(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】プリント回路用基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 37/02 20060101AFI20250127BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20250127BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20250127BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20250127BHJP
【FI】
C04B37/02 Z
H05K1/03 610D
H05K1/03 630H
H05K3/00 R
H01L23/12 D
(21)【出願番号】P 2023544425
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 KR2022001097
(87)【国際公開番号】W WO2022158894
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0008707
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517232084
【氏名又は名称】エルエックス セミコン カンパニー, リミティド
(73)【特許権者】
【識別番号】502130098
【氏名又は名称】株式会社FJコンポジット
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 俊昊
(72)【発明者】
【氏名】趙 南泰
(72)【発明者】
【氏名】津島 栄樹
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-137396(JP,A)
【文献】特開2014-204031(JP,A)
【文献】特表2006-527666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/02,
H05K 1/03,3/00,
H01L 23/12-23/15,25/07,25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する上面と下面の面積がSAであるセラミック基板(a)を用意し、前記面積SAを有するセラミック基板の上面と下面の上にそれぞれ蒸着層を形成し、互いに対向する上面と下面の上に上部蒸着層及び下部蒸着層がそれぞれ形成されたセラミック基板(A)を製造する第1ステップと、
前記面積SAより1.5倍以上大きい面積SBの一面を有する上部金属シート(B)及び下部金属シート(B')を用意する第2ステップと、
前記上部金属シート(B)と下部金属シート(B')の互いに対向する面積SBの一面の間で、2つ以上のセラミック基板(A)が平面に平行に並んで位置するように前記金属シート(B、B')と前記2つ以上のセラミック基板(A)を配置する第3ステップと、
前記上部及び下部金属シート(B、B')を熱間加圧して、上部及び下部蒸着層を媒介として前記金属シート(B、B')とセラミック基板(A)を接合する第4ステップと、を含む、プリント回路用基板の製造方法。
【請求項2】
前記上部金属シート(B)及び下部金属シート(B')の一面の面積SBは、前記面積SA対比1.5~6.0倍の大きさである、請求項1に記載のプリント回路用基板の製造方法。
【請求項3】
前記上部金属シート(B)及び下部金属シート(B')の一面の面積SBは、前記面積SA対比1.5~2.5倍の大きさである、請求項1に記載のプリント回路用基板の製造方法。
【請求項4】
前記
第3ステップは、
前記面積がSBである金属シート(B、B')の一面と前記2つ以上であるセラミック基板(A)の間の重畳面積が、上部金属シート(B)と下部金属シート(B')の間に位置するセラミック基板(A)の総面積(ST=n×SA、nは2以上の自然数として金属シート(B、B')の間に位置するセラミック基板の個数を意味する)の70%以上となるように、前記金属シート(B、B')とセラミック基板(A)を配置する、請求項1に記載のプリント回路用基板の製造方法。
【請求項5】
前記面積がSBである金属シート(B、B')の一面と前記2つ以上であるセラミック基板(A)の間の重畳面積が、上部金属シート(B)と下部金属シート(B')の間に位置するセラミック基板(A)の総面積(ST=n×SA、nは2以上の自然数として金属シート(B、B')の間に位置するセラミック基板の個数を意味する)の90%以上となるように、前記金属シート(B、B')とセラミック基板(A)を配置する、請求項1に記載のプリント回路用基板の製造方法。
【請求項6】
前記蒸着層は、Ag及びTiを含み、
前記Agの単位面積当たりの蒸着量は、3.50~6.10g/m2の範囲であり、
前記Tiの単位面積当たりの蒸着量は、0.61~1.30g/m2の範囲である、請求項1に記載のプリント回路用基板の製造方法。
【請求項7】
450~1,300℃の温度で、1~25MPaの圧力を加えながら前記熱間加圧を行う、請求項1に記載のプリント回路用基板の製造方法。
【請求項8】
前記Agの単位面積当たりの蒸着量は、4.00~4.60g/m2の範囲である、請求項
6に記載のプリント回路用基板の製造方法。
【請求項9】
前記Tiの単位面積当たりの蒸着量は、1.02~1.30g/m2の範囲である、請求項
6に記載のプリント回路用基板の製造方法。
【請求項10】
前記第1ステップの蒸着は、セラミック基板(a)の上面と下面の上にそれぞれTiを含む第1蒸着層を形成するステップと、前記第1蒸着層の上にAgを含む第2蒸着層を形成するステップとを含む、請求項5に記載のプリント回路用基板の製造方法。
【請求項11】
前記セラミック基板(a)は、Si3N4、AlN及びAl2O3のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のプリント回路用基板の製造方法。
【請求項12】
前記金属シート
(B、B')は、Cu、Al、Ni及びFeのうち少なくとも1つを含む、請求項11に記載のプリント回路用基板の製造方法。
【請求項13】
前記セラミック基板は、Si3N4及びAlNのうち1つ以上を含む、請求項11に記載のプリント回路用基板の製造方法。
【請求項14】
前記熱間加圧によって前記蒸着層に含まれた物質と前記セラミック基板に含まれた物質が反応して接合層が形成され、
前記接合層は、少なくともTiNを含む、請求項12に記載のプリント回路用基板の製造方法。
【請求項15】
前記金属シート(B、B')に対するエッチング(Etching)ステップをさらに含む、請求項1に記載のプリント回路用基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、プリント回路用基板の製造方法に関するものである。より具体的には、本出願は、生産コストを減らすことができ、基板を形成する層間接合力を向上させることができる、プリント回路用基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、軽量化、及び高機能化の傾向に伴い、小型機器を中心としてビルドアッププリント回路用基板(Build‐up Printed Circuit Board)の応用分野が増加したことにより、多層プリント回路用基板に対する需要が増加している。
【0003】
多層プリント回路用基板は、平面的配線から立体的配線が可能であり、特に産業用電子分野では機能素子(例えば、IC(integrated circuit)またはLSI(large scale integration)等)の集積度の向上だけではなく、電子機器の小型化、軽量化、高機能化、構造的な電気的機能統合、組立時間の短縮、及びコスト削減等に有利な製品である。
【0004】
プリント回路用基板は、アルミナ(Al203)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)等のセラミック基板の互いに対向する両面に銅シート(Copper Sheet)のような金属シートを接合して製造することができる。
【0005】
プリント回路用基板の接合法は、次のように大きく3種に分けることができる。主にAgで構成されたペーストを利用する活性金属法(Active metal brazing、AMB)、セラミック基板の酸化層を利用して接合するダイレクト接合法(Direct bonding)、金属の蒸着及び拡散反応を利用する拡散接合法がある。
【0006】
このうち、活性金属法は、電力半導体モジュールの動作時にAgがエッジ(Edge)部分に拡散する問題があり、ダイレクト接合法は、酸化層によって熱伝導度が低下する問題がある。反面、拡散接合法は、固相反応によって数百ナノメートル厚さの薄い蒸着層を形成することができ、活性金属法に比べて使用されるAg等の金属の量が極めて少なく、結合力が優れるので熱衝撃特性が優れるプリント回路用基板の製造が可能であるという長所がある。
【0007】
一方、プリント回路用基板は、電圧印加により繰り返し的に熱に露出されたり周辺環境の変化によって熱衝撃条件に置かれることになる。この時、セラミック基板と金属シート(例えば、銅シート)の熱膨脹係数が異なるので熱応力が発生し、繰り返し的な熱衝撃により剥離が起きやすい。
【0008】
よって、生産コストを減らしながらも、強い層間接合力を有するプリント回路用基板を製造する技術が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願の一目的は、生産コストを減らすことができるプリント回路用基板の製造方法を提供することである。
【0010】
本出願の別の目的は、熱衝撃環境においても剥離が発生しないように強い層間接合力を有するプリント回路用基板を提供することである。
【0011】
本出願の前記目的及びその他の目的は、以下に詳細に説明される本出願によって全て解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、一側面で、本実施例は、互いに対向する上面と下面の面積がSAであるセラミック基板(a)を用意し、前記面積SAを有するセラミック基板の上面と下面の上にそれぞれ蒸着層を形成し、互いに対向する上面と下面の上に上部蒸着層及び下部蒸着層がそれぞれ形成されたセラミック基板(A)を製造する第1ステップと、前記面積SAより1.5倍以上大きい面積SBの一面を有する上部金属シート(B)及び下部金属シート(B')を用意する第2ステップと、前記上部金属シート(B)と下部金属シート(B')の互いに対向する面積SBの一面の間で、2つ以上のセラミック基板(A)が平面に平行に並んで位置するように前記金属シート(B、B')と前記2つ以上のセラミック基板(A)を配置する第3ステップと、前記上部及び下部金属シート(B、B')を熱間加圧して、上部及び下部蒸着層を媒介として前記金属シート(B、B')とセラミック基板(A)を接合する第4ステップと、を含む、プリント回路用基板の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本出願によれば、セラミック基板と金属シートの間の接合力が優れるプリント回路用基板を製造することができ、その製造コストを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本出願の一実施例に係るプリント回路用基板の製造過程に関連して、セラミック基板100、蒸着層200及び金属シート300が概略的に図示された断面図である。
【
図2】
図2は、従来技術と本出願で金属シートとセラミック基板の配置関係を概略的に図示したものである。
【
図3】
図3は、本出願の一実施例に係るセラミック基板100、接合層200a及び金属シート300を含むプリント回路用基板の断面図である。
【
図4】
図4は、本出願の一実施例によって形成されたセラミック基板及び蒸着層の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージである。
【
図5】
図5は、本出願の一実施例によって形成されたセラミック基板、接合層及び金属シートの断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本出願の具体例に関する添付図面を参照して、本出願を詳しく説明する。
【0016】
明確な説明のために、説明と関係のない部分は図面で省略され、明細書全体にわたり同一または類似する構成要素に対しては同じ参照符号を使用した。また、図面に示された各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜を図って任意に拡大または縮小して図示されたので、本出願の構成の大きさと厚さが必ず図示されたものに限定されるものではない。
【0017】
本明細書で、構成間の位置に関して使用される「上」という用語は「上」または「上部」に対応する意味として使用され、特別に特定して記載しない限り、当該の位置を有する構成が他の構成に直接接してその上に存在する場合を意味することができ、またはこれらの間に他の構成が存在する場合を意味することもできる。
【0018】
本明細書で、「面積」は、特別に特定して定義しない限り、各構成をその表面の法線方向と平行する方向の上部または下部から観察する時、当該の構成が視認される面積、例えば正射影面積を意味することができる。よって、面積が言及される対象または面積比較の対象となる構成が有する凹凸等による実際面積の増減は考慮されない。
【0019】
本明細書の全体において、「含む」または「有する」の用語は、特別に特定して記載しない限り、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0020】
本明細書で、「ステップ」と「工程」の用語は、同じ意味として混用することができる。
【0021】
本出願に関する一例で、本出願は、プリント回路用基板の製造方法に関するものである。前記方法は、所定の構成が積層された積層体を製造し、これを熱間加圧する方式で行うことができる。
【0022】
例えば、
図1に図示されたように、前記製造方法は、セラミック基板100を用意し、前記セラミック基板100の互いに対向する2つの面上に蒸着層200を形成し、続いて前記蒸着層200の上に金属シート300を位置させた後、前記金属シートの外側で前記金属シートを熱間加圧(hot pressing)して前記セラミック基板100と前記金属シート300を接合する方式で行うことができる。
【0023】
前記製造過程に関連した本出願の具体例によれば、セラミック基板と金属シートの面積及び/またはこれらの接合前の積層位置が調節され、それにより生産コストが節減される。また、本出願の具体例によれば、蒸着成分及びその含量を調節して、セラミック基板と金属シートの間に優れる接合力を提供することができる。
【0024】
具体的には、前記方法は、
互いに対向する上面と下面の面積がSAであるセラミック基板(a)を用意し、前記面積SAを有するセラミック基板の上面と下面の上にそれぞれ蒸着層を形成し、互いに対向する上面と下面の上に上部蒸着層及び下部蒸着層がそれぞれ形成されたセラミック基板(A)を製造する第1ステップと、
前記面積SAより1.5倍以上大きい面積SBの一面を有する上部金属シート(B)及び下部金属シート(B')を用意する第2ステップと、
前記上部金属シート(B)と下部金属シート(B')の互いに対向する面積SBの一面の間で、2つ以上のセラミック基板(A)が平面に平行に並んで位置するように前記金属シート(B、B')と前記2つ以上のセラミック基板(A)を配置する第3ステップと、
前記上部及び下部金属シート(B、B')を熱間加圧して、上部及び下部蒸着層を媒介として前記金属シート(B、B')とセラミック基板(A)を接合する第4ステップと、を含む。
【0025】
以下では、各ステップ及び各ステップで使用される構成をより詳しく説明する。
【0026】
前記第1ステップに関連して言及されたセラミック基板(a)は、プリント回路用基板で一種の放熱性能を提供できる基板である。放熱性能を提供できれば、セラミック基板に使用される成分の種類は、特に制限されない。
【0027】
一例示で、前記セラミック基板(a)は、Si3N4、AlN及びAl2O3のうち少なくとも1つを含むことができる。具体的には、前記セラミック基板(a)は、Si3N4及びAlNから選択される1つ以上を含むことができる。
【0028】
一例示で、前記セラミック基板(a)は、少なくともSi3N4を含むことができる。Si3N4の曲げる強さ(flexural strength)は、一般的に600~1,400MPaの範囲であるが、これはセラミックのうち一番優れるレベルである。また、Si3N4は、約3.2×10-6/Kの低い熱膨脹係数を有するので高温活用が可能な素材である。その他に、Si3N4は、約3.2g/cm3の密度、30~178W/(m・K)の範囲の熱伝導度、及び800~1000K範囲の高い熱衝撃抵抗性(Thermal shock resistance)を有する。このような特性のSi3N4は効果的な放熱材料である。よって、Si3N4を含むセラミック基板を利用して製造されたプリント回路用基板は、放熱性能が優れる回路基板として機能することができる。
【0029】
前記セラミック基板(a)を製造する前記基板製造する工程や方法は、特に制限されない。
【0030】
例えば、前記セラミック基板(a)は、セラミック粉末を含んだスラリー用意工程、テープキャスティング(Tape casting)工程、打ち抜き(Punching)工程、脱脂(Burnout)工程、焼結(Sintering)工程等を経て製造される。
【0031】
前記スラリー用意工程は、粉末に有機溶媒、焼結助剤、可塑剤及び分散剤を混合してスラリーを製造する工程であってもよい。この時、前記セラミック粉末は、Si3N4粉末、AlN粉末、及びAl2O3粉末のうち少なくとも1つ以上を含むことができる。前記粉末は、ボールミル(Ball Mill)等を利用して製造することができるが、この時、粉末の平均粒径は0.8μm以下であることが好ましい。この時、平均粒径とは、使用されるn個の粒子の粒径大きさ分布において、中央値(Median)である粒径の大きさを意味する。例えば、100個の粒子の大きさを、大きさが大きいものから小さいものの順に並べた時、50番目の大きさを有する粒子の大きさを平均粒径ということができる。
【0032】
一例示で、Si3N4粉末が使用される場合、Si3N4粉末は、β‐Si3N4及びα‐Si3N4のうち少なくとも1つを含むことができる。Si3N4粉末としてβ‐Si3N4とα‐Si3N4を混合して使用する場合、混合する成分間の含量(例えば、重量)比は、特に限定されるものではない。
【0033】
前記有機溶媒の種類は、特に制限されないが、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、エタノール、ブタノール及びメタノールからなる群から選択される1種以上を用いることができる。
【0034】
前記焼結助剤の種類も特に制限されないが、例えば、希土類元素酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びこれらの組合せを用いることができる。
【0035】
前記可塑剤の種類も特に制限されない。例えば、フタル酸ジ‐2‐エチルヘキシル、フタル酸ジ‐ノルマル‐ブチル(Di-n-butyl phthalate)、ブチルフタリルブチルグリコレート、ポリエチレングリコール及びフタル酸ジオクチルからなる群から選択される1種以上を可塑剤として用いることができる。
【0036】
前記分散剤も特に制限されず、例えば、ポリエステル系の分散剤、ポリアクリレート系の分散剤、ポリウレタン系の分散剤及びポリエーテル系の分散剤からなる群から選択される1種以上を用いることができる。
【0037】
前記テープキャスティング(Tape casting)工程は、前記スラリーをポリマーフィルム上に一定厚さで塗布した後乾燥チャンバに通過させて、例えば、Si3N4テープのようなセラミックテープを製造する工程であってもよい。
【0038】
前記打ち抜き(Punching)工程は、前記セラミックテープを圧搾(Pressing)及び切削(Cutting)して、例えば、Si3N4グリーンシート(Green sheet)のようなセラミックグリーンシートを製造する工程であってもよい。
【0039】
前記脱脂(Burnout)工程は、前記グリーンシート(例えば、Si3N4グリーンシート)を熱処理して行われる工程であってもよい。具体的には、脱脂工程は、大気または窒素雰囲気中で熱処理によって行うことができる。具体的な熱処理条件は、特に制限されないが、例えば、400~800℃の範囲の温度で6~18時間前記熱処理を行うことができる。
【0040】
前記焼結(Sintering)工程は、前記脱脂されたグリーンシート(例えば、Si3N4グリーンシート)を焼結する工程であってもよい。前記焼結は、ガス圧焼結法(Gas pressure sintering、GPS)によって行うことができる。具体的なガス圧焼結の条件は、特に制限されないが、例えば、1600~2000℃の範囲の温度、窒素雰囲気及び8~12気圧(atm)条件が形成されたガス圧焼結炉を焼結工程で用いることができる。
【0041】
前記焼結以後、研削等を含む後加工を経てSi3N4、AlN及びAl2O3のうち1つ以上を含むセラミック基板(a)が製造される。
【0042】
上述したような過程を経て製造されたセラミック基板(a)は、互いに対向する上面と下面の面積がSAである基板であってもよい。この時、上面と下面という表現は、互いに対向する2つ面の相対的な位置を説明するための用語であり、絶対的な位置を意味するものではない。
【0043】
セラミック基板や、これを形成する上面と下面の形態は、特に制限されない。例えば、前記セラミック基板は、板状のプレートであってもよく、その上面と下面は多角形(例えば、四角形)または円形の形状を有することができる。
【0044】
一例示で、前記セラミック基板(a)の互いに対向する上面と下面の形状(または、これら面の面積SAが視認される形状は四角形形状を有することができる。特に制限されないが、四角形形状の面積SAを有するセラミック基板(a)の大きさは、例えば横が150~220mmであり、縦が100~160mmであってもよい。
【0045】
また、特に制限されないが、前記セラミック基板の厚さは0.05~2.0mmの範囲を有することができる。
【0046】
本出願の具体例によれば、セラミック基板(a)を形成するセラミック基板(a)の互いに対向する上面と下面の上には、それぞれ蒸着層が形成される。上述したように、蒸着層が形成される前記互いに対向する上面と下面は面積SAを有する。
【0047】
前記蒸着層は、以下に説明される熱間加圧が加えられた後に金属シートとセラミック基板を接合させることができる。
【0048】
前記蒸着層を形成する蒸着(工程)は、特に制限されない。例えば、物理気相蒸着(Physical vapor deposition、PVD)のためのスパッタリング(Sputtering)または化学気相蒸着(Chemical vapor deposition、CVD)のような公知の蒸着方式を用いることができる。
【0049】
特に制限されないが、前記蒸着層がセラミック基板上で形成される面積は、前記SA面積の50%~100%の大きさを有することができる。例えば、前記セラミック基板(a)の上面と下面それぞれに形成される蒸着層は、前記上面及び下面と同一面積大きさを有することができる。
【0050】
一例示で、前記セラミック基板(a)の上面と下面それぞれに形成される蒸着層は、前記上面及び下面と同一面積形状を有することができる。この時、面積形状が同一であるということは、面積と形状が全て同一な合同の場合だけではなく、面積の大きさは違っても面積の幾何的形状が互いに似ている場合(相似形)を含む。
【0051】
一例示で、前記セラミック基板(a)の上面と下面それぞれに形成される蒸着層は、それが形成される前記上面及び下面と同一面積大きさ及び面積形状を有することができる。
【0052】
前記蒸着層形成に使用される成分の種類は、特に制限されない。例えば、前記蒸着層は、Ag及びTiのうち1つ以上を含むことができる。
【0053】
一例示で、前記蒸着層は、Ag及びTiを含むことができる。具体的には、前記蒸着層で前記Agの単位面積当たりの蒸着量は、3.50~6.10g/m2であり、前記Tiの単位面積当たりの蒸着量は、0.61~1.30g/m2であってもよい。この時、「単位面積当たりの蒸着量」とは、蒸着によって形成された蒸着層の面積(m2)に対する蒸着成分(TiまたはAg)の含量(g)を意味することができる。上記のように蒸着層の成分と蒸着量を調節する場合、接合強度を改善することができる。
【0054】
一例示で、前記蒸着層に含まれたTiの単位面積当たりの蒸着量は、0.61~1.30g/m2の範囲を有することができる。金属シートとセラミック基板の間に、より強い接合力を提供する側面で、前記Tiの単位面積当たりの蒸着量は、1.02~1.30g/m2の範囲であることが好ましく、具体的には1.04~1.20g/m2の範囲であることがより好ましい。
【0055】
一例示で、前記蒸着層に含まれたAgの単位面積当たりの蒸着量は、3.50~6.10g/m2の範囲を有することができる。金属シートとセラミック基板の間に、より強い接合力を提供する側面で、前記Agの単位面積当たりの蒸着量は、4.00~4.60g/m2の範囲であることが好ましい。
【0056】
上記のように互いに対向するセラミック基板(a)の上面と下面の上に蒸着層がそれぞれ形成された結果として、互いに対向する上面と下面の上には、それぞれ上部蒸着層及び下部蒸着層が形成されたセラミック基板(A)が製造される。この時、前記上部蒸着層は、前記上面上に形成された蒸着層であり、前記下部蒸着層は、前記下面の上に形成された蒸着層である。
【0057】
以下の第3及び第4ステップに関連して説明されるように、前記上部蒸着層は上部金属シート(B)と対向して配置され、前記下部蒸着層は下部金属シート(B')と対向して配置され、後の熱間加圧を経てこれら蒸着層は金属シート(B、B')とセラミック基板(A)を接合させる媒介体として機能することができる。
【0058】
一例示で、前記上部蒸着層及び下部蒸着層のうち1つ以上は、互いに成分が異なる第1蒸着層及び第2蒸着層を含むことができる。具体的には、前記第1蒸着層はTiを含むことができ、前記第2蒸着層はAgを含むことができる。この時、第1蒸着層は第2蒸着層よりもセラミック基板(a)に近接した層を意味する。即ち、前記第1蒸着層は、前記セラミック基板の上面及び下面の上に形成された層を意味し、前記第2蒸着層は、前記第1蒸着層の上に形成された層を意味することができる。例えば、
図1のように、セラミック基板100の上に第1蒸着層210が形成され、前記第1蒸着層の上に第2蒸着層220が形成される。
【0059】
前記第1蒸着層及び第2蒸着層に関連して、前記方法の蒸着(工程)は、セラミック基板(a)の上面と下面の上にそれぞれTiを含む第1蒸着層を形成(蒸着)するステップと、第1層の上にAgを含む第2蒸着層を形成(蒸着)するステップを含むことができる。それにより、
図1のように、第2蒸着層220、第1蒸着層210、セラミック基板100、第1蒸着層210及び第2蒸着層220が順次位置した積層体(即ち、セラミック基板(A))が製造される。
【0060】
一例示で、前記第1蒸着層は、前記セラミック基板の上面と下面の上に直接形成された蒸着層を意味することができる。
【0061】
一例示で、前記第2蒸着層は、前記第1層の上に直接形成された蒸着層を意味することができる。
【0062】
特に制限されないが、前記第1蒸着層及び第2蒸着層が前記セラミック基板上で形成される面積は、前記SA面積の50%~100%の大きさを有することができる。
【0063】
一例示で、前記第1蒸着層は、前記上面及び下面と同一面積形状を有することができる。
【0064】
一例示で、前記第1蒸着層は、前記上面及び下面と同一面積大きさ及び面積形状を有することができる。
【0065】
一例示で、前記第2蒸着層は、前記第1蒸着層と同一面積形状を有することができる。
【0066】
一例示で、前記第2蒸着層は、前記第1蒸着層と同一面積大きさ及び面積形状を有することができる。
【0067】
一例示で、前記第1蒸着層に含まれたTiの単位面積当たりの蒸着量は、0.61~1.30g/m2の範囲を有することができる。具体的には、前記Tiの単位面積当たりの蒸着量が1.02~1.30g/m2の範囲を有することができ、より具体的には1.04~1.20g/m2の範囲であることが、金属シートとセラミック基板の間に、より強い接合力を提供する側面で好ましい。
【0068】
一例示で、前記第2蒸着層に含まれたAgの単位面積当たりの蒸着量は、3.50~6.10g/m2の範囲を有することができる。具体的には、前記Agの単位面積当たりの蒸着量が4.00~4.60g/m2の範囲であることが、金属シートとセラミック基板の間に、より強い接合力を提供する側面で好ましい。
【0069】
前記第2ステップは、上部及び下部蒸着層の上に位置することになる上部金属シート(B)及び下部金属シート(B')を用意するステップである。例えば、
図1のように、用意された2つの金属シート300は各蒸着層200の上に位置することになる。
【0070】
第3ステップ及び第4ステップの行い方式を説明するために、セラミック基板(A)を製造する第1ステップ以後に金属シート(B)を用意する第2ステップが行われるものと記載したが、第1ステップと第2ステップの順序を変更することは、当業者がなしえる自明な変形である。
【0071】
本出願の具体例で使用される金属シート(B、B')は、所定面積大きさの一面を有する。具体的には、前記金属シート(B、B')の一面は、前記セラミック基板の上面及び下面面積SAより大きい面積SBを有する。より具体的には、前記金属シート(B)の一面が有する面積SBは、前記面積SAより1.5倍以上大きい。以下に説明されるように、面積SBを有する金属シートは、2つ以上のセラミック基板(A)が平面に平行に並ぶようにSB面積の一面上に配置されるようにし、その結果、生産コストを減らすことができる。
【0072】
一例示で、前記面積(SB)は、前記面積(SA)の6.0倍以下、5.0倍以下、4.0倍以下、3.0倍または2.5倍以下を有することができる。より具体的には、前記面積(SB)は、前記面積(SA)の1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上または2.0倍以上を有することができ、そして2.4倍以下、2.3倍以下、2.2倍以下、または2.1倍以下を有することができる。前記面積(SB)が大き過ぎる場合には、エッチング液を洗い流し難く、基板上に溜まったり(エッチング液の残留)、エッチングが不均一となる問題があることができる。
【0073】
一例示で、前記金属シートの形状は、前記セラミック基板の形状と同一であってもよい。
【0074】
本出願の具体例で、面積SAである前記セラミック基板の上面と下面が、そして面積SBである前記金属シート(B、B')の一面が四角形形状を有する場合、前記金属シート(B、B')の大きさは、例えば横が250~300mmであり、縦が160~210mmであってもよい。
【0075】
また、特に制限されないが、前記金属シート(B、B')の厚さは0.05~3.0mmの範囲を有することができる。
【0076】
前記金属シート(B)に含まれる金属の種類は、特に制限されない。例えば、前記金属シート(B)は、Cu、Al、Ni及びFeから選択される1以上を含むことができる。
【0077】
前記第3ステップは、2つ以上の前記セラミック基板(A)が平面に平行に並んで金属シート上に位置するように、前記セラミック基板(A)と金属シート(B、B')を配置するステップである。本出願の具体例によれば、2つ以上使用されるセラミック基板(A)の大きさと形状は同一であってもよい。
【0078】
具体的には、第3ステップは、前記上部金属シート(B)と下部金属シート(B')の互いに対向する面積SBの一面の間で、2つ以上のセラミック基板(A)が平面に平行に並んで位置するように前記金属シート(B、B')と前記2つ以上のセラミック基板(A)を配置するステップである。
【0079】
前記3ステップに関連して、2つ以上のセラミック基板(A)が平面に平行に並んで位置するということは、金属シート(B、B')の上に位置することになる2つ以上のセラミック基板(A)が互いに重ならず、即ち積層されないことを意味する。よって、第3ステップを通じて金属シート上に位置することになった2つ以上のセラミック基板(A)は互いに重なる面積を持たず、これらセラミック基板(A)の間の重畳面積は0(zero)である。
【0080】
前記3ステップの配置により、前記上部金属シート(B)は、前記面積SBを有する上部金属シート(B)の一面が(2つ以上であるセラミック基板の全ての)上部蒸着層と対向するように位置することになる。また、前記下部金属シート(B')は、前記面積SBを有する下部金属シート(B')の一面が(2つ以上であるセラミック基板の全ての)下部蒸着層と対向するように位置することになる。そして続く第4ステップの熱間加圧は、金属シート(B、B')の間で平面に平行に並ぶように位置する2つ以上のセラミック基板(A)を(上部及び下部蒸着層を媒介として)金属シート(B、B')と接合させる。例えば、上部金属シート(B)は、上部蒸着層を媒介として2つ以上であるセラミック基板の全ての上面と接合され、下部金属シート(B')は、下部蒸着層を媒介として2つ以上であるセラミック基板の全ての下面に接合される。
【0081】
一例示で、前記上部蒸着層は、前記金属シートの面積SBである一面と直接接するように、または直接対向するように配置される。
【0082】
一例示で、前記下部蒸着層は、前記金属シートの面積SBである一面と直接接するように、または直接対向するように配置される。
【0083】
一例示で、前記金属シート(B、B')及びセラミック基板(A)の配置に関連して、前記3ステップは、前記面積がSBである金属シートの一面と前記2つ以上であるセラミック基板(A)の間の重畳面積が、上部金属シート(B)と下部金属シート(B')の間に位置するセラミック基板(A)の総面積(ST=n×SA、nは2以上の自然数として、金属シート(B、B')の間に位置するセラミック基板の個数を意味する)の70%以上となるように行うことができる。例えば、前記重畳面積は、上部金属シート(B)と下部金属シート(B')の間に位置するセラミック基板(A)の総面積の75%以上、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上を有することができる。
【0084】
上記のように配置された積層体に対して後述する熱間加圧が行われると、上部金属シート(B)及び下部金属シート(B')の間で同一平面上で平行に並んで位置した2つ以上のセラミック基板(A)が蒸着層またはその由来構成を媒介として上部金属シート(B)及び下部金属シート(B')に接合される。
【0085】
従来技術では、同一レベルの面積を有するセラミック基板と金属シートが接合されるのが一般的だった。しかし、本出願では、セラミック基板の面積(S
A)よりその面積(S
B)が最小1.5倍以上である金属シートが使用される(
図2参照)。プリント回路用基板製造ではエッチングが行われるが、上記のような配置により1回エッチング工程の対象となるセラミック基板が2つ以上になると、有効面積が増加してより多くのエッチングピースを生産でき、同時に捨てられる部分が減少する。そして、従来技術では、エッチング工程のためのラインにエッチング対象基板を1枚ずつ投入したが、上記のように配置する場合、従来技術に比べてエッチングラインに2枚ずつ投入する効果があるので、工程時間が短縮され、関連コスト(例えば、人件費等)が減少する効果がある。また、プリント過程では、エッチングされてはいけない部分に保護フィルムを付着する工程がさらに行われるが、上述したように2枚の面積にフィルムを付着する効果があるので、関連工程に対しても時間を短縮しコスト(例えば、人件費等)を節減する効果がある。このように、本出願によれば生産コストを節減することができる。
【0086】
一例示で、前記金属シート(B、B')及びセラミック基板(A)の配置に関連して、前記少なくとも2つのセラミック基板(A)は、金属シート(B、B')のエッジから所定間隔離隔した状態で金属シートの一面上に位置するように配置される。金属シートのエッジから離隔する場合、工程中にジグによって挟まれる部分を確保でき、2つ以上のセラミック基板の間の距離が近くなるのでデッドゾーン(dead zone)が減り、原材料の浪費を防ぐことができる。
【0087】
本出願の具体例によれば、前記3ステップを経て得られた非接合積層体、即ち金属シート(B)/(平面に平行に並んで位置する)2つ以上のセラミック基板(A)/金属シート(B')の構造を有する非接合積層体を1セットのマスターカード(master card:MC)と称することができる。
【0088】
一例示で、前記方法は、前記マスターカードのスタック(stack)を製造するステップをさらに含むことができる。この時、各1セットの間には、金属シート300の間凝着が発生しないように、異なる材料で形成された凝着防止用シート(sheet)等が挿入されてもよい。上記のような凝着防止用シートは、例えばグラファイトを含むことができる。特に制限されないが、前記スタックの形成には、公知の接合技術または接合物質を用いることができる。
【0089】
前記第4ステップは、蒸着層の上に位置した上部及び下部金属シート(B、B')を熱間加圧(hot pressing)して、セラミック基板(A)と上部及び下部金属シート(B、B')を接合するステップである。
【0090】
前記第4ステップは、例えば450~1,300℃の温度で、1~25MPaの圧力で、金属シート(B、B')をセラミック基板(A)が位置した方向に熱間加圧(Hot pressing)して行うことができる。特に制限されないが、前記熱間加圧は、例えば約10-1~10-5torrの真空雰囲気で行われてもよい。
【0091】
一例示で、前記接合時の温度の下限は、500℃以上、600℃以上、700℃以上または800℃以上であってもよい。そして、その上限は、例えば1050℃以下、1000℃以下、950℃以下または900℃以下であってもよい。
【0092】
一例示で、前記接合時の圧力の下限は、例えば5Mpa以上または10Mpa以上であってもよい。そして、その上限は、例えば20Mpa以下または15Mpa以下であってもよい。
【0093】
前記熱間加圧により金属シート(B、B')とセラミック基板(A)は、蒸着層(または蒸着層由来の成分を含む層)を媒介として接合されていてもよい。例えば、
図3は、本出願の一実施例に係る接合ステップを経て得られた基板または積層体の断面の様子を示した概略図である。
図3に図示されたように、接合以後得られた積層体は、セラミック基板100の上部面と下部面のそれぞれに接合層200a及び金属シート300が順に形成された構造を有する。この時、前記接合層200aは、接合ステップを経た蒸着層または蒸着層由来の層である。
【0094】
図1及び
図3~
図5を参照して説明すると、熱間加圧によりセラミック基板100、蒸着層200及び金属シート300のそれぞれに含まれた物質間の拡散が行われる。例えば、第1蒸着層210にTiが含まれ、セラミック基板(a)100にSi
3N
4が含まれる場合、TiとSi
3N
4の間には、下記反応式1のような反応が起きる。
【0095】
[反応式1]
4Ti+Si3N4->3Si+4TiN
【0096】
即ち、前記熱間加圧によって、蒸着層200に含まれた物質とセラミック基板100に含まれた物質が反応して接合層200aを形成することができ、接合層200aはTiNを含むことができる。
【0097】
本実施例に係る接合層200aはTiNを含む層として、セラミック基板100と金属シート300の間の強い接合媒介層として作用することができる。即ち、拡散接合法により接合層200aが形成されることで、セラミック基板100と金属シート300の接合が行われる。
【0098】
上述したように、前記蒸着ステップにおいて第2蒸着層220に含まれたAgは単位面積当たりの蒸着量が3.50~6.10g/m2の範囲を有することができる。より具体的には、第2蒸着層220に含まれたAgの単位面積当たりの蒸着量は、例えば4.00~4.60g/m2の範囲を有することができる。互いに異なる材料を含む層間の接合が行われる場合、相対的に強度が弱い材料を含む層に応力伝達が発生し、層間脱着が容易に発生する。よって、相対的に強度が弱い材料を含む層の強度を増加させることは、互いに異なる材料を含む層間接合において接合力を向上させることにより効果的ある。例えば、第2蒸着層220に含まれたAgは、前記熱間加圧時にCuを含む金属シート300の方に拡散して界面における弱い金属シート300の強度を補うことができる。上記のような原理で、第2蒸着層220に含まれたAgは、セラミック基板100と金属シート300の間の接合力を向上させることができる。また、第2蒸着層220に含まれたAgは、第1蒸着層210に含まれたTi及び金属シート300に含まれたCuと一緒にCu‐Ti‐Agの3元系からなる液相を形成して濡れ性を向上させ、反応層形成の促進をサポートすることができる。
【0099】
第2蒸着層220に含まれたAgの単位面積当たりの蒸着量が前記範囲未満である場合、金属シート300の強度を充分に増加させることができず、セラミック基板100と金属シート300の間の接合力が悪くなる。そして、第2蒸着層220に含まれたAgの単位面積当たりの蒸着量が前記範囲を超過する場合、必要以上のAgが蒸着されて拡散されないAg残存物を形成するので、却ってセラミック基板100と金属シート300の間の接合力が減少する問題がある。
【0100】
前記第1蒸着層210に含まれたTiの単位面積当たりの蒸着量は、0.61~1.30g/m2の範囲であり、具体的には、例えば1.02~1.30g/m2の範囲であることが好ましく、1.04~1.20g/m2の範囲であることがより好ましい。Tiの単位面積当たりの蒸着量は、接合層200aの厚さに関与し、セラミック基板100と金属シート300の間の接合力に影響を及ぼす。
【0101】
第1蒸着層210に含まれたTiの単位面積当たりの蒸着量が前記範囲未満である場合、接合層200aの厚さが不十分となり、セラミック基板100と金属シート300の間の接合力が悪くなる。例えば、以下の比較例のようにセラミック基板100と金属シート300の間接合力が9N/mm未満となる。そして、第1蒸着層210に含まれたTiの単位面積当たりの蒸着量が前記範囲を超過する場合、蒸着量が飽和値に到達して接合力の増加程度が小さく、原材料が浪費される問題もある。
【0102】
上記のように、本出願によるプリント回路用基板の製造方法は、Agの単位面積当たりの蒸着量を3.50~6.10g/m2の範囲に調節し、Tiの単位面積当たりの蒸着量を0.61~1.30g/m2の範囲に調節することで、層間接合力が優れるプリント回路用基板を製造することができる。それにより、上記のように製造されたプリント回路用基板は、繰り返し的な熱衝撃環境に露出されても、剥離が発生しないか剥離発生が大幅に抑制される。
【0103】
一例示で、前記方法は、前記金属シート(B、B')に対するエッチング(Etching)ステップをさらに含むことができる。具体的には、前記接合ステップ以後、接合されたセラミック基板100及び/または金属シート300に対してプリント(Resist printing)工程、エッチング(Etching)工程、メッキ(Ni Plating)工程等を経てプリント回路用基板が製造される。
【0104】
図2で、赤色矢印は、熱間加圧の方向を意味し、MC(master card)は、金属シート/セラミック基板/金属シート形態の積層体を意味する。セラミック基板2つが平面上に平行に並んで配列された後接合される本願発明は従来技術に比べて生産量が高く、エッチング単価は低い。
【0105】
図4は、蒸着ステップ以後及び接合ステップ以前の断面イメージである。
図4から、セラミック基板100の上にTiを含む第1層210とAgを含む第2層220が形成されたことを確認することができる。
【0106】
図5は、接合ステップ以後の断面写真である。
図5から、拡散接合法による接合ステップ以後には接合層200aが形成され、セラミック基板100と金属シート300が接合されたことを確認することができる。
【0107】
以下、発明の具体的な実施例により、発明の作用、効果をより具体的に説明することにする。ただし、これは発明の例示として提示されたものとして、これにより発明の権利範囲がいかなる意味にも限定されるものではない。
【0108】
製造例(セラミック基板(a)の製造)
【0109】
ボールミル(BallMill)によって平均粒径が0.8μm以下のSi3N4粉末を製造する。Si3N4粉末に有機溶媒(例えば、トルエン、メタノール、エタノール)、焼結助剤(例えば、Y2O3、MgO)、可塑剤(例えば、Dioctyl Phthalate(DOP)、Polyethylen glycol(PEG))及び分散剤(例えば、BYK‐111)を添加してスラリーを製造した後、乾燥チャンバに通過させてSi3N4テープを製造する。Si3N4テープを圧搾(Pressing)及び切削(Cutting)してSi3N4グリーンシート(Green sheet)を製造し、600℃で12時間熱処理して脱脂工程を実施した。その後、ガス圧焼結法により窒素雰囲気下で1850℃、1MPaの条件で焼結して所定大きさ(横190mm×縦138mm×厚さ0.32mm)のセラミック基板(a)(窒化ケイ素Si3N4基板)を製造した。
【0110】
実験例1:生産コスト節減確認
【0111】
製造例のセラミック基板の対向する上面と下面に順次Ti(第1蒸着層)とAg(第2蒸着層)を蒸着した。この時、Tiは、約1.0g/m2蒸着され、Agは、約6.08g/m2蒸着された。上記のように製造されて第1蒸着層と第2蒸着層が互いに対向する上面と下面の両方ともに蒸着されたセラミック基板(A)を2枚用意した。
【0112】
また、270mm×190mm×0.3mm大きさの銅シート(Cusheet)を2枚用意した。
【0113】
前記銅シート1枚を置き、セラミック基板(A)2枚の間に隙間が最大限発生しないように隣接して位置させて銅シートの一面上にセラミック基板(A)2枚を配置し(この時、2つ以上のセラミック基板(A)は銅シートの上で平面に平行に並んで位置し、各セラミック基板(A)の蒸着層(Ag蒸着層)が銅シートと接して位置するように配置される)、その上に残りの1枚の銅シートを同じ方式で位置させて銅シート/(平面に平行に並んで位置する)セラミック基板(A)2枚/銅シート形態の非接合積層体を製造した。この時、2枚のセラミック基板と銅シート間の重畳面積は約90%とした。
【0114】
以後、ホットプレス(hot press)装備で前記積層体を約10-4torrの雰囲気及び980℃の温度で15MPaで加圧しながら処理した。その結果、銅シートと窒化ケイ素基板が互いに接合された銅シート/(平面に平行に並んで位置する)セラミック基板(A)2枚/銅シートのサンプルが得られた。
【0115】
前記サンプルをこれを利用して銅回路を製造するために銅をエッチングした。具体的には、積層体の外側両面にドライフィルム(dryfilm)を付着した後、フィルムにUVを照射して銅がエッチングされてはいけない部分(回路部分)を残して、回路部分以外の残りの部分のフィルムは剥離した。これをエッチングラインに投入して銅エッチングをした。
【0116】
その結果、セラミック基板が1つずつ接合された比較サンプル(銅シート/セラミック基板(A)1枚/銅シート)を2つエッチングする時よりも、本出願のように製造されたサンプル(銅シート/(平面に平行に並んで位置する)セラミック基板(A)2枚/銅シート)をエッチングすることが、同じ個数の回路の制作に要する時間をほぼ半分ほど減らすことができ、同じエッチング工程時間に、より多くの回路基板ピースを生産(例えば、約30%以上生産量増加)できることを確認した。このように、本出願によればコストの節減効果が大きい。
【0117】
実験例2:接合強度の評価
【0118】
ASTM D6682に準じて、以下の実施例1~6及び比較例1~6の試験片に対して接合力(N/mm)を測定した。具体的には、銅シートと窒化ケイ素基板が互いに接合された銅シート/窒化ケイ素基板/銅シート構造のサンプルをエッチングして、幅5mm、長さ100mmの銅ストリップ(strip)がセラミック基板と接合されたサンプルを用意した。万能試験機(Ametek社製のLS5)のグリップ(grip)でCuストリップ(strip)をグリップできるように、試験前にCuストリップ(strip)エッジの約10mmを手動で分離した。万能試験機に試験片を固定してCuストリップ(strip)をグリップ(grip)でグリップし、50mm/minの速度で分離しながらこれに対する応力を測定して接合強度を計算した。
【0119】
その結果は、以下の表1~3のようである。
【0120】
実施例1(Ti蒸着量1.076g/m2、Ag蒸着量4.005g/m2)
【0121】
製造例の前記セラミック基板に対してスパッタリング(Sputtering)方法により70秒間0.0282gのTiを蒸着して第1蒸着層を形成した。そして、前記第1層の上に30秒間0.105gのAgを蒸着して第2蒸着層を形成した。この時、第1蒸着層と第2蒸着層の形成面積は、前記セラミック基板(a)のそれ(横190mm×縦138mm)と同一に調節した。ここで、Tiの単位面積当たりの蒸着量は1.076g/m2であり、Agの単位面積当たりの蒸着量は4.005g/m2である。
【0122】
そして、上記のように製造されたセラミック基板(A)2枚と銅シート(横270mm×縦185mm×厚さ0.3mm)2枚を用意した。互いに隙間が最大限発生しないようにセラミック基板(A)2枚を隣接するように位置させて用意された銅シート1枚の一面上にセラミック基板(A)2枚を配置し(この時、2つのセラミック基板(A)は銅シートの上で平面に平行に並んで位置し、各セラミック基板(A)の蒸着層(Agを含む第2蒸着層)が銅シートと接して位置するように配置される)、その上に残りの1枚の銅シートを同じ方式で位置させて銅シート/(平面に平行に並んで位置する)セラミック基板(A)2枚/銅シート形態の非接合積層体を製造した。この時、2枚のセラミック基板と銅シート間の重畳面積は約95%とした。
【0123】
以後、前記積層体を約10-4torrの雰囲気で980℃の温度及び15MPaの圧力で熱間加圧した。
【0124】
前記一連の工程によりCuの金属シート、TiNの接合層及びSi3N4を含む試験片を製造した。
【0125】
実施例2(Ti蒸着量1.194g/m2、Ag蒸着量4.005g/m2)
【0126】
0.0313gのTiを蒸着して第1層を形成したことを除いて、実施例1と同様な方法でCuの金属シート、TiNの接合層及びSi3N4のセラミック基板を含む試験片を製造した。この時、Tiの単位面積当たりの蒸着量は1.194g/m2であり、Agの単位面積当たりの蒸着量は4.005g/m2である。
【0127】
実施例3(Ti蒸着量1.030g/m2、Ag蒸着量5.339g/m2)
【0128】
0.0270gのTiを蒸着して第1層を形成し、0.1400gのAgを蒸着して第2層を形成したことを除いて、実施例1と同様な方法でCuの金属シート、TiNの接合層及びSi3N4のセラミック基板を含む試験片を製造した。この時、Tiの単位面積当たりの蒸着量は1.030g/m2であり、Agの単位面積当たりの蒸着量は5.339g/m2である。
【0129】
実施例4(Ti蒸着量1.220g/m2、Ag蒸着量5.339g/m2)
【0130】
0.0320gのTiを蒸着して第1層を形成し、0.1400gのAgを蒸着して第2層を形成したことを除いて、実施例1と同様な方法でCuの金属シート、TiNの接合層及びSi3N4のセラミック基板を含む試験片を製造した。この時、Tiの単位面積当たりの蒸着量は1.220g/m2であり、Agの単位面積当たりの蒸着量は5.339g/m2である。
【0131】
実施例5(Ti蒸着量1.003g/m2、Ag蒸着量4.005g/m2)
【0132】
0.0263gのTiを蒸着して第1層を形成したことを除いて、実施例1と同様な方法でCuの金属シート、TiNの接合層及びSi3N4のセラミック基板を含む試験片を製造した。この時、Tiの単位面積当たりの蒸着量は1.003g/m2であり、Agの単位面積当たりの蒸着量は4.005g/m2である。
【0133】
実施例6(Ti蒸着量0.961g/m2、Ag蒸着量4.005g/m2)
【0134】
0.0252gのTiを蒸着して第1層を形成したことを除いて、実施例1と同様な方法でCuの金属シート、TiNの接合層及びSi3N4のセラミック基板を含む試験片を製造した。この時、Tiの単位面積当たりの蒸着量は0.961g/m2であり、Agの単位面積当たりの蒸着量は4.005g/m2である。
【0135】
比較例1(Ti蒸着量0.374g/m2、Ag蒸着量2.868g/m2)
【0136】
0.0098gのTiを蒸着して第1層を形成し、0.0752gのAgを蒸着して第2層を形成したことを除いて、実施例1と同様な方法でCuの金属シート、TiNの接合層及びSi3N4のセラミック基板を含む試験片を製造した。この時、Tiの単位面積当たりの蒸着量は0.374g/m2であり、Agの単位面積当たりの蒸着量は2.868g/m2である。
【0137】
比較例2(Ti蒸着量0.599g/m2、Ag蒸着量2.868g/m2)
【0138】
0.0157gのTiを蒸着して第1層を形成し、0.0752gのAgを蒸着して第2層を形成したことを除いて、実施例1と同様な方法でCuの金属シート、TiNの接合層及びSi3N4のセラミック基板を含む試験片を製造した。この時、Tiの単位面積当たりの蒸着量は0.599g/m2であり、Agの単位面積当たりの蒸着量は2.868g/m2である。
【0139】
比較例3(Ti蒸着量0.843g/m2、Ag蒸着量2.868g/m2)
【0140】
0.0221gのTiを蒸着して第1層を形成し、0.0752gのAgを蒸着して第2層を形成したことを除いて、実施例1と同様な方法でCuの金属シート、TiNの接合層及びSi3N4のセラミック基板を含む試験片を製造した。この時、Tiの単位面積当たりの蒸着量は0.843g/m2であり、Agの単位面積当たりの蒸着量は2.868g/m2である。
【0141】
比較例4(Ti蒸着量1.034g/m2、Ag蒸着量2.868g/m2)
【0142】
0.0342gのTiを蒸着して第1層を形成し、0.0752gのAgを蒸着して第2層を形成したことを除いて、実施例1と同様な方法でCuの金属シート、TiNの接合層及びSi3N4のセラミック基板を含む試験片を製造した。この時、Tiの単位面積当たりの蒸着量は1.304g/m2であり、Agの単位面積当たりの蒸着量は2.868g/m2である。
【0143】
比較例5(Ti蒸着量1.041g/m2、Ag蒸着量6.808g/m2)
【0144】
0.0273gのTiを蒸着して第1層を形成し、0.1785gのAgを蒸着して第2層を形成したことを除いて、実施例1と同様な方法でCuの金属シート、TiNの接合層及びSi3N4のセラミック基板を含む試験片を製造した。この時、Tiの単位面積当たりの蒸着量は1.041g/m2であり、Agの単位面積当たりの蒸着量は6.808g/m2である。
【0145】
比較例6(Ti蒸着量0.599g/m2、Ag蒸着量4.005g/m2)
【0146】
0.0157gのTiを蒸着して第1層を形成したことを除いて、実施例1と同様な方法でCuの金属シート、TiNの接合層及びSi3N4のセラミック基板を含む試験片を製造した。この時、Tiの単位面積当たりの蒸着量は0.599g/m2であり、Agの単位面積当たりの蒸着量は、4.005g/m2である。
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
まず、実施例1、2及び比較例1~4の試験片を比較すると、Agの単位面積当たりの蒸着量が3.50g/m2以上である実施例1、2の試験片は、それぞれ21.4N/mm及び22.1N/mmの優れる接合力を見せた反面、Agの単位面積当たりの蒸着量が3.50g/m2未満である比較例1~4の試験片は、いずれも7.5N/mm以下の低い接合力を見せた。特に、Tiの単位面積当たりの蒸着量は比較例4の試験片が実施例1及び2の試験片より高かったにもかかわらず、少ないAg含量により比較例4の試験片がはるかに低い接合力を見せた。これは、Agの蒸着量に応じて金属シートの強度が変化(向上)して表れた結果であると考えられる。次に、実施例1、3及び比較例5の試験片を比較すると、Tiの単位面積当たりの蒸着量に大きい差がない。しかし、Agの単位面積当たりの蒸着量が6.10g/m2以下の実施例1、3の試験片は、それぞれ21.4N/mm及び16.3N/mmの優れる接合力を見せた反面、比較例5の試験片は却って接着力が15.6N/mmに減少した。これは、過量のAg蒸着により界面にAg残存物が形成されて表れた結果であると判断される。
【0151】
次に、実施例1、2、5、6及び比較例6の試験片を比較すると、Agの単位面積当たりの蒸着量はほぼ同一である。Tiの単位面積当たりの蒸着量が0.61g/m2以上である実施例1、2、5、6の試験片は、最小9.4N/mm以上の接合力を見せた反面、Tiの単位面積当たりの蒸着量が0.61g/m2未満である比較例6の試験片は、8.6N/mm以下の低い接合力を見せた。これは、Tiの蒸着量に応じて接合層の強度が変化(向上)して表れた結果であると考えられる。特に、Tiの単位面積当たりの蒸着量が1.02g/m2以上である実施例1、2の試験片は、それぞれ21.4N/mm及び22.1N/mmの優れる接合力を見せた。
【0152】
次に、実施例1、2、4の試験片を見ると、Tiの単位面積当たりの蒸着量が1.30g/m2以下の実施例1、2、4の試験片は、いずれも20N/mm以上の優れる接合力を見せた。ただし、Tiの単位面積当たりの蒸着量が1.02g/m2以上になると、Tiの蒸着量が増加しても接合力の向上幅が微小であるので飽和値に到達することを確認することができる。そこで、原材料のコスト浪費を防ぐと共に最適の界面間の接合力を備えるために、Tiの単位面積当たりの蒸着量は、1.30g/m2以下であることが好ましい。