(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】微生物の識別方法及び微生物識別システム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20250128BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20250128BHJP
H01J 49/00 20060101ALI20250128BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N27/62 D
G01N33/483 Z
H01J49/00 360
H01J49/00 090
C12M1/34 B
(21)【出願番号】P 2021118562
(22)【出願日】2021-07-19
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 華奈江
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-184020(JP,A)
【文献】特開2010-256101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0108509(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0013274(US,A1)
【文献】国際公開第2004/023132(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60 - G01N 27/70
G01N 33/48 - G01N 33/98
H01J 49/00
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分類群が異なる複数種類の既知微生物について、該複数種類の既知微生物の各々が属する分類群と、該既知微生物のマススペクトル上における複数のピーク同士の間隔のうち、前記分類群に特有のピーク間隔である特有ピーク間隔とを、互いに対応付けて記憶したピーク間隔データベースと、
被検微生物のマススペクトルを取得するマススペクトル取得部と、
前記ピーク間隔データベースに登録されている前記特有ピーク間隔の中から、前記被検微生物のマススペクトルに含まれる複数のピーク同士の間隔のいずれかと、所定の誤差範囲で一致するものを選出するピーク間隔データベース検索部と、
前記ピーク間隔データベース検索部によって選出された特有ピーク間隔に対応付けて前記ピーク間隔データベースに記憶されている分類群を、前記被検微生物が属する分類群として特定する分類群特定部と、
を有する微生物識別システム。
【請求項2】
前記ピーク間隔データベースが、更に、前記複数種類の既知微生物の各々について、前記特有ピーク間隔を形成する複数のピークのm/zを記憶したものであって、
更に、
前記ピーク間隔データベース検索部によって選出された特有ピーク間隔に対応付けて前記ピーク間隔データベースに記憶されている、該特有ピーク間隔を形成する複数のピークのm/zと、前記被検微生物のマススペクトル上において、前記特有ピーク間隔と所定の誤差範囲で一致したピーク間隔を形成する複数のマススペクトルピークのm/zとの差に基づいて、前記被検微生物のマススペクトルのm/z軸を較正する第1較正部、
を有する請求項1に記載の微生物識別システム。
【請求項3】
更に、
少なくとも、前記複数種類の既知微生物の各々について、該既知微生物に含まれる複数種類のタンパク質の各々に由来するイオンのm/zを記憶したタンパク質データベースと、
前記第1較正部による較正後の前記被検微生物のマススペクトルと、前記タンパク質データベースに登録されている前記複数種類のタンパク質の各々に由来するイオンのm/zとを照合するタンパク質データベース検索部と、
前記タンパク質データベース検索部による照合結果に基づいて、前記較正後の被検微生物のマススペクトル上のピークを、該ピークが由来するタンパク質に帰属させるピーク帰属部と、
を有する請求項2に記載の微生物識別システム。
【請求項4】
更に、
前記較正後の前記被検微生物のマススペクトル上における、前記複数種類のタンパク質のいずれかに帰属されたピークのm/zと、前記タンパク質データベースに記憶されている該タンパク質のm/zとの差に基づいて、前記較正後の前記被検微生物のマススペクトルのm/z軸を再較正する
第2較正部、
を有する請求項3に記載の微生物識別システム。
【請求項5】
被検微生物のマススペクトルを取得し、
分類群が異なる複数種類の既知微生物について、該複数種類の既知微生物の各々が属する分類群と、該既知微生物のマススペクトル上における複数のピークの間隔のうち、前記分類群に特有のピーク間隔である特有ピーク間隔とを、互いに対応付けて記憶したピーク間隔データベースを検索することにより、前記ピーク間隔データベースに登録されている前記特有ピーク間隔の中から、前記被検微生物のマススペクトルに含まれる複数のピーク同士の間隔のいずれかと、所定の誤差範囲で一致するものを選出し、
選出された特有ピーク間隔に対応付けて前記ピーク間隔データベースに記憶されている分類群を、前記被検微生物が属する分類群として特定する、
微生物の識別方法。
【請求項6】
更に、
前記選出された特有ピーク間隔に対応付けて前記ピーク間隔データベースに記憶されている、該特有ピーク間隔を形成する複数のピークのm/zと、前記被検微生物のマススペクトル上において、前記特有ピーク間隔と所定の誤差範囲で一致したピーク間隔を形成する複数のマススペクトルピークのm/zとの差に基づいて、前記被検微生物のマススペクトルのm/z軸を較正する、
請求項5に記載の微生物の識別方法。
【請求項7】
更に、
前記較正後の前記被検微生物のマススペクトルと、少なくとも、前記複数種類の既知微生物の各々について、該既知微生物に含まれる複数種類のタンパク質の各々に由来するイオンのm/zを記憶したタンパク質データベースに登録されている前記複数種類のタンパク質の各々に由来するイオンのm/zとを比較した結果に基づいて、前記較正後の被検微生物のマススペクトル上のピークを、該ピークが由来するタンパク質に帰属させる、
請求項6に記載の微生物の識別方法。
【請求項8】
更に、
前記較正後の前記被検微生物のマススペクトル上における、前記複数種類のタンパク質のいずれかに帰属されたピークのm/zと、前記タンパク質データベースに記憶されている該タンパク質のm/zとの差に基づいて、前記較正後の前記被検微生物のマススペクトルのm/z軸を再較正する、
請求項7に記載の微生物の識別方法。
【請求項9】
請求項5~8のいずれかに記載の微生物の識別方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析を利用した微生物の識別方法及び微生物識別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検微生物を質量分析して得られたマススペクトルに基づいて微生物の識別、すなわち微生物が属する分類群(属、種、亜種、株、又は血清型など)の特定を行う手法が知られている。質量分析によれば、微量の微生物試料を用いて短時間で分析結果を得ることができ、かつ多検体の連続分析も容易であるため、簡便かつ迅速な微生物識別が可能となる。この手法では、まず、被検微生物から抽出したタンパク質を含む溶液又は被検微生物の懸濁液等を、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS;Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Mass Spectrometry)などによって分析する。そして、前記分析によって取得されたマススペクトル上における各ピークのm/zと、予めデータベースに多数収録されている各既知微生物に特徴的なピーク(マーカーピーク)のm/zとを照合することにより、被検微生物の識別を行う(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
質量分析装置によって測定されるイオンのm/zは、周囲温度の変化など様々な要因で変動する。このm/zの変動幅がその装置の質量精度となる。質量精度を向上させるために、質量分析装置では、m/zの理論値又はきわめて正確な測定値(以下、「理論値等」とよぶ)が既知である化合物に対する測定結果を利用したm/z軸の較正(以下、「質量較正」とよぶことがある)が行われている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
具体的には、m/zの理論値等が既知である所定の化合物を含む標準試料を測定し、そのときのm/zの実測値と前記理論値等とを比較することにより当該m/zにおける質量偏差(すなわちm/zの実測値と理論値等との差)を求める。そして、複数の化合物に対する異なるm/zにおいてそれぞれ得られる質量偏差から、m/zと質量偏差との関係を示す較正曲線を作成する。こうして作成された較正曲線に基づいて、未知試料の質量分析によって得られるm/zの実測値を較正する。これにより、未知試料に由来するイオンのm/zを高い精度で以て求めることができる。
【0005】
こうした質量較正には、標準試料と未知試料を混合して同時に測定する内部標準法と、標準試料と未知試料とを別々に測定する外部標準法がある。内部標準法によれば、同時刻に実施された測定結果に基づいて質量較正が行われるので、外部標準法よりも高精度な質量較正が可能である。しかし、内部標準法では、標準試料由来のイオンによって未知試料のイオン化が抑制される(イオンサプレッション)場合があること、及び、未知試料由来のピークと標準試料由来のピークとの識別が難しくなる場合があることなどから、MALDI-MSを用いた微生物分析においては、通常、外部標準法による質量較正が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-184020号公報
【文献】特開2005-292093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
MALDI-MSを用いた微生物分析では、上記のような外部標準法による質量較正用の標準試料として大腸菌が用いられる。大腸菌のMALDIマススペクトルでは、m/z 4000-20000の範囲に広くピークが観測されるため、広範囲の質量較正が可能である。しかしながら、上記の通り、外部標準法による質量較正は、内部標準法に比べて較正精度が低く、較正を行っても比較的大きな誤差(例えば、500~1000 ppm程度の誤差)が残るという問題がある。こうした比較的大きな誤差を許容すると、類縁性の高い微生物同士を識別できない場合や、ピークの誤判定が生じる場合があるため、質量分析を用いた従来の微生物分析では、精度の高い微生物識別を行うことが困難であった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、質量分析を利用した高精度な微生物識別を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る微生物識別システムは、
分類群が異なる複数種類の既知微生物について、該複数種類の既知微生物の各々が属する分類群と、該既知微生物のマススペクトル上における複数のピークの間隔のうち、前記分類群に特有のピーク間隔である特有ピーク間隔とを、互いに対応付けて記憶したピーク間隔データベースと、
被検微生物のマススペクトルを取得するマススペクトル取得部と、
前記ピーク間隔データベースに登録されている前記特有ピーク間隔の中から、前記被検微生物のマススペクトルに含まれる複数のピーク同士の間隔のいずれかと、所定の誤差範囲で一致するものを選出するピーク間隔データベース検索部と、
前記ピーク間隔データベース検索部によって選出された特有ピーク間隔に対応付けて前記ピーク間隔データベースに記憶されている分類群を、前記被検微生物が属する分類群として特定する分類群特定部と、
を有することを特徴としている。
【0010】
また、上記課題を解決するために成された本発明に係る微生物の識別方法は、
被検微生物のマススペクトルを取得し、
分類群が異なる複数種類の既知微生物について、該複数種類の既知微生物の各々が属する分類群と、該既知微生物のマススペクトル上における複数のピークの間隔のうち、前記分類群に特有のピーク間隔である特有ピーク間隔とを、互いに対応付けて記憶したピーク間隔データベースを検索することにより、前記ピーク間隔データベースに登録されている前記特有ピーク間隔の中から、前記被検微生物のマススペクトルに含まれる複数のピーク同士の間隔のいずれかと、所定の誤差範囲で一致するものを選出し、
選出された特有ピーク間隔に対応付けて前記ピーク間隔データベースに記憶されている分類群を、前記被検微生物が属する分類群として特定する、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明に係る微生物識別システム又は微生物の識別方法によれば、個々のマススペクトルピークのm/z値に比べてずれが生じにくいピーク間隔に基づいて、被検微生物が属する分類群を特定するため、信頼性の高い微生物識別を行うことができ、質量分析を利用した高精度な微生物識別を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る質量分析システムの要部構成を示すブロック図。
【
図2】ピーク間隔DBに登録されている特有ピーク間隔を概念的に示した模式図。
【
図3】同実施形態における微生物識別及び質量較正の実行手順を示すフローチャート。
【
図4】被検微生物のマススペクトルと特有ピーク間隔との照合動作を概念的に示した模式図。
【
図5】Staphylococcus属細菌のMALDIマススペクトル。
【
図6】Staphylococcus cohnii subsp. urealyticusのMALDIマススペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る質量分析システム(本発明に係る微生物識別システムに相当)の概略構成図である。この質量分析システムは、質量分析装置10と、制御・処理部20とを有している。
【0014】
質量分析装置10 は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI;Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization)法による試料のイオン化を行うものであれば、その構成を問わないが、MALDIイオン源と飛行時間型質量分析計(TOFMS;Time-of-Flight Mass Spectrometer)とを組み合わせて成るMALDI-TOFMSを用いることが好ましい。MALDI-TOFMSは測定可能な質量電荷比の範囲が非常に広いため、微生物の構成成分であるタンパク質のような高質量分子の分析に適したマススペクトルを取得することができる。
【0015】
制御・処理部20は、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータ若しくは専用のハードウエア又はそれらの組み合わせから成り、質量分析装置10の動作を制御するための分析制御部21と、質量分析装置10を用いた試料の測定で得られたデータを処理するデータ処理部30と、ピーク間隔データベース(ピーク間隔DB23)と、タンパク質データベース(タンパク質DB24)と、データ処理部30で生成されたデータを記憶するデータ記憶部22とを備えている。また、制御・処理部20には、LCD(Liquid Crystal Display)等から成るディスプレイモニタ(表示部41)が接続されている。
【0016】
データ処理部30は、質量分析装置10による試料の測定で得られたデータに基づいてマススペクトルを生成するスペクトル生成部31と、ピーク間隔DB23を検索するピーク間隔DB検索部32と、検索結果に基づいて微生物の識別を行う分類群特定部33と、ピーク間隔DBに登録されている内容に基づいて前記マススペクトルの較正を行う第1較正部34と、タンパク質DB24を検索するタンパク質DB検索部35と、その検索結果に基づいて前記マススペクトル上のピークを帰属するピーク帰属部36と、タンパク質DB24に収録されている内容に基づいて前記マススペクトルの再較正を行う第2較正部37と、を機能ブロックとして備えている。なお、これらの機能ブロックは、いずれも基本的には制御・処理部20を構成するコンピュータに設けられたCPUがHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive) 等の大容量記憶装置から成る記憶部にインストールされた専用のプログラムを該コンピュータのメモリに読み出して実行することによりソフトウエア的に実現される機能手段である。なお、該専用プログラムは必ずしも単体のプログラムである必要はなく、例えば質量分析装置10を制御するためのプログラムの一部に組み込まれた機能であってもよく、その形態は特に問わない。
【0017】
タンパク質DB24には、複数種類の既知微生物について、その微生物の分類(属、種、亜種、株、及び血清型など)に関する情報と、その微生物に含まれる複数種類のタンパク質の名称と、各タンパク質に由来するイオンのm/zの理論値又は実測値と、が互いに対応付けて記憶されている。
【0018】
様々な微生物に由来するタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列又は該タンパク質のアミノ酸配列に関する情報は、米国のGenBankデータベース、欧州のEMBLデータベース、及び、日本のDDBJデータベースなどの公共データベース(以下、公共DB)に収録されている。そこで、タンパク質DB24は、例えば、上記のような公共DBに登録されている情報に基づいて構築することができる。具体的には、まず、所定の既知微生物(例えば、解析対象とする分類群に属する複数種類の既知微生物)に含まれる各種タンパク質の遺伝子(例えば、リボソームタンパク質群の遺伝子)のDNA塩基配列を、公共DBから入手し、それらをアミノ酸配列に翻訳することによって該既知微生物に含まれる各種タンパク質の計算分子量を導出する。なお、前記公共DBに当該タンパク質のアミノ酸配列が登録されている場合は、当該アミノ酸配列から直接、前記計算分子量を求めるようにしてもよい。また、前記計算分子量には、N-末端開始メチオニン残基の切断、又は翻訳後修飾を加味した補正を施すようにしてもよい。次に、各種タンパク質の計算分子量を、該タンパク質に由来するイオンのm/zの理論値(理論m/z)に変換する。この変換の際には、各種タンパク質の計算分子量を、該タンパク質を本実施形態における質量分析装置10によるものと同様のイオン化法及び質量分離法によって質量分析した場合に得られるイオンの理論m/zに変換することが望ましい。なお、生体試料をMALDI-TOFMSで分析した際には、主に[M+H]+(Mは分子、Hは水素原子)、[M-H]-、又は[M+Na]+(Naはナトリウム原子)等の分子量関連イオンが検出されることが知られている。したがって、上記のような計算分子量からイオンの理論m/zへの変換は比較的容易に行うことができる。以上によって算出された各種タンパク質のイオンの理論m/zを、タンパク質名及び微生物名と関連付けて、制御・処理部20を構成するコンピュータに設けられた大容量記憶装置等に記憶させることにより、タンパク質DB24が構築される。
【0019】
なお、タンパク質DB24には、前記複数種類の既知微生物についての各種タンパク質の一部又は全部について、上記のようなイオンの理論m/zに代えて、既知微生物を実際に本実施形態における質量分析装置10と同様のイオン化法及び質量分離法によって質量分析して得られた、イオンの実測値(実測m/z)を登録するようにしてもよい。
【0020】
ピーク間隔DB23には、種(species)が異なる複数種類の既知微生物の各々について、該既知微生物が属する種の情報と、当該種に属する既知微生物に特有のマススペクトルピーク間隔(以下、「特有ピーク間隔」とよぶ)の情報と、該特有ピーク間隔を形成する複数のピークのm/zに関する情報とが、互いに対応付けて記憶されている。なお、これらの値(すなわち、前記特有ピーク間隔の値と各ピークのm/zの値)は、いずれも理論値であってもよく、実測値であってもよい。なお、前記理論値は、前記複数種類の既知微生物に含まれる各種タンパク質の計算分子量を、該タンパク質を本実施形態における質量分析装置10によるものと同様のイオン化法及び質量分離法によって質量分析した場合に得られるイオンの理論m/zに変換したものであることが望ましい。また、前記実測値は、前記複数種類の既知微生物の各々を実際に本実施形態における質量分析装置10と同様のイオン化法及び質量分離法によって質量分析して得られた値であることが望ましい。
【0021】
なお、ピーク間隔DB23の収録内容は、上述のタンパク質DB24の収録内容から一部を抽出することによって作成することができる。例えば、タンパク質DB24に収録されている各種タンパク質に由来するイオンのm/zを、複数種類の既知微生物間で比較し、特定の種に属する既知微生物に共通に含まれており、且つ他の種に属する微生物には含まれていないm/zを複数特定し、各m/zの値(ピークのm/zに相当)、及びそれらのm/zの差(ピーク間隔に相当)を求めることによって、ピーク間隔DB23を作成することができる。あるいは、複数種類の既知微生物について、タンパク質DBに登録されている各種タンパク質のイオンのm/z同士の間隔を比較し、特定の種に属する既知微生物に共通に存在し、且つ他の種に属する微生物には存在しないm/z間隔を特定すると共に、該m/z間隔(特有ピーク間隔に相当)を形成する各m/zの値(ピークのm/zに相当)を求めることによって、ピーク間隔DB23を作成するようにしてもよい。
【0022】
図2は、ピーク間隔DB23に登録されている特有ピーク間隔を概念的に示したものである。同図における黒い帯同士の間隔が各既知微生物における特有ピーク間隔を表している。なお、黒い帯の幅は該特有ピーク間隔の許容誤差を示しており、この許容誤差の大きさは質量精度によって変わるが、概ね±200 ppm以内とすることが好ましい。また、
図2では、各既知微生物について、2つ又は3つのピークで形成される特有ピーク間隔を示しているが、特有ピーク間隔は、4つ以上(望ましくは10以下)のピークによって形成されるものであってもよい。
【0023】
なお、本実施形態では、タンパク質DB24又はピーク間隔DB23を、制御・処理部20内に格納するものとしたが、これに限らず、これらのDBのいずれか一方又は両方を、制御・処理部20に設けられたインターフェース(図示略)を介して接続された外部装置に格納してもよい。また、これらのDBのいずれか一方又は両方をインターネット上のサーバ等に格納し、前記インターフェースを介して制御・処理部20をインターネットに接続することによって、該データベースを利用する構成としてもよい。こうしたタンパク質DB24又はピーク間隔DB23としては、公共の機関又は質量分析装置10のメーカーが予め用意したデータベースを用いるほか、例えば、ユーザが独自に構築したデータベースを用いるようにしてもよい。
【0024】
以下、本実施形態に係る質量分析システムを用いた微生物識別及び質量較正の実行手順について、
図3のフローチャートを参照しつつ説明を行う。
【0025】
まず、ユーザは被検微生物(属は特定されているが種が特定されていない微生物)の構成成分を含む試料を調製し、質量分析装置10にセットして質量分析を実行させる。このとき、前記試料としては、細胞抽出物、又は細胞抽出物からリボソームタンパク質等の細胞構成成分を精製したもののほか、インタクト(intact)な微生物細胞や該微生物細胞の懸濁液をそのまま使用することもできる。
【0026】
スペクトル生成部31は、質量分析装置10から得られる検出信号を取得し、該検出信号に基づいて被検微生物のマススペクトルを作成する(ステップS101)。
【0027】
次に、ピーク間隔DB検索部32が、被検微生物のマススペクトルを、ピーク間隔DB23に収録されている既知微生物の特有ピーク間隔と照合し、被検微生物のマススペクトル上に含まれる複数のピーク同士の間隔のいずれかと、所定の誤差範囲で一致する特有ピーク間隔を選出する(ステップS102)。
図4は、ピーク間隔DB検索部32による被検微生物のマススペクトルと特有ピーク間隔との照合動作を概念的に示した模式図である。同図では、被検微生物のマススペクトル上で、各既知微生物の特有ピーク間隔をm/z軸方向にスライドさせつつ、いずれかの特有ピーク間隔と所定の誤差範囲で一致する箇所を探索している様子を表している。また、同図では、被検微生物のマススペクトル上において、既知微生物Aの特有ピーク間隔と一致する箇所は発見されず、既知微生物Bの特有ピーク間隔と一致する箇所が発見された例を示している。
【0028】
続いて、分類群特定部33が、ステップS102で選出された特有ピーク間隔に対応付けてピーク間隔DB23に記憶されている既知微生物の「種」を、前記被検微生物が属する種として特定する(ステップS103)。質量分析では、m/zの値のずれは生じやすいが、ピーク間隔のずれは比較的生じにくい。そのため、上記のように、個々のピークのm/z値によらず、ピーク間隔の大きさに基づいて被検微生物が属する分類群を特定することにより、信頼性の高い微生物識別を行うことができる。なお、ステップS103で特定された被検微生物の種の情報は、表示部41で表示されると共にデータ記憶部22に記憶される。
【0029】
次に、第1較正部34が、ステップS102における検索結果に基づいて、被検微生物のマススペクトルの質量較正を行う(ステップS104)。具体的には、ステップS102で選出された特有ピーク間隔を形成する複数のピークのm/z(ピーク間隔DB23に登録されている値;以下「登録m/z」とよぶ)と、前記被検微生物のマススペクトル上において、前記特有ピーク間隔と所定の誤差範囲で一致したピーク間隔を形成する複数のピークのm/z(以下「実測m/z」とよぶ)とを比較し、対応するピーク同士の登録m/zと実測m/zとの差に基づいて前記被検微生物のマススペクトルのm/z軸を較正するための第1較正情報を算出する。第1較正情報は例えば計算式として導出することができる。第1較正部34は、この第1較正情報を用いて被検微生物のマススペクトルを質量較正することにより、質量精度の高いマススペクトル(以下、「較正済マススペクトル」とよぶ)を生成する。例えば、上述の
図4で示した例の場合、被検微生物のマススペクトル上のピークのうち、既知微生物Bの特有ピーク間隔と間隔が一致した3つのピーク(図中の上向きの矢印で示したピーク)の実測m/zが、既知微生物Bの特有ピーク間隔に対応付けてピーク間隔DB23に記憶されている3つの登録m/zの各々と一致するように質量較正が行われる。
【0030】
次に、タンパク質DB検索部35が、タンパク質DB24を検索することにより、前記較正済マススペクトル上に存在する各ピークの帰属を行う。すなわち、前記較正済マススペクトル上に存在する各ピーク(以下、「較正済ピーク」とよぶ)のm/zの値を読み取り、その値と、タンパク質DB24に登録されている、各種タンパク質(ステップS103で特定された微生物種に含まれるもの)に由来するイオンのm/zの値とを照合する(ステップS105)。そして、所定の誤差範囲内でm/zが一致するタンパク質が特定された較正済ピークを、該タンパク質に由来するピークであると判定する(ステップS106)。ステップS106における各ピークの帰属結果は、表示部41に表示されると共に、データ記憶部22に記憶される。
【0031】
次に、第2較正部37が、ステップS106で対応するタンパク質が特定された較正済ピークのm/zと、タンパク質DB24に登録されている該タンパク質のm/zの値とを比較し、前者を後者に換算するための第2較正情報(例えば計算式)を算出する。そして、該第2較正情報に基づいて前記較正済マススペクトルを再較正することにより、更に質量精度の高いマススペクトルを生成する(ステップS107)。以上により生成されたマススペクトル(第2較正処理後のマススペクトル)は、表示部41に表示されると共に、データ記憶部22に記憶される。
【0032】
以上により、データ記憶部22に記憶された第2較正後のマススペクトルは、例えば、種々の微生物のマススペクトルが登録された新規又は既存のマススペクトルライブラリに登録され、他の未知微生物のマススペクトルとの比較に用いられる。
【0033】
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。
【0034】
例えば、本発明に係る微生物識別システム、微生物の識別方法、又はプログラムは、必ずしもステップS101~ステップS107までの全てのステップを実行するものでなくてもよく、例えば、マススペクトルの取得から被検微生物の識別までの各ステップ(ステップS101~S103)のみを実行するものとしてもよい。あるいは、マススペクトルの取得から第1較正処理までの各ステップ(ステップS101~S104)のみを実行するものとしたり、マススペクトルの取得からピークの帰属までの各ステップ(ステップS101~S106)のみを実行するものとしたりしてもよい。
【0035】
なお、上記実施形態では、分類群特定部33によって被検微生物が属する「種」を特定するものとしたが、これに限らず、被検微生物が属するその他の分類群、例えば、「属(genus)」、「亜種(subspecies)」、「株(strain)」、又は「血清型(serotype)」等のいずれかを特定するものとしてもよい。その場合、ピーク間隔DB23は、特定しようとする分類群に特有のマススペクトルピークの間隔(特有ピーク間隔)と、該特有ピーク間隔を形成する複数のマススペクトルピークのm/zとが登録されたものとする。
【実施例1】
【0036】
Staphylococcus属細菌を被検微生物としてMALDI-MSによる測定(リニアモード)を行った。なお、測定に際しては、前記被検微生物の菌体をMALDI用の試料プレートに塗布し、その上にマトリックス剤(シナピン酸)を滴下して乾燥させることによって試料/マトリックス混合結晶を調製した。
【0037】
上記測定によって得られたマススペクトルを
図5に示す。図中のピークaとcの間隔がm/z 1656.3であることを手掛かりに、予め作成したピーク間隔DB(Staphylococcus属に属する複数種類の既知微生物について、各微生物が属する種に特徴的なピーク間隔の理論値を登録したもの)を検索した結果、前記被検微生物は、Staphylococcus cohnii subsp. cohniiであることが示唆された。
【0038】
次に、Staphylococcus subsp. cohniiの別の菌株に対して上記と同様の測定を5回行った。各測定における、上記ピークaとピークcに対応するマススペクトルピークのm/zの実測値(質量較正前)と、それらのピーク同士の間隔とを表1に示す。
【0039】
【0040】
表1に示す通り、上記Staphylococcus subsp. cohniiの別の菌株におけるピークaとピークcに対応するピーク同士の間隔は、m/z 1655.8~1656.4であり、
図5で示したマススペクトル上におけるピークaとピークcとの間隔とほぼ一致していた。また、これらの値は、前記ピーク間隔DBに登録されている当該ピーク間隔の理論値(m/z 1655.9)と、±0.5 Da以内の差で一致していた。
【0041】
なお、ピークaは、hypothetical protein(機能不明:理論m/z 4909.36)のピークであり、ピークcは、UPF0337 protein(理論m/z 6565.24)のピークである。これら2本のピークの理論m/z(前記)に基づいて、
図5のマススペクトルのm/z軸を較正(自己キャリブレーション)した結果、該スペクトル上におけるピークaのm/z及びピークcのm/zは、いずれも理論値と一致した。以上の結果から、
図5に示したStaphylococcus属細菌は、Staphylococcus cohnii subsp. cohniiであると推測された。
【0042】
また、上記自己キャリブレーション後のマススペクトル上の各ピークのm/zと一致する理論m/zを有するタンパク質を、予め作成したタンパク質DBで検索した結果、該マススペクトル上には、リボソームタンパク質L30、L32、及びS20、S21の理論m/zと一致するピークが存在することが確認された。
【実施例2】
【0043】
上述のStaphylococcus cohnii subsp. cohniiと類縁性の高いStaphylococcus cohnii subsp. urealyticusを被検微生物とし、実施例1と同様にMALDI-MS測定(リニアモード)を行って得られたマススペクトルを
図6に示す。該マススペクトル上におけるピークaとbの間隔はm/z 1182.2である。このピーク間隔を上述のピーク間隔DBと照合した結果、Staphylococcus cohnii subsp. urealyticusに特有のものとして登録されているピーク間隔と一致し、類縁のStaphylococcus cohnii subsp. cohniiに特有のものとして登録されているピーク間隔とは一致しないことが確認された。このことから、本発
明が亜種レベルでの微生物識別にも利用できることが示唆された。
【0044】
更に、
図6のマススペクトルを、前記ピーク間隔DBに登録されているStaphylococcus cohnii subsp. urealyticusのピークa、bの理論m/z値を用いて質量較正(自己キャリブレーション)し、該較正後のマススペクトル上の各ピークのm/zと一致する理論m/zを有するタンパク質を、前記タンパク質DBで検索した。その結果、該較正後のマススペクトル上には、リボソームタンパク質S20、L24、L28、L29、L30、L33、L34、L35、及びL36の理論m/zと一致するピークが存在することが確認された。
【0045】
[種々の態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0046】
(第1項)本発明の一態様に係る微生物識別システムは、
分類群が異なる複数種類の既知微生物について、該複数種類の既知微生物の各々が属する分類群と、該既知微生物のマススペクトル上における複数のピークの間隔のうち、前記分類群に特有のピーク間隔である特有ピーク間隔とを、互いに対応付けて記憶したピーク間隔データベースと、
被検微生物のマススペクトルを取得するマススペクトル取得部と、
前記ピーク間隔データベースに登録されている前記特有ピーク間隔の中から、前記被検微生物のマススペクトルに含まれる複数のピーク同士の間隔のいずれかと、所定の誤差範囲で一致するものを選出するピーク間隔データベース検索部と、
前記ピーク間隔データベース検索部によって選出された特有ピーク間隔に対応付けて前記ピーク間隔データベースに記憶されている分類群を、前記被検微生物が属する分類群として特定する分類群特定部と、
を有するものである。
【0047】
(第2項)第1項に記載の微生物識別システムは、前記ピーク間隔データベースが、更に、前記複数種類の既知微生物の各々について、前記特有ピーク間隔を形成する複数のピークのm/zを記憶したものであって、
前記ピーク間隔データベース検索部によって選出された特有ピーク間隔に対応付けて前記ピーク間隔データベースに記憶されている、該特有ピーク間隔を形成する複数のピークのm/zと、前記被検微生物のマススペクトル上において、前記特有ピーク間隔と所定の誤差範囲で一致したピーク間隔を形成する複数のマススペクトルピークのm/zとの差に基づいて、前記被検微生物のマススペクトルのm/z軸を較正する第1較正部、
を更に有するものであってもよい。
【0048】
(第3項)第2項に記載の微生物識別システムは、
少なくとも、前記複数種類の既知微生物の各々について、該既知微生物に含まれる複数種類のタンパク質の各々に由来するイオンのm/zを記憶したタンパク質データベースと、
前記第1較正部による較正後の前記被検微生物のマススペクトルと、前記タンパク質データベースに登録されている前記複数種類のタンパク質の各々に由来するイオンのm/zとを照合するタンパク質データベース検索部と、
前記タンパク質データベース検索部による照合結果に基づいて、前記較正後の被検微生物のマススペクトル上のピークを、該ピークが由来するタンパク質に帰属させるピーク帰属部と、
を更に有するものであってもよい。
【0049】
(第4項)第3項に記載の微生物識別システムは、
前記較正後の前記被検微生物のマススペクトル上における、前記複数種類のタンパク質のいずれかに帰属されたピークのm/zと、前記タンパク質データベースに記憶されている該タンパク質のm/zとの差に基づいて、前記較正後の前記被検微生物のマススペクトルのm/z軸を再較正する第2較正部、
を更に有するものであってもよい。
【0050】
(第5項)本発明の一態様に係る微生物の識別方法は、
被検微生物のマススペクトルを取得し、
分類群が異なる複数種類の既知微生物について、該複数種類の既知微生物の各々が属する分類群と、該既知微生物のマススペクトル上における複数のピークの間隔のうち、前記分類群に特有のピーク間隔である特有ピーク間隔とを、互いに対応付けて記憶したピーク間隔データベースを検索することにより、前記ピーク間隔データベースに登録されている前記特有ピーク間隔の中から、前記被検微生物のマススペクトルに含まれる複数のピーク同士の間隔のいずれかと、所定の誤差範囲で一致するものを選出し、
選出された特有ピーク間隔に対応付けて前記ピーク間隔データベースに記憶されている分類群を、前記被検微生物が属する分類群として特定する、
ものである。
【0051】
(第6項)第5項に記載の微生物の識別方法は、更に、
前記選出された特有ピーク間隔に対応付けて前記ピーク間隔データベースに記憶されている、該特有ピーク間隔を形成する複数のピークのm/zと、前記被検微生物のマススペクトル上において、前記特有ピーク間隔と所定の誤差範囲で一致したピーク間隔を形成する複数のマススペクトルピークのm/zとの差に基づいて、前記被検微生物のマススペクトルのm/z軸を較正するものであってもよい。
【0052】
(第7項)第6項に記載の微生物の識別方法は、更に、
前記較正後の前記被検微生物のマススペクトルと、少なくとも、前記複数種類の既知微生物の各々について、該既知微生物に含まれる複数種類のタンパク質の各々に由来するイオンのm/zを記憶したタンパク質データベースに登録されている前記複数種類のタンパク質の各々に由来するイオンのm/zとを比較した結果に基づいて、前記較正後の被検微生物のマススペクトル上のピークを、該ピークが由来するタンパク質に帰属させるものであってもよい。
【0053】
(第8項)第7項に記載の微生物の識別方法は、更に、
前記較正後の前記被検微生物のマススペクトル上における、前記複数種類のタンパク質のいずれかに帰属されたピークのm/zと、前記タンパク質データベースに記憶されている該タンパク質のm/zとの差に基づいて、前記較正後の前記被検微生物のマススペクトルのm/z軸を再較正するものであってもよい。
【0054】
(第9項)本発明の一態様に係るプログラムは、第5項~第8項のいずれかに記載の微生物の識別方法をコンピュータに実行させるものである。
【0055】
第1項に記載の微生物識別システム又は第5項に記載の微生物識別方法によれば、マススペクトルピークのm/z値に比べてずれが生じにくいマススペクトルピーク同士の間隔に基づいて被検微生物が属する分類群を特定することにより、信頼性の高い微生物識別を行うことができる。
【0056】
第2項に記載の微生物識別システム又は第6項に記載の微生物識別方法によれば、被検微生物のマススペクトルに元々含まれているピークを基準として質量較正(自己キャリブレーション)を行うことにより、従来の外部較正法による質量較正に比べて質量精度の高いマススペクトルを得ることができる。
【0057】
第3項に記載の微生物識別システム又は第7項に記載の微生物識別方法によれば、前記自己キャリブレーションによって得られた質量精度の高いマススペクトルを用いてタンパク質DBを検索することにより、正確なピークの帰属を行うことができる。
【0058】
第4項に記載の微生物識別システム又は第8項に記載の微生物識別方法によれば、ピークの帰属結果に基づいて前記自己キャリブレーション後のマススペクトルを再較正することで、より質量精度の高いマススペクトルを得ることができる。
【符号の説明】
【0059】
10…質量分析装置
20…制御・処理部
21…分析制御部
22…データ記憶部
23…ピーク間隔DB
24…タンパク質DB
30…データ処理部
31…スペクトル生成部
32…ピーク間隔DB検索部
33…分類群特定部
34…第1較正部
35…タンパク質DB検索部
36…ピーク帰属部
37…第2較正部
41…表示部