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7625616プロジェクト成功確率算出システム,プロジェクト成功確率算出方法、及びプロジェクト成功確率算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】プロジェクト成功確率算出システム,プロジェクト成功確率算出方法、及びプロジェクト成功確率算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20250127BHJP
【FI】
G06Q10/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022559203
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 JP2021039672
(87)【国際公開番号】W WO2022092156
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2024-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2020183165
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507024459
【氏名又は名称】株式会社マネジメントソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 年成
(72)【発明者】
【氏名】金子 啓
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 竜
(72)【発明者】
【氏名】張 怡
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-036339(JP,A)
【文献】米国特許第8626698(US,B1)
【文献】特開2020-091843(JP,A)
【文献】近堂 高広,ベイズ識別器による混乱予測に基づくソフトウェアプロジェクト管理支援ツールの試作,情報処理学会研究報告,日本,社団法人情報処理学会,2007年03月22日,Vol.2007 No.33,p.57-64
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経験的にプロジェクトの成功に影響を及ぼすことが知られているプロジェクト遂行に影響を与える事前要素である遂行影響事前要素を保持する遂行影響事前要素保持部と,
前記プロジェクトを具体的に特定した特定プロジェクトを想定して前記遂行影響事前要素に対して該特定プロジェクトでの値である数値,有無,YES又はNO,レベル,選択肢のいずれか一以上である遂行事前状態値を関連付けるための質問を出力して入力を促す質問部と,
前記遂行影響事前要素に関連付けられている前記遂行事前状態値を用いて前記特定プロジェクトの成功の確率分布を算出するための関数である確率分布導出関数を保持する確率分布導出関数保持部と,
前記質問部への入力によって得られた前記遂行影響事前要素に関連付けられている前記遂行事前状態値と,前記確率分布導出関数保持部に保持されている前記確率分布導出関数と,によって前記質問部にて前記入力を受付けた前記特定プロジェクトの成功確率分布を算出する成功確率分布算出部と,
算出された前記成功確率分布を保持する成功確率分布保持部と,
を有するプロジェクト成功確率算出システム。
【請求項2】
希望する成功可能性に関する情報である希望成功可能性情報を取得する希望成功可能性情報取得部と,
保持されている前記成功確率分布と,取得した前記希望成功可能性情報とに基づいて,前記成功可能性が実現する確率である実現確率を算出する実現確率算出部と,
をさらに有する請求項1に記載のプロジェクト成功確率算出システム。
【請求項3】
前記実現確率に対する前記遂行影響事前要素に関連付けられた前記遂行事前状態値による影響度を取得する影響度取得部と,
前記実現確率を向上するために前記遂行事前状態値を前提とした前記遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得するためのルールであるアドバイス取得ルールを保持するアドバイス取得ルール保持部と,
取得した前記影響度と前記アドバイス取得ルールとに基づいて,前記遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得するアドバイス取得部と,
取得した前記アドバイスを出力するアドバイス出力部と,
をさらに有する請求項2に記載のプロジェクト成功確率算出システム。
【請求項4】
前記確率分布導出関数は、機械学習とベイズ統計の組合せによって修正された関数である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプロジェクト成功確率算出システム。
【請求項5】
経験的にプロジェクトの成功に影響を及ぼすことが知られているプロジェクト遂行に影響を与える事前要素である遂行影響事前要素を保持する遂行影響事前要素保持ステップと,
前記プロジェクトを具体的に特定した特定プロジェクトを想定して前記遂行影響事前要素に対して該特定プロジェクトでの値である数値,有無,YES又はNO,レベル,選択肢のいずれか一以上である遂行事前状態値を関連付けるための質問を出力して入力を促す質問ステップと,
前記遂行影響事前要素に関連付けられている前記遂行事前状態値を用いて前記特定プロジェクトの成功の確率分布を算出するための関数である確率分布導出関数を保持する確率分布導出関数保持ステップと,
前記入力によって得られた前記遂行影響事前要素に関連付けられている前記遂行事前状態値と,保持されている前記確率分布導出関数と,によって前記入力を受付けた前記特定プロジェクトの成功確率分布を算出する成功確率分布算出ステップと,
算出された前記成功確率分布を保持する成功確率分布保持ステップと,
をコンピュータが実行するプロジェクト成功確率算出方法。
【請求項6】
希望する成功可能性に関する情報である希望成功可能性情報を取得する希望成功可能性情報取得ステップと,
保持されている前記成功確率分布と,取得した前記希望成功可能性情報とに基づいて,前記成功可能性が実現する確率である実現確率を算出する実現確率算出ステップと,
をさらに実行する請求項5に記載のプロジェクト成功確率算出方法。
【請求項7】
前記実現確率に対する前記遂行影響事前要素に関連付けられた前記遂行事前状態値による影響度を取得する影響度取得ステップと,
前記実現確率を向上するために前記遂行事前状態値を前提とした前記遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得するためのルールであるアドバイス取得ルールを保持するアドバイス取得ルール保持ステップと,
取得した前記影響度と前記アドバイス取得ルールとに基づいて,前記遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得するアドバイス取得ステップと,
取得した前記アドバイスを出力するアドバイス出力ステップと,
をさらに実行する請求項6に記載のプロジェクト成功確率算出方法。
【請求項8】
前記確率分布導出関数は、機械学習とベイズ統計の組合せによって修正された関数である、
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載のプロジェクト成功確率算出方法。
【請求項9】
経験的にプロジェクトの成功に影響を及ぼすことが知られているプロジェクト遂行に影響を与える事前要素である遂行影響事前要素を保持する遂行影響事前要素保持ステップと,
前記プロジェクトを具体的に特定した特定プロジェクトを想定して前記遂行影響事前要素に対して該特定プロジェクトでの値である数値,有無,YES又はNO,レベル,選択肢のいずれか一以上である遂行事前状態値を関連付けるための質問を出力して入力を促す質問ステップと,
前記遂行影響事前要素に関連付けられている前記遂行事前状態値を用いて前記特定プロジェクトの成功の確率分布を算出するための関数である確率分布導出関数を保持する確率分布導出関数保持ステップと,
前記入力によって得られた前記遂行影響事前要素の各々に関連付けられている前記遂行事前状態値と,保持されている前記確率分布導出関数と,によって前記入力を受付けた前記特定プロジェクトの成功確率分布を算出する成功確率分布算出ステップと,
算出された前記成功確率分布を保持する成功確率分布保持ステップと,
をコンピュータに実行させるためのプロジェクト成功確率算出プログラム。
【請求項10】
希望する成功可能性に関する情報である希望成功可能性情報を取得する希望成功可能性情報取得ステップと,
保持されている前記成功確率分布と,取得した前記希望成功可能性情報とに基づいて,前記成功可能性が実現する確率である実現確率を算出する実現確率算出ステップと,
をさらに実行させる請求項9に記載のプロジェクト成功確率算出プログラム。
【請求項11】
前記実現確率に対する前記遂行影響事前要素に関連付けられた前記遂行事前状態値による影響度を取得する影響度取得ステップと,
前記実現確率を向上するために前記遂行事前状態値を前提とした前記遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得するためのルールであるアドバイス取得ルールを保持するアドバイス取得ルール保持ステップと,
取得した前記影響度と前記アドバイス取得ルールとに基づいて,前記遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得するアドバイス取得ステップと,
取得した前記アドバイスを出力するアドバイス出力ステップと,
をさらに実行させる請求項10に記載のプロジェクト成功確率算出プログラム。
【請求項12】
前記確率分布導出関数は、機械学習とベイズ統計の組合せによって修正された関数である、
ことを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載のプロジェクト成功確率算出プログラム。
【請求項13】
経験的にプロジェクトの成功に影響を及ぼすことが知られているプロジェクト遂行に影響を与える事前要素である遂行影響事前要素を識別する遂行影響事前要素識別情報を保持する遂行影響事前要素識別情報保持部と,
前記プロジェクトを具体的に特定した特定プロジェクトを想定して前記遂行影響事前要素識別情報に対して該特定プロジェクトでの値である数値,有無,YES又はNO,レベル,選択肢のいずれか一以上である遂行事前状態値を関連付けるための質問を出力して入力を促す質問部と,
前記遂行影響事前要素識別情報に関連付けられている前記遂行事前状態値を用いて前記特定プロジェクトの成功の確率分布を算出するための関数である確率分布導出関数を保持する確率分布導出関数保持部と,
前記質問部への入力によって得られた前記遂行影響事前要素識別情報に関連付けられている前記遂行事前状態値と,前記確率分布導出関数保持部に保持されている前記確率分布導出関数と,によって前記質問部にて前記入力を受付けた前記特定プロジェクトの成功確率分布を算出する成功確率分布算出部と,
算出された前記成功確率分布を保持する成功確率分布保持部と,
を有するプロジェクト成功確率算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,いわゆるプロジェクトが成功する確率を多角的及び社会的な経験則に基づいて判断するためのシステム,方法,及びプログラムである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクトの成功確率を診断するアイデアは,従来から存在していた。その一例として,特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-170718
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では,プロジェクトの成功確率を診断するという技術的思想ないし課題が開示されている。
【0005】
しかし,特許文献1では,例えば「項目ごとに選択させて,選択された結果をもとに診断」というものではない。また,プロジェクトについては,クライアント及びプロジェクトごとに,成功させたい可能性が異なるところ,その「成功させたい可能性」との関係で,それに達するか否かの確率予測やそれに達するためのアドバイスを提供するためのシステムが存在しなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は,そのような問題を踏まえて,プロジェクトの遂行に影響を及ぼすと経験則で把握されている項目ごとにシステムが質問を出し,その質問に回答させることでプロジェクトの遂行に影響を与える度合い(値)選択させて,選択された結果をもとにプロジェクトの成功の確率分布を取得し,出力する。また,プロジェクトについては,クライアント及びプロジェクトごとに,成功させたい可能性が異なるところ,回答より得られるプロジェクトの遂行に影響を与える度合いに基づいてその「成功させたい可能性」に達するか否かの確率やそれに達するためのアドバイスを提供するためのシステムを開発しようとするものである。
【0007】
具体的には,本発明は,経験的にプロジェクトの成功に影響を及ぼすことが知られているプロジェクト遂行に影響を与える事前要素である遂行影響事前要素を保持する遂行影響事前要素保持部と,プロジェクトを具体的に特定した特定プロジェクトを想定して遂行影響事前要素に対して該特定プロジェクトでの値である数値,有無,YES又はNO,レベル,選択肢のいずれか一以上である遂行事前状態値を関連付けるための質問を出力して入力を促す質問部と,遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値を用いて特定プロジェクトの成功の確率分布を算出するための関数である確率分布導出関数を保持する確率分布導出関数保持部と,質問部への入力によって得られた遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値と,確率分布導出関数保持部に保持されている確率分布導出関数と,によって質問部にて入力を受付けた特定プロジェクトの成功確率分布を算出する成功確率分布算出部と,算出された成功確率分布を保持する成功確率分布保持部と,を有するプロジェクト成功確率算出システムを提供する。
【0008】
また,上記特徴に加えて,希望する成功可能性に関する情報である希望成功可能性情報を取得する希望成功可能性情報取得部と,保持されている成功確率分布と,取得した希望成功可能性情報とに基づいて,希望成功可能性が実現する確率である実現確率を算出する実現確率算出部と,をさらに有するプロジェクト成功確率算出システムを提供する。
【0009】
また,さらに上記特徴に加えて,実現確率に対する遂行影響事前要素に関連付けられた遂行事前状態値による影響度を取得する影響度取得部と,実現確率を向上するために遂行事前状態値を前提とした遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得するためのルールであるアドバイス取得ルールを保持するアドバイス取得ルール保持部と,取得した影響度とアドバイス取得ルールとに基づいて遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得するアドバイス取得部と,取得したアドバイスを出力するアドバイス出力部と,をさらに有するプロジェクト成功確率算出システムを提供する。
【0010】
また,さらに上記特徴に加えて,確率分布導出関数は、機械学習とベイズ統計の組合せによって修正された関数である、ことを特徴とするプロジェクト成功確率算出システムを提供する。
【0011】
また,それらのプロジェクト成功確率算出システムに対応するプロジェクト成功確率算出方法及びプロジェクト成功確率算出プログラムをも提供する。
【0012】
さらに,経験的にプロジェクトの成功に影響を及ぼすことが知られているプロジェクト遂行に影響を与える事前要素である遂行影響事前要素を識別する遂行影響事前要素識別情報を保持する遂行影響事前要素識別情報保持部と,プロジェクトを具体的に特定した特定プロジェクトを想定して遂行影響事前要素識別情報に対して該特定プロジェクトでの値である数値,有無,YES又はNO,レベル,選択肢のいずれか一以上である遂行事前状態値を関連付けるための質問を出力して入力を促す質問部と,遂行影響事前要素識別情報に関連付けられている遂行事前状態値を用いて特定プロジェクトの成功の確率分布を算出するための関数である確率分布導出関数を保持する確率分布導出関数保持部と,質問部への入力によって得られた遂行影響事前要素識別情報に関連付けられている遂行事前状態値と,確率分布導出関数保持部に保持されている確率分布導出関数と,によって質問部にて入力を受付けた特定プロジェクトの成功確率分布を算出する成功確率分布算出部と,算出された成功確率分布を保持する成功確率分布保持部と,を有するプロジェクト成功確率算出システムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
以上により,プロジェクトの成功確率として特定の値を算出したり,特定の確率の幅を算出したりするのでなく,プロジェクトの成功確率分布を算出することができ,この成功確率分布を用いることで,所定の成功確率以上の成功確率を達成できる確率,つまり,確率の確率を算出することができる。さらには,確率の確率を向上するためにプロジェクトにとって必要なアドバイスを知ることができる。これによって,従来はプロジェクト成功因子の満足度に応じて一次関数的に回答されていたプロジェクトの成功確率について,より詳細な情報を得ることができ,これに伴って,事前にプロジェクトの成功確率の確率,及びプロジェクトの成功確率を向上させるために解決するべき事項が明確化された。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1におけるプロジェクト成功確率算出システムの機能的構成を示す図
図2】実施形態1におけるプロジェクト成功確率算出システムのハードウェア構成を示す図
図3】実施形態1におけるプロジェクト成功確率算出システムを利用した場合の処理の流れを示す図
図4】実施形態2におけるプロジェクト成功確率算出システムの機能的構成を示す図
図5】実施形態2におけるプロジェクト成功確率算出システムのハードウェア構成を示す図
図6】実施形態2におけるプロジェクト成功確率算出システムを利用した場合の処理の流れを示す図
図7】実施形態3におけるプロジェクト成功確率算出システムの機能的構成を示す図
図8】実施形態3におけるプロジェクト成功確率算出システムのハードウェア構成を示す図
図9】実施形態3におけるプロジェクト成功確率算出システムを利用した場合の処理の流れを示す図
図10】成功確率分布に関する図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,本件発明の実施の形態について,添付図面を用いて説明する。なお,実施形態と請求項の相互の関係は以下の通りである。実施形態1は請求項1、4、5、8、9、12、13に関係し,実施形態2は請求項2、6、10に関係し,実施形態3は請求項3、7、11に関係する。第3実施の形態は、第1の実施の形態及び第2の実施の形態の特徴を含み、第2実施の形態は、第1の実施の形態の特徴を含む。
【0016】
本件発明は,これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく,その要旨を逸脱しない範囲において,種々なる態様で実施し得る。
【0017】
<本発明を構成し得るハードウェアについて>
本件発明は,原則的に電子計算機を利用する発明であるが,ソフトウェアによって実現され,ハードウェアによっても実現され,ソフトウェアとハードウェアの協働によっても実現される。本件発明の各構成要件の全部又は一部を実現するハードウェアでは,コンピュータの基本的構成であるCPU(Central Processing Unit),メモリ,バス,入出力装置,各種周辺機器,ユーザーインターフェイスなどによって構成される。
【0018】
各種周辺機器には,記憶装置,インターネット等インターフェイス,インターネット等機器,ディスプレイ,キーボード,マウス,スピーカー,カメラ,ビデオ,テレビ,実験室又は工場などでの生産状態を把握するための各種センサ(流量センサ,温度センサ,重量センサ,液量センサ,赤外線センサ,出荷個数計数機,梱包個数計数機,異物検査装置,不良品計数機,放射線検査装置,表面状態検査装置,回路検査装置,人感センサ,作業者作業状況把握装置(映像,ID,PC(Personal Computer)作業量などで)等),CD(Compact Disc)装置,DVD(Digital Versatile Disc)装置,ブルーレイ装置,USB(Universal Serial Bus)メモリ,USBメモリインターフェイス,着脱可能タイプのハードディスク,一般的なハードディスク,プロジェクタ装置,SSD(Solid State Drive),電話,ファックス,コピー機,印刷装置,ムービー編集装置,各種センサ装置などが含まれる。
【0019】
また,本システムは,必ずしも一つの筐体によって構成されている必要はなく,複数の筐体を通信で結合して構成されるものであってもよい。また,通信は,LAN(Local Area Network)であっても,WAN(Wide Area Network),Wi-Fi(登録商標),ブルートゥース(登録商標),赤外線通信,超音波通信であってもよく,さらに,一部が国境を跨いで設置されていてもよい。さらに,複数の筐体のそれぞれが異なる主体によって運営されていてもよく,一の主体によって運営されていてもよい。本件発明のシステムの運用主体は,単数であるか複数であるかは問わない。また,本システムの他に第三者の利用する端末,さらに他の第三者の利用する端末を含むシステムとしても発明を構成することができる。また,これらの端末は国境を越えて設置されていてもよい。さらに,本システムや前記端末の他に第三者の関連情報や,関連人物の登録のために利用される装置,登録の内容を記録するためのデータベースに利用される装置などが用意されてもよい。これらは,本システムに備えてもよいし,本システム外に備えてこれらの情報を利用可能とする本システムを構成してもよい。
【0020】
<本発明の自然法則の利用性の充足>
本発明は,コンピュータと通信設備とソフトウェアとの協働で機能するものである。従来,プロジェクト参加者が面談で行っていた処理を単にICT(Information and Communication Technology)を用いて処理可能にしただけでなく,プロジェクトにまつわる多くの複雑な情報交換や手続きや認証,決裁の効果をICTによって確定させたり,本来熟練しないと作成できないような必要事項がすべて満たされた有効な情報の蓄積,保持,交換をICTを介して支援したりするなど,ICTならではの処理が含まれているのでいわゆるビジネスモデル特許として成立するものである。また,各種識別情報やリスク情報,課題情報,タスク情報が各部で保持されたり,処理されたりしており,この観点からも本願発明はコンピュータなどのリソースを請求項や明細書に記載された事項と,それらの事項に関係する技術常識に基づいて判断すれば,本願発明は自然法則を利用したものであることとなる。
【0021】
<特許法で求められる自然法則の利用の意義>
特許法で求められる自然法則の利用とは,法目的に基づいて,発明が産業上利用性を有し,産業の発達に寄与するものでなければならないとの観点から,産業上有用に利用することができる発明であることを担保するために求められるものである。つまり,産業上有用であること,すなわち出願に際して宣言した発明の効果がその発明の実施によってある一定の確実性の下再現できることを求めるものである。この観点から自然法則利用性とは,発明の効果を発揮するための発明の構成である発明特定事項(発明構成要件)のそれぞれが発揮する機能が自然法則を利用して発揮されるものであればよい,と解釈される。さらに言えば,発明の効果とはその発明を利用する利用者に所定の有用性を提供できる可能性があればよいのであって,その有用性を利用者がどのように感じたり,考えたりするかという観点で見るべきではない。したがって,利用者が本システムによって得る効果が心理的な効果であったとしても,その効果自体は求められる自然法則の利用性の対象外の事象である。
【実施形態1】
【0022】
本実施形態は,経験的にプロジェクトの成功に影響を及ぼすことが知られているプロジェクト遂行に影響を与える事前要素である遂行影響事前要素を保持する遂行影響事前要素保持部と,プロジェクトを具体的に特定した特定プロジェクトを想定して遂行影響事前要素に対して該特定プロジェクトでの値である数値,有無,YES又はNO,レベル,選択肢のいずれか一以上である遂行事前状態値を関連付けるための質問を出力して入力を促す質問部と,遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値を用いて特定プロジェクトの成功の確率分布を算出するための関数である確率分布導出関数を保持する確率分布導出関数保持部と,質問部への入力によって得られた遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値と,確率分布導出関数保持部に保持されている確率分布導出関数と,によって質問部にて入力を受付けた特定プロジェクトの成功確率分布を算出する成功確率分布算出部と,算出された成功確率分布を保持する成功確率分布保持部と,を有するプロジェクト成功確率算出システムを提供する。
【0023】
以下,本実施形態におけるプロジェクト成功確率算出システムについて,機能的構成,ハードウェア構成及び処理の流れについて,順に説明する。
【0024】
<実施形態1:機能的構成>
図1は,実施形態1のプロジェクト成功確率算出システムの機能的構成を示す図である。本実施形態のプロジェクト成功確率算出システム0100は,遂行影響事前要素保持部0101と,質問部0102と,確率分布導出関数保持部0103と,成功確率分布算出部0104と,成功確率分布保持部0105とを有する。
【0025】
遂行影響事前要素保持部0101は,経験的にプロジェクトの成功に影響を及ぼすことが知られているプロジェクト遂行に影響を与える事前要素である遂行影響事前要素を保持する機能を有する。なお,遂行影響事前要素を本明細書の全体で遂行影響事前要素を識別する情報である遂行影響事前要素識別情報に読み替えることも可能である。また,アドバイス取得とアドバイス出力に関係する構成においては,遂行影響事前要素とし,それ以外について,遂行影響事前要素識別情報とすることも可能である。
【0026】
「遂行影響事前要素」とは,経験的にプロジェクトの成功に影響を及ぼすことが知られているプロジェクト遂行に影響を与える事前要素である。ただし,プロジェクト開始前の情報に必ずしも限定する必要はなく,プロジェクト遂行途上で,プロジェクトの将来に影響を与える情報を含むことができる。このように必ずしもプロジェクトの開始前に限定しないことで,成功確率分布の精度をプロジェクト遂行中にさらに確実性を増して知ることができる。したがって,プロジェクトの開始前からプロジェクトの実行中にわたって,より現実に近いと想定される遂行影響事前要素に関連付けられた値を繰返して確率分布導出関数に入力することにより,プロジェクトを成功に導く可能性を高めながらプロジェクトを遂行することができる。
【0027】
具体的に遂行影響事前要素とは,プロジェクトに投入し,ないしはプロジェクトに関与し,プロジェクトに関与する人に影響を与えうる人などの人的資源,プロジェクトに投入可能な資本ないしはプロジェクトに投入可能な資本に影響を与える要素,事前に準備しなければならないプロジェクトに要する資材又は,同資材の調達に影響を与える要素を主に言う。ただし,これ以外にも,前提とする社会インフラに影響を与える要素が含まれる場合がある。前提とする社会インフラとは,交通インフラ(例えば新型コロナウイルスの流行によって近年影響を受け,これによって経済が停滞した等の例),通信インフラ(例えば大規模なネットワーク障害等の例),経済インフラ(例えば為替市場,株式市場,債券市場,国債市場,原油市場,貴金属市場,穀物市場,金利市場などの市場機能等の例)も遂行影響事前要素として考慮対象要素となる場合がある。さらに社会情勢が遂行影響事前要素となる場合がある。社会情勢とは,主に国際情勢である。例えば近年では米中貿易摩擦を挙げることが出来る。これによって中国のファーウエイは急激に売り上げを落とし,また,日本国内の電子部品メーカーもファーウエイに対する出荷を停止して大きな経済的打撃を受けた。このように国際情勢の各種要素が遂行影響事前要素として把握されシステム内で考慮される場合がある。国際情勢を左右する要素として大きいのは,各国の政治体制,各国の首脳の発言,一部の国の軍事行動,一部の国の首脳等のスキャンダルなどを挙げることができる。マスコミの偏向報道を要素として加える場合もある。以下では遂行影響事前要素として代表的なものについて具体例を挙げる。また,遂行影響事前要素について得られる値が遂行事前状態値である。以下,「値」は適宜「遂行事前状態値」に読み替えて解釈する。遂行事前影響要素は,以下に説明するいずれか一以上を含むものから構成される場合がある。なお,以下に説明する遂行事前影響要素に限定されることはなく,プロジェクトの性質と利用する確率分布導出関数に応じて必要なものが選ばれる。
【0028】
<<人的資源>>
【0029】
<人的資源1:プロジェクト投入可能人数に関する情報>
人的資源,ないしはこれに関連する要素としては,「プロジェクトに投入可能な人数」をまず挙げることが出来る。これは必ずしも人数そのものでなくてもよい。例えば,所定のプロジェクト遂行スキルを有する人をそのスキル別に必要人数構想する場合に,どのスキルの人を構想人数分手配することが出来るか,という情報が人的資源に関する代表的な遂行影響事前要素のファクターになる。例えばAというスキルを有する人を10人手配しなければならないというプロジェクトの構想がある場合に,そのスキルの人の同人数の手配可能性がどの程度あるか,などがその値となる。例えば,15人手配可能であれば余裕があるのでその遂行影響事前要素の値は,それを満足する値として100(%:満足度を表す数値)を割りあてることができる。しかし,10人しか手配可能でない場合には,余裕がなく,何らかの偶発的理由によりその要素を満足できない可能性があるので値としては80(%:満足度を表す数値)を割り当てる。このようにこの遂行影響事前要素の各項目に状態に応じてあらかじめ定めた値をその実情に応じて割り当てるようにする。実情は,プロジェクト管理者が入力(選択肢からの選択など)し,システムがその要素に対して値を割り当てるように構成する。
【0030】
<人的資源2:プロジェクトへ参加する者の能力>
「プロジェクトに参加する者の能力」は,例えば,プロジェクトで利用するデータベース言語に精通する度合を一例として挙げることができる。プロジェクトの目的がある種のデータに関するデータベースの構築である場合には重要な要素となる。データベース言語要素の分類は,データ操作言語(DML(Data Manipulation Language):対象データの検索,新規登録,更新,削除のための言語もしくは言語要素),データ定義言語(DDL(Data Definition Language):データ構造の生成,更新,削除のための言語もしくは言語要素),データ制御言語(DCL(Data Control Language):アクセス制御のための言語もしくは言語要素である。例えば,普及しているデータベース言語であるSQL(Structured Query Language)では,その言語に上記のすべての言語要素が,さまざまな命令文が一つにまとめられた言語体系として,存在している。),があり,各参加者へ割り当てられたセクションに応じてそれぞれの言語に対する精通度や,過去の実績,その周辺の技術の知識,関連するAPI(Application Programming Interface)への精通度などを挙げることができる。言語に対するこれら精通度や,過去の実績,その周辺の技術の知識,関連するAPIへの精通度などは,それぞれ,状態を示す選択肢が用意され,プロジェクト管理者がその選択肢を選択することによってあらかじめその状態に割り当てられている値がシステムによってプロジェクトのその遂行影響事前要素の項目に割り当てられるように構成される。例えば,階層型データベースであるIBM社製のIMS(Information Management System)などでは,データ定義言語とデータ操作言語に固有の言語(DL/I(Data manipulation Language of IMS)とアセンブラマクロ)が存在する。
【0031】
<人的資源3:能力分布>
「能力分布」も遂行影響事前要素の一つである。プロジェクトを確実に達成するためには,プロジェクトに参加する参加者の能力が予定を上回らなければならない。この能力を二次元的,三次元的に値づけるものがプロジェクト参加者の能力分布である。能力分布は,各参加者一人一人に関しての複数のスキルについての能力の値と,複数の参加者によって構成されるグループの能力分布,複数のグループによって構成される上位グループの能力など複数の次元で値づけがされることができる。例えば,上流から下流に向けられるプロジェクトのタスクがある場合に,上流グループの能力が高くても,それに釣り合わず駐留グループの能力が低い場合にはプロジェクト全体としてはバランスが悪くなる。このように事前に想定される能力分布はプロジェクトの遂行に大きな影響を与えるので遂行影響事前要素としては重要である。
【0032】
<人的資源4:専門性>
「専門性」とは,プロジェクト参加者に求められるプロフェッショナルとして業務を遂行する能力の分野である。プロジェクトの目的に応じて遂行影響事前要素としての専門性は異なる。例えばプロジェクトの目的が特許庁における新規の特許に関するデータベースの構築である場合には,データベースの構築に際してバックグラウンドの知識が非常に重要になる。例えば,特許の法律期限に関する知識や,特許の手続きに関する知識,特許法に関する知識,特許分類,技術分野に関する知識などが要求される。これらの知識の専門性が遂行影響事前要素として求められる。例えば,あるプロジェクト参加者の専門性に関して,特許の法律期限に関する専門的知識と,特許分類に関する専門的知識を有し,手続きに関する知識,特許法に関する知識,技術分野に関する知識を有していない場合には,例えば二つの専門性を有しているので,1×2がその参加者に関連付けられるようにシステムが構成されていてもよい。これらは,選択肢からプロジェクト管理者が各参加者に対応して選択肢を選択し,その選択に応じてシステムが参加者に得点を関連付けるように構成する。プロジェクトの遂行に必要な専門性が十分に満たされているか,否かがその専門性の項目に応じて得点化され保持される。
【0033】
<人的資源5:耐性>
「耐性」は,例えば,プロジェクトのタスクが障害によって遂行が難しい時に,それにめげずにタスクをやり抜く力であり,別言すれば傷害耐性ということができる。傷害耐性は,いわば心理テストのようなものをプロジェクト参加者に受けさせて,その結果を数値化したものであ。最適値は過去のプロジェクトの成功事例,失敗事例の積み重ねから得られる値である。遂行影響事前要素としては,その最適値を上回るか,下回るかによって,プロジェクトの成功確率が影響を受ける。具体的には「性格特性」,「行動特性」,「ネガティブ特性」,「ストレス耐性」などに関する質問をシステムないしはシステムの周辺装置が各プロジェクト参加者(参加予定者も含む。明細書の全体を通じて同じ)に対して出力し,回答を点数化する処理を行う。その値と最適とが比較されてプロジェクトの成功確率を算出するのに利用される。
【0034】
<人的資源6:信頼性と妥当性>
「信頼性と妥当性」とは,プロジェクト参加者のプロジェクト遂行に対する信頼性であり,プロジェクトのタスクを割り当てる妥当性である。信頼性は,過去のその参加者の実績の履歴に応じて算出される。過去の実績を入力として信頼性を算出するルールを用いて算出される。これは,人工知能(AI:Artificial Intelligence)によって算出されるように構成してもよい。また妥当性も人の属性を複数の項目に対して数値化することで過去のプロジェクトの参加者のタスク処理実績を利用することで算出される。例えば,あるプロジェクト参加者が「年齢」,「システム概念設計力」,「SQLサーバ関連プロジェクトの参加数」という属性に関して,40歳,8/10,4という値を持っているとして,プロジェクトと同種の過去のプロジェクトにおいて同種の属性を有している人が妥当性として何点を取得しているかに応じて、遂行影響事前要素を利用して成功確率が算出される。例えば過去の同種のプロジェクトにおいて,同じような属性を有する参加者が妥当性に関して9/10を配点されている場合には,それと同様にその遂行影響事前要素としての妥当性に関してその参加者は9/10をシステムによって配点されることとなる。
【0035】
<人的資源7:投入可能人件費>
「投入可能人件費」は,今回のプロジェクトの人件費と、同規模のプロジェクトの過去の実績から適切な人材に対して適切に投入された人件費とを比較してシステムによって取得される。例えば,過去の類似のプロジェクトについて,類似の人的資源を投入した場合の適切な人件費が保持されており,今回のプロジェクトの人件費を入力することによって今回のプロジェクトの人件費及び過去のプロジェクトの人件費の比較がされて遂行影響事前要素としての値が取得される。例えば,過去の同種,同規模人的資源投入例で人件費の最適投入値が20億円である場合に,今回の投入人件費が21億円であるとすると,比較結果は10/10となる。
【0036】
<人的資源8:所定能力の人材市場の需給状態>
「所定能力の人材市場の需給状態」は,どの程度の確率でプロジェクトに必要な人材を採用できるかに関する項目であり,プロジェクトの開始時,プロジェクトの中間,プロジェクトの終了後などで人材市場から人材を集められる確率に対して与えられる値である。人材市場の需給状態は,現在の状態並びに将来の状態を含む概念である。例えばエレクトロニクス産業が衰退する傾向にあるが,近い将来そのような産業分野からリストラなどによって人材が豊富に流出し市場で流通する可能性などが数値化される。過去の人材の需給状態とプロジェクトの過去の実績との相関関係が関数として保持され,現在並びに将来の予測される人材の需給データをその関数に入力することによってプロジェクトの遂行影響事前要素の値が得られる。
【0037】
<人的資源9:プロジェクトに影響を与える人脈の質と量>
「プロジェクトに影響を与える人脈の質と量」は過去のプロジェクトの成功,失敗などの事例と,人脈の質と量との相関関係が関数として保持されており,それに対して,今回のプロジェクトの人脈の質と量を数値化したものを入力することによってプロジェクトの成功確率に影響を及ぼす遂行影響事前要素の値が得られる。具体的にはプロジェクトの担当役員,その上席となる役員や,代表取締役社長,副社長などの決裁権限を有する者がプロジェクトに影響を与える代表的人脈として把握できる。その他に技術者の統括者や,キーとなる技術を保有するスター技術者,経理担当役員,人事部の部長,プロジェクトに関する社員の人事を左右可能な人事部の課長,プロジェクトを外部から支援するコンサルティングファームのキーパーソン,会社の経営を支援するシンクタンクのキーパーソンなどが該当する。質と量は,これらの人脈のそれぞれの人物がプロジェクトに対して好意的か,敵対的か,中立的かという観点や,その立場に積極的か,消極的かという姿勢の観点,また,その人物の過去の業績や,過去のプロジェクトに対してとった態度,人脈を構成する各人物間の友好敵対関係やその程度などを挙げることができる。これら離散的に定量化してコンピュータ処理することによって遂行影響事前要素の値取得でき,プロジェクトに与える影響を定量化することが出来る。
【0038】
<投入可能資本>
投入可能資本とは,プロジェクトに投入することができる資本の大きさを言う。最も代表的なものとしては金銭である。また投入可能資本として設備や装置や,システム,プログラムなどを含むように構成してもよい。あるいは,設備や装置,システム,プログラムなどを金銭単位に変換して投入可能資本として処理するように構成してもよい。
【0039】
<投入可能資本1:投入可能資本量>
投入可能資本量は,原則的には金銭である。金銭がプロジェクトによって消費されるが,プロジェクトの達成のために十分な量の金銭があるか,あるいはジャストの量の金銭しかないか,あるいは,金銭が不足する蓋然性が高い金銭しかないかによってプロジェクトが成功する確率は変動する。投入可能資本量は遂行影響事前要素の代表的なものである。この投入可能資本量を評価するためには,プロジェクトに必要と想定される資本量を取得し,その想定必要資本量と比較することで評価が可能となる。この評価値が遂行影響事前要素として後に処理されることとなる。
【0040】
<投入可能資本2:追加投入可能資本量(プロジェクトの戦略変更余地のため)>
投入可能資本量としてプロジェクトにて消費することが事前に判明している投入可能資本量に対して,事前のプロジェクトの計画ではその必要性がないが,プロジェクトの変更などの事態に備えて準備しておく資本量を追加投入可能資本量という。原則的には金銭単位で,過去の対比可能なプロジェクトにおいてプロジェクトの目標や課題,タスクの変更などに応じて必要とされた追加投入資本量を取得し,その追加投入実績のある資本量に対して,プロジェクトの開始前に予備として追加投入可能資本量がどの程度存在するかによって評価する。例えば過去の同規模で同質なプロジェクトの追加投入資本量の平均値Aと,今回のプロジェクトの追加投入可能資本量Bとした場合に,B/Aの値を遂行影響事前要素として取得するように構成することが出来る。
【0041】
<投入可能資本3:投入可能資本が外貨建てである場合の為替相場の将来予想>
投入可能資本や追加投入可能資本が外貨建てで準備されている場合には為替相場の将来予測に基づいてプロジェクト本国における投入可能資本量が影響を受けるので,その影響を遂行影響事前要素として取得する必要がある。多くの場合には為替変動の中心線と,その中心線からの予測ボラティリティ(ばらつきの範囲)によって将来の為替相場が推定される。本件発明においては,予測ボラティリティを確率変数に置き換えて遂行影響事前要素の一要素として取得することが出来る。また為替相場は経時的に変化するので投入可能資本が実際に投入されるタイミングをプロジェクトの計画から想定して,各タイミングにおける遂行影響事前要素の取得を行って,各タイミングの値を平均して遂行影響事前要素の値とすることが考えられる。
【0042】
<投入可能資本4:投入可能資金の調達元の確保状況(融資枠,投資意向,場合により社債の発行可能性)>
投入可能資本が現金ですでに確保されている場合には遂行影響事前要素として1の値を与えることができるが,現金として確保されていない場合には,現金化する際のリスクを遂行影響事前要素として取得する必要がある。確率の値となる。例えば,金融機関からの融資で賄う予定の場合には,その金融機関がリスク0の金融機関である場合には,融資の際の金利や現金の融資タイミングなどが遂行影響事前要素となる。ただし,融資枠や金利が事前に確約されている場合には遂行影響事前要素としての確率は1となる。また投資家からの投資によって投入可能資本を調達する場合には,その投資家や投資機関のリスクを遂行影響事前要素として取得する必要がある。さらに社債の発行によってこれを賄う予定の場合には社債の発行額や,引受先の確保状況,引受先の経済リスクなどの総合が遂行影響事前要素として取得されるように構成する。
【0043】
<投入可能資本5:投入資本調達のための株式増資余地,新株引受先の確保状況>
投入可能資本を株式の新規公開や,新株の引き受け等による場合には,これらの想定される規模や,公開の場合には売値の予想などが過去の実績と比較される。新株の引き受けに関しても同様である。過去の実績と,今回の予定とを比較して,過去の実績がリスクA,今回の予定がリスクBだとすると,今回成功する確率は,B/Aという値で取得することができる。これが遂行影響事前要素として取得する必要がある値となる。
【0044】
<資材等の調達>
必要な資材等の調達の確実性は,プロジェクトに大きく影響を与える要素となる。近時ではアメリカによる中国への禁輸措置と,それを世界の国に義務付けた政治的影響によって,中国のスマートフォンのメーカーがスマートフォンの部品の調達が困難になったり,スマートフォンのOS(Operating System)が米国から提供されなくなり自前のOSを利用せざるを得なくなるなど,実際にプロジェクトの遂行に大きな影響が出た事例が存在する。
【0045】
<資材等の調達1:必要資材の確保可能性の状況>
必要資材の確保可能性の状況は,前述したような事態が発生する可能性という確率の値で取得できる。例えば政治的な摩擦が通常よりも強まり貿易戦争の可能性が高くなると,必要資材の確保可能性は確率1を下回ることとなる。これらはエコノミストやコンサルタント,シンクタンクなどの情報を基にして所定の関数に政治状況,戦争状況,災害の可能性,疫病の流行度合やその可能性,などの値を与えて確率値として算出できるように構成することが好ましい。
【0046】
<資材等の調達2:必要資材の調達コストの将来予想>
必要資材の調達コストの将来予測も重要である。例えば貿易戦争が発生し,関税が従来の2倍以上課されるなどの事態が実際に生じた例がある。この場合には必要資材の調達コストが通常予想を上回り,遂行影響事前要素としてプロジェクト成功に与える影響としては悪い影響を与える。成功確率の最大値を1とした場合には調達コストの上昇の予測割合に応じて成功確率を1よりも小さい値となるような値が必要資材の調達コストの将来予想に基づく遂行影響事前要素として取得される。
【0047】
<資材等の調達3:必要資材の品質確保の将来予想>
必要資材の将来の品質が確保されない場合にはプロジェクトの成功に影響を与えることとなる。例えば製品歩留まりが99%で必要資材を調達しようとしている場合に,予測が90%に下降したという場合には,資材調達量を増加したり,品質チェック要因を増員したり,とプロジェクトへの負荷が増えることとなる。また,システムに利用しようとしているサーバの演算エラーレートが予想よりも下がると,そのエラーを補うために冗長化システムを余分に構築しなければならなくなり,やはりプロジェクトの執行に負荷を生じさせる。これらによってプロジェクトの成功確率が影響を受けるのでこれらを数値化して遂行影響事前要素として取得する必要がある。
【0048】
<資材等の調達4:その他>
その他,「必要資材の保管コストの将来予想」,「必要資材の運搬コストの将来予想」,「必要資材の加工コストの将来予想」などもプロジェクトの成功確率に影響を及ぼす要素であり,数値化して遂行影響事前要素として取り扱う必要がある場合がある。
【0049】
<情報資源>
情報資源とは,広く表現すれば情報処理能力の高さである。それは,発見,収集,開発(研究能力)などとして把握することができる。そしてこれらも従前の例と同様に所定の関数を用いて数値化してプロジェクトの成功確率に影響を及ぼす要素(具体的には遂行影響事前要素)として取得することができる。
【0050】
<情報資源1:問題発生時の解決策に資する情報の発見能力>
これは,プロジェクト全体から見た場合の表現であるが,ミクロに見ると,プロジェクトに参加している参加者の能力から構成される。プロジェクト参加者は,過去のプロジェクトにおいての履歴等が収納されたプロジェクト参加者データベースを有するように構成されることが好ましく,そのデータベースではプロジェクト参加者の各種の能力が例えば10点満点で評価されるように構成する。そして,その参加者の担当しているタスク,管理などにおいてそのタスクを成功に導き,管理を成功に導けたか,という観点から評点が付される。このようなデータべースに基づいて,今回のプロジェクトの各参加者の能力と,その参加者が担当するタスクなどとの類似性などに基づいて,問題発生時の解決策に資する情報の発見能力が値として取得できるように構成する。
【0051】
<情報資源2:その他>
その他に「プロジェクトの遂行に必要な情報の収集力」,「プロジェクトのタスク等の変更時に必要な情報の収集力」,「プロジェクトの遂行に必要な課題の解決のための研究能力」なども上記と同様な仕組み,データベースなどを利用することによって値が取得される。
【0052】
質問部0102は,具体的なプロジェクトを想定して遂行影響事前要素に対してそのプロジェクトでの値である数値,有無,YES又はNO,レベル,選択肢のいずれか一以上である遂行事前状態値を関連付けるための質問を出力して入力を促す機能を有する。最終的にはこれらの値は確率分布導出関数の変数部分に代入されて成功確率分布を算出するのに利用されるので数値として扱われる。また,自由に文章を記入させるような質問でもよい。自由形式の回答は,人工知能などによって採点させ,最終的には同じく数値として扱われることができる。
【0053】
なお,質問部0102の回答に対する値,すなわち遂行事前状態値は,確率分布導出関数の形に応じて適切に設定されなければならない。確率分布導出関数が導出する成功確率分布に与える影響を適切に見積もって値が決定される。これは,過去の複数のプロジェクトの経験則に基づいて設定可能である。例えば,投入可能資本はいくらか,という質問に対して,二つの異なるプロジェクトにおいて,同じ5億円であったとしても,利用する確率分布導出関数が異なれば,Aプロジェクトにおいては値は100(%:満足度を表す数値),Bプロジェクトにおいては値は80(%:満足度を表す数値)となる場合もある。
【0054】
質問部0102が入力を促す相手は,プロジェクトの役割によって異なるように構成することが好ましい。例えば,人的資源に関する質問は,事前にプロジェクトの人事を決裁する人物,資本資源に関する質問は,事前にプロジェクトの資金調達計画を立てる人物などである。
【0055】
質問部0102は質問が各プロジェクト参加者の端末から出力されるように構成することができ,端末に入力されるプロジェクト参加者の識別情報に応じてあらかじめ準備された質問が出力されるように構成することができる。さらに,質問部0102は,過去のプロジェクトでの同一人物に対する質問のうち,重複する性質の質問に関しては省略するように構成することができる。例えば,性別,年齢,家族構成,居住地などである。質問部0102によって,遂行事前影響要素又は,遂行影響事前要素識別情報に関連付けられた値は蓄積されるように構成することが好ましい。この蓄積されている情報は,質問部0102の回答から取得されるプロジェクトの属性に関連付けられていることが好ましい。また,この回答は,回答をした人物や,その人物のプロジェクトでの役割に関連付けられていることがこのましい。
【0056】
また,過去の各プロジェクトに関連付けられて蓄積されるこれらの値は,そのプロジェクトの遂行経過情報や,最終結論情報と関連付けられていることが好ましい。そして,事前に予測した成功確率を実際の成功度合いと比較して確率分布導出関数の各値の重みづけや,確率分布導出関数中での値の取扱いを修正するように構成することが好ましい。これは,人工知能を利用したディープラーニングによって実現可能である。
【0057】
以下に遂行影響事前要素ごとの質問の例を示す。
【0058】
<人的資源に関する質問>
(1)プロジェクトの単位規模当たり(規模は投入資本,プロジェクト期間などによって取得される)の投入可能人数は何人ですか?
(2)プロジェクトの参加者一人当たりが担当する平均タスク数はいくつですか?
(3)プロジェクトの参加者の一人当たりの同等プロジェクトで発揮した能力値(何らかの形で能力を点数化した者)はいくらですか?
(4)投入可能人件費はいくらですか?
(5)プロジェクト参加者のタスクごとの能力分布はどのように分布していますか?
(6)専門性として,有資格者の人数は何人ですか?
(7)所定能力の人材市場の需給状態は,供給余力が十分ある場合を偏差値50として,いくつですか?
【0059】
<投入可能資本に関する質問>
(1)投入可能資本量は円単位で何円ですか?
(2)追加投入可能資本量(プロジェクトの戦略変更余地のため)は円単位で何円ですか?
(3)投入可能資本が外貨建てである場合の為替相場の将来予想は,過去5年平均に対して上下何%の範囲に入りますか?これをボリンジャーバンドで表すとどうなりますか?(「ボリンジャーバンド」とは,統計学の標準偏差と正規分布の考え方に基づいた指標で,ある期間の価格が期間の平均値からどれぐらいばらついているか,分散しているかを求めたもの。たとえば,5日間のドル/円の終値が,どの程度の範囲でばらついているかを表す。)
(4)投入可能資金の調達元の確保状況(融資枠,投資意向,場合により社債の発行可能性)
(5)投入資本調達のための株式増資余地,新株引受先の確保状況は格付表現でどの格付ですか?例えばスタンダードアンドプアーズの格付を値として入力させる。
【0060】
<資材等の調達に関する質問>
(1)必要資材の確保可能性の状況を0%から100%の間の値で入力してください。
(2)必要資材の調達コストの将来予想を過去5年平均に対する偏差値で入力して下さい。あるいは,過去5年平均に対する値を50とした場合に値で入力してください。
(3)必要資材の品質確保の将来予想を過去5年平均に対する偏差値で入力して下さい。あるいは,過去5年平均に対する値を50とした場合に値で入力してください。
(4)必要資材の保管コストの将来予想を過去5年平均に対する偏差値で入力して下さい。あるいは,過去5年平均に対する値を50とした場合に値で入力してください。
(5)必要資材の運搬コストの将来予想を過去5年平均に対する偏差値で入力して下さい。あるいは,過去5年平均に対する値を50とした場合に値で入力してください。
(6)必要資材の加工コストの将来予想を過去5年平均に対する偏差値で入力して下さい。あるいは,過去5年平均に対する値を50とした場合に値で入力してください。
【0061】
<情報資源に関する質問事項>
(1)問題発生時の解決策に資する情報の発見能力を過去5年平均のプロジェクトにおける発見能力に対する偏差値で入力して下さい。あるいは,過去5年平均に対する値を50とした場合に値で入力してください。
(2)プロジェクトの遂行に必要な情報の収集力
プロジェクトのタスク等の変更時に必要な情報の収集力
プロジェクトの遂行に必要な課題の解決のための研究能力
【0062】
<実施形態1:確率分布導出関数保持部>
確率分布導出関数保持部0103は,遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値を用いてプロジェクトの成功の確率分布を導出するための関数である確率分布導出関数を保持する機能を有する。
【0063】
確率分布導出関数は,例えば横軸がプロジェクトの成功確率であり,縦軸がその確率でプロジェクトが成功する頻度である成功確率分布関数を導出するための関数であって,遂行事前要素の値である遂行事前状態値によって導出される成功確率分布関数が変化する関数である。つまり,遂行事前状態値が決定すると成功確率分布関数が決定される関数である。つまり,関数の関数である。導出される成功確率分布関数は,最も代表的には,平均成功確率を中心として頻度が左右に平等に分布する正規分布関数か,正規分布関数に近い形状で分布する関数となる。正規分布関数である場合又は正規分布関数に近い場合には,分散σ(σの二乗)と,平均μが遂行事前状態値によって決定される。つまり,分散σ(σの二乗)と平均μが遂行事前状態値の関数となるような関数が確率分布導出関数である。
【0064】
ただし,その正規分布の分散がどの程度になるかや,正規分布からどの程度のゆがみを持つ正規分布に近い分布であるかは,確率分布導出関数である分散σ(σの二乗)の関数の形,同じく確率分布導出関数である平均μの関数の形によって変化する。つまり,確率分布導出関数は,そのプロジェクトの性質や,プロジェクト実行体の属性に応じて決定される関数である。確率分布導出関数の形,つまり,分散σ(σの二乗)や平均μの関数が特定されると,その関数に遂行事前状態値を代入することで分散σ(σの二乗)や平均μが決定される。分散σ(σの二乗)や,平均μが決定されると正規分布関数が決定され,成功確率分布が特定される。
【0065】
例えば遂行事前影響要素が100個あり,そのそれぞれに遂行事前状態値が1つずつ関連付けられている場合には,確率分布導出関数の変数100個のそれぞれに遂行影響事前要素に対応付けられた遂行事前状態値を代入することで,そのプロジェクトの成功確率分布が得られることとなる。
【0066】
なお,確率分布は正規分布の形をとるのが代表的であるが,必ずしも正規分布に限定されずこれ以外の形であってもよい。例えば分散σ(σの二乗)と平均μで決定される正規分布関数(確率分布導出関数)を関数F(x)で修正する分布が考えられる。このF(x)を修正関数という。修正関数も確率分布導出関数である。F(x)は,やはり一以上の遂行影響事前要素に与えられた遂行事前状態値によって決定される関数となる。この場合には該分布は,正規分布fa(x)と修正関数F(x)との積として,fb(x)=F(x)×fa(x)という形で表される。この表現されたものが最終的に求める確率分布関数であり成功確率分布である。なお,修正関数は必ずしも正規分布関数に積の形で関与するだけでなく,定数項として加算され,減算されたり,xに加算され,減算されるように利用してもよいし,もちろん,これらの二以上のミックスの形で修正関数が利用されてもよい。さらに修正関数は1種に限定されず,複数の修正関数が利用されるように構成してもよい。これらの修正は人工知能の機械学習(例えばディープラーニングなど)によって適宜修正されるように構成してもよいし、機械学習と公知の統計手法(例えばベイズ統計など)の組み合わせによって適宜修正されるように構成してもよい。
【0067】
例えば、ベイズ統計であれば、以下の算出式によりP(A|B)を定義することができる。P(A|B)は事後確率を表している。事後確率は事象Bが起こるという条件のもとで事象Aが起こる確率である。
<算出式>
P(A|B)=P(B|A)P(A)/P(B)
ここで、P(A)は事前確率を表している。事前確率は事象Bが起こる前に事象Aが起こる確率である。事前確率は本システムのユーザの主観で設定することができる。P(B|A)は尤度を表している。尤度は事象Aが起こるという条件のもとで(又は事象Aが真と仮定した際に)事象Bが起こる確率である。P(B)は周辺尤度を表している。周辺尤度は事象Aが起こる前に事象Bが起こる確率である。すなわち、周辺尤度は事象A,B全体の中で事象Bが真になる確率である。例えば、事象Aとしてプロジェクトが目標に届かないといった情報を採用し、事象Bとしてプロジェクトの規模が大きいといった情報や、プロジェクトマネージャの経験値が低いといった情報を採用することができる。ベイズ統計によれば、事象Bに基づいて事象Aの確率を変化させることができる。
【0068】
このように、成功確率の予測の正解が困難な中で、遂行影響事前要素に与えられた遂行事前状態値から正解を表す引数(パラメータ)を変動させながら予測できるベイズ統計は機械学習と相性が良い。このため、機械学習とベイズ統計の組合せを採用することは、機械学習を単独で採用した場合に比べて、成功確率の予測に有益である。
【0069】
また確率分布導出関数のフィードバックや,人工知能のディープラーニングなどによる修正であるが,これは,該当するプロジェクトが完全に終了した時に最初に利用した確率分布導出関数を修正するのでなく,プロジェクトの進行に合わせて途中経過におけるプロジェクトの遂行経過をフィードバックして確率分布導出関数を修正するように構成することもできる。
【0070】
例えば遂行影響事前要素に関連付けられている値は時間の経過とともに変化しうるし,すでに確定した遂行影響事前要素も存在しうるので,少なくともすでに確定した遂行影響事前要素に関して,質問部にて選択され値が取得されたものと,現実の値を比較して,確率分布導出関数を変形させてゆくことが考えられる。
【0071】
<実施形態1:成功確率分布算出部>
成功確率分布算出部0104は,質問部0102への入力によって得られた各遂行影響事前要素(遂行影響事前要素識別情報)に関連付けられている遂行事前状態値と,確率分布導出関数保持部0103に保持されている確率分布導出関数と,によって質問部0102にて入力を受付けたプロジェクトの成功確率分布を算出する機能を有する。成功確率分布は代表的には正規分布であるが前述のとおりこれに限定されるものでない。また,前述のように遂行影響事前要素を用いた成功確率分布の算出は,プロジェクトの開始前に限定されるものでなく,プロジェクトの遂行中に随時遂行影響事前要素の値の精度を高めながら成功確率分布を算出するようにすることが好ましい。このために質問部0102では,プロジェクトの進行具合に応じて再質問を出力するスケジュールを有し,プロジェクトの中間過程において,適宜,適切なプロジェクト参加者を選定して質問をその端末から出力して遂行影響事前要素の値を修正してより精度の高い成功確率分布を算出して提示するように構成することが好ましい。また,後述する成功確率を一定以上とすることができる確率の算出に関しても同様にプロジェクトの中間段階で算出し,より成功確率を向上させるアドバイスをプロジェクトの遂行中も継続的に出力するように構成することが好ましい。
【0072】
<実施形態1:成功確率分布保持部>
成功確率分布保持部0105は,算出された成功確率分布を保持する機能を有する。成功確率分布は,プロジェクトの開始前に算出するのであるが,前述のようにすでに確定した遂行影響事前要素の値を用いることによって,あるいは時間の経過とともに精度を上げた遂行影響事前要素の値を用いることによってより精度の高い成功確率分布を得ることができるので,質問部のスケジュールに従って,プロジェクトの実行中に繰返して成功確率分布を算出し,時系列に同一プロジェクトの成功確率分布を保持するように構成することが好ましい。つまり,成功確率分布履歴保持手段を有するように構成する。
【0073】
<実施形態1:ハードウェア構成>
図2は本実施形態におけるハードウェア構成の一例を示す図である。本実施形態におけるプロジェクト成功確率算出システム0100のハードウェア構成について,図を用いて説明する。
【0074】
この図にあるように,コンピュータは,マザーボード上に構成される,チップセット,CPU,不揮発性メモリ,メインメモリ,各種バス,BIOS(Basic Input Output System),各種インターフェイス,リアルタイムクロック等からなる。これらはオペレーティングシステムやデバイスドライバー,各種プログラムなどと協働して動作する。本発明を構成する各種プログラムや各種データはこれらのハードウェア資源を効率的に利用して各種の処理を実行するように構成されている。
【0075】
≪チップセット≫
「チップセット」は,コンピュータのマザーボードに実装され,CPUの外部バスと,メモリや周辺機器を接続する標準バスとの連絡機能,つまりブリッジ機能を集積した大規模集積回路(LSI(Large Scale Integration))のセットである。2チップセット構成を採用する場合と,1チップセット構成を採用する場合とがある。CPUやメインメモリに近い側をノースブリッジ,遠い側で比較的低速な外部I/O(Input/Output)とのインターフェイスの側にサウスブリッジが設けられる。
【0076】
(ノースブリッジ)
ノースブリッジには,CPUインターフェイス,メモリコントローラ,グラフィックインターフェイスが含まれる。従来のノースブリッジの機能のほとんどをCPUに担わせてもよい。ノースブリッジは,メインメモリのメモリスロットとはメモリバスを介して接続し,グラフィックカードのグラフィックカードスロットとは,ハイスピードグラフィックバス(AGP(Accelerated Graphics Port),PCI(Peripheral Component Interconnect) Express)で接続される。
【0077】
(サウスブリッジ)
サウスブリッジには,PCIインターフェイス(PCIスロット)とはPCIバスを介して接続し,ATA(Advanced Technology Attachment)(SATA(Serial ATA))インターフェイス,USBインターフェイス,Ethernet(登録商標)インターフェイスなどとのI/O機能やサウンド機能を担う。高速な動作が必要でない,あるいは不可能であるようなPS/2ポート,フロッピーディスクドライブ,シリアルポート,パラレルポート,ISA(Industry Standard Architecture)バスをサポートする回路を組み込むことは,チップセット自体の高速化の足かせとなるためサウスブリッジのチップから分離させ,スーパーI/Oチップと呼ばれる別のLSIに担当させることとしてもよい。CPU(MPU(Micro Processor Unit))と,周辺機器や各種制御部を繋ぐためにバスが用いられる。バスはチップセットによって連結される。メインメモリとの接続に利用されるメモリバスは,高速化を図るために,これに代えてチャネル構造を採用してもよい。バスとしてはシリアルバスかパラレルバスを採用できる。パラレルバスは,シリアルバスが1ビットずつデータを転送するのに対して,元データそのものや元データから切り出した複数ビットをひとかたまりにして,同時に複数本の通信路で伝送する。クロック信号の専用線がデータ線と平行して設け,受信側でのデータ復調の同期を行う。CPU(チップセット)と外部デバイスをつなぐバスとしても用いられ,GPIB(General Purpose Interface Bus),IDE(Integrated Drive Electronics)/(パラレル)ATA,SCSI(Small Computer System Interface),PCIなどがある。高速化に限界があるため,PCIの改良版PCI ExpressやパラレルATAの改良版シリアルATAでは,データラインはシリアルバスでもよい。
【0078】
≪CPU≫
CPUはメインメモリ上にあるプログラムと呼ばれる命令列を順に読み込んで解釈・実行することで信号からなる情報を同じくメインメモリ上に出力する。CPUはコンピュータ内での演算を行なう中心として機能する。なお,CPUは演算の中心となるCPUコア部分と,その周辺部分とから構成され,CPU内部にレジスタ,キャッシュメモリや,キャッシュメモリとCPUコアとを接続する内部バス,DMA(Direct Memory Access)コントローラ,タイマー,ノースブリッジとの接続バスとのインターフェイスなどが含まれる。なお,CPUコアは一つのCPU(チップ)に複数備えられていてもよい。また,CPUに加えて,グラフィックスプロセッシングユニット(GPU(Graphics Processing Unit))若しくはFPU(Floating Point Unit)によって,処理を行っても良い。
【0079】
≪不揮発性メモリ≫
(HDD(Hard Disk Drive))
ハードディスクドライブの基本構造は,磁気ディスク,磁気ヘッド,および磁気ヘッドを搭載するアームから構成される。外部インターフェイスは,SATA (過去ではATA)を採用することができる。高機能なコントローラ,例えばSCSIを用いて,ハードディスクドライブ間の通信をサポートする。例えば,ファイルを別のハードディスクドライブにコピーする時,コントローラがセクタを読み取って別のハードディスクドライブに転送して書き込むといったことができる。この時ホストCPUのメモリにはアクセスしない。したがって、CPUの負荷を増やさないで済む。
【0080】
≪メインメモリ≫
CPUが直接アクセスしてメインメモリ上の各種プログラムを実行する。メインメモリは揮発性のメモリでDRAMが用いられる。メインメモリ上のプログラムはプログラムの起動命令を受けて不揮発性メモリからメインメモリ上に展開される。その後もプログラム内で各種実行命令や,実行手順にしたがってCPUがプログラムを実行する。
【0081】
≪オペレーティングシステム(OS)≫
オペレーティングシステムはコンピュータ上の資源をアプリケーションに利用させるための管理をしたり,各種デバイスドライバーを管理したり,ハードウェアであるコンピュータ自身を管理するために用いられる。小型のコンピュータではオペレーティングシステムとしてファームウエアを用いることもある。
【0082】
≪BIOS≫
BIOSは,コンピュータのハードウェアを立ち上げて,オペレーティングシステムを稼働させるための手順をCPUに実行させるもので,最も典型的にはコンピュータの起動命令を受けるとCPUが最初に読取りに行くハードウェアである。ここには,ディスク(不揮発性メモリ)に格納されているオペレーティングシステムのアドレスが記載されており,CPUに展開されたBIOSによってオペレーティングシステムが順次メインメモリに展開されて稼働状態となる。なお,BIOSは,バスに接続されている各種デバイスの有無をチェックするチェック機能をも有している。チェックの結果はメインメモリ上に保存され,適宜オペレーティングシステムによって利用可能な状態となる。なお,外部装置などをチェックするようにBIOSを構成してもよい。
【0083】
以上については,他の実施形態でも同様である。
【0084】
図2に示すように,本発明は基本的に汎用コンピュータプログラム,各種デバイスで構成することが可能である。コンピュータの動作は基本的に不揮発性メモリに記録されているプログラムを主メモリにロードして,主メモリとCPUと各種デバイスとで処理を実行していく形態をとる。デバイスとの通信はバス線と繋がったインターフェイスを介して行われる。インターフェイスには,ディスプレイインターフェイス,キーボード,通信バッファ等が考えられる。
【0085】
2にあるように,不揮発性メモリは、各種のプログラムを格納する。不揮発性メモリは、経験的にプロジェクトの成功に影響を及ぼすことが知られているプロジェクト遂行に影響を与える事前要素である遂行影響事前要素を保持する「遂行影響事前要素保持プログラム」と,プロジェクトを具体的に特定した特定プロジェクトを想定して遂行影響事前要素に対して該特定プロジェクトでの値である数値,有無,YES又はNO,レベル,選択肢のいずれか一以上である遂行事前状態値を関連付けるための質問を出力して入力を促す「質問プログラム」と,遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値を用いてプロジェクトの成功の確率分布を算出するための関数である確率分布導出関数を保持する「確率分布導出関数保持プログラム」と,質問部0102への入力によって得られた各遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値と,確率分布導出関数保持部0103に保持されている確率分布導出関数と,によって質問部0102にて入力を受付けたプロジェクトの成功確率分布を算出する「成功確率分布算出プログラム」と,算出された成功確率分布を保持する「成功確率分布保持プログラム」とを有しており,一連のプログラムの実行命令に基づいて,これらのプログラムが主メモリに読み込まれ,動作開始命令に基づいてこれらのプログラムが実行される。なお,このコンピュータは不揮発性メモリ,主メモリ,CPU,インターフェイス(例えば,ディスプレイ,キーボード,通信等)がバスラインに接続されて相互に通信可能に構成される。
【0086】
<実施形態1:処理の流れ>
図3は,本実施形態におけるプロジェクト成功確率算出システム0100を利用した場合の処理の流れを示す図である。本実施形態の処理の流れとしては,遂行影響事前要素保持ステップS0301と,質問ステップS0302と,確率分布導出関数保持ステップS0303と,成功確率分布算出ステップS0304と,成功確率分布保持ステップS0305とを有する計算機であるプロジェクト成功確率算出システム0100の動作方法である。以下,各ステップにつき,説明する。
【0087】
遂行影響事前要素保持ステップS0301とは,経験的にプロジェクトの成功に影響を及ぼすことが知られているプロジェクト遂行に影響を与える事前要素である遂行影響事前要素を保持する段階である。
【0088】
質問ステップS0302とは,プロジェクトを具体的に特定した特定プロジェクトを想定して遂行影響事前要素に対して該特定プロジェクトでの値である数値,有無,YES又はNO,レベル,選択肢のいずれか一以上である遂行事前状態値を関連付けるための質問を出力して入力を促す段階である。
【0089】
確率分布導出関数保持ステップS0303とは,遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値を用いてプロジェクトの成功の確率分布を算出するための関数である確率分布導出関数を保持する段階である。
【0090】
成功確率分布算出ステップS0304とは,質問ステップS0302での入力によって得られた各遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値と,確率分布導出関数保持部0103に保持されている確率分布導出関数と,によって質問部0102にて入力を受付けたプロジェクトの成功確率分布を算出する段階である。
【0091】
成功確率分布保持ステップS0305とは,算出された成功確率分布を保持する段階である。
【実施形態2】
【0092】
<実施形態2:概要>
本実施形態は,前記説明した実施形態に加えて,希望する成功可能性に関する情報である希望成功可能性情報を取得し,保持されている成功確率分布と取得した希望成功可能性情報とに基づいて希望成功可能性が実現する確率である実現確率を算出する機能を有するという特徴を有するプロジェクト成功確率算出システムを提供する。
【0093】
<実施形態2:機能的構成>
図4は,実施形態2のプロジェクト成功確率算出システム0400の機能的構成を示す図である。本実施形態のプロジェクト成功確率算出システム0400は,遂行影響事前要素保持部0401と,質問部0402と,確率分布導出関数保持部0403と,成功確率分布算出部0404と,成功確率分布保持部0405とを有する。さらに,実施形態2は,希望成功可能性情報取得部0406と,実現確率算出部0407とを有する。
【0094】
<実施形態2:希望成功可能性情報取得部>
希望成功可能性情報取得部0406は,希望する成功可能性に関する情報である希望成功可能性情報を取得するように構成される。実施形態1で保持される成功確率分布は,横軸を成功可能性(例えば成功確率),縦軸をそのプロジェクトをその遂行影響前要素に与えられた各遂行事前状態値での各成功可能性が実現する頻度を表している。その成功確率分布を前提として,プロジェクトの成功確率がある値以上であることを取得するその値が希望成功可能性情報である。これは,例えば成功確率が75%以上であることを希望する,という場合には,「75%」又は「75%以上」が希望成功可能性情報となる。そして,例えば図10にあるように,75%以上の頻度をすべて集めた値がS2,75%よりも小さな値の頻度をすべて集めた値がS1であるとすると,全頻度がS1+S2となるので,75%以上の確率でプロジェクトの成功が実現する確率である実現確率は,S2/(S1+S2)となる。
【0095】
<実施形態2:実現確率算出部>
実現確率算出部0407は,保持されている成功確率分布と,取得した希望成功可能性情報とに基づいて希望成功可能性が実現する確率である実現確率を算出する。実現確率は前述のように,希望成功可能性情報で示される希望する成功可能性と成功確率分布とを用いて全確率頻度で希望成功可能性以上の確率の頻度を除した値であり,実現確率算出部0407は,この演算を行って実現確率を算出する。
【0096】
なお,実現確率算出部0407での算出結果は,成功確率分布に応じて算出される。したがって,前述のように遂行影響事前要素の値がプロジェクトの進行に応じて変化する場合には,その精度の向上した値に応じて確率分布導出関数によって算出される成功確率分布が変化するので,その変化の都度,実現確率を算出しなおすように構成することが好ましい。
【0097】
また,実現確率の算出結果は,プロジェクトの進行情報と関連付けて本システム内に保持されるように構成することが好ましい。そして,プロジェクトのメルクマールや進行情報順に実現確率の変化を示す図表などを出力するように構成することが好ましい。また,遂行影響事前要素の値が実際にはプロジェクトの進行に応じて変化していない場合でも,仮想的にシミュレーションするために遂行影響事前要素の値を一以上入力し,その値の変化に応じて実現確率がどのように変化するかを図表,グラフなどにして出力するように構成することが好ましい。プロジェクトの遂行方針をこの図表やグラフなどを介して決定することができるからである。
【0098】
<実施形態2:ハードウェア構成>
図5は,本実施形態におけるプロジェクト成功確率算出システムのハードウェア構成を示す図である。この図にあるように,コンピュータは,マザーボード上に構成される,チップセット,CPU,不揮発性メモリ,メインメモリ,各種バス,BIOS,各種インターフェイス,リアルタイムクロック等からなる。これらはオペレーティングシステムやデバイスドライバー,各種プログラムなどと協働して動作する。本発明を構成する各種プログラムや各種データはこれらのハードウェア資源を効率的に利用して各種の処理を実行するように構成されている。
【0099】
ここに「主メモリ」は,各種処理を行うプログラムを「CPU」に実行させるために読み出すと同時に,そのプログラムの作業領域でもあるワーク領域を提供する。また,この「主メモリ」や「HDD」にはそれぞれ複数のアドレスが割り当てられており,「CPU」で実行されるプログラムは,そのアドレスを特定しアクセスすることで相互にデータのやりとりを行い,処理を行うことが可能になっている。
【0100】
この図にあるように,不揮発性メモリは、経験的にプロジェクトの成功に影響を及ぼすことが知られているプロジェクト遂行に影響を与える事前要素である遂行影響事前要素を保持する「遂行影響事前要素保持プログラム」と、プロジェクトを具体的に特定した特定プロジェクトを想定して遂行影響事前要素に対して該特定プロジェクトでの値である数値,有無、YES又はNO、レベル、選択肢のいずれか一以上である遂行事前状態値を関連付けるための質問を出力して入力を促す「質問プログラム」と、遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値を用いてプロジェクトの成功の確率分布を算出するための関数である確率分布関数を保持する「確率分布関数保持プログラム」と、質問部0402への入力によって得られた各遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値と、確率分布導出関数保持部0403に保持されている確率分布導出関数と、によって質問部0402にて入力を受付けたプロジェクトの成功確率分布を算出する「成功確率分布算出プログラム」と、算出された成功確率分布を保持する「成功確率分布保持プログラム」と、希望する成功可能性に関する情報である希望成功可能性情報を取得する「希望成功可能性情報取得プログラム」と、保持されている成功確率分布と、取得した希望成功可能性情報とに基づいて、希望成功可能性が実現する確率である実現確率を算出する「実現確率算出プログラム」と、を有しており,一連のプログラムの実行命令に基づいて,これらのプログラムが主メモリに読み込まれ,動作開始命令に基づいてこれらのプログラムが実行される。なお,このコンピュータは不揮発性メモリ,主メモリ,CPU,インターフェイス(例えば,ディスプレイ,キーボード,通信等)がバスラインに接続されて相互に通信可能に構成される。さらに,図示しないが、不揮発性メモリは,診断シートに診断入力をする診断者を識別する診断者識別情報をプロジェクト診断シートと関連付けるために取得する「プロジェクト診断者識別情報取得プログラム」を備えている。
【0101】
<実施形態2:処理の流れ>
図6は,本実施形態におけるプロジェクト成功確率算出システム0400を利用した場合の処理の流れを示す図である。本実施形態の処理の流れは、経験的にプロジェクトの成功に影響を及ぼすことが知られているプロジェクト遂行に影響を与える事前要素である遂行影響事前要素を保持する遂行影響事前要素保持ステップS0601と、プロジェクトを具体的に特定した特定プロジェクトを想定して遂行影響事前要素に対して該特定プロジェクトでの値である数値、有無、YES又はNO、レベル、選択肢のいずれか一以上である遂行事前状態値を関連付けるための質問を出力して入力を促す質問ステップS0602と、遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値を用いてプロジェクトの成功確率分布を算出するための関数である確率分布導出関数を保持する確率分布導出関数保持ステップS0603と、質問ステップでの入力によって得られた各遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値と、確率分布導出関数保持ステップS0603に保持されている確率分布導出関数と、によって質問ステップS0602にて入力を受付けたプロジェクトの成功確率分布を算出する成功確率分布算出ステップS0604と、算出された成功確率分布を保持する成功確率分布保持ステップS0605と、希望する成功可能性に関する情報である希望成功可能性情報を取得する希望成功可能性情報取得ステップS0606と、保持されている成功確率分布と、取得した希望成功可能性情報とに基づいて、希望成功可能性が実現する確率である実現確率を算出する実現確率算出ステップS0607とからなる。なお,このうち,希望成功可能性情報取得ステップS0606と実現確率算出ステップS0607を除く各ステップS0601~S0605は,実施形態1と同様である。
【0102】
希望成功可能性情報取得ステップS0606とは,希望する成功可能性に関する情報である希望成功可能性情報を取得する段階である。
【0103】
実現確率算出ステップS0607とは,保持されている成功確率分布と、取得した希望成功可能性情報とに基づいて、希望成功可能性が実現する確率である実現確率を算出する段階である。
【実施形態3】
【0104】
<実施形態3:概要>
本実施形態は,実施形態2で示した実現確率を向上するためのアドバイスを取得し,出力することができるように構成された,実施形態2を基礎とした実施形態である。
【0105】
<実施形態3:機能的構成>
図7は,実施形態3のプロジェクト成功確率算出システム0700の機能的構成を示す図である。本実施形態のプロジェクト成功確率算出システム0700は,遂行影響事前要素保持部0701と,質問部0702と,確率分布導出関数保持部0703と,成功確率分布算出部0704と,成功確率分布保持部0705と,希望成功可能性情報取得部0706と,実現確率算出部0707とを有する。本実施形態のプロジェクト成功確率算出システム0700は,実施形態2の構成を基礎として,影響度取得部0708と,アドバイス取得ルール保持部0709と,アドバイス取得部0710と,アドバイス出力部0711と,をさらに有する。
【0106】
<実施形態3:影響度取得部>
影響度取得部0708は,実現確率に対する遂行影響事前要素に関連付けられた遂行事前状態値による影響度を取得する。「影響度」は「寄与率」と同義である。実現確率全体としての伸び率(変化率)を100とした場合の,遂行影響事前要素の値の影響度(増減分)を構成比(%)で表すものである。具体的な算式は,「寄与率=遂行影響事前要素の値(遂行事前状態値)増減/実現確率全体の増減(×100)」という算式で表すことができる。したがって,取得された成功確率分布を前提として,プロジェクトの成功確率がある値以上であることを取得する際に,前述のとおり,成功確率分布図(図10)において,例えば75%以上の頻度をすべて集めた値がS2,75%よりも小さな値の頻度をすべて集めた値がS1であるとすると,全頻度がS1+S2となるので,75%以上の確率でプロジェクトの成功が実現する確率である実現確率は,S2/(S1+S2)=J%となる。この値は,遂行影響事前要素の値(遂行事前状態値)がAである場合に,遂行影響事前要素の値の変化分であるΔA変化した値であるA+ΔAとなった場合に,実現確率がJ+ΔJ%となった場合に,ΔA/ΔJ(×100)で定義することができる。したがって,各プロジェクトについての遂行影響事前要素の値である遂行事前状態値が確定し,確率分布導出関数に代入することによって得られる成功確率分布からさらに得られる実現確率と,同じ確率分布導出関数に遂行事前状態値の値をΔA変化させて得られた実現確率のΔJで除した値を遂行事前状態値の数分演算することで各遂行影響事前要素の影響度を取得することができる。一つの遂行事前状態値の影響度を取得する際には,他の遂行事前状態値は最初の確率分布導出関数に入力された際の値のまま固定とする。影響度は遂行事前状態値一つ一つ取得する。
【0107】
また,実現確率に対する遂行影響事前要素の影響度は,遂行影響事前要素ごとに予め情報として保持されていてもよいし,前述のように都度計算することによって取得するように構成してもよい。なお,影響度は,遂行影響事前要素の値,つまり遂行事前状態値によっても一般的には変化する。影響度は遂行影響事前要素の種類だけでなく,その値がまだ十分プロジェクトの成功に向けて伸びしろがあるのか,プロジェクトの成功に向けてサチュレーションしかけているのかによってその傾きが変化するからである。
【0108】
<実施形態3:アドバイス取得ルール保持部>
アドバイス取得ルール保持部0709は,実現確率を向上するために遂行事前状態値を前提とした遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得するためのルールであるアドバイス取得ルールを保持する。ここで「遂行事前状態値を前提とした」とは,その遂行事前状態値をさらに改善するためのアドバイスであるので,アドバイスの内容は遂行事前状態値に応じて異なる内容となる場合があるからである。例えば投入可能資本量が5億円のケース1と,投入可能資本量が10億円のケース2とがあり,単位当たりの投入可能資本量でプロジェクトの成功実現確率が5億円近辺では10%,10億円近辺では5%向上する場合に,前者では1億円の投入可能資本の増加で実現確率が10%増えるのに対し,後者では5%なので,実現確率を仮に15%向上させたい場合には,前者では1.5億円の追加投入可能資本の確保のためのアドバイスとなるが,後者では3億円の追加投入資本の確保ためのアドバイスが必要となり,アドバイスの質が両者で異なる可能性がある。例えばケース1では,親会社からの追加投資がアドバイスになる場合があり,後者では増資がアドバイスとなる場合がある。
【0109】
このように,前提とされる遂行事前状態値と,目標とする実現確率の値とによって適切なアドバイスが異なる場合があり,遂行事前状態値と,目標とする実現確率とに応じて保持されているアドバイスを選択するためのルールがアドバイス取得ルールである。アドバイス取得ルールは,遂行影響事前要素と,その遂行事前状態値と,目標とする実現確率との関数によって取得するアドバイスを識別するアドバイス識別情報を取得するように構成される。したがって,多数のアドバイスがアドバイス識別情報と関連付けられて保持されるアドバイス取得ルール保持部0709をプロジェクト成功確率算出システム0700が有するように構成されることが好ましい。
【0110】
アドバイス取得部0710は,取得した影響度とアドバイス取得ルールと,基づいて遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得する。この「影響度」は,遂行影響事前要素に関連付けられた遂行事前状態値に応じて変化することはすでに説明したとおりである。実現確率の目標を設定しないでアドバイスを取得する場合には,アドバイス取得ルールに代入される変数は,遂行影響事前要素ごとに影響度のみとなるが,実現確率の目標を設定する場合には,実現確率の目標と,現在の実現確率との差分値や,現在の実現確率そのものもアドバイス取得ルールに代入する変数となるようにアドバイス取得ルールが構成されることが好ましい。
【0111】
また,アドバイス取得部0710は,影響度が高い順に遂行影響事前要素を選択してアドバイス取得ルールを用いてアドバイスを取得することが考えられるので,アドバイスを取得する際には影響度順に遂行影響事前要素の識別情報を取得して,例えば上位N(Nは自然数)個の遂行影響事前要素(識別情報)を選択してアドバイスを取得するように構成することが好ましい。
【0112】
また,プロジェクト管理者等が遂行影響事前要素を特定してアドバイスの取得を求める場合には,要アドバイス遂行影響事前要素入力受付部(不図示)を設けて遂行影響事前要素識別情報を取得して,取得した遂行影響事前要素に関連するアドバイス取得ルールを利用してアドバイスを取得するように構成することもできる。
【0113】
<実施形態3:アドバイス出力部>
アドバイス出力部0711は,取得したアドバイスを出力する。アドバイスの出力は保持されているアドバイスから択一的に選択するように構成されてもよいし,取得したアドバイスの複数を複合してアドバイスを出力するように構成することもできる。遂行影響事前要素は相互に連関する場合があり,そのような場合にはアドバイス集約部(不図示)にアドバイスを集約して簡潔にまとめてアドバイスを出力するように構成できる。アドバイス集約部は,アドバイス識別情報に応じて,そのアドバイスの属性識別情報や,構文識別情報などを保持していて,取得された複数のアドバイスに関連付けられているこれらの情報に応じてアドバイスを集約するアドバイス集約ルールを利用してアドバイスを集約することが考えられる。
【0114】
なお,アドバイス集約ルールは,アドバイス識別情報や,これに関連付けられている属性識別情報,構文識別情報に応じて定められるように保持されていることが好ましい。なお,アドバイスの出力は,ディスプレイ,プリンターの他,電子メールや,音声によって出力されるように構成することができる。また,会議などの音声情報に応じて,議題となっている内容にそってアドバイス出力部0711がアドバイスを出力するように構成することもできる。会議の音声を人工知能などで分析し,どの遂行影響事前要素に関して,どのようなことが議題となっているかを判別し,自動的に関連するアドバイスを出力するように構成することが好ましい。
【0115】
<実施形態3:ハードウェア構成>
図8は,本実施形態におけるプロジェクト成功確率算出システムのハードウェア構成を示す図である。この図にあるように,コンピュータは,マザーボード上に構成される,チップセット,CPU,不揮発性メモリ,メインメモリ,各種バス,BIOS,各種インターフェイス,リアルタイムクロック等からなる。これらはオペレーティングシステムやデバイスドライバー,各種プログラムなどと協働して動作する。本発明を構成する各種プログラムや各種データはこれらのハードウェア資源を効率的に利用して各種の処理を実行するように構成されている。
【0116】
ここに「主メモリ」は,各種処理を行うプログラムを「CPU」に実行させるために読み出すと同時に,そのプログラムの作業領域でもあるワーク領域を提供する。また,この「主メモリ」や「HDD」にはそれぞれ複数のアドレスが割り当てられており,「CPU」で実行されるプログラムは,そのアドレスを特定しアクセスすることで相互にデータのやりとりを行い,処理を行うことが可能になっている。
【0117】
この図にあるように,不揮発性メモリは、経験的にプロジェクトの成功に影響を及ぼすことが知られているプロジェクト遂行に影響を与える事前要素である遂行影響事前要素を保持する「遂行影響事前要素保持プログラム」と、プロジェクトを具体的に特定した特定プロジェクトを想定して遂行影響事前要素に対して該特定プロジェクトでの値である数値、有無、YES又はNO、レベル、選択肢のいずれか一以上である遂行事前状態値を関連付けるための質問を出力して入力を促す「質問プログラム」と、遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値を用いてプロジェクトの成功の確率分布を算出するための関数である確率分布導出関数を保持する「確率分布導出関数保持プログラム」と、質問部0702への入力によって得られた各遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値と、確率分布導出関数保持部0703に保持されている確率分布導出関数と、によって質問部0702にて入力を受付けたプロジェクトの成功確率分布を算出する「成功確率分布算出プログラム」と、算出された成功確率分布を保持する「成功確率分布保持プログラム」と、希望する成功可能性に関する情報である希望成功可能性情報を取得する「希望成功可能性情報取得プログラム」と、保持されている成功確率分布と、取得した希望成功可能性情報とに基づいて、希望成功可能性が実現する確率である実現確率を算出する「実現確率算出プログラム」と、を有しており,一連のプログラムの実行命令に基づいて,これらのプログラムが主メモリに読み込まれ,動作開始命令に基づいてこれらのプログラムが実行される。
【0118】
なお,このコンピュータは不揮発性メモリ,主メモリ,CPU,インターフェイス(例えば,ディスプレイ,キーボード,通信等)がバスラインに接続されて相互に通信可能に構成される。さらに,不揮発性メモリは,実現確率に対する遂行影響事前要素に関連付けられた遂行事前状態値による影響度を取得する「影響度取得プログラム」と、実現確率を向上するために遂行事前状態値を前提とした遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得するためのルールであるアドバイス取得ルールを保持する「アドバイス取得ルール保持プログラム」と、取得した影響度とアドバイス取得ルールと、基づいて遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得する「アドバイス取得プログラム」と、取得したアドバイスを出力する「アドバイス出力プログラム」を備えている。
【0119】
<実施形態3:処理の流れ>
図9は,本実施形態におけるプロジェクト成功確率算出システム0700を利用した場合の処理の流れを示す図である。経験的にプロジェクトの成功に影響を及ぼすことが知られているプロジェクト遂行に影響を与える事前要素である遂行影響事前要素を保持する遂行影響事前要素保持ステップS0901と、プロジェクトを具体的に特定した特定プロジェクトを想定して遂行影響事前要素に対して該特定プロジェクトでの値である数値、有無、YES又はNO、レベル、選択肢のいずれか一以上である遂行事前状態値を関連付けるための質問を出力して入力を促す質問ステップS0902と、遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値を用いてプロジェクトの成功の確率分布を算出するための関数である確率分布導出関数を保持する確率分布導出関数保持ステップS0903と、質問ステップS0902での入力によって得られた各遂行影響事前要素に関連付けられている遂行事前状態値と、確率分布導出関数保持ステップS0903に保持されている確率分布導出関数と、によって質問ステップS0902にて入力を受付けたプロジェクトの成功確率分布を算出する成功確率分布算出ステップS0904と、算出された成功確率分布を保持する成功確率分布保持ステップS0905と、希望する成功可能性に関する情報である希望成功可能性情報を取得する希望成功可能性情報取得ステップS0906と、保持されている成功確率分布と、取得した希望成功可能性情報とに基づいて、希望成功可能性が実現する確率である実現確率を算出する実現確率算出ステップS0907と、実現確率に対する遂行影響事前要素に関連付けられた遂行事前状態値による影響度を取得する影響度取得ステップS0908と、実現確率を向上するために遂行事前状態値を前提とした遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得するためのルールであるアドバイス取得ルールを保持するアドバイス取得ルール保持ステップS0909と、取得した影響度とアドバイス取得ルールとに、基づいて遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得するアドバイス取得ステップS0910と、取得したアドバイスを出力するアドバイス出力ステップS0911からなる。なお,このうち,影響度取得ステップS0908とアドバイス取得ルール保持ステップS0909とアドバイス取得ステップS0910とアドバイス出力ステップS0911を除く各ステップS0901~S0907は,実施形態2と同様である。
【0120】
影響度取得ステップS0908とは,実現確率に対する遂行影響事前要素に関連付けられた遂行事前状態値による影響度を取得する段階である。
【0121】
アドバイス取得ルール保持ステップS0909とは,実現確率を向上するために遂行事前状態値を前提とした遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得するためのルールであるアドバイス取得ルールを保持する段階である。
【0122】
アドバイス取得ステップS0910とは,取得した影響度とアドバイス取得ルールとに基づいて,遂行影響事前要素に関するアドバイスを取得する段階である。
【0123】
アドバイス出力ステップS0911とは,取得したアドバイスを出力する段階である。
【0124】
以上、第1実施形態から第3実施形態で説明した各種のプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体(ただし、搬送波は除く)に記録しておくことができる。プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記憶媒体の形態で販売される。また、プログラムをコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、コンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【符号の説明】
【0125】
0100,0400,0700 プロジェクト成功確率算出システム
0101,0401,0701 遂行影響事前要素保持部
0102,0402,0702 質問部
0103,0403,0703 確率分布導出関数保持部
0104,0404,0704 成功確率分布算出部
0105,0405,0705 成功確率分布保持部
0406,0706 希望成功可能性情報取得部
0407,0707 実現確率算出部
0708 影響度取得部
0709 アドバイス取得ルール保持部
0710 アドバイス取得部
0711 アドバイス出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10