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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20250128BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20250128BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K7/116
B60K11/04 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023538419
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2022027536
(87)【国際公開番号】W WO2023008197
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2021121586
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 武史
(72)【発明者】
【氏名】山崎 彰一
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-216515(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093138(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 7/116
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
前記回転電機を駆動するインバータと、
前記回転電機と一対の車輪との間で動力を伝達する伝達機構と、
前記回転電機、前記インバータ、及び前記伝達機構を収容するケースと、
前記回転電機に供給する油を吐出するオイルポンプと、
前記ケースの底部に形成された油溜め部と、
前記ケース内における前記油溜め部よりも上方に配置された油貯留部と、を備えた駆動装置であって、
前記伝達機構は、前記油溜め部に溜められた油を掻き上げ
前記油貯留部は、前記伝達機構によって前記油溜め部から掻き上げられた油を貯留し、
前記ケースは、冷却液が流通する流通路を備え、
前記流通路は、前記インバータと冷却液との熱交換が行われる第1熱交換部と、前記油貯留部に貯留された油と冷却液との熱交換が行われる第2熱交換部と、タービンが配置されたタービン配置部と、を備え、
前記流通路に沿って、上流側から下流側に向かって、前記第1熱交換部、前記第2熱交換部、前記タービン配置部の順に配置されており、
前記タービンは、前記タービン配置部を通過する冷却液の流れによって回転し、前記オイルポンプのポンプロータが前記タービンに駆動連結されている、駆動装置。
【請求項2】
前記オイルポンプ及び前記タービンの少なくとも一方が、前記ケース内に配置されている、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記ケースは、前記回転電機を収容する第1収容部と、前記インバータを収容する第2収容部と、を備え、
前記第1収容部と前記第2収容部とが一体的に形成されている、請求項1又は2に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機と、インバータと、ケースと、オイルポンプとを備えた駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-129608号公報には、回転電機(12)が収容されたケース(18)内に、回転電機(12)のコイルエンド(12e)へ冷却用の油を供給するために、機械式オイルポンプ(40)に加えて電動オイルポンプ(44)が設置された車両用の駆動装置(14)が開示されている(背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。この駆動装置(14)では、回転電機(12)の温度に応じて電動オイルポンプ(44)を駆動することで、コイルエンド(12e)など、回転電機(12)の冷却が必要な場合に、機械式オイルポンプ(14)の駆動源である駆動装置(14)内の回転部材の回転状態に拘わらず、冷却用の油を適切に供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-129608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、冷却用に電動オイルポンプを別途備えると、駆動装置のコストの上昇や寸法の大型化を招く。
【0005】
そこで、駆動装置のコストの上昇や寸法の大型化を抑えつつ、適切なタイミングで回転電機に油を供給することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みた、回転電機と、前記回転電機を駆動するインバータと、前記回転電機及び前記インバータを収容するケースと、前記回転電機に供給する油を吐出するオイルポンプと、を備えた駆動装置は、前記ケースが、冷却液が流通する流通路を備え、前記流通路が、前記インバータと冷却液との熱交換が行われる第1熱交換部と、タービンが配置されたタービン配置部と、を備え、前記タービンが、前記タービン配置部を通過する冷却液の流れによって回転し、前記オイルポンプのポンプロータが前記タービンに駆動連結されている。
【0007】
この構成によれば、冷却液の流れによってタービンを回転させ、当該タービンの回転によってポンプロータを駆動することができる。これにより、例えば電動オイルポンプのように、オイルポンプの駆動源を別途備える構成に比べて、オイルポンプの構成を簡素化できる。また、回転電機の駆動力を用いてオイルポンプを駆動する構成に比べて、回転電機とオイルポンプとの間の動力伝達機構が不要であると共に、オイルポンプを駆動するために回転電機の駆動力の損失が生じることも回避できる。また、インバータが発熱し易い状況は回転電機に電力が供給されている状況であるため、インバータを冷却する必要がある状況では回転電機も冷却する必要があることが多い。本構成によれば、冷却液によりインバータを冷却している状況で、当該冷却液によりオイルポンプを駆動して回転電機に油を供給し回転電機を冷却することもできる。これにより、インバータと回転電機との双方を適切な時期に適切に冷却することができる。このように、本構成によれば、駆動装置のコストの上昇や寸法の大型化を抑えつつ、適切なタイミングで回転電機に油を供給することができる。
【0008】
駆動装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】駆動装置の一例を示す模式的断面図
図2】駆動装置の一例を示すスケルトン図
図3】オイルポンプの構成の一例と油及び冷却液の流通経路の一例を示す図
図4】オイルポンプの構成の一例と油及び冷却液の流通経路の他の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、車両に搭載されて車輪を駆動する車両用駆動装置を例として、駆動装置の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明における各部材についての方向は、駆動装置100が車両に組み付けられた状態(車両搭載状態)での方向を表す。また、各部材についての寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態を含む概念である。車両搭載状態において、駆動装置100の回転軸(本実施形態では互いに平行な別軸である第1軸A1、第2軸A2及び第3軸A3、詳細は後述する)に沿った方向を軸方向Lと称する。また、軸方向Lにおける一方側を軸方向第1側L1、他方側を軸方向第2側L2と称する。また、上記の第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3のそれぞれに直交する方向を、各軸を基準とした「径方向」とする。また、駆動装置100が車両に取り付けられた状態で鉛直方向に沿う方向を「上下方向V」とする。また、上下それぞれの方向を示す場合には、上方V1、下方V2と称する。軸方向Lが水平面に平行な状態で駆動装置100が車両に取り付けられる場合には、径方向の1方向と上下方向Vとが一致する。
【0011】
図1及び図2に示すように、駆動装置100は、回転電機2と、回転電機2と車輪Wとの間で動力を伝達する伝達機構3と、回転電機2及び伝達機構3を収容するケース1とを備える。本実施形態において、回転電機2は、車輪Wを駆動する駆動源である。本実施形態では、伝達機構3として、車輪Wに駆動連結された差動歯車機構DFと、回転電機2と差動歯車機構DFとを駆動連結するカウンタギヤ機構CGと、回転電機2とカウンタギヤ機構CGとを駆動連結する入力ギヤIGとが備えられている。差動歯車機構DFは、後述するように、車輪Wと共に第1軸A1上に配置されている。回転電機2は、入力ギヤIGと共に、第1軸A1と平行な別軸である第2軸A2上に配置されている。また、カウンタギヤ機構CGは、第1軸A1及び第2軸A2と平行な第3軸A3上に配置されている。
【0012】
回転電機2は、例えば複数相の交流(例えば3相交流)により動作する回転電機(Motor/Generator)であり、電動機としても発電機としても機能することができる。回転電機2は、不図示の直流電源から電力の供給を受けて力行し、又は、車両の慣性力により発電した電力を当該直流電源に供給する(回生する)。回転電機2は、インバータ装置INV(インバータ)により駆動制御される。本実施形態では、図1に示すように、このインバータ装置INVもケース1内に収容されている。インバータ装置INVは、直流電力と複数相の交流電力との間で電力を変換するインバータ回路(不図示)を備えている。インバータ回路は、交流の回転電機2及び直流電源に接続されて、複数相(例えば3相)の交流と直流との間で電力を変換する。直流電源は、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池(バッテリ)や、電気二重層キャパシタなどにより構成されている。回転電機2が、車両の駆動源の場合、直流電源の定格の電源電圧は、例えば200~400[V]である。
【0013】
インバータ回路は、複数のスイッチング素子を有して構成されている。スイッチング素子には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やSiC-MOSFET(Silicon Carbide - Metal Oxide Semiconductor FET)やSiC-SIT(SiC - Static Induction Transistor)、GaN-MOSFET(Gallium Nitride - MOSFET)などの高周波での動作が可能なパワー半導体素子を適用すると好適である。例えば、インバータ回路は、フリーホイールダイオードも含めて1つのパワーモジュールに一体化されて構成されている。また、インバータ回路の直流側には正負両極間電圧(直流リンク電圧)を平滑する直流リンクコンデンサ(平滑コンデンサ)が備えられている。
【0014】
インバータ回路は、インバータ制御装置(不図示)により制御される。インバータ制御装置は、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として構築され、例えば電流フィードバック制御によりインバータ回路を介して回転電機2を駆動制御する。インバータ制御装置を構成するマイクロコンピュータ等は、インバータ回路に接続される直流電源よりも低電圧(例えば12~24[V])の低圧直流電源から電力を供給されて動作する。このため、インバータ制御装置には、各スイッチング素子に対するスイッチング制御信号(IGBTの場合、ゲート駆動信号)の駆動能力(例えば電圧振幅や出力電流など、後段の回路を動作させる能力)をそれぞれ高めて中継する駆動回路が備えられている。インバータ制御装置は、1枚、又は複数の基板に、上述したようなマイクロコンピュータ、その周辺回路、並びに駆動回路を構成する回路部品が実装されて構成されている。
【0015】
インバータ装置INVは、少なくともインバータ回路(パワーモジュール)を含む。本実施形態では、インバータ装置INVは、上述したようなインバータ制御装置、直流リンクコンデンサ、インバータ回路(パワーモジュール)を含んだユニットとして構成されている。インバータ装置INVは、後述するように、ケース1内部の第2収容部E2に配置され、ボルト等の締結部材によってケース1に固定されている。
【0016】
回転電機2は、ケース1などに固定されたステータ23と、当該ステータ23の径方向内側に回転自在に支持されたロータ21とを有する。本実施形態では、ステータ23は、ステータコア22とステータコア22に巻き回されたステータコイル24とを含み、ロータ21は、ロータコアとロータコアに配置された永久磁石とを含む。回転電機2のロータ21は、ロータ21と一体的に回転するロータ軸20に連結されている。ロータ軸20には、当該ロータ軸20と一体回転するように、入力軸XIが連結されている。ロータ軸20は、ロータ軸受B2を介して回転可能にケース1に支持され、入力軸XIは、入力軸受B1を介して回転可能にケース1に支持されている。入力軸XIには、入力ギヤIGが入力軸XIと一体的に回転するように設けられている。入力ギヤIGは、後述するように、カウンタギヤ機構CGの第1カウンタギヤCG1に噛み合っている。即ち、入力ギヤIGは、伝達機構の一部として機能し、ロータ21と一体的に回転して、カウンタギヤ機構CGに回転電機2の駆動力を伝達する。
【0017】
差動歯車機構DFは、第1軸A1上に配置され、回転電機2の側から伝達される駆動力を一対の車輪Wに分配する。差動歯車機構DFは、互いに噛み合う複数の傘歯車と、当該複数の傘歯車を収容した差動ケースDCとを含んで構成されている。そして、差動歯車機構DFは、回転電機2の側から差動入力ギヤDG1に入力された回転及びトルクを、径方向に沿って配置されていると共に差動入力ギヤDG1と一体的に回転するピニオン軸DAに回転自在に支持されたピニオンギヤDC2に噛み合う一対のサイドギヤDG3を介して一対の出力軸XOに分配して伝達する。本実施形態では、差動歯車機構DFの軸方向第1側L1において第1出力軸XO1に第1車輪W1が連結され、軸方向第2側L2において第2出力軸XO2に第2車輪W2が連結されている。第1出力軸XO1は第1出力軸受B5を介してケース1に回転可能に支持されており、第2出力軸XO2は第2出力軸受B4(図2参照)を介してケース1に回転可能に支持されている。
【0018】
カウンタギヤ機構CGは、第3軸A3上に配置され、入力ギヤIGを介して回転電機2と差動歯車機構DFとを駆動連結している。本実施形態では、カウンタギヤ機構CGは、カウンタ軸XCによって連結された第1カウンタギヤCG1、第2カウンタギヤCG2を有する。即ち、カウンタギヤ機構CGは、第3軸A3上に配置され、入力ギヤIGに噛み合う第1カウンタギヤCG1と、第1カウンタギヤCG1と一体的に回転すると共に差動入力ギヤDG1に噛み合う第2カウンタギヤCG2とを備えている。カウンタ軸XCは、カウンタ軸受B3によってケース1に回転可能に支持されている。
【0019】
上述した通り、本実施形態では、回転電機2と車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に、回転電機2の側から順に、伝達機構3として、入力ギヤIG、カウンタギヤ機構CG、差動歯車機構DFが設けられている。
【0020】
また、本実施形態では、ケース1は、図1に示すように、回転電機2を収容する第1収容部E1と、インバータ装置INVを収容する第2収容部E2とを備えている。そして、本実施形態では、第1収容部E1と第2収容部E2とが一体的に形成されている。即ち、ケース1は、回転電機2(伝達機構3も含む)を収容する第1収容部E1と、インバータ装置INV収容する第2収容部E2とを内部に有して一体形成された本体部分を有して構成されている。ここで、「一体形成」とは、例えば1つの金型鋳造品(die casting)として、共通の材料により形成された一体部材のことを言う。
【0021】
ところで、車輪Wの駆動源となるような回転電機2では、ステータコイル24に流れる電流も大きく、ステータコイル24の電気抵抗により大きな発熱を伴い易い。上述したように、ステータコイル24は、ステータコア22に巻き回されているが、ステータ23における軸方向Lの端部には、巻き回されたステータコイル24の屈曲部がステータコア22から軸方向Lに突出したコイルエンド部24eが形成される。しばしば、このコイルエンド部24eに冷媒を掛けることによって、ステータコイル24が冷却される。ステータコイル24は、当然ながら導電体であり、この冷媒には非導電性の流体、例えば油等が用いられる。
【0022】
ケース1の内部において、ステータコイル24(コイルエンド部24e)へ油を供給するためには、例えば、ケース1の内部にオイルポンプを設置することが考えられる。このようなオイルポンプとして、例えば駆動装置100内の回転部材により駆動されるトロコイドポンプ等の機械式のオイルポンプが配置される場合には、当該回転部材の回転状態によって油の供給が影響を受け、冷却が必要な場合に適切に油を供給できない可能性がある。そこで、例えば、冷却用に電動オイルポンプを別途設置すると、駆動装置100のコストの上昇や寸法の大型化を招く。本実施形態の駆動装置100は、駆動装置100のコストの上昇や寸法の大型化を抑えつつ、適切なタイミングで回転電機2に油を供給することができるようなオイルポンプ8を備えて構成されている点に特徴を有する。以下、オイルポンプ8の構成の一例と油及び冷却液の流通経路の一例を示す図3も参照して説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の駆動装置100は、回転電機2と、回転電機2を駆動するインバータ装置INVと、回転電機2及びインバータ装置INVを収容するケース1と、回転電機2に供給する油を吐出するオイルポンプ8とを備えている。図3に示すように、ケース1は、冷却液が流入する流入口11と、冷却液が流出する流出口12と、冷却液が流通する流通路4とを備えている。尚、ここでは、流入口11と流出口12との間で冷却液が流通する流通路4を例示しているが、流通路4の全体がケース1の内部に配置されていなくてもよい。例えば、流通路4の一部がケース1の外部に配置されていてもよい。流通路4は、インバータ装置INVと冷却液との熱交換が行われる第1熱交換部41と、タービン7が配置されたタービン配置部43とを備えている。タービン7は、タービン配置部43を通過する冷却液の流れによって回転する。オイルポンプ8のポンプロータ88はタービン7に駆動連結されており、タービン7の回転によってポンプロータ88が駆動される。尚、図3には、タービン7がケース1の内部に配置されている形態を例示しているが、流通路4の一部がケース1の外部に配置されている場合には、タービン7がケース1の外部に配置されていてもよい。
【0024】
本実施形態では、冷却液の流れによって回転するタービン7によってポンプロータ88が駆動される。従って、例えば電動オイルポンプのように、ポンプの駆動源を別途備える構成に比べて、オイルポンプ8の構成を簡素化できる。また、例えば回転電機2の駆動力を用いてポンプが駆動される構成に比べて、回転電機2とオイルポンプ8との間の動力伝達機構が不要であると共に、オイルポンプ8を駆動するために回転電機2の駆動力の損失が生じることも回避できる。また、インバータ装置INVが発熱し易い状況は回転電機2に電力が供給されている状況であるため、インバータ装置INVを冷却する必要がある状況では回転電機2も冷却する必要があることが多い。本実施形態では、インバータ装置INVと回転電機2との双方を適切な時期に適切に冷却することができる。即ち、本実施形態では、冷却液によりインバータ装置INVを冷却している状況で、さらに、その冷却液の流れを利用してオイルポンプ8を駆動して回転電機2に油を供給して回転電機2を冷却することもできる。
【0025】
図1に示すように、タービン7とポンプロータ88とはポンプシャフト80を介して連結されている。ポンプシャフト80は、ケース1に回転可能に支持されており、タービン7及びポンプロータ88は、それぞれポンプシャフト80と一体的に回転するように、ポンプシャフト80に連結されている。冷却水によりタービン7が回転すると、ポンプシャフト80と共にポンプロータ88も回転する。タービン7が配置されたタービン室70と、ポンプロータ88が配置されたポンプ室60とは、冷却液と油とが混じり合わないように、シール部材によって液密状態にされている。本例では、タービン室70の側にはタービン側シール部材75が配置され、ポンプ室60の側にはポンプ側シール部材85が配置されている。
【0026】
図3に示すように、オイルポンプ8は、第1油路61を介して油貯留部Pに接続され、第2油路62を介して油を供給する対象である供給対象が配置された空間である対象空間Sに接続されている。換言すれば、第1油路61は、オイルポンプ8の吸入口81と油貯留部Pとを連通する油路6であり、第2油路62は、オイルポンプ8の吐出口82と対象空間Sとを連通する油路6である。
【0027】
ここで、油貯留部Pとは、ケース1の底部に形成されたオイルパン(油溜め部)や、ケース1内におけるオイルパンよりも上方V1に配置されたキャッチタンクである。オイルパンは、重力によって下降した油をケース1の底部において貯留する。オイルパンに溜まった油は、伝達機構3を構成する何れかの回転部材によって掻き上げられ、入力軸受B1、カウンタ軸受B3、第1出力軸受B5、第2出力軸受B4等の軸受Bを潤滑する。キャッチタンクは、掻き上げられた油を、オイルパンに落下する前に受け止めて一時的に貯留する。図3には、油貯留部Pとしてキャッチタンクを例示しているが、当然ながら油貯留部Pはオイルパンであってもよい。
【0028】
また、本実施形態において、油の供給対象にはステータコイル24のコイルエンド部24eが含まれる。この場合、対象空間Sは、コイルエンド部24eが配置されている空間に相当する。尚、図1に示すように、ロータ軸受B2は、コイルエンド部24eと上下方向視で重複する位置に配置されており、コイルエンド部24eを冷却した油の落下によって潤滑することが可能である。従って、ロータ軸受B2も、油の供給対象とすることができ、ロータ軸受B2の配置空間も対象空間Sとすることができる。当然ながら、その他の軸受Bや、ギヤの噛み合い等も供給対象とすることができ、それらの配置空間を対象空間Sとすることができる。
【0029】
尚、冷却液よって回転するタービン7を駆動力源とするオイルポンプ8により吐出される油の油圧は、第2油路62を通って対象空間Sに油を導くことができる程度の圧力で充分である。例えば、摩擦係合装置等を駆動するような油圧に比べて低い油圧で充分である。従って、このような簡素な構成によって、小規模にオイルポンプ8を構成することができる。
【0030】
図1に示すように、ケース1の内部には、対象空間S(コイルエンド部24e)に油を供給するための油供給口62aが設けられている。オイルポンプ8の吐出口82は、第2油路62を介して油供給口62aに連通している。油供給口62aは、ステータコイル24のコイルエンド部24eに対応して配置されており、非導電性部材Zで構成されている。
【0031】
上述したように、ステータコイル24には高電圧が印加される。油供給口62aが、非導電性部材Zで構成されていることで、短絡が発生する可能性を低減させつつ、油供給口62aをステータコイル24に接近させて配置することができる。従って、油によりステータコイル24を効果的に冷却することができる。また、インバータ装置INVの発熱とステータコイル24の発熱とは、同時期に起きることが多いので、冷却水の流れを利用して、油による冷却を効率的に行うことができる。
【0032】
ところで、冷却水は、流速が速い方が、冷却効果が高い。また、流通路4は冷却水の抵抗となるため、流通路4は、可能な限り短く配設置されることが好ましい。本実施形態の駆動装置100では、下記のように流通路4が短くなるように構成されている。
【0033】
本実施形態では、図1及び図3に示すように、オイルポンプ8及びタービン7の双方がケース1内に配置されている。なお、図示は、省略するが、オイルポンプ8及びタービン7の少なくとも一方が、ケース1内に配置されていると好適である。オイルポンプ8がケース1内に配置される場合には、オイルポンプ8がケース1の外に配置された構成に比べて、オイルポンプ8から回転電機2までの油路6を短くし易い。また、タービン7がケース1内に配置される場合には、タービン7がケース1の外に配置された構成に比べて、流通路を短くし易い。
【0034】
また、上述したように、ケース1は、回転電機2を収容する第1収容部E1と、インバータ装置INVを収容する第2収容部E2とを備えており、これら第1収容部E1と第2収容部E2とは一体的に形成されている。このため、第1収容部E1と第2収容部E2とが分かれている構成に比べて、流通路4を短くし易い。
【0035】
また、図3に示すように、本実施形態では、駆動装置100は、ケース1内に設けられた油貯留部Pに貯留された油と冷却液との熱交換が行われる第2熱交換部42も備えている。そして、冷却液の流通路4は、冷却水貯留部Qから流入口11を経て、第1熱交換部41、第2熱交換部42、タービン配置部43を記載の順に通り、流出口12から冷却水貯留部Qへ戻るように形成されている。換言すれば、第1熱交換部41、第2熱交換部42、タービン配置部43は、流入口11から流出口12へ向かって、即ち上流側から下流側に向かって、流通路4に沿って、第1熱交換部41、第2熱交換部42、タービン配置部43の順に配置されている。
【0036】
上述したように、第1熱交換部41は、インバータ装置INVとの熱交換によりインバータ装置INVを冷却する。さらに、第2熱交換部42を備えることにより、油貯留部Pに貯留されている油との熱交換によって油を冷却することができる。即ち、冷却液によりケース1内の油とインバータ装置INVとの双方を冷却することができる。上述したように、油貯留部Pに貯留された油は、オイルポンプ8によって回転電機2のコイルエンド部24eへ供給される。冷却液により冷却された油が回転電機2に供給されることで、回転電機2も効果的に冷却することができる。
【0037】
一方、冷却液がタービン7を回転させると、冷却液の流速が低下する。熱交換は、冷却液の流速が速い方が効果的に行われる。第1熱交換部41及び第2熱交換部42は、流通路4においてタービン配置部43よりも上流側に配置されている。従って、タービン7を回転させることによる流速の低下が生じるよりも前に第1熱交換部41、第2熱交換部42において効率的に冷却を行うことができる。また、冷却液が、第2熱交換部42よりも先に第1熱交換部41を通ることで、熱を帯びた油からの熱を吸収して温度が上昇する前の冷却液により、適切にインバータ装置INVを冷却することができる。つまり、より冷却能力の高い冷却液によってインバータ装置INVを冷却することができる。冷却水貯留部Qは、多くの場合、冷却水を放熱させる機能を有して構成されている。従って、冷却液は冷却水で冷却された後、駆動装置100に供給され、効果的にインバータを冷却し、次いで油を冷却し、タービン7を駆動することができる。
【0038】
以上、説明したように、本実施形態によれば、駆動装置のコストの上昇や寸法の大型化を抑えつつ、適切なタイミングで回転電機に油を供給することができる。
【0039】
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0040】
(1)上記においては、回転電機2を収容する第1収容部E1と、インバータ装置INVを収容する第2収容部E2とが一体的に形成されている形態を例示した。しかし、これらが別体として形成され、例えば締結部材等によって締結されて一体化されている形態を妨げるものではない。
【0041】
(2)上記においては、タービン7とポンプロータ88とがポンプシャフト80を介して一体的に回転するように連結されている形態を例示した。しかし、タービン7とポンプロータ88とは、連動して回転するように連結されていれば良く、例えば、ギヤ機構、チェーン、ベルト等を介して駆動連結されていてもよい。また、磁気カップリングなど、非接触の連結手段によってタービン7とポンプロータ88とが連結されていてもよい。
【0042】
(3)上記においては、オイルポンプ8及びタービン7の少なくとも一方が、ケース1内に配置されている形態を例示して説明した。しかし、冷却水によってタービン7を回し、タービン7によりポンプロータ88が駆動されるのであれば、オイルポンプ8及びタービン7の双方がケース1の外部に配置されている構成を妨げるものではない。
【0043】
(4)上記においては、油供給口62aが、ステータコイル24に対向して配置され、油供給口62aが非導電性部材Zで構成されている形態を例示した。しかし、油供給口62aは、ケース1と一体的に構成されていてもよい。例えば、油供給口62aは、導電性部材によって構成されていてもよい。この場合、絶縁距離を確保するために、油供給口62aが、ステータコイル24から離間して配置されていると好適である。
【0044】
(5)上記においては、流通路4が、第1熱交換部41及び第2熱交換部42を備える形態を例示したが、流通路4は、第2熱交換部42を備えることなく、第1熱交換部41とタービン配置部43とを備えて構成されていてもよい。尚、この場合においては、流通路4に沿って、上流側から下流側に向かって、第1熱交換部41、タービン配置部43の順に配置されていると好適である。しかし、逆の順に配置されていることを妨げるものではない。
【0045】
(6)上記においては、流通路4が、第1熱交換部41、第2熱交換部42、タービン配置部43を備える場合に、流通路4に沿って、上流側から下流側に向かって、第1熱交換部41、第2熱交換部42、タービン配置部43の順に配置されている形態を例示した。タービン配置部43が流通路4における上流側に配置された場合には、冷却液の流速が減速され、下流側の冷却効率を低下させる可能性がある。しかし、流速が低下しても冷却性能が充分に要求仕様を満たすような場合には、タービン配置部43が、第1熱交換部41及び第2熱交換部42の何れか又は双方よりも上流側に配置されてもよい。同様に、第1熱交換部41と第2熱交換部42の順序も、逆であってもよい。
【0046】
(7)上記においては、図3を参照して、流通路4が、第1熱交換部41、第2熱交換部42、タービン配置部43を備える場合に、流通路4に沿って、上流側から下流側に向かって、第1熱交換部41、第2熱交換部42、タービン配置部43の順に直列に配置されている形態を例示した。しかし、流通路4は、図4に例示するように、第1熱交換部41を通る経路と、第2熱交換部42を通る経路とが並列していてもよい。また、図4に例示した形態では、上流側で第1熱交換部41を通る経路と第2熱交換部42を通る経路とに分岐した流通路4が、再び合流し、合流した箇所よりも下流側にタービン配置部43が配置されている。しかし、図示は省略するが、このように合流することなく、第1熱交換部41を通る経路と、第2熱交換部42を通る経路との何れか一方の下流側にタービン配置部43が配置される形態であってもよい。この場合、何れか他方の下流側と、タービン配置部43の下流側とにおいて、分岐した経路が合流してもよい。
【0047】
また、ここでは、ケース1内において、流通路4が分岐し、合流する形態を例示したが、流入口11及び流出口12が2つずつ設けられ、第1熱交換部41を通る経路と第2熱交換部42を通る経路とが、それぞれ独立して配置されている形態であってもよい。また、1つの流入口11と2つの流出口12とが設けられ、分岐した流通路4が合流することなく、それぞれの流出口12に導かれる形態であってもよい。また、2つの流入口11と1つの流出口12とを備え、独立した経路で流入した冷却液が、1つの経路に合流して1つの流出口12から流出する形態であってもよい。
【0048】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した駆動装置(100)の概要について簡単に説明する。
【0049】
1つの態様として、駆動装置(100)は、回転電機(2)と、前記回転電機(2)を駆動するインバータ(INV)と、前記回転電機(2)及び前記インバータ(INV)を収容するケース(1)と、前記回転電機(2)に供給する油を吐出するオイルポンプ(8)とを備えた駆動装置(100)であって、前記ケース(1)は、冷却液が流通する流通路(4)を備え、前記流通路(4)は、前記インバータ(INV)と冷却液との熱交換が行われる第1熱交換部(41)と、タービン(7)が配置されたタービン配置部(43)とを備え、前記タービン(7)は、前記タービン配置部(43)を通過する冷却液の流れによって回転し、前記オイルポンプ(8)のポンプロータ(88)が前記タービン(7)に駆動連結されている。
【0050】
この構成によれば、冷却液の流れによってタービン(7)を回転させ、当該タービン(7)の回転によってポンプロータ(88)を駆動することができる。これにより、例えば電動オイルポンプのように、オイルポンプの駆動源を別途備える構成に比べて、オイルポンプ(8)の構成を簡素化できる。また、回転電機(2)の駆動力を用いてオイルポンプを駆動する構成に比べて、回転電機(2)とオイルポンプ(8)との間の動力伝達機構が不要であると共に、オイルポンプ(8)を駆動するために回転電機(2)の駆動力の損失が生じることも回避できる。また、インバータ(INV)が発熱し易い状況は回転電機(2)に電力が供給されている状況であるため、インバータ(INV)を冷却する必要がある状況では回転電機(2)も冷却する必要があることが多い。本構成によれば、冷却液によりインバータ(INV)を冷却している状況で、当該冷却液によりオイルポンプ(8)を駆動して回転電機(2)に油を供給し回転電機(2)を冷却することもできる。これにより、インバータ(INV)と回転電機(2)との双方を適切な時期に適切に冷却することができる。このように、本構成によれば、駆動装置(100)のコストの上昇や寸法の大型化を抑えつつ、適切なタイミングで回転電機(2)に油を供給することができる。
【0051】
また、駆動装置(100)は、前記オイルポンプ(8)及び前記タービン(7)の少なくとも一方が、前記ケース(1)内に配置されていると好適である。
【0052】
例えば、オイルポンプ(8)がケース(1)内に配置される場合には、オイルポンプ(8)がケース(1)の外に配置された構成に比べて、オイルポンプ(8)から回転電機(2)までの油路(6)を短くし易い。また、タービン(7)がケース(1)内に配置される場合には、タービン(7)がケース(1)の外に配置された構成に比べて、流通路を短くし易い。
【0053】
また、駆動装置(100)は、前記ケース(1)が、前記回転電機(2)を収容する第1収容部(E1)と、前記インバータ(INV)を収容する第2収容部(E2)とを備え、前記第1収容部(E1)と前記第2収容部(E2)とが一体的に形成されていると好適である。
【0054】
この構成によれば、第1収容部(E1)と第2収容部(E2)とが分かれている構成に比べて、流通路(4)を短くし易い。。
【0055】
また、駆動装置(100)は、前記流通路(4)に沿って、上流側から下流側に向かって、前記第1熱交換部(41)、前記タービン配置部(43)の順に配置されていると好適である。
【0056】
冷却液がタービン(7)を回転させると、冷却液の流速が低下する。熱交換は、冷却液の流速が速い方が効果的に行われる。本構成によれば、第1熱交換部(41)は、流通路(4)においてタービン配置部(43)よりも上流側に配置されている。従って、タービン(7)を回転させることによる流速の低下が生じるよりも前に第1熱交換部(41)において効率的に冷却を行うことができる。
【0057】
また、駆動装置(100)は、前記ケース(1)内に設けられた油貯留部(P)に貯留された油と冷却液との熱交換が行われる第2熱交換部(42)をさらに備え、前記流通路(4)に沿って、上流側から下流側に向かって、前記第1熱交換部、前記第2熱交換部、前記タービン配置部の順に配置されていると好適である。
【0058】
インバータ装置(INV)との熱交換によりインバータ装置(INV)を冷却する第1熱行幹部(41)に加えて、さらに、第2熱交換部(42)を備えることにより、油貯留部(P)に貯留されている油との熱交換によって油を冷却することができる。即ち、冷却液によりケース(1)内の油とインバータ装置(INV)との双方を冷却することができる。例えば、油貯留部(P)に貯留された油は、オイルポンプ(8)によって回転電機(2)
のコイルエンド部(24e)などの冷却対象へ供給され、当該冷却対象を冷却することができる。冷却液により冷却された油が冷却対象に供給されることで、インバータ装置(INV)だけではなく、当該冷却対象も効果的に冷却することができる。また、第1熱交換部(41)及び第2熱交換部(42)は、流通路(4)においてタービン配置部(43)よりも上流側に配置されている。冷却液がタービン(7)を回転させると、冷却液の流速が低下する。また、熱交換は、冷却液の流速が速い方が効果的に行われる。本構成によれば、タービン(7)を回転させることによる流速の低下が生じるよりも前に第1熱交換部(41)、第2熱交換部(42)において効率的に冷却を行うことができる。また、冷却液が、第2熱交換部(42)よりも先に第1熱交換部(41)を通ることで、熱を帯びた油からの熱を吸収して温度が上昇する前の冷却液により、適切にインバータ装置(INV)を冷却することができる。つまり、より冷却能力の高い冷却液によってインバータ装置(INV)を冷却することができる。
【符号の説明】
【0059】
1:ケース、2:回転電機、4:流通路、6:油路、7:タービン、8:オイルポンプ、11:流入口、12:流出口、21:ロータ、23:ステータ、41:第1熱交換部、42:第2熱交換部、43:タービン配置部、62a:油供給口、82:吐出口、88:ポンプロータ、100:駆動装置、E1:第1収容部、E2:第2収容部、INV:インバータ、P:油貯留部、Z:非導電性部材
図1
図2
図3
図4