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特許7626168分散剤、分散組成物、塗料組成物および硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】分散剤、分散組成物、塗料組成物および硬化物
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/52 20220101AFI20250128BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20250128BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20250128BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20250128BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20250128BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20250128BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20250128BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20250128BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250128BHJP
【FI】
C09K23/52
C09D17/00
C09D201/00
C09D7/20
C09D7/61
C09D7/63
C08G63/08
C08L67/04
C08K3/013
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023107719
(22)【出願日】2023-06-30
(65)【公開番号】P2025006738
(43)【公開日】2025-01-17
【審査請求日】2024-07-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】青谷 朋之
【審査官】河村 明希乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-029901(JP,A)
【文献】特開2015-052778(JP,A)
【文献】特開2007-177239(JP,A)
【文献】特開2004-067715(JP,A)
【文献】特開2020-052071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 23/00-23/56
C09D 1/00-201/10
C08G 63/08
C08L 67/04
C08K 3/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子(A)、分散剤および有機溶媒を含む分散組成物であって、
前記分散剤が、下記一般式(1)で表される構造を有する分散剤(B)を含み、
前記有機溶媒が、下記一般式(5)で表される構造を有する有機溶媒(C)を含む、分散組成物。
【化1】
〔一般式(1)中、A~Aは、下記(A)、(B)および(C)からなる群より選択される組合せであり、
(A):A~Aのうち2つの部位が、相互に同一または異なる一価の重合体部位(P)であり、その他2つの部位が、相互に同一または異なる-C(=O)OHまたは-CHC(=O)OHであり、
(B):A~Aのうち1つの部位が一価の重合体部位(P)であり、その他3つの部位が、相互に同一または異なる-C(=O)OHまたは-CHC(=O)OHであり、
(C):A~Aのうち1つの部位が一価の重合体部位(P)であり、その他2つの部位が、相互に同一または異なる-C(=O)OHまたは-CHC(=O)OHであり、その他もう1つの部位が-C(=O)-Xa-Ra(但し、Xaは、-O-、またはN(Ra)-であり、
Raは、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数2~18のアルケニル基、炭素原子数3~18のシクロアルキル基および炭素原子数6~18のアリール基からなる群から選択される基であり、
Raは、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数2~18のアルケニル基、炭素原子数3~18のシクロアルキル基および炭素原子数6~18のアリール基からなる群から選択される基である)であり、
前記一価の重合体部位(P)は、末端部位Aを有する環状エステル重合体部位であって、
末端部位Aは芳香環位を含有する、分子量300以下の一級水酸基含有モノアルコールに由来する構造であり、
は、下記般式(4)で示される四価の基である。〕
【化2】

〔一般式(4)で示される基の合計炭素原子数は4~20であって、
一般式(4)中、Rは、直接結合、-O-、または炭素原子数1~8の二価の炭化水素基であり、
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~8の炭化水素基であり、R、R、R、R、R、RおよびRは、互いに結合して環を形成してもよい。〕
一般式(5)
CHCOO(R1011
〔一般式(5)中、nは2~5の整数を示す。また、R10はオキシエチレン基を示し、R11炭素数2~4のアルキル基を示す。〕
【請求項2】
前記有機溶媒100質量%中、前記有機溶媒(C)を70~100質量%含有する、請求項1記載の分散組成物。
【請求項3】
前記環状エステル重合体部位が、カプロラクトンまたはバレロラクトンに由来する構造単位を有する、請求項1記載の分散組成物。
【請求項4】
前記分散剤(B)は、酸価が25~200mgKOH/gである、請求項1記載の分散組成物。
【請求項5】
前記分散剤(B)は、重量平均分子量が1000~50000である、請求項1記載の分散組成物。
【請求項6】
無機粒子(A)は、Feを1質量%以上含む無機粒子である、請求項1記載の分散組成物。
【請求項7】
無機粒子(A)は、一次粒子径が0.5~100μmである、請求項1記載の分散組成物。
【請求項8】
請求項1~いずれか1項に記載の分散組成物と、バインダー成分(D)を含む塗料組成物。
【請求項9】
請求項記載の塗料組成物の硬化物。
【請求項10】
下記一般式(7)で表される構造を有する無機粒子用分散剤。
【化3】
〔一般式(7)中、A~Aは、下記(A2)、(B2)および(C2)からなる群より選択される組合せであり、
(A2):A~Aのうち2つの部位が、相互に同一または異なる一価の重合体部位(P2)であり、その他2つの部位が、相互に同一または異なる-C(=O)OHまたはCHC(=O)OHであり、
(B2):A~Aのうち1つの部位が一価の重合体部位(P2)であり、その他3つの部位が、相互に同一または異なる-C(=O)OHまたはCHC(=O)OHであり、
(C2):A~Aのうち1つの部位が一価の重合体部位(P2)であり、その他2つの部位が、相互に同一または異なる-C(=O)OHまたはCHC(=O)OHであり、
その他もう1つの部位が-C(=O)-Xb-Rb(但し、Xbは、-O-、またはN(Rb)-であり、
Rbは、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数2~18のアルケニル基、炭素原子数3~18のシクロアルキル基および炭素原子数6~18のアリール基からなる群から選択される基であり、
Rbは、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数2~18のアルケニル基、炭素原子数3~18のシクロアルキル基および炭素原子数6~18のアリール基からなる群から選択される基である)であり、
前記一価の重合体部位(P2)は、末端部位A2を有する環状エステル重合体部位であって、末端部位A2は芳香環位を含有する、分子量300以下の一級水酸基含有モノアルコールに由来する構造であり、前記環状エステル重合体部位は、カプロラクトンまたはバレロラクトンに由来する構造を有する重合体であり、
は、下記般式(10)で示される四価の基である。〕
【化4】
〔一般式(10)で示される基の合計炭素原子数は4~20であって、
一般式(10)中、R13は、直接結合、-O-、または炭素原子数1~8の二価の炭化水素基であり、
14、R15、R16、R17、R18およびR19は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~8の炭化水素基であり、R13、R14、Rl15、R16、R17、R18およびR19は、互いに結合して環を形成してもよい。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤、分散組成物、塗料組成物および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
分散組成物を製造する際、高濃度で安定な無機粒子の分散組成物を得ることが難しいことは古くから良く知られている。例えば、微細な無機粒子を含む分散組成物では、無機粒子が高濃度になるにつれて高い粘度(粘稠)となり、分散機からの取り出しや輸送が困難となるばかりでなく、分散性が悪い場合は保存中にさらに粘度が増大(増粘)して、使用困難となる場合が多い。
【0003】
そこで、分散状態を良好に保つために一般的に分散剤が利用されている。無機粒子用の分散剤は、無機粒子に吸着する部位と、分散媒(多くは有機溶媒が用いられる)に親和性の高い部位との構造を持ち合わせ、この2つの部位のバランスで分散剤の性能は決まる。分散剤は、被分散物である無機粒子の種類や分散媒である有機溶媒の種類等に応じて種々のものが知られているが、有機溶媒に可溶であり、かつ酸性または塩基性の極性官能基を有する分散剤が一般に使用される。この場合、極性官能基が無機粒子の吸着部位となると考えられている。例えば、酸性の官能基としてカルボン酸を有する分散剤としては、特許文献1に記載の分散剤が知られている。また、塩基性の官能基としてアミンを有する分散剤としては、特許文献2に記載の分散剤が知られている。
【0004】
一方、分散組成物や塗料組成物を基材に塗布または印刷して用いる際、分散組成物や塗料組成物の構成成分として溶解力の高い有機溶媒を使用すると、基材や基材上に設けられた下地層等が有機溶媒により溶解または膨潤されてしまうという悪影響を及ぼす。この影響を回避する方法の1つとして、分散組成物の分散媒として、ポリエーテル構造やアルキル基が導入された特定のアセテート系有機溶媒等を用いることによって、基材等に対する溶解力を低減させて、基材や下地層に対する悪影響を抑制する方法がある。しかし、このようなアセテート系有機溶媒は、無機粒子に対する濡れ性や分散性に乏しいため、従来の分散剤では、無機粒子を高濃度に含有する分散組成物を製造することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-029901号公報
【文献】特表平08-507960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、アセテート系有機溶媒を分散媒に含み、無機粒子を高濃度で含有しても、低粘度で流動性に優れた分散組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、無機粒子(A)、分散剤および有機溶媒を含む分散組成物であって、上記分散剤が、下記一般式(1)で表される構造を有する分散剤(B)を含み、上記有機溶媒が、下記一般式(5)で表される構造を有する有機溶媒(C)を含む、分散組成物に関する。
【0008】
【化1】
【0009】
〔一般式(1)中、A1~A4は、下記(A)、(B)および(C)からなる群より選択される組合せであり、
(A):A1~A4のうち2つの部位が、相互に同一または異なる一価の重合体部位(P)であり、その他2つの部位が、相互に同一または異なる-C(=O)OHまたは-CH2C(=O)OHである。
(B):A1~A4のうち1つの部位が一価の重合体部位(P)であり、その他3つの部位が、相互に同一または異なる-C(=O)OHまたは-CH2C(=O)OHである。
(C):A1~A4のうち1つの部位が一価の重合体部位(P)であり、その他2つの部位が、相互に同一または異なる-C(=O)OHまたは-CH2C(=O)OHであり、その他もう1つの部位が-C(=O)-Xa-Ra(但し、Xaは、-O-、またはN(Ra2)-である。
Raは、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数2~18のアルケニル基、炭素原子数3~18のシクロアルキル基および炭素原子数6~18のアリール基からなる群から選択される基であり、
Ra2は、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数2~18のアルケニル基、炭素原子数3~18のシクロアルキル基および炭素原子数6~18のアリール基からなる群から選択される基である)であり、
上記一価の重合体部位(P)は、末端部位Aを有する環状エステル重合体部位であって、末端部位Aは芳香環またはアルキレンオキシ単位を含有する、分子量300以下のモノアルコールに由来する構造であり、
1は、下記一般式(2)、一般式(3)または一般式(4)で示される四価の基である。〕
【0010】
【化2】
【0011】
〔一般式(2)中、kは1または2の整数を示す。*は、結合手を表す。〕
〔一般式(3)中、R2は、直接結合、-CH2-、-O-、-C(=O)-、-C(=O)OCH2CH2OC(=O)-、-C(=O)OCH(OC(=O)CH3)CH2OC(=O)-、-SO2-、-C(CF32-、式:
【0012】
【化3】
【0013】
で表される基である。*は、結合手を表す。〕
〔一般式(4)で示される基の合計炭素原子数は4~20であって、
一般式(4)中、R3は、直接結合、-O-、または炭素原子数1~8の二価の炭化水素基であり、
4、R5、R6、R7、R8およびR9は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~8の炭化水素基であり、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、互いに結合して環を形成してもよい。〕
一般式(5)
CH3COO(R10n11
〔一般式(5)中、nは1~10の整数を示す。また、R10はオキシアルキレン基を示し、R11はアルキル基を示す。〕
【0014】
また、本発明は、上記有機溶媒100質量%中、上記有機溶媒(C)を70~100質量%含有する上記分散組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、上記一般式(5)中、R10がオキシエチレン基またはオキシ(イソ)プロピレン基である上記分散組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、上記一般式(5)中、R11が炭素数2~4の無置換のアルキル基である上記分散組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、上記末端部位Aが、芳香環単位を含有する分子量300以下のモノアルコールに由来する構造を有する上記分散組成物に関する。
【0018】
また、本発明は、X1が、一般式(3)または一般式(4)で示される四価の基である上記分散組成物に関する。
【0019】
また、本発明は、上記環状エステル重合体部位が、カプロラクトンまたはバレロラクトンに由来する構造単位を有する上記分散組成物に関する。
【0020】
また、本発明は、上記分散剤(B)は、酸価が25~200mgKOH/gである上記分散組成物に関する。
【0021】
また、本発明は、上記分散剤(B)は、重量平均分子量が1000~50000である上記分散組成物に関する。
【0022】
また、本発明は、無機粒子(A)は、Feを1質量%以上含む無機粒子である上記分散組成物に関する。
【0023】
また、本発明は、無機粒子(A)は、平均一次粒子径が0.5~100μmである上記分散組成物に関する。
【0024】
また、本発明は、請求項1~11いずれか記載の分散組成物と、バインダー成分(D)を含む塗料組成物
に関する。
【0025】
また、本発明は、請求項12記載の塗料組成物の硬化物
に関する。
【0026】
また、本発明は、下記一般式(7)で表される構造を有する無機粒子用分散剤に関する。
【0027】
【化4】
【0028】
〔一般式(7)中、A5~A8は、下記(A2)、(B2)および(C2)からなる群より選択される組合せであり、
(A2):A5~A8のうち2つの部位が、相互に同一または異なる一価の重合体部位(P2)であり、その他2つの部位が、相互に同一または異なる-C(=O)OHまたはCH2C(=O)OHである。
(B2):A5~A8のうち1つの部位が一価の重合体部位(P2)であり、その他3つの部位が、相互に同一または異なる-C(=O)OHまたはCH2C(=O)OHである。
(C2):A5~A8のうち1つの部位が一価の重合体部位(P2)であり、その他2つの部位が、相互に同一または異なる-C(=O)OHまたはCH2C(=O)OHであり、その他もう1つの部位が-C(=O)-Xb-Rb(但し、Xbは、-O-、またはN(Rb2)-である。
Rbは、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数2~18のアルケニル基、炭素原子数3~18のシクロアルキル基および炭素原子数6~18のアリール基からなる群から選択される基であり、
Rb2は、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数2~18のアルケニル基、炭素原子数3~18のシクロアルキル基および炭素原子数6~18のアリール基からなる群から選択される基である)であり、
上記一価の重合体部位(P2)は、末端部位A2を有する環状エステル重合体部位であって、末端部位A2は芳香環単位を含有する、分子量300以下のモノアルコールに由来する構造であり、上記環状エステル重合体部位は、カプロラクトンまたはバレロラクトンに由来する構造を有する重合体であり、
3は、下記一般式(8)、一般式(9)または一般式(10)で示される四価の基である。〕
【0029】
【化5】
【0030】
〔一般式(8)中、k’は1または2の整数を示す。*は、結合手を表す。〕
〔一般式(9)中、R12は、直接結合、-CH2-、-O-、-C(=O)-、-C(=O)OCH2CH2OC(=O)-、-C(=O)OCH(OC(=O)CH3)CH2OC(=O)-、-SO2-、-C(CF32-、式:
【0031】
【化6】
【0032】
で表される基である。*は、結合手を表す。〕
〔一般式(10)で示される基の合計炭素原子数は4~20であって、
一般式(10)中、R13は、直接結合、-O-、または炭素原子数1~8の二価の炭化水素基であり、
14、R15、R16、R17、R18およびR19は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~8の炭化水素基であり、R13、R14、R15、R16、R17、R18およびR19は、互いに結合して環を形成してもよい。〕
【発明の効果】
【0033】
本発明により、アセテート系有機溶媒を分散媒に用いた場合でも、無機粒子を高濃度に含有する、低粘度で流動性に優れた分散組成物を得ることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書で使用する用語を定義する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、または「(メタ)アクリルアミド」とは、特に断りがない限り、それぞれ「アクリロイルおよび/またはメタクリロイル」、「アクリルおよび/またはメタクリル」、「アクリル酸および/またはメタクリル酸」、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」、または「アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミド」を表すものとする。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。
【0035】
<分散組成物>
本発明の分散組成物(以下、「本組成物」ともいう)は、無機粒子(A)、分散剤および有機溶媒を含み、分散剤は一般式(1)で表される構造を有する分散剤(B)を含み、有機溶媒は一般式(5)で表される構造を有する有機溶媒(C)を含む。
また、本組成物は、さらにバインダー成分(D)を配合して塗料組成物として用いることができる。例えば、無機粒子(A)として熱伝導性無機粒子を選択した場合は熱伝導性塗料として、無機粒子(A)として導電性無機粒子を選択した場合は導電性塗料として、無機粒子(A)として磁性無機粒子を選択した場合は磁性塗料として、それぞれ用いることができる。
以下、本組成物を構成する各構成材料について、詳細に説明する。
【0036】
<無機粒子(A)>
まず、本発明の分散組成物に含まれる無機粒子(A)について説明する。
無機粒子(A)は、無機材料から構成された粒子であり、金属粒子、金属合金粒子、金属酸化物粒子および炭素材料粒子等が挙げられる。また、無機粒子(A)は、粒子の表面にさらに被覆層を有していてもよい。
【0037】
無機粒子(A)の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、真球状粒子や楕円状粒子等の球状粒子や、フレーク状、鱗片状、フィラメント状等の非球状粒子等が挙げられる。これらのうちでも、球状粒子が好ましい。球状粒子を用いることで、粒子の充填性が良好な硬化物を得ることが可能となる。
【0038】
無機粒子(A)の真球度は、0.5~1.2であることが好ましく、0.7~1.2であることがより好ましく、0.8~1.1であることが特に好ましい。真球度は走査型電子顕微鏡の拡大画像から算出することができる。走査型電子顕微鏡の拡大画像から任意の粒子を選択し、その粒子の投影面積(A)と周囲長(M)を測定し、この周囲長(M)をもつ真球を想定したときの半径(r)=M/2πから真球の面積(B)=π×(M/2π)2を算出する。こうして測定・算出した面積A、Bから真球度(A/B)を算出する。20個の粒子について真球度を測定し、その平均値を真球度とする。
【0039】
無機粒子(A)のアスペクト比は、特に限定されるものではないが、0.5~5であることが好ましく、0.5~3であることがより好ましく、0.7~1.5であることがさらに好ましい。アスペクト比が5以下であると、粒子の充填が容易である。また、0.5以上であると工業的に安価に入手することができる。
【0040】
無機粒子(A)の粒子表面の被覆層は、リン、ケイ素、アルミニウムおよびチタンからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素を含有する化合物を含む被覆層であることが好ましい。このような被覆層は、リン化合物の吸着処理、シリコーン化合物の吸着処理、または、無機粒子(A)の粒子表面上で有機ケイ素化合物および/またはカップリング剤を単独または相互に反応させる等の方法により、作製することができる。
【0041】
有機ケイ素化合物は、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等のビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシル基等の官能基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
【0042】
カップリング剤は、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等の各種カップリング剤が挙げられる。
【0043】
無機粒子(A)の一実施形態(第一の実施形態)として、金属粒子、金属合金粒子、および金属酸化物粒子からなる群より選択される少なくとも1種以上の無機粒子を、無機粒子(A1)として用いることが好ましい。
また、無機粒子(A)の一実施形態(第二の実施形態)として、炭素材料粒子を無機粒子(A2)として用いることが好ましい。
【0044】
以下、第一の実施形態について詳細に説明する。
第一の実施形態において、無機粒子(A1)の平均一次粒子径は、0.2~100μmであることが好ましく、0.5~100μmであることがより好ましく、0.5~50μmであることがさらに好ましく、0.5~30μmであることがさらに好ましく、0.5~10μmであることがさらに好ましく、1~10μmであることが特に好ましい。平均一次粒子径をこの範囲とすることにより、高濃度かつハンドリング性良好な分散組成物を得ることが可能となる。尚、本明細書における平均一次粒子径とは、任意の粒子50個について電子顕微鏡により測定されたメディアン径を指す。
【0045】
無機粒子(A1)の比表面積は、0.01~10m2/gであることが好ましく、0.01~5m2/gであることがより好ましく、0.05~3m2/gであることがさらに好ましく、0.1~1m2/gであることが特に好ましい。比表面積は、窒素ガス吸着法により、BET多点法で算出することができる。
【0046】
無機粒子(A1)は、Feを1質量%以上含む無機粒子であることが好ましい。無機粒子(A1)中のFeの含有率は、69~100質量%であることが好ましく、69~98質量%であることがより好ましく、80~98質量%であることがさらに好ましい。
【0047】
本組成物中の無機粒子(A1)の含有率は、60~98質量%であることが好ましく、70~98質量%であることがより好ましく、80~98質量%であることがさらに好ましく、85~98質量%であることが特に好ましい。
【0048】
また、無機粒子(A)中の無機粒子(A1)の含有率は、10~100質量%であることが好ましく、20~100質量%であることがより好ましく、50~100質量%であることがさらに好ましく、70~100質量%であることが特に好ましい。
【0049】
分散組成物中に無機粒子(A1)を高濃度に配合することで、熱伝導性や導電性、磁性等の無機粒子(A1)に由来する特性を高度に発現させることができる。
【0050】
無機粒子(A1)の構成材料としては、鉄粉やカルボニル鉄粒子のような金属粒子;鉄-ケイ素合金粒子、鉄-クロム合金粒子、鉄-マンガン合金粒子、鉄-ケイ素-アルミニウム合金粒子、鉄-ケイ素-クロム合金粒子等の金属合金粒子;酸化鉄等の金属酸化物粒子等が挙げられる。
【0051】
以下、第二の実施形態について詳細に説明する。
第二の実施形態において、無機粒子(A2)の平均一次粒子径は、0.01~0.10μmであることが好ましく、0.01~0.04μmであることがより好ましく、0.01~0.03μmであることがさらに好ましい。
【0052】
無機粒子(A2)の比表面積は、50~200m2/gであることが好ましく、80~150m2/gであることがより好ましく、80~120m2/gであることが特に好ましい。比表面積は、窒素ガス吸着法により、BET多点法で算出することができる。
【0053】
無機粒子(A2)の構成材料としては、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ等の炭素材料が挙げられる。また、無機粒子(A2)は、Fe等の遷移金属元素を粒子内に実質的に含有しないことが好ましい。
【0054】
本組成物中の無機粒子(A2)の含有率は、1~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、15~40質量%であることがさらに好ましい。
【0055】
<分散剤(B)>
次に、本発明の分散組成物に含まれる分散剤(B)について説明する。
分散剤(B)は、一般式(1)で表される分散剤であり、四価の基X1と、その4つの置換基としての基A1~A4とを有する。四価の基X1は、一般式(2)、一般式(3)または一般式(4)で表される四価の基である。
【0056】
置換基A1~A4の組合せは、
上記(A)、(B)および(C)からなる群より選択される組合せであるが、A1~A4のうち2つの部位が、相互に同一または異なる一価の重合体部位(P)であり、その他2つの部位が、-C(=O)OHまたはCH2C(=O)OHである組合せが好ましい。また、A1~A4のうち2つの部位が、相互に同一または異なる一価の重合体部位(P)であり、その他2つの部位が、-C(=O)OHである組合せがより好ましい。
【0057】
<重合体部位(P)>
重合体部位(P)は、末端部位Aを有する環状エステル重合体部位であり、末端部位Aは芳香環またはアルキレンオキシ単位含有の分子量300以下のモノアルコールに由来する構造である。末端部位Aが芳香環またはアルキレンオキシ単位を有するため、溶媒への親和性が高く、凝集を抑制できると考えられる。これにより本発明の分散組成物は、低温保管時の安定性が高く、無機粒子(A)を高濃度に分散させた際の高い経時安定性が得られる。
【0058】
重合体部位(P)の重量平均分子量は、好ましくは400~10000であり、より好ましくは600~8000であり、さらに好ましくは800~4000である。分子量が400以上である場合、溶媒親和部位による立体反発効果により無機粒子(A)の凝集を防ぐことができる。分子量が10000以下である場合に溶媒溶解性が担保され、十分な立体反発効果を保つことが出来る。上記範囲となる場合、立体反発効果による無機粒子(A)の凝集抑制効果がより良好となる。
【0059】
ここで、重合体部位(P)は環状エステル重合体部位である。これらは、分子量を上記範囲に調整することが容易であり、かつ、有機溶媒への親和性も良好となる。重合体部位(P)は、分散性への悪影響を抑制するため、水酸基、一級アミノ基、二級アミノ基およびチオール基(スルファニル基、メルカプト基ともいう)を実質的に含まないことが好ましい。
【0060】
<四価の基X1
四価の基X1は、上記一般式(2)、一般式(3)または一般式(4)で表される構造を有する。分散組成物または塗料組成物の低粘度化および保存安定性の観点から、四価の基X1は、一般式(3)または一般式(4)で示される四価の基であることが好ましく、一般式(4)で示される四価の基であることがより好ましい。
【0061】
四価の基X1が、一般式(2)で表される基である場合、kが1であることが好ましい。
【0062】
四価の基X1が、一般式(3)で表される基である場合、R2が直接結合、-C(=O)-、-C(=O)OCH2CH2OC(=O)-、-SO2-、または式:
【0063】
【化7】
で表される基であることが好ましい。
【0064】
一般式(4)で示される四価の基X1の好ましい態様としては、例えば、以下の基を挙げることができる。
【0065】
【化8】
【0066】
【化9】
【0067】
【化10】
【0068】
【化11】
【0069】
【化12】
【0070】
【化13】
【0071】
また、一般式(4)で示される四価の基の好ましい態様としては、一般式(4)で示される基の合計炭素原子数は4~20であって、一般式(4)中、R3は、直接結合、-O-、または炭素原子数1~8の二価または三価の炭化水素基であり、R4、R5、R6、およびR9はそれぞれ独立に水素原子、若しくは炭素原子数1~8の炭化水素基であるか、または、R4とR6と、および/またはR5とR9と、で直接結合して不飽和二重結合を形成してもよく、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子、若しくは炭素原子数1~8の炭化水素基であるか、またはR7とR8とで直接結合または炭素原子数1~8の二価炭化水素基を形成して環状基X2を形成してもよく、あるいはR3とR7またはR3とR8とで炭素原子数1~8の三価炭化水素基を形成して環状基X2を形成してもよく、あるいはR3とR7とR8とで炭素原子数1~8の四価炭化水素基を形成して多環状基X2を形成してもよい態様が挙げられる。
【0072】
分散剤(B)の好ましい一実施形態として、一般式(7)で表される構造を有する分散剤を挙げることができる。一般式(7)において:
5~A8は、一般式(1)におけるA1~A4とそれぞれ同義である。
組合せ(A2)、(B2)および(C2)は、一般式(1)における組合せ(A)、(B)および(C)とそれぞれ同義である。
Xb、RbおよびRb2は、一般式(1)におけるXa、RaおよびRa2とそれぞれ同義である。
一価の重合体部位(P2)は、末端部位A2を有する環状エステル重合体部位であって、末端部位A2は芳香環単位を含有する、分子量300以下のモノアルコールに由来する構造であり、上記環状エステル重合体部位は、カプロラクトンまたはバレロラクトンに由来する構造を有する重合体である。
3は、一般式(1)におけるX1と同義であり、一般式(8)、一般式(9)および一般式(10)で示される四価の基は、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で示される四価の基とそれぞれ同義である。
【0073】
一般式(8)におけるk’は、一般式(2)におけるkと同義である。
一般式(9)におけるR12は、一般式(3)におけるR2と同義である。
一般式(10)におけるR13、R14、R15、R16、R17、R18およびR19は、一般式(4)におけるR3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9とそれぞれ同義である。
【0074】
一価の重合体部位(P2)の末端部位A2は、二級水酸基含有モノアルコールまたは一級水酸基含有モノアルコールに由来する構造であることが好ましく、一級水酸基含有モノアルコールに由来する構造であることがより好ましく、ベンジルアルコールまたはフェノキシエタノールに由来する構造であることがさらに好ましく、ベンジルアルコールに由来する構造であることが特に好ましい。
【0075】
一価の重合体部位(P2)の環状エステル重合体部位は、環状化合物としてカプロラクトンまたはバレロラクトンに由来する構造を有する重合体であり、環状エステル重合体部位の主成分としてカプロラクトンに由来する構造を有する重合体であることが好ましい。環状化合物中の含有率は、70~100質量%であることが好ましく、より好ましくは80~100質量%であり、さらに好ましくは90~100質量%であり、実質的に100質量%であることが特に好ましい。
一般式(7)における重合体部位(P2)以外の好ましい態様は、一般式(1)における重合体部位(P)以外の好ましい態様と、同様である。
【0076】
分散剤(B)の酸価は、25~200mgKOH/gが好ましく、25~150mgKOH/gがより好ましく、25~120mgKOH/gがさらに好ましく、30~100mgKOH/gが特に好ましい。25~200mgKOH/gの酸価を有することで、粒子の分散性、経時分散安定性、およびペーストの貯蔵安定性が向上する。
【0077】
分散剤(B)のアミン価は、0~40mgKOH/gが好ましく、0~30mgKOH/gがより好ましく、0~10mgKOH/gがさらに好ましく、実質的に0mgKOH/gであることが特に好ましい。
【0078】
分散剤(B)の水酸基価は、0~30mgKOH/gが好ましく、0~10mgKOH/gがより好ましく、実質的に0mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0079】
分散剤(B)の重量平均分子量は、1000~50000が好ましく、2000~50000がより好ましく、2000~20000がさらに好ましく、2000~10000が特に好ましい。
【0080】
分散剤(B)の数平均分子量は、1000~50000が好ましく、1500~30000がより好ましく、1500~15000さらに好ましく、1500~7000が特に好ましい。
【0081】
分散剤(B)の含水率は、分散剤(B)100質量%中、0~1質量%であることが好ましく、0~0.5質量%であることがより好ましく、0~0.3質量%であることがさらに好ましく、0~0.1質量%であることが特に好ましい。含水率を1質量%以下の範囲に制御することで、バインダー成分(D)の溶解不良や加水分解等による劣化を抑制することができる。
【0082】
無機粒子(A1)を用いる第一の実施形態において、無機粒子(A)100質量%に対する分散剤(B)の配合量は、0.1~3質量%であることが好ましく、0.1~1.5質量%であることがより好ましく、0.1~1質量%であることがさらに好ましい。
【0083】
無機粒子(A2)を用いる第二の実施形態において、無機粒子(A)100質量%に対する分散剤(B)の配合量は、1~20質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましく、5~15質量%であることがさらに好ましい。
【0084】
<分散剤の製造方法>
次に、分散剤(B)の製造方法を説明する。尚、製造方法は下記に限定されないことはいうまでもない。分散剤(B)の合成は、例えば、下記第一の工程および第二の工程で作製することが好ましい。
(第一の工程)
「末端部位Aを有し、もう片末端に水酸基を有する環状エステル重合体部位(APOH)」を製造する工程。
【0085】
(第二の工程)
上記第一の工程で得られた該重合体(APOH)とテトラカルボン酸二無水物とを反応させる工程。
ここで、該重合体(APOH)から水酸基の水素原子を1つ取り除いた部位が、一般式(1)で表される分散剤において、A1~A4中の1つまたは2つである一価の重合体部位(P)を構成し、テトラカルボン酸二無水物は、上記一般式(1)におけるX1を構成する。
【0086】
まず、第一の工程について詳しく説明する。
分散剤(B)の製造方法において、第一の工程で、芳香環またはアルキレンオキシ単位含有のモノアルコール化合物を開始剤として、環状化合物を開環重合することによって「末端部位Aを有し、もう片末端に水酸基を有する環状エステル重合体部位(APOH)」が得られる。
【0087】
芳香環を含有する分子量300以下のモノアルコールとしては、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、パラクミルフェノキシエチルアルコール、ピペロニルアルコール、1-ナフタレンメタノール等の一級水酸基含有モノアルコール;ベンズヒドロール、1-ヒドロキシインダン、1-フェニル-1-プロパノール等の二級水酸基含有モノアルコール等が挙げられる。この内、一級水酸基含有モノアルコールであることが好ましく、ベンジルアルコールまたはフェノキシエタノールであることがより好ましく、ベンジルアルコールであることがさらに好ましい。
【0088】
アルキレンオキシ単位を含有する分子量300以下のモノアルコールとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、テトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。この内、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、またはジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
尚、本明細書では、アルキレンオキシ単位を含有する分子量300以下のモノアルコールは、芳香環を含有する分子量300以下のモノアルコール以外のものを指す。
【0089】
分散剤(B)の製造に用いるモノアルコールは、それぞれ単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0090】
環状エステル重合体部位(APOH)の合成に用いる環状化合物としては、アルキレンオキサイド、ラクトン、ラクチド、ジカルボン酸無水物、およびエポキシド等が挙げられる。これらの中でも、分散性の観点から、ラクトンまたはラクチドを用いることが好ましく、ラクトンを用いることがより好ましく、ラクトンを単独で用いることがさらに好ましい。
【0091】
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-、1,4-、2,3-または1,3-ブチレンオキサイドを用いることができ、また、これらを2種類以上併用したものを用いることができる。2種類以上のアルキレンオキサイドを併用して用いる場合、アルキレンオキサイドは、ランダム共重合体および/またはブロック共重合体のいずれを形成していてもよい。開始剤1モルに対するアルキレンオキサイドの重合モル数は、0~100が好ましい。
【0092】
アルキレンオキサイドの重合は、例えば、アルカリ触媒の存在下、100~200℃の温度で、加圧状態で容易に行うことができる。モノアルコールの水酸基にアルキレンオキサイドを重合して得られる重合体(PeOH)は、市販もされており、例えば、日油社製ユニオックスシリーズ、日油社製ブレンマーシリーズ等が挙げられ、これらの重合体(PeOH)を、分散剤(B)の製造において環状エステル重合体部位(APOH)として使用することができる。このような市販品としては、例えば、ユニオックスM-400、M-550、M-2000、ブレンマーPE-90、PE-200、PE-350、AE-90、AE-200、AE-400、PP-1000、PP-500、PP-800、AP-150、AP-400、AP-550、AP-800、50PEP-300、70PEP-350B、AEPシリーズ、55PET-400、30PET-800、55PET-800、AETシリーズ、30PPT-800、50PPT-800、70PPT-800、APTシリーズ、10PPB-500B、10APB-500B等がある。本明細書では、これらの市販品を用いて第一の工程を省略してもよい。
【0093】
ラクトンは、例えばβ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、アルキル置換されたε-カプロラクトン等が挙げられる。これらの中でもδ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、アルキル置換されたε-カプロラクトンを使用するのが開環重合性の点で好ましく、ε-カプロラクトンを用いることが、分散剤機能の観点からより好ましい。
【0094】
分散剤(B)において、ラクトンは、上記例示に限定されることなく用いることができ、また単独で用いても、2種類以上を併用して用いても構わない。
【0095】
ラクチドとしては、下記一般式(6)で示されるものが好ましい(グリコリドを含む)。
【0096】
【化14】
〔一般式(6)中、R31およびR32は、それぞれ独立して、水素原子、飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝の炭素原子数1~20のアルキル基であり、R33およびR34は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝の炭素原子数1~9の低級アルキル基である。〕
ラクチドとしては、ラクチド(3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン)およびグリコリド(1,4-ジオキサン-2,5-ジオン)等が挙げられる。
【0097】
ラクトンおよび/またはラクチドの開環重合は、例えば、脱水管、コンデンサーを接続した反応器に、開始剤、ラクトンおよび/またはラクチド、および重合触媒を仕込み、窒素気流下で加熱して行うことができる。末端部位Aを形成するモノアルコールとして、低沸点のモノアルコールを用いる場合には、オートクレーブを用いて加圧下で反応させることができる。また、末端部位Aを形成するモノアルコールとして、エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールを使用する場合は、重合禁止剤を添加し、乾燥空気流下で反応を行ことが好ましい。
【0098】
開始剤1モルに対するラクトンおよび/またはラクチドの重合モル数は、1~60モルの範囲が好ましく、2~20モルがより好ましく、3~15モルがさらに好ましい。
【0099】
重合触媒としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムヨード、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヨード等の四級アンモニウム塩;テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨード、テトラブチルホスホニウムヨード、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヨード、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムヨード等の四級ホスホニウム塩;モノメチルすずオキシド、モノブチルすずオキシド、モノオクチルすずオキシド、ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレート等の有機スズ化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩、ナトリウムアルコラート、カリウムアルコラート等のアルカリ金属アルコラートの他、三級アミン類、有機アルミニウム化合物、有機チタネート化合物、塩化亜鉛等の亜鉛化合物等が挙げられる。触媒の使用量は、ラクトンおよび/またはラクチドの質量に対して0.1ppm~3000ppm、好ましくは1ppm~1000ppmである。この質量範囲を満たす場合、生産に適した重合速度で着色の無い重合体が得られやすい。
【0100】
ラクトンおよび/またはラクチドの重合温度は、70~240℃であることが好ましく、100℃~220℃であることがより好ましく、110℃~210℃であることがさらに好ましい。この温度範囲を満たすと、生産に適した重合速度で副生成物の少ない重合体が得られやすい。
【0101】
ジカルボン酸無水物は、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、イタコン酸無水物、グルタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、クロレンデック酸無水物等が挙げられる。
【0102】
エポキシドは、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p-ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、2,4-ジブロモフェニルグリシジルエーテル、3-メチル-ジブロモフェニルグリシジルエーテル(ただし、ブロモの置換位置は任意である)、アリルグリシジルエーテル、エトキシフェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルフタルイミド、スチレンオキシド等が挙げられる。
【0103】
ここで環状化合物の反応順序は、任意である。例えば、一段階目として上記開始剤にアルキレンオキサイドを重合した後、二段階目にラクトンを重合し、更に三段階目にジカルボン酸無水物とエポキシドとを交互に重合することもできる。この例では、二段階目にラクトンを重合するときの開始剤は、一段階目に重合されている片末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド重合体となる。また、三段階目にジカルボン酸無水物とエポキシドとを交互に重合するときの開始剤は、二段階目までに重合されている片末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド重合体とラクトン重合体のブロック共重合体となる。
【0104】
上記の環状化合物の反応順序は、一段階目のアルキレンオキサイド、二段階目のラクトン、三段階目のジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せに限定されず、アルキレンオキサイド、ラクトン(および/またはラクチド)、およびジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せを任意の順序で、それぞれ1ないし複数回に亘って実施することができる。あるいは、アルキレンオキサイド、ラクトン(および/またはラクチド)、およびジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せについて、全ての開環重合を実施せずに、それらの内から、任意の環状化合物を選択して、開環重合を実施することもできる。
【0105】
ジカルボン酸無水物とエポキシドとを用いて環状エステル重合体部位(APOH)を製造する場合、ジカルボン酸無水物とエポキシドとは開始剤(末端部位Aを形成するモノアルコール)に対して同時に使用され、交互に反応する。このとき、開始剤の水酸基に対して、まずジカルボン酸無水物の酸無水物基が反応してカルボキシル基を生じ、次いでこのカルボキシル基にエポキシドのエポキシ基が反応して水酸基を生じる。更に、この水酸基にジカルボン酸無水物の酸無水物基が反応するというように、以下、順次、上記と同様の反応を進行させることができる。開始剤1モルに対するジカルボン酸無水物およびエポキシドの重合モル数はそれぞれ0~30モルが好ましい。また、ジカルボン酸無水物とエポキシドとの反応比率([D]/[E])は、
0.8≦[D]/[E]≦1.0
([D]はジカルボン酸無水物のモル数であり、[E]はエポキシドのモル数である)を満たすことが好ましい。この範囲を満たすと、効果的に重合反応を進行することができる。
【0106】
ジカルボン酸無水物とエポキシドとの交互重合は、好ましくは50℃~180℃、より
好ましくは、60℃~150℃の範囲で行う。反応温度が50℃未満となる場合や180
℃を超える場合では反応速度がきわめて遅い。
【0107】
本明細書において一価の重合体部位(P)は前述の通り、重合体(APOH)から水酸基の水素原子を1つ取り除いた部位で構成される。
【0108】
環状エステル重合体部位(APOH)は、製造工程の簡便さ、分子量制御のしやすさ、反応率の高さの面で、環状化合物としてラクトンおよび/またはラクチドを主成分として用いることが好ましく、ラクトンを主成分として用いることがより好ましい。環状化合物中の含有率は、70~100質量%であることが好ましく、より好ましくは80~100質量%であり、さらに好ましくは90~100質量%であり、実質的に100質量%であることが特に好ましい。
【0109】
重合体(APOH)を製造する第一の工程は、溶剤を使用できる。溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトニトリル、有機溶媒(C)等が挙げられる。これらの溶媒は、2種類以上混合して用いてもよい。使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま、分散剤の製品の一部として使用することもできる。
【0110】
次に、「末端部位Aを有し、もう片末端に水酸基を有する環状エステル重合体部位(APOH)」とテトラカルボン酸二無水物とを反応させる第二の工程について説明する。
【0111】
第二の工程では、第一の工程で得られた「末端部位Aを有し、もう片末端に水酸基を有する環状エステル重合体部位(APOH)」の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物のカルボン酸無水物基とを反応させる。この第二の工程によって、一般式(1)で表される構造を有する分散剤(B)を得ることができる。
【0112】
テトラカルボン酸二無水物としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物、多環式テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0113】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、2,3,5,6-テトラカルボキシシクロヘキサン二無水物、2,3,5,6-テトラカルボキシノルボルナン二無水物、3,5,6-トリカルボキシノルボルナン-2-酢酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]-オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、または2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物が好ましく、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物がより好ましい。
【0114】
芳香族テトラカルボン酸無水物としては、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、M-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、9,9-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン無水物等が挙げられる。
【0115】
多環式テトラカルボン酸無水物としては、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-6-メチル-1-ナフタレンコハク酸二無水物等が挙げられる。
【0116】
第二の工程で使用されるテトラカルボン酸二無水物は、上で例示した化合物に限らず、カルボン酸無水物基を二つ持てば、どのような構造をしていてもかまわない。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。有機溶媒(C)に対する溶解性や、分散組成物の低粘度化の観点から、一般式(3)または一般式(4)で表される4価の基を有する化合物であることが好ましく、一般式(4)で表される4価の基を有する化合物であることが特に好ましい。
【0117】
第二の工程での反応比率は、重合体(APOH)の水酸基のモル数を<H>、テトラカルボン酸二無水物のカルボン酸無水物基のモル数を<N>としたとき、0.5<<H>/<N><1.2が好ましく、更に好ましくは0.7<<H>/<N><1.1、最も好ましくは<H>/<N>=1の場合である。<H>/<N><1で反応させる場合は、残存するカルボン酸無水物基を必要量の水で加水分解して使用してもよい。
【0118】
第二の工程には触媒を用いてもかまわない。触媒としては、三級アミン系化合物が使用でき、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N-メチルモルホリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等が挙げられる。
【0119】
第二の工程は、無溶剤で行ってもよいし、適当な脱水有機溶媒を使用してもよい。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま分散剤の製品の一部として使用することもできる。
【0120】
第二の工程の反応温度は、好ましくは80℃~180℃、より好ましくは90℃~160℃の範囲で行う。
【0121】
<有機溶媒(C)>
次に、本発明の分散組成物に含まれる有機溶媒(C)について説明する。
有機溶媒(C)は、一般式(5)で表される構造を有する有機溶媒である。本発明において、有機溶媒(C)は、本組成物中に含まれる有機溶媒の主成分であることが好ましい。ここで有機溶媒とは、25℃常圧下で液状の有機化合物であり、有機溶剤である。本組成物中に含まれる有機溶媒中の有機溶媒(C)の含有率は、70~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、90~100質量%であることがさらに好ましく、実質的に100質量%であることが特に好ましい。
尚、後述するバインダー成分(D)として、重合性不飽和基を有する液状のモノマーを配合する場合や、後述するその他の成分(E)として液状の消泡剤、レベリング剤、反応促進剤を配合する場合、これらの液状化合物は有機溶媒には含まない。
【0122】
一般式(5)において、R10は、オキシエチレン基またはオキシ(イソ)プロピレン基であることが好ましく、オキシエチレン基であることがより好ましい。また、nは2~5の整数であることが好ましく、2~3の整数であることがより好ましい。R11におけるアルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、2~4であることがさらに好ましい。このような有機溶媒(C)を選択することにより、分散剤(B)の溶解性、有機溶媒の沸点、工業的な入手容易性を両立することができる。
【0123】
有機溶媒(C)は、常圧(1013hPa)下における沸点が、150℃~300℃であることが好ましく、190~250℃であることがより好ましく、210~250℃であることが特に好ましい。
【0124】
有機溶媒(C)としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0125】
<分散組成物の製造>
分散組成物は、例えば、有機溶媒(C)、分散剤(B)および必要に応じて消泡剤や安定化剤を配合し、均質な溶液または分散液としてから、無機粒子(A)を添加して、充分に撹拌混合した後に分散処理することで製造することができる。
【0126】
撹拌混合に使用する装置は、例えば、ディスパー、プラネタリーミキサー、トリミックス、ホモジナイザーミキサー、ニーダー等の混錬混合装置、タンブラーミキサー、アトライター、ロールミル等が挙げられる。撹拌混合では、混合液が均質で流動性のある状態にすることが好ましい。
【0127】
また、分散処理に用いる分散機は、ビーズミル、コロイドミル、プラネタリーミキサー、トリミックス、ホモジナイザーミキサー、ニーダー等の混錬混合装置、アトライター、ロールミル、自転公転ミキサー等が挙げられる。使用する分散機は、分散組成物のハンドリング性や無機粒子(A)の凝集の度合いに応じて、適宜設定することができる。
【0128】
分散時の温度は、無機粒子(A)の分散性、分散剤(B)の溶解性、装置の摩耗を抑制する面で10~75℃が好ましく、20~70℃以下がより好ましく、30~70℃以下が特に好ましい。
【0129】
分散時間は、無機粒子の粒度のサンプリングを行いながら適宜調整する。分散時間は、装置の違いにより異なるところ、0.1~10時間程度が好ましく、0.5~5時間がより好ましく、1~5時間が特に好ましい。
【0130】
<塗料組成物>
本発明の塗料散組成物は、本発明の分散組成物に、さらにバインダー成分(D)を含有したものである。
【0131】
<バインダー成分(D)>
バインダー成分(D)としては、バインダー樹脂および/またはその前駆体等を用いることができる。バインダー樹脂は、有機溶媒(C)に溶解するか、またはエマルション粒子として配合して用いることができ、有機溶媒を揮発させることにより、塗膜等の固形物(硬化物)を得ることができる。また、バインダー樹脂が重合性不飽和基やエポキシ基等の反応性官能基を有する場合、さらに硬化反応を進めて硬化性を向上することができる。
バインダー樹脂の前駆体とは、熱および/または光により硬化反応を起こしてバインダー樹脂を生成する成分であり、重合性不飽和基やエポキシ基等の反応性官能基を複数有するモノマー、オリゴマー等が挙げられる。重合性不飽和基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基等が挙げられる。尚、オリゴマーは、分子量1000~3000の化合物である。
【0132】
バインダー樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、カーボネート系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース類、ロジン類、および天然ゴム等、ならびにこれらの共重合体が挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂が好ましく、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂がより好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0133】
熱硬化性のバインダー樹脂前駆体としては、例えば、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類;
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ヒドロキノン、レゾルシノール等のフェノール類;
等が挙げられる。
【0134】
光硬化性のバインダー樹脂前駆体としては、例えば、重合性不飽和基としてビニル基、(メタ)アクリロイル基または(メタ)アリル基を有する光重合性化合物が挙げられる。この光重合性化合物は、光重合開始剤として併用して用いることで、硬化反応を効果的に行うことができる。
【0135】
バインダー成分(D)の硬化反応を行う場合、バインダー樹脂および/またはその前駆体は、熱硬化性樹脂であることが好ましい。熱硬化性樹脂を選択することで、無機粒子(A)を高濃度に配合した場合であっても、硬化性が良好な塗料組成物を得ることができる。
【0136】
分散剤(B)とバインダー成分(D)との合計量100質量部に対する分散剤(B)の量は、1~40質量部であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましく、5~25質量部であることが特に好ましい。分散剤(B)の配合量をこの範囲内とすることで、分散剤(B)による分散剤機能と、バインダー成分(D)によるバインダー機能とを高度に両立することができる。
【0137】
<塗料組成物の製造方法>
本発明の塗料組成物は、例えば、本発明の分散組成物にバインダー成分(D)を配合し、充分に攪拌混合してバインダー成分(D)を均質に溶解することにより、製造することができる。また、バインダー成分(D)をあらかじめ有機溶媒(C)やその他有機溶媒に溶解または分散させたものを、分散組成物に混合することにより、製造することができる。
また、分散組成物を製造するときに、任意のタイミングでバインダー成分(D)を配合して塗料組成物を製造することも可能である。
【0138】
塗料組成物の製造に使用する装置は、分散組成物の攪拌混合に使用する装置、または分散処理に用いる分散機と同様のものを用いることができる。
【0139】
塗料組成物は、配合する無機粒子(A)の種類に応じて、熱伝導性硬化物、導電性硬化物、磁性硬化物、電子部品用封止材硬化物等の種々の用途に適用することができる。
【0140】
<その他成分(E)>
本発明の分散組成物や塗料組成物は、さらに、必要に応じて分散剤、有機溶剤、レベリング剤、消泡剤、反応促進剤、レオロジー調整剤、着色剤、酸化防止剤等の安定化剤、難燃剤、可塑剤、イオン捕捉剤等の各種添加剤を含有する組成物である。これらの適宜追加される各材料について特に制限はなく、単独もしくは2種類以上併せて使用することができる。本組成物は、熱伝導性硬化物、導電性硬化物、磁性硬化物、電子部品用封止材硬化物の形成に特に好適に用いることができる。
【0141】
分散剤(B)以外のその他分散剤としては、界面活性剤、高分子型分散剤等が挙げられる。界面活性剤としては、陰イオン性、陽イオン性、両性またはノニオン性の界面活性剤が挙げられる。
【0142】
有機溶媒(C)以外のその他の有機溶媒としては、例えば、アルコール系有機溶剤や、ケトン系有機溶剤、グリコール系有機溶剤、アミド系有機溶剤、エーテル系有機溶剤等の有機溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は、有機溶媒(C)とは異なる化合物であり、沸点が150℃以下の化合物であることが好ましい。
【0143】
レベリング剤や消泡剤を用いることで、硬化物の外観や密度を向上することができる。レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンが挙げられる。消泡剤としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物、ビニルエーテルポリマーやオレフィンポリマー等が挙げられる。
【0144】
反応促進剤は、特に限定はなく、バインダー成分(D)の硬化反応を促進する硬化剤として常用されている化合物を用いることができる。例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノール系化合物、イミダゾール化合物、潜在性硬化剤、ジブチル錫化合物等が挙げられる。反応促進剤がバインダー成分(D)と反応してバインダー樹脂の化学構造中に組み込まれる場合、反応促進剤はバインダー樹脂前駆体として扱ってバインダー成分(D)の配合量を算出する。
【0145】
レオロジー調整剤は、分散組成物または塗料組成物にチキソ性を付与して、無機粒子(A)の沈降を抑制する。また、組成物の塗工性に寄与する。レオロジー調整剤としては、増粘剤やレオロジーコントロール剤として販売されている各種材料等を用いることができる。
【0146】
<硬化物およびその製造方法>
本発明の硬化物は、例えば、本発明の塗料組成物を基材上に塗工して、乾燥および/または硬化させることにより得ることができる。
【0147】
塗料組成物の塗工方法は特に限定されないが、例えば、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法等、各種公知の方法により塗工することができる。
【0148】
塗料組成物の乾燥方法は特に限定されないが、例えば、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機等、各種公知の方法により乾燥することができる。
【0149】
塗料組成物をさらに硬化反応させる場合、硬化方法は特に限定されないが、常温または加温下でエージングする方法が挙げられる。硬化反応のためのエージング期間は、例えば40℃で1~5日程度であり、180℃で10時間程度である。また、必要に応じて、複数の温度ステップで硬化反応を進めることも可能である。
【0150】
塗料組成物を塗布する基材の種類は、特に限定されないが、樹脂フィルム、樹脂シート、金属板、金型や鋳型に対する充填等、各種公知の基材を用いることができる。
【実施例
【0151】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、特に断りのない限り、例中の「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。本明細書で実施例1-1~1-3、1-7、1-8、2-1~2-3,3-1~3-3、4-1、4-3および4-5は参考例である。
【0152】
<無機粒子(A)>
・三菱カーボンブラック#33(三菱ケミカル社製):カーボンブラック、無機粒子(A2)。平均一次粒子径30nm、BET比表面積85m2/g。以下、#33という。
・バイフェロックス4130(ランクセス社製):酸化鉄、無機粒子(A1)。平均一次粒子径200nm、BET比表面積8m2/g。Fe含有量70質量%。以下、#4130という。
・Ultra-fine Iron Powder YX5/5S(Jiangsu Tianyi Ultrafine Metal Powder Co.,Ltd製):純鉄粉、無機粒子(A1)。平均一次粒子径1.2μm、BET比表面積1.0m2/g。Fe含有量96質量%。以下、鉄粉Aという。
・Ultra-fine Iron Powder YMIM76g(Jiangsu Tianyi Ultrafine Metal Powder Co.,Ltd製):表面にシリカ層を有する純鉄粉、無機粒子(A1)。平均一次粒子径3.9μm、BET比表面積0.2m2/g。Fe含有量98質量%。以下、鉄粉Bという。
・FeSiAl合金、無機粒子(A1)。平均一次粒子径50μm、BET比表面積0.1m2/g、厚み1μm、鱗片状。Fe含有量85質量%。以下、センダストという。
【0153】
<分散剤>
・Solsperse32000(ルーブリゾール社製)、ポリエチレンイミンを主骨格とする高分子。アミン価31mgKOH/g、酸価15mgKOH/g、含水量0.6%。以下、分散剤9という。
・アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)、ポリエステル構造を有する高分子。
主鎖ポリアリルアミン、側鎖ポリカプロラクトンの共重合体。重量平均分子量50000、酸価17mgKOH/g、アミン価10mgKOH/g、含水量0.97%。以下、分散剤10という。
【0154】
<有機溶媒(C)>
・ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。以下、CAという。
・ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート。以下、BCAという。
・エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート。以下、BCeAという。
【0155】
<有機溶媒(C)以外の有機溶媒>
・エチレングリコールモノブチルエーテル。以下、BCeという。
【0156】
<バインダー成分(D)>
・メタクリル酸メチルポリマー(富士フイルム和光純薬製)。以下、PMMAという。
・jER-806(三菱ケミカル社製)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂。以下、jER-806という。
【0157】
<反応促進剤>
・エポミンSP-003(ポリエチレンイミン)。以下、SP-003という。
・2-エチル-4-メチルイミダゾール。以下、2E4MZという。
【0158】
<分散剤(B)の評価>
実施例で使用した分散剤の評価は、含水量、分子量分布、酸価を測定することにより行った。
【0159】
分散剤(B)の含水量は、カールフィッシャー型水分計(三菱化学アナリテック社製「CA-200」、電量法測定)を用いて測定した。サンプル1~2gを140℃で加熱し、気化した水分量を測定した。
【0160】
分散剤(B)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布は、示差屈折率(RI)検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。装置としてHLC-8220GPC(東ソー社製)を用い、分離カラムを2本直列に繋ぎ、両方の充填剤には「TSK-GELSUPERHZM-N」を2連でつなげて使用し、オーブン温度40℃、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速0.35ml/分で測定した。サンプルは濃度1質量%となるようテトラヒドロフランに溶解し、20マイクロリットル注入した。MnおよびMwはいずれも標準ポリスチレンの換算値である。
【0161】
分散剤(B)の酸価は次の方法で測定した。酸価を測定する目的物を約1g秤量し、ピリジン30g、水1gを加え10分攪拌した後、0.1N水酸化カリウムエタノール溶液を滴定液として、電位差測定装置(京都電子工業社製、装置名「電位差自動滴定装置AT-710M」)を用いて滴定し、樹脂の酸価を測定し不揮発分あたりの酸価を算出した。
【0162】
<分散剤(B)の合成>
[合成例1]
ガス導入管、温度計、コンデンサー、および攪拌機を備えた反応容器に、ベンジルアルコール10.1部、ε-カプロラクトン79.7部、および触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.05部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱、撹拌した。不揮発分測定により98%が反応したことを確認し第一の工程(以下の各表に記載の「製造工程1」)を終了した。
【0163】
上記反応生成物にピロメリット酸二無水物10.2部、DBU(1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン)0.05部を追加し、窒素ガスで置換した後、130℃で1時間加熱、攪拌し、100℃でさらに5時間反応させた。酸価の測定で97%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し第二の工程(以下の各表に記載の「製造工程2」)を終了した。得られた分散剤(分散剤1)はMw3650、酸価56mgKOH/gであった。
【0164】
[合成例2~8]
表1に記載した原料と仕込み量を用いた以外は実施例1と同様にして合成を行い、分散剤2~8を得た。上記合成例の内、分散剤1、2、5~7が本発明の実施例であり、分散剤3、4が参考例であり、分散剤8が比較例である。
【0165】
【表1】
【0166】
表1中の略称:
PMA・・・ピロメリット酸二無水物
BPDA・・・3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BTDA・・・3,3,4,4-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BTA・・・1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物
【0167】
<分散組成物の評価>
後述する製造方法により実施例等に係る分散組成物を製造した。そして、分散組成物について、粘度(ハンドリング性)を以下の基準で評価した。
【0168】
後述する分散組成物の調製(1)~(2)で製造した分散組成物の粘度は、サンプルをあわとり練太郎(シンキー社製、2000rpm)で30秒間攪拌混合した後、直ちにB型粘度計(東機産業社製「BL」、回転速度60rpmで測定したときのサンプルの粘度が100mPa・s未満の場合はローターNo.1を、粘度が100mPa・s以上500mPa・s未満の場合はローターNo.2を、粘度が500mPa・s以上2000mPa・s未満の場合はローターNo.3を、粘度が2000mPa・s以上10000mPa・s以下の場合はローターNo.4)を用いて、サンプル温度25℃、ローター回転速度6rpm、測定時間1分間にて測定した後、ローター回転速度60rpm、測定時間1分間にて測定した。
評価基準は以下の通りとした。なお、下記粘度は回転速度60rpmで測定した時の粘度である。
◎:粘度が0mPa・s以上200mPa・s以下(特に良好)。
〇:粘度が200mPa・s超過500mPa・s以下(良好)。
△:粘度が500mPa・s超過1000mPa・s以下(可)。
×:粘度が1000mPa・s超過2000mPa・s以下(不良)。
【0169】
後述する分散組成物の調製(3)で製造した分散組成物の粘度は、サンプルをあわとり練太郎(シンキー社製、2000rpm)で30秒間攪拌混合した後、直ちにブルックフィールド型粘度計(東機産業社製「BL」、ローターNo.3)を用いて、サンプル温度25℃、ローター回転速度6rpm、測定時間1分間にて測定した。評価基準は以下の通りとした。
◎:粘度が0mPa・s以上200mPa・s以下(特に良好)。
〇:200mPa・s超過1000mPa・s以下(良好)。
〇-:1000mPa・s超過2000mPa・s以下(わずかに良好)。
△:2000mPa・s超過20000mPa・s以下(可)。
×:20000mPa・s超過(流動性なし、不良)。
【0170】
<分散組成物の調製(1)>
[実施例1-1]
容量225mlのガラス瓶にジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート85.3部、分散剤1を0.7部仕込み、充分に撹拌混合して分散剤1を溶解させた。次いで三菱カーボンブラック#33を14部加え、1mmΦジルコニアビーズ150部をメディアとして、ペイントシェーカーで4時間分散し、分散組成物を得た。
【0171】
[実施例1-2~1-8、比較例1-1~1-3]
実施例1-1の材料およびその使用量を表2に記載した通りに変更した以外は、実施例1-1と同様に行い、実施例1-2~1-8および比較例1-1~1-3の分散組成物をそれぞれ調製した。
【0172】
実施例1-1~1-8で得た分散組成物は、いずれもハンドリング性良好な粘度であった。また、これらの結果より、分散剤として分散剤(B)を、有機溶媒の主成分として有機溶媒(C)をそれぞれ使用したとき、良好な分散組成物が得られることが分かる。一方、比較例1-1~1-3で得た分散組成物はいずれも流動性に乏しく、不良であった。
【0173】
【表2】
【0174】
<分散組成物の調製(2)>
[実施例2-1]
容量225mlのガラス瓶にジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート83.5部、分散剤1を1.5部仕込み、充分に撹拌混合して分散剤1を溶解させた。次いで三菱カーボンブラック#33を15部加え、1mmΦジルコニアビーズ150部をメディアとして、ペイントシェーカーで4時間分散し、分散組成物を得た。
【0175】
[実施例2-2~2-4、比較例2-1]
実施例2-1の材料およびその使用量を表3に記載した通りに変更した以外は、実施例2-1と同様に行い、実施例2-2~2-4および比較例2-1の分散組成物をそれぞれ調製した。
【0176】
実施例2-1~2-4で得た分散組成物は、いずれもハンドリング性良好な粘度であった。一方、比較例2-1で得た分散組成物は、流動性に乏しく不良であった。以上の結果より、分散剤として、末端部位Aとして芳香環又はアルキレンオキシ単位を含有する、分子量300以下のモノアルコールに由来する構造を有する分散剤(B)を用いることにより、良好な分散組成物が得られることが分かる。
【0177】
【表3】
【0178】
<分散組成物の調製(3)>
[実施例3-1]
容量225mlのガラス瓶にエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート36.37部、分散剤1を0.63部仕込み、充分に撹拌混合して分散剤1を溶解させた。次いでバイフェロックス4130を63部加え、1mmΦジルコニアビーズ150部をメディアとして、ペイントシェーカーで2時間分散し、分散組成物を得た。
【0179】
[実施例3-2~3-4、比較例3-1]
実施例3-1の材料およびその使用量を表4に記載した通りに変更した以外は、実施例3-1と同様に行い、実施例3-2~3-4および比較例3-1の分散組成物をそれぞれ作製した。
【0180】
実施例3-1~3-4で得た分散組成物は、いずれもハンドリング性良好な粘度であった。一方、比較例3-1で得た分散組成物は、流動性がなく不良であった。以上の結果より、四価の基X1として、一般式(2)~一般式(4)で示される構造を有する分散剤(B)を用いることにより、良好な分散組成物が得られることが分かる。
【0181】
【表4】
【0182】
<塗料組成物の評価>
後述する製造方法により実施例等に係る塗料組成物を製造した。そして、塗料組成物について、粘度(ハンドリング性)を以下の基準で評価した。
【0183】
後述する塗料組成物の調製(1)で製造した塗料組成物の粘度は、サンプルをあわとり練太郎(シンキー社製、2000rpm)で30秒間攪拌混合した後、直ちにブルックフィールド型粘度計(英弘精機社製「HB」、サンプルの粘度が200Pa・s以下の場合はスピンドルSC4-14、粘度が200Pa・s超過の場合はスピンドルSC4-25)を用いて、サンプル温度25℃、スピンドル回転速度50rpm、測定時間1分間にて測定した。評価基準は以下の通りとした。
◎:粘度が0Pa・s以上100Pa・s以下(特に良好)。
〇:100Pa・s超過200Pa・s以下(良好)。
【0184】
<塗料組成物の調製(1)>
[実施例4-1]
容量225mlのガラス瓶にジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート8.5部、分散剤5を0.60部、バインダー成分(D)としてメタクリル酸メチルポリマーを0.90部仕込み、60℃に加熱しながら充分に撹拌混合して分散剤5を溶解させた。その後、この溶液を25℃に冷却した後、鉄粉Aを90部加え、室温下、あわとり練太郎(シンキー社製、2000rpm)で4分間撹拌混錬処理し、塗料組成物を得た。
【0185】
[実施例4-2~4-6]
実施例3-1の材料およびその使用量を表5に記載した通りに変更した以外は、実施例3-1と同様に行い、実施例3-2~3-6をそれぞれ作製した。
【0186】
実施例4-1~4-6で得た塗料組成物は、いずれもハンドリング性良好な粘度であった。以上の結果より、分散剤(B)を用いることで、良好な塗料組成物が得られることが分かる。
【0187】
【表5】
【0188】
<塗料組成物(2)および硬化物の作製>
[実施例5-1]
容量225mlのガラス瓶に、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート61.67部、バインダー成分(D)としてメタクリル酸メチルポリマーを5部、仕込み、60℃に加熱しながら充分に撹拌混合してバインダー成分(D)を溶解させた。その後、この溶液を25℃に冷却した後、実施例2-4で作製した分散組成物33.33部仕込み、ディスパー(撹拌翼Φ2cm、500rpm)で1分間攪拌して、塗料組成物を得た。
得られた塗料組成物を、コロナ放電処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に乾燥後の厚みが5μmになるようにバーコーターを使用して塗工し、次いで120℃のオーブンで5分間乾燥して硬化物を作製し、その外観を下記基準で目視評価した。
得られた硬化物の目視評価基準は以下の通りである。
〇:抜けやブツ等の欠陥がない(良好)
×:ブツが多量にある(不良)
【0189】
[実施例5-2]
実施例5-1の材料およびその使用量を表6に記載した通りに変更した以外は、実施例5-1と同様に行い、実施例5-2を作製した。
【0190】
[実施例5-3]
容量225mlのガラス瓶に実施例2-4で作製した分散組成物86.96部仕込み、バインダー成分(D)としてjER-806を11.74部、硬化剤としてSP-003を1.3部仕込んでから、ディスパー(撹拌翼Φ2cm、500rpm)で1分間攪拌して、塗料組成物を得た。
得られた塗料組成物を、コロナ放電処理されたPETフィルム上に乾燥後の厚みが5μmになるようにバーコーターを使用して塗工し、次いで120℃のオーブンで5分間乾燥した。その後さらに70℃のオーブンで3時間加熱して硬化反応を完了させて硬化物を作製し、その外観を下記基準で目視評価した。
得られた硬化物の目視評価基準は以下の通りである。
〇:抜けやブツ等の欠陥がない(良好)
×:ブツが多量にある(不良)
【0191】
[実施例5-4~5-6]
実施例5-3の材料およびその使用量を表6に記載した通りに変更した以外は、実施例5-3と同様に行い、実施例5-4~5-6をそれぞれ作製した。
【0192】
実施例5-1~5-6で得た塗料組成物は、いずれもハンドリング性良好な粘度であった。また、これらの塗料組成物から作製した硬化物は、いずれも目視で光沢のある状態であり、良好だった。
【0193】
【表6】