウイルスによって同時に発現され得る)をコードし得る外来性核酸を含み得る。本明細書に記載されている改変腫瘍溶解性ウイルスから同時に発現され得る例示的なケモカイン受容体としては、CXCR4およびCCR2があげられ得る。1つを超えるケモカイン受容体を発現する改変腫瘍溶解性ウイルスにおいて、前記腫瘍溶解性ウイルスの臨床適用に関して、腫瘍細胞に対する組み合わせ効果または相乗的効果が実現され得る。
【0085】
ある特定の実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ウイルスは、外来性CXCR4発現核酸を含む。ある特定の実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ウイルスは、外来性CCR2発現核酸を含む。ある特定の実施形態は、CXCR4とCCR2の両方を含む改変腫瘍溶解性ウイルスを開示し、両ケモカインは、同じウイルスから発現される。ある特定の状況において、典型的には前記腫瘍微小環境中で発現されるCXCL12および/またはCCL2は、前記CXCR4および/またはCCR2を発現しているリンパ球または前記改変腫瘍溶解性ウイルスが感染した他の遊走性細胞を誘引し、それによって前記改変腫瘍溶解性ウイルスの前記腫瘍標的化送達を増大させ得る。
【0086】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載されている改変ウイルスは、1つまたはそれを超える外来性核酸配列(あるいは、導入遺伝子と呼ばれる)を含み得、前記外来性核酸配列は、STAT3の活性を調節し得る薬剤をコードするmRNAを生成させることができ、またその結果、STAT3によって制御される遺伝子の活性化も調節し得る。よって、本明細書で提供されるある特定の例は、STAT-3媒介性遺伝子活性化を調節し得る薬剤をコードし得る外来性核酸配列を含む腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを提供する。語句「STAT3媒介性遺伝子活性化を調節する」は、本明細書で使用される場合、STAT3活性が調節され、またその結果、STAT3によって制御される1つまたはそれを超える遺伝子の活性化もまた調節されるプロセスを指し得る。
【0087】
ある特定の実施形態において、STAT3媒介性遺伝子活性化を調節し得る前記薬剤は、タンパク質またはそのフラグメントであり得る。ある特定の実施形態において、前記タンパク質または前記そのフラグメントは、STAT3活性およびSTAT3媒介性遺伝子活性化を阻害、低減、または最小化し得る。STAT3活性およびSTAT3媒介性遺伝子活性化を阻害、低減、および/または最小化するタンパク質またはそのフラグメントは、例えば、STAT3応答遺伝子のプロモーター領域内のDNA結合配列に対するSTAT3の結合をブロックし得る。追加の例において、STAT3活性およびSTAT3媒介性遺伝子活性化を阻害、低減、または最小化する前記タンパク質またはそのフラグメントは、前記STAT3タンパク質を、例えばSH2ドメインで、直接結合し得る。ある特定の実施形態において、STAT3活性を阻害、低減、および/または最小化するタンパク質は、STAT3のリン酸化をブロック、阻害、低減、および/もしくは最小化し、ならびに/またはSTAT3を脱リン酸化する。ある特定の非限定的な実施形態において、STAT3活性を調節する前記タンパク質は、ホスホチロシンホスファターゼ(PTP)、活性化STATのタンパク質阻害剤(PIAS、例えば、PIAS3)、およびサイトカインシグナル抑制因子(SOCS)タンパク質(例えば、SOC3)を含み得る。
癌標的
【0088】
本開示の実施形態において、本明細書に記載されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルス(modifiesd oncolytic poxvirus)の送達による、過剰増殖性疾患(例えば、癌または腫瘍など)のための処置方法が提供される。本明細書に記載されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルスによって処置され得る癌は、それらに限定されないが、黒色腫、肝細胞癌、乳癌、肺癌、腹膜癌、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、白血病、リンパ腫、腎癌、膵臓癌、上皮癌、胃癌、結腸癌、十二指腸癌、膵臓腺癌、中皮腫、多形神経膠芽腫、星細胞腫、多発性骨髄腫、前立腺癌、肝細胞癌、胆管肉腫、膵臓腺癌、頭頸部扁平上皮癌、結腸直腸癌、腸管型胃腺癌、頸部扁平上皮癌、骨肉腫、卵巣上皮癌、急性リンパ芽球性リンパ腫、骨髄増殖性新生物、および肉腫を含み得る。
【0089】
本開示の方法によって処置され得る癌細胞は、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、ガム、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、首、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮由来の細胞を含み得る。さらに、前記癌は、それらに限定されないが、具体的には、以下の組織学的タイプの癌、すなわち、新生物、悪性;癌腫;癌腫、未分化;巨大紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母癌;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;ガストリノーマ、悪性;胆管細胞癌;肝細胞癌;混合型肝細胞癌および胆管細胞癌;小柱腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープ中の腺癌;腺癌、家族性大腸腺腫症;固形癌腫;カルチノイド腫瘍、悪性;気管支肺胞腺癌(branchiolo-alveolar 腺癌);乳頭状腺癌;嫌色素性癌腫;好酸性癌;好酸性腺癌;塩基好性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭腺癌および濾胞腺癌;非被嚢性硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜癌(endometroid 癌腫);皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳道腺癌;粘表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢腺癌;乳頭状漿液嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性乳管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;パジェット病、乳房;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫瘍、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;アンドロブラストーマ、悪性;セルトリ細胞腫;ライディッヒ細胞腫、悪性;リピッド細胞腫(lipid 細胞 腫瘍)、悪性;傍神経節腫、悪性;乳房外傍神経節腫、悪性;褐色細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑中の悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質性肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽腫;癌肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胚性癌腫;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛癌;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管外皮細胞腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル芽細胞歯牙肉腫;アメロブラストーマ、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫;星細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星細胞腫;アストロブラストーマ;神経膠芽腫;希突起神経膠腫;希突起膠芽腫;未分化神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経原性腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン;傍肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞;菌状息肉症;他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;マスト細胞肉腫;免疫増生性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;マスト細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;およびヘアリーセル白血病であり得る。いくつかのケースにおいて、転移性である固形癌は、本開示の改変腫瘍溶解性ウイルス(例えば、全身送達に有利な改変腫瘍溶解性ポックスウイルスなど)を使用して処置され得る。いくつかのケースにおいて、(例えば治療剤の腫瘍内送達の目的で)アクセスできない、またはアクセスが困難である固形癌は、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス(これは、全身送達に有利である)を使用して処置され得る。遊離脂肪酸の発現増加に関連する癌は、いくつかの例において、全身送達に有利であり、かつEEV形成量が増加する、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを使用して処置され得る。
【0090】
本開示は、また、任意のタイプの原発癌の局所的侵襲もしくは転移、またはその両方を阻害または予防するための方法も意図している。例えば、前記原発癌は、黒色腫、非小細胞肺、小細胞肺、肺、肝細胞癌、網膜芽細胞腫、星細胞腫、神経膠芽腫、ガム、舌、白血病、神経芽細胞腫、頭部、首、乳房、膵臓、前立腺、腎臓、骨、精巣、卵巣、中皮腫、頸部(cervical)、胃腸、リンパ腫、脳、結腸、または膀胱であり得る。ある特定の実施形態において、前記原発癌は、肺癌であり得る。例えば、前記肺癌は、非小細胞肺癌であり得る。さらに、本開示は、癌を予防するために、または前癌または前悪性細胞(化生、異形成、および過形成を含む)を処置するために使用し得る。また、望ましくないが良性の細胞、例えば、扁平上皮化生、異形成、良性前立腺過形成細胞、過形成病変などを阻害するためにも使用し得る。いくつかの実施形態において、癌、またはより重篤な形態の癌への進行は、本明細書に記載されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを要する本開示の方法によって、停止、中断、または遅延させ得る。
【0091】
さらに、本明細書に開示されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、前記腫瘍微小環境において遊離脂肪酸のバイオアベイラビリティーが高い腫瘍の処置のために投与され得る。いくつかの例において、肥満患者における腫瘍中の脂肪細胞によって放出される遊離脂肪酸は、前記腫瘍内の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスの複製、および前記ウイルスのEEV形態の形成に栄養を供給し得、かつそれらを促進し得る。この利点は、非肥満患者(特に腹膜癌を有する患者)においても実現され得る。例えば、いくつかの腹膜癌は、網の壁で成長する傾向があり、かつ脂肪細胞によって栄養を供給されることがあり得、ならびに、上述のように、腫瘍中の脂肪細胞によって放出される遊離脂肪酸は、前記腫瘍内の前記改変腫瘍溶解性ウイルスの複製に栄養を供給し、かつそれを促進し得るため、腹膜癌は、本開示の改変腫瘍溶解性ウイルスを使用した療法の標的であり得る。本明細書で開示されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、遊離脂肪酸のバイオアベイラビリティーが高い腫瘍において、増大した力価の細胞外エンベロープウイルス(EEV)を形成し得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されている改変ポックスウイルスを感染させた細胞を投与することによって腫瘍を処置する方法が提供される。感染細胞は、対象(例えば腫瘍内)に投与することができ、それによって、前記改変ポックスウイルスは、in situ(例えば、腫瘍または腫瘍微小環境内)で高いパーセンテージのEEV粒子(例えば、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約90%超)を含むウイルス粒子の集団を生じさせる。前記EEV粒子は、次いで、前記対象から(例えば、前記対象から単離された生物学的サンプルから)回収され、その後の前記対象への全身送達(例えば、静脈内送達)に使用され得る。いくつかのケースにおいて、これによって、前記対象内における前記改変腫瘍溶解性ウイルスの全身的伝播が増強され、治療成績が改善され得る。
処置の方法、および有効性と薬物動態のアッセイ
【0093】
本開示は、いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを投与することによって対象を処置するための方法を提供する。
【0094】
治療有効量の上記改変腫瘍溶解性ポックスウイルス、またはそれを含有する医薬組成物を、癌細胞に投与することを含む、前記癌細胞において毒性効果を生じさせる方法が提供される。本開示は、第1の癌細胞がウイルスに感染するように、前記第1の癌細胞に上記の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを投与することを含む、第2の癌細胞の成長または増殖の少なくとも1つを阻害する方法をさらに提供する。よって、ここで開示されている方法のいくつかの実施形態において、有効量の本明細書に記載されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルス、またはそれを含有する医薬組成物を投与した際に、あらゆる癌または腫瘍細胞が感染するのではなく、また、非感染細胞の成長が直接的な感染なしで阻害され得ることが意図されている。
【0095】
いくつかの例において、腫瘍崩壊を誘発する、細胞を死滅させる、成長を阻害する、転移を阻害する、腫瘍サイズを低減させる、および腫瘍細胞の悪性の表現型を他のやり方で反転または低減させるために、癌細胞または腫瘍を、本開示の方法および組成物を使用して、治療有効量の本明細書に記載されている例示的な改変腫瘍溶解性ポックスウイルスまたはそれを含有する医薬組成物と接触させ得る。ある特定の実施形態において、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス、またはその医薬組成物の有効量は、腫瘍崩壊、癌細胞の崩壊もしくは溶解、または癌細胞の成長またはサイズを阻害もしくは低減させるために十分な量を含み得る。癌細胞の成長の低減は、例えば、細胞死、または前記細胞を含む腫瘍のより低い複製速度もしくは増殖速度の低減、または前記癌細胞を含む対象の生存期間の延長によって明らかにされ得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、癌または腫瘍を有する対象を処置する方法であって、有効量の上記の改変ウイルスを前記対象に投与することを含む方法が提供される。このような方法における有効量は、前記癌の成長速度もしくは転移を低減させる、または前記対象の生存期間を延長させる量を含み得る。本開示は、腫瘍の成長を低減させる方法を提供し、そのような方法は、前記腫瘍に、有効量の上記の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを投与することを含み得る。ある特定の実施形態において、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス、またはその医薬組成物の有効量は、腫瘍の成長もしくはサイズの減速、阻害、または低減を誘発するために十分な量を含み得、また、前記腫瘍の根絶を誘発するために十分な量を含み得る。腫瘍の成長の低減は、例えば、成長速度の低減、または前記腫瘍を含む対象の生存期間の延長によって明らかにされ得る。
【0097】
本開示は、また、本明細書に記載されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルスの感染性もしくは抗腫瘍活性、または腫瘍特異的ウイルス複製の量を決定するための方法も提供し、そのような方法は、(i)対象に、治療有効量の本開示による改変腫瘍溶解性ポックスウイルスまたは医薬組成物(これは、単独で、もしくはさらなる療法と組み合わされて、ルシフェラーゼレポーター遺伝子をさらに発現する)を投与すること;(ii)前記ウイルスを投与した直後に前記対象から第1の生体試料を収集し、前記第1の生体試料中のルシフェラーゼレポーターのレベルを決定すること;(iii)ステップ(ii)における投与に続いて前記対象から第2の生体試料を収集すること、および(iii)前記第2の生体試料中の前記ルシフェラーゼレポーターのレベルを検出すること、を含み得、ここで、ステップ(iii)において、ステップ(ii)よりもルシフェラーゼのレベルが高い場合、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、感染性である、抗腫瘍活性を示す、腫瘍特異的ウイルス複製を示す、ものと判定される。前記第2の生体試料は、ステップ(i)における投与の、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約15時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約1か月、から約2か月後に収集される。いくつかの実施形態において、上記の方法は、ステップ(i)および(iii)において、治療有効量の本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス(例えば、本明細書に記載されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルス)またはそれを含む医薬組成物を投与した後に対象から収集した血漿サンプル中の、1つまたはそれを超えるアッセイサイトカインレベル(例えば、IL-2、IL-7、IL-8、IL-10、IFN-γ、GM-CSF、TNF-α、IL-6、IL-4、IL-5、およびIL-13)を検出することをさらに含み得る。本開示のいくつかの実施形態において、上述したステップ(ii)と(iv)の間のルシフェラーゼ生物発光の増加は、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスにおける改変を含まないがその他の点では同一のウイルスと比較して、本明細書に記載されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルスの方がより大きい。前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルス投与後のウイルス負荷を検出およびモニタリングするための他の例示的な技術としては、リアルタイム定量的PCRがあげられる。
【0098】
さらに、本明細書に記載されている、治療有効量の本開示による改変腫瘍溶解性ポックスウイルス、または前記ポックスウイルスを含有する医薬組成物を投与した後に、薬物動態をモニタリングする方法が提供される。薬物動態をモニタリングするための例示的な方法は、以下のステップ、すなわち、(i)前記対象に、治療有効量の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスまたはそれを含む医薬組成物を(単独で、もしくはさらなる療法と組み合わせて)投与すること;(ii)前記対象から、ステップ(i)における投与の約15分、約30分、約45分、約60分、約75分、約90分、約120分、約180分、および約240分、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約15時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約1か月、から約2か月後から選択される1つまたはそれを超える時点において生物学的サンプルを収集すること;および(iii)上述した時点において収集した前記生物学的サンプル中の、前記ウイルスゲノム(または、前記ウイルスゲノムの中に挿入されたレポーター遺伝子(例えばルシフェラーゼ))の量を検出すること、を含み得る。いくつかの例において、ウイルスゲノムコピー/mLは、15分の時点で収集されたサンプル中で最大であり得、さらに240分の時点で採集されたサンプルは、検出可能な量の前記ウイルスゲノムを含まないことがあり得る。したがって、いくつかの例において、ウイルスピークは、投与の約15分後に観察されることがあり得、また、約240分(言い換えれば4時間)後には前記対象の系から前記ウイルスの大部分が排除されていることがあり得る。いくつかの例において、第1のウイルスピークが、投与の約15分後に観察されることがあり得、また第2のウイルスピークが、その後の時点(例えば、約30分、約45分、約60分、または約90分の時点)で採集された前記生物学的サンプルにおいて観察されることがあり得る。前記生物学的サンプルは、例示的な実施形態において、血液であり得、またウイルスゲノム/mLの量は、定量的PCRまたは他の適切な技術によって決定され得る。いくつかの例において、第1のウイルスピークが、投与の約15分後に観察されることがあり得、また第2のウイルスピークが、本開示の改変腫瘍溶解性ウイルス(例えば、本明細書に記載されている腫瘍溶解性ポックスウイルス)の投与の約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約15時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約1か月、から約2か月後に観察されることがあり得る。
【0099】
いくつかの例において、改変腫瘍溶解性ポックスウイルスの腫瘍選択的複製は、レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ遺伝子)を使用することによって測定され得る。いくつかの実施形態において、前記ルシフェラーゼ遺伝子は、ウイルスのゲノムの中に挿入されていてもよく、また、腫瘍細胞には、前記ウイルスが感染していてもよい。感染腫瘍細胞における生物発光は、腫瘍選択的複製をモニターするために測定され得る。いくつかの例は、前記改変腫瘍溶解性ウイルスにおける改変を含まないがその他の点では同一の腫瘍溶解性ポックスウイルスと比較して、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスにおいて、ルシフェラーゼレポーターの生物発光が増加していることを示す。
改変腫瘍溶解性ウイルスの送達
【0100】
いくつかの実施形態において、対象に投与される本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスの量は、約10~1012感染性ウイルス粒子もしくはプラーク形成単位(PFU)、または約10~1010PFU、または約10~10PFU、または約10~1010PFUであり得る。いくつかの実施形態において、対象に投与される本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスの量は、約10~1012ウイルス粒子もしくはプラーク形成単位(PFU)、または約10~1010PFU、または約10~10PFU、または約10~1010PFUであり得る。いくつかの実施形態において、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、約10PFU/用量~約10PFU/用量、約10PFU/用量~約10PFU/用量、約10PFU/用量~約10PFU/用量、約10PFU/用量~約10PFU/用量、約10PFU/用量~約1010PFU/用量、約1010PFU/用量~約1011PFU/用量、約1011PFU/用量~約1012PFU/用量、約1012PFU/用量~約1013PFU/用量、約1013PFU/用量~約1014PFU/用量、または約1014PFU/用量~約1015PFU/用量含み得る投与量で投与され得る。いくつかの実施形態において、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、約2×10PFU/用量、3×10PFU/用量、4×10PFU/用量、5×10PFU/用量、6×10PFU/用量、7×10PFU/用量、8×10PFU/用量、9×10PFU/用量、約10PFU/用量、約2×10PFU/用量、約3×10PFU/用量、約4×10PFU/用量、約5×10PFU/用量、約6×10PFU/用量、約7×10PFU/用量、約8×10PFU/用量、約9×10PFU/用量、約10PFU/用量、2×10PFU/用量、3×10PFU/用量、4×10PFU/用量、5×10PFU/用量、6×10PFU/用量、7×10PFU/用量、8×10PFU/用量、9×10PFU/用量、約10PFU/用量、約2×10PFU/用量、約3×10PFU/用量、約4×10PFU/用量、約5×10PFU/用量、約6×10PFU/用量、約7×10PFU/用量、約8×10PFU/用量、約9×10PFU/用量、約10PFU/用量、約2×10PFU/用量、約3×10PFU/用量、約4×10PFU/用量、約5×10PFU/用量、約6×10PFU/用量、約7×10PFU/用量、約8×10PFU/用量、約9×10PFU/用量、約10PFU/用量、約2×10PFU/用量、約3×10PFU/用量、約4×10PFU/用量、約5×10PFU/用量、約6×10PFU/用量、約7×10PFU/用量、約8×10PFU/用量、約9×10PFU/用量、約10PFU/用量、約2×10PFU/用量、約3×10PFU/用量、約4×10PFU/用量、約5×10PFU/用量、約6×10PFU/用量、約7×10PFU/用量、約8×10PFU/用量、約9×10PFU/用量、約1010PFU/用量、約2×1010PFU/用量、約3×1010PFU/用量、約4×1010PFU/用量、約5×1010PFU/用量、約6×1010PFU/用量、約7×1010PFU/用量、約8×1010PFU/用量、約9×1010PFU/用量、約1010PFU/用量、約2×1010PFU/用量、約3×1010PFU/用量、約4×1010PFU/用量、約5×1010PFU/用量、約6×1010PFU/用量、約7×1010PFU/用量、約8×1010PFU/用量、約9×1010PFU/用量、約1011PFU/用量、約2×1011PFU/用量、約3×1011PFU/用量、約4×1011PFU/用量、約5×1011PFU/用量、約6×1011PFU/用量、約7×1011PFU/用量、約8×1011PFU/用量、約9×1011PFU/用量、または約1012PFU/用量、約1012PFU/用量~約1013PFU/用量、約1013PFU/用量~約1014PFU/用量、または約1014PFU/用量~約1015PFU/用量を含み得る用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、5×10PFU/用量を含み得る用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、最大5×10PFU/用量を含み得る用量で投与され得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、約10ウイルス粒子/用量~約10ウイルス粒子/用量、約10ウイルス粒子/用量~約10ウイルス粒子/用量、約10ウイルス粒子/用量~約10ウイルス粒子/用量、約10ウイルス粒子/用量~約10ウイルス粒子/用量、約10ウイルス粒子/用量~約1010ウイルス粒子/用量、約1010ウイルス粒子/用量~約1011ウイルス粒子/用量、約1011ウイルス粒子/用量~約1012ウイルス粒子/用量、約1012ウイルス粒子/用量~約1013ウイルス粒子/用量、約1013ウイルス粒子/用量~約1014ウイルス粒子/用量、または約1014ウイルス粒子/用量~約1015ウイルス粒子/用量を含み得る用量で投与され得る。
【0102】
いくつかの実施形態において、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、約10PFU/kg~約10PFU/kg、約10PFU/kg~約10PFU/kg、約10PFU/kg~約10PFU/kg、約10PFU/kg~約10PFU/kg、約10PFU/kg~約1010PFU/kg、約1010PFU/kg~約1011PFU/kg、約1011PFU/kg~約1012PFU/kg、約1012PFU/kg~約1013PFU/kg、約1013PFU/kg~約1014PFU/kg、または約1014PFU/kg~約1015PFU/kgを含み得る投与量で投与され得る。いくつかの実施形態において、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、約2×10PFU/kg、3×10PFU/kg、4×10PFU/kg、5×10PFU/kg、6×10PFU/kg、7×10PFU/kg、8×10PFU/kg、9×10PFU/kg、約10PFU/kg、約2×10PFU/kg、約3×10PFU/kg、約4×10PFU/kg、約5×10PFU/kg、約6×10PFU/kg、約7×10PFU/kg、約8×10PFU/kg、約9×10PFU/kg、約10PFU/kg、2×10PFU/kg、3×10PFU/kg、4×10PFU/kg、5×10PFU/kg、6×10PFU/kg、7×10PFU/kg、8×10PFU/kg、9×10PFU/kg、約10PFU/kg、約2×10PFU/kg、約3×10PFU/kg、約4×10PFU/kg、約5×10PFU/kg、約6×10PFU/kg、約7×10PFU/kg、約8×10PFU/kg、約9×10PFU/kg、約10PFU/kg、約2×10PFU/kg、約3×10PFU/kg、約4×10PFU/kg、約5×10PFU/kg、約6×10PFU/kg、約7×10PFU/kg、約8×10PFU/kg、約9×10PFU/kg、約10PFU/kg、約2×10PFU/kg、約3×10PFU/kg、約4×10PFU/kg、約5×10PFU/kg、約6×10PFU/kg、約7×10PFU/kg、約8×10PFU/kg、約9×10PFU/kg、約10PFU/kg、約2×10PFU/kg、約3×10PFU/kg、約4×10PFU/kg、約5×10PFU/kg、約6×10PFU/kg、約7×10PFU/kg、約8×10PFU/kg、約9×10PFU/kg、約1010PFU/kg、約2×1010PFU/kg、約3×1010PFU/kg、約4×1010PFU/kg、約5×1010PFU/kg、約6×1010PFU/kg、約7×1010PFU/kg、約8×1010PFU/kg、約9×1010PFU/kg、約1010PFU/kg、約2×1010PFU/kg、約3×1010PFU/kg、約4×1010PFU/kg、約5×1010PFU/kg、約6×1010PFU/kg、約7×1010PFU/kg、約8×1010PFU/kg、約9×1010PFU/kg、約1011PFU/kg、約2×1011PFU/kg、約3×1011PFU/kg、約4×1011PFU/kg、約5×1011PFU/kg、約6×1011PFU/kg、約7×1011PFU/kg、約8×1011PFU/kg、約9×1011PFU/kg、または約1012PFU/kg、約1012PFU/kg~約1013PFU/kg、約1013PFU/kg~約1014PFU/kg、または約1014PFU/kg~約1015PFU/kgを含み得る用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、5×10PFU/kgを含み得る用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、最大5×10PFU/kgを含み得る用量で投与され得る。
【0103】
いくつかの実施形態において、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、約10ウイルス粒子/kg~約10ウイルス粒子/kg、約10ウイルス粒子/kg~約10ウイルス粒子/kg、約10ウイルス粒子/kg~約10ウイルス粒子/kg、約10ウイルス粒子/kg~約10ウイルス粒子/kg、約10ウイルス粒子/kg~約1010ウイルス粒子/kg、約1010ウイルス粒子/kg~約1011ウイルス粒子/kg、約1011ウイルス粒子/kg~約1012ウイルス粒子/kg、約1012ウイルス粒子/kg~約1013ウイルス粒子/kg、約1013ウイルス粒子/kg~約1014ウイルス粒子/kg、または約1014ウイルス粒子/kg~約1015ウイルス粒子/kgを含み得る用量で投与され得る。
【0104】
本明細書に記載されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルスの液体剤形は、ある特定の実施形態において、約10PFU/mL~約10PFU/mL、約10PFU/mL~約10PFU/mL、約10PFU/mL~約10PFU/mL、約10PFU/mL~約10PFU/mL、約10PFU/mL~約1010PFU/mL、約1010PFU/mL~約1011PFU/mL、約1011PFU/mL~約1012PFU/mL、約1012PFU/mL~約1013PFU/mL、約1013PFU/mL~約1014PFU/mL、または約1014PFU/mL~約1015PFU/mLのウイルス用量を含み得る。いくつかの実施形態において、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、約2×10PFU/mL、3×10PFU/mL、4×10PFU/mL、5×10PFU/mL、6×10PFU/mL、7×10PFU/mL、8×10PFU/mL、9×10PFU/mL、約10PFU/mL、約2×10PFU/mL、約3×10PFU/mL、約4×10PFU/mL、約5×10PFU/mL、約6×10PFU/mL、約7×10PFU/mL、約8×10PFU/mL、約9×10PFU/mL、約10PFU/mL、2×10PFU/mL、3×10PFU/mL、4×10PFU/mL、5×10PFU/mL、6×10PFU/mL、7×10PFU/mL、8×10PFU/mL、9×10PFU/mL、約10PFU/mL、約2×10PFU/mL、約3×10PFU/mL、約4×10PFU/mL、約5×10PFU/mL、約6×10PFU/mL、約7×10PFU/mL、約8×10PFU/mL、約9×10PFU/mL、約10PFU/mL、約2×10PFU/mL、約3×10PFU/mL、約4×10PFU/mL、約5×10PFU/mL、約6×10PFU/mL、約7×10PFU/mL、約8×10PFU/mL、約9×10PFU/mL、約10PFU/mL、約2×10PFU/mL、約3×10PFU/mL、約4×10PFU/mL、約5×10PFU/mL、約6×10PFU/mL、約7×10PFU/mL、約8×10PFU/mL、約9×10PFU/mL、約10PFU/mL、約2×10PFU/mL、約3×10PFU/mL、約4×10PFU/mL、約5×10PFU/mL、約6×10PFU/mL、約7×10PFU/mL、約8×10PFU/mL、約9×10PFU/mL、約1010PFU/mL、約2×1010PFU/mL、約3×1010PFU/mL、約4×1010PFU/mL、約5×1010PFU/mL、約6×1010PFU/mL、約7×1010PFU/mL、約8×1010PFU/mL、約9×1010PFU/mL、約1010PFU/mL、約2×1010PFU/mL、約3×1010PFU/mL、約4×1010PFU/mL、約5×1010PFU/mL、約6×1010PFU/mL、約7×1010PFU/mL、約8×1010PFU/mL、約9×1010PFU/mL、約1011PFU/mL、約2×1011PFU/mL、約3×1011PFU/mL、約4×1011PFU/mL、約5×1011PFU/mL、約6×1011PFU/mL、約7×1011PFU/mL、約8×1011PFU/mL、約9×1011PFU/mL、または約1012PFU/mL、約1012PFU/mL~約1013PFU/mL、約1013PFU/mL~約1014PFU/mL、または約1014PFU/mL~約1015PFU/mLを含み得る用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、5×10PFU/mLを含み得る用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、最大5×10PFU/mLを含み得る用量で投与され得る。
【0105】
前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスが注射によって投与され得るいくつかの例において、投薬量は、約10ウイルス粒子/注射、10ウイルス粒子/注射、10ウイルス粒子/注射、10ウイルス粒子/注射、10ウイルス粒子/注射、10ウイルス粒子/注射、10ウイルス粒子/注射、1010ウイルス粒子/注射、1011ウイルス粒子/注射、1012ウイルス粒子/注射、2×1012ウイルス粒子/注射、1013ウイルス粒子/注射、1014ウイルス粒子/注射、または1015ウイルス粒子/注射を含み得る。前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスが注射で投与されるさらなる例において、投薬量は、約10感染性ウイルス粒子/注射、10感染性ウイルス粒子/注射、10感染性ウイルス粒子/注射、10感染性ウイルス粒子/注射、10感染性ウイルス粒子/注射、10感染性ウイルス粒子/注射、10感染性ウイルス粒子/注射、1010感染性ウイルス粒子/注射、1011感染性ウイルス粒子/注射、1012感染性ウイルス粒子/注射、2×1012感染性ウイルス粒子/注射、1013感染性ウイルス粒子/注射、1014感染性ウイルス粒子/注射、または1015感染性ウイルス粒子/注射を含み得る。追加の実施形態において、本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、約10組織培養阻害用量(Tissue Culture Inhibitor Dose)50%(TCID50)/kg、10TCID50/kg、10TCID50/kg、10TCID50/kg、10TCID50/kg、10TCID50/kg、10TCID50/kg、10TCID50/kg、10TCID50/kg、10TCID50/kg、10TCID50/kg、10TCID50/kg、10TCID50/kg、3×10TCID50/kg、4×10TCID50/kg、5×10TCID50/kg、3×10TCID50/kg、4×10TCID50/kg、5×10TCID50/kg、3×1010TCID50/kg、4×1010TCID50/kg、または4×1010TCID50/kgであり得る用量で投与され得る。本明細書において、10×は、これに代えて、1eXと表現されることに留意すべきである。ある特定の実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、1つまたはそれを超える用量で投与され得る。ある特定の実施形態において、前記ウイルスは、腫瘍中の少なくとも約20%の細胞における、腫瘍中の少なくとも約30%の細胞における、腫瘍中の少なくとも約40%の細胞における、腫瘍中の少なくとも約50%の細胞における、腫瘍中の少なくとも約60%の細胞における、腫瘍中の少なくとも約70%の細胞における、腫瘍中の少なくとも約80%の細胞における、または腫瘍中の少なくとも約90%の細胞における腫瘍崩壊を誘発するために十分な量で投与され得る。ある特定の実施形態において、ウイルスの一用量は、対象または腫瘍に対して、1、2、5、10、15、20、または24時間の期間にわたって投与される量を指し得る。ある特定の実施形態において、前記用量は、時間をかけて、または別々の注射によって分けられ得る。ある特定の実施形態において、例えば、第2の処置が、第1の処置から1、2、3、4、5、6、7日、または数週間以内に行われ得る場合、多数の用量(例えば、2、3、4、5、6、またはそれを超える用量)の前記ポックスウイルスを対象に投与し得る。ある特定の実施形態において、前記改変腫瘍溶解性vは、前記対象に対して、1、2、3、4、5、6、7日、または数週間の期間にわたって投与され得る。ある特定の実施形態において、本明細書に記載されている腫瘍溶解性ワクシニアウイルス(oncolytic vaccina virus)または医薬組成物は、約1週間~約2週間、約2週間~約3週間、約3週間~約4週間、約4週間~約5週間、約6週間~約7週間、約7週間~約8週間、約8週間~約9週間、約9週間~約10週間、約10週間~約11週間、約11週間~約12週間、約12週間~約24週間、約24週間~約48週間、約48週間もしくは約52週間、またはそれより長い期間にわたって投与され得る。本明細書に記載されている腫瘍溶解性ポックスウイルスまたは医薬組成物の投与頻度は、ある特定の例において、1日1回、1日2回、週に1回、3週に1回、4週に1回(または月1回)、8週に1回(または2か月に1回)、12週に1回(または3か月に1回)、または24週に1回(または6か月に1回)であり得る。本明細書に開示されている方法のいくつかの実施形態において、前記腫瘍溶解性ポックスウイルスまたは前記医薬組成物は、独立して、初期用量で第1の期間に、中間用量で第2の期間に、および高用量で第3の期間に投与し得る。いくつかの実施形態において、前記初期用量は、中間用量よりも低くてもよく、また前記中間用量は、前記高用量よりも低くてもよい。いくつかの実施形態において、前記第1、第2、および第3の期間は、独立して、約1週間~約2週間、約2週間~約3週間、約3週間~約4週間、約4週間~約5週間、約6週間~約7週間、約7週間~約8週間、約8週間~約9週間、約9週間~約10週間、約10週間~約11週間、約11週間~約12週間、約12週間~約24週間、約24週間~約48週間、約48週間もしくは約52週間、またはそれより長い期間であり得る。
【0106】
いくつかの例において、前記対象は、本明細書に記載されている任意の前記処置方法に従って、本明細書に記載されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを投与する前に、投与するのと同時に、および投与した後に、減糖質食(例えば、ケトン食)を与えられてもよい。ある特定の実施形態において、前記対象は、1日あたり500グラム未満の炭水化物、1日あたり450グラム未満の炭水化物、1日あたり450グラム未満の炭水化物、1日あたり400グラム未満の炭水化物、1日あたり350グラム未満の炭水化物、1日あたり300グラム未満の炭水化物、1日あたり250グラム未満の炭水化物、1日あたり200グラム未満の炭水化物、1日あたり150グラム未満の炭水化物、1日あたり100グラム未満の炭水化物、1日あたり90グラム未満の炭水化物、1日あたり80グラム未満の炭水化物、1日あたり70グラム未満の炭水化物、1日あたり60グラム未満の炭水化物、1日あたり50グラム未満の炭水化物、1日あたり40グラム未満の炭水化物、1日あたり30グラム未満の炭水化物、1日あたり20グラム未満の炭水化物、1日あたり10グラム未満の炭水化物消費を含み得る食事を与えられてもよい。
【0107】
本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスまたはそれを含む医薬組成物の癌または腫瘍細胞への送達のための例示的な方法は、腫瘍内注入によるものであり得る。しかしながら、代替的な投与方法、例えば、静脈内、インフュージョンにより、非経口、静脈内、皮内、筋肉内、経皮、直腸、尿道内、腟内、鼻腔内、髄腔内、または腹腔内投与も使用し得る。投与経路は、前記腫瘍の場所および性質によって変わり得る。ある特定の実施形態において、投与経路は、歯内、経皮、非経口、静脈内、筋肉内、鼻腔内、皮下、局所(例えば、(特に、脈管構造を有する)腫瘍の近傍に、または腫瘍の隣接脈管構造に)、経皮、髄腔内、気管内、腹腔内、動脈内、膀胱内、腫瘍内、吸入、灌流、洗浄(lavage)による、または経口であり得る。前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスの投与可能用量は、ボーラス注入として、または低速インフュージョンとして投与され得る。ある特定の実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、患者に対して、前記患者にインプラントされた供給源から投与され得る。ある特定の実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスの投与は、選択された期間にわたる持続注入によって行われ得る。いくつかの例において、本明細書に記載されている腫瘍溶解性ポックスウイルス、またはそれを含有する医薬組成物は、治療有効用量で、約15分間、約30分間、約45分間、約50分間、約55分間、約60分間、約75分間、約90分間、約100分間、もしくは約120分間、またはそれより長い期間にわたるインフュージョンによって投与され得る。本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスまたは医薬組成物は、液体剤形として投与してもよく、ここで、投与の総体積は、約1mL~約5mL、約5mL~10mL、約15mL~約20mL、約25mL~約30mL、約30mL~約50mL、約50mL~約100mL、約100mL~150mL、約150mL~約200mL、約200mL~約250mL、約250mL~約300mL、約300mL~約350mL、約350mL~約400mL、約400mL~約450mL、約450mL~500mL、約500mL~750mL、または約750mL~1000mLである。
医薬組成物
【0108】
本明細書に記載されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを含有する医薬組成物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、および油中のそれらの任意の組み合わせの溶液、分散液として、固体剤形で、吸入可能な剤形として、鼻腔内剤形として、リポソーム製剤、ナノ粒子を含む剤形、マイクロ粒子を含む剤形、ポリマー剤形、またはそれらの任意の組み合わせとして、調製され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、安定化剤および緩衝剤を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、可溶化剤(例えば、滅菌水、トリス緩衝液)を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、賦形剤を含み得る。賦形剤は、Handbook of Pharmaceutical Excipients,American Pharmaceutical Association(1986)に記載されている賦形剤であり得る。適切な賦形剤の非限定的な例としては、緩衝剤、保存剤、安定化剤、結合剤、圧縮成形剤、滑沢剤、キレート剤、分散促進剤、崩壊剤、香味剤、甘味剤、着色剤があげられ得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、賦形剤は、緩衝剤であり得る。適切な緩衝剤の非限定的な例としては、クエン酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸カルシウム、および炭酸水素カルシウムがあげられる。緩衝剤として、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化マグネシウム、乳酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、メタリン酸カリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酢酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、および他のカルシウム塩、またはそれらの組み合わせが、医薬製剤において使用され得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、賦形剤は、保存剤を含み得る。適切な保存剤の非限定的な例としては、抗酸化剤(例えば、αトコフェロールおよびアスコルビン酸など)および抗菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、およびフェノールなど)があげられ得る。抗酸化剤は、それらに限定されないが、EDTA、クエン酸、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、亜硫酸ナトリウム、パラアミノ安息香酸、グルタチオン、没食子酸プロピル、システイン、メチオニン、エタノール、およびN-アセチルシステインをさらに含み得る。いくつかの例において、保存剤は、バリダマイシンA、TL-3、オルトバナジン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、N-α-tosyl-Phe-クロロメチルケトン、N-α-tosyl-Lys-クロロメチルケトン、アプロチニン、フェニルメチルスルホニルフルオライド、ジイソプロピルフルオロリン酸、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤、グランザイム阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞分裂阻害剤、細胞周期阻害剤、脂質シグナリング阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、還元剤、アルキル化剤、抗微生物剤、オキシダーゼ阻害剤、または他の阻害剤を含み得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、賦形剤として、結合剤を含み得る。適切な結合剤の非限定的な例としては、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrolidone)、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルオキソアゾリドン(polyvinyloxoazolidone)、ポリビニルアルコール、C12-C18脂肪酸アルコール、ポリエチレングリコール、ポリオール、サッカライド、オリゴ糖、およびそれらの組み合わせを含み得る。医薬製剤において使用し得る前記結合剤は、デンプン、例えば、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプンなど;糖、例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、ラクトース、マルトデキストリンなど;天然ゴムおよび合成ゴム;ゼラチン;セルロース誘導体、例えば、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなど;ポリビニルピロリドン(ポビドン);ポリエチレングリコール(PEG);ワックス;炭酸カルシウム;リン酸カルシウム;アルコール、例えば、ソルビトール、キシリトール、マンニトールなど、および水、またはそれらの組み合わせから選択され得る。
【0112】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、賦形剤として、滑沢剤を含み得る。適切な滑沢剤の非限定的な例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、硬化植物油、sterotex、ポリオキシエチレンモノステアレート、タルク、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ナトリウムラウリル硫酸、ラウリル硫酸マグネシウム、および軽質ミネラルオイルがあげられ得る。医薬製剤において使用され得る滑沢剤は、ステアリン酸金属塩、(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、脂肪酸エステル、(例えば、フマル酸ステアリルナトリウムなど)、脂肪酸、(例えば、ステアリン酸など)、脂肪アルコール、ベヘン酸グリセリル、ミネラルオイル、パラフィン、硬化植物油、ロイシン、ポリエチレングリコール(PEG)、ラウリル硫酸金属塩、(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムなど)、塩化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、およびタルク、またはそれらの組み合わせから選択され得る。いくつかの実施形態において、医薬製剤は、賦形剤として、分散促進剤を含み得る。適切な分散剤の非限定的な例としては、デンプン、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、グアーガム、カオリン、ベントナイト、精製木材セルロース、グリコール酸ナトリウムデンプン、イソアモルファスシリケート(isoamorphous silicate)、および高HLB乳化剤界面活性剤としての微結晶セルロースがあげられ得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、賦形剤として、崩壊剤を含み得る。いくつかの実施形態において、崩壊剤は、非起泡性崩壊剤であり得る。適切な非起泡性崩壊剤の非限定的な例としては、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、それらのアルファ化加工デンプンなど)、甘味剤、粘土(例えば、ベントナイトなど)、微結晶セルロース、アルギネート、グリコール酸ナトリウムデンプン、ガム(例えば、寒天、グアー、ローカストビーン、カラヤ、ペクチン、およびトラガカントなど)があげられ得る。いくつかの実施形態において、崩壊剤は、起泡性崩壊剤であり得る。適切な起泡性崩壊剤の非限定的な例としては、クエン酸と炭酸水素ナトリウムの組み合わせ、および炭酸水素ナトリウムと酒石酸の組み合わせがあげられ得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、賦形剤は、香味剤を含み得る。外層に混和される香味剤は、合成香味油および香料芳香族;天然油;植物、葉、花、および果実からの抽出物;およびそれらの組み合わせから選択され得る。いくつかの実施形態において、香味剤は、ケイヒ油;冬緑油;ハッカ油;クローバー油;ヘイ油;アニス油;ユーカリ;バニラ;柑橘油(例えば、レモン油、オレンジ油、ブドウおよびグレープフルーツ油など);およびフルーツエッセンス(リンゴ、モモ、セイヨウナシ、イチゴ、ラズベリー、サクランボ、プラム、パイナップル、およびアンズを含む)からなる群から選択され得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、賦形剤は、甘味剤を含み得る。適切な甘味剤の非限定的な例としては、グルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転化糖、果糖、およびそれらの混合物(担体として使用しない場合);サッカリンおよびその種々の塩(例えば、ナトリウム塩);ジペプチド甘味料(例えば、アスパルテームなど);ジヒドロカルコン化合物、グリチルリチン;Stevia rebaudiana(ステビオシド);スクロースの塩素誘導体(例えば、スクラロースなど);および糖アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、シリトール(sylitol)など)があげられ得る。
【0116】
いくつかの例において、本明細書に記載されている医薬組成物は、着色剤を含み得る。切な着色料の非限定的な例としては、食品、医薬品、および化粧品色素(FD&C)、医薬品および化粧品色素(D&C)、および外用薬および化粧品色素(Ext.D&C)があげられ得る。着色剤は、色素、またはそれらの対応するレーキとして使用され得る。
【0117】
いくつかの例において、本明細書に記載されている医薬組成物は、キレート剤を含み得る。いくつかのケースにおいて、キレート剤は、殺真菌キレート剤であり得る。例としては、それらに限定されないが、エチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸(EDTA);EDTAの二ナトリウム塩、三ナトリウム塩、四ナトリウム塩、二カリウム塩、三カリウム塩、二リチウム塩、および二アンモニウム塩;EDTAのバリウムキレート、カルシウムキレート、コバルトキレート、銅キレート、ジスプロシウムキレート、ユーロピウムキレート、鉄キレート、インジウムキレート、ランタンキレート、マグネシウムキレート、マンガンキレート、ニッケルキレート、サマリウムキレート、ストロンチウムキレート、または亜鉛キレート;トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸一水和物;N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン;1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸;1,3-ジアミノプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸;エチレンジアミン-N,N’-二酢酸;エチレンジアミン-N,N’-ジプロピオン酸二塩酸塩;エチレンジアミン-N,N’-ビス(メチレンホスホン酸)半水和物;N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸;エチレンジアミン-N,N,N’,N’-テトラキス(メチレンホスホン酸)(ethylenediamine-N,N,N’,N’-tetrakis(methylenephosponic acid));O,O’-ビス(2-アミノエチル)エチレングリコール-N,N,N’,N’-四酢酸;N,N-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N-二酢酸;1,6-ヘキサメチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸;N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸;イミノ二酢酸;1,2-ジアミノプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸;ニトリロ三酢酸;ニトリロトリプロピオン酸;ニトリロトリス(メチレンリン酸)の三ナトリウム塩;7,19,30-トリオキサ-1,4,10,13,16,22,27,33-オクタアザビシクロ[11,11,11]ペンタトリアコンタンヘキサヒドロブロミド;またはトリエチレンテトラミン-N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’-六酢酸があげられ得る。
【0118】
また、本明細書に開示されている1つまたはそれを超える改変腫瘍溶解性ウイルスと、1つまたはそれを超える他の抗微生物剤および抗真菌剤(例えば、ポリエン(例えば、アムホテリシンB、アムホテリシンB脂質複合体(ABCD)、リポソームアムホテリシンB(L-AMB)、およびリポソームナイスタチンなど)、アゾールおよびトリアゾール(例えば、ボリコナゾール、フルコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、ポザコナゾール(pozaconazole)など);グルカンシンターゼ阻害剤(例えば、カスポファンギン、ミカファンギン(FK463)、およびV-エキノキャンディン(LY303366)など);グリセオフルビン;アリルアミン(例えば、テルビナフィンなど);フルシトシン、または本明細書に記載されているものを含む他の抗真菌剤)とを含む、組み合わせ製品も意図されている。さらに、ペプチドは、局所抗真菌剤(例えば、シクロピロクスオラミン、ハロプロジン、トルナフテート、ウンデシレネート、局所ナイスタチン、アモロルフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン、および他の局所薬剤)と組み合わせ得ることが意図されている。いくつかの例において、医薬組成物は、追加の薬剤を含み得る。いくつかのケースにおいて、追加の薬剤は、医薬組成物中に治療有効量で存在し得る。
【0119】
保存および使用の通常の条件下において、本明細書に記載されている医薬組成物は、微生物の成長を阻害するために保存剤を含んでいてもよい。ある特定の例において、本明細書に記載されている医薬組成物は、保存剤を含んでいない場合がある。注射可能用途に適した医薬形態は、無菌の注射可能溶液または分散液の即時調製のための滅菌水溶液または分散液および滅菌粉末を含み得る。前記医薬組成物は、溶媒もしくは分散媒(例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、および/もしくは植物油、またはそれらの任意の組み合わせを含む)である担体を含み得る。適切な流動性は、例えば、コーティング(例えばレシチン)を使用することによって、要求される粒径を維持することによって(分散液の場合)、および界面活性剤を使用することによって、維持され得る。微生物の活動は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって阻止され得る。多くのケースにおいて、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを配合することが好ましいであろう。注射可能組成物の長期間にわたる吸収は、組成物中に、吸収を遅らせる薬剤、例えばアルミニウムモノステアレートおよびゼラチンを使用することによって実現され得る。
【0120】
水溶液における非経口投与のために、例えば、前記液体剤形は、必要に応じて適切に緩衝され、また、前記液体希釈剤は、十分な生理食塩水またはグルコースで等張にされ得る。前記液体剤形は、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内、および腹腔内投与に特に適している。この点について、使用され得る滅菌水性媒体は、本開示を参照すれば、当業者には分かるであろう。例えば、1回の投薬量は、1mL~20mLの等張のNaCl溶液に溶解され、そして、100mL~1000mLの液体(例えば、炭酸水素ナトリウム緩衝生理食塩水に加えられるか、または注入を予定している部位に注射され得る。
【0121】
ある特定の実施形態において、無菌の注射可能溶液は、本明細書に記載されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルス(modified onncolytic poxvirus)またはそれを含有する医薬組成物を、必要とされる量で、適切な溶媒中に、必要に応じて、上記に列挙されている種々の他の成分と共に配合し、続いて、濾過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散液は、種々の滅菌された活性成分を、基礎となる分散媒と、上記に列挙されているうちの必要とされる他の成分とを含有する、滅菌されたビヒクルの中に配合することによって調製される。本明細書に開示されている組成物は、中性または塩の形態で製剤化され得る。医薬的に許容され得る塩としては、酸付加塩(前記タンパク質のフリーなアミノ基によって形成される)があげられ、これは、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸などによって形成される。フリーなカルボキシル基によって形成される塩は、また、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基由来であり得る。製剤化の後、前記医薬組成物は、その投与製剤に適合する様式で、かつ治療に有効な量で投与され得る。
【0122】
ある特定の実施形態において、本開示の医薬組成物は、有効量の本明細書に開示されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルスと、薬学的に許容される担体と組み合わせて含み得る。「薬学的に許容される」は、本明細書で使用される場合、活性成分の生物活性の有効性を妨害しない、および/または投与を受ける患者に対して有毒ではない任意の担体を含む。適切な医薬担体の非限定的な例としては、リン酸緩衝食塩水溶液、水、エマルジョン(例えば、油/水エマルジョン)、種々のタイプの湿潤剤、および滅菌溶液があげられ得る。医薬的に適合性の担体の追加の非限定的な例としては、ゲル、生体吸着性マトリックス材料、前記改変腫瘍溶解性ウイルスを含有するインプラントエレメント、または任意の他の適切なビヒクル、送達もしくは投薬する手段もしくは材料があげられ得る。このような担体は、従来の方法によって製剤化することができ、前記対象に有効量で投与することができる。
製造方法
【0123】
本開示の改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、当業者に知られている方法によって製造することができる。ある特定の実施形態において、前記改変腫瘍溶解性ウイルスは、適切な宿主細胞(例えば、HeLa細胞、293細胞、またはベロ細胞)内で増殖させ、宿主細胞から単離し、また、経時的な感染性の喪失を最小化するように、前記ウイルスの安定性およびインテグリティーを助長する条件で保存され得る。いくつかの例において、高いパーセンテージのEEV粒子を生成させる前記改変腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスを製造するためのプロセスにおける改善された接種材料の役割を果たし得る。ある特定の例示的な方法において、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、細胞スタック、ローラーボトル、または潅流バイオリアクターを使用して、宿主細胞内で増殖させる。いくつかの例において、前記改変腫瘍溶解性ウイルスを精製するための下流の方法は、濾過(例えば、デプス濾過、タンジェンシャルフロー濾過、またはそれらの組み合わせ)、超遠心分離、またはクロマトグラフ的捕捉を含み得る。前記改変腫瘍溶解性ウイルスは、例えば、凍結または乾燥(例えば、凍結乾燥によって)保存され得る。ある特定の実施形態において、投与の前に、保存した改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、再構成され(保存のために乾燥させた場合)、また、投与のための薬学的に許容される担体中に希釈され得る。
【0124】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルスは、前記改変腫瘍溶解性ウイルスにおける改変を含まないがその他の点では同一のウイルスと比較して、HeLa細胞および293細胞において、より高い力価を示す。ある特定の例において、HeLa細胞および293細胞におけるより高い力価は、改変腫瘍溶解性ポックスウイルスにおいて見られる。
組み合わせ療法
【0125】
ある特定の実施形態において、本開示の方法は、本明細書に開示されている改変腫瘍溶解性ポックスウイルスまたはそれを含有する医薬組成物を投与することを含み、1つまたはそれを超えるさらなる療法が、それに続くか、先立つか、または組み合わされる。前記さらなる療法の例としては、それらに限定されないが、化学療法、放射線照射、追加のウイルスによる腫瘍溶解性ウイルス療法、免疫調節タンパク質による処置、抗癌剤、またはそれらの任意の組み合わせがあげられ得る。前記さらなる療法は、前記改変ポックスウイルス(例えば、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスなど)の投与と同時に、またはそれに引き続いて与えられ得る。ある特定の実施形態において、本開示の方法は、本明細書に開示されている改変腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含み得、1つまたはそれを超える抗癌剤または癌療法が、それに続くか、先立つか、または組み合わされる。抗癌剤は、それらに限定されないが、化学療法剤、放射線療法剤、サイトカイン、免疫チェックポイント阻害剤、抗血管新生剤、アポトーシス誘導剤、抗癌抗体、および/または抗サイクリン依存性キナーゼ剤を含み得る。ある特定の実施形態において、前記癌療法は、化学療法、生物学的療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、抗血管療法、凍結療法、毒素療法、および/または手術、またはそれらの組み合わせを含み得る。ある特定の実施形態において、本開示の方法は、本明細書に開示されている改変ウイルスを投与することを含み得、本開示の改変腫瘍溶解性ウイルスが、それに続くか、先立つか、または組み合わされる。前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルス(例えば、前記改変ワクシニアウイルスなど)と化学療法の組み合わせは、前記改変腫瘍溶解性ウイルスにおける前記改変を含まない改変腫瘍溶解性ウイルスにおいては見られない相乗効果を実現する。上記組み合わせの前記相乗効果は、化学療法(例えば、タキソール(登録商標)など)の用量を低下させるために有利に使用され得る。よって、ここで開示されている(前記改変ウイルスによる)処置方法は、化学療法に伴う毒性(例えば、化学療法に反応するが、治療用量において副作用に苦しむ患者)を低減させ得る。前記相乗効果は、ある特定のケースにおいて、化学療法単独または腫瘍溶解性ワクシニアウイルス単独と比較して、腫瘍増殖の低下をもたらし得る。腫瘍増殖の低下は、例えば、約2%~約50%(例えば、約5%、約10%、約20%、約25%、約35%、約45%、または約50%など)であり得る。
【0126】
ある特定の実施形態において、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルスなど)を使用した処置は、単独で、または1つまたは免疫調節剤と組み合わせて使用され得る。免疫調節剤は、腫瘍または癌に関連する抗ウイルス免疫性を抑制することが可能な任意の化合物、分子、または物質を含み得る。ある特定の実施形態において、前記免疫調節剤は、前記改変ウイルスに対する自然免疫または適応免疫を抑制することが可能であり得る。免疫調節剤の非限定的な例としては、抗CD33抗体またはその可変領域(本明細書において、その抗原結合フラグメントとも呼ばれる)、抗CD11b抗体またはその可変領域(本明細書において、その抗原結合フラグメントとも呼ばれる)、COX2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、サイトカイン(例えば、IL-12、GM-CSF、IL-2、IFN3、およびIFNγなど)、およびケモカイン(例えば、MIP-1、MCP-1、およびIL-8など)があげられる。ある特定の実施形態において、前記免疫調節剤は、免疫チェックポイントモジュレーター、例えば、それらに限定されないが、抗CTLA4、抗PD-1、および抗PD-L1、ならびにTLRアゴニスト(例えば、ポリI:C)などを含み得る。いくつかの例において、前記免疫調節剤は、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、PD-1のアンタゴニスト(例えば、PD-1に結合するアンタゴニスト抗体)、PD-L1のアンタゴニスト(例えば、PD-L1に結合するアンタゴニスト抗体)、CTLA-4のアンタゴニスト(例えば、CTLA-4に結合するアンタゴニスト抗体)、A2ARのアンタゴニスト(例えば、A2ARに結合するアンタゴニスト抗体)、B7-H3のアンタゴニスト(例えば、B7-H3に結合するアンタゴニスト抗体)、B7-H4のアンタゴニスト(例えば、B7-H4に結合するアンタゴニスト抗体)、BTLAのアンタゴニスト(例えば、BTLAに結合するアンタゴニスト抗体)、IDOのアンタゴニスト(例えば、IDOに結合するアンタゴニスト抗体)、KIRのアンタゴニスト(例えば、KIRに結合するアンタゴニスト抗体)、LAG3のアンタゴニスト(例えば、LAG3に結合するアンタゴニスト抗体)、TIM-3のアンタゴニスト(例えば、TIM3に結合するアンタゴニスト抗体)などを含み得る。いくつかの実施形態において、前記さらなる療法は、免疫チェックポイントレギュレーターを投与することを含み得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、TGN1412であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、NKTR-214であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、MEDI0562であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、MEDI6469であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、MEDI6383であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、JTX-2011であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、キイトルーダ(ペンブロリズマブ)であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、オプジーボ(ニボルマブ)であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、ヤーボイ(イピリムマブ)であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、トレメリムマブであり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、テセントリク(アテゾリズマブ)であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、MGA271であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、indoximodであり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、エパカドスタットであり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、lirilumabであり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、BMS-986016であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、MPDL3280Aであり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、アベルマブであり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、デュルバルマブであり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、MEDI4736であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、MEDI4737であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、TRX518であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、MK-4166であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、ウレルマブ(BMS-663513)であり得る。一例において、前記免疫チェックポイントレギュレーターは、PF-05082566(PF-2566)であり得る
【0127】
ある特定の例において、前記さらなる療法が放射線照射である場合、例示的な線量は、5,000ラド(50Gy)~100,000ラド(1000Gy)、または50,000ラド(500Gy)、または上記範囲内の他の適切な線量である。あるいは、前記照射量は、約30~60Gy、約40~約50Gy、約40~48Gy、または約44Gy、または上記範囲内の他の適切な線量であり得、前記線量は、例えば、上記の線量測定方法によって決定される。本明細書で使用される場合、「Gy」は、100ラドに等しい、放射線照射の特定の吸収線量についての単位を指し得る。Gyは、「Gray」の省略形である。
【0128】
ある特定の例において、前記さらなる療法が化学療法である場合、例示的な化学療法剤としては、それらに限定されないが、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体、エチレンイミン、アルキルスルホネート、ヒドラジンおよびトリアジン、ニトロスウレア(nitrosureas)、ならびに金属塩)、植物アルカロイド(例えば、ビンカアルカロイド、タキサン、ポドフィロトキシン、およびカンプトテカン(camptothecan)アナログ)、抗腫瘍抗生物質(例えば、アントラサイクリン、クロモマイシンなど)、代謝拮抗薬(例えば、葉酸拮抗薬、ピリミジンアンタゴニスト、プリンアンタゴニスト、およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤)、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、および種々の抗新生物薬(例えば、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤、副腎皮質ステロイド阻害剤、酵素、微小管阻害剤、およびレチノイド)があげられ得る。例示的な化学療法剤としては、限定されないが、アナストロゾール(アリミデックス(登録商標))、ビカルタミド(カソデックス(登録商標))、硫酸ブレオマイシン(Blenoxane(登録商標))、ブスルファン(ミレラン(登録商標))、ブスルファン注射剤(ブスルフェクス(登録商標))、カペシタビン(ゼローダ(登録商標))、N4-ペントキシカルボニル-5-デオキシ-5-フルオロシチジン、カルボプラチン(パラプラチン(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、クロラムブシル(リューケラン(登録商標))、シスプラチン(Platinol(登録商標))、クラドリビン(ロイスタチン(登録商標))、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)またはNeosar(登録商標))、シタラビン、シトシンアラビノシド(Cytosar-U(登録商標))、シタラビンリポソーム注射剤(デポサイト(登録商標))、ダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))、ダクチノマイシン(Actinomycin D、Cosmegan)、塩酸ダウノルビシン(Cerubidine(登録商標))、ダウノルビシンクエン酸塩リポソーム注射剤(DaunoXome(登録商標))、デキサメタゾン、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、塩酸ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標)、Rubex(登録商標))、エトポシド(ベプシド(登録商標))、リン酸フルダラビン(フルダラ(登録商標))、5-フルオロウラシル(Adrucil(登録商標)、Efudex(登録商標))、フルタミド(Eulexin(登録商標))、テザシチビン(tezacitibine)、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン(difluorodeoxycitidine))、ヒドロキシウレア(ハイドレア(登録商標))、イダルビシン(イダマイシン(登録商標))、イホスファミド(IFEX(登録商標))、イリノテカン(Camptosar(登録商標))、L-アスパラギナーゼ(ELSPAR(登録商標))、ロイコボリンカルシウム、メルファラン(アルケラン(登録商標))、6-メルカプトプリン(プリネトール(登録商標))、メトトレキサート(Folex(登録商標))、ミトキサントロン(ノバントロン(登録商標))、マイロターグ、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、phoenix(イットリウム90/MX-DTPA)、ペントスタチン、カルムスチンインプラント(ギリアデル(登録商標))によるポリフェプロサン20、クエン酸タモキシフェン(ノルバデックス(登録商標))、テニポシド(Vumon(登録商標))、6-チオグアニン、チオテパ、チラパザミン(Tirazone(登録商標))、注射用塩酸トポテカン(Hycamptin(登録商標))、ビンブラスチン(Velban(登録商標))、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標))、およびビノレルビン(ナベルビン(登録商標))、イブルチニブ、イデラリシブ、ならびにブレンツキシマブベドチンがあげられ得る。
【0129】
例示的なアルキル化剤としては、限定されないが、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、およびトリアゼン)、すなわち、ウラシルマスタード(アミノウラシルマスタード(登録商標)、Chlorethaminacil(登録商標)、Demethyldopan(登録商標)、Desmethyldopan(登録商標)、Haemanthamine(登録商標)、Nordopan(登録商標)、ウラシルナイトロジェンマスタード(登録商標)、Uracillost(登録商標)、Uracilmostaza(登録商標)、Uramustin(登録商標)、Uramustine(登録商標))、クロルメチン(Mustargen(登録商標))、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)、Neosar(登録商標)、Clafen(登録商標)、エンドキサン(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(商標))、イホスファミド(Mitoxana(登録商標))、メルファラン(アルケラン(登録商標))、クロラムブシル(リューケラン(登録商標))、ピポブロマン(Amedel(登録商標)、Vercyte(登録商標))、トリエチレンメラミン(Hemel(登録商標)、Hexalen(登録商標)、Hexastat(登録商標))、トリエチレンチオホスホルアミン、テモゾロミド(Temodar(登録商標))、チオテパ(Thioplex(登録商標))、ブスルファン(Busilvex(登録商標)、ミレラン(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、ロムスチン(CeeNU(登録商標))、ストレプトゾシン(ザノサー(登録商標))、ならびにダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))があげられ得る。追加の例示的なアルキル化剤としては、限定されないが、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標));テモゾロミド(Temodar(登録商標)およびテモダール(登録商標));ダクチノマイシン(アクチノマイシンD、コスメゲン(登録商標)としても知られる);メルファラン(L-PAM、L-メルファラン、およびフェニルアラニンマスタード、アルケラン(登録商標)としても知られる);アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)、Hexalen(登録商標)としても知られる);カルムスチン(BiCNU(登録商標));ベンダムスチン(トレアンダ(登録商標));ブスルファン(ブスルフェクス(登録商標)およびミレラン(登録商標));カルボプラチン(パラプラチン(登録商標));ロムスチン(CCNU、CeeNU(登録商標)としても知られる);シスプラチン(CDDP、Platinol(登録商標)、およびPlatinol(登録商標)-AQとしても知られる);クロラムブシル(リューケラン(登録商標));シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)およびNeosar(登録商標));ダカルバジン(DTIC、DIC、およびイミダゾールカルボキサミド、DTIC-Dome(登録商標)としても知られる);アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)、Hexalen(登録商標)としても知られる);イホスファミド(IFEX(登録商標));Prednumustine;プロカルバジン(Matulane(登録商標));メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード、ムスチン、および塩酸メクロルエタミン(mechloroethamine)、Mustargen(登録商標)としても知られる);ストレプトゾシン(ザノサー(登録商標));チオテパ(チオホスホアミド、TESPA、およびTSPA、Thioplex(登録商標)としても知られる);シクロホスファミド(エンドキサン(登録商標)、シトキサン(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(登録商標));および塩酸ベンダムスチン(トレアンダ(登録商標))があげられる。
【0130】
例示的なアントラサイクリンとしては、限定されないが、例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)およびRubex(登録商標));ブレオマイシン(Lenoxane(登録商標));ダウノルビシン(塩酸ダウノルビシン(dauorubicin)、ダウノマイシン、および塩酸ルビドマイシン、Cerubidine(登録商標));ダウノルビシンリポソーム(クエン酸ダウノルビシンリポソーム、DaunoXome(登録商標));ミトキサントロン(DHAD、ノバントロン(登録商標));エピルビシン(Ellence(商標));イダルビシン(イダマイシン(登録商標)、イダマイシンPFS(登録商標));マイトマイシンC(Mutamycin(登録商標));ゲルダナマイシン;ハービマイシン;ラビドマイシン(ravidomycin);およびデスアセチルラビドマイシンがあげられ得る。
【0131】
例示的なビンカアルカロイドとしては、それらに限定されないが、酒石酸ビノレルビン(ナベルビン(登録商標))、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標))、およびビンデシン(Eldisine(登録商標)));ビンブラスチン(硫酸ビンブラスチン、ビンカロイコブラスチン、およびVLB、Alkaban-AQ(登録商標)およびVelban(登録商標)としても知られる);およびビノレルビン(ナベルビン(登録商標))があげられ得る。
【0132】
例示的なプロテアソーム阻害剤としては、それらに限定されないが、ボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標));カルフィルゾミブ(PX-171-007、(S)-4-メチル-N-((S)-1-(((S)-4-メチル-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソペンタン-2-イル)アミノ)-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル)-2-((S)-2-(2-モルホリノアセタミド)-4-フェニルブタンアミド)-ペンタンアミド);マリゾミブ(NPI-0052);クエン酸イキサゾミブ(MLN-9708);デランゾミブ(CEP-18770);およびO-メチル-N-[(2-メチル-5-チアゾリル)カルボニル]-L-セリル-O-メチル-N-[(1S)-2-[(2R)-2-メチル-2-オキシランyl]-2-オキソ-1-(フェニルメチル)エチル]-L-セリンアミド(ONX-0912)があげられ得る。
【0133】
「と組み合わせて」は、本明細書で使用される場合、前記改変ポックスウイルス(例えば、本明細書に記載されている腫瘍溶解性ワクシニアウイルス)またはそれを含む医薬組成物と、前記さらなる療法(例えば、1つまたはそれを超える薬剤を含むさらなる療法)が、処理レジメンまたは計画の一部として、対象に与えられることを意味する。ある特定の実施形態において、組み合わせて使用されることは、前記改変腫瘍溶解性ウイルスと前記1つまたはそれを超える薬剤が、投与前に物理的に組み合わされていること、またはそれらが同じ時間帯に投与されることを必要としない。例えば、限定するものではないが、前記改変腫瘍溶解性ウイルスと前記1つまたはそれを超える薬剤は、処置を受けている前記対象に、一緒に投与してもよく、または同時に、もしくは任意の順序で連続的に、もしくは異なる時点に投与してもよい。
【0134】
前記さらなる療法は、種々の実施形態において、液体剤形、固体剤形、座剤、吸入可能な剤形、鼻腔内剤形で、リポソーム製剤、ナノ粒子を含む剤形、マイクロ粒子を含む剤形、ポリマー剤形、またはそれらの任意の組み合わせで投与され得る。ある特定の実施形態において、前記さらなる療法は、約1週間~約2週間、約2週間~約3週間、約3週間~約4週間、約4週間~約5週間、約6週間~約7週間、約7週間~約8週間、約8週間~約9週間、約9週間~約10週間、約10週間~約11週間、約11週間~約12週間、約12週間~約24週間、約24週間~約48週間、約48週間もしくは約52週間、またはそれより長い期間にわたって投与され得る。前記さらなる療法の投与頻度は、ある特定の例において、1日1回、1日2回、週に1回、3週に1回、4週に1回(または月1回)、8週に1回(または2か月に1回)、12週に1回(または3か月に1回)、または24週に1回(または6か月に1回)であり得る。ある特定の実施形態において、癌を有する対象を処置する方法は、前記対象に、有効量の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス(例えば、本開示の改変腫瘍溶解性ワクシニアウイルスなど)を投与することを含み得る。ある特定の実施形態において、本開示の方法は、前記対象に、有効量の1つまたはそれを超える薬剤を投与することをさらに含み得る。例えば、限定するものではないが、前記薬剤は、上記のように、抗癌剤、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
キット
【0135】
実施形態において、本開示は、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス(例えば、本明細書に記載されている改変腫瘍溶解性ワクシニアウイルスなど)を投与するためのキットを提供する。ある特定の実施形態において、本開示のキットは、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス(例えば、本明細書に記載されている改変腫瘍溶解性ワクシニアウイルスまたは改変腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む医薬組成物など)を含み得る。ある特定の実施形態において、本開示のキットは、1つまたはそれを超えるコンポーネント、例えば、使用のための指示、デバイスおよび追加の試薬、ならびに、例えば、上記で開示されている方法を実施するためのチューブ、容器、およびシリンジなどのコンポーネントをさらに含み得る。ある特定の実施形態において、本開示のキットは、改変ウイルスと組み合わせて投与され得る、1つまたはそれを超える薬剤(例えば、抗癌剤免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つ)をさらに含み得る。
【0136】
ある特定の実施形態において、本開示のキットは、本明細書に開示されている改変ウイルスを含有する、1つまたはそれを超える容器を含み得る。例えば、限定するものではないが、本開示のキットは、本開示の改変腫瘍溶解性ウイルスを含有する1つまたはそれを超える容器を含み得る。
【0137】
ある特定の実施形態において、本開示のキットは、使用のための指示、前記改変腫瘍溶解性ウイルスを対象に投与するためのデバイス、または追加の薬剤もしくは化合物を対象に投与するためのデバイスを含み得る。例えば、限定するものではないが、前記指示は、前記改変腫瘍溶解性ウイルス、ならびに、必要に応じて、前記キットに含まれる他のコンポーネント、および投与のための方法(前記対象の適切な状態、適切な投薬量、および前記改変ウイルスを投与するための適切な投与方法を決定するための方法を含む)の説明を含み得る。指示は、また、処置の継続期間にわたって、前記対象をモニタリングするためのガイダンスも含み得る。
【0138】
ある特定の実施形態において、本開示のキットは、前記改変腫瘍溶解性ウイルスを対象に投与するためのデバイスを含み得る。医療用薬物および医薬組成物を投与するための、当該技術分野において知られている種々のデバイスの任意のものが、本明細書に記載されているキットに含められ得る。限定するものではないが、このようなデバイスとしては、例えば、皮下針、静脈内注射針、カテーテル、無針注射デバイス、吸入器、および液体ディスペンサー(例えば、点眼器など)があげられる。ある特定の実施形態において、(例えば、静脈内注入、腫瘍内注入、腹腔内注射によって)全身送達される改変腫瘍溶解性ウイルスは、皮下針およびシリンジと共に、キットに含められ得る。
【実施例
【0139】
以下の実施例は記載されている実施形態をさらに例証するが、本開示の範囲を限定するものではない。
【0140】
実施例1:WO34を含む改変腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの調製および特徴付け
【0141】
本研究によって、ウイルスからのEEV粒子の放出を増加させるワクシニアウイルスにおける新たな変異(WR株)が同定および特徴付けされた。前記EEV粒子は、前記ウイルスの腫瘍溶解能を(例えば、血流を通した送達および伝播によって)増大させることができ、また、ワクシニアの他の(例えば、ワクチンとしての)治療用途のための利点をもたらし得る。
【0142】
WR A34R遺伝子のランダム変異誘発を行い、それによって生成されたワクシニアウイルス株(前記A34R遺伝子に種々の変異を含む)を、高レベルのEEVの生成/放出を増強する変異を含む株を同定するために、EEV粒子生成についてスクリーニングした。A34Rにおける追加の点変異(K119E)と共にK151E変異を含む株が同定された。A34Rにおいて二重の変異(K119EおよびK151E)(前記WO34)を含む株のケースにおいて、EEV粒子生成レベルの著しい増加が観察された。実施された追加の研究によって、前記WO34(A34R二重変異K119EおよびK151E)を含む腫瘍溶解性株は、マウスモデルにおける癌治療において、増強された治療効果を呈することが示された。
WO34を同定するためのスクリーニング方法
【0143】
ウイルス遺伝子VACWR157(本明細書において、A34Rタンパク質をコードするA34R遺伝子とも呼ばれる)のランダム変異は、PCRを使用して行った。前記A34Rオープンリーディングフレーム(ORF)は、ヌクレオチドアナログ8-oxo-dGTPとdPTPの存在下で、Taqポリメラーゼを使用して増幅させた。VACWR157の5’領域および3’領域もまた、直接、PCRによって増幅させた。後者は、同様にPCRによって、GFPレポーター(5’末端にGFP)とアセンブルさせた。最後に、前記の5’を変異させたVACWR157と、GFP-3’フラグメントを、フラグメント間の短い相補性領域(これは、PCRプライマーによって付加した)を利用して、全てPCRによってアセンブルした。単純化したアセンブリースキームを、図1に示す(オーバーハングしたプロモーターおよびプライマーは記載せず)。
【0144】
ワクシニアウイルスDNAの5’領域および3’領域が隣接した、変異させたVACWR157とGFPを含む完全にアセンブルしたフラグメントを精製し、143Bヒト骨肉腫細胞をトランスフェクトするために使用した。トランスフェクトした細胞に、次いで、ワクシニアウイルスを感染させ、組換えによって誘発して、変異させたVACWR157ウイルスライブラリーを生成させた。EEV生成が増強された変異体を優先的に選択するために、前記ウイルスプールが感染したフラスコからの培地を、未感染のフラスコに加えた。クローンプラークを、連続的感染を数回行った後に単離し、EEV生成が増強されたA34R中の変異を、サンガーシークエンシングによって特徴付けした。
【0145】
単離された全てのクローンにおいて、共通して、2つのミスセンス変異、すなわちK119EおよびK151Eと、F129における1つのサイレント変異(配列番号2)が観察された。この変異タンパク質は、WO34(配列番号2)と呼ばれ、1つの対応するクローンにUID WO0064R.002が割り当てられている。このクローンの初期コホートにおけるGFPレポーターは、loxPサイトが隣接しておらず、除去することができない。コドンスクランブルした、WO34をコードするORFを合成し、loxP隣接GFPを含むトランスファーベクター(pWR157-KE.R)をクローニングするために使用した。WO34をコードする新たな組換えウイルスを、蛍光プラークから選択し、次いで、Creリコンビナーゼ発現細胞に感染させるために使用した。レポーターを欠くクローンを、Cre処理の後に選択した。
表1:A34R遺伝子およびタンパク質配列
【表1-1】
【表1-2】
WO34を含むEEV増強ワクシニアウイルスによって形成されるウイルスプラークコメットテイル
【0146】
あらかじめ力価を求めたEEV増強ワクシニアウイルスを希釈し、6ウェルプレート中のコンフルエントなBS-C-40細胞上にのせた。プレートをインキュベートし、48時間静置しておき、次いで、細胞をクリスタルバイオレットで染色して異常なEEV生成によるコメットテイル形成の違いを調べた。結果を図2に示す。図2に示されているように、WO34を含むワクシニアウイルス株は、WI株(WR株におけるA34R単一の変異)およびWR株(非変異型A34R)と比較して、増強されたコメットテイル形成を示した。WO34を含むワクシニアウイルス株のコメットテイル形成は、目に見えて増加していた。
WO34を含むEEV増強ワクシニアウイルスの中和
【0147】
異なる株のワクシニアウイルス(WO34含有ワクシニアウイルス、WI株、IHD-J株、およびWR株)を使用した2つの別々の実験において、HeLa細胞を6ウェルプレートでコンフルエントになるまで増殖させ、1MOI(感染多重度)のワクシニアウイルス株で感染させた。24時間後、1mLの培養培地を抜き取り、800gで遠心した。次いで、約500μlの上清を取り出し、ウイルスプラークアッセイに使用した。段階希釈の間、サンプルを抗L1 NR-45114抗体または抗VIG抗体で処理し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、希釈物を、プラークアッセイのために、コンフルエントなBS-C-40細胞の6ウェルプレートに加えた。1.5時間後、培地を、3%CMCのCM10で交換した。48時間後、図3A~3Bに示すように、細胞をクリスタルバイオレットで染色し、ウイルスプラークをカウントして、前記HeLa細胞上清中のウイルスの力価および中和抗体のブロッキング能力を決定した(図3Aは、ウイルスプラーク力価と、それに続く前記抗L1 NR-45114抗体による処理を示し、図3Bは、同様に、ウイルスプラーク力価と、それに続く前記抗L1R抗体および前記VIG抗体による処理を示す)。
WO34を含むEEV増強ワクシニアウイルスによる感染後の細胞生存率
【0148】
96ウェルプレートにおいて、HCT116またはMC38細胞株を播種し、90%コンフルエントになるまで増殖させた。次いで、細胞に1MOIの異なるワクシニアウイルス株(WR株、IHD-J株、WI株、WO34含有株)を感染させた。毎日、24時間ごとに、CellTiter 96 AQueous Non-Radioactive Cell Proliferationキット(Promega)で細胞生存率を調べた。全てのウェルからブランク値の平均を差し引き、未感染対照群の平均値を算出し、次いで各感染ウェルの相対値を(A490/未感染細胞の平均)として算出することによって、相対的生存率を算出した。結果を図4に示す(上のパネル:MC38細胞;下のパネル:HCT116細胞)。
癌細胞におけるWO34を含むEEV増強ワクシニアウイルスのウイルス複製アッセイ
【0149】
別の実験において、HCT116細胞またはMC38細胞を12ウェルプレート上で90%コンフルエントになるまで増殖させ、3日反復アッセイにおいて、1日ごとに1プレートを使用した。全てのプレートは、同じ日に、1MOIの異なるワクシニアウイルス株(WR株、IHD-J株、WI株、WO34含有株)で感染させた。感染後24時間ごとに、1プレートを-80℃のフリーザー内で凍結させた。プレートは、細胞を破壊するために、凍結解凍を2回行い、その溶解物BS-C-40細胞上のウイルスプラークアッセイに使用した。プラーク形成単位/mlを図5に示す(上のパネル:HCT116細胞;下のパネル:MC38細胞)。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
少なくとも2つの変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルスであって、前記少なくとも2つの変異が、野生型ワクシニアウイルスA43Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119およびLys151に対応する位置にある、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目2)
前記位置Lys119に対応する位置にある前記変異が、Lys119Gluである、項目1の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目3)
前記位置Lys151に対応する位置にある前記変異が、Lys151Gluである、項目1または2の改変腫瘍溶解性ウイルス。
(項目4)
前記野生型ワクシニアウイルスA43Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119およびLys151に対応する位置にある前記少なくとも2つの変異が、それぞれ、Lys119GluおよびLys151Gluである、項目1の改変腫瘍溶解性ウイルス。
(項目5)
前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の中のpH5において正に荷電するアミノ酸残基にある、少なくとも2つの天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目6)
前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置110位置にない少なくとも2つの天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目7)
前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の中のアスパラギン酸残基の位置にない少なくとも2つの天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目8)
独立して、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の中のアラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリン残基にある、少なくとも2つの天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目9)
前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys151以外の位置のリジン残基における天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目10)
前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119における天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目11)
前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の中のpH5において正に荷電するアミノ酸残基にある、少なくとも2つの天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルスであって、前記少なくとも2つの天然に存在しない変異を含まないがその他の点では同一の腫瘍溶解性ウイルスと比較して、ウイルスプラーク形成アッセイにおいて、増大した数のコメットテイル型プラークを生成させる、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目12)
少なくとも2つの天然に存在しない変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、改変腫瘍溶解性ポックスウイルスであって、前記天然に存在しない変異のいずれかが前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の中の位置110にある場合、コードされているアミノ酸が、アスパラギン残基ではない、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目13)
腫瘍溶解性ポックスウイルスの野生型株と比較して、中和抗体に対して増大した耐性を示す改変腫瘍溶解性ポックスウイルスであって、前記増大した耐性が、抗L1 NR-45114抗体または抗VIG抗体による処理に続くウイルスプラークアッセイにおける、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスまたは前記野生型株によって生成されるプラークの数によって測定され、少なくとも約55,000プラーク形成単位/mLを生成させる、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目14)
中和抗体による処理に続くウイルスプラークアッセイにおいて、少なくとも約55,000プラーク形成単位/mLを生成させる、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目15)
前記中和抗体が、抗L1 NR-45114抗体または抗VIG抗体である、項目10の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目16)
前記A34Rタンパク質またはそのフラグメントが、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys151における変異をさらに含む、項目9または10の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目17)
pH5において正に荷電する前記アミノ酸残基が、リジン残基である、項目1の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目18)
前記核酸が、前記ウイルス遺伝子VACWR157の中の前記コード配列に対して、少なくとも約80%相同であるヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含む、項目5~12および16~17のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目19)
前記核酸が、配列番号3として規定されるヌクレオチド配列に対して、少なくとも約80%相同であるヌクレオチド配列を含む、項目5~12および16~17のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目20)
前記2つの天然に存在しない変異の少なくとも1つが、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119にある、項目5~8、11~12、および17~19のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目21)
前記天然に存在しない変異が、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119にある、項目9および18~19のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目22)
前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119における前記変異が、Lys119Gluである、項目10または21の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目23)
前記2つの天然に存在しない変異の少なくとも1つが、前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys151にある、項目5~8、11~12、17~19、および20~22のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目24)
前記野生型A34Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys151における前記変異が、Lys151Gluである、項目23の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目25)
変異Lys119GluおよびLys151Gluを含むA34Rタンパク質を発現する、改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目26)
配列番号3の位置305-307が、ヌクレオチドGAAまたはGAGを含む、項目19~23のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目27)
配列番号3の位置451-453が、ヌクレオチドGAAまたはGAGを含む、項目19~23および26のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目28)
前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスが、前記少なくとも2つの天然に存在しない変異を含まないがその他の点では同一の腫瘍溶解性ウイルスと比較して、細胞内成熟ウイルス形態よりも多量の細胞外エンベロープウイルス形態を生成させる、項目5~8、11~12、および17~27のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目29)
前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスが、前記天然に存在しない変異を含まないがその他の点では同一の腫瘍溶解性ウイルスと比較して、細胞内成熟ウイルス形態よりも多量の細胞外エンベロープウイルス形態を生成させる、項目9~10、16、および21~22のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ウイルス。
(項目30)
治療的タンパク質または診断的タンパク質の少なくとも1つをコードする外来性核酸をさらに含む、項目1~29のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目31)
前記外来性核酸が、ケモカイン受容体、膜結合タンパク質、ヒアルロナンを分解する能力がある微生物タンパク質、微生物タンパク質、SOCS3、PH-20、HMGB1、PIAS3、IL15、IL15-Rα、LIGHT、ITAC、フラクタルカイン、CCL5、N1L、免疫チェックポイントモジュレーター、代謝調節タンパク質、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つをコードし得る、項目30の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目32)
ケモカイン受容体をコードする前記外来性核酸を含み、前記ケモカイン受容体が、CXCR4およびCCR2の少なくとも1つを含む、項目31の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目33)
前記膜結合タンパク質をコードする前記外来性核酸を含む、項目31または32の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目34)
前記膜結合タンパク質が、膜結合型ヒアルロニダーゼを含む、項目33の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目35)
前記膜結合型ヒアルロニダーゼが、PH-20を含む、項目34の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目36)
前記PH-20が、GPIアンカー型である、項目35の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目37)
ヒアルロナンを分解する能力がある前記微生物タンパク質をコードする前記外来性核酸を含み、前記微生物タンパク質が、分泌型ヒアルロニダーゼを含む、項目31~36のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ウイルス。
(項目38)
前記分泌型ヒアルロニダーゼが、HysA、lin、sko、およびrv、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む、項目37の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目39)
前記微生物タンパク質をコードする前記外来性核酸を含む、項目31~38のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目40)
前記微生物タンパク質が、HysAを含む、項目43の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目41)
前記ウイルスの前記ゲノムにおける改変をさらに含み、前記改変が、B5R遺伝子の変異または欠失を含む、項目1~40のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目42)
前記ウイルスの前記ゲノムにおける前記改変を含み、前記改変が、前記B5R遺伝子のSCR領域における変異または欠失を含み、前記SCR領域が、SCR1、SCR3、SCR4、またはそれらの任意の組み合わせを含み、前記SCR領域が、SCR2を含まない、項目41の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目43)
チミジンキナーゼ(TK)、B8R、B18R、B15R、K7R、C6L、K4L、F8L、F9L、F10L、F17R、E1L、E4L、E6R、E8R、E10R、E11L、O2L、I1L、I2L、I3L、I5L、I7L、I8R、G1L、G3L、G4L、G5.5R、G7L、G9R、L1R、L3L、L4R、L5R、J1R、J4R、J6R、H1L、H2R、H3L、H4L、H5R、H6R、D1R、D2L、D3R、D6R、D7R、D8L、D11L、D12L、D13L、A2.5L、A3L、A4L、A5R、A6L、A7L、A9L、A10L、A13L、A14L、A15L、A16L、A17L、A18R、A21L、A24R、A25L、A26L、A27L、A28L、A29L、A30L、A31R、A34R、A42R、A45R、A46R、A52R、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるウイルス遺伝子の変異または欠失をさらに含む、項目1~42のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目44)
ウイルス遺伝子A52Rの変異または欠失を含む、項目43の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目45)
(i)ケモカイン受容体をコードする前記外来性核酸であって、前記ケモカイン受容体は、CXCR4およびCCR2の少なくとも1つを含む、外来性核酸;(ii)PIAS3をコードする前記外来性核酸;(iii)前記チミジンキナーゼ遺伝子の変異または欠失;(iv)前記A52R遺伝子の変異または欠失、を含む、項目31~44のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目46)
前記ウイルスが、全身送達に適している、項目1~45のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目47)
前記ウイルスが、免疫回避の能力がある、項目1~46のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目48)
前記全身送達が、経口投与、非経口投与、鼻腔内投与、舌下投与、直腸投与、経皮投与、またはそれらの任意の組み合わせを含む、項目46または47の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目49)
前記非経口投与が、静脈内注入を含む、項目48の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目50)
前記ウイルスが、腫瘍内送達に適している、項目1~49のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目51)
前記ポックスウイルスが、ワクシニアウイルスである、項目1~50のいずれか一項の改変腫瘍溶解性ポックスウイルス。
(項目52)
(i)腫瘍溶解性ポックスウイルスDNAバックボーンベクターを得ることであって、前記腫瘍溶解性ポックスウイルスDNAバックボーンベクターは、先行する項目のいずれか一項に記載の1つまたはそれを超える改変を含むこと;(ii)前記腫瘍溶解性ウイルスDNAベクターをさらに改変して操作されたDNAベクターを生成させること;(iii)哺乳動物細胞を前記操作されたDNAベクターでトランスフェクトすること;(iv)前記哺乳動物細胞を、ウイルス複製に適した条件下で培養すること;および(v)前記ウイルス粒子を回収すること、を含む、腫瘍溶解性ポックスウイルスを操作するためのプロセス。
(項目53)
前記哺乳動物細胞が、HeLa細胞、293細胞、A549細胞、またはベロ細胞を含む、項目52のプロセス。
(項目54)
項目1~53のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性ポックスウイルス、容器;および病的血管新生に関連する障害を処置するために、前記腫瘍溶解性ウイルスを対象に投与するための指示、を含むキット。
(項目55)
腫瘍を処置する方法であって、治療有効量の、項目1~54のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性ポックスウイルスを対象に投与することを含む、方法。
(項目56)
腫瘍を処置する方法であって、前記野生型A34タンパク質(配列番号4)の位置119および151における変異を含むA34Rタンパク質を発現する改変腫瘍溶解性ポックスウイルスを感染させた患者由来の白血球細胞を含む組成物を対象に投与することを含み、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスが、腫瘍微小環境においてウイルス粒子の集団を生成させる、方法。
(項目57)
前記患者由来の白血球細胞が、マクロファージを含む、項目56の方法。
(項目58)
前記患者由来の白血球細胞が、腫瘍標的化T細胞を含む、項目56の方法。
(項目59)
前記ウイルス粒子の集団の少なくとも約10%~少なくとも約90%が、ウイルスプラークアッセイで測定したとき、EEV粒子である、項目56の方法。
(項目60)
前記腫瘍微小環境から前記EEV粒子を回収し、前記EEV粒子を前記対象に静脈内投与することをさらに含む、項目56~59のいずれか一項の方法。
(項目61)
前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスが、改変腫瘍溶解性ワクシニアウイルスである、項目56~60のいずれか一項の方法。
(項目62)
宿主細胞の培養物に、少なくとも約10%~少なくとも約90%のEEV粒子を含む改変腫瘍溶解性ポックスウイルスの集団を感染させることを含むプロセスであって、前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスが、前記野生型A34タンパク質(配列番号4)の位置119および151における変異を含むA34Rタンパク質を発現する、プロセス。
(項目63)
前記改変腫瘍溶解性ポックスウイルスが、改変腫瘍溶解性ワクシニアウイルスである、項目62のプロセス。
(項目64)
癌を処置する方法であって、少なくとも2つの変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む改変腫瘍溶解性ウイルスを患者に投与することを含み、前記少なくとも2つの変異が、野生型ワクシニアウイルスA43Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119およびLys151に対応する位置にある、方法。
(項目65)
野生型ワクシニアウイルスA43Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119およびLys151に対応する位置にある前記少なくとも2つの変異が、それぞれ、Lys119GluおよびLys151Gluである、項目64の方法。
(項目66)
腫瘍を処置する方法であって、少なくとも2つの変異を含むA34Rタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む改変腫瘍溶解性ウイルスを患者に投与することを含み、前記少なくとも2つの変異が、野生型ワクシニアウイルスA43Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119およびLys151に対応する位置にある、方法。
(項目67)
野生型ワクシニアウイルスA43Rタンパク質(配列番号4)の位置Lys119およびLys151に対応する位置にある前記少なくとも2つの変異が、それぞれ、Lys119GluおよびLys151Gluである、項目66の方法。
(項目68)
前記投与が、腫瘍内注入、静脈内注入、またはそれらの組み合わせによる、項目64~67のいずれか一項の方法。
(項目69)
前記投与が、腫瘍内注入、静脈内注入、またはそれらの組み合わせによる、項目55~61のいずれか一項の方法。
(項目70)
前記腫瘍溶解性ポックスウイルスと組み合わせて、さらなる療法を施すことを含み、前記さらなる療法が、化学療法、放射線療法、追加のウイルスによる腫瘍溶解性ウイルス療法、免疫調節タンパク質による処置、CAR T細胞療法、抗癌剤、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む、項目68または69の方法。
(項目71)
前記さらなる療法が、抗CD33抗体またはその抗原結合フラグメント、抗CD11b抗体またはその抗原結合フラグメント、COX2阻害剤、サイトカイン、ケモカイン、抗CTLA4抗体またはその抗原結合フラグメント、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、およびTLRアゴニストからなる群から選択される前記免疫調節剤を含む、項目70の方法。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
【配列表】
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