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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】頭部保護エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/213 20110101AFI20250128BHJP
   B60R 21/237 20060101ALI20250128BHJP
   B60R 21/232 20110101ALI20250128BHJP
【FI】
B60R21/213
B60R21/237
B60R21/232
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022023920
(22)【出願日】2022-02-18
(65)【公開番号】P2023120835
(43)【公開日】2023-08-30
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/129590(WO,A1)
【文献】特開2005-029035(JP,A)
【文献】特開2017-178232(JP,A)
【文献】特開2015-085787(JP,A)
【文献】特開2018-167682(JP,A)
【文献】特表2014-532587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0155196(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0375710(US,A1)
【文献】国際公開第2014/132513(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010062422(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車内側における窓の上縁側に、前後方向に沿うように折り畳まれて収納され、インフレーターからの膨張用ガスの流入時に、前記窓の車内側を覆うように下方へ展開膨張するエアバッグを備えて構成される頭部保護エアバッグ装置であって、
膨張完了時の前記エアバッグが、前記窓の車内側を覆う窓遮蔽膨張部、を備え、
前記エアバッグの前記窓遮蔽膨張部の折畳形状が、
平らに展開させた前記エアバッグの下縁側を上縁側に接近させるように、車内側に向けてロール折りする内ロール折部と、
該内ロール折部を、中心側に配置させつつ、前記エアバッグの上縁側に接近させるように、車外側に向けてロール折りする外ロール折部と、
を備えて構成されており、
膨張完了時の前記エアバッグの前記窓遮蔽膨張部が、
前記窓の車内側に配置される遮蔽本体部と、
該遮蔽本体部から下方に延びて、前記窓の下枠部位の車内側を覆い可能な下枠側膨張部と、
を備え、
前記エアバッグの前記内ロール折部が、前記下枠側膨張部を配設させて、展開膨張時に、前記下枠部位の上部側の車内側で、折りを解消する構成としており、
前記エアバッグが、展開膨張時の前記内ロール折部を、折りの解消を阻害せずに、前記外ロール折部の折り解消時に前記下枠部位の上端の車内側に、配置させる仮保持手段、を備えて構成されており、
前記仮保持手段が、前記内ロール折部の折りの解消時に連結解除可能として、前記外ロール折部の折りの解消時における前記内ロール折部を、前記外ロール折部の折りの解消時における前記遮蔽本体部の車内側壁部側に引き可能に、前記内ロール折部に連結される下側連結部と、該下側連結部より上方の前記遮蔽本体部の車内側部位側に連結される上側連結部と、を有した連結材、から構成されており、
前記連結材は、前記エアバッグに逆U字状のスリットを設けることにより形成され、前記内ロール折部に対して相対移動可能な舌片で構成されており、該舌片の元部が前記下側連結部として前記内ロール折部に連結されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納されて、膨張用ガスの流入時、下方へ展開膨張して、窓の車内側を覆うエアバッグ、を備えた頭部保護エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグが、平らに展開した状態の下縁側を、エアバッグの車外側壁部の側で、上縁側に接近するように、ロール折りする外ロール折りにより、折り畳んでいた(例えば、特許文献1参照)。この頭部保護エアバッグ装置では、作動時、エアバッグが、窓の上縁側から下方へ展開する際、外ロール折りの折りの解消により、窓に接近して展開膨張することから、乗員が窓に接近していても、乗員と窓との間に、エアバッグが、円滑に進入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-71542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の頭部保護エアバッグ装置において、窓の下枠部位が、車両の側面衝突によって、車内側に強く押し込まれた状態で、エアバッグが、窓の上縁側から下方へ展開膨張するような場合には、エアバッグが、窓の下枠部位に乗り上げて、下枠部位の車内側を覆えず、車内側への円滑な展開状態を確保できなくなってしまう虞れが生ずる。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、展開膨張時のエアバッグを、安定して、車内側で展開膨張させることができる頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、車両の車内側における窓の上縁側に、前後方向に沿うように折り畳まれて収納され、インフレーターからの膨張用ガスの流入時に、前記窓の車内側を覆うように下方へ展開膨張するエアバッグを備えて構成される頭部保護エアバッグ装置であって、
膨張完了時の前記エアバッグが、前記窓の車内側を覆う窓遮蔽膨張部、を備え、
前記エアバッグの前記窓遮蔽膨張部の折畳形状が、
平らに展開させた前記エアバッグの下縁側を上縁側に接近させるように、車内側に向けてロール折りする内ロール折部と、
該内ロール折部を、中心側に配置させつつ、前記エアバッグの上縁側に接近させるように、車外側に向けてロール折りする外ロール折部と、
を備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、窓の上縁側に折り畳まれて収納されたエアバッグが展開膨張する際、窓遮蔽膨張部が、ロール折りの中心側の内ロール折部の外周側に、外ロール折部を配設させており、この外ロール折部の折りの解消時には、窓に沿って展開膨張し、そして、外ロール折部が折りを解消した後には、内ロール折部の折りを解消させて、窓遮蔽膨張部が、下縁までの全域を展開させ、そして、膨張を完了させることとなる。その際、展開膨張当初では、外ロール折部が折りを解消することから、車外側に向く展開となって、窓に沿って展開膨張し、その後、内ロール折部の折りの解消では、車内側に向く展開となる。すなわち、エアバッグの展開膨張当初に、車外側に向いて展開しても、最終的に、内ロール折部の折りの解消に伴なって、エアバッグの下縁側が車内側に向くことから、エアバッグの全体が、車内側で展開膨張を完了させることができる。
【0008】
したがって、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、展開膨張時のエアバッグを、安定して、車内側で展開膨張させることができる。
【0009】
そして、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、膨張完了時の前記エアバッグの前記窓遮蔽膨張部が、
前記窓の車内側に配置される遮蔽本体部と、
該遮蔽本体部から下方に延びて、前記窓の下枠部位の車内側を覆い可能な下枠側膨張部と、
を備え、
前記エアバッグの前記内ロール折部が、前記下枠側膨張部を配設させて、展開膨張時に、前記下枠部位の上部側の車内側で、折りを解消する構成としていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、エアバッグの展開膨張時、外ロール折部の折りの解消により、窓遮蔽膨張部の遮蔽本体部側が、車外側を向きつつ、展開し、そして、内ロール折部が折りを解消しようとする。その際、窓の下枠部位が、車内側に押圧されて、エアバッグの下縁側がその下枠部位に乗り上げようとしても、そのエアバッグの下縁側は、内ロール折部であって、その折りの解消時、下枠部位自体に接触しつつ案内されるように、車内側に向いて折りを解消する。その結果、展開膨張時のエアバッグが、安定して、車内側で展開膨張を完了させることができる。
【0011】
この場合、前記エアバッグは、展開膨張時の前記内ロール折部を、折りの解消を阻害せずに、前記外ロール折部の折り解消時に前記下枠部位の上端の車内側に、配置させる仮保持手段、を備えて構成されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、折りの解消前の内ロール折部を、仮保持手段により、安定して、窓の下枠部位の上端の車内側に配設させることができることから、その後の内ロール折部の折りの解消時、安定して、窓の下枠部位の車内側で、下枠側膨張部を展開膨張させることができる。
【0013】
前記仮保持手段としては、前記内ロール折部の折りの解消時に連結解除可能として、前記外ロール折部の折りの解消時における前記内ロール折部を、前記外ロール折部の折りの解消時における前記遮蔽本体部の車内側壁部側に引き可能に、前記内ロール折部に連結される下側連結部と、該下側連結部より上方の前記遮蔽本体部の車内側部位側に連結される上側連結部と、を有した連結材、から構成することができる。
【0014】
すなわち、このような構成では、内ロール折部が折りを解消しようとする際、連結材が、遮蔽本体部の車内側部位側に上側連結部を連結させた状態で、下側連結部を連結させた内ロール折部を、上側連結部を回転中心として回転させるように、車内側に引っ張ることができる。そのため、内ロール折部の折りの解消直前には、内ロール折部が、安定して、窓の下枠部位の上部側における車内側に、配置される。そしてその後の折りの解消開始時、連結材が内ロール折部と遮蔽本体部の車内側部位側との連結状態を解消すれば、内ロール折部の折りが解消しつつ、内ロール折部を構成していた下枠側膨張部が、円滑に、窓の下枠部位の車内側に展開して、膨張を完了させることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の頭部保護エアバッグ装置を車内側から見た概略正面図である。
図2】実施形態に使用するエアバッグを平らに展開した状態を示す正面図である。
図3】実施形態のエアバッグの折畳工程を説明する概略断面図である。
図4】実施形態のエアバッグの折畳工程を説明する概略正面図である。
図5】実施形態の頭部保護エアバッグ装置の作動時におけるエアバッグの概略縦断面図を示す。
図6】実施形態の頭部保護エアバッグ装置の作動時におけるエアバッグの概略縦断面図を示し、図5の後の状態を示す。
図7】実施形態の頭部保護エアバッグ装置の仮保持手段の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、図1に示すように、2つの窓(サイドウィンド)W(W1,W2)を有した車両Vに搭載されるとともに、車内側の窓W(1,2)の上縁Wu側に搭載されている。
【0017】
頭部保護エアバッグ装置Mは、エアバッグ20と、インフレーター12と、取付具10と、取付ブラケット15と、エアバッグカバー9と、を備えている。エアバッグ20は、車両Vの車内側における窓W(1,2)の上縁Wu側において、フロントピラー部FPの下縁側から、ルーフサイドレール部RRの下縁側を経て、リヤピラー部RPの上方の領域まで、前後方向に沿うように、折り畳まれて収納されている。
【0018】
エアバッグカバー9は、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ4と、ルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5と、のそれぞれの下縁から、構成されている。フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5とは、合成樹脂製として、フロントピラー部FPとルーフサイドレール部RRとにおいて、それぞれ、車両Vのボディ1(車体)側のインナパネル2における車内側に、取付固定されている。また、エアバッグカバー9は、折り畳まれて収納されるエアバッグ20の車内側Iを覆って(図5参照)、展開膨張時のエアバッグ20を車内側下方へ突出可能とするために、エアバッグ20に押されて車内側Iに開き可能に、構成されている。
【0019】
インフレーター12は、エアバッグ20に膨張用ガスG(図2,5参照)を供給するもので、略円柱状のシリンダタイプとして、先端側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させている。インフレーター12は、ガス吐出口付近を含めた先端側を、エアバッグ20の後述する接続口部25に挿入させ、接続口部25の外周側に配置されるクランプ13を用いて、エアバッグ20に対して連結されている。また、インフレーター12は、インフレーター12を保持する取付ブラケット15を、ボディ1側のインナパネル2にボルト16止めして、インナパネル2の窓W2の上方となる位置に、取り付けられている。さらに、インフレーター12は、図示しないリード線を介して、車両Vの図示しない制御装置と電気的に接続されており、制御装置が、車両Vの側面衝突や斜突、ロールオーバー等を検知した際に、制御装置からの作動信号を入力させて、作動するように構成されている。
【0020】
各取付具10は、図5,6に示すように、エアバッグ20の後述する取付片53やテンションベルト54をインナパネル2に取り付けるために使用されるものであり、実施形態の場合、合成樹脂製のクリップタイプとして、インナパネル2の取付孔2aに挿入させ、取付孔2aの周縁に係止される。
【0021】
なお、テンションベルト54は、エアバッグ20の前縁21cに取り付けられて、前端側がフロントピラー部FPのインナパネル2に取り付けられる(図1,2参照)。
【0022】
エアバッグ20は、図2に示すように、バッグ本体21と、取付片53と、テンションベルト54と、を備えて構成されている。
【0023】
バッグ本体21は、インフレーター12からの膨張用ガスGを内部に流入させて、折り畳み状態から展開して、窓W(W1,W2)や、センターピラー部CP及びリヤピラー部RPのピラーガーニッシュ6,7の車内側Iを覆うように構成されるもので、外形形状を、膨張完了時に、窓W1からセンターピラー部CP,窓W2を経て、リヤピラー部RPの前側にかけての車内側Iを覆い可能に、長手方向を前後方向に略沿わせた略長方形板状とされている(図1の二点鎖線参照)。実施形態の場合、バッグ本体21は、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した袋織りによって製造される。
【0024】
また、バッグ本体21は、図2,6に示すように、膨張完了時に車内側Iに位置する車内側壁部23aと車外側Oに位置する車外側壁部23bとを離隔させるように内部に膨張用ガスGを流入させて膨張するガス流入部23と、車内側壁部23aと車外側壁部23bとを結合させるように形成されて、膨張用ガスを流入させない非流入部40と、を有している。
【0025】
ガス流入部23は、上縁側に配設されて、インフレーター12と接続される円筒状の接続口部25と、接続口部25から膨張用ガスGを流入させて膨張し、窓W(W1,W2)の車内側を覆う窓遮蔽膨張部27と、を備えて構成されている。実施形態の場合、接続口部25は、バッグ本体21の前後方向の中間付近に配設されて、上縁21a側から斜め後方に延びるように配設されている。
【0026】
窓遮蔽膨張部27は、前部27aが、前席の乗員を保護可能に、窓W1の車内側Iを覆い、後部27bが、後席の乗員を保護可能に、窓W2の車内側Iを覆うように、膨張する。
【0027】
さらに、窓遮蔽膨張部27は、窓W1,W2の車内側Iに配置される遮蔽本体部30と、遮蔽本体部30から下方に延びて、窓W1,W2の下枠部位としてのドアトリムDTの上部Daにおける車内側I(車内側面Di)を覆い可能な下枠側膨張部35と、を備えている。なお、窓遮蔽膨張部27は、遮蔽本体部30の上部側の領域に、接続口部25から流入する膨張用ガスGを遮蔽本体部30の前後に流すガス導通部28、を配設させている。
【0028】
遮蔽本体部30は、窓W1の車内側Iを覆い可能な前遮蔽本体部31と、窓W2の車内側を覆い可能な後遮蔽本体部33と、を備えている。前遮蔽本体部31は、下枠側膨張部35の前側部36を下方に連結させており、後遮蔽本体部33は、下枠側膨張部35の後側部37を下方に連結させている。
【0029】
実施形態のエアバッグ20の窓遮蔽膨張部27は、膨張完了時、窓W1,W2の下縁Wd側におけるドアトリムDTの上縁、すなわち、ベルトラインBLの下方に、遮蔽本体部30の下縁30b側と、下枠側膨張部35と、を配置させている。
【0030】
非流入部40は、ガス流入部23の外周縁を構成する周縁部41と、窓遮蔽膨張部27の領域内に配設される閉じ部45,46,47,48,49,50と、を備えて構成されている。
【0031】
閉じ部45は、前遮蔽本体部31内に周縁部41の上縁41aから下方に延びるように配設され、閉じ部46は、閉じ部45の下方で、周縁部41の下縁41bから上方に延びるように配設されている。閉じ部47,49は、閉じ部46の後方で、前後に並設されるように配置されて、下縁41bから上方に延びるように配設されている。閉じ部48は、閉じ部46,47の間の上方で、周縁部41から離れて配設されている。閉じ部50は、略円形状として、閉じ部49の後方で、下縁41bから離れて、配設されている。閉じ部51は、周縁部41の後縁41dから、接続口部25の下方付近まで、前方に延びるように、配設されている。
【0032】
そして、実施形態の場合、閉じ部46には、逆U字状のスリット42が形成されて、連結材57を形成する舌片43が配設されている。舌片43からなる連結材57は、舌片43の先端43aが上側連結部57aとして、前遮蔽本体部31の車内側Iとなる車内側部位31a側の閉じ部45の下端45aに対して、連結されている(図3のC,図4のB参照)。連結は、破断可能な縫合糸58を利用した縫合により、行われている。また、連結材57の下側連結部57bは、舌片43の元部43b自体からなり、周縁部41の下縁41b側と一体的に形成されるように、配設されている。
【0033】
舌片43からなる連結材57は、エアバッグ20の展開膨張時の後述する内ロール折部62の仮保持手段56を構成するものであり、この仮保持手段56は、内ロール折部62の折りの解消を阻害せずに、後述する外ロール折部64の折り解消時に、下枠部位としてのドアトリムDTの上端面Dtの車内側Iに、内ロール折部62を配置させるものである。そして、仮保持手段56は、実施形態では連結材57から構成されており、この連結材57は、内ロール折部62の折りの解消時には、内ロール折部62と車内側部位31a側との連結を解除可能として配設されている。実施形態の場合、縫合糸58の破断により、内ロール折部62と車内側部位31a側との連結を解除する構成としている。さらに、連結材57の長さ寸法Lは、外ロール折部64の折り解消時において、内ロール折部62を、ドアトリムDTの上端面Dtの車内側Iに、引っ張ることができる寸法としている(図6のA,B参照)。
【0034】
取付片53は、エアバッグ20の上縁20a(バッグ本体21の上縁21a)側に、縫合により結合されて、前後方向に沿った6箇所に配設されている。各取付片53は、先端側に、取付具10を貫通させる取付孔53aを備えている。
【0035】
テンションベルト54は、バッグ本体21の前縁21cに取り付けられ、先端(前端)に取付具10を貫通させる取付孔54aを備えている。
【0036】
そして、エアバッグ20は、車内側壁部23aと車外側壁部23bとを重ねて平らに展開した状態のバッグ本体21の下縁21bを上縁21aに接近させるように折り畳んだ折畳完了体60として、窓Wの上縁Wu側に収納される。
【0037】
折畳完了体60の折畳工程は、まず、図3のA,B、及び、図4のA,Bに示すように、平らにしたエアバッグ20の上縁20a側(バッグ本体21の上縁21a側)のガス導通部28に、蛇腹折りした蛇腹折り部66を形成する。ついで、図3のB,C、及び、図4のBに示すように、下縁20b(21b)側を上縁20a側に接近させるように、車内側Iに向けてロール折りする内ロール折部62を形成する。内ロール折部62は、下枠側膨張部35の部位(詳しくは、下枠側膨張部35と遮蔽本体部30の下縁30b)から構成されており、そして、前側部36では、舌片43からなる連結材57を、引き出して、先端43aを、前遮蔽本体部31の車内側部位31a側の閉じ部45の下端45aに、縫合糸58を使用する縫合により、連結させておく。
【0038】
ついで、図3のC,D、及び、図4のB,Cに示すように、内ロール折部62を、中心64a側に配置させつつ、エアバッグ20の上縁20a側に接近させるように、車外側Oに向けてロール折りする外ロール折部64を形成すれば、外ロール折部64の中心64a側に内ロール折部62を配設させた折畳形状61の折畳完了体60、を形成することができる。折畳完了体60を形成したならば、折り崩れを防止するように、破断可能なラッピング材68で、折畳完了体60を包んでおく。
【0039】
そして、取付具10を各取付片53やテンションベルト54に取り付け、取付ブラケット15を組み付けたインフレーター12を、接続口部25に挿入し、クランプ13を利用して、接続口部25に接続させれば、エアバッグ組付体70を形成することができ、その後、各取付具10を、対応するインナパネル2の部位の取付孔2aに挿入させて取り付け、また、インフレーター12を保持する取付ブラケット15を所定のインナパネル2の部位にボルト16止めし、さらに、インフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を、インフレーター12に結線する。そして、フロントピラーガーニッシュ4やルーフヘッドライニング5をボディ1側のインナパネル2に取り付け、さらにまた、ピラーガーニッシュ6,7をボディ1側のインナパネル2に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0040】
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後において、車両Vの側面衝突時、斜突時、もしくは、ロールオーバー時に、制御装置からの作動信号を受けてインフレーター12が作動されれば、インフレーター12から吐出される膨張用ガスG(図2参照)が、バッグ本体21内に流入して、膨張するバッグ本体21が、ラッピング材68を破断させ、さらに、フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5との下縁から構成されるエアバッグカバー9を押し開いて、下方へ突出しつつ、図1の二点鎖線や図5,6に示すように、窓W1,W2、センターピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの車内側Iを覆うように、大きく膨張することとなる。
【0041】
その際、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、窓遮蔽膨張部27が、ロール折りの中心64a側の内ロール折部62の外周側に、外ロール折部64を配設させた折畳形状61としており、この外ロール折部64の折りの解消時には、図5のA,B、図6のA,Bに示すように、窓W1に沿って展開膨張し、そして、外ロール折部64が折りを解消した後には、内ロール折部62の折りを解消させて、窓遮蔽膨張部27が、下縁20bまでの全域を展開させ、そして、膨張を完了させることとなる。その際、展開膨張当初では、図5のA,B、図6のAに示すように、外ロール折部64が折りを解消することから、車外側Oに向く展開となって、窓W1に沿って展開膨張し、その後、内ロール折部62の折りの解消では、車内側Iに向く展開となる。すなわち、エアバッグ20の展開膨張当初に、車外側Oに向いて展開しても、最終的に、内ロール折部62の折りの解消に伴なって、エアバッグ20の下縁20b側が車内側Iに向くことから、エアバッグ20の全体が、車内側Iで展開膨張を完了させることができる。なお、図示はしていないが、窓W2の部位でも、同様な挙動で、エアバッグ20が車内側Iで展開膨張を完了させることができる。
【0042】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、展開膨張時のエアバッグ20を、安定して、車内側Iで展開膨張させることができる。
【0043】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、膨張完了時のエアバッグ20の窓遮蔽膨張部27が、窓W1,W2の車内側Iに配置される遮蔽本体部30と、遮蔽本体部30から下方に延びて、窓W1,W2の下枠部位としてのドアトリムDTの車内側Iを覆い可能な下枠側膨張部35と、を備えている。そして、エアバッグ20の内ロール折部62が、下枠側膨張部35を配設させて、展開膨張時に、ドアトリムDTの上部Da側の車内側面Diで、折りを解消する構成としている。
【0044】
そのため、実施形態では、エアバッグ20の展開膨張時、外ロール折部64の折りの解消により、窓遮蔽膨張部27の遮蔽本体部30側が、車外側Oを向きつつ、展開し、そして、内ロール折部62が折りを解消しようとする。その際、例えば、窓W1のドアトリムDTが、図6のAに示すように、車内側Iに押圧されて、エアバッグ20の下縁20b側における下枠側膨張部35の前側部36がそのドアトリムDTに乗り上げようとしても、そのエアバッグ20の下縁20b側は、図6のBに示すように、内ロール折部62であって、その折りの解消時、ドアトリムDT自体に案内されるように、車内側Iに向いて折りを解消する。その結果、展開膨張時のエアバッグ20が、安定して、車内側Iで展開膨張を完了させることができる。
【0045】
なお、窓W2を覆う窓遮蔽膨張部27の後部27bに関しては、図示していないが、仮に、窓W2のドアトリムDTが、車内側に移動しても、窓遮蔽膨張部27の後部27bがセンターピラー部CPの車内側Iに案内されて、下枠側膨張部35の後側部37がドアトリムDTの車内側Iで展開膨張を完了させることができる。
【0046】
さらに、実施形態では、エアバッグ20が、展開膨張時の内ロール折部62を、折りの解消を阻害せずに、外ロール折部64の折り解消時に下枠部位としてのドアトリムDTの上端Datの車内側I(車内側面Di)に、配置させる仮保持手段56、を備えて構成されている。
【0047】
そのため、実施形態では、折りの解消前の内ロール折部62を、仮保持手段56により、安定して、窓W1のドアトリムDTの上端Datの車内側面Diに配設させることができることから、図6のA,Bに示すように、その後の内ロール折部62の折りの解消時、安定して、窓W1のドアトリムDTの車内側Iで、下枠側膨張部35の前側部36を展開膨張させることができる。
【0048】
そして、実施形態では、仮保持手段56として、連結材57を使用している。この連結材57は、内ロール折部62の折りの解消時に連結解除可能として、外ロール折部64の折りの解消時における内ロール折部62を、外ロール折部64の折りの解消時における遮蔽本体部30の前遮蔽本体部31の車内側壁部23a側に引き可能に、内ロール折部62に連結される下側連結部57bと、下側連結部57bより上方の遮蔽本体部30の前遮蔽本体部31における車内側部位31a側に連結される上側連結部57aと、を有して構成されている。
【0049】
そのため、実施形態では、内ロール折部62が折りを解消しようとする際、図6のA,Bに示すように、連結材57が、遮蔽本体部30の車内側部位31a側に上側連結部57aを連結させた状態で、下側連結部57bを連結させた内ロール折部62を、上側連結部57aを回転中心として回転させるように、車内側Iに引っ張ることができる。そのため、内ロール折部62の折りの解消直前には、内ロール折部62が、安定して、窓W1のドアトリムDTの上部Da側における車内側面Diに、配置される。そしてその後の折りの解消開始時、縫合糸58を破断させて、連結材57が内ロール折部62と遮蔽本体部30の車内側部位31a側との連結状態を解消すれば、内ロール折部62の折りが解消しつつ、内ロール折部62を構成していた下枠側膨張部35の前側部36が、円滑に、窓W1のドアトリムDTの車内側Miに展開して、膨張を完了させることとなる。
【0050】
なお、実施形態では、内ロール折部62を折りの解消直前まで車内側Iに引張可能に保持しておく仮保持手段56として、縫合を利用して、内ロール折部62と遮蔽本体部30の車内側部位31a側とを連結する連結材57を例示したが、図7に示すように、接着剤(粘着剤)59を利用したテープ状の連結材57Aを使用してもよい。この連結材57Aでも、内ロール折部62が折りを解消しようとする際、連結材57が、遮蔽本体部30の車内側部位31a側に上側連結部57aを連結させた状態で、下側連結部57bを連結させた内ロール折部62を、車内側Iに引っ張ることが可能となる。
【0051】
また、実施形態の場合、仮保持手段56としての連結材57は、窓遮蔽膨張部27の前部27a側とした下枠側膨張部35の前側部36側に、配設したが、下枠側膨張部35の後側部37側にも、配設してもよい。
【0052】
また、実施形態の場合、仮保持手段56としての連結材57は、下側連結部57b側を、内ロール折部62に連結させて、上側連結部57a側を、下側連結部57bの直上の車内側部位31a側とした閉じ部45の下端45aに連結させたたが、図4のBの二点鎖線に示す連結材57Bのように、下側連結部57b側を、内ロール折部62に連結させて、上側連結部57a側を、遮蔽本体部30の車内側部位31a側とした周縁部41の前縁41cに、連結させてもよい。図例の場合には、接着剤を利用して、上下の連結部57a,57bを内ロール折部62と車内側部位31a側の前縁41cとに連結させ、そして、内ロール折部62の折り解消時の連結材57Bへの引張力の作用時、内ロール折部62の折りを解消を阻害しないように、連結部57a,57bの少なくとも一方が剥がれて、連結解除をするように構成されている。
【0053】
さらに、連結材57,57A,57Bとしては、両側の連結部57a,57bの間の部位に、内ロール折部62の折り解消開始時、内ロール折部62と車内側部位31a側との連結を解除可能に、破断するように、スリットや幅寸法を狭めた強度を低下させた破断予定部、を設けてもよい。
【0054】
さらにまた、連結材の上側連結部と下側連結部とは、非流入部40としての周縁部41の部位や閉じ部の部位に設けたり、あるいは、膨張用ガスの漏れが生じなければ、ガス流入部23の領域に、配設してもよい。
【符号の説明】
【0055】
12…インフレーター、20…エアバッグ、20a…上縁、20b…下縁、27…窓遮蔽膨張部、30…遮蔽本体部、31…前遮蔽本体部、31a…車内側部位、35…下枠側膨張部、36…前側部、56…仮保持手段、57,57A,57B…連結材、57a…上側連結部、57b…下側連結部、58…縫合糸、59…接着剤、60…折畳完了体、61…(窓遮蔽膨張部の)折畳形状、62…内ロール折部、64…外ロール折部、64a…中心、
V…車両、W(W1,W2)…窓、Wu…上縁、Wd…下縁、DT…(下枠部位)ドアトリム、Da…上部、Dat…上端、Dt…上端面、Di…車内側面、I…車内側、O…車外側、G…膨張用ガス、M…頭部保護エアバッグ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7