(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】無線充電装置およびそれを含む移動手段
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20250127BHJP
H01F 1/26 20060101ALI20250127BHJP
H01F 1/153 20060101ALI20250127BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20250127BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250127BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F1/26
H01F1/153 191
H02J50/10
H02J7/00 301D
(21)【出願番号】P 2023521796
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 KR2021014572
(87)【国際公開番号】W WO2022097964
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0148554
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】102, Jeongja-ro, Jangan-gu Suwon-si Gyeonggi-do 16338 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、ナヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、スンファン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジョンハク
(72)【発明者】
【氏名】キム、テキョン
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-204440(JP,A)
【文献】特開2015-202038(JP,A)
【文献】特開2017-005114(JP,A)
【文献】特開2013-140880(JP,A)
【文献】国際公開第2009/087928(WO,A1)
【文献】特開2006-340101(JP,A)
【文献】特開2005-145803(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0251929(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0171444(US,A1)
【文献】米国特許第07297291(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 1/26
H01F 1/153
H02J 50/10
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル部と、
前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、
前記磁性部は、バインダー樹脂、フィラー及び添加剤を含む高分子型磁性部を含み、
前記添加剤は、リン酸およびシランからなる群より選択される1種以上の絶縁コーティング剤を含み、
前記絶縁コーティング剤の含有量は、前記高分子型磁性部の総重量を基準に2重量%~8重量%であり、
下記数式1で表される80℃におけるインダクタンス偏差(ID1)が0(ゼロ)以上である、無線充電装置:
[数式1]
ここで、I25は、25℃の温度で測定される前記無線充電装置のインダクタンスであり、
I80は、80℃の温度で測定される前記無線充電装置のインダクタンスである。
【請求項2】
下記数式2で表される60℃におけるインダクタンス偏差(ID2)が0以上である、請求項1に記載の無線充電装置:
[数式2]
ここで、I25は、25℃の温度で測定される前記無線充電装置のインダクタンスであり、
I60は、60℃の温度で測定される前記無線充電装置のインダクタンスである。
【請求項3】
下記数式3で表される100℃におけるインダクタンス偏差(ID3)が0以上である、請求項1に記載の無線充電装置:
[数式3]
ここで、I25は、25℃の温度で測定される前記無線充電装置のインダクタンスであり、
I100は、100℃の温度で測定される前記無線充電装置のインダクタンスである。
【請求項4】
下記数式4で表されるインダクタンス変化率(ΔID)が0/℃超である、請求項3に記載の無線充電装置:
[数式4]
ここで、前記ID4は、下記数式5で表され、
[数式5]
ここで、I25は、25℃の温度で測定される前記無線充電装置のインダクタンスであり、
I40は、40℃の温度で測定される前記無線充電装置のインダクタンスである。
【請求項5】
コイル部と、
前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、
前記磁性部は、バインダー樹脂、フィラー及び添加剤を含む高分子型磁性部を含み、
前記添加剤は、リン酸およびシランからなる群より選択される1種以上の絶縁コーティング剤を含み、
前記絶縁コーティング剤の含有量は、前記高分子型磁性部の総重量を基準に2重量%~8重量%であり、
前記磁性部は、下記数式6で表される第1透磁率変化率(ΔP1)が0/℃以上である、無線充電装置:
[数式6]
ここで、P20は、20℃の温度で測定される前記磁性部の透磁率であり、
P0は、0℃の温度で測定される前記磁性部の透磁率である。
【請求項6】
前記磁性部は、下記数式7で表される第2透磁率変化率(ΔP2)が0/℃以上である、請求項5に記載の無線充電装置:
[数式7]
ここで、P20は、20℃の温度で測定される前記磁性部の透磁率であり、
P40は、40℃の温度で測定される前記磁性部の透磁率である。
【請求項7】
前記磁性部は、60℃~100℃の温度にて透磁率の最大値を有する、請求項5に記載の無線充電装置。
【請求項8】
前記フィラーが、前記高分子型磁性部総重量を基準に60重量%~90重量%の量で含まれ、1μm~300μmの平均粒径(D50)を有する、
請求項5に記載の無線充電装置。
【請求項9】
無線充電装置を含み、
前記無線充電装置は、
コイル部と、
前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、
前記磁性部は、バインダー樹脂、フィラー及び添加剤を含む高分子型磁性部を含み、
前記添加剤は、リン酸およびシランからなる群より選択される1種以上の絶縁コーティング剤を含み、
前記絶縁コーティング剤の含有量は、前記高分子型磁性部の総重量を基準に2重量%~8重量%であり、
この際、前記無線充電装置が、下記数式1で表される80℃におけるインダクタンス偏差(ID1)が0以上であるか、
前記磁性部が下記数式6で表される第1透磁率変化率(ΔP1)が0/℃以上であるか、または、
その両方とも満足する、移動手段:
[数式1]
ここで、I25は、25℃の温度で測定される前記無線充電装置のインダクタンスであり、
I80は、80℃の温度で測定される前記無線充電装置のインダクタンスであり、
[数式6]
ここで、P20は、20℃の温度で測定される前記磁性部の透磁率であり、
P0は、0℃の温度で測定される前記磁性部の透磁率である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、無線充電装置およびそれを含む移動手段に関するものである。より具体的に、実現例は、高温安定性に優れるため高温においても充電効率に優れる無線充電装置およびそれを含む移動手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、情報通信分野は極めて速い速度で発展しており、電気、電子、通信、半導体などが総合的に組み合わされた多様な技術が持続的に開発されている。また、電子機器のモバイル化傾向が増大するにつれ、通信分野においても無線通信および無線電力伝送技術に関する研究が盛んに行われている。特に、電子機器などに無線で電力を伝送する方案に関する研究が活発に進んでいる。
【0003】
前記無線電力伝送は、電力を供給する送信機と、電力供給を受ける受信機との間に物理的な接触なく電磁結合(inductive coupling)、容量結合(capacitive coupling)またはアンテナなどの電磁場共振構造を利用して、空間を介して電力を無線で伝送するものである。前記無線電力伝送は、大容量のバッテリーが求められる携帯用通信機器、電気自動車などに適しており、接点が露出されないため漏電などの危険がほとんどなく、有線方式の充電不良現象を防ぐことができる。
【0004】
一方、最近では電気自動車への関心が急増するにつれ、充電インフラ構築に対する関心が増大している。既に、家庭用充電器を利用した電気自動車充電をはじめ、バッテリー交換、急速充電装置、無線充電装置などと、多様な充電方式が登場しており、新しい充電事業ビジネスモデルも登場し始めている(特許文献1参照)。また、欧州では試験運行中の電気自動車と充電所が目立ち始め、日本では自動車メーカーと電力会社が主導して電気自動車および充電所を試験的に運営している。
【0005】
無線充電装置は、無線充電の動作中にコイル部の抵抗と磁性部の磁気損失とによって熱が発生する。特に、無線充電装置内の磁性部は、無線充電の際に、不可避的に高温の熱が発生し、発生した熱は磁性部の磁気特性を変化させ、無線充電装置の破損および電力変換回路の破壊可能性などの安全上の問題を引き起こして、使用性に制約を招くか、充電効率を低下させ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許第2011-0042403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術の問題を解決するべく考案されたものである。
本発明が解決しようとする技術的課題は、高温安定性を与えることにより、高温においても充電効率に優れる無線充電装置を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、前記無線充電装置を含む移動手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実現例によると、コイル部と、前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、下記数式1で表される80℃におけるインダクタンス偏差(ID1)が0(ゼロ)以上である、無線充電装置が提供される。
【0010】
【0011】
他の実現例によると、コイル部と、前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、前記磁性部は、下記数式6で表される第1透磁率変化率(ΔP1)が0/℃以上である、無線充電装置が提供される。
【0012】
【0013】
他の実現例によると、無線充電装置を含み、前記無線充電装置は、コイル部と、前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、この際、前記無線充電装置が、下記数式1で表される80℃におけるインダクタンス偏差(ID1)が0以上であるか、前記磁性部が、下記数式6で表される第1透磁率変化率(ΔP1)が0/℃以上であるか、またはその両方とも満足する、移動手段が提供される。
【0014】
【発明の効果】
【0015】
前記実現例によると、本発明の無線充電装置は、80℃におけるインダクタンス偏差が0以上を有することにより、高温安定性が向上され、高温においても充電効率に優れる無線充電装置を提供し得る。
【0016】
また、前記無線充電装置において、磁性部の透磁率変化率が0/℃以上を有することにより耐熱特性が向上され、充電効率をさらに向上させ得る。
【0017】
したがって、前記無線充電装置は、送信機と受信機との間の大容量の電力伝送を求める電気自動車のみならず、電気バイク、電動キックボード、電動スクーター、電動車椅子、および電動自転車などの様々な個人用移動手段に有用に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、一実現例による無線充電装置の分解斜視図を示すものである。
【
図2】
図2は、一実現例による前記無線充電装置の斜視図を示すものである。
【
図3a】
図3aは、
図2におけるA-A'線に沿って切開した前記無線充電装置の断面図を示すものである。
【
図3b】
図3bは、また他の一実現例による無線充電装置の断面図を示すものである。
【
図4】
図4は、実施例1および比較例1における無線充電装置の無線充電時間による充電効率を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施例1および比較例1における無線充電装置の無線充電時間による磁性部の発熱温度を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施例1および比較例1における無線充電装置の無線充電時間による150℃におけるインダクタンス変化率を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例1および比較例1における無線充電装置の-40℃~120℃の温度上昇によるインダクタンス変化率を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施例1および比較例1における無線充電装置の-40℃~120℃の温度上昇による高分子型磁性部の透磁率を示すグラフである。
【
図9】
図9は、一実現例による、モールドにより磁性部を成形する工程を示すものである。
【
図10】
図10は、一実現例による無線充電装置を備える移動手段(電気自動車)を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下においては、本発明の思想を実現するための具体的な実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
なお、本発明を説明するにおいて、関連する公知の構成または機能に関する具体的な説明が、本発明の要旨を不明瞭にすると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0021】
また、添付の図面において、一部の構成要素は誇張、省略、または概略的に示されており、各構成要素の大きさは実際の大きさを完全に反映するものではない。
【0022】
本明細書で使用される用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図で用いられるものではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味でない限り、複数の表現を含む。
本明細書において、同一の符号は同一の要素を指す。
【0023】
本明細書において、1つの構成要素が他の構成要素の上または下に形成されるものと記載されることは、1つの構成要素が他の構成要素の上または下に直接、またはさらに他の構成要素を介して間接的に形成されるものを全て含む。
【0024】
また、各構成要素の上/下に関する基準は図面を基準にして説明する。図面における各構成要素の大きさおよび厚さは説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさとは異なり得る。
【0025】
また、本明細書で用いられる「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外するものではない。
【0026】
また、本明細書に記載された構成要素の物性値、寸法などを示す全ての数値範囲は、特に記載がない限り、全ての場合において「約」という用語で修飾されるものと理解すべきである。
【0027】
本明細書において単数表現は、特に説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味として解釈される。
【0028】
(無線充電装置)
本発明の一実現例による無線充電装置は、コイル部と、前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、下記数式1で表される80℃におけるインダクタンス偏差(ID1)が0以上である。
【0029】
【0030】
前記無線充電装置は、80℃におけるインダクタンス偏差が0以上を有することにより、高温安定性が向上し、高温においても優れた充電効率を維持し得る。
【0031】
具体的に、前記無線充電装置の80℃におけるインダクタンス偏差(ID1)は、80℃の温度で測定される前記無線充電装置のインダクタンス(I80)と、25℃の温度で測定される前記無線充電装置のインダクタンス(I25)との差(I80~I25)を、25℃の温度で測定される前記無線充電装置のインダクタンスで除した値であって、前記無線充電装置のインダクタンス偏差ID1は、0または正(+)の値を有することを特徴とする。
【0032】
本発明の実現例によると、前記無線充電装置の80℃におけるインダクタンス偏差(ID1)が0以上を有することにより、充電効率を向上するか、または温度が増加しても優れた充電効率を維持、もしくはその減少程度を最小化し得る。
【0033】
具体的に、前記無線充電装置の80℃におけるインダクタンス偏差(ID1)は、0以上、0超、0.0001以上、0.0005以上、0.001以上、0.005以上、0.008以上、または0.01以上であり得る。また、前記無線充電装置の80℃におけるインダクタンス偏差(ID1)は、1以下、1未満、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、0.1以下、0.09以下、または0.08以下であり得る。前記無線充電装置の80℃におけるインダクタンス偏差(ID1)は、例えば、0以上~1以下、0超~1未満、0.0001以上~0.9以下、0.0005以上~0.8以下、または0.001以上~0.7以下であり得る。
【0034】
前記無線充電装置の80℃におけるインダクタンス偏差(ID1)が負(-)の値を有すると、充電効率が減少し、特に高温安定性が低減して温度が上昇する場合、充電効率が急激に低下し得る。
【0035】
本発明の実現例による無線充電装置は、下記数式2で表される60℃におけるインダクタンス偏差(ID2)が0以上であり得る。
【0036】
【0037】
具体的に、前記無線充電装置の60℃におけるインダクタンス偏差(ID2)は、0以上、0超、0.0001以上、0.0005以上、0.001以上、0.005以上、0.008以上、または0.01以上であり得る。また、前記無線充電装置の60℃におけるインダクタンス偏差(ID2)は、1以下、1未満、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、0.1以下、0.09以下、または0.08以下であり得る。前記無線充電装置の60℃におけるインダクタンス偏差(ID2)は、例えば、0以上~1以下、0超~1未満、0.0001以上~0.9以下、0.0005以上~0.8以下、0.001以上~0.7以下、または0.001以上~0.6以下であり得る。
【0038】
本発明の実現例によると、前記無線充電装置の60℃におけるインダクタンス偏差(ID2)が0以上を有することにより、高温安定性に優れ、温度が増加しても優れた充電効率を維持するか、またはその減少程度を最小化し得る。
【0039】
本発明の実現例による無線充電装置は、下記数式3で表される100℃におけるインダクタンス偏差(ID3)が0以上であり得る。
【0040】
【0041】
具体的に、前記無線充電装置の100℃におけるインダクタンス偏差(ID3)は、0以上、0超、0.0001以上、0.0005以上、0.001以上、0.005以上、0.008以上、または0.01以上であり得る。また、前記無線充電装置の100℃におけるインダクタンス偏差(ID3)は、1以下、1未満、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、0.1以下、0.09以下、または0.08以下であり得る。前記無線充電装置の100℃におけるインダクタンス偏差(ID3)は、例えば、0以上~1以下、0超~1未満、0.0001以上~0.9以下、0.0005以上~0.8以下、0.001以上~0.5以下、または0.001以上~0.1以下であり得る。
【0042】
本発明の実現例によると、前記無線充電装置の100℃におけるインダクタンス偏差(ID3)が0以上を有することにより、高温安定性に優れ、温度が増加しても優れた充電効率を維持するか、またはその減少程度を最小化し得る。
【0043】
本発明の実現例による無線充電装置は、下記数式5で表される40℃におけるインダクタンス偏差(ID4)が0以上であり得る。
【0044】
【0045】
具体的に、前記無線充電装置の40℃におけるインダクタンス偏差(ID4)は、0以上、0超、0.0001以上、0.0005以上、0.001以上、0.005以上、0.008以上、または0.01以上であり得る。また、前記無線充電装置の40℃におけるインダクタンス偏差(ID4)は、1以下、1未満、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、0.1以下、0.09以下、0.08以下、または0.05以下であり得る。前記無線充電装置の40℃におけるインダクタンス偏差(ID4)は、例えば、0以上~1以下、0超~1未満、0.0001以上~0.9以下、0.0005以上~0.8以下、0.001以上~0.7以下、0.001以上~0.5以下、または0.001以上~0.4以下であり得る。
【0046】
本発明の実現例によると、前記無線充電装置の40℃におけるインダクタンス偏差(ID4)が0以上を有することにより、高温安定性に優れ、温度が増加しても優れた充電効率を維持するか、またはその減少程度を最小化し得る。
【0047】
本発明の実現例による無線充電装置は、下記数式4で表されるインダクタンス変化率(ΔID)が0/℃超であり得る。
【0048】
【0049】
前記インダクタンス変化率(ΔID)は、100℃におけるインダクタンス偏差(ID3)と、40℃におけるインダクタンス偏差(ID4)との差を20℃で除した値である。
【0050】
具体的に、前記無線充電装置のインダクタンス変化率(ΔID)は、0.00001/℃以上、0.00002/℃以上、0.00003/℃以上、0.00004/℃以上、0.00005/℃以上、または0.00006/℃以上であり得る。また、前記無線充電装置のインダクタンス変化率(ΔID)は、0.5/℃以下、0.4/℃以下、0.3/℃以下、0.2/℃以下、0.1/℃以下、0.05/℃以下、0.02/℃以下、0.01/℃以下、0.005/℃以下、または0.001/℃以下であり得る。前記無線充電装置のインダクタンス変化率(△ID)は、例えば、0/℃超~0.5/℃以下、0/℃超~0.4/℃以下、0.00001/℃以上~0.3/℃以下、0.00002/℃以上~0.02/℃以下、0.00003/℃以上~0.005/℃以下、0.00004/℃以上~0.001/℃以下であり得る。
【0051】
本発明の実現例によると、前記無線充電装置のインダクタンス変化率(△ID)が0/℃超を有することにより、高温安定性に優れ、温度が増加しても優れた充電効率を維持するか、またはその減少程度を最小化し得る。
【0052】
前記インダクタンスは、電流の変化を妨げる導体の性質のことを意味するものであって、流れている電流の変化に応じて電磁誘導により生じる逆起電力の比を意味する。
【0053】
前記インダクタンスに影響を与える要素は様々であり、例えば磁性部の材料、透磁率、コイルの巻線数、コア、および磁性部の大きさと断面積などと、多様であり得る。特に、前記インダクタンスは、磁性部の材料または性質によって決定され得る。
【0054】
本発明の実現例による前記インダクタンス、インダクタンス偏差またはインダクタンス変化率は、無線充電装置のインダクタンス、インダクタンス偏差またはインダクタンス変化率であり、具体的にコイル部、磁性部、スペーサ(厚さ5T)およびシールド部を順次積層してなる無線充電パッドのインダクタンス、インダクタンス偏差、またはインダクタンス変化率であり得る。前記インダクタンスは、例えば、30μHのインダクタンスを有し、またコイルの直径5mm、1000本の正方形の平面コイル、および320mm×320mm×5mmの体積の磁性部および350mm×350mm×2mmのアルミニウム(Al)シールド部を使用して、LCRメータ(日置電機社のIM3536装置)を用いて測定する。前記装置をコイル部に連結した後、LCRメータの設定値を85kHzに設定した後、インダクタンスLsを測定し、これを用いてインダクタンス偏差およびインダクタンス変化率を測定し得る。
【0055】
前記無線充電装置は、20℃におけるインダクタンスが30μH~50μH、35μH~45μH、38μH~45μH、39μH~43μH、40.07μH~43μH、または40.09μH~43μHであり得る。
【0056】
前記無線充電装置は、25℃におけるインダクタンスが35μH~50μH、38μH~50μH、40μH~50μH、40μH~45μH、または40μH~43μHであり得る。
【0057】
前記無線充電装置は、40℃におけるインダクタンスが39μH~52μH、39μH~50μH、40μH~50μH、42μH~50μH、または42μH~45μHであり得る。
【0058】
前記無線充電装置は、60℃におけるインダクタンスが37μH~55μH、39μH~52μH、40μH~50μH、42μH~50μH、または42μH~48μHであり得る。
【0059】
前記無線充電装置は、80℃におけるインダクタンスが35μH~55μH、38μH~52μH、40μH~50μH、42μH~50μH、または42μH~48μHであり得る。
【0060】
前記無線充電装置は、100℃におけるインダクタンスが32μH~55μH、35μH~52μH、38μH~50μH、40μH~50μH、または42μH~48μHであり得る。
【0061】
前記無線充電装置は、120℃におけるインダクタンスが30μH~52μH、35μH~52μH、38μH~50μH、40μH~50μH、または40μH~48μHであり得る。
【0062】
前記無線充電装置は、各温度にて前記インダクタンスが前記範囲を満足すると、本発明の実現例で満足する無線充電装置の物性範囲を満たすことができ、これにより高温において磁性部の変形および破損発生を最小化でき、充電効率を向上させ得る。また、高温安定性を与え得るので、温度が増加しても優れた充填効率を維持するか、またはその減少程度を最小化し得る。
【0063】
また、前記無線充電装置は、各温度におけるインダクタンスを適切に調整して前記数式1~5を満足し得る。
【0064】
一方、前記無線充電装置は、25℃~120℃に温度が上昇するとき、インダクタンス変化率が10%以下であり得る。前記実現例によると、25℃~120℃に温度が増加しても、インダクタンス変化率が10%以下であると、無線充電装置の高温安定性に優れるため、高温においても優れた充電効率を維持し得る。
【0065】
具体的に、温度が25℃~120℃に上昇するとき、インダクタンス変化率は、例えば9%以下、例えば8%以下、例えば7%以下、例えば6%以下、例えば4%以下、例えば3.9%以下、例えば3.8%以下、例えば3.7%以下、例えば3%以下、例えば2%以下、例えば1%以下であり得る。前記インダクタンス変化率が低いほど、耐熱特性と磁性特性とが向上し得る。
【0066】
一般に、インダクタンスは温度が上昇するにつれ急激に減少する傾向がある。
これに対し、本発明の実現例による無線充電装置は、温度が上昇するにつれインダクタンス変化率が10%以下で低いことを特徴とする。すなわち、前記インダクタンス特性を有する無線充電装置は、高温において磁性部の変形および破損の発生を最小化し、高温安定性を与え得るので、温度が上昇しても優れた充電効率を満足し得る。
【0067】
一方、本発明のまた他の実現例による無線充電装置は、コイル部と、前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、前記磁性部は、下記数式6で表される第1透磁率変化率(ΔP1)が0/℃以上である。
【0068】
【0069】
具体的に、前記磁性部において、第1透磁率変化率(ΔP1)は、20℃の温度で測定される磁性部の透磁率と、0℃の温度で測定される磁性部の透磁率との差を20℃で除した値である。
【0070】
具体的に、前記第1透磁率変化率(△P1)は、0/℃以上、0/℃超、0.0001/℃以上、0.0005/℃以上、0.001/℃以上、0.005/℃以上、0.008/℃以上、0.01/℃以上、または0.1/℃以上であり得る。また、前記第1透磁率変化率(△P1)は、3/℃以下、2/℃以下、1/℃以下、0.9/℃以下、0.8/℃以下、0.7/℃以下、0.6/℃以下、または0.5/℃以下であり得る。前記第1透磁率変化率(△P1)は、例えば、0/℃以上~3/℃以下、0/℃超~3/℃以下、0.0001/℃以上~2/℃以下、0.0005/℃以上~1/℃以下、0.001/℃以上~0.9/℃以下、0.005/℃以上~0.8/℃以下、0.005/℃以上~0.7/℃以下、または0.1/℃以上~0.6/℃以下であり得る。
【0071】
本発明の実現例によると、前記第1透磁率変化率(△P1)が0/℃以上を有することにより、高温安定性に優れ、温度が増加しても優れた充電効率を維持するか、またはその減少程度を最小化し得る。
【0072】
本発明のまた他の実現例によると、前記磁性部は、下記数式7で表される第2透磁率変化率(ΔP2)が0/℃以上である。
【0073】
【0074】
具体的に、前記磁性部において、第2透磁率変化率(ΔP2)は、40℃の温度で測定される磁性部の透磁率と、20℃の温度で測定される磁性部の透磁率との差を20℃で除した値である。
【0075】
具体的に、前記第2透磁率変化率(△P2)は、0/℃以上、0/℃超、0.0001/℃以上、0.0005/℃以上、0.001/℃以上、0.005/℃以上、0.008/℃以上、0.01/℃以上、または0.1/℃以上であり得る。また、前記第2透磁率変化率(△P2)は、3/℃以下、2/℃以下、1/℃以下、0.9/℃以下、0.8/℃以下、0.7/℃以下、0.6/℃以下、または0.5/℃以下であり得る。前記第2透磁率変化率(△P2)は、例えば、0/℃以上~3/℃以下、0/℃超~3/℃以下、0.0001/℃以上~2/℃以下、0.0005/℃以上~1/℃以下、0.001/℃以上~0.9/℃以下、0.005/℃以上~0.8/℃以下、0.005/℃以上~0.7/℃以下、または0.1/℃以上~0.5/℃以下であり得る。
【0076】
本発明の実現例によると、前記第1透磁率変化率(△P2)が0/℃以上を有することにより、高温安定性に優れ、温度が増加しても優れた充電効率を維持するか、またはその減少程度を最小化し得る。
【0077】
本発明のまた他の無線充電装置において、前記磁性部は、60℃~100℃の温度にて透磁率の最大値を有し得る。具体的に、前記磁性部は、60℃~90℃の温度にて透磁率の最大値を有し得る。前記60℃~100℃の温度における透磁率u'は、90以上、95以上、98以上、または100以上であり得る。また、前記60℃~100℃の温度における透磁率u'は、110以下、105以下、103以下、または102以下であり得る。前記60℃~100℃の温度における透磁率u'は、例えば、90~110、90~105、95~105、または98~103であり得る。
【0078】
前記磁性部が60℃~100℃の温度にて透磁率の最大値を有すると、磁性部の耐熱特性をさらに向上させることができ、無線充電装置の高温安定性を提供し得るので、高温においても優れた充電効率を維持し得る。
【0079】
また、25℃~120℃に温度が上昇するとき、前記高分子型磁性部の透磁率変化率が10%以下であり得る。
【0080】
前記実現例によると、25℃~120℃に温度が増加しても、磁性部の透磁率変化率が10%以下を有することにより、磁性部の耐熱特性をさらに向上させることができ、無線充電装置の高温安定性を提供し得るので、高温においても優れた充填効率を維持し得る。
【0081】
具体的に、前記磁性部は、25℃~120℃に温度が上昇するとき、磁性部の透磁率変化率が、例えば9%以下、例えば8%以下、例えば7%以下、例えば5%以下、例えば、3%以下、例えば2%以下、例えば1%以下、例えば0.5%以下、例えば0.2%以下、例えば0.1%以下、例えば0.07%以下であり得る。
【0082】
前記透磁率は、磁場の影響を受けて磁化する際に生じる磁力線束密度(magnetic flux density)と真空中に現れる磁界強度との比を意味し、このような透磁率は、磁性部の種類によって影響を受ける。一般に、磁性部の透磁率は、温度上昇とともに増加していくうち、ある温度点から急激に減少する傾向があり得る。
【0083】
前記透磁率変化率が低いほど、耐熱特性と磁性特性とが向上され得る。この場合、高温において磁性部の変形および破損の発生を最小化することができ、高温安定性を与え得るので、高温においても優れた充填効率を維持し得る。
【0084】
もし、前記磁性部が前記温度範囲で透磁率変化率が10%を超えると、耐熱特性が低下し得る。前記温度範囲で前記磁性部の透磁率が増加して耐熱特性が低下すると、高温において磁性部の変形および破損が発生することがあり、これによって磁性特性が減少して充電効率の減少問題が発生し得る。
【0085】
本発明の実現例によると、前記透磁率は、アジレント(Agilent Technologies)社の4294A装置を用いて周波数85kHzにて測定する。
【0086】
本発明の実現例によると、0℃の温度で測定される前記磁性部の透磁率u'は、45~100、50~100、55~95、60~95、70~90、または80~92であり得る。
【0087】
本発明の実現例によると、20℃の温度で測定される前記磁性部の透磁率u'は、45~110、50~110、55~100、70~100、80~95、または85~95であり得る。
【0088】
本発明の実現例によると、25℃の温度で測定される前記磁性部の透磁率u'は、40~120、50~120、60~110、80~110、85~100、または88~99であり得る。
【0089】
本発明の実現例によると、40℃の温度で測定される前記磁性部の透磁率u'は、40~120、50~120、60~110、80~110、85~105、または90~105であり得る。
【0090】
本発明の実現例によると、60℃の温度で測定される前記磁性部の透磁率u'は、40~150、50~140、80~140、90~130、90~120、または90~110であり得る。
【0091】
本発明の実現例によると、80℃の温度で測定される前記磁性部の透磁率u'は、40~150、50~140、80~140、90~130、90~120、または90~110であり得る。
【0092】
本発明の実現例によると、100℃の温度で測定される前記磁性部の透磁率u'は、40~120、50~120、60~110、80~110、85~105、または90~105であり得る。
【0093】
本発明の実現例によると、120℃の温度で測定される前記磁性部の透磁率u'は、40~120、50~120、60~110、80~110、85~105、または90~105であり得る。
【0094】
前記無線充電装置は、各温度にて前記磁性部の透磁率が前記範囲を満足すると、本発明の実現例で満足する無線充電装置の物性範囲を満足することができ、これにより高温において磁性部の変形および破損の発生を最小化することができ、充電効率を向上させ得る。また、高温安定性を与え得るので、温度が増加しても優れた充填効率を維持するか、またはその減少程度を最小化し得る。
【0095】
また、前記コイル部に85kHzの周波数および6.6kWの出力を有する無線電力が10分~30分間送信される際、150℃におけるインダクタンス変化率は、例えば0.3%以下、例えば0.25%以下、例えば、0.2%以下に増加し得る。前記150℃におけるインダクタンス変化率が0.3%を超えて増加すると、耐熱特性が低下することがあり、この場合、高温において磁性部の変形および破損が発生することがあり、これにより磁性特性が減少して充電効率の減少問題が発生し得る。
【0096】
一方、本発明の実現例によると、前記高分子型磁性部下面の発熱温度が25℃~100℃に温度が上昇するとき、充填効率変化率が1%以下、例えば0.8%以下、例えば0.5%以下、例えば0.3%以下、例えば0.2%以下、例えば0.1%以下であり得る。
【0097】
磁性部の下面の発熱温度は、クオリトロール(QUALITROL)社のT/GUARD405-SYSTEMを用いて磁性部下面の温度を測定する。具体的に、前記磁性部下面の発熱温度は、コイル部に対応する位置である第1磁性部の中央(最大発熱温度)を基準にして測定する。
【0098】
一般に、磁性部の発熱温度が増加すると、発生する熱による損失の発生により、充電効率が減少し得る。しかしながら、本発明の実現例により耐熱特性が向上した磁性部を使用すると、耐熱特性によって熱が発生しても(発熱が激しくても)、充電効率減少を最小化し得る。すなわち、無線充電装置内で発熱が増加しても、優れた充電効率を維持し得る。
【0099】
本発明の一実現例によると、前記インダクタンスおよび透磁率の物性特性は、磁性部の材料によって制御し得る。
【0100】
具体的に、前記インダクタンスおよび透磁率の物性特性は、磁性部、例えば高分子型磁性部を用いることによって、本発明の実現例により目的とする範囲に調整し得る。また、前記インダクタンスおよび透磁率の物性特徴は、前記高分子型磁性部に含まれているフィラーの種類、粒径、および含有量などによって変わり得る。または、前記高分子型磁性部に含まれているバインダー樹脂の種類および含有量によって変わり得る。または、前記高分子型磁性部に添加される各種添加剤の種類および含有量によって変わり得る。または、前記高分子型磁性部を構成する組み合わせによって変わり得るので、フィラー、バインダー、および/または添加剤の適切な種類および含有量をもって選択することにより、前記インダクタンスおよび透磁率の物性特徴を効果的に制御し得る。
【0101】
図1および
図2は、一実現例による無線充電装置の分解斜視図および斜視図をそれぞれ示すものである。
【0102】
図1および
図2を参照すると、本発明の一実現例による無線充電装置10は、コイル部200と、前記コイル部200上に配置される磁性部300とを含む。また、前記無線充電装置10は、前記コイル部200を支持する支持部100、前記磁性部上に配置されるシールド部400、および前記構成要素を保護するハウジング600をさらに含み得る。
以下、前記無線充電装置の各構成要素別に具体的に説明する。
【0103】
[コイル部]
本発明の実現例による無線充電装置は、交流電流が流れて磁場を発生させ得るコイル部を含む。
【0104】
前記コイル部は導電性ワイヤを含み得る。
前記導電性ワイヤは導電性物質を含む。例えば、前記導電性ワイヤは導電性金属を含み得る。具体的に、前記導電性ワイヤは、銅、ニッケル、金、銀、亜鉛、および錫からなる群より選択される1種以上の金属を含み得る。
【0105】
また、前記導電性ワイヤは、絶縁性外皮を備え得る。例えば、前記絶縁性外皮は、絶縁性高分子樹脂を含み得る。具体的に、前記絶縁性外皮は、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、テフロン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂などを含み得る。
【0106】
前記導電性ワイヤの直径は、例えば、1mm~10mm、2mm~7mm、または3mm~5mmであり得る。
【0107】
前記導電性ワイヤは、平面コイル状で巻き付かれ得る。具体的に、前記平面コイルは、平面螺旋コイル(planar spiral coil)を含み得る。また、前記コイルの平面形状は、楕円形、多角形、または角の丸い多角形の形状であり得るが、特に限定されない。
【0108】
前記平面コイルの外径は、5cm~100cm、10cm~50cm、10cm~30cm、20cm~80cm、または50cm~100cmであり得る。具体的な一例として、前記平面コイルは、10cm~50cmの外径を有し得る。
【0109】
また、前記平前記面コイルの内径は、0.5cm~30cm、1cm~20cm、または2cm~15cmであり得る。
【0110】
前記平面コイルの巻き回数は、1回~50回、5回~30回、5回~20回、または7回~15回であり得る。具体的な一例として、前記平面コイルは、前記導電性ワイヤを7回~15回巻いて形成されたものであり得る。
【0111】
また、前記平面コイル形状内において、前記導電性ワイヤ間の間隔は、0.1cm~1cm、0.1cm~0.5cm、または0.5cm~1cmであり得る。
【0112】
前記のような好ましい平面コイル寸法および規格範囲内であるとき、電気自動車のような大容量電力伝送を求める分野のみならず、電気バイク、電動キックボード、電動スクーター、電動車椅子、および電動自転車などの様々な個人用移動手段分野に好適であり得る。
【0113】
前記コイル部は、前記磁性部と一定間隔離隔して配置され得る。例えば、前記コイル部と前記磁性部との離隔距離は、0.2mm以上、0.5mm以上、0.2mm~3mm、または0.5mm~1.5mmであり得る。
【0114】
[磁性部]
前記磁性部は、コイル部の周囲に生成される磁場の磁路(magnetic path)を形成することができ、前記コイル部と前記シールド部との間に配置される。
【0115】
前記磁性部は、前記シールド部と一定間隔離隔して配置され得る。例えば、前記磁性部と前記シールド部との離隔距離は、3mm以上、5mm以上、3mm~10mm、または4mm~7mmであり得る。
【0116】
また、前記磁性部は、前記コイル部と一定間隔離間して配置され得る。例えば、前記磁性部と前記コイル部との離隔距離は、0.2mm以上、0.5mm以上、0.2mm~3mm、または0.5mm~1.5mmであり得る。
【0117】
前記磁性部は、フィラーおよびバインダー樹脂を含む高分子型磁性部(第1磁性部)を含み得る。
【0118】
前記磁性部は、金属系磁性部、例えばナノ結晶質(nanocrystalline)磁性部(第2磁性部)をさらに含み得る。
【0119】
また、前記磁性部は、酸化物系磁性部(第2磁性部)をさらに含み得る。
前記磁性部は、これらの複合体(第1磁性部および第2磁性部)を含み得る。
【0120】
[高分子型磁性部]
前記磁性部は、バインダー樹脂とフィラーとを含む高分子型磁性部を含み得る。具体的に、前記磁性部は、前記バインダー樹脂と、前記バインダー樹脂内に分散しているフィラーとを含む高分子型磁性部を含み得る。前記高分子型磁性部は、高分子型磁性ブロック(PMB)を含み得る。
【0121】
本発明の実現例によると、前記フィラーおよびバインダー樹脂を含む高分子型磁性部を含むことにより、本発明において目的とするインダクタンス偏差、インダクタンス変化率および透磁率変化率を達成し得る。
【0122】
前記高分子型磁性部は、バインダー樹脂によってフィラー同士が結合することにより、広い面積で全体的に欠陥が少なく衝撃により損傷が少なくあり得る。
【0123】
前記フィラーは、フェライト(Ni-Zn系、Mg-Zn系、Mn-Zn系フェライト等)のような酸化物フィラー;パーマロイ(permalloy)、センダスト(sendust)、ナノ結晶質磁性体のような金属系フィラー;または、これらの混合粉末であり得る。より具体的に、前記フィラーは、Fe-Si-Al合金組成を有するセンダスト粒子であり得る。
【0124】
一例として、前記フィラーは下記化学式1の組成を有し得る。
[化学式1]
Fe1-a-b-cSiaXbYc
前記式において、XはAl、Cr、Ni、Cu、またはこれらの組み合わせであり、YはMn、B、Co、Mo、またはこれらの組み合わせであり、0.01≦a≦0.2、0.01≦b≦0.1、および0≦c≦0.05である。具体的に、前記式において、Xは、Al、Cr、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0125】
前記フィラーはセンダストを含み得る。
前記フィラーの平均粒径(D50)は、約1μm~300μm、約10μm~200μm、または約30μm~150μmの範囲であり得る。前記フィラーの平均粒径が前記範囲を満足すると、前記高分子型磁性部の耐熱特性を向上させることができ、温度上昇による前記インダクタンス変化率および前記透磁率変化率を下げ得る。これにより、無線充電装置の充電効率を向上させ得る。
【0126】
前記フィラーは、前記高分子型磁性部の総重量を基準に、60重量%以上、70重量%以上、または85重量%以上の量で含み得る。
【0127】
例えば、前記高分子型磁性部は、前記フィラーを60重量%~90重量%、70重量%~90重量%、75重量%~90重量%、78重量%~90重量%、80重量%~90重量%、85重量%~90重量%、87重量%~90重量%、または89重量%~90重量%の量で含み得る。前記フィラーの含有量が60重量%未満であると、前記高分子型磁性部の耐熱特性が低下し、温度上昇によるインダクタンス変化率および透磁率変化率が急激に増加し得る。特に、無線充電装置のインダクタンス偏差が0(ゼロ)未満であり得る。これにより、高温において磁性部の変形および破損が発生することがあり、これにより磁性特性が減少して充電効率が減少し得る。
【0128】
前記バインダー樹脂の融点(Tm)は150℃~210℃であり得る。例えば、前記バインダー樹脂の融点(Tm)は160℃~200℃、例えば160℃~180℃であり得る。前記バインダー樹脂の融点(Tm)が前記範囲を満足すると、150℃~180℃の温度にて位置変化量を最小化して、磁性部の耐熱特性および磁性特性をより向上させることができ、これにより充電効率を向上させ得る。
【0129】
前記バインダー樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニルスルフィド(PSS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂およびエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0130】
前記バインダー樹脂は、硬化性樹脂であり得る。具体的に、前記バインダー樹脂は、光硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂であり、特に、硬化して接着性を示し得る樹脂であり得る。より具体的に、前記バインダー樹脂は、グリシジル基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、またはアミド基のような、熱による硬化が可能な官能基または部位を1つ以上含むか、または、エポキシド(epoxide)基、環状エーテル(cyclic ether)基、スルフィド(sulfide)基、アセタール(acetal)基、またはラクトン(lactone)基のような、活性エネルギーによって硬化可能な官能基または部位を1つ以上含む樹脂を使用し得る。このような官能基または部位は、例えばイソシアネート基(-NCO)、ヒドロキシ基(-OH)、またはカルボキシル基(-COOH)であり得る。
【0131】
具体的に、前記バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリプロピレン樹脂からなる群より選択された1種以上を含み得る。
【0132】
また、前記バインダー樹脂として耐熱特性に優れた樹脂を用いたとしても、フィラーとの混合が上手く行かないと、本発明の実現例により目的とするインダクタンス偏差、インダクタンス変化率および透磁率変化率を満足することに困難があり得る。したがって、前記バインダー樹脂およびフィラーの混合が望ましくなるように選択することが重要であり得る。
【0133】
例えば、前記バインダー樹脂として、ポリアミド樹脂を使用することができ、前記フィラーとして、センダストを使用し得る。
【0134】
前記高分子型磁性部は、前記バインダー樹脂を5重量%~40重量%、10重量%~40重量%、10重量%~20重量%、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%、または7重量%~15重量%の量で含有し得る。
【0135】
本発明の実現例により、目的とするインダクタンス偏差、インダクタンス変化率および透磁率変化率を満足するために、前記バインダー樹脂を10重量%~40重量%、および前記フィラーを80重量%~90重量%の量で含み得る。
【0136】
具体的に、前記バインダー樹脂を10重量%~20重量%、および前記フィラーを85重量%~90重量%の量で含み得る。
【0137】
また、前記高分子型磁性部は、添加剤をさらに含み得る。具体的に、前記高分子型磁性部は、リン酸およびシランからなる群より選択される1種以上の絶縁コーティング剤をさらに含み得る。前記絶縁コーティング剤は、酸化膜形成のために使用される添加剤であって、前記絶縁コーティング剤は高分子型磁性部の総重量を基準に0.1重量%~10重量%、具体的に1重量%~8重量%または2重量%~8重量%の量で添加され得る。
【0138】
前記添加剤を前記範囲の含有量で含むと、前記高分子型磁性部の耐熱特性を向上させることができ、温度上昇による前記インダクタンス変化率および前記透磁率変化率を下げ得る。特に、前記インダクタンス偏差が0以上を満足することができ、これにより無線充電装置の充電効率をさらに向上させ得る。
【0139】
前記高分子型磁性部は、一定の比で伸び得る。例えば、前記高分子型磁性部の伸び率は0.5%以上であり得る。前記伸び特性は、高分子を適用しないセラミック系磁性部では得られ難いものであり、大面積の磁性部が衝撃により歪み等が発生しても損傷を減らし得る。具体的に、前記高分子型磁性部の伸び率は、0.5%以上、1%以上、または2.5%以上であり得る。前記伸び率の上限に特に制限はないが、伸び率向上のために高分子樹脂の含有量が多くなると、磁性部のインダクタンス等の物性が低下し得るので、前記伸び率は10%以下とすることが好ましい。
【0140】
前記高分子型磁性部は、衝撃前後の物性変化率が少なく、一般的なフェライト磁性シートに比べてはるかに優れる。
【0141】
本明細書において、ある物性の衝撃前後の物性変化率(%)は、下記式で計算され得る。
特性変化率(%)=|衝撃前特性値-衝撃後特性値|/衝撃前特性値×100
【0142】
例えば、前記高分子型磁性部は、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後のインダクタンス変化率が5%未満、または3%以下であり得る。より具体的に、前記インダクタンス変化率は、0%~3%、0.001%~2%、または0.01%~1.5%であり得る。前記範囲内であるとき、衝撃前後のインダクタンス変化率が相対的に少ないため、磁性部の安定性がより向上され得る。
【0143】
また、前記高分子型磁性部は、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後の品質係数(Qファクタ)変化率が、0%~5%、0.001%~4%、または0.01%~2.5%であり得る。前記範囲内であるとき、衝撃前後の物性変化が少ないため、磁性部の安定性と耐衝撃性とがより向上され得る。
【0144】
また、前記高分子型磁性部は、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後の抵抗変化率が、0%~2.8%、0.001%~1.8%、または0.1%~1.0%であり得る。前記範囲内であるとき、実際の衝撃や振動が加えられる環境において繰り返し適用しても、抵抗値が一定レベル以下に上手く維持され得る。
【0145】
また、前記高分子型磁性部は、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後の充電効率変化率が、0%~6.8%、0.001%~5.8%、または0.01%~3.4%であり得る。前記範囲内であるとき、大面積の磁性部が衝撃や歪みが繰り返し発生しても、物性をより安定して維持し得る。
【0146】
[ナノ結晶質磁性部]
前記磁性部は、ナノ結晶質磁性部をさらに含み得る。
【0147】
前記ナノ結晶質磁性部を適用する際に、コイル部と距離が離れるほど、コイル部のインダクタンスLsが低くなっても抵抗Rsがさらに低くなることにより、コイルの品質係数(Qファクタ:Ls/Rs)が高くなるため、充電効率が向上し発熱が減少し得る。
【0148】
例えば、前記ナノ結晶質磁性部は、Fe系ナノ結晶質磁性部であり、具体的に、Fe-Si-Al系ナノ結晶質磁性部、Fe-Si-Cr系ナノ結晶質磁性部、またはFe-Si-B-Cu-Nb系ナノ結晶質磁性部であり得る。
【0149】
より具体的に、前記ナノ結晶質磁性部は、Fe-Si-B-Cu-Nb系ナノ結晶質磁性部であってよく、この場合、Feが70元素%~85元素%、SiとBとの合計が10元素%~29元素%、CuとNbとの合計が1元素%~5元素%であることが好ましい(ここで元素%とは、磁性部をなす総元素数に対する特定元素の数の百分率のことを意味する)。前記組成範囲において、Fe-Si-B-Cu-Nb系合金が、熱処理によりナノ相の結晶質に容易に形成され得る。
【0150】
前記ナノ結晶質磁性部は、例えば、Fe系合金をメルトスピニングによる急冷凝固法(RSP)により製造し、所望の透磁率が得られるように300℃~700℃の温度範囲で30分~2時間の無磁場熱処理を行って製造され得る。
【0151】
もし、熱処理温度が300℃未満であると、ナノ結晶質が十分に生成されないため、所望の透磁率が得られず、熱処理時間が長くかかることがあり、700℃を超えると、過熱処理により透磁率が著しく低下し得る。また、熱処理温度が低い場合は熱処理時間を長くし、熱処理温度が高い場合は熱処理時間を短くして所望の透磁率に調整し得る。
【0152】
ナノ結晶質磁性部は、製造工程上厚さを厚く作ることが困難であり、例えば15μm~35μmの厚さに形成され得る。
【0153】
前記ナノ結晶質磁性部は、電気自動車の無線充電標準周波数付近で特定範囲の磁性特性を有し得る。また、前記ナノ結晶質磁性部は、電気バイク、電動キックボード、電動スクーター、電動車椅子、および電動自転車などの様々な個人用移動手段分野における無線充電標準周波数付近で一定レベルの磁性特性を有し得る。
【0154】
例えば、前記ナノ結晶質磁性部は、85kHzの周波数にて500~150000の透磁率および100~50000の透磁損失を有し得る。一例として、前記ナノ結晶質磁性部が破砕型のナノ結晶質磁性体を含む場合、85kHzの周波数にて500~3000の透磁率および100~1000の透磁損失を有し得る。他の例として、前記ナノ結晶質磁性部が非破砕型のナノ結晶質磁性体を含む場合、85kHzの周波数にて5000~150000の透磁率および1000~10000の透磁損失を有し得る。
【0155】
[酸化物系磁性部]
前記磁性部は、酸化物系磁性部を含み得る。
【0156】
例えば、前記酸化物系磁性部はフェライト系素材であり、具体的な化学式はMOFe2O3(ここでMは、Mn、Zn、Cu、Niなどの1種以上の2価金属元素である)で表され得る。前記フェライト系素材は、焼結体であるものが透磁率のような磁性特性の面から有利であり、より具体的にフェライト焼結体であり得る。前記フェライト系素材は、原料成分を混合してか焼後粉砕し、これをバインダー樹脂と混合して成形し焼成して、シート状またはブロック状に製造され得る。
【0157】
より具体的に、前記酸化物系磁性部は、Ni-Zn系、Mg-Zn系、またはMn-Zn系フェライトであってよく、特に、Mn-Zn系フェライトは、79kHz~90kHzの周波数にて室温~100℃以上の温度範囲にわたって高い透磁率、低い透磁損失、および高い飽和磁束密度を示し得る。
【0158】
前記Mn-Zn系フェライトは、主成分として、酸化鉄Fe2O3を66mol%~70mol%、ZnOを10mol%~20mol%、MnOを8mol%~24mol%、およびNiOを0.4mol%~2mol%で含み、その外、副成分として、SiO2、CaO、Nb2O5、ZrO2、SnO等を含有し得る。前記Mn-Zn系フェライトは、主成分を所定のモル比で混合して、空気中で800℃~1100℃の温度にて1時間~3時間か焼後、副成分を添加して粉砕し、これにポリビニルアルコール(PVA)等のバインダー樹脂を適量混合し、プレスを用いて加圧成形した後、1200℃~1300℃まで昇温して2時間以上焼成することにより、シート状またはブロック状に製造され得る。その後、必要に応じて、ワイヤソー(wire saw)またはウォータージェット(water jet)などにより加工して、所望の大きさに切断される。
【0159】
前記酸化物系磁性部は、電気自動車の無線充電標準周波数付近で特定範囲の磁性特性を有し得る。また、前記酸化物系磁性部は、電気バイク、電動キックボード、電動スクーター、電動車椅子、および電動自転車などの様々な個人用移動手段分野における無線充電標準周波数付近で一定レベルの磁性特性を有し得る。
【0160】
例えば、前記酸化物系磁性部、具体的にフェライト系素材の85kHzの周波数における透磁率は、1000~5000、1000~4000、または2000~4000であり、透磁損失は、0~1000、0~100、または0~50であり得る。
【0161】
[磁性部の製造方法]
前記磁性部は、例えば、高分子型磁性部を含んでよく、前記高分子型磁性部は、フィラーとバインダー樹脂とを混合してスラリー化した後、シート状に成形して硬化するなどのシート化過程により製造し得る。
【0162】
また、熱可塑性樹脂を用いて一定の厚さを有する大面積の磁性部を製造するために、モールドにより立体構造に形成することができ、具体的に、フィラーと熱可塑性樹脂とを機械的せん断力と熱を用いて混練した後、機械装置を用いてペレット化して射出成形の方式でブロックを製造し得る。
【0163】
前記製造の方法には、通常のシート化またはブロック化方法が適用され得る。
前記成形は、射出成形によって磁性部の原料をモールドに注入して行われ得る。より具体的に、前記磁性部は、フィラーと高分子樹脂組成物とを混合して原料組成物を得た後、
図9に示すように、前記原料組成物701を射出成形機702によりモールド703に注入して製造され得る。この際、モールド703の内部形状を立体構造に設計して、磁性部の立体構造を容易に実現し得る。このような工程は、既存の焼結フェライトシートを磁性部として使用する場合に比べて、構造の自由度の面から有利であり得る。
【0164】
[磁性部の面積および厚さ]
前記磁性部は、磁性シート、磁性シート積層体、または磁性ブロックであり得る。
【0165】
前記磁性部は、大面積を有することができ、具体的に200cm2以上、400cm2以上、または600cm2以上の面積を有し得る。また、前記磁性部は、10000cm2以下の面積を有し得る。
【0166】
前記大面積の磁性部は、多数の単位磁性部が組み合わされて構成され、この際、前記単位磁性部の面積は、60cm2以上、90cm2以上、または95cm2~900cm2であり得る。
【0167】
前記磁性シートの厚さは、15μm以上、50μm以上、80μm以上、15μm~150μm、15μm~35μm、または85μm~150μmであり得る。このような磁性部は、通常のフィルムまたはシートを製造する方法により製造され得る。
【0168】
前記磁性シートの積層体は、前記磁性シートが20枚以上、または50枚以上積層されたものであり得る。また、前記磁性シートの積層体は、前記磁性シートが150枚以下、または100枚以下に積層されたものであり得る。
【0169】
前記磁性ブロックの厚さは、1mm以上、2mm以上、3mm以上、または4mm以上であり得る。また、前記磁性ブロックの厚さは10mm以下であり得る。
【0170】
[シールド部]
前記実現例による無線充電装置10は、電磁波遮蔽により無線充電効率を高める役割を果たすシールド部400をさらに含み得る。
前記シールド部は前記コイルの一面上に配置される。
【0171】
前記シールド部は金属板を含み、その素材はアルミニウムであり、その外に電磁波遮蔽能を有する金属または合金素材が使用され得る。
【0172】
前記シールド部の厚さは、0.2mm~10mm、0.5mm~5mm、または1mm~3mmであり得る。
【0173】
また、前記シールド部の面積は、200cm2以上、400cm2以上、または600cm2以上であり得る。
【0174】
[ハウジング]
前記実現例による無線充電装置10は、前記コイル部200と前記磁性部300とを収容するハウジング600をさらに含み得る。
【0175】
また、前記ハウジング600は、前記コイル部200、前記シールド部400、前記磁性部300などの構成要素が適切に配置され組み立てられ得るようにする。前記ハウジングの形状(構造)は、その内部に含まれる構成要素に応じて、または環境に応じて、任意に設定し得る。前記ハウジングの材質および構造は、無線充電装置に使用される通常のハウジングの材質および構造を採用し得る。
【0176】
[支持部]
前記実現例による無線充電装置10は、前記コイル部200を支持する支持部100をさらに含み得る。前記支持部の材質および構造は、無線充電装置に使用される通常の支持部の材質および構造を採用し得る。前記支持部は、平板構造またはコイル部を固定し得るよう、コイル形状に沿って溝が掘られた構造を有し得る。
【0177】
[無線充電装置の多様な例]
図3aおよび
図3bは、本発明の実現例による様々な構造の無線充電装置の断面図を示すものである。
【0178】
一実現例による無線充電装置は、
図3aを参照して、コイル部200と、前記コイル部200上に配置される磁性部300とを含み、前記磁性部と一定間隔離隔してシールド部400を含み得る。また、前記磁性部300と前記シールド部400との間に空き空間またはスペーサ部700をさらに含み得る。この際、前記磁性部300は、フィラーとバインダー樹脂とを含む高分子型磁性部を含み得る。
【0179】
また、前記磁性部は平面構造であり得る。または、前記磁性部は立体構造であり得る。前記磁性部が立体構造の場合、充電効率および放熱特性を向上させ得る。
【0180】
図3bを再度参照すると、前記磁性部は、2種以上のハイブリッド型磁性部を含み得る。具体的に、前記磁性部は、互いに異なる種類の第1磁性部300と、第2磁性部500とを含み得る。
【0181】
前記第1磁性部300は高分子型磁性部を含み、第2磁性部500はナノ結晶質または酸化物系磁性部を含み得る。
【0182】
前記高分子型磁性部である第1磁性部300は、前記コイル部200が配置される部分に対応する外郭部310と、前記外郭部310によって囲まれる中心部320とを含み、前記外郭部310の厚さが前記中心部320の厚さよりも大きくあり得る。この際、前記第1磁性部において、外郭部と中心部とは互いに一体型に形成され得る。または、前記第1磁性部において、外郭部と中心部とは厚さが同一でもあり得る。
【0183】
このように、無線充電中に電磁エネルギーが集中するコイル近傍における磁性部の厚さを厚くし、コイルがないため相対的に電磁エネルギー密度が低い中心の磁性部の厚さを薄くすることにより、コイル周辺に集中する電磁波を効果的に集束させて、充電効率を向上させるだけでなく、別途のスペーサなしで堅くコイルとシールド部との距離を維持し得るので、スペーサ等の使用による材料コストおよび工程コストを節減し得る。
【0184】
前記第1磁性部において、前記外郭部が前記中心部に比べて1.5倍以上厚い厚さを有し得る。前記厚さ比であるとき、コイル周辺に集中する電磁波をより効果的に集束させて、充電効率を向上させることができ、防熱および軽量化にも有利である。具体的に、前記第1磁性部において外郭部/中心部の厚さ比は、2以上、3以上、または5以上であり得る。また、前記厚さ比は、100以下、50以下、30以下、または10以下であり得る。より具体的に、前記厚さ比は、1.5~100、2~50、3~30、または5~10であり得る。
【0185】
前記第1磁性部の外郭部の厚さは、1mm以上、3mm以上、または5mm以上であり、また、30mm以下、20mm以下、または11mm以下であり得る。さらに、前記第1磁性部の中心部の厚さは、10mm以下、7mm以下、または5mm以下であり、また、0mmか、0.1mm以上または1mm以上であり得る。具体的に、前記第1磁性部の外郭部が5mm~11mmの厚さを有し、前記中心部が0mm~5mmの厚さを有し得る。
【0186】
前記第1磁性部300の中心部320の厚さが0の場合、前記第1磁性部300は、中心部320が空いている形状を有し得る(例えばドーナツ形状)。この場合、前記第1磁性部は、より小さい面積でも充電効率を効果的に向上させ得る。
【0187】
例えば、前記無線充電装置は、
図3bを参照して、コイル部200と、前記コイル部200上に配置される磁性部とを含み、前記磁性部は、第1磁性部300と第2磁性部500とを含み得る。また、前記第2磁性部の少なくとも一部が、前記シールド部400に接触し得る。これにより、前記第2磁性部で発生する熱が、前記シールド部を介して効果的に排出され得る。例えば、前記第2磁性部が、ナノ結晶質または酸化物系磁性部であり、シート状であると、その一面全部が前記シールド部に接触し得る。具体的に、前記第2磁性部は、前記シールド部の前記第1磁性部に向かう一面上に付着され得る。前記第2磁性部は、前記シールド部の一面に熱伝導性接着剤で付着されることにより、放熱効果をさらに高め得る。前記熱伝導性接着剤は、金属系、カーボン系、セラミック系などの熱伝導性素材を含むことができ、例えば、熱伝導性粒子が分散された接着剤樹脂であり得る。
【0188】
その外にも、本発明の実現例により、前記透磁率変化率を満足する第1磁性部、例えば高分子型磁性部を含み、これを他の素材の磁性部とともに複合した様々な構造に配置して、本発明の効果を妨げない範囲内で多様に設計し得る。
【0189】
本発明の実現例による無線充電装置の充電効率は、85%以上、88%以上、89%以上、90%以上、または91%以上であり得る。
【0190】
例えば、前記コイル部に85kHzの周波数および6.6kWの出力を有する無線電力が15分間送信される際、充電効率は87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、または91%以上であり得る。
【0191】
したがって、前記無線充電装置は、送信機と受信機との間の大容量の電力伝送を求める電気自動車のみならず、電気バイク、電動キックボード、電動スクーター、電動車椅子、および電動自転車などの様々な個人用移動手段などに有用に作用され得る。
【0192】
[磁性素子]
本発明の実現例によると、フィラーおよびバインダー樹脂を含む高分子型磁性部(第1磁性部)を含み、前記数式6で表される第1透磁率変化率(ΔP1)が0/℃以上である、磁性素子を提供し得る。
前記高分子型磁性部の各構成要素の構成および特徴は、前述の通りである。
【0193】
本発明の実現例による磁性素子は、前記特性を有する高分子型磁性部を含むことにより、高温安定特性を提供することができ、高温において磁性素子の変形および破損による充電効率の減少問題を解決し得る。
【0194】
特に、前記バインダー樹脂、フィラーの種類および含有量、並びに各種添加剤を最適に組み合わせて調整することにより、本発明の実現例により目的とするインダクタンス偏差、インダクタンス変化率、および前記磁性部の透磁率変化率を特定範囲で満足し得る。この場合、充電効率増大効果を向上させることができ、温度上昇や発熱増加にも充電効率減少量を最小化し得る。
【0195】
(移動手段)
前記実現例による無線充電装置は、送信機と受信機との間の大容量の電力伝送を求める電気自動車のみならず、電気バイク、電動キックボード、電動スクーター、電動車椅子、および電動自転車などの様々な個人用移動手段などに有用に作用され得る。
【0196】
図10を参照すると、一実現例による電気自動車1は、前記実現例による無線充電装置を受信機720として含む。
【0197】
前記無線充電装置は、電気自動車1の無線充電の受信機として機能し、無線充電システムの送信機730から電力供給を受け得る。
【0198】
前記移動手段は、無線充電装置を含み、前記無線充電装置の各構成要素の構成および特徴は、前述の通りである。
【0199】
前記移動手段は、前記無線充電装置から電力伝送を受けるバッテリーをさらに含み得る。前記無線充電装置は、無線により電力伝送を受けて前記バッテリーに伝達し、前記バッテリーは、前記電気自動車の駆動系に電力を供給し得る。前記バッテリーは、前記無線充電装置またはその他追加の有線充電装置から伝送される電力によって充電され得る。
【0200】
また、前記移動手段は、充電に関する情報を無線充電システムの送信機に伝達する信号伝送機をさらに含み得る。このような充電に関する情報は、充電速度のような充電効率、充電状態などであり得る。
【0201】
(実施例)
以下においては、本発明の具体的な実現例を提示する。ただし、以下に記載される実施例は、本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これにより本発明が限定されてはならない。
【0202】
(実施例1:無線充電装置の製造)
段階1)高分子型磁性部(PMB磁性シート)の製造
バインダー樹脂としてポリアミド樹脂(製品名:L1724k、Daicel-Evonik社)15重量%、フィラーとしてセンダスト(製品名:C1F-02A、Crystallite Technology社製)80重量%、および添加剤としてリン酸およびシランを5重量%使用して、約170℃~200℃の温度、120rpm~150rpmの条件で押出機によりペレットを製造し、該ペレットを射出機により約250℃の温度条件で射出して、厚さ5mmの高分子型磁性部(PMB磁性シート)を得た。
【0203】
段階2)無線充電装置の製造
前記段階1の磁性部を用いて、導電性ワイヤを含むコイル部、前記磁性部、およびシールド部を含む無線充電装置を得た。
【0204】
(比較例1)
リン酸およびシランの添加剤を使用しないことを除いては、前記実施例1と同様の方法により行い、磁性部およびそれを含む無線充電装置を得た。
【0205】
(試験例)
(1)磁性部の透磁率
磁性部の透磁率をアジレント社の4294A装置により、周波数85kHzにて測定した。
【0206】
(2)インダクタンス
インダクタンスは、30μHのインダクタンスを有し、コイルの直径5mm、1000本の正方形の平面コイル、および320mm×320mm×5mm体積の磁性部、並びに350mm×350mm×2mmのアルミニウム(Al)シールド部を使用して、LCRメータ(日置電機社のIM3536装置)を用いて測定した。前記装置をコイル部に連結した後、LCRメータの設定値を85kHzに設定した後インダクタンス(Ls)を測定し、これを用いてインダクタンス偏差およびインダクタンス変化率を測定した。
【0207】
実施例および比較例において、いずれも同一条件で測定しており、前記測定されたインダクタンス偏差およびインダクタンス変化率を算出して、下記表2および表3に示した。
【0208】
(3)充電効率測定
充電効率は、SAE J2954 WPT2 Z2クラススタンダードテスト方法により測定した。具体的に、SAE J2954 WPT2 Z2クラススタンダードテスト規格のコイル部およびフレームを適用し、磁性部、スペーサ(spacer)、アルミニウムシールド部を積層して、受信パッド(35cm×35cm)および送信パッド(75cm×60cm)を製造して、85kHz周波数にて出力電力6.6kWの同一条件で充電効率を評価した。
【0209】
(4)発熱温度測定
前記実施例および比較例で得られた無線充電装置をハウジング内に配置して無線充電装置を得た。
【0210】
前記実施例および比較例で得られた無線充電装置を、SAE J2954 WPT2 Z2クラススタンダードテスト充電効率測定条件において、前記コイル部に85kHzの周波数および6.6kWの出力を有する無線電力が30分間送信されるとき、磁性部の下面温度を測定した。
【0211】
具体的に、前記磁性部の下面温度は、クオリトロール社のT/GUARD405-SYSTEMを用いて、実施例および比較例の磁性部の下面のうちコイル部に対応する位置の中央(最大発熱温度)を基準に測定した。
前記測定結果を下記表1~表3、
図4~
図8に示した。
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
前記表1~表3、および
図4、
図5から確認できるように、実施例1の無線充電装置は、比較例1の無線充電装置に比べてインダクタンス偏差、インダクタンス変化率および透磁率変化率等がいずれも本発明の実施例の範囲に満足し、これにより充電効率が向上しており、発熱温度が増加しても充電効率が維持されるか、またはその減少率が低いことを確認した。
【0216】
具体的に、表1および
図4、
図5で確認できるように、実施例1の無線充電装置は、比較例1の無線充電装置に比べてコイル部および磁性部の発熱温度がさらに増加したにもかかわらず、無線電力送信初期ないし無線電力が15分間送信される際、充電効率が0.3%以内にほぼ一定に維持されることを確認し得る。これに対し、比較例1の磁性部の発熱温度は、実施例1の磁性部の発熱温度に比べてやや低いにもかかわらず、充電効率減少率はさらに増加したことがわかった。
【0217】
また、前記表2および
図6から確認できるように、実施例1の無線充電装置においては、比較例1の無線充電装置に比べて、時間の経過とともに150℃におけるインダクタンス変化率がほぼ維持または増加することが分かる。
【0218】
具体的に、実施例1の無線充電装置は、比較例1の無線充電装置に比べて、無線電力が10分~30分間送信される際、150℃におけるインダクタンス変化率が0.3%以下に徐々に増加する一方、比較例1の無線充電装置のインダクタンス変化率は、実施例1の無線充電装置のインダクタンス変化率に比べて、急激に減少することがわかる。すなわち、実施例1の無線充電装置の場合、150℃の高温においても透磁率変化がないため、インダクタンス変化率がほとんどないことがわかる。一方、比較例1の無線充電装置の場合、無線電力が30分間送信される際、インダクタンス変化率が負(-)の値を維持し続けながらインダクタンス変化率が急激に低下した。
【0219】
前記表3、および
図7、
図8で確認できるように、実施例1の無線充電装置の場合、40℃、60℃、80℃、100℃におけるインダクタンス偏差(ID1)がいずれも正(+)の値を有しており、磁性部の第1透磁率変化率(△P1)および第2透磁率変化率(△P2)がいずれも正(+)の値を有している。また、25℃~120℃に温度が上昇するとき、インダクタンス変化率および前記高分子型磁性部の透磁率変化率がそれぞれ10%以内であった。
【0220】
一方、比較例1の無線充電装置の場合、40℃、60℃、80℃、100℃におけるインダクタンス偏差(ID1)がいずれも負(-)の値を有しており、磁性部の第1透磁率変化率(△P1)および第2透磁率変化率(ΔP2)がいずれも負(-)の値を有している。また、25℃~120℃に温度が上昇するとき、インダクタンス変化率が急激に低下しており、前記高分子型磁性部の透磁率変化率も同様に急激に変化した。
【0221】
前記の結果から、実施例1の高分子型磁性部を含む無線充電装置は、高温安定性に優れるため、高温においても優れた充電効率を維持したことを確認した。
【符号の説明】
【0222】
1:移動手段(電気自動車)
10、10a、10b:無線充電装置
100:支持部
200:コイル部
300:磁性部(第1磁性部)
310:外郭部
320:中心部
400:シールド部
500:第2磁性部
600:ハウジング
700:スペーサ部
701:原料組成物
702:射出成形機
703:モールド
720:受信機
730:送信機
A-A':切開線