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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】圧電振動板および圧電振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20250128BHJP
【FI】
H03H9/19 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023525718
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2022020790
(87)【国際公開番号】W WO2022255113
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2021091598
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 和也
(72)【発明者】
【氏名】大西 学
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-206079(JP,A)
【文献】特開2010-147667(JP,A)
【文献】特開2010-213262(JP,A)
【文献】特開2016-178589(JP,A)
【文献】特開2008-301022(JP,A)
【文献】特開2020-088725(JP,A)
【文献】特開2017-153033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00-9/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部と、前記振動部の外周を取り囲む外枠部と、前記振動部と前記外枠部とを連結する保持部とを備えた圧電振動板において、
前記保持部の対向する一対の第1、第2主面部にはそれぞれ平坦部が設けられ、
前記第1、第2主面部それぞれの平坦部のうち、一方の平坦部では、前記保持部が前記外枠部に向けて延びる方向および当該圧電振動板の厚み方向に対して直交する方向である当該保持部の幅方向に沿った幅が、他方の平坦部よりも長くなっており、
当該圧電振動板はATカット水晶板であり、
前記第1、第2主面部はATカットのXZ´平面に平行に設けられ、
前記第1主面部は+Y方向側に設けられ、前記第2主面部は-Y方向側に設けられることを特徴とする圧電振動板。
【請求項2】
振動部と、前記振動部の外周を取り囲む外枠部と、前記振動部と前記外枠部とを連結する保持部とを備えた圧電振動板において、
前記保持部の対向する一対の第1、第2主面部にはそれぞれ平坦部が設けられ、
前記第1、第2主面部それぞれの平坦部のうち、一方の平坦部では、前記保持部が前記外枠部に向けて延びる方向および当該圧電振動板の厚み方向に対して直交する方向である当該保持部の幅方向の一端が、他方の平坦部よりも前記幅方向の一端側に位置しており、
当該圧電振動板はATカット水晶板であり、
前記第1、第2主面部はATカットのXZ´平面に平行に設けられ、
前記第1主面部は+Y方向側に設けられ、前記第2主面部は-Y方向側に設けられることを特徴とする圧電振動板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電振動板において、
前記第1、第2主面部それぞれの平坦部の前記保持部の幅方向の他端が、前記保持部の幅方向の略同じ位置に設けられていることを特徴とする圧電振動板。
【請求項4】
請求項1または2に記載の圧電振動板において、
前記保持部は、1つのみ設けられており、
前記保持部は、前記振動部の+X方向側かつ-Z´方向側の角部から、-Z´方向側に向けて延びていることを特徴とする圧電振動板。
【請求項5】
圧電振動デバイスであって、
請求項1または2に記載の圧電振動板を備えたことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電振動デバイスにおいて、
前記圧電振動板の前記振動部の一主面側を覆う第1封止部材と、
前記圧電振動板の前記振動部の他主面側を覆う第2封止部材とが備えられ、
前記第1封止部材と前記圧電振動板とが接合され、かつ前記第2封止部材と前記圧電振動板とが接合されることによって、前記圧電振動板の前記振動部が封止されることを特徴とする圧電振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動板およびこれを備えた圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の動作周波数の高周波化や、パッケージの小型化(特に低背化)が進んでいる。そのため、高周波化やパッケージの小型化にともなって、圧電振動デバイス(例えば水晶振動子、水晶発振器等)も高周波化やパッケージの小型化への対応が求められている。
【0003】
この種の圧電振動デバイスでは、その筐体が略直方体のパッケージで構成されている。このパッケージは、例えばガラスや水晶からなる第1封止部材および第2封止部材と、例えば水晶からなり両主面に励振電極が形成された圧電振動板とから構成され、第1封止部材と第2封止部材とが圧電振動板を介して積層して接合される。そして、パッケージの内部(内部空間)に配された圧電振動板の振動部(励振電極)が気密封止されている(例えば、特許文献1)。以下、このような圧電振動デバイスの積層形態をサンドイッチ構造という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-252051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような圧電振動デバイスでは、圧電振動板は、振動部と、この振動部の外周を取り囲む外枠部と、振動部と外枠部とを連結する保持部(ブリッジ部)とを備えた構造になっている。すなわち、圧電振動板は、水晶等からなる圧電基板により、振動部と保持部と外枠部とが一体的に設けられた構成となっている。しかし、圧電振動板の保持部で折れが発生しやすいという問題があった。その原因は、圧電振動板をウエットエッチングによって加工する際、保持部の側面に薄肉の領域が形成されるためであると考えられる。
【0006】
本発明は上述したような実情を考慮してなされたもので、保持部での折れの発生を抑制することが可能な圧電振動板、およびそのような圧電振動板を備えた圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、振動部と、前記振動部の外周を取り囲む外枠部と、前記振動部と前記外枠部とを連結する保持部とを備えた圧電振動板において、前記保持部の対向する一対の第1、第2主面部にはそれぞれ平坦部が設けられ、前記第1、第2主面部それぞれの平坦部のうち、一方の平坦部では、前記保持部が前記外枠部に向けて延びる方向および当該圧電振動板の厚み方向に対して直交する方向である当該保持部の幅方向に沿った幅が、他方の平坦部よりも長くなっており、当該圧電振動板はATカット水晶板であり、前記第1、第2主面部はATカットのXZ´平面に平行に設けられ、前記第1主面部は+Y方向側に設けられ、前記第2主面部は-Y方向側に設けられることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、圧電振動板をウエットエッチングによって加工する際、保持部の幅方向の一端側に形成される薄肉の領域を小さくすることができ、保持部の強度を確保することができる。これにより、圧電振動板の保持部での折れの発生を抑制することができる。
【0009】
また、本発明は、振動部と、前記振動部の外周を取り囲む外枠部と、前記振動部と前記外枠部とを連結する保持部とを備えた圧電振動板において、前記保持部の対向する一対の第1、第2主面部にはそれぞれ平坦部が設けられ、前記第1、第2主面部それぞれの平坦部のうち、一方の平坦部では、前記保持部が前記外枠部に向けて延びる方向および当該圧電振動板の厚み方向に対して直交する方向である当該保持部の幅方向の一端が、他方の平坦部よりも前記幅方向の一端側に位置しており、当該圧電振動板はATカット水晶板であり、前記第1、第2主面部はATカットのXZ´平面に平行に設けられ、前記第1主面部は+Y方向側に設けられ、前記第2主面部は-Y方向側に設けられることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、圧電振動板をウエットエッチングによって加工する際、保持部の幅方向の一端側に形成される薄肉の領域を小さくすることができ、保持部の強度を確保することができる。これにより、圧電振動板の保持部での折れの発生を抑制することができる。
【0011】
上記構成において、前記第1、第2主面部それぞれの平坦部の前記保持部の幅方向の他端が、前記保持部の幅方向の略同じ位置に設けられていることが好ましい。
【0012】
また、上記構成において、前記保持部は、1つのみ設けられており、前記保持部は、前記振動部の+X方向側かつ-Z´方向側の角部から、-Z´方向側に向けて延びていることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記いずれかの構成の圧電振動板を備えた圧電振動デバイスであってもよく、前記圧電振動板の前記振動部の一主面側を覆う第1封止部材と、前記圧電振動板の前記振動部の他主面側を覆う第2封止部材とが備えられ、前記第1封止部材と前記圧電振動板とが接合され、かつ前記第2封止部材と前記圧電振動板とが接合されることによって、前記圧電振動板の前記振動部が封止されることを特徴とする。上記構成の圧電振動板を備えた圧電振動デバイスによれば、上述した圧電振動板の作用効果と同様の作用効果が得られる。すなわち、振動部と外枠部とが保持部によって連結された枠体付きの圧電振動板を用いた場合、圧電振動デバイスの小型化および低背化を図ることが可能であるが、そのような小型化および薄型化を図った圧電振動デバイスにおいて、圧電振動板の保持部での折れの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保持部での折れの発生を抑制することが可能な圧電振動板、およびそのような圧電振動板を備えた圧電振動デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態にかかる水晶振動子の各構成を模式的に示した概略構成図である。
図2】水晶振動子の第1封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図3】水晶振動子の第1封止部材の第2主面側の概略平面図である。
図4】本実施形態にかかる水晶振動板の第1主面側の概略平面図である。
図5】本実施形態にかかる水晶振動板の第2主面側の概略平面図である。
図6】水晶振動子の第2封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図7】水晶振動子の第2封止部材の第2主面側の概略平面図である。
図8図4のA1-A1線断面図である。
図9】変形例1にかかる水晶振動板を示す図8相当図である。
図10】変形例2にかかる水晶振動板を示す図8相当図である。
図11】変形例3にかかる水晶振動板を示す図8相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、本発明を適用する圧電振動デバイスが水晶振動子である場合について説明する。
【0017】
まず、本実施形態にかかる水晶振動子100の基本的な構造を説明する。水晶振動子100は、図1に示すように、水晶振動板(圧電振動板)10、第1封止部材20、および第2封止部材30を備えて構成されている。この水晶振動子100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが接合されることによって、略直方体のサンドイッチ構造のパッケージが構成される。すなわち、水晶振動子100においては、水晶振動板10の両主面のそれぞれに第1封止部材20および第2封止部材30が接合されることでパッケージの内部空間(キャビティ)が形成され、この内部空間に振動部11(図4図5参照)が気密封止される。
【0018】
本実施形態にかかる水晶振動子100は、例えば、1.0×0.8mmのパッケージサイズであり、小型化と低背化とを図ったものである。また、小型化に伴い、パッケージでは、キャスタレーションを形成せずに、後述するスルーホールを用いて電極の導通を図っている。また、水晶振動子100は、外部に設けられる外部回路基板(図示省略)に半田を介して電気的に接続されるようになっている。
【0019】
次に、上記した水晶振動子100における水晶振動板10、第1封止部材20および第2封止部材30の各部材について、図1図7を用いて説明する。なお、ここでは、接合されていないそれぞれ単体として構成されている各部材について説明を行う。図2図7は、水晶振動板10、第1封止部材20および第2封止部材30のそれぞれの一構成例を示しているに過ぎず、これらは本発明を限定するものではない。
【0020】
本実施形態にかかる水晶振動板10は、図4図5に示すように、水晶からなる圧電基板であって、その両主面(第1主面101、第2主面102)が平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。本実施形態では、水晶振動板10として、厚みすべり振動を行うATカット水晶板が用いられている。図4図5に示す水晶振動板10では、水晶振動板10の両主面101,102が、XZ´平面とされている。このXZ´平面において、水晶振動板10の短手方向(短辺方向)に平行な方向がX軸方向とされ、水晶振動板10の長手方向(長辺方向)に平行な方向がZ´軸方向とされている。なお、ATカットは、人工水晶の3つの結晶軸である電気軸(X軸)、機械軸(Y軸)、および光学軸(Z軸)のうち、Z軸に対してX軸周りに35°15′だけ傾いた角度で切り出す加工手法である。ATカット水晶板では、X軸は水晶の結晶軸に一致する。Y´軸およびZ´軸は、水晶の結晶軸のY軸およびZ軸からそれぞれ概ね35°15′傾いた(この切断角度はATカット水晶振動板の周波数温度特性を調整する範囲で多少変更してもよい)軸に一致する。Y´軸方向およびZ´軸方向は、ATカット水晶板を切り出すときの切り出し方向に相当する。
【0021】
水晶振動板10の両主面101,102には、一対の励振電極(第1励振電極111、第2励振電極112)が形成されている。水晶振動板10は、略矩形に形成された振動部11と、この振動部11の外周を取り囲む外枠部12と、振動部11と外枠部12とを連結することで振動部11を保持する保持部(ブリッジ部)13とを有している。すなわち、水晶振動板10は、振動部11、外枠部12および保持部13が一体的に設けられた構成となっている。保持部13は、振動部11の+X方向かつ-Z´方向に位置する1つの角部のみから、-Z´方向に向けて外枠部12まで延びている(突出している)。そして、振動部11と外枠部12との間には、水晶振動板10の厚み方向に貫通する貫通部(スリット)10aが設けられている。本実施形態では、水晶振動板10には、振動部11と外枠部12とを連結する保持部13が1つのみ設けられており、貫通部10aが振動部11の外周囲を囲うように連続して形成されている。保持部13の断面形状の詳細については後述する。
【0022】
第1励振電極111は振動部11の第1主面101側に設けられ、第2励振電極112は振動部11の第2主面102側に設けられている。第1励振電極111、第2励振電極112には、これらの励振電極を外部電極端子に接続するため入出力用の引出配線(第1引出配線113、第2引出配線114)が接続されている。入力側の第1引出配線113は、第1励振電極111から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン14に繋がっている。出力側の第2引出配線114は、第2励振電極112から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン15に繋がっている。
【0023】
水晶振動板10の両主面(第1主面101、第2主面102)には、水晶振動板10を第1封止部材20および第2封止部材30に接合するための振動板側封止部がそれぞれ設けられている。第1主面101の振動板側封止部としては振動板側第1接合パターン121が形成されており、第2主面102の振動板側封止部としては振動板側第2接合パターン122が形成されている。振動板側第1接合パターン121および振動板側第2接合パターン122は、外枠部12に設けられており、平面視で環状に形成されている。
【0024】
また、水晶振動板10には、図4図5に示すように、第1主面101と第2主面102との間を貫通する5つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第1スルーホール161は、外枠部12の4隅(角部)の領域にそれぞれ設けられている。第2スルーホール162は、外枠部12であって、振動部11のZ´軸方向の一方側(図4図5では、-Z´方向側)に設けられている。第1スルーホール161の周囲には、それぞれ接続用接合パターン123が形成されている。また、第2スルーホール162の周囲には、第1主面101側では接続用接合パターン124が、第2主面102側では接続用接合パターン15が形成されている。
【0025】
第1スルーホール161および第2スルーホール162には、第1主面101と第2主面102とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第1スルーホール161および第2スルーホール162それぞれの中央部分は、第1主面101と第2主面102との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。振動板側第1接合パターン121の外周縁は、水晶振動板10(外枠部12)の第1主面101の外周縁に近接して設けられている。振動板側第2接合パターン122の外周縁は、水晶振動板10(外枠部12)の第2主面102の外周縁に近接して設けられている。なお、本実施形態では、第1主面101と第2主面102との間を貫通する5つのスルーホールが形成されている例を挙げたが、スルーホールを形成せずに、水晶振動板10の側面の一部を切り欠き、当該切り欠かれた領域の内壁面に電極が被着したキャスタレーションを形成してもよい(第1封止部材20、第2封止部材30についても同様)。
【0026】
第1封止部材20は、図2図3に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第1封止部材20の第2主面202(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第1封止部材20は振動部を有するものではないが、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用いることで、水晶振動板10と第1封止部材20の熱膨張率を同じにすることができ、水晶振動子100における熱変形を抑制することができる。また、第1封止部材20におけるX軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとされている。
【0027】
第1封止部材20の第1主面201(水晶振動板10に面しない外方の主面)には、図2に示すように、配線用の第1、第2端子22,23と、シールド用(アース接続用)の金属膜28とが形成されている。配線用の第1、第2端子22,23は、水晶振動板10の第1、第2励振電極111,112と、第2封止部材30の外部電極端子32とを電気的に接続するための配線として設けられている。第1、第2端子22,23は、Z´軸方向の両端部に設けられており、第1端子22が、+Z´方向側に設けられ、第2端子23が、-Z´方向側に設けられている。第1、第2端子22,23は、X軸方向に延びるように形成されている。第1端子22および第2端子23は、略矩形状に形成されている。
【0028】
金属膜28は、第1、第2端子22,23の間に設けられており、第1、第2端子22,23とは所定の間隔を隔てて配置されている。金属膜28は、第1封止部材20の第1主面201の第1、第2端子22,23が形成されていない領域のうち、ほとんど全ての領域に設けられている。金属膜28は、第1封止部材20の第1主面201の+X方向の端部から-X方向の端部にわたって設けられている。
【0029】
第1封止部材20には、図2図3に示すように、第1主面201と第2主面202との間を貫通する6つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第3スルーホール211が、第1封止部材20の4隅(角部)の領域に設けられている。第4、第5スルーホール212,213は、図2図3の+Z´方向および-Z´方向にそれぞれ設けられている。
【0030】
第3スルーホール211および第4、第5スルーホール212,213には、第1主面201と第2主面202とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第3スルーホール211および第4、第5スルーホール212,213それぞれの中央部分は、第1主面201と第2主面202との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。そして、第1封止部材20の第1主面201の対角に位置する2つの第3スルーホール211,211(図2図3の+X方向かつ+Z´方向の角部に位置する第3スルーホール211と、-X方向かつ-Z´方向の角部に位置する第3スルーホール211)の貫通電極同士が、金属膜28によって電気的に接続されている。また、-X方向かつ+Z´方向の角部に位置する第3スルーホール211の貫通電極と、第4スルーホール212の貫通電極とが、第1端子22によって電気的に接続されている。+X方向かつ-Z´方向の角部に位置する第3スルーホール211の貫通電極と、第5スルーホール213の貫通電極とが、第2端子23によって電気的に接続されている。
【0031】
第1封止部材20の第2主面202には、水晶振動板10に接合するための封止部材側第1封止部としての封止部材側第1接合パターン24が形成されている。封止部材側第1接合パターン24は、平面視で環状に形成されている。また、第1封止部材20の第2主面202では、第3スルーホール211の周囲に接続用接合パターン25がそれぞれ形成されている。第4スルーホール212の周囲には接続用接合パターン261が、第5スルーホール213の周囲には接続用接合パターン262が形成されている。さらに、接続用接合パターン261に対して第1封止部材20の長軸方向の反対側(-Z´方向側)には接続用接合パターン263が形成されており、接続用接合パターン261と接続用接合パターン263とは配線パターン27によって接続されている。封止部材側第1接合パターン24の外周縁は、第1封止部材20の第2主面202の外周縁に近接して設けられている。
【0032】
第2封止部材30は、図6図7に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第2封止部材30の第1主面301(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第2封止部材30においても、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用い、X軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとすることが望ましい。
【0033】
この第2封止部材30の第1主面301には、水晶振動板10に接合するための封止部材側第2封止部としての封止部材側第2接合パターン31が形成されている。封止部材側第2接合パターン31は、平面視で環状に形成されている。封止部材側第2接合パターン31の外周縁は、第2封止部材30の第1主面301の外周縁に近接して設けられている。
【0034】
第2封止部材30の第2主面302(水晶振動板10に面しない外方の主面)には、水晶振動子100の外部に設けられる外部回路基板に電気的に接続する4つの外部電極端子32が設けられている。外部電極端子32は、第2封止部材30の第2主面302の4隅(隅部)にそれぞれ位置する。
【0035】
第2封止部材30には、図6図7に示すように、第1主面301と第2主面302との間を貫通する4つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第6スルーホール33は、第2封止部材30の4隅(角部)の領域に設けられている。第6スルーホール33には、第1主面301と第2主面302とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、第6スルーホール33それぞれの内壁面に沿って形成されている。このように第6スルーホール33の内壁面に形成された貫通電極によって、第1主面301に形成された電極と、第2主面302に形成された外部電極端子32とが導通されている。また、第6スルーホール33それぞれの中央部分は、第1主面301と第2主面302との間を貫通した中空状態の貫通部分となっている。また、第2封止部材30の第1主面301では、第6スルーホール33の周囲には、それぞれ接続用接合パターン34が形成されている。
【0036】
上記構成の水晶振動板10、第1封止部材20、および第2封止部材30を含む水晶振動子100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが振動板側第1接合パターン121および封止部材側第1接合パターン24を重ね合わせた状態で拡散接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが振動板側第2接合パターン122および封止部材側第2接合パターン31を重ね合わせた状態で拡散接合されて、図1に示すサンドイッチ構造のパッケージが製造される。これにより、パッケージの内部空間、つまり、振動部11の収容空間が気密封止される。
【0037】
この際、上述した接続用接合パターン同士も重ね合わせられた状態で拡散接合される。そして、接続用接合パターン同士の接合により、水晶振動子100では、第1励振電極111、第2励振電極112、外部電極端子32の電気的導通が得られるようになっている。具体的には、第1励振電極111は、第1引出配線113、配線パターン27、第4スルーホール212、第1端子22、第3スルーホール211、第1スルーホール161、および第6スルーホール33を順に経由して、外部電極端子32に接続される。第2励振電極112は、第2引出配線114、第2スルーホール162、第5スルーホール213、第2端子23、第3スルーホール211、第1スルーホール161、および第6スルーホール33を順に経由して、外部電極端子32に接続される。また、金属膜28は、第3スルーホール211、第1スルーホール161、および第6スルーホール33を順に経由して、アース接続(グランド接続、外部電極端子32の一部を利用)されている。
【0038】
水晶振動子100において、各種接合パターンは、複数の層が水晶板上に積層されてなり、その最下層側からTi(チタン)層とAu(金)層とが蒸着またはスパッタリングにより形成されているものとすることが好ましい。また、水晶振動子100に形成される他の配線や電極も、接合パターンと同一の構成とすれば、接合パターンや配線および電極を同時にパターニングでき、好ましい。
【0039】
上述のように構成された水晶振動子100では、水晶振動板10の振動部11を気密封止する封止部(シールパス)115,116は、平面視で、環状に形成されている。シールパス115は、上述した振動板側第1接合パターン121および封止部材側第1接合パターン24の拡散接合(Au-Au接合)によって形成され、シールパス115の外縁形状および内縁形状が略八角形に形成されている。同様に、シールパス116は、上述した振動板側第2接合パターン122および封止部材側第2接合パターン31の拡散接合(Au-Au接合)によって形成され、シールパス116の外縁形状および内縁形状が略八角形に形成されている。
【0040】
このように拡散接合によってシールパス115,116が形成された水晶振動子100において、第1封止部材20と水晶振動板10とは、1.00μm以下のギャップを有し、第2封止部材30と水晶振動板10とは、1.00μm以下のギャップを有する。つまり、第1封止部材20と水晶振動板10との間のシールパス115の厚みが、1.00μm以下であり、第2封止部材30と水晶振動板10との間のシールパス116の厚みが、1.00μm以下(具体的には、本実施形態のAu-Au接合では0.15μm~1.00μm)である。なお、比較例として、Snを用いた従来の金属ペースト封止材では、5μm~20μmとなる。
【0041】
次に、本実施形態にかかる水晶振動板10について、図4図5図8を参照して説明する。
【0042】
図4図5に示すように、水晶振動板10は、略矩形に形成された振動部11と、振動部11の外周を取り囲む外枠部12と、振動部11と外枠部12とを連結する保持部13とを備えており、保持部13は、図8に示すような断面形状に形成されている。
【0043】
具体的には、図8に示すように、保持部13の対向する一対の第1、第2主面部はATカットのXZ´平面に平行に設けられ、第1主面部は+Y方向側に設けられた面であり、第2主面部は-Y方向側に設けられた面になっている。保持部13の幅方向は、X軸方向に平行な方向になっている。なお、図8では、保持部13の第1、第2主面部に形成される第1、第2引出配線113,114の図示を省略している。
【0044】
そして、保持部13の対向する一対の第1、第2主面部にはそれぞれ平坦部13a,13bが設けられており、XZ´平面に平行な面になっている。第1、第2主面部それぞれの平坦部13a,13bのうち、一方の平坦部(第2主面部の平坦部)13bでは、保持部13の幅方向に沿った幅が、他方の平坦部(第1主面部の平坦部)13aよりも長くなっている。また、一方の平坦部(第2主面部の平坦部)13bでは、保持部13の幅方向の一端(-X方向側の端)が、他方の平坦部(第1主面部の平坦部)13aよりも幅方向の一端側(-X方向側)に位置している。第1、第2主面部それぞれの平坦部13a,13bの保持部13の幅方向の他端(+X方向側の端)は、保持部13の幅方向の略同じ位置に設けられている。
【0045】
保持部13の第1主面部側では、平坦部13aの幅方向の一端(-X方向側の端)は、平坦部13aに対し所定の角度で傾斜する傾斜部13cに接続されている。平坦部13aの幅方向の他端(+X方向側の端)は、平坦部13aに対し所定の角度で傾斜する傾斜部13dに接続されている。
【0046】
保持部13の第2主面部側では、平坦部13bの幅方向の一端(-X方向側の端)は、平坦部13bに対し垂直な直角部13eに接続されている。直角部13eは、傾斜部13cに接続されている。平坦部13bの幅方向の他端(+X方向側の端)は、平坦部13bに対し所定の角度で傾斜する傾斜部13fに接続されている。傾斜部13fは、傾斜部13dに接続されている。
【0047】
本実施形態では、保持部13の断面形状は、第1主面部側の平坦部13a、傾斜部13c,13d、および第2主面部側の平坦部13b、直角部13e、傾斜部13fによって囲われた形状になっている。そして、第1、第2主面部それぞれの平坦部13a,13bの保持部13の幅方向に沿った幅が、第2主面部の平坦部13bのほうが、第1主面部の平坦部13aよりも長くなっている。また、第1、第2主面部それぞれの平坦部13a,13bの保持部13の幅方向の一端が、第2主面部の平坦部13bのほうが、第1主面部の平坦部13aよりも幅方向の一端側に位置している。このような保持部13の断面形状は、水晶振動板10をウエットエッチングによって加工する際、フォトマスク設計にて保持部13の幅を第1、第2主面部の間で差を設けることにより形成可能になっている。例えば20~30μm程度、第2主面部のフォトマスクの幅を第1主面部のフォトマスクの幅よりも大きくすればよい。
【0048】
本実施形態によれば、水晶振動板10の保持部13での折れの発生を抑制することができる。詳細には、水晶振動板10をウエットエッチングによって加工する際、保持部13の幅方向の一端側(-X方向側)に形成される薄肉の領域(例えば、図9に示すような切欠き部(くびれ部)13g)を小さくすることができる。この場合、例えば、図10に示すように、切欠き部13gのX軸方向の幅L1が小さくなり、保持部13の幅方向の一端側(-X方向側)に形成される薄肉の領域を小さくすることができ、保持部13の強度を確保することができる。これにより、水晶振動板10の保持部13での折れの発生を抑制することができる。
【0049】
ここで、図8では、保持部13に切欠き部13gが形成されていない状態を示しており、切欠き部13gのX軸方向の幅L1が0である状態を示している。水晶振動板10の保持部13での折れの発生を抑制するには、図8のような保持部13を形成することが好ましい。
【0050】
一方、図9図10では、断面形状が略矩形の切欠き部13gが保持部13の第2主面部側に形成されている状態を示しており、切欠き部13gの部分で保持部13の強度が弱くなっている。しかし、本実施形態では、保持部13の幅方向に沿った幅を、第1主面部の平坦部13aよりも第2主面部の平坦部13bを長くしたり、保持部13の幅方向の一端を、第1主面部の平坦部13aよりも第2主面部の平坦部13bを幅方向の一端側に位置させたりしている。切欠き部13gが設けられている第2主面部の平坦部13bが、切欠き部が設けられていない第1主面部の平坦部13aよりも長くなっている。また、切欠き部13gが設けられている第2主面部の平坦部13bの一端が、切欠き部が設けられていない第1主面部の平坦部13aの一端よりも、保持部13の幅方向の一端側に位置している。このようにすることで、切欠き部13gのX軸方向の幅L1をより小さくして図8の保持部形状に近づけることができ、切欠き部13gの部分で保持部13の強度を確保することができる。これにより、水晶振動板10の保持部13での折れの発生を抑制することができる。
【0051】
本実施形態では、水晶振動板10は、振動部11と、当該振動部11の外周を取り囲む外枠部12と、振動部11と外枠部12とを連結する保持部(ブリッジ部)13とを備え、振動部11と外枠部12との間には、厚み方向に貫通する貫通部10aが設けられている構成になっている。このような振動部11と外枠部12とが保持部13によって連結された枠体付きの水晶振動板10を用いた場合、水晶振動子100の小型化および低背化を図ることが可能であるが、そのような小型化および薄型化を図った水晶振動子100において、水晶振動板10の保持部13での折れの発生を抑制することができる。
【0052】
ところで、高周波(例えば60~80MHz)で用いられる水晶振動板100では、高周波化に対応させるため、水晶振動板100の振動部11の厚みが薄く形成され、保持部13の厚みも薄くなる。このため、図8に示すような保持部13の形状をウエットエッチングによって安定的に形成することが困難になっている。
【0053】
しかし、図11に示すように、保持部13の-X方向の端部を連続的に厚みが変化する形状とすることによって、保持部13を安定的に形成することができ、保持部13の強度を確保することができる。したがって、高周波化に対応させた水晶振動子100において、水晶振動板10の保持部13での折れの発生を抑制することができる。
【0054】
図11に示す保持部13は、図8に示す保持部13の直角部13eが設けられていない形状になっている。保持部13の断面形状は、第1主面部側の平坦部13a、傾斜部13c,13d、および第2主面部側の平坦部13b、傾斜部13fによって囲われた形状になっている。平坦部13bと傾斜部13cとが接続している。
【0055】
そして、第1、第2主面部それぞれの平坦部13a,13bのうち、一方の平坦部(第2主面部の平坦部)13bでは、保持部13の幅方向に沿った幅が、他方の平坦部(第1主面部の平坦部)13aよりも長くなっている。また、一方の平坦部(第2主面部の平坦部)13bでは、保持部13の幅方向の一端(-X方向側の端)が、他方の平坦部(第1主面部の平坦部)13aよりも幅方向の一端側(-X方向側)に位置している。第1、第2主面部それぞれの平坦部13a,13bの保持部13の幅方向の他端(+X方向側の端)は、保持部13の幅方向の略同じ位置に設けられている。
【0056】
高周波(例えば60~80MHz)で用いられる水晶振動板100では、保持部13の厚みは、例えば30μmであり、第2主面部の平坦部13bの-X方向側の端が、第1主面部の平坦部13aの-X方向側の端よりも、例えば10~20μmだけ-X方向側に位置している。つまり、図11の距離L2が、10~20μmになっている。
【0057】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0058】
上記実施形態では、水晶振動板10に、振動部11と外枠部12とを連結する保持部(ブリッジ部)13が1つのみ設けられたが、保持部13が2つ以上設けられていてもよく、この場合、それぞれの保持部13に上記実施形態の構成を適用すればよい。
【0059】
上記実施形態において、水晶振動板10の振動部11および保持部13の厚みが、外枠部12の厚みよりも薄くなっていてもよい。
【0060】
上記実施形態では、第1封止部材20および第2封止部材30を水晶板によって形成したが、これに限定されるものではなく、第1封止部材20および第2封止部材30を、例えば、ガラスによって形成してもよい。また、第1封止部材20および第2封止部材30を、水晶やガラスなどの脆性材料に限らず、樹脂板や樹脂フィルム等としてもよく、この場合、樹脂板や樹脂フィルム等を水晶振動板10に貼り付けることによって振動部11を封止するようにしてもよい。
【0061】
上記実施形態では、水晶振動子100として、水晶振動板10が第1封止部材20および第2封止部材30の間に挟まれたサンドイッチ構造の水晶振動子を用いたが、これ以外の構造の水晶振動子100を用いてもよい。例えば、凹部を有する、セラミックやガラスや水晶などの絶縁材料から成るベースの内部に水晶振動板10を収容し、当該ベースに蓋を接合した構造の水晶振動子を用いてもよい。
【0062】
上記実施形態では、第2封止部材30の第2主面302の外部電極端子32の数を4つとしたが、これに限定されるものではなく、外部電極端子32の数を、例えば、2つ、6つ、あるいは8つ等としてもよい。また、本発明を水晶振動子100に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば水晶発振器等にも本発明を適用してもよい。
【0063】
この出願は、2021年5月31日に日本で出願された特願2021-091598に基づく優先権を請求する。これに言及することにより、その全ての内容は本出願に組み込まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
10 水晶振動板(圧電振動板)
11 振動部
12 外枠部
13 保持部
13a,13b 平坦部
100 水晶振動子(圧電振動デバイス)
図1
図2
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図11