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特許7625771低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法、および、液化ガス供給器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法、および、液化ガス供給器具
(51)【国際特許分類】
   F17C 6/00 20060101AFI20250128BHJP
   F17C 11/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
F17C6/00
F17C11/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020132866
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2021042854
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2019160196
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】和田 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】和田 好史
(72)【発明者】
【氏名】米田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】浅田 昌樹
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-218375(JP,A)
【文献】特開平10-281609(JP,A)
【文献】特開平09-308659(JP,A)
【文献】特表2014-503769(JP,A)
【文献】実開昭63-106997(JP,U)
【文献】実公昭50-003505(JP,Y1)
【文献】実開昭57-035299(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 6/00
F17C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス吸収材を有する低温試料運搬用容器の前記液化ガス吸収材に、液化ガス供給器具を用いて、液化ガスを吸収させる方法であって、
前記低温試料運搬用容器は、
外殻ケースと、
前記外殻ケースの内側に設置されたパイプと、
前記外殻ケースと前記パイプとの間に形成された吸収材収容部と、
前記吸収材収容部に収容された前記液化ガス吸収材とを備え、
前記外殻ケースは、上部に他の部分よりも内径が小さい首部を有し、
前記吸収材収容部は、前記外殻ケースの前記首部より低い位置にある部分と前記パイプとの間に形成されており、
前記パイプの上端部と前記首部との間に、前記吸収材収容部内のガスを排気するための隙間が形成されており、
前記液化ガス供給器具は、
液化ガス収容容器と、
前記液化ガス収容容器に収容された前記液化ガスを流出させるための液化ガス流出ノズルとを備え、
前記液化ガス流出ノズルから流出する液化ガスが前記隙間に流入するように前記液化ガス流出ノズルを前記低温試料運搬用容器内に配置する工程と、
前記液化ガス収容容器に液化ガスを収容する工程と、
を含むことを特徴とする、低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法。
【請求項2】
請求項1に記載の低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、
前記液化ガス供給器具は、前記液化ガス流出ノズルを複数有する、ことを特徴とする低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、
前記液化ガス供給器具は、前記液化ガス吸収材が液化ガスを吸収する液化ガス吸収速度に合わせて液化ガスを流出するように、
前記液化ガス流出ノズルのノズル長、ノズル内径、および、ノズル本数が設定されている、ことを特徴とする低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、
前記液化ガス流出ノズルはその先端の方向を変えることが可能な可撓性の管材を用いて構成されている、ことを特徴とする低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法。
【請求項5】
液化ガス吸収材を有する低温試料運搬用容器の前記液化ガス吸収材に、液化ガス供給器具を用いて、液化ガスを吸収させる方法であって、
前記低温試料運搬用容器は、
外殻ケースと、
前記外殻ケースの内側に設置されたパイプと、
前記外殻ケースと前記パイプとの間に形成された吸収材収容部と、
前記吸収材収容部に収容された前記液化ガス吸収材とを備え、
前記外殻ケースは、上部に他の部分よりも内径が小さい首部を有し、
前記吸収材収容部は、前記外殻ケースの前記首部より低い位置にある部分と前記パイプとの間に形成されており、
前記パイプの上端部と前記首部との間に、前記吸収材収容部内のガスを排気するための隙間が形成されており、
前記液化ガス供給器具は、前記液化ガスを流出させるための液化ガス流出ノズルを備えており、
前記液化ガス流出ノズルから流出する液化ガスが前記隙間に流入するように前記液化ガス流出ノズルを前記低温試料運搬用容器内に配置する工程と、
前記液化ガス流出ノズルに液化ガスを流入させる工程と、
を含むことを特徴とする、低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法。
【請求項6】
請求項記載の低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、
前記液化ガス供給器具は、前記液化ガス流出ノズルを複数備えるとともに、前記複数の液化ガス流出ノズルの先端部同士の相対位置を固定する先端固定部材を更に備えることを特徴とする、低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法。
【請求項7】
請求項又はに記載の低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、
前記液化ガス供給器具は、前記液化ガス流出ノズルに流入させる液化ガスの圧力を低減するとともに、当該液化ガスに混在する気体を分離する気液分離器をさらに備え、
前記気液分離器は、収納体と、前記収納体内に設けられた筒状のホーンと、前記ホーン内に設けられた軸状の本体と、排気弁とを有し、
前記収納体は、一端に前記本体が貫通して固定され、他端に前記ホーンから流出する液化ガスを前記液化ガス流出ノズルに供給するための供給口が設けられ、液化ガスから分離した気体を排出する排気路を有し、
前記ホーンは、一端が前記本体に固定され、他端が開放されており、
前記本体は、
内部に形成された液化ガス供給路と、
軸方向に対して鋭角を成す方向へ放射状に液化ガスを噴出するように、前記液化ガス供給路から前記本体の外部に亘って形成された複数の噴出孔(以下「上流側噴出孔」という。)と、
前記本体の軸方向に対して鈍角を成す方向へ放射状に液化ガスを噴出するように、前記液化ガス供給路から前記本体の外部に亘って形成された複数の噴出孔(以下「下流側噴出孔」という。)と、を有し、
前記上流側噴出孔から噴出される液化ガスと前記下流側噴出孔から噴出される液化ガスとが前記ホーン内で衝突して膜状に拡散するように前記上流側噴出孔および前記下流側噴出孔の噴出方向および噴出位置が設定され、
前記排気弁は、前記排気路を通じて大気に解放される気体の排気流量を調整可能に設けられている
ことを特徴とする、低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法。
【請求項8】
請求項1~4、5、6およびの何れか1項に記載の低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、
前記液化ガス流出ノズルを前記低温試料運搬用容器内に配置する工程の前に、前記パイプ内に空間充填部材を充填する工程を更に含むことを特徴とする、低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法。
【請求項9】
液化ガスを流出させるための複数の液化ガス流出ノズルと、
前記複数の液化ガス流出ノズルの先端部同士の相対位置を固定する1つの先端固定部材と、
を備え、
前記複数の液化ガス流出ノズルは周状に配列され、前記先端部は折れ曲がった形状を有し、
前記先端固定部材の一端部に全周にわたって外側に延びたかえし部が形成され、
前記複数の液化ガス流出ノズルの前記先端部は前記先端固定部材によって配列の内側から支持され、前記先端部の折れ曲がった先は前記かえし部によって支持されている、
ことを特徴とする液化ガス供給器具。
【請求項10】
液化ガスを流出させるための液化ガス流出ノズルと、前記液化ガス流出ノズルに流入させる液化ガスの圧力を低減するとともに、当該液化ガスに混在する気体を分離する気液分離器と、を備え、
前記気液分離器は、収納体と、前記収納体内に設けられた筒状のホーンと、前記ホーン内に設けられた軸状の本体と、排気弁とを有し、
前記収納体は、一端に前記本体が貫通して固定され、他端に前記ホーンから流出する液化ガスを前記液化ガス流出ノズルに供給するための供給口が設けられ、液化ガスから分離した気体を排出する排気路を有し、
前記ホーンは、一端に前記本体に固定され、他端が開放されており、
前記本体は、
内部に形成された液化ガス供給路と、
軸方向に対して鋭角を成す方向へ放射状に液化ガスを噴出するように、前記液化ガス供給路から前記本体の外部に亘って形成された複数の噴出孔(以下「上流側噴出孔」という。)と、
前記本体の軸方向に対して鈍角を成す方向へ放射状に液化ガスを噴出するように、前記液化ガス供給路から前記本体の外部に亘って形成された複数の噴出孔(以下「下流側噴出孔」という。)と、を有し、
前記上流側噴出孔から噴出される液化ガスと前記下流側噴出孔から噴出される液化ガスとが前記ホーン内で衝突して膜状に拡散するように前記上流側噴出孔および前記下流側噴出孔の噴出方向および噴出位置が設定され、
前記排気弁は、前記排気路を通じて大気に解放される気体の排気流量を調整可能に設けられている
ことを特徴とする液化ガス供給器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温試料運搬用容器内の液化ガス吸収材に液化ガスを吸収させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に配置された液化窒素吸収材に液化窒素を吸収させて使用する低温試料運搬用容器が知られている(例えば非特許文献1を参照)。
【0003】
非特許文献1に開示されている低温試料運搬用容器では、液化窒素吸収材は、低温試料運搬用容器内に設置された樹脂パイプと、低温試料運搬用容器の内壁との間に形成された収容部に収容される。液化窒素吸収材に液化窒素を吸収させる場合、低温試料運搬用容器の上部開口から樹脂パイプ内に液化窒素を注ぎ入れる。注ぎ入れた液化窒素は、樹脂パイプ下端と内壁の底部との隙間から収容部に流入し、液化窒素吸収材に吸収される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】株式会社アステック、液体窒素保存容器CXシリーズ、[令和1年8月5日検索]、インターネット<URL:http://astec-bio.com/pdf/d6.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の方法は、液化窒素を、液化窒素吸収材の下部から上部に向かって吸収させるため、十分な量の液化窒素を液化窒素吸収材に吸収させるために長時間を要する。また、液化窒素吸収材の上部まで液化窒素を吸収させるためには、ある程度液面が高くなるまで、液化窒素を樹脂パイプ内に溜めて、それを維持するために何度か注ぎ足す必要がある。また、液化窒素吸収材に規定量の液化窒素を吸収させた後、液化窒素吸収材に吸収されずに残った液化窒素を排出する作業も必要となり、当該排出作業に手間がかかる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みて創案されたものであり、低温試料運搬用容器内の液化ガス吸収材に、短時間で、液化ガスを吸収させることのできる方法および器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法は、液化ガス吸収材を有する低温試料運搬用容器の前記液化ガス吸収材に、液化ガス供給器具を用いて、液化ガスを吸収させる方法である。前記低温試料運搬用容器は、外殻ケースと、前記外殻ケースの内側に設置されたパイプと、前記外殻ケースと前記パイプとの間に形成された吸収材収容部と、前記吸収材収容部に収容された前記液化ガス吸収材とを備える。前記外殻ケースは、上部に他の部分よりも内径が小さい首部を有する。前記吸収材収容部は、前記外殻ケースの前記首部より低い位置にある部分と前記パイプとの間に形成されている。前記パイプの上端部と前記首部との間に、前記吸収材収容部内のガスを排気するための隙間が形成されている。前記液化ガス供給器具は、液化ガス収容容器と、前記液化ガス収容容器に収容された前記液化ガスを流出させるための液化ガス流出ノズルとを備える。そして、前記低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法は、前記液化ガス流出ノズルから流出する液化ガスが前記隙間に流入するように前記液化ガス流出ノズルを前記低温試料運搬用容器内に配置する工程と、前記液化ガス収容容器に液化ガスを収容する工程と、を含む。
【0008】
かかる構成を備える低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法によれば、短時間で、かつ、簡単に、液化ガスを液化ガス吸収材に吸収させることが可能である。
【0009】
本発明の第2態様に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法は、第1態様に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、前記液化ガス供給器具は、前記液化ガス流出ノズルを複数有する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第3態様に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法は、第1又は第2態様に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、前記液化ガス供給器具は、前記液化ガス吸収材が前記液化ガスを吸収する液化ガス吸収速度に合わせて液化ガスを流出するように、前記液化ガス流出ノズルのノズル長、ノズル内径、および、ノズル本数が設定されている、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第4態様に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法は、第1~3の何れか1つの態様に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、前記液化ガス流出ノズルはその先端の方向を変えることが可能な可撓性の管材を用いて構成されている、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第5態様に係る液化ガス供給器具は、液化ガスを収容する液化ガス収容容器と、液化ガス収容容器に収容された液化ガスを流出させるための複数の液化ガス流出ノズルとを備える。前記液化ガス収容容器は、外部から液化ガスを注入するための注入用開口を有し、前記複数の液化ガス流出ノズルは、その先端の方向を変えることが可能な可撓性の管材を用いて構成されている、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第6態様に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法は、液化ガス吸収材を有する低温試料運搬用容器の前記液化ガス吸収材に、液化ガス供給器具を用いて、液化ガスを吸収させる方法であって、前記低温試料運搬用容器は、外殻ケースと、前記外殻ケースの内側に設置されたパイプと、前記外殻ケースと前記パイプとの間に形成された吸収材収容部と、前記吸収材収容部に収容された前記液化ガス吸収材とを備える。前記外殻ケースは、上部に他の部分よりも内径が小さい首部を有する。前記吸収材収容部は、前記外殻ケースの前記首部より低い位置にある部分と前記パイプとの間に形成されている。前記パイプの上端部と前記首部との間に、前記吸収材収容部内のガスを排気するための隙間が形成されている。前記液化ガス供給器具は、前記液化ガスを流出させるための液化ガス流出ノズルを備えている。そして、前記低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法は、前記液化ガス流出ノズルから流出する液化ガスが前記隙間に流入するように前記液化ガス流出ノズルを前記低温試料運搬用容器内に配置する工程と、前記液化ガス流出ノズルに液化ガスを流入させる工程と、を含む。
【0014】
本発明の第7態様に係る液化ガス供給器具は、第6態様に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、前記液化ガス供給器具は、前記液化ガス流出ノズルを複数備えるとともに、前記複数の液化ガス流出ノズルの先端部同士の相対位置を固定する先端固定部材を更に備える。
【0015】
本発明の第8態様に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法は、第6又は第7態様に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、前記液化ガス供給器具は、前記液化ガス流出ノズルに流入させる液化ガスの圧力を低減するとともに、当該液化ガスに混在する気体を分離する気液分離器をさらに備える。前記気液分離器は、収納体と、前記収納体内に設けられた筒状のホーンと、前記ホーン内に設けられた軸状の本体と、排気弁とを有する。前記収納体は、一端に前記本体が貫通して固定され、他端に前記ホーンから流出する液化ガスを前記液化ガス流出ノズルに供給するための供給口が設けられ、液化ガスから分離した気体を排出する排気路を有する。前記ホーンは、一端が前記本体に固定され、他端が開放されている。前記本体は、内部に形成された液化ガス供給路と、軸方向に対して鋭角を成す方向へ放射状に液化ガスを噴出するように、前記液化ガス供給路から前記本体の外部に亘って形成された複数の噴出孔(以下「上流側噴出孔」という。)と、前記本体の軸方向に対して鈍角を成す方向へ放射状に液化ガスを噴出するように、前記液化ガス供給路から前記本体の外部に亘って形成された複数の噴出孔(以下「下流側噴出孔」という。)と、を有する。前記上流側噴出孔から噴出される液化ガスと前記下流側噴出孔から噴出される液化ガスとが前記ホーン内で衝突して膜状に拡散するように前記上流側噴出孔および前記下流側噴出孔の噴出方向および噴出位置が設定されている。前記排気弁は、前記排気路を通じて大気に解放される気体の排気流量を調整可能に設けられている。
【0016】
本発明の第9態様に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法は、第1~第4、第6、第7および第8態様の何れか1態様に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、前記液化ガス流出ノズルを前記低温試料運搬用容器内に配置する工程の前に、前記パイプ内に空間充填部材を充填する工程を更に含む。
【0017】
本発明の第10態様に係る液化ガス供給器具は、液化ガスを流出させるための複数の液化ガス流出ノズルと、前記複数の液化ガス流出ノズルの先端部同士の相対位置を固定する先端固定部材とを備える。
【0018】
本発明の第11態様に係る液化ガス供給器具は、液化ガスを流出させるための液化ガス流出ノズルと、前記液化ガス流出ノズルに流入させる液化ガスの圧力を低減するとともに、当該液化ガスに混在する気体を分離する気液分離器と、を備える。前記気液分離器は、収納体と、前記収納体内に設けられた筒状のホーンと、前記ホーン内に設けられた軸状の本体と、排気弁とを有する。前記収納体は、一端に前記本体が貫通して固定され、他端に前記ホーンから流出する液化ガスを前記液化ガス流出ノズルに供給するための供給口が設けられ、液化ガスから分離した気体を排出する排気路を有する。前記ホーンは、一端に前記本体に固定され、他端が開放されている。前記本体は、内部に形成された液化ガス供給路と、軸方向に対して鋭角を成す方向へ放射状に液化ガスを噴出するように、前記液化ガス供給路から前記本体の外部に亘って形成された複数の噴出孔(以下「上流側噴出孔」という。)と、前記本体の軸方向に対して鈍角を成す方向へ放射状に液化ガスを噴出するように、前記液化ガス供給路から前記本体の外部に亘って形成された複数の噴出孔(以下「下流側噴出孔」という。)と、を有する。前記上流側噴出孔から噴出される液化ガスと前記下流側噴出孔から噴出される液化ガスとが前記ホーン内で衝突して膜状に拡散するように前記上流側噴出孔および前記下流側噴出孔の噴出方向および噴出位置が設定されている。前記排気弁は、前記排気路を通じて大気に解放される気体の排気流量を調整可能に設けられている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低温試料運搬用容器内の液化ガス吸収材に、短時間で、液化ガスを吸
収させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】低温試料運搬用容器の断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る液化ガス供給器具の側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る液化ガス供給器具の底面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る液化ガス注入装置である。
図5】本発明の第1実施形態に係る液化ガス供給器具に液化ガスを注入する様子を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る液化ガス供給器具の実施の態様を示す図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る液化ガス供給器具の別の実施の態様を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る液化ガス流出ノズルおよび先端固定部材を示す側面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る液化ガス流出ノズルおよび先端固定部材を示す平面図である。
図10】低温試料運搬用容器に、空間充填部材を充填した状態を示す断面図である。
図11】本発明の第3実施形態に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法の1つの工程を示す図である。
図12】気液分離器の断面図である。
図13図12におけるA部拡大図であって、本体の噴出孔から液化ガスを噴出する様子を示す図である。
図14】本発明の第4実施形態に係る液化ガス供給器具を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法、および、液化ガス供給器具について、図面を参照しつつ説明する。本明細書で説明する実施形態においては、液化ガスとして液化窒素を例に挙げて説明する。
【0022】
低温試料運搬用容器1は、図1に示すように、外殻ケース11、パイプ12、吸収材収容部13、液化ガス吸収材14等を備える。
【0023】
外殻ケース11は、外壁111、内壁112および上部開口113を有する。外壁111は、低温試料運搬用容器1の外形をなし、有底の円筒型の形状である。内壁112は、有底の円筒型であって、その径方向の直径が外壁111のそれよりも小さい。外壁111と内壁112とは、それぞれの上端で結合されていて、内壁112が外壁111内に位置することで、外壁111が内壁112を包み込む構造となっている。上部開口113は、内壁112と外壁111との上端に設けられた開口部であって、低温試料運搬用容器1へ液化ガス2を供給、又は、これからの排出に用いられる。また、上部開口113の内径は、パイプ12および液化ガス吸収材14を出し入れするために十分な大きさとされる。
【0024】
内壁112は、上部の内径が他の部分の内径よりも小さく、上部と他の部分との境界に首部16を有する形状とされている。
【0025】
外壁111と内壁112との間には密閉空間17が形成されている。密閉空間17が真空にされることによって、内壁112内は、外壁111外から断熱されている。パイプ12の下端と内壁112の底部との間には隙間があり、液化ガス2がパイプ12の下端から吸収材収容部13に流入し、液化ガス吸収材14に吸収される。
【0026】
パイプ12は、樹脂等をその材質とし、円筒型の形状で、外殻ケース11の上部開口113から外殻ケース11内に入れられ、内壁112内の径方向中央部にその長軸を上下方向に向けて立設される。パイプ12は、内部に低温保存の対象となる試料を収容するための空間を有する。
【0027】
吸収材収容部13は、液化ガス吸収材14が収容される空間である。吸収材収容部13は、パイプ12と内壁112との間に形成された空間である。内壁112は、上部の内径が他の部分の内径よりも小さい形状とされている。そのため、内壁112の下部は、パイプ12との間に空間を形成し、これが吸収材収容部13となる。
【0028】
液化ガス吸収材14は、例えばシリコーン多孔体等であって、小袋などに入れられている。液化ガス吸収材14が入れられた小袋は、例えば、上下に長い形状であって、吸収材収容部13内に円周方向に複数の小袋を並べる状態で配置される。
【0029】
パイプ12の上端部と内壁112の首部16との間には、吸収材収容部13内で発生するガスを排気するために隙間18が形成されている。液化ガス2が気化することによって体積膨張して外殻ケース11内のガス圧が上昇することを防止するためである。ただし、隙間18は、結露により生じた水滴が吸収材収容部13に入り込んで液化ガス吸収材14に吸収されてしまうことを防止するため、所定の大きさより小さいものとされている。
【0030】
次に、液化ガス供給器具3について説明する。液化ガス供給器具3は、図2に示すように、液化ガス収容容器31および液化ガス流出ノズル32を備える。
【0031】
液化ガス収容容器31は、本実施形態では、釣り鐘型の容器であるが、その形状は特に限定されない。液化ガス収容容器31は、下端部に他の部分よりも小径に形成された小径部310を有し、上端部に注入用開口311を有する。また、液化ガス収容容器31は、小径部310の内周部に形成された雌ネジに螺着されたノズル固定部材321を有する。なお、小径部310の外形は外殻ケース11の上部開口113の内径より小さい。
【0032】
注入用開口311は、液化ガス2を液化ガス収容容器31に注入するために用いられる。
【0033】
液化ガス流出ノズル32は、管材を用いて構成され、上端が液化ガス収容容器31内にあり、下端が液化ガス収容容器31外にある。液化ガス流出ノズル32は、液化ガス2を、液化ガス収容容器31内にある上端から取入れて、液化ガス収容容器31外にある下端から流出させる。液化ガス供給器具3は、液化ガス流出ノズル32を一本だけ有するものであってもよいが、複数本有するものであることが望ましい。
【0034】
ノズル固定部材321は、液化ガス流出ノズル32を液化ガス収容容器31に固定する部材である。ノズル固定部材321は、外部に雄ネジが形成されており、液化ガス収容容器31の下端部に形成された小径部310の内周に形成された雌ネジに螺着される。ノズル固定部材321には、液化ガス流出ノズル32を貫通させて結合させるための孔が形成されている。
【0035】
なお、ノズル固定部材321は、液化ガス流出ノズル32を液化ガス収容容器31に固定することができれば、その構造は限定されない。さらに、液化ガス収容容器31自体に液化ガス流出ノズル32を貫通させて結合させるための孔が形成された構造や、液化ガス流出ノズル32と液化ガス収容容器31とが一体的に形成された構造などによって、液化ガス流出ノズル32が液化ガス収容容器31に固定されている場合は、ノズル固定部材321がなくてもよい。
【0036】
また、ノズル固定部材321は、液化ガス流出ノズル32を低温に保持するため、所定の長さまで液化ガス流出ノズル32が液化ガス収容容器31内に収まるように、液化ガス流出ノズル32を固定する。
【0037】
この液化ガス流出ノズル32は、液化ガス吸収材14が液化ガス2を吸収する速度に合わせて液化ガス2を流出する。具体的には、液化ガス流出ノズル32が流出する液化ガス2の最大流量が、液化ガス吸収材14(液化ガスを全く吸収していない状態の液化ガス吸収材)が吸収することができる時間当たりの液化ガス2の量と同じか、又はそれを超えない程度に設定される。すなわち、そのような流量で液化ガス2が流出するように、液化ガス流出ノズル32のノズル長、ノズルの内径、および、ノズル本数が、それぞれ所定値に設定されている。液化ガス吸収材14による液化ガス2の吸収速度を超える液化ガス2を供給すると、低温試料運搬用容器1の下部に液化ガス2が溜まってしまい、排出の手間が増えるので、これを防止するためである。
【0038】
液化ガス流出ノズル32の形状は、図3に示すように、複数のノズルが液化ガス収容容器31の垂直方向から見て横方向に放射状に延びた形状に形成されていても、あるいは複数のノズルが液化ガス収容容器31の垂直方向から見て中心から渦巻き状に形成されていてもよい。
【0039】
また、複数のノズルのうち、一部のノズルの先端がパイプ12の下端の方向を向いていてもよい。パイプ12の下端の方向を向いたノズルから流出した液化ガス2は、パイプ12の下端と内壁112の底部との隙間から吸収材収容部13内に入り込み、液化ガス吸収材14の下部から吸収される。これにより液化ガス吸収材14の上下に同時に液化ガス2を供給することができる。
【0040】
液化ガス流出ノズル32は、複数のノズルがそれぞれ独立に、ノズルの先端の向きを変更可能である。ノズルの先端の向きを変更できることにより、複数のノズルが放射状や渦巻き状に形成されている場合であって、当該形状によりノズルを外殻ケース11の上部開口113から入れることが困難な場合であっても、いくつかのノズルの先端の向きを変えることで、液化ガス流出ノズル32を外殻ケース11の上部開口113から入れることができる。また、ノズルの先端の向きを変更できることにより、液化ガス吸収材14の上から液化ガス2を供給した後、ノズル先端の方向をパイプ12の下端に変えて、吸収材の下端から液化ガス2を吸収させることができる。
【0041】
本実施形態に係る低温試料運搬用容器1の液化ガス吸収材14への液化ガス供給方法では、上記のガスを排気するための隙間18を利用する。すなわち、図6および図7に示すように、液化ガス流出ノズル32から流出する液化ガス2が隙間18に流入するように液化ガス流出ノズル32を配置する。隙間18の形状には、図6に示すようにパイプ12の上端部と首部16とが上下方向に隙間18を形成する場合や、図7に示すように径方向に隙間18を形成する場合がある。液化ガス2の供給方法は、隙間18の形状に応じて、液化ガス流出ノズル32の先端を直接隙間18に向ける方法、あるいは、液化ガス流出ノズル32の先端を隙間18の上部の内壁112に向けて液化ガス2を放出し、内壁112に沿って液化ガス2を流下させて隙間18に流入させる方法を選択する。液化ガス2を隙間18に適切に流入させることができれば、流入させる際の液化ガス流出ノズル32の先端の向きは特に限定されない。なお、液化ガス供給器具3を低温試料運搬用容器1に用いる場合は、両者の間の気密性を保ち、低温試料運搬用容器1の中に結露が生じることを防止するために、上部開口113に蓋33を用いることが望ましい。
【0042】
本実施形態に係る液化ガス供給器具3は、液化ガス2が隙間18に流入するように、液化ガス供給器具3を最適な位置に固定するために何らかの固定具を用いることが望ましい。固定部材は、液化ガス供給器具3を把持する把持部材と、把持部材を地面に対して支持するための支持部材とを有する。しかし、液化ガス供給器具3を固定する方法としてはこれに限られず、液化ガス供給器具3を適切に固定することができれば特に限定されない。
【0043】
上記の構成によれば、液化窒素を、液化窒素吸収材の上部から必要な量だけ注げばよいため、液化窒素を何度も注ぎ足す必要がない。また、液化窒素を何度も注ぎ足す作業工程が不要であるため、当該工程に要していた時間を短縮でき、当該工程の間に生じていた、蒸発による液化窒素の多量の損失という問題も回避することができる。
【0044】
また、本実施形態では、液化ガス収容容器31の注入用開口311に液化ガス2を注入する際は、図4および図5に示すように、液化ガス収容容器31に容易に液化ガス2を入れることのできる液化ガス注入装置6を使用する。
【0045】
液化ガス注入装置6は、液化ガス2が入った容器7を支持する支持部61と、台車62と、昇降機構63とを備える。
【0046】
支持部61は、L字型の支持台611と、容器7の首部付近を把持する把持部612と、を有する。支持台611は、L字型における短辺の上面に、容器7を乗せることができる平面を有する。把持部612は、支持台611の長辺の上部側面に設けられ、容器7の首部付近を把持するための、ベルト状の拘束具である。
【0047】
台車62は、基板621と、台板622と、基板621の下面に設けられた4輪の車輪と、台板622の上面に立設された支柱623とを有する。
【0048】
支柱623は、上部側面に、回転軸6231と、回転固定機構6232とを有する。支柱623は、回転軸6231によって支持部61を回転可能に支持することができるとともに、回転固定機構6232によって容器7を好ましい回転角度の状態で支持部61を介して固定することができる。
【0049】
昇降機構63は、例えば、足踏み油圧式等であって、台車62の台板622を昇降させることのできる機構である。この構成によって、両手のふさがった作業者でも容易に操作できる。
【0050】
以上の液化ガス注入装置6の構成により、容器7は、支持部61により支持された状態で、台車62により移動可能である。また容器7は、支柱623により回転可能に支持された支持部61と昇降機構63とによって、液化ガス供給器具3に液化ガス2を注入するために適した位置と角度に移動させることができる。
【0051】
次に本実施形態の作業工程の一例を説明する。まず低温試料運搬用容器1を重量計8に乗せる(工程1)。重量計8によって液化ガス2の供給前後の低温試料運搬用容器1の重量を計測することで、液化ガス吸収材14に吸収された液化ガス2の量を計測することができる。
【0052】
次に、低温試料運搬用容器1の上に液化ガス供給器具3を配置する。このとき、液化ガス2が隙間18に流入するように液化ガス流出ノズル32を低温試料運搬用容器1内に配置する(工程2)。例えば図6に示すように、上下方向に隙間18が形成されている場合は、液化ガス流出ノズル32の先端を、隙間18内に位置させる。但し、隙間18の幅が液化ガス流出ノズル32の先端の幅よりも大きい場合は、隙間18の中央と略同一水平面上に位置させることが望ましい。また、例えば図7に示すように、半径方向に隙間18が形成されている場合は、液化ガス流出ノズル32から流出する液化ガス2がパイプ12の上端より高い位置で内壁112に当たるように配置する。内壁112に当たった液化ガス2は、内壁112を伝って隙間18に流入することとなる。なお、液化ガス流出ノズル32が適切に配置された状態を維持するために、液化ガス供給器具3を何らかの固定具を用いて固定することが望ましい。
【0053】
次に、液化ガス2の入った容器7を、液化ガス注入装置6の支持部61に固定する(工程3)。次に、液化ガス注入装置6の昇降機構63および回転固定機構6232を作動させて、図5の2点鎖線で示すように、容器7内の液化ガス2を液化ガス収容容器31に注ぎ入れる(工程4)。そうすると、液化ガス収容容器31内に注入された液化ガス2が、液化ガス流出ノズル32から流出する。液化ガス流出ノズル32から流出した液化ガス2は、隙間18を通過して吸収材収容部13に収容された液化ガス吸収材14に吸収される。
【0054】
容器7から液化ガス収容容器31への液化ガス2の注入は、1回で行ってもよいし、複数回に分けて行ってもよい。この回数は、液化ガス収容容器31の容量、吸収材の大きさ等に応じて定まる。
【0055】
そして、重量計8の示す値が所定の重量に達した段階で、容器7から液化ガス収容容器31への液化ガス2の注入を停止し、低温試料運搬用容器1内で液化ガス吸収材14に吸収されずに残った液化ガス2を排出する。排出後の低温試料運搬用容器1を重量計8に乗せて、所定の重量を超えていれば、十分な量の液化ガス2が液化ガス吸収材14に吸収されたといえるため、作業を終了する。
【0056】
なお、上記の各作業工程は、上記の順番に限られず、本発明の目的を害さない範囲内であれば、全ての工程について順番が変更されてもよい。例えば、工程2と、工程4とを入れ替えることができる。この場合、液化ガス流出ノズル32から液化ガス2が意図せずに流出することを止めるバルブを設けることが望ましい。このバルブを設けた場合、バルブを閉じた状態で工程4を実行し、その後、工程2を実行した後に上記バルブを開くことで、既述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0057】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法、および、液化ガス供給器具について、図面を参照しつつ説明する。第2実施形態においても、低温試料運搬用容器として、第1実施形態において説明した低温試料運搬用容器1と同じものを例示する。
【0058】
図8および図9に示すように、第2実施形態で使用する液化ガス供給器具3Aは、液化ガスを流出させるための複数の液化ガス流出ノズル32Aと、複数の液化ガス流出ノズル32Aの先端部同士の相対位置を固定する先端固定部材322と、ノズル固定部材321Aとを備えている。
【0059】
複数の液化ガス流出ノズル32Aは、ぞれぞれの先端部が略環状の先端固定部材322に固定されている。これにより、複数の液化ガス流出ノズル32Aの先端部同士の相対位置が固定され、各液化ガス流出ノズル32Aの先端部の振動、振れ等が防止される。先端部の振動、振れ等が防止されることで、液化ガス流出ノズル32Aの先端部から目標位置に向けて正確に液化ガスを流出させることができる。複数の液化ガス流出ノズル32Aの先端部は、低温試料運搬用容器1の隙間18に沿って配置されるように、隙間18が形成する円周よりも若干小さな円周上に配列されている。
【0060】
先端固定部材322は、円周方向に配列された複数の液化ガス流出ノズル32Aの先端部を配列の内側および下側から支持している。
【0061】
液化ガス流出ノズル32Aの先端部は、液化ガスが低温試料運搬用容器1の隙間18に流入し易くなる方向を向いている。本実施形態では、液化ガス流出ノズル32Aの先端部の向きが、半径方向に対して傾斜した方向に液化ガスが流出するように設定されている。但し、先端部の向きは、これに限定されず、半径方向であってもよい。先端固定部材322の下部には、半径方向外側に延びたかえし部322aが形成されている。液化ガス流出ノズル32Aの先端部は、かえし部322aによって下側から支持されている。先端固定部材322の直径は、低温試料運搬用容器1の上部開口113の直径よりも僅かに小さい。このため、先端固定部材322および液化ガス流出ノズル32Aの先端部は、低温試料運搬用容器1の上部開口113から容易に挿入される。
【0062】
ノズル固定部材321Aは、複数の液化ガス流出ノズル32Aの上流側端部を束ねて、液化ガスの供給側(例えば第1実施形態の液化ガス収容容器31、後述する気液分離器34など)に接続する部材である。本実施形態では、ノズル固定部材321Aは、外部に雄ネジが形成されており、液化ガスの供給側に形成された雌ネジに螺着される。ノズル固定部材321Aには、液化ガス流出ノズル32Aを貫通させて結合させるための孔が形成されている。
【0063】
低温試料運搬用容器1には、様々な形状のものがあり、上部開口113から隙間18までの距離が長いものもある。上部開口113から隙間18までの距離が長い場合、液化ガス流出ノズル32Aの長さを長くしなければならない場合がある。液化ガス流出ノズル32Aの長さを長くすると、仮に先端固定部材322が無ければ、液化ガス流出ノズル32Aの先端部に振動、揺れ等が生じ易くなり、先端部の位置が定まり難くなる。しかし、本実施形態では先端固定部材322によって、複数の液化ガス流出ノズル32Aの先端部同士の相対位置が固定されているので、上記のような問題が生じることは殆どない。また、液化ガス流出ノズル32Aの先端部は、先端固定部材322のかえし部322aの外周より内側に固定され、かつ、下から視て、かえし部322aに覆われているので、液化ガス流出ノズル32Aを上部開口113内に挿入する際に、液化ガス流出ノズル32Aの先端部が上部開口113内に直接当たって好ましくない方向に曲がってしまうことも殆どない。
【0064】
先端固定部材322は、本実施形態では円環状に形成されているが、形状は円環状に限定されない。例えば、円板状であってもよい。但し、先端固定部材322の外形は、低温試料運搬用容器1の上部開口113および隙間18の形状に対応していることが望ましい。例えば、本実施形態では、低温試料運搬用容器1の上部開口113および隙間18の形状は上から視て円形であるが、同形状が四角形である場合は、先端固定部材322の外形は四角形であることが望ましい。
【0065】
第2実施形態に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法は、上記液化ガス供給器具3Aを用いて実施される。例えば、第2実施形態に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法は、第1実施形態に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、液化ガス供給器具3(図2参照)の液化ガス流出ノズル32およびノズル固定部材321の部分を、第2実施形態で説明した液化ガス供給器具3A(図8参照)に置き替えたものとすることができる。
【0066】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態で使用する低温試料運搬用容器1は、図10に示すように、内部のパイプ12Aの側面に穴12cが開いている。
【0067】
第3実施形態に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法は、第1実施形態又は第2の実施形態に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、液化ガス流出ノズル32,32Aを低温試料運搬用容器1内に配置する工程の前に、パイプ12A内に空間充填部材121を充填するものである。
【0068】
仮に、パイプ12A内に空間充填部材121を充填しなければ、パイプ12Aの側面に穴12cが開いているため、隙間18から液化ガス2を流入させると、穴12cからパイプ12A内の空間12bに多量の液化ガス2が漏出する。そして、パイプ12A内の空間12bに漏出した液化ガス2は、ほとんどが液化ガス吸収材14に吸収されることなく蒸発してしまう。しかし、本実施形態に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法によれば、パイプ12A内の空間12bに空間充填部材121を充填した後、隙間18から液化ガス吸収材14に向けて液化ガス2を流入させるので、パイプ12Aの穴12cから漏出する液化ガス2の量を抑制でき、液化ガス吸収材14に吸収されずに蒸発してしまう液化ガスを減少させることができる。
【0069】
空間充填部材121は、パイプ12Aの内側の形状および大きさに合わせて形成されており、パイプ12Aの内側に対して隙間(例えば直径方向に1mm以下の隙間)を介して嵌め込まれる。図10に例示する空間充填部材121は、筐体121a、断熱材121bおよび持ち手122を用いて構成されている。筐体121aは、図10に示すように、その高さが、パイプ12Aの高さよりも低いことが望ましい。そうすることで、例えば図11(図中の符号34は、後述する気液分離器である。)に示すように、既述した先端固定部材322を筐体121aと干渉させることなく、パイプ12Aの上端に載置することができる。先端固定部材322をパイプ12Aの上端に載置することで、隙間18に対する液化ガス流出ノズル32Aの先端部の位置決めが容易になる。断熱材121bは、筐体121a内に充填され、筐体121a内の温度変化(圧力変化)による筐体121aの変形を防止する。なお、ユーザは、持ち手122に指を掛けることで、パイプ12A内に充填された空間充填部材121を容易に引き抜くことができる。
【0070】
<第4実施形態>
以下、本発明の第4実施形態に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法、および、液化ガス供給器具について、図面を参照しつつ説明する。第4実施形態においても、低温試料運搬用容器として、第1実施形態又は第3実施形態において説明した低温試料運搬用容器1と同じものを使用することができる。
【0071】
第4実施形態で使用する液化ガス供給器具3Bは、図14に示すように、第2実施形態で使用した液化ガス供給器具3Aの上流側に気液分離器34を接続して構成したものである。気液分離器34は、液化ガス流出ノズル32Aに流入させる液化ガスの圧力を低減するとともに、当該液化ガスに混在する気体を分離する役目を果たす。例えば、所定圧力で液化ガスを貯留する液化ガス貯留容器(不図示)から液化ガスを圧送する配管と、液化ガス流出ノズル32Aの上流側との間に上記気液分離器34を設けることで、第1実施形態で説明した液化ガス収容容器31(図2参照)不要とすることができ、しかも、液化ガス流出ノズル32Aへ液化ガスを連続供給することが可能となる。
【0072】
仮に、液化ガスを圧送する配管と、液化ガス流出ノズル32Aの上流側とを直接接続した場合、液化ガス流出ノズル32Aへの液化ガスの供給圧が高いと、液化ガス吸収材14の吸収速度を上回る流量の液化ガスが、液化ガス流出ノズル32Aから低温試料運搬用容器1内に供給される。そうなると、多量の液化ガスが、液化ガス吸収材14されることなく、低温試料運搬用容器1の内壁112の底に溜まってしまったり、低温試料運搬用容器1からあふれ出てしまうおそれがある。液化ガス流出ノズル32Aへの液化ガスの供給圧を下げるために、液化ガスを圧送する配管と液化ガス流出ノズル32Aの上流側との間で単純に圧力を開放することも考えられるが、そうした場合、液化ガスの大部分が気化してしまい、低温試料運搬用容器1内に適量の液化ガスを供給できなくなる。
【0073】
そこで、本実施形態における気液分離器34は、液化ガスの気化を抑制しながら液化ガスの減圧を行うための構造を備えている。具体的には、気液分離器34は、図12に示すように、収納体341、ホーン342、本体343、排気弁344等を備えている。
【0074】
収納体341は、一端に本体343が貫通して固定され、他端にホーン342から流出する液化ガスを液化ガス流出ノズル32A(ノズル固定部材321内)に供給するための供給口341aが設けられている。供給口341aは、収納体341の下流側の端部に設けられている。また、収納体341は、液化ガスから分離した気体を排出する排気路341bを側面に有する。排気路341bには、排気弁344が設けられている。排気弁344を用いて、排気路341bを通じて大気に開放される気体の排気流量を調整することができる。なお、収納体341の上流側端部341cには、本体343をねじ結合するための雌ねじが設けられている。
【0075】
ホーン342は、収納体341内に設けられ、一端が本体343に固定され、他端が開放されている。本実施形態では、ホーン342の上流側の端部342aに、本体343の上流側端部とねじ結合するための雌ねじが形成されている。ホーン342の下流側は、開放された開放端342bになっている。
【0076】
本体343は、ホーン342内に設けられている。本体343は、一端が閉塞し、他端に形成された液化ガス流入口343aから本体343の内部に亘って液化ガス供給路343bが形成されている。本体343は、第1の上流側噴出孔343e1および第1の下流側噴出孔343f1と、第2の上流側噴出孔343e2および第2の下流側噴出孔343f2とを有する。上流側噴出孔343e1,343e2は、軸方向に対して鋭角を成す方向へ放射状に液化ガスを噴出するように、液化ガス供給路343bから本体343の外部にわたって形成された複数の噴出孔で構成されている。下流側噴出孔343f1,343f2は、本体343の軸方向に対して鈍角を成す方向へ放射状に液化ガスを噴出するように、液化ガス供給路343bから本体343の外部にわたって形成された複数の噴出孔で構成されている。本実施形態では、本体343の外周に比較的大きな直径の一般部と、比較的小さな直径の外周小径部343cとが形成されている。外周小径部343cは、2カ所に形成されており、各外周小径部343cと一般部との間に、それぞれ一対の傾斜面343dが形成されている。上記噴出孔343e1,343f1,343e2,343f2は、各傾斜面343dに設けられている。
【0077】
上流側噴出孔343e1,343e2および下流側噴出孔343f1,343f2は、図13(紙面の都合上、第2の噴出孔343e2,343f2のみを図示する。)に示すように、上流側噴出孔343e1,343e2から噴出する液化ガス2と、下流側噴出孔343f1,343f2から噴出する液化ガス2とをホーン342内で衝突させて膜状に拡散するように噴出方向および噴出位置が設定されている。液化ガス2がホーン342内で衝突して膜状に拡散することによって、ホーン342内にそれぞれ膜343gが形成される。噴出孔343e1,343e2,343f1、343f2から噴出された液化ガス2の一部は、膜343gと本体343とホーン342とによって形成される空間に滞留した後、流下して収納体341の下部に溜まりながら供給口341aを通じて液化ガス流出ノズル32Aに流入する。収納体341の下部に溜まった液化ガスに気体(気泡)が混在している場合、その気体は上昇して排気路341から排出される。その結果、液化ガス流出ノズル32Aに流れ込む液化ガスには、殆ど気体(気泡)が混在しない。
【0078】
ホーン342の内径は、噴出した液化ガスによってホーン342内の温度が所定温度以下に低下する内径に設定されている。ここで、所定温度とは、噴出した液化ガスが気化しない温度(別の言い方をすれば再液化する温度)である。そのため、噴出孔343e1,343e2,343f1、343f2から噴出された液化ガス2は、その多くが液体のまま、ホーン342の開放端342bから流下する。また、噴出孔343e1,343e2,343f1、343f2から噴出された液化ガス2のうち、元々液化ガス2に混在していた気体は、一部が液化されて、ホーン342の開放端342bから流下し、液化されなかった気体は、矢印2Gに示すように、ホーン342の外壁と収納体341の内壁との間の空間を通り、排気路341bを介して気液分離器34の外部に排出される。
【0079】
第4実施形態に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法は、上記液化ガス供給器具3Bを用いて実施される。そして、第4実施形態に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法は、以下に説明する工程により実施される。
【0080】
先ず、低温試料運搬用容器1の上に液化ガス供給器具3Bを配置する。このとき、液化ガス2が隙間18に流入するように液化ガス流出ノズル32Aを低温試料運搬用容器1内に配置する(工程4-1)。この工程4-1は、第1実施形態で説明した工程2と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0081】
次に、気液分離器34の本体343内に液化ガス2を圧送し、排気弁344を所定の開度だけ開放する。そうすると、既述したように、噴出孔343e1,343e2,343f1、343f2から液化ガスが噴出して、ホーン342内に膜343gを形成しながら、ホーン342から液化ガス2が流下して収納体341の下部に溜まり、供給口341aを通じて液化ガス流出ノズル32Aの先端部から流出する。液化ガス流出ノズル32Aの先端部から流出した液化ガス2は、低温試料運搬用容器1の隙間18を通過して吸収材収容部13に収容された液化ガス吸収材14に吸収される。このとき、排気弁344の開度が適度にすることで、液化ガス流出ノズル32Aから流出する液化ガスの供給流量と、液化ガス吸収材14が吸収可能な液化ガスの吸収速度(時間当たりの吸収量)とを略一致させることができ、短い時間で液化ガス吸収材14が吸収可能な量の液化ガス2を吸収させることができる。もちろん、第1実施形態と同様に、液化ガスは、液化ガス吸収材14の上から供給されるので、液化ガスは、液化ガス吸収材14に効率よく吸収される。
【0082】
また、本実施形態によれば、排気弁344の開度を調節することで、適度に減圧された液化ガスを液化ガス流出ノズル32Aに供給することができるので、元圧の影響を受けることなく、液化ガス流出ノズル32Aから液化ガス吸収材14の液化ガス吸収速度に対応した流量の液化ガスを流出させることができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、気液分離器34によって、液化ガスに混在していた気体が殆ど除去されるので、液化ガス吸収材14に気体が殆ど混在していない液化ガスを吸収させることができ、更に短い時間で液化ガス吸収材14に最大量の液化ガス2を吸収させることできる。
【0084】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、液化ガス供給器具3(図2参照)の液化ガス流出ノズル32およびノズル固定部材321の部分を、第2実施形態で説明した液化ガス供給器具3A(図8参照)に置き替えたものとすることも可能である。
【0085】
<第4実施形態の変形例1>
第4実施形態において説明した液化ガス供給器具3Bは、第2実施形態で使用した液化ガス供給器具3Aの上流側に気液分離器34を接続して構成したものであったが、第1実施形態で使用した液化ガス流出ノズル32およびノズル固定部材321の上流側に、液化ガス収容容器31に代えて気液分離器34を接続したものを第4実施形態における液化ガス供給器具として使用することも可能である。
【0086】
<第4実施形態の変形例2>
第4実施形態では、ホーン342内に2つの膜343gが形成されるように、噴出孔が形成されているが、膜343gの数は2つに限定されない。例えば、1つ又は3つ以上の膜343gが形成されるように噴出孔を形成してもよい。
【0087】
<第4実施形態の変形例3>
第4実施形態に係る低温試料運搬用容器への液化ガス供給方法において、液化ガス流出ノズル32Aを低温試料運搬用容器1内に配置する工程(工程4-2)の前に、パイプ12,12A内に空間充填部材121を充填する工程を追加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、例えば、低温試料運搬用容器内の液化ガス吸収材に液化ガスを吸収させる器
具などに適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 低温試料運搬用容器
11 外殻ケース
111 外壁
112 内壁
113 上部開口
12,12A パイプ
12b 空間
121 空間充填部材
13 吸収材収容部
14 液化ガス吸収材
16 首部
17 密閉空間
18 隙間
2 液化ガス
3,3A,3B 液化ガス供給器具
31 液化ガス収容容器
311 注入用開口
321 ノズル固定部材
322 先端固定部材
32,32A 液化ガス流出ノズル
34 気液分離器
341 収納体
341a 供給口
341b 排気路
342 ホーン
343 本体
343b 液化ガス供給路
343e1,343e2 上流側噴出孔
343f1,343f2 下流側噴出孔
343g 膜
344 排気弁
6 液化ガス注入装置
7 容器
8 重量計
図1
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図3
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