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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】搬送用空圧回路
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/44 20060101AFI20250127BHJP
   B29C 45/40 20060101ALI20250127BHJP
【FI】
B29C33/44
B29C45/40
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024046334
(22)【出願日】2024-03-22
【審査請求日】2024-08-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000138473
【氏名又は名称】株式会社ユーシン精機
(74)【代理人】
【識別番号】110004059
【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜田 大貴
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-110863(JP,A)
【文献】特開2003-062781(JP,A)
【文献】特開2008-151097(JP,A)
【文献】特開2022-047808(JP,A)
【文献】特開2024-030196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/44
B29C 45/40
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送品を搬送するために搬送ヘッドに設けられた1以上の吸着パッドと、
前記1以上の吸着パッドと真空発生装置の間に配置された配管と、
前記配管の経路中に配置され、前記被搬送品を前記1以上の吸着パッドで吸着する吸着時には前記真空発生装置からの負圧を前記1以上の吸着パッドに供給し、前記1以上の吸着パッドから前記被搬送品を解放する解放時には、前記吸着パッド内を大気に開放するとともに、前記配管の前方配管部分よりも前記真空発生装置側に位置する後方配管部分に前記負圧が閉じ込められた負圧閉じ込め部を形成し、次の搬送動作の吸着時には、前記負圧閉じ込め部内の負圧と前記真空発生装置からの負圧を併用するように配置された2以上の制御弁を有する制御弁機構を備えている搬送用空圧回路であって、
前記制御弁機構は、前記前方配管部分に設けられた3ポート弁と、前記後方配管部分に設けられた2ポート弁を含み、
前記2ポート弁は、前記吸着時には開状態となり、前記解放時には閉状態となるように制御され、
前記3ポート弁は、前記吸着時には前記吸着パッドに前記真空発生装置からの前記負圧を供給する第1の状態となり、前記解放時には前記真空発生装置からの前記負圧の供給を阻止して前記2ポート弁との間に前記負圧閉じ込め部を形成し且つ前記吸着パッド内を大気に開放する第2の状態になるように制御され、前記次の搬送動作の吸着時に前記第2の状態から前記第1の状態となって、前記負圧閉じ込め部内の負圧と前記真空発生装置からの負圧を併用するように制御される搬送用空圧回路。
【請求項2】
被搬送品を搬送するために搬送ヘッドに設けられた1以上の吸着パッドと、
前記1以上の吸着パッドと真空発生装置の間に配置された配管と、
前記配管の経路中に配置され、前記被搬送品を前記1以上の吸着パッドで吸着する吸着時には前記真空発生装置からの負圧を前記1以上の吸着パッドに供給し、前記1以上の吸着パッドから前記被搬送品を解放する解放時には、前記吸着パッド内を大気に開放するとともに、前記配管の前方配管部分よりも前記真空発生装置側に位置する後方配管部分に前記負圧が閉じ込められた負圧閉じ込め部を形成し、次の搬送動作の吸着時には、前記負圧閉じ込め部内の負圧と前記真空発生装置からの負圧を併用するように配置された2以上の制御弁を有する制御弁機構を備えている搬送用空圧回路であって、
前記制御弁機構は、前記後方配管部分の両側に設けられた第1の2ポート弁及び第2の2ポート弁と、前記前方配管部分に設けられた第3の2ポート弁とを備え、
前記第1の2ポート弁及び前記第2の2ポート弁は、前記吸着時にはそれぞれ開状態となり、前記解放時にはそれぞれ閉状態となって前記第1の2ポート弁と前記第2の2ポート弁の間に前記負圧閉じ込め部を形成し、前記次の搬送動作の吸着時には、それぞれ開状態となって前記負圧閉じ込め部内の負圧と前記真空発生装置からの負圧を前記1以上の吸着パッドに供給し、
前記第3の2ポート弁は前記吸着時には前記吸着パッドに前記真空発生装置からの前記負圧を前記吸着パッドに供給できる第1の状態となり、前記解放時には前記吸着パッド内を大気に開放する第2の状態になり、前記次の搬送動作の吸着時までに前記第2の状態から前記第1の状態になるように制御される搬送用空圧回路。
【請求項3】
前記搬送ヘッドには複数の前記吸着パッドが設けられており、
前記配管は前記複数の吸着パッドにそれぞれ接続された複数の分岐配管と、該複数の分岐配管を前記真空発生装置に接続する1本の共通配管とを備えており、
前記複数の分岐配管の少なくとも1本の分岐配管には該少なくとも1本の分岐配管内を大気に解放する追加の3ポート弁が設けられている請求項1または2に記載の搬送用空圧回路。
【請求項4】
請求項1または2に記載の搬送用空圧回路を備えた成形品取出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ヘッドに設けられた1以上の吸着パッドに供給する負圧を制御する搬送用空圧回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第4653984号公報には、成形品(被搬送品)を搬送するためにチャック(搬送ヘッド)に設けられた1以上の吸着パッドと、1以上の吸着パッドと真空発生装置の間に配置された配管と、配管の経路中に配置され、被搬送品を1以上の吸着パッドで吸着する吸着時には真空発生装置からの負圧を1以上の吸着パッドに供給し、1以上の吸着パッドから被搬送品を解放する解放時には配管を大気に開放するように配置された負圧保持バルブ(制御弁)を有する負圧制御部を備えた搬送用空圧回路を有する成形品取出装置が開示されている。この装置では、チャックが待機位置から取出位置に移動している最中にチャックにおける真空圧を発生させ、チャックが取出位置に到達したその時点にチャックの負圧が丁度吸着圧に達するように制御する。従って、チャックが待機位置に復帰した状態から予めチャックにおける負圧を発生させて取出位置到達時点でチャックの負圧を吸着圧に到達させるものに比べ、チャックの取出位置到達時点で丁度吸着圧に達するタイミングで吸着ON信号を出力するため、圧縮空気の消費量を低減することができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4653984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の装置で1以上の吸着パッドから被搬送品を解放する際には、負圧保持バルブと真空発生装置を開状態にして、配管内を大気に開放し、配管内の負圧を全て消費している。そして次の吸着動作をする際には、再度配管内を負圧状態にしている。このように従来は、毎回、配管内を負圧状態にするために、多くのエネルギを消費している。このエネルギの消費は、配管の長さが長くなるほど、大きなものとなる。
【0005】
本発明の目的は、従来よりも発生させた負圧を有効に利用してエネルギの消費量を少なくできる搬送用空圧回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の搬送用空圧回路は、被搬送品を搬送するために搬送ヘッドに設けられた1以上の吸着パッドと、1以上の吸着パッドと真空発生装置の間に配置された配管と、配管の経路中に配置され、被搬送品を1以上の吸着パッドで吸着する吸着時には真空発生装置からの負圧を1以上の吸着パッドに供給し、1以上の吸着パッドから被搬送品を解放する解放時には、吸着パッド内を大気に開放するとともに、配管の前方配管部分よりも真空発生装置側に位置する後方配管部分に負圧が閉じ込められた負圧閉じ込め部を形成し、次の搬送動作の吸着時には、負圧閉じ込め部内の負圧と真空発生装置からの負圧を併用するように配置された2以上の制御弁を有する制御弁機構を備えている。
【0007】
本発明によれば、吸着時に発生させた負圧の一部を負圧閉じ込め部に保存しておき、次の搬送動作の吸着時に負圧閉じ込め部内の負圧と真空発生装置からの負圧を併用するため、発生した負圧を無駄に捨てることなく、一部再利用するため、エネルギの消費量を従来よりも少なくすることができる。
【0008】
好ましい制御弁機構は、前方配管部分に設けられた3ポート弁と、後方配管部分に設けられた2ポート弁を含み、2ポート弁は、吸着時には開状態となり、解放時には閉状態となるように制御される。そしてこの制御弁機構の3ポート弁は、吸着時には吸着パッドに真空発生装置からの負圧を供給する第1の状態となり、解放時には真空発生装置からの負圧の供給を阻止して2ポート弁との間に負圧閉じ込め部を形成し且つ吸着パッド内を大気に開放する第2の状態になるように制御され、次の搬送動作の吸着時に第2の状態から前記第1の状態となって、負圧閉じ込め部内の負圧と真空発生装置からの負圧を併用するように制御される。この制御弁機構によれば、使用するポート弁を最小限にすることができる。
【0009】
また制御弁機構は、後方配管部分の両側に設けられた第1の2ポート弁及び第2の2ポート弁と、前方配管部分に設けられた第3の2ポート弁とを備えていてもよい。この場合、第1の2ポート弁及び第2の2ポート弁は、吸着時にはそれぞれ開状態となり、解放時にはそれぞれ閉状態となって第1の2ポート弁と第2の2ポート弁の間に負圧閉じ込め部を形成し、次の搬送動作の吸着時には、それぞれ開状態となって負圧閉じ込め部内の負圧と真空発生装置からの負圧を1以上の吸着パッドに供給する。そして第3の2ポート弁は、吸着時には吸着パッドに真空発生装置からの負圧を吸着パッドに供給できる第1の状態となり、解放時には吸着パッド内を大気に開放する第2の状態になり、次の搬送動作の吸着時までに第2の状態から第1の状態になるように制御される。この制御弁機構によれば、第3のポート弁の存在により、第1及び第2の2ポート弁の動作の時間遅れの影響を受けることなく、吸着動作及び負圧閉じ込め動作を実現できる。
【0010】
なお搬送ヘッドには複数の吸着パッドが設けられており、配管は複数の吸着パッドにそれぞれ接続された複数の分岐配管と、該複数の分岐配管を真空発生装置に接続する1本の共通配管とを備えていてもよい。この場合には、複数の分岐配管の少なくとも1本の分岐配管には該少なくとも1本の分岐配管内を大気に解放する追加の3ポート弁を設けてもよい。このようにすると、複数の吸着パッドを個別に解放することができる。
【0011】
本発明の搬送用空圧回路は成形品取出機に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】成形品取出機の取出しヘッド(搬送ヘッド)の吸着パッドに本実施の形態の搬送用空圧回路を適用した例の概略構成図である。
図2図1の実施の形態に用いられる搬送用空圧回路の具体例の構成を示す図である。
図3】1回目の製品取出動作と2回目の製品取出動作における図2の搬送用空圧回路の動作と吸着パッドの吸着圧の変化を経時的に示す図である。
図4】(A)は負圧閉じ込め部を有しない従来の搬送用空圧回路を用いた場合の吸着圧の変化と、(B)は負圧閉じ込め部を有する本実施の形態の搬送用空圧回路を用いた場合の吸着圧の変化を、時間軸を一致させて示す図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に用いられる搬送用空圧回路の具体例の構成を示す図である。
図6】第2の実施の形態の1回目の製品取出動作と2回目の製品取出動作における搬送用空圧回路の動作と吸着パッドの吸着圧の変化を経時的に示す図である。
図7】変形例を説明するために用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照して本発明の搬送用空圧回路及びその制御方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、成形品取出機の取出しヘッド3(搬送ヘッド)の吸着パッド2に本実施の形態の搬送用空圧回路1を適用した例の概略構成図である。搬送用空圧回路1は、被搬送品として成形品を搬送するために取出しヘッド3(搬送ヘッド)に設けられた1以上の吸着パッド2と、1以上の吸着パッド2と真空発生装置4の間に配置された配管5と、配管5の経路中に配置された制御弁機構6とを備えている。制御弁機構6は、後述する第1の2ポート弁7、第2の2ポート弁8及び第3の2ポート弁9を備えている。そして第1の2ポート弁7と第2の2ポート弁8の間には、負圧閉じ込め部10が形成されている。第3の2ポート弁9との間にある配管5の部分には真空発生装置4が発生した負圧を測定する圧力センサ11が配置されている。制御装置12は、圧力センサ11の出力に基づいて第1の2ポート弁7、第2の2ポート弁8及び第3の2ポート弁9の開閉を制御する制御指令を与える機能と、予め定めた動作シーケンスに基づいて真空発生装置4に動作指令を与える機能と、予め定めた動作シーケンスに基づいて取出しヘッド3の移動を実行する成形品取出機の搬送機構13に駆動指令を与える機能を備えている。
【0015】
図2は、図1の実施の形態に用いられる搬送用空圧回路1の具体例の構成を示す図である。図2に具体的に示すように、真空発生装置4は、吸気口4Aと、排気口4Bと工場内のポンプで生成した正圧を取り入れる供給口4Cと、供給口4Cに設けられた電磁弁からなる2ポート弁4Dとを備えている。また真空発生装置4の吸気口4Aに近い配管部分には第1の2ポート弁7が配置され、吸着パッド2の近傍の配管部分には第2の2ポート弁8が配置されている。そして吸着パッド2と第2の2ポート弁8との間には、第3の2ポート弁9が配置されている。本願明細書では、第1の2ポート弁7と第2の2ポート弁8との間の配管部分を後方配管部分と言い、この後方配管部分から吸着パッド2までの間の配管部分を前方配管部分と言う。また本実施の形態では、第1の2ポート弁7(制御弁)と、第2の2ポート弁8(制御弁)と、第3の2ポート弁9(制御弁)によって制御弁機構6が構成されている。
【0016】
2ポート弁4D,7,8及び9は、INとOUTの2つのポートを有して、単純に1つの経路を閉じるまたは開く動作を行う。本実施の形態では、第1及び第2の2ポート弁7及び8は、吸着時には開状態となり、解放時には閉状態となるように制御される。本実施の形態で、第3の2ポート弁9は、前方配管部分に接続された分岐管5Aに設けられている。第3の2ポート弁9は、吸着時には吸着パッド2に真空発生装置4からの負圧を供給する第1の状態となり、解放時には吸着パッド内を大気に開放する第2の状態になるように制御される。
【0017】
図2の状態では、2ポート弁4D、7及び8のそれぞれの弁体が経路から外れて経路が開いた状態になっており、第3の2ポート弁9の弁体が分岐管5Aの大気開放口を閉じているので、配管5の内部の空気は、真空発生装置4の吸気口4Aから排出され、配管内及び吸着パッド2内は負圧になる。本願明細書では、この状態を真空発生装置4から「負圧を供給する」状態と言う。
【0018】
吸着パッド2で成形品(被搬送品)を吸着している状態で搬送を行う。そして所定の搬送位置で吸着パッド2から成形品(被搬送品)を解放する際には、大気開放口を開いて吸着パッド2内を大気に開放する(第2の状態)。第3の2ポート弁9の大気開放動作と実質的に同時に第1の2ポート弁7及び第2の2ポート弁8を閉じるとともに、真空発生装置4内の2ポート弁4Dを弁体で閉じて真空発生装置4内への正圧の供給を停止する。真空発生装置4から負圧が供給されている状態(第1の状態)で、第1及び第2の2ポート弁7及び8が閉じられると、第1の2ポート弁7と第2の2ポート弁8との間の負圧閉じ込め部10内には確実に負圧が閉じ込められた状態になる。後に詳しく説明するように、負圧閉じ込め部10内に閉じ込められた負圧は、次の搬送動作の吸着時に真空発生装置4から供給される負圧と併用される。すなわち真空発生装置から供給される負圧に負圧閉じ込め部10内に閉じ込められた負圧が加算されて吸着パッド2に供給される。そのため本実施の形態によれば、吸着時に発生させた負圧の一部を負圧閉じ込め部10に保存しておき、次の搬送動作の吸着時に負圧閉じ込め部内の負圧と真空発生装置4からの負圧を併用するため、発生した負圧を無駄に捨てることなく、一部再利用するため、エネルギの消費量を従来よりも少なくすることができる。
【0019】
図3には、1回目の製品取出動作と2回目の製品取出動作における図2の搬送用空圧回路1の動作と吸着パッド2の吸着圧の変化を経時的に示してある。なお図3では、データを確実に採取する目的で,測定用の吸着圧センサを吸着パッド2の近傍に配置した。まず吸引動作を開始するために、真空発生装置4により空吸を行いながら、吸着パッド2を成形品に近付ける。吸着パッド2が成形品に密着すると、吸着を開始し、吸着圧(負圧)が上昇する。吸着が飽和状態になっている間(配管内がほぼ真空の状態になっている間)に取出しヘッドが解放位置に移動し、移動が完了すると、制御装置12から解放指令が出力される。解放指令が出力されると、第1の2ポート弁7及び第2の2ポート弁8が閉じられると共に真空発生装置4が動作を停止し、第3の2ポート弁9の経路が開いた状態になり、吸着パッド2内が大気に開放され、成形品の解放が完了する。なお図3の開放期間中の破線は、第1の2ポート弁7及び第2の2ポート弁8と第3の2ポート弁9を用いない従来の搬送用空圧回路を用いた場合の吸着圧の変化を示している。
【0020】
図3における2回目の製品取出動作の際には、負圧閉じ込め部10内に閉じ込めた負圧を併用するため、短い時間で負圧が立ち上がる。図3の2回目の製品取出動作の吸引動作開始時の破線は、負圧閉じ込め部を有しない従来の搬送用空圧回路を用いた場合の吸着圧の変化を示している。図4(A)は負圧閉じ込め部を有しない従来の搬送用空圧回路を用いた場合の吸着圧の変化と、図4(B)は負圧閉じ込め部10を有する本実施の形態の搬送用空圧回路を用いた場合の吸着圧の変化を、時間軸を一致させて示してある。この図から明らかなように、本実施の形態によれば、2回目の製品取出動作以降は、吸着開始までの時間期間と解放完了までの時間期間が従来よりも大幅に短くなる。
【0021】
(実施の形態2)
図5は、本発明の第2の実施の形態に用いられる搬送用空圧回路1´の具体例の構成を示す図である。第2の実施の形態は、図2に示した第1の実施の形態の搬送用空圧回路と比べて、第2の2ポート弁8が無い点ことと、第3の2ポート弁9の代わりに3ポート弁9´を用いている点で、第1の実施の形態と相違する。
【0022】
本実施の形態では、制御弁機構6が、前方配管部分に設けられた3ポート弁9´と、後方配管部分に設けられた2ポート弁7を含んでいる。2ポート弁7は、吸着時には開状態となり、解放時には閉状態となるように制御される。そしてこの制御弁機構6´の3ポート弁9´は、吸着時には吸着パッド2に真空発生装置4からの負圧を供給する第1の状態となり、解放時には真空発生装置4からの負圧の供給を阻止して2ポート弁7との間に負圧閉じ込め部10を形成し且つ吸着パッド2内を大気に開放する第2の状態になるように制御される。そして次の搬送動作の吸着時に第2の状態から前記第1の状態となって、負圧閉じ込め部10内の負圧と真空発生装置4からの負圧を併用するように制御される。この制御弁機構6´によれば、使用するポート弁を最小限にすることができる。
【0023】
図6には、図3と同様に、第2の実施の形態の1回目の製品取出動作と2回目の製品取出動作における搬送用空圧回路1´の動作と吸着パッド2の吸着圧の変化を経時的に示してある。図6から判るように、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0024】
(変形例)
図7は、取出しヘッド(搬送用ヘッド)に複数の吸着パッド21,22を設ける場合の変形例を示している。図7に示す変形例では、複数の吸着パッド21,22が設けられており、配管は複数の吸着パッド21,22にそれぞれ接続された複数の分岐配管51,52と、この複数の分岐配管51,52を真空発生装置4に接続する1本の共通の配管5とを備えている。また変形例では、吸着時の配管5内の圧力を検出する圧力センサ11を3ポート弁9´よりも吸着パッド側に配置している。そして複数の分岐配管の少なくとも1本の分岐配管51にはこの分岐配管51内を大気に開放する追加の3ポート弁14が設けられている。このようにすると、複数の吸着パッド21,22の解放を個別に実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、吸着時に発生させた負圧の一部を負圧閉じ込め部に保存しておき、次の搬送動作の吸着時に負圧閉じ込め部内の負圧と真空発生装置からの負圧を併用するため、発生した負圧を無駄に捨てることなく、一部再利用するため、エネルギの消費量を従来よりも少なくすることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 搬送用空圧回路
2,21,22 吸着パッド
3 取出しヘッド(搬送ヘッド)
4 真空発生装置
4D 2ポート弁
5 配管
6 制御弁機構
7 第1の2ポート弁
8 第2の2ポート弁
9 第3の2ポート弁
9´ 3ポート弁
10 負圧閉じ込め部
11 圧力センサ
12 制御装置
13 搬送機構
14 3ポート弁
51,52 分岐配管
【要約】
【課題】従来よりも発生させた負圧を有効に利用してエネルギの消費量を少なくできる搬送用空圧回路を提供する。
【解決手段】制御弁機構6´は、前方配管部分に設けられた3ポート弁9´と、後方配管部分に設けられた2ポート弁7を含み、2ポート弁7は、吸着時には開状態となり、解放時には閉状態となるように制御される。そしてこの制御弁機構6´の3ポート弁9´は、吸着時には吸着パッド2に真空発生装置4からの負圧を供給する第1の状態となり、解放時には真空発生装置4からの負圧の供給を阻止して2ポート弁7との間に負圧閉じ込め部10を形成し且つ吸着パッド2内を大気に開放する第2の状態になるように制御される。次の搬送動作の吸着時に、制御弁機構6´は、第2の状態から第1の状態となって、負圧閉じ込め部10内の負圧と真空発生装置4からの負圧を併用するように制御される。
【選択図】 図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7