(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】車両用空調ダクト構造
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20250128BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
B60H1/00 102T
B60H1/32 613T
(21)【出願番号】P 2021137699
(22)【出願日】2021-08-26
【審査請求日】2024-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 紘汰
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 道生
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-135214(JP,U)
【文献】特開2010-036636(JP,A)
【文献】実開昭62-110012(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前側に搭載された空調システム本体からの空気を後列席に導入する車両用空調ダクト構造であって、
前記空調システム本体から車室内中央のセンタコンソールの内側に向かって延びる集合ダクトと、
前記センタコンソールの内側に配置されて前記集合ダクトからの空気を2以上の経路に分流する分岐ダクトと、
前記2以上の経路のうち少なくとも1つに設けられて該経路を開閉する開閉機構とを備え
、
前記分岐ダクトは、
前記集合ダクトに接続される中央路と、
前記中央路から分岐して延びる少なくとも1つの分岐路と、
当該分岐ダクトの内側における前記中央路と前記分岐路との上流側の角に設けられるリブとを有し、
前記リブは、前記角から前記中央路の中心側に傾斜して延びていて、
前記開閉機構は、前記中央路のうち前記分岐路が分岐している箇所よりも下流側に設けられていることを特徴とする車両用空調ダクト構造。
【請求項2】
前記分岐路は、前記中央路から見て左右両側に一対設けられていることを特徴とする請求項
1に記載の車両用空調ダクト構造。
【請求項3】
前記中央路および前記分岐路は、一体成形されていることを特徴とする請求項
1または2に記載の車両用空調ダクト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調ダクト構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な車両では、車両前部のインストルメントパネルの前方に空調システム本体が設けられて、車室内の各所に設けられた吹出口を通じて乗員に向けて空調風が提供されている。例えば、特許文献1に記載の技術では、後列席の乗員に空調風を提供するための吹出口として、センタコンソールの後側に後席用フェイス吹出口43が設けられていて、後列席の足元に後席用フット吹出口45が設けられている。
【0003】
特許文献1の技術では、後席用フット吹出口45まで空調風を運ぶために、前列席の床にフットダクト(0048)が後方に向かって配策されている。また、後席用フェイス吹出口43まで空調風を運ぶために、センタコンソールの内側にも不図示のダクトを配策することが必要になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1のフットダクトは、前列席の乗員の体重がかかる場合もあるため、通常であれば板厚の増加や補強形状を設ける等の対策が必要になる。また、床に配策すると走行中の振動を受けやすくなるため、接触音を防ぐための緩衝材の貼付けなども必要となる。これら対策は、コストアップや車両の重量増大につながるため、本願発明者らは後列席の足元用のダクトもセンタコンソールの内側に配策するアイデアを着想し、研究開発している。
【0006】
しかしながら、センタコンソールは、軽自動車や小型車などの車幅の狭い車両では特に幅が狭まっていて、また近年では自動運転支援システムの採用に伴って大型の表示デバイスが設置される場合もあるため、内側に空間を確保することが簡単ではなく、ダクトを配策可能なスペースにも限りがある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、簡潔な構造でセンタコンソールの内側を効率よく利用可能な車両用空調ダクト構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用空調ダクト構造の代表的な構成は、車両前側に搭載された空調システム本体からの空気を後列席に導入する車両用空調ダクト構造であって、空調システム本体から車室内中央のセンタコンソールの内側に向かって延びる集合ダクトと、センタコンソールの内側に配置されて集合ダクトからの空気を2以上の経路に分流する分岐ダクトと、2以上の経路のうち少なくとも1つに設けられて経路を開閉する開閉機構とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡潔な構造でセンタコンソールの内側を効率よく利用可能な車両用空調ダクト構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例に係る車両用空調ダクト構造の概要を示す図である。
【
図2】
図1(b)の分岐ダクトを各方向から見た図である。
【
図3】
図2(b)の分岐ダクトを流れる空調風の制御の例を示した図である。
【
図4】
図1(b)の分岐ダクト110の変形例を例示した図である。
【
図5】
図4(b)の分岐ダクトを流れる空調風の制御の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両用空調ダクト構造は、車両前側に搭載された空調システム本体からの空気を後列席に導入する車両用空調ダクト構造であって、空調システム本体から車室内中央のセンタコンソールの内側に向かって延びる集合ダクトと、センタコンソールの内側に配置されて集合ダクトからの空気を2以上の経路に分流する分岐ダクトと、2以上の経路のうち少なくとも1つに設けられて経路を開閉する開閉機構とを備えることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、空調システム本体から後列席に向かって上半身用のダクトと足元用のダクトが別々に延びている場合に比べて、空調システム本体からセンタコンソールの内側の分岐ダクトまでの経路を一体化して省スペース化を図ることで、インストルメントパネルの内側からセンタコンソールの内側にかけての空間を効率よく利用することができる。また、ダクトを床に配策する場合に比べて、板厚や補強形状を減らし、緩衝材等の使用量も抑えることが可能になるため、重量やコストの増加を回避することができる。特に、ダクトの板厚を増加する対策が不要になることで、ダクトの内径の大きさが制限されることも無くなり、風量を維持することが可能になる。
【0013】
上記の分岐ダクトは、集合ダクトに接続される中央路と、中央路から分岐して延びる少なくとも1つの分岐路と、当該分岐ダクトの内側における中央路と分岐路との上流側の角に設けられるリブとを有し、リブは、角から中央路の中心側に傾斜して延びていて、開閉機構は、中央路のうち分岐路が分岐している箇所よりも下流側に設けられていてもよい。
【0014】
上記のリブによれば、集合ダクトから流れ込む空調風を中央路に優先的に案内することができる。
【0015】
上記の分岐ダクトは、集合ダクトに接続される中央路と、中央路から分岐して延びる少なくとも1つの分岐路とを有し、分岐路は、中央路から中央路の上流側に屈曲して分岐していて、開閉機構は、中央路のうち分岐路が分岐している箇所よりも下流側に設けられていてもよい。
【0016】
上記構成によっても、集合ダクトから流れ込む空調風を、中央路に優先的に案内することができる。
【0017】
上記の分岐路は、中央路から見て左右両側に一対設けられていてもよい。この構成によって、空調風を複数の経路に分流可能な分岐ダクトが、好適に実現できる。
【0018】
上記の中央路および少なくとも1つの分岐路は、一体成形されているとよい。この構成によって、簡潔な構造の分岐ダクトが実現でき、ダクト同士の嵌合い部分を減らして通風効率の低下を抑えつつ、構造を簡潔にして材料コストや組付工程の簡素化を図ることができる。
【実施例】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施例に係る車両用空調ダクト構造(以下、ダクト構造100)の概要を示す図である。
図1(a)は、当該ダクト構造100が実施された車両の斜視図である。以下、
図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で例示する。
【0021】
空調システム本体102は、HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)とも呼ばれる暖房、冷房、換気、および空調などを行う機器であって、不図示のインストルメントパネルの前方に設けられている。
【0022】
本実施例のダクト構造100は、空調システム本体102からの空気を後列席に導入することができる。特に、ダクト構造100は、センタコンソール104の内側の空間を利用してダクトを配策している。
【0023】
センタコンソール104は、車幅方向の中央に設けられる構造物であって、シフトデバイスやドリンクホルダ、さらには表示デバイスなどが設置される。センタコンソール104は、インストルメントパネルと一体的に設けられる場合もあるが、インストルメントパネルから離間している場合もある。
【0024】
集合ダクト106は、空調システム本体102から車両後方に延びるダクトである。集合ダクト106は、インストルメントパネルの車幅方向の中央から、センタトンネル108に沿って車室内中央のセンタコンソール104の内側に向かって車両後方に延びている。集合ダクト106は、途中箇所が二股に分かれていて、センタコンソール104に設けられたシフトデバイス等の構造物を回避している。
【0025】
分岐ダクト110は、集合ダクト106からの空気を2以上の経路に分流するダクトであって、センタコンソール104の内側に配置されている。分岐ダクト110は、中央の中央路112と、左右一対の分岐路114、116を有している。中央路112は、センタコンソール104の後壁に設けられたリヤルーバ118へと空調風を案内する。分岐路114,116は、後列席の乗員の足元付近に設けられるリヤフット吹出口(図示省略)へと空調風を案内する。
【0026】
図1(b)は、
図1(a)の分岐ダクト110を単独で示した斜視図である。分岐ダクト110は、下流側が三又の構造になっていて、中央の中央路112と、中央路112から分岐して延びる分岐路114、116とを有している。
【0027】
中央路112は、直線的に延びる下流部112bに対して、上流部112aが上方に屈曲している。上流部112aの開口120は、集合ダクト106(
図1参照)に接続される。下流部112bの開口122は、センタコンソール104(
図1参照)のリヤルーバ118に直接に接続されるか、または他のダクトを使用して間接的に接続される。
【0028】
分岐路114、116は、中央路112から見て左右両側に一対設けられている。分岐路114、116は、中央路112をはさんで対照の構造になっている。分岐路114を例に挙げると、分岐路114は、上流部114aが中央路112から直交する方向に分岐して延びつつ、下流部114bが中央路112と平行になるよう屈曲して延びている。
【0029】
分岐路114、116の開口124、126は、不図示の他のダクトに接続され、後列席の乗員の足元に向かって設けられる不図示のリヤフット吹出口に向けて空調風を供給する。
【0030】
分岐ダクト110は、樹脂製で、中央路112および分岐路114、116を含めて全体がブロー成型等によって一体成形されている。この構成によって、簡潔な構造で、空調風を複数の経路に分流可能な分岐ダクト110が実現できる。例えば、中央路112と分岐路114、116が別々に形成されてから組み合わされている構成に比べて、一体成形された構成であれば部品同士の嵌合い部分を減らして通風効率の低下を抑えることができる。また、一体成形の分岐ダクト110であれば、部品点数を削減して材料コストを抑えたり組付工程の簡素化を図ったりすることでき、軽量化にもつながる。
【0031】
図2は、
図1(b)の分岐ダクト110を各方向から見た図である。
図2(a)は、図
1の分岐ダクト110を下流側の開口122等に正対して見た図である。中央路112の開口122と、分岐路114、116の開口124、126とを比べて分かるように、中央路112は分岐路114、116よりも内径が大きい構成となっている。ただし、中央路112と分岐路114、116の内径の比率に制限はなく、求める風力に応じて設定することができる。
【0032】
図2(b)は、
図2(a)の分岐ダクト110のA-A断面図である。中央路112と分岐路114、116との分岐点では、中央路112に対して分岐路114、116それぞれが左右に直角に分岐している。しかしながら、中央路112に対する分岐路114、116の角度は、直角に制限する必要はなく、中央路112に対して傾斜している構成を採用することもできる。
【0033】
中央路112と分岐路114、116との分岐点の上流側には、リブ128、130が設けられている。リブ128、130は、空調風を整えるための部位であって、分岐ダクト110の内側において中央路112と分岐路114
、116との上流側の角(角部E1)に設けられている。上述したように、分岐ダクト110は一体成形されていて、リブ128、130の設置個所を分岐ダクト110の外側(
図1(b)参照)から見ると凹みが形成されている。
【0034】
リブ128は、中央路112と分岐路114との角部E1から、中央路112の中心側に傾斜して延びている。リブ128は、角度が大きすぎると、分岐ダクト110内を流れる空調風の圧力損失を生んでしまう。一例として、リブ128、130は、中央路112の中心線C1に対して角度α1が15°かつ寸法17mmの条件で設けられている。
【0035】
上記リブ128、130であれば、中央路112と分岐路114、116との境界の一部を仕切ることで、集合ダクト106(
図1(a)参照)から流れ込んだ空調風を、中央路112の開口122に向かって優先的に流れるように案内することができる。
【0036】
なお、中央路112は、下流部112bの内径が、上流部112aの内径と同じ程度またはやや大きい構成になっている。この構成によって、上流部112aから下流部112bに空調風が流れるときに分岐路114、116への意図しない空気の流れが起きることを防ぐことができる。
【0037】
図3は、
図2(b)の分岐ダクト110を流れる空調風の制御の例を示した図である。
図3(a)は、リヤルーバ118の開状態を示した図である。リヤルーバ118は、中央路112のうち、分岐路114が分岐している箇所よりも下流側に設けられた開閉機構である。当該ダクト構造100は、リヤルーバ118を操作することで、空調風を後列席の乗員の上半身へ向けて供給するフェイスモード、空調風を後列席の乗員の足元へ供給するフットモード、フェイスモードとフットモードとの両方を兼ねているバイレベルモードを選択することができる。
【0038】
図3(a)は、リヤルーバ118の開状態であって、空調風のフェイスモードを示している。このモードでは、リヤルーバ118(
図1(a)参照)を全開にすることで、後列席の乗員の上半身に向けて空調風を提供することができる。このとき、リブ128、130が好適に機能し、分岐路114、116には空調風が流れないようになっている。
【0039】
図3(b)は、リヤルーバ118の半開状態であって、空調風のバイレベルモードを示している。このモードでは、リヤルーバ118を半開にすることで、リヤルーバ118から空調風を提供しつつ、中央路112内の圧力を高めることで、相対的に内圧の低い分岐路114、116側へと空調風を流すことができる。よって、リヤルーバ118(
図1(a)参照)から後列席の乗員の上半身に空調風を提供しつつ、不図示のリヤフット吹出口から当該乗員の足元にも空調風を提供することができる。
【0040】
図3(c)は、リヤルーバ118の閉状態であって、空調風のフットモードを示している。このモードでは、リヤルーバ118を閉じることで、中央路112の内圧を高め、行き場を失った空調風を内圧の低い分岐路114、116に流すことができる。よって、不図示のリヤフット吹出口から後列席の乗員の足元に空調風を提供することができる。
【0041】
これらのように、当該ダクト構造100では、リブ128、130を利用することで、中央路112にのみ開閉機構としてリヤルーバ118を設けた簡潔な構成であっても、三又構造の中央路112および分岐路114、116の空調風の流れを効率よく操作することが可能になっている。
【0042】
本実施例のダクト構造100によれば、
図1(a)の空調システム本体102から後列席に向かって上半身用のダクトと足元用のダクトが別々に延びている場合に比べて、空調システム本体102からセンタコンソール104の内側の分岐ダクト110までの経路を上半身用と足元用とで一体化して省スペース化を図ることで、インストルメントパネルの内側からセンタコンソール104の内側にかけての空間を効率よく利用することができる。
【0043】
また、当該ダクト構造100であれば、荷重を受けやすい床部分にダクトを配策する場合に比べて、ダクトの板厚や補強形状を減らし、緩衝材等の使用量も抑えることが可能になるため、重量やコストの増加を回避することができる。特に、ダクトの板厚を増加する対策が不要になることで、ダクトの内径の大きさが制限されることも無くなり、風量を維持することが可能になる。
【0044】
なお、本実施例では、分岐ダクト110は1つの中央路112から2つの分岐路114、116が分岐した構成になっているが、これに限らない。分岐ダクト110は、例えば1つの中央路から1つの分岐路が分岐した構成や、1つの中央路から3つ以上の分岐路が分岐した構成なども実現可能である。
【0045】
(変形例)
図4は、
図1(b)の分岐ダクト110の変形例(分岐ダクト140)を例示した図である。
図4(a)は、
図1(b)に対応した分岐ダクト140の斜視図である。
図4以降では、上記実施例にて既に説明した構成要素と同じものには同じ符号を付していて、これによって既出の構成要素については説明を省略する。また、以下の説明において、既に説明した構成要素と同じ名称のものについては、例え異なる符号を付していても、特に明記しない場合は同じ機能を有しているものとする。
【0046】
分岐ダクト140もまた、1つの中央路112と、2つの分岐路142、144とを有している。分岐路142を例に挙げると、上流部142aは、中央路112に対して、中央路112の上流側に鋭角に屈曲した構成になっている。そして、分岐路142の下流部142bは、中央路112と平行になるよう屈曲して延びている。そして、分岐路142、144の開口146、148は、不図示の他のダクトを介してリヤフット吹出口に接続される。
【0047】
図4(b)は、
図2(b)に対応した分岐ダクト140の断面図である。分岐路142を例に挙げると、上流部142aのうち中央路112の上流側の壁部は、中央路112の中心線C1に対して、中央路112の上流側に角度α2が60°程度の鋭角(α2<90°)になるよう屈曲している。また、上流部142aのうち中央路112の下流側の壁部は、中央路112に対して鈍角(α3>90°)になるよう設定されている。
【0048】
上記構成によって、分岐ダクト140は、
図2(b)のリブ128、130を有する分岐ダクト110と同様に、集合ダクト106(
図1(a)参照)からの空調風を分岐路142、144に流れ難くし、中央路112の開口122に向かって優先的に流れるように案内することが可能になっている。
【0049】
なお、分岐路142の折り返し角度の角度α2(α2<90°)は、一例として60°に設定しているが、この角度には限られない。分岐路142の角度α2は、小さすぎるとダクト内の圧力損失が増し、大きすぎると空調風の分岐路142への予期せぬ流れを形成してしまうことに注意する。
【0050】
図5は、
図4(b)の分岐ダクト140を流れる空調風の制御の例を示した図である。
図5(a)は、リヤルーバ118の開状態を示した図である。
図5(a)は、リヤルーバ118の開状態であって、空調風のフェイスモードを示している。このモードでは、リヤルーバ(
図1(a)参照)を全開にすることで、後列席の乗員の上半身に向けて空調風を提供することができる。
【0051】
このとき、分岐路142、144が中央路112に対して上流側に鋭角に屈曲しているため、分岐路142、144に空調風を流すには相応の圧力が必要となる。これによって、中央路112の開口122が全開の状態では、分岐路142、144には空調風が流れないようになっている。
【0052】
図5(b)は、リヤルーバ118の半開状態であって、空調風のバイレベルモードを示している。このモードでは、リヤルーバ118を半開にすることで、リヤルーバ118から空調風を提供しつつ、中央路112内の圧力を高めることで、相対的に内圧の低い分岐路142、144側へと空調風を流すことができる。よって、リヤルーバ118(
図1(a)参照)から後列席の乗員の上半身に空調風を提供しつつ、不図示のリヤフット吹出口から当該乗員の足元にも空調風を提供することができる。
【0053】
図5(c)は、リヤルーバ118の閉状態であって、空調風のフットモードを示している。このモードでは、リヤルーバ118を閉じることで、中央路112の内圧を高め、行き場を失った空調風を内圧の低い分岐路142、144に流すことが出来る。よって、不図示のリヤフット吹出口から後列席の乗員の足元に空調風を提供することができる。
【0054】
以上のように、分岐ダクト140においても、分岐路142、144を中央路112の上流側に折り返す工夫によって、中央路112にのみ開閉機構としてリヤルーバ118を設けた簡潔な構成であっても、三又構造の中央路112および分岐路142、144の空調風の流れを効率よく操作することが可能になっている。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、車両用空調ダクト構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
100…ダクト構造、102…空調システム本体、104…センタコンソール、106…集合ダクト、108…センタトンネル、110…分岐ダクト、112…中央路、112a…上流部、112b…下流部、114、116…分岐路、114a…上流部、114b…下流部、118…リヤルーバ(開閉機構)、120…開口、122…開口、124…開口、128、130…リブ、E1…角部、C1…中心線、140…分岐ダクト、142…分岐路、142a…上流部、142b…下流部、146、148…開口