(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】アイソレータ
(51)【国際特許分類】
H04B 5/48 20240101AFI20250127BHJP
【FI】
H04B5/48
(21)【出願番号】P 2023079392
(22)【出願日】2023-05-12
(62)【分割の表示】P 2020052570の分割
【原出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】大塚 賢一
(72)【発明者】
【氏名】大塚 眞理
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-078169(JP,A)
【文献】特開2018-186280(JP,A)
【文献】特開2019-212729(JP,A)
【文献】特開2018-182223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/00-5/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられ、前記第1電極から離れた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、一部が前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向に垂直な第1面に沿って前記第2電極の周りに位置する第1絶縁部と、
前記第1面に沿って前記第2電極の周りに設けられ、前記第1絶縁部の上に位置し、窒化シリコンからなる絶縁層と、
前記第1面に沿って、前記第1電極及び前記第2電極の周りに設けられた導電体と、
前記第2電極の上に設けられ、シリコン、炭素、及び窒素を含み、前記第2電極の上面に接する第1絶縁層と、
前記導電体の上に設けられ、シリコン、炭素、及び窒素を含み、前記導電体の上面に接する第2絶縁層と、
前記第2電極と前記導電体との間に設けられ、前記第1方向において前記絶縁層と前記第1絶縁層との間及び前記絶縁層と前記第2絶縁層との間に位置する絶縁部と、
を備え、
前記絶縁部を二次イオン質量分析法によって前記第1方向に分析した場合に、前記第1絶縁層と前記絶縁部との間の界面には
前記第2電極に含まれる金属の濃度のピークが存在せず、且つ、前記絶縁部中における
前記第2電極に含まれる金属の濃度が前記界面から離れるに連れて減少しない、アイソレータ。
【請求項2】
前記第2電極は、銅を含み、
前記絶縁部を二次イオン質量分析法によって前記第1方向に分析した場合に、前記界面には銅元素の濃度のピークが存在せず、且つ、前記絶縁部中における銅元素の濃度が前記界面から離れるに連れて減少しない、請求項1記載のアイソレータ。
【請求項3】
前記導電体は、前記第1電極と電気的に接続された請求項1
又は2に記載のアイソレータ。
【請求項4】
前記導電体の電位は、前記第1電極の電位と同じに設定される請求項1
又は2に記載のアイソレータ。
【請求項5】
前記第1電極と前記第1絶縁部との間に設けられ、窒化シリコンからなる第3絶縁層をさらに備えた請求項1~
4のいずれか1つに記載のアイソレータ。
【請求項6】
シリコン、炭素、及び窒素を含む第4絶縁層をさらに備え、
前記導電体は、
前記第1面に沿って前記第1電極の周りに設けられた第1導電部と、
前記第1導電部の一部の上に設けられた第2導電部と、
前記第2導電部の上に設けられ、前記第1面に沿って前記第2電極の周りに設けられた第3導電部と、
を含み、
前記第4絶縁層は、前記第2導電部の底部の周りおよび前記第1導電部の別の一部の上に設けられ、前記第2導電部と接する請求項1~
5のいずれか1つに記載のアイソレータ。
【請求項7】
前記第1絶縁層における炭素濃度は、10質量%以上45質量%以下である請求項1~
6のいずれか1つに記載のアイソレータ。
【請求項8】
前記第1絶縁層における水素濃度は、0.5質量%以上5質量%以下である請求項1~
7のいずれか1つに記載のアイソレータ。
【請求項9】
前記第1絶縁層において、シリコンに対する窒素の質量の比は、0.2以上0.8以下である請求項1~
8のいずれか1つに記載のアイソレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アイソレータに関する。
【背景技術】
【0002】
アイソレータは、電流を遮断した状態で、磁界又は電界の変化を利用して信号を伝達する。このアイソレータについて、信頼性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018/0286802号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、信頼性を向上可能なアイソレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るアイソレータは、第1電極と、第2電極と、導電体と、第1絶縁層と、を備える。前記第2電極は、前記第1電極の上に設けられ、前記第1電極から離れている。前記第1絶縁部は、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、一部が前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向に垂直な第1面に沿って前記第2電極の周りに位置する。前記絶縁層は、前記第1面に沿って前記第2電極の周りに設けられ、前記第1絶縁部の上に位置し、窒化シリコンからなる。前記導電体は、前記第1面に沿って、前記第1電極及び前記第2電極の周りに設けられている。前記第1絶縁層は、前記第2電極の上に設けられ、シリコン、炭素、及び窒素を含み、前記第2電極の上面に接する。前記第2絶縁層は、前記導電体の上に設けられ、シリコン、炭素、及び窒素を含み、前記導電体の上面に接する。前記絶縁部は、前記第2電極と前記導電体との間に設けられ、前記第1方向において前記絶縁層と前記第1絶縁層との間及び前記絶縁層と前記第2絶縁層との間に位置する。前記絶縁部を二次イオン質量分析法によって前記第1方向に分析した場合に、前記第1絶縁層と前記絶縁部との間の界面には銅元素又はアルミニウム元素の濃度のピークが存在せず、且つ、前記絶縁部中における銅元素又はアルミニウム元素の濃度が前記界面から離れるに連れて減少しない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係るアイソレータを表す平面図である。
【
図3】第1実施形態に係るアイソレータの特性を表す模式図である。
【
図4】参考例に係るアイソレータの一部を表す断面図、及び参考例に係るアイソレータの分析結果を表すグラフである。
【
図5】第1実施形態に係るアイソレータの一部を表す断面図、及び実施形態に係るアイソレータの分析結果を表すグラフである。
【
図6】第1実施形態の変形例に係るアイソレータを表す断面図である。
【
図7】第1実施形態の変形例に係るアイソレータを表す断面図である。
【
図8】第1実施形態の変形例に係るアイソレータを表す断面図である。
【
図9】第1実施形態の変形例に係るアイソレータを表す断面図である。
【
図10】第2実施形態に係るアイソレータを表す平面図である。
【
図11】第2実施形態に係るアイソレータの断面構造を表す模式図である。
【
図12】第2実施形態の第1変形例に係るアイソレータを表す平面図である。
【
図15】第2実施形態の第1変形例に係るアイソレータの断面構造を表す模式図である。
【
図16】第2実施形態の第2変形例に係るアイソレータを表す平面図である。
【
図17】第2実施形態の第2変形例に係るアイソレータの断面構造を表す模式図である。
【
図18】第2実施形態の第3変形例に係るアイソレータを表す模式図である。
【
図19】第3実施形態に係るパッケージを表す斜視図である。
【
図20】第3実施形態に係るパッケージの断面構造を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るアイソレータを表す平面図である。
図2は、
図1のII-II断面図である。
第1実施形態に係るアイソレータは、デジタルアイソレータ、ガルバニックアイソレータ、又はガルバニック絶縁素子などと呼ばれるデバイスに関する。
【0009】
図1及び
図2に表したように、第1実施形態に係るアイソレータ100は、第1回路1と、第2回路2と、基板5と、第1電極11と、第2電極12と、第1絶縁層21と、第2絶縁層22と、第3絶縁層23と、第4絶縁層24と、絶縁層25及び26と、第1絶縁部31と、絶縁部30、33、35、37、及び39と、導電体50と、を含む。
図1では、第1絶縁層21、第2絶縁層22、絶縁部35、37、及び39が省略されている。
【0010】
実施形態の説明では、XYZ直交座標系を用いる。第1電極11から第2電極12に向かう方向をZ方向(第1方向)とする。Z方向に対して垂直であり、相互に直交する2方向をX方向(第2方向)及びY方向(第3方向)とする。また、説明のために、第1電極11から第2電極12に向かう方向を「上」と言い、その反対方向を「下」と言う。これらの方向は、第1電極11と第2電極12との相対的な位置関係に基づき、重力の方向とは無関係である。
【0011】
図2に表したように、絶縁部30は、基板5の上に設けられている。第1電極11は、絶縁部30中に設けられている。第1絶縁部31は、第1電極11の上に設けられている。第2電極12は、第1絶縁部31の上に設けられ、第1電極11から離れている。第2電極12は、第1電極11とは電気的に分離されている。
【0012】
図1及び
図2に表した例では、第1電極11及び第2電極12は、X-Y面(第1面)に沿って螺旋状に設けられたコイルである。第1電極11及び第2電極12は、Z方向において互いに対向している。第2電極12の少なくとも一部は、Z方向において、第1電極11の少なくとも一部と並ぶ。
【0013】
導電体50は、X-Y面に沿って第1電極11及び第2電極12の周りに設けられている。具体的には、導電体50は、第1導電部51、第2導電部52、及び第3導電部53を含む。第1導電部51は、X-Y面に沿って第1電極11の周りに設けられている。第2導電部52は、第1導電部51の一部の上に設けられている。第2導電部52は、第1導電部51に沿って複数設けられている。第3導電部53は、複数の第2導電部52の上に設けられている。第3導電部53は、X-Y面に沿って第2電極12の周りに位置する。
【0014】
例えば、第2電極12と導電体50との間のX方向における距離D1は、第1電極11と第2電極12との間のZ方向における距離D2よりも長い。
【0015】
第1絶縁層21は、第2電極12の上に設けられている。例えば、第1絶縁層21は、第2電極12に接している。第2絶縁層22は、第3導電部53の上に設けられている。例えば、第2絶縁層22は、第3導電部53に接している。第2絶縁層22は、第1絶縁層21と連続的に設けられている。すなわち、第2電極12及び導電体50の上に設けられた1つの絶縁層が、第1絶縁層21及び第2絶縁層22として機能しても良い。又は、第2絶縁層22は、第1絶縁層21から離れ、X-Y面に沿って第2絶縁層22の周りに設けられても良い。
【0016】
第3絶縁層23は、第1電極11と第1絶縁部31との間に設けられている。例えば、第3絶縁層23は、第1電極11に接している。第4絶縁層24は、X-Y面に沿って第2導電部52の底部の周りに設けられている。例えば、第4絶縁層24は、第1導電部51の別の一部、及び第2導電部52に接する。第4絶縁層24は、第3絶縁層23と連続的に設けられている。又は、第4絶縁層24は、第3絶縁層23から離れ、X-Y面に沿って第3絶縁層23の周りに設けられても良い。
【0017】
絶縁層25は、X-Y面に沿って第2電極12底部の周りに設けられている。絶縁層26は、第3導電部53の底部の周りに設けられている。絶縁層26は、絶縁層25と連続的に設けられている。又は、絶縁層26は、絶縁層25から離れ、X-Y面に沿って絶縁層25の周りに設けられても良い。絶縁部33は、絶縁層25及び26の上に設けられている。絶縁部33は、X-Y面に沿って、第2電極12の周り及び第3導電部53の周りに位置する。
【0018】
図1に表した例では、第1電極11の一端(コイルの一端)は、配線60を介して第1回路1と電気的に接続されている。第1電極11の他端(コイルの他端)は、配線61を介して第1回路1と電気的に接続されている。
【0019】
第2電極12の一端(コイルの一端)は、パッド62と電気的に接続されている。配線63の一端は、パッド62に接合されている。第2電極12の一端は、パッド62及び配線63を介して第2回路2と電気的に接続されている。
【0020】
第2電極12の他端(コイルの他端)は、パッド64と電気的に接続されている。配線65の一端は、パッド64に接合されている。第2電極12の他端は、パッド64及び配線65を介して第2回路2と電気的に接続されている。
【0021】
例えば、パッド62は、第2電極12の一端の上に設けられている。パッド64は、第2電極12の他端の上に設けられている。又は、パッド62のZ方向における位置及びパッド64のZ方向における位置は、第2電極12のZ方向における位置と同じでも良い。パッド62及び64は、第2電極12と一体に形成されても良い。
【0022】
図2に表したように、導電体50の上には、パッド66が設けられている。導電体50は、パッド66及び配線67を介して、不図示の導電部材と電気的に接続される。例えば、導電体50及び基板5は、基準電位に接続される。基準電位は、例えば接地電位である。これにより、導電体50が、浮遊電位となることを防止できる。導電体50の電位の変動により、導電体50と各電極との間において、予期せぬ絶縁破壊が生じる可能性を低減できる。また、第1回路1は、基板5の上に設けられても良い。この場合、導電体50が第1回路1の上に設けられることで、基板5及び導電体50の外部から第1回路1に向けた電磁波に対して、第1回路1が導電体50により遮蔽される。この結果、第1回路1の動作をより安定化させることができる。
【0023】
パッド62及び66の周りには、X-Y面に沿って絶縁部35が設けられている。絶縁部37は、絶縁部35の上に設けられている。絶縁部39は、絶縁部37の上に設けられている。パッド62、64、及び66は、絶縁部35、37、及び39に覆われておらず、外部に露出している。
【0024】
第1回路1及び第2回路2の一方は、受信回路として用いられる。第1回路1及び第2回路2の他方は、送信回路として用いられる。ここでは、第1回路1が受信回路であり、第2回路2が送信回路である場合について説明する。
【0025】
第2回路2は、第1電極11へ、伝達に適した波形の信号(電流)を送る。電流が第1電極11を流れると、螺旋状の第1電極11の内側を通る磁界が発生する。第1電極11の少なくとも一部は、Z方向において、第2電極12の少なくとも一部と並ぶ。発生した磁力線の一部は、第2電極12の内側を通る。第2電極12の内側における磁界の変化により、第2電極12に誘導起電力が生じ、第2電極12を電流が流れる。第1回路1は、第2電極12を流れる電流を検出し、検出結果に応じた信号を生成する。これにより、第1電極11と第2電極12との間で、電流を遮断(絶縁)した状態で、信号が伝達される。
【0026】
アイソレータ100の各構成要素の材料の一例を説明する。
基板5は、例えばシリコン基板である。基板5は、例えば、不純物が添加され、導電性を有する。
第1電極11、第2電極12、導電体50、パッド62、パッド64、及びパッド66は、金属を含む。例えば、第1電極11、第2電極12、導電体50、パッド62、パッド64、及びパッド66は、銅及びアルミニウムからなる群より選択された金属を含む。信号を伝達する際の第1電極11及び第2電極12における発熱を抑制するために、これらの構成要素の電気抵抗は、低いことが好ましい。電気抵抗の低減の観点から、第1電極11、第2電極12、導電体50、パッド62、パッド64、及びパッド66は、銅を含むことが好ましい。
絶縁部30、第1絶縁部31、絶縁部33、及び絶縁部35は、シリコン及び酸素を含む。例えば、絶縁部30、第1絶縁部31、絶縁部33、及び絶縁部35は、酸化シリコンを含む。絶縁部30、第1絶縁部31、絶縁部33、及び絶縁部35は、さらに窒素を含んでも良い。絶縁部37は、シリコン及び窒素を含む。例えば、絶縁部37は、窒化シリコンを含む。絶縁部39は、ポリイミド、ポリアミドなどの絶縁性樹脂を含む。
配線63、65、及び67は、アルミニウムなどの金属を含む。
【0027】
第1絶縁層21及び第2絶縁層22は、シリコン、炭素、及び窒素を含む。第1絶縁層21及び第2絶縁層22は、さらに水素を含んでも良い。第3絶縁層23、第4絶縁層24、絶縁層25、及び絶縁層26は、シリコン及び窒素を含む。例えば、第3絶縁層23、第4絶縁層24、絶縁層25、及び絶縁層26は、窒化シリコンを含む。第1絶縁層21~第4絶縁層24が設けられることで、第1電極11、第2電極12、及び導電体50に含まれる金属材料の各絶縁部への拡散を抑制できる。また、第3絶縁層23が設けられることで、第1電極11と第2電極12との間のリーク電流を低減できる。
【0028】
第1電極11は、金属層11a及び11bを含んでも良い。金属層11bは、金属層11aと絶縁部30との間に設けられている。第2電極12は、金属層12a及び12bを含んでも良い。金属層12bは、金属層12aと第1絶縁部31との間、金属層12aと絶縁層25との間、及び金属層12aと絶縁部33との間に設けられている。金属層11a及び12aは、銅を含む。金属層11b及び12bは、タンタルを含む。金属層11b及び12bは、タンタルと、窒化タンタルと、の積層膜を含んでも良い。金属層11b及び12bが設けられることで、金属層11a及び12aに含まれる金属材料の各絶縁部への拡散を抑制できる。
【0029】
第1導電部51は、金属層51a及び51bを含んでも良い。金属層51bは、金属層51aと絶縁部30との間に設けられている。第2導電部52は、金属層52a及び52bを含んでも良い。金属層52bは、金属層52aと第1絶縁部31との間、金属層52aと第4絶縁層24との間、及び金属層52aと第1導電部51との間に設けられている。第3導電部53は、金属層53a及び53bを含んでも良い。金属層53bは、金属層53aと第1絶縁部31との間、金属層53aと絶縁層26との間、金属層53aと絶縁部33との間、及び金属層53aと第2導電部52との間に設けられている。金属層51a~53aは、銅を含む。金属層51b~53bは、タンタルを含む。金属層51b~53bは、タンタルと、窒化タンタルと、の積層膜を含んでも良い。金属層51b~53bが設けられることで、金属層51a~53aに含まれる金属材料の各絶縁部への拡散を抑制できる。
【0030】
第1実施形態の効果を説明する。
図3は、第1実施形態に係るアイソレータの特性を表す模式図である。
図3では、第2電極12の外周近傍における等電位線EPが表されている。アイソレータ100では、第1電極11と第2電極12との間で信号が伝達されるとき、第1電極11及び導電体50に対して、第2電極12に正電圧が印加される。
図3に表したように、第2電極12から第1電極11に向けた電位の勾配、及び第2電極12から導電体50に向けた電位の勾配が生じる。
【0031】
図4(a)は、参考例に係るアイソレータの一部を表す断面図である。
図4(b)は、参考例に係るアイソレータの分析結果を表すグラフである。
図5(a)は、第1実施形態に係るアイソレータの一部を表す断面図である。
図5(b)は、第1実施形態に係るアイソレータの分析結果を表すグラフである。
参考例に係るアイソレータ100rでは、
図4(a)に表したように、第1絶縁層21及び第2絶縁層22に代えて、絶縁層21r及び22rがそれぞれ設けられている。絶縁層21r及び22rは、窒素及びシリコンを含む。絶縁層21r及び22rは、炭素を添加せずに形成され、炭素を実質的に含まない。
【0032】
図4(b)及び
図5(b)は、それぞれ、
図4(a)及び
図5(a)に記載した鎖線L上における元素分析の結果を表す。分析には、二次イオン質量分析法(SIMS)を用いた。鎖線Lは、第2電極12と第3導電部53との間のX方向における中間に位置する。
図4(b)及び
図5(b)において、縦軸は、Z方向における位置Pを表す。横軸は、Z方向の各位置における銅元素の濃度Cを表す。濃度Cは、任意単位で表されている。
【0033】
従来、窒化シリコンは、元素の意図しない拡散又は進入を防ぐためのバリア層やパッシベーション層などに使用されている。それにも拘わらず、発明者らは、
図4(b)に表したように、第2電極12と第3導電部53との間で、絶縁層21r近傍における銅元素の濃度が高いことを発見した。具体的には、絶縁部33と絶縁層21rとの間の界面において、銅元素の濃度のピークが確認できた。絶縁部33においても、銅元素が検出され、その濃度は界面から離れるに連れて減少している。
【0034】
アイソレータでは、信号の伝達時に、第1電極11と第2電極12との間に、例えば0.6kVrms以上の高い電圧が印加される。このとき、
図3に表したように、第1電極11と第2電極12との間だけでは無く、導電体50と第2電極12との間にも電位の大きな勾配が生じる。アイソレータ100rでは、第2電極12に含まれる金属が、この勾配により、第2電極12と絶縁層21rとの間の界面に沿って導電体50に向けて移動していると考えられる。さらに、導電体50に向けて移動した金属が、第2電極12と導電体50との間の絶縁部33へ拡散していると考えられる。第2電極12から導電体50に向けて金属が拡散すると、拡散した金属に沿って局所的に大きなリーク電流が流れ、第2電極12と導電体50との間で絶縁破壊が生じうる。このため、絶縁破壊が生じる可能性を低減するためには、第2電極12からの金属の拡散を抑制できることが好ましい。
【0035】
第1実施形態に係るアイソレータ100では、第1絶縁層21が、シリコン、炭素、及び窒素を含む。発明者らは、第1絶縁層21がこれらの材料を含むとき、
図5(b)に表したように、第1絶縁層21に炭素が添加されていないときに比べて、第2電極12の金属の拡散が抑制されることを発見した。具体的には、第2電極12と導電体50との間において、
図4(b)に表したような高濃度の金属元素は、確認できなかった。第2電極12からの金属の拡散が抑制されることで、アイソレータ100において絶縁破壊が生じる可能性を低減できる。また、絶縁破壊に至るまでのアイソレータ100の動作時間の合計(絶縁寿命)を延ばすことができる。これにより、アイソレータ100の信頼性を向上できる。
【0036】
第1絶縁層21がシリコン、炭素、及び窒素を含むときに、第2電極12からの金属の拡散が抑制される理由は、以下の通りと考えられる。
炭素が添加されていない絶縁層21rについては、界面において、シリコンのダングリングボンドが存在する。シリコンは、比較的活性であるため、第2電極12の金属がシリコンと反応する。シリコンと反応した金属は、第2電極12と導電体50との間の電位差により、導電体50に向けて、絶縁層21rの界面に沿って移動する。
一方、シリコン、炭素、及び窒素を含む第1絶縁層21については、絶縁層21rにおいてダングリングボンドが存在していた箇所に炭素が存在し、シリコンが炭素と結合している。すなわち、第1絶縁層21では、シリコンのダングリングボンドの数が、絶縁層21rに比べて少ない。このため、シリコンと第2電極12の金属との反応が抑制される。この結果、第2電極12と導電体50との間に電位差が生じた場合でも、金属は、導電体50に向けて移動しない。
【0037】
また、導電体50(第3導電部53)に含まれる金属の意図しない拡散を抑制するためにも、第2絶縁層22が導電体50の上に設けられていることが好ましい。第1絶縁層21と同様に、第2絶縁層22が、シリコン、炭素、及び窒素を含むとき、絶縁層22rに比べて、導電体50の金属の拡散が抑制される。
【0038】
金属の拡散を効果的に抑制するためには、第1絶縁層21及び第2絶縁層22における炭素濃度は、10質量%以上45質量%以下が好ましい。
【0039】
第2電極12と導電体50との間のリーク電流を低減するためには、第1絶縁層21及び第2絶縁層22の電気抵抗がより高いことが好ましい。電気抵抗を高めるために、第1絶縁層21において、シリコン濃度C1Si(質量%)に対する窒素濃度C1N(質量%)の比C1N/C1Siは、0.2以上0.8以下が好ましい。第2絶縁層22において、シリコン濃度(質量%)C2Siに対する窒素濃度C2N(質量%)の比C2N/C2Siは、0.2以上0.8以下が好ましい。
【0040】
第1絶縁層21は、水素をさらに含んでも良い。この場合、第1絶縁層21における水素濃度は、0.5質量%以上5質量%以下が好ましい。同様に、第2絶縁層22は、水素をさらに含んでも良い。この場合、第2絶縁層22における水素濃度は、0.5質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0041】
(変形例)
図6~
図9は、第1実施形態の変形例に係るアイソレータを表す断面図である。
図6に表したアイソレータ110では、第2絶縁層22は、X-Y面に沿って第1絶縁層21から離れている。第1絶縁層21は、少なくとも第2電極12の上に設けられている。第2絶縁層22は、少なくとも第3導電部53の上に設けられている。この場合でも、アイソレータ100と同様に、第2電極12に含まれる金属の拡散を抑制できる。
【0042】
図7に表したアイソレータ120では、第4絶縁層24が、シリコン、炭素、及び窒素を含む。第4絶縁層24は、さらに水素を含んでも良い。第1電極11及び第2電極12に電流が流れると、熱が発生する。第1電極11、第2電極12、及び導電体50が熱膨張すると、隣接する各絶縁層及び各絶縁部に応力が加わる。
【0043】
窒化シリコンのヤング率は、酸化シリコンのヤング率よりも高い。すなわち、窒化シリコンは、酸化シリコンよりも変形し難い。第4絶縁層24がシリコン及び窒素を含む場合、第2導電部52の底面と第4絶縁層24との接触部分CPで、第4絶縁層24に大きな応力が加わり、第4絶縁層24の剥離又は破損が生じる可能性がある。また、タンタルを含む金属層の熱膨張量は、銅又はアルミニウムなどを含む金属層の熱膨張量よりも大きい。このため、特に、第2導電部52の底部において金属層52bのX-Y面に沿った熱膨張量が大きい。この場合、接触部分CPにおいて第4絶縁層24の剥離又は破損が生じる可能性が、さらに高まる。
【0044】
第4絶縁層24がシリコン、炭素、及び窒素を含むときの第4絶縁層24のヤング率は、第4絶縁層24がシリコン及び窒素を含むときの第4絶縁層24のヤング率よりも低い。すなわち、炭素が添加されることで、第4絶縁層24は、変形し易くなる。アイソレータ120によれば、接触部分CPにおいて、熱膨張時の第4絶縁層24への応力による剥離や破損などが抑制される。これにより、アイソレータ120の信頼性が向上する。
【0045】
さらに、第3絶縁層23が、シリコン、炭素、及び窒素を含んでも良い。第3絶縁層23は、さらに水素を含んでも良い。シリコン、炭素、及び窒素を含む1つの絶縁層が、第1電極11の上及び第2導電部52の底部の周りに設けられ、この1つの絶縁層が、第3絶縁層23及び第4絶縁層24として用いられても良い。
【0046】
発明者らが検証したところ、第3絶縁層23及び第4絶縁層24に炭素が添加されていない場合でも、第1電極11から導電体50に向けた金属の拡散は、確認されなかった。これは、信号の伝達時において、第1電極11と導電体50との間には電位差が無い、又は電位差が小さいためと考えられる。従って、金属の拡散抑制の観点からは、第3絶縁層23及び第4絶縁層24への炭素の添加は、必ずしも必要ない。第4絶縁層24の剥離又は破損を抑制するために、第4絶縁層24がシリコン、炭素、及び窒素を含むことが好ましい。
【0047】
図8に表したアイソレータ130では、第4絶縁層24は、第3絶縁層23から離れている。第4絶縁層24は、シリコン、炭素、及び窒素を含む。第3絶縁層23は、炭素を添加せずに形成され、シリコン及び窒素を含む。第3絶縁層23は、炭素を実質的に含まない。第3絶縁層23における炭素濃度は、第4絶縁層24における炭素濃度よりも低い。
【0048】
第3絶縁層23と第4絶縁層24は、互いに離れていても良いし、X-Y面に沿って互いに接していても良い。第3絶縁層23及び第4絶縁層24の一方の一部が、他方の一部の上に設けられていても良い。第3絶縁層23がシリコン、炭素、及び窒素を含む場合、第1電極11と第2電極12との間のリーク電流が増大する可能性がある。第3絶縁層23が炭素を実質的に含まない場合、第3絶縁層23が炭素を含む場合に比べて、第1電極11と第2電極12との間のリーク電流を低減できる。
【0049】
図9に表したアイソレータ140では、第1電極11及び第2電極12が、渦巻状では無く、平板状である。例えば、第1電極11と第2電極12は、第1電極11の上面と第2電極12の下面が平行となるように設けられる。
【0050】
アイソレータ140は、磁界の変化に代えて、電界の変化を利用して信号を伝達する。具体的には、第2回路2が第2電極12へ電圧を印加すると、第1電極11と第2電極12との間に電界が発生する。第1電極11には、電界強度に応じた電荷が蓄積される。第1回路1は、このときの電荷の流れを検出し、検出結果に基づいて信号を生成する。これにより、第1電極11と第2電極12との間で、電流を遮断した状態で信号が伝達される。
【0051】
アイソレータ140の構造は、第1電極11及び第2電極12に関する構造を除き、アイソレータ100と同様の構造を適用可能である。アイソレータ140によれば、アイソレータ100と同様に、信頼性を向上できる。
【0052】
以上で説明した各変形例は、適宜組み合わせ可能である。例えば、アイソレータ120又は130における第3絶縁層23及び第4絶縁層24を、アイソレータ110又は140に適用しても良い。
【0053】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係るアイソレータを表す平面図である。
図11は、第2実施形態に係るアイソレータの断面構造を表す模式図である。
第2実施形態に係るアイソレータ200では、
図10に表したように、配線61を介して、第1電極11の一端が導電体50と電気的に接続されている。第1電極11の他端は、配線60を介して第1回路1と電気的に接続されている。
【0054】
図11に表したように、第1回路1は、基板5中に設けられている。第2回路2は、基板5から離れた基板6中に設けられている。パッド62は、配線63を介して、基板6の上に設けられたパッド68と電気的に接続されている。パッド64は、配線65を介して、基板6の上に設けられたパッド69と電気的に接続されている。第2回路2は、パッド68及び69と電気的に接続されている。
【0055】
アイソレータ200において、基板5より上側の構造には、既に説明した各実施形態に係る構造を適用可能である。これにより、アイソレータ200の信頼性を向上できる。
【0056】
図12は、第2実施形態の第1変形例に係るアイソレータを表す平面図である。
図13は、
図12のXIII-XIII断面図である。
図14は、
図12のXIV-XIV断面図である。
図15は、第2実施形態の第1変形例に係るアイソレータの断面構造を表す模式図である。
第1変形例に係るアイソレータ210は、
図12に表したように、第1構造体10-1及び第2構造体10-2を含む。
【0057】
第1構造体10-1は、
図12、
図13、及び
図15に表したように、電極11-1、電極12-1、絶縁層21a~26a、絶縁部30a、31a、33a、35a、37a、及び39a、導電体50a、パッド62a、パッド64a、及びパッド66aを含む。これらの構成要素の構造は、例えば
図2に表した、第1電極11、第2電極12、第1絶縁層21~第4絶縁層24、絶縁層25及び26、絶縁部30、第1絶縁部31、絶縁部33、35、37、及び39、導電体50、パッド62、パッド64、及びパッド66の構造とそれぞれ同様である。
【0058】
第2構造体10-2は、
図12、
図14、及び
図15に表したように、電極11-2、電極12-2、絶縁層21b~26b、絶縁部30b、31b、33b、35b、37b、及び39b、導電体50b、パッド62b、パッド64b、及びパッド66bを含む。これらの構成要素の構造は、例えば
図2に表した、第1電極11、第2電極12、第1絶縁層21~第4絶縁層24、絶縁層25及び26、絶縁部30、第1絶縁部31、絶縁部33、35、37、及び39、導電体50、パッド62、パッド64、及びパッド66の構造とそれぞれ同様である。
【0059】
図12に表したように、パッド62aは、配線63によってパッド62bと電気的に接続されている。パッド64aは、配線65によってパッド64bと電気的に接続されている。パッド66aは、配線67aによって別の導電部材と電気的に接続されている。パッド66bは、配線67bによって別の導電部材と電気的に接続されている。
【0060】
図15に表したように、第1回路1は、基板5中に設けられている。第1構造体10-1は、基板5の上に設けられている。第2回路2は、基板6中に設けられている。第2構造体10-2は、基板6の上に設けられている。電極11-1の一端は導電体50aと電気的に接続されている。電極11-1の他端は第1回路1と電気的に接続されている。電極11-2の一端は導電体50bと電気的に接続されている。電極11-2の他端は第2回路2と電気的に接続されている。
【0061】
アイソレータ210において、基板5より上側の構造及び基板6より上側の構造には、既に説明した各実施形態に係る構造を適用可能である。これにより、電極12-1及び12-2からの金属の拡散を抑制できる。
【0062】
図12~
図15に表したアイソレータ210では、一対の電極11-1及び電極12-1が、一対の電極11-2及び電極12-2と直列に接続されている。換言すると、第1回路1と第2回路2との間は、直列に接続された二対の電極によって、二重に絶縁されている。アイソレータ210によれば、一対の電極によって一重に絶縁された構造に比べて、絶縁信頼性を向上できる。
【0063】
図16は、第2実施形態の第2変形例に係るアイソレータを表す平面図である。
図17は、第2実施形態の第2変形例に係るアイソレータの断面構造を表す模式図である。
第2実施形態の第2変形例に係るアイソレータ220は、
図16及び
図17に表したように、第1電極11の両端が第1回路1と電気的に接続されている点で、アイソレータ200と異なる。導電体50は、第1回路1及び第1電極11とは電気的に分離されている。導電体50が基準電位に設定されれば、第1回路1、第1電極11、及び導電体50の間の電気的な接続関係は、適宜変更可能である。この場合、第1電極11と導電体50との間における電位差を低減するために、第1電極11と導電体50は、同じ電位に設定されることが好ましい。
【0064】
図18は、第2実施形態の第3変形例に係るアイソレータを表す模式図である。
第3変形例に係るアイソレータ230は、第1構造体10-1、第2構造体10-2、第3構造体10-3、第4構造体10-4を含む。第1構造体10-1は、電極11-1及び電極12-1を含む。第2構造体10-2は、電極11-2及び電極12-2を含む。第3構造体10-3は、電極11-3及び電極12-3を含む。第4構造体10-4は、電極11-4及び電極12-4を含む。それぞれの電極は、コイルである。第1回路1は、差動ドライバ回路1a、容量C1、及び容量C2を含む。第2回路2は、差動受信回路2a、容量C3、及び容量C4を含む。
【0065】
例えば、差動ドライバ回路1a、容量C1、容量C2、電極11-1、電極11-2、電極12-1、及び電極12-2は、不図示の第1基板の上に形成される。電極11-1の一端は、第1の定電位に接続される。電極11-2の他端は、容量C1に接続される。電極11-2の一端は、第2の定電位に接続される。電極11-2の他端は、容量C2に接続する。
【0066】
差動ドライバ回路1aの一方の出力は、容量C1に接続される。差動ドライバ回路1aの他方の出力は、容量C2に接続される。容量C1は、差動ドライバ回路1aと電極11-1との間に接続される。容量C2は、差動ドライバ回路1aと電極11-2との間に接続される。
【0067】
絶縁部を挟んで電極11-1と電極12-1が積層される。別の絶縁部を挟んで電極11-2と電極12-2が積層される。電極12-1の巻線方向は、電極12-2の巻線方向と逆である。電極12-1の一端は、電極12-2の一端と接続されている。
【0068】
例えば、差動受信回路2a、容量C3、容量C4、電極11-3、電極11-4、電極12-3、及び電極12-4は、不図示の第2基板の上に形成される。電極11-3の一端は、第3の定電位に接続される。電極11-3の他端は、容量C3に接続される。電極11-4の一端は、第4の定電位に接続される。電極11-4の他端は、容量C4に接続される。
【0069】
差動受信回路2aの一方の入力は、容量C3に接続される。差動受信回路2aの他方の入力は、容量C4に接続される。絶縁部を挟んで電極11-3と電極12-3が積層される。別の絶縁部を挟んで、電極11-4と電極12-4が積層される。電極12-3の一端は、電極12-4の一端と接続されている。
【0070】
動作について説明する。アイソレータでは、変調された信号が伝送される。
図18では、Vinが変調された信号を表す。信号の変調には、例えば、エッジトリガ方式、又はOn-Off Keying方式が用いられる。いずれの方法においても、Vinは、元の信号を高周波帯にシフトさせた信号である。
【0071】
差動ドライバ回路1aは、Vinに応じて電極11-1及び電極11-2に互いに逆方向の電流を流す。電極11-1及び11-2は、互いに逆向きの磁界(H1)を発生する。電極11-1の巻数が電極11-2の巻数と同じときは、発生する磁界の大きさが互いに等しくなる。
【0072】
磁界H1によって電極12-1に生じる誘導電圧は、磁界H1によって電極12-2に生じる誘導電圧と加算される。電極12-1及び12-2に、電流i1が流れる。電極12-1の他端は、電極12-3の他端とボンディングワイヤで接続されている。電極12-2の他端は、電極12-4の他端と別のボンディングワイヤで接続されている。ボンディングワイヤは、例えば金を含む。ボンディングワイヤの直径は、例えば30μmである。
【0073】
電極12-1及び12-2で加算された誘導電圧は、電極12-3及び12-4に印加される。電極12-3及び12-4には、電流i1と同じ電流値の電流i2が流れる。電極12-3及び12-4は、互いに逆向きの磁界(H2)を発生する。電極12-3の巻数が電極12-4の巻数と同じときは、発生する磁界の大きさが互いに等しくなる。
【0074】
磁界H2によって電極11-3に生じる誘導電圧の方向は、磁界H2によって電極11-4に生じる誘導電圧の方向と逆である。電極11-3及び11-4に電流i3が流れる。また、電極11-3に生じる誘導電圧の大きさは、電極11-4に生じる誘導電圧の大きさと同じである。差動受信回路2aには、電極11-3及び11-4がそれぞれ発生させる誘導電圧の加算が印加され、変調された信号が伝送される。
【0075】
(第3実施形態)
図19は、第3実施形態に係るパッケージを表す斜視図である。
図20は、第3実施形態に係るパッケージの断面構造を表す模式図である。
第3実施形態に係るパッケージ300は、
図19に表したように、金属部材81a~81f、金属部材82a~82f、パッド83a~83f、パッド84a~84f、封止部90、及び複数のアイソレータ230を含む。
【0076】
図示した例では、パッケージ300は、4つのアイソレータ230を含む。すなわち、
図18に表した第1構造体10-1~第4構造体10-4の組が、4つ設けられている。
【0077】
複数の第1構造体10-1及び複数の第2構造体10-2は、金属部材81aの一部の上に設けられている。例えば、複数の第1構造体10-1及び複数の第2構造体10-2は、1つの基板5の上に設けられている。基板5は、金属部材81aと電気的に接続されている。基板5中には、複数の第1回路1が設けられている。1つの第1回路1は、1つの第1構造体10-1と1つの第2構造体10-2の組に対応して設けられている。
【0078】
複数の第3構造体10-3及び複数の第4構造体10-4は、金属部材82aの一部の上に設けられている。複数の第3構造体10-3及び複数の第4構造体10-4は、1つの基板6の上に設けられている。基板6は、金属部材82aと電気的に接続されている。基板6中には、複数の第2回路2が設けられている。1つの第2回路2は、1つの第3構造体10-3と1つの第4構造体10-4の組に対応して設けられている。
【0079】
金属部材81aは、さらにパッド83aと電気的に接続されている。パッド83aは、各第1構造体10-1及び各第2構造体10-2の導電体50aと電気的に接続されている。金属部材82aは、さらにパッド84aと電気的に接続されている。パッド84aは、各第3構造体10-3及び各第4構造体10-4の導電体50bと電気的に接続されている。
【0080】
金属部材81b~81eは、パッド83b~83eとそれぞれ電気的に接続されている。パッド83b~83eは、複数の第1回路1とそれぞれ電気的に接続されている。金属部材81fは、パッド83fと電気的に接続されている。パッド83fは、複数の第1回路1と電気的に接続されている。
【0081】
金属部材82b~82eは、パッド84b~84eとそれぞれ電気的に接続されている。パッド84b~84eは、複数の第2回路2とそれぞれ電気的に接続されている。金属部材82fは、パッド84fと電気的に接続されている。パッド84fは、複数の第2回路2と電気的に接続されている。
【0082】
封止部90は、金属部材81a~81f及び82a~82fのそれぞれの一部、パッド83a~83f、パッド84a~84f、及び複数のアイソレータ230を覆っている。
【0083】
金属部材81a~81fは、端子T1a~T1fをそれぞれ有する。金属部材82a~82fは、端子T2a~T2fをそれぞれ有する。端子T1a~T1f及びT2a~T2fは、封止部90に覆われておらず、外部に露出している。
【0084】
例えば、端子T1a及びT2aは、基準電位に接続される。端子T1b~T1eには、それぞれの第1回路1への信号が入力される。端子T2b~T2eには、それぞれの第2回路2からの信号が出力される。端子T1fは、複数の第1回路1を駆動させるための電源と接続される。端子T2fは、複数の第2回路2を駆動させるための電源と接続される。
【0085】
第3実施形態によれば、アイソレータの絶縁破壊が生じる可能性を低減でき、パッケージ300の信頼性を向上できる。ここでは、4つのアイソレータ230が設けられた例を説明したが、パッケージ300には、1つ以上の他のアイソレータが設けられても良い。
【0086】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 第1回路、 2 第2回路、 5 基板、 11 第1電極、 11a,11b 金属層、 12 第2電極、 12a,12b 金属層、 21 第1絶縁層、 22 第2絶縁層、 21r,22r 絶縁層、 23 第3絶縁層、 24 第4絶縁層、 25,26 絶縁層、 30 絶縁部、 31 第1絶縁部、 33,35,37,39 絶縁部、 50 導電体、 51 第1導電部、 51a,51b 金属層、 52 第2導電部、 52a,52b 金属層、 53 第3導電部、 53a,53b 金属層、 60,61 配線、 62 パッド、 63 配線、 64 パッド、 65 配線、 66 パッド、 67 配線、 100,100r,110~140 アイソレータ