(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】エアチャック
(51)【国際特許分類】
B25J 15/04 20060101AFI20250128BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20250128BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
B25J15/04 C
B25J19/06
B25J15/08 C
(21)【出願番号】P 2021067506
(22)【出願日】2021-04-13
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】三枝 将大
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-090594(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102017109291(DE,A1)
【文献】特開2006-272476(JP,A)
【文献】特開平04-235746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィンガを備えたチャックユニットと、ロボットアーム等に取り付けられるバルブユニットとからなるエアチャックであって、
前記チャックユニットは、前記複数のフィンガを駆動するピストンの両側に設けられる第1圧力室および第2圧力室を備え、前記バルブユニットは、前記第1圧力室および前記第2圧力室の一方に接続される第1出力エア流路、前記第1圧力室および前記第2圧力室の他方に接続される第2出力エア流路、前記第1出力エア流路に接続される第1電磁弁および前記第2出力エア流路に接続される第2電磁弁を備え、前記第1電磁弁は、通電時に前記第1出力エア流路をエア供給源に接続し、非通電時に前記第1出力エア流路を大気に開放するものであり、前記第2電磁弁は、通電時に前記第2出力エア流路を大気に開放し、非通電時に前記第2出力エア流路をエア供給源に接続するものであ
り、
前記チャックユニットは、前記バルブユニットに対して、前記バルブユニットの中心軸周りの角度が異なる第1回転位置と第2回転位置とで選択的に連結可能であり、前記第1回転位置では、前記第1出力エア流路が前記第1圧力室に接続されるとともに前記第2出力エア流路が前記第2圧力室に接続され、前記第2回転位置では、前記第1出力エア流路が前記第2圧力室に接続されるとともに前記第2出力エア流路が前記第1圧力室に接続されるエアチャック。
【請求項2】
請求項
1記載のエアチャックにおいて、
前記バルブユニットは、単一の供給ポートと、可変絞り弁を備えた第1排気ポートと、可変絞り弁を備えた第2排気ポートとを備え、前記供給ポートは所定の流路を介して前記第1電磁弁および前記第2電磁弁に接続され、前記第1排気ポートは所定の流路を介して前記第1電磁弁に接続され、前記第2排気ポートは所定の流路を介して前記第2電磁弁に接続されるエアチャック。
【請求項3】
請求項
1記載のエアチャックにおいて、
前記バルブユニットは、円筒状の外壁部を有するバルブユニット本体を含み、前記チャックユニットは、前記バルブユニット本体に連結される円盤状のコネクタボデイを含むエアチャック。
【請求項4】
請求項
3記載のエアチャックにおいて、
前記第1電磁弁および前記第2電磁弁は、前記バルブユニット本体に装着され、前記バルブユニット本体の前記外壁部には、前記第1電磁弁および前記第2電磁弁の着脱を可能にする開口部が設けられるエアチャック。
【請求項5】
請求項
4記載のエアチャックにおいて、
前記バルブユニット本体には、前記開口部を覆う円筒状の防水カバーが設けられるエアチャック。
【請求項6】
請求項
3記載のエアチャックにおいて、
前記チャックユニットは、前記ピストンの位置を検出する磁気センサを備え、前記磁気センサのリード線、前記第1電磁弁のリード線および前記第2電磁弁のリード線が接続される電気コネクタが前記バルブユニット本体の前記外壁部に設けられるエアチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームや搬送装置(以下「ロボットアーム等」という)に取り付けられるエアチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークを把持する開閉チャックをロボットのアームの先端側に設ける技術が知られている。例えば、特許文献1には、ロボットのアームに装着されるハンド本体部と、エアシリンダの駆動によってワークを把持するチャックの取付けが可能なハンド先端部とで構成され、ハンド先端部をハンド本体部に着脱自在としたロボットハンドが記載されている。
【0003】
上記ロボットハンドでは、チャックの駆動に必要な複数の電磁弁と、各電磁弁の入力ポートにエアを供給する流路と、各電磁弁の出力ポートからハンド先端部にエアを供給する流路とがハンド本体部に設けられている。これにより、ハンド本体部を多様なハンド先端部に対応できるようにするほか、ロボットハンドの周りにエア供給のための外部配管を配置する必要がないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二つの電磁弁を用いてエアにより駆動する開閉チャックにおいて、停電等による電磁弁の非通電時にワークが落下しないようにする必要がある。この場合、開閉チャックによるワークの把持形態として、一対のフィンガの内側でワークを挟んで把持する形態と、一対のフィンガを拡張してそれらの外側でワークを把持する形態とがあることにも留意しなければならない。特に、外部に設けるエア配管を少なくした開閉チャックでは、電磁弁やエア配管の変更を簡単に行うことができず、ワークの把持形態に応じてワークの落下を防止するのが容易でない。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、停電等による電磁弁の非通電時にワークが落下するのを防止するエアチャックを提供することを目的とする。また、ワークの把持形態に応じてワークの落下防止を容易に実現するエアチャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアチャックは、複数のフィンガを備えたチャックユニットと、ロボットアーム等に取り付けられるバルブユニットとからなり、チャックユニットは、複数のフィンガを駆動するピストンの両側に設けられる第1圧力室および第2圧力室を備え、バルブユニットは、第1圧力室および第2圧力室の一方に接続される第1出力エア流路、第1圧力室および第2圧力室の他方に接続される第2出力エア流路、第1出力エア流路に接続される第1電磁弁および第2出力エア流路に接続される第2電磁弁を備える。そして、第1電磁弁は、通電時に第1出力エア流路をエア供給源に接続し、非通電時に第1出力エア流路を大気に開放するものであり、第2電磁弁は、通電時に第2出力エア流路を大気に開放し、非通電時に第2出力エア流路をエア供給源に接続するものである。好ましくは、チャックユニットは、バルブユニットに対して、バルブユニットの中心軸周りの角度が異なる第1回転位置と第2回転位置とで選択的に連結可能であり、第1回転位置では、第1出力エア流路が第1圧力室に接続されるとともに第2出力エア流路が第2圧力室に接続され、第2回転位置では、第1出力エア流路が第2圧力室に接続されるとともに第2出力エア流路が第1圧力室に接続される。
【0008】
上記エアチャックによれば、停電等による電磁弁の非通電時にワークの落下を防止することができ、また、ワークの把持形態に応じてワークの落下防止を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るエアチャックは、二つの電磁弁をノーマルクローズ型とノーマルオープン型の組み合わせとしているので、停電等による電磁弁の非通電時にワークの落下を防止することができる。また、チャックユニットをバルブユニットに対してバルブユニットの中心軸周りの角度が異なる第1回転位置と第2回転位置とで選択的に連結可能とし、二つの電磁弁と二つの圧力室との接続関係を入れ替えることができるので、ワークの把持形態に応じてワークの落下防止を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るエアチャックの正面図である。
【
図3】
図1のエアチャックのIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】
図2のエアチャックのIV-IV線に沿う断面図である。
【
図5】
図1のエアチャックを所定方向から見たときの一部部品展開図である。
【
図6】
図1のエアチャックを
図5とは異なる方向から見たときの一部部品展開図である。
【
図7】チャックユニットがバルブユニットに対して第1回転位置で連結された場合の
図1のエアチャックの流体回路図である。
【
図8】チャックユニットがバルブユニットに対して第2回転位置で連結された場合の
図1のエアチャックの流体回路図である。
【
図9】
図1のエアチャックに防水カバーを取り付けた状態を示すものである。
【
図10】
図1のエアチャックについてバルブユニットに対するチャックユニットの連結状態を変更する様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るエアチャックについて、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。以下の説明において、上下の方向に関する言葉を用いたときは、便宜上、図面上での向きをいうものであり、各部材の実際の配置等を限定するものではない。本実施形態のエアチャック10は、チャックユニット12とバルブユニット56とからなる。
【0012】
(チャックユニット12の構成)
図1および
図2に示すように、チャックユニット12は、直方体状のシリンダボデイ14と、シリンダボデイ14の下側に連結される円盤状のコネクタボデイ36と、シリンダボデイ14の上側に連結されるベースボデイ42と、ワークを把持する一対のフィンガ50とを含む。
【0013】
図3に示すように、シリンダボデイ14には、両端が開口するシリンダ孔14aが形成されており、シリンダ孔14a内にピストン16が配設されている。ピストン16は、シリンダ孔14a内を摺動する本体部16aと、本体部16aから上方に延びるロッド部16bとからなる。シリンダ孔14aの上端開口部には、ロッドカバー22が取り付けられ、シリンダ孔14aの下端開口部には、キャップ24が取り付けられている。
【0014】
ピストン16の本体部16aとキャップ24との間に第1圧力室26が形成され、ピストン16の本体部16aとロッドカバー22との間に第2圧力室28が形成されている。シリンダボデイ14には、第1圧力室26に連通する第1圧力室エア流路30および第2圧力室28に連通する第2圧力室エア流路32が設けられている。第1圧力室エア流路30および第2圧力室エア流路32は、シリンダボデイ14の下端に開口する。
【0015】
シリンダボデイ14の幅広の側面には、シリンダボデイ14の上端から下端まで延びる2つのセンサ溝14bが設けられている(
図5参照)。これらのセンサ溝14bには、ピストン16に装着されたマグネット18の磁気を検出する磁気センサ34が取り付けられ、ピストン16の位置を検出することができるようになっている。磁気センサ34のリード線34aは、シリンダボデイ14から下方に延びている。
【0016】
ベースボデイ42には、L字状に構成された一対のレバー44が配設されている。レバー44は、切欠き状の溝部によって二股に形成された第1端部44aと、球状に形成された第2端部44bとを有し、その中央部において、ベースボデイ42に固定されたレバーシャフト46に回動自在に支持される。レバー44の第1端部44aは、ピストン16のロッド部16bに設けられた係合ピン20に係合する。
【0017】
ベースボデイ42の上側には、一対のフィンガ50を支持する支持部材48が設けられている。支持部材48には、フィンガ50をシリンダ孔14aの軸線と直交する方向に移動可能に案内する一対のレール溝48aが設けられている。フィンガ50は、支持部材48の一対のレール溝48a間に配置される基部50aと、基部50aから上方に延びるフィンガ部50bとを有する。フィンガ50の基部50aと支持部材48のレール溝48aとの間に複数の転動体49が配設される。レバー44の第2端部44bは、フィンガ50の基部50aに設けられた係合溝50cに係合する。なお、参照符号55aで示されるのは、ベースボデイ42をシリンダボデイ14に連結するためのボルトであり、参照符号55bで示されるのは、支持部材48をベースボデイ42に連結するためのボルトである。
【0018】
第1圧力室26にエアが供給され、第2圧力室28のエアが排出されると、ピストン16が上方に駆動され、第2端部44bが相互に離れるように一対のレバー44が回動し、一対のフィンガ50が開く方向に移動する。第2圧力室28にエアが供給され、第1圧力室26のエアが排出されると、ピストン16が下方に駆動され、第2端部44bが相互に近接するように一対のレバー44が回動し、一対のフィンガ50が閉じる方向に移動する。
【0019】
コネクタボデイ36には、上下に貫通する第1接続通路38および第2接続通路40が設けられている。第1接続通路38は、シリンダボデイ14の第1圧力室エア流路30に接続され、第2接続通路40は、シリンダボデイ14の第2圧力室エア流路32に接続される。また、コネクタボデイ36には、磁気センサ34のリード線34aが挿通されるリード線挿通孔36aが上下に貫通して設けられている。
【0020】
第1ボルト52がコネクタボデイ36に設けられた第1ボルト挿通孔36bに挿通され、シリンダボデイ14の底部に設けられたねじ孔14cに螺合されることで、コネクタボデイ36がシリンダボデイ14に連結される(
図4参照)。なお、参照符号94aおよび94bで示されるのは、コネクタボデイ36をシリンダボデイ14に連結する際に位置決めとして用いられるピンおよびピン孔である。
【0021】
図5に示すように、コネクタボデイ36の外周寄りの箇所には、合計4つの第2ボルト挿通孔36cが設けられている。第2ボルト挿通孔36cは、コネクタボデイ36の中心軸CL周りに90度の間隔で、かつ、コネクタボデイ36がシリンダボデイ14に連結された状態でシリンダボデイ14によって覆われない位置に設けられる。
【0022】
(バルブユニット56の構成)
図5および
図6に示すように、バルブユニット56は、第1電磁弁58および第2電磁弁60が装着されるバルブユニット本体62と、バルブユニット本体62の下側に連結される円盤状のアダプタ92とを含む。バルブユニット本体62は、円筒状の外壁部64と、外壁部64の内側に設けられる流路ブロック部70と、外壁部64の内側において流路ブロック部70を横切るようにして設けられる上プレート部88と、流路ブロック部70の下側に設けられる下プレート部90とを有する。アダプタ92は、図示しないロボットアーム等に取り付けるための部材である。
【0023】
外壁部64には、矩形状の第1開口部64aが設けられているとともに、バルブユニット56の中心軸CL(コネクタボデイ36の中心軸CLと同じ)を挟んで第1開口部64aと反対側の位置に第2開口部64bが設けられている。流路ブロック部70は、第1開口部64aと向き合う平坦な電磁弁接合面72を有している。第1電磁弁58および第2電磁弁60は、この電磁弁接合面72に取り付けられ、第1開口部64aを通じて着脱可能となっている。
【0024】
流路ブロック部70には、第1出力エア流路74および第2出力エア流路76が設けられている。第1出力エア流路74は、一端が流路ブロック部70の上面に開口し、他端側が電磁弁接合面72に開口する。同様に、第2出力エア流路76は、一端が流路ブロック部70の上面に開口し、他端側が電磁弁接合面72に開口する。なお、
図5では、電磁弁接合面72における第1出力エア流路74および第2出力エア流路76の開口は省略されている。参照符号73で示されるのは、第1電磁弁58および第2電磁弁60を取り付けるためのねじ孔である。
【0025】
後述するように、第1出力エア流路74の一端は、コネクタボデイ36の第1接続通路38および第2接続通路40の一方に接続され、第2出力エア流路76の一端は、コネクタボデイ36の第1接続通路38および第2接続通路40の他方に接続される。
図3には、第1出力エア流路74が第1接続通路38に接続され、第2出力エア流路76が第2接続通路40に接続されたときの状態が示されている。
【0026】
また、流路ブロック部70には、共通流路78a、第1分岐流路78bおよび第2分岐流路78cからなる供給エア流路78が設けられている(
図7参照)。共通流路78aの一端は、電磁弁接合面72の反対側に位置する流路ブロック部70の側面に開口し、そこに供給ポート66が取り付けられる(
図6参照)。第1分岐流路78bおよび第2分岐流路78cは、共通流路78aから分岐し、電磁弁接合面72に開口する。供給ポート66には、図示しないエア供給源からエアが供給される。なお、
図5では、電磁弁接合面72における第1分岐流路78bおよび第2分岐流路78cの開口は省略されている。
【0027】
さらに、流路ブロック部70には、第1排出エア流路80および第2排出エア流路82が設けられている。第1排出エア流路80は、一端が電磁弁接合面72に開口し、他端が第2開口部64bと向き合う位置で流路ブロック部70の側面に開口する。同様に、第2排出エア流路82は、一端が電磁弁接合面72に開口し、他端が第2開口部64bと向き合う位置で流路ブロック部70の側面に開口する。可変絞り弁を備えた第1排気ポート84が第1排出エア流路80の他端に接続され、可変絞り弁を備えた第2排気ポート86が第2排出エア流路82の他端に接続される(
図4参照)。なお、
図5では、電磁弁接合面72における第1排出エア流路80および第2排出エア流路82の開口は省略されている。
【0028】
図7に示すように、第1電磁弁58および第2電磁弁60は、2位置3ポート切換弁として構成される。第1電磁弁58の第1ポート58aは、第1出力エア流路74に接続され、第1電磁弁58の第2ポート58bは、供給エア流路78の第1分岐流路78bに接続され、第1電磁弁58の第3ポート58cは、第1排出エア流路80に接続される。同様に、第2電磁弁60の第1ポート60aは、第2出力エア流路76に接続され、第2電磁弁60の第2ポート60bは、供給エア流路78の第2分岐流路78cに接続され、第2電磁弁60の第3ポート60cは、第2排出エア流路82に接続される。
【0029】
第1電磁弁58は、通電時に第1ポート58aを第2ポート58bに接続し、非通電時に第1ポート58aを第3ポート58cに接続するものである。すなわち、第1電磁弁58は、通電時に第1出力エア流路74をエア供給源に接続し、非通電時に第1出力エア流路74を大気に開放するノーマルクローズ型の電磁弁である。
【0030】
一方、第2電磁弁60は、通電時に第1ポート60aを第3ポート60cに接続し、非通電時に第1ポート60aを第2ポート60bに接続するものである。すなわち、第2電磁弁60は、通電時に第2出力エア流路76を大気に開放し、非通電時に第2出力エア流路76をエア供給源に接続するノーマルオープン型の電磁弁である。
【0031】
外壁部64には、供給ポート66に近接して、電気コネクタ68が設けられている。電気コネクタ68には、第1電磁弁58に電力を供給するリード線58dおよび第2電磁弁60に電力を供給するリード線60dが接続される。また、上プレート部88に設けられた開口部88aから下方に延びる磁気センサ34のリード線34aも電気コネクタ68に接続される。なお、参照符号95で示されるのは、アダプタ92をバルブユニット本体62に連結するためのボルトである。
【0032】
図9に示すように、バルブユニット本体62の円筒状の外壁部64には、第1開口部64aを覆う円筒状の防水カバー98を取り付けることができる。防水カバー98によって、第1電磁弁58、第2電磁弁60等を保護することができる。なお、防水カバー98には、第1排気ポート84および第2排気ポート86を覆わないようにするための開口部98aが設けられている。
【0033】
(チャックユニット12とバルブユニット56の接続構成)
図5に示すように、バルブユニット本体62の上プレート部88には、外壁部64に近接する位置に合計4つの第2ボルト取付孔88bが設けられている。第2ボルト取付孔88bは、バルブユニット56の中心軸CL周りに90度の間隔で設けられる。第2ボルト54が、チャックユニット12のコネクタボデイ36の上側からコネクタボデイ36の第2ボルト挿通孔36cに挿通され、上プレート部88の第2ボルト取付孔88bに螺合されることで、コネクタボデイ36がバルブユニット本体62に連結される。すなわち、チャックユニット12は、4本の第2ボルト54によってバルブユニット56に連結される。
【0034】
チャックユニット12は、バルブユニット56に対して、バルブユニット56の中心軸CL周りの角度が180度異なる二つの位置で連結することができる(
図10参照)。以下、これらの位置を「第1回転位置」および「第2回転位置」という。なお、本実施形態では、90度の間隔で配置する4本の第2ボルト54によってチャックユニット12をバルブユニット56に連結する構成としたが、チャックユニット12をバルブユニット56に対して180度異なる位置で連結できるものであれば、他の連結手段であってもよい。なお、参照符号96aおよび96bで示されるのは、コネクタボデイ36をバルブユニット本体62に連結する際に位置決めとして用いられるピンおよびピン孔である。
【0035】
第1回転位置では、バルブユニット本体62の流路ブロック部70の第1出力エア流路74がチャックユニット12のコネクタボデイ36の第1接続通路38に接続されるとともに、バルブユニット本体62の流路ブロック部70の第2出力エア流路76がチャックユニット12のコネクタボデイ36の第2接続通路40に接続される(
図7参照)。第2回転位置では、バルブユニット本体62の流路ブロック部70の第1出力エア流路74がチャックユニット12のコネクタボデイ36の第2接続通路40に接続されるとともに、バルブユニット本体62の流路ブロック部70の第2出力エア流路76がチャックユニット12のコネクタボデイ36の第1接続通路38に接続される(
図8参照)。
【0036】
(第1回転位置で連結される場合の作用)
チャックユニット12がバルブユニット56に対して第1回転位置で連結される場合のエアチャック10の作用について、
図7を参照しながら述べる。なお、
図7の流体回路図は、第1電磁弁58および第2電磁弁60に通電がされていない状態を示すものである。また、
図7において、参照符号P1は、第1出力エア流路74と第1接続通路38との接続箇所を示し、参照符号P2は、第2出力エア流路76と第2接続通路40との接続箇所を示す。
【0037】
一対のフィンガ50を開く方向に付勢するときは、第1電磁弁58および第2電磁弁60に通電する。第1電磁弁58への通電により、供給ポート66からのエアは、流路ブロック部70の供給エア流路78を通って第1電磁弁58の第2ポート58bに至り、第1電磁弁58の第1ポート58aから流路ブロック部70の第1出力エア流路74を通り、さらに、コネクタボデイ36の第1接続通路38とシリンダボデイ14の第1圧力室エア流路30を通って、第1圧力室26に供給される。
【0038】
また、第2電磁弁60への通電により、第2圧力室28内のエアは、シリンダボデイ14の第2圧力室エア流路32とコネクタボデイ36の第2接続通路40と流路ブロック部70の第2出力エア流路76を通って、第2電磁弁60の第1ポート60aに至り、第2電磁弁60の第3ポート60cから第2排出エア流路82を通って第2排気ポート86から排気される。したがって、第1圧力室26にエアが供給され、第2圧力室28のエアが排気されるので、一対のフィンガ50が開く方向に駆動される。第2排気ポート86は可変絞り弁を備えているので、一対のフィンガ50が開く方向に移動する速度を調整することができる。
【0039】
一対のフィンガ50を閉じる方向に付勢するときは、第1電磁弁58および第2電磁弁60への通電を停止する。第2電磁弁60への通電を停止することにより、供給ポート66からのエアは、流路ブロック部70の供給エア流路78を通って第2電磁弁60の第2ポート60bに至り、第2電磁弁60の第1ポート60aから流路ブロック部70の第2出力エア流路76を通り、さらに、コネクタボデイ36の第2接続通路40とシリンダボデイ14の第2圧力室エア流路32とを通って、第2圧力室28に供給される。
【0040】
また、第1電磁弁58への通電を停止することにより、第1圧力室26内のエアは、シリンダボデイ14の第1圧力室エア流路30とコネクタボデイ36の第1接続通路38と流路ブロック部70の第1出力エア流路74とを通って、第1電磁弁58の第1ポート58aに至り、第1電磁弁58の第3ポート58cから第1排出エア流路80を通って第1排気ポート84から排気される。したがって、第2圧力室28にエアが供給され、第1圧力室26のエアが排気されるので、一対のフィンガ50が閉じる方向に駆動される。第1排気ポート84は可変絞り弁を備えているので、一対のフィンガ50が閉じる方向に移動する速度を調整することができる。
【0041】
エアチャック10は、フィンガ50を下に向けた状態で、図示しないロボットアーム等に取り付けられる。一対のフィンガ50の内側でワークを挟む形態でワークを把持する場合は、上記のように、チャックユニット12をバルブユニット56に対して第1回転位置で連結すればよい。停電等による非通電時に、一対のフィンガ50が閉じる方向に駆動されるので、ワークの落下を防止することができる。
【0042】
(第2回転位置で連結される場合の作用)
次に、チャックユニット12がバルブユニット56に対して第2回転位置で連結される場合のエアチャック10の作用について、
図8を参照しながら述べる。なお、
図8の流体回路図は、第1電磁弁58および第2電磁弁60に通電がされていない状態を示すものである。また、
図8において、参照符号P3は、第2出力エア流路76と第1接続通路38との接続箇所を示し、参照符号P4は、第1出力エア流路74と第2接続通路40との接続箇所を示す。
【0043】
一対のフィンガ50を開く方向に付勢するときは、第1電磁弁58および第2電磁弁60への通電を停止する。第2電磁弁60への通電を停止することにより、供給ポート66からのエアは、流路ブロック部70の供給エア流路78を通って第2電磁弁60の第2ポート60bに至り、第2電磁弁60の第1ポート60aから流路ブロック部70の第2出力エア流路76を通り、さらに、コネクタボデイ36の第1接続通路38とシリンダボデイ14の第1圧力室エア流路30とを通って、第1圧力室26に供給される。
【0044】
また、第1電磁弁58への通電を停止することにより、第2圧力室28内のエアは、シリンダボデイ14の第2圧力室エア流路32とコネクタボデイ36の第2接続通路40と流路ブロック部70の第1出力エア流路74とを通って、第1電磁弁58の第1ポート58aに至り、第1電磁弁58の第3ポート58cから第1排出エア流路80を通って第1排気ポート84から排気される。したがって、第1圧力室26にエアが供給され、第2圧力室28のエアが排気されるので、一対のフィンガ50が開く方向に駆動される。第1排気ポート84は可変絞り弁を備えているので、一対のフィンガ50が開く方向に移動する速度を調整することができる。
【0045】
一対のフィンガ50を閉じる方向に付勢するときは、第1電磁弁58および第2電磁弁60に通電する。第1電磁弁58への通電により、供給ポート66からのエアは、流路ブロック部70の供給エア流路78を通って第1電磁弁58の第2ポート58bに至り、第1電磁弁58の第1ポート58aから流路ブロック部70の第1出力エア流路74を通り、さらに、コネクタボデイ36の第2接続通路40とシリンダボデイ14の第2圧力室エア流路32とを通って、第2圧力室28に供給される。
【0046】
また、第2電磁弁60への通電により、第1圧力室26内のエアは、シリンダボデイ14の第1圧力室エア流路30とコネクタボデイ36の第1接続通路38と流路ブロック部70の第2出力エア流路76とを通って、第2電磁弁60の第1ポート60aに至り、第2電磁弁60の第3ポート60cから第2排出エア流路82を通って第2排気ポート86から排気される。したがって、第2圧力室28にエアが供給され、第1圧力室26のエアが排気されるので、一対のフィンガ50が閉じる方向に駆動される。第2排気ポート86は可変絞り弁を備えているので、一対のフィンガ50が閉じる方向に移動する速度を調整することができる。
【0047】
エアチャック10は、フィンガ50を下に向けた状態で、図示しないロボットアーム等に取り付けられる。一対のフィンガ50を拡張してそれらの外側でワークを把持する場合は、上記のように、チャックユニット12をバルブユニット56に対して第2回転位置で連結すればよい。停電等による非通電時に、一対のフィンガ50が開く方向に駆動されるので、ワークの落下を防止することができる。
【0048】
本実施形態に係るエアチャック10によれば、第1電磁弁58および第2電磁弁60をノーマルクローズ型とノーマルオープン型の組み合わせとしているので、停電等による第1電磁弁58および第2電磁弁60の非通電時にワークの落下を防止することができる。また、チャックユニット12をバルブユニット56に対してバルブユニット56の中心軸CL周りの角度が異なる第1回転位置と第2回転位置とで選択的に連結可能とし、第1電磁弁58および第2電磁弁60と、第1圧力室26および第2圧力室28との接続関係を入れ替えることができるので、ワークの把持形態に応じてワークの落下防止を容易に実現することができる。
【0049】
本実施形態では、エアチャック10は、一対のフィンガ50(2個のフィンガ50)を備える構成としたが、例えば、所定方向から見て同一円周上に等角度で複数のフィンガを配置する場合のように、3個以上のフィンガを備える構成としてもよい。
【0050】
本発明に係るエアチャックは、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することのない範囲で、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0051】
10…エアチャック 12…チャックユニット
16…ピストン 26…第1圧力室
28…第2圧力室 34…磁気センサ
34a、58d、60d…リード線 36…コネクタボデイ
50…フィンガ 56…バルブユニット
58…第1電磁弁 60…第2電磁弁
62…バルブユニット本体 64…外壁部
64a…第1開口部(開口部) 66…供給ポート
68…電気コネクタ 74…第1出力エア流路
76…第2出力エア流路 84…第1排気ポート
86…第2排気ポート 98…防水カバー