(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20250128BHJP
【FI】
H01Q13/08
(21)【出願番号】P 2021198050
(22)【出願日】2021-12-06
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】牛越 大樹
(72)【発明者】
【氏名】城崎 俊文
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/073355(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/189050(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/208362(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体を含む基板(20)と、
前記基板に配置されたパッチ部(30)と、
前記基板に配置されて前記基板の板厚方向に延び、前記板厚方向の平面視における前記パッチ部の中心(30c)から前記板厚方向に直交する第1方向に所定距離ずれた位置で前記パッチ部に接続されたビア導体(40)と、
前記ビア導体が挿通する貫通孔(51)を有し、前記板厚方向において前記パッチ部と対向するように前記基板に配置された第1地板(50)と、
前記板厚方向において前記パッチ部とは反対側で前記第1地板と対向するように前記基板に配置された第2地板(60)と、
前記板厚方向において前記第1地板と前記第2地板との間に位置するように前記基板に配置され、前記ビア導体に接続されて前記ビア導体から前記板厚方向および前記第1方向に直交する第2方向に延設された伝送線路(70)
(ただし、板厚方向の平面視において複数のパッチ部が第1方向に並ぶ場合を除く。)と、
を備えるアンテナ装置。
【請求項2】
誘電体を含む基板(20)と、
前記基板に配置された
ひとつのパッチ部(30)と、
前記基板に配置されて前記基板の板厚方向に延び、前記板厚方向の平面視における前記パッチ部の中心(30c)から前記板厚方向に直交する第1方向に所定距離ずれた位置で前記パッチ部に接続されたビア導体(40)と、
前記ビア導体が挿通する貫通孔(51)を有し、前記板厚方向において前記パッチ部と対向するように前記基板に配置された第1地板(50)と、
前記板厚方向において前記パッチ部とは反対側で前記第1地板と対向するように前記基板に配置された第2地板(60)と、
前記板厚方向において前記第1地板と前記第2地板との間に位置するように前記基板に配置され、前記ビア導体に接続されて前記ビア導体から前記板厚方向および前記第1方向に直交する第2方向に延設された伝送線路(70)と、
を備えるアンテナ装置。
【請求項3】
前記伝送線路は、前記ビア導体から前記基板の端部まで前記第2方向に沿って一直線に延びている、請求項1または請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
動作周波数の電波の波長をλとすると、
前記ビア導体の直径が、λ×1/16以上である、
請求項1~3いずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記伝送線路は、前記ビア導体との接続部に、前記板厚方向の平面視において前記ビア導体を内包するように設けられたランド(71)を有する、
請求項1~4いずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記伝送線路は、前記ビア導体から前記第2方向に延びる第1伝送線路(701)と、前記ビア導体から前記第1伝送線路とは反対向きに延びる第2伝送線路(702)と、を有し、
前記第1伝送線路による前記パッチ部への給電、および、前記第2伝送線路による前記パッチ部への給電を切り替え可能である、
請求項1~5いずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記板厚方向において前記第1地板と前記第2地板との間に位置するように前記伝送線路である第3伝送線路とは別に前記基板に配置され、前記ビア導体に接続されて前記ビア導体から前記第1方向に延設された第4伝送線路(75)をさらに備え、
前記第3伝送線路による前記パッチ部への給電、および、前記第4伝送線路による前記パッチ部への給電を切り替え可能である、
請求項1~5いずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1地板と前記第2地板とにそれぞれ接続され、前記板厚方向の平面視において前記ビア導体を取り囲むように前記基板に配置された複数の短絡部(80)をさらに備える、
請求項1~7いずれか1項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、パッチ部を備えたアンテナ装置を開示している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、パッチ部に2つの切り欠き(摂動素子)を設けることで、円偏波を実現している。しかしながら、たとえばミリ波帯のアンテナとして用いる場合、摂動素子のサイズが製造誤差と同程度となる。このように製造誤差がパッチ部のサイズに対して大きいため、所望の特性を発揮するアンテナ装置を提供することが困難である。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、アンテナ装置にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、簡素な構造で円偏波を放射できるアンテナ装置を提供することにある。開示される他のひとつの目的は、ミリ波帯において円偏波を放射できるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示されたアンテナ装置のひとつは、
誘電体を含む基板(20)と、
基板に配置されたパッチ部(30)と、
基板に配置されて基板の板厚方向に延び、板厚方向の平面視におけるパッチ部の中心(30c)から板厚方向に直交する第1方向に所定距離ずれた位置でパッチ部に接続されたビア導体(40)と、
ビア導体が挿通する貫通孔(51)を有し、板厚方向においてパッチ部と対向するように基板に配置された第1地板(50)と、
板厚方向においてパッチ部とは反対側で第1地板と対向するように基板に配置された第2地板(60)と、
板厚方向において第1地板と第2地板との間に位置するように基板に配置され、ビア導体に接続されてビア導体から板厚方向および第1方向に直交する第2方向に延設された伝送線路(70)(ただし、板厚方向の平面視において複数のパッチ部が第1方向に並ぶ場合を除く。)と、を備える。
開示されたアンテナ装置の他のひとつは、
誘電体を含む基板(20)と、
基板に配置されたひとつのパッチ部(30)と、
基板に配置されて基板の板厚方向に延び、板厚方向の平面視におけるパッチ部の中心(30c)から板厚方向に直交する第1方向に所定距離ずれた位置でパッチ部に接続されたビア導体(40)と、
ビア導体が挿通する貫通孔(51)を有し、板厚方向においてパッチ部と対向するように基板に配置された第1地板(50)と、
板厚方向においてパッチ部とは反対側で第1地板と対向するように基板に配置された第2地板(60)と、
板厚方向において第1地板と第2地板との間に位置するように基板に配置され、ビア導体に接続されてビア導体から板厚方向および第1方向に直交する第2方向に延設された伝送線路(70)と、を備える。
【0007】
開示されたアンテナ装置によれば、いわゆるストリップライン構造を採用した伝送線路の延設方向と、パッチ部の中心に対するビア導体のオフセットの方向との関係により、切り欠きなどの摂動素子を設けなくても、円偏波を放射することができる。つまり、簡素な構造で円偏波を放射することができる。パッチ部に摂動素子を設けなくてもよいため、ミリ波帯において所望の特性を発揮する、つまり円偏波を放射することができる。
【0008】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、及び効果は、後続の詳細な説明、及び添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るアンテナ装置を示す平面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う断面図である。
【
図7】ビア導体の直径と円偏波比との関係を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係るアンテナ装置を示す断面図である。
【
図10】基板において伝送線路の配置面を示す図である。
【
図12】第3実施形態に係るアンテナ装置を示す断面図である。
【
図13】基板において伝送線路の配置面を示す図である。
【
図17】第4実施形態に係るアンテナ装置を示す図である。
【
図19】第5実施形態に係るアンテナ装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0011】
(第1実施形態)
本実施形態のアンテナ装置は、所定の動作周波数の電波を送信および/または受信するように構成されている。アンテナ装置は、たとえばミリ波帯の電波の送信および/または受信に好適である。アンテナ装置を、たとえばミリ波レーダに用いてもよい。ミリ波レーダの場合、たとえば24GHz帯、76GHz帯、79GHz帯などのミリ波が使用可能である。アンテナ装置を、たとえば車両、飛行体などの移動体に搭載してもよい。アンテナ装置を、防犯システムや監視システムなどに用いてもよい。
【0012】
<アンテナ装置>
先ず、
図1~
図3に基づき、アンテナ装置の構造について説明する。
図1は、本実施形態のアンテナ装置を、基板の板厚方向においてパッチ部側から見た平面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿う断面図である。
【0013】
図1~
図3に示すように、アンテナ装置10は、基板20と、パッチ部30と、ビア導体40と、第1地板50と、第2地板60と、伝送線路70を備えている。アンテナ装置10は、プリント基板に構成されている。換言すれば、アンテナがプリント基板に実装されている。基板20は、プリント基板の絶縁基材である。基板20を除く要素、つまりパッチ部30、ビア導体40、第1地板50、第2地板60、および伝送線路70は、プリント基板の導体要素である。
【0014】
以下においては、基板20の板厚方向をZ方向とし、Z方向に直交する一方向であってパッチ部の中心に対するビア導体のオフセット方向をY方向とする。Z方向およびY方向に直交する方向をX方向とする。特に断りのない限り、Z方向から平面視した形状、すなわちX方向およびY方向により規定されるXY平面に沿う形状を、平面形状と示す。Z方向が板厚方向、Y方向が第1方向、X方向が第2方向に相当する。
【0015】
基板20は、樹脂などの誘電体を含んで構成されている。基板20を用いることで、誘電体による波長短縮効果が期待できる。基板20としては、たとえば樹脂のみからなるもの、樹脂とガラス布、不織布などとを組み合わせたもの、セラミックを含むものなどを採用することができる。基板20は、パッチ部30、ビア導体40、第1地板50、第2地板60、および伝送線路70を、所定の位置関係に保持する保持部として機能する。
【0016】
基板20は、一面20aと、一面20aとはZ方向において反対の面である裏面20bを有している。基板20は、一面20aおよび裏面20bに直交する側面20c、20d、20e、20fを有している。側面20cは、X方向において側面20dとは反対の面である。側面20eは、Y方向において側面20fとは反対の面である。
【0017】
後述するように本実施形態では、基板20の一面20aにパッチ部30が配置され、裏面20bに第2地板60が配置されている。パッチ部30は、X方向において側面20d側に偏って配置されている。ビア導体40、第1地板50、および伝送線路70は、基板20の内部に配置されている。プリント基板は、絶縁基材に導体要素が多層に配置された多層基板である。基板20は、誘電体を含む絶縁層を多層に積層して構成されている。
【0018】
一例として、基板20は、3つの絶縁層21、22、23が積層されてなる。絶縁層21は、基板20の一面20aをなしている。絶縁層23は、基板20の裏面20bをなしている。絶縁層22は、Z方向において絶縁層21、23の間に配置された中間層である。基板20は、X方向を長手方向とする平面略長方形をなしている。なお、プリント基板は、導体として、パッチ部30、ビア導体40、第1地板50、第2地板60、および伝送線路70のみを有してもよいし、上記した導体要素とは別の回路要素をさらに有してもよい。
【0019】
パッチ部30は、放射素子である。パッチ部30は、銅などを材料とする導体である。パッチ部30は、アンテナエレメントと称されることがある。パッチ部30は、Z方向において第1地板50との間に所定の間隔を有するように、第1地板50に対向配置されている。本実施形態のパッチ部30は、上記したように基板20の一面20a、つまり絶縁層21の上面に配置されている。パッチ部30は、X方向において側面20cよりも側面20dに近い位置に配置されている。パッチ部30は、たとえば基板20に配置された金属箔をパターニングすることで形成されている。パッチ部30の板面に垂直な方向は、Z方向に略平行である。
【0020】
本実施形態のパッチ部30は、平面略正方形である。パッチ部30の平面形状は、正方形に限定されない。パッチ部30の平面形状は、互いに直交する2つの直線のそれぞれを対称の軸として線対称な形状、すなわち2方向線対称形状であることが好ましい。2方向線対称形状とは、ある直線を対称の軸として線対称であって、かつ、その直線と直交する他の直線についても線対称な図形を指す。2方向線対称形状とは、たとえば正方形、長方形、円形(真円)、楕円形、正六角形、正八角形、ひし形などが該当する。パッチ部30は、円形、正方形、長方形、平行四辺形など、点対称な図形であることがより好ましい。
【0021】
パッチ部30の大きさは、動作周波数で動作するように適宜設計される。たとえば動作周波数が76GHzの場合、動作周波数の電波の波長(λ)は、(300[mm/s]/76[GHz])/基板20の誘電率の平方根、により求まる。平面略正方形をなすパッチ部30の一辺の長さは、たとえば1/2波長程度としてもよいし、1/2波長のn倍程度としてもよい。nは、2以上の整数である。
【0022】
ビア導体40は、パッチ部30と伝送線路70とを電気的に接続する導体である。ビア導体40は、パッチ部30に給電するための導体の一部である。ビア導体40は、基板20に形成された孔(いわゆるビア)内に導体が配置されてなる。ビア導体40は、基板20に配置された柱状の導体である。ビア導体40は、金属ビア、給電ビア、給電素子などと称されることがある。
【0023】
ビア導体40は、Z方向に延びている。本実施形態のビア導体40(孔)は、基板20において、絶縁層21、22を貫通している。ビア導体40の端部のひとつはパッチ部30に接続され、端部の他のひとつは伝送線路70に接続されている。アンテナ装置10は、ひとつのビア導体40を備えてもよいし、並列配置された複数のビア導体40を備えてもよい。アンテナ装置10(パッチ部30)のサイズに応じて適宜選択が可能である。
【0024】
ビア導体40は、パッチ部30の中心30cに対してY方向にオフセットされている。つまり、ビア導体40は、中心30cからY方向に所定距離ずれた位置でパッチ部30に接続されている。中心30cは、パッチ部30の重心に相当する。平面略正方形をなすパッチ部30において、中心30cは、パッチ部30の2つの対角線の交点に相当する。このように、ビア導体40を中心30cに対してオフセットすることで、インピーダンス整合を得ることができる。
【0025】
第1地板50および第2地板60は、図示しない給電回路のグランド線に接続されて、アンテナ装置10におけるグランド電位(接地電位)を提供する。以下では、第1地板50および第2地板60を、地板50、60と称することがある。地板50、60は、銅などを材料とする導体である。地板50、60は、たとえば基板20に配置された金属箔をパターニングすることで形成されている。地板50、60の板面に垂直な方向も、Z方向に略平行である。
【0026】
平面視において、地板50、60それぞれの面積は、パッチ部30の面積よりも大きい。地板50、60のそれぞれは、パッチ部30の全体を内包する大きさを有している。地板50、60のそれぞれは、アンテナ装置10を安定して動作させるための必要な大きさを備えていることが好ましい。本実施形態の地板50、60は、平面略長方形をなしている。地板50、60のそれぞれは、平面視において基板20と略一致している。地板50、60の各辺は、たとえば動作周波数の電波の波長の1倍以上、すなわち1波長以上の長さを有している。
【0027】
本実施形態では、一例として基板20および地板50、60の平面形状を長方形とするが、たとえば正方形でもよいし、その他の多角形でもよい。また、円形(楕円を含む)でもよい。円形の場合、地板50、60は、直径が1波長の円よりも大きく形成されていることが好ましい。
【0028】
第1地板50は、上記したように基板20の内部に配置されている。第1地板50は、Z方向においてパッチ部30との間に所定の間隔を有するように、パッチ部30に対向配置されている。本実施形態の第1地板50は、絶縁層21、22の間に介在している。第1地板50は、絶縁層22上に配置されている。第1地板50は、ビア導体40が挿通する貫通孔51を有している。貫通孔51は、平面視においてビア導体40を内包するように設けられている。第1地板50は、ビア導体40から離れて設けられている。第1地板50は、ビア導体40を取り囲むように配置されている。第1地板50は、パッチ部30のうち、平面視において貫通孔51と重なる部分を除く部分と対向している。第1地板50は、伝送線路70のうち、平面視において貫通孔51と重なる部分を除く部分と対向している。
【0029】
第2地板60は、Z方向において、パッチ部30とは反対側で第1地板50と対向するように基板20に配置されている。第2地板60は、パッチ部30との間に第1地板50が位置するように配置されている。本実施形態の第2地板60は、基板20の裏面20b、つまり絶縁層23の下面に配置されている。第2地板60は、裏面20bのほぼ全面に設けられている。第2地板60は、平面視において、パッチ部30、ビア導体40、および伝送線路70を内包するように配置されている。第2地板60は、伝送線路70の全長において伝送線路70と対向している。
【0030】
伝送線路70は、ビア導体40を介してパッチ部30に給電するための導体である。伝送線路70に入力された電流は、ビア導体40を介してパッチ部30に伝搬し、パッチ部30を励振させる。伝送線路70は、Z方向において地板50、60の間に位置するように基板20に配置されている。伝送線路70は、2つの地板50、60に挟まれ、誘電体を含む基板20で覆われた、いわゆるストリップライン構造をなしている。
【0031】
伝送線路70は、X方向に延設されている。伝送線路70は、ビア導体40に接続され、ビア導体40から基板20の側面20cまで延びている。伝送線路70において、ビア導体40が接続された端部とは反対の端部は、側面20cから露出して給電可能となっている。伝送線路70には、図示しない給電回路の信号線が接続される。
【0032】
本実施形態の伝送線路70は、絶縁層22、23の間に介在している。伝送線路70は、絶縁層23上に配置されている。伝送線路70も、たとえば基板20に配置された金属箔をパターニングすることで形成されている。伝送線路70は、Z方向において地板50、60と対向している。伝送線路70は、その全長において第2地板60と対向している。伝送線路70は、その全長の大部分において第1地板50と対向している。
【0033】
<アンテナ装置の動作>
次に、
図4~
図6に基づき、アンテナ装置10の動作について説明する。
図4~
図6は、いずれも電磁界シミュレーションの結果を示している。
図4は、電界強度分布を示している。
図4(a)は参考例の電界強度分布を示し、
図4(b)は本例の電界強度分布を示している。
図4は、動作周波数が77GHzのときの電界強度の最大値を示している。
図5および
図6は、電流分布(磁界強度分布)を示している。
図6は、
図5に対して高周波信号の位相が約90度ずれた状態を示している。
【0034】
図4(a)に示す参考例では、本実施形態の要素と同一または関連する要素について、本実施形態の符号の末尾にrを付け加えて示している。参考例のアンテナ装置10rでは、伝送線路70rとしてマイクロストリップライン構造を採用している。基板20rの一面にパッチ部30rが配置され、裏面に伝送線路70rが配置されている。Z方向においてパッチ部30rと伝送線路70rの間に、地板50rが配置されている。ビア導体40rは、地板50rの貫通孔51rを通じて、パッチ部30rと伝送線路70rを電気的に接続している。
【0035】
図4(b)に示す本例のアンテナ装置10は、上記したアンテナ装置10と同じ構造を有している。本例のアンテナ装置10は、第2地板60を備えている点と、地板50、60の間にも基板20(誘電体)が配置されている点で、参考例のアンテナ装置10rとは異なる。このように、本例では、伝送線路70としてストリップライン構造を採用している。その他の構成は、アンテナ装置10rと同じである。つまり、参考例においても、ビア導体40rがパッチ部30rの中心に対してY方向にオフセットされている。また、伝送線路70rがビア導体40rからX方向に延びている。
【0036】
図4に示すように、本例ではビア導体40および伝送線路70の裏面側に第2地板60が配置されているため、参考例に較べてビア導体40の裏側の電界強度が高い。つまり、本例では、参考例に較べてビア導体40の裏側への電界の回り込みが多い。
【0037】
この電界の回り込みにより、たとえば
図5に示すタイミングでは、X方向においてビア導体40を流れる電流に偏りが生じる。具体的には、
図5の上段に示すように、反給電側(側面20dに近い側)の磁界強度が、給電側(側面20cに近い側)の磁界強度よりも高くなる。これにより電位差が生じ、パッチ部30に流れる電流は、
図5の下段に示すようにビア導体40のオフセットの方向である主偏波の方向に対して直交する方向、つまりX方向の電流が優位になる。
【0038】
一方、
図6に示すように、位相が約90度ずれたタイミングでは、
図6の上段に示すように、X方向においてビア導体40を流れる電流の偏りが
図5に較べて小さくなる。このため、パッチ部30に流れる電流は、
図6の下段に示すように主偏波の方向と同じ方向、つまりY方向の電流が優位になる。
【0039】
図示を省略するが、
図5に対して位相が約180度ずれたタイミングでは、パッチ部30に流れる電流は、X方向であって
図5とは逆向きの電流が優位になる。
図5に対して位相が約270度ずれたタイミングでは、パッチ部30に流れる電流は、Y方向であって
図6とは逆向きの電流が優位になる。
【0040】
このように、パッチ部30には、X方向に流れる電流と、Y方向に流れる電流とが連続的に発生する。よって、円偏波が生じる。
図4(a)に示した参考例では、ビア導体40rの裏側への電界の回り込みが少ないため、本実施形態のアンテナ装置10と同様の現象は確認できなかった。なお、
図4(a)に示した構成のみならず、伝送線路70rをパッチ部30rと同一面に配置し、ビア導体40rを排除した構成においても、本実施形態のアンテナ装置10と同様の現象は確認できなかった。
【0041】
<ビア導体の直径と円偏波比>
次に、
図7に基づき、ビア導体40の直径と円偏波比との関係について説明する。
図7も、電磁界シミュレーションの結果を示している。
図7に示すλは、動作周波数の電波の波長を示している。円偏波比とは、左旋円偏波の利得(dBi)と右旋円偏波の利得(dBi)の差分(dB)である。円偏波比は、偏波比と称されることがある。左旋円偏波は左旋偏波、右旋円偏波は右旋偏波と称されることがある。
【0042】
図7に示すように、ビア導体40の直径がλ×1/16以上において左旋円偏波と右旋円偏波との差が有意となる。つまり、円偏波比を向上することができる。円偏波比は、ビア導体40の直径が大きいほど大きくなる。本実施形態では、ビア導体40の直径をλ×1/16以上に設定している。これにより、アンテナ装置10は、円偏波比の高い電波を放射することができる。換言すれば、左旋円偏波または右旋円偏波を放射することができる。
【0043】
図8は、電磁界シミュレーションの結果を示している。
図8は、ビア導体40の直径がλ×1/4のときの指向性を示している。
図8に示すように、アンテナ装置10は、Z方向に指向性を有している。
【0044】
<第1実施形態のまとめ>
本実施形態では、上記したように伝送線路70としてストリップライン構造を採用している。また、伝送線路70を、パッチ部30の中心30cに対するビア導体40のオフセット方向に対して直交する方向に延設している。これにより、切り欠きなどの摂動素子を設けなくても、アンテナ装置10が円偏波を放射することができる。つまり、簡素な構造で円偏波を放射することができる。
【0045】
パッチ部30に摂動素子を設けないため、ミリ波帯においても、摂動素子を設ける場合のような製造誤差が問題とならない。よって、アンテナ装置10は、ミリ波帯においても所望の特性を発揮する、つまり円偏波を放射することができる。
【0046】
本実施形態では、ビア導体40の直径が、λ×1/16以上である。これにより、円偏波比を向上することができる。これにより、良好な送受信(通信)が可能となる。
【0047】
Y方向におけるパッチ部30の位置は特に限定されない。たとえば側面20e側に偏って配置されてもよいし、側面20f側に偏って配置されてもよい。側面20e、20fからの距離がほぼ等しい位置に配置されてもよい。
【0048】
伝送線路70が側面20c側に向けてX方向に延びる例を示したが、これに限定されない。伝送線路70は、側面20d側に向けてX方向に延びてもよい。
【0049】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0050】
図9は、本実施形態のアンテナ装置10を示している。
図9は、
図2に対応している。
図10は、基板20における伝送線路70の配置面、つまり絶縁層23の上面を示している。
図10では、第1地板50の貫通孔51を破線で示している。
【0051】
図9および
図10に示すように、伝送線路70は、ランド71を有している。ランド71は、伝送線路70においてビア導体40との接続部に設けられている。ランド71は、たとえば金属箔のパターニングにより、伝送線路70の他の部分に連続して一体的に形成されている。ランド71は、たとえば平面略円形状をなしている。
【0052】
ランド71は、Z方向の平面視において、ビア導体40を内包するように設けられている。これにより、ランド71の直径は、ビア導体40の直径よりも大きい。ランド71の直径は、伝送線路70におけるランド71を除く部分の幅よりも長い。つまり、伝送線路70の延設方向に直交する方向(Y方向)において、伝送線路70の幅は、ランド71においてもっとも広い。
【0053】
<第2実施形態のまとめ>
パッチ部30の面積一定において、ビア導体40の直径を大きくすると円偏波比を向上できる反面、パッチ部30と第1地板50との対向面積(キャパシタ)が減少するため利得が低下する。本実施形態では、伝送線路70がランド71を有している。ランド71を有することで、ビア導体40の直径を大きくしなくても、利得の低下を抑制しつつ円偏波比を向上することができる。
【0054】
図11は、電磁界シミュレーションの結果を示している。
図11は、ランド71を設けた構成の指向性を示している。なお、ビア導体40の直径を、λ/8とした。
図11に示すように、アンテナ装置10は、Z方向に指向性を有している。また、ランド71を有さず、ビア導体40の直径がλ/4の場合(
図8参照)と同等の円偏波比を有している。
【0055】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0056】
図12は、本実施形態のアンテナ装置10を示している。
図12は、
図2に対応している。
図13は、基板20における伝送線路70の配置面、つまり絶縁層23の上面を示している。
図13は、
図10に対応している。
図13でも、第1地板50の貫通孔51を破線で示している。
【0057】
図12および
図13に示すように、アンテナ装置10は、基板20に配置された複数の短絡部80をさらに備えている。短絡部80は、地板50、60のそれぞれに接続された導体である。複数の短絡部80は、平面視においてビア導体40を取り囲むように配置されている。
【0058】
本実施形態の短絡部80は、基板20に形成された孔(ビア)内に導体が配置されてなるビア導体として提供されている。複数の短絡部80は、基板20において絶縁層22、23に配置されている。各短絡部80はZ方向に延びており、端部のひとつが第1地板50に接続され、端部の他のひとつが第2地板60に接続されている。複数の短絡部80は、平面視においてビア導体40を中心とする図示しない仮想的な円の円周上に配置されている。複数の短絡部80は、伝送線路70と重なる部分は除いて、隣り合う短絡部80の間隔が略等しくなるように配置されている。隣り合う短絡部80の間隔は、λ/4以下である。短絡部80は、短絡素子、短絡ビアなどと称されることがある。
【0059】
<第3実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、短絡部80のシールド効果により、上記したビア導体40の裏側に回り込む電界が周囲に漏れ出るのを抑制することができる。これにより、利得を向上することができる。また、円偏波比を高めることができる。
【0060】
<変形例>
アンテナ装置10は、たとえば
図14および
図15に示すように、複数の短絡部80とともにランド71を備えてもよい。
図14は
図12に対応し、
図15は
図13に対応している。
図14および
図15に示す例では、複数の短絡部80を電気的に接続するランド81を、伝送線路70と同一面に設けている。複数の短絡部80およびランド81は、平面視においてビア導体40およびランド71を取り囲むように配置されている。ランド81は平面略C字状をなしており、C字のギャップ部分に伝送線路70が配置されている。
【0061】
図16は、
図14および
図15に示した構成の電磁界シミュレーションの結果を示している。ここでも、ビア導体40の直径をλ/8とした。
図16に示すように、アンテナ装置10は、Z方向に指向性を有している。また、ランド71を有し、短絡部80を備えず、ビア導体40の直径がλ/8の場合(
図11参照)よりも高い円偏波比を示している。さらには、利得も向上している。
【0062】
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0063】
図17は、本実施形態のアンテナ装置10において、基板20における伝送線路70の配置面、つまり絶縁層23の上面を示している。
図17は、
図10に対応している。
図17でも、第1地板50の貫通孔51を破線で示している。
【0064】
図17に示すように、アンテナ装置10は、先行実施形態(
図15参照)と類似の構成を有している。先行実施形態とは異なり、アンテナ装置10の伝送線路70は、ビア導体40からX方向に延びる伝送線路701と、ビア導体40から伝送線路701とは反対に延びる伝送線路702を有している。伝送線路701が第1伝送線路に相当し、伝送線路702が第2伝送線路に相当する。そして、伝送線路701によるパッチ部30への給電、および、伝送線路702によるパッチ部30への給電を切り替え可能となっている。
【0065】
本実施形態では、伝送線路701が、ビア導体40から側面20c側に向けてX方向に延びている。伝送線路702は、ビア導体40から側面20dに向けてX方向に延びている。伝送線路701の側面20c側の端部が給電用の第1ポート(Port1)をなし、伝送線路702の側面20d側の端部が給電用の第2ポート(Port2)をなしている。そして、第1ポートおよび第2ポートへの給電が切り替え可能となっている。第1ポートおよび第2ポートのうち、第1ポートへ給電すると、伝送線路701およびビア導体40を介してパッチ部30に電流が流れる。第1ポートおよび第2ポートのうち、第2ポートへ給電すると、伝送線路702およびビア導体40を介してパッチ部30に電流が流れる。このように、給電方向を切り替えることができる。その他の構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0066】
アンテナ装置10は、給電を切り替えるための給電制御部90をさらに備えてもよい。給電制御部90は、複数の伝送線路70に対する給電を制御する。給電制御部90を構成する要素の少なくとも一部は、基板20に実装されてもよい。給電制御部90は、たとえばスイッチ901、902と、スイッチ制御部903を有している。スイッチ901は、伝送線路701の第1ポートに接続されており、伝送線路701と給電回路との接続状態を導通または遮断に切り替える。スイッチ901がオンすると伝送線路701が給電回路と導通状態になり、給電回路から伝送線路701に電流が入力される。スイッチ901がオフすると、伝送線路701に対して給電回路からの給電が遮断される。
【0067】
スイッチ902は、伝送線路702の第2ポートに接続されており、伝送線路702と給電回路との接続状態を導通または遮断に切り替える。スイッチ902がオンすると伝送線路702が給電回路と導通状態になり、給電回路から伝送線路702に電流が入力される。スイッチ902がオフすると、伝送線路702に対して給電回路からの給電が遮断される。スイッチ901、902としては、たとえば、MOSFETなどを用いることができる。MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称である。
【0068】
スイッチ制御部903は、スイッチ901、902のオンオフを制御する。スイッチ制御部903は、外部からの指示信号に応じて、スイッチ901、902のひとつがオンし、他のひとつがオフするように、すべてのスイッチ901、902のオンオフを制御する。
【0069】
図18は、上記したアンテナ装置10の電磁界シミュレーションの結果を示している。ここでも、ビア導体40の直径をλ/8とした。Port1に給電する場合、Port2に給電する場合のいずれも、アンテナ装置10はZ方向に指向性を有している。Port1に給電すると左旋円偏波が支配的となり、Port2に給電すると右旋円偏波が支配的となる。
【0070】
<第4実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、先行実施形態に記載の効果を奏するとともに、左旋円偏波と右旋円偏波を切り替えることができる。
【0071】
アンテナ装置10の構成は、
図17に示す例に限定されない。先行実施形態に示したいずれの構成とも組み合わせが可能である。たとえばランド71および短絡部80を備えない構成において、伝送線路701、702、さらには給電制御部90を設けてもよい。ランド71を備え、短絡部80を備えない構成において、伝送線路701、702、さらには給電制御部90を設けてもよい。短絡部80を備え、ランド71を備えない構成において、伝送線路701、702、さらには給電制御部90を設けてもよい。
【0072】
(第5実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0073】
図19は、本実施形態のアンテナ装置10において、基板20における伝送線路70の配置面、つまり絶縁層23の上面を示している。
図19は、
図10に対応している。
図19でも、第1地板50の貫通孔51を破線で示している。
【0074】
図19に示すように、アンテナ装置10は、先行実施形態(
図15参照)と類似の構成を有している。先行実施形態とは異なり、アンテナ装置10は、伝送線路70とは別に、ビア導体40からY方向に延びる伝送線路75を備えている。伝送線路75は、Z方向において、地板50、60の間に位置している。伝送線路70が第3伝送線路に相当し、伝送線路75が第4伝送線路に相当する。そして、伝送線路70によるパッチ部30への給電、および、伝送線路75によるパッチ部30への給電を切り替え可能となっている。
【0075】
本実施形態では、伝送線路75が、ビア導体40から側面20f側に向けてY方向に延びている。伝送線路70の側面20c側の端部が給電用の第1ポート(Port1)をなし、伝送線路75の側面20f側の端部が給電用の第2ポート(Port2)をなしている。そして、第1ポートおよび第2ポートへの給電が切り替え可能となっている。第1ポートおよび第2ポートのうち、第1ポートへ給電すると、伝送線路70およびビア導体40を介してパッチ部30に電流が流れる。第1ポートおよび第2ポートのうち、第2ポートへ給電すると、伝送線路75およびビア導体40を介してパッチ部30に電流が流れる。このように、給電方向を切り替えることができる。その他の構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0076】
アンテナ装置10は、第4実施形態同様、給電を切り替えるための給電制御部91をさらに備えてもよい。給電制御部91は、伝送線路70、75に対する給電を制御する。給電制御部91を構成する要素の少なくとも一部は、基板20に実装されてもよい。給電制御部91は、たとえばスイッチ911、912と、スイッチ制御部913を有している。スイッチ911は、伝送線路70の第1ポートに接続されており、伝送線路70と給電回路との接続状態を導通または遮断に切り替える。スイッチ911がオンすると伝送線路70が給電回路と導通状態になり、給電回路から伝送線路70に電流が入力される。スイッチ911がオフすると、伝送線路70に対して給電回路からの給電が遮断される。
【0077】
スイッチ912は、伝送線路75の第2ポートに接続されており、伝送線路75と給電回路との接続状態を導通または遮断に切り替える。スイッチ912がオンすると伝送線路75が給電回路と導通状態になり、給電回路から伝送線路75に電流が入力される。スイッチ912がオフすると、伝送線路75に対して給電回路からの給電が遮断される。
【0078】
スイッチ制御部913は、スイッチ911、912のオンオフを制御する。スイッチ制御部913は、外部からの指示信号に応じて、スイッチ911、912のひとつがオンし、他のひとつがオフするように、すべてのスイッチ911、912のオンオフを制御する。
【0079】
図20は、上記したアンテナ装置10の電磁界シミュレーションの結果を示している。ここでも、ビア導体40の直径をλ/8とした。Port1に給電する場合、アンテナ装置10はZ方向に指向性を有している。アンテナ装置10は、円偏波を放射する。Port2に給電する場合、アンテナ装置10はZ方向に指向性を有している。アンテナ装置10は、直線偏波を放射する。
【0080】
<第5実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、先行実施形態に記載の効果を奏するとともに、円偏波と直線偏波を切り替えることができる。
【0081】
アンテナ装置10の構成は、
図19に示す例に限定されない。先行実施形態に示したいずれの構成とも組み合わせが可能である。たとえばランド71および短絡部80を備えない構成において、伝送線路70、75、さらには給電制御部91を設けてもよい。ランド71を備え、短絡部80を備えない構成において、伝送線路70、75、さらには給電制御部91を設けてもよい。短絡部80を備え、ランド71を備えない構成において、伝送線路70、75、さらには給電制御部91を設けてもよい。
【0082】
伝送線路70が側面20c側に向けてX方向に延びる例を示したが、これに限定されない。伝送線路70は、側面20d側に向けてX方向に延びてもよい。伝送線路75が側面20f側に向けてY方向に延びる例を示したが、これに限定されない。伝送線路75は、側面20e側に向けてY方向に延びてもよい。
【0083】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0084】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0085】
ある要素または層が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の層に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在層が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0086】
空間的に相対的な用語「内」、「外」、「裏」、「下」、「低」、「上」、「高」などは、図示されているような、ひとつの要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を説明する記載を容易にするためにここでは利用されている。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または操作中の装置の異なる向きを包含することを意図することができる。例えば、図中の装置をひっくり返すと、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することができる。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、この明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【符号の説明】
【0087】
10…アンテナ装置、20…基板、20a…一面、20b…裏面、20c、20d、20e、20f…側面、21、22、23…絶縁層、30…パッチ部、30c…中心、40…ビア導体、50…第1地板、51…貫通孔、60…第2地板、70、701、702、75…伝送線路、71…ランド、80…短絡部、81…ランド、90、91…給電制御部、901、902、911、912…スイッチ、903、913…スイッチ制御部