(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-24
(45)【発行日】2025-02-03
(54)【発明の名称】無線周波数フィールドのパルスの検知
(51)【国際特許分類】
G01S 7/285 20060101AFI20250127BHJP
【FI】
G01S7/285
(21)【出願番号】P 2024532748
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 CA2022051861
(87)【国際公開番号】W WO2023115201
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-07-31
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521266918
【氏名又は名称】クオンタム ヴァリー アイデアズ ラボラトリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】ボハイチュク ステファニー エム
(72)【発明者】
【氏名】ブース ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ニッカーソン ケント アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】タイ チン
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー ジェイムズ ピー
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10509065(US,B1)
【文献】米国特許第10666273(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/41434(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/209288(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/103456(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/187198(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光プローブビームを含む光ビームを生成するように構成されたレーザシステムと、
内部に蒸気を有し、前記光ビームが前記蒸気を通り抜けることを可能にするように構成された、蒸気セルセンサと、
前記プローブビームが前記蒸気を通り抜けた後、前記光プローブビームに基づいて検出器信号を生成するように構成された光検出器と、
動作を実行するように構成された信号処理システムであって、前記動作は、
或る期間にわたって、前記光検出器から前記検出器信号を受信することと、
前記検出器信号に基づいてデジタル信号を生成することであって、前記デジタル信号は、前記期間にわたって前記蒸気が受けたRFフィールドに対する前記蒸気の測定された反応を表す、生成することと、
前記デジタル信号に整合フィルタを適用して、フィルタリングされた信号を生成することであって、前記フィルタリングされた信号は、前記デジタル信号と反応テンプレートとの比較に基づいて生成され、前記反応テンプレートは、ターゲットRFパルスに対する前記蒸気の既知の反応を表す、生成することと、
前記フィルタリングされた信号を処理して、前記期間にわたって前記蒸気が受けた前記RFフィールドの特性を決定することと、
を含む、信号処理システムと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記フィルタリングされた信号を処理することは、
前記期間において前記蒸気が受けるRFパルスの開始時間、持続時間、または振幅のうちの少なくとも1つを決定することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
RFパルスを生成するように構成された前記RFフィールドのソースを備え、
前記反応テンプレートは、基準期間にわたって前記ソースによって生成される複数の基準RFパルスに基づき、前記複数の基準RFパルスは、前記RFフィールドを定義し、共通パルス形状を共有する、請求項
1に記載のシステム。
【請求項4】
前記反応テンプレートは、前記ターゲットRFパルスに対する前記蒸気の反応のコンピュータシミュレーションに基づく、請求項
1に記載のシステム。
【請求項5】
前記信号処理システムは、閾値周波数未満の周波数を有する前記検出器信号の一部分をブロックするように構成されたハイパスフィルタを備える、請求項
1に記載のシステム。
【請求項6】
前記閾値周波数は100Hz以下である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記反応テンプレートは、第1のタイプのターゲットRFパルスに対する前記蒸気の第1の既知の反応を表す第1の反応テンプレートであり、
前記フィルタリングされた信号は、前記デジタル信号と、
前記第1の反応テンプレート、および、
第2のタイプのターゲットRFパルスに対する前記蒸気の第2の既知の反応を表す第2の反応テンプレート、
との比較に基づいて生成される、請求項
1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1および第2のタイプのターゲットRFパルスは、異なる重複しない範囲のフィールド強度を有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記検出器信号は、前記光プローブビームの振幅、偏光、または位相のうちの少なくとも1つに基づく、請求項
1に記載のシステム。
【請求項10】
光ビームに蒸気セルセンサ内の蒸気を通り抜けさせることであって、前記光ビームは光プローブビームを含む、通り抜けさせることと、
RFフィールドが前記蒸気と相互作用することを可能にすることと、
光検出器の動作によって、前記光プローブビームが前記蒸気を通り抜けた後、前記光プローブビームに基づく検出器信号を生成することと、
或る期間にわたって、信号処理システムにおいて前記検出器信号を受信することと、
前記信号処理システムの動作によって、
前記検出器信号に基づいてデジタル信号を生成することであって、前記デジタル信号は、前記期間にわたる、前記RFフィールドに対する前記蒸気の測定された反応を表す、生成することと、
前記デジタル信号に整合フィルタを適用して、フィルタリングされた信号を生成することであって、前記フィルタリングされた信号は、前記デジタル信号と反応テンプレートとの比較に基づいて生成され、前記反応テンプレートは、ターゲットRFパルスに対する前記蒸気の既知の反応を表す、生成することと、
前記フィルタリングされた信号を処理して、前記期間にわたる、前記蒸気が受けた前記RFフィールドの特性を決定することと、
を含む、方法。
【請求項11】
整合フィルタを適用することは、前記デジタル信号および前記反応テンプレートに畳み込み関数を適用して、前記フィルタリングされた信号を生成することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記畳み込み関数の前記反応テンプレートの期間は、前記RFフィールドのパルスの予測持続時間よりも大きい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フィルタリングされた信号を処理することは、
前記期間において前記蒸気が受けるRFパルスの開始時間、持続時間、または振幅のうちの少なくとも1つを決定することを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
基準RFパルスが前記蒸気と相互作用することを可能にすることであって、前記基準RFパルスは共通パルス形状を共有する、可能にすることと、
或る基準期間にわたって、前記信号処理システムにおいて基準検出器信号を受信することと、
前記信号処理システムの動作によって、
前記基準検出器信号に基づいて基準デジタル信号を生成することであって、前記基準デジタル信号は、前記基準期間にわたる、前記基準RFパルスに対する前記蒸気の測定された反応を表す、生成することと、
前記基準デジタル信号に基づいて前記反応テンプレートを生成することと、
を含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項15】
前記反応テンプレートを生成することは、
各基準パルスについて、前記基準パルスの持続時間に関連付けられた前記デジタル信号の一部分に基づいてパルス形状を決定することと、
前記パルス形状を平均化して前記反応テンプレートを生成することと、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ターゲットRFパルスに対する前記蒸気の反応のコンピュータシミュレーションに基づいて前記反応テンプレートを生成することを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項17】
前記検出器信号は、前記光プローブビームの振幅、偏光、または位相のうちの少なくとも1つに基づく、請求項
10に記載の方法。
【請求項18】
閾値周波数未満の周波数を有する部分を除去するように前記検出器信号をフィルタリングすることを含み、前記閾値周波数は100Hz以下である、請求項
10に記載の方法。
【請求項19】
前記RFフィールドを相互作用させることは、前記期間の少なくとも一部の間、前記RFフィールドを前記蒸気と相互作用させることを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項20】
ヘテロダインRFフィールドが前記蒸気と相互作用することを可能にすることを含み、前記ヘテロダインRFフィールドは、前記期間にわたる連続波(CW)RFフィールドを含み、
前記デジタル信号は、前記期間にわたる混合RFフィールドに対する前記蒸気の測定された反応を表し、前記混合RFフィールドは、前記ヘテロダインRFフィールドおよび前記RFフィールドを含み、
前記フィルタリングされた信号を処理することは、前記フィルタリングされた信号を処理して、前記期間にわたる、前記蒸気が受けた前記混合RFフィールドの特性を決定することを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項21】
前記反応テンプレートは、第1のタイプのターゲットRFパルスに対する前記蒸気の第1の既知の反応を表す第1の反応テンプレートであり、
前記フィルタリングされた信号は、前記デジタル信号と、
前記第1の反応テンプレート、および、
第2のタイプのターゲットRFパルスに対する前記蒸気の第2の既知の反応を表す第2の反応テンプレート、
との比較に基づいて生成される、請求項
10に記載の方法。
【請求項22】
前記第1および第2のタイプのターゲットRFパルスは、異なる重複しない範囲のフィールド強度を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
データ処理装置によって実行されると、動作を実行するように動作可能な命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記動作は、
或る期間にわたって蒸気が受けるRFフィールドに対する前記蒸気の測定された反応を表すデジタル信号を生成することであって、前記デジタル信号は、前記期間にわたる、光検出器からの検出器信号に基づき、
前記蒸気は、光ビームが前記蒸気を通り抜けることを可能にするように構成された蒸気セルセンサ内にあり、前記光ビームは光プローブビームを含み、
前記光検出器は、前記プローブビームが前記蒸気を通り抜けた後、前記光プローブビームを受け、これに応答して、前記検出器信号を生成するように構成される、
生成することと、
前記デジタル信号に整合フィルタを適用して、フィルタリングされた信号を生成することであって、前記フィルタリングされた信号は、前記デジタル信号と反応テンプレートとの比較に基づいて生成され、前記反応テンプレートは、ターゲットRFパルスに対する前記蒸気の既知の反応を表す、生成することと、
前記フィルタリングされた信号を処理して、前記期間にわたる、前記蒸気が受けた前記RFフィールドの特性を決定することと、
を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項24】
整合フィルタを適用することは、前記デジタル信号および前記反応テンプレートに畳み込み関数を適用して、前記フィルタリングされた信号を生成することを含む、請求項23に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項25】
前記フィルタリングされた信号を処理することは、
前記期間において前記蒸気が受けるRFパルスの開始時間、持続時間、または振幅のうちの少なくとも1つを決定することを含む、請求項
23に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項26】
前記動作は、
基準期間にわたる、基準RFパルスに対する前記蒸気の測定された反応を表す基準デジタル信号を生成することであって、前記基準RFパルスは共通パルス形状を共有する、生成することと、
前記基準デジタル信号に基づいて前記反応テンプレートを生成することと、
を含む、請求項
23に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項27】
前記反応テンプレートは、前記ターゲットRFパルスに対する前記蒸気の反応のコンピュータシミュレーションに基づく、請求項
23に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項28】
前記検出器信号は、前記光プローブビームの振幅、偏光、または位相のうちの少なくとも1つに基づく、請求項
23に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項29】
前記反応テンプレートは、第1のタイプのターゲットRFパルスに対する前記蒸気の第1の既知の反応を表す第1の反応テンプレートであり、
前記フィルタリングされた信号は、前記デジタル信号と、
前記第1の反応テンプレート、および、
第2のタイプのターゲットRFパルスに対する前記蒸気の第2の既知の反応を表す第2の反応テンプレート、
との比較に基づいて生成される、請求項
23に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項30】
前記第1および第2のタイプのターゲットRFパルスは、異なる重複しない範囲のフィールド強度を有する、請求項29に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月23日に出願され、「Sensing Radar and Communication Pulses Using Vapor Cells」と題する米国仮特許出願第63/293,450号の優先権を主張する。優先出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
以下の記載は、蒸気セルの使用等により無線周波数フィールドのパルスを検知することに関する。
【背景技術】
【0003】
蒸気セルは、密閉容積内に蒸気を含む。蒸気は、蒸気セルが受ける電磁放射と相互作用する媒体として用いられる。レーザによって生成されるもの等の光ビームは、蒸気を通じて方向付けられ、受けた電磁放射に対する蒸気の反応をプロービングおよび測定することができる。このようにして、蒸気セルは、電磁放射のセンサとしての役割を果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】パルス変調RF電磁放射を検知するための例示的なシステムを示す概略図である。
【
図2A】セシウム系蒸気セルの例示的なエネルギーレベル図の概略図である。
【
図2B】509nmレーザが共振にわたって走査される際に
図2Aのセシウム系蒸気セルから得られるEITピークのグラフである。
【
図2C】10μs RFパルスに対する
図2Aのセシウム系蒸気セルの過渡的原子反応のグラフである。
【
図3A】密度行列モデルを用いてシミュレートされたものと比較した、10μs RFパルスに対する実験的な原子反応のグラフである。
【
図3B】
図3Aのパルス応答の立ち上がりエッジに対する変化をIRパワーと共に示すグラフであり、モデリング(左パネル)および実験(右パネル)の双方によって示される。
【
図4A】変動する電場振幅の10μs RFパルスに対する例示的な原子反応のグラフである。
【
図4B】
図4Aに示すパルスに適用されるときの、例示的な整合フィルタの出力のグラフである。
【
図4C】IRプローブレーザパワーの選択についてのRF電場の関数としての、
図4Bの整合フィルタ信号のピーク高さのグラフである。
【
図4D】緑色レーザパワーを変動させる際のRFパワーの関数としての、
図4Bの整合フィルタ信号の信号対雑音(SNR)比のグラフである。
【
図5A】様々なRFパルス長、2μsだけ離間された3つの2μsパルスのバースト、およびより低いIRパワーで取得された10μsのパルスについて示された例示的な整合フィルタの信号対雑音(SNR)比のグラフである。
【
図5B】
図5Aにおける様々なパルス条件について整合フィルタピークを用いて測定されたパルスタイミングに対するガウス当てはめの標準偏差のグラフである。
【
図6A】蒸気セルセンサシステムおよびRF光学素子を含む例示的なシステムの概略図である。
【
図6B】航空機が飛行する際の航空機上の回転エミッタを、固定蒸気セル受信機によって表す例示的なシナリオの極グラフである。
【
図6C】整合フィルタリング後に
図6Bの固定蒸気セル受信機によって検出される例示的な信号のグラフである。
【
図6D】アンテナの単一の回転から形成されるパターンを示す、
図6Cの例示的な信号からの単一のパルスクラスタのグラフである。
【
図6E】
図6Dに示す単一のパルスクラスタの中心ローブからのグラフである。
【
図7A】パルス形状に対するレーザビームサイズの影響を示すグラフである。
【
図7B】パルス形状に対するレーザビームサイズの影響を示すグラフである。
【
図8A】緑色ラビ周波数に対する、RFパルスの立ち下がりエッジの様々な電界電力における依存性を示すグラフである。
【
図8B】RFパルスについて、立ち下がりエッジの形状はレーザビーム位置と共に変化する場合があるのに対し、立ち上がりエッジの形状は変化しないままである場合があることを示すグラフである。
【
図8C】RFパルスに対する実験的反応のテールにおける緑色の離調の影響を示すグラフである。
【
図9】2μsの長さのパルスについてパルス形状に対する繰り返し率の影響を示すグラフである。
【
図10A】低および高リュードベリ集団におけるパルス形状に対する原子遷移選択の影響を示すグラフである。
【
図10B】低および高リュードベリ集団におけるパルス形状に対する原子遷移選択の影響を示すグラフである。
【
図11A】小RF電界について、19.4GHzおよび4.2GHzにおけるRFフィールドのパルス形状の変動を示すグラフである。
【
図11B】小RF電界について、19.4GHzおよび4.2GHzにおけるRFフィールドのパルス形状の変動を示すグラフである。
【
図12A-F】原子パルス形状に対する整合フィルタテンプレートの影響を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
リュードベリ原子は、無線周波数(RF)電界の高感度の検出器の基礎としてかなり有望である。例えば、19.4GHzにおけるパルス変調されたRFフィールドに対するセシウム蒸気の時間依存の反応を、室温のセシウム蒸気セルを用いて研究することができる。さらに、密度行列シミュレーションを用いて、様々なレーザ条件下でのリュードベリ原子の蒸気の過渡的原子反応を成形するタイムスケールを決定することができる。そのようなシミュレーションにより、これらが、例えば、遷移時間の広がり、リュードベリ-リュードベリ衝突、およびイオン化を含む脱位相メカニズムによって支配されていることがわかった。いくつかの例において、整合フィルタを用いて、10μsから50nsまでの持続時間、および1500μV/cmから約170μV/cmまでの振幅を有する個々のパルス(またはそのシーケンス)を検出することができる。この検出は、或る特定の事例において、0.24μVcm-1Hz-1/2未満の感度で生じ得る。そのような感度は、リュードベリ原子蒸気セルが、精測レーダ受信機として機能することを可能にすることができる。リュードベリ原子蒸気セルは、いくつかの実施態様において、リュードベリフォトニック結晶蒸気セルであってもよい。
【0006】
量子システムの一意の特徴に基づく技術は、計算、通信および検知における幅広い用途にわたって多くの興味を引きつけている。リュードベリ原子は、その均一性、安定性、およびよく知られた特性に起因して、これらの用途の多くの基礎を形成することができる。セシウム(Cs)およびルビジウム(Rb)等のアルカリ原子に基づくリュードベリ原子の場合、光がそれらの外郭電子を、他の原子および外部電界の存在に対し極端に感度が高い状態に光学的に励起することができる。全てレーザおよび無線周波数による励起を通じてアクセスされる、これらの励起された状態について可能な多くの選択肢が存在し、これによりリュードベリ原子特性の大きな調整可能性を与えることができる。有望な用途は、蒸気セルセンサ内に含まれるリュードベリ原子の光学分光学に基づくことができる、無線周波数(RF)電位測定を含む。
【0007】
蒸気セルセンサにおいて、励起されたリュードベリ状態への原子または分子遷移と共振する、レーザフィールド間の量子干渉により、そうでなければ吸収蒸気となったものにおいて、電磁誘導透過(EIT)と呼ばれる光透過を発生させることができる。別の原子遷移と共振する外部RFフィールドの存在がこの干渉を中断させ、スペクトル的に狭いEIT透過ピークを、オートラー-タウンズメカニズムによって2つのピークに分裂させることができる。(そのような分裂の例が
図2Bに示されている。)これらのピークは、RFフィールドの強度に比例して、光学周波数においてさらに離間させることができる。結果として、蒸気セルセンサの光透過の変化は、高い正確性および精度でRFフィールドの存在および振幅を特定することができる。
【0008】
原子ベースの電位測定は、既知の原子特性または定数に対し正確に再現可能に自己較正が可能である点で有利であり得る。そのような量子センサは、高い感度(例えば、数nVcm-1Hz-1/2から約1nV/cmまでのフィールド振幅)で広いMHz-THz周波数範囲にわたって電磁場を検出することが可能である。強力な局所補助マイクロ波フィールドを加えることにより、約55nVcm-1Hz-1/2のRFフィールドを弱めるように蒸気セルセンサの感度をさらに改善することができる。これらのセンサは、単一の電子遷移の周りに最大約400MHzの大きな周波数帯域幅を提供することができるが、最も感度の高い検知は、密に配置されているが別個の電子レベル遷移にあるかまたはこれに近共振するRFフィールドに依拠する。リュードベリ共振の周りの広い帯域幅は、準連続周波数カバレッジを提供することができる。連続RFカバレッジを得るために用いることができる他の方法も存在する。さらに、レベルを動的にスタークシフトさせるために、調整可能な電界を加えることができる。追加のRFフィールドを用いたヘテロダインセットアップも用いることができる。小さな蒸気セル(例えば、30mm3未満)は、近接場測定を可能にするために、純粋に誘電体材料のみから構築することができる。多くの場合、誘電体蒸気セルは、サブ波長空間分解能を有し、入射場を最小限に摂動させ、それによって、スモールアンテナの近接場イメージングまたは直接的な較正の機会をもたらす。光子結晶蒸気セルを含む、そのような蒸気セルの代表的な例が、「Vapor Cells Having One or More Optical Windows Bonded to a Dielectric Body」と題する米国特許第10,859,981号、および「Sensing Radio Frequency Electromagnetic Radiation」と題する米国特許第11,209,473号にさらに記載されている。
【0009】
リュードベリ電位測定は、連続波RFフィールドの振幅を検知するために用いることができるが、EIT動力学が、RFフィールドに対する反応を含めて、サブマイクロ秒を大きく下回るタイムスケールで生じることがわかった。この挙動は、いくつかの例において、パルス変調、振幅変調(AM)および周波数変調(RF)RFフィールドエンベロープを含む、変調されたRFフィールドエンベロープの検出を可能にすることができる。さらに、挙動は、RFフィールドの偏向または位相の検出を可能にすることができ、これはいくつかの例において、追加のRF基準フィールドも用いることができる。
【0010】
いくつかの実施態様において、セシウム蒸気を組み込む蒸気セルセンサを用いることができる。このセシウム系蒸気セルセンサは、パルスRFフィールドに反応した透過の変化を検出するために、逆方向に伝播する緑色および赤外(IR)レーザを用いて室温で用いることができる。しかしながら、他の実施態様、例えば、ルビジウムフォトニック結晶蒸気セル、3つ以上のレーザの使用、原子遷移の異なるセットに対応する他のレーザ周波数の使用が可能である。密度行列理論を用いて、遷移時間の広がり、衝突およびイオン化の影響を含む、原子反応時間を決定づけるタイムスケールを研究することができる。本明細書で説明したように、単一のパルスの信号対雑音比(SNR)およびタイミング精度は、(例えば、FPGAを通じて、マイクロプロセッサを通じて、または別のタイプのデバイスを通じて)整合フィルタを適用することによって改善することができる。さらに、RFフィールドは、240nVcm-1Hz-1/2未満の感度に対応して、170μV/cm未満まで検出することができる。この検出性能は、補助RFフィールドを必要としない。蒸気セルセンサは、レーダ受信機として用いられてもよい。これは、例えば、通過する航空機等の回転エミッタによって発せられた1μsのパルスを検出するのに用いることができる。
【0011】
パルスRFフィールド(例えば、振幅変調されたRFフィールド)を検知するために、蒸気セルセンサは、セシウムまたはルビジウム原子等の原子を含む蒸気を充填され、便宜上、室温でまたはほぼ室温で動作させられてもよい。蒸気セルセンサは、その全体または一部が誘電体材料で形成されてもよい。原子のそれぞれの電子遷移と共振する2つ以上のレーザビームを用いて、リュードベリ状態を用いてEITを生成する。レーザシステムによって生成することができるレーザビームは、2光子逆方向伝播方式または3光子システムを含むことができる。レーザシステムのレーザは、電子遷移に対し周波数ロックされてもよい。そのようなロックは、例えば、基準セルおよび外部ファブリ-ペロー共振器を用いたパウンド-ドレバー-ホール技法を用いて達成することができる。しかしながら、他の技法が可能である。
【0012】
図1は、無線周波数(RF)フィールドのパルスを検知するための例示的なシステム100を示す概略図を提示している。例示的なシステム100は、光ビーム104(例えば、レーザビーム)を生成するように構成されたレーザシステム102を備える。これを行うために、レーザシステム102は、光ビーム104を生成するための1つまたは複数の個々のレーザを含むことができる。例えば、1つまたは複数の個々のレーザは、ガスレーザ、固体レーザ(例えば、ダイオードレーザ)、ファイバレーザ、液体レーザ等を含み得る。レーザシステム102は、ミラー、レンズ、光ファイバケーブル、偏光子、光学フィルタ、周波数増幅器等の、光ビーム104を操作するための1つまたは複数の光学素子を含むことができる。
【0013】
光ビームは、光プローブビーム104aを含み、多くの変形形態において、光結合ビーム104bも含む。光ビーム104は、周波数(または波長)、偏向、位相、方向、位置等において互いから別個であってもよい。
図1は、光ビーム104が、少なくとも周波数が異なる光プローブビーム104aおよび光結合ビーム104bを含む事例を示す。この事例では、例示的なシステム100によって、例えばパルス変調RF電磁放射を検知するために、2光子方式が用いられてもよい。2光子方式の例が
図2Aに関連して説明される。しかしながら、他の変形形態において、光ビーム104は、第3の光ビームを含み、例示的なシステム100は、3光子方式を用いて動作することができる。他の多光子方式が可能である。
【0014】
例示的なシステム100は、蒸気を内部に有し(例えば、原子または分子蒸気)、光ビーム104が蒸気を通り抜けることを可能にするように構成された蒸気セルセンサ106も備える。蒸気は、アルカリ金属原子の蒸気、希ガス、二原子ハロゲン分子のガス、または誘起分子のガス等の成分を含むことができる。例えば、蒸気は、IA族原子(例えば、K、Rb、C等)、希ガス(例えば、He、Ne、Ar、Kr等)、または双方の蒸気を含むことができる。光ビーム104は、光学経路に沿って蒸気を通り抜けることができる。例えば、光プローブビーム104aおよび光結合ビーム104bは、例えば
図1に示すように、反対方向に光学経路に沿って伝播すること(例えば、逆方向の伝播)によって蒸気を通り抜けることができる。しかしながら、他の構成が可能である。例えば、光プローブビーム104aおよび光結合ビーム104bは、蒸気を通り抜け、蒸気セルセンサ106の内部ミラー(例えば、誘電体ミラー)から反射されてもよい。この構成において、光プローブビーム104aおよび光結合ビーム104bは、同じ方向において光学経路に沿って共に同時伝播してもよい。
【0015】
例示的なシステム100は、光プローブビーム104aが蒸気を通り抜けた後、このプローブビーム104aに基づいて検出器信号110を生成するように構成された光検出器108をさらに備える。例えば、光検出器108は、光ビーム(例えば、光プローブビーム104a)を受けたことに反応して電気信号を生成する光検出器であってもよい。いくつかの変形形態において、検出器信号110は、光プローブビーム104aの振幅、光プローブビーム104aの偏向、光プローブビーム104aの位相、またはそれらの任意の組み合わせに基づいてもよい。いくつかの変形形態において光検出器108は、光プローブビーム104aのみを受信し、光結合ビーム104bは破棄される(例えば、光学絞りによって吸収される)。しかしながら、他の変形形態において、2つ以上の光ビーム104が例示的なシステム100によって用いられてもよい。これらの変形形態において、例示的なシステム100は、用いられる各光ビーム104のための光検出器108の実例を含むことができる。
図1に示すようないくつかの変形形態において、蒸気セルセンサ106と、レーザシステム102および光検出器108の一方または双方とは、蒸気セルセンサシステム112の一部(または全て)である。
【0016】
例示的なシステム100は、検出器信号110を受けたことに反応して動作を実行するように構成された信号処理システム114も含む。信号処理システム114は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)に基づくプロセッサを含むことができる。しかしながら、他のタイプのプロセッサが可能である。例えば、プロセッサは、特定用途向け集積回路(ASIC)または一般的なプロセッサ(例えば、x86プロセッサまたはARMプロセッサ)に基づいてもよい。信号処理システム114は、動作を表す命令を記憶するように構成された1つまたは複数のメモリも含んでもよい。1つまたは複数のメモリは、動作の実行によって生成されるデータを記憶するように構成することもできる。多くの変形形態において、1つまたは複数のメモリがプロセッサと通信する。いくつかの変形形態において、信号処理システム114は、閾値周波数未満の検出器信号110の部分(例えば、100Hz以下の部分)をブロックするように構成されたハイパスフィルタを含む。閾値周波数は、DCオフセット信号、および場合によっては、他の望ましくない低周波数成分をブロックすることになる、100Hzまたは別の周波数であり得る。ハイパスフィルタは、例えば、信号処理システム114が、蒸気セルセンサ106、光検出器108または双方によって行われる測定において生じ得る望ましくないアーチファクトを排除することを可能にすることができる。
【0017】
信号処理システム114の動作は、或る期間にわたって光検出器108から検出器信号110を受信し、検出器信号110に基づいてデジタル信号を生成することを含む。デジタル信号は、期間にわたって蒸気が受けたRFフィールド116に対する蒸気の測定された反応を表す。いくつかの変形形態において、検出器信号110は、アナログ-デジタル変換器(ADC)の動作によってデジタル信号に変換される。或る特定の事例において、増幅器は、ADCの動的範囲にわたってADCによって受信された電気信号を拡散させるようにADCに(例えば、電気的に上流に)電気的に結合されてもよい。しかしながら、電気信号がADCによって受信される前に、他のタイプのアナログ成分も電気信号を処理する場合がある(例えば、アナログフィルタ)。
【0018】
RFフィールド116は、RFソース118によって生成することができる。RFソース118の例は、RFホーンアンテナ、ダイポールアンテナ、RFパルスを生成するように構成されたソース、移動する物体から反射されたRF信号(例えば、レーダ信号)等を含む。
図1は、RF試験信号を生成することが可能なRFホーンアンテナとしてRFソース118を示している。しかしながら、RFフィールド116の他のソースが可能である。動作は、デジタル信号に整合フィルタ120を適用して、フィルタリングされた信号を生成することも含む。いくつかの場合、整合フィルタ120のパラメータは、信号処理システム114の1つまたは複数のメモリ内にデータとして記憶することができる。さらに、整合フィルタ120は、プロセッサが1つまたは複数のメモリに記憶された命令を実行するとき、プロセッサによってデジタル信号に適用することができる。
【0019】
フィルタリングされた信号は、デジタル信号と反応テンプレート122との比較に基づいて生成される。反応テンプレート122は、ターゲットRFパルスに対する蒸気の既知の反応を表す。いくつかの変形形態において、反応テンプレート122は、ターゲットRFパルスに対する蒸気の反応のコンピュータシミュレーションに基づく。いくつかの変形形態において、反応テンプレート122は、例示的なシステム100によって取得または処理される経験的データに基づく。例えば、例示的なシステム100は、RFパルスを生成するように構成されたRFフィールド116のソース118を含むことができる。これらの例において、反応テンプレート122は、基準期間にわたってソース118によって生成された複数の基準RFパルスに基づくことができる。複数の基準RFパルスは、RFフィールド116を定義し、共通パルス形状を共有する。いくつかの変形形態において、複数の基準RFパルスは、各々が異なるそれぞれの共通パルス形状を共有する基準RFパルスのサブセットを含むことができる。
【0020】
信号処理システム114の動作は、フィルタリングされた信号を処理して、期間にわたって蒸気が受けるRFフィールド116の特性を決定することをさらに含む。そのような処理は、期間において蒸気が受けるRFパルスの開始時間、持続時間、または振幅のうちの少なくとも1つを決定することを含むことができる。複数のタイプのRFパルスを含む、複数のRFパルスが可能である(例えば、RFパルスのシーケンス)。例えば、反応テンプレート122は、第1のタイプのターゲットRFパルスに対する蒸気の第1の既知の反応を表す第1の反応テンプレートであってもよい。この事例では、フィルタリングされた信号は、デジタル信号と、第1の反応テンプレート、および第2のタイプのターゲットRFパルスに対する蒸気の第2の既知の反応を表す第2の反応テンプレートとの比較に基づいて生成することができる。第1および第2のタイプのターゲットパルスは、例えば、異なる重複しないフィールド強度範囲(例えば、第2のフィールド強度範囲の完全に外側にある第1のフィールド強度範囲)を有することができる。しかしながら、他の差が可能である(例えば、持続時間、位相等)。
【0021】
図1に示すようないくつかの実施態様において、信号処理システム114は、例示的なシステム100のコンピュータ124と通信することができる。これらの実施態様において、コンピュータ124は、ディスプレイデバイス(例えば、フラットパネルディスプレイ)を含み、例示的なシステム100のオペレータが、例示的なシステム100の構成要素(例えば、信号処理システム114)とインタラクトすることを可能にすることができる。例えば、コンピュータ124は、オペレータが信号処理システム114によって決定されるRFフィールド116の特性を観察することを可能にすることができる。
【0022】
いくつかの実施態様において、例示的なシステム100は、既知であるが、RFフィールド116のものと異なる周波数を有するヘテロダインRFフィールドを生成するように構成されたヘテロダインRFソースを含む。ヘテロダインRFフィールドは、例えば連続波(CW)RFフィールドを含むことができる。ヘテロダインRFソースは、蒸気セルセンサ106の方に向けられ、例示的なシステム100の動作中、ヘテロダインRFフィールドおよびRFフィールド116が同時に蒸気と相互作用することを可能にするように、RFソース118と同時に励起することができる。そのような相互作用中、2つのフィールドは、強め合う干渉または弱め合う干渉等によって互いに相互作用する場合がある。しかしながら、ヘテロダインRFフィールドの周波数が既知であるため、この干渉を或る特定の事例において用いて、信号処理システム114がRFフィールド116の特性を決定する能力を改善することができる。
【0023】
動作時に、例示的なシステム100は、レーザシステム102を用いて光ビーム104を生成し、この光ビーム104が蒸気セルセンサ106内の蒸気を通り抜ける。そのような通り抜けの間、RFフィールド116は蒸気と相互作用し、それにより、EITメカニズム等を通じて蒸気の光透過を変更することができる。この相互作用は、期間の全てまたは一部の間に生じ得る。後者の事例は、RFフィールド116が期間の一部の間に存在しないことに対応することができる。光検出器108は、少なくとも、蒸気を通り抜けた後の光プローブビーム104aを受け、これに応答して検出器信号110を生成する。信号処理システム114は、期間にわたって検出器信号110を受信し、検出器信号110に基づいてデジタル信号を生成する。デジタル信号は、期間にわたるRFフィールド116に対する蒸気の反応(光ビーム104を介して光検出器108によって測定される)を表す。したがって、蒸気の反応は、蒸気の測定された反応に対応する。この例において、測定された反応は、光プローブビーム104aを用いて得られる。しかしながら、(例えば、光プローブビーム104aの代わりにまたはこれに加えて)他の光ビームが用いられてもよい。
【0024】
次に、信号処理システム114は、整合フィルタ120をデジタル信号に適用してフィルタリングされた信号を生成する。これを行うために、信号処理システム114は、デジタル信号を反応テンプレート122と比較することができる。反応テンプレート122は、ターゲットRFパルスに対する蒸気の既知の反応を表す。信号処理システム114は、畳み込み関数をデジタル信号および反応テンプレート122に適用することによって、整合フィルタ120を適用し、フィルタリングされた信号を生成することもできる。畳み込み関数の反応テンプレートの期間は、RFフィールド116のパルスの予測持続時間よりも大きくてもよい。畳み込み関数の例は、式(4)に関して以下でさらに説明される。フィルタリングされた信号は、その後、信号処理システム114によって処理され、期間にわたって蒸気が受けるRFフィールド116の特性が決定される。いくつかの状況において、例示的なシステム100は、RFフィールドまたはRFパルスを検出することなく、或る長さの時間にわたって動作する場合がある。これらの状況において、RFフィールド116は、存在しない場合があるか、または例示的なシステム100によって検出されるには弱すぎる場合がある。いくつかの変形形態において、例示的なシステム100は、ヘテロダインRFソースを用いて、期間にわたる連続波(CW)RFフィールドを含むヘテロダインRFフィールドを生成することができる。ヘテロダインRFフィールドは、蒸気と相互作用し、これをRFフィールド116と同時に行うことができる。
【0025】
信号処理システム114は、フィルタリングされた信号を処理して、期間において蒸気が受けるRFパルスの開始時間、持続時間、または振幅のうちの少なくとも1つを決定することができる。しかしながら、RFパルスの他の特性が可能である(例えば、周波数、偏向等)。例えば、RFパルスの繰り返し率の周波数を用いてドップラシフトを検出することができる。用いることができる1つの技法は、パルスドップラ処理である。この技法を用いて、戻りパルスからの範囲データがビニングされる。次に、複数のパルスからなる特定のビンにおけるパルスが分析される。この方法のためのドップラシフト分解能は+/-PRFであり、ここで、PRFはパルス繰り返し率を指す。特定のビンにおけるRFパルスは、信号処理システム114によって、周波数領域にフーリエ変換し、ドップラシフトを決定することができる。
【0026】
同様に、整合フィルタは、2つの異なる交差した偏向受信機を用いて偏向を決定することができるため、偏向に有用である。受信パルス間の時間相関を用いてノイズを減らすこともできる。
【0027】
一般的な態様において、EITは、入射RFフィールドの存在および強度に対する感度が高く、蒸気セルセンサを通るレーザビームのうちの1つの透過に対する結果として生じる過渡的変化は、高帯域幅光検出器を用いて光学的に読み出される。光検出器信号は、デジタル処理システムに、例えばFPGAに入力され、FPGAは、整合フィルタをデータに適用する。DCブロックは、光検出器の後であるがFPGAの前に追加することもできる。これらの場合、DCブロックは、測定されたパルス形状を歪ませることを回避するために、数kHz未満の十分低いカットオフ周波数を有するハイパスフィルタを含む。そのようなブロックは、光検出器の光学的反応における、したがって整合フィルタの出力における任意のDCオフセットを除去することができ、これにより、閾値処理または増幅等の後続の処理を容易にすることができる。
【0028】
整合するフィルタのためのテンプレート、例えば「既知のパルス形状」は、蒸気の原子反応の密度行列モデリングを通じて、または検知のために用いられた同じレーザ条件で取得された実験的測定を通じて得ることができる。実験的測定は、ノイズを低減するために多くのサイクルにわたって平均化することができる。実験的出力RFパルスではなく、テンプレートの原子反応を用いてもよい。なぜなら、パルス形状は、RFパルスのエンベロープを近似するにもかかわらず、有限原子反応時間に起因して異なり得るためである。整合フィルタは、有限インパルス応答フィルタと、係数として用いられるテンプレートデータポイントとの畳み込みプロセスとして実施することができ。テンプレートデータは、プロセッサリソースを削減するために行われる場合がある任意のダウンサンプリングの後、到来する光検出器データに整合するサンプリングレートを有するように離散化することができる。より長いパルス(またはより高いサンプリングレートを有するパルス)を用いることにより、より多数のテンプレートデータポイントに起因してプロセッサのより大きな部分を利用することができ、したがって乗算および加算ステップが必要とされる。整合フィルタは、RFパルスが検出されるとき、ピークを出力し、その最大値のタイミングが、パルステンプレートと実験的パルスとの間の最良整合時点として特定され、これはパルスの終了時点に対応する。最大値は、デジタル後処理において、ピーク発見アルゴリズム等を通じて特定することができるか、または閾値処理またはコンスタントフラクション弁別等の技法を用いてリアルタイムに特定することができる。
【0029】
入射RFフィールドは、最良の感度のために、別の電子遷移に対し共振またはほぼ共振する周波数を有することができ、遷移は2つのレベル間にあり、これらのレベルのうちの1つが、レーザによって結合された最上原子エネルギーレベルに整合する。蒸気セルセンサは、蒸気セルの検知の前に入射RFフィールドに利得またはフィルタリングが適用されることなく独立して動作させることができるが、セルに入る到来するRFフィールドを増幅させるために受信アンテナまたはディッシュを有するシステムにおいて実施され得る。そのようなシステムの例が
図6Aに関して下記で説明される。いくつかの場合、蒸気セルセンサは、光子結晶蒸気セルに基づき得る。光子結晶蒸気セルの例は、その動作を含めて、「Photonic Crystal Receivers」と題する米国特許第11,137,432号にさらに記載されている。
【0030】
いくつかの実施態様において、3cmの長さの矩形のガラス吹製された(glass-blown)セルを、室温でセシウム蒸気で充填することができる。蒸気セルにおけるEITは、反対方向に伝播するレーザビームを用いて生成され、ここで、プローブレーザビームは852.35nmのIR波長を有し、結合レーザビームは509.31nmの緑色波長を有する。プローブおよび結合レーザビームは、それぞれ約160μmおよび140μm1/e
2の半径を有する。これらの波長は、
図2Aに示すラダーシステムにおける原子状態間の遷移と共振する。全ての測定値において、IRレーザビームは、外部ファブリ-ペロー共振器およびパウンド-ドレバー-ホール技法を用いてCs F=4~F’=5のD2遷移との共振でオフセットロックされる。蒸気セルを通るIRレーザの透過は、10MHzの帯域幅を有するアバランシェ光検出器を用いて検出される。次に、光検出器からの検出器信号が、整合フィルタを用いたさらなる処理のために赤色ピタヤFPGAに入力される。
【0031】
試験のために、RFシンセサイザに対するパルス変調を用いて、100ns未満の上昇および下降時間でRFパルスを適用することができ、蒸気セルから約25cmに配置された15dBの利得を有するRFホーンアンテナに出力される。RFホーンの出力は、19.4GHz(K帯域)の周波数を有し、これにより、
図2Aに示すCの55D
5/2および53F
7/2リュードベリ状態を、5Hzのパルス繰り返し率で結合する。
【0032】
ここで
図2Aを参照すると、セシウム系蒸気セルの例示的な低減されたエネルギーレベル図について概略図が表されている。
図2Bは、509nmレーザが共振にわたって走査される際に
図2Aに示す原子フィールド相互作用のシステムを用いてセシウム系蒸気セルから得られるEITピークのグラフを提示している。ピークのオートラー-タウンズ分裂が、2つの異なる連続波RFフィールドについて示されている。RFパルスを測定するために、緑色レーザが共振においてロックされている(破線)。
図2Cは、852nmレーザにおける透過の変化として測定された、10μs RFパルスに対する、原子フィールド相互作用が
図2Aに示されているセシウム系蒸気セルの過渡的原子反応のグラフを提示しており、単一のトレース(
破線)および1.45V/mのRFフィールドについて
10
4
回のサイクルにわたって平均されたもの(
実線)は共に、Ω
RF=2π×117MHz、Ω
p=2π×3.5MHz、Ω
c=2π×8.4MHzに対応する。
【0033】
図2Bは、緑色レーザが共振にわたって走査される際に、RFフィールドが適用されていない状態(0V/mをラベル付けされている線)で蒸気セルから測定されるEITを示す。これらのレーザ条件におけるEITピークの半値幅(FWHM)は約4.5MHzであり、Ω
pまたはΩ
cと共に増大する。連続波RFフィールドの適用時、EITピークのオートラー-タウンズ分裂が観測され、
図2Bにおいて0.20V/mおよび1.45V/mの2つのフィールド強度について示されている。ピーク高さにおける僅かな対称性は、蒸気セルに存在する背景DC電界から生じる。ピーク分裂はν=Eμ
21/hによって与えられ、ここで、μ
21=6294.3ea
0であり、55D
5/2⇔53F
7/2遷移のダイポールモーメントであり、hはプランク定数であり、EはRFフィールドの振幅である。EITピークの分裂は、様々な強度の連続波RFフィールドに反応して測定され、RF生成器の公称出力フィールドを蒸気セルにおいて受けるフィールドに変換するための較正係数が抽出される。2つのフィールド間の差は、主にケーブル損失およびアンテナ利得から生じ得る。低いRF強度において、ピーク分裂は識別可能でなく(例えば、0.1V/m未満)、この較正係数を用いて、蒸気セルにおいて原子によって検出されるRFフィールド/パルスを外挿することができる。
【0034】
RFパルスを検出するために、
図2Bに垂直破線でマーキングされたロケーションにおいて、緑色レーザをEITピークの中心に対する共振においてロックすることができる。RFパルスの適用時に、EITピークが分裂し、共振点における透過が大きな降下を受け、これが
図2Cに示すパルスとして検出される。より低いRFフィールドにおいて、分裂は低減され、ピーク重複が増大し、結果として、透過の変化が低下し、したがって、検出される光透過におけるパルス深さが低下する。原子反応形状は、RFパルスエンベロープの逆を近似するが、より低速な立ち上がりおよび立ち下がりエッジを有する。これらのエッジは、各々、初期の急速な100nm未満の過渡電流の後、定常状態に達するのに約2μsかかる可能性がある。
図2Cに示す平滑線等の最小限のノイズを有する十分に平均されたパルスは、整合フィルタテンプレートの基礎を形成することができる。
【0035】
代替的に、シミュレートされた原子反応(または反応のモデル)は、整合フィルタへのテンプレート入力として用いることができる。この手法は、実験的パルスを取得するためにRF試験セットアップを必要とすることなく用いられるレーザ条件を変更するための急速な手段を提供することができる。蒸気、およびEITにおけるパルスとして生じ得るその反応の例示的なモデルは、例えば、5レベル原子システムによって表すことができる。このパルスをモデル化し、原子タイムスケールの起点をより良好に理解するために、5レベルシステムの密度行列シミュレーションを行うことができ、これは、式(1)に示す時間依存のマスタ方程式に従う。
【0036】
【数1】
ここで、Hはシステムのハミルトニアンであり、ρは密度行列であり、Lはリンドブラッド演算子であり、
【数2】
は、換算プランク定数である。モデルシステムにおける第1の4つのレベルは、
図2Aに示すものに対応し、|1>はグラウンド状態を指し、|2>は中間励起状態を指し、|3>はリュードベリ励起状態を指し、|4>は、RFフィールドによって結合される励起状態を指す。本発明者等は、リュードベリ-リュードベリ衝突、放射減衰、ならびに黒体放射およびイオン化を通じてポピュレートされるが、プライマリシステムに光学的に結合されない原子状態を表す暗状態として、第5のレベル|5>を追加する。このレベルは、特にパルスの立ち下がりエッジにおいて、パルスタイムスケールをより良好にモデル化するのに役立つ。相互作用図におけるこのシステムのハミルトニアンは、以下の行列式によって表すことができる。
【0037】
【数3】
式(2)において、Ω
p、Ω
c、およびΩ
RF(t)は、それぞれプローブレーザ、結合レーザおよびRFフィールドのラビ周波数である。RFフィールドは、最初に或る期間にわたってオフにされ(Ω
RF=0)、シミュレーションが平衡状態に達することができるようにし、次にRFフィールドは、パルス持続時間にわたってオンにされ、これは有限の上昇および下降時間を含むことができる。|2>状態の離調はΔ
2=-Δ
P+k
Pνによって与えられ、|3>状態の離調はΔ
3=-Δ
P-Δ
C+(k
P-k
C)νによって与えられ、プローブおよび結合レーザの双方が共振でロックされるため、Δ
P=Δ
C=0である。k
Pおよびk
Cはそれぞれプローブおよび結合レーザの波ベクトルである一方、νは、ドップラシフトを計上するのに用いられるプローブレーザの方向に沿った原子速度である。
【0038】
リンドブラッド演算子Lは、原子状態の減衰および脱位相を計上することができる。Γ21=2π×5.2MHzは、6P3/2~6S1/2のよく知られた減衰率として用いることができ、Γ32は、リュードベリ状態から励起状態への放射減衰率として用いることができる。例示的なモデルにおいて、率Γ31=Γ41=Γ51は、実験に当てはめられ、ビームを通じた遷移時間を表し、|3>、|4>、および|5>状態における原子は、ビームから出てドリフトすると、グラウンド状態|1>原子に置き換えられる。最後に、Γ35は、主にリュードベリ-リュードベリ衝突を通じて生じる、暗状態における原子および/またはイオンの生成率を表す。この率は、固定平均値、またはリュードベリ状態ポピュレーションに依拠する時間変動率として実施することができる。状態|4>からの減衰は、明示的に含めることもできるが、その値は例示的な事例の場合小さく、このため例示的なモデルにおいて、レベル|4>からの減衰および脱位相が無視される。
【0039】
ここで
図3Aを参照すると、10μs RFパルスに対する実験的原子反応(蒸気の測定反応の例)を、密度行列モデルを用いてシミュレートされたものと比較したグラフが提示されている。前者は
図3Aにおいて実線で表され、後者は破線で表されている。そのようなモデルは、パルスの終了時に顕著な低速電界効果を除いて、パルスの全体形状を良好に捕捉することができ、整合フィルタテンプレートとして用いることができる。
図3Aに示す例示的な事例について、Ω
p=2π×1.8MHz、Ω
c=2π×8.4MHz、Ω
MW=2π×119MHzである。
図3Bは、
図3Aのパルス応答の立ち上がりエッジに対する変化をIRパワーと共に示すグラフを提示し、これはモデリング(左パネル)および実験(右パネル)の双方によって示されている。ここで、Ω
c=2π×8.4MHzおよびΩ
MW=2π×119MHzである。
【0040】
10μsのRFパルスに対する例示的なシミュレートされた原子反応テンプレートが、比較のための実験結果と共に
図3Aに示されている。密度行列要素の虚数部ρ
21の変化は、吸収係数αに比例する。この変化は、弱い吸収条件下で蒸気セルを通り抜けた後のプローブレーザの透過強度の変化の合計に極めて近似している。合計吸収の絶対値は、原子数密度における不確実性、光学的損失(蒸気セル壁および下流の光学構成要素に起因した反射および吸収を含む)、検出器感度および検出器利得に起因してモデル化が困難である可能性がある。例えば式(3)によって示すように、ボルツマン分布にわたる異なる速度νにおいて実行される積分シミュレーションによって、ρ
21のドップラ平均値を得ることができる。
【0041】
【数4】
ここで、Tは蒸気セル温度であり、mは用いられるアルカリ原子の原子質量(ここでは
133Cs)であり、k
Bはボルツマン定数である。
【0042】
パルスの立ち上がりエッジは2つのタイムスケールを含んでもよい。例えば、最初のタイムスケールは、約50nsにわたって生じる透過の鋭い減少を含んでもよく、後続のタイムスケールは、数マイクロ秒にわたる透過のより低速な指数関数的低減を含んでもよい。最初の鋭い過渡電流は、RFフィールドによって効果的に変更されるEITに反応したプローブレーザの突然の吸収により駆動され、低い光学ラビ周波数(例えば、低いレーザパワー)において可視である。ここで、6P
3/2および6S
1/2状態におけるポピュレーション、ならびにEITがシフトされた時点のコヒーレンスに基づいて、2レベルシステムがD2遷移において自ら平衡状態に入る。計算される過渡的スパイクは、限られた検出帯域幅に起因して、実験的に完全に観測されない場合がある。それぞれ
図2Bの左および右パネルに示すように、この高速過渡電流の相対的存在および深さは、モデルおよび実験の双方において、Ω
pの増大と共に減少する。したがってRFパルスの到達の急速な検出が望ましい場合、または短いサブマイクロ秒RFパルスの検出時に、鋭く深い過渡電流が存在する、より低いΩ
p条件を用いることが有利であり得る。
【0043】
より低速な後続の動力学は、暗状態|5>のレーザビームおよびポピュレーションを通じて原子の遷移時間によって設定された、原子の運動に起因した蒸気セル内の相互作用領域の再ポピュレーションを検討することによって計上することができる。RFパルスの前に、原子の或る割合が、衝突、放射減衰、および黒体プロセスに起因して暗状態で終了する可能性があり、D2遷移における光動力学に参加することができない場合がある。しかしながら、RFフィールドがオンにされると、リュードベリ状態は、オートラー-タウンズ効果に起因して共振外れにシフトされ、原子システムは、緑色レーザが効果的にオフにされ、さらなるリュードベリ状態|3>およびそれらの関連する衝突による副産物の生成を阻止すると判断する。暗状態原子は最終的にレーザビームの外にドリフトし、遷移時間に依拠した速度で新たなグラウンド状態原子と交換される。初期過渡電流後のパルスの一部分に対する指数関数的当てはめにより、レーザビーム直径が増大し、したがって遷移時間が増大するときに線形にスケーリングする有効な時定数を得ることができる(
図7Aおよび
図7Bを参照)。
【0044】
パルスの立ち下がりエッジにおける復元時間は、パルスの立ち上がりエッジにおける動力学よりもかなり長くなる可能性があり、より高いレーザパワーにおいて、パルスは多くの場合、強化された透過の期間を呈する。この挙動は、一部には、蒸気セルにおける衝突に依存したイオン化および電界効果に起因する場合があり、これは、パルス中にイオン化率の変化が生じた後、再度平衡状態に達するのにかなり長い時間がかかり得る(例えば、約100μs)。結果として、パルス形状はパルス率に僅かにしか依存しない場合がある。これらの影響は
図8~
図12Fに示され、Ω
cが増大すると強くなる。緑色レーザ離調Δ
Cの量および方向に対する強力な依存性と組み合わせて、影響は衝突の原点を示唆する。さらに、長い過渡信号テールの厳密な形態は、レーザビームが蒸気セルを通り抜ける際のレーザビームの位置に依拠することができ、これは、蒸気セル内の任意の背景電界が影響を有し得ることを示唆する。この低速反応を近似的にモデル化する1つの方式は、高いΓ
35率、特に、リュードベリ集団に依拠するものを用いることによるものである。しかしながら、これらの影響は特定の蒸気セルに依拠し、正確なモデル化が非自明である可能性があることを考えると、整合フィルタのより良好な性能は、実験テンプレートを用いることによって得られる。
【0045】
いくつかの実施態様において、例示的なシステム100は、通信およびレーダ受信機アプリケーションを目的としたもの等の単一のRFパルスまたはRFパルスのシーケンスを検出するように構成することができる。
図4Aは、異なる振幅の19.4GHzパルスに対する例示的なシステム100の原子反応を示し、対応するEITピークは、インセットに示すように、連続RFフィールドに反応して分裂する。より低いRF振幅はより低いEITピーク分裂につながるため、主な変化はパルスの深さにのみおけるものである場合があり、立ち上がりエッジの第2のより低速な時定数に対する変化は僅かのみである。そのような挙動は、
図7A~
図12Fに関連してさらに説明される。約3μsのパルスの底部における不均一性に対する任意の変化は、RF出力自体における小さな振幅変動からピックアップすることができる。
【0046】
弱いRFパルスの検出を改善し、信号対雑音比(SNR)を改善するために、整合フィルタは、個々のパルスに適用することができる。或る特定の事例において、この技法を用いて、白色ノイズから既知のパルス形状を抽出することができる。算術的に、整合フィルタは、ノイズの多い波形pdata(t)と、時間反転予測パルステンプレートptemp(t)との畳み込みによって表すことができる。畳み込みは、以下で式(4)によって示すような畳み込み関数MF(t)によって表すことができる。
【0047】
【数5】
いくつかの例において、式(4)は、FPGAに対して用いるように離散化される。フィルタリングされた出力のピークは、測定されたノイズの多い波形を有する予測パルス形状の最大相互相関のポイントに対応する。したがって、ピークはFPGAがパルス到着時間t
arrival+パルステンプレート長t
pulseと特定することを可能にすることができる。いくつかの変形形態において、パルステンプレート長t
pulseは、畳み込み関数のための反応テンプレートの期間としての役割を果たす。最大相互相関のポイントは、RFパルスの特性が、予測パルステンプレートの参照等により、測定されたノイズの多い波形から決定されることを可能にすることができる。そのような特性は、RFパルスの開始時間、RFパルスの終了時間、RFパルスの持続時間、RFパルスの振幅等を含む。
【0048】
図2Cおよび
図4Cに実証されているように、光透過は、RFフィールドがオフにされたとき、そのパルス前の値に迅速に復元するのではなく、原子が数μ秒の有限タイムスケールで反応する。このため、反応テンプレートのいくつかの実施態様において、0.5~2μsの期間が、RFパルスの終了を超えて、完全な原子反応形状に整合するように加えられる。結果として、t
pulseは、RFパルスの予測持続時間と、この余分な追加時間とを加えたものに等しい。
【0049】
いくつかの変形形態において、整合フィルタは、FPGAに対し、10
3個のサイクルにわたって平均化された、以前に測定された波形を用いてリアルタイム分析を実行するように実施される。これらの変形形態において、原子反応形状は方形のRFパルスエンベロープに厳密に整合しないため、出射RFパルスは予測テンプレートとして用いられない。さらに、従来のレーダ受信機と異なり、FPGAは、中間フィルタまたは増幅器なしで蒸気セルセンサに直接結合することができる。全体パルス形状は、RF振幅と共に最小限にしか変動しないため、同じ予測パルステンプレートを、異なるRF振幅で整合フィルタについて用いることができる。しかしながら、パルスエッジの時定数とテンプレートとの間の不整合により、結果として、僅かなノイズの低減と組み合わされた抽出パルスタイミングの僅かなシフトが生じる場合がある。僅かなシフトおよびノイズの低減については、
図12A-Fに関してさらに論じられる。これらの影響は、RFフィールド振幅の減少につれより明らかとなり、2つ以上の反応テンプレートを用いて整合フィルタを実行することによって修復することができる。例えば、1つの反応テンプレートは、大きなRFフィールドを検出するために調整することができ、別の反応テンプレートを並行して実行し、弱いフィールドを検知し、2つの最大オーバラップを取得することができる。
【0050】
ここで
図4Aを参照すると、単一のトレース(ギザギザの線)および10
4個のサイクルにわたって平均されたトレース(概ね平滑な線)の双方として示される、変動する電界振幅の10μs RFパルスに対する例示的な原子反応のグラフが提示される。インセットは、連続波RFに反応したEITピークの対応するオートラー-タウンズ分裂を示す。ここで、Ω
p=2π×3.5MHzおよびΩ
c=2π×8.4MHzである。
図4Bは、
図4Aに示すパルスに適用されるときの、整合フィルタ(MF)の出力のグラフを表す。整合フィルタ出力のピークはパルスタイミングを与える。
図4Cは、固定のΩ
c=2π×8.4MHzにおいて、完全なEITピーク分裂(大きなRFフィールド)における値に正規化された、0.6~73μWの範囲をとるIRレーザパワーの関数として、
図4Bの整合フィルタ信号のピーク高さのグラフを提示している。
図4Dは、緑色レーザパワーが(固定のΩ
p=2π×3.5MHzで)1~25mWに変化する際の、
図4Bの整合フィルタ信号の信号対雑音(SNR)比の図を提示している。
【0051】
図4Bは、
図4Aに示すのと同じ条件下で個々のパルスに適用される整合フィルタの出力を示す。原子反応の低速な立ち下がりエッジの整合を含めるために、10μsパルスよりも1.1μs長い予測パルステンプレートが用いられるため、整合フィルタによって出力されるパルスタイミングは、11.1μsである。整合フィルタは、単一のパルスにおいて見られるノイズの多くを抑制し、より弱い振幅のRFパルスのタイミングが抽出されることを可能にすることができる。
【0052】
EITピーク幅は、プローブおよび結合ラビ周波数(すなわち、IRおよび緑色レーザパワー)の組み合わせによって強力に影響を受けるため、これらの周波数は、弱いRFフィールドを検出するための最適条件を決定するように変更される。
図4Cは、固定の中間緑色パワーについてΩ
pの関数として整合フィルタピーク高さを示す。一般的に、全吸収はビーム強度と共にスケーリングするため、より大きなΩ
pは、より大きな未加工パルス深さにつながり、したがって、より大きな整合フィルタピークおよびSNRにつながる。しかしながら、アバランシェ光検出器は、高いIRパワーにおいて飽和し、光検出器の前にニュートラル密度フィルタの追加を要する可能性がある。このため、より良好な比較のために、所与のΩ
pのための整合フィルタピークは、最も大きなRFフィールドにおける値に正規化された。このため、
図4Cは、RF振幅およびΩ
pの関数として、EITピーク幅およびオーバラップにおける変化をマッピングすることができる。低いΩ
pにおいて、EITピークはより狭いため、オートラー-タウンズレジームは拡張され、ピークがオーバラップを開始し、パルス振幅が減少する前に、より低いRFフィールドに達することができる。弱いRFフィールドに対する感度を最大限にすることが目的である場合、より低いΩ
pが望ましい。対照的に、広範囲のRFフィールド強度を区別することが目的である場合、広いオーバラップするEITピークに起因してパルス深さがRFフィールドと共に徐々に変動するため、より高いΩ
pが好ましい。
【0053】
図4Dは、Ω
pが中間値に保持されている間、Ω
cが変更される際の信号対雑音(SNR)比の変化を示す。ここで、SNRは、整合フィルタノイズの標準偏差に対する整合フィルタピーク高さの比として定義される。Ω
cの低減により、EITピークを狭めることによって、最も低いRFフィールドにおけるSNRが改善する。しかしながら、そのような改善により、より低いEITピーク振幅に起因して高いRFフィールドにおけるSNRが低減する場合がある。さらに、或る特定のΩ
cを超える低減、ここでは約2π×3.5MHzは、全てのRFフィールドにおけるSNRにとって、不利益であり得る。
【0054】
ここで
図5Aを参照すると、様々なRFパルス長、2μsだけ離間された3つの2μsパルスのバースト(白い三角形)、およびより低いIRパワーで取得された10μsのパルス(白い菱形)について示された例示的な整合フィルタの信号対雑音(SNR)比についてグラフが提示されている。ここで、Ω
p=2π×1.7MHzであり、2π×3.5MHzではない。
図5Bは、
図5Aに示す様々なパルス条件について整合フィルタピークから測定されたパルスタイミングに対するガウス当てはめの標準偏差のグラフを提示している。破線の水平線は、整合フィルタを実施するFPGAの有限サンプリングレートに起因した制限に対応する。
【0055】
図5Aおよび
図5Bにおいて、異なるパルス長さおよびシーケンスのSNRおよびタイミング精度が、全体の最高のSNRを与えるレーザ条件、例えば、Ω
p=2π×3.5MHzおよびΩ
c=2π×8.4MHzにおいて示されている。検出のタイミング精度は、整合フィルタ最大値から後処理中に抽出される300個のパルスタイミングの分布へのガウス当てはめの標準偏差として評価される。より大きなRFフィールドにおいて、タイミング精度は、FPGAに対し整合フィルタを実施するのに必要なダウンサンプリングによって制限することができる。FPGAは、畳み込みにおける必要な乗算および加算を同時に行うためのリソースが有限であることに起因して、予測パルステンプレートにおけるデータポイントの最大数に制約される場合がある。このため、より短いパルスの場合、FPGAのサンプリングレートは増大させることができる。サンプリングレートからの制限は、
図5Bにおいて水平の破線として示され、これは、抽出される標準偏差との比較のためにタイミング分解能に対する制限としてサンプリングレートの半分を示す。
【0056】
EITピークが完全に分裂する場合、SNRは、RFフィールドが変動しても平坦なままである。しかしながら、より弱いRFフィールドにおいてオーバラップが生じると、SNRは降下し始める。約15dBの周りのSNRにおいて、誤警報を示唆する証拠が現れ始める。この証拠は、より低いSNRにおいてより頻繁になる。2μsよりも短いパルスは、原子反応の長い時定数に起因して、全パルス深さに達する時間を有しない場合がある。このため、短いパルスのSNRは、全てのRFフィールドにおいて不利となる場合があり、結果として、高いRFフィールドにおけるサンプリングレートではなく、ノイズによって制限され得る0.5μsよりも短いパルスのタイミング精度についても同様となり得る。これらの可能性にかかわらず、短いパルスは、依然として、50ns幅まで検出することができる。
【0057】
整合フィルタリングは、パルスのバーストに適用することもできる。例として、整合フィールドは、2μsだけ離間された一連の3つの2μsパルスに適用することができ、合計パターンは10μsの長さであるが、単一の10μsパルスよりも低い合計エネルギーを含む。バーストパターンは、より低いエネルギーに起因して高いRFフィールドで単一の10μsパルスよりも低いSNRを有するが、低いRFフィールドにおいて類似のSNRを維持する。バーストパターンは、整合フィルタ出力におけるより狭いピークを生成し、これにより、単一の2μsまたは10μsパルスのいずれかを超えて低~中程度のRFフィールドにおけるタイミング精度を改善する。しかしながら、整合フィルタパターンにおけるサイドローブの追加に起因して、バーストシーケンスの使用は、いくつかの場合、サイドローブが中心ピークを超えたとき等、約5%の追加の誤警報率を伴う場合がある。比較技法に基づいてシーケンス内の各パルスの振幅を変動させることによって改善を達成することができる。
【0058】
図5Aに示すように、弱いRFパルス(
図5A~
図5Bにおける白い菱形)を検出するための最適なレーザ条件、例えば、Ω
p=2π×1.7MHzおよびΩ
c=2π×8.4MHzを用いて、RFフィールド感度は、SNRが1に近づくとき、約170μV/cmの制限に達することができる。2μs検知時間の場合、この感度は、約240nVcm
-1Hz
-1/2の感度に対応する。SNRが15dBに達し、偶発的誤警報がより起こりやすくなる(例えば、約330μV/cmのRFフィールド制限に対応する)と、2μsの検知時間により、470nVcm
-1Hz
-1/2の有効感度を得ることができる。そのような感度は、補助的基準RFフィールドを必要とすることなく、単一のパルスにおいてリアルタイムで得ることができる。検出可能なフィールド範囲は、蒸気セル受信機の一部、例えばディッシュとして増幅器を用いて蒸気セルにおけるRFフィールドを増幅することによって、またはいくつかのパルスにわたって平均をとることによってさらに拡張することができる。光結晶受信機も用いることができる。
【0059】
整合フィルタは、レーダ信号に関連付けられたRFパルスの検出において有用であり得る。例えば、
図6Aは、蒸気セルセンサシステム602およびRF光学素子604を含む例示的なシステム600の概略図を提示している。例示的なシステム600は、レーダ信号または通信信号等の信号を検出するように構成することができる。蒸気セルセンサシステム602は、
図1に関連して説明される蒸気セルセンサ106に類似することができる蒸気セルセンサ606を含む。いくつかの変形形態において、蒸気セルセンサシステム602は、蒸気セルセンサ606の蒸気を通り抜ける光ビーム(例えば、光プローブビーム)を生成するように構成されたレーザシステムを含む。RF光学素子604は、蒸気セルセンサ606に対しRFフィールド608を方向付けるように構成される。RFフィールド608は、レーダ信号または通信信号等の信号を定義する1つまたは複数のRFパルスを含むことができる。いくつかの場合、RFフィールド608は、遠隔に位置するRFソース610(例えば、レーダタワー)によって生成される。いくつかの場合、RFフィールド608は、移動物体612(例えば、航空機)から反射される。RFフィールド608は、蒸気セルセンサ606に方向付けられているとき、蒸気セルセンサ606の蒸気と相互作用し、蒸気を通る光透過を(例えば、EITメカニズムにより)変更する。そして、変更された光透過は、光ビームが蒸気を通り抜ける際、光ビームのうちの1つまたは複数(例えば、光プローブビーム)の光学特性を変更することができる。
【0060】
図6Aに示すようないくつかの変形形態において、RF光学素子604はディッシュである。ディッシュは、例えば、ディッシュの焦点の周りで湾曲する半球状の壁を含むことができる。半球状の壁は、例示的なシステム600の周囲環境からRFフィールド608を受信するのに適した寸法を有することができる。この寸法は、半球状の壁がRFフィールド608をディッシュの焦点上に方向付けることも可能にすることができる。或る特定の事例において、半球状の壁は、金属(例えば、アルミニウム、鋼等)から形成することができる。
図6Aに示すようないくつかの変形形態において、蒸気セルセンサ606は、ディッシュの焦点に配設される。例えば、ディッシュは、ディッシュの縁部から延び、焦点または焦点付近における端部で終端する支持アームを含むことができる。蒸気セルセンサ606はこの端部に結合することができる。いくつかの変形形態において、半球状の壁は、RFフィールド608を焦点上に方向付けるとき、RFフィールド608を蒸気セルセンサ606(および内部の蒸気)上に集中させる。そのような集中は、RFフィールド608が弱い状況において有益であり得る。いくつかの変形形態において、RF光学素子604はRFレンズである。RFレンズの例は、テフロンレンズ、メタマテリアルレンズ、または屈折率分布型レンズを含む。しかしながら、他のタイプのRF光学素子604が可能である。様々なタイプのRF光学素子の組み合わせも可能である。
【0061】
例示的なシステム600は、信号処理システム614も含み、いくつかの変形形態では、信号処理システム614と通信するコンピュータシステム616も含む。コンピュータシステム616は、ユーザが例示的なシステム600とインタラクトし、これを制御することを可能にする。信号処理システム614は、蒸気セルセンサシステム602からの信号に基づいてデジタル信号を生成することを含む動作を実行するように構成される。デジタル信号は、期間にわたる、RFフィールド608に対する蒸気セルセンサ606の蒸気の測定された反応を表す。動作は、デジタル信号に整合フィルタを適用して、フィルタリングされた信号を生成することも含む。フィルタリングされた信号は、デジタル信号と反応テンプレートとの比較に基づいて生成され、反応テンプレートは、ターゲットRFパルスに対する蒸気の既知の反応を表す。動作は、フィルタリングされた信号を処理して、期間にわたる、蒸気セルセンサによって検知されたRFフィールドの特性を決定することをさらに含む。いくつかの変形形態において、フィルタリングされた信号を処理することは、RFパルスのシーケンスを検出することを含む。例えば、1つまたは複数のRFパルスは、レーダ信号を定義することができ、信号処理システム614は、RFパルスのシーケンスのソースとして航空機を特定するように構成することができる。別の例として、1つまたは複数のRFパルスは、通信局(例えば、衛星、航空機、車両、ボート、ブロードキャストアンテナ等)から送信される通信信号を定義することができる。これらの場合、信号処理システム614は、通信信号によって表されるデータを特定するように構成することができる。
【0062】
図6Bは、航空機が飛行する際の航空機上の回転エミッタを、固定蒸気セル受信機によって表す例示的なシナリオの極グラフを提示している。固定の蒸気セル受信機は、10kHzの繰り返し周波数で1μsのパルスを発する。
図6Cは、整合フィルタリング後に
図6Bの固定蒸気セル受信機によって検出される例示的な信号のグラフを提示している。固定の蒸気セル受信機は、エミッタのアンテナが受信機に向くように回転するときはいつでも、パルスのクラスタを生成する。
図6Dは、アンテナの単一の回転から形成されるパターンを示す、
図6Cの例示的な信号からの単一のパルスクラスタのグラフを提示している。パターンは、複数のより弱いサイドローブを有する大きな中心ピークを含む。
図6Eは、
図6Dに示す単一のパルスクラスタの中心ローブからのグラフを提示している。中心ローブは約8.5sであり、
図6Dは、個々の1μパルスからの整合フィルタ出力を示す。ここで、Ω
p=2π×7.8MHz、Ω
c=2π×8.4MHzである。
【0063】
図6Bは、飛行経路に沿って蒸気セル受信機(またはセンサ)を越えて飛行する飛行機によって生成されるレーダ信号の検出を実証している。レーダ信号は、蒸気セル受信機に達することになるパルスのパワーおよびタイミングをシミュレートする、ベクトル信号発生器によって生成される。ベクトル信号発生器は、変化する距離を計上し、約6dBmのピークパワーを生成し、これが蒸気セル受信機付近のRFホーンアンテナに送信される。例示的なシナリオにおいて、航空機は、蒸気セル受信機から約1kmにおいて200m/sの典型的な商用航空機速度で走行する。航空機には、10kHzの繰り返し率で1μsの長さのパルスを発する、30rpmで回転する回転アンテナが搭載されている。最も高いRFフィールド感度に対応する、航空機からのパルスを検出するためのレーザ条件は、例えば、Ω
p=2π×1.7MHzおよびΩ
c=2π×8.4MHzである。
【0064】
図6Cは、FPGAにより実施される整合フィルタを用いて処理された、蒸気セル受信機の原子反応を通じて見られる15sの長さのレーダパターンを示す。パルスは、エミッタが受信機に向いているとき可視であり、典型的なアンテナパターンに対応する、
図6Dに示す変動する振幅を有するスパイクのクラスタを生成する。原子システムおよび整合フィルタによって出力される個々のパルスのピークは、一般的に受信RFパルス振幅と共に、ただし
図4Cに示す非線形形式でスケーリングする。スケーリングの可能な結果は、約0.2V/mを超えるフィールド(または約-10.7dBmのパワー)を、実証に用いられるレーザ条件における飽和に起因して区別することができないというものである。この挙動は、ピーク分裂およびパルスの深さが概ね線形である、例えば0.04~0.2V/m(または-24.8~-13.3dBmのパワー)であるか、または二次である、例えば0.04V/m未満(または-24.8dBmのパワー)である、より低いRFフィールドにおいて起こりにくい。オートラー-タウンズピークが完全に分裂した後のパルス深さにおける飽和に起因して、
図6Dにおける中心ローブは、サイドローブのように丸型ではなく、平坦である。さらに、第1のサイドローブは、EITピークの側部における強化された吸収に起因して、中心ローブよりも僅かに高い振幅を有する。
【0065】
減少するフィールド強度のサイドローブは、アンテナがスピンする際に観察することができる。航空機が受信機に接近する際、蒸気セル受信機におけるRFフィールドが増大し、ノイズフロアより上でより多くのサイドローブを区別することができる。その最も近いアプローチにおいて、飛行経路の極値における1つのみと比較して、中心ピークの各側において4つのサイドローブを検出することができる。さらに遠くから航空機を検出するか、またはより弱いサイドローブを検出するために、発せられるパルス長の増大、蒸気セル深さの増大、受信機における増幅器の追加、もしくはノイズ源の低減、またはフォトニック結晶蒸気セルが必要とされる場合がある。或る特定の事例において、検出システムは、FPGA処理によりいくらかのより小さな遅延およびノイズが加えられた状態で、レーザおよびそれらのロックプロセスからの光周波数および振幅ノイズによって支配されることになる場合がある。
【0066】
リュードベリ原子ベースのセンサの適用は、レーダ受信機(例えば、航空機アンテナによって発せられたパルスを検出する)および通信システムを含む。リュードベリ原子ベースのセンサは、上記で説明したようなCs蒸気セルに基づくことができる。室温におけるCs蒸気セルは、パルス変調RFフィールドの適用に対して高速な過渡的反応を有する場合があり、50ns未満までのRFパルスを検出することができる。RFフィールドがオンにされることに対する原子反応時間は、いくつかの場合、2つのタイムスケール、すなわち、短い概ね50nsの過渡電流、それに続く、レーザビームからのリュードベリ-リュードベリ衝突による副産物の遷移時間に依拠する、より長いマイクロ秒遅延を含むことができる。RFフィールドが除去されることに対する反応は、リュードベリ-リュードベリ相互作用および電界における突然の増大に起因して低速になり得る。原子反応形状に基づいて整合フィルタを用いて、蒸気セルセンサは、約170μV/cmの振幅まで単一ショットRFパルスを検出することができ、感度は約240nVcm-1Hz-1/2であり、タイミング精度は約30nsであり、全て補助RFフィールドは有しない。多くの場合、狭いEITピークおよび弱いレーザ条件は、低いターゲットフィールドに対する最も高い感度について最適である一方、より高いレーザパワーは、より広い振幅範囲にわたる較正の場合に好ましい。
【0067】
ここで
図7Aおよび
図7Bを参照すると、パルス形状に対するレーザビームサイズの影響を示すグラフが提示されている。
図7Aにおいて、グラフは、相互作用ボリューム(例えば、例示的な事例におけるプローブおよび結合ビームのオーバラップ)半径の半径を増大させることにより、パルスの立ち上がりエッジにおける原子反応が低速化することを示している。
図7Bは、パルスの立ち上がりエッジへの指数関数的当てはめから抽出された時定数が、IRビーム半径と共に線形にスケーリングすることを示している。この例において、結合ビームは、IRビームのうちの任意のものよりも大きい。
図7Aに示すように、原子パルス反応の立ち上がりエッジを構成する第2のより低速な時定数は、レーザビーム半径の選択に対し感度が高い場合がある。ここで、赤外ビーム半径が変更され、この半径は、緑色レーザビームよりも小さい。一定のラビ周波数は、赤外レーザパワーを増大させることによっても維持される。パルスの立ち上がりエッジに存在する、最初の、50ns未満の過渡電流は、光検出器の帯域幅分解能内まで、レーザビームサイズによる影響を受けないように見える。しかしながら、時定数は、パルスの第2のより低速な減衰に対する指数関数的当てはめから抽出することができ、この時定数は、
図7Bに示すように、IRレーザビームの半径と共に単調にスケーリングすることがわかっている。ビームを通る原子の遷移時間はその半径に直接比例するため、単調スケーリングにより、パルスのこのより低速な過渡的タイムスケールが、原子遷移時間によって支配されていることが実証される。
【0068】
ここで
図8A~
図8Cを参照すると、異なるラビ周波数における電界の影響を示すグラフが提示されている。
図8Aにおいて、パルスの立ち下がりエッジは、緑色ラビ周波数に依拠し、より高いラビ周波数において、より強力な残存オーバシュートを有する。ここで、Ω
p=2π×1.8MHzである。
図8Bにおいて、パルスの立ち上がりエッジの形状は、レーザビーム位置と共に変化しないが、立ち下がりエッジの形状は変化する。インセットは、セルの短い1cm×1cmの面内のレーザビームについて概算ロケーションを示し、レーザがページの内外に進む。
図8Bにおいて、Ω
p=2π×1.8MHzおよびΩ
c=2π×10.5MHzである。
図8Cは、緑色離調がRFパルスに対する実験的反応のテールに対する強力な影響を有することを示す。
図8Cの場合、Ω
p=2π×34MHz、Ω
c=2π×8.7MHz、およびΩ
MW=2π×119MHzである。
【0069】
立ち下がりエッジの形状は、
図8Aに示すように緑色のレーザパワーに依拠し、これによりリュードベリ状態ポピュレーションが変化することになる。同様に、
図8Cに示すように、形状は、方向(青または赤の離調)および共振から離調する緑色レーザ周波数の量に大きく依存し得る。さらに、
図8Bに示すように、立ち下がりエッジの形状およびタイムスケールは、蒸気セル壁に対するレーザ位置に依存し得る。パルスの深さは、主に、大部分が蒸気セル壁に付着した、蒸気セル内の電化の分布に依拠する電界シフトに起因した光透過の変化に起因して変化する。全てのこれらの観測は、パルスの低速な立ち下がりエッジが、蒸気セルにおける衝突、背景電界、イオンの生成および/または閉塞等の要因に対し高感度であり得ることを強調している。
【0070】
ここで
図9を参照すると、2μsの長さのパルスについてパルス形状に対する繰り返し率の影響を示すグラフが提示されている。定常状態に達する前に、パルスの立ち下がりエッジは最大約100μs残存する可能性があるため、パルス形状は、パルス間の間隔がより短い場合、僅かに変化することになる。
図9は、全体パルス深さ、ならびに立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのタイムスケールがパルス率と共に僅かに変動することを示す。より高い繰り返し率を有するパルスは、パルス深さの増大に起因して、検出が僅かに容易であるように見える。
【0071】
ここで
図10Aを参照すると、低い光学ラビ周波数におけるパルス形状に対する原子遷移の選択の影響を示すグラフが提示されている。
図10Aにおいて、Ω
p=2π×1.8MHzおよびΩ
c=2π×2.5MHzである。
図10Bは、高い光学ラビ周波数における対応する影響のグラフを提示し、ここで、Ω
p=2π×12.2MHzおよびΩ
c=2π×5.7MHzである。リュードベリおよび/またはRF遷移に対する変化は、実験的原子反応の立ち上がりエッジに対し最小限の影響を有するが、この事例では比較的大きなリュードベリ状態ポピュレーションに対応する、高い光学ラビ周波数(例えば、Ω
MW=2π×60MHz)における立ち下がりエッジに影響を及ぼし得る。
【0072】
図10Aおよび
図10Bは、同じパルステンプレートを、異なる原子遷移にわたって、したがって異なるRF周波数において用いることができるか否かの特性を提示している。55D
5/2⇔53F
7/2遷移(K帯域19.40GHzマイクロ波)に加えて、55D
5/2⇔56P
3/2遷移(C帯域4.24GHzマイクロ波)および58S
1/2⇔58P
3/2遷移(18.94GHzマイクロ波)が調査され、EITピークが完全に分裂しているとき、緑色レーザが大きなRFフィールドにおける異なるリュードベリ状態にシフトされている。弱いRFパルス検出に最適である低いレーザパワー(したがってラビ周波数)において、
図10Aに示すように、パルス形状は、変動するリュードベリおよびRF原子状態遷移にわたって同一であるように見える。しかしながら、より高い光学パワーにおいて、パルスの立ち下がりエッジに対する何らかの変化が、おそらく、状態間の変動する衝突率および分極率に起因して現れる可能性がある。
【0073】
ここで
図11Aおよび
図11Bを参照すると、それぞれ19.4GHzおよび4.2GHzにおける異なるRFフィールドのパルス形状の変動を示すグラフが提示されている。双方のグラフは、原子反応が、より弱いRFフィールドにおいて僅かにより急速であることを示す。RFフィールドがさらに減少する際、各エッジにおいてオーバシュートが展開し始める。ここで、Ω
p=2π×3.5MHzおよびΩ
c=2π×8.4MHzである。
図11Aおよび
図11Bのグラフは、全てのRFフィールド振幅においてパルス形状が同じままであるか否かの洞察を提供する。より大きな範囲のRFフィールドの場合、パルス形状は、大部分が同じままであり、初期過渡電流後に、より低速な時定数への僅かな変化のみを伴う。この挙動は、同じ整合フィルタテンプレートを、大きな範囲のRFフィールドについて用いることができることを示す。最も小さなRFフィールドにおいて、パルス形状がより実質的に異なり始め、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジの双方における急速なオーバシュートを伴う。約2.5μs~約10μsのパルスの不均一性に対する変化は、原子が(例えば、
図4Cの振幅領域における)弱いRFフィールドにおいてより感度が高い、用いられるRF生成器における振幅変動に起因する場合がある。
【0074】
ここで、
図12A-Fを参照すると、原子パルス形状に対する整合フィルタテンプレートの影響を比較するグラフが提示されている。これらのグラフは、整合フィルタテンプレートを用いる影響が、原子パルス形状に完全に整合しないことを示している。
図12D~
図12Fは、上のパネルに示すパルス(明るい実線)が理想的当てはめのために自身に対し整合している場合、整合フィルタ出力を実線として示す。上のパネルにおけるパルス(明るい実線)が上のパネルにおけるパルステンプレート(濃い実線)に整合しているシナリオの場合、整合フィルタ出力は、点線として示される。全体フィルタ出力は、大部分が同じままであるが、抽出されるパルスタイミングを僅かにシフトさせる可能性がある。
【0075】
一般的に、
図7A~
図11Bに関連して上記で論じたように、パルスの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジの厳密なタイムスケールは、蒸気セルセンサ自体に関係する多くの要因(例えば、電界、温度、蒸気圧)、レーザ(例えば、パワー、半径、周波数離調)、原子状態の選択、およびRFフィールド振幅に依拠することができる。
図12A-Fは、整合フィルタテンプレートが、検出されている基礎をなすパルス形状に完全には一致しない場合に起こり得ることを示す。パルス、またはエッジにおけるオーバシュートの存在を含むタイムスケールの差の結果として、一般的に0.5μs未満のフィルタ出力の最大値において抽出されるパルス時間に対する僅かなシフトがもたらされる。シフトの方向は、パルステンプレート不整合の性質に依拠して、より遅いかまたはより早い可能性がある。
【0076】
本明細書で説明した主題および動作の一部は、本明細書で開示した構造およびこれらの構成的同等物、またはこれらの1つもしくは複数の組み合わせを含め、デジタル電子回路で実施することも、またはコンピュータソフトウェア、ファームウェアもしくはハードウェアで実施することもできる。本明細書で説明した主題の一部は、1つまたは複数のコンピュータプログラムとして、すなわちデータ処理装置によって実行される、またはデータ処理装置の動作を制御する、コンピュータ記憶媒体上に符号化されたコンピュータプログラム命令の1つまたは複数のモジュールとして実施することができる。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読記憶装置、コンピュータ可読記憶基板、ランダムもしくはシリアルアクセスメモリアレイ又もしくはデバイス、またはこれらのうちの1つもしくは複数の組み合わせとすることも、もしくはこれらに含めることもできる。さらに、コンピュータ記憶媒体は伝搬信号ではなく、人工的に生成された伝搬信号の形で符号化されたコンピュータプログラム命令の発信元または宛先とすることができる。コンピュータ記憶媒体は、1つまたは複数の別個の物理的コンポーネントもしくは媒体(例えば、複数のCD、ディスクまたは他の記憶装置)とすることも、またはこれらに含めることもできる。
【0077】
本明細書に記載の動作のうちのいくつかは、1つまたは複数のコンピュータ可読記憶装置上に記憶されるかまたは他のソースから受信されるデータに対しデータ処理装置によって実行される動作として実施することができる。
【0078】
「データ処理装置」という用語は、例として、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、システムオンチップ、または複数のこれらのもの、またはこれらの組み合わせを含む、データ処理のための全ての種類の装置、デバイスおよび機械を包含する。装置は、例えば、専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)を含むことができる。装置は、ハードウェアに加えて、対象とするコンピュータプログラムの実行環境を形成するコード、例えばプロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、クロスプラットフォーム実行環境、仮想マシン、またはこれらのうちの1つもしくは複数の組み合わせを構成するコードを含むこともできる。
【0079】
(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプトまたはコードとしても知られている)コンピュータプログラムは、コンパイル型言語またはインタプリタ型言語、宣言型言語または手続き型言語を含むあらゆる形のプログラム言語で書くことができ、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、オブジェクト、もしくはコンピューティング環境で使用するのに適切な他のユニットとして含まれる任意の形式で配置することができる。コンピュータプログラムは、ファイルシステムの中のファイルに対応することができるが、これは必須ではない。プログラムは、他のプログラムもしくはデータを保持するファイルの一部(例えば、マークアップ言語のドキュメントに記憶された1つもしくは複数のスクリプト)、プログラムに専用の単一のファイル、または複数の組織されたファイル(例えば、1つもしくは複数のモジュール、サブプログラム、もしくはコードの一部)を記憶するファイルの部分に記憶することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、または1つの場所に置かれるか、もしくは複数の場所に分散され、通信ネットワークによって相互に接続される複数のコンピュータ上で実行されるように配置することができる。
【0080】
本明細書に記載されるプロセスおよび論理フローのうちのいくつかは、入力データに対して動作し、出力を生成することによって動作を実行するために、1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する1つまたは複数のプログラマブルプロセッサによって実行することができる。プロセスおよび論理フローは、専用論理回路、例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)によって実行することもでき、装置は、専用論理回路として実施することもできる。
【0081】
記載されているもののいくつかの態様において、システムは以下の例によって説明することができる。
(例1)
システムであって、
光プローブビームを含む光ビームを生成するように構成されたレーザシステムと、
内部に蒸気を有し、光ビームが蒸気を通り抜けることを可能にするように構成された、蒸気セルセンサと、
プローブビームが蒸気を通り抜けた後、光プローブビームに基づいて検出器信号を生成するように構成された光検出器と、
動作を実行するように構成された信号処理システムであって、動作は、
或る期間にわたって、光検出器から検出器信号を受信することと、
検出器信号に基づいてデジタル信号を生成することであって、デジタル信号は、期間にわたって蒸気が受けたRFフィールドに対する蒸気の測定された反応を表す、生成することと、
デジタル信号に整合フィルタを適用して、フィルタリングされた信号を生成することであって、フィルタリングされた信号は、デジタル信号と反応テンプレートとの比較に基づいて生成され、反応テンプレートは、ターゲットRFパルスに対する蒸気の既知の反応を表す、生成することと、
フィルタリングされた信号を処理して、期間にわたる、蒸気が受けたRFフィールドの特性を決定することと、
を含む、信号処理システムと、
を備える、システム。
(例2)
フィルタリングされた信号を処理することは、
期間において蒸気が受けるRFパルスの開始時間、持続時間、または振幅のうちの少なくとも1つを決定することを含む、例1のシステム。
(例3)
RFパルスを生成するように構成されたRFフィールドのソースを備え、
反応テンプレートは、基準期間にわたってソースによって生成される複数の基準RFパルスに基づき、複数の基準RFパルスは、RFフィールドを定義し、共通パルス形状を共有する、例1または2のシステム。
(例4)
反応テンプレートは、ターゲットRFパルスに対する蒸気の反応のコンピュータシミュレーションに基づく、例1または例2のシステム。
(例5)
信号処理システムは、閾値周波数未満の周波数を有する検出器信号の一部分をブロックするように構成されたハイパスフィルタを備える、例1、または例2~3のいずれか1つのシステム。
(例6)
閾値周波数は100Hz以下である、例5のシステム。
(例7)
反応テンプレートは、第1のタイプのターゲットRFパルスに対する蒸気の第1の既知の反応を表す第1の反応テンプレートであり、
フィルタリングされた信号は、デジタル信号と、
第1の反応テンプレート、および、
第2のタイプのターゲットRFパルスに対する蒸気の第2の既知の反応を表す第2の反応テンプレート、
との比較に基づいて生成される、例1、または例2~6のいずれか1つのシステム。
(例8)
第1および第2のタイプのターゲットRFパルスは、異なる重複しない範囲のフィールド強度を有する、例7のシステム。
(例9)
検出器信号は、光プローブビームの振幅、偏光、または位相のうちの少なくとも1つに基づく、例1、または例2~8のいずれか1つのシステム。
【0082】
記載されているもののいくつかの態様において、方法は以下の例によって説明することができる。
(例10)
方法であって、
光ビームに蒸気セルセンサ内の蒸気を通り抜けさせることであって、光ビームは光プローブビームを含む、通り抜けさせることと、
RFフィールドが蒸気と相互作用することを可能にすることと、
光検出器の動作によって、プローブビームが蒸気を通り抜けた後、この光プローブビームに基づく検出器信号を生成することと、
或る期間にわたって、信号処理システムにおいて検出器信号を受信することと、
信号処理システムの動作によって、
検出器信号に基づいてデジタル信号を生成することであって、デジタル信号は、期間にわたる、RFフィールドに対する蒸気の測定された反応を表す、生成することと、
デジタル信号に整合フィルタを適用して、フィルタリングされた信号を生成することであって、フィルタリングされた信号は、デジタル信号と反応テンプレートとの比較に基づいて生成され、反応テンプレートは、ターゲットRFパルスに対する蒸気の既知の反応を表す、生成することと、
フィルタリングされた信号を処理して、期間にわたる、蒸気が受けたRFフィールドの特性を決定することと、
を含む、方法。
(例11)
整合フィルタを適用することは、デジタル信号および反応テンプレートに畳み込み関数を適用して、フィルタリングされた信号を生成することを含む、例10の方法。
(例12)
畳み込み関数の反応テンプレートの期間は、RFフィールドのパルスの予測持続時間よりも大きい、例11の方法。
(例13)
フィルタリングされた信号を処理することは、
期間において蒸気が受けるRFパルスの開始時間、持続時間、または振幅のうちの少なくとも1つを決定することを含む、例10、または例11~12のいずれか1つの方法。
(例14)
基準RFパルスが蒸気と相互作用することを可能にすることであって、基準RFパルスは共通パルス形状を共有する、可能にすることと、
或る基準期間にわたって、信号処理システムにおいて基準検出器信号を受信することと、
信号処理システムの動作によって、
基準検出器信号に基づいて基準デジタル信号を生成することであって、基準デジタル信号は、基準期間にわたる、基準RFパルスに対する蒸気の測定された反応を表す、生成することと、
基準デジタル信号に基づいて反応テンプレートを生成することと、
を含む、例10、または例11~13のいずれか1つの方法。
(例15)
反応テンプレートを生成することは、
各基準パルスについて、基準パルスの持続時間に関連付けられたデジタル信号の一部分に基づいてパルス形状を決定することと、
パルス形状を平均化して反応テンプレートを生成することと、
を含む、例14の方法。
(例16)
ターゲットRFパルスに対する蒸気の反応のコンピュータシミュレーションに基づいて反応テンプレートを生成することを含む、例10、または例11~13のいずれか1つの方法。
(例17)
検出器信号は、光プローブビームの振幅、偏光、または位相のうちの少なくとも1つに基づく、例10、または例11~16のいずれか1つの方法。
(例18)
閾値周波数未満の周波数を有する部分を除去するように検出器信号をフィルタリングすることを含む、例10、または例11~17のいずれか1つの方法。
(例19)
閾値周波数は100Hz以下である、例18の方法。
(例20)
RFフィールドを相互作用させることは、期間の少なくとも一部の間、RFフィールドを蒸気と相互作用させることを含む、例10、または例11~19のいずれか1つの方法。
(例21)
ヘテロダインRFフィールドが蒸気と相互作用することを可能にすることを含み、ヘテロダインRFフィールドは、期間にわたる連続波(CW)RFフィールドを含み、
デジタル信号は、期間にわたる混合RFフィールドに対する蒸気の測定された反応を表し、混合RFフィールドは、ヘテロダインRFフィールドおよびRFフィールドを含み、
フィルタリングされた信号を処理することは、フィルタリングされた信号を処理して、期間にわたる、蒸気が受けた混合RFフィールドの特性を決定することを含む、例10、または例11~20のいずれか1つの方法。
(例22)
反応テンプレートは、第1のタイプのターゲットRFパルスに対する蒸気の第1の既知の反応を表す第1の反応テンプレートであり、
フィルタリングされた信号は、デジタル信号と、
第1の反応テンプレート、および、
第2のタイプのターゲットRFパルスに対する蒸気の第2の既知の反応を表す第2の反応テンプレート、
との比較に基づいて生成される、例10、または例11~21のいずれか1つの方法。
(例23)
第1および第2のタイプのターゲットRFパルスは、異なる重複しない範囲のフィールド強度を有する、例22の方法。
【0083】
記載されているもののいくつかの態様において、非一時的コンピュータ可読媒体は以下の例によって説明することができる。
(例24)
データ処理装置によって実行されると、動作を実行するように動作可能な命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、動作は、
或る期間にわたって蒸気が受けるRFフィールドに対する蒸気の測定された反応を表すデジタル信号を生成することであって、デジタル信号は、期間にわたる、光検出器からの検出器信号に基づき、
蒸気は、光ビームが蒸気を通り抜けることを可能にするように構成された蒸気セルセンサ内にあり、光ビームは光プローブビームを含み、
光検出器は、プローブビームが蒸気を通り抜けた後、光プローブビームを受け、これに応答して、検出器信号を生成するように構成される、
生成することと、
デジタル信号に整合フィルタを適用して、フィルタリングされた信号を生成することであって、フィルタリングされた信号は、デジタル信号と反応テンプレートとの比較に基づいて生成され、反応テンプレートは、ターゲットRFパルスに対する蒸気の既知の反応を表す、生成することと、
フィルタリングされた信号を処理して、期間にわたる、蒸気が受けたRFフィールドの特性を決定することと、
を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
(例25)
整合フィルタを適用することは、デジタル信号および反応テンプレートに畳み込み関数を適用して、フィルタリングされた信号を生成することを含む、例24の非一時的コンピュータ可読媒体。
(例26)
畳み込み関数の反応テンプレートの期間は、RFフィールドのパルスの予測持続時間よりも大きい、例25の非一時的コンピュータ可読媒体。
(例27)
フィルタリングされた信号を処理することは、
期間において蒸気が受けるRFパルスの開始時間、持続時間、または振幅のうちの少なくとも1つを決定することを含む、例24、または例25~26のいずれか1つの非一時的コンピュータ可読媒体。
(例28)
基準期間にわたる、基準RFパルスに対する蒸気の測定された反応を表す基準デジタル信号を生成することであって、基準RFパルスは共通パルス形状を共有する、生成することと、
基準デジタル信号に基づいて反応テンプレートを生成することと、
を含む、例24、または例25~27のいずれか1つの非一時的コンピュータ可読媒体。
(例29)
反応テンプレートは、ターゲットRFパルスに対する蒸気の反応のコンピュータシミュレーションに基づく、例24、または例25~27のいずれか1つの非一時的コンピュータ可読媒体。
(例30)
検出器信号は、光プローブビームの振幅、偏光、または位相のうちの少なくとも1つに基づく、例24、または例25~29のいずれか1つの非一時的コンピュータ可読媒体。
(例31)
反応テンプレートは、第1のタイプのターゲットRFパルスに対する蒸気の第1の既知の反応を表す第1の反応テンプレートであり、
フィルタリングされた信号は、デジタル信号と、
第1の反応テンプレート、および、
第2のタイプのターゲットRFパルスに対する蒸気の第2の既知の反応を表す第2の反応テンプレート、
との比較に基づいて生成される、例24、または例25~30のいずれか1つの非一時的コンピュータ可読媒体。
(例32)
第1および第2のタイプのターゲットRFパルスは、異なる重複しない範囲のフィールド強度を有する、例31の非一時的コンピュータ可読媒体。
【0084】
記載されているもののいくつかの態様において、システムは以下の例によって説明することができる。
(例33)
システムであって、
蒸気セルセンサを備える蒸気セルセンサシステムと、
蒸気セルセンサ上に無線周波数(RF)フィールドを方向付けるように構成されたRF光学素子であって、RFフィールドは、レーダ信号、通信信号、または他のタイプの信号を定義する1つまたは複数のRFパルスを含む、RF光学素子と、
動作を実行するように構成された信号処理システムであって、動作は、
蒸気セルセンサシステムからの信号に基づいてデジタル信号を生成することであって、デジタル信号は、或る期間にわたる、RFフィールドに対する蒸気セルセンサの蒸気の測定された反応を表す、生成することと、
デジタル信号に整合フィルタを適用して、フィルタリングされた信号を生成することであって、フィルタリングされた信号は、デジタル信号と反応テンプレートとの比較に基づいて生成され、反応テンプレートは、ターゲットRFパルスに対する蒸気の既知の反応を表す、生成することと、
フィルタリングされた信号を処理して、期間にわたる、蒸気セルセンサによって検知されたRFフィールドの特性を決定することと、
を含む、信号処理システムと、
を備える、システム。
(例34)
RF光学素子はディッシュを含む、例33のシステム。
(例35)
RF光学素子はRFレンズを含む、例33または例34のシステム。
(例36)
フィルタリングされた信号を処理することは、RFパルスのシーケンスを検出することを含む、例33、または例34~35のいずれか1つのシステム。
(例37)
システムはレーダシステムであり、もう1つのRFパルスはレーダ信号を定義する、例33、または例34~36のいずれか1つのシステム。
(例38)
フィルタリングされた信号を処理することは、RFパルスのシーケンスを検出することを含み、
信号処理システムは、RFパルスのシーケンスのソースとして航空機を特定するように構成される、例37のシステム。
(例39)
システムは通信システムであり、1つまたは複数のRFパルスは通信信号を定義する、例33、または例34~36のいずれか1つのシステム。
(例40)
信号処理システムは、通信信号によって表されたデータを特定するように構成される、例39のシステム。
(例41)
動作は、
期間において蒸気セルセンサによって検知されたRFパルスの開始時間、持続時間、または振幅のうちの少なくとも1つを決定することを含む、例33、または例34~40のいずれか1つのシステム。
(例42)
反応テンプレートは、基準期間にわたってRFソースによって生成される複数の基準RFパルスに基づき、複数の基準RFパルスは、共通パルス形状を共有する、例33、または例34~41のいずれか1つのシステム。
(例43)
反応テンプレートは、ターゲットRFパルスに対する蒸気の反応のコンピュータシミュレーションに基づく、例33、または例34~41のいずれか1つのシステム。
(例44)
反応テンプレートは、第1のタイプのターゲットRFパルスに対する蒸気の第1の既知の反応を表す第1の反応テンプレートであり、
フィルタリングされた信号は、デジタル信号と、
第1の反応テンプレート、および、
第2のタイプのターゲットRFパルスに対する蒸気の第2の既知の反応を表す第2の反応テンプレート、
との比較に基づいて生成される、例33、または例34~43のいずれか1つのシステム。
(例45)
第1および第2のタイプのターゲットRFパルスは、異なる重複しない範囲のフィールド強度を有する、例44のシステム。
(例46)
蒸気はIA族原子の蒸気を含む、例33、または例34~45のいずれか1つのシステム。
(例47)
蒸気セルセンサシステムは、蒸気セルセンサの蒸気を通り抜ける光ビームを生成するように構成されたレーザシステムを備え、光ビームは、光プローブビームを含む、例33、または例34~46のいずれか1つのシステム。
(例48)
蒸気セルセンサシステムからの信号は、光プローブビームの振幅、偏向、または位相のうちの少なくとも1つに基づく、例47のシステム。
(例49)
蒸気セルセンサシステムは光検出器を含み、蒸気セルセンサシステムからの信号は、光検出器によって生成される検出器信号であり、
動作は、期間にわたって信号処理システムにおいて検出器信号を受信することを含み、検出器信号は、蒸気セルセンサの蒸気を通り抜ける光プローブビームに基づく、例33、または例34~48のいずれか1つのシステム。
【0085】
記載されているもののいくつかの態様において、システムを動作させる方法は以下の例によって説明することができる。
(例50)
システムを動作させる方法であって、
蒸気セルセンサシステムの蒸気セルセンサ上に無線周波数(RF)フィールドを方向付けることであって、蒸気セルセンサは蒸気を含み、RFフィールドは、レーダ信号、通信信号または他のタイプの信号を定義する1つまたは複数のRFパルスを含む、方向付けることと、
信号処理システムの動作によって、
蒸気セルセンサシステムからの信号に基づいてデジタル信号を生成することであって、デジタル信号は、或る期間にわたる、RFフィールドに対する蒸気の測定された反応を表す、生成することと、
デジタル信号に整合フィルタを適用して、フィルタリングされた信号を生成することであって、フィルタリングされた信号は、デジタル信号と反応テンプレートとの比較に基づいて生成され、反応テンプレートは、ターゲットRFパルスに対する蒸気の既知の反応を表す、生成することと、
フィルタリングされた信号を処理して、期間にわたる、蒸気が受けたRFフィールドの特性を決定することと、
を含む、方法。
(例51)
RFフィールドを方向付けることは、
ディッシュの動作によって、ディッシュの焦点上にRFフィールドを方向付けることであって、蒸気セルセンサはディッシュの焦点に配設される、方向付けることを含む、例50の方法。
(例52)
RFフィールドを方向付けることは、
RFレンズの動作によって蒸気セルセンサ上にRFフィールドを方向付けることを含む、例50または例51の方法。
(例53)
フィルタリングされた信号を処理することは、RFパルスのシーケンスを検出することを含む、例50、または例51~52のいずれか1つの方法。
(例54)
システムはレーダシステムであり、もう1つのRFパルスはレーダ信号を定義する、例50、または例51~53のいずれか1つの方法。
(例55)
フィルタリングされた信号を処理することは、RFパルスのシーケンスを検出することを含み、
方法は、信号処理システムの動作によって、RFパルスのシーケンスのソースとして航空機を特定することを含む、例54の方法。
(例56)
システムは通信システムであり、1つまたは複数のRFパルスは通信信号を定義する、例50、または例51~53のいずれか1つの方法。
(例57)
信号処理システムは、通信信号によって表されたデータを特定するように構成される、例56の方法。
(例58)
整合フィルタを適用することは、デジタル信号および反応テンプレートに畳み込み関数を適用して、フィルタリングされた信号を生成することを含む、例50、または例51~57のいずれか1つの方法。
(例59)
畳み込み関数の反応テンプレートの期間は、RFフィールドのRFパルスの予測持続時間よりも大きい、例58の方法。
(例60)
期間において蒸気セルセンサによって検知されたRFパルスの開始時間、持続時間、または振幅のうちの少なくとも1つを決定することを含む、例50、または例51~59のいずれか1つの方法。
(例61)
基準期間にわたって蒸気セルセンサにおいてRFフィールドの基準パルスを受けることであって、基準パルスは共通パルス形状を共有する、受けることと、
信号処理システムの動作によって、基準期間にわたる、基準パルスに関連付けられたデジタル信号に基づいて反応テンプレートを生成することと、
を含む、例50、または例51~60のいずれか1つの方法。
(例62)
パルステンプレートを生成することは、
各基準パルスについて、基準パルスの持続時間に関連付けられたデジタル信号の一部分に基づいてパルス形状を決定することと、
パルス形状を平均化して反応テンプレートを生成することと、
を含む、例61の方法。
(例63)
ターゲットRFパルスに対する蒸気の反応のコンピュータシミュレーションに基づいて反応テンプレートを生成することを含む、例50、または例51~60のいずれか1つの方法。
(例64)
蒸気セルセンサシステムはレーザシステムを含み、
方法は、
レーザシステムの動作によって光ビームを生成することと、
光ビームに蒸気セルセンサ内の蒸気を通り抜けさせることであって、光ビームは光プローブビームを含む、通り抜けさせることと、
を含み、
蒸気セルセンサシステムからの信号は、プローブビームが蒸気を通り抜けた後の光プローブビームに基づく、例50、または例51~63のいずれか1つの方法。
(例65)
RFフィールドを方向付けることは、
蒸気に対するRFフィールドの動作によって、光ビームが蒸気を通り抜ける際の、蒸気を通した光プローブビームの光透過を変更することを含む、例64の方法。
(例66)
蒸気セルセンサシステムからの信号は、光プローブビームの振幅、偏向、または位相のうちの少なくとも1つに基づく、例64または例65の方法。
(例67)
蒸気セルセンサシステムは光検出器を含み、
蒸気セルセンサシステムからの信号は、光検出器からの検出器信号であり、検出器信号は、プローブビームが蒸気を通り抜けた後のこの光プローブビームに基づき、
方法は、期間にわたって信号処理システムにおいて検出器信号を受信することを含む、例64、または例65~66のいずれか1つの方法。
(例68)
蒸気はIA族原子の蒸気を含む、例50、または例51~67のいずれか1つの方法。
(例69)
反応テンプレートは、第1のタイプのターゲットRFパルスに対する蒸気の第1の既知の反応を表す第1の反応テンプレートであり、
フィルタリングされた信号は、デジタル信号と、
第1の反応テンプレート、および、
第2のタイプのターゲットRFパルスに対する蒸気の第2の既知の反応を表す第2の反応テンプレート、
との比較に基づいて生成される、例50、または例51~68のいずれか1つの方法。
(例70)
第1および第2のタイプのターゲットRFパルスは、異なる重複しない範囲のフィールド強度を有する、例69の方法。
【0086】
本明細書は、多くの詳細を含むが、これらは特許請求することができるものの範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、むしろ、特定の例に固有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施の文脈で本明細書において説明されるかまたは図面に示される或る特定の特徴も組み合わせることができる。逆に、単一の実施の文脈で説明されるかまたは図面に示される様々な構成は、複数の実施形態で別個に、または任意の適切なサブコンビネーションで実施することもできる。
【0087】
同様に、動作が特定の順序で示されているが、これは望ましい結果を達成するために、そのような動作が、示された特定の順序で実行されること、もしくは順次に実行されること、または図示された全ての動作が実行されることを要求するものと解されるべきではない。或る特定の状況では、マルチタスク処理および並列処理が有利な場合もある。さらに、上記で説明した実施態様における様々なシステムコンポーネントの分離は、全ての実施形態においてそのような分離を必要とするものとして理解されるべきではなく、記載されたプログラムコンポーネントおよびシステムは、一般的には、単一の製品に統合することができるか、または複数の製品にパッケージ化することができることが理解されるべきである。
【0088】
複数の実施形態が説明された。それにもかかわらず、様々な変更を行うことができることが理解されよう。したがって、他の実施形態が以下の特許請求の範囲の適用範囲内にある。
【要約】
一般的な態様において、無線周波数(RF)フィールドのパルスを検知するためのシステムは、レーザシステムと、蒸気セルセンサとを備える。レーザシステムは、光プローブビームを含む光ビームを生成するように構成される。蒸気セルセンサは、内部に蒸気を有し、光ビームが蒸気を通り抜けることを可能にするように構成される。システムは、光プローブビームに基づいて検出器信号を生成するように構成された光検出器も含む。システムは、或る期間にわたって、光検出器から検出器信号を受信することを含む動作を実行するように構成された信号処理システムを含む。動作は、検出器信号に基づいてデジタル信号を生成することと、デジタル信号に整合フィルタを適用して、フィルタリングされた信号を生成することとも含む。フィルタリングされた信号は、蒸気が受けるRFフィールドの特性を決定するように処理される。
【選択図】
図1