(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】信号推定装置、信号推定方法、及び、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04J 99/00 20090101AFI20250128BHJP
H04B 7/0413 20170101ALI20250128BHJP
【FI】
H04J99/00
H04B7/0413 200
(21)【出願番号】P 2020169209
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】神谷 典史
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/059408(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/059407(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0034556(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0351605(US,A1)
【文献】菅沼 碩文ほか,OAM多重伝送における偶数モードを用いたモード間干渉抑圧法に関する検討,電子情報通信学会技術研究報告,2019年,第119巻,第296号,pp.61~66
【文献】笹木 裕文ほか,超高速無線伝送実現に向けたOAM-MIMO多重伝送技術の研究開発と実験評価,電子情報通信学会技術研究報告,2019年,第118巻,第475号,pp.111~116
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 99/00
H04B 7/02 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナ素子を含む送信アンテナを用いて、送信信号を送信する送信装置と、
複数の受信アンテナ素子を含む受信アンテナを用いて、前記送信装置が送信した前記送信信号を受信信号として受信する受信装置と
を備える通信システムにおいて、前記受信信号から前記送信信号を推定する信号推定装置であって、
前記信号推定装置は、
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナに関するアンテナ情報と、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の伝送距離に関する距離情報と、前記通信システムが用いる搬送波に関する搬送波情報と、前記送信装置で行われる信号処理及び前記受信装置で行われる受信処理に関する処理情報とを含むシステム情報に基づいて、前記受信信号に含まれ且つ前記複数の受信アンテナ素子が夫々受信した複数の受信信号成分及び前記送信信号に含まれ且つ前記複数の送信アンテナ素子が夫々送信した複数の送信信号成分を、前記受信信号成分と前記送信信号成分との間の相関の強弱に応じた複数の信号グループに分類し、前記信号グループ毎に、信号推定方法の内容を規定するパラメータを、学習動作で学習可能な学習値及び前記学習動作に無関係な固定値のいずれかに設定するパラメータ設定手段と、
前記パラメータ設定手段が設定した前記パラメータによって規定される前記信号推定方法を用いて、前記信号グループ毎に、前記受信信号から前記送信信号の推定値である推定信号を推定する信号推定手段と
を備える信号推定装置。
【請求項2】
前記パラメータ設定手段は、
前記システム情報に基づいて、前記送信装置と前記受信装置との間の伝送路の状態を示す伝送路行列を推定し、
前記伝送路行列の各成分の絶対値の大きさを、各成分に対応する一の送信信号成分と一の受信信号成分との間の相関の強さとして用いることで、前記複数の受信信号成分及び前記複数の送信信号成分を、前記複数の信号グループに分類し、
前記伝送路行列と前記複数の信号グループの分類結果とに基づいて、(i)各送信信号成分を、前記複数の受信信号成分から推定する場合に伝送可能な情報量を示す第1通信容量、(ii)各送信信号成分を、各送信信号成分と相関が相対的に強い受信信号成分から推定する場合に伝送可能な情報量の理論値を示す第2通信容量、及び、(iii)前記信号推定手段が用いる前記信号推定方法とは異なる他の信号推定方法を用いて、各送信信号成分を、各送信信号成分と相関が相対的に強い受信信号成分から推定する場合に伝送可能な情報量を示す第3通信容量を算出し、
前記第1から第3通信容量の大小関係に基づいて、前記パラメータを、前記学習値及び前記固定値のいずれかに設定する
請求項1に記載の信号推定装置。
【請求項3】
前記パラメータ設定手段は、複数の前記パラメータの夫々を、前記学習値及び前記固定値のいずれかに設定し、
前記パラメータ設定手段は、前記第1通信容量と前記第2通信容量とが等しい場合に、前記複数のパラメータのうちの第1のパラメータを前記固定値に設定し、前記第1通信容量と前記第2通信容量とが等しくない場合に、前記第1のパラメータを前記学習値に設定し、
前記パラメータ設定手段は、前記第2通信容量と前記第3通信容量とが等しい場合に、前記複数のパラメータのうちの前記第1のパラメータとは異なる第2のパラメータを前記固定値に設定し、前記第1通信容量と前記第2通信容量とが等しくない場合に、前記第2のパラメータを前記学習値に設定する
請求項2に記載の信号推定装置。
【請求項4】
前記複数の信号グループのうちの第k(kは、1以上且つN以下の整数を示す変数であり、Nは、前記信号グループの数を示す2以上の定数)番目の信号グループに分類される前記受信信号成分y
(k)から、前記第k番目の信号グループに分類される前記送信信号成分x
(k)の前記推定信号xe
(k)を推定するために、前記信号推定手段は、
前記推定信号xe
(k)を推定するために用いられる内部データv
r
(k)及びz
r
(k)と前記推定信号xe
(k)とを初期化するための第1動作を行い、
前記第1動作を行った後、前記パラメータ設定手段が設定した前記パラメータに基づいて定まる前記信号推定方法を用いて、前記受信信号成分y
(k)と、前記送信装置と前記受信装置との間の伝送路の状態を示す伝送路行列Hの一部であって且つ前記受信信号成分y
(k)に対応する成分を含む一方で前記送信信号成分x
(k)に対応する成分を含まない部分行列H
(k、p)(pは、1以上且つN以下であって且つ変数kとは異なる整数を示す変数)と、前記推定信号xe
(1)からxe
(k-1)及びxe
(k+1)からxe
(N)
とに基づいて、前記受信信号成分y
(k)の補正値である補正信号ya
(k)を生成する第2動作を行い、
前記第2動作を行った後、前記パラメータ設定手段が設定した前記パラメータに基づいて定まる前記信号推定方法を用いて、前記補正信号ya
(k)と、前記伝送路行列Hの一部であって且つ前記受信信号成分y
(k)及び前記送信信号成分x
(k)に対応する成分を含む部分行列H
(k、k)と、前記内部データv
r
(k)及びz
r
(k)とに基づいて、前記推定信号xe
(k)を更新することで、前記推定信号xe
(k)を推定し直す第3動作を行い、
前記第2及び第3動作をR(Rは、2以上の整数を示す定数)回繰り返した後、前記送信信号成分x
(k)がとり得る複数の信号成分候補のうち、前記推定信号xe
(k)に最も近い一の信号成分候補を出力し、
前記信号推定手段は、前記第2動作をr
+1(rは、1以上且つR
未満の整数を示す変数)回目に行う場合には、r回目に行われた前記第3動作によって推定された前記推定信号xe
(1)からxe
(k-1)及びxe
(k+1)からxe
(N)
に基づいて、前記補正信号ya
(k)を生成し、
内部データv
r
(k)及びz
r
(k)は、推定信号x
e
(k)を推定するための値が格納され、前記推定信号x
e
(k)の推定に用いられ、内部データz
r+1
(k)は、前記推定信号x
e
(k)及び前記内部データv
r
(k)を用いて生成され、内部データv
r+1
(k)は、前記推定信号x
e
(k)及び前記内部データz
r+1
(k)を用いて生成され、
前記部分行列H
(k、p)
及び前記部分行列H
(k、k)の1番目の変数は、前記受信信号成分y
(k)が分類された信号グループのインデックスであり、2番目の変数は、前記送信信号成分x
(k)が分類された信号グループのインデックスであり、前記部分行列H
(k、p)は、前記受信信号成分y
(k)が分類された信号グループのインデックスと前記送信信号成分x
(k)が分類された信号グループのインデックスとが異なる場合を表し、前記部分行列H
(k、k)は、前記受信信号成分y
(k)が分類された信号グループのインデックスと前記送信信号成分x
(k)が分類された信号グループのインデックスとが同じ場合を表す
請求項1から3のいずれか一項に記載の信号推定装置。
【請求項5】
前記複数の信号グループのうちの第k(kは、1以上且つN以下の整数を示す変数であり、Nは、前記信号グループの数を示す2以上の定数)番目の信号グループに分類される前記受信信号成分y
(k)から、前記第k番目の信号グループに分類される前記送信信号成分x
(k)の前記推定信号xe
(k)を推定するために、前記信号推定手段は、
前記推定信号xe
(1)からxe
(N)を夫々推定するために用いられる内部データv
r
(1)からv
r
(N)及びz
r
(1)からz
r
(N)と前記推定信号xe
(1)からxe
(N)を初期化するための第1動作を行い、
前記第1動作を行った後、前記パラメータ設定手段が設定した前記パラメータに基づいて定まる前記信号推定方法を用いて、前記受信信号成分y
(k)と、前記送信装置と前記受信装置との間の伝送路の状態を示す伝送路行列Hの一部であって且つ前記受信信号成分y
(k)に対応する成分を含む一方で前記送信信号成分x
(k)に対応する成分を含まない部分行列H
(k、p)(pは、1以上且つN以下であって且つ変数kとは異なる整数を示す変数)と、前記推定信号xe
(1)からxe
(k-1)及びxe
(k+1)からxe
(N)
とに基づいて、前記受信信号成分y
(k)の補正値である補正信号ya
(k)を生成し、且つ、前記パラメータ設定手段が設定した前記パラメータに基づいて定まる前記信号推定方法を用いて、前記補正信号ya
(k)と、前記伝送路行列Hの一部であって且つ前記受信信号成分y
(k)及び前記送信信号成分x
(k)に対応する成分を含む部分行列H
(k、k)と、前記内部データv
r
(k)及びz
r
(k)とに基づいて、前記推定信号xe
(k)を更新することで、前記推定信号xe
(k)を推定し直す所定処理を、前記変数kを1からNまで更新しながらN回繰り返す第2動作を行い、
前記第2動作をR(Rは、2以上の整数を示す定数)回数繰り返した後、前記送信信号成分x
(k)がとり得る複数の信号成分候補のうち、前記推定信号xe
(k)に最も近い一の信号成分候補を出力し、
前記信号推定手段は、r
+1(rは、1以上且つR
未満の整数を示す変数)回目の前記第2動作においてk回目の前記所定処理を行う場合には、r回目の前記第2動作におけるk+1回目からN回目の前記所定処理によって推定された前記推定信号xe
(k+1)からxe
(N)及びr+1回目の前記第2動作における1回目からk-1回目の前記所定処理によって推定された前記推定信号xe
(1)からxe
(k-1)に基づいて、前記補正信号ya
(k)を算出し、
内部データv
r
(k)及びz
r
(k)は、推定信号x
e
(k)を推定するための値が格納され、前記推定信号x
e
(k)の推定に用いられ、内部データz
r+1
(k)は、前記推定信号x
e
(k)及び前記内部データv
r
(k)を用いて生成され、内部データv
r+1
(k)は、前記推定信号x
e
(k)及び前記内部データz
r+1
(k)を用いて生成され、
前記部分行列H
(k、p)
及び前記部分行列H
(k、k)の1番目の変数は、前記受信信号成分y
(k)が分類された信号グループのインデックスであり、2番目の変数は、前記送信信号成分x
(k)が分類された信号グループのインデックスであり、前記部分行列H
(k、p)は、前記受信信号成分y
(k)が分類された信号グループのインデックスと前記送信信号成分x
(k)が分類された信号グループのインデックスとが異なる場合を表し、前記部分行列H
(k、k)は、前記受信信号成分y
(k)が分類された信号グループのインデックスと前記送信信号成分x
(k)が分類された信号グループのインデックスとが同じ場合を表す
請求項1から3のいずれか一項に記載の信号推定装置。
【請求項6】
前記送信アンテナは、円形に等間隔に配置されたN(但し、Nは2以上の整数を示す定数)個の前記送信アンテナ素子を含む送信アレーアンテナが同心円状にM(但し、Mは1以上の整数)個配列されているアンテナであり、
前記受信アンテナは、円形に等間隔に配置されたN個の前記受信アンテナ素子を含む受信アレーアンテナが同心円状にM個配列されているアンテナである
請求項1から3のいずれか一項に記載の信号推定装置。
【請求項7】
前記送信アンテナは、円形に等間隔に配置された前記N個の前記送信アンテナ素子を含む送信アレーアンテナが同心円状にM(但し、Mは1以上の整数)個配列されているアンテナであり、
前記受信アンテナは、円形に等間隔に配置されたN個の前記受信アンテナ素子を含む受信アレーアンテナが同心円状にM個配列されているアンテナである
請求項4又は5に記載の信号推定装置。
【請求項8】
前記送信アンテナは、円形に等間隔に配置されたN(但し、Nは2以上の整数を示す定数)個の前記送信アンテナ素子を含む送信アレーアンテナが直線状にM(但し、Mは1以上の整数)個配列されているアンテナであり、
前記受信アンテナは、円形に等間隔に配置されたN個の前記受信アンテナ素子を含む受信アレーアンテナが直線状にM個配列されているアンテナである
請求項1から3のいずれか一項に記載の信号推定装置。
【請求項9】
前記送信アンテナは、円形に等間隔に配置された前記N個の前記送信アンテナ素子を含む送信アレーアンテナが直線状にM(但し、Mは1以上の整数)個配列されているアンテナであり、
前記受信アンテナは、円形に等間隔に配置されたN個の前記受信アンテナ素子を含む受信アレーアンテナが直線状にM個配列されているアンテナである
請求項4又は5に記載の信号推定装置。
【請求項10】
前記受信装置は、前記受信処理として、前記複数の受信信号成分を、所定個数の前記受信信号成分の単位で離散フーリエ変換処理を施す変換手段を更に備え、
前記信号推定手段は、前記離散フーリエ変換処理が施された前記受信信号から前記推定信号を推定する
請求項1から9のいずれか一項に記載の信号推定装置。
【請求項11】
前記学習動作は、前記送信信号のサンプル値と前記受信信号のサンプル値とを含む学習データに基づいて、前記受信信号のサンプル値と前記信号推定方法とに基づいて推定される前記推定信号と前記送信信号のサンプル値との誤差に関する損失関数が最小になるように前記パラメータを更新する動作を含む
請求項1から10のいずれか一項に記載の信号推定装置。
【請求項12】
複数の送信アンテナ素子を含む送信アンテナを用いて、送信信号を送信する送信装置と、
複数の受信アンテナ素子を含む受信アンテナを用いて、前記送信装置が送信した前記送信信号を受信信号として受信する受信装置と
を備える通信システムにおいて、前記受信信号から前記送信信号を推定する信号推定方法であって、
前記信号推定方法は、
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナに関するアンテナ情報と、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の伝送距離に関する距離情報と、前記通信システムが用いる搬送波に関する搬送波情報と、前記送信装置で行われる信号処理及び前記受信装置で行われる受信処理に関する処理情報とを含むシステム情報に基づいて、前記受信信号に含まれ且つ前記複数の受信アンテナ素子が夫々受信した複数の受信信号成分及び前記送信信号に含まれ且つ前記複数の送信アンテナ素子が夫々送信した複数の送信信号成分を、前記受信信号成分と前記送信信号成分との間の相関の強弱に応じた複数の信号グループに分類し、
前記信号グループ毎に、信号推定方法の内容を規定するパラメータを、学習動作で学習可能な学習値及び前記学習動作に無関係な固定値のいずれかに設定し、
前記設定されたパラメータによって規定される前記信号推定方法を用いて、前記信号グループ毎に、前記受信信号から前記送信信号の推定値である推定信号を推定する
信号推定方法。
【請求項13】
コンピュータに信号推定方法を実行させるコンピュータプログラムであって、
前記信号推定方法は、
複数の送信アンテナ素子を含む送信アンテナを用いて、送信信号を送信する送信装置と、
複数の受信アンテナ素子を含む受信アンテナを用いて、前記送信装置が送信した前記送信信号を受信信号として受信する受信装置と
を備える通信システムにおいて、前記受信信号から前記送信信号を推定する信号推定方法であって、
前記信号推定方法は、
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナに関するアンテナ情報と、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の伝送距離に関する距離情報と、前記通信システムが用いる搬送波に関する搬送波情報と、前記送信装置で行われる信号処理及び前記受信装置で行われる受信処理に関する処理情報とを含むシステム情報に基づいて、前記受信信号に含まれ且つ前記複数の受信アンテナ素子が夫々受信した複数の受信信号成分及び前記送信信号に含まれ且つ前記複数の送信アンテナ素子が夫々送信した複数の送信信号成分を、前記受信信号成分と前記送信信号成分との間の相関の強弱に応じた複数の信号グループに分類し、
前記信号グループ毎に、信号推定方法の内容を規定するパラメータを、学習動作で学習可能な学習値及び前記学習動作に無関係な固定値のいずれかに設定し、
前記設定されたパラメータによって規定される前記信号推定方法を用いて、前記信号グループ毎に、前記受信信号から前記送信信号の推定値である推定信号を推定する
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置が送信した送信信号を、受信装置が受信した受信信号に基づいて推定する信号推定装置及び信号推定方法、並びに、上述した信号推定方法を実行するためのコンピュータプログラムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、OAM-MIMO(Orbital Angular Momentum-Multiple Input Multiple Output)伝送技術を用いて信号を送受信する通信システムの研究が進められている。OAM-MIMO伝送技術は、異なるOAMモードを有する複数の電波を用いて多重化した信号を、複数のアンテナ素子を有する送信装置から、複数のアンテナ素子を有する受信装置へと伝送する伝送技術である。このようなOAM-MIMO伝送技術を採用した通信システムの一例が、非特許文献1に記載されている。具体的には、非特許文献1には、複数のアンテナ素子を含む送信アンテナを備える送信装置と、複数のアンテナ素子を含む受信アンテナを備える受信装置との間で、異なるOAMモードを有する複数の電波を用いて多重化した信号を伝送する通信システムが記載されている。
【0003】
その他、本願発明に関連する先行技術文献として、特許文献1から特許文献2及び非特許文献2があげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6583292号
【文献】特許第5317021号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Hirofumi Sasaki et al.、“Experiment on Over-100-Gbps Wireless Transmission with OAM-MIMO Multiplexing System in 28-GHz Band”、2018 IEEE Global CommunicationsConference(GLOBECON)、2018年12月
【文献】Masashi Hirabe et al.、“40mTransmission of OAM mode and Polarization Multiplexing in E-band”、2019 IEEE Global CommunicationsConference(GLOBECON)、2019年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
OAM-MIMO伝送技術を採用した通信システムでは、送信装置が送信した送信信号を受信信号として受信した受信装置は、受信信号に基づいて送信信号を推定する。典型的には、受信装置は、送信装置と受信装置との間の伝送路の状態を示す伝送路行列(言い換えれば、チャネル行列)と、受信信号とに基づいて、送信信号を推定する。このように送信信号が推定される場合には、送信信号を精度よく推定することが望まれる。
【0007】
ここで、送信アンテナと受信アンテナとが理想的な配置態様で配置されている(つまり、複数のアンテナ素子が理想的な配置態様で配置されている)場合には、例えば、既存の信号推定方法によって、送信信号が精度よく推定可能である。尚、既存の信号推定方法の一例として、数式1に示すように、最小平均二乗誤差(MMSE:Minimum Mean Square Error)に基づく信号推定方法があげられる。しかしながら、現実的には、送信アンテナと受信アンテナとが常に理想的な配置態様で配置されるとは限らない。この場合、一般的な信号推定方法は、送信アンテナと受信アンテナとが理想的な配置態様で配置されていない状況を何ら考慮していないがゆえに、送信信号を精度よく推定することができるとは限らないという技術的問題を有する。
【0008】
尚、異なるOAMモードを有する複数の電波を用いて多重化した信号を、単一の送信アンテナを有する送信装置から単一の受信アンテナを有する受信装置へと信号を伝送する通信システムにおいても、送信信号を精度よく推定することが望まれることに変わりはない。
【0009】
本発明は、上述した技術的問題を解決可能な信号推定装置、信号推定方法及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。一例として、本発明は、受信信号に基づいて送信信号を精度よく推定可能な信号推定装置、信号推定方法及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
信号推定装置の一態様は、複数の送信アンテナ素子を含む送信アンテナを用いて、送信信号を送信する送信装置と、複数の受信アンテナ素子を含む受信アンテナを用いて、前記送信装置が送信した前記送信信号を受信信号として受信する受信装置とを備える通信システムにおいて、前記受信信号から前記送信信号を推定する信号推定装置であって、前記信号推定装置は、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナに関するアンテナ情報と、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の伝送距離に関する距離情報と、前記通信システムが用いる搬送波に関する搬送波情報と、前記送信装置で行われる信号処理及び前記受信装置で行われる受信処理に関する処理情報とを含むシステム情報に基づいて、前記受信信号に含まれ且つ前記複数の受信アンテナ素子が夫々受信した複数の受信信号成分及び前記送信信号に含まれ且つ前記複数の送信アンテナ素子が夫々送信した複数の送信信号成分を、前記受信信号成分と前記送信信号成分と相関の強弱に応じた複数の信号グループに分類し、前記信号グループ毎に、信号推定方法の内容を規定するパラメータを、学習動作で学習可能な学習値及び前記学習動作に無関係な固定値のいずれかに設定するパラメータ設定手段と、前記パラメータ設定手段が設定した前記パラメータによって規定される前記信号推定方法を用いて、前記信号グループ毎に、前記受信信号から前記送信信号の推定値である推定信号を推定する信号推定手段とを備える信号推定装置である。
【0011】
信号推定方法の一態様は、複数の送信アンテナ素子を含む送信アンテナを用いて、送信信号を送信する送信装置と、複数の受信アンテナ素子を含む受信アンテナを用いて、前記送信装置が送信した前記送信信号を受信信号として受信する受信装置とを備える通信システムにおいて、前記受信信号から前記送信信号を推定する信号推定方法であって、前記信号推定方法は、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナに関するアンテナ情報と、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の伝送距離に関する距離情報と、前記通信システムが用いる搬送波に関する搬送波情報と、前記送信装置で行われる信号処理及び前記受信装置で行われる受信処理に関する処理情報とを含むシステム情報に基づいて、前記受信信号に含まれ且つ前記複数の受信アンテナ素子が夫々受信した複数の受信信号成分及び前記送信信号に含まれ且つ前記複数の送信アンテナ素子が夫々送信した複数の送信信号成分を、前記受信信号成分と前記送信信号成分と相関の強弱に応じた複数の信号グループに分類し、前記信号グループ毎に、信号推定方法の内容を規定するパラメータを、学習動作で学習可能な学習値及び前記学習動作に無関係な固定値のいずれかに設定し、前記設定されたパラメータによって規定される前記信号推定方法を用いて、前記信号グループ毎に、前記受信信号から前記送信信号の推定値である推定信号を推定する信号推定方法である。
【0012】
コンピュータプログラムの一態様は、コンピュータに信号推定方法を実行させるコンピュータプログラムであって、前記信号推定方法は、複数の送信アンテナ素子を含む送信アンテナを用いて、送信信号を送信する送信装置と、複数の受信アンテナ素子を含む受信アンテナを用いて、前記送信装置が送信した前記送信信号を受信信号として受信する受信装置とを備える通信システムにおいて、前記受信信号から前記送信信号を推定する信号推定方法であって、前記信号推定方法は、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナに関するアンテナ情報と、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の伝送距離に関する距離情報と、前記通信システムが用いる搬送波に関する搬送波情報と、前記送信装置で行われる信号処理及び前記受信装置で行われる受信処理に関する処理情報とを含むシステム情報に基づいて、前記受信信号に含まれ且つ前記複数の受信アンテナ素子が夫々受信した複数の受信信号成分及び前記送信信号に含まれ且つ前記複数の送信アンテナ素子が夫々送信した複数の送信信号成分を、前記受信信号成分と前記送信信号成分と相関の強弱に応じた複数の信号グループに分類し、前記信号グループ毎に、信号推定方法の内容を規定するパラメータを、学習動作で学習可能な学習値及び前記学習動作に無関係な固定値のいずれかに設定し、前記設定されたパラメータによって規定される前記信号推定方法を用いて、前記信号グループ毎に、前記受信信号から前記送信信号の推定値である推定信号を推定するコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
上述した信号推定装置、信号推定方法及びコンピュータプログラムのそれぞれの態様によれば、受信信号に基づいて送信信号を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態の通信システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、送信装置が送信する送信信号を示すベクトルである。
【
図3】
図3は、受信装置が受信した受信信号を示すベクトルである。
【
図4】
図4は、送信信号と受信信号との関係を示す。
【
図5】
図5は、パラメータ設定ユニットの構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、パラメータ設定ユニットが行うパラメータ設定動作の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、伝送路行列の成分を並べ替える様子を示す。
【
図9】
図9は、信号推定ユニットが行う信号推定動作の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、信号推定ユニットが行う信号推定動作の変形例の流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、通信システムの変形例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、信号推定装置、信号推定方法、及び、コンピュータプログラムの実施形態が適用された通信システムSYSを用いて、信号推定装置、信号推定方法、及び、コンピュータプログラムの実施形態について説明する。但し、本発明が以下に説明する実施形態に限定されることはない。
【0016】
<1>通信システムSYSの構成
初めに、
図1を参照しながら、本実施形態の通信システムSYSの構成について説明する。
図1は、第1実施形態の通信システムSYSの構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、通信システムSYSは、送信装置1と、受信装置2とを備える。送信装置1は、伝送路3を介して送信信号xを受信装置2に送信する。受信装置2は、伝送路3を介して送信装置1が送信した送信信号xを、受信信号yとして受信する。伝送路3は、有線の伝送路(つまり、通信網)を含んでいてもよい。伝送路3は、無線の伝送路(つまり、通信網)を含んでいてもよい。
【0018】
送信装置1は、OAM(Orbital Angular Momentum)伝送技術を用いて送信信号xを送信する。OAM伝送技術は、異なるOAMモードを有する複数の電波を用いて多重化した信号を送信装置1から受信装置2へと伝送する技術である。OAM伝送技術を用いて送信信号xを送信するために、送信装置1は、送信アンテナ10と、信号処理装置11と、記憶装置12とを備えている。信号処理装置11と、記憶装置12とは、データバス13を介して接続されていてもよい。
【0019】
送信アンテナ10は、複数のアレーアンテナ100を含む。
図1は、複数のアレーアンテナ100が、互いに径が異なり且つ同心円状に配置された複数の円形アレーアンテナ(UCA:Uniform Circular Array)である例を示している。このため、
図1に示す例では、複数のアレーアンテナ100は、アレーアンテナ100#1から100#Mが、中心から外側に向かってこの順に並ぶように配置される。各アレーアンテナ100は、複数のアンテナ素子101を備える。以下の説明では、送信アンテナ10は、M(但し、Mは1以上の整数を示す定数)個のアレーアンテナ100(具体的には、アレーアンテナ100#1から100#M)を含むものとする。尚、送信アンテナ10が2個以上のアレーアンテナ100を含む(更に、後述する受信アンテナ20が2個以上のアレーアンテナ200を含む)場合には、OAM伝送技術は、OAM-MIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送技術と称されてもよい。
図1に示す例では、各アレーアンテナ100は、円形に且つ等間隔に配置されたN(但し、Nは2以上の整数を示す定数)個のアンテナ素子101(具体的には、アンテナ素子101#1からアンテナ素子101#N)を備えるものとする。尚、
図1では、アレーアンテナ100#j(jは、1以上且つM以下の整数を示す変数)が備えるアンテナ素子101#1から101#Nを、夫々、アンテナ素子101#1(#j)から101#N(#j)と表記している。
【0020】
各アレーアンテナ100が備えるN個のアンテナ素子101には、同一周波数帯域内において異なるOAMモードの電波が割り当てられる。つまり、本実施形態では、送信装置1は、N個のOAMモードを用いて送信信号xを多重化する。この場合、各アレーアンテナ100は、N個のアンテナ素子101を用いて、N個のOAMモードに夫々対応するN個の信号セットの単位で送信信号xを送信可能である。但し、各アレーアンテナ100が備える少なくとも二つのアンテナ素子101に、同一のOAMモードの電波が割り当てられてもよい。つまり、OAMモードの数は、各アレーアンテナ100が備えるアンテナ素子101の数よりも少なくてもよい。
【0021】
更に、送信アンテナ10がM個のアレーアンテナ100を備えているがゆえに、N個の送信信号セットには、M個の送信信号成分を含めることができる。このため、送信装置1は、最大でM×N個の送信信号成分が多重化された送信信号(つまり、送信信号系列)xを送信することができる。以下、アレーアンテナ100#jの第t(tは、1以上且つN以下の整数を示す変数)番目のアンテナ素子101#t(#j)が送信する送信信号成分を、「送信信号x[j、t]」と称する。この場合、送信信号xは、
図2に示すベクトルで表現可能である。尚、
図2中において、「送信信号x[j]」は、アレーアンテナ100#jが備えるN個のアンテナ素子101によって送信されるN個の送信信号x[j、1]から送信信号x[j、N]を含む。尚、本実施形態では、特段の説明がない場合には、「変数(例えば、この段落で言及する変数t等)」及びインデックスの夫々の初期値を1に設定している。
【0022】
信号処理装置11は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)及びFPGA(Field Programmable Gate Array)の少なくとも一つを含んでいてもよい。信号処理装置11は、コンピュータプログラムを読み込んでもよい。例えば、信号処理装置11は、記憶装置12が記憶しているコンピュータプログラムを読み込んでもよい。例えば、信号処理装置11は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。信号処理装置11は、不図示の通信装置を介して、送信装置1の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、ダウンロードしてもよい又は読み込んでもよい)。信号処理装置11は、読み込んだコンピュータプログラムを実行する。その結果、信号処理装置11内には、送信装置1が行うべき動作を実行するための論理的な機能ブロックが実現される。具体的には、信号処理装置11内には、送信信号xを送信する送信動作を実行するための論理的な機能ブロックが実現される。つまり、信号処理装置11は、送信装置1が行うべき動作を実行するための論理的な機能ブロックを実現するためのコントローラとして機能可能である。
【0023】
図1には、送信動作を実行するために信号処理装置11内に実現される論理的な機能ブロックの一例が示されている。
図1に示すように、信号処理装置11内には、M個の変換ユニット111(具体的には、変換ユニット111#1から変換ユニット111#M)が実現される。
【0024】
各変換ユニット111#jは、M個のアレーアンテナ100のうちの各変換ユニット111#jに対応する一のアレーアンテナ100#jが送信するN個の送信信号x[j、1]からx[j、N]に対して、前処理(信号処理)を施す。本実施形態では、各変換ユニット111#jは、N個の送信信号x[j、1]からx[j、N]に対して、逆離散フーリエ変換処理(IDFT:Inverse Discrete Fourier Transform)を施す。この場合、各変換ユニット111#jは、N行×N行のフーリエ変換行列FNを用いて逆離散フーリエ変換処理を行う、長さNの逆離散フーリエ変換器を含んでいてもよい。逆離散フーリエ変換処理は、N個の送信信号x[j、1]からx[j、N]をOAM多重化するための処理の少なくとも一部であってもよい。つまり、信号処理装置11は、M×N個の送信信号x[1、1]からx[M、N]を含む送信信号xを、夫々がN個の送信信号x[j、1]からx[j、N]を含むM個の信号系列x[j]に分割し、M個の信号系列x[j]の夫々に対して逆離散フーリエ変換処理を行うことで、送信信号xをOAM多重化してもよい。逆離散フーリエ変換処理が施されたN個の送信信号x[j、1]からx[j、N]は、対応するアレーアンテナ100#jによって、受信装置2に対して送信される。尚、以下の説明では、逆離散フーリエ変換処理が施されたN個の送信信号x[j、1]からx[j、N]を、「送信信号x’[j、1]からx’[j、N]」と表記することで、逆離散フーリエ変換処理が施される前のN個の送信信号x[j、1]からx[j、N]と区別する。
【0025】
記憶装置12は、所望のデータを記憶可能である。例えば、記憶装置12は、信号処理装置11が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶していてもよい。記憶装置12は、信号処理装置11がコンピュータプログラムを実行している際に信号処理装置11が一時的に使用するデータを一時的に記憶してもよい。記憶装置12は、送信装置1が長期的に保存するデータを記憶してもよい。尚、記憶装置12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0026】
続いて、受信装置2は、受信アンテナ20と、信号処理装置21と、記憶装置22とを備えている。信号処理装置21と、記憶装置22とは、データバス23を介して接続されていてもよい。
【0027】
受信アンテナ20は、OAM伝送技術を用いて送信された送信信号xを受信信号yとして受信するためのアンテナである。本実施形態では、受信アンテナ20は、複数のアレーアンテナ200を含む。
図1は、複数のアレーアンテナ200が、互いに径が異なり且つ同心円状に配置された複数の円形アレーアンテナ(UCA:Uniform Circular Array)である例を示している。このため、
図1に示す例では、複数のアレーアンテナ200は、アレーアンテナ200#1から200#Mが、中心から外側に向かってこの順に並ぶように配置される。以下の説明では、受信アンテナ20が、M個のアレーアンテナ200(具体的には、アレーアンテナ200#1から200#M)を含む例について説明する。つまり、以下の説明では、受信アンテナ20が備えるアレーアンテナ200の数が、送信アンテナ10が備えるアレーアンテナ100の数と同じになる例について説明する。但し、アレーアンテナ200の数は、送信アンテナ10が備えるアレーアンテナ100の数と異なっていてもよい。各アレーアンテナ200は、複数のアンテナ素子201を備える。
図1に示す例では、各アレーアンテナ200は、円形に且つ等間隔に配置されたN個のアンテナ素子201(具体的には、アンテナ素子201#1からアンテナ素子201#N)を備える。つまり、以下の説明では、アレーアンテナ200が備えるアンテナ素子201の数が、アレーアンテナ100が備えるアンテナ素子101の数と同じになる例について説明する。但し、アレーアンテナ200が備えるアンテナ素子201の数が、アレーアンテナ100が備えるアンテナ素子101の数と異なっていてもよい。尚、
図1では、アレーアンテナ200#i(iは、1以上且つM以下の整数を示す変数)が備えるアンテナ素子201#1から201#Nを、夫々、アンテナ素子201#1(#i)から201#N(#i)と表記している。
【0028】
上述したように、送信装置1は、最大でM×N個の送信信号成分が多重化された送信信号(つまり、送信信号系列)xを送信する。このため、受信装置2は、最大でM×N個の送信信号成分が多重化された送信信号xを、受信信号yとして受信する。この場合、受信信号yは、最大でM×N個の受信信号成分が多重化された信号となる。以下、アレーアンテナ200#iの第s(sは、1以上且つN以下の整数を示す変数)番目のアンテナ素子201#s(#i)が受信する受信信号成分を、「受信信号y[i、s]」と称する。例えば、アレーアンテナ200#iは、N個のアンテナ素子201#1(#i)から201#N(#i)を用いて、アレーアンテナ200#iに対応する一のアレーアンテナ100#iが送信したN個の送信信号x’[i、1]からx’[i、N]を、受信信号y[i、1]からy[i、N]として受信してもよい。典型的には、アレーアンテナ200#iが備えるアンテナ素子201#s(#i)は、アレーアンテナ100#iが備えるアンテナ素子101#s(#i)が送信した送信信号x’[i、s]を、受信信号y[i、s]として受信してもよい。このため、受信信号yは、
図3に示すベクトルで表現可能である。尚、
図3中において、「受信信号y[i]」は、アレーアンテナ200#iが備えるN個のアンテナ素子201によって受信されるN個の受信信号y[i、1]から受信信号y[i、N]を含む。
【0029】
信号処理装置21は、CPU、GPU及びFPGAの少なくとも一つを含んでいてもよい。信号処理装置21は、コンピュータプログラムを読み込む。例えば、信号処理装置21は、記憶装置22が記憶しているコンピュータプログラムを読み込んでもよい。例えば、信号処理装置21は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。信号処理装置21は、不図示の通信装置を介して、受信装置2の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、ダウンロードしてもよい又は読み込んでもよい)。信号処理装置21は、読み込んだコンピュータプログラムを実行する。その結果、信号処理装置21内には、受信装置2が行うべき動作を実行するための論理的な機能ブロックが実現される。具体的には、信号処理装置21内には、受信信号yを受信する受信動作を実行するための論理的な機能ブロックが実現される。つまり、信号処理装置21は、受信装置2が行うべき動作を実行するための論理的な機能ブロックを実現するためのコントローラとして機能可能である。
【0030】
図1には、受信動作を実行するために信号処理装置21内に実現される論理的な機能ブロックの一例が示されている。
図1に示すように、信号処理装置21内には、M個の変換ユニット211(具体的には、変換ユニット211#1から変換ユニット211#M)と、信号推定ユニット212と、パラメータ設定ユニット213とが実現される。
【0031】
各変換ユニット211#iは、M個のアレーアンテナ200のうちの各変換ユニット211#iに対応する一のアレーアンテナ200#iが受信したN個の受信信号y[i、1]からy[i、N]に対して、前処理(信号処理)を施す。本実施形態では、各変換ユニット211#iは、N個の受信信号y[i、1]からy[i、N]に対して、離散フーリエ変換処理(DFT:Discrete Fourier Transform)を施す。この場合、各変換ユニット211#iは、N行×N行のフーリエ変換行列FNを用いて離散フーリエ変換処理を行う、長さNの離散フーリエ変換器を含んでいてもよい。離散フーリエ変換処理は、OAM多重化されたN個の受信信号y[i、1]からy[i、N]を分離するための処理の少なくとも一部を構成していてもよい。つまり、信号処理装置21は、M×N個の受信信号y[1、1]からy[M、N]を含む受信信号yを、夫々がN個の受信信号y[i、1]から受信信号y[i、N]を含むM個の信号系列に分割し、M個の信号系列の夫々に対して離散フーリエ変換処理を行う。言い換えれば、信号処理装置21は、M×N個の受信信号y[1、1]からy[i、N]を含む受信信号yに対して、夫々がN個の受信信号y[i、1]からy[i、N]を含むM個の信号系列の単位で離散フーリエ変換処理を行う。フーリエ変換処理が施された受信信号y(つまり、フーリエ変換処理が施されたM×N個の受信信号y[1、1]から受信信号y[M、N]を含む受信信号y)は、信号推定ユニット212に出力される。尚、以下の説明では、特段の表記がない場合には、「受信信号y(受信信号y[i、s]及び受信信号y[i]を含む)は、フーリエ変換処理が施された受信信号を意味するものとする。
【0032】
信号推定ユニット212は、M個の変換ユニット211から出力されるM×N個の受信信号y[1、1]から受信信号y[M、N]を含む受信信号yに基づいて、送信信号xを推定する。具体的には、信号推定ユニット212は、受信信号yに基づいて、送信信号xが含むM×N個の送信信号x[1、1]から送信信号x[M、N]の推定値であるM×N個の推定信号x_estimate[1、1]から推定信号x_estimate[M、N]を推定する。つまり、信号推定ユニット212は、受信信号yに基づいて、M×N個の推定信号x_estimate[1、1]から推定信号x_estimate[M、N]を含む推定信号x_estimateを推定する。信号推定ユニット212は、受信信号yに基づいて、送信信号xに含まれる送信信号x[j]の推定値である推定信号x_estimate[j]を含む推定信号x_estimateを推定する。信号推定ユニット212は、受信信号yに基づいて、送信信号x[j]に含まれるN個の送信信号x[j、1]からx[j、N]の推定値であるN個の推定信号x_estimate[j、1]からx_estimate[j、N]を含む推定信号x_estimateを推定する。尚、以下では、説明の簡略化のために、「推定信号x_estimate」を、「推定信号xe」と表記する。
【0033】
ここで、送信信号xと受信信号yとの関係は、
図4に示す関係となる。
図4に示すように、受信信号yは、理論上(言い換えれば、理想的には)、送信信号xと伝送路行列Hとの乗算値に対して雑音nを加算することで得られる信号に一致する。伝送路行列Hは、送信アンテナ10と受信アンテナ20との間の伝送路3の状態(典型的には、伝送状態)を示すチャネル行列である。伝送路行列Hは、N行×N行の部分行列H[i、j]を(i、j)成分として有するMN行×MN列のブロック行列である。部分行列H[i、j]は、送信アンテナ10のアレーアンテナ100#jと受信アンテナ20のアレーアンテナ200#iとの伝送路3の状態を示す。また、
図4中の「n[j]」は、伝送路3においてアレーアンテナ200#jが受信する信号に生ずる雑音(例えば、白色雑音)を成分とするベクトルを示している。
【0034】
受信信号yに基づいて送信信号xを推定するための信号推定方法の他の一例として、最小平均二乗誤差(MMSE:Minimum Mean Square Error)に基づく信号推定方法があげられる。最小平均二乗誤差に基づく信号推定方法は、数式1を用いて、送信信号xを推定する信号推定方法である。尚、数式1中の「H†」は、伝送路行列Hの共役転置行列を示している。数式1中の「σ[i]」は、受信信号y[i]に含まれるN個の受信信号y[i、1]からy[i、N]における信号対雑音電力比(SNR:Signal to Noise Ratio)を夫々表すN個のパラメータ「σ[i、1]、σ[i、2]・・・、σ[i、N]」を含むベクトルを示している。数式1中の「D(σ[1]、σ[2]・・・、σ[N])」は、M×N個の信号対雑音電力比を表すパラメータ「σ[1]、σ[2]・・・、σ[N]」を対角成分とするMN行×MN列の対角行列を示している。
【0035】
【0036】
ここで、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが理想的な配置態様で配置され、且つ、複数のアンテナ素子101及び複数のアンテナ素子201が理想的な配置態様で配置されている場合には、最小平均二乗誤差に基づく信号推定方法によって、受信信号yから送信信号xが精度よく推定可能である。尚、理想的な配置態様の一例として、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが軸対称となるように(つまり、同軸となるように)配置される配置態様があげられる。
【0037】
しかしながら、現実的には、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが常に理想的な配置態様で配置されるとは限らない。例えば、風雨に起因して送信アンテナ10と受信アンテナ20との少なくとも一部の配置位置がずれることで、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが常に軸対称とならない可能性がある。この場合、一般的な信号推定方法は、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが常に理想的な配置態様で配置されていない状況を考慮していないがゆえに、送信信号xを精度よく推定することができるとは限らない。
【0038】
そこで、本実施形態では、信号推定ユニット212は、送信信号xを推定するために、以下に提案する新たな信号推定方法を採用する。具体的には、信号推定ユニット212は、パラメータ設定ユニット213が設定したパラメータによって内容が規定される(言い換えれば、内容が変更可能な)信号推定方法を用いて、送信信号xを推定する。特に、以下の説明では、信号推定ユニット212は、パラメータ設定ユニット213が設定したパラメータを係数として含む演算式(つまり、数式)によって内容が規定される信号推定方法を用いて、送信信号xを推定する。パラメータ設定ユニット213が設定するパラメータは、後に詳述するように、必要に応じて、学習動作によって学習される。その結果、信号推定ユニット212は、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが常に理想的な配置態様で配置されていない場合においても、最小平均二乗誤差に基づく信号推定方法と比較して、送信信号xを精度よく推定することができる。
【0039】
パラメータ設定ユニット213は、信号推定ユニット212が推定信号xeを推定するために用いる信号推定方法の内容(本実施形態では、演算式の内容)を規定するパラメータを設定する。本実施形態では、パラメータ設定ユニット213が四種類のパラメータを設定する例について説明する。つまり、本実施形態では、信号推定ユニット212が推定信号xeを推定するために用いる信号推定方法の内容が、四種類のパラメータによって規定される例について説明する。言い換えれば、本実施形態では、信号推定ユニット212が推定信号xeを推定するために用いる信号推定方法の内容が、四種類のパラメータによって変更可能である例について説明する。具体的には、パラメータ設定ユニット213は、四種類のパラメータとして、パラメータβ、パラメータρ、パラメータτ及びパラメータηを設定する。パラメータβは、N×R(Rは、1以上の整数を示す定数)個のパラメータβ1
(1)からβR
(N)を含む。尚、以下の説明では、N×R個のパラメータβ1
(1)からβR
(N)を、適宜、変数k及び変数rを用いて“パラメータβr
(k)”と表記する。各パラメータβr
(k)は、例えば、M次元のベクトル成分を含むベクトルである。変数kは、1以上且つN以下の整数を示す。変数rは、1以上且つR以下の整数を示す。また、パラメータρは、N×R個のパラメータρ1
(1)からρR
(N)を含む。尚、以下の説明では、N×R個のパラメータρ1
(1)からρR
(N)を、適宜、変数k及び変数rを用いて“パラメータρr
(k)”と表記する。各パラメータρr
(k)は、例えば、M次元のベクトル成分を含むベクトルである。また、パラメータτは、N×R個のパラメータτ1
(1)からτR
(N)を含む。尚、以下の説明では、N×R個のパラメータτ1
(1)からτR
(N)を、適宜、変数k及び変数rを用いて“パラメータτr
(k)”と表記する。各パラメータτr
(k)は、例えば、M次元のベクトル成分を含むベクトルである。また、パラメータηは、N×R個のパラメータη1
(1)からηR
(N)を含む。尚、以下の説明では、N×R個のパラメータη1
(1)からηR
(N)を、適宜、変数k及び変数rを用いて“パラメータηr
(k)”と表記する。各パラメータηr
(k)は、例えば、M次元のベクトル成分を含むベクトルである。
【0040】
このようなパラメータ設定ユニット213の構成が
図5に示されている。
図5に示すように、パラメータ設定ユニット213は、伝送路モデル生成部2131と、信号分類部2132と、通信容量算出部2133と、パラメータ設定部2134とを備える。尚、パラメータ設定ユニット213は、伝送路モデル生成部2131と、信号分類部2132と、通信容量算出部2133と、パラメータ設定部2134との動作については、後に詳述するため、ここでの説明を省略する。
【0041】
記憶装置22は、所望のデータを記憶可能である。例えば、記憶装置22は、信号処理装置21が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶していてもよい。記憶装置22は、信号処理装置21がコンピュータプログラムを実行している際に信号処理装置21が一時的に使用するデータを一時的に記憶してもよい。記憶装置22は、受信装置2が長期的に保存するデータを記憶してもよい。尚、記憶装置22は、RAM、ROM、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0042】
<2>通信システムSYSの動作
続いて、通信システムSYSの動作について説明する。上述したように、通信システムSYSは、主として信号推定ユニット212を用いて、受信信号yから推定信号xeを推定するための信号推定動作を行う。更には、通信システムSYSは、主としてパラメータ設定ユニット213を用いて、信号推定ユニット212が受信信号yから推定信号xeを推定するために用いる信号推定方法の内容を規定するパラメータβ、ρ、τ及びηを設定するためのパラメータ設定動作を行う。このため、以下では、パラメータ設定動作と、信号推定動作とについて順に説明する。
【0043】
<3-1>パラメータ設定ユニット213が行うパラメータ設定動作
初めに、
図6を参照しながら、パラメータ設定ユニット213が行うパラメータ設定動作について説明する。
図6は、パラメータ設定ユニット213が行うパラメータ設定動作の流れを示すフローチャートである。
【0044】
図6に示すように、まず、伝送路モデル生成部2131は、システム情報を取得する(ステップS10)。システム情報は、通信システムSYSの基本的な情報を含む。例えば、システム情報は、送信アンテナ10及び受信アンテナ20に関するアンテナ情報を含んでいてもよい。アンテナ情報は、送信アンテナ10が備えるアレーアンテナ100の数(本実施形態では、上述した定数M)及びアレーアンテナ100が備えるアンテナ素子101の数(本実施形態では、上述した定数N)に関する情報を含んでいてもよい。アンテナ情報は、受信アンテナ20が備えるアレーアンテナ200の数(本実施形態では、上述した定数M)及びアレーアンテナ200が備えるアンテナ素子201の数(本実施形態では、上述した定数N)に関する情報を含んでいてもよい。システム情報は、送信アンテナ10と受信アンテナ20との間の伝送距離(つまり、伝送路3の距離)に関する距離情報を含んでいてもよい。距離情報は、送信アンテナ10が備えるM×N個のアンテナ素子101と受信アンテナ20が備えるM×N個のアンテナ素子201との間に夫々確保されるMN×MN個の伝送経路の距離に関する情報を含んでいてもよい。尚、送信アンテナ10と受信アンテナ20との間の伝送距離が一意に決まると、送信アンテナ10と受信アンテナ20との相対的な位置関係(つまり、配置態様)が一様に決まる。このため、距離情報は、送信アンテナ10と受信アンテナ20との相対的な位置関係(つまり、配置態様)に関する情報であるとみなしてもよい。システム情報は、通信システムSYSが用いる搬送波に関する搬送波情報を含んでいてもよい。搬送波情報は、搬送波の周波数及び波長の少なくとも一つに関する情報を含んでいてもよい。システム情報は、送信装置1で行われる信号処理及び受信装置で行われる受信処理に関する処理情報を含んでいてもよい。上述したように、送信装置1は、逆離散フーリエ変換処理を行う。このため、処理情報は、逆離散フーリエ変換処理に関する情報を含んでいてもよい。逆離散フーリエ変換処理に関する情報は、上述したN行×N列のフーリエ変換行列F
Nに関する情報を含んでいてもよい。上述したように、受信装置2は、離散フーリエ変換処理を行う。このため、処理情報は、離散フーリエ変換処理に関する情報を含んでいてもよい。離散フーリエ変換処理に関する情報は、上述したN行×N列のフーリエ変換行列F
Nに関する情報を含んでいてもよい。
【0045】
その後、伝送路モデル生成部2131は、ステップS10で取得したシステム情報に基づいて、伝送路行列Hを生成する(ステップS11)。伝送路モデル生成部2131は、伝送路3の実際の状態を示す伝送路行列H(典型的には、伝送路3の状態の実測値に基づいて生成される伝送路行列H)に代えて、システム情報から導出される伝送路3の理論的な状態を示す伝送路行列Hを生成する。このため、伝送路モデル生成部2131は、伝送路行列Hの理論値、推定値又は近似値を算出しているとみなしてもよい。
【0046】
伝送路行列Hは、上述した
図4に示すように、送信アンテナ10のアレーアンテナ100#jと受信アンテナ20のアレーアンテナ200#iとの伝送路3の状態を示す部分行列H[i、j]を(i、j)成分として有する。部分行列H[i、j]は、
図7に示すように、フーリエ変換行列F
Nと、成分h[i、j]
s、tを第s行第t列の成分として有するN行×N列の行列と、フーリエ変換行列F
Nの逆行列とを乗算することで得られる行列に相当する。成分h[i、j]
s、tは、アレーアンテナ100#jとアレーアンテナ200#iとの間の電波伝搬利得(より具体的には、アンテナ素子101#t(#j)とアンテナ素子201#s(#i)との間の電波伝搬利得)に相当する。このため、部分行列H[i、j]の第s行第t列の成分は、成分h[i、j]
s、tに依存した成分となり、典型的には、アレーアンテナ100#jのアンテナ素子101#t(#j)とアレーアンテナ200#iのアンテナ素子201#s(#i)との間における伝送路3の状態を示す。成分h[i、j]
s、tは、数式2を用いて算出可能である。尚、数式2におけるGは、電波伝搬以外の要因に応じてあらかじめ定められている定数である。数式2におけるd(i、j;s、t)は、アレーアンテナ100#jのt番目のアンテナ素子101#t(#j)とアレーアンテナ200#iのs番目のアンテナ素子201#s(#i)との間の伝送距離を示す。数式2におけるλは、通信システムSYSが用いる搬送波の波長を示す。また、数式2における「exp」は、ネイピア数を底とする指数関数を示す。
【0047】
【0048】
このため、伝送路行列Hを生成するために、伝送路モデル生成部2131は、システム情報が示す距離情報(つまり、伝送距離d(i、j;s、t))と、システム情報が示す搬送波情報(つまり、波長λ)と、数式2とを用いて、N×N個の成分h[i、j]s、tを算出する。その後、伝送路モデル生成部2131は、システム情報が示す処理情報(つまり、フーリエ変換行列FN)と、算出したN×N個の成分h[i、j]s、tとを用いて、部分行列[i、j]を生成する。その後、伝送路モデル生成部2131は、変数iを1からMの間で変更し且つ変数jを1からMの間で変更しながら同様の動作を繰り返すことで、部分行列H[1、1]からH[M、M]を生成する。その結果、伝送路行列Hが生成される。この際、伝送路モデル生成部2131は、システム情報が示すアンテナ情報(つまり、アレーアンテナ100及び200、並びに、アンテナ素子101及び201の数)に基づいて、部分行列H[i、j]及び伝送路行列Hの夫々の行数及び列数を決定してもよい。
【0049】
再び
図6において、その後、信号分類部2132は、ステップS11で生成された伝送路行列Hに基づいて、送信信号xに含まれるM×N個の送信信号x[1、1]からx[M、N]を、複数の信号グループX(つまり、送信信号x[1、1]からx[M、N]のうちの少なくとも二つによって構成されるとみなされるグループ)に分類する(ステップS12)。本実施形態では、信号分類部2132は、M×N個の送信信号x[1、1]からx[M、N]を、N個の信号グループX
(1)からX
(N)に分類する。また、信号分類部2132は、ステップS11で生成された伝送路行列Hに基づいて、受信信号yに含まれるM×N個の受信信号y[1、1]からy[M、N]を、複数の信号グループY(つまり、受信信号y[1、1]からy[M、N]のうちの少なくとも二つによって構成されるとみなされるグループ)に分類する(ステップS12)。本実施形態では、信号分類部2132は、M×N個の受信信号y[1、1]からy[M、N]を、N個の信号グループY
(1)からY
(N)に分類する。
【0050】
信号分類部2132は、同じインデックスを有する信号グループY(k)及び信号グループX(k)に夫々分類された受信信号成分と送信信号成分との相関が、信号グループY(k)に分類された受信信号成分と信号グループX(1)からX(k-1)及びX(k+1)からX(N)に分類された送信信号成分との相関よりも強いという分類基準を満たすように、送信信号x及び受信信号yを分類する。つまり、信号分類部2132は、送信信号x及び受信信号yを、受信信号yと送信信号xとの相関(つまり、受信信号yに含まれるM×N個の受信信号y[1、1]からy[M、N]と送信信号xに含まれるM×N個の送信信号x[1、1]からx[M、N]との相関)の強弱に応じた複数の信号グループに分類する。
【0051】
本実施形態では、「受信信号成分と第1の送信信号成分との相関が、受信信号成分と第2の送信信号成分との相関よりも強い」状態は、受信信号成分に対して第1の送信信号成分が与える影響が、受信信号成分に対して第2の送信信号成分が与える影響よりも大きくなる状態を含んでいてもよい。「受信信号成分と第1の送信信号成分との相関が、受信信号成分と第2の送信信号成分との相関よりも強い」状態は、第1の送信信号成分が所定量だけ変化した場合における受信信号成分の変化量が、第2の送信信号成分が同じ所定量だけ変化した場合における受信信号成分の変化量よりも大きい状態を含んでいてもよい。
【0052】
本実施形態では、信号分類部2132は、伝送路行列Hの各成分の絶対値の大きさを、各成分に対応する一の送信信号成分と一の受信信号成分との間の相関の強さとして用いる。具体的には、伝送路行列Hを構成する部分行列H[i、j]の第s行第t列の成分は、送信アンテナ10のアレーアンテナ100#jのt番目のアンテナ素子101#t(#j)と受信アンテナ20のアレーアンテナ200#iのs番目のアンテナ素子201#s(#i)との間の伝送路3の状態を示す。このため、部分行列H[i、j]の第s行第t列の成分の絶対値の大きさは、アレーアンテナ100#jのt番目のアンテナ素子101#t(#j)が送信する送信信号x[j、t]とアレーアンテナ200#iのs番目のアンテナ素子201#s(#i)が受信する受信信号y[i、s]との相関の強さを示している。従って、信号分類部2132は、絶対値が相対的に大きい伝送路行列Hの成分に対応する送信信号成分と受信信号成分が同じインデックスの信号グループ(つまり、信号グループX(k)及び信号グループY(k))に分類されるように、送信信号x及び受信信号yを分類する。
【0053】
送信信号x及び受信信号yを分類するために、信号分類部2132は、ステップS11で生成された伝送路行列Hに含まれるMN×MN個の成分の順序を入れ替える。具体的には、信号分類部2132は、
図8に示すように、伝送路行列Hがブロック対角行列となるように、伝送路行列Hに含まれるMN×MN個の成分の順序を入れ替える。ブロック対角行列は、対角ブロック成分以外の成分の絶対値が、対角ブロック成分の絶対値よりも小さくなる行列であってもよい。典型的には、ブロック対角行列は、対角ブロック成分以外の成分がゼロになる行列であってもよい。具体的には、
図8の下方に示すように、MN×MN個の成分の順序が入れ替えられた伝送路行列Hが、M行×M列の部分行列H
(k、m)を(k、m)成分(但し、mは、1以上且つN以下の整数を示す変数)として有するMN行×MN列のブロック行列であるとみなすと、伝送路行列Hは、k=mが満たされる場合に部分行列H
(k、m)が零行列にならない一方でk≠mが満たされる場合に部分行列H
(k、m)が零行列になるという条件を満たすブロック対角行列となる。或いは、伝送路行列Hは、k=mが満たされる場合の部分行列H
(k、m)のノルム(つまり、成分の絶対値の和)が、k≠mが満たされる場合の部分行列H
(k、m)のノルムよりも大きくなるという条件を満たすブロック対角行列となっていてもよい。
図8の最下部は、k≠mが満たされる場合に部分行列H
(k、m)が零行列になる例を示しているが、k≠mが満たされる場合であっても部分行列H
(k、m)が零行列にならなくてもよい。尚、以降の説明では、特段の表記がない場合は、伝送路行列Hは、ブロック対角行列となるように成分の順序が入れ替えられた行列を意味するものとする。
【0054】
信号分類部2132は、更に、伝送路行列Hの成分の順序の入れ替えに合わせて、送信信号xと受信信号yとの関係を示す行列演算式(
図8の上部参照)上で、M×N個の送信信号x[1、1]からx[M、N]及びM×N個の受信信号y[1、1]からy[M、N]の夫々の順番を入れ替える。具体的には、信号分類部2132は、M×N個の送信信号x[1、1]からx[M、N]とM×N個の受信信号y[1、1]からy[M、N]との間の関係が伝送路行列Hの成分の順序の入れ替えに起因して変わることがないように、M×N個の送信信号x[1、1]からx[M、N]の順番とM×N個の受信信号y[1、1]からy[M、N]の順番とを入れ替える。その結果、送信信号xと受信信号yとの関係は、
図4に示す関係(つまり、MN×MN個の成分の順序を入れ替える前の関係)から、
図8の下部に示す関係(つまり、MN×MN個の成分の順序を入れ替えた後の関係)へと変わる。
【0055】
その後、信号分類部2132は、送信信号成分の順序が入れ替えられた送信信号xを、夫々が連続するM個の送信信号成分を含むN個の送信信号x(1)からx(N)に分割する。同様に、信号分類部2132は、受信信号成分の順序が入れ替えられた受信信号yを、夫々が連続するM個の受信信号成分を含むN個の受信信号y(1)からy(N)に分割する。ここで、伝送路行列Hがブロック対角行列になっているため、部分行列H(k、k)のノルムは、部分行列H(k、1)からH(k、k-1)及びH(k、k+1)からH(k、N)の夫々のノルムよりも大きくなる。このため、伝送路行列Hは、受信信号y(k)と送信信号x(k)との相関が、受信信号y(k)と送信信号成分x(1)からx(k-1)及びx(k+1)からx(N)の夫々との相関よりも強いことを示している。従って、信号分類部2132は、送信信号x(k)及び受信信号y(k)を、夫々、同じインデックスを有する信号グループX(k)及びY(k)に分類する。
【0056】
信号分類部2132は、各信号グループXに分類された送信信号成分を識別するためのインデックス(例えば、上述したアレーアンテナ100を特定する変数j及びアンテナ素子101を特定する変数t)を、信号推定ユニット212及び通信容量算出部2133の夫々に出力する。信号分類部2132は、各信号グループYに分類された受信信号成分を識別するためのインデックス(例えば、上述したアレーアンテナ200を特定する変数i及びアンテナ素子201を特定する変数s)を、信号推定ユニット212及び通信容量算出部2133の夫々に出力する。
【0057】
再び
図6において、その後、通信容量算出部2133は、伝送路行列Hと、信号分類部2132による信号グループX及びYの分類結果に基づいて、伝送路3を介して伝送可能な情報量(特に、その最大値)を示す通信容量Cを算出する(ステップS13)。本実施形態では、通信容量算出部2133は、三種類の通信容量C
1、C
2及びC
3を算出する。
【0058】
通信容量C1は、送信アンテナ10が備えるM×N個のアンテナ素子101と受信アンテナ20が備えるM×N個のアンテナ素子201との間に夫々確保されるMN×MN個の伝送経路を全て用いて送信信号xを送信する場合に伝送可能な情報量を示す。この場合、各アンテナ素子101が送信した送信信号成分の推定値は、M×N個のアンテナ素子201が夫々受信したM×N個の受信信号y[1、1]からy[M、N]の全てを用いて推定される。このため、通信容量C1は、各アンテナ素子101が送信した送信信号成分の推定値を、M×N個の受信信号y[1、1]からy[M、N]の全てを用いて推定する場合に伝送可能な情報量を示しているとみなしてもよい。つまり、通信容量C1は、アレーアンテナ100#jのt番目のアンテナ素子101#t(#j)が送信した送信信号x[j、t]の推定値である推定信号xe[t、j]を、M×N個の受信信号y[1、1]からy[M、N]の全てを用いて推定する場合に伝送可能な情報量を示しているとみなしてもよい。
【0059】
通信容量算出部2133は、数式3を用いて、通信容量C1を算出してもよい。数式3中におけるΛ(1)からΛ(MN)は、伝送路行列Hと共役転置行列H†との積行列のM×N個の固有値を夫々示す。数式3中におけるSNRは、信号電力対雑音電力比を示す。
【0060】
【0061】
通信容量C2は、同じインデックスを有する信号グループX及びYに夫々分類された(つまり、相関が相対的に強い)送信信号成分と受信信号成分との組み合わせに対応するアンテナ素子101とアンテナ素子201との組み合わせを用いて送信信号xを送信する場合に伝送可能な情報量を示す。特に、通信容量C2は、相関が相対的に強い送信信号成分と受信信号成分との組み合わせに対応するアンテナ素子101とアンテナ素子201との組み合わせを用いて送信信号xを送信する場合に伝送可能な情報量の理論値(例えば、理論限界値)を示す。つまり、通信容量C2は、異なるインデックスを有する信号グループX及びYに夫々分類された(つまり、相関が相対的に弱い)送信信号成分と受信信号成分との組み合わせに対応するアンテナ素子101とアンテナ素子201との組み合わせを用いることなく送信信号xを送信する場合に伝送可能な情報量の理論値を示す。この場合、各アンテナ素子101が送信した送信信号成分の推定値は、送信信号成分が分類された信号グループXと同じインデックスを有する信号グループYに分類された受信信号成分から推定される。つまり、各アンテナ素子101が送信した送信信号成分の推定値は、送信信号成分との相関が相対的に強い受信信号成分から推定される。一方で、各アンテナ素子101が送信した送信信号成分の推定値は、送信信号成分との相関が相対的に弱い受信信号成分を用いることなく、推定される。このため、通信容量C2は、各アンテナ素子101が送信した送信信号成分の推定値を、送信信号成分との相関が相対的に強い受信信号成分を用いる一方で送信信号成分との相関が相対的に弱い受信信号成分を用いることなく推定する場合に伝送可能な情報量の理論値を示しているとみなしてもよい。
【0062】
通信容量算出部2133は、数式4を用いて、通信容量C2を算出してもよい。数式4中におけるλ(k、1)からλ(k、M)は、部分行列H(k、k)と当該部分行列H(k、k)の共役転置行列である行列H(k、k)†との積行列のM個の固有値を夫々示す。数式4中におけるSNRは、信号電力対雑音電力比を示す。
【0063】
【0064】
通信容量C3は、通信容量C2と同様に、相関が相対的に強い送信信号成分と受信信号成分との組み合わせに対応するアンテナ素子101とアンテナ素子201との組み合わせを用いて送信信号xを送信する場合に伝送可能な情報量を示す。通信容量C3は、通信容量C2と比較して、最小平均二乗誤差に基づく信号推定方法(或いは、信号推定ユニット212が用いる信号推定方法とは異なる他の信号推定方法、以下同じ)を用いて送信信号xを推定した場合に伝送可能な情報量を示すという点で異なる。つまり、通信容量C3は、最小平均二乗誤差に基づく信号推定方法を用いて、各アンテナ素子101が送信した送信信号成分の推定値を、送信信号成分との相関が相対的に強い受信信号成分を用いて推定する場合に伝送可能な情報量を示しているとみなしてもよい。
【0065】
通信容量算出部2133は、数式5を用いて、通信容量C3を算出してもよい。数式5中におけるw(k、1)からw(k、M)は、数式6から算出されるM行×M列の行列BのM個の対角成分を夫々示す。数式6におけるIは、M行×M列の単位行列を示す。
【0066】
【0067】
【0068】
その後、パラメータ設定部2134は、ステップS13で算出された通信容量C1からC3に基づいて、パラメータβ、ρ、τ及びηを設定する(ステップS14からステップS19)。
【0069】
パラメータβ、ρ、τ及びηを設定するために、パラメータ設定部2134は、通信容量C1と通信容量C2とが等しいか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14における判定の結果、通信容量C1と通信容量C2とが等しいと判定された場合には(ステップS14:Yes)、パラメータ設定部2134は、パラメータβを、後述する学習動作とは無関係に定まる固定値に設定する(ステップS15)。具体的には、パラメータ設定部2134は、パラメータβr
(k)(つまり、N×R個のパラメータβ1
(1)からβR
(N)の夫々)を、零ベクトルに設定する。つまり、パラメータ設定部2134は、パラメータβr
(k)のベクトル成分を、ゼロという固定値に設定する。一方で、ステップS14における判定の結果、通信容量C1と通信容量C2とが等しくないと判定された場合には(ステップS14:No)、パラメータ設定部2134は、パラメータβを、後述する学習動作によって学習可能な学習値に設定する(ステップS16)。具体的には、パラメータ設定部2134は、パラメータβr
(k)を、学習可能な学習値に相当するM個のベクトル成分を含むM次元のベクトルに設定する。パラメータβr
(k)に学習値として設定されるべき値が既に学習済みである場合には、パラメータ設定部2134は、パラメータβを、学習値として既に学習済みの値に設定してもよい。パラメータβに学習値として設定される値が未だ学習されていない場合には、パラメータ設定部2134は、パラメータβを、学習値の初期値に設定してもよい。初期値は、どのような値であってもよい。初期値の一例として、平均が1となり且つ分布が正規分布となるM個の値を含むM次元のベクトルがあげられる。
【0070】
ステップS14からS16の動作と並行して又は相前後して、パラメータ設定部2134は、通信容量C2と通信容量C3とが等しいか否かを判定する(ステップS17)。ステップS17における判定の結果、通信容量C2と通信容量C3とが等しいと判定された場合には(ステップS17:Yes)、パラメータ設定部2134は、パラメータρを、固定値に設定する(ステップS18)。具体的には、パラメータ設定部2134は、パラメータρr
(k)(つまり、N×R個のパラメータρ1
(1)からρR
(N)の夫々)を、変数k及び変数rによって変動しない固定値として予め定められたM個のベクトル成分を含むベクトルに設定する。つまり、パラメータ設定部2134は、パラメータρr
(k)のベクトル成分を、固定値に設定する。また、パラメータ設定部2134は、パラメータτを、固定値に設定する(ステップS18)。具体的には、パラメータ設定部2134は、パラメータτr
(k)(つまり、N×R個のパラメータτ1
(1)からτR
(N)の夫々)を、通信システムSYSの仕様上設定可能な上限値(例えば、無限大に相当する値)に相当するM個のベクトル成分を含むベクトルに設定する。つまり、パラメータ設定部2134は、パラメータτr
(k)のベクトル成分を、通信システムSYSの仕様上設定可能な上限値に設定する。また、パラメータ設定部2134は、パラメータηを、固定値に設定する(ステップS18)。具体的には、パラメータ設定部2134は、パラメータηr
(k)(つまり、N×R個のパラメータη1
(1)からηR
(N)の夫々)を、零ベクトルに設定する。つまり、パラメータ設定部2134は、パラメータηr
(k)のベクトル成分を、ゼロという固定値に設定する。一方で、ステップS17における判定の結果、通信容量C2と通信容量C3とが等しくないと判定された場合には(ステップS17:No)、パラメータ設定部2134は、パラメータρ、τ及びηの夫々を、学習動作によって学習可能な学習値に設定する(ステップS19)。尚、パラメータρ、τ及びηの夫々に学習値を設定する動作の内容は、パラメータβに学習値を設定する動作の内容と同一であってもよい。
【0071】
以上の動作により、パラメータβ、ρ、τ及びηが設定される。つまり、信号推定ユニット212が推定信号xeを推定するために用いる信号推定方法の内容が設定される。
【0072】
パラメータβ、ρ、τ及びηの夫々に設定される学習値は、学習動作によって学習される。学習動作は、受信装置2によって行われてもよいし、受信装置2とは異なる装置によって行われてもよい。受信装置2(或いは、受信装置2とは異なる装置、以下、学習動作の説明の箇所では同じ)は、信号推定ユニット212が信号推定動作を開始する前に、学習動作を行ってもよい。受信装置2は、信号推定ユニット212が信号推定動作を開始した後に、オンラインで学習動作を行ってもよい。
【0073】
受信装置2は、信号推定ユニット212が最終的に出力する推定信号xe(つまり、後に詳述する確定推定信号xef)と送信装置1が実際に送信した送信信号xとの間の誤差(例えば、二乗誤差)に基づく損失関数Lossを用いて、パラメータβ、ρ、τ及びηを学習してもよい。具体的には、受信装置2は、送信信号xのサンプル値(いわゆる、正解ラベル)と送信信号xのサンプル値が送信装置1から受信装置2に送信された場合に受信装置2が受信する受信信号yのサンプル値とを含む学習データを取得する。その後、受信装置2は、受信信号yのサンプル値が入力された信号推定ユニット212から出力される確定推定信号xefと送信信号xのサンプル値との誤差に基づく損失関数Lossを用いて、パラメータβ、ρ、τ及びηを学習してもよい。
【0074】
受信装置2は、ニューラルネットワークのパラメータを学習するために用いる誤差逆伝搬法を用いて、パラメータβ、ρ、τ及びηを学習してもよい。数式7は、誤差逆伝搬法を用いてパラメータβ、ρ、τ及びηを学習するための確定推定信号xefと送信信号xとの間の二乗誤差に基づく損失関数Lossの一例を示している。尚、数式7中の「D」は、パラメータβ、ρ、τ及びηを学習するために用いられる送信信号xの集合(つまり、教師データの集合)を示す。
【0075】
【0076】
数式7によって算出される損失関数Lossに対して学習対象(例えば、パラメータβ、ρ、τ及びηの少なくとも一つ)が及ぼす影響は、誤差逆伝搬法によって算出可能な偏微分によって表現可能である。このため、受信装置2は、数式8を用いて学習対象を学習してもよい。尚、数式8は、学習対象がパラメータρr
(k)である例を示している。数式8中の「ε」は、任意に設定可能なハイパーパラメータを示す。
【0077】
【0078】
<3-2>信号推定ユニット212が行う信号推定動作
続いて、
図9を参照しながら、信号推定ユニット212が行う信号推定動作について説明する。
図9は、信号推定ユニット212が行う信号推定動作の流れを示すフローチャートである。
【0079】
図9に示すように、まず、信号推定ユニット212に、受信信号yが入力される(ステップS20)。本実施形態では、受信信号yは、受信信号yに含まれるM×N個の受信信号成分y[1、1]からy[M、N]が、信号グループY
(1)からY
(N)に基づいて分類された状態で信号推定ユニット212に入力される。つまり、受信信号yは、信号グループY
(1)に分類される受信信号y
(1)から信号グループY
(N)に分類される受信信号y
(N)として信号推定ユニット212に入力される。具体的には、信号推定ユニット212には、数式9で示す受信信号y
(k)が入力される。尚、数式9における[i、s]∈Y
(k)は、信号グループY
(k)に分類されている受信信号成分を識別するためのインデックス(例えば、上述したアレーアンテナ200を特定する変数i及びアンテナ素子201を特定する変数s)を示す。
【0080】
【0081】
但し、受信信号yは、受信信号yに含まれるM×N個の受信信号成分y[1、1]からy[M、N]が、信号グループY(1)からY(N)に基づいて分類されていない状態で信号推定ユニット212に入力されてもよい。この場合、信号推定ユニット212は、信号グループY(1)からY(N)に基づいて、受信信号yを、受信信号y(1)からy(N)に分類してもよい。
【0082】
ステップS20の動作と並行して又は相前後して、信号推定ユニット212には、初期情報として、伝送路行列Hが入力される(ステップS21)。尚、信号推定動作を行うために信号推定ユニット212に入力される伝送路行列Hは、伝送路3の状態の実際の測定結果に基づいて生成される伝送路行列である。つまり、信号推定ユニット212に入力される伝送路行列Hは、パラメータ設定動作においてパラメータ設定ユニット213が生成した伝送路行列H(つまり、伝送路行列Hの理論値、推定値又は近似値)とは異なる。
【0083】
本実施形態では、伝送路行列Hは、信号グループX
(1)からX
(N)及び信号グループY
(1)からY
(N)に基づいてブロック対角行列となるように成分が並べ替えられた状態で信号推定ユニット212に入力される。つまり、
図8の下方に示すブロック対角行列(つまり、部分行列H
(k、m)を(k、m)成分として有するMN行×MN列のブロック行列)となる伝送路行列Hが信号推定ユニット212に入力される。部分行列H
(k、m)は、信号グループY
(k)に分類される受信信号y
(k)を受信するM個のアンテナ素子201と信号グループX
(m)に分類される送信信号x
(m)を送信するM個のアンテナ素子101との間における伝送路3の状態を示している。具体的には、信号推定ユニット212には、数式10で示す部分行列H
(k、m)を(k、m)成分として含む伝送路行列Hが入力されてもよい。尚、数式10における[j、t]∈X
(k)は、信号グループX
(k)に分類されている送信信号成分を識別するためのインデックス(例えば、上述したアレーアンテナ100を特定する変数j及びアンテナ素子101を特定する変数t)を示す。
【0084】
【0085】
但し、伝送路行列Hは、ブロック対角行列となるように成分が並べ替えられていない状態で信号推定ユニット212に入力されてもよい。この場合、信号推定ユニット212は、信号グループX(1)からX(N)及び信号グループY(1)からY(N)に基づいて、伝送路行列Hがブロック対角行列となるように、伝送路行列Hの成分を並べ替えてもよい。
【0086】
ステップS20からS21の動作と並行して又は相前後して、信号推定ユニット212は、初期化動作を行う(ステップS22)。具体的には、信号推定ユニット212は、変数rを1に設定する。変数rは、信号推定ユニット212が、送信信号x(k)の推定値(推定ベクトル)である推定信号xe(k)を推定する動作を行った回数をカウントするための変数である。なぜならば、後述するように、信号推定ユニット212は、推定信号xe(k)を推定する動作を必要に応じて繰り返すからである。このため、以下では、信号推定ユニット212がr回目に推定した推定信号xe(k)を、“推定信号xer+1
(k)”と表記する。また、信号推定ユニット212は、推定信号xe(k)を推定するために信号推定ユニット212が用いる内部データv(k)及びz(k)の初期値をゼロに設定する。尚、以下では、説明の便宜上、信号推定ユニット212が推定信号xer+1
(k)を推定するために用いる内部データv(k)及びz(k)を、“内部データvr
(k)及びzr
(k)”と表記する。この場合、内部データv(k)及びz(k)の初期値は、“内部データv1
(k)及びz1
(k)”と表記される。また、例えば、信号推定ユニット212は、推定信号xe(k)の初期値xe1
(k)をゼロ(具体的には、零ベクトル)に設定する。信号推定ユニット212は、上述した初期化動作を、変数kを1からNまで更新しながらN回行う。この際、信号推定ユニット212は、N回の初期化動作を順に行ってもよいし、N回分の初期化動作を並列して行ってもよい
その後、信号推定ユニット212は、受信信号y(k)と、伝送路行列Hと、パラメータ設定ユニット213が設定したパラメータβr
(k)と、推定信号exr
(k)とに基づいて、受信信号y(k)の補正値である補正信号ya(k)を生成する(ステップS23)。以下では、信号推定ユニット212がr回目に生成した補正信号ya(k)を、“補正信号yar
(k)”と表記する。具体的には、信号推定ユニット212は、数式11を用いて、補正信号yar
(k)を生成する。尚、数式11における「○」という演算子は、アダマール積を意味する。信号推定ユニット212は、上述したステップS23の動作を、変数kを1からNまで更新しながらN回行う。この際、信号推定ユニット212は、N回のステップS23の動作を順に行ってもよいし、N回分のステップS23の動作を並列して行ってもよい
【0087】
【0088】
ここで、数式11の右辺の第2項は、受信信号y(k)との相関が相対的に強い送信信号x(k)以外の、受信信号yに含まれる送信信号成分(つまり、送信信号x(1)からx(k-1)及びx(k+1)からx(N))に起因した信号成分に相当する。つまり、数式11の右辺の第2項は、フェージング等の干渉が生じていない理想的な環境下で受信装置2が受信する理想的な受信信号y(k)には含まれていない、フェージング等の干渉に起因して受信信号y(k)に含まれている信号成分に相当する。このため、補正信号ya(k)は、実質的には、受信信号yから送信信号x(k)以外の送信信号成分に関する情報(つまり、干渉成分)を除いた信号に相当する。
【0089】
その後、信号推定ユニット212は、補正信号yar
(k)と、伝送路行列Hに含まれる部分行列H(k、k)と、パラメータ設定ユニット213が設定したパラメータρr
(k)と、内部データvr
(k)及びzr
(k)とに基づいて、推定信号xer+1
(k)を生成する(ステップS24)。具体的には、信号推定ユニット212は、数式12を用いて、推定信号xer+1
(k)を生成する。尚、数式12におけるD(ρr
(k))は、M次元のベクトル成分を含むベクトルであるパラメータρr
(k)を対角成分として含む対角行列である。信号推定ユニット212は、上述したステップS24の動作を、変数kを1からNまで更新しながらN回行う。この際、信号推定ユニット212は、N回のステップS24の動作を順に行ってもよいし、N回分のステップS24の動作を並列して行ってもよい
【0090】
【0091】
その後、信号推定ユニット212は、ステップS24で推定した最新の推定信号xer+1
(k)に基づいて、内部データvr
(k)及びzr
(k)を更新する(ステップS25)。つまり、信号推定ユニット212は、内部データvr+1
(k)及びzr+1
(k)を生成する(ステップS25)。具体的には、信号推定ユニット212は、数式13を用いて内部データzr+1
(k)を生成する。尚、数式13中の「Ψ(w)」は、M個の信号成分(w1、w2、・・・、wM)を含む信号(=ベクトル)wに対して非線形変換処理を行う関数であって、且つ、パラメータ設定ユニット213が設定したパラメータτr
(k)によって規定される関数である。関数Ψ(w)は、通信システムSYSで用いられる変調方式(特に、信号の多値数)に応じて予め定められていてもよい。関数Ψ(w)の一例が、数式14に示されている。数式14は、関数Ψ(w)が、パラメータτr
(k)(=τr
(k)#1、τr
(k)#2、・・・、τr
(k)#M)によって定義される双曲線正接関数tanhを用いて行われる非線形変換処理を規定する関数である例を示している。数式14に示す関数Ψ(w)は、通信システムSYSが、二位相偏移変調(BPSK(Binary Phase Shift Keying)変調)方式を用いている場合に用いられる関数Ψ(w)の一例である。信号推定ユニット212は、内部データzr+1
(k)を生成した後に、数式15を用いて内部データvr+1
(k)を生成する。尚、数式15における「○」という演算子は、アダマール積を意味する。信号推定ユニット212は、上述したステップS25の動作を、変数kを1からNまで更新しながらN回行う。この際、信号推定ユニット212は、N回のステップS25の動作を順に行ってもよいし、N回分のステップS25の動作を並列して行ってもよい。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
その後、信号推定ユニット212は、変数rが、閾値として用いられる定数Rよりも小さいか否かを判定する(ステップS26)。上述したように、変数rは、信号推定ユニット212が推定信号xer+1
(k)を推定する動作を行った回数をカウントするための変数である。具体的には、変数rは、信号推定ユニット212が推定信号xer+1
(k)を推定する動作を行った回数(つまり、信号推定ユニット212がステップS24の動作を行った回数)を示している。また、定数Rは、信号推定ユニット212が推定信号xer+1
(k)を推定する動作を行うべき回数として予め設定された値である。
【0096】
ステップS26における判定の結果、変数rが定数Rよりも小さいと判定された場合には(ステップS26:Yes)、信号推定ユニット212は、推定信号xer+1
(k)を推定し直す。つまり、信号推定ユニット212は、推定信号xer+2
(k)を新たに推定する。具体的には、信号推定ユニット212は、変数rを1だけインクリメントした後(ステップS28)、ステップS23からS25の動作を再度行うことで、推定信号xer+1
(k)を推定し直す。ここでも、信号推定ユニット212は、上述した数式3を用いて、推定信号xer+1
(k)を推定し直す。以上のステップS23からステップS25までの動作が、変数rが定数Rよりも小さくないと判定されるまで繰り返される。つまり、ステップS23からステップS25までの動作が、R回繰り返される。
【0097】
ステップS26における判定の結果、変数rが定数Rよりも小さくないと判定された場合には(ステップS26:No)、信号推定ユニット212は、推定信号xer+1
(k)を推定し直さなくてもよい。この場合には、信号推定ユニット212は、最後に推定した推定信号xer+1
(k)(=xeR
(k)=xeR
(0)からxeR
(N-1))含む推定信号xeに基づいて、確定推定信号xefを出力する(ステップS27)。具体的には、信号推定ユニット212は、数式16を用いて、送信信号x(k)の最終的に確定した推定値である確定推定信号xef(k)を出力する(ステップS27)。数式16における記号「Πs(w)」は、送信信号xがとり得る全ての信号パターンのうち信号wの信号パターンとの距離(ユークリッド距離)が最も近い一の信号パターンの送信信号xを示すための記号である。つまり、信号推定ユニット212は、送信信号x(k)がとり得る全ての信号パターンのうち推定信号xeR
(k)の信号パターンとの距離(例えば、ユークリッド距離)が最も近い一の信号パターンを有する送信信号x(k)を、確定推定信号xef(k)として出力する。信号推定ユニット212は、上述したステップS27の動作を、変数kを1からNまで更新しながらN回行う。この際、信号推定ユニット212は、N回のステップS27の動作を順に行ってもよいし、N回分のステップS27の動作を並列して行ってもよい。その結果、信号推定ユニット212は、確定推定信号xef(0)から確定推定信号xef(N-1)が適切な配列順に並ぶ確定推定信号xef(つまり、送信信号xの推定値)を出力する。
【0098】
【0099】
<3>通信システムSYSの技術的効果
以上説明したように、信号推定ユニット212は、パラメータ設定ユニット213が設定したパラメータβ、ρ、τ及びηによって内容が規定される信号推定方法を用いて、受信信号yから送信信号xを推定する。ここで、パラメータ設定ユニット213は、信号グループX及びYの分類結果を用いて、パラメータβ、ρ、τ及びηの夫々を、学習動作に無関係な固定値と学習動作によって学習可能な学習値とのいずれかに設定する。このため、信号推定ユニット212は、受信信号yに基づいて送信信号xを精度よく推定することができる。
【0100】
具体的には、上述したように、パラメータ設定ユニット213は、信号グループX及びYの分類結果に基づいて通信容量C1からC3を算出し、通信容量C1からC3の大小関係に基づいて、パラメータβ、ρ、τ及びηの夫々を、学習動作に無関係な固定値と学習動作によって学習可能な学習値とのいずれかに設定する。ここで、通信容量C1からC3の大小関係は、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが理想的な配置態様で配置されているか否かに応じて変わる。
【0101】
具体的には、通信容量C1と通信容量C2とが同一である場合には、送信信号x(k)と相関の強い受信信号y(k)に基づいて送信信号x(k)が推定される場合の通信容量C2が、全ての受信信号y(1)からy(N)に基づいて送信信号x(k)が推定される場合の通信容量C1と同一となる。このため、この場合には、受信信号y(k)には、フェージング等の干渉に起因した信号成分が殆ど含まれていないと想定される。つまり、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが理想的な配置態様で配置されている可能性が相対的に高いと想定される。この場合には、上述したように、パラメータβr
(k)が零ベクトルに設定される。その結果、上述した数式11は、数式17となる。
【0102】
【0103】
数式17に示すように、通信容量C
1と通信容量C
2とが同一である場合には、信号推定ユニット212は、受信信号y
(k)を、そのまま補正信号ya
(k)として用いてもよい。つまり、信号推定ユニット212は、上述した
図9のステップS25の動作を行わなくてもよい。なぜならば、上述したように、通信容量C
1と通信容量C
2とが同一である場合には、受信信号y
(k)には、そもそも、フェージング等の干渉に起因した信号成分が含まれていない可能性が相対的に高いからである、つまり、信号推定ユニット212は、フェージング等の干渉に起因した信号成分に相当する数式11の右辺の第2項を考慮する必要性が薄いからである。その結果、信号推定ユニット212は、相対的に少ない演算量で、受信信号yから送信信号xを精度よく推定することができる。
【0104】
一方で、通信容量C1と通信容量C2とが同一でない場合には、受信信号y(k)には、フェージング等の干渉に起因した信号成分が含まれている可能性が相対的に高いと想定される。つまり、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが理想的な配置態様で配置されていない可能性が相対的に高いと想定される。この場合には、上述したようにパラメータβr
(k)が零ベクトルに設定されることは原則としてないため、信号推定ユニット212は、フェージング等の干渉に起因した信号成分を受信信号y(k)から排除する演算処理を行うことで、補正信号ya(k)を生成し、受信信号y(k)ではなく補正信号ya(k)に基づいて、推定信号ex(k)を生成する(つまり、送信信号x(k)を推定する)。このため、信号推定ユニット212は、干渉の影響を考慮した上で(つまり、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが理想的な配置態様で配置されていないことを考慮した上で)、受信信号yから送信信号xを推定することができる。その結果、信号推定ユニット212は、補正信号ya(k)を用いることなく送信信号x(k)を推定する場合と比較して、受信信号yから送信信号xを精度よく推定することができる。
【0105】
更には、パラメータβr
(k)が学習可能な学習値に設定されるがゆえに、パラメータβr
(k)が一律に固定値に設定される場合と比較して、信号推定ユニット212は、通信システムSYSの実際の通信環境等を踏まえて、フェージング等の干渉に起因した信号成分が受信信号y(k)からより適切に排除された補正信号ya(k)を生成することができる。このため、信号推定ユニット212は、干渉の影響をより適切に考慮した上で(つまり、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが理想的な配置態様で配置されていないことをより適切に考慮した上で)、受信信号yから送信信号xを推定することができる。その結果、信号推定ユニット212は、パラメータβr
(k)が一律に固定値に設定される場合と比較して、受信信号yから送信信号xを精度よく推定することができる。
【0106】
また、通信容量C2と通信容量C3とが同一である場合には、送信信号x(k)と相関の強い受信信号y(k)に基づいて送信信号x(k)が推定される場合の通信容量の理論値(つまり、通信容量C2)、最小平均二乗誤差に基づく信号推定方法によって、送信信号x(k)と相関の強い受信信号y(k)から送信信号x(k)が推定される場合の通信容量C3と同一となる。つまり、最小平均二乗誤差に基づく信号推定方法を用いて送信信号xを推定する場合の通信容量C3が、その理論的な上限値に一致する。ここで、最小平均二乗誤差に基づく信号推定方法は、少ない演算量で送信信号xを推定することができるというメリットを有する一方で、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが理想的な配置態様で配置されていない状況下での送信信号xの推定精度が著しく悪化するというデメリットを有する。しかしながら、通信容量C2と通信容量C3とが同一である場合には、最小平均二乗誤差に基づく信号推定方法を用いて送信信号xを推定する場合の通信容量C3がその理論的な上限値に一致するがゆえに、送信信号xの推定精度が悪化していない可能性が相対的に高いと推定される。つまり、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが理想的な配置態様で配置されている可能性が相対的に高いと想定される。
【0107】
そこで、この場合には、パラメータ設定ユニット213は、上述したように、パラメータρr
(k)を固定値に設定し、パラメータτr
(k)を上限値に設定し、パラメータηr
(k)を零ベクトルに設定する。その結果、まず、上述した数式14に示す関数Ψ(w)の出力が零に固定される。なぜならば、パラメータτr
(k)が上限値(例えば、無限大に相当する値)に設定されるがゆえに、数式14における双曲線関数の引数が零になり、結果、双曲線関数の出力が零になるからである。関数Ψ(w)の出力が零に固定される場合には、数式13に示すように、内部データzr
(k)が零ベクトルに固定される。更に、パラメータηr
(k)が零ベクトルに設定されると、数式15に示すように、内部データvr
(k)もまた零ベクトルに固定される。その結果、推定信号xr+1
(k)を推定するための数式12は、数式18となる。
【0108】
【0109】
数式18に示す信号推定方法は、理想的な最小平均二乗誤差に基づく信号推定方法と等価である(但し、補正信号yar
(k)を生成する動作及び数式18を用いて推定信号xr+1
(k)を推定する動作の夫々は、R回行われる)。つまり、通信容量C2と通信容量C3とが同一である場合には、信号推定ユニット212は、最小平均二乗誤差に基づく信号推定方法を用いて、受信信号yから送信信号xを推定する。その結果、信号推定ユニット212は、相対的に少ない演算量で、受信信号yから送信信号xを精度よく推定することができる。
【0110】
一方で、通信容量C2と通信容量C3とが同一でない場合には、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが理想的な配置態様で配置されていない可能性が相対的に高いと想定される。この場合には、パラメータρr
(k)、τr
(k)及びηr
(k)が固定値に設定されることは原則としてない。このため、信号推定ユニット212は、最小平均二乗誤差に基づく信号推定方法よりも送信信号xの推定精度が高い、本実施形態で提案している信号推定方法を用いて、送信信号xを推定する。このため、信号推定ユニット212は、常に最小平均二乗誤差に基づく信号推定方法を用いて送信信号xを推定する場合と比較して、受信信号yから送信信号xを精度よく推定することができる。
【0111】
更には、パラメータρr
(k)、τr
(k)及びηr
(k)が学習可能な学習値に設定されるがゆえに、パラメータρr
(k)、τr
(k)及びηr
(k)が一律に固定値に設定される場合と比較して、信号推定ユニット212は、通信システムSYSの実際の通信環境等を踏まえてチューニングされた信号推定方法を用いて、送信信号xを推定する。このため、信号推定ユニット212は、干渉の影響をより適切に考慮した上で(つまり、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが理想的な配置態様で配置されていないことをより適切に考慮した上で)、受信信号yから送信信号xを推定することができる。その結果、信号推定ユニット212は、パラメータρr
(k)、τr
(k)及びηr
(k)が一律に固定値に設定される場合と比較して、受信信号yから送信信号xを精度よく推定することができる。
【0112】
このように、信号推定ユニット212は、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが理想的な配置態様で配置されている可能性が相対的に高い場合、及び、送信アンテナ10と受信アンテナ20とが理想的な配置態様で配置されていない可能性が相対的に高い場合の双方において、受信信号yから送信信号xを精度よく推定することができる。
【0113】
また、通信容量C1と通信容量C2と通信容量C3との全てが同一である場合には、受信信号y(k)と補正信号ya(k)とが同一になるため、数式18に示す信号推定方法は、理想的な最小平均二乗誤差に基づく信号推定方法と一致する。このため、信号推定ユニット212は、補正信号yar
(k)を生成する動作及び数式18を用いて推定信号xr+1
(k)を推定する動作を複数回繰り返さなくてもよくなる。つまり、信号推定ユニット212は、相対的に少ない演算量で、受信信号yから送信信号xを精度よく推定することができる。この場合、補正信号yar
(k)を生成する動作及び推定信号xr+1
(k)を推定する動作を繰り返す回数を示す定数Rは、1に設定されていてもよい。
【0114】
<4>変形例
続いて、通信システムSYSの変形例について説明する。
【0115】
<4-1>信号推定動作の変形例
初めに、
図10を参照しながら、信号推定ユニット212が行う信号推定動作の変形例について説明する。
図10は、信号推定ユニット212が行う信号推定動作の変形例の流れを示すフローチャートである。
【0116】
図10に示すように、変形例においても、信号推定ユニット212は、ステップS20からS22の動作を行う。つまり、信号推定ユニット212に受信信号y
(1)からy
(N)及び伝送路行列Hが入力され、信号推定ユニット212は、初期化動作を行う。その後、信号推定ユニット212は、変数kを1に設定する(ステップS31)。
【0117】
その後、信号推定ユニット212は、受信信号y
(k)と、伝送路行列Hと、パラメータ設定ユニット213が設定したパラメータβ
r
(k)と、推定信号ex
r
(k)とに基づいて、補正信号ya
r
(k)を生成する(ステップS32)。尚、ステップS32の動作は、上述した補正信号ya
r
(k)を生成するための
図9のステップS23の動作と比較して、補正信号ya
r
(k)を生成するために用いる数式が異なる。具体的には、変形例では、信号推定ユニット212は、数式19を用いて、補正信号ya
r
(k)を生成する。
【0118】
【0119】
その後、変形例においても、信号推定ユニット212は、ステップS24からS25の動作を行う。つまり、信号推定ユニット212には、ステップS32で生成した補正信号yar
(k)を用いて、推定信号xer+1
(k)を生成し、内部データvr
(k)及びzr
(k)を更新する。その後、信号推定ユニット212は、変数kが定数Nよりも小さいか否かを判定する(ステップS33)。
【0120】
ステップS33における判定の結果、変数kが定数Nよりも小さいと判定された場合には(ステップS33:No)、信号推定ユニット212は、推定信号xer+1
(1)からxer+1
(k)を生成した一方で、推定信号xer+1
(k+1)からxer+1
(N)を未だ生成していないと想定される。このため、この場合には、信号推定ユニット212は、推定信号xer+1
(k+1)からxer+1
(N)を生成するために、変数kを1だけインクリメントした後(ステップS34)、ステップS23からステップS25までの動作を繰り返す。
【0121】
他方で、ステップS33における判定の結果、変数kが定数Nよりも小さくないと判定された場合には(ステップS33:Yes)、信号推定ユニット212は、推定信号xer+1
(1)からxer+1
(N)の全てを生成したと想定される。この場合には、推定信号xeR
(1)からxeR
(N)が生成されるまで(ステップS26:Yes)、信号推定ユニット212は、推定信号xer+1
(1)からxer+1
(N)を生成する一連の動作を、R回繰り返す(ステップS28、S31からS32、S24からS25及びS33)。その後、信号推定ユニット212は、確定推定信号xefを出力する(ステップS27)。
【0122】
以上説明したように、変形例では、補正信号ya
r
(k)を生成する動作(ステップS32)と、推定信号xe
r+1
(k+1)を生成する動作(ステップS24)と、内部データv
r
(k)及びz
r
(k)を更新する動作(ステップS25)とを含む一連の動作が、変数kを1ずつインクリメントしながらN回繰り返される。ここで、信号推定ユニット212は、上述した数式19を用いて補正信号ya
r
(k)を生成する。このため、信号推定ユニット212は、推定信号xe
r
(k+1)からxe
r
(N)及び推定信号xe
r+1
(1)からxe
r+1
(k-1)に基づいて生成された補正信号ya
r
(k)を用いて、推定信号xe
r+1
(k)を生成する。つまり、
図10のステップS32の動作は、推定信号xe
r
(k+1)からxe
r
(N)のみならず推定信号xe
r+1
(1)からxe
r+1
(k-1)に基づいて補正信号ya
r
(k)を生成する(その結果、推定信号xe
r+1
(k)を生成する)という点で、推定信号xe
r
(1)からxe
r
(N)に基づいて補正信号ya
r
(k)を生成する(その結果、推定信号xe
r+1
(k)を生成する)ステップS23の動作とは異なる。言い換えれば、
図10のステップS32の動作は、推定信号xe
r+1
(1)からxe
r+1
(k-1)に基づいて補正信号ya
r
(k)を生成する(その結果、推定信号xe
r+1
(k)を生成する)という点で、推定信号xe
r+1
(1)からxe
r+1
(k-1)を用いることなく補正信号ya
r
(k)を生成する(その結果、推定信号xe
r+1
(k)を生成する)ステップS23の動作とは異なる。その結果、変形例では、上述した
図9に示す動作と比較して、推定信号ex
r+1
(k)が送信信号x
(k)に収束するまでの時間が短くなる可能性が相対的に高くなる。なぜならば、変形例では、推定信号xe
r+1
(k)を生成するために、変数rをインクリメントする前に生成された推定信号xe
r
(1)からxe
r
(N)の少なくとも一つのみならず、変数rをインクリメントした後に生成された推定信号xe
r+1
(1)からxe
r+1
(N)の少なくとも一つも用いられるからである。つまり、変形例では、信号推定ユニット212は、上述した各種効果を享受しながら、推定信号ex
r+1
(k)が送信信号x
(k)に収束するまでの時間を短くすることができる。
【0123】
<4-2>送信アンテナ10及び受信アンテナ20の変形例
続いて、送信アンテナ10及び受信アンテナ20の変形例について説明する。上述した説明では、通信システムSYSは、アレーアンテナ100が同心円状にM個配置されている送信アンテナ10を備えている。一方で、変形例では、通信システムSYSは、
図11に示すように、アレーアンテナ100が直線状にM個配置されている送信アンテナ10aを備えていてもよい。同様に、上述した説明では、通信システムSYSは、アレーアンテナ200が同心円状にM個配置されている受信アンテナ20を備えている。一方で、変形例では、通信システムSYSは、
図11に示すように、アレーアンテナ200が直線状にM個配置されている受信アンテナ20aを備えていてもよい。このような変形例の送信アンテナ10a及び受信アンテナ20aは、送信アンテナ10及び受信アンテナ20と比較して、設置性に優れている。
【0124】
<5>付記
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
[付記1]
複数の送信アンテナ素子を含む送信アンテナを用いて、送信信号を送信する送信装置と、
複数の受信アンテナ素子を含む受信アンテナを用いて、前記送信装置が送信した前記送信信号を受信信号として受信する受信装置と
を備える通信システムにおいて、前記受信信号から前記送信信号を推定する信号推定装置であって、
前記信号推定装置は、
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナに関するアンテナ情報と、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の伝送距離に関する距離情報と、前記通信システムが用いる搬送波に関する搬送波情報と、前記送信装置で行われる信号処理及び前記受信装置で行われる受信処理に関する処理情報とを含むシステム情報に基づいて、前記受信信号に含まれ且つ前記複数の受信アンテナ素子が夫々受信した複数の受信信号成分及び前記送信信号に含まれ且つ前記複数の送信アンテナ素子が夫々送信した複数の送信信号成分を、前記受信信号成分と前記送信信号成分と相関の強弱に応じた複数の信号グループに分類し、前記信号グループ毎に、信号推定方法の内容を規定するパラメータを、学習動作で学習可能な学習値及び前記学習動作に無関係な固定値のいずれかに設定するパラメータ設定手段と、
前記パラメータ設定手段が設定した前記パラメータによって規定される前記信号推定方法を用いて、前記信号グループ毎に、前記受信信号から前記送信信号の推定値である推定信号を推定する信号推定手段と
を備える信号推定装置。
[付記2]
前記パラメータ設定手段は、
前記システム情報に基づいて、前記送信装置と前記受信装置との間の伝送路の状態を示す伝送路行列を推定し、
前記伝送路行列の各成分の絶対値の大きさを、各成分に対応する一の送信信号成分と一の受信信号成分との間の相関の強さとして用いることで、前記複数の受信信号成分及び前記複数の送信信号成分を、前記複数の信号グループに分類し、
前記伝送路行列と前記複数の信号グループの分類結果とに基づいて、(i)各送信信号成分を、前記複数の受信信号成分から推定する場合に伝送可能な情報量を示す第1通信容量、(ii)各送信信号成分を、各送信信号成分と相関が相対的に強い受信信号成分から推定する場合に伝送可能な情報量の理論値を示す第2通信容量、及び、(iii)前記信号推定手段が用いる前記信号推定方法とは異なる他の信号推定方法を用いて、各送信信号成分を、各送信信号成分と相関が相対的に強い受信信号成分から推定する場合に伝送可能な情報量を示す第3通信容量を算出し、
前記第1から第3通信容量の大小関係に基づいて、前記パラメータを、前記学習値及び前記固定値のいずれかに設定する
付記1に記載の信号推定装置。
[付記3]
前記パラメータ設定手段は、複数の前記パラメータの夫々を、前記学習値及び前記固定値のいずれかに設定し、
前記パラメータ設定手段は、前記第1通信容量と前記第2通信容量とが等しい場合に、前記複数のパラメータのうちの第1のパラメータを前記固定値に設定し、前記第1通信容量と前記第2通信容量とが等しくない場合に、前記第1のパラメータを前記学習値に設定し、
前記パラメータ設定手段は、前記第2通信容量と前記第3通信容量とが等しい場合に、前記複数のパラメータのうちの前記第1のパラメータとは異なる第2のパラメータを前記固定値に設定し、前記第1通信容量と前記第2通信容量とが等しくない場合に、前記第2のパラメータを前記学習値に設定する
付記2に記載の信号推定装置。
[付記4]
前記複数の信号グループのうちの第k(kは、1以上且つN以下の整数を示す変数であり、Nは、前記信号グループの数を示す2以上の定数)番目の信号グループに分類される前記受信信号成分y(k)から、前記第k番目の信号グループに分類される前記送信信号成分x(k)の前記推定信号xe(k)を推定するために、前記信号推定手段は、
前記推定信号xe(k)を推定するために用いられる内部データv(k)及びz(k)と前記推定信号xe(k)とを初期化するための第1動作を行い、
前記第1動作を行った後、前記パラメータ設定手段が設定した前記パラメータに基づいて定まる前記信号推定方法を用いて、前記受信信号成分y(k)と、前記送信装置と前記受信装置との間の伝送路の状態を示す伝送路行列Hの一部であって且つ前記受信信号成分y(k)に対応する成分を含む一方で前記送信信号成分x(k)に対応する成分を含まない部分行列H(k、p)(pは、1以上且つN以下であって且つ変数kとは異なる整数を示す変数)と、前記推定信号xe(0)からxe(k-1)及びxe(k+1)からxe(N-1)とに基づいて、前記受信信号成分y(k)の補正値である補正信号ya(k)を生成する第2動作を行い、
前記第2動作を行った後、前記パラメータ設定手段が設定した前記パラメータに基づいて定まる前記信号推定方法を用いて、前記補正信号ya(k)と、前記伝送路行列Hの一部であって且つ前記受信信号成分y(k)及び前記送信信号成分x(k)に対応する成分を含む部分行列H(k、k)と、前記内部データv(k)及びz(k)とに基づいて、前記推定信号xe(k)を更新することで、前記推定信号xe(k)を推定し直す第3動作を行い、
前記第2及び第3動作をR(Rは、2以上の整数を示す定数)回繰り返した後、前記送信信号成分x(k)がとり得る複数の信号成分候補のうち、前記推定信号xe(k)に最も近い一の信号成分候補を出力し、
前記信号推定手段は、前記第2動作をr回目に行う場合には、r-1回目に行われた前記第3動作によって推定された前記推定信号xe(0)からxe(k-1)及びxe(k+1)からxe(N-1)に基づいて、前記補正信号ya(k)を生成する
付記1から3のいずれか一項に記載の信号推定装置。
[付記5]
前記複数の信号グループのうちの第k(kは、1以上且つN以下の整数を示す変数であり、Nは、前記信号グループの数を示す2以上の定数)番目の信号グループに分類される前記受信信号成分y(k)から、前記第k番目の信号グループに分類される前記送信信号成分x(k)の前記推定信号xe(k)を推定するために、前記信号推定手段は、
前記推定信号xe(1)からxe(N)を夫々推定するために用いられる内部データv(1)からv(N)及びz(1)からz(N)と前記推定信号xe(1)からxe(N)を初期化するための第1動作を行い、
前記第1動作を行った後、前記パラメータ設定手段が設定した前記パラメータに基づいて定まる前記信号推定方法を用いて、前記受信信号成分y(k)と、前記送信装置と前記受信装置との間の伝送路の状態を示す伝送路行列Hの一部であって且つ前記受信信号成分y(k)に対応する成分を含む一方で前記送信信号成分x(k)に対応する成分を含まない部分行列H(k、p)(pは、1以上且つN以下であって且つ変数kとは異なる整数を示す変数)と、前記推定信号xe(0)からxe(k-1)及びxe(k+1)からxe(N-1)とに基づいて、前記受信信号成分y(k)の補正値である補正信号ya(k)を生成し、且つ、前記パラメータ設定手段が設定した前記パラメータに基づいて定まる前記信号推定方法を用いて、前記補正信号ya(k)と、前記伝送路行列Hの一部であって且つ前記受信信号成分y(k)及び前記送信信号成分x(k)に対応する成分を含む部分行列H(k、k)と、前記内部データv(k)及びz(k)とに基づいて、前記推定信号xe(k)を更新することで、前記推定信号xe(k)を推定し直す所定処理を、前記変数kを1からNまで更新しながらN回繰り返す第2動作を行い、
前記第2動作をR(Rは、2以上の整数を示す定数)回数繰り返した後、前記送信信号成分x(k)がとり得る複数の信号成分候補のうち、前記推定信号xe(k)に最も近い一の信号成分候補を出力し、
前記信号推定手段は、r(rは、1以上且つR以下の整数を示す変数)回目の前記第2動作においてk回目の前記所定処理を行う場合には、r-1回目の前記第2動作におけるk+1回目からN回目の前記所定処理によって推定された前記推定信号xe(k+1)からxe(N)及びr回目の前記第2動作における1回目からk-1回目の前記所定処理によって推定された前記推定信号xe(1)からxe(k-1)に基づいて、前記補正信号ya(k)を算出する
付記1から3のいずれか一項に記載の信号推定装置。
[付記6]
前記送信アンテナは、円形に等間隔に配置されたN(但し、Nは2以上の整数を示す定数)個の前記送信アンテナ素子を含む送信アレーアンテナが同心円状にM(但し、Mは1以上の整数)個配列されているアンテナであり、
前記受信アンテナは、円形に等間隔に配置されたN個の前記受信アンテナ素子を含む受信アレーアンテナが同心円状にM個配列されているアンテナである
付記1から5のいずれか一項に記載の信号推定装置。
[付記7]
前記送信アンテナは、円形に等間隔に配置されたN(但し、Nは2以上の整数を示す定数)個の前記送信アンテナ素子を含む送信アレーアンテナが直線状にM(但し、Mは1以上の整数)個配列されているアンテナであり、
前記受信アンテナは、円形に等間隔に配置されたN個の前記受信アンテナ素子を含む受信アレーアンテナが直線状にM個配列されているアンテナである
付記1から5のいずれか一項に記載の信号推定装置。
[付記8]
前記受信装置は、前記信号処理として、前記複数の受信信号成分を、所定個数の前記受信信号成分の単位で離散フーリエ変換処理を施す変換手段を更に備え、
前記信号推定手段は、前記離散フーリエ変換処理が施された前記受信信号から前記推定信号を推定する
付記1から7のいずれか一項に記載の信号推定装置。
[付記9]
前記学習動作は、前記送信信号のサンプル値と前記受信信号のサンプル値とを含む学習データに基づいて、前記受信信号のサンプル値と前記信号推定方法とに基づいて推定される前記推定信号と前記送信信号のサンプル値との誤差に関する損失関数が最小になるように前記パラメータを更新する動作を含む
付記1から8のいずれか一項に記載の信号推定装置。
[付記10]
複数の送信アンテナ素子を含む送信アンテナを用いて、送信信号を送信する送信装置と、
複数の受信アンテナ素子を含む受信アンテナを用いて、前記送信装置が送信した前記送信信号を受信信号として受信する受信装置と
を備える通信システムにおいて、前記受信信号から前記送信信号を推定する信号推定方法であって、
前記信号推定方法は、
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナに関するアンテナ情報と、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の伝送距離に関する距離情報と、前記通信システムが用いる搬送波に関する搬送波情報と、前記送信装置で行われる信号処理及び前記受信装置で行われる受信処理に関する処理情報とを含むシステム情報に基づいて、前記受信信号に含まれ且つ前記複数の受信アンテナ素子が夫々受信した複数の受信信号成分及び前記送信信号に含まれ且つ前記複数の送信アンテナ素子が夫々送信した複数の送信信号成分を、前記受信信号成分と前記送信信号成分と相関の強弱に応じた複数の信号グループに分類し、
前記信号グループ毎に、信号推定方法の内容を規定するパラメータを、学習動作で学習可能な学習値及び前記学習動作に無関係な固定値のいずれかに設定し、
前記設定されたパラメータによって規定される前記信号推定方法を用いて、前記信号グループ毎に、前記受信信号から前記送信信号の推定値である推定信号を推定する
信号推定方法。
[付記11]
コンピュータに信号推定方法を実行させるコンピュータプログラムであって、
前記信号推定方法は、
複数の送信アンテナ素子を含む送信アンテナを用いて、送信信号を送信する送信装置と、
複数の受信アンテナ素子を含む受信アンテナを用いて、前記送信装置が送信した前記送信信号を受信信号として受信する受信装置と
を備える通信システムにおいて、前記受信信号から前記送信信号を推定する信号推定方法であって、
前記信号推定方法は、
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナに関するアンテナ情報と、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の伝送距離に関する距離情報と、前記通信システムが用いる搬送波に関する搬送波情報と、前記送信装置で行われる信号処理及び前記受信装置で行われる受信処理に関する処理情報とを含むシステム情報に基づいて、前記受信信号に含まれ且つ前記複数の受信アンテナ素子が夫々受信した複数の受信信号成分及び前記送信信号に含まれ且つ前記複数の送信アンテナ素子が夫々送信した複数の送信信号成分を、前記受信信号成分と前記送信信号成分と相関の強弱に応じた複数の信号グループに分類し、
前記信号グループ毎に、信号推定方法の内容を規定するパラメータを、学習動作で学習可能な学習値及び前記学習動作に無関係な固定値のいずれかに設定し、
前記設定されたパラメータによって規定される前記信号推定方法を用いて、前記信号グループ毎に、前記受信信号から前記送信信号の推定値である推定信号を推定する
コンピュータプログラム。
【0125】
本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う信号推定装置、信号推定方法、及び、コンピュータプログラムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0126】
1 送信装置
11 信号処理装置
2 受信装置
21 信号処理装置
211 変換ユニット
212 信号推定ユニット
213 パラメータ設定ユニット
SYS 通信システム
x 送信信号
y 受信信号