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特許7625812状態監視装置、状態監視方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】状態監視装置、状態監視方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20250128BHJP
【FI】
G01M17/007 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020157723
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051307
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 武信
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 駿介
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-256387(JP,A)
【文献】特開2018-197668(JP,A)
【文献】特開2007-270937(JP,A)
【文献】特開2005-313755(JP,A)
【文献】特開2019-007889(JP,A)
【文献】特開2008-280038(JP,A)
【文献】特開2005-035394(JP,A)
【文献】特開2017-094815(JP,A)
【文献】特開2009-303364(JP,A)
【文献】特開2018-078047(JP,A)
【文献】特開2017-128249(JP,A)
【文献】特開2019-049540(JP,A)
【文献】特開2016-108983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0186690(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00 - 1/04
B60L 3/00 - 3/12
G01M 13/00 - 13/045
G01M 17/00 - 17/10
G01M 99/00
G01N 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の部品から構成される装置の状態監視装置であって、
温度変化に伴って前記1または複数の部品から生じるガスを測定する測定手段と、
前記測定手段によるガスの測定結果に基づいて、前記1または複数の部品の中からガスが発生している箇所および異常の程度を診断する診断手段と、
前記診断手段により診断される異常の程度に対して予め定義された制御内容を用いて、前記装置の制御を行わせる制御手段と、
を有し、
前記測定手段は、クリーニング動作と測定動作を切り替え可能に構成され、
前記クリーニング動作においては、外気を吸入した後、前記測定手段による外気の測定を行い、
前記測定動作においては、前記1または複数の部品から生じるガスを吸入した後、前記測定手段によるガスの測定を行い、
前記診断手段は、前記クリーニング動作における測定結果と、前記測定動作における測定結果との差分に基づいて、ガスの発生の程度を導出し、前記1または複数の部品の中からガスが発生している箇所および異常の程度を診断することを特徴とする状態監視装置。
【請求項2】
前記装置の動作情報を取得する取得手段を更に有し、
前記測定手段は、前記装置の動作情報に応じて、測定タイミングを制御することを特徴とする請求項1に記載の状態監視装置。
【請求項3】
前記測定手段は、気体の流路を切り替え可能に構成され、
前記気体の流路は、前記装置の動作情報に応じて切り替えられる
ことを特徴とする請求項2に記載の状態監視装置。
【請求項4】
前記装置は、車両であり、
前記動作情報は、前記車両の走行状態の情報であることを特徴とする請求項2または3に記載の状態監視装置。
【請求項5】
前記1または複数の部品は、転がり軸受、タイヤ、ブレーキ、エンジン、トランスミッション、モーター、およびバッテリーのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の状態監視装置。
【請求項6】
前記測定手段は、半導体式のガスセンサを含んで構成されることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の状態監視装置。
【請求項7】
前記測定手段は、前記装置が備えるハブ軸受に設置されていることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の状態監視装置。
【請求項8】
1または複数の部品から構成される装置の状態監視方法であって、
ガスセンサを用いて、温度変化に伴って前記1または複数の部品から生じるガスを測定する測定工程と、
前記測定工程におけるガスの測定結果に基づいて、前記1または複数の部品の中からガスが発生している箇所および異常の程度を診断する診断工程と、
前記診断工程にて診断される異常の程度に対して予め定義された制御内容を用いて、前記装置の制御を行わせる制御工程と、
を有し、
前記測定工程では、クリーニング動作と測定動作を切り替え可能に構成され、
前記クリーニング動作においては、外気を吸入した後、外気の測定を行い、
前記測定動作においては、前記1または複数の部品から生じるガスを吸入した後、ガスの測定を行い、
前記診断工程では、前記クリーニング動作における測定結果と、前記測定動作における測定結果との差分に基づいて、ガスの発生の程度を導出し、前記1または複数の部品の中からガスが発生している箇所および異常の程度を診断することを特徴とする状態監視方法。
【請求項9】
コンピュータに、
ガスセンサを用いて、温度変化に伴って装置を構成する1または複数の部品から生じるガスを測定する測定工程と、
前記測定工程におけるガスの測定結果に基づいて、前記1または複数の部品の中からガスが発生している箇所および異常の程度を診断する診断工程と、
前記診断工程にて診断され異常の程度に対して予め定義された制御内容を用いて、前記装置の制御を行わせる制御工程と、
を実行させるためのプログラムであって、
前記測定工程では、クリーニング動作と測定動作を切り替え可能に構成され、
前記クリーニング動作においては、外気を吸入した後、外気の測定を行い、
前記測定動作においては、前記1または複数の部品から生じるガスを吸入した後、ガスの測定を行い、
前記診断工程では、前記クリーニング動作における測定結果と、前記測定動作における測定結果との差分に基づいて、ガスの発生の程度を導出し、前記1または複数の部品の中からガスが発生している箇所および異常の程度を診断することを特徴とするプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、状態監視装置、状態監視方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装置が動作することに伴って熱を発し、これが装置の動作や構成部品に影響を与えることが知られている。例えば、車両において異常発熱が発生した場合、その発生位置によって車両を構成する部位に応じて様々な損傷が生じる。そのため、装置の温度上昇を監視し、温度変化に応じた制御を行うことが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、転動装置の異常監視を行うための温度センサが開示されている。また、特許文献2では、タイヤの温度を検知して車輪の状態を判定する車輪状態監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-156957号公報
【文献】特許第5444266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような先行技術文献では、温度の検知精度を考慮すると、監視対象に近接した位置に温度検知のためのセンサを設置する必要がある。そのため、センサの設置位置などに制約が生じ、設計の自由度が低いものとなっていた。また、監視対象の近隣にセンサを設置することにより、その対象の動作によって生じる発熱や振動などの影響をセンサ自体が受けるという課題もある。更には、監視対象ごとにセンサを設ける必要があり、監視対象の増加に伴ってセンサも増加するという課題もあった。
【0006】
上記課題を鑑み、本願発明は、状態監視のための構成の自由度を向上させつつ、発熱に伴う装置の損傷の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本願発明は以下の構成を有する。すなわち、1または複数の部品から構成される装置の状態監視装置であって、
温度変化に伴って前記1または複数の部品から生じるガスを測定する測定手段と、
前記測定手段にて測定したガスに応じて、前記装置の異常状態を診断する診断手段と、

有する。
【0008】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、1または複数の部品から構成される装置の状態監視方法であって、
ガスセンサを用いて、温度変化に伴って前記1または複数の部品から生じるガスを測定する測定工程と、
前記測定工程にて測定したガスに応じて、前記装置の異常状態を診断する診断工程と、

有する。
【0009】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、プログラムであって、
コンピュータに、
ガスセンサを用いて、温度変化に伴って装置を構成する1または複数の部品から生じるガスを測定する測定工程と、
前記測定工程にて測定したガスに応じて、前記装置の異常状態を診断する診断工程と、
を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本願発明により、状態監視のための構成の自由度を向上させつつ、発熱に伴う装置の損傷の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本願発明の一実施形態に係る装置構成の例を示す概略図。
図2】本願発明の一実施形態に係る状態監視装置の機能構成の例を示す図。
図3】監視対象が車両である場合の異常発熱の発生個所および損傷の例を示す図。
図4】本願発明の一実施形態に係るガスセンサの設置位置の例を示す図。
図5】本願発明の一実施形態に係るガスセンサの構成および動作を説明するための図。
図6】第1の実施形態に係る異常診断処理のフローチャート。
図7】本願発明の一実施形態に係る試験結果の例を示すグラフ図。
図8】第2の実施形態に係る異常診断処理のフローチャート。
図9】第3の実施形態に係る異常診断処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本願発明を説明するための一実施形態であり、本願発明を限定して解釈されることを意図するものではなく、また、各実施形態で説明されている全ての構成が本願発明の課題を解決するために必須の構成であるとは限らない。また、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。
【0013】
<第1の実施形態>
以下、本願発明の第1の実施形態について説明を行う。
【0014】
[装置構成]
図1は、本実施形態に係るシステムの全体構成の一例を示す概略構成図である。本実施形態に係るシステムは、監視対象を含む装置100と、状態監視装置200を含んで構成される。本実施形態では、監視対象を含む装置100として車両(以下、車両100と記載する)を例に挙げて説明する。状態監視装置200は、例えば、PC(Personal Computer)などの情報処理装置などであってよく、その構成は特に限定するものではない。監視対象が車両である場合には、状態監視装置200は、車載のECU(Electronic Control Unit)を含んで構成されてもよい。
【0015】
状態監視装置200は、CPU(Central Processing Unit)201、記憶装置202、センサIF203、入力装置204、出力装置205、および通信装置206を含んで構成される。各部位は、内部バス207を介して通信可能に接続される。CPU10は、状態監視装置200全体の制御を司る部位であり、例えば、記憶装置202に格納されたプログラムを読み出して実行することで各種機能を実現してよい。記憶装置202は、不揮発性の記憶領域であるROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)、揮発性の記憶領域であるRAM(Random Access Memory)などから構成される。センサIF203は、ガスセンサ103が検出した結果を取得するためのインタフェースである。センサIF203は、ガスセンサ103に対して電源(不図示)から電力を供給するような構成であってもよい。入力装置204は、外部からの入力を受け付ける部位であり、例えば、マウスやキーボードなどから構成される。出力装置205は、各種情報を出力するための部位であり、例えば、液晶ディスプレイなどが該当する。なお、入力装置204と出力装置205が一体となったタッチパネルディスプレイが用いられてもよい。通信装置206は、外部装置(不図示)とネットワーク(不図示)を介して通信するための部位である。ここでの通信は、有線/無線は問わず、また、通信規格なども特に限定するものではない。
【0016】
車両100は、複数の部位から構成され、ここでは一例として、監視対象として3つの部位101a~101cを挙げて説明する。なお、監視対象である部位を包括的に説明する多場合には部位101と記載し、個別に説明する必要がある場合には、添え字を付して説明する。これらの部位101としては、例えば、軸受装置、タイヤ、ブレーキ、エンジン、トランスミッション、モーター、バッテリーなど、任意のものが対象となってよく、温度変化に伴ってガス102の発生が生じる部位であるものとする。また、装置100が車両以外である場合には、その装置の種類などに応じて、監視対象となる部位101の構成や種類が異なっていてよい。また、図1では、装置100と状態監視装置200とが別個であるものとして示されているが、この構成に限定されるものではなく、状態監視装置200が装置100内に設けられてもよい。
【0017】
車両100には、ガスセンサ103が備えられ、温度変化に伴って部位101から生じるガス102を検出可能に構成されている。図1では、ガスセンサ103を1つのみ示しているが、装置100のサイズや構造、ガス102の発生領域などに応じて、複数のガスセンサ103が備えられてよい。ガスセンサ103は、検出したガス102に関する情報をセンサIF203を介して状態監視装置200に提供する。
【0018】
温度変化に伴って各部位から生じるガス102の組成や発生量などは、部位101にて用いられている素材、動作条件、動作負荷、構造などに応じて異なる。例えば、上述したように、車両100が備える部位101として軸受装置、タイヤ、ブレーキ、エンジン、トランスミッション、モーター、バッテリーなどが挙げられるが、これらは潤滑剤、ゴム、樹脂などを使用している。そのため、温度変化や発熱に伴ってカルボニル化合物などを含むガスが発生し得る。また、複数の部位にて異常発熱が発生した場合には、それぞれの部位にて異なる種類の成分のガスが生じ得る。そのため、ガス102には、1または複数の種類の物質が含有され得る。
【0019】
[機能構成]
図2は、本実施形態に係る状態監視装置200の機能構成の例を示す図である。図2に示す各部位に係る機能は、図1に示したCPU201が記憶装置202に記憶されたプログラムを読み出して実現されてもよいし、ハードウェアである各装置を制御することで実現されてもよい。
【0020】
状態監視装置200は、信号取得部211、信号分析部212、異常診断部213、情報記憶部214、報知処理部215、および通信処理部216を含んで構成される。信号取得部211は、センサIF203を介してガスセンサ103から検出信号を取得する。また、信号取得部211は、ガスセンサ103に対して各種制御信号を送信し、その動作を制御してよい。信号分析部212は、信号取得部211にて取得した検出信号を用いて装置100(ここでは車両)にて発生しているガス102を分析し、そのガス102の種類(含有物)や量、発生源などを特定する。異常診断部213は、信号分析部212の分析結果に基づき、異常発熱の有無や、異常部位の特定などの異常診断を行う。
【0021】
情報記憶部214は、外部から取得した各種情報や診断結果などを記憶装置202にて記憶して管理する。報知処理部215は、診断結果などをユーザに報知する制御を行う。また、報知処理部215は、装置100の制御部(不図示)に対して、異常診断の結果を報知することで、異常が発生している部位101の動作を停止させるなどの制御を行ってもよい。通信処理部216は、通信装置206を介して外部装置(不図示)への各種情報の送受信を制御する。
【0022】
[異常発熱の発生個所および損傷の例]
図3は、装置100が車両である場合の、構成部品(部位101)における発熱箇所と、異常発熱により生じる損傷の例を示す図である。車両の構成部品としては、転がり軸受、タイヤ、ブレーキ、エンジン、ギア、モーター、およびバッテリーなどが挙げられる。なお、図3に示す構成部品は一例であり、これに限定するものではない。また、構成部品の単位(粒度)についてもこれに限定するものでは無い。
【0023】
転がり軸受の発熱箇所としては、シールや摺動部に供給されている潤滑剤などが挙げられる。また、転がり軸受にて発熱が生じた場合、転がり軸受内の異常摩擦や焼付きなどが生じ得る。タイヤの発熱箇所としては、接地が生じるタイヤの表面が挙げられる。また、タイヤにて発熱が生じた場合、バーストや破裂などが生じ得る。ブレーキの発熱箇所としては、パッドやライニングなどが挙げられる。また、ブレーキにて発熱が生じた場合、べーパーロック現象やフェード現象が生じ得る。
【0024】
エンジンの発熱箇所としては、内部に保持されたエンジンオイルが挙げられる。また、エンジンにて発熱が生じた場合、内部の焼付きが生じ得る。ギアの発熱箇所としては、摺動部に供給されている潤滑剤などが挙げられる。また、ギアにて発熱が生じた場合、異常摩耗や焼付きなどが生じ得る。モーターの発熱箇所としては、シール、潤滑剤、コイル表面の樹脂などが挙げられる。また、モーターにて発熱が生じた場合、内部の焼付きが生じ得る。バッテリーの発熱箇所としては、電解液、セパレータ、および電極などが挙げられる。また、バッテリーにて発熱が生じた場合、バッテリーの膨張や白煙の発生などが生じ得る。
【0025】
上記に示したような発熱箇所では、発熱に伴ってガス102が生じる。本実施形態では、ガスセンサ103により、発生したガス102の種類や発生量(濃度)を検出し、異常を検出する。
【0026】
[設置例]
図4は、本実施形態に係るガスセンサ103の設置例を説明するための図である。ここでは、監視対象の1つである部位101aとして、車両100が備えるタイヤ周辺の部位を例に挙げて説明する。より具体的には、ガスセンサ103がハブ軸受に設置された例を示している。部位101aは、転がり軸受を含んで構成され、内輪410と外輪411を備える。ここでは、外輪411が固定側とし、車両100が走行することに伴って内輪410側に取り付けられたタイヤ(不図示)が回転する。
【0027】
図4(a)は、外輪411のタイヤ側にガスセンサ103を設けた例を示している。この場合、タイヤの設置位置との関係を考慮し、ガスセンサ103と状態監視装置200との間は無線により通信可能に接続されてよい。また、状態監視装置200は、ガスセンサ103に電力を供給するための電源(不図示)を備え、ガスセンサ103に対して無線を介して電力を供給するような構成であってもよい。このような無線による構成は、例えば、車外に位置する部品(転がり軸受、タイヤ、ブレーキなど)を監視対象とする場合に適している。
【0028】
図4(b)は、外輪411の車体側にガスセンサ103を設けた例を示している。この場合、状態監視装置200は、車両100に備えらえているものとする。そして、配線の自由度に基づき、ガスセンサ103と状態監視装置200との間は有線により通信可能に接続されてよい。また、状態監視装置200は、ガスセンサ103に電力を供給するための電源(不図示)を備え、ガスセンサ103に対して無線を介して電力を供給するような構成であってもよい。このような有線による構成は、例えば、車内に位置する部品(転がり軸受、エンジン、ギア、モーター、バッテリーなど)を監視対象とする場合に適している。
【0029】
[動作例]
図5は、本実施形態に係るガスセンサ103の動作の例を説明するための図である。本実施形態に係るガスセンサ103は、クリーニング動作とガス測定動作とを切り替えつつガスの測定を行う。図5(a)は、クリーニング動作時のガスセンサ103の状態を示す図である。図5(b)は、ガス測定動作時のガスセンサ103の状態を示す。なお、ガスセンサ103の状態の切り替えは、状態監視装置200からの指示に基づいて行われてよいし、ガスセンサ103側にて所定の条件に基づいて行われてもよい。また、測定対象の部位101bとして軸受装置を例に挙げて説明する。
【0030】
ガスセンサ103は、外気を吸入する経路と、測定対象となる部位(ここでは軸受装置101b)周辺に存在する気体を吸入する経路とを切り替え可能に構成されたチューブ306を備える。測定対象側の吸入口と外気の吸入口にはそれぞれフィルタ301、303が設置される。フィルタ301、303の構成は同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、フィルタ301は、測定するガスの種類や測定対象の種類、位置に応じた構成であってよい。バルブ302は、気体の吸入する際の経路を切り替えるために用いられる。また、ガスセンサ103の排出口側にはポンプ305が配置され、チューブ306を通過する気体を吸引するために用いられる。ポンプ305にて吸引された気体は排出口から排出される。
【0031】
バルブ302とポンプ305の間のチューブ306の経路上にはセンサ部304が設けられる。センサ部304は、気体の成分に反応してそれに対応した信号を出力する。センサ部304は、本実施形態では半導体式のガスセンサを用いた例を説明するが、これに限定するものではない。測定するガスに応じて、例えば、接触燃焼式、電気化学式、熱電導度式、光イオン化式、NDIR(Non-Dispersive Infrared)式などのガスセンサが用いられてもよい。また、バルブ302とポンプ305の間のチューブ306の経路上には検出対象のガスの種類に応じて、複数のセンサ部304が備えられてもよい。
【0032】
[処理フロー]
図6は、本実施形態に係る状態監視処理のフローチャートである。本処理は、状態監視装置200により実行され、例えば、状態監視装置200が備えるCPU201が本処理を実現するためのプログラムを記憶装置202から読み出して実行することにより実現されてよい。本処理は、ユーザの指示に基づいて開始されてもよいし、所定のタイミングにて開始されてもよい。
【0033】
S601にて、状態監視装置200は、ガスセンサ103におけるクリーニングのための経路制御を行う。具体的には、図5(a)に示したように、バルブ302を制御して、外気を吸入するような経路に切り替える。
【0034】
S602にて、状態監視装置200は、クリーニング時間の計測を開始する。例えば、タイマー(不図示)による計時を開始する。
【0035】
S603にて、状態監視装置200は、ポンプ305を動作させ、外気の吸入を行わせる。これにより、徐々にチューブ306内に外気が充填され、チューブ306内は外気によりクリーニングが行われる。
【0036】
S604にて、状態監視装置200は、計測している時間を参照して、クリーニング時間が所定の時間を経過したか否かを判定する。ここでの所定の時間は予め規定され、記憶装置202に保持されているものとする。所定の時間を経過した場合(S604にてYES)、状態監視装置200の処理はS605へ進む。一方、所定の時間を経過していない場合(S604にてNO)、S603に戻り、状態監視装置200は処理を繰り返す。
【0037】
S605にて、状態監視装置200は、センサ部304によりチューブ306内の気体の検出を行わせ、その検出結果を取得する。そして、状態監視装置200は、検出結果を、クリーニング後の状態における検出結果として記憶装置202に記憶させる。
【0038】
S606にて、状態監視装置200は、ガスセンサ103におけるガス測定のための経路制御を行う。具体的には、図5(b)に示したように、バルブ302を制御して、監視対象の部位101b(ここでは、軸受装置)周辺の気体を吸入するような経路に切り替える。
【0039】
S607にて、状態監視装置200は、測定時間の計測を開始する。例えば、タイマー(不図示)による計時を開始する。
【0040】
S608にて、状態監視装置200は、ポンプ305を動作させ、監視対象の部位101b周辺の気体の吸入を行わせる。これにより、徐々にチューブ306内に監視対象の部位102周辺の気体が充填されることとなる。
【0041】
S609にて、状態監視装置200は、計測している時間を参照して、測定時間が所定の時間を経過したか否かを判定する。ここでの所定の時間は予め規定され、記憶装置202に保持されているものとする。なお、本工程にて用いられる所定の時間と、S604での所定の時間とでは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。所定の時間を経過した場合(S609にてYES)、状態監視装置200の処理はS610へ進む。一方、所定の時間を経過していない場合(S609にてNO)、S608に戻り、状態監視装置200は処理を繰り返す。
【0042】
S610にて、状態監視装置200は、センサ部304によりチューブ306内の気体の検出を行わせ、その検出結果を取得する。そして、状態監視装置200は、検出結果を、監視対象の部位101b周辺の気体に対する検出結果として記憶装置202に記憶させる。
【0043】
S611にて、状態監視装置200は、測定動作が終了したか否かを判定する。例えば、S601~S605のクリーニング動作と、S606~S610の測定動作を複数回繰り返した上でその測定結果から異常診断をする場合などには、その回数分の測定が終了したか否かを判定する。測定動作が終了したと判定した場合(S611にてYES)、状態監視装置200の処理はS612へ進む。一方、測定動作が終了していないと判定した場合(S611にてNO)、S601へ戻り、状態監視装置200は処理を繰り返す。
【0044】
S612にて、状態監視装置200は、測定結果に基づいて異常診断を行う。例えば、S602にて測定したクリーニング後の測定結果と、S610にて測定した監視対象の測定結果との差分に基づいて、所定ガスの発生の程度を導出してよい。そして、その発生の程度から監視対象の異常状態を推定することで、異常診断が行われてよい。例えば、検出したガスの濃度が閾値を超えた場合に異常状態であると診断してもよい。また、緊急度に対応した複数の閾値を設定し、各閾値との比較により異常の緊急度(程度)を推定してもよい。
【0045】
S613にて、状態監視装置200は、S612の異常診断結果を報知する。異常発熱が生じている部位やその状況を報知してよい。ここでの報知方法は特に限定するものではないが、例えば、画面にて視覚的に報知してもよいし、音声にて聴覚的に報知してもよい。そして、本処理フローを終了する。
【0046】
なお、図6のフローチャートの例では、クリーニング動作とガス測定動作を交互に行う構成としたが、これに限定するものではない。例えば、クリーニング動作は1回行い、その後、測定動作を一定間隔にて複数回繰り返すような構成であってもよい。この構成により導出されるガス濃度の変化に基づいて、異常診断を行うような構成であってもよい。
【0047】
S612の異常診断において、状態監視装置200は、測定結果に基づいて発生しているガスの種類およびそのガスが発生し得る部位を特定するような構成であってよい。このとき、状態監視装置200は、監視対象の部位と発生するガスとを対応付けたテーブル(不図示)などを用いて発生個所や異常の程度を導出するような構成であってよい。さらに、状態監視装置200は、異常の程度に対応付けた制御内容を示すテーブル(不図示)を用いて、異常に起因する損傷が発生しないように装置100の制御を行わせるような構成であってもよい。
【0048】
[試験例]
上述した状態監視方法を用いた試験結果を、図7を用いて説明する。試験における試験条件は以下の通りとする。また、ここでは監視対象として転がり軸受を含んで構成される軸受装置を用いて試験を行った。
【0049】
(軸受装置仕様)
内径:25[mm]
外径:62[mm]
幅:17[mm]
回転構成:内輪回転
潤滑方式:グリース潤滑
【0050】
(グリース仕様)
増ちょう剤:ウレア
ちょう度番号:No.2
基油:ポリαオレフィン
動粘度:74[mm/s,40℃]
【0051】
(動作条件)
回転速度:10000[min-1
軸受外輪温度:160[℃]
ラジアル荷重:98[N]
アキシアル荷重:1470[N]
【0052】
(ガスセンサ構成)
センサ部方式:半導体式
チューブ外径:6[mm]
チューブ内径:4[mm]
フィルタ種類:セラミックフィルタ
【0053】
本試験では、軸受装置のハウジングのアキシアル方向に直径6.5[mm]の採取孔を設け、ガスセンサ103が備えるチューブ306を挿入することで、軸受装置内部(転がり軸受周辺)のガスを収集する。また、フィルタ301としてセラミックフィルタを用いることで、転がり軸受にて発生するオイルミストを除去している。センサ部304として半導体式のセンサを用いる。半導体式のセンサは、還元性ガス(検出対象のガス)がセンサ部の金属酸化物表面の酸素を取り去り、それによって発生するセンサ部の抵抗の減少により生じる電流の値に応じて、還元性ガスの濃度を検出する。
【0054】
本試験では、クリーニング動作により、センサ部304の状態を初期状態へ戻す。検出精度を向上させるために、経路(チューブ306)内の空気を全て外気に入れ替えた上で測定を行う必要がある。そのため、以下の条件を満たすようにクリーニング時間を設定することが望ましい。
(クリーニング時間)≧(経路体積)/(単位時間当たりのポンプ流量)
【0055】
ポンプ流量や経路体積は、ポンプ305やチューブ306の構成から規定することができる。また、軸受装置にて用いられる潤滑剤の劣化に起因する異常は、劣化が生じてから比較的短い時間で生じるため、測定の間隔はこれを想定したものであることが望ましい。例えば、測定間隔を24時間以内に設定することが考えられる。
【0056】
また、測定時においては、経路(チューブ306)内に、軸受装置周辺の空気を極力充填させる必要がある。このとき、軸受装置内部のガスが保持されている範囲(例えば、軸受装置のハウジング内)の体積(以下、ガス保持体積)を考慮して、以下の条件を満たすように測定時間を設定することが望ましい。
(測定時間)≧(経路体積またはガス保持体積のいずれか小さい方)/(ポンプ流量)
【0057】
ポンプ流量、経路体積、およびガス保持体積は、ポンプ305、チューブ306、測定対象となる部位の構成から規定することができる。なお、測定時において、軸受装置内部にて発生しているガスを必要以上に排出しないように、測定時間の上限やポンプ305の吸引動作を制御してもよい。本試験では、図6のS604の処理にて用いられる所定時間(すなわち、クリーニング時間)は19分とし、S609の処理にて用いられる所定時間(すなわち、測定時間)は1分とした。
【0058】
また、本試験では、測定時のデータからクリーニング時のデータを減算した差分値を用いることで、監視対象の周辺環境における影響を除去する。更には、ガスセンサ103の測定結果は温度や湿度など1日の範囲での周期的な環境変化の影響を受けることが想定されるため、測定時刻を対応させた上でデータの差分値を導出している。また、差分値が0未満となる場合には0として扱っている。
【0059】
図7は、本試験による試験結果を示す図である。図7において、横軸は試験の時間経過[hr]を示し、縦軸の右の目盛りは外輪温度[℃]を示し、縦軸の左の目盛りはガスセンサの出力値[V]を示す。本試験では、比較例として、ガスセンサ103による測定と併せて、転がり軸受を構成する部品のうちの外輪(固定側)の温度(外輪温度)を測定している。
【0060】
図7の破線にて示すように、測定開始から290時間程度が経過した後、ガスセンサ103の出力が増大している。その後、計測開始から320時間程度が経過した時点で異常判定を行い、転がり軸受の動作を停止させた。停止後の転がり軸受の実際の状態を確認したところ、転がり軸受内部の潤滑剤が劣化しており、回転動作が困難な状態となっていた。この状態にて転がり軸受の動作を継続させた場合、焼付きなどの損傷が生じる可能性がある。一方、転がり軸受の外輪の温度変化の検出結果(図7の実線)を参照すると、転がり軸受の動作を停止した直前の温度変化は小さく、数℃のみであった。つまり、温度センサを設置可能な部位の温度監視のみでは、転がり軸受内部の潤滑剤の劣化を捉えることができていない。このことから、本実施形態に係る手法による監視の方が、部位の温度監視よりも焼付きの前兆を適切に捉えることができていることが実証された。
【0061】
以上、本実施形態により、温度に対する監視よりも監視対象の状態を適切に把握でき、監視対象の損傷の発生を抑止することができる。また、ガスセンサの設置位置は、温度センサよりも設置位置の制限が少ないため、状態監視のための構成の自由度を向上させることが可能となる。
【0062】
<第2の実施形態>
本願発明の第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と重複する箇所については、差分に着目し、重複する箇所については説明を省略する。本実施形態では、監視対象の装置100を車両とし、車両の動作状況に基づいて、状態監視を行う例について説明する。
【0063】
本実施形態では、状態監視装置200は、車両100の走行状態の監視を行う。走行状態としては、走行速度、ブレーキ操作、アクセス操作などの情報が含まれてよく、各種情報は車両100本体側から取得可能であってよい。また、走行速度は、車両100が備える既存の速度センサ(不図示)を介して取得してもよいし、別途、状態監視装置200に設けられたセンサ(不図示)を用いてタイヤなどの回転速度を測定し、その測定結果から算出してもよい。なお、ここでは、装置100の動作情報として、走行状態に関する情報を例に挙げたが、これに限定するものではない。例えば、装置100が備える機能に応じて、動作情報には他の情報が含まれてよい。
【0064】
[処理フロー]
図8は、本実施形態に係る状態監視処理のフローチャートである。本処理は、状態監視装置200により実行され、例えば、状態監視装置200が備えるCPU201が本処理を実現するためのプログラムを記憶装置202から読み出して実行することにより実現されてよい。本処理は、ユーザの指示に基づいて開始されてもよいし、所定のタイミングにて開始されてもよい。
【0065】
S801にて、状態監視装置200は、車両100の走行速度を取得する。上述したように、車両100の走行速度は車両100本体側から取得してもよいし、状態監視装置200が備える別のセンサ(不図示)の検出結果から導出してもよい。また、ブレーキの動作状態から走行速度の変化を特定してもよい。
【0066】
S802にて、状態監視装置200は、S801にて取得した走行速度が所定の閾値を下回ったか否かを判定する。所定の閾値は予め規定され、記憶装置202に記憶されているものとする。なお、所定の閾値は、車両100の停止までに要する時間と、準備動作に要する時間との関係に基づいて規定されてよい。所定の閾値を下回った場合(S802にてYES)、状態監視装置200の処理はS803へ進む。一方、所定の閾値を下回っていない場合(S802にてNO)、状態監視装置200の処理はS801へ戻り、処理を繰り返す。
【0067】
S803にて、状態監視装置200は、測定動作の準備として準備動作を行う。ここでの準備動作は第1の実施形態にて述べたクリーニング動作であってもよいし、そのほかの動作を含んでもよい。
【0068】
S804にて、状態監視装置200は、車両100が停止したか否かを判定する。ここでの停止状態は、例えば走行速度を取得して判定してもよいし、ブレーキの状態などに応じて判定してもよい。車両100が停止した場合(S804にてYES)、状態監視装置200の処理はS807へ進む。一方、車両100が停止していない場合(S804にてNO)、状態監視装置200の処理はS805へ進む。
【0069】
S805にて、状態監視装置200は、走行速度が上昇したか否かを判定する。ここでは、走行速度を再度取得して判定してもよいし、アクセルの状態などに応じて判定してもよい。
【0070】
S806にて、状態監視装置200は、S803にて開始した準備動作を停止する。その後、状態監視装置200の処理はS801へ戻り、処理を繰り返す。
【0071】
S807にて、状態監視装置200は、監視対象周辺の気体の吸引を行う。例えば、第1の実施形態にて述べた経路制御やポンプ制御などを行って吸引動作を行う。
【0072】
S808にて、状態監視装置200は、吸引した気体に対し、センサ部304により測定を行う。このとき、S807による一定の吸引量や吸引時間が行われた後に測定が行われてよい。そして、状態監視装置200は、測定結果を、監視対象周辺の気体に対する検出結果として記憶装置202に記憶させる。
【0073】
S809にて、状態監視装置200は、測定動作が終了したか否かを判定する。例えば、複数回の測定結果に基づいて異常診断を行う場合には、所定回数の測定が行われたか否かを判定してもよい。測定動作が終了したと判定した場合(S809にてYES)、状態監視装置200の処理はS810へ進む。一方、測定動作が終了していないと判定した場合(S809にてNO)、S801へ戻り、状態監視装置200は処理を繰り返す。
【0074】
S810にて、状態監視装置200は、測定結果に基づいて異常診断を行う。ここでの異常診断の方法は、第1の実施形態と同様であってもよいし、別の方法であってもよい。
【0075】
S811にて、状態監視装置200は、S810の異常診断結果を報知する。ここでの報知方法は特に限定するものではないが、例えば、画面にて視覚的に報知してもよいし、音声にて聴覚的に報知してもよい。例えば、運転者に対して、異常発熱に起因するガスの発生を通知し、走行の中止や低速化を促すような報知を行ってもよい。そして、本処理フローを終了する。
【0076】
上述したように、本実施形態では、車両が停止状態であるか否かに応じてガスの測定タイミングを制御する。なお、停止状態は、一時停止であってもよいし、駐車などの状態であってもよい。
【0077】
以上、本実施形態により、監視対象を含む車両100の走行状態に応じてガスセンサによる監視、測定を行い、異常を診断することができる。また、走行時ではなく、停止時にガスの測定を行うため、走行に影響されずにガスの検出が可能となる。本実施形態に係る処理は、第1の実施形態にて示した図4(a)のような、車外の部位を監視対象とするような構成により適している。
【0078】
<第3の実施形態>
本願発明の第3の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と重複する箇所については、差分に着目し、重複する箇所については説明を省略する。本実施形態では、第2の実施形態と同様、監視対象の装置100を車両とし、車両の動作状況に基づいて、状態監視を行う例について説明する。
【0079】
本実施形態では、第2の実施形態と同様、状態監視装置200は、車両100の走行状態の監視を行う。走行状態としては、走行速度、ブレーキ操作、アクセス操作などの情報が含まれてよく、各種情報は車両100本体側から取得可能であってよい。また、走行速度は、車両100が備える速度センサ(不図示)を介して取得してもよいし、別途設けられたセンサ(不図示)を用いてタイヤなどの回転速度を測定し、その測定結果から算出してもよい。なお、ここでは、装置100の動作情報として、走行状態に関する情報を例に挙げたが、これに限定するものではない。例えば、装置100が備える機能に応じて、動作情報には他の情報が含まれてよい。
【0080】
[処理フロー]
図9は、本実施形態に係る状態監視処理のフローチャートである。本処理は、状態監視装置200により実行され、例えば、状態監視装置200が備えるCPU201が本処理を実現するためのプログラムを記憶装置202から読み出して実行することにより実現されてよい。本処理は、ユーザの指示に基づいて開始されてもよいし、所定のタイミングにて開始されてもよい。
【0081】
S901にて、状態監視装置200は、車両100の走行速度を取得する。上述したように、車両100の走行速度は車両100本体側から取得してもよいし、状態監視装置200が備える別のセンサ(不図示)の検出結果から導出してもよい。また、ブレーキの動作状態から走行状態の変化を特定してもよい。
【0082】
S902にて、状態監視装置200は、S801にて取得した走行速度に基づいて、車両100が停止したか否かを判定する。車両100が停止した場合(S902にてYES)、状態監視装置200の処理はS903へ進む。一方、車両100が停止していない場合(S902にてNO)、状態監視装置200の処理はS906へ進む。
【0083】
S903にて、状態監視装置200は、監視対象周辺の気体の吸引を行う。つまり、車両100が停止した状態における監視対象周辺の気体の吸引が行われる。例えば、第1の実施形態にて述べたポンプ制御などを行って吸引動作を行う。
【0084】
S904にて、状態監視装置200は、吸引した気体に対し、センサ部304により測定を行う。このとき、S903による一定の吸引量や吸引時間が行われた後に測定が行われてよい。
【0085】
S905にて、状態監視装置200は、S904の測定結果を基準値として記憶装置202に記憶させる。その後、状態監視装置200の処理は、S909へ進む。
【0086】
S906にて、状態監視装置200は、監視対象周辺の気体の吸引を行う。つまり、車両100が走行した状態における監視対象周辺の気体の吸引が行われる。例えば、第1の実施形態にて述べたポンプ制御などを行って吸引動作を行う。
【0087】
S907にて、状態監視装置200は、吸引した気体に対し、センサ部304により測定を行う。このとき、S906による一定の吸引量や吸引時間が行われた後に測定が行われてよい。
【0088】
S908にて、状態監視装置200は、S907の測定結果を測定値として記憶装置202に記憶させる。その後、状態監視装置200の処理は、S909へ進む。
【0089】
S909にて、状態監視装置200は、基準値と測定値の両方の測定結果を取得して記憶したか否かを判定する。すなわち、S903~S905の測定処理と、S906~S908の測定処理の両方が行われたか否かを判定する。両方の測定が行われている場合(S909にてYES)、状態監視装置200の処理はS910へ進む。一方、少なくともいずれかの測定が行われていない場合(S909にてNO)、状態監視装置200の処理はS901へ戻り、処理を繰り返す。
【0090】
S910にて、状態監視装置200は、測定動作が終了したか否かを判定する。例えば、複数回の測定結果に基づいて異常診断を行う場合には、所定回数の測定が行われたか否かを判定してもよい。測定動作が終了したと判定した場合(S910にてYES)、状態監視装置200の処理はS911へ進む。一方、測定動作が終了していないと判定した場合(S910にてNO)、S901へ戻り、状態監視装置200は処理を繰り返す。
【0091】
S911にて、状態監視装置200は、基準値と測定値に基づいて異常診断を行う。ここでの異常診断の方法は、基準値と測定値の差分に基づいて行われてもよいし、基準値や測定値の変化状況に基づいて行われてもよい。
【0092】
S912にて、状態監視装置200は、S911の異常診断結果を報知する。ここでの報知方法は特に限定するものではないが、例えば、画面にて視覚的に報知してもよいし、音声にて聴覚的に報知してもよい。例えば、運転者に対して、異常発熱に起因するガスの発生を通知し、走行の中止や低速化を促すような報知を行ってもよい。そして、本処理フローを終了する。
【0093】
以上、本実施形態では、監視対象を含む車両100の走行時と停止時のそれぞれにてガスセンサによる監視、測定を行い、異常を診断する。このような構成により、車両の走行状態の変化に応じて発生するガスに基づいて異常を診断することが可能となる。本実施形態に係る処理は、第1の実施形態にて示した図4(b)のような、車内の部位を監視対象とするような構成により適している。
【0094】
<その他の実施形態>
また、本願発明において、上述した1以上の実施形態の機能を実現するためのプログラムやアプリケーションを、ネットワーク又は記憶媒体等を用いてシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0095】
また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array))によって実現してもよい。
【0096】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0097】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 1または複数の部品から構成される装置の状態監視装置であって、
温度変化に伴って前記1または複数の部品から生じるガスを測定する測定手段と、
前記測定手段にて測定したガスに応じて、前記装置の異常状態を診断する診断手段と、

有することを特徴とする状態監視装置。
この構成によれば、状態監視のための構成の自由度を向上させつつ、発熱に伴う装置の損傷の発生を抑制することが可能となる。
【0098】
(2) 前記診断手段は、前記測定手段の測定結果に基づいて、前記1または複数の部品の中からガスが発生している部品を特定することを特徴とする(1)に記載の状態監視装置。
この構成によれば、ガスの測定結果に応じて、1または複数の部位の中から、異常発熱が生じている部位を特定することが可能となる。
【0099】
(3) 前記装置の動作情報を取得する取得手段を更に有し、
前記測定手段は、前記装置の動作情報に応じて、測定タイミングを制御することを特徴とする(1)または(2)に記載の状態監視装置。
この構成によれば、装置の動作状況に応じて、ガスの測定タイミングを切り替えることができる。
【0100】
(4) 前記測定手段は、気体の流路を切り替え可能に構成され、
前記気体の流路は、前記装置の動作情報に応じて切り替えられる
ことを特徴とする(3)に記載の状態監視装置。
この構成によれば、装置の動作状況に応じて、気体の流路を切り替え、適切にガスの測定を行うことが可能となる。
【0101】
(5) 前記装置は、車両であり、
前記動作情報は、前記車両の走行状態の情報であることを特徴とする(3)または(4)に記載の状態監視装置。
この構成によれば、車両の走行状態に応じて、ガスの測定動作を切り替えることが可能となる。
【0102】
(6) 前記測定手段は、クリーニング動作と測定動作を切り替え可能に構成されることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の状態監視装置。
この構成によれば、クリーニング動作と測定動作を切り替えることで、より精度よく測定を行うことが可能となる。
【0103】
(7) 前記1または複数の部品は、転がり軸受、タイヤ、ブレーキ、エンジン、トランスミッション、モーター、およびバッテリーのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の状態監視装置。
この構成によれば、車両を構成する各部品を監視対象として適用することが可能である。
【0104】
(8) 前記測定手段は、半導体式のガスセンサを含んで構成されることを特徴とする(1)~(7)のいずれかに記載の状態監視装置。
この構成によれば、半導体式のガスセンサを用いて、ガスの検出が可能となる。
【0105】
(9) 前記測定手段は、前記装置が備えるハブ軸受に設置されていることを特徴とする(1)~(8)のいずれかに記載の状態監視装置。
この構成によれば、ハブ軸受に測定手段を備えた構成により、ガスの検出が可能となる。
【0106】
(10) 1または複数の部品から構成される装置の状態監視方法であって、
ガスセンサを用いて、温度変化に伴って前記1または複数の部品から生じるガスを測定する測定工程と、
前記測定工程にて測定したガスに応じて、前記装置の異常状態を診断する診断工程と、

有することを特徴とする状態監視方法。
この構成によれば、状態監視のための構成の自由度を向上させつつ、発熱に伴う装置の損傷の発生を抑制することが可能となる。
【0107】
(11) コンピュータに、
ガスセンサを用いて、温度変化に伴って装置を構成する1または複数の部品から生じるガスを測定する測定工程と、
前記測定工程にて測定したガスに応じて、前記装置の異常状態を診断する診断工程と、
を実行させるためのプログラム。
この構成によれば、状態監視のための構成の自由度を向上させつつ、発熱に伴う装置の損傷の発生を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0108】
100…装置(車両)
101…部位
102…ガス
103…ガスセンサ
200…状態監視装置
201…CPU(Central Processing Unit)
202…記憶装置
203…センサIF(インタフェース)
204…入力装置
205…出力装置
206…通信装置
211…信号取得部
212…信号分析部
213…異常診断部
214…情報記憶部
215…報知処理部
216…通信処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9