(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】自律移動体、乗客コンベア制御システムおよび乗客コンベア制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20250127BHJP
【FI】
B66B31/00 D
(21)【出願番号】P 2024094922
(22)【出願日】2024-06-12
【審査請求日】2024-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川西 洋司
(72)【発明者】
【氏名】西田 岳人
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-167662(JP,A)
【文献】特開2024-78799(JP,A)
【文献】特開2022-025177(JP,A)
【文献】特開2018-002407(JP,A)
【文献】特開2000-001274(JP,A)
【文献】特開2021-144735(JP,A)
【文献】特許第6516074(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2019/0369622(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
B66B 5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアに自律的に移動可能な自律移動体であって、
撮像部と、
音声入力部と、
前記撮像部からの撮像画像および前記音声入力部からの音声により、前記乗客コンベアで点検作業を実施している保守員の作業を監視する監視部と、
前記音声入力部により入力された前記保守員からの発話内容を、音声認識する音声認識部と、
音声認識された発話に基づいて、前記乗客コンベアの運転に関する指示を、前記乗客コンベアを制御する制御装置に対して行う制御部と、
を備える自律移動体。
【請求項2】
一または複数のキーワードと、前記乗客コンベアの運転に関する指示と、が対応付けられたキーワードデータベースを記憶する記憶部、をさらに備え、
前記音声認識部は、前記音声入力部により入力された前記保守員からの発話内容を音声認識して、キーワードを抽出し、
前記制御部は、前記キーワードデータベースにおいて、抽出されたキーワードに対応する前記運転に関する指示を前記制御装置に対して行う、
請求項1に記載の自律移動体。
【請求項3】
出力部、をさらに備え、
前記制御部は、前記キーワードデータベースにおいて、抽出されたキーワードに対応する前記運転に関する指示が存在しない場合には、前記抽出されたキーワードに対する運転指示がないことを、前記出力部に出力する、
請求項2に記載の自律移動体。
【請求項4】
前記キーワードデータベースは、第1のキーワードに対して、前記運転の開始指示が対応付けられており、
前記監視部は、前記音声認識部より前記保守員が前記乗客コンベアの点検作業中に発話した音声信号から前記第1のキーワードが抽出された場合、前記撮像画像により前記保守員の周囲の状況から前記運転の開始を、実行可能か否かを判断し、
前記制御部は、前記監視部により、前記運転の開始を実行可能であると判断された場合に、前記運転の開始指示を、前記制御装置に対して行う、
請求項2に記載の自律移動体。
【請求項5】
出力部、をさらに備え、
前記音声認識部は、前記監視部により、前記運転の開始を実行可能であると判断された場合に、音声認識した発話内容を、前記出力部に出力する、
請求項4に記載の自律移動体。
【請求項6】
前記記憶部は、さらに、前記保守員の人数を予め記憶し、
前記音声認識部は、点検作業の開始後に、前記音声入力部から入力されるすべての発話を解析し、
前記制御部は、解析された発話に基づいて、予め記憶された前記人数の前記保守員が前記乗客コンベアの乗降口付近に存在するか否かを判断し、存在する場合に、前記運転の開始の指示を、前記制御装置に対して行う、
請求項2に記載の自律移動体。
【請求項7】
乗客コンベアに設けられ、前記乗客コンベアを制御する制御装置と、前記乗客コンベアに自律的に移動可能な自律移動体と、前記制御装置とネットワークで接続され、前記乗客コンベアの踏段の昇降を制御する昇降機用サーバと、前記昇降機用サーバと前記自律移動体とにネットワークで接続され、前記自律移動体を制御する自律移動体用サーバと、を備える乗客コンベア制御システムであって、
前記自律移動体は、
撮像部と、
音声入力部と、
前記自律移動体用サーバと通信可能な通信部と、
前記撮像部により、前記乗客コンベアの乗降口付近で点検作業を実施している保守員の撮像画像を取得して、前記保守員の作業を監視する監視部と、
前記音声入力部により入力された前記保守員からの発話内容を、音声認識する音声認識部と、
音声認識された発話に基づいて、前記制御装置に対する、前記乗客コンベアの運転に関する指示を、前記自律移動体用サーバに対して送信する制御部と、を備え、
前記制御装置は、
前記乗客コンベアの運転に関する指示を、前記自律移動体用サーバ、前記昇降機用サーバを介して、受信する第2の通信部と、
第2の通信部が、前記乗客コンベアの運転に関する指示を受信した場合、運転に関する指示に応じて前記乗客コンベアを制御する第2の制御部と、
を備える乗客コンベア制御システム。
【請求項8】
前記第2の制御部は、前記乗客コンベアに設けられた操作部、または、前記保守員が所持する端末装置、に対して、作業開始の操作指示が行われた場合には、運転に関する指示を示す運転指示より優先して、前記作業開始の操作指示に基づき、前記乗客コンベアの運転を停止する、
請求項7に記載の乗客コンベア制御システム。
【請求項9】
乗客コンベアに設けられ、前記乗客コンベアを制御する制御装置と、前記乗客コンベアに自律的に移動可能な自律移動体と、前記制御装置とネットワークで接続され、前記乗客コンベアの踏段の昇降を制御する昇降機用サーバと、前記昇降機用サーバと前記自律移動体とにネットワークで接続され、前記自律移動体を制御する自律移動体用サーバと、を備える乗客コンベア制御システムで実行される乗客コンベア制御方法であって、
前記自律移動体は、
撮像部と、
音声入力部と、
前記自律移動体用サーバと通信可能な通信部と、を備え、
前記撮像部により、前記乗客コンベアの乗降口付近で点検作業を実施している保守員の撮像画像を取得して、前記保守員の作業を監視するステップと、
前記音声入力部により入力された前記保守員からの発話内容を、音声認識する音声認識ステップと、
音声認識された発話に基づいて、前記制御装置に対する、前記乗客コンベアの運転に関する指示を、前記自律移動体用サーバに対して送信するステップと、
前記乗客コンベアの運転に関する指示を、前記自律移動体用サーバ、前記昇降機用サーバを介して、受信するステップと、
第前記乗客コンベアの運転に関する指示を受信した場合、運転に関する指示に応じて前記乗客コンベアを制御するステップと、
を含む乗客コンベア制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自律移動体、乗客コンベア制御システムおよび乗客コンベア制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータ等の乗客コンベアの保守点検作業は、通常、複数の保守員で行われることが多い。また、従来から、乗客コンベアとしてのエスカレータの保守点検を保守専用のロボット等の自律移動体で行う技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-167662号公報
【文献】特許第6516074号公報
【文献】特開2019-1613号公報
【文献】特開2019-1612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、少子高齢化や保守員のなり手不足から、乗客コンベアの保守点検作業を保守員一人で行うことで、保守点検作業の効率を向上させること求められてきている。一方、保守員一人で乗客コンベアの保守点検作業を行う場合、保守員および乗客コンベア本体の安全性を確保することが必要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の自律移動体は、乗客コンベアに自律的に移動可能な自律移動体であって、撮像部と、音声入力部と、前記撮像部からの撮像画像および前記音声入力部からの音声により、前記乗客コンベアで点検作業を実施している保守員の作業を監視する監視部と、前記音声入力部により入力された前記保守員からの発話内容を、音声認識する音声認識部と、音声認識された発話に基づいて、前記乗客コンベアの運転に関する指示を、前記乗客コンベアを制御する制御装置に対して行う制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるエスカレータ制御システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態におけるエスカレータの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる制御装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる昇降機クラウド内のサーバの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかるロボットクラウド内のサーバの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかるロボットの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るキーワードDBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るエスカレータ制御処理の全体の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るエスカレータ制御処理の全体の流れ(続き)の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
【0008】
(実施形態)
図1は、実施形態にかかるエスカレータ制御システム1000の全体構成の一例を示す図である。なお、
図1の例では、エスカレータ1の保守点検作業を行う保守員5も示している。
【0009】
本実施形態のエスカレータ制御システム1000は、
図1に示すように、エスカレータ1と、エスカレータ1に設けられる制御装置100と、コントローラ150と、管制室160と、昇降機クラウド200内のサーバ210と、ロボットクラウド300内のサーバ310と、監視センター400と、自律移動体としてのロボット500と、保守員5が所持するタブレット端末600(以下、「タブレット600」と称する)と、を主に備えている。
【0010】
本実施形態では、オフィスビルやマンションビル等のビル3(建物の一例)に、一または複数のエスカレータ1が設置されている。
図1の例では、単一のエスカレータ1しか図示していないが、エスカレータ1を複数設置することができる。また、制御装置100は、複数のエスカレータ1のそれぞれに設けられる。
【0011】
まず、エスカレータ1の詳細について説明する。
図2は、実施形態にかかるエスカレータ1の構成について説明するための図である。なお、
図2には、保守員5およびタブレット600と、ロボット500も示している。
【0012】
図2に示すように、エスカレータ制御システム1000は、エスカレータ1と、ロボット500と、を備えている。
【0013】
エスカレータ1は、複数の踏段110、欄干パネル191、手摺りベルト192、乗降口193、乗降板104、スカートガードパネル105、インナーデッキ106、アウターデッキ107、及びインレット108、キースイッチ152、制御装置100、駆動装置120を備える。エスカレータ1は、乗客コンベアの一例である。
【0014】
複数の踏段110は、無端状に連結されている。各々の踏段110は、例えばアルミダイカストから形成され、設定された傾斜角度を有してトラス170によって支持されている。また、各々の踏段110は、駆動装置120の図示しない駆動モータにより、上下階における乗降口193間の階段状の乗り台として循環移動する。すなわち、各々の踏段110は、上階の乗降口193と下階の乗降口193との間を周回しながら移動する。これにより、各々の踏段110は、エスカレータ1の利用者の足場となる。
【0015】
欄干パネル191は、エスカレータ1の幅方向において、複数の踏段110の両側に設置されている。つまり、1対の欄干パネル191が、複数の踏段110を挟んで対向して設置されている。欄干パネル191は、例えば透明のガラスやアクリルなどによって形成されている。
【0016】
手摺りベルト192は、エスカレータ1に乗っている際に利用者が手を掛けることができるよう構成されている。手摺りベルト192は、無端状のベルトであり、1対の欄干パネル191のそれぞれの周縁部に移動可能に巻き付けられている。手摺りベルト192は、駆動装置120の駆動モータにより各々の踏段110の移動に同期して移動する。手摺りベルト192は、例えばゴムなどで形成されている。
【0017】
乗降板104は、上下階に位置する乗降口193にそれぞれ設けられている。乗降板104は、利用者がエスカレータ1に乗降する際の足場となるほか、取り外し可能に設置されている。乗降板104の踏段110に面する端部には櫛歯状のコムプレート104cが設けられている。乗降板104の下には、駆動モータ及び折り畳まれた踏段110等が格納される。なお、これ以降、コムプレート104cをコム104cと称する場合がある。
【0018】
つまり、上下階の間で階段状に並ぶ複数の踏段110は、上下階の乗降板104の近傍では互いに略水平となり、入口側の乗降板104下方から引き出され、出口側の乗降板104下方へと引き込まれる。
【0019】
スカートガードパネル105は、複数の踏段110の幅方向両端部の近傍で、エスカレータ1の延伸方向に延びる。スカートガードパネル105は、上下階の乗降口193近傍に設置される2対の先端パネル105fと、上下階の先端パネル105fの間に設置される複数の中間パネル105mとによって構成されている。
【0020】
すなわち、1対の先端パネル105fは、上階の乗降板104近傍に踏段110を挟んで対向して設置される。これらの先端パネル105fは、複数の踏段110の移動方向において、コムプレート104cの前後に跨る位置に設置されている。
【0021】
また、もう1対の先端パネル105fは、下階の乗降板104近傍に踏段110を挟んで対向して設置される。これらの先端パネル105fは、複数の踏段110の移動方向において、コムプレート104cの前後に跨る位置に設置されている。
【0022】
複数の踏段110の幅方向片側の上下階に設置される先端パネル105fの間には、これらを接続するように複数の中間パネル105mが配列されている。また、複数の踏段110の幅方向もう一方側の上下階に設置される先端パネル105fの間にも、これらを接続するように複数の中間パネル105mが配列されている。
【0023】
インナーデッキ106は、スカートガードパネル105の上端部を覆う。アウターデッキ107は、欄干パネル191を挟んでインナーデッキ106に隣接して設置されている。スカートガードパネル105、インナーデッキ106、及びアウターデッキ107等で囲われた空間内には、例えば図示しない操作盤に接続される機器およびその他の配電機器等が収納されている。
【0024】
インレット108は、上下階の乗降口193近傍に、それぞれの先端パネル105fに接続されるように設置される。上下階の乗降口193のうち、入口側に設置される1対のインレット108からは、それぞれの手摺りベルト192が繰り出される。また、上下階の乗降口193のうち、出口側に設置される1対のインレット108には、それぞれの手摺りベルト192が繰り込まれる。
【0025】
乗降板104の下方には、制御装置100が設けられている。制御装置100は、エスカレータ1の制御を行う装置である。制御装置100の詳細については後述する。
また、乗降板104の下方には、所定の範囲の空間であるトラス170が設けられており、このトラス170内に保守員5が入って保守点検作業(保守作業、点検作業と称する場合もある)を実施する。
【0026】
上下階の双方において、インレット108の一方から踏段110側の中間パネル105mには、キースイッチ152が設けられている。このキースイッチ152は、制御装置100と有線または無線で接続されている。
キースイッチ152は、押下可能なボタンで構成される。保守員5等がキースイッチ152を押下することで、切替信号が制御装置100に送出され、制御装置100側で、エスカレータ1の運転モードを通常運転と保守運転とで切り替えるようになっている。保守運転とは、点検作業を実施するための運転である。ここで、キースイッチ152は、操作部の一例である。
【0027】
図2では、乗降口193の手前に、安全柵175が設置された状態を示している。安全柵175は、通常の運転時はなく、点検作業を実施する際に設置され、一般の利用者がエスカレータ1に入ることを阻止するための柵である。
【0028】
次に、制御装置100の詳細について説明する。
図3は、実施形態に係る制御装置100は、
図3に示すように、キースイッチ152と有線または無線で接続されている。
制御装置100は、
図3に示すように、通信部101と、制御部102と、駆動制御部103と、を主に備えている。
通信部101は、コントローラ150介して昇降機クラウド200のサーバ210との通信を行う処理部である。
制御部102は、エスカレータ1の各種制御を行う。具体的には、制御部102は、キースイッチ152からの指示や昇降機クラウド200のサーバ210からの指示により、通常運転と保守運転とを切り替える。
駆動制御部103は、複数の踏段110の巡回移動の駆動を制御する。
【0029】
図1に戻り、コントローラ150は、ネットワークで昇降機クラウド200内のサーバ210に接続される。コントローラ150は、制御装置100とサーバ210との間の通信を制御し、制御装置100とサーバ210との間でやり取りされる各種信号を仲介するためのインターフェース機能およびハブ機能を備えた仲介装置である。コントローラ150は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等を備えたコンピュータの構成となっている。
【0030】
管制室160には、ビル3の管理人が在席し、制御装置100に対する各種指示を与える。また、管制室160の管理人は、PCや端末装置を介して、制御装置100からメール等により各種指示を受信する。
【0031】
昇降機クラウド200内のサーバ210は、エスカレータ1に対する各種制御を、コントローラ150を介して制御装置100に指示したり、制御装置100からの各種要求や各種データを、コントローラ150を介して受信する。昇降機クラウド200内のサーバ210は、ネットワークで監視センター400(社内サーバ)とロボットクラウド300のサーバ310とに接続される。
【0032】
監視センター400には、不図示の社内サーバが設置されている。社内サーバは、エスカレータ1の関連会社内に設置されるサーバであり、エスカレータ1の保守管理や遠隔監視に必要な情報を、エスカレータ1より収集している。これによれば、エスカレータ1に不具合が発生した場合に、保守員は、監視センター400の社内サーバに収集された保守管理に必要な情報を参照して、当該発生した不具合に対応することが可能である。また、昇降機クラウド200を通じて機能やサービスが実行される際、必要に応じて監視センター400の社内サーバにアクセスして建物やエスカレータ情報を参照したり、保守員がエスカレータ1の管理に必要な情報を取得したりすることが可能である。
【0033】
ロボットクラウド300のサーバ310は、昇降機クラウド200のサーバ210から各種要求や各種データを受信する。ロボットクラウド300のサーバ310は、ネットワークで、ビル3内の一または複数のロボット500と接続されており、ロボット500のそれぞれに対して各種指示を送信する。
【0034】
昇降機クラウド200のサーバ210、ロボットクラウド300のサーバ310の詳細については後述する。
【0035】
タブレット600は、保守員5が所持する端末装置であり、制御装置100からの点検開始の指示等を表示したり、点検作業が終了した場合に、点検終了の通知を入力して制御装置100へ送信する。
【0036】
次に、昇降機クラウド200内のサーバ210について説明する。
図4は、実施形態にかかる昇降機クラウド200内のサーバ210の機能的構成の一例を示すブロック図である。サーバ210は、
図4に示すように、一般的なコンピュータの構成として、制御部211と、通信部212と、記憶部220と、を主に備える。
【0037】
記憶部220は、例えばROMやRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)である。記憶部220には、各種プログラムが記憶される。
【0038】
通信部212は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、サーバ210とコントローラ150との間の通信処理や、サーバ210とロボットクラウド300内のサーバ310との間の通信処理を行う。
【0039】
制御部211は、ハードウェアプロセッサ(CPU)からなる。制御部211は、通信部212が、ロボットクラウド300のサーバ310から、ロボット500が指定した、ロボットIDと、出発階と、行き先階と、を含む情報を受信した場合、当該ロボットIDと出発階と行き先階とを含む行き先階呼びを生成する。
【0040】
次に、ロボットクラウド300内のサーバ310について説明する。
図5は、実施形態にかかるロボットクラウド300内のサーバ310の機能的構成の一例を示すブロック図である。
サーバ310は、
図5に示すように、一般的なコンピュータの構成として、制御部311と、通信部312と、記憶部320と、を主に備える。
【0041】
記憶部320は、例えばROMやRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)である。記憶部320には、各種プログラムが記憶されている。
【0042】
通信部312は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、サーバ310と昇降機クラウド200内のサーバ210との間の通信処理や、サーバ310とロボット500との間の通信処理を行う。
【0043】
本実施形態では、通信部312は、ロボット500から、ロボット500が指定した、ロボットIDと、出発階と、行き先階と、を含む情報を受信し、当該情報を、昇降機クラウド200のサーバ210に送信する。
【0044】
制御部311は、ハードウェアプロセッサ(CPU)からなる。制御部311は、ロボット500に関するエスカレータ1に関する各種処理の制御を行う。
【0045】
次に、ロボット500について説明する。
図6は、実施形態にかかるロボット500の機能的構成の一例を示すブロック図である。ロボット500は、
図6に示すように、カメラ506と、マイク507と、スピーカ504と、各種センサ505と、制御部501と、通信部502と、音声認識部508と、監視部509と、駆動部503と、記憶部510と、を主に備えている。
【0046】
カメラ506は、ロボット500の周囲を撮像し、撮像画像をロボットクラウド300のサーバ310に送信する。
【0047】
さらに撮像画像を制御装置100に送信するようにロボット500を構成してもよい。カメラ506は、撮像部の一例である。
【0048】
マイク507は、ロボット500の周囲の音声を入力する入力デバイスである。本実施形態では、ロボット500の近傍にいる保守員5の発話を入力する。マイク507は、音声入力部の一例である。
【0049】
スピーカ504は、制御部501等の指示により各種内容を音声出力する出力デバイスである。スピーカ504は、出力部の一例である。
【0050】
各種センサ505は、例えば、距離センサ、振動センサ、人感センサ、加速度センサ、荷重センサ等が該当するが、これらに限定されるものではない。
【0051】
通信部502は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、ロボット500とロボットクラウド300内のサーバ310との間の通信処理を行う。
【0052】
記憶部510は、例えばROMやRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)である。記憶部510には、各種プログラムが記憶される。記憶部510には、キーワードデータベース511(以下、「キーワードDB511」と称する)、一または複数のキーワードと、エスカレータ1の運転信号と、が少なくとも対応付けられたデータベースである。
【0053】
図7は、実施形態に係るキーワードDB511のデータ構造の一例を示す図である。
本実施形態に係るキーワードDB511には、
図7に示すように、保守員5の音声と、ロボット500のキーワードと、エスカレータ1の運転信号と、監視作業/状態と、ロボット500のセンサとが対応付けられている。
【0054】
保守員5の音声は、保守員5が発話する可能性のある音声で、エスカレータ1の踏段110の移動に関する発話内容を示す。保守員5の音声の例としては、上昇運転、下降運転、停止、微少運転等がある。ここで、微少運転は、エスカレータ1を少しだけ運転し、すぐ停止することを意味する。
【0055】
ロボット500の保存キーワードは、保守員5の音声から抽出されるキーワードであり、保守員5の音声の内容から抽出されうるキーワードが登録される。ここで、上昇運転、下降運転、微少運転のそれぞれに対応するキーワードは、第1のキーワードの一例である。
【0056】
エスカレータ1の運転信号は、運転指示の一例である。エスカレータ1の運転信号は、キーワードに対応して制御部501が指示する内容である。ここでモータ稼働/ブレーキオフは、運転開始指示を意味し、モータ停止/ブレーキオンは、運転停止を意味する。
【0057】
監視作業/状態は、ロボット500が監視する作業および状態を示す。ロボットセンサは、ロボット500が監視作業を行う際に使用するセンサ(カメラ506、マイク507も含む)である。
【0058】
図6に戻り、音声認識部508は、マイク507により入力された前記保守員からの発話内容を音声認識する。本実施形態では、音声認識部508は、マイク507により入力された保守員5からの発話内容を音声認識して、発話内容からキーワードを抽出する。
また、音声認識部508は、音声認識した発話内容を、スピーカ504に出力する。ここで、出力タイミングとしては、例えば、音声認識された時点の他、保守員5の発話がエスカレータ1の運転開始の指示であり、後述する監視部509で、エスカレータ1の運転開始が可能と判断された時点があげられる。
【0059】
監視部509は、カメラ506からの撮像画像、マイク507からの音声あるいは、各種センサ505の検知信号により、前記エスカレータ1で点検作業を実施している保守員5の作業を監視する。例えば、監視部509は、乗降口193付近、トラス170内、踏段110上等で点検作業を実施している保守員5を監視する。
【0060】
具体的には、監視部509は、保守員5が不安全作業や手順等の逸脱をしているかを判断して、スピーカ504やLED(不図示)で保守員5に伝達する。また、監視部509は、不安全作業が保守員5の事故につながると予想される場合には、運転の停止指示信号をロボットクラウド300のサーバ310を経由して制御装置100に伝達し、保守員5の操作を禁止する。
【0061】
さらに、監視部509は、音声認識部508より保守員5がエスカレータ1の点検作業中に発話した音声信号から、運転の開始に対するキーワード(すなわち、上昇運転に対するキーワード、下降運転に対するキーワードあるいは微少運転に対するキーワードのいずれか)が抽出された場合、撮像画像により保守員5の周囲の状況から運転開始が実行可能か否かを判断する。具体的には、監視部509は、エスカレータ1の運転を開始して踏段110を移動させても、保守員5が安全な待機位置にいるか否かを判断する。そして、監視部509は、保守員5が安全な待機位置にいて、運転開始を実行可能と判断した場合には、スピーカ504に、保守員5の発話を出力する。
【0062】
駆動部503は、ロボット500の駆動を行って走行させる。
制御部501は、ハードウェアプロセッサ(CPU)からなる。制御部501は、エスカレータ1の通常運行時には、記憶部510の各種プログラムを読み出して実行することより、エスカレータ1での各種動作を実行する。制御部501は、ロボットクラウド300内のサーバ310からの指示により、駆動部503の駆動を制御して、走行制御を行う。
【0063】
本実施形態では、制御部501は、音声認識部508により音声認識された発話に基づいて、制御装置に対する、エスカレータ1の運転に関する指示を、通信部502を介してロボットクラウド300のサーバ310に送信する。
【0064】
具体的には、制御部501は、キーワードDB511データベースにおいて、音声認識部508で抽出されたキーワードに対応するエスカレータ運転信号を、通信部502を介してロボットクラウド300のサーバ310に送信する。これにより運転信号は、ロボットクラウド300のサーバ310、昇降機クラウド200のサーバ、コントローラ150を経由して、制御装置100に送信される。
【0065】
制御部501は、キーワードDB511データベースにおいて、音声認識部508で抽出されたキーワードに対応するエスカレータ運転信号が存在しない場合には、抽出されたキーワードに対する運転指示がないことを、スピーカ504に出力する。
【0066】
制御部501は、監視部509により、保守員5が運転開始のためのキーワードを含む発話を行った後、運転開始を実行可能であると判断された場合に、キーワードDB511において当該キーワードに対応する運転信号を、通信部502を介してロボットクラウド300のサーバ310に送信する。
【0067】
また、制御部501は、保守員5が運転停止のためのキーワードを含む発話を行った場合、キーワードDB511において当該キーワードに対応する運転信号を、通信部502を介してロボットクラウド300のサーバ310に送信する。
【0068】
なお、ロボット500の上記構成は一例であり、この他、タッチパネル等の入力部をさらに備えていてもよい。
【0069】
次に、以上のように構成された本実施形態に係るエスカレータ制御システム1000によるエスカレータ制御処理について説明する。
図8,9は、実施形態に係るエスカレータ制御処理の全体の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0070】
エスカレータ1は通常運転を行っているものとする(S101)。
エスカレータ1の点検作業を開始する保守員5は、エスカレータ1の乗降口193まで移動し、利用者がエスカレータ1に入らないように、乗降口193の手前に安全柵175を設置する(S102)。そして、保守員5がキースイッチ152を押下することで切替を指示する(S103)。すると、キースイッチ152から制御装置100に対して切替信号(保守運転への切替信号)が送出される(S104)。
【0071】
制御装置100では、通信部101が切替信号を受信すると、制御部102は、保守運転を実行する(S105)。次いで、通信部101は、保守運転切替通知を、コントローラ150を経由して、昇降機クラウド200のサーバ210に送信する(S106)。そして、駆動制御部103は、制御部102の指示を受けて、踏段110の移動を停止する(S107)。
【0072】
昇降機クラウド200のサーバ210では、通信部212は、制御装置100から保守運転切替通知を受信すると、受信した保守運転切替通知を、ロボットクラウド300のサーバ310に送信する(S108)。
【0073】
ロボットクラウド300のサーバ310では、通信部312は、昇降機クラウド200のサーバ210から保守運転切替通知を受信すると、ビル3の所定の場所で待機しているロボット500に対して、エスカレータ1への移動指令を送信する(S109)。
【0074】
ロボット500では、通信部502がロボットクラウド300のサーバ310から、移動指令を受信すると、駆動部503により、エスカレータ1の乗降口193に移動する(S110)。ロボット500は、エスカレータ1の乗降口193に到着すると、当該乗降口193で待機する(S111)。そして、通信部502は、ロボットクラウド300のサーバ310に、待機通知を送信する(S112)。
【0075】
この待機通知は、さらに、ロボットクラウド300のサーバ310から昇降機クラウド200のサーバ210ヘ送信され(S113)、次いで、昇降機クラウド200のサーバ210からコントローラ150を経由して、エスカレータ1の制御装置100に送信される(S114)。
【0076】
制御装置100では、通信部101が待機通知を受信すると、保守員5のタブレット600に、保守作業開始通知を送信する(S115)。保守員5は、保守作業開始通知をタブレット600で確認すると、トラス170へ入り、保守作業(点検作業)を開始する(S116)。そして、乗降口193で待機しているロボット500では、監視部509が上述したように、保守員5の作業を監視する(S117)。
【0077】
保守員5が踏段110を移動(例えば、上昇)してよいと判断した場合には、エスカレータ1の運転の開始指示(例えば、上昇運転)を意味する発声を行う(S118)。
【0078】
ロボット500では、マイク507でこの発声を集音する(S119)。そして、音声認識部508は、発話を音声認識してキーワードを抽出し、キーワードDB511においてキーワードに対応する運転の開始指示を取得する(S120)。次いで、監視部509は、撮像画像により保守員5の周囲の状況から運転開始を、実行可能か否かを確認する(S121)。
【0079】
そして、運転開始を実行可能な場合には、音声認識部508は、保守員5の発話を、スピーカ504に出力する。そして、通信部502は、運転の開始指示、具体的には、踏段110の移動指示を、ロボットクラウド300のサーバ310に送信する(S122)。この運転の開始指示としての移動指示は、さらに、ロボットクラウド300のサーバ310から昇降機クラウド200のサーバ210ヘ送信され(S123)、次いで、昇降機クラウド200のサーバ210からコントローラ150を経由して、エスカレータ1の制御装置100に送信される(S124)。
【0080】
制御装置100では、通信部101が移動指示を受信すると、駆動制御部103が駆動装置120を制御して、踏段110を移動させる(S125)。その後、ロボット500の監視部509は、引き続き、保守員5の保守作業(点検作業)を監視する(S126)。
【0081】
保守員5による保守作業が完了すると(S127)、保守員5がトラス170から外へでて乗降板104でトラス170を閉じる(S128)。そして、保守員5は、キースイッチ152を押下することで切り替える(S129)。すると、キースイッチ152から制御装置100に対して切替信号(通常運転への切替信号)が送出される(S130)。
【0082】
制御装置100では、通信部101が切替信号を受信すると、通信部101は、通常運転切替通知を、コントローラ150を経由して、昇降機クラウド200のサーバ210に送信する(S131)。この通常運転切替通知は、さらに、昇降機クラウド200のサーバ210からロボットクラウド300のサーバ310へ送信され(S132)、次いで、ロボットクラウド300のサーバ310からロボット500へ送信される(S133)。
【0083】
ロボット500では、通信部502が通常運転切替通知を受信すると、監視部509は、撮像画像により保守員5の周囲の状況から運転開始が実行可能か否かを確認する(S134)。
【0084】
そして、運転開始を実行可能な場合には、通信部502は、通常運転復帰指令を、ロボットクラウド300のサーバ310に送信する(S135)。この通常運転復帰指令は、さらに、ロボットクラウド300のサーバ310から昇降機クラウド200のサーバ210ヘ送信され(S136)、次いで、昇降機クラウド200のサーバ210からコントローラ150を経由して、エスカレータ1の制御装置100に送信される(S137)。
【0085】
制御装置100では、通信部101が通常運転復帰指令を受信すると、制御部102は、通常運転を実行する(S138)。これにより、駆動制御部103による通常運転における踏段110の移動が行われる。
【0086】
このように本実施形態に係るロボット500は、カメラ506からの撮像画像およびマイク507からの音声により、エスカレータ1で保守点検作業を実施している保守員5の作業を監視する監視部509と、マイク507により入力された保守員5からの発話内容を、音声認識する音声認識部508と、音声認識された発話に基づいて、エスカレータ1の運転に関する指示を、制御装置100に対して行う制御部501と、を備える。
【0087】
すなわち、本実施形態では、保守員5によるエスカレータ1の保守点検作業の際に、保守員一人に加えロボット500に帯同させて、保守点検作業を監視し、保守員5の発話を収集してエスカレータ1の運転に関する指示を行っている。従って、本実施形態によれば、エスカレータ1の安全性を確保しつつ、保守点検作業の効率を向上させることができる。
【0088】
また、本実施形態に係るロボット500は、一または複数のキーワードと、エスカレータ1の運転信号(運転に関する指示)と、が対応付けられたキーワードDB511を記憶する記憶部510、をさらに備え、音声認識部508は、マイク507により入力された保守員5からの発話内容を音声認識して、キーワードを抽出し、制御部501は、キーワードDB511において、抽出されたキーワードに対応する運転信号(運転に関する指示)を制御装置100に対して行う。
【0089】
すなわち、本実施形態では、運転信号(運転に関する指示を予め発話のキーワードと対応付けておいて、保守員5の発話からキーワードを抽出して、キーワードに対応付けられた運転に関する指示を行っている。従って、本実施形態によれば、エスカレータ1の安全性を確保しつつ、保守点検作業の効率をより向上させることができる。
【0090】
また、本実施形態に係るロボット500では キーワードDB511は、第1のキーワードに対して、運転の開始指示が対応付けられており、監視部509は、音声認識部508より保守員5がエスカレータ1の保守点検作業中に発話した音声信号から第1のキーワードが抽出された場合、撮像画像や音声などにより保守員5の周囲の状況から運転開始を実行可能か否か、すなわち安全性を確保できるか否かを判断し、制御部501は、監視部509により、運転開始を実行可能である、すなわち安全性を確保できる判断された場合に、運転の開始指示を、制御装置100に対して行う。
【0091】
すなわち、本実施形態では、保守員5の発話からエスカレータ1の運転開始の指示があった場合には、保守員5の周囲の状況を監視して、安全性の面から運転開始を実行可能である場合に、運転開始の指示を行っている。従って、本実施形態によれば、エスカレータ1の安全性をより確実に確保しつつ、保守点検作業の効率をより向上させることができる。
【0092】
また、本実施形態に係るロボット500では 音声認識部508は、監視部509により、運転開始を実行可能であると判断された場合に、音声認識した発話内容を、スピーカ504に出力する。このため、本実施形態によれば、運転開始を実行可能であることを保守員5が容易に把握することができ、保守点検作業の効率をより向上させることができる。
【0093】
(変形例)
上記実施形態には、種々の変形例が考えられる。
例えば、ロボット500において、キーワードDB511において、抽出されたキーワードに対応する運転に関する指示が存在しない場合には、抽出されたキーワードに対する運転指示がないことを、スピーカ504に出力するように制御部501を構成することができる。これにより、保守員5は、自分の発話による指示の誤り等を確認することができ、保守点検作業の効率をより向上させることができる。
【0094】
上記実施形態では、保守員5は一名であることを前提に説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、ロボット500において、保守員5の人数を予め記憶するように記憶部510を構成し、保守点検作業の開始後に、マイク507から入力されるすべての発話を解析するように音声認識部508を構成し、解析された発話に基づいて、予め記憶された人数の保守員5がエスカレータ1の乗降口193付近に存在するか否かを判断し、存在する場合に、運転開始の指示を、制御装置100に対して行うように制御部102を構成することができる。この場合には、保守員5が複数存在する場合においても、エスカレータ1の安全性を確保しつつ、保守点検作業の効率を向上させることができる。
【0095】
上記実施形態では、エスカレータ1に設けられたキースイッチ152、または、保守員5が所持するタブレット600、に対して、保守点検作業の開始の操作指示が行われた場合には、運転に関する指示を示す運転指示より優先して、保守点検作業の開始の操作指示に基づき、エスカレータ1の運転を停止するように制御装置100の制御部102を構成してもよい。この場合には、保守員5の操作を優先することで、エスカレータ1の安全性をより確実に確保しつつ、保守点検作業の効率をより向上させることができる。
【0096】
エスカレータ1の本体(例えば、インレット108や乗降板104の下、内デッキ、外デッキ)内に、ロボット500と通信可能なロボット通信装置を配置し、当該ロボット通信装置がエスカレータ1の制御装置100との通信を行うように構成してもよい。これにより、保守点検作業におけるロボット500との通信がより迅速となり、保守点検作業の効率をより向上させることができる。この場合において、通信形態は、Blootooth(登録商標)等の近距離無線やWi-Fi、赤外線通信等を用いることができる。
【0097】
保守員5が実施する保守点検作業の点検項目の一部を、ロボット500が実行するように構成することもできる。例えば、手摺りベルト192と踏段110の移動が同期しているか、乗降板104、手摺りベルト192、踏段110、コムプレート104cの表面の汚れや欠損、変形の有無、表示装置のドット欠けや輝度、表示内容等の点検項目をロボット500が実施するように構成してもよい。これにより、保守点検作業の効率をより向上させることができる。
【0098】
管制室160内のビル管理サーバや監視センター400やビル3に設置される地震計の測定結果を受信するように制御装置100を構成し、地震情報を受けとった場合は、ロボット500が保守員5の安全を確認してエスカレータ1の運転を制御装置100に停止指示するように構成してもよい。
【0099】
保守員5の発声した発話内でキーワードを音声認識部508で抽出できなかった場合には、再度発声することを促すアナウンスを、スピーカ504から数回、保守員5がいる方向に向けて出力するようにロボット500を構成してもよい。
【0100】
一台のエスカレータ1に対して二人の保守員5で保守点検作業を実施する場合には、ロボット500は二人の保守員5の作業状態を監視することもできる。例えば、一人の保守員5が上階で作業し、他方の保守員5が下階で作業している場合において、ロボット500は上階か下階のいずれかに位置し、ロボット500がいる階の保守員5と他方の階の保守員5の双方の作業を監視するように構成してもよい。これにより、エスカレータ1の安全性をより確実に確保しつつ、保守点検作業の効率をより向上させることができる。
【0101】
ロボット500を複数台利用する場合には、エスカレータ1の上階側と下階側の各乗降板104近傍に、それぞれ分かれて配置してもよい。この場合、複数台のロボット500同士は情報を連携して、エスカレータ1の制御装置100の制御や保守員5の状態を収集するように構成することができる。これにより、エスカレータ1の安全性をより確実に確保しつつ、保守点検作業の効率をより向上させることができる。
【0102】
ロボット500が保守員5の保守点検作業中に電池切れや故障により稼働しなくなったことの検出は、一定時間、ロボット500とロボットクラウド300のサーバ310との定期通信が行われなかったことで判断し、非稼働状態であると判断した場合は、判断以降のロボット500からの通信は遮断して、ロボットクラウド300のサーバ310から昇降機クラウド200のサーバ、さらに、制御装置100や監視センター400へロボット使用不可の連絡を行うように構成することができる。当該連絡後は、エスカレータ1のスピーカから、ロボット500を使用しない運転を行うようアナウンスを出力するように構成することができる。これにより、保守点検作業の効率をより向上させることができる。
【0103】
上記実施形態および変形例に係るロボット500は、CPUなどの制御装置と、ROMやRAMなどの記憶装置と、HDD、CDドライブ装置などの外部記憶装置と、ディスプレイ装置などの表示装置と、タッチパネルなどの入力装置を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0104】
上記実施形態および変形例に係るロボット500で実行される制御プログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
【0105】
上記実施形態および変形例に係るロボット500で実行される制御プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0106】
さらに、上記実施形態および変形例に係るロボット500で実行される制御プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上記実施形態および変形例に係るロボット500で実行される制御プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0107】
上記実施形態および変形例に係るロボット500で実行される制御プログラムは、上述した各機能部(制御部501、通信部502、音声認識部508、監視部509、駆動部503)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが上記ROMから制御プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、制御部501、通信部502、音声認識部508、監視部509、駆動部503が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
1…エスカレータ、5…保守員、100…制御装置、193…乗降口、104…乗降板、110…踏段、120…駆動装置、170…トラス、175…安全柵、150…コントローラ、152…キースイッチ(操作部)、160…管制室、200…昇降機クラウド、210…サーバ(昇降機用サーバ)、300…ロボットクラウド、310…サーバ(ロボット用サーバ)、500…ロボット(自律移動体)、501…制御部、502…通信部、503…駆動部、504…スピーカ(出力部)、505…各種センサ、506…カメラ(撮像部)、507…マイク(音声入力部)、508…音声認識部、509…監視部、510…記憶部、511…キーワードDB、600…タブレット端末(端末装置)、1000…エスカレータ制御システム。
【要約】
【課題】乗客コンベアの安全性を確保しつつ、保守点検作業の効率を向上させること。
【解決手段】実施形態の自律移動体は、乗客コンベアに自律的に移動可能な自律移動体であって、撮像部と、音声入力部と、前記撮像部からの撮像画像および前記音声入力部からの音声により、前記乗客コンベアで点検作業を実施している保守員の作業を監視する監視部と、前記音声入力部により入力された前記保守員からの発話内容を、音声認識する音声認識部と、音声認識された発話に基づいて、前記乗客コンベアの運転に関する指示を、前記乗客コンベアを制御する制御装置に対して行う制御部と、を備える。
【選択図】
図6