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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/00 20160101AFI20250128BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20250128BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20250128BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20250128BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20250128BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20250128BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20250128BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20250128BHJP
【FI】
B60W20/00 900
B60K6/442 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
F01N3/18 B
B60L50/16
B60L50/61
B60L58/13
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021080182
(22)【出願日】2021-05-11
(65)【公開番号】P2022174407
(43)【公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】澤田 徹
(72)【発明者】
【氏名】本田 純大
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-117317(JP,A)
【文献】特開2006-132394(JP,A)
【文献】特開2011-201395(JP,A)
【文献】特開2021-059171(JP,A)
【文献】特開2013-159176(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0057487(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/00
B60K 6/442
B60W 10/06
B60W 10/08
F01N 3/18
B60L 50/16
B60L 50/61
B60L 58/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両に搭載される内燃機関と、前記内燃機関に接続される第1回転電機と、前記電動車両の駆動軸を駆動可能な第2回転電機と、前記第2回転電機に電力を供給可能な駆動用電池と、を備える電動車両の制御装置であって、
前記第2回転電機によって前記駆動軸を駆動しつつ前記内燃機関の出力によって前記第1回転電機を駆動し発電する発電制御と、
前記発電制御中に排気管の温度上昇に起因する所定条件が成立した場合、前記発電制御の継続を禁止して前記内燃機関からの出力を停止させつつ前記駆動用電池から前記第2回転電機へ供給される電力を増加させて、前記第1回転電機によって前記内燃機関をモータリングするモータリング制御と、
を実行する電動車両の制御装置。
【請求項2】
前記所定条件は、前記発電制御中に前記内燃機関の前記排気管の排気温度が第1所定温度以上となった場合である、
請求項1に記載の電動車両の制御装置。
【請求項3】
前記所定条件は、前記発電制御中に前記内燃機関の冷却水の温度が第2所定温度以上となった場合である、
請求項1に記載の電動車両の制御装置。
【請求項4】
前記所定条件は、前記発電制御中に前記内燃機関が出力すべき要求出力値が増加し、前記要求出力値が第1所定値以上となった場合である、
請求項に記載の電動車両の制御装置。
【請求項5】
増加した前記要求出力値に基づいて定めた所定時間、前記モータリング制御を継続する、
請求項に記載の電動車両の制御装置。
【請求項6】
前記電動車両は、前記電動車両に接続される外部機器に前記駆動用電池から電力を供給可能な外部給電装置と、をさらに備え、
前記電動車両が停止している状態で前記外部給電装置を制御する外部給電制御中は、前記第1所定値よりも小さい第2所定値以上となった場合、前記モータリング制御を実行する、
請求項4または5に記載の電動車両の制御装置。
【請求項7】
前記モータリング制御中に、前記モータリング制御以前の前記発電制御における前記内燃機関の要求出力値から前記モータリング以後の前記発電制御における前記内燃機関が出力すべき要求出力値へ遷移が生じた場合には、
前記モータリング制御が終了した以降、前記遷移した要求出力値によって前記内燃機関の運転を再開する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の電動車両の制御装置。
【請求項8】
前記電動車両は、前記内燃機関と前記駆動軸との間で動力を伝達又は遮断する断接機構をさらに備え、
前記発電制御中に前記断接機構を遮断した状態で前記第1回転電機によって発電した第1電力を前記第2回転電機又は前記駆動用電池に供給するシリーズ走行制御を実行し、
前記シリーズ走行制御中に前記モータリング制御を実行した場合、前記モータリング制御中の前記発電制御の禁止に伴い減少する前記第2回転電機に供給すべき供給電力を、前記駆動用電池から前記第2回転電機に供給する第2電力によって補う、
請求項1からのいずれか1項に記載の電動車両の制御装置。
【請求項9】
前記駆動用電池が所定充電率以上の場合、前記モータリング制御を実行し、
前記駆動用電池が前記所定充電率未満の場合、前記内燃機関によって燃料を理論空燃比よりも濃くするエンリッチ制御を実行する、
請求項1からのいずれか1項に記載の電動車両の制御装置。
【請求項10】
前記モータリング制御中に前記電動車両に搭載される機器の故障診断制御を実行する、
請求項1からのいずれか1項に記載の電動車両の制御装置。
【請求項11】
前記電動車両は、前記内燃機関の排気を浄化する排気浄化装置をさらに備え、
前記モータリング制御が終了した場合、前記排気浄化装置の温度を取得し、前記温度に応じた酸素パージ制御を実行する、
請求項1から10のいずれか1項に記載の電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気浄化装置の触媒を温めるヒータを搭載した電動車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の電動車両の制御装置は、ヒータによって触媒を暖気することによって、触媒の活性化を促進する。特許文献1の電動車両の制御装置は、ヒータが過剰に加熱しないように、内燃機関をモータリングすることによってヒータを冷却する。内燃機関のモータリングは、内燃機関に接続されたモータによって内燃機関を駆動することによって実現される。特許文献1の電動車両の制御装置では、モータは、電動車両が減速する際の回生エネルギを用いて駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009―227039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動車両の制御装置は、回生エネルギをヒータの過剰な加熱の冷却に利用することによって、回生エネルギを有効に利用する点に着目している。しかし、このような電動車両では、発電中の内燃機関の排気熱によって、内燃機関の各装置が過熱されることがある。すなわち、回生エネルギの有無に関係なく、内燃機関の各装置が排気熱によって温度上昇するおそれがある。
【0005】
本開示の課題は、発電中の内燃機関の排気熱による各装置の温度上昇を抑制できる電動車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電動車両の制御装置は、電動車両に搭載される内燃機関と、内燃機関に接続される第1回転電機と、電動車両の駆動軸を駆動可能な第2回転電機と、第2回転電機に電力を供給可能な駆動用電池と、を備える電動車両の制御装置である。電動車両の制御装置は、第2回転電機によって駆動軸を駆動しつつ内燃機関の出力によって第1回転電機を駆動し発電する発電制御と、発電制御中に排気管の温度上昇に起因する所定条件が成立した場合、発電制御の継続を禁止して内燃機関からの出力を停止させつつ前記駆動用電池から前記第2回転電機へ供給される電力を増加させて第1回転電機によって内燃機関をモータリングするモータリング制御と、を実行する。
【0007】
この電動車両の制御装置によれば、発電制御中に所定条件が成立した場合、発電制御の継続を禁止してモータリングを実行する。これによって、電動車両の外気が内燃機関の排気管に送風される。内燃機関の排気管に外気が流れ込むと、排気管が冷却される。内燃機関の主な熱源となる排気管が冷却されると、例えば電動車両の排気管近傍の各装置の温度も下がる。この結果、内燃機関の各装置が冷却される。このため、発電中の内燃機関の排気熱による各装置の温度上昇を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、発電中の内燃機関の排気熱による各装置の温度上昇を抑制できる電動車両の制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態による電動車両のシステム図。
図2】本開示の実施形態による電動車両に搭載された内燃機関のシステム図。
図3】本開示の実施形態による電動車両の制御装置の制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態による電動車両1は、四輪駆動型のハイブリッド自動車である。電動車両1は、内燃機関(ENG)2と、発電機(第1回転電機の一例:GEN)4と、フロントモータ(第2回転電機の一例:FrM)6と、リアモータ(RM)8と、駆動用電池(BT)10と、制御装置(HVECU)20と、アクセルペダル21と、外部給電装置22と、を有する。
【0012】
本実施形態の電動車両1は、フロントモータ6がトランスアクスル16を介して前輪12の前輪駆動軸12aを駆動する。リアモータ8は、減速機8cを介して後輪14の後輪駆動軸14aを駆動する。フロントモータ6は、フロントインバータ18を介して駆動用電池10と接続され、駆動用電池10から電力(第2電力)が供給される。
【0013】
フロントインバータ18は、フロントモータ制御装置(FrMCU)6aと、発電機4を制御する発電機制御装置(GCU)4aと、を有する。フロントモータ制御装置6aは、制御装置20から信号を取得し、フロントモータ6が所望の運転状態となるようにフロントモータ6の回生と力行を制御する。リアモータ8も同様に、リアインバータ8bを介して駆動用電池10と接続され、駆動用電池10から電力(第2電力)が供給される。リアインバータ8bは、リアモータ制御装置(RMCU)8aを有する。リアモータ制御装置8aは、制御装置20から信号を取得し、リアモータ8が所望の運転状態となるようにリアモータ8の回生と力行を制御する。
【0014】
内燃機関2は、トランスアクスル16を介して発電機4を駆動する。内燃機関2は、燃料タンク(Fuel TANK)23から供給される燃料が燃焼することで駆動する。内燃機関2の各種装置および各種センサは、エンジン制御装置(ENG-ECU)2aと電気的に接続される。エンジン制御装置2aは、制御装置20からの信号を取得し、内燃機関2が所望の運転状態となるように制御する。トランスアクスル16は、内燃機関2の回転速度を増幅し発電機4に伝達する。また、本実施形態のトランスアクスル16は、クラッチ(断接機構の一例)16aを有する。クラッチ16aは、内燃機関2とフロントモータ6との間および内燃機関2と前輪駆動軸12aとの間で動力を伝達および遮断する。内燃機関2は、トランスアクスル16のクラッチ16aを介して前輪駆動軸12aに接続され、前輪駆動軸12aを駆動する。
【0015】
図2に示すように、内燃機関2は、少なくとも、燃料噴射弁2cと、排気管2dと、排気浄化装置2eと、を有する。本実施形態では、内燃機関2は、排気管2dが内燃機関2から電動車両1の後方に向かって延びる後方排気型のものである。内燃機関2は、排気管2dを介して排気浄化装置2eに接続される。また、内燃機関2は、本実施形態では、マルチインジェクション方式のガソリンエンジンである。内燃機関2は、吸気ポート2fに配置された燃料噴射弁2cによって燃料を噴射し、スロットル弁2bによって吸入空気量を調整することにより出力を調整する。しかし、内燃機関2は、気筒2gに直接燃料を噴射する直噴方式のガソリンエンジンやディーゼルエンジンであってもよい。さらに、内燃機関2は、マルチインジェクション方式および直噴方式を併用するガソリンエンジンであってもよい。また、内燃機関2は、このほか排気循環弁2iおよび排気循環通路2jを含む排気循環装置などの装置を含んでもよい。
【0016】
排気浄化装置2eは、内燃機関2の排気を浄化する。本実施形態では、排気浄化装置2eは、排気に含まれる炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物を酸化または還元させて浄化する三元触媒である。このような三元触媒は、少なくとも排気浄化装置2eの上流に配置さられたセンサ(本実施形態ではリニア空燃比センサまたは酸素センサ)2hによって、浄化状態を検知する。しかし、排気浄化装置2eは、このほか酸素吸蔵機能、窒素吸蔵機能を有する触媒を含んでもよい。また、排気浄化装置2eは、燃料の燃え残りを吸蔵するガソリンパーティキュレートフィルタ、またはディーゼルパーティキュレートフィルタなどの装置を含んでもよい。
【0017】
図1に示すように、発電機4は、内燃機関2と接続され、内燃機関2によって駆動されることにより発電する。発電機4によって発電された電力(第1電力)は、駆動用電池10を充電可能であるとともに、フロントインバータ18およびリアインバータ8bを介してフロントモータ6およびリアモータ8(以下明細書において各モータと記す)に供給可能である。本実施形態では、発電機4はモータジェネレータであり、発電に加えて内燃機関2を回転駆動することによって内燃機関2をモータリングすることができる。発電機4は、内燃機関2から駆動される場合、発電機4に負荷を与えることで発電する。一方、発電機4は、駆動用電池10から電力が供給され力行することによって内燃機関2を駆動しモータリングさせる。発電機4は、フロントインバータ18に設けられた発電機制御装置4aによって制御される。発電機制御装置4aは、制御装置20と電気的に接続され、制御装置20からの信号を取得し、発電機4が所望の運転状態となるように発電と力行を制御する。
【0018】
駆動用電池10は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成され、複数の電池セルで構成された図示しない電池モジュールを有する。駆動用電池10は、各モータの電源として機能する。さらに駆動用電池10は、電池モジュールの充電率(State Of Charge、以下、SOC)の算出、電池モジュールの劣化状態(State Of Health 以下 SOH)、および電池モジュールの電圧Bvおよび電池温度Btmpの検出を行う電池モニタリングユニット(BMU)10aを有する。電池モニタリングユニット10aは、駆動用電池10の電圧Bv、充電率SOC、劣化状態SOH、および電池温度Btmpを取得し、制御装置20に送信する。
【0019】
制御装置20は、少なくとも走行モードの切り替えをする制御と、各走行モードにおいて、内燃機関2に発電させる発電制御と、内燃機関2を発電機4によって駆動するモータリング制御と、を実行する。
【0020】
本実施形態では、制御装置20は、速度V、充電率SOC、およびアクセル開度Thなどの情報に基づいて、クラッチ16aを制御することによって、パラレルモード、シリーズモード、およびEVモードの中から、いずれかにひとつの走行モードに切り替える。パラレルモードでは、制御装置20は、クラッチ16aを接続し、内燃機関2とフロントモータ6の両方よって前輪駆動軸12aを駆動する。このとき、フロントモータ6には、駆動用電池10からの電力(第2電力)、および発電機4で発電した電力(第1電力)のいずれか一方、または両方が供給される。リアモータ8も同様に駆動用電池10からの電力(第2電力)、および発電機4で発電した電力(第1電力)のいずれか一方、または両方が供給され、後輪駆動軸14aを駆動する。EVモードでは、制御装置20は、クラッチ16aを開放し、駆動用電池10の電力(第2電力)を各モータに供給し、各モータが前輪駆動軸12aおよび後輪駆動軸14a(以下明細書において各駆動軸と記す)を駆動する。
【0021】
シリーズモードでは、制御装置20は、クラッチ16aを開放し、内燃機関2で発電機4を駆動し、発電機4で発電した第1電力を各モータに供給する。また、制御装置20は、第1電力によっては各モータが各駆動軸を駆動する駆動力が不足する場合、駆動用電池10からも各モータに第2電力を供給する。なお、パラレルモード、およびシリーズモードにおいて、内燃機関2によって発電した発電電力の一部を駆動用電池10に供給することによって駆動用電池10を充電してもよい。
【0022】
制御装置20は、パラレルモード、シリーズモード、およびEVモードの各走行モードにおいて、内燃機関2に要求するエンジン要求トルク(要求出力値の一例)ETqを演算し、エンジン制御装置2aに送信する。エンジン制御装置2aは、エンジン要求トルクETqを取得し、エンジン要求トルクETqを達成できるように、内燃機関2を制御する。制御装置20は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等と、を含むマイクロコンピュータによって構成される。制御装置20は、各センサおよび各種装置からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、電動車両1が、所望の運転状態となるように各装置を制御する。
【0023】
また、本実施形態では、エンジン制御装置2a、発電機制御装置4a、フロントモータ制御装置6a、リアモータ制御装置8a、および電池モニタリングユニット10aを含む各種制御装置が、それぞれ制御装置20と別に設けられる。各種制御装置は、それぞれ制御装置20と電気的に接続される。しかし、各種制御装置は、制御装置20と一体で設けられてもよい。各種制御装置は、制御装置20と同様に、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等と、を含むマイクロコンピュータによって構成される。
【0024】
アクセルペダル21は、電動車両1のドライバが踏み込み操作することで、電動車両1の加減速を制御するペダルである。アクセルペダル21には、踏み込み位置を検知するアクセルポジションセンサ21aが設けられる。アクセルポジションセンサ21aは、制御装置20と電気的に接続され、制御装置20にアクセル踏み込み位置(アクセル開度)を送信する。
【0025】
外部給電装置22は、駆動用電池10の電力を、電動車両1のユーザが電動車両1と別に用意する電気機器(外部機器の一例、例えば家電機器等)に供給するための装置である。外部給電装置22はインバータを含み、駆動用電池10からの直流電流を、電気機器に適した交流電流に変換する。
【0026】
次に、図3のフローチャートを用いて、本実施形態の制御装置20の制御手順について説明する。制御装置20は、図示しないイグニッションスイッチがオンされることで、制御動作を開始する。
【0027】
制御装置20は、制御動作を開始すると、ステップS1で、発電制御中か否か判断する。ここで、発電制御中とは、内燃機関2によって発電機4を駆動し発電する制御が実行されている状態を示す。このような発電制御が必要な状態は、例えば、電動車両1がシリーズモードで走行している場合、ドライバがアクセルペダル21を踏み込むことによって各モータに出力すべき出力(ドライバ要求トルク)が増加し、第1電力が必要な状態である。また、例えば、外部給電装置22に外部電気機器に給電を行う外部給電制御中の場合、駆動用電池10の充電率SOCが低下し、充電が必要な状態である。
【0028】
制御装置20は、発電制御中において、発電機4によって発電させる電力量からエンジン要求トルクETqを演算する。制御装置20は、エンジン制御装置2aにエンジン要求トルクETqを送信することによって、内燃機関2を運転させる。エンジン要求トルクETqが増加しつづけると、内燃機関2の排気熱によって排気管2dおよび排気浄化装置2eの温度が上昇する。これによって、排気浄化装置2eの触媒の温度が上昇し、触媒による浄化性能が低下するおそれがある。また、排気管2dの温度が上昇すると電動車両1に搭載される、例えばパワーステアリング装置などのダッシュパネルに配置される装置の温度が上昇しやすい。特に、外部給電制御中において、電動車両1が停止中であれば、走行風によって排気管2dが冷却されないため、これら装置の温度がより上昇しやすい。
【0029】
そこで、制御装置20は、ステップS1では、発電制御中か否かを判断する。ステップS1で、制御装置20が発電制御中ではないと判断した場合(ステップS1 NO)、制御装置20は、処理をステップS1に戻す。
【0030】
ステップS1で、制御装置20が発電制御中であると判断した場合(ステップS1 YES)、制御装置20は、ステップS1からステップS2に処理を進める。ステップS2では、制御装置20は、外部給電制御中か否か判断する。制御装置20は、ステップS2で外部給電制御中ではないと判断した場合(ステップS2 NO)、ステップS3に処理を進める。制御装置20は、ステップS2で外部給電制御中であると判断した場合(ステップS2 YES)、ステップS10に処理を進める。
【0031】
ステップS3では、制御装置20は、所定条件が成立しているか否か判断する。本実施形態では、この所定条件とは、例えばエンジン要求トルクETqが増加し、エンジン要求トルクETqが第1所定値ETq1以上となった場合である。しかし、所定条件は、排気管2dおよび排気浄化装置2eの温度上昇に起因する条件であれば、他の条件であってもよい。例えば、所定条件は、排気温度が所定の温度以上になった場合、および内燃機関2の冷却水の温度が所定の温度以上となった場合、などが考えられる。
【0032】
ステップS10では、制御装置20は、エンジン要求トルクETqが第1所定値ETq1よりも小さい第2所定値ETq2以上となった否か判断する。制御装置20は、エンジン要求トルクETqが第2所定値ETq2以上であると判断した場合(ステップS10 YES)、ステップS4に処理を進める。一方、制御装置20は、ステップS10でエンジン要求トルクETqが第2所定値ETq2未満と判断した場合(ステップS10 NO)、ステップS1の前に処理を進める。
【0033】
上述したように、外部給電制御中は走行風がないため排気管2dの温度が上昇しやすい。そこで、制御装置20は、ステップS2からステップS10を経由して後述するステップS5まで処理を進めることによって、エンジン要求トルクETqが第1所定値ETq1よりも小さい第2所定値ETq2以上の場合、モータリング制御を実行する。これによって、制御装置20は、外部給電制御中の排気管2dの温度上昇を、さらに抑制する。
【0034】
ステップS3において制御装置20が所定条件が成立したと判断した場合(ステップS3 YES)、制御装置20はステップS4に処理を進める。ステップS4では、制御装置20は、駆動用電池10の充電率SOCが所定充電率SOCt以上か否か判断する。制御装置20は、駆動用電池10の充電率SOCが所定充電率SOCt以上であると判断した場合(ステップS4 YES)、ステップS5に処理を進める。ステップS5では、制御装置20は、発電制御の継続を禁止してモータリング制御を実行する。具体的には、制御装置20は、エンジン制御装置2aにスロットル弁2bを解放させ、発電機4によって内燃機関2を回転駆動することによって、モータリング制御を実行する。これによって、吸気ポート2fから排気管2dに向けて外気が流れ込み、排気管2dが冷却される。制御装置20は、所定条件が成立していないと判断した場合(ステップS3 NO)、処理をステップS1の前に戻す。
【0035】
一方、制御装置20は、充電率SOCが所定充電率SOCt未満の場合(ステップS4 NO)、ステップS11に処理を進める。ステップS11では、エンリッチ制御を実行し、処理をステップS1の前に戻す。制御装置20は、燃料噴射量を理論空燃比より濃くするエンリッチ制御を実行することにより、燃料によって、排気管2dを冷却する。エンリッチ制御を行は、全炭化水素(THC)や一酸化炭素(CO)が排出されやすい。しかし、本実施形態の制御装置20の制御手順によれば駆動用電池10の充電率SOCが所定充電率SOCt未満の場合のみエンリッチ制御が実行される。このため、排気浄化装置2eの冷却は専らモータリング制御によって行われる。これによって全炭化水素(THC)や一酸化炭素(CO)が排出されにくい。一方、充電率SOCが所定充電率SOCt未満の場合は、制御装置20はエンリッチ制御を実行することによって、モータリング制御によって駆動用電池10の出力が過度に低下することを抑制する。
【0036】
制御装置20は、シリーズモードによって電動車両1を走行させるシリーズ走行制御中にモータリング制御を実行した場合、モータリング制御中の発電制御の禁止に伴い減少する各モータに供給すべき供給電力を、駆動用電池10から各モータに供給する第2電力によって補うように制御する。具体的には、制御装置20は、モータリング制御によって内燃機関2の出力を低下させ、最終的にはゼロにする。制御装置20は、この間に内燃機関2を用いて発電する予定であった電力(供給電力)を演算し、この供給電力を駆動用電池10からの第2電力によって補う。このように、制御装置20は、電動車両1への要求負荷(例えば、ドライバ要求トルク)が増えているにも関わらずシリーズ走行を禁止してモータリングする。制御装置20は、要求負荷が増加した分を、駆動用電池10から各モータへ供給される電力を増加させることによって補う。これによって、制御装置20は、モータリングを実行しながらも電動車両1の加速性能が低下しないようにする。また、制御装置20は、シリーズモードにおいてモータリング制御を実行する。シリーズモードでは、クラッチ16aが遮断された状態である。このため、内燃機関2の回転変動が直接的には駆動軸に伝達されない。この結果、制御装置20は、モータリング制御の自由度を確保しやすい。
【0037】
また、制御装置20は、ステップS4において、充電率SOCが所定充電率SOCt以上か否か判断している。このため、制御装置20は、供給電力を第2電力によって補った場合であっても、駆動用電池10の充電率SOCが過度に低下することを抑制している。すなわち、所定充電率SOCtは、供給電力を第2電力によって補えるだけの充電率SOCであればよい。本実施形態では、所定充電率SOCtは、例えば供給電力に相当する電力に送電損失を加えた電力を駆動用電池10が出力可能な充電率SOCであればよい。
【0038】
制御装置20は、ステップS5でモータリング制御を開始し、ステップS6に処理を進める。ステップS6では、モータリング制御を実行してから時間Tが所定時間Tp以上経過したか否か判断する。制御装置20は、時間Tが所定時間Tp以上経過したと判断した場合(ステップS6 YES)、ステップS7に処理を進め、モータリング制御を終了する。制御装置20は、モータリング制御中に、排気循環装置および排気循環弁2iの故障診断制御を行ってもよい。排気循環装置の故障は、モータリング制御によって排気循環通路2jに外気を流すことで判断しやすい。制御装置20は、モータリング制御を実行してから所定時間Tp以上経過していないと判断した場合(ステップS6NO)、ステップS5の前に処理を戻し、モータリング制御を継続する。
【0039】
ここで、モータリング制御開始前のエンジン要求トルクETqの増加量が多いほど、排気の熱量が多くなる。この結果、排気管2dの温度が上昇しやすい。そこで制御装置20は、モータリング制御開始前に増加したエンジン要求トルクETqに基づいて、所定時間Tを定めてもよい。増加したエンジン要求トルクETqの一例としては、エンジン要求トルクETqが第1所定値ETq1以上となるまでの一定期間に増加したエンジン要求トルクETqの増加量であってもよい。増加したエンジン要求トルクETqの他の例としては、エンジン要求トルクETqが第1所定値ETq1以上となるまでのエンジン要求トルクETqの増加率(単位時間あたりのエンジン要求トルクETqの増加量)であってもよい。本実施形態では、制御装置20は、増加したエンジン要求トルクETqが大きいほどモータリング時間を長くする。また、エンジン要求トルクETqの増加率が高いほど、モータリング時間を長くする。これによって、排気管2dの温度が上昇しやすい状態ほど、制御装置20はモータリング制御による排気管2dの冷却時間を長くできる。
【0040】
制御装置20は、モータリング制御を実行してから所定時間Tp以上経過していると判断した場合(ステップS6YES)、ステップS7に処理を進め、モータリング制御を終了する。制御装置20は、モータリング制御中に、モータリング制御以前の発電制御における内燃機関2の要求出力値からモータリング以後の発電制御における内燃機関2が出力すべき要求出力値へ遷移が生じた場合には、モータリング制御が終了した以降、遷移した要求出力値によって内燃機関2の運転を再開する。具体的には、制御装置20は、モータリング制御中にエンジン要求トルクETqが遷移した場合、モータリング制御終了後は遷移したエンジン要求トルクETqによって内燃機関2を運転し、発電制御を再開する。例えば、モータリング制御前のエンジン要求トルクETq3からモータリング後のエンジン要求トルクETq4へ遷移が生じたとする。制御装置20は、モータリング制御が終了した以降、遷移したエンジン要求トルクETq4によって内燃機関2を運転する。これによって、制御装置20は、発電効率の悪化を抑制する。
【0041】
制御装置20は、モータリング制御を終了すると、ステップS8に処理を進める。ステップS8では、制御装置20は、排気浄化装置2eに配置された触媒の温度である触媒温度CTを取得し、触媒温度CTが所定温度CTp以上か否か判断する。制御装置20は、触媒温度CTを、例えば内燃機関2の出力などから推定して取得してもよい。制御装置20は、排気浄化装置2eに温度センサが配置される場合、温度センサから触媒温度CTを取得してもよい。所定温度CTpは、例えば触媒が活性化する温度(例えば400℃)であってもよい。
【0042】
制御装置20は、触媒温度CTが所定温度CTp以上と判断した場合(ステップS8 YES)、ステップS9に処理を進める。ステップS9では、制御装置20は、第1酸素パージ制御を実行し、処理をステップS1の前に戻す。モータリング制御中は、排気浄化装置2eの触媒に酸素が吸蔵されやすい。このため、制御装置20は、第1酸素パージ制御または後述する第2酸素パージ制御を実行することによって、排気浄化装置2eに蓄積された酸素を放出する。第1酸素パージ制御中に制御装置20は、内燃機関2の燃料噴射量を増量する。これによって、制御装置20は、内燃機関2からの排気として全炭化水素(THC)や一酸化炭素(CO)の過多状態を作る。これによって、触媒の酸化作用が促進され、触媒の酸素が放出される。
【0043】
制御装置20は、触媒温度CTが所定温度CTp未満であると判断した場合(ステップS8 NO)、ステップS12に処理を進める。ステップS12では、制御装置20は、第2酸素パージ制御を実行し、処理をステップS1の前に戻す。内燃機関2が直噴型エンジンの場合、第2酸素パージ制御中に制御装置20は、排気工程で第1酸素パージ制御と同様に燃料噴射量を増量することによって、触媒の昇温と酸素パージを同時に行う。内燃機関2がマルチインジェクション方式である場合、第2酸素パージ制御中に制御装置20は、点火カットを実施し、排気工程において少量の燃料噴射を実行する。またこの時、内燃機関2が可変バルブタイミング装置を有する場合、制御装置20は可変バルブタイミング装置を、最進角位置にセットする。これによって、制御装置20は、触媒昇温と酸素パージを同時に行うことができる。
【0044】
以上説明した通り、本開示によれば発電中の内燃機関2の排気熱による各装置の温度上昇を抑制できる電動車両1の制御装置20を提供できる。
【0045】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0046】
(a)上記実施形態では、四輪駆動型のハイブリッド自動車を例に説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。電動車両1は、前輪駆動のハイブリッド型およびプラグインハイブリッド型の自動車であってもよい。また、電動車両1は、四輪駆動型のプラグインハイブリッド自動車であってもよい。
【0047】
(b)上記実施形態では、クラッチ16aを用いて、内燃機関2と前輪駆動軸12aを接続する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。内燃機関2と前輪駆動軸12aは遊星ギヤを介して接続してもよい。
【0048】
(c)上記実施形態では、内燃機関2と発電機4をギヤで接続する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。内燃機関2と発電機4は遊星ギヤを介して接続してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1:電動車両,2:内燃機関,4:発電機(第1回転電機の一例)
6:フロントモータ(第2回転電機の一例),10:駆動用電池
16a:クラッチ(断接機構の一例)
20:制御装置,22:外部給電装置
ETq:エンジン要求トルク(要求出力値の一例)
ETq1:第1所定値
ETq2:第2所定値
CT:触媒温度
図1
図2
図3