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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】エアポンプ装置及びシート装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20250128BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20250128BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20250128BHJP
【FI】
F04B39/00 102Q
A47C7/62 Z
B60N2/90
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021090514
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182784
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】酒井 章吾
(72)【発明者】
【氏名】西田 和磨
(72)【発明者】
【氏名】横山 敬
(72)【発明者】
【氏名】増田 賢志
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-054239(JP,U)
【文献】登録実用新案第3187889(JP,U)
【文献】実開昭59-084865(JP,U)
【文献】特開2018-025128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
A47C 7/62
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ機構と同ポンプ機構を駆動するモータとを有する電動ポンプユニットと、
前記電動ポンプユニットを収容するケースと、
前記電動ポンプユニットと前記ケースとの間に介設される防振部材と、を備え、
前記防振部材は、弾性を有する樹脂材料からなる板状をなすとともに、前記電動ポンプユニットを内側にくるむ状態で同電動ポンプユニットの周囲に巻き付けられてなり、
前記防振部材の一部分は、前記ケースの内面であって且つ同ケースの内部で対向する対向面のうちの一方と前記電動ポンプユニットとの間に挟まれた状態になっており、
前記防振部材の他部分は、前記対向面のうちの他方と前記電動ポンプユニットとの間に挟まれた状態になっており、
前記ケースは、第1分割ケースと第2分割ケースとからなる分割構造をなし、
前記防振部材は、前記第1分割ケースと前記第2分割ケースとの合わせ部において延びるとともに前記第1分割ケースと前記第2分割ケースとの間に介設される挟持部を備え、
前記ケースは、前記第1分割ケース及び前記第2分割ケースの一方に突設された係止片と前記第1分割ケース及び前記第2分割ケースの他方の外面に設けられた被係止部との係合を通じて、前記第1分割ケースと前記第2分割ケースとが接合される構造をなし、
前記防振部材の前記挟持部は、前記係止片が挿通される貫通孔を有するエアポンプ装置。
【請求項2】
前記防振部材は、予め定められたパターンで延びる切れ目を有する
請求項1に記載のエアポンプ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のエアポンプ装置を用いてシートの内側に配置された空気袋に空気を圧送するシート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアポンプ装置及びシート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のシート装置として、シートの内側に設けられた空気袋(ブラダ)を拡縮させることによって、シートのサポート形状を変更したり、シートに着座する乗員にマッサージ効果を付与したりすることの可能なものが提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1のシート装置は、モータを駆動源とするエアポンプ装置を用いて空気を圧送することによって、空気袋を拡張させる構成になっている。このエアポンプ装置は、駆動源としてのモータと、同モータによって駆動されるポンプ機構と、それらモータ及びポンプ機構を収容するケースとを有している。また、エアポンプ装置は、モータやポンプ機構の作動に伴い発生する振動や騒音の影響を抑えるために、モータとケースとの間やポンプ機構とケースとの間に防振部材が介設されている。上記エアポンプ装置では、モータの軸線周りにおいて延びる筒状のモータ用防振部材や、ポンプ機構の軸線周りにおいて延びる筒状のポンプ用防振部材、モータ及びポンプ機構の軸線方向の両端に配置される板状の防振部材といった複数の防振部材が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-25128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術の構成では、ケースの内部に複数の防振部材、詳しくはモータ用防振部材、ポンプ用防振部材、及び板状の防振部材が設けられるため、エアポンプ装置の構造が複雑になるといった問題がある。そして、これによりエアポンプ装置の組み立て作業が煩雑になる。
【0006】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、静粛性に優れた簡素な構造のエアポンプ装置及びシート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのエアポンプ装置は、ポンプ機構と同ポンプ機構を駆動するモータとを有する電動ポンプユニットと、前記電動ポンプユニットを収容するケースと、前記電動ポンプユニットと前記ケースとの間に介設される防振部材と、を備え、前記防振部材は、弾性を有する樹脂材料からなる板状をなすとともに、前記電動ポンプユニットを内側にくるむ状態で同電動ポンプユニットの周囲に巻き付けられてなり、前記防振部材の一部分は、前記ケースの内面であって且つ同ケースの内部で対向する対向面のうちの一方と前記電動ポンプユニットとの間に挟まれた状態になっており、前記防振部材の他部分は、前記対向面のうちの他方と前記電動ポンプユニットとの間に挟まれた状態になっている。
【0008】
上記構成によれば、電動ポンプユニットに巻き付けられた状態でケース内部に収められる防振部材によって、ケース内部の各部において、同ケースの内面と電動ポンプユニットの外面との接触を抑えることができる。これにより、モータやポンプ機構の作動に伴い発生する振動や騒音の影響を抑えて、高い静粛性を得ることができる。しかも、そうした構成を、電動ポンプユニットをくるんだ状態の1枚の防振部材を設けることによって実現することができるため、様々な形状の複数の防振部材がケース内に設けられる構造と比較して、エアポンプ装置を簡素な構造にすることができる。
【0009】
上記エアポンプ装置において、前記ケースは、第1分割ケースと第2分割ケースとからなる分割構造をなし、前記防振部材は、前記第1分割ケースと前記第2分割ケースとの合わせ部において延びるとともに前記第1分割ケースと前記第2分割ケースとの間に介設される挟持部を備えることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、分割構造のケースが採用されるとはいえ、第1分割ケースと前記第2分割ケースとの隙間が防振部材の挟持部によって埋められるため、この隙間を通じたケースの内部から外部への音漏れを抑えることができる。これにより、高い静粛性を得ることができる。
【0011】
上記エアポンプ装置において、前記ケースは、前記第1分割ケース及び前記第2分割ケースの一方に突設された係止片と前記第1分割ケース及び前記第2分割ケースの他方の外面に設けられた被係止部との係合を通じて、前記第1分割ケースと前記第2分割ケースとが接合される構造をなし、前記防振部材の前記挟持部は、前記係止片が挿通される貫通孔を有することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、防振部材の挟持部の貫通孔に係止片を挿通するといった容易な作業を通じて、同防振部材をケースにおける正規の位置に組み付けることができるため、エアポンプ装置の組み立てを容易に行うことができる。しかも、防振部材の貫通孔とケースの係止片とが係合しているために、同ケースに対する防振部材の位置ずれを抑えることができる。
【0013】
上記エアポンプ装置において、前記防振部材は、予め定められたパターンで延びる切れ目を有することが好ましい。
上記構成によれば、防振部材の組み付けに際して同防振部材を曲げるときに、予め設けられた切れ目によって、防振部材の曲げ形状を適正にコントロールすることができる。そのため、防振部材の組み付けを容易に行うことができる。
【0014】
上記課題を解決するためのシート装置は、上記各構成のエアポンプ装置を用いてシートの内側に配置された空気袋に空気を圧送するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、静粛性に優れた車両のシートを簡素な構造をもって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】内側に空気袋が設けられた車両シートの斜視図(シートサポート用)。
図2】内側に空気袋が設けられた車両シートの斜視図(マッサージ用)。
図3】シート装置の概略構成図。
図4】シートバックのサイドフレーム近傍に配置されたエアポンプ装置の斜視図。
図5】エアポンプ装置及び防振装置の平面図。
図6】エアポンプ装置及び防振装置の側面図。
図7】エアポンプ装置の分解斜視図。
図8】エアポンプ装置に用いられるピストンポンプの概略構成図。
図9】取り付け前の防振部材の平面図。
図10】第1工程を説明するための説明図。
図11】第2工程を説明するための説明図。
図12】ポンプ機構の配設部分におけるエアポンプ装置の内部構造を示す断面図。
図13】エアポンプ装置の軸線方向における断面図。
図14】モータの配設部分におけるエアポンプ装置の内部構造を示す断面図。
図15】第3工程を説明するための説明図。
図16】第4工程を説明するための説明図。
図17】防振装置の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、空気圧式のシートサポート機能やマッサージ機能を有するシート装置及びそのエアポンプ装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、車両用のシート1は、シートクッション2と、このシートクッション2の後端部に設けられたシートバック3と、を備えている。そして、そのシートバック3の上端には、ヘッドレスト4が設けられている。
【0018】
また、本実施形態のシート1において、シートバック3は、その両サイド部3a,3bが、それぞれ、前方に向かって膨出した形状を有している。更に、シートクッション2もまた、両サイド部2a,2bが、それぞれ、上方に向かって膨出した形状を有している。そして、本実施形態のシート1は、これにより、その乗員の良好な着座姿勢を確保し及びその着座姿勢を維持することが可能になっている。
【0019】
また、このシート1には、シートクッション2及びシートバック3の内側で拡縮することにより、シート1の表面形状を変更する複数の空気袋10(11~16)が設けられている。更に、このシート1には、同じくシートクッション2及びシートバック3の内側で拡縮することにより、そのシート表皮1xを内側から押圧する複数の空気袋20(21~29)が設けられている。そして、本実施形態では、これにより、そのシート1のサポート形状を変更し、及びシート1に着座する乗員に対してマッサージ効果(リフレッシュ効果)を付与することが可能なシート装置30が形成されている。
【0020】
具体的には、図1に示すように、本実施形態のシート1において、シートバック3の内側には、その背もたれ面3sの肩部(ショルダ)に、独立したシートサポート用の空気袋11(11a,11b)が設けられている。シートバック3の内側における腰部(ランバ)及び下端部(バックペルビス)に対応する位置には、それぞれ独立したシートサポート用の空気袋12(12a~12c),13が設けられている。また、シートバック3の両サイド部3a,3bに対応する位置にも、それぞれ、独立したシートサポート用の空気袋14(14a,14b)が設けられている。そして、シートクッション2についてもまた、その着座面2sにおける後端部(クッションペルビス)の内側、及び両サイド部2a,2bの内側に、それぞれ、独立したシートサポート用の空気袋15,16(16a,16b)が設けられている。
【0021】
更に、図2に示すように、シートバック3の内側には、その背もたれ面3sの肩部(ショルダ)から腰部(ランバ)及び下端部(バックペルビス)にかけて、上下方向に並ぶ独立したマッサージ用(リフレッシュ用)の空気袋21~25が設けられている。尚、本実施形態のシート1におけるマッサージ用の各空気袋20は、それぞれ、シート幅方向に離間して配置される一対の袋体が一体に拡縮するように互い接続された構造を有している。そして、シートクッション2についてもまた、その着座面2sの下方において前後方向に並ぶ独立したマッサージ用の空気袋27~29が設けられている。
【0022】
図3に示すように、本実施形態のシート装置30は、上記各空気袋10,20に空気を圧送するエアポンプ装置41と、これらの各空気袋10,20とエアポンプ装置41との間に介在された吸排気バルブ装置42と、を備えている。本実施形態のエアポンプ装置41には、モータ43を駆動源としてポンプ機構44を駆動する電動ポンプが用いられている。更に、吸排気バルブ装置42は、可撓性を有する樹脂製のチューブ45を介して各空気袋10,20及びエアポンプ装置41に接続されている。即ち、本実施形態のシート装置30は、これらのチューブ45及び吸排気バルブ装置42の内部通路によって、その各空気袋10,20及びエアポンプ装置41に連通する空気の流路Lが形成されている。そして、本実施形態の吸排気バルブ装置42は、これにより、その吸気バルブ46及び排気バルブ47を流路Lの途中に配置する構成になっている。
【0023】
また、本実施形態のシート装置30において、これらの各吸気バルブ46及び排気バルブ47、並びにエアポンプ装置41は、制御装置48によって、その作動が制御されている。具体的には、本実施形態の制御装置48には、各空気袋10,20の内圧Pや、図示しない操作スイッチに対する操作入力信号Sc、イグニッション信号Sig、及びドアロック信号Sdl等が入力される。そして、本実施形態の制御装置48は、これらの制御信号に基づいて、各空気袋10,20を拡縮させるべく、その各吸気バルブ46及び排気バルブ47、並びにエアポンプ装置41の作動を制御する構成になっている。
【0024】
次に、本実施形態のエアポンプ装置41について説明する。
図4図7に示すように、エアポンプ装置41は、その内側にモータ43及びポンプ機構44を収容するケース50を備えている。このケース50は、略直方体状の外形を有している。ケース50は、共に有底略箱状の外形を有する第1分割ケース51と第2分割ケース52とからなる分割構造になっている。
【0025】
図7に示すように、第1分割ケース51の外面には4つの係止片51aが突設されている。各係止片51aは、第1分割ケース51の外面に正対する方向から見た場合にU字状をなす態様で、第1分割ケース51の外面に沿って延びている。各係止片51aは、第1分割ケース51の合わせ部から第2分割ケース52側(図7の上側)に突出する形状をなしている。4つの係止片51aは、長方形状の4つの角にあたる位置に形成される態様で第1分割ケース51の外面に配置されている。一方、第2分割ケース52の外面には4つの被係止部52aが突設されている。各被係止部52aとしては、上記第1分割ケース51の係止片51aと係合する凸部が形成されている。4つの被係止部52aは、長方形状の4つの角にあたる位置に形成される態様で第2分割ケース52の外面に配置されている。本実施形態のエアポンプ装置41では、第1分割ケース51の4つの係止片51aと第2分割ケース52の4つの被係止部52aとの係合を通じて、それら第1分割ケース51及び第2分割ケース52が接合されることにより、上記ケース50は形成される。
【0026】
図4に示すように、本実施形態のシート装置30は、このエアポンプ装置41をシート1の内側、そのシートバック3の骨格を構成するサイドフレーム3fの近傍に配置する構成になっている。
【0027】
図7に示すように、本実施形態のエアポンプ装置41において、モータ43及びポンプ機構44は、そのモータ43の軸線方向にポンプ機構44を配置する態様で、これらモータ43及びポンプ機構44が一体化された電動ポンプユニット53を構成する。尚、本実施形態のモータ43は、その軸線(図7中にNで示す)方向に延びる略円柱状の外形を有し、本実施形態のポンプ機構44は、略四角柱状の外形を有している。そして、本実施形態の電動ポンプユニット53は、そのモータ43の軸線が長手方向に沿う状態でケース50の内側に収容される構成になっている。
【0028】
ポンプ機構44は、モータ43の軸線方向において、このモータ43とは反対側の軸方向端部44aに空気の吸入口54を有している。本実施形態のエアポンプ装置41では、ポンプ機構44の吸入口54がケース50の内側に配置されている。
【0029】
また、ポンプ機構44は、上記吸入口54が設けられた側の軸方向端部44aに空気の吐出口55を有している。具体的には、本実施形態のポンプ機構44において、この吐出口55は、その軸方向端部44aから延びるチューブ56と、このチューブ56の先端に接続されるジョイント57と、を備えて構成されている。また、本実施形態のケース50には、吐出口55が設けられたポンプ機構44の軸方向端部44aに対向する側壁51b,52bに、貫通孔58が設けられている。更に、この貫通孔58には、ゴムブッシュ59が嵌着されている。そして、本実施形態のエアポンプ装置41は、このゴムブッシュ59に設けられた挿通孔59aを介することにより、その吐出口55を構成するチューブ56の先端側が、ケース50の外側に引き出される構成になっている。
【0030】
尚、図4に示すように、本実施形態のエアポンプ装置41は、そのモータ43の軸線方向に延びる電動ポンプユニット53の長尺形状がシートバック3のサイドフレーム3fに沿うように配置される。そして、これにより、その吐出口55を構成するチューブ56がケース50の上側に引き出される構成となっている。
【0031】
図8に示すように、ポンプ機構44は、アキシャル型のピストンポンプとしての構成を有している。具体的には、このポンプ機構44は、モータ43の駆動力により回転する駆動軸61と、この駆動軸61に対して偏心した位置に配置される複数のシリンダ63を有したシリンダブロック64と、を備えている。また、このポンプ機構44は、その基端65a側がシリンダブロック64の外部に突出した状態で各シリンダ63内に配設された複数のピストン(プランジャ)65を備えている。そして、このポンプ機構44は、これら各ピストン65の基端65aが当接する状態で、その駆動軸61とともに一体回転する斜板66を備えている。
【0032】
即ち、このポンプ機構44は、斜板66が回転することにより、この斜板66に対する各ピストン65の当接位置が、駆動軸61の軸方向に変位する。そして、これにより、その各ピストン65が各シリンダ63内を往復運動する構成になっている。
【0033】
また、シリンダブロック64における斜板66とは反対側の端部(図8中、上側の端部)には、その各シリンダ63と上記吸入口54及び吐出口55とを連通する流路Mが設けられている。更に、この流路Mには、その本線M0から分岐して吸入口54に延びる支線M1、及び吐出口55に延びる支線M2の途中に、それぞれ、空気の逆流を防ぐ逆止弁68が設けられている。そして、本実施形態のポンプ機構44は、これにより、その各ピストン65の往復運動に伴う各シリンダ63の容積変化に基づいて、その吸入口54から吸入した空気を吐出口55から圧送する構成になっている。
【0034】
ポンプ機構44は、これらの各構成要素(61~68)が、その略四角柱状をなす筐体69内に収容された構成となっている(図7参照)。具体的には、筐体69内において、シリンダブロック64は、その各シリンダ63がモータ43の軸線方向(図8中、上下方向)に沿って延びるように配置されている。これにより、ポンプ機構44は、径方向の寸法が抑えられる構成になっている。
【0035】
また、図5図7に示すように、本実施形態のエアポンプ装置41は、防振部材70を有している。防振部材70は、ケース50の内面と電動ポンプユニット53の外面との間に介在されるとともに第1分割ケース51と第2分割ケース52との間に介在される態様で取り付けられている。本実施形態のエアポンプ装置41では、この防振部材70によって、モータ43やポンプ機構44の作動に伴い発生する振動や騒音が吸収されるようになっている。
【0036】
以下、防振部材70について詳細に説明する。
先ず、防振部材70の取り付け前の形状について説明する。
図7及び図9に示すように、防振部材70は、取り付け前の自由状態では、長尺の平板状をなしている。防振部材70は、弾性を有する樹脂材料(本実施形態では、低燃性のウレタンフォーム[UEI])によって形成されている。防振部材70は、電動ポンプユニット53に巻き付ける態様で取り付けられる。
【0037】
防振部材70の長手方向の両端には、断面U字状で切り欠かれた部分である切り欠き部70a,70bが設けられている。これら切り欠き部70a,70bは、エアポンプ装置41が組み立てられた状態で、前記チューブ56及びゴムブッシュ59が配置される位置に形成されている。こうした切り欠き部70a,70bを防振部材70に設けることによって、同防振部材70とチューブ56及びゴムブッシュ59との不要な干渉が抑えられる。
【0038】
防振部材70は、長手方向の中間に、その幅(図9の上下方向の長さ)が部分的に狭くなる形状の幅狭部70cを有している。本実施形態では、エアポンプ装置41を組み立てる際に、防振部材70が幅狭部70cにおいて折り返される。本実施形態では、そうした防振部材70の折り返しを適正に行うために、防振部材70に幅狭部70cが設けられている。
【0039】
防振部材70には複数の切れ目70dが設けられている。これら切れ目70dは、防振部材70を厚さ方向に貫通する形状をなすとともに、予め定められたパターンで延びている。各切れ目70dは、エアポンプ装置41の組み立てに際して、防振部材70が折り曲げられる部分に設けられている。こうした切れ目70dを防振部材70に設けることにより、同防振部材70を折り曲げる作業をスムーズに行うことができる。
【0040】
防振部材70は、長手方向における一方側(図9の左側)を構成する第1部分71と、他方側(図9の右側)を構成する第2部分72とを有している。
第1部分71は、その周縁部分を構成する第1周囲部73と、中央部分を構成する第1中央部74とを有している。
【0041】
第1周囲部73には、4つの第1貫通孔73aが設けられている。各第1貫通孔73aは、長手方向に延びる直線状の切れ目である。本実施形態では、防振部材70の第1部分71に設けられる4つの第1貫通孔73aと第1分割ケース51(図7参照)の4つの係止片51aとが、同一の長方形状の4つの角にあたる位置に形成される態様で配置されている。エアポンプ装置41の組み立てに際して、第1分割ケース51の4つの係止片51aが防振部材70の第1部分71の4つの第1貫通孔73aに各別に挿通される構造になっている。
【0042】
第1中央部74は、上記切り欠き部70a側を構成する第1ポンプ部74aと、前記第2部分72側を構成する第1モータ部74bと、を有している。
第1ポンプ部74aは、四角板状をなすとともに、その切り欠き部70a側(図9の左側)の端部が第1周囲部73から切り離されていない状態であって、且つ、それ以外の部分が第1周囲部73から切り離された状態になっている。
【0043】
第1モータ部74bは、板状をなすとともに、その第2部分72側の端部(図9の右側)が第1周囲部73から切り離されていない状態であって、且つ、それ以外の部分が第1周囲部73から切り離された状態になっている。この第1モータ部74bは、先端側(図9の左側)の部分が長方形状をなすとともに、基端側(図9の右側)の部分が基端に向かうに連れて幅広のテーパ形状をなしている。
【0044】
防振部材70の第2部分72は、幅方向の中央部分を構成する第2中央部75と、幅方向において同第2中央部75を間に挟む位置に設けられる2組の第2足部76と、を有している。各第2足部76には、それぞれ第2貫通孔76aが設けられている。第2貫通孔76aは、長手方向に延びる直線状の切れ目である。第2部分72に設けられる4つの第2足部76は、各第2足部76の第2貫通孔76aが長方形状の4つの角にあたる位置に形成される態様で配置されている。本実施形態では、エアポンプ装置41の組み立てに際して、第1分割ケース51の4つの係止片51aが防振部材70の第2部分72の4つの第2貫通孔76aに各別に挿通される構造になっている。
【0045】
次に、本実施形態のエアポンプ装置41の組み立て手順について説明する。
エアポンプ装置41を組み立てる際には先ず、第1工程が実行される。
(第1工程)
図7図9及び図10に示すように、この第1工程では、第1分割ケース51の4つの係止片51aを防振部材70の第1部分71の4つの第1貫通孔73aに各別に挿通する態様で、第1分割ケース51に防振部材70が取り付けられる。このように本実施形態では、4つの係止片51aを4つの第1貫通孔73aに各別に挿通するといった容易な作業で、防振部材70を位置決めしつつ第1分割ケース51に取り付けることができる。
【0046】
(第2工程)
第1工程の後には、第2工程が実行される。
図7図9及び図11に示すように、第2工程では、防振部材70の第1部分71における第1中央部74を第1分割ケース51の内部に押し入れる態様で、電動ポンプユニット53の略半分が第1分割ケース51の内部に嵌められる。
【0047】
詳しくは、電動ポンプユニット53のポンプ機構44は、防振部材70の第1中央部74における前記切り欠き部70a側の部分(第1ポンプ部74a)を第1分割ケース51の内部に押し込む態様で取り付けられる。
【0048】
図12及び図13に示すように、ポンプ機構44が取り付けられると、防振部材70の第1ポンプ部74aの一部は、ポンプ機構44の軸方向端部44aと第1分割ケース51の同軸方向端部44aに対向する部分(側壁51b)との間に挟まれた状態になる。また、このときには防振部材70の第1ポンプ部74aの残りの部分が、第1分割ケース51の底壁51cとポンプ機構44の外面との間に挟まれた状態になる。これにより、第1分割ケース51の側壁51bや底壁51cの内面とポンプ機構44の外面との接触が抑えられる。更に、ポンプ機構44は、第1分割ケース51の幅方向(図12の左右方向)における両側壁51dとの間に隙間が形成された状態で、防振部材70の第1部分71における第1周囲部73の内面の間に挟まれた状態になる。これにより、ポンプ機構44の外面と第1分割ケース51の両側壁51dの内面との接触が抑えられる。
【0049】
一方、図7図9及び図11に示すように、電動ポンプユニット53のモータ43は、防振部材70の第1中央部74における前記第2部分72側の部分(第1モータ部74b)を第1分割ケース51の内部に押し込む態様で取り付けられる。
【0050】
図13及び図14に示すように、防振部材70の第1モータ部74bの一部が、モータ43の軸線方向におけるポンプ機構44とは反対側の軸方向端部43aと第1分割ケース51の同軸方向端部43aに対向する部分(側壁51e)との間に挟まれた状態になる。また、このときには防振部材70の第1モータ部74bの残りの部分が、第1分割ケース51の底壁51cとモータ43の外面との間に挟まれた状態になる。これにより、第1分割ケース51の側壁51eや底壁51cの内面とモータ43の外面との接触が抑えられる。尚、本実施形態では、第1部分71の第1中央部74が、ケースの内面と電動ポンプユニットとの間に挟まれた状態になる防振部材の一部分に相当する。また本実施形態では、第1分割ケース51の底壁51cの内面が、ケースの内部で対向する対向面のうちの一方に相当する。
【0051】
更に、図14に示すように、モータ43が取り付けられると、同モータ43の外周面によって防振部材70の第1周囲部73の内縁部分が第1分割ケース51の内部に向けて押し広げられた状態になる。また、このとき防振部材70の第1周囲部73の内縁部分は、モータ43の外周面と第1分割ケース51の両側壁51dの内面との間に挟み込まれた状態になる。これにより、モータ43の幅方向における両側において、防振部材70の第1周囲部73の内縁部分が同モータ43の外周面に押し付けられた状態になる。そのため、モータ43の外周面と第1分割ケース51の両側壁51dの内面との接触が抑えられるとともに、モータ43が第1分割ケース51の内部において防振部材70の第1周囲部73の内縁部分によってしっかり支持されるようになる。
【0052】
(第3工程)
第2工程の後には、第3工程が実行される。
図7図9及び図15に示すように、第3工程では、防振部材70が第1部分71と第2部分72との間の部分(幅狭部70c)で折り返される。また、防振部材70の第2部分72の第2中央部75が、電動ポンプユニット53の外面に沿って軸線方向に延びる態様で、断面ハット形状になるように折り曲げられる。更には、この状態で、第2部分72の4つの第2足部76が上記第1部分71の第1周囲部73に重ねられるとともに、それら第2足部76の第2貫通孔76aが第1分割ケース51の4つの係止片51aにそれぞれ挿通される。このように本実施形態では、防振部材70を電動ポンプユニット53の外面に沿って折り曲げたり、4つの係止片51aを4つの第2貫通孔76aに挿通したりするといった容易な作業で、防振部材70の第2部分72を所定の位置に取り付けることができる。
【0053】
(第4工程)
第3工程の後には、第4工程が実行される。
図7図15及び図16に示すように、第4工程では、第1分割ケース51の4つの係止片51aと第2分割ケース52の4つの被係止部52aとを各別に係合させる態様で、第1分割ケース51に第2分割ケース52が組み付けられる。
【0054】
図12及び図13に示すように、このようにして第2分割ケース52が組み付けられると、防振部材70の第2部分72の第2中央部75は、第2分割ケース52の内面と、電動ポンプユニット53の外面との間に挟まれた状態になる。詳しくは、第2中央部75の切り欠き部70b側(図13の左側)の部分は、ポンプ機構44の軸方向端部44aと第2分割ケース52の同軸方向端部44aに対向する部分(側壁52b)との間に挟まれた状態になる。また、第2中央部75における長手方向(図13の左右方向)の中央部分は、第2分割ケース52の底壁52cと電動ポンプユニット53の外面との間に挟まれた状態になる。更に、第2中央部75における折り返し部分(幅狭部70c)側の部分は、モータ43の軸方向端部43aと第2分割ケース52の同軸方向端部43aに対向する部分(側壁52e)との間に挟まれた状態になる。これにより、電動ポンプユニット53の外面と第2分割ケース52の側壁52b,52e及び底壁52cとの接触が抑えられる。尚、本実施形態では、第2部分72の第2中央部75が、ケースの内面と電動ポンプユニットとの間に挟まれた状態になる防振部材の他部分に相当する。また本実施形態では、第2分割ケース52の底壁52cの内面が、ケースの内部で対向する対向面のうちの他方に相当する。更に、ポンプ機構44は、第2分割ケース52の幅方向(図12の左右方向)における両側壁52dとの間に隙間が形成された状態で、同ポンプ機構44を間に挟む位置に設けられる第2部分72の一対の第2足部76の内面の間に挟まれた状態になる。これにより、ポンプ機構44の外面と第2分割ケース52の内面との接触が抑えられる。
【0055】
一方、図14に示すように、モータ43を間に挟む位置に設けられる第2部分72の一対の第2足部76の内縁部分は、同モータ43の外周面によって第2分割ケース52の内部に向けて押し広げられた状態になる。また、このとき一対の第2足部76の内縁部分は、モータ43の外周面と第2分割ケース52の両側壁52dの内面との間に挟み込まれた状態になる。これにより、モータ43の幅方向における両側において、防振部材70の第2足部76の内縁部分が同モータ43の外周面に押し付けられた状態になる。そのため、モータ43の外周面と第2分割ケース52の両側壁52dの内面との接触が抑えられるとともに、モータ43が第2分割ケース52の内部において防振部材70の第2足部76の内縁部分によってしっかり支持されるようになる。
【0056】
本実施形態のエアポンプ装置41では、このようにして第1分割ケース51と第2分割ケース52とからなるケース50の内部に電動ポンプユニット53が収容される。図12図14に示すように、本実施形態では、ケース50の内部においては、防振部材70が電動ポンプユニット53を内側にくるむ状態で同電動ポンプユニット53の周囲に巻き付けられた状態になっている。
【0057】
本実施形態のエアポンプ装置41では、第1分割ケース51と第2分割ケース52との間に、防振部材70の第1部分71の第1周囲部73と第2部分72の4つの第2足部76とが挟み込まれた状態になっている。これら第1部分71の第1周囲部73及び第2部分72の4つの第2足部76は、第1分割ケース51と第2分割ケース52との合わせ部において延びる態様で、第1分割ケース51と第2分割ケース52との間に介設される挟持部77を構成している。この挟持部77は、第1分割ケース51と第2分割ケース52との間で部分的に圧縮された状態で、第1分割ケース51と第2分割ケース52との間を塞いでいる。こうした挟持部77を設けることにより、第1分割ケース51と第2分割ケース52との合わせ部からの音漏れが抑えられるため、騒音を抑える効果が得られる。
【0058】
ここで、第4工程において第1分割ケース51に第2分割ケース52を嵌める際には、第1分割ケース51と第2分割ケース52との間で防振部材70の挟持部77を所定量だけ圧縮する必要がある。そのため、上記挟持部77の形状(例えば、厚さ)によっては、第1分割ケース51に第2分割ケース52を嵌める際に、大きな力が必要になってしまう。
【0059】
この点、本実施形態のエアポンプ装置41では、防振部材70の挟持部77のうち、長手方向において隣り合う2つの第2足部76の間の部分は、第1部分71のみによって構成されている。これにより、防振部材70の挟持部77のうちの長手方向において隣り合う2つの第2足部76の間の部分の厚さが、それ以外の部分の厚さと比較して薄くなっている。そのため本実施形態のエアポンプ装置41では、2つの第2足部76の間の部分にも第2部分72が配置されるものと比較して、防振部材70の挟持部77を小さい力で必要な量だけ圧縮することができるようになる。したがって、第1分割ケース51への第2分割ケース52の取り付けにかかる作業、ひいてはエアポンプ装置41の組み立てにかかる作業を容易に行うことができる。
【0060】
次に、シート装置30におけるエアポンプ装置41の固定構造について説明する。
図5図6及び図17に示すように、本実施形態のシート装置30は、そのエアポンプ装置41とシート1(シートバック3の骨格)との間に介在される防振装置80を備えている。
【0061】
詳述すると、本実施形態の防振装置80は、エアポンプ装置41のケース50に係止される一対の搭載ブラケット81と、シートバック3の骨格側に設けられた図示しない固定ブラケットに係止される中間ブラケット82とを備えている。また、防振装置80は、各搭載ブラケット81と中間ブラケット82との間に介在される一対のゴムブッシュ83を備えている。
【0062】
本実施形態の搭載ブラケット81は、略平板状のポンプ係合部84と、このポンプ係合部84の一端に設けられた略Cリング状のブッシュ係合部85と、を備えている。また、本実施形態のゴムブッシュ83は、略扁平略円柱状の外形を有している。更に、このゴムブッシュ83の外周面83sには、その全周に亘って延びる係合溝83aが形成されている。そして、搭載ブラケット81のブッシュ係合部85には、その内周から径方向内側に突出する略Cリング状の係合突部85aが設けられている。
【0063】
即ち、本実施形態の搭載ブラケット81は、この係合突部85aをゴムブッシュ83側の係合溝83a内に配置する状態で、そのブッシュ係合部85がゴムブッシュ83の外周面83sに係合する。また、本実施形態のエアポンプ装置41は、そのケース50の長手方向両端部にブラケット係止部86を備えている。具体的には、これらのブラケット係止部86は、それぞれ、断面略L字状の外形を有してケース50の短手方向に向かい合う一対の係止片86aを備えている。そして、本実施形態の各搭載ブラケット81は、これらの両係止片86aの間にポンプ係合部84が挟み込まれる状態で、それぞれ、そのケース50の長手方向端部に係止される構成となっている。
【0064】
一方、本実施形態の中間ブラケット82は、その長手方向両端部に貫通孔82aを有した長尺略板状の外形を有している。また、本実施形態のゴムブッシュ83には、その略円柱形状の軸心部分を貫通する態様で貫通孔87が設けられている。更に、本実施形態の防振装置80において、これら中間ブラケット82の各貫通孔82a及び各ゴムブッシュ83の貫通孔87には、それぞれ、カシメピン88が挿通される。そして、本実施形態の防振装置80は、これら各カシメピン88の両端をかしめることにより、その中間ブラケット82と各搭載ブラケット81との間に一対のゴムブッシュ83を介在させる構成となっている。
【0065】
即ち、本実施形態の防振装置80は、これらの各ゴムブッシュ83が弾性変形することにより、その各カシメピン88の軸方向及び径方向における中間ブラケット82と各搭載ブラケット81との間の相対変位を許容する。更に、これらの各ゴムブッシュ83の弾性力(弾性復元力)に基づいて、その中間ブラケット82と各搭載ブラケット81との間に生じた相対変位量を減衰する。そして、本実施形態の防振装置80は、これにより、そのエアポンプ装置41に生じた振動を吸収する構成になっている。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する作用効果が得られる。
(1)エアポンプ装置41は、電動ポンプユニット53の外面とケース50の内面との間に介設される防振部材70を有している。防振部材70は、弾性を有する樹脂材料によって板状に形成されるとともに、電動ポンプユニット53を内側にくるむ状態で同電動ポンプユニット53の周囲に巻き付けられた状態で取り付けられている。この防振部材70の第1部分71は第1分割ケース51の底壁51cと電動ポンプユニット53との間に挟まれた状態になっている。また防振部材70の第2部分72は、第2分割ケース52の底壁52cと電動ポンプユニット53との間に挟まれた状態になっている。
【0067】
本実施形態のエアポンプ装置41によれば、電動ポンプユニット53に巻き付けられた状態でケース50内部に収められる防振部材70によって、ケース50内部の各部において、同ケース50の内面と電動ポンプユニット53の外面との接触を抑えることができる。そして、この防振部材70によってケース50内における電動ポンプユニット53の変位を吸収することができる。また、こうした防振部材70を設けることにより、電動ポンプユニット53(詳しくは、モータ43やポンプ機構44)の作動に伴い発生する音を吸収する効果や、同音を遮ってケース50の外部への音漏れを抑える効果を得ることができる。したがって本実施形態のエアポンプ装置41によれば、モータ43やポンプ機構44の作動に伴い発生する振動や騒音の影響を抑えて、高い静粛性を得ることができる。
【0068】
しかも、そうした構成を、電動ポンプユニット53をくるんだ状態の1枚の防振部材70を設けることによって実現することができる。そのため、様々な形状の複数の防振部材がケース50内に設けられる構造と比較して、エアポンプ装置41を簡素な構造にすることができる。
【0069】
(2)ケース50は、第1分割ケース51と第2分割ケース52とからなる分割構造をなしている。そして、防振部材70は、第1分割ケース51と第2分割ケース52との合わせ部において延びるとともに、第1分割ケース51と第2分割ケース52との間に介設される挟持部77を備えている。
【0070】
こうしたエアポンプ装置41によれば、分割構造のケース50が採用されるとはいえ、第1分割ケース51と第2分割ケース52との隙間を防振部材70の挟持部77によって埋めることができる。これにより、第1分割ケース51と第2分割ケース52との隙間を通じたケース50の内部から外部への音漏れを抑えることができるため、高い静粛性を得ることができる。
【0071】
(3)第1分割ケース51には4つの係止片51aが突設されている。第2分割ケース52の外面には4つの被係止部52aが形成されている。ケース50は、4つの係止片51aと4つの被係止部52aとの係合を通じて、第1分割ケース51と第2分割ケース52とが接合される構造になっている。防振部材70の挟持部77は第1分割ケース51の係止片51aが挿通される貫通孔73a,76aを有している。詳しくは、挟持部77を構成する第1部分71の第1周囲部73には4つの第1貫通孔73aが形成されており、同挟持部77を構成する第2部分72の4つの第2足部76には、それぞれ第2貫通孔76aが形成されている。
【0072】
こうしたエアポンプ装置41によれば、第1分割ケース51の4つの係止片51aを防振部材70の4つの第1貫通孔73aに挿通するといった容易な作業で、防振部材70を位置決めしつつ第1分割ケース51に取り付けることができる。しかも、防振部材70を電動ポンプユニット53の外面に沿って折り曲げたり、4つの係止片51aを4つの第2貫通孔76aに挿通したりするといった容易な作業で、防振部材70の第2部分72を所定の位置に取り付けることができる。
【0073】
このように、防振部材70の貫通孔73a,76aに第1分割ケース51の係止片51aを挿通するといった容易な作業を通じて、同防振部材70をケース50における正規の位置に組み付けることができる。そのため、エアポンプ装置41の組み立てを容易に行うことができる。しかも、防振部材70の貫通孔73a,76aとケース50の係止片51aとが係合しているために、同ケース50に対する防振部材70の位置ずれを抑えることができる。
【0074】
(4)防振部材70には、予め定められたパターンで延びる切れ目70dが形成されている。これにより、防振部材70の組み付けに際して同防振部材70を曲げるときに、予め設けられた切れ目70dによって、防振部材70の曲げ形状を適正にコントロールすることができる。そのため、防振部材70の組み付けを容易に行うことができる。
【0075】
尚、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・第1分割ケース51と第2分割ケース52とを接合する構造は、第1分割ケース51及び第2分割ケース52の一方の外面に突設された突出片を他方の外面に溶着することによって接合する構造など、任意の構造を採用することができる。
【0076】
・第1分割ケース51及び第2分割ケース52の形状は、防振部材70によってくるまれた状態の電動ポンプユニット53を収容できる形状であれば、任意に変更することができる。
【0077】
・防振部材70の挟持部77を第1分割ケース51と第2分割ケース52との接合の邪魔にならない形状にした上で、挟持部77において第1分割ケース51の係止片51aが挿通される4つの貫通孔73a,76aのうちの幾つかを省略してもよい。また、防振部材70の挟持部77において、4つの貫通孔73a,76aの全てを省略することも可能である。
【0078】
・防振部材70をケース50の内部において電動ポンプユニット53の周囲に巻き付けられた状態になるのであれば、防振部材70における第1分割ケース51と第2分割ケース52との間に介設される部分である挟持部77を省略してもよい。
【0079】
・上記実施形態では、ポンプ機構44は、モータ43の軸線方向に延びるシリンダ63を有したピストンポンプであることとしたが、ポンプ機構44の型式は、任意に変更してもよい。
【0080】
・切れ目70dを、厚さ方向において防振部材70を貫通する形状にすることに限らず、防振部材70厚さ方向における途中まで延びる形状にすることができる。
・防振部材70における切れ目70dの形成パターンは、任意に変更することができる。
【0081】
・上記実施形態では、防振装置80は、その搭載ブラケット81がゴムブッシュ83の外周面83sに係合する。更に防振装置80は、カシメピン88の軸方向及び径方向にゴムブッシュ83が弾性変形可能な状態で、その中間ブラケット82がカシメピン88及びゴムブッシュ83を係止する。これに限らず、中間ブラケット82がゴムブッシュ83の外周面83sに係合し、搭載ブラケット81が、カシメピン88の軸方向及び径方向にゴムブッシュ83が弾性変形可能な状態で、そのカシメピン88及びゴムブッシュ83を係止する構成としてもよい。
【0082】
・また、ゴムブッシュ83の数は、1つでも、3つ以上であってもよい。そして、複数のゴムブッシュ83を有する場合には、これらの各ゴムブッシュ83がエアポンプ装置41の長手方向において互いに離間した位置に配置されることが望ましい。
【0083】
・上記実施形態では、エアポンプ装置41は、シートバック3の内側において、そのサイドフレーム3fに沿うように配置されることとしたが、例えば、シートクッション2の内側に配置する等、その配置形態は任意に変更してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…シート
2…シートクッション
3…シートバック
3f…サイドフレーム
4…ヘッドレスト
10(11~16),20(21~29)…空気袋
30…シート装置
41…エアポンプ装置
42…吸排気バルブ装置
43…モータ
44…ポンプ機構
50…ケース
51…第1分割ケース
51a…係止片
51c…底壁
52…第2分割ケース
52a…被係止部
52c…底壁
53…電動ポンプユニット
70…防振部材
70c…幅狭部
70d…切れ目
71…第1部分
72…第2部分
73…第1周囲部
73a…第1貫通孔
74…第1中央部
74a…第1ポンプ部
74b…第1モータ部
75…第2中央部
76…第2足部
76a…第2貫通孔
77…挟持部
80…防振装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17