(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】粘着剤および粘着剤組成物、粘着シート、積層体および該積層体を備えるディスプレイ
(51)【国際特許分類】
C09J 133/06 20060101AFI20250128BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20250128BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20250128BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J11/06
C09J7/38
B32B27/00 M
(21)【出願番号】P 2024015205
(22)【出願日】2024-02-02
【審査請求日】2024-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2023144832
(32)【優先日】2023-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023181269
(32)【優先日】2023-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 好映
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-529090(JP,A)
【文献】特開2015-040237(JP,A)
【文献】特表2014-514389(JP,A)
【文献】バイオマスプラスチック度の計算方法の国際規格ISO 16620シリーズが発行,産総研,2015年04月10日,p.1-3,https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2015/pr20150410_2/pr20150410_2.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー混合物の共重合体であるアクリル系ポリマー(A)を含む粘着剤であって、
モノマー混合物100質量%中に、
下記モノマー(a1)を30質量%以上99.5質量%未満と、
下記モノマー(a2)を0.1質量%以上70質量%未満と、を含有し、
さらに、下記モノマー(a3)とカルボキシ基を有するモノマーを任意に含有し、
下記モノマー(a3)を含有する場合、モノマー混合物100質量%中の下記モノマー(a3)の含有率が30質量%以下であり、
カルボキシ基を有するモノマーを含有する場合、モノマー混合物100質量%中のカルボキシ基を有するモノマーの含有率が0.5質量%未満であり、
下記モノマー(a1)はバイオマスモノマーであることを特徴とする粘着剤。
(a1)2-オクチル(メタ)アクリレート
(a2)ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上のモノマー(但し、カルボキシ基を有するモノマーおよびヒドロキシ基を有するモノマーを除く)
(a3)モノマー(a1)、モノマー(a2)、カルボキシ基を有するモノマー、およびヒドロキシ基を有するモノマー以外のその他モノマー
【請求項2】
モノマー混合物がさらにヒドロキシ基を有するモノマーを含有し、モノマー混合物100質量%中に、カルボキシ基を有するモノマーおよびヒドロキシ基を有するモノマーを合計で0.5質量%以上30質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の粘着剤。
【請求項3】
請求項1に記載の粘着剤と硬化剤(B)とを含み、硬化剤(B)がイソシアネート系硬化剤およびエポキシ系硬化剤の少なくとも一方を含む粘着剤組成物。
【請求項4】
さらに、アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して粘着付与樹脂(D)を50質量部未満含むことを特徴とする請求項
3に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1または2記載の粘着剤または、請求項3
もしくは4記載の粘着剤組成物から得られることを特徴とする粘着剤層。
【請求項6】
Hazeが1.0以下であることを特徴とする請求項5に記載の粘着剤層。
【請求項7】
40GHzにおける誘電率が5.0以下であることを特徴とする請求項5に記載の粘着剤層。
【請求項8】
40GHzにおける誘電正接が0.1以下であることを特徴とする請求項5に記載の粘着剤層。
【請求項9】
屈折率が1.45以上1.52未満であることを特徴とする請求項5に記載の粘着剤層。
【請求項10】
ガラス接着力が10N/25mm以上であることを特徴とする請求項5に記載の粘着剤層。
【請求項11】
SUS接着力が5N/25mm以上であることを特徴とする請求項5に記載の粘着剤層。
【請求項12】
請求項5に記載の粘着剤層と剥離フィルムを備えた、粘着シート。
【請求項13】
剥離フィルムの厚みが200μm未満であることを特徴とする請求項12に記載の粘着シート。
【請求項14】
請求項5に記載の粘着剤層と基材を備えた、積層体。
【請求項15】
基材の厚みが500μm未満であることを特徴とする請求項14に記載の積層体。
【請求項16】
基材が光透過性基材であることを特徴とする請求項14に記載の積層体。
【請求項17】
全光線透過率が60%以上であることを特徴とする請求項16に記載の積層体。
【請求項18】
請求項16に記載の積層体、偏光板および光学素子を備えた、ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤および粘着剤組成物、粘着シート、積層体および該積層体を備えるディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤から形成した粘着剤層を有する粘着シートは、取り扱いが容易であることから、ラベル用途や医療用途等幅広い分野で使用されている。さらに液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OLED)等様々な光学ディスプレイにも広く使用される。また、光学ディスプレイは、表示装置としての利用に加えてタッチパネルのような入力装置として利用されている。タッチパネルには、表面の保護を目的としてカバーパネルが設置される。通常、これら光学ディスプレイを構成する部材の貼り合わせは、粘着剤層を介して行われる。その中でも、マーキングフィルムやウィンドウフィルム、自動車部材、光学ディスプレイ等、長期の使用が想定される用途に用いられる粘着剤は、使用中のはがれを防ぐため被着体に対する高粘着力が必要とされる。粘着シートを金属製の被着体等に貼り合わせる用途の場合、粘着剤中に含まれる成分によって被着体が腐食してしまうと、製品としての劣化を引き起こすことがあるため、耐腐食性を有する粘着剤が求められている。
【0003】
一方、粘着シートの作成時に都合よくコーティングするために、粘着剤は低粘度に希釈、調整され使用されるのが一般的である。その粘度調整の際に使用される溶剤に関してはコスト、ハンドリングの観点から出来るだけ含有量を減らすことが求められている。また調整された溶液の固形分が低い場合には粘着剤をより厚く、均一に塗ることが困難になる傾向があるため、より高い固形分にできる低粘度の粘着剤が求められている。
【0004】
特許文献1や特許文献2に記載の粘着剤は、固形分35%程度に調整されている。発明者らが検討したところ、特許文献1および特許文献2に記載の粘着剤では、固形分35%以上に調整した場合は粘度が高くなりすぎ、コーティングが困難になるため固形分を上げることができなかった。その結果使用する溶剤のコストが多くかかってしまうことや粘着剤の厚塗りが困難なことが大きな課題になっている。
【0005】
また、特許文献3には低い粘度を有する粘着剤組成物が開示されているが、被着体に対する粘着力に課題があった。
上記要求性能の高まりに加えて、粘着シートが用いられる産業界において、石油資源の枯渇や、石油由来製品の燃焼による二酸化炭素の排出が問題視されている。そこで、包装材分野を皮切りに光学分野、半導体分野等さまざまな産業において、石油由来材料に代えて生物由来材料を用いる事による石油資源の節約が試みられている。
アクリル系ポリマーを主成分とする粘着剤において、生物由来材料の比率を向上させる方法として、生物から産生される直鎖アルキルアルコールと(メタ)アクリル酸をエステル化して得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含むモノマー混合物を共重合してアクリル系ポリマーを得る方法が挙げられる。
また粘着付与樹脂に関しても天然由来成分から作られる製品があり、これを選択的に使用することで環境調和型の製品化を達成することができる。
環境調和型材料の比率を高めることによってより石油資源の節約に貢献できるが、限定された環境調和型材料を使用することになり、本来得られていた性能、例えば粘着力等の固定性に課題があるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-264092号公報
【文献】特開2012-173354号公報
【文献】特表2010-506979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、環境調和型材料の比率を高めることによってより石油資源の節約に貢献することができる粘着剤であり、また被着体に対して高い粘着力性能を持ち、耐腐食性に優れ、高固形分化が可能な低粘度の粘着剤、それを用いた粘着シート、積層体および該積層体を備えるディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、モノマー混合物の共重合体であるアクリル系ポリマー(A)を含む粘着剤であって、モノマー混合物100質量%中に、
下記モノマー(a1)を30質量%以上99.5質量%未満と、
下記モノマー(a2)を0.1質量%以上70質量%未満と、を含有し、
さらに、下記モノマー(a3)を30質量%以下と、
カルボキシ基を有するモノマーを0.5質量%未満と、を含有しても良いことを特徴とする粘着剤。
(a1)2-オクチル(メタ)アクリレート
(a2)ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上の(メタ)アクリレートモノマー(但し、カルボキシ基を有するモノマーおよびヒドロキシ基を有するモノマーを除く)
(a3)モノマー(a1)、モノマー(a2)、カルボキシ基を有するモノマー、およびヒドロキシ基を有するモノマー以外のその他モノマーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により石油資源の節約に貢献することができる粘着剤であり、また被着体に対して高い粘着力性能を持ち、高固形分化が可能な低粘度の粘着剤、それを用いた粘着シート、積層体および該積層体を備えるディスプレイの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の積層体を、部分的に示す概略断面図である。
【
図2】本発明の積層体の使用例であるディスプレイを、部分的に示す概略断面図である。
【
図3】本発明の粘着シートを、部分的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示に係る粘着剤組成物、粘着シート、積層体および該積層体を備えるディスプレイは、下記[1]~[13]の構成を有する。
【0012】
[1]モノマー混合物の共重合体であるアクリル系ポリマー(A)を含む粘着剤であって、
モノマー混合物100質量%中に、
下記モノマー(a1)を30質量%以上99.5質量%未満と、
下記モノマー(a2)を0.1質量%以上70質量%未満と、を含有し、
さらに、下記モノマー(a3)を30質量%以下と、
カルボキシ基を有するモノマーを0.5質量%未満と、を含有しても良いことを特徴とする粘着剤。
(a1)2-オクチル(メタ)アクリレート
(a2)ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上の(メタ)アクリレートモノマー(但し、カルボキシ基を有するモノマーおよびヒドロキシ基を有するモノマーを除く)
(a3)モノマー(a1)、モノマー(a2)、カルボキシ基を有するモノマー、およびヒドロキシ基を有するモノマー以外のその他モノマー
[2]モノマー混合物100質量%中に、モノマー(a2)を0.1質量%以上50質量%未満含有することを特徴とする前記粘着剤。
[3]モノマー(a2)がメチル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートおよびフェニル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる前記粘着剤。
[4]モノマー混合物がさらにヒドロキシ基を有するモノマーを含有することを特徴とする、前記粘着剤。
[5]モノマー混合物100質量%中に、カルボキシ基を有するモノマーおよびヒドロキシ基を有するモノマーを合計で0.5質量%以上30質量%以下含むことを特徴とする前記粘着剤。
[6]バイオマス度が30%以上であること特徴とする前記粘着剤。
[7]前記粘着剤と硬化剤(B)とを含むことを特徴とする粘着剤組成物。
[8]硬化剤(B)がイソシアネート系硬化剤およびエポキシ系硬化剤の少なくとも一方を含む前記粘着剤組成物。
[9]さらにシランカップリング剤(C)を含むことを特徴とする前記粘着剤組成物。
[10]ゲル分率が、40%以上である前記粘着剤組成物。
[11]さらに、アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して粘着付与樹脂(D)を50質量部未満含むことを特徴とする前記粘着剤組成物。
[12]粘着付与樹脂(D)がバイオマス度80%以上であることを特徴とする前記粘着剤組成物。
[13] 前記粘着剤または、前記粘着剤組成物から得られることを特徴とする粘着剤層。
[14]Hazeが1.0以下であることを特徴とする前記粘着剤層。
[15]40GHzにおける誘電率が5.0以下であることを特徴とする前記粘着剤層。
[16]40GHzにおける誘電正接が0.1以下であることを特徴とする前記粘着剤層。
[17]屈折率が1.45以上1.52未満であることを特徴とする前記粘着剤層。
[18]ガラス接着力が10N/25mm以上であることを特徴とする、[13]に記載の粘着剤層。
[19]SUS接着力が5N/25mm以上であることを特徴とする、前記粘着剤層。
[20] 前記粘着剤層と剥離フィルムを備えた、粘着シート。
[21] 剥離フィルムの厚みが200μm未満であることを特徴とする前記粘着シート。
[22] 前記粘着剤層と基材を備えた積層体。
[23]基材の厚みが500μm未満であることを特徴とする、前記積層体。
[24]基材が光透過性基材であることを特徴とする、前記積層体。
[25]全光線透過率が60%以上であることを特徴とする、前記積層体。
[26] 前記積層体、偏光板および光学素子を備える、ディスプレイ。
【0013】
以下、本発明の組成物、粘着シート、積層体およびディスプレイについて説明するが、これに限定されない。
なお、本明細書では、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートを含み、(メタ)アクリロキシ基とは、アクリロキシ基およびメタクリロキシ基を含む。モノマーとは、エチレン性不飽和基を有する単量体である。
また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。また、「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。換言すると、本明細書の「シート」は、厚みの薄いフィルム状のものも含まれ、本明細書の「フィルム」は、厚みのあるシート状のものも含まれるものとする。
さらに、被着体とは、粘着シートの粘着剤層を貼り付ける相手方を指す。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0014】
≪粘着剤≫
本発明の粘着剤は、アクリル系ポリマー(A)を含む。
【0015】
<アクリル系ポリマー(A)>
アクリル系ポリマー(A)は、モノマー混合物の共重合体であって、モノマー混合物100質量%中に、
下記モノマー(a1)を30質量%以上99.5質量%未満と、
下記モノマー(a2)を0.1質量%以上70質量%未満と、を含有し、
さらに、下記モノマー(a3)を30質量%以下と、
カルボキシ基を有するモノマーを0.5質量%未満と、を含有しても良いことを特徴とする。
(a1)2-オクチル(メタ)アクリレート
(a2)ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上の(メタ)アクリレートモノマー(但し、カルボキシ基を有するモノマーおよびヒドロキシ基を有するモノマーを除く)
(a3)モノマー(a1)、モノマー(a2)、カルボキシ基を有するモノマー、およびヒドロキシ基を有するモノマー以外のその他モノマー
【0016】
[モノマー(a1)]
モノマー(a1)は、2-オクチル(メタ)アクリレートを指し、下記式(1)で示される。モノマー(a1)はバイオマスモノマーである。
(式1)
(R1=H、CH
3)
(a1)の含有率はモノマー混合物100質量%中に30質量%以上、99.5質量%未満である。(a1)の含有率が30質量%未満であると粘着剤の粘度が上昇する、もしくは粘着力が低下するため好ましくない。(a1)の含有率の下限は、30質量%以上であれば所望の効果を得ることができるが、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。(a1)の含有率が高いほど石油資源の節約に貢献することができるため好ましい。
【0017】
[モノマー(a2)]
モノマー(a2)は、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上のモノマーである。但し、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上のモノマーであっても、カルボキシ基およびヒドロキシ基を有するものは除く。
ホモポリマーのガラス転移温度(℃)は、各種モノマーの販売元からの情報、もしくは「Polymer Handbook 3rd Edition」(A WILEY-INTERSCIENCE PUBLICATION、1989年)に記載された値から知ることができる。
【0018】
モノマー(a2)の例として、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、ter-ブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
凝集力や接着力の向上の点で、モノマー(a2)は、メチル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれることが好ましい。また(a2)は環境を配慮してバイオマスモノマーであるイソボルニル(メタ)アクリレートを使用することがより好ましい。
【0019】
(a2)の含有率は、モノマー混合物100質量%中、0.1質量%以上70質量%未満である。0.1質量%以上70質量%未満含有することにより凝集力や接着力を確保することができる。5質量%以上50質量%未満であることがより好ましく、さらに好ましくは3質量%以上30質量%未満である。
【0020】
[モノマー(a3)]
モノマー(a3)は、モノマー(a1)、モノマー(a2)、カルボキシ基を有するモノマー、およびヒドロキシ基を有するモノマー以外のその他モノマーであり、特に限定されない。
またモノマー(a3)は環境を配慮してバイオマスモノマーである(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、そのバイオマス度が高い(メタ)アクリレートを使用することがより好ましい。
【0021】
(a3)は、含有しても含有しなくても良いが、含有する場合の含有率は、モノマー混合物100質量%中、30質量%以下である。30質量%以下含有することにより、粘着剤の粘度上昇を抑制することができる。粘度上昇を抑制するために、その含有率は20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0022】
アクリル系ポリマー(A)を構成するモノマー混合物は、さらにカルボキシ基を有するモノマーおよびヒドロキシ基を有するモノマーの少なくとも一方を含むことが好ましい。カルボキシ基を有するモノマーおよびヒドロキシ基を有するモノマーの両方を含んでも良いし、いずれか一方のみを含んでも良い。カルボキシ基を有するモノマーおよびヒドロキシ基を有するモノマーの少なくとも一方を含むことで、粘着層の凝集力を高まり、粘着力および耐熱性を高めやすくなる。酸による被着体への腐食を防ぐ点で、ヒドロキシ基を有するモノマーを含むことがより好ましい。
【0023】
カルボキシ基を有するモノマーおよびヒドロキシ基を有するモノマーの合計含有率は、モノマー混合物100質量%中0.5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上21質量%以下である。0.5質量%以上30質量%以下であることにより、硬化を促進したり湿熱白化したりするのを防ぐことができる。
酸による被着体への腐食を防ぐために、カルボキシ基を有するモノマーを含有する場合、モノマー混合物100質量%中のカルボキシ基を有するモノマーの含有率は、0.5質量%未満である。
【0024】
カルボキシ基を有するモノマーとしては分子内にカルボキシ基を有するモノマーであれば制限されず、具体的には、(メタ)アクリル酸、アクリル酸p-カルボキシベンジル、アクリル酸β-カルボキシエチル、マレイン酸、モノエチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等が挙げられる。
これらのうち、粘着力の観点で(メタ)アクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0025】
ヒドロキシ基を有するモノマーは、分子内にヒドロキシ基を有するモノマーであれば制限されず、具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
これらのうち、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが粘着力および耐湿熱性の観点より好ましい。
【0026】
(アクリル系ポリマー(A)の製造)
アクリル系ポリマー(A)は、前記モノマー混合物を重合し、製造することができる。
重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等公知の重合方法が可能であるが、溶液重合が好ましい。溶液重合で使用する溶媒は、例えば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が好ましい。重合温度は60~120℃の沸点反応が好ましい。また、重合時間は5~12時間程度が好ましい。
【0027】
重合に使用する重合開始剤は、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤は、過酸化物およびアゾ化合物が一般的である。
過酸化物は、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド;
t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;
2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレート、等のパーオキシケタール;
クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルシクロヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;
ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;
ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0028】
アゾ化合物は、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等の2,2’-アゾビスブチロニトリル;
2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等の2,2’-アゾビスバレロニトリル;
2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)等の2,2’-アゾビスプロピオニトリル;
1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等の1,1’-アゾビス-1-アルカンニトリル等が挙げられる。
【0029】
重合開始剤は、前記モノマー混合物100質量部に対して、0.01~10質量部を使用することが好ましく、0.1~2質量部がより好ましい。
【0030】
(重量平均分子量(Mw))
アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は特に限定されないが、200万以下が好ましく、100万以下がさらに好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定するポリスチレン換算の値である。
【0031】
≪粘着剤組成物≫
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー(A)を含有する粘着剤と硬化剤(B)とを含有する。また、必要に応じてシランカップリング剤(C)および粘着付与樹脂(D)を含有することができる。
【0032】
<硬化剤(B)>
本発明の粘着剤組成物は硬化剤(B)を含み、硬化剤(B)は、粘着剤組成物に架橋構造をもたらすものであれば特に限定されず使用することができる。硬化剤の配合により粘着剤層の凝集力が向上し、粘着力、耐熱性、耐光性が向上する。
硬化剤(B)は、イソシアネート系硬化剤およびエポキシ系硬化剤の少なくとも一方を含むことで粘着剤の凝集力を適度に高めることができ、その他物性に悪影響を与えにくい点で好ましい。イソシアネート系硬化剤およびエポキシ系硬化剤の少なくとも一方を含んでいれば、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤以外の公知の硬化剤を併用しても良い。
【0033】
イソシアネート系硬化剤は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートである。イソシアネートとしては例えば、芳香族ポリイソシアネート系、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体が好ましく、耐黄変性の観点から脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体がさらに好ましい。
【0034】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0037】
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0038】
前記ビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物である。ビュレット体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体が挙げられる。
【0039】
前記ヌレート体は、イソシアネートモノマーの3量体である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体等が挙げられる。
【0040】
前記アダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物である。アダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6-ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物等が挙げられる。
【0041】
イソシアネート化合物は、十分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体、及びヌレート体がより好ましい。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体がより好ましい。
【0042】
エポキシ系硬化剤は、例えばグリセリンジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1、3-ビス(N、N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0043】
硬化剤(B)は、アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して0.02~4質量部含むことが好ましく、0.04~1質量部含むことがより好ましい。含有量が0.02質量部以上になると凝集力がより向上し、4質量部以下になると凝集力と柔軟性を両立しやすくなるために充分な粘着力と耐熱性、耐光性を得やすい。
【0044】
<シランカップリング剤(C)>
本発明の粘着剤組成物はシランカップリング剤(C)を含むことが好ましい。シランカップリング剤(C)を含むことで、粘着力、耐熱性、耐湿熱白化性、耐光性を向上させることができる。シランカップリング剤(C)はアクリル系ポリマー(A)100質量部に対して0.05~0.2質量部含むことが好ましい。0.05~0.2質量部とすることで耐熱性、耐アウトガス性、耐光性を両立することが容易となる。
【0045】
シランカップリング剤(C)としては、(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物、ビニル基を有するアルコキシシラン化合物、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物、メルカプト基を有するアルコキシシラン化合物、またはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
市販品として具体的には、例えば、KBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、KBE-403(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)、KBM-303(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)(以上、信越化学工業株式会社製)、BYK-325N(ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン)(ビックケミージャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0046】
<粘着付与樹脂(D)>
本発明の粘着剤組成物は、さらに粘着付与樹脂(D)を含むことが好ましい。粘着付与樹脂(D)としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、合成炭化水素系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂(ロジン、重合ロジン、水添ロジン、及びそれらのグリセリン、ペンタエリスリトール等とのエステル、樹脂酸ダイマー等)、アクリル樹脂など既存の全てのものが使用可能である。粘着付与樹脂は、1種単独で、または2種以上混合して用いてもよい。
【0047】
脂肪族系石油樹脂としては、日本ゼオン(株)製のクイントンB170、芳香族系石油樹脂としては、JXTG(製)の日石ネオポリマーL-90、脂肪族/芳香族系石油樹脂としては、三井化学(株)製のFTR6100、ロジン誘導体としては、アリゾナケミカル社製のSylvatacRE85、荒川化学工業(株)のスーパーエステルA-75などが挙げられる。
【0048】
合成炭化水素系樹脂は、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族系石油樹脂、水素化石油系樹脂、クマロン-インデン樹脂、フェノール樹が挙げられる。
【0049】
テルペン系樹脂としては、例えば、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、ジペンテン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、酸変性テルペン樹脂、スチレン化テルペン樹脂、及びスチレン-脂肪族炭化水素系共重合体樹脂等が挙げられる。
【0050】
ロジン系樹脂としては、例えば、ロジンエステル、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、ロジンフェノール樹脂、天然ロジン等が挙げられる。
【0051】
粘着付与樹脂(D)の含有量は粘着剤組成物中のアクリル系ポリマー(A)100質量部に対して50質量部未満含むことが好ましく、40質量部以下含むことがより好ましい。粘着付与樹脂(D)を含有させることで被着体に対する接着力を向上させることができる。
【0052】
また粘着付与樹脂(D)は環境を配慮してバイオマス度80%以上のものを使用することがより好ましい。
また、粘着付与樹脂(D)の軟化点は、高温時の耐久性を高められる点でより高軟化点グレードのものが好ましく、90℃以上であると好ましく、120℃以上であるとより好ましく、140℃以上であることがさらにより好ましい。
【0053】
本発明の粘着剤組成物には、課題を解決できる範囲であれば、任意成分として各種樹脂、後述する塩素化ポリオレフィン、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤を加えてもよい。
【0054】
塩素化ポリオレフィンとしては、塩素化ポリプロピレン、酸変性塩素化ポリプロピレン、アクリル変性塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、塩素化エチレン酢酸ビニルコポリマー等が挙げられ、アクリル系ポリマー等との相溶性がよく、効果的に極性を下げられる観点から、塩素化ポリプロピレン、または塩素化エチレン酢酸ビニルコポリマーが好ましい。
市販品として具体的には、例えば、スーパークロン 390S(塩素化ポリプロピレン、塩素含有率36%)、スーパークロン BX(塩素化EVA、塩素含有率18%)(以上、日本製紙株式会社製)が挙げられる。
【0055】
本発明の粘着剤組成物は、ゲル分率が40%以上であることが好ましい。ただし、用途によってはゲル分率が40%以下でも使用することができる。ゲル分率の測定方法は、実施例にて詳細を記載する。
【0056】
本発明の粘着剤組成物は、特定のモノマーを含むモノマー混合物の共重合体であるアクリル系ポリマー(A)を含有することによって、アクリル系ポリマーを用いた際の粘度上昇を抑える効果と、被着体に対する高い接着力を確保することができる。これにより、塗布時の粘度調整に使用する有機溶剤の使用量を従来よりも大幅に軽減できる。
本発明においては、アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量が190~200万である場合は、固形分15%(±1)での粘度が3000mPas・s以下であることが好ましく、70~90万である場合は、固形分35%(±1)での粘度が3000mPas・s以下であることが好ましく、40~50万である場合は、固形分50%(±1)の粘度が3000mPas・s以下であることが好ましい。固形分の調製方法および粘度の測定方法については、実施例にて詳細を記載する。
【0057】
≪粘着剤層≫
粘着剤層は、本発明の粘着剤または粘着剤組成物から得られる層である。粘着剤層の形成方法は特に制限はなく、後述の粘着シートの説明に記載の塗工方法等と同様である。
【0058】
本発明の粘着剤層は、Hazeが1.0以下であることが好ましい。Hazeが1.0以下であることでより透明性が高くなり、使用上の目立ちにくさや光学用の使用における透過性が高く優位に使用することができる。Hazeを1.0以下にするためには粘着剤に使用するモノマーの種類や比率を考慮して粘着剤のガラス転移点が高くなりすぎないようにすることが必要である。また使用するモノマーによっては結晶性を示すものがあり、結晶性が発現することによってHazeが高くなってしまうため、同様に結晶性に留意した使用モノマーの種類や配合比率にすることが必要である。測定方法については、実施例にて詳細を記載する。
【0059】
本発明の粘着剤層は、40GHzにおける誘電率が5.0以下であることが好ましい。40GHzにおける誘電率が5.0以下であることで、タッチセンサ等の最適な動作を改善することができる。誘電率を5.0以下とするためには粘着剤の極性を低くすることが必要となる。もともと極性の低い化合物を使用する、または化合物中に含まれる炭素数を多くすることが必要である。測定方法については、実施例にて詳細を記載する。
【0060】
本発明の粘着剤層は、40GHzにおける誘電正接が0.1以下であることが好ましい。40GHzにおける誘電率が0.1以下であることで、ミリ波などの高周波数帯でのミリ波の放射損失を抑制することができる。誘電正接を0.1以下とするためには粘着剤の極性を低くすることが必要となる。もともと極性の低い化合物を使用する、または化合物中に含まれる炭素数を多くすることが必要である。測定方法については、実施例にて詳細を記載する。
【0061】
本発明の粘着剤層は、その屈折率が1.45以上1.52未満であることが好ましい。屈折率が1.45以上1.52未満であることで、光学部材の層間の貼合などに用いる場合、粘着剤層と光学部材との界面での光線の反射を低減させるため有用である。屈折率を上記範囲内に収めるためには高屈折材料と低屈折材料のバランスを考える必要がある。それは該粘着剤の組成によって調節することができる。例えば、ベースポリマーの種類、モノマー成分の組成比、添加剤の使用有無、種類および使用量等によって調節することができる。測定方法については、実施例にて詳細を記載する。
【0062】
本発明の粘着シートはガラス接着力が製品の固定性等のためにより高い接着力であることが好ましい。製品によっては低い接着力でも使用することは可能であるが、多用途に使用するためには、剥離強度として10N/25mm以上であると好ましく20N/25mm以上であるとより好ましい。測定方法については、実施例にて詳細を記載する。
本発明の粘着シートはSUS接着力が製品の固定性等のためにより高い接着力であることが好ましい。製品によっては低い接着力でも使用することは可能であるが、多用途に使用するためには、剥離強度として5N/25mm以上であると好ましく10N/25mm以上であるとより好ましい。測定方法については、実施例にて詳細を記載する。
【0063】
≪粘着シート≫
粘着シートは、本発明の粘着剤または粘着剤組成物からなる粘着剤層と剥離フィルムを備える。
【0064】
本発明の粘着シートは、粘着剤層の片面又は両面に剥離フィルムが形成された構成のいずれであっても良い。
【0065】
<剥離フィルム>
剥離フィルムとしては、特に制限されないが、透明プラスチック基材を好適に用いることができる。透明プラスチック基材の素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリシクロオレフィン等のプラスチック材料等が挙げられる。なお、プラスチック材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0066】
剥離フィルムとしては、前述のような透明プラスチック基材のなかでも、耐熱性が優れた透明プラスチック基材、すなわち、高温、高温高湿等の苛酷な条件下において、変形が抑制または防止されている透明プラスチック基材を好適に用いることができる。透明プラスチック基材としては、特に、PETフィルム又はシートが好適である。
【0067】
剥離フィルムの厚みは200μm未満であることが好ましい。使用する部材等に対するハンドリングによってその厚みは調節されるべきであるが、200μm未満であることで、素材自体のコシが強すぎず、ロール状に巻き取ることが容易になり、さらにシート等で貼り合わせ等を行う場合に快適に使用することができる。
【0068】
本発明の粘着シートは、優れた粘着性を有するため、LCDやOLED等の表示装置やタッチパネルのような入力装置といった光学ディスプレイ部材の形成や、それらの部材同士の貼り合わせに好適である。光学部材としては特に限定されることなく、PETフィルム、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、赤外線/電磁波カットフィルム、前面用反射防止フィルム、表面保護フィルム、ITO(酸化インジウムスズ)層を有するフィルム、酸化亜鉛(ZnO)層を有するフィルム、金属ナノ粒子を塗布や印刷することで得られるフィルム、カーボンナノチューブを含む分散液を塗布や印刷することにより得られるフィルム、グラフェンを含む分散液を塗布や印刷することにより得られるフィルム、導電性高分子を含む分散液を塗布や印刷することにより得られるフィルム、SUS等で形成された金属板、金属メッシュ、さらにはこれらが積層されているものが挙げられる。
【0069】
粘着剤または粘着剤組成物の塗工には、適当な液状媒体を添加して粘度を調整することもできる。具体的には、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、またはその他の炭化水素系溶剤等が挙げられる。ただし、水やアルコールは、アクリル系ポリマー(A)とイソシアネート系硬化剤(B)との反応阻害を引き起こす可能性があるため、慎重に使用する必要がある。
【0070】
塗工方法は特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられる。また、乾燥硬化方法は特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線、減圧法や活性エネルギー線を利用したものが挙げられるが、耐アウトガス性の観点で60~180℃での熱風もしくは蒸気加熱が好ましい。
【0071】
粘着剤層の厚みは、2~1000μmが好ましく、5~500μmがさらに好ましい。なお、粘着剤層は単層でも、2層以上の積層いずれの形態でもよい。
【0072】
≪積層体≫
本発明の積層体は、基材と粘着剤層を備える。粘着剤層は、本発明の粘着シートを用いて形成される。具体的には、例えば、本発明の粘着シートから剥離フィルムを剥離し、基材に粘着剤層を貼り付けて積層体を形成することができる。
【0073】
<基材>
基材は、粘着剤層を有する粘着シートの粘着剤層を貼り付ける相手方を指し、特定のものに限定されない。一例としてはポリエチレンやポリプロピレンなどを含むポリオレフィンや、ポリカーボネート、フェノール等の樹脂や、鉄やステンレス(SUS)、アルミニウムや銅などの金属、その他セメント、モルタル、ガラス、不織布、織布、紙、ゴム、発泡体シート、これらの積層体等を使用することができる。本発明の粘着剤及び粘着剤組成物は、少なくとも1種の被着体に対して優れた接着力を発揮する。
基材の厚みは、特に限定されず、例えば、500μm未満が好ましく、さらに10~200μmが好ましく、25~150μmがより好ましい。
【0074】
<光透過性基材>
本発明の積層体は、基材として光透過性基材を用いることもできる。光透過性基材としては透明プラスチック基材が用いられる。このような光透過性基材の素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリシクロオレフィン、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリプロピレン等のプラスチック材料等が挙げられる。PETフィルム、またはPCが好ましく耐久性の面でPCがさらに好ましい。
なお、プラスチック材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、光透過性基材は、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理等の適宜な表面処理が施されていてもよい。
【0075】
光透過性基材を備えた積層体に関しては粘着シートの全光線透過率が60%以上であることが好ましい。
光透過性基材を備えた積層体は、例えば、光透過性基材/粘着剤層/偏光板の構成を有する。この場合、光透過性基材、粘着剤層、および偏光板を、この順に備えることが好ましい。これにより、透明性に優れた積層体とできる。
【0076】
図1に、本発明の積層体を部分的に示す概略断面図の例を示す。
図1において3は光透過性基材(カバーパネル)、1は粘着剤層であり、4は偏光板である。
【0077】
図1で示される積層体では、光透過性基材(カバーパネル)が、粘着剤層を介して、偏光板に貼付されている。
【0078】
<積層体の製造>
積層体の製造方法は、例えば、粘着剤層の両面に剥離フィルムを有する粘着シートから剥離フィルムを剥離し、それぞれ光透過性可撓性基材、偏光板等の基材に粘着剤層を貼り付けて積層体を形成することができる。また、光透過性可撓性基材上に粘着剤層を直接形成後、粘着剤層に、基材、または別の粘着シートが備える粘着剤層を貼り付けて積層体を形成することもできる。
【0079】
≪ディスプレイ≫
ディスプレイは、本発明の積層体、偏光板および光学素子を備える。これにより、本発明のディスプレイは視認性に優れる。
光学素子としては、特に限定されず、例えば、液晶素子、有機EL素子等が挙げられる。
【0080】
図2に、本発明の粘着シートの使用例である、ディスプレイを部分的に示す概略断面図の例を示す。
図2において、3は光透過性基材(カバーパネル)、1は粘着剤層1、4は偏光板、5は粘着剤層2、6は窒化ケイ素等のバリア層、7は有機EL層、8はポリイミド等の支持体、9は有機ELセルである。なお、ディスプレイの構成が
図2に限定されることはない。
【0081】
図2で示されるディスプレイでは、光透過性基材(カバーパネル)が、本発明の粘着剤層(粘着剤層1)を介して、偏光板に貼付され、さらに偏光板用粘着剤層(粘着剤層2)を介して有機ELセルに貼付されている。このように、本発明の粘着シートは、前記粘着剤から形成された透明粘着剤層が、光透過性基材(カバーパネル)および偏光板に貼付され、さらに偏光板用粘着剤層を介して積層体が有機ELに貼付される形態で用いることができる。
例えば、
図2において、本発明の粘着剤層は、粘着剤層1、および粘着剤層2のいずれにも用いることができる。
一般に、粘着剤層1と粘着剤層2を比較した場合、粘着剤層に要求される要求品質は粘着剤層1の方が要求は高く、本発明の粘着剤は、基材への密着性および、接着性が良好であることから、粘着剤層1に用いられることが好ましい。このとき、粘着剤層2を形成するための粘着剤は、本発明の粘着剤を用いてもよく、従来公知の粘着剤を用いてもよい。
【0082】
ディスプレイの使用用途としては、特に制限はないが、有機ELテレビをはじめ、有機ELスマートフォン、有機ELタブレット、有機ELスマートウォッチ等が挙げられる。
【0083】
昨今の環境調和型材料を目指す傾向を鑑み、本発明の粘着剤および粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー(A)を構成するモノマーとしてバイオマスモノマーを用いたり、バイオマスの粘着付与剤を用いたりすることで、一部または全部が生物由来材料の粘着剤及び粘着剤組成物とすることができる。バイオマス度は30%以上であることが好ましい。より好ましくは39%以上、さらに好ましくは60%以上とバイオマス度は高くなるほど環境調和型材料としての有用性は高くなる。バイオマス度の算定方法は実施例に記載する。
【実施例】
【0084】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」とは「質量部」を、「%」とは「質量%」をそれぞれ示すものとする。また、表中の配合量は、質量部であり、溶剤以外は、不揮発分換算値である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
なお、含有するアクリル系ポリマー(A)のMwによって粘着剤組成物の粘度が増減することは技術常識であり、アクリル系ポリマー(A)のMwは適宜調整可能であることから、アクリル系ポリマー(A)の全てのMw範囲において本発明の効果を確認するのは現実的でない。したがって、実施例においてはMwが40万~50万または70万~90万または190万~200万となるようにアクリル系ポリマー(A)を製造し、評価することとした。
アクリル系ポリマーの重量平均分子量の測定方法は、下記に示す通りである。
【0085】
<重量平均分子量(Mw)の測定とMw分類評価方法>
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。装置は、株式会社島津製作所製GPC装置:LC-GPCシステム「Prominence」を用いた。また、カラムには、東ソー社製:TSKgel α-Mを用い、2本を直列に連結した。溶離液として、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、40℃で測定した。Mwの決定は、標準物質としてMwが既知のポリスチレンを標準物質とした換算で行った。
アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)を測定し、190万~200万であった場合Mw分類をU、70万~90万であった場合Mw分類をH、40万~50万であった場合Mw分類をLとして評価結果とする。
【0086】
(アクリル系ポリマーの製造)
<実施例1:(A-1)の製造>
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、反応容器内に重合溶媒として酢酸エチルを加え、モノマー(a1)として2-オクチルアクリレート(2-OA)19.75部、モノマー(a2)としてメチルアクリレート(MA)20部およびイソボルニルアクリレート(IBXA)3部、モノマー(a3)としてアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)7部およびアクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)0.25部のモノマー混合物、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを0.04部反応槽に仕込み、2-オクチルアクリレート(2-OA)19.75部、モノマー(a2)としてメチルアクリレート(MA)20部およびイソボルニルアクリレート(IBXA)3部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)7部、およびアクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)0.25部のモノマー混合物および重合溶媒として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを0.02部添加して混合した溶液を滴下管から約2時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて6時間重合させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈しアクリル系ポリマー溶液を得た。得られたアクリル系ポリマーを(A-1)とする。又、得られたアクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)を測定した結果について表1に示す。
【0087】
<実施例2~実施例7、比較製造例1~比較製造例7:(A-2~A-7、A’-1~A’-7)の製造>
表1記載の組成および配合量(質量部)に変更した以外は、アクリル系ポリマー(実施例1)の製造と同様の方法でアクリル系ポリマー(A-2~A-7、A’-1~A’-7)を製造した。又、得られたアクリル系ポリマーのMw分類について表1に示す。
【0088】
【表1】
<実施例21~実施例24、実施例30~実施例35:(A-8~A-17)の製造>
表2、表3記載の組成および配合量(質量部)に変更した以外は、アクリル系ポリマー(実施例1)の製造と同様の方法でアクリル系ポリマー(A-8~A-17)を製造した。又、得られたアクリル系ポリマーのMw分類について表2に示す。
【0089】
【0090】
【0091】
なお、略号は以下の通りである。なおバイオマス度は確認されたものに関してのみ記載をしている。
[モノマー(a1)]
2-OA:2-オクチルアクリレート(バイオマス度73%)
2-OMA:2-オクチルメタクリレート(バイオマス度67%)
[モノマー(a2)]
MA:メチルアクリレート(Tg:8℃)
MMA:メチルメタクリレート(Tg:105℃)
IBXA:イソボルニルアクリレート(Tg:97℃、バイオマス度76%)
BMA:ブチルメタクリレート(Tg:20℃)
[ヒドロキシ基を有するモノマー(OHモノマー)・カルボキシ基を有するモノマー(COOHモノマー)]
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
4HBA:4-ヒドロキシノルマルブチルアクリレート
AA:アクリル酸
[その他モノマー(a3)]
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート(Tg:-70℃)
BA:n-ブチルアクリレート(Tg:-55℃、バイオマス度57%)
LA:ラウリルアクリレート(Tg:-23℃、バイオマス度80%)
【0092】
<実施例8>
アクリル系ポリマー(A-1)100部に対して、硬化剤(B)として「D-165N」(三井化学社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体)を0.2部配合し、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を、コンマコーターを使用して、剥離性シートとして厚さ38μmの剥離ライナー(SP-PET-O1-BU:三井化学東セロ社製)上に乾燥後の厚みが25μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させた後、粘着剤層に剥離性シートとして厚さ75μmの剥離ライナー(SP-PET-O3-B3:三井化学東セロ社製)を貼り合せ、この状態で23℃にて7日間エージングさせ、粘着シートを得た。
【0093】
<実施例9~実施例17、実施例19~実施例20、実施例25~実施例29、実施例36~実施例45、比較例1~比較例15>
表4に示すように、アクリル系ポリマー、硬化剤(B)およびシランカップリング剤(C)、粘着付与樹脂(D)の種類ならびに配合量を変更した以外は、実施例8と同様にして、それぞれ粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0094】
<実施例18>
実施例5で得られたアクリル系ポリマー(A-5)を粘着剤とした以外は、実施例8と同様にして粘着シートを得た。
【0095】
<ゲル分率測定>
得られた粘着シートの38μm剥離ライナーを剥がし、粘着剤層を基材であるPETフィルム(東洋紡社製、コスモシャインA-4360、厚さ100μm)に貼り合わせ、幅30mm×長さ100mmのサイズに切り取り試験用粘着シートを作製した。さらに粘着テープのもう一方の面の剥離ライナーを剥がして試験片を作成し重量を測定した。試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、酢酸エチルから取り出して150℃の条件下で30分間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出した。表4において、「40%<」とは、ゲル分率が40%超であることを意味する。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/ (W1-W0) ・・・・(1)
(W0:基材(PETフィルム)の重量、W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0096】
<バイオマス度の計算>
粘着剤組成物のバイオマス度を、下記式(2)を用いて算出した。(モノマー2成分(A、B)、粘着付与剤1成分(C)系の場合)
バイオマス度={(Aw×Ab)+(Bw×Bb)+(Cw×Cb)}/(Aw+Bw+Cw)・・・・(2)
Aw:モノマーAの重量, Bw:モノマーBの重量,Cw:粘着付与剤の重量
Ab:モノマーAのバイオマス度(%),Bb:モノマーBのバイオマス度(%),
Cb:モノマーCのバイオマス度(%),
なおバイオマス度が範囲指定の場合は最小値を上記計算として使用して計算した。
【0097】
実施例および比較例で使用した材料を下記に記す。
<硬化剤(B)>
D-165N:三井化学社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体
テトラッドX:三菱ガス化学社製、多官能エポキシ樹脂
アルミキレートA:川研ファインケミカル株式会社製、キレート硬化剤
【0098】
<シランカップリング剤(C)>
KBE-403:(3-グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン、信越化工業社製)
<粘着付与樹脂(D)>
A-100:(スーパーエステルA-100、荒川化学工業株式会社、バイオマス度95~100%、軟化点95℃~105℃)
YS-T160:(YSポリスターT160、ヤスハラケミカル株式会社、バイオマス度70%、軟化点160℃)
【0099】
実施例8~実施例20、実施例25~実施例29、実施例36~実施例45、比較例1~比較例15で得られた粘着剤および粘着剤組成物の低粘度性の評価と、粘着シートの接着力の測定および耐腐食性の評価を下記の方法で行なった。接着力は、ガラスおよびSUSのいずれかの被着体に対する接着力が「使用可」以上の評価結果であれば実用可能と判断し、一方の被着体に対する接着力が「良好」の場合は、もう一方の被着体に対する接着力の評価は省略した。表5中の斜線は、評価を実施していないことを意味する。結果を表5に示す。
【0100】
<低粘度性>
実施例8~実施例20、実施例25~実施例29、実施例36~実施例45、比較例1~比較例15の粘着剤及び粘着剤組成物について、下記の方法で粘度を測定し、低粘度性を評価した。
含有するアクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)が190万~200万(U)であった場合は固形分を15%(±1)に、Mwが70万~90万(H)であった場合は固形分を35%(±1)に、Mwが40万~50万(L)であった場合は固形分を50%(±1)に調整し、Brookfield粘度計を用いて粘度を測定(ロ―ター番号:M3、回転数:12rpm)した。
固形分の調整は酢酸エチルを用いて行なった。
[評価基準]
A:粘度が3000mPas・s未満:良好
B:粘度が3000mPas・s以上4000mPas・s未満:使用可
C:粘度が4000mPas・s以上:使用不可
【0101】
<ガラス接着力>
得られた粘着シートの38μm剥離ライナーを剥がし、粘着剤層を基材であるPETフィルム(東洋紡社製、コスモシャインA-4360、厚さ100μm)に貼り合わせ、幅25mm×長さ100mmのサイズに切り取り試験用粘着シートを作製した。この試験用粘着シートのもう一方の75μm剥離ライナーを剥がし、23℃-相対湿度50%(50%RH)雰囲気で、粘着剤層をガラス板に貼り付け、さらにJIS Z-0237に準じてロールで圧着した。圧着してから24時間経過後、引張試験機(テンシロン:オリエンテック社製)にて剥離強度(剥離角度180°、剥離速度300mm/分;単位N/25mm幅)を測定した。
[評価基準]
A:剥離強度が20N/25mm以上。:良好
B:剥離強度が10N/25mm以上、20N/25mm未満。:使用可
C:剥離強度が10N/25mm未満。:使用不可
【0102】
<SUS接着力>
被着体をガラス板からSUS板に変更した以外は上記ガラス接着力測定と同様の方法にて測定を行った。
[評価基準]
A:剥離強度が10N/25mm以上。:良好
B:剥離強度が5N/25mm以上、10N/25mm未満。:使用可
C:剥離強度が5N/25mm未満。:使用不可
【0103】
<耐腐食性>
粘着シートをアルミ箔上に貼り合わせた後、60℃×90%RHの高温高湿条件下に48時間放置した。その後、粘着シートをアルミ箔から剥がし、アルミ箔表面を目視にて確認し、下記の基準で評価した。
A:アルミ箔表面に変色が確認されなかった。
B:アルミ箔表面に一部変色が確認された。
C:アルミ箔表面に変色が確認された。
【0104】
【0105】
実施例および比較例の粘着剤層について、下記の方法でHaze、誘電率、誘電正接、屈折率、腐食性および全光線透過率を測定した。測定結果を表5に記載する。
【0106】
<Hazeと全光線透過率の測定>
両面粘着シートから一方のセパレータを剥離して、該両面粘着シートをスライドガラス(松浪硝子工業株式会社製、「白研磨 No.1」、厚さ0.8~1.0mm、全光線透過率92%、ヘイズ0.2%)に貼り合わせ、さらに他方のセパレータを剥離して、両面粘着シート(粘着剤層)/スライドガラスの層構成を有する試験片を作製した。
上記試験片の可視光領域における全光線透過率及びヘイズを、ヘイズメーター(装置名「HM-150」、株式会社村上色彩研究所製)を用いて23±1℃、52±1%RHの環境下において測定した。各検体で3サンプル作製し、それらの3サンプルの測定値の平均を可視光領域における全光線透過率及びヘイズとした。
【0107】
<誘電率、誘電正接の測定>
実施例又は比較例で得られた粘着剤層の両面に対して25ミクロンのPETを貼り合わせたサンプルを準備し、以下の装置により、周波数40GHzにおける誘電率及び誘電損失を測定した。各検体で3サンプル作製し、それらの3サンプルの測定値の平均を比誘電率、誘電損失とした。なお測定後はPET-粘着剤層-PETの三層構造の数値からPET単体での測定数値を計算で差引いて粘着剤層そのものの測定値としている。
測定方法:空洞共振器法 JIS R1641 IPC-TM650 2.5.5.13
装置:株式会社エーイーティ製、誘電率測定装置、空洞共振器TEモード
測定環境:23±1℃、52±1%RH
【0108】
<屈折率の測定方法>
23℃の粘着剤層の屈折率を、アッベ式屈折計(メーカ名:ERMA、型式:ER-2S)で測定する。
[評価基準]
A:屈折率が1.45以上、1.52未満:使用可
C:屈折率が1.45未満、もしくは1.52以上:使用不可
【0109】
【符号の説明】
【0110】
図1、
図2、
図3の符号について下記に説明する。
1 粘着剤層1
2 剥離フィルム
3 基材
4 偏光板
5 粘着剤層2
6 バリア層
7 有機EL層
8 支持体
9 有機ELセル
【要約】
【課題】
環境調和型材料の比率を高めることによってより石油資源の節約に貢献することができる粘着剤であり、また被着体に対して高い粘着力性能を持ち、耐腐食性に優れ、高固形分化が可能な低粘度の粘着剤、それを用いた粘着シート、積層体および該積層体を備えるディスプレイの提供。
【解決手段】
(a1)2-オクチル(メタ)アクリレート、(a2)ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上の(メタ)アクリルモノマー、(a3)その他モノマー、および、カルボキシ基含有モノマーをそれぞれ特定量含有するモノマー混合物の共重合体であるアクリル系ポリマー(A)を含む粘着剤、または、該アクリル系ポリマー(A)と硬化剤(B)とを含有する粘着剤組成物。
【選択図】
図1