(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】ハンドル
(51)【国際特許分類】
B62D 1/08 20060101AFI20250128BHJP
【FI】
B62D1/08
(21)【出願番号】P 2022022319
(22)【出願日】2022-02-16
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】フィン タン ミン チィット
(72)【発明者】
【氏名】寺田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】梅村 紀夫
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/207883(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0015932(US,A1)
【文献】国際公開第2021/099345(WO,A1)
【文献】実開昭56-126875(JP,U)
【文献】特表平08-507897(JP,A)
【文献】特開2019-202446(JP,A)
【文献】特開平11-263872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル操舵時の把持を検知可能に、芯金の周囲に配設された軟質の被覆層の表面側に、導電性材料を含有させた塗膜からなるセンサ層、が配設され、
該センサ層が、把持を検知するための把持検知回路に導通するリード線の端子を接続させるハンドルであって、
前記芯金を被複した前記被覆層の表面側に配設される前記センサ層が、前記端子との導通部位に、平面状の導通面を備え、
前記端子が、前記導通面に沿った接続面を有した板状に形成されるとともに、
前記導通面と前記接続面との間に、弾性変形可能な導電体が配設され、
前記端子における前記接続面の裏面側を支持する支持材と、前記センサ層の前記導通部位を配設させた前記芯金側の部位と、を相互に接近させるように締結するねじ手段と、
を備えて構成されて
おり、
前記ねじ手段が、前記導電体を間にした両側に、配設されていることを特徴とするハンドル。
【請求項2】
ハンドル操舵時の把持を検知可能に、芯金の周囲に配設された軟質の被覆層の表面側に、導電性材料を含有させた塗膜からなるセンサ層、が配設され、
該センサ層が、把持を検知するための把持検知回路に導通するリード線の端子を接続させるハンドルであって、
前記芯金を被複した前記被覆層の表面側に配設される前記センサ層が、前記端子との導通部位に、平面状の導通面を備え、
前記端子が、前記導通面に沿った接続面を有した板状に形成されるとともに、
前記導通面と前記接続面との間に、弾性変形可能な導電体が配設され、
前記端子における前記接続面の裏面側を支持する支持材と、前記センサ層の前記導通部位を配設させた前記芯金側の部位と、を相互に接近させるように締結するねじ手段と、
を備えて構成されて
おり、
前記支持材が、前記ハンドルの下面側に配設されるロアカバーから、構成されていることを特徴とするハンドル。
【請求項3】
ハンドル操舵時の把持を検知可能に、芯金の周囲に配設された軟質の被覆層の表面側に、導電性材料を含有させた塗膜からなるセンサ層、が配設され、
該センサ層が、把持を検知するための把持検知回路に導通するリード線の端子を接続させるハンドルであって、
前記芯金を被複した前記被覆層の表面側に配設される前記センサ層が、前記端子との導通部位に、平面状の導通面を備え、
前記端子が、前記導通面に沿った接続面を有した板状に形成されるとともに、
前記導通面と前記接続面との間に、弾性変形可能な導電体が配設され、
前記端子における前記接続面の裏面側を支持する支持材と、前記センサ層の前記導通部位を配設させた前記芯金側の部位と、を相互に接近させるように締結するねじ手段と、
を備えて構成されて
おり、
前
記センサ層が、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤から形成され、前記被覆層の成形時に、前記被覆層の表面側に、配設される構成としていることを特徴とするハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が操舵時に把持する部位に、把持を検出可能なセンサ層が配設されて構成されるハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハンドルでは、操舵時に把持する把持部に、静電容量の増加により、把持を検知可能なシート状の導電性部材からなるセンサ層、が配設されて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。センサ層は、ハンドルの把持部の表面側に配設されて、把持を検知する把持検知回路から延びるリード線の端子を、リベット止めしていた。センサ層は、ハンドルの把持部の芯金周囲の被覆層の表面側に、貼着等して配設されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、把持を検知するセンサ層が、芯金の周囲の被覆層の表面に、薄い塗膜のように配設されている場合には、センサ層の表面側に端子を配置させても、センサ層の裏面側に、貫通させたリベットの先端側を拡径させて、端子をセンサ層にリベット止めするようなスペースがなく、塗膜状のセンサ層と端子とを円滑に接続できない。この場合、センサ層の表面側に端子を載せた状態で、被覆層や芯金を貫通するように、リベットやねじ等の締結手段を貫通させて、締結させることが考えられる。しかしながら、この場合でも、センサ層が、被覆層の表面側に配設されており、締結時、リベットやねじの頭部が、センサ層を被覆層側に押し付ければ、端子の接触するセンサ層の部位が、センサ層の裏面側の被覆層の弾性変形により、破断等の亀裂を招く虞れが生じ、安定して、センサ層に端子を接続できず、センサ層と端子との安定した導通状態を確保し難い。特に、芯金を被覆する被覆層は、通常、発泡ウレタン等の軟質材から形成されており、被覆層の弾性変形が大きいことから、端子の接触するセンサ層の部位が、被覆層の弾性変形により、一層、破断等することとなって、安定してセンサ層に端子を接続できない。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、把持検知用の塗膜状のセンサ層と端子とを安定して接続できるハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るハンドルでは、ハンドル操舵時の把持を検知可能に、芯金の周囲に配設された軟質の被覆層の表面側に、導電性材料を含有させた塗膜からなるセンサ層、が配設され、
該センサ層が、把持を検知するための把持検知回路に導通するリード線の端子を接続させるハンドルであって、
前記芯金を被複した前記被覆層の表面側に配設される前記センサ層が、前記端子との導通部位に、平面状の導通面を備え、
前記端子が、前記導通面に沿った接続面を有した板状に形成されるとともに、
前記導通面と前記接続面との間に、弾性変形可能な導電体が配設され、
前記端子における前記接続面の裏面側を支持する支持材と、前記センサ層の前記導通部位を配設させた前記芯金側の部位と、を相互に接近させるように締結するねじ手段と、
を備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るハンドルでは、センサ層の導通部位、導電体、端子の接続面、及び、支持材を重ねて、芯金側と支持材側とを接近させるように、ねじ手段を締結すれば、広い接触面を生じさせるように圧縮された導電体を介在させて、センサ層の導通部位の導通面と端子の接続面とが導通される。すなわち、この締結状態では、導電体が、緩衝材の役目を果しつつ、センサ層と端子とに対して広い接触面積で密着するように接触しつつ、センサ層と端子との間に介在されることから、センサ層が、軟質の被覆層の変形に追従して破断しない程度に、広い接触面とした状態の導電体を介在させて、端子を圧着させる構成となることから、良好で、かつ、安定した端子との導通状態を確保できる。
【0008】
したがって、本発明に係るハンドルでは、把持検知用の塗膜状のセンサ層と端子とを安定して接続することができて、良好な把持検知が可能となる。
【0009】
そして、本発明に係るハンドルでは、前記ねじ手段が、前記導電体を間にした両側に、配設されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、導電体の両側に、ねじ手段が配設されていることから、導電体の圧縮時、センサ層の導通面と端子の接続面とを、相互に平行な状態を維持して、接近させることができることから、端子を、均等に、センサ層側に押圧することができて、端子とセンサ層との安定した導通状態を維持できる。
【0011】
また、本発明に係るハンドルでは、前記支持材が、前記ハンドルの下面側に配設されるロアカバーから、構成されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、ハンドル自体に配設されているロアカバーを利用して、端子を支持する支持材を構成できることから、ロアカバーと別に、支持材を準備しなくともよい。また、このねじ手段は、ロアカバーをハンドルの芯金に取り付ける機能も奏することから、ロアカバーの取付用ねじの部品点数の増加を抑制できる。
【0013】
また、本発明に係るハンドルでは、前記センサ層が、
導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤から形成され、前記被覆層の成形時に、前記被覆層の表面側に、配設される構成としていてもよい。
【0014】
このような構成では、塗膜として形成されるセンサ層が、モールドコート層(インモールドコート層)としており、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤を、被覆層を型成形する際の成形型の型面に、予め、塗布しておくだけでよく、後は、単に、被覆層を成形するだけで、センサ層を設けた被覆層を容易に形成できる。さらに、比較例として、例えば、センサ層をモールドコート層とせずに、センサ層を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、成形後の被覆層の外表面側に、塗布し、そして、硬化させて、センサ層を形成する場合では、成形後の被覆層の外表面に、プライマーを塗布したり、あるいは、ウレタン系塗料の塗布後の乾燥の工数も必要となってしまうが、この場合に比べて、本発明のモールドコート層からなるセンサ層を設けたハンドルでは、既述のプライマーの塗布工程や乾燥工程が不要となることから、簡便に、製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態のハンドルを示す概略平面図である。
【
図2】実施形態のハンドルにおける把持部位の概略断面図であり、
図1のII-II部位に対応する。
【
図3】実施形態のハンドルの製造工程を説明する図である。
【
図4】実施形態のハンドルの製造工程を説明する図であり、
図3の後の状態を示す。
【
図5】実施形態のハンドルにおける端子の配設部位の概略断面図であり、
図1のV-V部位に対応する。
【
図6】実施形態のハンドルにおける端子の配設部位の概略斜視図である。
【
図7】端子と支持材との結合状態の一例を説明する図である。
【
図8】端子と支持材との他の結合状態を説明する図である。
【
図9】端子と支持材とのさらに他の結合状態を説明する図である。
【
図11】実施形態の変形例の把持部位の概略断面図である。
【
図12】
図11に示すハンドルの製造工程を説明する図である。
【
図14】
図11に示すハンドルにおける端子の配設部位の概略断面図である。
【
図15】
図11に示すハンドルにおける端子の配設部位の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のハンドルW1は、
図1,2に示すように、図示しない車両の操舵時に把持する略円環状の把持部R1と、把持部R1の中央のボス部Bと、把持部R1とボス部Bとを連結するスポーク部S(L,R,B)と、を備えて構成されている。スポーク部Sは、ボス部Bから左右両側に延びるスポーク部SL,SRと、ボス部Bから後側に延びるスポーク部SBと、を備えている。また、ハンドルW1は、ボス部Bの上部側に配設される二点鎖線で示したエアバッグ装置100と、ハンドル本体H1と、ボス部Bの下部側を覆うロアカバー20と、を備えて構成されている。
【0017】
なお、エアバッグ装置100とロアカバー20とは、上方から見て、外形形状を略同等として、ハンドル本体H1を間にして、上方に、エアバッグ装置100が、配設され、下方に、ロアカバー20が、配設される。エアバッグ装置100は、図示しない複数の取付脚を、対応するハンドル本体H1の係止孔9に係止させて、ハンドル本体H1に取り付けられて配設されている。ロアカバー20は、ポリプロピレン等の合成樹脂製として、ねじ38,42を螺着させる鋼等の金属製のナット22(
図5参照)を設けてなる締結座21を配設させ、ハンドル本体H1を貫通するねじ38,42を各締結座21に締結して、ハンドル本体H1に取り付けられて配設されている。ねじ38は、後述するように、ねじ手段37を構成するもので、センサ層13の導通部位14に対して、端子30を導通させるように接続する作用も有している。ロアカバー20の締結座21は、ロアカバー20の成形時に、ナット22をインサートとして、インサート成形して、配設されている。なお、端子30の配設部位のナット22は、ねじ手段37のねじ38を螺着させる雌ねじ部39となる。
【0018】
ハンドル本体H1は、把持部R1、ボス部B、及び、スポーク部Sを連結するアルミニウム合金等の金属材からなる芯金3、を備えて構成されている。芯金3は、把持部R1に配設される把持芯金部4と、ボス部Bに配設されるボス芯金部5と、把持芯金部4とボス芯金部5とを連結するように、スポーク部S(L,R,B)に配設されるスポーク芯金部6(L,R),7と、を備えて構成されている。ボス芯金部5は、車両のステアリングシャフトと結合される鋼製のボス5aを配設させている。また、スポーク芯金部6は、左右のスポーク部SL,SRに配設されるスポーク芯金部6L,6Rと、後部側のスポーク部SBに配設されて、ボス芯金部5側で左右に分岐し、そして、把持芯金部4側で結合されるような2本のスポーク芯金部7,7と、から構成されている。
【0019】
なお、ボス部Bには、エアバッグ装置100に覆われたハンドル本体H1の部位に、把持検知回路25が配設されている。把持検知回路25は、後述するセンサ層13から延びるリード線26が結線されており、運転者の手が把持部R1を把持するように、把持部R1のセンサ層13に接近した際に、静電容量が上昇することから、その上昇を検出して、運転者の把持を検知する。
【0020】
そして、把持部R1は、
図2に示すように、芯金3の把持芯金部4と、把持芯金部4の周囲を覆うように、型成形により形成される発泡ウレタンからなる被覆層10と、被覆層10の表面に配設されるセンサ層13と、センサ層13の表面側に配設される保護層18と、から構成されている。保護層18は、左右のスポーク部SL,SRにおけるエアバッグ装置100で覆われる部位において、把持芯金部4から離れた部位では、センサ層13を覆っておらず、センサ層13を露出させている。
【0021】
センサ層13は、導電性材料を含有したウレタン系塗料(導電性フィラーとして、導電性カーボンや金属酸化物等の粉末、を混ぜ込んだウレタン系塗料)からなるモールドコート剤58から形成され(
図3参照)、型成形時の被覆層10の型面51a,52aに塗布されて、被覆層10の成形時に、被覆層10の表面側に、配設されるような塗膜として、構成されている。
【0022】
なお、実施形態の場合、センサ層13は、導電性カーボンを含有させたウレタン系塗料から形成されている。
【0023】
保護層18は、実施形態の場合、型成形により配設される発泡ウレタンからなる表皮層として、配設されている。
【0024】
すなわち、実施形態の場合、発泡ウレタンは、センサ層13の裏面側における把持芯金部4側の被覆層10としてのウレタン層と、センサ層13の表面側における保護層18としてのウレタン層と、を備えて構成されている。
【0025】
なお、実施形態の場合、センサ層13が、導電性カーボンを含有させたウレタン系塗料からなって、被覆層10の表面を暗色の黒色で覆っており、保護層187は、黒色でなく、意匠性を高めるために、明色のベージュ系の顔料を含有させた発泡ウレタンが使用されて、成形されている。
【0026】
実施形態の場合、センサ層13の厚さ寸法St1は、導電性、耐久性、及び、感触、を考慮して、5~50μm程度、好ましくは、10~30μm程度の範囲内の20μmとし、保護層18のウレタン層の厚さ寸法Ut1は、耐久性、感触、及び、センサ層13の感度、を考慮して、1~3mm程度の範囲内の2mmとしている。
【0027】
リード線26のセンサ層13への接続は、
図5に示すように、リード線26の先端に結合されている端子30をセンサ層13(D)側に圧着させるねじ手段37を利用して、行なっている。端子30は、導電性を有した金属製の略長方形の板状として、ハンドルW1の中央側に、リード線26をカシメて固定した連結部32を設けて構成されている。
【0028】
なお、ハンドルW1における端子30を接続させる部位は、運転者が把持するエリアから離れて、エアバッグ装置100、他のスイッチ類、あるいは、ロアカバー20等に覆われる部位として、運転者から目視できない位置に、配設されている。
【0029】
実施形態の場合、端子30の接続部位は、ロアカバー20に覆われる部位としたスポーク芯金部6Rの下面側を被覆した被覆層10の部位に、配設されている。そして、この接続部位では、被覆層10の外表面10a側を覆うセンサ層13(U,D)における下側のセンサ層13Dの部位が、端子30と導通させる導通部位14として、導通部位14の表面側を、平面状の導通面14aとして、構成されている。
【0030】
端子30は、スポーク芯金部6Rの長手方向に沿った略長方形の板状として、センサ層13Dの導通部位14の導通面14aに沿った接続面31を、上面30a側に配設させ、下面30b側を、ロアカバー20の底壁部20aに設けられた支持面部23の上面側の支持面23aに支持させて、配設されている。
【0031】
実施形態の場合、ロアカバー20は、端子30を支持する支持材としての役目を果している。また、支持面部23には、端子30を組み付けて保持する係止爪23bが、配設されている。係止爪23bは、端子30の下面30bを支持面23aに接触させるように、端子30の前後の縁を係止するように、配設されている。
【0032】
そして、センサ層13Dの導通部位14における導通面14aと端子30の接続面31との間には、弾性変形可能な導電体35が配設されている。実施形態では、導電体35は、導電ゴムから形成されている。導電体35は、実施形態の場合、幅寸法CWを10mm程度、厚さ寸法CTを5mm程度、長さ寸法CLを10mm程度、としている(
図1,5参照)。
【0033】
そして、端子30における接続面31の裏面側、すなわち、端子30の下面30b側、を支持するロアカバー20の支持面部23と、センサ層13Dの導通部位14を配設させた芯金(スポーク芯金部6R)側の部位と、は、相互に接近するように、ねじ手段37により、締結されている。
【0034】
ねじ手段37は、ねじ38と、ロアカバー20の締結座21に設けられたナット22からなる雌ねじ部39と、から構成されている。ねじ38は、頭部38aと、頭部38aから延びて締結座21の雌ねじ部39に締結される雄ねじ部38cを有したねじ棒部38bと、を備えて構成されている。ねじ38は、ねじ棒部38bを、上面側のセンサ層13U、上面側の被覆層10U、スポーク芯金部6R、下面側の被覆層10D、及び、下面側のセンサ層13Dの各挿通孔16,11,8を挿通させて、先端の雄ねじ部38cを、締結座21の雌ねじ部39に締結させることにより、頭部38aが上面側のセンサ層13Uの挿通孔16周縁を押圧して、雄ねじ部38cの螺合する締結座21を、相対的に、上方に引き上げる態様となることから、ロアカバー20の支持面部23と、センサ層13の導通部位14を配設させたスポーク芯金部6R側の部位と、が、相互に接近するように、締結される。その際、導電体35が、圧縮されて、センサ層13の導通部位14と端子30との導通状態を安定させることができる。
【0035】
なお、実施形態の場合、ねじ手段37の締結時には、導電体35を圧縮させつつ、締結座21の上面21aと下面側のセンサ層13Dとが当接する状態となる。
【0036】
また、実施形態の場合、ねじ38と雌ねじ部39と備えてなるねじ手段37は、導電体35を間にした両側(前後両側)に、配設されている。
【0037】
実施形態のハンドル本体H1の製造は、モールドコート剤塗布工程、被覆層10としての第1ウレタン層成形工程、及び、保護層18としての第2ウレタン層成形工程、を経て、製造される。
【0038】
まず、モールドコート剤塗布工程では、
図3のA,Bに示すように、被覆層10としての第1ウレタン層を成形する成形型50の割型51,52の型面51a,52aに、センサ層13を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、モールドコート剤58として、塗布装置としてのスプレーガン57により、塗布する。なお、モールドコート剤58を塗布する前には、型面51a,52aに離型剤を塗布しておく。
【0039】
ついで、被覆層10としての第1ウレタン層成形工程として、
図3のC,Dに示すように、割型51,52からなる成形型50を型締めし、キャビティ50a内に、第1ウレタン層としての被覆層10を成形するウレタン材料を注入して硬化させ、被覆層10を成形した中間成形品53を製造し、成形型50を型開きして、中間成形品53を取り出す。
【0040】
ついで、保護層18としての第2ウレタン層成形工程として、
図4のA,Bに示すように、第2ウレタン層を成形する割型55,56からなる成形型54を型開きさせて、中間成形品53をセットし、成形型54を型締めし、
図4のB,Cに示すように、キャビティ54a内に、保護層18としての第2ウレタン層を成形するウレタン材料を注入して硬化させ、第2ウレタン層18を成形する。なお、成形前には、割型55,56の型面55a,56aに離型剤を塗布しておく。そして、保護層18としての第2ウレタン層を成形した後には、型開きして、取り出せば、把持部R1を設けた成形品、すなわち、ハンドル本体H1を得ることができる。
【0041】
なお、ハンドル本体H1の製造時(成形時)、被覆層10やセンサ層13には、スポーク芯金部6Rの挿通孔8の部位に、ねじ棒部38bを挿通させる挿通孔11,16が形成される。左方のスポーク芯金部6Lの部位にも、ねじ42のねじ棒部を挿通させる挿通孔が形成されている。
【0042】
このように製造したハンドル本体H1では、各締結座21にねじ38,42を締結させて、ボス部Bの下部側にロアカバー20を取り付けつつ、ボス部Bのボス5aを、車両のステアリングシャフトに締結し、ボス部Bの上部側に、エアバッグ装置100を取り付ければ、ハンドルW1を組み立てることができるとともに、ハンドルW1を車両に搭載することができる。
【0043】
なお、ねじ38の締結座21への締結時には、センサ層13Dの導通部位14の導通面14aと、ロアカバー20の支持面部23の支持面23a上に、係止爪23bを利用して、予め、配置させておいた端子30の接続面31と、の間に、導電体35を配置させておいて、ねじ38のねじ棒部38bを、センサ層13(U,D)の挿通孔16、被覆層10の挿通孔11、及び、スポーク芯金部6Rの挿通孔8を挿通させて、ねじ棒部38bの雄ねじ部38cを締結座21の雌ねじ部39に締結する。そして、ロアカバー20をハンドル本体H1の下面側に取り付けた後、ハンドル本体H1に取り付けておいた把持検知回路25に対して、連結部32に連結させておいたリード線26を、連結する。この連結により、センサ層13と運転者の把持を検知可能な把持検知回路25とが、リード線26により、結線されることとなる。また、ボス部Bのボス5aを、車両のステアリングシャフトへの締結後において、ボス部Bの上部側にエアバッグ装置100を取り付ける際には、車両側から延びるエアバッグ装置100の作動信号入力用のリード線や把持検知回路25の電源用や検知信号出力用のリード線等を、エアバッグ装置100や把持検知回路25等に結線する。
【0044】
車両に搭載されたハンドルW1では、運転者の手が、把持部R1を把持するように、把持部R1のセンサ層13に接近すれば、静電容量が上昇したことを所定の把持検知回路25が検知することから、運転者の把持を検知することができる。
【0045】
そして、実施形態のハンドルW1では、センサ層13Dの導通部位14、導電体35、端子30の接続面31、及び、支持材としてのロアカバー20の支持面部23を重ねて、芯金6R側とロアカバー20側とを接近させるように、ねじ手段37を締結すれば、広い接触面35a,35bを生じさせるように圧縮された導電体35を介在させて、センサ層13Dの導通部位14の導通面14aと端子30の接続面31とが導通される。すなわち、この締結状態では、導電体35が、緩衝材の役目を果しつつ、センサ層13Dと端子30とに対して広い接触面積で密着するように接触しつつ、センサ層13Dと端子30との間に介在されることから、センサ層13Dが、軟質の被覆層10の変形に追従して破断しない程度に、広い接触面35a,35bとした状態の導電体35を介在させて、端子30を圧着させる構成となることから、良好で、かつ、安定した端子30との導通状態を確保できる。
【0046】
したがって、実施形態のハンドルW1では、把持検知用の塗膜状のセンサ層13と端子30とを安定して接続することができて、良好な把持検知が可能となる。
【0047】
また、実施形態のハンドルW1では、センサ層13が、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤58から形成され、被覆層10の成形時に、被覆層10の表面(外周面)10a側に、配設される構成としている(
図2,3参照)。
【0048】
そのため、実施形態では、塗膜として形成されるセンサ層13が、モールドコート層(インモールドコート層)15としており、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤58を、被覆層10を型成形する際の成形型50の型面51a,52aに、予め、塗布しておくだけでよく、後は、単に、被覆層10を成形するだけで、センサ層13を設けた被覆層10を形成できる。さらに、比較例として、例えば、センサ層をモールドコート層とせずに、センサ層を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、成形後の被覆層10の外表面10a側に、塗布し、そして、硬化させて、センサ層を形成する場合では、成形後の被覆層の外表面に、プライマーを塗布したり、あるいは、ウレタン系塗料の塗布後の乾燥の工数も必要となってしまうが、この場合に比べて、実施形態のモールドコート層からなるセンサ層13を設けたハンドルW1では、既述のプライマーの塗布工程や乾燥工程が不要となることから、簡便に、製造できる。
【0049】
勿論、上記の点を考慮しなければ、センサ層をモールドコート層とせずに、センサ層を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、成形後の被覆層の外表面側に、塗布し、そして、硬化させて形成してもよい。
【0050】
そしてまた、実施形態のハンドルW1では、ねじ手段37が、導電体35を間にした前後方向の両側に、配設されている。
【0051】
そのため、実施形態では、導電体35の両側に、ねじ手段37が配設されていることから、導電体35の圧縮時、センサ層13Dの導通面14aと端子30の接続面31とを、相互に平行な状態を維持して、接近させることができることから、端子30を、均等に、センサ層13D側に押圧することができて、端子30とセンサ層13Dとの安定した導通状態を維持できる。
【0052】
また、実施形態のハンドルW1では、端子30を支持する支持材が、ハンドルW1の下面側に配設されるロアカバー20から、構成されている。
【0053】
そのため、実施形態では、ハンドルW1自体に配設されているロアカバー20を利用して、端子30を支持する支持材を構成できることから、ロアカバー20と別に、支持材を準備しなくともよい。また、このねじ手段37は、ロアカバー20をハンドルW1の芯金3(スポーク芯金部6R)に取り付ける機能も奏することから、ロアカバー20の取付用ねじ38,42の部品点数の増加を抑制できる。
【0054】
なお、ねじ手段37としては、センサ層13Dの導通面14aと端子30の接続面31との間に配設される導電体35を、反発力を発揮するように圧縮させて、センサ層13Dを保持する芯金3(スポーク芯金部6R)側と、端子30を支持する支持材としてのロアカバー20と、を締結すればよいことから、実施形態のように、センサ層13Uから、挿通孔16,8,11を挿通させるねじ38と、その雄ねじ部38cを螺合させる雌ねじ部39と、から構成されなくともよい。例えば、ロアカバー20に雌ねじ部39を設けずに、ねじ38を貫通させて、ロアカバー20の下面で、ナット止めしたり、あるいは、支持材側に上方に延びるようにボルトをインサート成形させて、そのボルトを、センサ層13D側から、挿通孔16,8,11を挿通させて、上方のセンサ層13U側でナット止めしてもよい。さらに、ナット22を設けずに、ロアカバー20の締結座21に、雌ねじ部39を螺刻してもよい。
【0055】
また、端子30を支持する支持材としてのロアカバー20は、端子30を接着させて配設させたり、あるいは、
図7に示すように、割型44a,44bを具備する成形型44を使用してロアカバー20Aを成形する際、端子30Aをインサートとして、ロアカバー20Aをインサート成形して、端子30Aをロアカバー20Aに配設させてもよい。また、
図8に示すように、ロアカバー20Bの支持面部23から熱カシメ用の突起23cを突設させておき、端子30Bの取付孔33に突起23cを挿入させて、突起23cの先端を拡径させるように溶融させて、端子30Bを支持面部23に係止させて配設してもよい。あるいは、
図9に示すように、端子30Cにねじ46を挿通させる取付孔33Cを設け、ねじ46を取付孔33Cを挿通させて支持面部23のねじ孔23dに螺着させて、端子30Cを支持面部23に配設してもよい。
【0056】
さらにまた、弾性変形可能な導電体35としては、実施形態のような導電ゴムの他、
図10に示すような、圧縮されて、センサ層13Dに対して広い接触面35aを確保できれば、導電性を有した金属ばねからなる導電体35Dや、弾性変形可能な導電性を有した図示しない導電布等を利用することができる。
【0057】
なお、導電体35,35Dとしては、端子30に対して、良好な導通状態を確保しつつ弾性変形できれば、予め、接着させて配設しておいてもよい。
【0058】
また、センサ層13の感度を良好にするように、
図11~15に示すハンドルW2のように、芯金(把持芯金部)4の周囲にシールド層64を配設してもよい。
【0059】
このハンドルW2は、把持部R2が、
図11に示すように、芯金3の把持芯金部4と、把持芯金部4の周囲を覆うように、型成形により配設される発泡ウレタンからなる被覆層60と、センサ層67と、を備えて構成されている。センサ層67は、実施形態と同様に、導電性材料(導電性カーボン)を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤85から形成され(
図13参照)、型成形時の被覆層60の第2ウレタン層62の型面78a,79aに塗布されて、被覆層60の第2ウレタン層62の成形時に、第2ウレタン層62の表面側に、配設される構成としている。さらに、センサ層67は、表面側に配設される保護層70に覆われて、配設されている。
【0060】
そして、発泡ウレタンからなる被覆層60が、芯金3の把持芯金部4側の第1ウレタン層61と、センサ層67の裏面側の第2ウレタン層62と、第1ウレタン層61と第2ウレタン層62との間に配設されるシールド層64と、を備えて構成されている。
【0061】
シールド層64は、導電性材料(例えば導電性カーボン)を含有したウレタン系塗料からなる第1のモールドコート剤84(
図12参照)から構成されている。センサ層67は、第2のモールドコート剤85(
図13参照)から構成されている。すなわち、第1モールドコート剤84は、型成形時における第1ウレタン層61の成形型73の型面74a,75aに塗布されて、第1ウレタン層61の成形時に、第1ウレタン層61の表面側に、配設されて、第1モールドコート層65が形成される構成としている。また、センサ層67を形成する第2モールドコート剤85が、型成形時における第2ウレタン層62の成形型77の型面78a,79aに塗布されて、第2ウレタン層62の成形時に、第2ウレタン層62の表面側に、第2モールドコート層68となるセンサ層67が、配設される構成としている。
【0062】
このハンドルW2のハンドル本体H2の製造は、シールド用モールドコート剤塗布工程、第1ウレタン層成形工程、センサ用モールドコート剤塗布工程、第2ウレタン層成形工程、及び、保護層成型工程、を経て、製造される。
【0063】
まず、シールド用モールドコート剤塗布工程では、
図12のA,Bに示すように、被覆層60としての第1ウレタン層61を成形する成形型73の割型74,75の型面74a,75aに、シールド層64を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、第1モールドコート剤84として、塗布装置としてのスプレーガン81により、塗布する。なお、モールドコート剤84を塗布する前には、型面74a,75aに離型剤を塗布しておく。
【0064】
ついで、第1ウレタン層成形工程として、
図12のB,Cに示すように、割型74,75からなる成形型73を型締めし、キャビティ73a内に、第1ウレタン層61を成形するウレタン材料を注入して硬化させ、第1ウレタン層61を成形した中間成形品66を製造し、成形型73を型開きして、中間成形品66を取り出す。
【0065】
ついで、センサ用モールドコート剤塗布工程として、
図13のAに示すように、被覆層60としての第2ウレタン層62を成形する成形型77の割型78,79の型面78a,79aに、センサ層67を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、第2モールドコート剤85として、塗布装置としてのスプレーガン82により、塗布する。なお、モールドコート剤85を塗布する前には、型面78a,79aに離型剤を塗布しておく。
【0066】
ついで、第2ウレタン層成形工程として、
図13のA,Bに示すように、第2ウレタン層62を成形する割型78,79からなる成形型77に、中間成形品66をセットし、成形型77を型締めし、キャビティ77a内に、第2ウレタン層62を成形するウレタン材料を注入して硬化させ、第2ウレタン層62を成形する。そして、第2ウレタン層62を成形した後には、型開きして、取り出せば、保護層70の成形前の中間成形品69を得ることができる(
図13のC参照)。
【0067】
その後、中間成形品69に保護層70を賦形すれば、ハンドル本体H2の把持部R2を製造することができる(
図13のD参照)。
【0068】
なお、ハンドル本体H2の成形時には、ねじ手段37のねじ38が挿通されるスポーク芯金部6Lの挿通孔の部位には、実施形態と同様に、ねじ38が挿通可能な被覆層60、センサ層67、及び、シールド層64の挿通孔(図示せず)が配設されている。
【0069】
このように製造したハンドル本体H2では、ハンドル本体H1と同様に、ボス部Bの下部側にロアカバー20Eを取り付けつつ、ボス部Bのボス5aを、車両のステアリングシャフトに締結し、ボス部Bの上部側に、エアバッグ装置100を取り付ければ、ハンドルW2を組み立てることができるとともに、ハンドルW2を車両に搭載することができる。
【0070】
なお、シールド層64と結線されるリード線87は、把持検知回路に接続される所定のシールド回路に連結されるとともに、端子90の連結部92に結合されており、端子90は、その接続面91を、導電ゴムからなる導電体35Eに圧接させることとなる。センサ層67も、実施形態と同様に、導電体35Eを介在させて、端子30Eに接続される。
【符号の説明】
【0071】
3…芯金、6(L,R)…スポーク芯金部、10(U,D),60…被覆層、13(U,D),67…センサ層、14…導通部位、14a…導通面、20,20A,20B,20C,20E…(支持材)ロアカバー、25…把持検知回路、26…リード線、30,30A,30B,30C,30E…端子、31…接続面、35,35A,35D,35E…導電体、37…ねじ手段、38…ねじ、39…雌ねじ部、
H1,H2…ハンドル本体、R1,R2…把持部、W1,W2…ハンドル。