(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】電動モーターのローター
(51)【国際特許分類】
H02K 1/278 20220101AFI20250128BHJP
【FI】
H02K1/278
(21)【出願番号】P 2023523477
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2022021195
(87)【国際公開番号】W WO2022250037
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2021086785
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伴 美織
(72)【発明者】
【氏名】粂 康弘
(72)【発明者】
【氏名】塚原 誠
(72)【発明者】
【氏名】清水 祥貴
(72)【発明者】
【氏名】小林 翼
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-166463(JP,U)
【文献】特開平08-107640(JP,A)
【文献】特開2004-129369(JP,A)
【文献】特開2012-228101(JP,A)
【文献】特開2011-106442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/278
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モーターの回転中心軸方向に延設され、前記回転中心軸まわりに回転可能に支持される電動モーターのローターであって、
前記ローターの外周部において、前記回転中心軸方向に平行にそれぞれ延びる磁極であるN極及びS極が、前記ローターの周方向に交互に形成されるように配置された複数の永久磁石と、
前記各永久磁石の外周面のうち、前記回転中心軸方向における両端部を除く中間部に対面配置された外周コアと、
前記ローターの前記回転中心軸方向における両端部に配置された一対の端末コアと、
を備え、
前記外周コア及び前記端末コアが磁性体で構成され、
前記外周コアの作用により前記ローターの外周面の長手方向における中間部に第1磁束が形成されるとともに、前記端末コアの作用により前記ローターの径方向へ向かう第2磁束が形成され、
前記電動モーターの作動時にローターが回転する過程であって、前記第1磁束の作用により生じる第1トルクが増大する過程において、前記第2磁束の作用により生じる第2トルクが減少するように、前記端末コアの最大透磁率が、前記外周コアの最大透磁率以下であるように設定された、
電動モーターのローター。
【請求項2】
請求項1に記載の電動モーターのローターにおいて、
隣接する前記外周コアが接続部を介して互いに接続されている、
電動モーターのローター。
【請求項3】
請求項2に記載の電動モーターのローターにおいて、
前記接続部の最大透磁率が、前記外周コアの最大透磁率以下である、
電動モーターのローター。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1つに記載の電動モーターのローターにおいて、
前記回転中心軸方向に延設され、前記回転中心軸のまわりに回転可能に支持される中心コアを備え、
前記複数の永久磁石が、前記中心コアの外周面に配置され、
前記一対の端末コアが、前記中心コアの前記回転中心軸方向における両端部に配置された、
電動モーターのローター。
【請求項5】
請求項1に記載の電動モーターのローターにおいて、
前記端末コアは、前記ローターの外周部の周方向における、複数の前記永久磁石の位置を規定する位置決め部を有する、
電動モーターのローター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モーターのローターに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1乃至特許文献3には、電動モーターのローター(以下、単に「ローター」と称呼する。)が記載されている。このローターは、ローターコア及び複数の永久磁石を備える。ローターコアは、略円形の電磁鋼板(鉄心片)を積層して形成された円柱状の部材である。ローターコアには、複数の永久磁石をそれぞれ収容(埋設)するための複数の孔部が設けられている。これらの孔部は、ローターコアの一端面から他端面へ貫通している。これらの孔部は、ローターコアの周方向に等間隔に配置されている。
【0003】
永久磁石は、電動モーターの回転中心軸の延設方向に対して平行に延びる平板状(棒状)の部材である。永久磁石は、その板厚方向に磁化されている。すなわち、永久磁石の表面がN極であり、裏面がS極である。永久磁石は、ローターコアの孔部内に配置されている。これにより、複数の磁極(N極及びS極)がローターコアの周方向に等間隔に形成される。ローターコアにおける、各永久磁石の周囲の所定の位置に、漏れ磁束を低減するための複数の空隙(スリット)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/166532号
【文献】特開2007―330027号公報
【文献】特開2018―117488号公報
【発明の概要】
【0005】
上記従来のローターにおいて、永久磁石の配置位置、永久磁石の数、空隙の位置(磁路)などを最適化することにより、電動モーターのトルクの向上を図っている。
【0006】
本発明の目的は、電動モーターの平均トルク(ローターが1回転する間のトルクの平均値)を従来より向上可能なローターを提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る電動モーターのローターは、電動モーターの回転中心軸方向に延設され、前記回転中心軸まわりに回転可能に支持される電動モーターのローターであって、前記ローターの外周部において、前記回転中心軸方向に平行にそれぞれ延びる磁極であるN極及びS極が、前記ローターの周方向に交互に形成されるように配置された複数の永久磁石と、前記各永久磁石の外周面のうち、前記回転中心軸方向における両端部を除く中間部に対面配置された外周コアと、前記ローターの前記回転中心軸方向における両端部に配置された一対の端末コアと、を備える。前記外周コア及び前記端末コアが磁性体で構成され、前記外周コアの作用により前記ローターの外周面の長手方向における中間部に第1磁束が形成されるとともに、前記端末コアの作用により前記ローターの径方向へ向かう第2磁束が形成され、前記電動モーターの作動時にローターが回転する過程であって、前記第1磁束の作用により生じる第1トルクが増大する過程において、前記第2磁束の作用により生じる第2トルクが減少するように、前記端末コアの最大透磁率が、前記外周コアの最大透磁率以下であるように設定される。
【0008】
本発明の一態様に係る電動モーターのローターにおいて、隣接する前記外周コアが接続部を介して互いに接続されている。
【0009】
本発明の他の態様に係る電動モーターのローターにおいて、前記接続部の最大透磁率が、前記外周コアの最大透磁率以下である。
【0010】
本発明の他の態様に係る電動モーターのローターにおいて、前記回転中心軸方向に延設され、前記回転中心軸のまわりに回転可能に支持される中心コアを備え、前記複数の永久磁石が、前記中心コアの外周面に配置され、前記一対の端末コアが、前記中心コアの前記回転中心軸方向における両端部に配置される。
【0011】
本発明の他の態様に係る電動モーターのローターにおいて、前記端末コアは、前記ローターの外周部の周方向における、複数の前記永久磁石の位置を規定する位置決め部を有する。
【0012】
本発明のローターにおいて、永久磁石の長手方向における中間部に、磁性体としての外周コアが取り付けられている。そのため、ローターの外周面の長手方向における中間部に磁束が集中する。以下、この磁束を「第1磁束」と称呼する。言い換えれば、ローターの長手方向における両端面側への磁束漏れが低減される。永久磁石からローターの両端側へ向かう磁束(漏れ磁束(以下、「第2磁束」と称呼する。))も存在するが、これらの磁束は、磁性体としての端末コアに集中する(短絡する)。すなわち、第2磁束は、ローターの周方向へ向かうのではなく、ローターの径方向へ向かう傾向にある(
図6を参照。)。
【0013】
ここで、本発明に係るローターが適用された電動モーターにおいて、第1磁束の作用によりローターに生じる第1トルクと、第2磁束の作用によりローターに生じる第2トルクとの変化の態様が異なる(
図7を参照。)。具体的には、第1トルクが減少する過程において、第2トルクが増大し、第1トルクが増大する過程において、第2トルクが減少する。よって、本発明に係るローターを採用した電動モーターにおいて、ローターに生じるトルク(第1トルクと第2トルクの合計)の変動が小さく、従来のローターを採用した電動モーターに比べて、平均トルクが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るローターの斜視図である。
【
図3】本発明の変形例に係るローターの斜視図である。
【
図5】電磁鋼板及びダストコアに印可される磁界と磁束密度との関係の例を示すグラフである。
【
図6】端末コアにおける磁力線の方向を示す図である。
【
図8】本発明のローターを採用した電動モーターの平均トルクの向上率を示す第1の表である。
【
図9】本発明のローターを採用した電動モーターの平均トルクの向上率を示す第2の表である。
【
図10】本発明のローターを採用した電動モーターの平均トルクの向上率を示す第3の表である。
【
図11】本発明のローターを採用した電動モーターの平均トルクの向上率を示す第4の表である。
【
図12】永久磁石と外周コア(本体部)との位置関係を示す正面図である。
【
図13】端末コアの外周部の一部を切り欠いた例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(概略)
以下、本発明の一実施形態に係る「電動モーターのローター1」(以下、単に「ローター1」と称呼する。)について説明する。ここで、ローター1が適用された電動モーターの構成について簡単に説明しておく。電動モーターは、ステーターを備える。ステーターは、円筒状の部品である。ステーターの内周面には、複数のティースが形成されている。これらのティースは、ステーターの周方向に等間隔に配置されている。各ティースには、コイルが組み付けられている。すなわち、ティースに電線が巻きつけられている。
【0016】
ローター1は、円柱状の部品である。ステーターの内部に、ローター1が収容されている。ローター1とステーターとが同軸配置されている。ローター1は、その回転中心軸方向に対して平行にそれぞれ延びる複数の磁極(N極及びS極)を有する。これらの磁極は、ローター1の周方向に等間隔に配置されている。本実施形態では、ローター1は、8個の磁極(4個のN極及び4個のS極)を備える。これらのN極及びS極が、ローター1の周方向に交互に配置されている。ステーターの複数のコイルに、所定の順に電力が供給される。これにより、ローター1がステーターに対して回転する。
【0017】
(構成)
つぎに、ローター1の構成について説明する。ローター1は、
図1に示すように、中心コア10、複数の永久磁石20(4個の永久磁石21及び4個の永久磁石22)、外周コア30、及び一対の端末コア40,40を備える。
【0018】
中心コア10は、
図2に示すように、円柱状の部品である。中心コア10は、複数の円板状の鉄心片11を積層した積層体である。鉄心片11は、電磁鋼板(母材)を打ち抜いて形成される。
【0019】
鉄心片11の中心部には、打ち抜き孔PH1が形成されている。打ち抜き孔PH1は円形を呈する。鉄心片11が積層された状態において、前記打ち抜き孔PH1が連通している。すなわち、中心コア10の中心部には、その長手方向(中心軸の延設方向)における一端面から他端面へ貫通する貫通孔TH1が形成されている。この貫通孔TH1に、図示しないシャフト(電動モーターの出力軸)が挿入されて固定される。
【0020】
永久磁石20は、中心コア10の中心軸(回転中心軸)の延設方向に対して平行に延設された幅の狭い板状の部品である。永久磁石20は、中心コア10の外周面に沿うように湾曲している。すなわち、永久磁石20の板厚方向における一方の面が凸面であり、他方の面が凹面である。永久磁石20は、その板厚方向に磁化されている。すなわち、永久磁石21の凸面側がN極であり、凹面側がS極である。一方、永久磁石22の凸面側がS極であり、凹面側がN極である。中心コア10の外周面において、その周方向に、永久磁石21及び永久磁石22が交互に配置されている。これにより、中心コア10の外周面に、上記のような8個の磁極(4個のN極及び4個のS極)が配置される。
【0021】
外周コア30は、永久磁石21,22の表面(凸面)に対面配置される複数の板状の本体部31と、隣接する本体部31,31を接続する接続部32を有する。本体部31は、磁性体で構成され、接続部32は、非磁性体で構成されている。本体部31は、例えば、中心コア10と同一の電磁鋼板から構成されている。接続部32は、例えば、合成樹脂材(例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂材(Poly Phenylene Sulfide Resin))から構成されている。本体部31は、中心コア10の中心軸に対して平行に延設されている。本体部31の長さLcは、永久磁石21,22の長さLmよりも短い(
図12を参照。)。本体部31の幅Wcは、永久磁石21,22の幅Wmよりも狭い。本体部31は、永久磁石21,22の凸面に沿うように湾曲形成されている。本体部31は、永久磁石21,22の中央部に対面配置(接着)されている。すなわち、永久磁石21,22の長手方向における中間部が外周コア30で覆われていて、永久磁石21,22の長手方向における両端部が露出している。なお、上記の例では、隣接する本体部31が接続部32を介して接続されている。すなわち、外周コア30は、リング状を呈している。なお、本体部31と接続部32とが別々の部品として形成され、それらが接続されるとよい。また、電磁鋼板からなるリング状の部品の一部(接続部32に相当する部分)にレーザー光を照射して、当該部位を改質して非磁性化してもよい。また、
図3及び
図4に示したように、接続部32が省略され、各本体部31が永久磁石21,22の表面に接着されてもよい。
【0022】
端末コア40は、円板状の部品である。端末コア40の外径は、中心コア10の外径より大きい。端末コア40の中心部には、貫通孔TH2が設けられている。貫通孔TH2の内径は、貫通孔TH1の内径と同一である。端末コア40,40は、中心コア10の長手方向における両端面にそれぞれ取り付けられる。端末コア40,40と中心コア10とが同軸配置される。
【0023】
端末コア40,40の一方の面の外周縁部に複数(8個)の凸部41が設けられている。これらの凸部41が、端末コア40の周方向に等間隔に配置されている。一方の端末コア40の凸部41と他方の端末コア40の凸部41とが対向するように、端末コア40,40が中心コア10の両端面にそれぞれ接着されている。端末コア40の周方向に隣接する2つの凸部41の間に、永久磁石21(22)の端部が配置されている。すなわち、凸部41は、永久磁石21(22)の位置決め部(位置ずれ防止部)として機能する。
【0024】
端末コア40は、ダストコア(又は電磁鋼板)から構成されている。端末コア40の最大透磁率は、外周コア30の本体部31の最大透磁率(
図5に示した、「磁界と磁束密度との関係を表すグラフの傾きの最大値)以下である。
【0025】
(作用及び効果)
上記のように、永久磁石21,22の長手方向における中間部に、磁性体としての外周コア30の本体部31が取り付けられている。そのため、ローター1の外周面の長手方向における中間部に磁束が集中する。以下、この磁束を「第1磁束」と称呼する。言い換えれば、ローター1の長手方向における両端面側への磁束漏れが低減される。永久磁石21,22からローター1の両端側へ向かう磁束(漏れ磁束(以下、「第2磁束」と称呼する。))も存在するが、これらの磁束は、磁性体としての端末コア40,40に集中する(短絡する)。すなわち、
図6に示したように、第2磁束は、ローター1の周方向θへ向かうのではなく、端末コア40の全周に亘り、ローター1の径方向Rへ向かう傾向にある。
【0026】
ここで、ローター1が適用された電動モーターにおいて、第1磁束の作用によりローター1に生じる第1トルクT1と、第2磁束の作用によりローター1に生じる第2トルクT2との変化(ローター1の回転角度と第1トルクT1及び第2トルクT2との関係)をコンピューターシミュレーションした結果を
図7に示す。同図に示したように、第1トルクT1と第2トルクT2の変化の態様が異なっている。具体的には、第1トルクT1が減少する過程において、第2トルクT2が増大し、第1トルクT1が増大する過程において、第2トルクT2が減少する。なお、永久磁石21の端部と永久磁石22の端部の間に凸部41が設けられることにより、このような作用が得られる。よって、ローター1を採用した電動モーターにおいて、ローター1に生じるトルク(第1トルクT1と第2トルクT2との合計)の変動が小さく、従来のローターを採用した電動モーターに比べて、平均トルクTmが向上する。
【0027】
また、従来のローターにおいて、ローターコアを構成する鉄心片を積層する際、打ち抜き孔、スリットなどの位置を揃える必要がある。これらの部位の位置ずれは、電動モーターのトルクを低下させる要因になるため、ローターコアの高い製造精度が求められる。これに対し、本実施形態において、中心コア10を構成する鉄心片11は、従来の鉄心片に比べて、その形状(打ち抜き孔の数)が単純であるので、中心コア10を製造し易い。
【0028】
(実施例)
つぎに、従来のローターXを採用した電動モーターの平均トルクTmと、本発明の実施例に係るローターY1,Y2を採用した電動モーターの平均トルクTmとの比較結果(平均トルクTmの向上率(コンピューターシミュレーション結果))を
図8に示す。加えて、ローターXを採用し電動モーターの平均トルクTmと、本発明の比較例に係るローターZ1、Z2を採用した電動モーターの平均トルクTmとの比較結果を、同図に併記した。
【0029】
なお、ローターXは、上記従来のローターと同様に、電磁鋼板の積層体としてのローターコアを有する。このローターコアの外周縁部に設けられた孔部内に永久磁石が配置されている。ローターXのローターコアを構成する電磁鋼板として、JIS C 2552-1986における「50A600」を採用している。
【0030】
ローターY1,Y2の外周コア30において、隣接する本体部31が接続部32を介して接続されておらず、各本体部31が永久磁石21,22の表面に接着されている。つまり、永久磁石21,22の間(磁極間及びその外方)が空隙である。さらに、ローターY1の端末コア40,40は、本体部31と同一の電磁鋼板から構成されている。ローターY1の本体部31及び端末コア40を構成する電磁鋼板として、「50A600」を採用している。
【0031】
一方、ローターY2の端末コア40,40は、ダストコアから構成されている。すなわち、ローターY1において、本体部31と端末コア40の最大透磁率は同一である。一方、ローターY2において、本体部31の最大透磁率に比べて、端末コア40の最大透磁率が小さい。ローターY2の本体部31を構成する電磁鋼板として、JIS C 2552-1986における「50A600」を採用している。ローターY2の端末コア40は、ポリフェニレンサルファイド樹脂材(Poly Phenylene Sulfide Resin)に純鉄粉を含有させた射出成型体(ダストコア)である。当該ダストコアにおける純鉄粉の含有率(体積比)は約50%である。
【0032】
ローターZ1,Z2において、外周コア30の全体が、電磁鋼板(「50A600」)から構成されている。すなわち、本体部31のみならず、接続部32も電磁鋼板(「50A600」)から構成されている。そして、ローターZ1の端末コア40は、ローターY1と同様に、電磁鋼板(「50A600」)から構成され、ローターZ2の端末コア40は、ローターY2と同様に、ダストコアから構成されている。
【0033】
同図に示したように、外周コア30において、磁極間及びその外方に位置する部分が非磁性体であり、且つ端末コア40の最大透磁率が本体部31の最大透磁率以下であるローターY1,Y2を採用した場合に、平均トルクTmを向上させることができた。さらに、端末コア40の最大透磁率と本体部31の最大透磁率とが同一であるローターY1を採用した場合に比べて、端末コア40の最大透磁率が本体部31の最大透磁率よりも小さいローターY2を採用した場合に、平均トルクTmをより大きく向上させることができた。一方、外周コア30において、磁極間及びその外方に位置する部分が磁性体であるローターZ1,Z2において、平均トルクTmを向上させることができなかった。
【0034】
つぎに、本体部31の各部の寸法(長さLc及び幅Wc(
図12及び
図14を参照。))が異なるローターY1a乃至ローターY1eを採用した場合の平均トルクTmの向上率を
図9に示す。なお、ローターY1a乃至ローターY1eは、
図8に示したローターY1と同様に、それらの本体部31及び端末コア40が電磁鋼板から構成されている。また、ローターY2a乃至ローターY2eの本体部31の長さLc及び幅Wc、並びに永久磁石21,22の長さLm及び幅Wmは、
図14に示した通りである。なお、ローターY1a乃至ローターY1eの外周コア30のうち、磁極間及びその外方に位置する部分は空隙である。
【0035】
つぎに、本体部31の各部の寸法(長さLc及び幅Wc(
図14を参照。))が異なるローターY2a及びローターY2bを採用した場合の平均トルクTmの向上率を
図10に示す。なお、ローターY2a及びローターY2bは、
図8に示したローターY2と同様に、それらの本体部31が電磁鋼板から構成され、端末コア40がダストコアから構成されている。また、ローターY2a及びローターY2bの本体部31の長さLc及び幅Wc、並びに永久磁石21,22の長さLm及び幅Wmは、
図14に示した通りである。なお、ローターY2a及びローターY2bの外周コア30のうち、磁極間及びその外方に位置する部分は空隙である。
【0036】
加えて、本体部31が電磁鋼板から構成されるとともに端末コア40がダストコアから構成され、且つ接続部32が端末コア40と同一のダストコアから構成されたローターYAを採用した場合の平均トルクTmの向上率を同図に示す。さらに、本体部31及び端末コア40が電磁鋼板から構成され、且つ本体部31の長手方向における両端部が本体部31と同一の電磁鋼板から構成された接続部32によって接続されたローターYBを採用した場合の平均トルクTmの向上率を同図に示す。なお、ローターYA,YBの本体部31の長さLc及び幅Wc、並びに永久磁石21,22の長さLm及び幅Wmは、ローターY2bと同一である。
【0037】
上記の実施例において、端末コア40は円板状を呈しているが、
図13に示したように、端末コア40の外周部であって、永久磁石21,22の端面に対向する部分に円弧状の切り欠き部CPを設けてもよい。このような端末コア40を備えたローターYC乃至ローターYGを採用した場合の平均トルクTmの向上率を
図11に示す。切り欠き部CPの内周縁の半径Rc2及び中心角Xm、並びに端末コア40の半径Rc1及び隣接する切り欠き部CPの間に位置する扇形部分の中心角度Xcは、
図14に示した通りである。ローターYCの外周コア30及び端末コア40の材質は、ローターY1cと同一である。ローターYDの外周コア30及び端末コア40の材質は、ローターYBと同一である。ローターYEの外周コア30及び端末コア40の材質は、ローターY2bと同一である。ローターYFの外周コア30及び端末コア40の材質は、ローターYAと同一である。ローターYGの外周コア30及び端末コア40の材質は、ローターZ2と同一である。
【0038】
上記のように、永久磁石21,22の寸法に対する本体部31の寸法を最適化することにより、第1トルクT1及び第2トルクT2のリップル(変動幅)を低減して、平均トルクTmを最大化することができる。なお、原則として、接続部32の最大透磁率は本体部31の最大透磁率より小さいことが好ましい。ただし、本体部31と接続部32の最大透磁率が同一であったとしても、端末コア40の形状を工夫することにより、平均トルクTmを向上させることができる場合がある(
図11のローターYGを参照。)。
【符号の説明】
【0039】
1…ローター、10…中心コア、21,22…永久磁石、30…外周コア、31…本体部、32…接続部、40…端末コア、41…凸部、CP…切り欠き部(位置決め部)、T1…第1トルク、T2…第2トルク、Tm…平均トルク