(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】エレベータのロープ給油装置及びエレベータのロープ給油方法
(51)【国際特許分類】
B66B 7/12 20060101AFI20250127BHJP
【FI】
B66B7/12 Z
(21)【出願番号】P 2024094514
(22)【出願日】2024-06-11
【審査請求日】2024-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 麻衣
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222436(JP,A)
【文献】特開2009-167006(JP,A)
【文献】特開2004-203523(JP,A)
【文献】米国特許第9988242(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-31/02
B66C 1/00-25/00
B66D 1/00- 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのシーブに巻き掛けられるとともに前記エレベータの乗りかごに結合され前記乗りかごを昇降させるロープに、油を供給する給油部と、
前記ロープからの前記油の飛散に関する物理量を検出する検出部と、
検出された前記物理量に基づいて前記ロープからの前記油の飛散を検出した場合に、前記給油部に前記ロープに対する前記油の供給を停止させる制御部と、
を備えるエレベータのロープ給油装置。
【請求項2】
前記給油部は、
前記油を貯留するタンクと、
前記タンク内の前記油に浸される第1の端部と、前記ロープに接触する第2の端部と、を有し、前記タンク内の前記油を前記ロープに移動させる給油部材と、
前記第2の端部が前記ロープに接触する給油位置と、前記第2の端部が前記ロープから離間する退避位置との間で、前記給油部材を移動可能な部材移動機構と、
を有し、
前記制御部は、検出された前記物理量に基づいて前記ロープからの前記油の飛散を検出した場合に、前記部材移動機構に前記給油部材を前記給油位置から前記退避位置に移動させることにより、前記給油部に前記ロープに対する前記油の供給を停止させる、
請求項1に記載のエレベータのロープ給油装置。
【請求項3】
前記給油部は、
前記油を貯留する第1の油室と、前記第1の油室に対して隔てられた第2の油室と、が設けられたタンクと、
前記第1の油室内の前記油に浸される第1の端部と、前記ロープに接触する第2の端部と、を有し、前記第1の油室内の前記油を前記ロープに移動させる給油部材と、
前記第1の油室内の前記油を前記第2の油室に移動させるポンプと、
を有し、
前記制御部は、検出された前記物理量に基づいて前記ロープからの前記油の飛散を検出した場合に、前記ポンプに前記第1の油室内の前記油を前記第2の油室に移動させることにより、前記給油部に前記ロープに対する前記油の供給を停止させる、
請求項1に記載のエレベータのロープ給油装置。
【請求項4】
前記検出部は、
前記ロープにおける前記シーブに巻き掛けられた部分と対向し、前記ロープから飛散した前記油を受け入れて貯留する油貯留部と、
前記物理量として前記油貯留部の質量を計測する計測部と、
を有する、
請求項1~請求項3のうちいずれか一つに記載のエレベータのロープ給油装置。
【請求項5】
給油部が、エレベータのシーブに巻き掛けられるとともに前記エレベータの乗りかごに結合され前記乗りかごを昇降させるロープに、油を供給する工程と、
検出部が、前記ロープからの前記油の飛散に関する物理量を検出する工程と、
制御部が、検出された前記物理量に基づいて前記ロープからの前記油の飛散を検出した場合に、前記給油部に前記ロープに対する前記油の供給を停止させる工程と、
を含むエレベータのロープ給油方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、エレベータのロープ給油装置及びエレベータのロープ給油方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗りかごを昇降させるロープに油を供給するロープ油供給装置を備えたエレベータが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-167006号公報
【文献】特開2004-203523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のエレベータでは、エレベータが設置された環境等によっては、ロープ油供給装置からロープに供給される油の量が過多となり、ロープから油が飛散して乗りかご等のロープの周囲のエレベータの構成要素が汚れる場合がある。この汚れは、作業員が掃除するため、作業員の保守作業の負荷が増大するという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、保守作業の負荷を低減することができる、エレベータのロープ給油装置及びエレベータのロープ給油方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のエレベータのロープ給油装置は、給油部と、検出部と、制御部と、を備える。前記給油部は、エレベータのシーブに巻き掛けられるとともに前記エレベータの乗りかごに結合され前記乗りかごを昇降させるロープに、油を供給する。前記検出部は、前記ロープからの前記油の飛散に関する物理量を検出する。前記制御部は、検出された前記物理量に基づいて前記ロープからの前記油の飛散を検出した場合に、前記給油部に前記ロープに対する前記油の供給を停止させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態のエレベータの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態のロープ給油装置における給油部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態のロープ給油装置における給油部の概略構成を示す図であって、給油部材が給油位置に位置した状態を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態のロープ給油装置における給油部の概略構成を示す図であって、給油部材が退避位置に位置した状態を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態のロープ給油装置の検出部を含むエレベータの一部を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態のロープ給油装置の検出部における油貯留部を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態のロープ給油装置の制御部が実行する給油制御処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の実施形態のロープ給油装置の概略構成を示す図であって、ロープ給油装置の給油状態を示す図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態のロープ給油装置の概略構成を示す図であって、ロープ給油装置の給油停止状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるエレベータのロープ給油装置及びエレベータのロープ給油方法を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態のエレベータ1の概略構成を示す図である。本図では、機械室8を備えるエレベータ1を例示するが、本実施形態は、機械室8の有無にかかわらず適用可能である。
【0010】
各図面に示されるように、本明細書において、便宜上、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸及びY軸は、鉛直方向と直交する。Z軸は、鉛直方向に沿って設けられる。
【0011】
図1に示されるように、エレベータ1は、複数の階床を備える建物に設置される。エレベータ1は、鉛直方向に延びる昇降路2、乗りかご5、ロープ6、及びつり合いおもり7を含む。また、エレベータ1には、昇降路2に沿って複数の乗り場(不図示)が設けられるとともに、各乗り場にドア(不図示)が設けられている。なお、
図1は、1つの号機の乗りかご5を有するエレベータ1を例示しているが、本実施形態は複数号機の乗りかご5を有するエレベータ1にも適用可能である。
【0012】
エレベータ1は、ロープ6の一端部に乗りかご5が結合され、ロープ6の他端部につり合いおもり7が結合された、いわゆるつるべ式のエレベータが採用されている。各乗り場は、建物のそれぞれ異なる階床に設けられている。各乗り場にはドアが設けられている。エレベータ1は、乗りかご5を昇降路2内で昇降させることで、利用者を任意の階床の乗り場から任意の階床の乗り場まで移動させる。利用者は、乗り場に乗りかご5が着床した際に、その乗り場に設けられたドアを介して乗りかご5に乗降することが可能である。エレベータ1は、乗りかご内操作盤及び各階の乗場に設けられた乗り場操作盤の操作による呼び登録に基づいて、乗りかご5を呼び登録された階に移動させる。
【0013】
エレベータ1は、機械室8、巻上機9、そらせシーブ10、エレベータ制御盤13、及びロープ給油装置20をさらに含む。機械室8は、昇降路2に対して鉛直方向の上方側に設けられている。ロープ給油装置20は、ロープ給油制御装置とも称される。
【0014】
巻上機9は、巻上シーブ14と、巻上シーブ14を回転させる巻上モータ(不図示)と、を備える。ロープ6は、乗りかご5側の端部が巻上シーブ14側に下垂するように、巻上シーブ14及びそらせシーブ10に巻き掛けられている。巻上モータが巻上シーブ14を回転駆動すると、巻上シーブ14は、巻上シーブ14とロープ6との間に生じる摩擦力によってロープ6を移動(走行)させる。巻上機9及びそらせシーブ10は、機械室8の床8aに、マシンビーム及びマシンベッド(不図示)を介して配置されている。巻上シーブ14は、シーブの一例である。
【0015】
エレベータ制御盤13は、巻上モータ、乗りかご5内に設けられた不図示の乗りかご内操作盤、ロープ給油装置20、及び各乗り場に設けられた不図示の乗り場操作盤、等と電気的に接続され、エレベータ1の動作を統括的に制御する。
【0016】
例えば、エレベータ制御盤13は、乗りかご内操作盤または乗り場操作盤への利用者からの操作入力に応じて乗りかご5の停止予定階を決定し、呼び登録する。そして、エレベータ制御盤13は、巻上モータの駆動を制御することで、乗りかご5を停止予定階まで移動させる。
【0017】
エレベータ制御盤13は、例えば、演算装置、記憶装置、及び通信インタフェース装置を備える。すなわち、エレベータ制御盤13は、コンピュータと同様の構成を備える。記憶装置は、データ及びプログラムを保持可能な装置である。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはこれらの組み合わせによって構成される。演算装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。演算装置は、記憶装置に予めインストールされた制御プログラムに基づいて、上述した制御を実現する。なお、エレベータ制御盤13の構成は、必ずしもコンピュータと同様の構成でなくてもよい。
【0018】
ロープ6の一端部は、乗りかご5と結合され、ロープ6の他端部は、つり合いおもり7と結合されている。ロープ6は、巻上シーブ14に巻き掛けられた状態で、巻上シーブ14の回転によって乗りかご5を昇降させる。ロープ6は、例えば、ワイヤーロープ芯(IWRC:Independent Wire Rope Core)や樹脂芯等である。ワイヤーロープ芯や樹脂芯のロープ6は、グリースを含有しにくい。このため、本実施形態では、ロープ6に油100を供給するロープ給油装置20が設けられている。なお、ロープ6が他の構成であってもロープ給油装置20を設けてよい。
【0019】
ロープ給油装置20は、給油部21と、検出部22と、制御部23と、を備える。給油部21は、ロープ6に油100を供給する。油100は、潤滑油である。検出部22は、ロープ6からの油100の飛散に関する物理量を検出する。制御部23は、検出された物理量に基づいてロープ6からの油100の飛散を検出した場合に、給油部21にロープ6に対する油100の供給を停止させる。
【0020】
図2は、第1の実施形態のロープ給油装置20における給油部21を示す斜視図である。
図3は、第1の実施形態のロープ給油装置20における給油部21の概略構成を示す図であって、給油部材31が給油位置に位置した状態を示す図である。
図4は、第1の実施形態のロープ給油装置20における給油部21の概略構成を示す図であって、給油部材31が退避位置に位置した状態を示す図である。
【0021】
図2~
図4に示されるように、給油部21は、タンク30と、給油部材31と、部材移動機構32と、を有する。
【0022】
図1に示されるように、タンク30は、例えば、機械室8の床8aに固定部材24を介して固定されている。タンク30は、油100を貯留する。詳細には、
図3及び
図4に示されるように、タンク30の内部には、油室30aが設けられており、この油室30aに油100が貯留される。タンク30内の油100は、例えば、作業員が点検時等に補充して管理する。
【0023】
給油部材31は、例えば、フェルトによって構成され、可撓性を有する。給油部材31は、第1の端部31aと、第2の端部31bと、を有する。第1の端部31aは、タンク30内の油100に浸されている。第2の端部31bは、第1の端部31aの反対側の端部であり、ロープ6に接触している。給油部材31は、タンク30内の油100をロープ6に移動させる。詳細には、給油部材31は、毛細管現象により、タンク内の油100を吸い上げてロープ6に移動させる。なお、給油部材31は、上記に限定されない。
【0024】
部材移動機構32は、給油部材31の第2の端部31bがロープ6に接触する給油位置(
図3)と、給油部材31の第2の端部31bがロープ6から離間する退避位置(
図4)との間で、給油部材31を移動可能である。給油位置に位置した給油部材31は、第2の端部31bがロープ6に接触しているので、ロープ6に油を供給することができる。一方、退避位置に位置した給油部材31は、第2の端部31bがロープ6から離間しているので、ロープ6に給油することができない。
【0025】
図2~
図4に示されるように、部材移動機構32は、モータ33と、運動変換機構34と、支持部材35と、を有する。
【0026】
モータ33は、タンク30の上面に配置されている。モータ33は、制御部23によって制御される。支持部材35には、給油部材31においてタンク30の外側に位置する部分が取り付けられている。支持部材35は、例えば金具である。支持部材35は、取付金具とも称される。
【0027】
運動変換機構34は、ボールネジ36と、ナット部材37と、一対のガイド部材38と、一対の被ガイド部材39と、連結部材40と、を有する。ボールネジ36は、ロープ6と給油部材31との対向方向であるX方向に延びている。ボールネジ36は、モータ33によって回転される。ナット部材37は、ボールネジ36と結合(螺号)している。ナット部材37は、連結部材40及び一対の被ガイド部材39を介して、一対のガイド部材38に支持されている。ナット部材37は、一対のガイド部材38によって、ボールネジ36回りの回り止めがされるとともに、ボールネジ36の軸方向(X方向)に直動可能に支持されている。一対のガイド部材38は、タンク30の上面に固定されている。また、ナット部材37は、連結部材40及び支持部材35を介して、給油部材31においてタンク30の外側に位置する部分と結合されている。
【0028】
上記構成では、モータ33によってボールネジ36が回転されると、ボールネジ36とナット部材37とによって、ボールネジ36の回転運動がナット部材37の直動運動に変換され、ナット部材37がロープ6と給油部材31との対向方向(X方向)に移動する。このとき、給油部材31がナット部材37と一体となってロープ6と給油部材31との対向方向(X方向)に移動する。なお、給油部材31は、少なくとも第2の端部31bがナット部材37と一体となって移動すればよい。すなわち、給油部材31は、第2の端部31bを含む一部だけがナット部材37と一体となって移動してもよいし、全体がナット部材37と一体となって移動してもよい。ボールネジ36は、回転部材とも称され、ナット部材37は、直動部材とも称される。
【0029】
図1に示されるように、検出部22は、機械室8において巻上シーブ14の近傍に配置されている。また、検出部22は、給油部21に対して鉛直方向の上方側に配置されている。
【0030】
図5は、第1の実施形態のロープ給油装置20の検出部22を含むエレベータ1の一部を示す図である。
図6は、第1の実施形態のロープ給油装置20の検出部22における油貯留部50を示す斜視図である。
【0031】
図5に示されるように、検出部22は、油貯留部50と、ロードセル51と、を有する。ロードセル51は、計測部の一例である。油貯留部50は、油溜まりとも称される。
【0032】
油貯留部50は、機械室8において巻上シーブ14の周囲であって巻上シーブ14の近傍に設置されている。このような配置は、ロープ6における巻上シーブ14に巻き掛けられた部分(以後、第1の部分6aと称する)は、他の部分に比べて、遠心力によって油が飛散しやすいからである。油貯留部50は、ロープ6の第1の部分6aと対向し、ロープ6の移動中等にロープ6から飛散した油100を受け入れて貯留する。
【0033】
詳細には、
図6に示されるように、油貯留部50は、箱状に形成されるとともに、油100を受け入れる開口部50gが設けられている。油貯留部50は、下壁50aと、上壁50bと、前壁50cと、後壁50dと、一対の側壁50e,50fと、を有する。前壁50cには、開口部50gが設けられている。開口部50gは、油貯留部50の内部と通じている。開口部50gは、シーブカバー15の開口部15cを介してロープ6の第1の部分6aと、鉛直方向と直交する方向に並び、第1の部分6aと対向している。また、開口部50gは、巻上シーブ14の回転中心C1と鉛直方向と直交する方向に並ぶ。換言すると、開口部50gは、巻上シーブ14の回転中心C1を通り鉛直方向と直交する線L1上に位置する。また、上壁50bは、ロープ6(巻上シーブ14)に近づくにつれて上方に向かうように鉛直方向に対して傾斜している。これにより、開口部50gの大型化と油貯留部50の外形の小型化が図られている。
【0034】
ここで、シーブカバー15は、巻上シーブ14を覆うカバーである。シーブカバー15は、上壁15aと、周壁15bと、を有する。周壁15bに開口部15cが設けられている。
【0035】
図5に示されるように、ロードセル51は、機械室8において油貯留部50に対して鉛直方向の下方側に配置され、機械室8に対して固定されている。ロードセル51の上面である測定面には、油貯留部50が固定されている。ロードセル51は、ロープ6からの油100の飛散に関する物理量として油貯留部50の質量を計測する。油貯留部50の質量には、油貯留部50自体の質量と、油貯留部50に貯留された油の質量と、が含まれる。したがって、油貯留部50に貯留される油の量が増える程、油貯留部50の質量が増える。なお、ロープ6からの油100の飛散に関する物理量は、上記に限定されない。例えば、上記物理量は、油貯留部50内の油100に関する量(質量や体積等)であってもよい。また、ロードセル51の配線の一部は、例えば、巻上機9の配線に沿って設けられる。このとき、ロードセル51の配線の一部は、例えば、巻上機9の配線と束ねられてもよい。
【0036】
制御部23は、例えば、演算装置、記憶装置、及び通信インタフェース装置を備える。すなわち、制御部23は、コンピュータと同様の構成を備える。記憶装置は、データ及びプログラムを保持可能な装置である。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはこれらの組み合わせによって構成される。演算装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。演算装置は、記憶装置に予めインストールされた制御プログラムに基づいて、上述した制御を実現する。なお、制御部23の構成は、必ずしもコンピュータと同様の構成でなくてもよい。
【0037】
制御部23には、エレベータ制御盤13及びロープ給油装置20が接続されている。
【0038】
制御部23は、検出部22によって検出された物理量すなわち油貯留部50の質量を検出部22から受信(取得)する。
【0039】
制御部23は、検出された油貯留部50の質量に基づいてロープ6からの油100の飛散を検出した場合に、給油部21にロープ6に対する油100の供給を停止させる。一例として、制御部23は、検出された油貯留部50の質量が閾値以下の場合には、ロープ6からの油100の飛散を検出しないと判定し、検出された油貯留部50の質量が閾値を超えた場合には、ロープ6からの油100の飛散を検出したと判定する。したがって、制御部23は、検出された油貯留部50の質量が閾値を超えた場合に、給油部21にロープ6に対する油100の供給を停止させる。具体的には、制御部23は、部材移動機構32に給油部材31を給油位置から退避位置に移動させることにより、給油部21にロープ6に対する油100の供給を停止させる。すなわち、制御部23は、給油部材31をロープ6から離間されることにより、給油部21にロープ6に対する油100の供給を停止させる。
【0040】
次に、第1の実施形態のロープ給油装置20の制御部23が実行する給油制御処理(給油制御方法)を説明する。
図7は、第1の実施形態のロープ給油装置20の制御部23が実行する給油制御処理を示すフローチャートである。
【0041】
給油制御処理は、例えば、1日に所定の回数(一例として1回)だけ実行される。給油制御処理は、給油部材31が給油位置(
図3)に位置した状態で開始される。
【0042】
図7に示されるように、まず、制御部23は、油貯留部50の質量をロードセル51によって計測(検出)する(S100)。
【0043】
次に、制御部23は、計測された油貯留部50の質量が閾値を超えているか否かを判定する(S101)。
【0044】
制御部23は、計測された油貯留部50の質量が閾値を超えていると判定した場合(S101:Yes)、乗りかご5が停止しているか否かを判定する(S102)。制御部23は、乗りかご5が停止しているか否かを示す情報をエレベータ制御盤13から取得して、当該情報に基づいて、乗りかご5が停止しているか否かを判定する。制御部23は、乗りかご5が停止していない、すなわち乗りかご5が動いていると判定した場合には(S102:No)、乗りかご5が停止するのを待つ。
【0045】
制御部23は、乗りかご5が停止していると判定した場合には(S102:Yes)、呼び登録があるか否かを判定する(S103)。制御部23は、呼び登録があるか否かを示す情報をエレベータ制御盤13から取得して、当該情報に基づいて、呼び登録があるか否かを判定する。制御部23は、呼び登録があると判定した場合には(S103:Yes)、呼び登録が無くなるのを待つ。
【0046】
制御部23は、乗りかご5が停止していると判定し(S102:Yes)、且つ呼び登録が無いと判定した場合には(S103:No)、発報及び給油部材31を退避位置へ移動させる(S104)。発報は、例えば、監視センタの監視装置(不図示)への油飛散情報の発出(送信)である。油飛散情報は、ロープ6から油が飛散している旨を示す情報である。監視センタは、エレベータ1の設置場所とは別の場所に設置されエレベータ1を監視するものである。この発報により、監視センタの作業員がロープ6から油が飛散している旨を把握することができる。また、制御部23は、部材移動機構32を制御することにより、給油部材31を給油位置から退避位置へ移動させる。これにより、給油部材31がロープ6から離間し、給油部21によるロープ6に対する油の供給が停止する。
【0047】
次に、制御部23は、油貯留部50の質量が増加しているか否かを判定する(S105)。別の言い方をすると、制御部23は、油貯留部50の質量の増加量が0か否かを判定する。具体的には、制御部23は、制御部23は、油貯留部50の質量をロードセル51によって再度計測(検出)し、今回計測した油貯留部50の質量が前回計測した油貯留部50の質量よりも増加しているかを判定する。1回目の計測は、S100での計測である。2回目以降の計測は、S105の計測である。よって、2回目の質量の計測結果の比較対象は、S100での1回目の質量の計測結果であり、3回目以降の質量の計測結果の比較対象は、当該S105で前回計測した計測結果である。2回目以降の質量の計測は、所定の時間間隔で実行される。
【0048】
制御部23は、油貯留部50の質量が増加していると判定した場合には(S105:Yes)、油貯留部50の質量の増加が無くなるまで待つ。
【0049】
制御部23は、油貯留部50の質量が増加していないと判定した場合には(S105:No)、乗りかご5が停止しているか否かを判定する(S106)。制御部23は、乗りかご5が停止しているか否かを示す情報をエレベータ制御盤13から取得して、当該情報に基づいて、乗りかご5が停止しているか否かを判定する。制御部23は、乗りかご5が停止していない、すなわち乗りかご5が動いていると判定した場合には(S106:No)、乗りかご5が停止するのを待つ。
【0050】
制御部23は、乗りかご5が停止していると判定した場合には(S106:Yes)、呼び登録があるか否かを判定する(S107)。制御部23は、呼び登録があるか否かを示す情報をエレベータ制御盤13から取得して、当該情報に基づいて、呼び登録があるか否かを判定する。制御部23は、呼び登録があると判定した場合には(S107:Yes)、呼び登録が無くなるのを待つ。
【0051】
制御部23は、乗りかご5が停止していると判定し(S106:Yes)、且つ呼び登録が無いと判定した場合には(S107:No)、給油部材31を給油位置へ移動させる(S108)。制御部23は、部材移動機構32を制御することにより、給油部材31を退避位置から給油位置へ移動させる。これにより、給油部材31がロープ6と接触し、給油部21によるロープ6に対する油の供給が再開する。
【0052】
また、S101において、制御部23は、計測された油貯留部50の質量が閾値を超えていないと判定した場合(S101:No)、処理を終了する。
【0053】
上記処理のS104において発報がされた場合、例えば、保守員等の作業員は、保守作業等のエレベータ1の点検時に、油貯留部50から油を除去して油貯留部50を清掃する。また、作業員は、制御部23に保存された質量データをリセットする。質量データは、計測された油貯留部50の質量のデータである。制御部23に保存された質量データのリセットは、例えば、エレベータ制御盤13を介して行うことができる。
【0054】
以上のように、本実施形態では、エレベータ1のロープ給油装置20は、給油部21と、検出部22と、制御部23と、を備える。給油部21は、エレベータ1の巻上シーブ14(シーブ)に巻き掛けられるとともにエレベータ1の乗りかご5に結合され乗りかご5を昇降させるロープ6に、油100を供給する。検出部22は、ロープ6からの油100の飛散に関する物理量を検出する。制御部23は、検出された物理量に基づいてロープ6からの油100の飛散を検出した場合に、給油部21にロープ6に対する油100の供給を停止させる。
【0055】
このような構成によれば、制御部23が、検出された物理量に基づいてロープ6からの油100の飛散を検出した場合に、給油部21にロープ6に対する油100の供給を停止させるので、ロープ6からの油100によって乗りかご5等のロープ6の周囲のエレベータ1の構成要素が汚れるのを抑制することができる。よって、上記構成によれば、油100汚れに対する作業員(保守員)の清掃作業の手間が低減されるので、作業員の保守作業の負荷を低減することができる。例えば、上記構成によれば、ロープ6からの油100の飛散が抑制されるので、飛散する油100が乗りかご5内へ漏れたり、昇降路2や乗りかご5の上部が汚れたりするのが抑制される。よって、作業員がそれらを定期的に掃除する回数を削減することができる。
【0056】
また、給油部21は、タンク30と、給油部材31と、部材移動機構32と、を有する。タンク30は、油100を貯留する。給油部材31は、タンク30内の油100に浸される第1の端部31aと、ロープ6に接触する第2の端部31bと、を有し、タンク30内の油100をロープ6に移動させる。部材移動機構32は、第2の端部31bがロープ6に接触する給油位置と、第2の端部31bがロープ6から離間する退避位置との間で、給油部材31を移動可能である。制御部23は、検出された物理量に基づいてロープ6からの油100の飛散を検出した場合に、部材移動機構32に給油部材31を給油位置から退避位置に移動させることにより、給油部21にロープ6に対する油100の供給を停止させる。第1の端部31aと第2の端部31bとは、一方が一端部とも称され、他方が他端部とも称される。
【0057】
このような構成によれば、制御部23が、部材移動機構32に給油部材31を給油位置から退避位置に移動させることにより、給油部21にロープ6に対する油100の供給を停止させるので、比較的短時間でロープ6に対する油100の供給を停止させることができる。
【0058】
また、検出部22は、油貯留部50と、ロードセル51(計測部)と、を有する。油貯留部50は、ロープ6における巻上シーブ14に巻き掛けられた第1の部分6a(部分)と対向し、ロープ6から飛散した油100を受け入れて貯留する。ロードセル51は、物理量として油貯留部50の質量を計測する。
【0059】
このような構成によれば、制御部23は、油貯留部50の質量に基づいて、ロープ6からの油100の飛散を検出することができる。
【0060】
また、本実施形態のエレベータ1のロープ給油方法は、複数の工程を含む。一つの工程は、給油部21が、エレベータ1の巻上シーブ14に巻き掛けられるとともにエレベータ1の乗りかご5に結合され乗りかご5を昇降させるロープ6に、油100を供給する工程である。別の一つの工程は、検出部22が、ロープ6からの前記油100の飛散に関する物理量を検出する工程である。別の一つの工程は、制御部23が、検出された物理量に基づいてロープ6からの油100の飛散を検出した場合に、給油部21にロープ6に対する油100の供給を停止させる工程である。
【0061】
このような構成によれば、制御部23が、検出された物理量に基づいてロープ6からの油100の飛散を検出した場合に、給油部21にロープ6に対する油100の供給を停止させるので、ロープ6からの油100によって乗りかご5等のロープ6の周囲のエレベータ1の構成要素が汚れるのを抑制することができる。よって、上記構成によれば、油100汚れに対する作業員(保守員)の清掃作業の手間が低減されるので、作業員の保守作業の負荷を低減することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、給油部材31を給油位置と退避位置との間に移動させる場合に、タンク30は移動しない構成の例が示されたが、これに限定されない。例えば、給油部材31を給油位置と退避位置との間に移動させる場合に、タンク30も給油部材31と一体に移動する構成であってもよい。
【0063】
<第2の実施形態>
図8は、第2の実施形態のロープ給油装置20の概略構成を示す図であって、ロープ給油装置20の給油状態を示す図である。
図9は、第2の実施形態のロープ給油装置20の概略構成を示す図であって、ロープ給油装置20の給油停止状態を示す図である。
【0064】
図8及び
図9に示されるように、本実施形態は、ロープ給油装置20の構成が第1の実施形態に対して主に異なる。
【0065】
本実施形態のロープ給油装置20のタンク30には、隔壁60が設けられている。また、本実施形態のロープ給油装置20は、部材移動機構32(
図2)に替えて油移動装置61を備える。
【0066】
隔壁60は、タンク30内に設けられ、油室30aを、第1の油室30aaと第2の油室30abとに仕切り、第1の油室30aaと第2の油室30abとを隔てている。第1の油室30aaと第2の油室30abとは、それぞれ油100を貯留可能である。
【0067】
給油部材31の第1の端部31aは、第1の油室30aa内の油100に浸される。給油部材31の第2の端部31bは、ロープ6に接触する。給油部材31は、毛細管現象によって第1の油室30aa内の油100をロープ6に移動させる。本実施形態では、給油部材31は、移動しない。
【0068】
給油部材31によってロープ6に油100を給油する場合には、第1の油室30aaに油100が貯留される。給油部材31によるロープ6に対する油100の給油を停止する場合には、第1の油室30aa内の油が油移動装置61によって第2の油室30abに移動される。
【0069】
油移動装置61は、ポンプ62と、モータ63と、二つの管64,65と、を有する。ポンプ62は、モータ63によって回転駆動される。モータ63は、制御部23によって制御される。すなわち、ポンプ62は、モータ63を介して制御部23によって制御される。ポンプ62は、管64と接続された第1のポートと、管65と接続された第2のポートと、を有する。管64はポンプ62からタンク30の第1の油室30aaに伸びている。管64の下端部には、開口部66が設けられている。管65はポンプ62からタンク30の第2の油室30abに伸びている。管65の下端部には、開口部67が設けられている。
【0070】
上記構成では、モータ63によってポンプ62が正回転方向に回転駆動されると、ポンプ62が、管64の開口部66から、第1の油室30aa内の油100を吸い上げて、当該油を管65の開口部67から第2の油室30abに吐出する。これにより、第1の油室30aa内の油100が第2の油室30abに移動する。また、モータ63によってポンプ62が逆回転方向に回転駆動されると、ポンプ62が、管65の開口部67から、第2の油室30ab内の油100を吸い上げて、当該油を管64の開口部66から第1の油室30aaに吐出する。これにより、第2の油室30ab内の油100が第1の油室30aaに移動する。なお、ポンプ62が回転方向によらずに一方向にのみ油100を移動させる構成の場合には、ポンプ62の吸込み口と吐出口との接続先を、管64,65のいずれかに変更する変更機構を設けてもよい。この場合には、ポンプ62の吸込み口と吐出口との接続先を変更することにより、第1の油室30aaと第2の油室30abとの一方から他方に油100を移動させることができる。
【0071】
本実施形態では、ロープ6に対する給油時には、第1の油室30aaに油100が貯留されており、給油部材31がロープ6に油100を供給する。この状態から、制御部23は、検出部22にって検出された物理量すなわち油貯留部50の質量に基づいてロープ6からの油100の飛散を検出した場合に、ポンプ62に第1の油室30aa内の油100を第2の油室30abに移動させることにより、給油部21にロープ6に対する油100の供給を停止させる。このとき、制御部23は、ポンプ62を正回転させる。また、この状態から、制御部23は、ロープ6に対する油100の供給を再開する場合には、ポンプ62に第2の油室30ab内の油100を第1の油室30aaに移動させる。このとき、制御部23は、ポンプ62を逆回転させる。
【0072】
以上のように、本実施形態では、エレベータ1のロープ給油装置20は、給油部21は、タンク30と、給油部材31と、ポンプ62と、を有する。タンク30は、油100を貯留する第1の油室30aaと、第1の油室30aaに対して隔てられた第2の油室30abと、が設けられている。給油部材31は、第1の油室30aa内の油100に浸される第1の端部31aと、ロープ6に接触する第2の端部31bと、を有し、第1の油室30aa内の油100をロープ6に移動させる。ポンプ62は、第1の油室30aa内の油100を第2の油室30abに移動させる。制御部23は、検出された物理量に基づいてロープ6からの油100の飛散を検出した場合に、ポンプ62に第1の油室30aa内の油100を第2の油室30abに移動させることにより、給油部21にロープ6に対する油100の供給を停止させる。
【0073】
このような構成によれば、制御部23が、検出された物理量に基づいてロープ6からの油100の飛散を検出した場合に、ポンプ62に第1の油室30aa内の油100を第2の油室30abに移動させることにより、給油部21にロープ6に対する油100の供給を停止させるので、給油部材31をロープ6から離間させることなく、ロープ6に対する油100の供給を停止させることができる。
【0074】
なお、上記各実施形態では、エレベータ1が機械室8を備える例が示されたが、これに限定されない。例えば、ロープ給油装置20は、機械室8を備えないエレベータ1に対しても適用可能である。機械室8を備えないエレベータ1では、例えば、巻上機9は、昇降路2の上部(天井付近)に設けられる。また、ロープ給油装置20の給油部21及び検出部22は、巻上シーブ14の近傍に配置され得る。この場合、ロープ給油装置20の給油部21及び検出部22は、巻上機9が固定されたマシンベッド上に配置され得る。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1…エレベータ、5…乗りかご、6…ロープ、6a…第1の部分(部分)、14…巻上シーブ(シーブ)、20…ロープ給油装置、21…給油部、22…検出部、23…制御部、30…タンク、30aa…第1の油室、30ab…第2の油室、31…給油部材、31a…第1の端部、31b…第2の端部、32…部材移動機構、50…油貯留部、51…ロードセル(計測部)、62…ポンプ、100…油。
【要約】
【課題】保守作業の負荷を低減することができる、エレベータのロープ給油装置及びエレベータのロープ給油方法を得る。
【解決手段】実施形態のエレベータのロープ給油装置は、給油部と、検出部と、制御部と、を備える。給油部は、エレベータのシーブに巻き掛けられるとともにエレベータの乗りかごに結合され乗りかごを昇降させるロープに、油を供給する。検出部は、ロープからの油の飛散に関する物理量を検出する。制御部は、検出された物理量に基づいてロープからの油の飛散を検出した場合に、給油部にロープに対する油の供給を停止させる。
【選択図】
図1