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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20250128BHJP
   B24B 5/04 20060101ALI20250128BHJP
   B24B 5/37 20060101ALI20250128BHJP
   B23Q 1/76 20060101ALI20250128BHJP
   B23Q 11/12 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
B24B41/06 J
B24B5/04
B24B5/37
B24B41/06 C
B23Q1/76 R
B23Q11/12 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020189226
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078505
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 光晴
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-042488(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103624561(CN,A)
【文献】特開2005-313272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
B24B 5/04
B24B 5/16
B24B 5/37
B23Q 1/76
B23Q 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械であって、
ワークを回転させる主軸台と、
前記ワークを加工する工具と、
前記ワークの回転軸線と交差する方向に前記工具を移動させる送り装置と、
前記工具とともに前記ワークを挟む位置で前記ワークに接触するシューを有するレスト装置と、
前記シューに対して予め定められた量の潤滑油を供給する潤滑油供給装置と、
前記潤滑油供給装置からの前記潤滑油の供給をオン・オフするスイッチと、
を備え、
前記シューは、
前記ワークと接触する接触面と、
前記接触面に形成された潤滑溝と、
前記潤滑油供給装置から前記潤滑溝に前記潤滑油を供給する貫通孔と、
前記接触面に前記潤滑溝に連通する凹部として形成され、前記潤滑溝から前記接触面の上方の端部に至る排出路と、
を有する、工作機械。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械であって、
前記潤滑油供給装置は、前記ワークと前記シューとが接触している場合には、前記シューに前記潤滑油を供給し、前記シューが前記ワークに接触していない場合には、前記シューに前記潤滑油を供給しない、工作機械。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の工作機械であって、
前記潤滑油供給装置は、定量吐出型のポンプを有する、工作機械。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の工作機械であって、
前記シューとして2つのシューを有し、
2つの前記シューのうち、第1のシューは、前記回転軸線を含む鉛直面を挟んで前記工具と反対側から前記ワークに接触し、第2のシューは、前記回転軸線を含む水平面よりも下方側かつ前記鉛直面よりも前記工具の側から接触する、工作機械。
【請求項5】
請求項4に記載の工作機械であって、
前記潤滑油供給装置は、ポンプと2つの前記シューとの間に配置される定量吐出機能を有する分配器を有する、工作機械。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の工作機械であって、
前記第2のシューの端部における前記排出路の底面の高さ方向の位置は、前記排出路の前記潤滑溝の側における前記接触面の側の位置よりも高い位置である、工作機械。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の工作機械であって、
前記スイッチのオン・オフによって、前記主軸台による前記ワークの回転・停止動作が、前記潤滑油の供給のオン・オフに連動して制御される、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークを研削する研削装置が開示されている。この研削装置では、摺動ブロックを用いてワークを支持している。摺動ブロックとワークとの間の摩擦の低減や、研削くずの排除のために、摺動ブロックとワークとの境界の接触面に潤滑油が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-292351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
摺動ブロックとワークとの摩擦を低減するには、十分な量の潤滑油を供給する必要がある。しかし、摺動ブロックから潤滑油を供給する場合、潤滑油の供給量が多すぎると、潤滑油の圧力により、ワークの位置が半径方向に移動するおそれがあった。また、ワークの下面と側面との2箇所に潤滑油を供給する場合、供給圧を同じ程度にすることができず、供給圧の低い箇所が生じて、潤滑油を安定に供給できない場合がありえた。更に、ワークの交換時に、潤滑油が摺動ブロックから垂れ流しにならないように、油路に設けたコックを手動で閉じるなければならない場合があった。したがって、潤滑油を適切に供給する構成が求められている。この課題は、研削装置に限られず、旋盤などの工作機械にも生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、工作機械が提供される。この工作機械は、ワークを回転させる主軸台と、前記ワークを加工する工具と、前記ワークの回転軸線と交差する方向に前記工具を移動させる送り装置と、前記工具とともに前記ワークを挟む位置で前記ワークに接触するシューを有するレスト装置と、前記シューに対して予め定められた量の潤滑油を供給する潤滑油供給装置と、前記潤滑油供給装置からの前記潤滑油の供給をオン・オフするスイッチと、を備え、前記シューは、前記ワークと接触する接触面と、前記接触面に形成された潤滑溝と、前記潤滑油供給装置から前記潤滑溝に前記潤滑油を供給する貫通孔と、前記接触面に前記潤滑溝に連通する凹部として形成され、前記潤滑溝から前記接触面の上方の端部に至る排出路と、を有する。この形態の工作機械によれば、スイッチにより潤滑油供給装置からの潤滑油の供給をオン・オフできるた。また、潤滑油供給装置は、シューに対して予め定められた量の潤滑油を供給するので、潤滑油があふれる漏れることはない。潤滑油の圧力は、排出路を通ってシューの上方に抜けるので、油圧によるワークの姿勢変化を抑制できる。
(2)上記形態の工作機械において、前記潤滑油供給装置は、前記ワークと前記シューとが接触している場合には、前記シューに前記潤滑油を供給し、前記シューが前記ワークに接触していない場合には、前記シューに前記潤滑油を供給しなくてもよい。この形態の工作機械によれば、シューがワークに接触していない場合には、シューに潤滑油が供給されないので、潤滑油がシューからあふれ漏れることはない。
(3)上記形態の工作機械において、前記潤滑油供給装置は、定量吐出型のポンプを有してもよい。この形態の工作機械によれば、潤滑油供給装置は、定量吐出型のポンプを有しているので、シューに予め定められた量の潤滑油を供給できる。
(4)上記形態の工作機械において、前記シューとして2つのシューを有し、2つの前記シューのうち、第1のシューは、前記回転軸線を含む鉛直面を挟んで前記工具と反対側から前記ワークに接触し、第2のシューは、前記回転軸線を含む水平面よりも下方側かつ前記鉛直面よりも前記工具の側から接触してもよい。この形態の工作機械によれば、ワークがシューから落下することを抑制できる。
(5)上記形態の工作機械において、前記潤滑油供給装置は、ポンプと2つの前記シューとの間に配置される定量吐出機能を有する分配器を有してもよい。この形態の工作機械によれば、2つのシューにそれぞれ予め定められた量の潤滑油を供給できる。
(6)上記形態の工作機械において、前記第2のシューの端部における前記排出路の高さ方向の位置は、前記排出路の前記潤滑溝の側における前記接触面の側の位置よりも高い位置であってもよい。この形態の工作機械によれば、潤滑溝を潤滑油溜まりとして利用できる。
(7)上記形態の工作機械において、前記スイッチは、前記主軸台の動作と連動し、前記主軸台が前記ワークを回転させる場合には、前記スイッチをオンとし、前記主軸台が前記ワークを回転させない場合には、前記スイッチをオフとしてもよい。この形態によれば、ワークの回転に合わせて潤滑油を供給できる。
(8)本開示は、工作機械以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、研削機械・装置、旋盤等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】z方向に長尺のベッド上に各種装置が載置されていない状態の工作機械の平面図である。
図2】各種装置が載置された状態の工作機械の状態を模式的に示す説明図である。
図3】テーブル上の各種装置及びワークを平面視にて示す説明図である。
図4】工作機械のレスト装置の斜視図である。
図5】工作機械をz方向から見た図である。
図6】第1のシューを示す説明図である。
図7】第2のシューを示す説明図である。
図8】排出路を通る断面で第2のシューを切った断面を示す説明図である。
図9】潤滑油供給の制御ブロックを示す説明図である。
図10】作業者が行う工作機械によるワークの加工処理工程を示す説明図である。
図11】NC制御装置が実行するワークの研削サイクルの処理フローチャートである。
図12】潤滑油供給の制御ブロックを示す説明図である。
図13】第3実施形態の第2のシューを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
・第1実施形態:
図1は、一方向に長尺のベッド上に各種装置が載置されていない状態の工作機械100の平面図である。図2は、各種装置が載置された状態の工作機械100の状態を模式的に示す説明図である。図3は、テーブル70上の各種装置及びワーク200を平面視にて示す説明図である。案内台75案内台75工作機械100の設置は、まず第1ベッド部20,第2ベッド部30が設置されその水平水準等が調整され、その後ベッド上に加工用の各種機器を搭載される。
【0009】
本実施形態の工作機械(研削盤)100は、砥石車91を用いてワーク200を研削する装置である。工作機械100は、第1ベッド部20と、第2ベッド部30と、テーブル70と、案内台75と、主軸台80と、心押台82と、砥石台90と、を備える。第1ベッド部20は、細長い直方体形状を有している。第1ベッド部20の長手方向をz方向とし、鉛直方向をy方向、z方向及びy方向と交差する方向をx方向と呼ぶ。第1ベッド部の上面には、レール形状を有する案内面61、62がz方向に沿って配置されている。案内面61、62の上には、テーブル70が載置されている。テーブル70は、第1ベッド部20上を案内面61、62に沿ってz方向に移動可能に設けられている。
【0010】
テーブル70の上には、案内面である一対の案内面71、72がz方向に沿って配置されている。案内面71、72の上には、各種の装置が配置されている。各種の装置には、図3に示すように、主軸台80と、心押台82、レスト装置84、87が含まれている。主軸台80と、心押台82は、それぞれセンタ81、83を有し、ワーク200の軸O1に沿った方向からセンタ81、83を用いてワーク200を押すことで、ワーク200を支持する。ワーク200は、ロール部200aと、ロール部200aの両端部側のジャーナル部200bとを有している。レスト装置84は、ワーク200のジャーナル部200bにおいて、ワーク200の下面および側面に接触する二つのシュー85、86を有し、レスト装置87は、ワーク200のジャーナル部200bにおいて、ワーク200の下面および側面に接触するシュー88、89を有している。本実施形態において、ワーク200には、ジャーナル部200bにケレ(回し金)が取り付けられ、ケレを用いて、ワーク200を回転させる。ケレに代えて、ユニバーサルジョイントで回転伝達してもよい。レスト装置84、87は、受台84、87とも呼ぶ。
【0011】
第2ベッド部30は、第1ベッド部20のz方向のほぼ中央において、第1ベッド部20のx方向に配置されている。第2ベッド部30は、第1ベッド部の長手方向の中央に限らず、長手方向の中間であればよい。第2ベッド部30の上には、案内台75が配置される。案内台75の上には、案内面76、77が配置されている。案内面76、77の上には、砥石台90が配置されている。砥石台90は、砥石車91を有している。砥石車91は、軸O1と平行な回転軸O2を中心として回転する。軸O1と軸O2との垂直方向高さは同一にされている。砥石台90は、x方向に移動可能であり、回転させた砥石車91をワーク200に接触させることで、ワーク200を研削加工する。砥石台90は、砥石車91を回転駆動するモータを内蔵している。
【0012】
図4は、工作機械100のレスト装置84の斜視図である。図5は、工作機械100をz方向から見た図である。
【0013】
第1ベッド部20の上には、案内面61、62に沿ってz方向に移動可能なテーブル70が載置され、テーブル70の上には、案内面71、72が配置されている。案内面71、72の上には、案内面71、72に沿ってz方向に移動可能な、主軸台80、心押台82と、レスト装置84、87が配置されている。ワーク200は、円筒形のロール部200aと、ロール部200aの両端のジャーナル部200bとを有している。図3に示すように、主軸台80は、ワーク200の一方のジャーナル部200bにおいて、ワーク200の回転軸線O1に当たるセンタ81を有し、心押台82は、ワーク200の他方のジャーナル部200bにおいて、ワーク200の回転軸線O1に当たるセンタ83を有している。
【0014】
第2ベッド部30の上には、案内面76がx方向に沿って配置されている。案内面76の上には、砥石台90が載置されており、砥石台90は、案内面76に沿ってx方向に移動可能である。砥石台90の上には、砥石車91を有する砥石台90が載置されている。砥石台90が案内面76に沿って、x方向に移動することにより、砥石台90、砥石車91もx方向に移動し、ワーク200を加工する。
【0015】
レスト装置84は、第1のシュー85と、第2のシュー86と、潤滑油供給装置163と、を備える。潤滑油供給装置163は、潤滑油タンク165と、ポンプ166と、分配器167と、潤滑油供給管168、169と、を備える。第1のシュー85は、回転軸線O1を通る鉛直面Vsよりもレスト装置84側、すなわち、鉛直面Vsを挟んで砥石車91と反対側に配置されている。第2のシュー86は、回転軸線O1を通る鉛直面Vsよりも砥石車91側、かつ、回転軸線O1を通る水平面Hsよりも下方側に配置されている。そのため、第2のシュー86の中心を通る軸線Ssは、鉛直面Vsからθだけ傾いている。第1のシュー85は、第2のシュー86は、ワーク200のジャーナル部200bと接触する。
【0016】
潤滑油タンク165は、潤滑油を貯蔵するタンクである。ポンプ166は、潤滑油タンク165の潤滑油を汲み上げて分配器167に送る。分配器167は、ポンプ166から送られた潤滑油を潤滑油供給管168、169に分配する。分配器167は、内部に複数のシリンジを備えており、定量吐出機能を有する。分配器167は、潤滑油供給管168、169のそれぞれに、シリンジの容積により決まる一定量の潤滑油を分配する。潤滑油供給管168は、第1のシュー85に接続されており、第1のシュー85に潤滑油を供給する。潤滑油供給管169は、第2のシュー86に接続されており、第2のシュー86に潤滑油を供給する。第1のシュー85、第2のシュー86は、ワーク200が主軸台80および芯押台82間に取り付けられると、ワーク200のジャーナル部200bと接触し、ワーク200が取り外されるとジャーナル部200bから離間する。
【0017】
図6は、第1のシュー85の形状を示す説明図である。第1のシュー85は、レスト装置84への取り付け状態で、ワーク200のジャーナル部200bに接触する接触面85aと、接触面85aの中央部に長手方向に沿って形成された潤滑溝85bと、潤滑溝85bの中心底部に設けられた貫通孔85cと、潤滑溝85bの両端から上方外周に向けて形成された排出路85dと、を備える。第1のシュー85は、その潤滑溝85bの長手方向がz方向に一致し、排出路85dが上方に開口するする様に、レスト装置84に取り付けられる。接触面85aは、ワーク200のジャーナル部200bの曲率よりも小さな曲率を有する凹面であり、ワーク200のジャーナル部200bと接触可能な面である。潤滑溝85bは、接触面85aにおいて、潤滑油を貯留する機能を有する。貫通孔85cは、第1のシュー85を厚み方向に貫通しており、第1のシュー85の底部において潤滑油供給管168と接続している。このため、潤滑油は、潤滑油供給管168から、第1のシュー85の内部を通って潤滑溝85bに潤滑油を供給する。排出路85dは、潤滑溝85bから、接触面85aに沿って第1のシュー85の上方の端部に至っている。潤滑溝85bにおいて余剰となった潤滑油は、排出路85dから外部に排出される。第1のシュー85の排出路85dは、潤滑溝85bから上方に向けて形成されているので、排出路85dの端部の高さ方向の位置85eは、潤滑溝85bの上端の位置85fより距離ΔL1だけ高い。このため、第1のシュー85の接触面85aにワーク200のジャーナル部200bが接触していれば、潤滑溝85bに供給された潤滑油は、潤滑溝85bを満たした状態となる。また、潤滑溝85bは排出路85dを介して大気に連通されているので、第1のシュー85に接触したワーク200のジャーナル部200bが、ポンプ166による潤滑油の供給圧を受けて、x方向の位置に変動を生じるといったおそれもない。
【0018】
図7は、第2のシュー86を示す説明図である。第2のシュー86は、レスト装置84への取り付け状態で、ワーク200のジャーナル部200bに接触する接触面86aと、接触面86aの中心に長手方向に沿って形成された潤滑溝86bと、潤滑溝86bの中心底部に設けられた貫通孔86cと、潤滑溝86bの長手方向中央において両側外周に向けて形成された排出路86dと、を備える。第2のシュー86は、その潤滑溝86bの長手方向が、z方向に一致する様に、レスト装置84に取り付けられる。図8は、第2のシュー86を、排出路86dの中心を通るx-z平面で切った断面を示す説明図である。接触面86aは、ワーク200のジャーナル部200bの曲率よりもわずかに小さな曲率を有する凹面であり、ワーク200のジャーナル部200bと接触可能な面である。潤滑溝86bは、接触面86aにおいて、潤滑油を貯留する機能を有する。貫通孔86cは、第2のシュー86を厚み方向に貫通しており、第2のシュー86の底部において潤滑油供給管169に接続している。このため、潤滑油は、潤滑油供給管169から、第2のシュー86の内部を通って潤滑溝86bに供給される。排出路86dは、潤滑溝86bから、接触面86aに沿って第2のシュー86の上方の端部に至っており、潤滑溝86bにおいて余剰となった潤滑油は、排出路86dの端部から外部に排出される。第2のシュー86は、図5図8に示したように、ワーク200の回転軸線O1の鉛直下方よりも僅かにx方向に変位して、ジャーナル部200bを囲む円周上に配置されている。つまり、図示するように、第2のシュー86の中心軸Ssは、鉛直面Vsに対して僅かな角度θだけ傾いており、接触面86aに設けられた排出路86dの両端のうち、砥石台90とは反対側の端部は他端より低くなるが、この状態でも、この排出路86dの端部の底面の位置86eは、潤滑溝86bの上端の位置86fより鉛直方向において距離ΔL2だけ高い。このため、第2のシュー86の接触面86aにワーク200のジャーナル部200bが接触していれば、潤滑溝86bに供給された潤滑油は、潤滑溝86bを満たした上でしか排出路86dから排出されない。したがって、潤滑溝86bは、常に満たされた状態となる。また、潤滑溝86bは排出路86dを介して大気に連通されているので、第2のシュー86に接触したワーク200のジャーナル部200bが、ポンプ166による潤滑油の供給圧を受けて、x方向の位置あるいはy方向の位置に変動を生じるといったおそれもない。
【0019】
図9は、潤滑油供給の制御ブロックを示す説明図である。NC制御装置160は、用意されたプログラムに従って、工作機械100の全体の制御を行う。NC制御装置160は、ワーク200の研削サイクルを開始させる研削サイクルボタン161を備える。NC制御装置160には、工作機械100の各装置を指示に従って動作させるためのシーケンス回路162が接続されている。シーケンス回路162の出力の一つは、ポンプ166を駆動するモータ164に接続されている。NC制御装置160は、工作機械100の図示しない他のモータ、例えば砥石台90をワーク200に向けて前進・後退させるモータや、主軸台80等を搭載したテーブル70をz方向に移動させるモータ等を駆動する信号D1~Dnを出力可能である。NC制御装置160は、モータ164等を所定のタイミングで動作させる。モータ164により駆動されるポンプ166は、上述したように、潤滑油タンク165から潤滑油を汲み上げて、分配器167に送る。分配器167は、所定の量の潤滑油を、潤滑油供給管168、169に分配する。
【0020】
図10は、作業者が行う工作機械100によるワークの加工処理工程を示す説明図であるステップS10では、作業者は、工作機械100にワーク200を搬入する。このとき、作業者は、ワーク200の主軸台80側のジャーナル部に回し金を取り付け、レスト装置84、87に、ワーク200のジャーナル部200bを載置する。その後、作業者は、主軸台80に設けられている駆動ピンと回し金を回転方向に係合させる。ワーク200は、主軸台80により、回転可能とされる。
【0021】
ステップS20では、作業者は、NC制御装置160の研削サイクルボタン161を押すと、研削サイクルボタン161が点灯する。ステップS30では、工作機械100によるワーク200の研削サイクルが実行される。研削サイクルについては、後述する。
【0022】
研削サイクルが終了すると、自動的に研削サイクルボタン161が消灯する。ステップS40となると、ワーク200を安全に取り外すことが可能となる。
【0023】
ステップS50では、作業者は、工作機械100からワークを搬出する。作業者は、主軸台80に設けられている駆動ピンと回し金との係合を解除し、レスト装置84、87からワーク200を移動させ、回し金を取り外す。
【0024】
図10は、NC制御装置160が実行するワーク200の研削サイクルの処理フローチャートである。ステップS31では、NC制御装置160は、シーケンス回路162を介して必要な信号を出力し、自ら必要な信号を出力し、砥石台90の砥石車91を回転させ、主軸台80によってワーク200を回転させ、モータ164を駆動して。ポンプ166により潤滑油を供給させる。なお、このとき、併せてクーラントをワーク200に供給するなど、機械加工に必要な他の動作も行う。
【0025】
ステップS32では、NC制御装置160は、ワーク200のロール部200aの左端と砥石車91のz方向の位置を合わせるように、テーブル70を移動する。ここで、ワーク200のロール部200aの左端とは、砥石台90に向き合った状態での左側、つまりワーク200の主軸台80側を意味する。
【0026】
ステップS33では、NC制御装置160は、ワーク200に向けて、砥石台90を前進させる。
【0027】
ステップS34では、NC制御装置160は、砥石車91を用いてワーク200のロール部200aを研削しながら、テーブル70を左側に、すなわち、主軸台80が砥石台90から遠ざかる方向に移動させる。これにより、ワーク200のロール部200aが、その左端から右端に向けて連続的に研削される。
【0028】
ステップS35で、ワークのロール部200aの右端、すなわち、心押台82側が砥石車91の位置まで達すると、NC制御装置160は、処理をステップS36に移行する。
【0029】
ステップS36では、NC制御装置160は、ワーク200から砥石台90を後退させる。
【0030】
ステップS37では、NC制御装置160は、砥石台90の砥石車91の回転を停止し、主軸台80に動作を停止させてワーク200の回転を停止させ、更にポンプ166を止めて、潤滑油の供給を停止させる。もとより、クーラントの供給停止なども併せて行ってもよい。なお、NC制御装置160は、ステップS37を実行せず、作業者が、非常停止ボタンを押したときに、図11のステップS37の処理を実行してもよい。
【0031】
以上、第1実施形態によれば、NC制御装置160は、ワーク200の研削と、潤滑油の供給とを連動させ、ワーク200のジャーナル部200bと第1のシュー85、第2のシュー86とが接触している場合に第1のシュー85、第2のシュー86に潤滑油を供給し、ワーク200と第1のシュー85、第2のシュー86とが接触していない状態となる場合に、第1のシュー85、第2のシュー86に潤滑油を供給しないので、ワーク200を搬出したことにより、潤滑油が第1のシュー85、第2のシュー86から溢れることがない。なお、NC制御装置160は、ワーク200の研削と、潤滑油の供給とを、必ずしも連動させる必要は無い。潤滑油供給装置163からの潤滑油の供給をオン・オフするスイッチをNC制御装置160に設け、作業者が、スイッチをオン・オフすることで、ワーク200のジャーナル部200bと第1のシュー85、第2のシュー86とが接触している場合に第1のシュー85、第2のシュー86に潤滑油を供給し、ワーク200と第1のシュー85、第2のシュー86とが接触していない場合に、第1のシュー85、第2のシュー86に潤滑油を供給しないようにしてもよい。
【0032】
第1実施形態によれば、NC制御装置160は、内部にシリンジを有する分配器167を用いて、第1のシュー85、第2のシュー86に対して予め定められた一定量の潤滑油を分配し、供給するので、機械工作に必要な量の潤滑油を潤滑溝85b、86bに貯留しておくことができ、潤滑油の過不足が生じることがない。また、潤滑油の圧力は、排出路85d、86dを通って第1のシュー85、第2のシュー86の上方に抜けるので、油圧によるワーク200の姿勢変化を抑制できる。なお、上述した作用効果は、レスト装置87の側においても同様である。
【0033】
・第2実施形態:
図12は、潤滑油供給の制御ブロックを、潤滑油供給装置263を中心に示す説明図である。第1実施形態では、図9に示したように、シリンジを有する分配器167を用いて、潤滑油供給管168、169に予め定められた一定量の潤滑油を分配し、供給した。これに対して、第2実施形態では、分配器167を用いず、潤滑油供給管168に対してポンプ166を用いて潤滑油を供給し、潤滑油供給管169に対して、モータ170により駆動されるポンプ171を用いて潤滑油を供給する。なお、ポンプ166、171として、定量吐出型のポンプ、例えばシリンジ型のポンプを用いれば、一定量の潤滑油を供給可能である。
【0034】
・第3実施形態:
図13は、第3実施形態の第2のシュー186を示す説明図である。第2のシュー186は、第1実施形態の第2のシュー86と比較すると、接触面186aの四隅に切り欠き186gが形成されており、第1実施形態の接触面86aと比較すると、接触面186aの面積が小さくなっている。これにより、ワーク200と、第2のシュー186との接触抵抗を低減できる。なお、図13に示す接触面186aは、ワーク200側から見たときに、「+」(プラス)の形状を有しているが、接触面186aの面積を小さくできれば、「+」の形状以外の形状であってもよい。例えば、ワーク200側から接触面186aを見たときに、四隅をカットした八角形の形状であってもよい。第1のシューにおいても、同様に、接触面の面積を狭くしてもよい。
【0035】
上記各実施形態において、ワーク200を加工する工具として、砥石車91を用いたが、ワーク200を加工する工具として、バイトを用いることができる。この場合、工作機械は、旋盤となる。
【0036】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
20…第1ベッド部、30…第2ベッド部、61…案内面、70…テーブル、71、72…案内面、75…案内台、76、77…案内面、80…主軸台、81、83…センタ、82…心押台、84…レスト装置(受台)、85…第1のシュー、85a…接触面、85b…潤滑溝、85c…貫通孔、85d…排出路、85e…位置、85f…位置、86…第2のシュー、86a…接触面、86b…潤滑溝、86c…貫通孔、86d…排出路、86e…位置、86f…位置、87…レスト装置、88、89…シュー、90…砥石台、91…砥石車、100…工作機械、160…NC制御装置、161…研削サイクルボタン、162…シーケンス回路、163…潤滑油供給装置、164…モータ、165…潤滑油タンク、166…ポンプ、167…分配器、168…潤滑油供給管、169…潤滑油供給管、170…モータ、171…ポンプ、186…第2のシュー、186a…接触面、186b…潤滑溝、186c…貫通孔、186d…排出路、186e…位置、186f…位置、186g…切欠、200…ワーク、200a…ロール部、200b…ジャーナル部、263…潤滑油供給装置、D1…信号、Hs…水平面、O1…回転軸線、O2…回転軸、Vs…鉛直面、ΔL1…距離、ΔL2…距離
図1
図2
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図6
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図11
図12
図13