(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】自律移動体制御システムおよび自律移動体制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20250127BHJP
B66B 23/12 20060101ALI20250127BHJP
B66B 23/00 20060101ALI20250127BHJP
【FI】
B66B31/00 D
B66B23/12 G
B66B23/00 C
(21)【出願番号】P 2024099835
(22)【出願日】2024-06-20
【審査請求日】2024-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 龍太郎
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-078778(JP,A)
【文献】特開2023-167662(JP,A)
【文献】特開2005-242409(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113651220(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113651221(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
G05D 1/00-1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアと、自律的に移動して前記乗客コンベアに乗車可能な自律移動体と、を備える自律移動体制御システムにおいて、
前記乗客コンベアは、
無端状に連結されて移動する複数の踏段と、
前記乗客コンベアの乗り降りの場所である乗降口において前記複数の踏段が繰り出され、あるいは引き込まれる乗降板と、
前記複数の踏段を移動させる駆動装置と、
前記複数の踏段のそれぞれの上面と前記乗降板の上面とに設けられ、位置情報が記録された標識情報と、を備え、
前記自律移動体は、
駆動部と、
本体部の下方に向けて設けられ、前記標識情報を読み取り可能な検知部と、
前記検知部で読み取った前記標識情報から位置情報を取得する取得部と、
前記駆動部を制御して走行制御するとともに、取得した位置情報と、前記自律移動体の予め定められた位置情報と、に基づいて、前記自律移動体の位置を調整する走行制御部と、
を備える自律移動体制御システム。
【請求項2】
前記走行制御部は、前記取得した位置情報と、前記予め定められた位置情報と、を比較して、差分がある場合には、前記駆動部を制御して、前記予め定められた位置情報が示す位置まで前記自律移動体を移動させる、
請求項1に記載の自律移動体制御システム。
【請求項3】
前記標識情報は、前記複数の踏段のそれぞれの上面と前記乗降板の上面とに塗装されている、
請求項1に記載の自律移動体制御システム。
【請求項4】
前記走行制御部は、前記検知部により、前記標識情報を読み取れた場合に、前記乗降板および前記踏段に乗車するように、前記自律移動体を走行させ、前記検知部により、前記標識情報を読み取れなかった場合に、前記乗降板または前記踏段で停止させる、
請求項1に記載の自律移動体制御システム。
【請求項5】
乗客コンベアと、自律的に移動して前記乗客コンベアに乗車可能な自律移動体と、を備える自律移動体制御システムで実行される自律移動体制御方法であって、
前記乗客コンベアは、
無端状に連結されて移動する複数の踏段と、
前記乗客コンベアの乗り降りの場所である乗降口において前記複数の踏段が繰り出され、あるいは引き込まれる乗降板と、
前記複数の踏段を移動させる駆動装置と、
前記複数の踏段のそれぞれの上面と前記乗降板の上面とに設けられ、位置情報が記録された標識情報と、を備え、
前記自律移動体は、
駆動部と、
本体部の下方に向けて設けられ、前記標識情報を読み取り可能な検知部と、を備え、
前記検知部で読み取った前記標識情報から位置情報を取得するステップと、
前記駆動部を制御して走行制御するとともに、取得した位置情報と、前記自律移動体の予め定められた位置情報と、に基づいて、前記自律移動体の位置を調整するステップと、
を含む自律移動体制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自律移動体制御システムおよび自律移動体制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無端状に連結されて移動する複数の踏段を有するエスカレータ等の乗客コンベアの保守点検作業は、通常、保守員で行われることが多い。近年では、乗客コンベアとしてのエスカレータの保守点検を保守専用のロボット等の自律移動体で行う技術が知られている。
【0003】
このように、乗客コンベアの保守点検を自律移動体で行う場合には、自律移動体が乗客コンベアの乗降板から踏段に乗車する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2023-78778号公報
【文献】国際公開第2018/10982
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、自律移動体の乗降板や踏段上での停止位置は、自律移動体の転倒や脱落を未然に防止し、あるいは点検等の作業の位置決定をより的確に調整することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の自律移動体制御システムは、乗客コンベアと、自律的に移動して前記乗客コンベアに乗車可能な自律移動体と、を備える自律移動体制御システムにおいて、前記乗客コンベアは、無端状に連結されて移動する複数の踏段と、前記乗客コンベアの乗り降りの場所である乗降口において前記複数の踏段が繰り出され、あるいは引き込まれる乗降板と、前記複数の踏段を移動させる駆動装置と、前記複数の踏段のそれぞれの上面と前記乗降板の上面とに設けられ、位置情報が記録された標識情報と、を備え、前記自律移動体は、駆動部と、本体部の下方に向けて設けられ、前記標識情報を読み取り可能な検知部と、前記検知部で読み取った前記標識情報から位置情報を取得する取得部と、前記駆動部を制御して走行制御するとともに、取得した位置情報と、前記自律移動体の予め定められた位置情報と、に基づいて、前記自律移動体の位置を調整する走行制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるロボット制御システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態におけるエスカレータの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる踏段の上面および側面の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる乗降板上面および側面の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかるマーカの詳細の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかる制御装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかる昇降機クラウド内のサーバの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、実施形態にかかるロボットクラウド内のサーバの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、実施形態にかかるロボットの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係るロボット制御処理の全体の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る読取りセンサがマーカを読取る状態の例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係るロボット制御処理の全体の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図13】
図13は、実施形態にかかる位置補正処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態にかかるロボット制御システム1000の全体構成の一例を示す図である。
【0010】
本実施形態のロボット制御システム1000は、
図1に示すように、エスカレータ1と、エスカレータ1に設けられる制御装置100と、コントローラ150と、管制室160と、昇降機クラウド200内のサーバ210と、ロボットクラウド300内のサーバ310と、監視センター400と、自律移動体としてのロボット500と、を主に備えている。
【0011】
本実施形態では、オフィスビルやマンションビル等のビル3(建物の一例)に、一または複数のエスカレータ1が設置されている。
図1の例では、単一のエスカレータ1しか図示していないが、エスカレータ1を複数設置することができる。また、制御装置100は、複数のエスカレータ1のそれぞれに対応して設けられる。
【0012】
まず、エスカレータ1の詳細について説明する。
図2は、実施形態にかかるエスカレータ1の構成について説明するための図である。なお、
図2には、ロボット500も示している。
【0013】
図2に示すように、ロボット制御システム1000は、エスカレータ1と、ロボット500と、を備えている。
【0014】
エスカレータ1は、複数の踏段110、欄干パネル191、手摺りベルト192、乗降口193、乗降板104、スカートガードパネル105、インナーデッキ106、アウターデッキ107、及びインレット108、キースイッチ152、制御装置100、駆動装置120を備える。エスカレータ1は、乗客コンベアの一例である。
【0015】
複数の踏段110は、無端状に連結されている。各々の踏段110は、例えばアルミダイカストから形成され、設定された傾斜角度を有してトラス170によって支持されている。また、各々の踏段110は、駆動装置120の図示しない駆動モータにより、上下階における乗降口193間の階段状の乗り台として循環移動する。すなわち、各々の踏段110は、上階の乗降口193と下階の乗降口193との間を周回しながら移動する。これにより、各々の踏段110は、エスカレータ1の利用者の足場となる。ここで、乗降口193は、エスカレータ1への乗り降りする場所である。
【0016】
欄干パネル191は、エスカレータ1の幅方向において、複数の踏段110の両側に設置されている。つまり、1対の欄干パネル191が、複数の踏段110を挟んで対向して設置されている。欄干パネル191は、例えば透明のガラスやアクリルなどによって形成されている。
【0017】
手摺りベルト192は、エスカレータ1に乗っている際に利用者が手を掛けることができるよう構成されている。手摺りベルト192は、無端状のベルトであり、1対の欄干パネル191のそれぞれの周縁部に移動可能に巻き付けられている。手摺りベルト192は、駆動装置120の駆動モータにより各々の踏段110の移動に同期して移動する。手摺りベルト192は、例えばゴムなどで形成されている。
【0018】
乗降板104は、上下階に位置する乗降口193にそれぞれ設けられている。乗降板104は、利用者がエスカレータ1に乗降する際の足場となるほか、取り外し可能に設置されている。乗降板104の踏段110に面する端部には櫛歯状のコムプレート104cが設けられている。乗降板104の下には、駆動モータ及び折り畳まれた踏段110等が格納される。なお、これ以降、コムプレート104cをコム104cと称する場合がある。
【0019】
つまり、上下階の間で階段状に並ぶ複数の踏段110は、上下階の乗降板104の近傍では互いに略水平となり、入口側の乗降板104下方から引き出され、出口側の乗降板104下方へと引き込まれる。
【0020】
図3は、実施形態にかかる踏段110の上面および側面の一例を示す図である。
図3(a)は、踏段110の上面を示し、
図3(b)は、踏段110の側面を示している。踏段110の上面には、
図3(a)に示すように、十字形状のマーカ151bが設けられている。当該マーカ151bは、踏段110の上面に塗装されている。
【0021】
図4は、実施形態にかかる乗降板104の上面および側面の一例を示す図である。
図4(a)は、乗降板104の上面を示し、
図4(b)は、乗降板104の側面を示している。乗降板104の上面にも、
図4(a)に示すように、十字形状のマーカ151aが設けられている。当該マーカ151bは、乗降板104の上面に塗装されている。
【0022】
図5は、実施形態にかかるマーカ151a,151bの詳細の一例を示す図である。マーカ151a,151bには、
図5に示すように、模様が付されている。この模様は、踏段110若しくは乗降板104におけるマーカ151a,151bの各位置における位置情報(すなわち、位置座標)を示している。
【0023】
マーカ151a,151bは、標識情報の一例である。これ以降、マーカ151a,151bを区別しない馬合には、マーカ151と称する。
【0024】
図2に戻り、スカートガードパネル105は、複数の踏段110の幅方向両端部の近傍で、エスカレータ1の延伸方向に延びる。スカートガードパネル105は、上下階の乗降口193近傍に設置される2対の先端パネル105fと、上下階の先端パネル105fの間に設置される複数の中間パネル105mとによって構成されている。
【0025】
すなわち、1対の先端パネル105fは、上階の乗降板104近傍に踏段110を挟んで対向して設置される。これらの先端パネル105fは、複数の踏段110の移動方向において、コムプレート104cの前後に跨る位置に設置されている。
【0026】
また、もう1対の先端パネル105fは、下階の乗降板104近傍に踏段110を挟んで対向して設置される。これらの先端パネル105fは、複数の踏段110の移動方向において、コムプレート104cの前後に跨る位置に設置されている。
【0027】
複数の踏段110の幅方向片側の上下階に設置される先端パネル105fの間には、これらを接続するように複数の中間パネル105mが配列されている。また、複数の踏段110の幅方向もう一方側の上下階に設置される先端パネル105fの間にも、これらを接続するように複数の中間パネル105mが配列されている。
【0028】
インナーデッキ106は、スカートガードパネル105の上端部を覆う。アウターデッキ107は、欄干パネル191を挟んでインナーデッキ106に隣接して設置されている。スカートガードパネル105、インナーデッキ106、及びアウターデッキ107等で囲われた空間内には、例えば図示しない操作盤に接続される機器およびその他の配電機器等が収納されている。
【0029】
インレット108は、上下階の乗降口193近傍に、それぞれの先端パネル105fに接続されるように設置される。上下階の乗降口193のうち、入口側に設置される1対のインレット108からは、それぞれの手摺りベルト192が繰り出される。また、上下階の乗降口193のうち、出口側に設置される1対のインレット108には、それぞれの手摺りベルト192が繰り込まれる。
【0030】
乗降板104の下方には、制御装置100が設けられている。制御装置100は、エスカレータ1の制御を行う装置である。制御装置100の詳細については後述する。
【0031】
上下階の双方において、インレット108の一方から踏段110側の中間パネル105mには、キースイッチ152が設けられている。このキースイッチ152は、制御装置100と有線または無線で接続されている。
キースイッチ152は、保守員等により操作可能である。キースイッチ152が操作されることで、切替信号が制御装置100に送出され、制御装置100側で、エスカレータ1の運転モードを通常運転と保守運転とで切り替えるようになっている。保守運転とは、点検作業を実施するための運転である。ここで、キースイッチ152は、操作部の一例である。
【0032】
次に、制御装置100の詳細について説明する。
図6は、実施形態に係る制御装置100は、
図6に示すように、キースイッチ152と、に有線または無線で接続されている。
制御装置100は、
図6に示すように、通信部101と、制御部102と、駆動制御部103と、を主に備えている。
【0033】
通信部101は、コントローラ150介して昇降機クラウド200のサーバ210との通信を行う処理部である。
【0034】
制御部102は、エスカレータ1の各種制御を行う。具体的には、制御部102は、キースイッチ152からの指示や昇降機クラウド200のサーバ210からの指示により、通常運転と保守運転とを切り替える。
駆動制御部103は、駆動装置120に指令を送出することで、複数の踏段110の巡回移動の駆動を制御する。
【0035】
図1に戻り、コントローラ150は、ネットワークで昇降機クラウド200内のサーバ210に接続される。コントローラ150は、制御装置100とサーバ210との間の通信を制御し、制御装置100とサーバ210との間でやり取りされる各種信号を仲介するためのインターフェース機能およびハブ機能を備えた仲介装置である。コントローラ150は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等を備えたコンピュータの構成となっている。
【0036】
管制室160には、ビル3の管理人が在席し、制御装置100に対する各種指示を与える。また、管制室160の管理人は、PCや端末装置を介して、制御装置100からメール等により各種指示を受信する。
【0037】
昇降機クラウド200内のサーバ210は、エスカレータ1に対する各種制御を、コントローラ150を介して制御装置100に指示したり、制御装置100からの各種要求や各種データを、コントローラ150を介して受信する。昇降機クラウド200内のサーバ210は、ネットワークで監視センター400(社内サーバ)とロボットクラウド300のサーバ310とに接続される。昇降機クラウド200のサーバ210の詳細については後述する。
【0038】
監視センター400には、不図示の社内サーバが設置されている。社内サーバは、エスカレータ1の関連会社内に設置されるサーバであり、エスカレータ1の保守管理や遠隔監視に必要な情報を、エスカレータ1より収集している。これによれば、エスカレータ1に不具合が発生した場合に、保守員は、監視センター400の社内サーバに収集された保守管理に必要な情報を参照して、当該発生した不具合に対応することが可能である。また、昇降機クラウド200を通じて機能やサービスが実行される際、必要に応じて監視センター400の社内サーバにアクセスして建物やエスカレータ情報を参照したり、保守員がエスカレータ1の管理に必要な情報を取得したりすることが可能である。
【0039】
ロボットクラウド300のサーバ310は、昇降機クラウド200のサーバ210から各種要求や各種データを受信する。ロボットクラウド300のサーバ310は、ネットワークで、ビル3内の一または複数のロボット500と接続されており、ロボット500のそれぞれに対して各種指示を送信する。ロボットクラウド300のサーバ310の詳細については後述する。
【0040】
次に、昇降機クラウド200内のサーバ210について説明する。
図7は、実施形態にかかる昇降機クラウド200内のサーバ210の機能的構成の一例を示すブロック図である。サーバ210は、
図7に示すように、一般的なコンピュータの構成として、制御部211と、通信部212と、記憶部220と、を主に備える。
【0041】
記憶部220は、例えばROMやRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)である。記憶部220には、各種プログラムが記憶される。
【0042】
通信部212は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、サーバ210とコントローラ150との間の通信処理や、サーバ210とロボットクラウド300内のサーバ310との間の通信処理を行う。
【0043】
制御部211は、ハードウェアプロセッサ(CPU)からなる。
【0044】
次に、ロボットクラウド300内のサーバ310について説明する。
図8は、実施形態にかかるロボットクラウド300内のサーバ310の機能的構成の一例を示すブロック図である。
サーバ310は、
図8に示すように、一般的なコンピュータの構成として、制御部311と、通信部312と、記憶部320と、を主に備える。
【0045】
記憶部320は、例えばROMやRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)である。記憶部320には、各種プログラムが記憶されている。
【0046】
通信部312は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、サーバ310と昇降機クラウド200内のサーバ210との間の通信処理や、サーバ310とロボット500との間の通信処理を行う。
【0047】
制御部311は、ハードウェアプロセッサ(CPU)からなる。制御部311は、ロボット500に関するエスカレータ1に関する各種処理の制御を行う。
【0048】
次に、ロボット500について説明する。
図9は、実施形態にかかるロボット500の機能的構成の一例を示すブロック図である。ロボット500は、
図8に示すように、カメラ506と、マイク507と、スピーカ504と、各種センサ505と、読取りセンサ512と、制御部501と、通信部502と、撮像制御部511と、取得部508と、走行制御部509と、駆動部503と、記憶部510と、を主に備えている。
【0049】
カメラ506は、ロボット500の周囲を撮像し、撮像画像を撮像制御部511に送出する。
【0050】
マイク507は、ロボット500の周囲の音声を入力する入力デバイスである。
スピーカ504は、各種内容を音声出力する出力デバイスである。
【0051】
読取りセンサ512は、乗降板104上のマーカ151a、踏段110上のマーカ151bを読取るセンサであり、例えば、カメラ等が該当する。
【0052】
図10は、実施形態に係る読取りセンサ512の設置例を示す図である。読取りセンサ512は、
図10に示すように、ロボット500の本体516の底面に下方に向けて設けられている。
【0053】
図11は、実施形態に係る読取りセンサ512がマーカ151を読取る状態の例を示す図である。読取りセンサ512は、ロボット500が、車輪515が駆動されることで走行して乗降板104に乗車した際に、
図11(a)に示すように、読取りセンサ512によりマーカ151を読取る。マーカ151は、
図11(b)に示すように、その十字形状でXY軸を示している。マーカ151上の
図5に示す模様が位置情報としての位置座標を示している。読取りセンサ512は、検知部の一例である。
【0054】
図9に戻り、各種センサ505は、例えば、距離センサ、振動センサ、人感センサ、加速度センサ、荷重センサ等が該当するが、これらに限定されるものではない。
【0055】
通信部502は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、ロボット500とロボットクラウド300内のサーバ310との間の通信処理を行う。
【0056】
記憶部510は、例えばROMやRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)である。記憶部510には、各種プログラムが記憶される。また、本実施形態では、記憶部510には、乗降板104および踏段110上で、ロボット500が位置すべき正しい位置座標を、予め定められた位置情報として記憶されている。当該、予め定められた位置情報は、管理者等により変更可能となっている。
【0057】
制御部501は、ハードウェアプロセッサ(CPU)からなる。制御部501は、エスカレータ1の通常運行時には、記憶部510の各種プログラムを読み出して実行することより、ロボット500の各種動作を実行する。
撮像制御部511は、カメラ506による撮像を制御する。
【0058】
取得部508は、読取りセンサ512で読み取ったマーカ151の模様から位置情報を取得する。
【0059】
駆動部503は、ロボット500の駆動を行って走行させる。
走行制御部509は、ロボットクラウド300内のサーバ310からの指示により、駆動部503の駆動を制御して、ロボット500の走行制御を行う。本実施形態に係る走行制御部509は、読取りセンサ512により、マーカ151を読み取れた場合に、乗降板104および踏段110に乗車するように、ロボット500を走行させる。そして、走行制御部509は、取得部508で取得した位置情報と、記憶部510に記憶されている、正しい位置としての予め定められた位置情報と、に基づいて、ロボット500の位置を調整する。
【0060】
具体的には、走行制御部509は、取得部508で取得した位置情報と、記憶部510に記憶されている、予め定められた位置情報と、を比較して、両者に差分がある場合には、駆動部503を制御して、予め定められた位置情報が示す位置までロボット500を移動させる。
【0061】
読取りセンサ512が、乗降板104または踏段110でマーカ151を読み取れなかった場合には、走行制御部509は、ロボット500を走行させず、乗降板104または踏段110で停止させる。これにより、ロボット500がマーカ151から大きくずれた位置にいる場合には、乗降板104または踏段110に乗車しない。
【0062】
なお、ロボット500の上記構成は一例であり、この他、タッチパネル等の入力部をさらに備えていてもよい。
【0063】
次に、以上のように構成された本実施形態に係るロボット制御システム1000によるロボット制御処理について説明する。
図12は、実施形態に係るロボット制御処理の全体の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0064】
ここでは、ロボット500が保守点検作業を行うために、乗降板104および踏段110に乗り込むことを例にあげて説明する。なお、ロボット500が乗降板104および踏段110に乗り込む目的は、保守点検作業に限定されるものではない。
【0065】
エスカレータ1は通常運転を行っているものとする(S100)。
この状態で、昇降機クラウド200のサーバ210の通信部212が、エスカレータ1の制御装置100に対して保守点検作業のための保守運転を指示する保守運転指示を送信する(S101)。制御装置100では、通信部101がコントローラ150を介して保守運転指示を受信すると、制御部102はエスカレータ1の運転を停止する(S102)。保守運転とは、エスカレータ1の運転の停止により踏段110の移動を一旦停止し、その後、後述するようにロボット500が踏段110に乗車したら、徐々に踏段110を移動してロボット500による保守点検作業を実行させるための運転である。
【0066】
次に、昇降機クラウド200のサーバ210では、通信部212は、ロボット500に対する保守点検作業の開始を指示する保守開始指示を、ロボットクラウド300のサーバ310に、送信する(S103)。
【0067】
次に、ロボットクラウド300のサーバ310では、通信部312は、昇降機クラウド200のサーバ210から保守開始指示を受信すると、受信した保守開始指示をロボット500に送信する(S104)。
【0068】
ロボット500では、通信部502が、ロボットクラウド300のサーバ310から保守開始指示を受信すると、走行制御部509が駆動部503を制御して、エスカレータ1の乗降板104まで移動する(S106)。そして、ロボット500は、乗降板104上で位置補正処理(位置調整処理とも称する)を実行する(S106a)。
【0069】
位置補正処理の後、ロボット500は、走行制御部509により、調整された位置で踏段110に乗車する(S107)。乗車が完了すると、ロボット500は、踏段110上で位置補正処理を実行する(S106b)。ここで、S106a,S106bの位置補正処理の詳細は後述する。
【0070】
位置補正処理の後、ロボット500では、通信部502は、ロボットクラウド300の310に、乗車完了通知を送信する(S108)。この乗車完了通知は、ロボットクラウド300のサーバ310から昇降機クラウド200のサーバ210へ送信され(S109)、さらに、昇降機クラウド200のサーバ210からエスカレータ1の制御装置100へと送信される(S110)。
【0071】
制御装置100では、通信部101がコントローラ150を介して、昇降機クラウド200のサーバ210から乗車完了通知を受信すると、制御部102は、エスカレータ1の運転を開始する(S111)。そして、駆動制御部103は、駆動装置120の駆動モータ(不図示)を駆動させて、踏段110を移動させる(S112)。
【0072】
踏段110の移動中は、ロボット500は、エスカレータ1の保守作業を実行する(S113)。ロボット500による保守作業が終了し、ロボット500が乗車している踏段110が降車階に到達すると、制御装置100の駆動制御部103、踏段110を停止することで保守運転を停止する(S114)。
【0073】
ロボット500では、カメラ506による撮像画像により踏段110が停止していることを確認すると(S115)、走行制御部509は、駆動部503を制御することで、ロボット500が踏段110から乗降板104に降車する(116)。次いで、ロボット500は、走行制御部509により、乗降板104の外へ移動する(S117)。
【0074】
次に、ロボット500の通信部502は、保守完了通知を、ロボットクラウド300のサーバ310に送信する(S118)。この保守完了通知は、ロボットクラウド300のサーバ310から昇降機クラウド200のサーバ210へ送信され(S119)、さらに、昇降機クラウド200のサーバ210からエスカレータ1の制御装置100へと送信される(S120)。これにより、一連の保守作業が終了する。
【0075】
次に、S106a,S106bにおけるロボット500による位置補正処理の詳細について説明する。
図13は、実施形態にかかる位置補正処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0076】
まず、読取りセンサ512でマーカ151を読取る(S301)。そして、走行制御部509は、マーカ151を読み取れたか否かを判断する(S302)。マーカ151を読み取れなかった場合には(S302:No)、走行制御部509は、ロボット500の乗降板104あるいは踏段110での位置が、正しい位置から大きくずれていると判断し、乗降板104あるいは踏段110にロボット500を乗車させずに、すべての処理、すなわち
図12の処理も含めて終了する(S306)。
【0077】
一方、S302で、マーカ151を読み取れた場合には(S302:Yes)、取得部508は、読み取ったマーカ151の模様から位置情報を取得する(S303)。
【0078】
次に、走行制御部509は、S303で取得部508が取得した位置情報と、記憶部510に記憶されている位置情報と、を比較し、両者に差分があるか否かを判断する(S304)。そして、両者に差分がない場合には(S304:No)、ロボット500は既に正しい位置にいるため、処理は呼出し元に復帰する。
【0079】
一方、S304で、両者に差分がある場合には(S304:Yes)、走行制御部509は、駆動部503を制御して、正しい位置である、記憶部510の予め定められた位置情報の位置に、ロボット500を移動させることで、位置調整を行う(S305)。その後、処理は呼出し元に復帰する。
【0080】
このように本実施形態に係るロボット制御システム1000では、エスカレータ1は、複数の踏段110のそれぞれの上面と乗降板104の上面とに設けられ、位置情報が記録されたマーカ151、を備え、ロボット500は、本体部156の下方に向けて設けられ、マーカ151を読み取り可能な読取りセンサ512と、読取りセンサ512で読み取ったマーカ151から位置情報を取得する取得部508と、駆動部503を制御して走行制御するとともに、取得した位置情報と、ロボット500の記憶部510に記憶された予め定められた位置情報と、に基づいて、ロボット500の位置を調整する走行制御部509と、を備える。
【0081】
このため、本実施形態によれば、マーカ151上の位置情報と記憶部510に記憶された正しい位置の予め定められた位置情報に基づいて、ロボット500の位置を調整した上で、乗降板104や踏段110に乗車させることになる。従って、本実施形態によれば、
ロボット500が乗降板104や踏段110に乗車する際に、転倒や脱落を未然に防止することができる。また、本実施形態によれば、点検等の作業の位置決定をより的確に調整することができる。
【0082】
また、本実施形態に係るロボット制御システム1000では、ロボット500の走行制御部509は、取得した位置情報と、予め定められた位置情報と、を比較して、差分がある場合には、駆動部503を制御して、予め定められた位置情報が示す位置までロボット500を移動させる。
【0083】
このため、本実施形態によれば、マーカ151上の位置情報と記憶部510に記憶された正しい位置の予め定められた位置情報との差分が有る場合に、予め定められた位置情報が示す位置までロボット500を移動させて位置調整した上で、乗降板104や踏段110に乗車させることになる。従って、本実施形態によれば、ロボット500が乗降板104や踏段110に乗車する際に、転倒や脱落を未然に防止することができる。また、本実施形態によれば、点検等の作業の位置決定をより的確に調整することができる。
【0084】
また、本実施形態に係るロボット制御システム1000では、マーカ151は、複数の踏段110のそれぞれの上面と乗降板104の上面とに塗装されている。
【0085】
このため、本実施形態によれば、簡易な手法で、ロボット500の乗降板104および踏段110での位置調整が可能となる。従って、本実施形態によれば、簡易な手法で、ロボット500が乗降板104や踏段110に乗車する際に、転倒や脱落を未然に防止することができる。また、本実施形態によれば、簡易な手法で、点検等の作業の位置決定をより的確に調整することができる。
【0086】
また、本実施形態に係るロボット制御システム1000では、ロボット500の走行制御部509は、読取りセンサ512により、マーカ151を読み取れた場合に、乗降板104および踏段110に乗車するように、ロボット500走行させ、読取りセンサ512により、マーカ151を読み取れなかった場合に、乗降板104および踏段110で停止させる。
【0087】
このため、本実施形態では、読取りセンサ512により、マーカ151を読み取れなかった場合には、ロボット500の位置は正しい位置より大幅にずれていると判断して、、乗降板104および踏段110で停止させて乗車させない。従って、本実施形態によれば、正しい位置と大きくずれているロボット500が乗降板104や踏段110へ乗車を未然に回避して、転倒や脱落をより確実に未然に防止することができる。
【0088】
(変形例)
上記実施形態には、種々の変形例がある。
上記実施形態では、マーカ151は、乗降板104および踏段110の各上面に、塗装されていたが、磁性を帯びた磁気塗装によりマーカ151を形成してもよい。この場合には、ロボット500の本体を磁気により動きにくいようにすることができる。
【0089】
また、マーカ151を不可視性のインクで乗降板104および踏段110の各上面に、塗装するよう構成してもよい。この場合には、利用者にはマーカ151の存在がわからないため、乗降板104および踏段110の視認性を向上させることができる。
【0090】
また、マーカ151は、塗装以外の手法で乗降板104および踏段110の各上面に設けても良い。
【0091】
例えば、複数の踏段110のそれぞれの上面と乗降板104の上面とに、粘着テープ等でマーカ151を貼付する構成としてもよい。この場合には、必要に応じて、マーカ151を取り外し可能となり、用途に応じてロボット500の位置調整を実施するか否かを選択することができ、エスカレータ1の利便性をより向上させることが可能となる。
【0092】
また、例えば、複数の踏段110のそれぞれの上面と乗降板104の上面とに表示装置としての電子ディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ)を設け、電子ディスプレイにマーカ151を表示するように、制御装置100を構成してもよい。この場合には、さらに、マーカ151の表示内容を用途に応じて可変とすることができ、エスカレータ1の利便性をより向上させることが可能となる。
【0093】
また、上記実施形態では、制御盤100が昇降機クラウド200のサーバ210から保守運転指示を受信して(
図12のS101)、制御盤100がエスカレータ2の保守運転を開始し(
図12のS102)、また、制御盤100が、ロボット500からロボットクラウド300のサーバ310、昇降機クラウド200のサーバを介して乗車完了通知を受信してエスカレータ運転を開始していたが(
図12のS108、S109、S110、S111)、これに限定されるものではない。
【0094】
例えば、ロボット500が保守開始指示を受信した場合に、ロボット500自身がエスカレータ1のキースイッチ152を操作して保守運転に切り替えて保守運転を開始するように構成することができる。また、ロボット500自身が、エスカレータ1のキースイッチ152を操作して保守運転を終了して通常運転に切り替え、さらには、乗車後の運転開始(すなわち踏段110の移動)を行うように構成してもよい。この場合には、ロボット500から保守完了通知を、ロボットクラウド300のサーバ310、昇降機クラウド200のサーバ210を介して制御盤100に送信することも必要なくなる。
【0095】
また、このように構成した場合には、ロボット500がエスカレータ1を操作することに伴い、ロボット500とキースイッチ152とに、例えば、Bluetooth(登録商標)などの短距離無線通信の機能を設け、ロボット500自身が、この短距離無線通信でキースイッチ152に対して運転指令を行うように構成することができる。
【0096】
上記実施形態および変形例に係るロボット500は、CPUなどの制御装置と、ROMやRAMなどの記憶装置と、HDD、CDドライブ装置などの外部記憶装置と、ディスプレイ装置などの表示装置と、タッチパネルなどの入力装置を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0097】
上記実施形態および変形例に係るロボット500で実行される制御プログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
【0098】
上記実施形態および変形例に係るロボット500で実行される制御プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0099】
さらに、上記実施形態および変形例に係るロボット500で実行される制御プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上記実施形態および変形例に係るロボット500で実行される制御プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0100】
上記実施形態および変形例に係るロボット500で実行される制御プログラムは、上述した各機能部(制御部501、通信部502、撮像制御部511、取得部508、走行制御部509)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが上記ROMから制御プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、制御部501、通信部502、撮像制御部511、取得部508、走行制御部509が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1…エスカレータ、100…制御装置、193…乗降口、104…乗降板、110…踏段、120…駆動装置、150…コントローラ、151,151a,151b…マーカ(標識情報)、152…キースイッチ、160…管制室、200…昇降機クラウド、210…サーバ(昇降機用サーバ)、300…ロボットクラウド、310…サーバ(ロボット用サーバ)、500…ロボット(自律移動体)、501…制御部、502…通信部、503…駆動部、504…スピーカ、505…各種センサ、506…カメラ(撮像部)、507…マイク、508…取得部、509…走行制御部、510…記憶部、511…撮像制御部、512…読取りセンサ、515…車輪、516…本体、1000…ロボット制御システム。
【要約】
【課題】自律移動体が乗降板や踏段に乗車する際に、転倒や脱落を未然に防止すること。
【解決手段】実施形態の自律移動体制御システムは、乗客コンベアは、複数の踏段のそれぞれの上面と前記乗降板の上面とに設けられ、位置情報が記録された標識情報、を備え、自律移動体は、本体部の下方に向けて設けられ、標識情報を読み取り可能な検知部と、検知部で読み取った標識情報から位置情報を取得する取得部と、取得した位置情報と、自律移動体の予め定められた位置情報と、に基づいて、自律移動体の位置を調整する走行制御部と、を備える。
【選択図】
図9