(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】炭化水素油を水素化分解するための改質された大結晶性USYゼオライト
(51)【国際特許分類】
B01J 29/89 20060101AFI20250127BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20250127BHJP
C10G 47/20 20060101ALI20250127BHJP
C10G 47/18 20060101ALI20250127BHJP
B01J 29/16 20060101ALN20250127BHJP
【FI】
B01J29/89 M
B01J37/08
C10G47/20
C10G47/18
B01J29/16 M
(21)【出願番号】P 2023512315
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 US2020058211
(87)【国際公開番号】W WO2022071973
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-05-01
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301041531
【氏名又は名称】一般財団法人JCCP国際石油・ガス・持続可能エネルギー協力機関
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】コセオグル,オマール レファ
(72)【発明者】
【氏名】ホジキンズ,ロバート ピーター
(72)【発明者】
【氏名】渡部 光徳
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩司
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-006921(JP,A)
【文献】特公平05-036099(JP,B2)
【文献】米国特許第04255288(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素油を水素化分解する触媒組成物であって、
少なくとも1種類の水素化金属成分、および
担体、
を含み、
前記担体は、ジルコニウム原子、チタン原子、またはジルコニウム原子とチタン原子の両方で置換された骨格置換超安定Y型(USY)ゼオライトを含み、
前記骨格置換USYゼオライトは、
11μmから50μmの平均微結晶サイズを有する、触媒組成物。
【請求項2】
前記骨格置換超安定Y型ゼオライトが、酸化物基準で計算して0.1~5質量%のジルコニウム原子で、または酸化物基準で計算して0.1~5質量%のチタン原子で、または酸化物基準で計算して0.1~5質量%のジルコニウム原子と酸化物基準で計算して0.1~5質量%のチタン原子で、置換されている、請求項1記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記骨格置換超安定Y型ゼオライトがハフニウム原子を含む、請求項1または2記載の触媒組成物。
【請求項4】
無機酸化物化合物をさらに含み、該無機酸化物化合物が、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ、アルミナ-チタニア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-ボリア、リン-アルミナ、シリカ-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-シリカ、シリカ-アルミナ-チタニア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、およびその2つ以上の組合せを含む、請求項1または2記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種類の水素化金属成分が、前記触媒組成物の0.01質量%から40質量%を構成する、請求項1または2記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記骨格置換超安定Y型ゼオライトが、2.42nmから2.45nmの結晶格子定数、600m
2/gから900m
2/gの比表面積、および5から100のSiO
2対Al
2O
3のモル比を有する、請求項1または2記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記触媒組成物が、200m
2/gから450m
2/gの比表面積および600Å以下の直径を有する複数の細孔を有し、該細孔は、0.4ml/gから0.75ml/gの体積を有する、請求項1または2記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種類の水素化金属成分が、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、タングステン、およびその2つ以上の組合せからなる群より選択される、請求項1または2記載の触媒組成物。
【請求項9】
アルミナ、シリカ、およびアルミナとシリカの混合物からなる群より選択される無機酸化物化合物をさらに含み、前記少なくとも1種類の水素化金属成分が、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、タングステン、およびその2つ以上の組合せからなる群より選択される、請求項1または2記載の触媒組成物。
【請求項10】
炭化水素油を水素化分解する触媒組成物を製造する方法であって、
11μmから50μmの平均微結晶サイズを有する超安定Y型(USY)ゼオライトを形成する工程、
前記USYゼオライトを500℃から700℃の温度で加熱する工程、
前記USYゼオライトを含み、5から15の液/固比を有する懸濁液を形成する工程、
前記懸濁液のpHが2以下になるように、少なくとも1種類の無機酸、少なくとも1種類の有機酸、または少なくとも1種類の無機酸と少なくとも1種類の有機酸の混合物を該懸濁液に加える工程、
ジルコニウム化合物、チタン化合物、ハフニウム化合物、またはその2つ以上の混合物を、pHが2以下の前記懸濁液と混合する工程、および
前記懸濁液のpHが6から8になるように塩基を加えて、骨格置換USYゼオライトを提供する工程、
を含む方法。
【請求項11】
前記超安定Y型ゼオライトが、2.42nmから2.45nmの結晶格子定数、600m
2/gから900m
2/gの比表面積、および5から100のSiO
2対Al
2O
3のモル比を有する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1種類の水素化金属成分を前記触媒組成物に加える工程をさらに含み、前記少なくとも1種類の水素化金属成分は、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、タングステン、およびその2つ以上の組合せからなる群より選択される、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
炭化水素油を水素化分解する方法であって、
前記炭化水素油を水素化分解するために、反応器内で該炭化水素油を少なくとも1種類の触媒組成物および水素と接触させる工程、
を含み、
前記触媒組成物は、
少なくとも1種類の水素化金属成分、および
担体、
を含み、
前記担体は、ジルコニウム原子、チタン原子、またはジルコニウム原子とチタン原子の両方で置換された骨格置換超安定Y型(USY)ゼオライトを含み、
前記骨格置換USYゼオライトは、
11μmから50μmの平均微結晶サイズを有する、方法。
【請求項14】
前記水素化分解が、300℃から500℃の温度で行われる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記反応器が連続フロー式反応器であり、前記炭化水素油は375℃から833℃の沸点を有し、前記水素は、3.5MPaから25MPaの圧力で反応器に加えられ、前記反応器は、0.1毎時から10毎時の液空間速度を有し、前記反応器は、500Nm
3/m
3から2500Nm
3/m
3の水素/油比を有する、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前記反応器から蒸留物を収集する工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その全ての内容がここに引用される、2020年9月30日に出願された米国特許出願第17/038074号に優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示の実施の形態は、広く、炭化水素油の水素化分解に関し、より詳しくは、炭化水素油を水素化分解するための触媒組成物、そのような触媒組成物を製造する方法、およびそのような触媒組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の水素化分解ユニットにおいて370℃から520℃の範囲で沸騰し、残留物水素化分解ユニットにおいて520℃以上で沸騰する様々な炭化水素供給物を処理するために、数多くの石油精製所において、水素化分解プロセスが商業的に使用されている。一般に、水素化分解プロセスは、炭化水素供給物の分子を、平均揮発性および経済的価値がより高く、より小さい、すなわち、より軽い分子に分割する。それに加え、水素化分解プロセスは、典型的に、水素対炭素比を増加させ、有機硫黄化合物と有機窒素化合物を除去することによって、炭化水素原料の品質を改善する。水素化分解触媒が、水素化分解プロセス技術の重要な特徴である。
【0004】
水素化分解において2種類の触媒:前処理触媒と分解触媒が使用される。前処理触媒は、重質炭化水素油から、硫黄や窒素などの汚染物質を除去するように設計されている。分解触媒は、低付加価値の重分子を価値の高い輸送燃料に分割するように設計されている。分解触媒は、典型的に、水素化のための活性相金属、結合剤としての非晶質担体、および分解成分としてのゼオライトからなる。活性相金属としては、典型的に、ニッケル、モリブデン、およびタングステンが挙げられる。例示のゼオライトに、超安定Y型ゼオライト(USYゼオライト)がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より効果的な水素化分解触媒組成物が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
チタン、ジルコニウム、ハフニウム、またはその2つ以上の組合せで骨格置換され、5μmから50μmの平均微結晶サイズを有する、少なくとも1種類の超安定Y型(以後、「USY」)ゼオライトを含む触媒組成物が、水素化分解プロセスの有効性を大幅に向上させられることが見出された。
【0007】
1つの実施の形態によれば、触媒組成物は、少なくとも1種類の水素化金属成分および担体を含む。その担体は、ジルコニウム原子、チタン原子、またはジルコニウム原子とチタン原子の両方で置換された骨格置換超安定Y型(USY)ゼオライトを含む。骨格置換USYゼオライトは、5μmから50μmの平均微結晶サイズを有する。
【0008】
1つの実施の形態によれば、触媒組成物を製造する方法は、5μmから50μmの平均微結晶サイズを有する超安定Y型(USY)ゼオライトを形成する工程、そのUSYゼオライトを500℃から700℃の温度で加熱する工程、そのUSYゼオライトを含み、5から15の液/固比を有する懸濁液を形成する工程、その懸濁液のpHが2以下になるように、少なくとも1種類の無機酸、少なくとも1種類の有機酸、または少なくとも1種類の無機酸と少なくとも1種類の有機酸の混合物を懸濁液に加える工程、ジルコニウム化合物、チタン化合物、ハフニウム化合物、またはその2つ以上の混合物を、pHが2以下の懸濁液と混合する工程、および懸濁液のpHが6から8になるように塩基を加えて、骨格置換USYゼオライトを提供する工程を含む。
【0009】
1つの実施の形態によれば、炭化水素油を水素化分解する方法は、炭化水素油を水素化分解するために、反応器内で炭化水素油を少なくとも1種類の触媒組成物および水素と接触させる工程を含む。触媒組成物は、少なくとも1種類の水素化金属成分および担体を含む。その担体は、ジルコニウム原子、チタン原子、またはジルコニウム原子とチタン原子の両方で置換された骨格置換超安定Y型(USY)ゼオライトを含む。骨格置換USYゼオライトは、5μmから50μmの平均微結晶サイズを有する。
【0010】
ここに記載された実施の形態の追加の特徴および利点が、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、またはその詳細な説明および以下に提供される特許請求の範囲を含む、ここに記載された実施の形態を実施することによって、認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の具体的な実施の形態の以下の詳細な説明は、以下の図面と共に読まれた場合、最もよく理解することができる。
【
図1】10,000倍の倍率での従来の大きさのNaYゼオライトのSEM画像
【
図2】本開示の1つ以上の実施の形態による10,000倍の倍率での大型結晶NaYゼオライトのSEM画像
【
図3】30,000倍の倍率での従来の大きさのNaYゼオライトのSEM画像
【
図4】本開示の1つ以上の実施の形態による30,000倍の倍率での大型結晶NaYゼオライトのSEM画像
【
図5】従来の大きさのNaYゼオライトおよび大型結晶NaYゼオライトの微結晶サイズ分布曲線
【
図6】反応器の温度に対するVGO供給物変換率のチャート
【
図7】VGO供給物変換率に対する中間蒸留物(MD)およびナフサの選択性のチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態において、触媒組成物は、触媒担体およびその触媒担体上に配置された少なくとも1種類の水素化成分を含む。この触媒担体は、チタンおよび/またはジルコニウムおよび/またはハフニウムで置換された骨格を有する少なくとも1種類のUSYゼオライト(以後、「FS-USYゼオライト」)を含む。このFS-USYゼオライトは、5μmから50μmの平均微結晶サイズを有する。これから、実施の形態をより詳しく説明する。
【0013】
ここに用いられているように、「炭化水素油」または「炭化水素原料」という用語は、ほとんどが炭化水素化合物の混合物からなる油性液体を称する。炭化水素油は、原油、合成原油、ビチューメン、オイルサンド、シェールオイル、または石油から得られる精製油を含むことがある。「精製油」という用語は、以下に限られないが、真空軽油(VGO)、溶剤脱歴プロセスから得られた脱アスファルト油(DAO)、脱金属油(DMO)、コーカープロセスから得られた軽質および/または重質コーカー軽油、流動接触分解(FCC)プロセスから得られた循環油、およびビスブレーキングプロセスから得られた軽油を含む。
【0014】
ここに用いられているように、「炭化水素」という用語は、完全に炭素原子と水素原子からなる化合物を称する。
【0015】
ここに用いられているように、「結晶格子定数」という用語は、結晶格子内の単位格子の物理的寸法を称する。結晶格子定数は、その全ての内容がここに引用される、「Standard Test Method for Determination of the Unit Cell Dimension of a Faujasite-Type Zeolite」と題するASTM D3942-03により決定することができる。
【0016】
ここに用いられているように、「比表面積」という用語は、単位質量当たりのゼオライトの全表面積を称する。比表面積は、その全ての内容がここに引用される、「Standard Test Method for Surface Area of Catalysts and Catalyst Carriers」と題するASTM D3663-03によって決定することができる。あるいは、比表面積は、ブルナウアー・エメット・テラー(「BET」)モデルを使用して決定してもよい。あるいは、比表面積は、その全ての内容がここに引用される、「Standard Test Method for Determining Micropore Volume and Zeolite Area of a Catalyst」と題するASTM D4365-19によって決定しても差し支えない。
【0017】
ここに用いられているように、「水素/油比」または「水素対油比」という用語は、供給物の体積に対する反応器を循環する水素の体積流量の標準的尺度を称する。水素/油比は、標準流量計を使用して、水素ガス流の流量と炭化水素供給物の流量を比較することによって、決定してもよい。
【0018】
ここに用いられているように、「液空間速度」または「LHSV」という用語は、触媒体積または質量に対する炭化水素供給物の液体流速の比を称する。
【0019】
ここに用いられているように、「触媒の活性」または「触媒活性」という用語は、触媒が存在することによる水素化分解プロセスの速度の上昇を称し、原料の50%が変換される温度で近似することができる。触媒活性がより高いと、そのような温度がより低くなる。
【0020】
1つの態様において、触媒組成物は、触媒担体および少なくとも1種類の水素化成分を含むことがある。実施の形態において、触媒組成物は、60質量%から99.99質量%の担体を含むことがある。例えば、触媒組成物は、65質量%から95質量%、60質量%から90質量%、65質量%から85質量%、またさらには70質量%から80質量%の担体を含むことがある。触媒組成物は、ここに記載されたそのような範囲の下限のいずれかから、ここに記載されたそのような範囲の上限のいずれかまでで形成された範囲の量で担体を含んでもよいことを理解すべきである。実施の形態において、触媒組成物は、0.01質量%から40質量%の水素化成分を含むことがある。例えば、触媒組成物は、1質量%から40質量%、5質量%から35質量%、10質量%から30質量%、またさらには15質量%から25質量%の水素化成分を含むことがある。触媒組成物は、ここに記載されたそのような範囲の下限のいずれかから、ここに記載されたそのような範囲の上限のいずれかまでで形成された範囲の量で水素化成分を含んでもよいことを理解すべきである。どの特定の理論でも束縛する意図はないが、触媒組成物中の水素化成分の量が、担体の量に対して多すぎると、触媒上の水素化金属の分散が最適ではなくなると考えられる。例えば、触媒組成物が40質量%超の水素化成分を含む場合、水素化金属は、担体上で凝集するかもしれない。
【0021】
触媒担体は少なくとも1種類のUSYゼオライトを含むことがあり、このゼオライトは、チタンおよび/またはジルコニウムおよび/またはハフニウムで置換された骨格を有することがある。実施の形態において、触媒担体は、0.1質量%から90質量%のFS-USYゼオライトを含むことがある。例えば、触媒担体は、0.1質量%から85質量%、5質量%から80質量%、10質量%から75質量%、15質量%から70質量%、20質量%から65質量%、25質量%から60質量%、30質量%から55質量%、35質量%から50質量%、またさらには40質量%から45質量%のFS-USYゼオライトを含むことがある。触媒担体が、ここに記載されたそのような範囲の下限のいずれかから、ここに記載されたそのような範囲の上限のいずれかまでで形成される範囲内の量のFS-USYゼオライトを含んでよいことを理解すべきである。どの特定の理論でも束縛する意図はないが、触媒担体中のゼオライトの量が90%を超えると、触媒ペレット/押出物の形成が制限されると考えられる。
【0022】
実施の形態において、骨格置換は、ゼオライトに脱アルミニウムが行われ、続いて、Tiおよび/またはZrおよび/またはHfなどの遷移金属が組み込まれる、事後修飾プロセスによって行うことができる。その結果、チタンおよび/またはジルコニウムおよび/またはハフニウムで骨格置換されたゼオライトは、非置換ゼオライトと比べて、シリカ対アルミナモル比(以後、「SAR」)が大きくなるであろう。どの特定の理論でも束縛する意図はないが、この事後修飾によりメソ多孔性(ここに用いられているように、直径が2nmから50nmの細孔を有することを称する)が生じ、これにより、ゼオライトに、細孔内により大きい分子を受け入れる能力が与えられると考えられる。また、この事後修飾過程は、中位強度の酸部位の数を増やし、一方で、強酸部位の数を減らして、触媒表面上の水素化金属の分散を向上させると考えられる。
【0023】
実施の形態において、USYゼオライトの事後修飾は、以下のプロセスによって行われることがある。ゼオライトを、固体ゼオライトに対する液体の質量比が5から15になるように、懸濁液に入れることができる。懸濁液のpHが2未満になるように、懸濁液に無機酸または有機酸を添加することができる。この酸性懸濁液に少なくとも1種類のジルコニウム化合物および/または少なくとも1種類のチタン化合物および/または少なくとも1種類のハフニウム化合物を加え、次いで、混合し、中和して、事後修飾触媒を確保する。チタンおよび/またはジルコニウムおよび/またはハフニウムで置換されたUSYゼオライト骨格を調製する例示のプロセスが、その全ての内容がここに引用される、米国特許第10293332号明細書に記載されている。骨格置換は、例えば、紫外可視近赤外分光光度法(UV-Vis-NIRまたはUV-vis)、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)、または核磁気共鳴分光法(NMR)によって、モニタすることができる。
【0024】
実施の形態において、USYゼオライトは、酸化物基準で計算して、0.1質量%から5質量%のジルコニウムおよび/または0.1質量%から5質量%のチタンおよび/または0.1質量%から5質量%のハフニウムで独立して置換されることがある。すなわち、実施の形態において、ジルコニウム、チタン、およびハフニウムの内の1つ以上が含まれなくてもよいが、ジルコニウム、チタン、およびハフニウムの内の少なくとも1つは含まれる。例えば、USYゼオライトは、ジルコニウムのみ、チタンのみ、ハフニウムのみ、ジルコニウムとチタンの両方、ジルコニウムとハフニウムの両方、チタンとハフニウムの両方、またはジルコニウム、チタン、およびハフニウムの3つの全てで置換されることがある。
【0025】
ジルコニウムが存在する実施の形態において、USYゼオライトは、0.1質量%から5質量%のジルコニウム、0.5質量%から4.5質量%のジルコニウム、0.5質量%から4質量%のジルコニウム、0.5質量%から3.5質量%のジルコニウム、0.5質量%から3質量%のジルコニウム、0.5質量%から2.5質量%のジルコニウム、0.5質量%から2質量%のジルコニウム、0.5質量%から1.5質量%のジルコニウム、0.5質量%から1質量%のジルコニウム、1質量%から4質量%のジルコニウム、1質量%から3.5質量%のジルコニウム、1質量%から3質量%のジルコニウム、1質量%から2.5質量%のジルコニウム、またさらには1質量%から2質量%のジルコニウムを含むことがある。
【0026】
同じまたは異なる実施の形態において、USYゼオライトは、0.5質量%から4.5質量%のチタン、0.5質量%から4質量%のチタン、0.5質量%から3.5質量%のチタン、0.5質量%から3質量%のチタン、0.5質量%から2.5質量%のチタン、0.5質量%から2質量%のチタン、0.5質量%から1.5質量%のチタン、0.5質量%から1質量%のチタン、1質量%から4質量%のチタン、1質量%から3.5質量%のチタン、1質量%から3質量%のチタン、1質量%から2.5質量%のチタン、またさらには1質量%から2質量%のチタンを含むことがある。
【0027】
同じまたは異なる実施の形態において、USYゼオライトは、0.5質量%から4.5質量%のハフニウム、0.5質量%から4質量%のハフニウム、0.5質量%から3.5質量%のハフニウム、0.5質量%から3質量%のハフニウム、0.5質量%から2.5質量%のハフニウム、0.5質量%から2質量%のハフニウム、0.5質量%から1.5質量%のハフニウム、0.5質量%から1質量%のハフニウム、1質量%から4質量%のハフニウム、1質量%から3.5質量%のハフニウム、1質量%から3質量%のハフニウム、1質量%から2.5質量%のハフニウム、またさらには1質量%から2質量%のハフニウムを含むことがある。
【0028】
ここに記載されたジルコニウム置換のどの量を、ジルコニウム、チタン、およびハフニウムのいずれか1つまたは2つの0質量%の量を含む、ここに記載されたチタン置換のどの量およびここに記載されたハフニウム置換のどの量と共に使用しても差し支えないことを理解すべきである。さらに、ジルコニウム置換またはまたはチタン置換またはハフニウムの内置換のいずれの置換の範囲も、ここに記載されたそのような置換の下限のいずれかと、ここに記載されたそのような置換の上限のいずれかにより形成されてもよいことを理解すべきである。
【0029】
どの特定の理論でも束縛する意図はないが、0.1質量%未満の量でジルコニウム化合物および/またはチタン化合物および/またはハフニウム化合物を添加しても、ゼオライトの固体酸特性を改善できないと考えられる。逆に、5質量%を超える量でジルコニウム化合物および/またはチタン化合物および/またはハフニウム化合物を添加しても、ゼオライトの活性はさらに改善されず、結果として得られる触媒の費用が余計に増加するであろう。
【0030】
実施の形態において、FS-USYゼオライトは、2.42nmから2.45nmの結晶格子定数を有することがある。例えば、このFS-USYゼオライトの結晶格子定数は、2.42nmから2.449nm、2.42nmから2.448nm、2.42nmから2.447nm、2.42nmから2.446nm、2.42nmから2.445nm、2.42nmから2.444nm、2.42nmから2.443nm、2.42nmから2.442nm、2.42nmから2.441nm、2.42nmから2.44nm、2.42nmから2.439nm、2.42nmから2.438nm、2.42nmから2.437nm、2.42nmから2.436nm、2.42nmから2.435nm、2.421nmから2.45nm、2.422nmから2.45nm、2.423nmから2.45nm、2.424nmから2.45nm、2.425nmから2.45nm、2.426nmから2.45nm、2.427nmから2.45nm、2.428nmから2.45nm、2.429nmから2.45nm、2.43nmから2.45nm、2.431nmから2.45nm、2.432nmから2.45nm、2.433nmから2.45nm、2.434nmから2.45nm、またさらには2.435nmから2.45nmであることがある。FS-USYゼオライトの結晶格子定数は、ここに記載されたそのような結晶格子定数の下限のいずれか1つから、ここに記載されたそのような結晶格子定数の上限のいずれか1つまでで形成された範囲にあってよいことを理解すべきである。
【0031】
どの特定の理論でも束縛する意図はないが、2.42nm未満のFS-USYゼオライトの結晶格子定数は、最終的に形成される水素化分解触媒の活性を低下させるであろうと考えられる。そのような低下は、USYゼオライトの骨格構造における高いSiO2/Al2O3モル比および炭化水素を分解するための活性部位の機能を果たす固体酸部位の数が少ないことの結果であると考えられる。反対に、2.45nmを超えるFS-USYゼオライトの結晶格子定数は、FS-USYゼオライトの低い耐熱性のために、水素化分解反応中にFS-USYゼオライトの結晶構造を破壊することがある。FS-USYゼオライトの結晶構造が破壊されると、最終的に形成される水素化分解触媒組成物の活性が低下するであろう。
【0032】
実施の形態において、FS-USYゼオライトは、600m2/gから900m2/gの比表面積を有することがある。例えば、FS-USYゼオライトの比表面積は、600m2/gから890m2/g、600m2/gから880m2/g、600m2/gから870m2/g、600m2/gから860m2/g、600m2/gから850m2/g、600m2/gから840m2/g、600m2/gから830m2/g、600m2/gから820m2/g、600m2/gから810m2/g、600m2/gから800m2/g、610m2/gから900m2/g、620m2/gから900m2/g、630m2/gから900m2/g、640m2/gから900m2/g、650m2/gから900m2/g、660m2/gから900m2/g、670m2/gから900m2/g、680m2/gから900m2/g、690m2/gから900m2/g、またさらには700m2/gから900m2/gであることがある。FS-USYゼオライトの比表面積は、ここに記載されたそのような比表面積の下限のいずれか1つから、ここに記載されたそのような比表面積の上限のいずれか1つまでで形成された範囲内にあってよいことを理解すべきである。どの特定の理論でも束縛する意図はないが、600m2/g未満のFS-USYゼオライトの比表面積は、利用できる固体酸部位の数が減少し、それによって、結果として得られる水素化分解触媒組成物の触媒活性が不十分なレベルまで低下するであろうと考えられる。
【0033】
実施の形態において、FS-USYゼオライトを含む触媒組成物は、200m2/gから450m2/gの比表面積を有することがある。例えば、FS-USYゼオライトを含む触媒組成物の比表面積は、210m2/gから450m2/g、220m2/gから450m2/g、230m2/gから450m2/g、240m2/gから450m2/g、250m2/gから450m2/g、200m2/gから440m2/g、200m2/gから430m2/g、200m2/gから420m2/g、200m2/gから410m2/g、またさらには200m2/gから400m2/gであることがある。FS-USYゼオライトを含む触媒組成物の比表面積は、ここに記載されたそのような比表面積の下限のいずれか1つから、ここに記載されたそのような比表面積の上限のいずれか1つまでで形成された範囲内にあってよいことを理解すべきである。どの特定の理論でも束縛する意図はないが、水素化分解速度は、比表面積が200m2/g未満である場合に低下し、中間蒸留物の収量が低下すると考えられる。しかしながら、比表面積が450m2/gを上回ると、水素化分解速度が速くなりすぎることがあり、生成物の選択性が望ましくないほど変わることがある。
【0034】
実施の形態において、FS-USYゼオライトは、5から100のSiO2対Al2O3のモル比を有することがある。例えば、FS-USYゼオライトは、5から99、5から98、5から97、5から96、5から95、5から94、5から93、5から92、5から91、5から90、5から89、5から88、5から87、5から86、5から85、5から84、5から83、5から82、5から81、5から80、5から79、5から78、5から77、5から76、5から75、5から74、5から73、5から72、5から71、5から70、5から69、5から68、5から67、5から66、5から65、5から64、5から63、5から62、5から61、5から60、5から59、5から58、5から57、5から56、5から55、5から54、5から53、5から52、5から51、5から50、5から49、5から48、5から47、5から46、5から45、5から44、5から43、5から42、5から41、5から40、6から100、7から100、8から100、9から100、10から100、11から100、12から100、13から100、14から100、15から100、16から100、17から100、18から100、19から100、20から100、21から100、22から100、23から100、24から100、25から100、26から100、27から100、28から100、29から100、30から100、31から100、32から100、33から100、34から100、35から100、36から100、37から100、38から100、39から100、40から100、41から100、42から100、43から100、44から100、45から100、46から100、47から100、48から100、49から100、またさらには50から100のSiO2対Al2O3のモル比を有することがある。FS-USYゼオライトのSiO2対Al2O3のモル比は、ここに記載されたそのような比の下限のいずれか1つから、ここに記載されたそのような比の上限のいずれか1つまでで形成される範囲内にあってよいことを理解すべきである。
【0035】
どの特定の理論でも束縛する意図はないが、5未満のFS-USYゼオライトのシリカ-アルミナモル比は、高い酸強度を有する高酸部位を有することがあり、それゆえ、最終的に形成される水素化分解触媒の水素化および水素化分解における活性が低下する傾向があると考えられる。それに加え、より大きいアルミナ含有量は、FS-USYの低い安定性に関連付けられる。反対に、100を超えるFS-USYゼオライトのシリカ-アルミナモル比は、水素化分解に効果的な固体酸部位の数が少ないために、最終的に調製された水素化分解触媒の分解反応器内での水素化分解活性の低下をもたらすであろう。
【0036】
実施の形態において、FS-USYゼオライトを含む触媒組成物は、600Å以下の直径を有する複数の細孔を含むことがある。600Å以下の直径を有するこれらの細孔は、0.4ml/gから0.75ml/gの体積を有する。例えば、細孔体積は、0.4ml/gから0.74ml/g、0.4ml/gから0.73ml/g、0.4ml/gから0.72ml/g、0.4ml/gから0.71ml/g、0.4ml/gから0.7ml/g、0.4ml/gから0.69ml/g、0.4ml/gから0.68ml/g、0.4ml/gから0.67ml/g、0.4ml/gから0.66ml/g、0.4ml/gから0.65ml/g、0.41ml/gから0.75ml/g、0.42ml/gから0.75ml/g、0.43ml/gから0.75ml/g、0.44ml/gから0.75ml/g、0.45ml/gから0.75ml/g、0.46ml/gから0.75ml/g、0.47ml/gから0.75ml/g、0.48ml/gから0.75ml/g、0.49ml/gから0.75ml/g、またさらには0.5ml/gから0.75ml/gの範囲にあることがある。600Å以下の直径を有する、FS-USYゼオライトを含む触媒組成物の細孔の細孔体積は、ここに記載されたそのような細孔体積の下限のいずれか1つから、ここに記載されたそのような細孔体積の上限のいずれか1つまでで形成される範囲内にあってよいことを理解すべきである。
【0037】
どの特定の理論でも束縛する意図はないが、細孔体積が0.40ml/g未満である場合、比表面積は減少すると考えられる。その結果、水素化分解触媒の活性と中間蒸留物の収量が減少する。反対に、細孔体積が0.75ml/gを超えると、比表面積は増加する。その結果、水素化分解速度と生成物の選択性が、不都合に変化することがある。
【0038】
実施の形態において、触媒組成物は、他の添加剤を含むことがある。例えば、この触媒組成物は、上述したゼオライトに加え、1種類以上の無機酸化物を含むことがある。この無機酸化物は、造粒剤または結合剤の機能を果たすことがある。例示の無機酸化物としては、以下に限られないが、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ、アルミナ-チタニア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-ボリア、リン-アルミナ、シリカ-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-シリカ、シリカ-アルミナ-チタニア、およびシリカ-アルミナ-ジルコニアが挙げられる。
【0039】
実施の形態において、1種類以上の無機酸化物は、触媒担体の一成分であることがある。FS-USYゼオライトと無機酸化物の両方を有する実施の形態において、存在するFS-USYゼオライトは、担体の1質量%から90質量%、1質量%から85質量%、1質量%から80質量%、10質量%から75質量%、20質量%から70質量%、またさらには30質量%から60質量%を構成することがある。そのような実施の形態において、無機酸化物の含有量は、担体の99質量%から10質量%、99質量%から15質量%、99質量%から20質量%、90質量%から25質量%、80質量%から30質量%、またさらには70質量%から40質量%を占めることがある。FS-USYゼオライトは、ここに記載されたそのような濃度の下限のいずれか1つから、ここに記載されたそのような濃度の上限のいずれか1つまでで形成される範囲内で存在してもよいことを理解すべきである。さらに、無機酸化物は、ここに記載されたそのような濃度の下限のいずれか1つから、ここに記載されたそのような濃度の上限のいずれか1つまでで形成される範囲内で存在してもよいことを理解すべきである。どの特定の理論でも束縛する意図はないが、触媒は、無機酸化物の含有量が10質量%を下回ると、十分な機械的強度を持たないであろうと考えられる。さらに、触媒は、ゼオライトの含有量が1質量%を下回ると、十分な分解能力を持たないであろうと考えられる。
【0040】
ゼオライトの試料は、1つの微結晶サイズのピーク濃度を有する微結晶サイズの分布を有することになる。ここに用いられているように、「平均微結晶サイズ」という用語は、ゼオライトの試料における最も確からしい微結晶サイズを称する。例えば、下記の実施例でより十分に述べられている
図5には、従来の大きさのFS-USYゼオライトおよび大結晶性FS-USYゼオライトの両方に関する微結晶サイズ分布が与えられている。従来の大きさのFS-USYゼオライトは、典型的に、サイズ分布曲線(a)から分かるように、約2μmの平均微結晶サイズを有する。しかしながら、サイズ分布曲線(b)から分かるように、ここに記載されたFS-USYゼオライトは、5μmから50μm、6μmから50μm、7μmから50μm、8μmから50μm、9μmから50μm、10μmから50μm、11μmから50μm、12μmから50μm、13μmから50μm、14μmから50μm、15μmから50μm、16μmから50μm、17μmから50μm、18μmから50μm、19μmから50μm、20μmから50μm、21μmから50μm、22μmから50μm、23μmから50μm、24μmから50μm、25μmから50μm、26μmから50μm、27μmから50μm、28μmから50μm、29μmから50μm、30μmから50μm、5μmから49μm、5μmから48μm、5μmから47μm、5μmから46μm、5μmから45μm、5μmから44μm、5μmから43μm、5μmから42μm、5μmから41μm、5μmから40μm、5μmから39μm、5μmから38μm、5μmから37μm、5μmから36μm、5μmから35μm、5μmから34μm、5μmから33μm、5μmから32μm、5μmから31μm、5μmから30μm、5μmから29μm、5μmから28μm、5μmから27μm、5μmから26μm、5μmから25μm、10μmから20μm、11μmから19μm、12μmから18μm、13μmから17μm、またさらには14μmから16μmの平均微結晶サイズを有することがある。平均微結晶サイズは、ここに記載されたそのような平均微結晶サイズの下限のいずれか1つから、ここに記載されたそのような平均微結晶サイズの上限のいずれか1つまでで形成される範囲内にあってよいことを理解すべきである。
【0041】
どの特定の理論でも束縛する意図はないが、水素化分解触媒配合物に使用されるゼオライトの平均微結晶サイズが大きいと、従来の大きさのゼオライトを使用した触媒組成物と対比した場合、触媒の活性がより高くなり、ナフサの選択性がより高くなるであろうと考えられる。重ねて、どの特定の理論でも束縛する意図はないが、微結晶サイズがより大きいと、ゼオライトにより形成されるスーパーケイジ(supercage)内での炭化水素の滞留時間が長くなり、このため、転じて、よりしっかりと分解が行われると考えられる。
【0042】
実施の形態において、水素化金属成分は、従来の水素化分解触媒に使用するための公知の金属成分を含むことがある。その例としては、以下に限られないが、周期表の長周期の8族の金属成分(鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金または金)および/または6族の金属成分(クロム、モリブデンまたはタングステン)が挙げられる。例えば、水素化金属成分は、白金族(白金、ロジウム、パラジウムなど)の金属成分、もしくは6族のモリブデンまたはタングステンと8族のコバルトまたはニッケルとの組合せを含むことがある。
【0043】
別の態様において、触媒組成物を製造する方法は、5μmから50μmの平均微結晶サイズを有するUSYゼオライトを形成する工程、500℃から700℃の温度を有する炉内でUSYゼオライトを加熱する工程、2.0未満のpHでこのようにか焼したUSYゼオライトの懸濁液を形成する工程、ジルコニウム化合物および/またはチタン化合物および/またはハフニウム化合物をこのUSYゼオライトと混合する工程、および得られた懸濁液を中和して、FS-USYゼオライトを生成する工程を含む。得られた触媒組成物は、先に記載されたようなものである。
【0044】
Y型ゼオライトは、どの方法によって形成されてもよい。例示の比限定的な方法を以下に説明する。水中で水酸化ナトリウムをアルミニウム粉末と混ぜ合わせることによって、アルミナ溶液を調製する。同様に、水酸化ナトリウムをコロイドシリカと混ぜ合わせることによって、シリカ溶液を調製する。氷浴中で混合しながら、シリカ溶液にアルミナ溶液を加え、次いで、少なくとも24時間に亘り室温で保持する。
【0045】
従来の合成方法では、Y型ゼオライトは、約2μmの平均微結晶サイズを有するゼオライトを提供する条件下で再結晶化する。例えば、従来の再結晶化は、二日以上に亘り60℃で行われる。しかしながら、ここに記載された実施の形態によれば、Y型ゼオライトは、5μmから50μm、6μmから50μm、7μmから50μm、8μmから50μm、9μmから50μm、10μmから50μm、11μmから50μm、12μmから50μm、13μmから50μm、14μmから50μm、15μmから50μm、16μmから50μm、17μmから50μm、18μmから50μm、19μmから50μm、20μmから50μm、21μmから50μm、22μmから50μm、23μmから50μm、24μmから50μm、25μmから50μm、26μmから50μm、27μmから50μm、28μmから50μm、29μmから50μm、30μmから50μm、5μmから49μm、5μmから48μm、5μmから47μm、5μmから46μm、5μmから45μm、5μmから44μm、5μmから43μm、5μmから42μm、5μmから41μm、5μmから40μm、5μmから39μm、5μmから38μm、5μmから37μm、5μmから36μm、5μmから35μm、5μmから34μm、5μmから33μm、5μmから32μm、5μmから30μm、5μmから29μm、5μmから28μm、5μmから27μm、5μmから26μm、5μmから25μm、10μmから20μm、11μmから19μm、12μmから18μm、13μmから17μm、またさらには14μmから16μmの平均微結晶サイズを有するゼオライトを提供する条件下で再結晶化される。例えば、表1には、5μmおよび50μmの平均微結晶サイズを得るための時間と温度の条件が与えられている。
【0046】
【0047】
Y型ゼオライトからFS-USYゼオライトを調製する詳細な方法が、その全ての内容がここに引用される、米国特許第10293332号明細書に与えられている。
【0048】
一般的な方法で合成したY型ゼオライトに、従来の方法によるナトリウムイオンのアンモニウムイオンによる交換を施して、USYゼオライトを提供する。例えば、水中にY型ゼオライトを分散させて、懸濁液を調製し、それに硫酸アンモニウムを加える。固体物質を、40℃から80℃の温度で、水で洗浄し、続いて、硫酸アンモニウム水溶液で洗浄する。次に、生成物を40℃から95℃の温度で、水で再び洗浄し、30分間に亘り100℃から180℃で乾燥させて、アンモニウム交換Y型ゼオライトを得る。続いて、飽和蒸気雰囲気内で10分から10時間に亘り500℃から800℃で上記アンモニウム交換Y型ゼオライトをか焼することによって、水素型Y型ゼオライトを調製する。この過程を繰り返すと、Y型ゼオライトに含まれるアンモニウムの量が増える。この点に関して、最終的なアンモニウムイオン交換率は、90%以上となるであろう。
【0049】
FS-USYゼオライトを提供するために、上述したように調製したUSYゼオライトを最初に、30分から10時間に亘り、500℃から700℃、例えば、550℃から650℃でか焼する。USYゼオライトのか焼温度が500℃より低いと、か焼が500℃から700℃で行われるプロセスと比べて、その後の工程で骨格置換処理を行うときに、取り込まれるジルコニウム原子および/またはチタン原子および/またはハフニウム原子の量が少なくなる傾向にある。しかしながら、か焼温度が700℃を超えると、か焼が500℃から700℃で行われるプロセスと比べて、USYゼオライトの比表面積が低下することがあり、その後の工程で骨格置換処理を行うときに、取り込まれるジルコニウム原子および/またはチタン原子および/またはハフニウム原子の量が少なくなる傾向にある。か焼は、以下に限られないが、空気を含む様々な雰囲気内で行ってよい。
【0050】
次に、か焼したUSYゼオライトを、約20℃から約30℃の温度を有する水中に懸濁させて、USYゼオライト懸濁液を形成することができる。この懸濁液の液/固質量比は、5から15の範囲にあることがある。例えば、液/固質量比は、8から12であることがある。
【0051】
次に、この懸濁液に無機酸または有機酸を加えて、酸性USYゼオライト懸濁液を得ることができる。例示の酸としては、以下に限られないが、硫酸、硝酸、塩化水素酸、カルボン酸、およびそれらの2つ以上の組合せが挙げられる。酸を使用して、懸濁液のpHを2未満、例えば、1から2に調節することが都合良いことがある。上記範囲のpHにより、下記にさらに述べられている骨格置換処理のために、ジルコニウム化合物の水溶液および/またはチタン化合物の水溶液および/またはハフニウム化合物の水溶液を懸濁液と混合する際に沈殿を防ぐことができることに気づいた。
【0052】
ジルコニウム化合物および/またはチタン化合物および/またはハフニウム化合物を含有する溶液を酸性懸濁液に加え、混合することができる。ジルコニウム化合物および/またはチタン化合物および/またはハフニウム化合物の添加は、徐々に、例えば、滴下により行うことができる。混合は、3から5時間に亘り、室温で、すなわち、約25℃から約35℃で行うことができる。次に、塩基を加えることによって、混合溶液を7から7.5のpHに中和し、80℃から180℃で乾燥させ、以前はゼオライト骨格の一部であったアルミニウム原子を置換することによって、ジルコニウム原子および/またはチタン原子および/またはハフニウム原子がゼオライト骨格の一部を形成している、FS-USYゼオライトを得ることができる。例示の塩基としては、以下に限られないが、アンモニア水が挙げられる。
【0053】
実施の形態において、例示のジルコニウム化合物としては、以下に限られないが、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、およびそれらの2つ以上の組合せが挙げられる。実施の形態において、添加されるジルコニウム化合物の量は、使用するUSYゼオライトの質量に対して酸化ジルコニウムの基準で0.1質量%から5質量%であることがある。例えば、0.2質量%から4質量%のジルコニウム化合物を添加してよい。0.1質量%未満の量のジルコニウム化合物を添加しても、所望のUSYゼオライトの特性を達成することができない。5質量%を超える量のジルコニウム化合物を添加すると、ゼオライトの細孔が詰まることがある。実施の形態において、水にジルコニウム化合物を溶かすことによって調製されたジルコニウム化合物の水溶液をジルコニウム化合物として使用することができる。
【0054】
実施の形態において、例示のチタン化合物としては、以下に限られないが、硫酸チタン、酢酸チタン、塩化チタン、硝酸チタン、乳酸チタン、およびそれらの2つ以上の組合せが挙げられる。実施の形態において、添加されるチタン化合物の量は、使用するUSYゼオライトの質量に対して酸化チタンの基準で0.1質量%から5質量%であることがある。例えば、0.2質量%から4質量%のチタン化合物を添加してよい。0.1質量%未満の量のチタン化合物を添加しても、所望のUSYゼオライトの特性を達成することができない。5質量%を超える量のチタン化合物を添加すると、ゼオライトの細孔が詰まることがある。実施の形態において、水にチタン化合物を溶かすことによって調製されたチタン化合物の水溶液をチタン化合物として使用することができる。
【0055】
実施の形態において、例示のハフニウム化合物としては、以下に限られないが、塩化ハフニウム、硝酸ハフニウム、フッ化ハフニウム、臭化ハフニウム、シュウ酸ハフニウムなどが挙げられる。実施の形態において、添加されるハフニウム化合物の量は、使用するUSYゼオライトの質量に対する酸化ハフニウムの基準で0.1質量%から5質量%であることがある。例えば、0.2質量%から4質量%のハフニウム化合物を添加してよい。0.1質量%未満の量のハフニウム化合物を添加しても、所望のUSYゼオライトの特性を達成することができない。5質量%を超える量のハフニウム化合物を添加すると、ゼオライトの細孔が詰まることがあり、触媒の費用が著しく増すこともある。実施の形態において、水にハフニウム化合物を溶かすことによって調製されたハフニウム化合物の水溶液が、ハフニウム化合物として適切に使用される。
【0056】
次に、先に記載されたように調製されたFS-USYゼオライトに、従来の方法によって、水素化金属成分を含浸することができる。例えば、水素化金属成分としては、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、タングステン、またはその2つ以上の組合せが挙げられるであろう。
【0057】
別の態様において、炭化水素油を水素化分解する方法は、炭化水素油流を水素化分解するために、反応器内で、少なくとも1種類の炭化水素油流を少なくとも1種類の水素化分解触媒組成物および水素と接触させる工程を含む。水素化分解触媒は、上述したようなものであってよい。すなわち、水素化分解触媒は、触媒担体およびその触媒担体上に配置された少なくとも1種類の水素化金属成分を含むことがある。この触媒担体は、5μmから50μm、6μmから50μm、7μmから50μm、8μmから50μm、9μmから50μm、10μmから50μm、11μmから50μm、12μmから50μm、13μmから50μm、14μmから50μm、15μmから50μm、16μmから50μm、17μmから50μm、18μmから50μm、19μmから50μm、20μmから50μm、21μmから50μm、22μmから50μm、23μmから50μm、24μmから50μm、25μmから50μm、26μmから50μm、27μmから50μm、28μmから50μm、29μmから50μm、30μmから50μm、5μmから49μm、5μmから48μm、5μmから47μm、5μmから46μm、5μmから45μm、5μmから44μm、5μmから43μm、5μmから42μm、5μmから41μm、5μmから40μm、5μmから39μm、5μmから38μm、5μmから37μm、5μmから36μm、5μmから35μm、5μmから34μm、5μmから33μm、5μmから32μm、5μmから30μm、5μmから29μm、5μmから28μm、5μmから27μm、5μmから26μm、5μmから25μm、10μmから20μm、11μmから19μm、12μmから18μm、13μmから17μm、またさらには14μmから16μmの平均微結晶サイズを有する少なくとも1種類のFS-USYゼオライトを含むことがある。
【0058】
この反応器は、300℃から500℃の温度範囲内で作動することがある。例えば、反応器は、310℃から490℃、320℃から480℃、330℃から470℃、340℃から460℃、350℃から450℃、360℃から440℃、370℃から430℃、380℃から420℃、390℃から410℃、またさらには395℃から405℃の温度範囲内で作動することがある。反応器が、ここに記載されたそのような温度の下限のいずれか1つから、ここに記載されたそのような温度の上限のいずれか1つまでで形成される温度範囲内で作動することがあることを理解すべきである。
【0059】
炭化水素油は、375℃から833℃の沸点を有することがある。例えば、炭化水素油は、400℃から800℃、450℃から750℃、500℃から700℃、550℃から650℃、またさらには575℃から625℃の沸点を有することがある。炭化水素油が、ここに記載されたそのような温度の下限のいずれか1つから、ここに記載されたそのような温度の上限のいずれか1つまでで形成される温度範囲内の沸点を有してもよいことを理解すべきである。
【0060】
水素化分解プロセス中に飽和炭化水素を生成するために、水素が使用されることがある。水素は、3.5MPaから25MPaの圧力で反応器に添加されることがある。例えば、水素は、4MPaから24.5MPa、4.5MPaから24MPa、5MPaから23.5MPa、5.5MPaから23MPa、6MPaから22.5MPa、6.5MPaから22MPa、7MPaから21.5MPa、7.5MPaから21MPa、8MPaから20.5MPa、8.5MPaから20MPa、9MPaから19.5MPa、9.5MPaから19MPa、10MPaから18.5MPa、10.5MPaから18MPa、11MPaから17.5MPa、11.5MPaから17MPa、12MPaから16.5MPa、12.5MPaから16MPa、13MPaから15.5MPa、13.5MPaから15MPa、またさらには14MPaから14.5MPaの圧力で反応器に添加されることがある。水素が、ここに記載されたそのような圧力の下限のいずれか1つから、ここに記載されたそのような圧力の上限のいずれか1つまでで形成される圧力の範囲内で反応器に添加されてもよいことを理解すべきである。どの特定の理論でも束縛する意図はないが、プロセス性能は、それより低い水素圧力では著しく低下すると考えられる。反対に、高い水素圧力を使用するプロセスには、プロセスの費用を著しく増加させるであろう専用設備が必要になると考えられる。
【0061】
水素供給物および炭化水素油供給物は、反応器内の水素/油比が、500標準立方メートル(normal cubic meters)毎立方メートル(以後、「Nm3/m3」)から2500Nm3/m3であるように調製されることがある。ここで、標準立方メートルは、標準温度と圧力(15℃および0.1MPa)での立方メートルの体積と定義される。例えば、水素/油比は、550Nm3/m3から2450Nm3/m3、600Nm3/m3から2400Nm3/m3、650Nm3/m3から2350Nm3/m3、700Nm3/m3から2300Nm3/m3、750Nm3/m3から2250Nm3/m3、800Nm3/m3から2200Nm3/m3、850Nm3/m3から2150Nm3/m3、900Nm3/m3から2100Nm3/m3、950Nm3/m3から2050Nm3/m3、1000Nm3/m3から2000Nm3/m3、1050Nm3/m3から1950Nm3/m3、1100Nm3/m3から1900Nm3/m3、1150Nm3/m3から1850Nm3/m3、1200Nm3/m3から1800Nm3/m3、1250Nm3/m3から1750Nm3/m3、1300Nm3/m3から1700Nm3/m3、1250Nm3/m3から1650Nm3/m3、1300Nm3/m3から1500Nm3/m3、またさらには1350Nm3/m3から1450Nm3/m3であることがある。水素/油比が、ここに記載されたそのような比の下限のいずれか1つから、ここに記載されたそのような比の上限のいずれか1つまでで形成される比の範囲内にあってもよいことを理解すべきである。どの特定の理論でも束縛する意図はないが、プロセス性能は、それより低い水素/油比では著しく低下すると考えられる。反対に、高い水素/油比を使用するプロセスには、プロセスの費用を著しく増加させ、システム内のガスホールドアップを増加させ、それによって、プロセス性能を低下させるであろう専用設備が必要になると考えられる。
【0062】
反応器内の炭化水素供給物の液空間速度(以後、「LHSV」)は、0.1毎時から10毎時であることがある。例えば、液空間速度は、0.5毎時から9.5毎時、1毎時から9毎時、1.5毎時から8.5毎時、2毎時から8毎時、2.5毎時から7.5毎時、3毎時から7毎時、3.5毎時から6.5毎時、4毎時から6毎時、またさらには4.5毎時から5.5毎時であることがある。LHSVが、ここに記載されたLHSVの下限のいずれか1つから、ここに記載されたLHSVの上限のいずれか1つまでで形成される範囲内にあってよいことを理解すべきである。
【0063】
先に述べたように、水素化分解する方法は、1つ以上の反応器内で行われることがある。連続フロー式反応器がこのプロセスによく適しているが、ここに記載された主題はそのように限定されるものではない。例示の連続フロー式反応器としては、以下に限られないが、撹拌槽型反応器、沸騰床反応器、バッフル付きスラリー槽(baffled slurry tank)、固定床反応器、回転式管型反応器、スラリー床反応器、移動床反応器、およびこれらの2つ以上の組合せが挙げられる。
【0064】
ある態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、触媒組成物は、少なくとも1種類の水素化金属成分および担体を含む。この担体は、ジルコニウム原子、チタン原子、またはジルコニウム原子とチタン原子の両方で置換された骨格置換超安定Y型(USY)ゼオライトを含む。骨格置換USYゼオライトは、5μmから50μmの平均微結晶サイズを有する。
【0065】
第2の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、骨格置換超安定Y型ゼオライトは、酸化物基準で計算して0.1~5質量%のジルコニウム原子で置換されている。
【0066】
第3の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、骨格置換超安定Y型ゼオライトは、酸化物基準で計算して0.1~5質量%のチタン原子で置換されている。
【0067】
第4の態様によれば、単独または第3の態様との組合せのいずれかで、骨格置換超安定Y型ゼオライトは、酸化物基準で計算して0.1~5質量%のジルコニウム原子で置換されている。
【0068】
第5の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、骨格置換超安定Y型ゼオライトは、ハフニウム原子を含む。
【0069】
第6の態様によれば、単独または第5の態様との組合せのいずれかで、骨格置換超安定Y型ゼオライトは、ハフニウム原子でさらに置換されている。
【0070】
第7の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、触媒組成物は無機酸化物化合物をさらに含む。
【0071】
第8の態様によれば、単独または第7の態様との組合せのいずれかで、無機酸化物化合物は、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ、アルミナ-チタニア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-ボリア、リン-アルミナ、シリカ-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-シリカ、シリカ-アルミナ-チタニア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、およびその2つ以上の組合せを含む。
【0072】
第9の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、少なくとも1種類の水素化金属成分は、触媒組成物の0.01質量%から40質量%を構成する。
【0073】
第10の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、骨格置換超安定Y型ゼオライトは、2.42nmから2.45nmの結晶格子定数、600m2/gから900m2/gの比表面積、および5から100のSiO2対Al2O3のモル比を有する。
【0074】
第11の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、触媒組成物は、200m2/gから450m2/gの比表面積および600Å以下の直径を有する複数の細孔を有し、この細孔は、0.4ml/gから0.75ml/gの体積を有し、少なくとも1種類の水素化金属成分は、この触媒組成物の0.01質量%から40質量%を構成する。
【0075】
第12の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、少なくとも1種類の水素化金属成分は、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、タングステン、およびその2つ以上の組合せからなる群より選択される。
【0076】
第13の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、骨格置換USYゼオライトは、10μmから20μmの平均微結晶サイズを有する。
【0077】
第14の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、触媒組成物は、アルミナ、シリカ、およびアルミナとシリカの混合物からなる群より選択される無機酸化物化合物をさらに含み、少なくとも1種類の水素化金属成分は、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、タングステン、およびその2つ以上の組合せからなる群より選択される。
【0078】
第15の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、触媒組成物を製造する方法は、5μmから50μmの平均微結晶サイズを有する超安定Y型(USY)ゼオライトを形成する工程、そのUSYゼオライトを500℃から700℃の温度で加熱する工程、そのUSYゼオライトを含み、5から15の液/固比を有する懸濁液を形成する工程、その懸濁液のpHが2以下になるように、少なくとも1種類の無機酸、少なくとも1種類の有機酸、または少なくとも1種類の無機酸と少なくとも1種類の有機酸の混合物を懸濁液に加える工程、ジルコニウム化合物、チタン化合物、ハフニウム化合物、またはその2つ以上の混合物を、pHが2以下の懸濁液と混合する工程、および懸濁液のpHが6から8になるように塩基を加えて、骨格置換USYゼオライトを提供する工程を含む。
【0079】
第16の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、超安定Y型ゼオライトは、前記方法において、2.42nmから2.45nmの結晶格子定数、600m2/gから900m2/gの比表面積、および5から100のSiO2対Al2O3のモル比を有する。
【0080】
第17の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、前記方法は、少なくとも1種類の水素化金属成分を触媒組成物に加える工程をさらに含む。
【0081】
第18の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、少なくとも1種類の水素化金属成分は、前記方法において、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、タングステン、およびその2つ以上の組合せからなる群より選択される。
【0082】
第19の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、少なくとも1種類の水素化金属成分は、前記方法において、この少なくとも1種類の水素化金属成分が触媒組成物の0.01質量%から40質量%を構成するように加えられる。
【0083】
第20の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、骨格置換USYゼオライトは、前記方法において、10μmから20μmの平均微結晶サイズを有する。
【0084】
第21の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、前記方法は、アルミナ、シリカ、およびアルミナとシリカの混合物からなる群より選択される無機酸化物化合物を加える工程、および鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、タングステン、およびその2つ以上の組合せからなる群より選択される少なくとも1種類の水素化金属成分を加える工程をさらに含む。
【0085】
第22の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、炭化水素油を水素化分解する方法は、炭化水素油を水素化分解するために、反応器内で炭化水素油を少なくとも1種類の触媒組成物および水素と接触させる工程を含む。触媒組成物は、少なくとも1種類の水素化金属成分および担体を含む。その担体は、ジルコニウム原子、チタン原子、またはジルコニウム原子とチタン原子の両方で置換された骨格置換超安定Y型(USY)ゼオライトを含む。骨格置換USYゼオライトは、5μmから50μmの平均微結晶サイズを有する。
【0086】
第23の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、水素化分解は、300℃から500℃の温度で行われる。
【0087】
第24の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、反応器は連続フロー式反応器であり、炭化水素油は375℃から833℃の沸点を有し、水素は、3.5MPaから25MPaの圧力で反応器に加えられ、反応器は、0.1毎時から10毎時の液空間速度を有し、反応器は、500Nm3/m3から2500Nm3/m3の水素/油比を有する。
【0088】
第25の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、方法は、反応器から蒸留物を収集する工程をさらに含む。
【0089】
第26の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、反応器は、撹拌槽型反応器、沸騰床反応器、バッフル付きスラリー槽、固定床反応器、移動床反応器、回転式管型反応器、スラリー床反応器、およびこれらの2つ以上の組合せからなる群より選択される連続フロー式反応器を含む。
【0090】
第27の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、炭化水素は、原油、合成原油、ビチューメン、オイルサンド、シェールオイル、石油、またはその2つ以上の組合せから得られる精製油を含む。
【0091】
第28の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、精製油は、真空軽油、脱アスファルト油、脱金属油、軽質コーカー軽油、重質コーカー軽油、流動接触分解プロセスから得られた循環油、ビスブレーキングプロセスから得られた軽油、またはその2つ以上の組合せを含む。
【0092】
第29の態様によれば、単独または任意の他の態様との組合せのいずれかで、骨格置換USYゼオライトは、10μmから20μmの平均微結晶サイズを有する。
【実施例】
【0093】
上述した実施の形態を使用して、例示の触媒組成物を、以下のように、調製し、特徴付けた。
【0094】
Y型ゼオライトの合成
従来の大きさのY型ゼオライト(NaY):
20gの再蒸留水中に10gのNaOHを溶かし、続いて、純度99.5%のアルミニウム粉末を0.945gゆっくりと加えることによって、アルミナ溶液を調製した。50gのコロイドシリカ(Ludox-HS、30質量%のSiO2、pH=9.8)を8.6gのNaOHおよび17gの再蒸留水と混合することによって、シリカ溶液を調製した。容器を6分間に亘り、100℃の炉内に入れた。氷浴中で混合しながら、シリカ溶液にアルミナ溶液を加えた。得られた混合物を24時間に亘り室温に保持して、熟成させた。1500分間に亘り60℃で結晶化を行って、従来の大きさのNaYゼオライトを提供した。これは、下記の比較例に使用される。
【0095】
大型結晶Y型ゼオライト:
20gの再蒸留水中に10gのNaOHを溶かし、続いて、純度99.5%のアルミニウム粉末を0.945gゆっくりと加えることによって、アルミナ溶液を調製した。50gのコロイドシリカ(Ludox-HS、30質量%のSiO2、pH=9.8)を8.6gのNaOHおよび17gの再蒸留水と混合することによって、シリカ溶液を調製した。容器を6分間に亘り、100℃の炉内に入れた。氷浴中で混合しながら、シリカ溶液にアルミナ溶液を加えた。得られた混合物を24時間に亘り室温に保持して、熟成させた。330分間に亘り100℃で結晶化を行って、大型結晶NaYゼオライトを提供した。
【0096】
微結晶サイズの測定
従来の大きさのNaYゼオライトおよび大型結晶NaYゼオライトの走査電子顕微鏡法(SEM)の画像を撮影した。
図1は、10,000倍の倍率での従来の大きさのNaYゼオライトのSEM画像を示す。
図2は、10,000倍の倍率での大型結晶NaYゼオライトのSEM画像を示す。
図3は、30,000倍の倍率での従来の大きさのNaYゼオライトのSEM画像を示す。
図4は、30,000倍の倍率での大型結晶NaYゼオライトのSEM画像を示す。定性的に、全ての図面は、従来の大きさのNaYゼオライトと大型結晶NaYゼオライトとの間のゼオライト微結晶サイズのかなりの違いを示した。定性的に、
図5は、(a)従来の大きさのNaYゼオライトおよび(b)大型結晶NaYゼオライトの微結晶サイズ分布曲線を示す。分布曲線(a)のピーク1aは約2μmにあり、一方で、分布曲線(b)のピーク1bは約15μmにある。
【0097】
NaYゼオライトの事後修飾
次に、従来の大きさのNaYゼオライトおよび大型結晶NaYゼオライトの両方に、その全ての内容がここに引用される、米国特許第10293332号明細書に記載されているように、脱アルミニウムを行い、次いで、チタンとジルコニウムをゼオライトの骨格に組み込むことによって、事後修飾を行って、それぞれ、従来の大きさのチタンとジルコニウムで骨格置換された超安定Y型(「TiZr-USY」)ゼオライトおよび大型結晶TiZr-USYゼオライトを提供した。
【0098】
最初にNaYゼオライトに、従来の方法によってナトリウムイオンのアンモニウムイオンによる交換を行う。1つの例示の方法において、Y型ゼオライトを水中に分散させて、懸濁液を調製し、これに硫酸アンモニウムを加える。次に、固体物質を水で洗浄し、続いて、40℃から80℃の温度の硫酸アンモニウム水溶液で洗浄する。次に、固体を40℃から95℃の水でさらに洗浄し、30分間に亘り100℃から180℃で乾燥させ、このようにして、Y型ゼオライト中に含まれるナトリウムの50%から70%がNH4と置換されたアンモニウム交換Y型ゼオライトを生成する。
【0099】
続いて、飽和蒸気雰囲気内で10分から10時間に亘り500℃から800℃で上記アンモニウム交換Y型ゼオライトをか焼することによって、水素型Y型ゼオライト(HY)を調製する。次に、先に得られたHYゼオライトを40℃から95℃の水に分散させて、懸濁液を調製し、これに、硫酸アンモニウムを加えることによって、初期NaYゼオライト中に含まれたナトリウムの80%から97%がNH4でイオン交換されたアンモニウム交換Y型ゼオライトを得ることができる。この懸濁液を、10分から3時間に亘り40℃から95℃で撹拌する。次に、固体物質を40℃から95℃の水で洗浄し、その後、40℃から95℃の硫酸アンモニウム水溶液で洗浄する。次に、この固体を40℃から80℃の水でさらに洗浄し、30分から30時間に亘り100℃から180℃で乾燥させる。この点に関して、最終的なアンモニウムイオン交換率は、少なくとも90%である。
【0100】
このようにして得られたアンモニウム交換Y型ゼオライトを、例えば、飽和蒸気雰囲気内で10分から10時間に亘り500℃から700℃でか焼して、USYゼオライトを提供する。
【0101】
次に、USYゼオライトに、骨格外(extra-skeletal)アルミニウム(ゼオライト骨格を形成していないアルミニウム原子)を除去するための処理を施す。骨格外アルミニウムは、例えば、上述したUSYゼオライトを40℃から95℃の温水中に分散させて、懸濁液を調製し、この懸濁液に硫酸を加え、温度を40℃から95℃に維持しつつ、10分から3時間に亘り懸濁液を撹拌し、それによって、骨格外アルミニウムを溶かすことによって、除去することができる。骨格外アルミニウムを溶かした後、懸濁液を濾過し、フィルタ残留物を40℃から95℃の精製水で洗浄し、3から30時間に亘り、100℃から180℃で乾燥させる。このようにして、骨格外アルミニウムが除去されたUSYゼオライトが得られる。
【0102】
骨格外アルミニウムが除去されたUSYゼオライトを30分から10時間に亘り500℃から700℃でか焼する。か焼した超安定Y型ゼオライトを、約20℃から約30℃の温度を有する水中に懸濁させて、5から15の範囲の液/固質量比を有する懸濁液を形成する。次に、懸濁液のpHが2未満となるように、無機酸または有機酸を加え、続いて、ジルコニウム化合物およびチタン化合物を含有する溶液を徐々に加え、混合する。次に、混合溶液を中和し(pH7.0から7.5)、80℃から180℃で乾燥させ、このようにして、TiZr-USYゼオライトを提供する。
【0103】
触媒組成物の配合
30質量%の従来の大きさのTiZr-USYゼオライト、および70質量%のアルミナのみの結合剤を使用して、触媒組成物1(比較)を配合した。30質量%の大型結晶TiZr-USYゼオライトおよび70質量%のアルミナのみの結合剤を使用して、触媒組成物2(本発明)を配合した。この組み合わされたTiZr-USYゼオライトと結合剤を、「担体」と称する。触媒組成物1と触媒組成物2の両方は、担体の成分として計算して、16質量%の三酸化モリブデンおよび4質量%の酸化ニッケルを有した。
【0104】
パイロットプラント水素化分解プロセス
真空軽油(VGO)供給物に関する水素化分解プロセスに、触媒組成物1と触媒組成物2の両方を使用した。VGOは、15℃で0.9203g/cm3の密度、2.231質量%の硫黄含有量、および815ppm(質量)の窒素含有量を有していた。供給物の初期沸点は190℃であり、VGO供給物の10質量%は366℃までに沸騰し、VGO供給物の30質量%は424℃までに沸騰し、VGO供給物の50質量%は462℃までに沸騰し、VGO供給物の70質量%は500℃までに沸騰し、VGO供給物の90質量%は480℃までに沸騰した。最終沸点は580℃であった。
【0105】
水素化分解プロセスについて、直列に接続された2つの反応器を備えたパイロットプラントを使用した。二組の実験を行った:(1)大型微結晶サイズのゼオライト触媒(触媒組成物2)を使用;(2)従来の大きさの触媒(触媒組成物1)を使用。第1の反応器に、活性相金属としてNiおよびWを有する非晶質シリカ-アルミナ触媒である、112.5mlの市販の前処理触媒を装填し、続いて、112.5mlの触媒組成物1を装填した。第2の反応器に、15質量%のゼオライトおよび活性相金属としてNiおよびWを有する85質量%のシリカ-アルミナ含有触媒を含む市販の水素化分解触媒を装填した。パイロットプラントに、水素を1263Nm3/m3(1263 StLt/Lt)の水素/油比および0.326毎時の全体LHSVで、11.5MPa(115バール)の分圧で加えた。昇温の間に冷却を行わずに、連続して、第1の反応器内で触媒組成物1を使用した反応を、361.6℃および370.9℃で行い、第2の反応器内で、15質量%のゼオライトおよび活性相金属としてNiおよびWを有する85質量%のシリカ-アルミナ含有触媒を含む市販の水素化分解触媒を使用した反応を、351.5℃および359.0℃で行った。実験2では、第1の反応器に、活性相金属としてNiおよびWを有する非晶質シリカ-アルミナ触媒である、112.5mlの市販の前処理触媒を装填し、続いて、112.5mlの触媒組成物2を装填した。第2の反応器に、15質量%のゼオライトおよび活性相金属としてNiおよびWを有する85質量%のシリカ-アルミナ含有触媒を含む市販の水素化分解触媒を装填した。パイロットプラントに、水素を1263Nm3/m3(1263 NLt/Lt)の水素/油比および0.326毎時の全体LHSVで、11.5MPa(115バール)の分圧で加えた。昇温の間に冷却を行わずに、連続して、第1の反応器内で触媒組成物2を使用した反応を、360.8℃、371.1℃、および381.3℃で行い、第2の反応器内で市販の水素化分解触媒を使用した反応を、350.6℃、359.7℃、および370.1℃で行った。
【0106】
図6には、反応器の温度に対するVGO供給物変換率のチャートが与えられており、表2にはこのデータが纏められている。
図6に示されるように、大型結晶のUSY(「15μm」)ゼオライトを含む触媒組成物2は、従来の大きさのUSY(「2μm」)ゼオライトを含む触媒組成物1よりも、同じ温度で変換率が大きい。したがって、触媒組成物2は、触媒組成物1よりも活性が高い。
【0107】
【0108】
図7には、VGO供給物変換率に対する中間蒸留物(MD)とナフサの選択性のチャートが与えられており、表3にはこのデータが纏められている。
図7に示されるように、大型結晶のUSY(「15μm」)ゼオライトを含む触媒組成物2は、従来の大きさのUSY(「2μm」)ゼオライトを含む触媒組成物1よりも、研究した変換率でナフサの選択性が高い。反対に、触媒組成物2は、触媒組成物1よりも、中間蒸留物についての選択性が低い。
【0109】
【0110】
本開示の構成要素が、特定の方法で、特定の性質を具現化するために、または特定の方法で機能するために、「動作可能」または「十分」であるという本開示における記述は、目的の使途の記述とは対照的に、構造的記述であることに留意されたい。より具体的には、構成要素が「動作可能」または「十分」である方法に関する本開示の言及は、構成要素の既存の物理的状態を示し、それゆえ、構成要素の構造的特徴の明確な記述として解釈されるべきである。
【0111】
本開示の主題を詳細に、特定の実施の形態を参照して説明してきたが、本開示に開示された様々な詳細は、これらの詳細は、本開示に記載された様々な実施の形態の必須の構成要素である要素に関連することを暗示するものと解釈されるべきではないことに留意されたい。さらに、以下に限られないが、付随の特許請求の範囲に定義された実施の形態を含む本発明の範囲から逸脱せずに、改変および変更が可能であることが明らかであろう。
【0112】
名詞は、特に明記のない限り、複数の対象を含む。
【0113】
本開示を通じて、範囲が提供されている。範囲によって包含される各離散値もまた、包含されることが想定される。さらに、明白に開示された範囲に包含される各離散値によって形成され得る範囲も、同様に想定される。
【0114】
本開示および添付の特許請求の範囲で使用されるように、「構成する」、「有する」および「含む」という用語、並びにそれらの全ての文法的変形の各々は、追加の要素または工程を除外しない、開放的で非限定的な意味を有する意図がある。
【0115】
本開示で使用されるように、「第1」および「第2」などの用語は、任意に割り当てられ、単に2つ以上の場合または構成要素を区別することを意図している。「第1」および「第2」という単語は、他の目的を果たさず、構成要素の名称や説明の一部ではなく、また、構成要素の相対的な場所、位置、または順序を必ずしも定義するものではないことを理解すべきである。さらに、「第1」および「第2」という用語の単なる使用は、任意の「第3」の構成要素が存在することを必要としないが、その可能性は本開示の範囲内で考えられることを理解すべきである。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
触媒組成物であって、
少なくとも1種類の水素化金属成分、および
担体、
を含み、
前記担体は、ジルコニウム原子、チタン原子、またはジルコニウム原子とチタン原子の両方で置換された骨格置換超安定Y型(USY)ゼオライトを含み、
前記骨格置換USYゼオライトは、5μmから50μmの平均微結晶サイズを有する、触媒組成物。
実施形態2
前記骨格置換超安定Y型ゼオライトが、酸化物基準で計算して0.1~5質量%のジルコニウム原子で、または酸化物基準で計算して0.1~5質量%のチタン原子で、または酸化物基準で計算して0.1~5質量%のジルコニウム原子と酸化物基準で計算して0.1~5質量%のチタン原子で、置換されている、実施形態1に記載の触媒組成物。
実施形態3
前記骨格置換超安定Y型ゼオライトがハフニウム原子を含む、実施形態1または2に記載の触媒組成物。
実施形態4
アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ、アルミナ-チタニア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-ボリア、リン-アルミナ、シリカ-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-シリカ、シリカ-アルミナ-チタニア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、およびその2つ以上の組合せから選択される無機酸化物化合物をさらに含む、実施形態1から3いずれか1つに記載の触媒組成物。
実施形態5
前記少なくとも1種類の水素化金属成分が、前記触媒組成物の0.01質量%から40質量%を構成する、実施形態1から4いずれか1つに記載の触媒組成物。
実施形態6
前記骨格置換超安定Y型ゼオライトが、2.42nmから2.45nmの結晶格子定数、600m
2
/gから900m
2
/gの比表面積、および5から100のSiO
2
対Al
2
O
3
のモル比を有する、実施形態1から5いずれか1つに記載の触媒組成物。
実施形態7
前記触媒組成物が、200m
2
/gから450m
2
/gの比表面積および600Å以下の直径を有する複数の細孔を有し、該細孔は、0.4ml/gから0.75ml/gの体積を有する、実施形態1から6いずれか1つに記載の触媒組成物。
実施形態8
前記少なくとも1種類の水素化金属成分が、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、タングステン、およびその2つ以上の組合せからなる群より選択される、実施形態1から7いずれか1つに記載の触媒組成物。
実施形態9
アルミナ、シリカ、およびアルミナとシリカの混合物からなる群より選択される無機酸化物化合物をさらに含み、前記少なくとも1種類の水素化金属成分が、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、タングステン、およびその2つ以上の組合せからなる群より選択される、実施形態1から8いずれか1つに記載の触媒組成物。
実施形態10
触媒組成物を製造する方法であって、
5μmから50μmの平均微結晶サイズを有する超安定Y型(USY)ゼオライトを形成する工程、
前記USYゼオライトを500℃から700℃の温度で加熱する工程、
前記USYゼオライトを含み、5から15の液/固比を有する懸濁液を形成する工程、
前記懸濁液のpHが2以下になるように、少なくとも1種類の無機酸、少なくとも1種類の有機酸、または少なくとも1種類の無機酸と少なくとも1種類の有機酸の混合物を該懸濁液に加える工程、
ジルコニウム化合物、チタン化合物、ハフニウム化合物、またはその2つ以上の混合物を、pHが2以下の前記懸濁液と混合する工程、および
前記懸濁液のpHが6から8になるように塩基を加えて、骨格置換USYゼオライトを提供する工程、
を含む方法。
実施形態11
前記超安定Y型ゼオライトが、2.42nmから2.45nmの結晶格子定数、600m
2
/gから900m
2
/gの比表面積、および5から100のSiO
2
対Al
2
O
3
のモル比を有する、実施形態10に記載の方法。
実施形態12
少なくとも1種類の水素化金属成分を前記触媒組成物に加える工程をさらに含み、前記少なくとも1種類の水素化金属成分は、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、タングステン、およびその2つ以上の組合せからなる群より選択される、実施形態10または11に記載の方法。
実施形態13
炭化水素油を水素化分解する方法であって、
前記炭化水素油を水素化分解するために、反応器内で該炭化水素油を少なくとも1種類の触媒組成物および水素と接触させる工程、
を含み、
前記触媒組成物は、
少なくとも1種類の水素化金属成分、および
担体、
を含み、
前記担体は、ジルコニウム原子、チタン原子、またはジルコニウム原子とチタン原子の両方で置換された骨格置換超安定Y型(USY)ゼオライトを含み、
前記骨格置換USYゼオライトは、5μmから50μmの平均微結晶サイズを有する、方法。
実施形態14
前記水素化分解が、300℃から500℃の温度で行われる、実施形態13に記載の方法。
実施形態15
前記反応器が連続フロー式反応器であり、前記炭化水素油は375℃から833℃の沸点を有し、前記水素は、3.5MPaから25MPaの圧力で反応器に加えられ、前記反応器は、0.1毎時から10毎時の液空間速度を有し、前記反応器は、500Nm
3
/m
3
から2500Nm
3
/m
3
の水素/油比を有する、実施形態13または14に記載の方法。
実施形態16
前記反応器から蒸留物を収集する工程をさらに含む、実施形態13に記載の方法。