(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】ハンドル
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20250128BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
B62D1/06
H01H36/00 J
(21)【出願番号】P 2022056710
(22)【出願日】2022-03-30
【審査請求日】2024-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥原 正晃
(72)【発明者】
【氏名】梅村 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】寺田 和宏
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-178260(JP,A)
【文献】特開2020-061298(JP,A)
【文献】特開2002-160220(JP,A)
【文献】特開平03-266614(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0017136(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00 - 1/28
B29C 39/00 - 39/24
B29C 39/38 - 39/44
B29C 43/00 - 43/34
B29C 43/44 - 43/48
B29C 43/52 - 43/58
H01H 36/00 - 36/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵時の把持を検知可能に、芯金の周囲に配設された軟質合成樹脂製の被覆層の表面側に、導電性材料を含有させた塗膜からなるセンサ層、が配設され、
該センサ層が、把持を検知するための把持検知回路に導通するリード線の端子を接続させるハンドルであって、
前記被覆層が型成形により形成される構成とするとともに、前記センサ層が、前記被覆層の成形型の型面に、モールドコート剤として塗布され、前記被覆層の成形時に前記被覆層の表面に配設されるモールドコート層として、配設される構成とし、さらに、
前記被覆層における前記端子の取付部位に、前記被覆層の成形時にインサート成形されて、導電性を有したナットが、配設されるとともに、
前記ナットが、前記芯金と非導通状態とし、かつ、前記ナットの端子側端面におけるねじ孔の周縁に、前記被覆層を配設させずに、前記被覆層の表面側に配設され、
前記端子が、前記ナットに締結される導電性を有した取付ボルトを挿通させる取付孔を備えて、前記取付ボルトを、前記取付孔を経て、前記ナットの前記ねじ孔に螺合させることにより、前記取付部位に取り付けられ、
前記センサ層が、前記ナットの表面を被覆して配設されていることを特徴とするハンドル。
【請求項2】
前記ナットの表面を被覆する前記センサ層が、前記ナットの前記端子側端面を除く前記ナットの表面を、被覆していることを特徴とする請求項1に記載のハンドル。
【請求項3】
前記ナットの表面を被覆する前記センサ層が、前記ナットの前記端子側端面を、被覆していることを特徴とする請求項1に記載のハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が操舵時に把持する部位に、把持を検出可能なセンサ層が配設されて構成されるハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハンドルでは、操舵時に把持する把持部に、静電容量の増加により、把持を検知可能なシート状の導電性部材からなるセンサ層、が配設されていた(例えば、特許文献1参照)。センサ層は、ハンドルの把持部の表面側に配設されて、把持を検知する把持検知回路から延びるリード線の端子を、リベット止めしていた。センサ層は、ハンドルの把持部の芯金周囲の被覆層の表面側に、貼着等して配設されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、把持を検知するセンサ層が、芯金の周囲の被覆層の表面に、薄い塗膜のように配設されている場合には、センサ層の表面側に端子を配置させても、センサ層の裏面側に、貫通させたリベットの先端側を拡径させて、端子をセンサ層にリベット止めするようなスペースがなく、塗膜状のセンサ層と端子とを円滑に接続できない。この場合、センサ層の表面側に端子を載せた状態で、被覆層や芯金を貫通するように、リベットやねじ等の締結手段を貫通させて、締結させることが考えられる。しかしながら、この場合でも、センサ層が、被覆層の表面側に配設されており、締結時、リベットやねじの頭部が、センサ層を被覆層側に押し付ければ、端子の接触するセンサ層の部位が、センサ層の裏面側の被覆層の弾性変形により、破断等の亀裂を招く虞れが生じ、安定して、センサ層に端子を接続できず、センサ層と端子との安定した導通状態を確保し難い。特に、芯金を被覆する被覆層は、通常、発泡ウレタン等の軟質樹脂から形成されており、被覆層の弾性変形が大きいことから、端子の接触するセンサ層の部位が、被覆層の弾性変形により、一層、破断等することとなって、安定してセンサ層に端子を接続できない。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、把持検知用の塗膜状のセンサ層と端子とを安定して接続できるハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るハンドルでは、操舵時の把持を検知可能に、芯金の周囲に配設された軟質合成樹脂製の被覆層の表面側に、導電性材料を含有させた塗膜からなるセンサ層、が配設され、
該センサ層が、把持を検知するための把持検知回路に導通するリード線の端子を接続させるハンドルであって、
前記被覆層が型成形により形成される構成とするとともに、前記センサ層が、前記被覆層の成形型の型面に、モールドコート剤として塗布され、前記被覆層の成形時に前記被覆層の表面に配設されるモールドコート層として、配設される構成とし、さらに、
前記被覆層における前記端子の取付部位に、前記被覆層の成形時にインサート成形されて、導電性を有したナット(インサートナット)が、配設されるとともに、
前記ナットが、前記芯金と非導通状態とし、かつ、前記ナットの端子側端面におけるねじ孔の周縁に、前記被覆層を配設させずに、前記被覆層の表面側に配設され、
前記端子が、前記ナットに締結される導電性を有した取付ボルトを挿通させる取付孔を備えて、前記取付ボルトを、前記取付孔を経て、前記ナットの前記ねじ孔に螺合させることにより、前記取付部位に取り付けられ、
前記センサ層が、前記ナットの表面を被覆して配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るハンドルでは、取付ボルトを、端子の取付孔を挿通させて、ナットのねじ孔に螺合させれば、端子を、被覆層におけるナットを埋設した取付部位に、取り付けることができる。そして、取付後の端子は、ナットの表面を被覆したセンサ層に対して、導電性を有したナットと取付ボルトとを介在させて、若しくは、直接的な接触により、導通することから、センサ層の配設されている部位の把持検知が可能となる。また、取付ボルトの締結時には、軟質の被覆層自体は、ナットの端子側端面におけるねじ孔の周縁に、介在されていないことから、端子側に導通されるセンサ層の部位は、被覆層の変形による破断等が生じず、安定して、端子との導通状態を確保できる。
【0008】
したがって、本発明に係るハンドルは、把持検知用の塗膜状のセンサ層と端子とを安定して接続することができる。
【0009】
そして、本発明に係るハンドルでは、前記ナットの表面を被覆する前記センサ層が、前記端子側に配設される前記ナットの端子側端面を除く前記ナットの外表面を、被覆する構成であれば、取付ボルトにより端子を取付部位に取り付けた後では、ナットの表面、すなわち、ナットの外周面と、端子側端面と反対側の底側端面と、を被覆したセンサ層に対して、導電性を有したナットと取付ボルトとを介在させて、端子が、導通することとなる。
【0010】
また、本発明に係るハンドルでは、前記ナットの表面を被覆する前記センサ層が、前記端子側に配設される前記ナットの端子側端面を、被覆する構成では、取付ボルトにより端子を取付部位に取り付ければ、ナットの表面、すなわち、ナットの端子側端面、を被覆したセンサ層に対し、直接的な接触により、端子が、導通することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態のハンドルを示す概略平面図である。
【
図2】実施形態のハンドルにおける把持部位の概略断面図であり、
図1のII-II部位に対応する。
【
図3】実施形態のハンドルの製造工程を説明する図である。
【
図4】実施形態のハンドルの製造工程を説明する図であり、
図3の後の状態を示す。
【
図5】実施形態のハンドルにおける端子の配設部位の概略断面図であり、
図1のV-V部位に対応する。
【
図6】実施形態のハンドルにおける端子の配設部位の概略拡大断面図である。
【
図7】実施形態のナットを被覆層に埋設させるインサート成形を説明する図である。
【
図8】実施形態のナットを被覆層に埋設させるインサート成形を説明する図であり、
図7の後の状態を示す。
【
図9】実施形態の変形例のハンドルにおける端子の配設部位の概略拡大断面図である。
【
図10】
図9に示す変形例のハンドルにおけるナットを被覆層に埋設させるインサート成形を説明する図である。
【
図11】
図9に示す変形例のハンドルにおけるナットを被覆層に埋設させるインサート成形を説明する図であり、
図10の後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のハンドルWは、
図1,2に示すように、図示しない車両の操舵時に把持する略円環状の把持部Rと、把持部Rの中央のボス部Bと、把持部Rとボス部Bとを連結するスポーク部S(L,R,B)と、を備えて構成されている。スポーク部Sは、ボス部Bから左右両側に延びるスポーク部SL,SRと、ボス部Bから後側に延びるスポーク部SBと、を備えている。また、ハンドルWは、ボス部Bの上部側に配設される二点鎖線で示したエアバッグ装置70と、ハンドル本体1と、ボス部Bの下部側を覆うロアカバー20と、を備えて構成されている。
【0013】
なお、エアバッグ装置70とロアカバー20とは、上方から見て、外形形状を略同等として、ハンドル本体1を間にして、上方に、エアバッグ装置70が、配設され、下方に、ロアカバー20が、配設される。エアバッグ装置70は、図示しない複数の取付脚を、対応するハンドル本体1の係止孔9に係止させて、ハンドル本体1に取り付けられて配設されている。ロアカバー20は、ポリプロピレン等の合成樹脂製として、図示しないねじにより、ハンドル本体1の裏面側に取り付けられている。
【0014】
ハンドル本体1は、把持部R、ボス部B、及び、スポーク部Sを連結するアルミニウム合金等の金属材からなる芯金3、を備えて構成されている。芯金3は、把持部Rに配設される把持芯金部4と、ボス部Bに配設されるボス芯金部5と、把持芯金部4とボス芯金部5とを連結するように、スポーク部S(L,R,B)に配設されるスポーク芯金部6(L,R),7と、を備えて構成されている。ボス芯金部5は、車両のステアリングシャフトと結合される鋼製のボス5aを配設させている。また、スポーク芯金部6は、左右のスポーク部SL,SRに配設されるスポーク芯金部6L,6Rと、後部側のスポーク部SBに配設されて、ボス芯金部5側で左右に分岐し、そして、把持芯金部4側で結合されるような2本のスポーク芯金部7,7と、から構成されている。
【0015】
なお、ボス部Bには、エアバッグ装置70に覆われたハンドル本体1の部位に、把持検知回路22が配設されている。把持検知回路22は、後述するセンサ層13から延びるリード線23が結線されており、運転者の手が把持部Rを把持するように、把持部Rのセンサ層13に接近した際に、静電容量が上昇することから、その上昇を検出して、運転者の把持を検知する。
【0016】
そして、把持部Rは、
図2に示すように、芯金3の把持芯金部4と、把持芯金部4の周囲を覆うように、型成形により形成される発泡ウレタンからなる軟質合成樹脂製の被覆層10と、被覆層10の表面に配設されるセンサ層13と、センサ層13の表面側に配設される保護層18と、から構成されている。保護層18は、左右のスポーク部SL,SRにおけるエアバッグ装置70で覆われる部位において、把持芯金部4から離れた部位では、センサ層13を覆っておらず、センサ層13を露出させている(
図1,5参照)。
【0017】
センサ層13は、導電性材料を含有したウレタン系塗料(導電性フィラーとして、導電性カーボンや金属酸化物等の粉末、を混ぜ込んだウレタン系塗料)からなるモールドコート剤63から形成され(
図3参照)、型成形時の被覆層10の型面51a,52aに塗布されて、被覆層10の成形時に、被覆層10の表面10a側に、配設されるような塗膜として、構成されている。
【0018】
なお、実施形態の場合、センサ層13は、導電性カーボンを含有させたウレタン系塗料から形成されている。
【0019】
保護層18は、実施形態の場合、型成形により配設される発泡ウレタンからなる表皮層として、配設されている。
【0020】
ちなみに、実施形態の場合、発泡ウレタンは、センサ層13の裏面側における把持芯金部4側の被覆層10としてのウレタン層と、センサ層13の表面側における保護層18としてのウレタン層と、を備えて構成されている。
【0021】
なお、実施形態の場合、センサ層13が、導電性カーボンを含有させたウレタン系塗料からなって、被覆層10の表面10aを暗色の黒色で覆っており、保護層18は、黒色でなく、意匠性を高めるために、明色のベージュ系の顔料を含有させた発泡ウレタンが使用されて、成形されている。
【0022】
実施形態では、センサ層13の厚さ寸法St1は、導電性、耐久性、及び、感触、を考慮して、5~50μm程度、好ましくは、10~30μm程度の範囲内の20μmとし、保護層18のウレタン層の厚さ寸法Ut1は、耐久性、感触、及び、センサ層13の感度、を考慮して、1~3mm程度の範囲内の2mmとしている。
【0023】
リード線23のセンサ層13への接続は、
図5,6に示すように、リード線23の先端に結合されている端子30を、被覆層10の取付部位11に配設させたナット46に対して、取付ボルト40を締結することにより、行っている。端子30は、導電性を有した金属製の円環状の環状部31を備えて、中央に、取付ボルト40の雄ねじ43を螺刻させたねじ棒部42を挿通させる取付孔32、を備えている。環状部31の外周縁には、リード線23を接続させた連結座33が配設されている。
【0024】
なお、ハンドルWにおける端子30を取り付ける被覆層10の取付部位11は、運転者が把持するエリアから離れて、エアバッグ装置70、あるいは、他のスイッチ類等に覆われる部位として、運転者から目視できない位置に、配設されている。実施形態の場合、端子30の取付部位11は、エアバッグ装置70に覆われる部位としたスポーク芯金部6Rを被覆した被覆層10の部位に、配設されている(
図1,5参照)。
【0025】
取付ボルト40は、導電性を有した鋼等から形成されて、十字穴付の略円板状の頭部41と、頭部41から延びる雄ねじ43を螺刻させたねじ棒部42と、を備えて構成されている。
【0026】
取付ボルト40が螺合されるナット46は、被覆層10の成形時にインサートとして、成形型50に配置されて、成形された被覆層10に埋設されるように配設されるインサートナット、としている。
【0027】
ナット46は、導電性を有した鋼等から形成された略円筒状として、取付ボルト40のねじ棒部42を締結するねじ孔46aを備え、表面47における端子側端面47aを、被覆層10の表面10a側から露出させている。また、ナット46の表面47における端子側端面47aの逆側の底側端面47bと、ねじ孔46aの周方向の外周面47cと、には、センサ層13が被覆されている。また、外周面47cには、取付ボルト40のナット46への締結時、被覆層10内で回転等の位置ずれを防止すための複数の突起48が突設されている。
【0028】
取付ボルト40のナット46への締結時における取付ボルト40の緩み止めのために、波形ワッシャ35と平ワッシャ36とが、ナット46の端子側端面47aと端子30の環状部31との間に、配設される。これらの波形ワッシャ35と平ワッシャ36とは、導電性を有した鋼等から形成されている。実施形態では、取付ボルト40の締結時、頭部41が端子30の環状部31を押圧し、波形ワッシャ35と平ワッシャ36とを介在させて、環状部31をナット46の端子側端面47aに圧接させている。
【0029】
そして、実施形態の場合、端子30とセンサ層13との導通は、取付ボルト40のナット46への締結時、センサ層13が、ナット46の表面47の底側端面47bと外周面47cとを被覆するナット被覆部15の側面部15aと底面部15bとを有して、ナット46とセンサ層13とが導通状態となっており、また、端子30が、取付ボルト40の頭部41と接触して、取付ボルト40と導通状態となり、そして、取付ボルト40が、ねじ棒部43をねじ孔46aに螺合させて、ナット46と導通状態となることから、端子30は、取付ボルト40とナット46とを介在させて、ナット46の表面47を被覆しているセンサ層13と導通状態となる。
【0030】
実施形態のハンドル本体1の製造は、ナットセット工程、モールドコート剤塗布工程、被覆層10としての第1ウレタン層成形工程、及び、保護層18としての第2ウレタン層成形工程、を経て、製造される。
【0031】
まず、ナットセット工程では、
図7のA,Bに示すように、被覆層10の取付部位11において、第1ウレタン層を成形する成形型50(
図3参照)の割型51,52における一方の割型52に配設されているセットピン53を、ねじ孔46aに嵌めて、ナット46を、型開き状態の成形型50にセットする。
【0032】
ついで、モールドコート剤塗布工程では、
図3のA,Bに示すように、被覆層10としての第1ウレタン層を成形する成形型50の割型51,52の型面51a,52aに、センサ層13を形成する導電性材料を含有したウレタン系塗料を、モールドコート剤63として、塗布装置としてのスプレーガン61により、塗布する。取付部位11の成形部位においても、
図7のCに示すように、モールドコート剤63を、型面52aとともに、ナット46の表面47における底側端面47bと外周面47cとに、塗布しておく。なお、ナット46をセットする前やモールドコート剤63を塗布する前には、型面51a,52aに離型剤を塗布しておく。
【0033】
その後、被覆層10としての第1ウレタン層成形工程として、
図3のC,Dや、
図8のAに示すように、割型51,52からなる成形型50を型締めし、キャビティ50a内に、第1ウレタン層としての被覆層10を成形するウレタン材料を注入して硬化させ、被覆層10を成形した中間成形品55を製造する。ついで、成形型50を反転させつつ型開きして、中間成形品55を取り出す。なお、被覆層10の取付部位11では、
図8のB,Cに示すように、中間成形品55の取出時、セットピン53を、ナット46のねじ孔46aから引き抜くこととなる。
【0034】
ついで、保護層18としての第2ウレタン層成形工程として、
図4のA,Bに示すように、第2ウレタン層を成形する割型58,59からなる成形型57を型開きさせて、中間成形品55をセットし、成形型57を型締めし、
図4のB,Cに示すように、キャビティ57a内に、保護層18としての第2ウレタン層を成形するウレタン材料を注入して硬化させ、第2ウレタン層18を成形する。なお、成形前には、割型58,59の型面58a,59aに離型剤を塗布しておく。そして、保護層18としての第2ウレタン層を成形した後には、型開きして、取り出せば、把持部Rに保護層18を備えた成形品、すなわち、ハンドル本体1を得ることができる。
【0035】
このように製造したハンドル本体1では、リード線23を結線させた把持検知回路22を、ボス部Bに配設するとともに、ボス部Bの下部側にロアカバー20を取り付けつつ、ボス部Bのボス5aを、車両のステアリングシャフトに締結し、ボス部Bの上部側に、エアバッグ装置70を取り付ければ、ハンドルWを組み立てることができ、かつ、ハンドルWを車両に搭載することができる。
【0036】
また、被覆層10の取付部位11では、ナット46の端子側端面47aに、波形ワッシャ35と平ワッシャ36とを載せるとともに、把持検知回路22から延びるリード線23を結線させた端子30を、載せ、そして、取付ボルト40のねじ棒部42を、端子30の取付孔32や波形ワッシャ35,平ワッシャ36を貫通させて、ナット46のねじ孔46aに締結する。この締結により、センサ層13と運転者の把持を検知可能な把持検知回路22とが、リード線23、端子30、取付ボルト40、及び、ナット46、を利用して、導通状態を確保されることとなる。
【0037】
車両に搭載されたハンドルWでは、運転者の手が、把持部Rを把持するように、把持部Rのセンサ層13に接近すれば、静電容量が上昇したことを所定の把持検知回路22が検知することから、運転者の把持を検知することができる。
【0038】
そして、実施形態のハンドルWでは、取付ボルト40を、端子30の取付孔32を挿通させて、ナット46のねじ孔46aに螺合させれば、端子30を、被覆層10におけるナット46を埋設した取付部位11に、取り付けることができる。そして、取付後の端子30は、ナット46の表面47を被覆したセンサ層13に対して、導電性を有したナット46と取付ボルト40とを介在させて、導通することから、センサ層13の配設されている部位の把持検知が可能となる。また、取付ボルト40の締結時には、軟質の被覆層10自体は、ナット46の端子側端面47aにおけるねじ孔46aの周縁に、介在されていないことから(
図6参照)、端子30側に導通されるセンサ層13の部位(ナット被覆部)15は、被覆層10の変形による破断等が生じず、安定して、端子30との導通状態を確保できる。
【0039】
したがって、実施形態のハンドルWは、把持検知用の塗膜状のセンサ層13と端子30とを安定して接続することができる。
【0040】
そして、実施形態のハンドルWでは、ナット46の表面47を被覆するセンサ層13が、端子30側に配設されるナット46の端子側端面47aを除くナット46の外表面である底側端面47bと外周面47cとを、被覆する構成である。すなわち、センサ層13におけるナット46を被覆するナット被覆部15が、ナット46の外周面47cを被覆する側面部15aと、底側端面47bを被覆する底面部15bと、を備えて、取付ボルト40により端子30を取付部位11のナット46に取り付けた後では、ナット46の表面47、すなわち、ナット46の外周面47cと、端子側端面47aと反対側の底側端面47bと、を被覆したセンサ層13に対して、導電性を有したナット46と取付ボルト40とを介在させて、端子30が、導通することとなる。
【0041】
換言すれば、被覆層10を被覆したセンサ層13の一般部14が、センサ層13のナット被覆部15における側面部15aと底面部15bとに接続され、そして、ナット46自体と取付ボルト40のねじ棒部42との接触と、取付ボルト40の頭部41と端子30との接触により、端子30と導通状態となる。
【0042】
そして、実施形態では、取付ボルト40の締結力を高めても、端子30が、ワッシャ35,36を介在させて、ナット46の端子側端面47aに圧接されるだけであり、センサ層13自体を押圧しないことから、安定して、センサ層13との導通状態を確保することができる。
【0043】
なお、ナット46の表面47をセンサ層13で被覆する際、
図9に示す把持部RAを有したハンドルWAのように、ナット46の端子側端面47aだけを、センサ層13の一般部14から延びるナット被覆部15Aにより、覆う構成としてもよい。
【0044】
この把持部RAでは、
図10のA,Bに示すように、成形型50Aのセットピン53にナット46をセットする前に、センサ層13を形成するモールドコート剤63Aを、型開きした割型51,52(
図3参照)の型面51a,52aに、塗布し、そして、セットピン53にナット46をセットする。その後は、
図10のC、
図11のA,Bに示すように、実施形態と同様に、被覆層10を成形して中間成形品55Aを製造し、さらに、図示しない保護層18を成形すれば、把持部RAを有したハンドルWAを製造することができる。
【0045】
このハンドルWAでは、ナット46の表面47を被覆するセンサ層13が、端子30側に配設されるナット46の端子側端面47aを、被覆する端面部15cを有する構成としている。そのため、取付ボルト40により端子30を取付部位11に取り付ければ、すなわち、被覆層10の取付部位11の部位におけるナット46の端子側端面47aを覆うナット被覆部15Aの端面部15cに、波形ワッシャ35と平ワッシャ36とを載せるとともに、把持検知回路22から延びるリード線23を結線させた端子30を、載せ、そして、取付ボルト40のねじ棒部42を、端子30の取付孔32や波形ワッシャ35,平ワッシャ36を貫通させて、ナット46のねじ孔46aに締結すれば、この締結により、ナット46の表面47、すなわち、ナット46の端子側端面47a、を被覆したセンサ層13のナット被覆部15Aにおける端面部15c対し、導電性を有した波形ワッシャ35や平ワッシャ36を介在させた直接的な接触により、端子30が、導通することとなる。
【0046】
このような構成でも、軟質の被覆層10自体は、ナット46の端子側端面47aにおけるねじ孔46aの周縁に、介在されていないことから、端子30側に導通されるセンサ層13の部位(ナット被覆部15Aの端面部)15cは、被覆層10の変形による破断等が生じず、安定して、端子30との導通状態を確保できる。
【0047】
したがって、このハンドルWAでも、把持検知用の塗膜状のセンサ層13と端子30とを安定して接続することができる。
【0048】
なお、実施形態では、センサ層13を被覆する保護層18として、発泡ウレタンを例示したが、保護層18は、皮革としてもよく、その場合は、把持部に皮革を巻き付けた皮巻きハンドルが、形成されることとなる。
【0049】
また、実施形態では、取付ボルト40の締結時、導電性を有したワッシャ35,36を使用したが、十分な緩み止めを確保できれば、ワッシャ35,36は不要となる。
【符号の説明】
【0050】
1…ハンドル本体、3…芯金、4…把持芯金部、10…被覆層、10a…表面、11…取付部位、13…センサ層、15,15A…ナット被覆部、15a…側面部、15b…底面部、15c…端面部、16…モールドコート層、22…把持検知回路、23…リード線、30…端子、40…取付ボルト、46…(インサートナット)ナット、46a…ねじ孔、47…表面、47a…端子側端面、47b…底側端面、47c…外周面、50,50A…成形型、50a…キャビティ、51…割型、51a…型面、52…割型、52a…型面、53…セットピン、63,63A…モールドコート剤、
R,RA…把持部、W,WA…ハンドル。