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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】熱電素子
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/17 20230101AFI20250127BHJP
   H10N 10/852 20230101ALI20250127BHJP
   H10N 10/01 20230101ALI20250127BHJP
【FI】
H10N10/17 A
H10N10/852
H10N10/01
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022541280
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 KR2020019098
(87)【国際公開番号】W WO2021141302
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0002125
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517099982
【氏名又は名称】エルジー イノテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ブーン
【審査官】渡邊 佑紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/146991(WO,A1)
【文献】特開2000-164943(JP,A)
【文献】特開2008-277584(JP,A)
【文献】特開平11-177153(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0013046(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/17
H10N 10/852
H10N 10/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属基板、
前記第1金属基板上に配置された第1絶縁層、
前記第1絶縁層上で互いに離隔するように配置された複数の第2絶縁層、
前記複数の第2絶縁層上に互いに離隔するように配置された複数の第1電極、
前記複数の第1電極上に配置された複数のP型熱電レッグおよびN型熱電レッグ、
前記複数のP型熱電レッグおよびN型熱電レッグ上に配置されて互いに離隔するように配置された複数の第2電極、
前記複数の第2電極上に配置された第3絶縁層、そして、
前記第3絶縁層上に配置された第2金属基板を含み、
前記第1絶縁層はシリコン樹脂および無機物を含む樹脂層であり、前記第2絶縁層は酸化アルミニウム層またはシリコンとアルミニウムを含む複合体(composite)からなる複合体層である、熱電素子。
【請求項2】
前記複数の第1電極は前記複数の第2絶縁層に対応するように前記複数の第2絶縁層上に配置された、請求項1に記載の熱電素子。
【請求項3】
前記複数の第1電極間離隔距離は前記複数の第2絶縁層間離隔距離の0.6倍~2.8倍である、請求項1または請求項2に記載の熱電素子。
【請求項4】
前記複数の第2絶縁層のうち少なくとも一つは前記複数の第1電極のうち少なくとも一つの側面の一部にさらに配置された、請求項1または請求項2に記載の熱電素子。
【請求項5】
前記複数の第1電極のうち少なくとも一つの側面の一部に配置された前記複数の第2絶縁層のうち少なくとも一つの最大厚さは、前記複数の第1電極のうち少なくとも一つの最大厚さの0.2~0.75倍である、請求項4に記載の熱電素子。
【請求項6】
前記第1絶縁層の熱膨張係数は前記第2絶縁層の熱膨張係数より大きい、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の熱電素子。
【請求項7】
前記第1絶縁層の厚さは前記第2絶縁層の厚さより大きい、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の熱電素子。
【請求項8】
前記複数の第2電極および前記第3絶縁層間に配置された第4絶縁層をさらに含む、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の熱電素子。
【請求項9】
前記第4絶縁層は互いに離隔するように配置された複数の第4絶縁層である、請求項8に記載の熱電素子。
【請求項10】
前記複数の第2電極は前記複数の第4絶縁層に対応するように前記複数の第4絶縁層の下に配置された、請求項9に記載の熱電素子
【請求項11】
前記シリコン樹脂は分子量が5,000~30,000であるPDMSを含む、請求項10に記載の熱電素子。
【請求項12】
前記第1絶縁層のヤング率は前記第2絶縁層のヤング率より小さい、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の熱電素子。
【請求項13】
前記第2絶縁層の耐電圧性能および熱伝導性能のうち少なくとも一つは前記第1絶縁層の耐電圧性能および熱伝導性能のうち少なくとも一つより大きい、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の熱電素子。
【請求項14】
前記複数の第1電極間の離隔距離は前記複数の第2絶縁層間の離隔距離の0.6倍~0.99倍である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の熱電素子。
【請求項15】
前記複数の第1電極間の離隔距離は前記複数の第2絶縁層間の離隔距離の1.01倍~2.8倍である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の熱電素子。
【請求項16】
前記第1金属基板は銅基板であり、前記第2金属基板はアルミニウム基板である、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の熱電素子。
【請求項17】
前記第1絶縁層の総面積は前記複数の第2絶縁層の総面積より大きい、請求項1~請求項16のいずれか一項に記載の熱電素子。
【請求項18】
各第2絶縁層には2以上の第1電極が互いに離隔するように配置される、請求項1に記載の熱電素子。
【請求項19】
前記第1絶縁層のヤング率と前記第3絶縁層のヤング率が互いに異なる、請求項8に記載の熱電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱電素子に関し、より詳細には、熱電素子の絶縁層に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電現象は材料内部の電子(electron)と正孔(hole)の移動によって発生する現象であり、熱と電気の間の直接的なエネルギー変換を意味する。
【0003】
熱電素子は熱電現象を利用する素子を総称し、P型熱電材料とN型熱電材料を金属電極の間に接合させてPN接合対を形成する構造を有する。
【0004】
熱電素子は電気抵抗の温度変化を利用する素子、温度差によって起電力が発生する現象であるゼーベック効果を利用する素子、電流による吸熱または発熱が発生する現象であるペルティエ効果を利用する素子などに区分され得る。熱電素子は家電製品、電子部品、通信用部品などに多様に適用されている。例えば、熱電素子は冷却用装置、温熱用装置、発電用装置などに適用され得る。これに伴い、熱電素子の熱電性能に対する要求はますます高まっている。
【0005】
熱電素子は基板、電極および熱電レッグを含み、上部基板と下部基板の間に複数の熱電レッグがアレイの形態で配置され、複数の熱電レッグと上部基板の間に複数の上部電極が配置され、複数の熱電レッグとおよび下部基板の間に複数の下部電極が配置される。この時、上部基板と下部基板のうち一つは低温部となり、残りの一つは高温部となり得る。
【0006】
一方、熱電素子が発電用装置に適用される場合、低温部と高温部間の温度差が大きいほど発電性能が高くなる。例えば、高温部は200℃以上に温度が上昇し得る。高温部の温度が200℃以上となると、高温部側の基板と電極間熱膨張係数の差によって高温部側の基板に熱応力が加えられ、これに伴い、電極構造が破壊され得る。電極構造が破壊されると、電極上に配置されたソルダーと熱電レッグ間接合面にクラックが加えられ得、これは熱電素子の信頼性を低下させ得る。
【0007】
一方、熱電素子の熱伝達性能を向上させるために、金属基板を使おうとする試みが増加している。一般的に、熱電素子は予め設けられた金属基板上に電極および熱電レッグを順次積層する工程によって製作され得る。金属基板が使われる場合、熱伝導の側面では有利な効果が得られるものの、耐電圧が低いため長期間使用時に信頼性が低下する問題がある。
【0008】
これに伴い、熱伝導性能だけでなく、耐電圧性能および熱応力緩和性能がすべて改善された熱電素子が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が達成しようとする技術的課題は、熱伝導性能、耐電圧性能および熱応力緩和性能がすべて改善された熱電素子の絶縁層を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例に係る熱電素子は下部金属基板、前記下部金属基板上に配置された下部絶縁層、前記下部絶縁層上に互いに離隔するように配置された複数の下部電極、前記複数の下部電極上に配置された複数のP型熱電レッグおよびN型熱電レッグ、前記複数のP型熱電レッグおよびN型熱電レッグ上に配置されて互いに離隔するように配置された複数の上部電極、前記複数の上部電極上に配置された上部絶縁層、そして、前記上部絶縁層上に配置された上部金属基板を含み、前記下部絶縁層は前記下部金属基板上に配置された第1絶縁層および前記第1絶縁層上で互いに離隔するように配置された複数の第2絶縁層を含む。
【0011】
前記複数の下部電極は前記複数の第2絶縁層に対応するように前記複数の第2絶縁層上に配置され得る。
【0012】
前記複数の下部電極間離隔距離は前記複数の第2絶縁層間離隔距離の0.6倍~2.8倍であり得る。
【0013】
前記複数の第2絶縁層のうち少なくとも一つは、前記複数の下部電極のうち少なくとも一つの側面の一部にさらに配置され得る。
【0014】
前記複数の下部電極のうち少なくとも一つの側面の一部に配置された前記複数の第2絶縁層のうち少なくとも一つの最大厚さは、前記複数の下部電極のうち少なくとも一つの最大厚さの0.2~0.75倍であり得る。
【0015】
前記第1絶縁層の熱膨張係数は前記第2絶縁層の熱膨張係数より大きくてもよい。
【0016】
前記第1絶縁層の厚さは前記第2絶縁層の厚さより大きくてもよい。
【0017】
前記第1絶縁層はシリコン樹脂および無機物を含む樹脂層であり、前記第2絶縁層は酸化アルミニウム層またはシリコンとアルミニウムを含む複合体(composite)からなる複合体層であり得る。
【0018】
前記上部絶縁層は前記上部金属基板の下に配置された第3絶縁層および前記第3絶縁層の下に配置された第4絶縁層を含むことができる。
【0019】
前記第4絶縁層は互いに離隔するように配置された複数の第4絶縁層であり得る。
【0020】
前記複数の上部電極は前記複数の第4絶縁層に対応するように前記複数の第4絶縁層の下に配置され得る。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施例によると、性能が優秀で、信頼性が高い熱電素子を得ることができる。特に、本発明の実施例によると、熱伝導性能だけでなく、耐電圧性能および熱応力緩和性能まで改善された熱電素子を得ることができる。
【0022】
本発明の実施例に係る熱電素子は、小型で具現されるアプリケーションだけでなく車両、船舶、製鉄所、焼却炉などのように大型で具現されるアプリケーションにおいても適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】熱電素子の断面図である。
【0024】
図2】熱電素子の斜視図である。
【0025】
図3】シーリング部材を含む熱電素子の斜視図である。
【0026】
図4】シーリング部材を含む熱電素子の分解斜視図である。
【0027】
図5】本発明の一実施例に係る熱電素子に含まれる基板、絶縁層および電極の断面図である。
【0028】
図6】本発明の他の実施例に係る熱電素子に含まれる基板、絶縁層および電極の断面図である。
【0029】
図7図6の基板、絶縁層および電極の製作工程を示す図面である。
【0030】
図8a】実施例に係る熱電素子の断面構造である。
図8b】実施例に係る熱電素子が高温の条件下で長時間露出される場合に予想される変化を示す。
【0031】
図9a】実施例に係る熱電素子の応力および反り(warpage)をシミュレーションした結果である。
図9b】実施例に係る熱電素子の応力および反り(warpage)をシミュレーションした結果である。
【0032】
図10a】比較例に係る熱電素子の断面構造である。
図10b】比較例に係る熱電素子が高温の条件下で長時間露出される場合に予想される変化を示す。
【0033】
図11a】比較例に係る熱電素子の応力および反り(warpage)をシミュレーションした結果である。
図11b】比較例に係る熱電素子の応力および反り(warpage)をシミュレーションした結果である。
【0034】
図12】熱電素子の基板とヒートシンク間接合構造を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付された図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0036】
ただし、本発明の技術思想は説明される一部の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現され得、本発明の技術思想範囲内であれば、実施例間にその構成要素のうち一つ以上を選択的に結合、置き換えて使うことができる。
【0037】
また、本発明の実施例で使われる用語(技術および科学的用語を含む)は、明白に特に定義されて記述されない限り、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に一般的に理解され得る意味で解釈され得、辞書に定義された用語のように一般的に使われる用語は関連技術の文脈上の意味を考慮してその意味を解釈することができるであろう。
【0038】
また、本発明の実施例で使われた用語は実施例を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。
【0039】
本明細書で、単数型は文面で特に言及しない限り複数型も含むことができ、「Aおよび(と)B、Cのうち少なくとも一つ(または一つ以上)」と記載される場合、A、B、Cで組み合わせできるすべての組み合わせのうち一つ以上を含むことができる。
【0040】
また、本発明の実施例の構成要素を説明するにあたって、第1、第2、A、B、(a)、(b)等の用語を使うことができる。
【0041】
このような用語はその構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語によって該当構成要素の本質や順番または順序などに限定されない。
【0042】
そして、或る構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載された場合、その構成要素はその他の構成要素に直接的に連結、結合または接続される場合だけでなく、その構成要素とその他の構成要素の間にあるさらに他の構成要素によって「連結」、「結合」または「接続」される場合も含むことができる。
【0043】
また、各構成要素の「上(うえ)または下(した)」に形成または配置されるものと記載される場合、上(うえ)または下(した)は二つの構成要素が互いに直接接触する場合だけでなく、一つ以上のさらに他の構成要素が二つの構成要素の間に形成または配置される場合も含む。また、「上(うえ)または下(した)」と表現される場合、一つの構成要素を基準として上側方向だけでなく下側方向の意味も含むことができる。
【0044】
図1は熱電素子の断面図であり、図2は熱電素子の斜視図である。図3はシーリング部材を含む熱電素子の斜視図であり、図4はシーリング部材を含む熱電素子の分解斜視図である。
【0045】
図1~2を参照すると、熱電素子100は下部基板110、下部電極120、P型熱電レッグ130、N型熱電レッグ140、上部電極150および上部基板160を含む。
【0046】
下部電極120は下部基板110とP型熱電レッグ130およびN型熱電レッグ140の下部底面間に配置され、上部電極150は上部基板160とP型熱電レッグ130およびN型熱電レッグ140の上部底面間に配置される。これに伴い、複数のP型熱電レッグ130および複数のN型熱電レッグ140は下部電極120および上部電極150によって電気的に連結される。下部電極120と上部電極150の間に配置され、電気的に連結される一対のP型熱電レッグ130およびN型熱電レッグ140は単位セルを形成することができる。
【0047】
例えば、口出し線181、182を通じて下部電極120および上部電極150に電圧を印加すると、ペルティエ効果によってP型熱電レッグ130からN型熱電レッグ140に電流が流れる基板は熱を吸収して冷却部として作用し、N型熱電レッグ140からP型熱電レッグ130に電流が流れる基板は加熱して発熱部として作用することができる。または下部電極120および上部電極150間温度差を加えると、ゼーベック効果によってP型熱電レッグ130およびN型熱電レッグ140内の電荷が移動し、電気が発生することもある。
【0048】
ここで、P型熱電レッグ130およびN型熱電レッグ140は、ビズマス(Bi)およびテルル(Te)を主原料で含むビスマステルライド(Bi-Te)系熱電レッグであり得る。P型熱電レッグ130はアンチモン(Sb)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、鉛(Pb)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、テルル(Te)、ビズマス(Bi)およびインジウム(In)のうち少なくとも一つを含むビスマステルライド(Bi-Te)系熱電レッグであり得る。例えば、P型熱電レッグ130は全体重量100wt%に対して主原料物質であるBi-Sb-Teを99~99.999wt%で含み、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、鉛(Pb)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)およびインジウム(In)のうち少なくとも一つを0.001~1wt%で含むことができる。N型熱電レッグ140はセレニウム(Se)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、鉛(Pb)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、テルル(Te)、ビズマス(Bi)およびインジウム(In)のうち少なくとも一つを含むビスマステルライド(Bi-Te)系熱電レッグであり得る。例えば、N型熱電レッグ140は全体重量100wt%に対して主原料物質であるBi-Se-Teを99~99.999wt%で含み、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、鉛(Pb)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)およびインジウム(In)のうち少なくとも一つを0.001~1wt%で含むことができる。これに伴い、本明細書で熱電レッグは半導体構造物、半導体素子、半導体材料層、半導体物質層、半導体素材層、導電性半導体構造物、熱電構造物、熱電材料層、熱電物質層、熱電素材層などで指称されることもある。
【0049】
P型熱電レッグ130およびN型熱電レッグ140はバルク型または積層型で形成され得る。一般的にバルク型P型熱電レッグ130またはバルク型N型熱電レッグ140は熱電素材を熱処理してインゴット(ingot)を製造し、インゴットを粉砕して篩分けして熱電レッグ用粉末を獲得した後、これを焼結し、焼結体をカッティングする過程を通じて得られ得る。この時、P型熱電レッグ130およびN型熱電レッグ140は多結晶熱電レッグであり得る。多結晶熱電レッグのために、熱電レッグ用粉末を焼結する時、100MPa~200MPaで圧縮することができる。例えば、P型熱電レッグ130の焼結時に熱電レッグ用粉末を100~150MPa、好ましくは110~140MPa、さらに好ましくは120~130MPaで焼結することができる。そして、N型熱電レッグ140の焼結時に熱電レッグ用粉末を150~200MPa、好ましくは160~195MPa、さらに好ましくは170~190MPaで焼結することができる。このように、P型熱電レッグ130およびN型熱電レッグ140は多結晶熱電レッグである場合、P型熱電レッグ130およびN型熱電レッグ140の強度が高くなり得る。積層型P型熱電レッグ130または積層型N型熱電レッグ140はシート状の基材上に熱電素材を含むペーストを塗布して単位部材を形成した後、単位部材を積層しカッティングする過程を通じて得られ得る。
【0050】
この時、一対のP型熱電レッグ130およびN型熱電レッグ140は同じ形状および体積を有するか、互いに異なる形状および体積を有することができる。例えば、P型熱電レッグ130とN型熱電レッグ140の電気伝導特性が異なるため、N型熱電レッグ140の高さまたは断面積をP型熱電レッグ130の高さまたは断面積と異なるように形成してもよい。
【0051】
この時、P型熱電レッグ130またはN型熱電レッグ140は円筒状、多角柱状、楕円形柱状などを有することができる。
【0052】
またはP型熱電レッグ130またはN型熱電レッグ140は積層型構造を有してもよい。例えば、P型熱電レッグまたはN型熱電レッグはシート状の基材に半導体物質が塗布された複数の構造物を積層した後、これを切断する方法で形成され得る。これに伴い、材料の損失を防止し電気伝導特性を向上させることができる。各構造物は開口パターンを有する伝導性層をさらに含むことができ、これに伴い、構造物間の接着力を高め、熱伝導度を低くし、電気伝導度を高めることができる。
【0053】
またはP型熱電レッグ130またはN型熱電レッグ140は一つの熱電レッグ内で断面積が異なるように形成されてもよい。例えば、一つの熱電レッグ内で電極に向かうように配置される両端部の断面積が両端部の間の断面積より大きく形成されてもよい。これによると、両端部間の温度差を大きく形成できるため、熱電効率が高くなり得る。
【0054】
本発明の一実施例に係る熱電素子の性能は熱電性能指数(figure of merit、ZT)で表すことができる。熱電性能指数(ZT)は数学式1のように表すことができる。
【数式1】
【0055】
【0056】
ここで、αはゼーベック係数[V/K]であり、σは電気伝導度[S/m]であり、ασはパワー因子(Power Factor、[W/mK])である。そして、Tは温度で、kは熱伝導度[W/mK]である。kはa・cp・ρで表すことができ、aは熱拡散度[cm/S]で、cpは比熱[J/gK]であり、ρは密度[g/cm]である。
【0057】
熱電素子の熱電性能指数を得るために、Zメーターを利用してZ値(V/K)を測定し、測定したZ値を利用して熱電性能指数(ZT)を計算することができる。
【0058】
ここで、下部基板110とP型熱電レッグ130およびN型熱電レッグ140の間に配置される下部電極120、そして上部基板160とP型熱電レッグ130およびN型熱電レッグ140の間に配置される上部電極150は、銅(Cu)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)およびニッケル(Ni)のうち少なくとも一つを含み、0.01mm~0.3mmの厚さを有することができる。下部電極120または上部電極150の厚さが0.01mm未満の場合、電極として機能が落ちることになって電気伝導性能が低くなり得、0.3mmを超過する場合、抵抗の増加によって伝導効率が低くなり得る。
【0059】
そして、互いに対向する下部基板110と上部基板160は金属基板であり得、その厚さは0.1mm~1.5mmであり得る。金属基板の厚さが0.1mm未満であるか、1.5mmを超過する場合、放熱特性または熱伝導率が過度に高くなり得るため、熱電素子の信頼性が低下し得る。また、下部基板110と上部基板160が金属基板である場合、下部基板110と下部電極120の間および上部基板160と上部電極150の間にはそれぞれ絶縁層170がさらに形成され得る。絶縁層170は1~20W/mKの熱伝導度を有する素材を含むことができる。
【0060】
この時、下部基板110と上部基板160の大きさは異なるように形成されてもよい。例えば、下部基板110と上部基板160のうち一つの体積、厚さまたは面積は他の一つの体積、厚さまたは面積より大きく形成され得る。これに伴い、熱電素子の吸熱性能または放熱性能を高めることができる。好ましくは、下部基板110の体積、厚さまたは面積は上部基板160の体積、厚さまたは面積のうち少なくとも一つより大きく形成され得る。この時、下部基板110はゼーベック効果のために高温領域に配置される場合、ペルティエ効果のために発熱領域に適用される場合、または後述する熱電モジュールの外部環境から保護のためのシーリング部材が下部基板110上に配置される場合に、上部基板160より体積、厚さまたは面積のうち少なくとも一つをより大きくすることができる。この時、下部基板110の面積は上部基板160の面積対比1.2~5倍の範囲で形成することができる。下部基板110の面積が上部基板160に比べて1.2倍未満に形成される場合、熱伝達効率の向上に及ぼす影響は高くなく、5倍を超過する場合にはかえって熱伝達効率が顕著に落ち、熱電モジュールの基本形状を維持することが困難であり得る。
【0061】
また、下部基板110と上部基板160のうち少なくとも一つの表面には放熱パターン、例えば凹凸パターンが形成されてもよい。これに伴い、熱電素子の放熱性能を高めることができる。凹凸パターンがP型熱電レッグ130またはN型熱電レッグ140と接触する面に形成される場合、熱電レッグと基板間の接合特性も向上し得る。熱電素子100は下部基板110、下部電極120、P型熱電レッグ130、N型熱電レッグ140、上部電極150および上部基板160を含む。
【0062】
図3図4に図示された通り、下部基板110と上部基板160の間にはシーリング部材190がさらに配置されてもよい。シーリング部材190は下部基板110と上部基板160の間で下部電極120、P型熱電レッグ130、N型熱電レッグ140および上部電極150の側面に配置され得る。これに伴い、下部電極120、P型熱電レッグ130、N型熱電レッグ140および上部電極150は外部の湿気、熱、汚染などからシーリングされ得る。ここで、シーリング部材190は、複数の下部電極120の最外郭、複数のP型熱電レッグ130および複数のN型熱電レッグ140の最外郭および複数の上部電極150の最外郭の側面から所定距離離隔して配置されるシーリングケース192、シーリングケース192と下部基板110の間に配置されるシーリング材194およびシーリングケース192と上部基板160の間に配置されるシーリング材196を含むことができる。このように、シーリングケース192はシーリング材194、196を媒介として下部基板110および上部基板160と接触することができる。これに伴い、シーリングケース192が下部基板110および上部基板160と直接接触する場合、シーリングケース192を通じて熱伝導が起きることになり、その結果、下部基板110と上部基板160間の温度差が低くなる問題を防止することができる。ここで、シーリング材194、196はエポキシ樹脂およびシリコン樹脂のうち少なくとも一つを含むか、エポキシ樹脂およびシリコン樹脂のうち少なくとも一つが両面に塗布されたテープを含むことができる。シーリング材194、194はシーリングケース192と下部基板110の間およびシーリングケース192と上部基板160の間を気密する役割をし、下部電極120、P型熱電レッグ130、N型熱電レッグ140および上部電極150のシーリング効果を高めることができ、壁材、仕上げ層、防水材、防水層などと混用され得る。ここで、シーリングケース192と下部基板110の間をシーリングするシーリング材194は下部基板110の上面に配置され、シーリングケース192と上部基板160の間をシーリングするシーリング材196は上部基板160の側面に配置され得る。このために、下部基板110の面積は上部基板160の面積より大きくてもよい。一方、シーリングケース192には電極に連結された口出し線181、182を引き出すためのガイド溝Gが形成され得る。このために、シーリングケース192はプラスチックなどからなる射出成形物であり得、シーリングカバーと混用され得る。ただし、シーリング部材に関する以上の説明は例示に過ぎず、シーリング部材は多様な形態に変形され得る。図示されてはいないが、シーリング部材を囲むように断熱材がさらに含まれてもよい。またはシーリング部材は断熱成分を含んでもよい。
【0063】
以上で、下部基板110、下部電極120、上部電極150および上部基板160という用語を使っているが、これは理解の容易および説明の便宜のために任意に上部および下部と指称したものに過ぎず、下部基板110および下部電極120が上部に配置され、上部電極150および上部基板160が下部に配置されるように位置が逆転されてもよい。
【0064】
図5は本発明の一実施例に係る熱電素子に含まれる基板、絶縁層および電極の断面図であり、図6は本発明の他の実施例に係る熱電素子に含まれる基板、絶縁層および電極の断面図であり、図7図6の基板、絶縁層および電極の製作工程を示す図面である。
【0065】
図5(a)および図5(b)を参照すると、本発明の一実施例に係る熱電素子500は基板510、基板510上に配置された絶縁層520、絶縁層520上に互いに離隔するように配置された複数の電極530および複数の電極530上に配置された複数のP型熱電レッグおよびN型熱電レッグ(図示されず)を含む。
【0066】
ここで、基板510、絶縁層520および複数の電極530は図1図4の下部基板110、絶縁層170および下部電極120であるか、図1図4の上部基板160、絶縁層170および上部電極150であり得る。図1図4で説明した内容と同一の内容に対しては重複した説明を省略する。本明細書で、「上部」および「下部」は構成要素間の相対的な位置を表現するための用語であり、構成要素の配置が全体的に逆転されると「上部」は「下部」となり、「下部」は「上部」となり得る。ここで、基板510は金属基板、例えばアルミニウム基板、銅基板、アルミニウム-銅合金基板であり得る。本発明の実施例によると、高温部側の基板は銅基板で、低温部側の基板はアルミニウム基板であってもよい。銅基板はアルミニウム基板に比べて熱伝導度および電気伝導度が高い。これに伴い、低温部側に要求される高い耐電圧性能および高温部側に要求される高い熱伝導性能をすべて満足させることができる。
【0067】
一般的に、熱電素子500の駆動時に熱電素子500の高温部側は高温に長時間露出され得、電極と基板間の互いに異なる熱膨張係数によって電極と基板間の界面にはせん断応力が伝達され得る。本明細書で、電極と基板間の互いに異なる熱膨張係数によって電極と基板間の界面に伝達されたせん断応力を熱応力という。熱応力が所定水準を越えると、電極上に配置されたソルダーと熱電レッグ間接合面にクラックが加えられ得、これは熱電素子の性能を低下させ、信頼性を低下させ得る。
【0068】
本発明の実施例によると、基板510と電極530の間には絶縁層520が配置され、絶縁層520は基板510と電極530間の熱膨張係数の差による熱応力を緩和させるために2層で配置され得る。
【0069】
本発明の実施例によると、絶縁層520は基板510上に配置された第1絶縁層522および第1絶縁層522上で第1絶縁層522と電極530の間に配置された第2絶縁層524を含む。ここで、第2絶縁層524は互いに離隔するように配置された複数の第2絶縁層524であり得る。本発明の実施例によると、基板510上に配置された第1絶縁層522の総面積は第1絶縁層522上に配置された第2絶縁層524の総面積より大きくてもよい。
【0070】
これによると、第1絶縁層522は第2絶縁層524に比べて基板510にさらに近く配置され、第1絶縁層522は基板510の温度変化により膨張または収縮する過程で熱応力の一部を吸収するため、第2絶縁層524に加えられる熱応力を減らすことができる。
【0071】
特に、第1絶縁層522上で複数の第2絶縁層524が互いに離隔するように配置される場合、第1絶縁層522上には第2絶縁層524が配置されない領域(A)が存在し得る。これによると、基板510の温度変化により第1絶縁層522が膨張または収縮しても、第1絶縁層522の膨張または収縮による力が第2絶縁層524に及ぼす影響を最小化することができ、第1絶縁層522の膨張または収縮により第2絶縁層524が共に変形される問題を防止することができる。
【0072】
この時、第1絶縁層522の熱膨張係数は第2絶縁層524の熱膨張係数より大きくてもよい。または第1絶縁層522のヤング率(Young’s modulus)は第2絶縁層524のヤング率より小さくてもよい。そして、第2絶縁層524の耐電圧性能は第1絶縁層522の耐電圧性能より大きくてもよい。または第2絶縁層524の熱伝導性能は第1絶縁層522の熱伝導性能より大きくてもよい。これによると、基板510の膨張または収縮時に基板510と接触する第1絶縁層522が共に膨張または収縮するため、絶縁層520に加えられる熱応力は最小化され得る。また、電極530と接触する第2絶縁層524によって絶縁層520全体の耐電圧性能および熱伝導性能を高めることができる。
【0073】
このように、本発明の実施例によると、熱応力緩和、耐電圧性能および熱伝導性能をすべて有する熱電素子の絶縁層構造を得ることができる。
【0074】
一方、複数の電極530は複数の第2絶縁層524に対応するように複数の第2絶縁層524上に配置され得る。すなわち、複数の第2絶縁層524それぞれは複数の電極530それぞれごとに配置され得る。または第2絶縁層524は互いに離隔するように配置された複数の第2絶縁層524を含むものの、各第2絶縁層524には複数の電極530が互いに離隔するように配置されてもよい。例えば、各第2絶縁層524には互いに離隔するように配置された2個の電極530、4個の電極530、8個の電極530、または16個の電極530が配置され得る。このように、熱膨張係数が相対的に大きい第1絶縁層522が基板510上に全面積に配置され、熱膨張係数が相対的に小さい第2絶縁層524が第1絶縁層522上に互いに離隔するように複数で配置され、複数の第2絶縁層524と複数の電極530が対応するように配置される場合、基板510の温度変化により第1絶縁層522が膨張または収縮しても第2絶縁層524は熱変形されないことができ、これに伴い、電極530の構造が破壊される問題も防止することができる。
【0075】
このために、第1絶縁層522の組成は第2絶縁層524の組成と異なり得る。例えば、第1絶縁層522はシリコン樹脂および無機物を含む樹脂層であり得る。例えば、第1絶縁層522のヤング率(Young’s modulus)は1~150MPa、好ましくは1~100MPa、さらに好ましくは1~65MPa、さらに好ましくは5~60MPa、さらに好ましくは10~50MPaであり得る。本実施例で、ヤング率は200℃以下でのヤング率を意味し得、好ましくは150℃~200℃間の温度でのヤング率を意味し得る。熱電素子が発電用に適用される場合、熱電素子の高温部と低温部間温度差が大きいほど発電性能が高くなり得る。これに伴い、熱電素子の高温部は150℃以上、好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200℃以上となり得る。これに伴い、本明細書で第1絶縁層522のヤング率を定義する基準温度は150℃~200℃間の温度となり得る。第1絶縁層522のヤング率がこのような数値範囲を満足する場合、基板が熱膨張しても第1絶縁層が共に伸び得るので、基板と電極の間の熱応力は最小化され得、熱電レッグにクラックが発生する問題を防止することができる。ここで、温度別ヤング率は動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis、DMA)装備で測定が可能である。
【0076】
この時、第1絶縁層522のヤング率が1MPa未満の場合、第1絶縁層522が基板と電極の間を支持し難くなるため、外部の小さい衝撃または振動環境下で熱電素子の信頼性が容易に弱くなり得る。これに反し、第1絶縁層522のヤング率が150MPaを超過する場合、基板と電極間の熱応力が大きくなるため、熱電素子内の界面にクラックが発生する可能性が高くなる。
【0077】
この時、第1絶縁層522に含まれるシリコン樹脂はPDMS(polydimethylsiloxane)を含むことができ、無機物はアルミニウム、チタン、ジルコニウム、ホウ素および亜鉛のうち少なくとも一つの酸化物、炭化物および窒化物のうち少なくとも一つを含むことができる。ここで、PDMSの分子量は5,000~30,000g/mol、好ましくは15,000~30,000g/molであり得る。PDMSの分子量がこのような数値範囲を満足する場合、PDMSの鎖間結合力が向上し得るため、第1絶縁層522が1~150MPaのヤング率を有することができる。この時、第1絶縁層522は架橋剤をさらに含むことができ、架橋剤の分子量は500~2000g/mol、好ましくは1,000~2,000g/molであり得る。架橋剤の分子量が大きくなるほど架橋剤の鎖の長さは長くなり得る。
【0078】
一方、無機物は第1絶縁層522で60~90wt%、好ましくは80~90wt%で含まれ得る。この時、第1絶縁層522の無機物はD50が30~40μmであり得る。これによると、放熱経路が最適化され得るため、第1絶縁層522の熱伝導度を2W/mK以上、好ましくは3W/mK以上に高めることができる。
【0079】
このように、本発明の実施例に係る第1絶縁層522は基板と電極間熱膨張係数の差による熱応力を緩和するだけでなく、基板と電極間絶縁性、接合力および熱伝導性能を向上させることもできる。
【0080】
一方、本発明の実施例によると、高温部側の基板510に配置される第1絶縁層522のヤング率と低温部側の基板510に配置される第1絶縁層522のヤング率は互いに異なってもよい。高温部側の基板510に配置される第1絶縁層522のヤング率は低温部側の基板510に配置される第1絶縁層522のヤング率より低くてもよい。例えば、高温部側の基板510に配置される第1絶縁層522のヤング率は1~65MPaであり、低温部側の基板510に配置される第1絶縁層522のヤング率は65MPa以上、好ましくは65~150MPaであり得る。これに伴い、高温部側の基板510が熱膨張しても第1絶縁層522が共に伸び得るため、基板と電極の間の熱応力は最小化され得、熱電レッグにクラックが発生する問題を防止することができる。
【0081】
また、本発明の実施例によると、高温部側の第1絶縁層522はさらに高い熱応力緩和性能を要求するため、高温部側の第1絶縁層522の厚さは低温部側の第1絶縁層522の厚さよりさらに厚くてもよい。
【0082】
一方、本発明の実施例によると、第2絶縁層524の耐電圧性能は第1絶縁層522の耐電圧性能より高くてもよい。本発明の実施例に係る耐電圧性能はAC2.5kVの電圧および1mAの電流下で10秒の間絶縁破壊なしに維持される特性を意味し得る。このために、第2絶縁層524は酸化アルミニウムを含むことができる。例えば、第2絶縁層524は酸化アルミニウム層であり得る。または第2絶縁層524はシリコンとアルミニウムを含む複合体(composite)を含んでもよい。ここで、複合体はシリコンとアルミニウムを含む酸化物、炭化物および窒化物のうち少なくとも一つであり得る。例えば、複合体はAl-Si結合、Al-O-Si結合、Si-O結合、Al-Si-O結合およびAl-O結合のうち少なくとも一つを含むことができる。このように、Al-Si結合、Al-O-Si結合、Si-O結合、Al-Si-O結合およびAl-O結合のうち少なくとも一つを含む複合体は絶縁性能が優秀であり、これに伴い高い耐電圧性能を得ることができる。または複合体はシリコンおよびアルミニウムと共にチタン、ジルコニウム、ホウ素、亜鉛などをさらに含む酸化物、炭化物、窒化物であってもよい。このために、複合体は無機バインダーおよび有機および無機混合バインダーのうち少なくとも一つとアルミニウムを混合した後、熱処理する過程を通じて得られ得る。無機バインダーは、例えばシリカ(SiO)、金属アルコキシド、酸化ホウ素(B)および酸化亜鉛(ZnO)のうち少なくとも一つを含むことができる。無機バインダーは無機粒子であるが、水に接触するとゾルまたはケル化されてバインディングの役割をすることができる。この時、シリカ(SiO)、金属アルコキシドおよび酸化ホウ素(B)のうち少なくとも一つは金属との密着力を高める役割をし、酸化亜鉛(ZnO)は第2絶縁層524の強度を高め、熱伝導率を高める役割をすることができる。
【0083】
この時、第1絶縁層522の樹脂含有量は第2絶縁層524の樹脂含有量より高くてもよい。これによると、第1絶縁層522の接着力は第2絶縁層524の接着力より高く、第1絶縁層522の熱膨張係数は第2絶縁層524の熱膨張係数より高くてもよく、第2絶縁層524の耐電圧性能および熱伝導性能は第1絶縁層522の耐電圧性能および熱伝導性能より高くてもよい。
【0084】
第1絶縁層522の厚さは第2絶縁層524の厚さより厚くてもよい。例えば、第1絶縁層522の厚さは60~150μm、好ましくは70~130μm、さらに好ましくは80~110μmであり得る。そして、第2絶縁層524の厚さは10~50μm、好ましくは20~40μmであり得る。これによると、第1絶縁層522は絶縁層520に加えられる熱応力を緩和でき、耐電圧性能および熱伝導性能が高い熱電素子を得ることができる。
【0085】
一方、図5(a)および5(b)に図示された通り、複数の電極530間離隔距離d3は複数の第2絶縁層524間離隔距離d2と異なり得る。すなわち、図5(a)に図示された通り、複数の電極530間離隔距離d3は複数の第2絶縁層524間離隔距離d2より大きくてもよい。または図5(b)に図示された通り、複数の電極530間離隔距離d3は複数の第2絶縁層524間離隔距離d2より小さくてもよい。例えば、複数の電極530間離隔距離d3は複数の第2絶縁層524間離隔距離d2の0.6倍~2.8倍であり得、複数の電極530間離隔距離d3が複数の第2絶縁層524間離隔距離d2の0.6倍未満の場合、第2絶縁層524と電極530との接触面積が相対的に小さいので高温での第2絶縁層524の熱変形による影響は最小化され得るが、電圧の増加により本領域で容易に絶縁破壊が発生して耐電圧特性が低下し得、第2絶縁層524から電極530が脱落し得る。また、複数の電極530間離隔距離d3が複数の第2絶縁層524間離隔距離d2の2.8倍を超過する場合、第2絶縁層524と電極530との接触面積が相対的に大きくなるので耐電圧特性が向上し、第2絶縁層524から電極530の脱落を防止することができるが、高温での第1絶縁層522の熱応力が第2絶縁層524にも伝達されて第2絶縁層524にも熱変形が発生し得、制限された面積内で複数の電極530の配置個数は相対的に減少し得る。本発明の実施例によると、複数の電極530間離隔距離d3は複数の第2絶縁層524間離隔距離d2の0.6倍~0.99倍、好ましくは0.65倍~0.95倍、さらに好ましくは0.7倍~0.9倍であり得る。これによると、高温での第2絶縁層524の熱変形によって電極530に及ぼす影響を最小化することができる。または本発明の実施例によると、複数の電極530間離隔距離d3は複数の第2絶縁層524間離隔距離d2の1.01倍~2.8倍、好ましくは1.05倍~2.5倍、さらに好ましくは1.1倍~2.2倍であり得る。これによると、電界が集まる各電極530の縁に第2絶縁層524が配置されるため、熱電素子の耐電圧性能がさらに高くなり得る。
【0086】
図示されてはいないが、図5に係る熱電素子の製造方法は、第2絶縁層524が配置された電極530を第1絶縁層522上に配置した後に硬化させるか、第1絶縁層522上に第2絶縁層524を配置した後に別途のスクライビング工程を遂行して製造することができる。
【0087】
または図6に図示された通り、複数の電極530のうち少なくとも一つの側面には第2絶縁層524の少なくとも一部がさらに配置され得る。すなわち、複数の電極530のうち少なくとも一つの側面の一部は第2絶縁層524に埋め立てられ得、複数の電極530のうち少なくとも一つの側面に配置された複数の第2絶縁層524のうち少なくとも一つの最大厚さT2は複数の電極530のうち少なくとも一つの最大厚さT3の0.2~0.75倍、好ましくは0.25~0.6倍、さらに好ましくは0.3~0.5倍であり得る。
【0088】
これによると、電界が集まる各電極530の縁に第2絶縁層524が配置されるため、熱電素子の耐電圧性能がさらに高くなり得る。
【0089】
特に、図6に図示された通り、複数の電極530のうち少なくとも一つの側面に第2絶縁層524の少なくとも一部がさらに配置されると、各電極530の水平方向を通じての熱損失を減らすことができるので、熱電素子の熱電性能をさらに改善することができる。
【0090】
図6に係る熱電素子を製作するために、図7(a)を参照すると、シート70上に複数の電極530を配置する。ここで、シート70はサーマルシートまたは離型フィルムであり得る。次に、図7(b)を参照すると、電極530上にマスク(M)を配置した後、第2絶縁層524をなす素材でスプレーコーティングを遂行する。この時、マスクのオープン領域は電極530の幅より大きくてもよい。これに伴い、第2絶縁層524は電極530の側面にも形成され得る。次に、図7(c)を参照すると、基板510上に第1絶縁層522をなす素材を予め塗布した後、図7(a)および図7(b)の段階を通じて形成された電極530および第2絶縁層524を転写する。そして、図7(d)を参照すると、第1絶縁層522の硬化後にシート70を電極530から引き離して製造することができるが、本製造方法に限定されない。
【0091】
これによると、第1絶縁層522上に互いに離隔するように配置された複数の第2絶縁層524および複数の第2絶縁層524上に配置された複数の電極530を含み、電極530の側面に第2絶縁層524がさらに配置された熱電素子を得ることができる。
【0092】
以下、比較例および実施例を通じて本発明の実施例に係る熱電素子の効果を説明しようとする。
【0093】
図8aは実施例に係る熱電素子の断面構造であり、図8bは実施例に係る熱電素子が高温の条件下で長時間露出される場合に予想される変化を示し、図9aは実施例に係る熱電素子の第2絶縁層に加えられる応力をシミュレーションした結果であり、図9bは実施例に係る熱電素子の反り(warpage)をシミュレーションした結果である。図10aは比較例に係る熱電素子の断面構造であり、図10bは比較例に係る熱電素子が高温の条件下で長時間露出される場合の変化を示し、図11aは比較例に係る熱電素子の第2絶縁層に加えられる応力をシミュレーションした結果であり、図11bは比較例に係る熱電素子の反り(warpage)をシミュレーションした結果である。
【0094】
図8aのように、実施例に係る熱電素子500は基板510、基板510上に全面配置された第1絶縁層522、第1絶縁層522上に互いに離隔するように配置された複数の第2絶縁層524および複数の第2絶縁層524上に配置された複数の電極530を含み、第1絶縁層522の熱膨張係数は第2絶縁層524の熱膨張係数より大きい。これによると、実施例に係る熱電素子500が高温に長時間露出される場合、図8bのように基板510および第1絶縁層522の熱変形対比、第2絶縁層524の熱変形は相対的に小さい。
【0095】
これに反し、図10aのように、比較例に係る熱電素子600は基板610、基板610上に全面配置された第1絶縁層622、第1絶縁層622上に全面配置された第2絶縁層624および第2絶縁層624上に互いに離隔するように配置された複数の電極630を含み、第2絶縁層624の熱膨張係数は第1絶縁層622の熱膨張係数より大きい。すなわち、実施例に係る熱電素子500の第1絶縁層522と比較例に係る熱電素子600の第2絶縁層624は同一の組成を有し、実施例に係る熱電素子500の第2絶縁層524と比較例に係る熱電素子600の第1絶縁層622は同一の組成を有することができる。これによると、比較例に係る熱電素子600が高温に長時間露出される場合、第1絶縁層622の熱応力によって熱電素子の信頼性が低下し得る。
【0096】
これは図9および図11から分かる。図9aおよび図9bを参照すると、本発明の実施例に係る第2絶縁層524に加えられる最大応力は262MPaで、平均応力は32.37MPaであり、最大反りは1.56mmであることが分かる。これに反し、図11aおよび図11bを参照すると、比較例に係る第1絶縁層622に加えられる最大応力は831MPaで、平均応力は214.47MPaであり、最大反りは1.8mmであることが分かる。
【0097】
このように、本発明の実施例に係る熱電素子は高温に長時間露出時にも絶縁層に加えられる熱応力が低く、反りが少なく現れるので、絶縁層の破損または電極構造の破壊などによって熱電レッグにクラックが加えられることを防止できることが分かる。
【0098】
本発明の実施例に係る基板、絶縁層および電極の構造は熱電素子の高温部側および低温部側のうち少なくとも一つに適用され得る。
【0099】
この時、熱電素子の高温部側の基板にはヒートシンク200がさらに配置され得る。
【0100】
図12は、熱電素子の基板とヒートシンク間接合構造を例示する。
【0101】
図12を参照すると、ヒートシンク200と基板510は複数の締結部材400によって締結され得る。このために、ヒートシンク200と基板510には締結部材400が貫通する貫通ホールSが形成され得る。ここで、貫通ホールSと締結部材400の間には別途の絶縁体410がさらに配置され得る。別途の絶縁体410は締結部材400の外周面を囲む絶縁体または貫通ホールSの壁面を囲む絶縁体であり得る。これによると、熱電素子の絶縁距離を広げることが可能である。
【0102】
前記では本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、該当技術分野の熟練した当業者は、下記の特許請求の範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更できることが理解できるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図12